金熊賞はイランのモハマド・ラスロフ*ベルリン映画祭20202020年03月02日 17:40

     コロンビアのカミロ・レストレポの「Los conductos」が第1回作品賞を受賞

 

       

    (金熊賞のトロフィーを手にしたバラン・ラスロフとプロデューサー)

 

★第70回ベルリナーレがあっという間に閉幕してしまいました。金熊賞は下馬評通りイラン映画There is No Evilモハマド・ラスロフ監督の手に渡りました。とはいえ例のごとく監督は政府により拘留中で出国できず、2人のプロデューサーと監督の娘で女優のバラン・ラスロフが登壇して受け取りました。第2席に当たる特別審査員賞(銀熊賞)には、エリザ・ヒットマンNever Rarely Sometimes Alwaysが受賞、「これがベルリナーレかな」と感じたことでした。

 

   

                      (特別審査員賞のエリザ・ヒットマン)

 

★コンペティション部門のスペイン語映画は、ナタリア・メタの第2El prófugo(アルゼンチン=メキシコ)1作のみでしたが無冠でした。パノラマ部門、フォーラム部門を見回しても、大きな賞に絡む作品はなく、全セクションを通じて選ばれるオペラ・プリマの1回作品賞に、コロンビアの監督カミロ・レストレポLos conductos(コロンビア=ブラジル=仏)が受賞、副賞の5万ユーロをゲットしました。批評家のあいだでは注目されていた作品でした。

 

   

                           (カミロ・レストレポ監督)

 

★映画の新たな可能性を模索するのが目的で新設されたエンカウンター部門(今年は15作品)で上映されたアルゼンチンのマティアス・ピニェイロIsabellaがスペシャル・メンションを受けました。作家性の強いアート作品を撮る監督で、日本でもコアなファンが多い。2017年にはアップリンク渋谷とアテネ・フランセ文化センター共催の「マティアス・ピニェイロ映画祭」が開催され、監督も来日してファンのQ&Aに応じている。当時最新作であった『エルミア&エレナ』16)を含めて5作が字幕付きで上映されるというミニ映画祭でした。「イザベラ」は彼のシェイクスピア劇シリーズの第5作目に当たり、喜劇「Measure for Measure」がベースになっている。邦訳としては野上弥生子の『尺には尺を』が有名だが、木下順二訳の『策には策を』もある。かつては喜劇に分類されていたが、現在では問題劇なのではないかと言われている。筋が込み入って必ずしもハッピーエンドではない。本作はもう少し情報が欲しいところですが、いずれ監督インタビューなどをご紹介したい。相変わらずフェルナンド・ロケットの映像が素晴らしい。主演は常連のマリア・ビジャールアグスティナ・ムニョス

 

                  

                    (左マリア・ビジャール、アグスティナ・ムニョス)

  

   

 (右から2人目がマティアス・ピニェイロ監督、ビエンナーレ2020フォトコール)

 

 

    ピラール・パロメロのデビュー作「Las niñas――90年代のスペインを覆う社会的な陰

 

フォーラム部門の「Tagesspiegel Readers審査員賞」を受賞したのがウルグアイはモンテビデオ生れのアレックス・ピペルノ監督デビュー作Chico ventana también quisiera tener un submarino(「Window Boy Would Also Like to Have a Submarine」ウルグアイ=アルゼンチン=ブラジル=オランダ=フィリピン合作)という長たらしいタイトルの映画、ジャンルはコメディ、ファンタジー、ロマンスです。船員の主人公が船室のドアを開けるとフィリピンの村に入り込むというわけで、スペイン語以外にフィリピン語も話される。これは心惹かれる作品、アップしたい。

   

   

            

                    (船室のドアの向こうは・・・映画から)

 

 

★同じフォーラム上映だが賞には絡めなかった、スペインの若い監督3人の作品。まずガリシア出身のロイス・パティニョのLúa vermella、ビルバオ出身のハビエル・フェルナンデス・バスケスのAnunciaron tormenta、最後がセウタ出身のイレネ・グティエレスEntre perro y lobo3作。

   

   

              (Lúa vermella」から

 

  

Anunciaron tormenta」から

 

    

                      (Entre perro y lobo」から

 

★その他「ゼネレーションKplusピラール・パロメロLas niñasが上映された。1992年のサラゴサが舞台、宗教学校に通う父親を知らない11歳の少女セリアが主人公、シングルマザーとしてセリアを育てている母親にナタリア・デ・モリーナ、セリア役のアンドレア・ファンドスの演技が評判になっている。カルラ・シモンの『悲しみに、こんにちは』(17)を製作した、バレリー・デルピエールが手掛けている。

 

     

      (母親役のナタリア・デ・モリーナとセリア役のアンドレア・ファンドス)

 

★ヒラリー・クリントンの半生を描くドキュメンタリーが特別上映され、ヒラリー自身も現地入りして、混迷を深める民主党大統領候補選びに言及するなど、ヒラリー人気は依然として高い。ドキュメンタリーのプロモーションのみならず、民主党の宣伝にも尽力していました。評判がイマイチだったサリー・ポッターThe Roads Not Takenに主演しているハビエル・バルデムもニューヨークから現地入り、プレス会見では現在撮影中のTVシリーズ、メキシコ征服のエルナン・コルテス役についても語ったようです。

  

   

                 (ヒラリー・クリントン)

  

  

                       (お疲れ気味のハビエル・バルデム)

 

     

      (ハビエル・バルデムとその娘を演じるエル・ファニング、映画から)

  

第1回作品賞はコロンビアのカミロ・レストレポ*ベルリン映画祭20202020年03月05日 17:09

             カミロ・レストレポの長編デビュー作「Los conductos

  

             

                         (ピンキー役のルイス・フェリペ・ロサ)

   

★新設された「エンカウンター部門」(15作品)は、話題作が多かったことで観客にも評判がよかった。今年の1回作品賞は同部門にエントリーされていたカミロ・レストレポLos conductos(コロンビア、ブラジル、フランス)が受賞した。全セクションから選ばれるから結構大きな賞になります。レストレポはコロンビア北西部アンティオキア県都メデジン出身の監督、脚本家、編集者、メデジンは首都ボゴタに次ぐ大都市だが、かつては麻薬密売の中心地として有名だった。キャリア紹介は後述するが、短編数本撮った後、主演に新人2人を起用した長編第1作で、第1回作品賞を受賞した。

 

   

 (トロフィーを手にしたカミロ・レストレポ監督、ベルリン映画祭2020229日ガラにて)

 

 Los conductos2020

製作:5 a 7 Films / If You Hold a Stone / Mutokino

監督・脚本・編集:カミロ・レストレポ

音楽:アーサー・B・ジレットArthur B. Gillette

撮影:Guillaume Mazloum

録音:Mathieu Farnarier、ホセフィナ・ロドリゲス

製作者:エレナ・オリーブ、フェリペ・ゲレーロ、マルティン・ベルティエ、(以下共同製作者)グスタボ・ベック、アンドレ・ミエルニク

  

  

  (左から、アンドレ・ミエルニク、エレナ・オリーブ、レストレポ監督、グスタボ・ベック、

  ベルリナーレ2020フォトコール)

 

データ:製作国コロンビア、ブラジル、フランス、スペイン語、2020年、ドラマ、70分、

映画祭・受賞歴:ベルリン映画祭2020エンカウンター部門正式出品、第1回作品賞受賞、以後、リトアニアのスプリング映画祭(319日上映)、米国ニュー・ディレクター/ニュー・フィルム(328日)がアナウンスされている。

 

キャスト:フェルナンド・ウサガ・イギタ(デスキーテ)、ルイス・フェリペ・ロサの(ピンキー)

 

ストーリー:逃亡中のピンキーの物語。夜になると街路は黙示録のにおいが充満して来るのは、町が火に包まれているからだろうか。麻薬は地下水と空気を通して渦を巻いている。ある<パードレ>に導かれたセクトの手から解放され、自分の運命を自らの手に委ねる決心をする。彼は今、塗料やスローガン、プレス機が散乱する不法なシャツ工場の中に隠れています。ピンキーには、トンネルの先の明かりが見えていますが、ゴーストに追い詰められています。彼は自分の人生のために走っています。コロンビアは火に包まれていますが、生きています。ネオ・ドキュメンタリー作品。                                

 

 

      本当に和平は調印できたのか――コロンビア内戦の傷痕と希望が語られる

 

カミロ・レストレポは、1975年メデジン生れの監督、脚本家、編集者。1999年以来パリに軸足をおいている。映画研究所L'Abominable のメンバー。2011Tropic Poketで短編デビュー、2015年のLa impresión de una guerra26分「Impression of a War」)が第68回ロカルノ映画祭短編部門の銀豹賞を受賞、続く2016Cilaos13分、仏)も同賞を受賞した。La bouche19分「The Mouth」)がカンヌ映画祭2017「監督週間」のイリー短編映画賞部門にノミネートされ、その後ヒホン映画祭2017ではアストゥリアス賞を受賞した。長編同様、短編も内容が重く、特に最後の短編は娘婿に娘を殺害された父親のリベンジが語られている。

   

  

                 (銀豹受賞の「La impresión de una guerra」のポスター)

    

      

   (銀豹受賞の「Cilaos」のポスター)

    

   

  (第69回ロカルノ映画祭2016の銀豹のトロフィーを手にしたカミロ・レストレポ)

 

★ストーリーからも想像できるように物語はヘビー、コロンビア内戦が国民に残した傷痕は、何代にもわたって癒えることがないでしょう。製作者の一人、フェリペ・ゲレーロはデビュー作Osculo animal16)の監督、脚本家、編集者、レストレポと同世代の1975年生れ。今回は製作にまわったが、本作も数々の受賞歴をもつ作品、テーマはコロンビアにはびこる暴力ラ・ビオレンシアを取り扱っている。もう一人の製作者、マルティン・ベルティエは、五十嵐耕平&ダミアン・マニヴェルの『泳ぎすぎた夜』17、無声、日仏合作)の製作者の一人、第74回ベネチア映画祭に出品され、翌年劇場公開されている。撮影監督の Guillaume Mazloum は、「Cilaos」も手掛けている。

Osculo animal」の紹介記事は、コチラ20160319

 

★キャスト陣については、今のところ情報を入手できていませんが、IMDbでは主演者2人とも本作がデビュー作のようです。フェルナンド・ウサガ・イギタが演じる「デスキーテ」は仕返しあるいは報復という意味です。

 

    

    

                       (長編「Los conductos」から)

 

マティアス・ピニェイロの「Isabella」*ベルリン映画祭20202020年03月11日 21:00

    マティアス・ピニェイロのIsabella」はシェイクスピア・シリーズの第5作目

   

      

マティアス・ピニェイロIsabellaは、今年新設された「エンカウンター部門」で上映された作品の一つ、スペシャル・メンションを受賞した。前回紹介したカミロ・レストレポ監督とマティアス・ピニェイロの二人は、ノミネーション段階からラテンアメリカの有望な監督として紹介されており、受賞は意外でなかったかもしれない。特にピニェイロ監督は、アテネ・フランセとアップリンク渋谷が共催したミニ映画祭が20149月と20176月に開催されており、監督来日もあった。「イザベラ」は彼のシェイクスピア・シリーズの第5作目に当たります。四大悲劇の一つ『オセロー』と同じ1604年に発表された『尺には尺を』(「Measure for Measure」)がベースになっている。監督は現在ニューヨーク在住のため、撮影は飛び飛び、20181月にクランクインしたものの最終は20198月だったそうです。

「マティアス・ピニェイロ映画祭2017」の記事は、コチラ20200302

 

     

    (製作者メラニー・シャピロとマティアス・ピニェイロ、ベルリン2020226日)

 

マティアス・ピニェイロ1982年ブエノスアイレス生れ、監督、脚本家、アルゼンチン・ニューシネマの一人。国立映画大学で学び、後に同校で映画史、映画製作について教鞭をとる。2011年ハーバード大学のラドクリフ奨学金を得て渡米、現在は新たにニューヨーク大学の奨学金を受けてニューヨークに軸足をおいている。従ってコペンハーゲン・ドキュメンタリー・ラボでのスペインのロイス・パティーニョとの共同プロジェクトは断念している。

 

        

           (マティアス・ピニェイロ、226日)

 

2003年短編デビュー、数年助監督を務めたあと、2007年のEl hombre robadoで長編デビュー、チョンジュ映画祭でグランプリを受賞、ブエノスアイレス国際インディペンデント映画祭 BAFICI ではスペシャル・メンションを受賞した。本作は2014年のミニ映画祭で『盗まれた男』の邦題で上映された。主なフィルモグラフィーは以下の通り。

   

     

                (デビュー作のポスター)

 

  フィルモグラフィー&主な受賞歴(邦題は映画祭2017を使用)

2007El hombre robado」チョンジュ映画祭グランプリ受賞、ラス・パルマスFF1回作品賞

2009『みんな嘘つき』BAFICIスペシャル・メンション

2010『ロサリンダ』中編43分、シェイクスピア・シリーズ第1作、『お気に召すまま』

2012『ビオラ』シェイクスピア・シリーズ第2作、『十二夜』

   BAFICI の国際映画批評家連盟賞FIPRESCI を受賞、バルディビアFF特別審査員賞

2014『フランスの王女』シェイクスピア・シリーズ第3作、『恋の骨折り損』

   BAFICIアルゼンチン映画賞、カトリックメディア賞SIGNISなど受賞

2016『エルミア&エレナ』シェイクスピア・シリーズ第4作、『夏の夜の夢』

2020Isabella」シェイクスピア・シリーズ第5作、『尺には尺を』

   ベルリン映画祭2020エンカウンター部門スペシャル・メンション

(以上、他にロカルノやトロント映画祭などのノミネーションは割愛)

 

 

Isabella2020

製作:Trapecio Cine

監督・脚本:マティアス・ピニェイロ

撮影:フェルナンド・ロケット

編集:セバスティアン・Schjaer

音楽:ガブリエラ・サイドン、サンティ・グランドネ(ン)Grandone

録音:メルセデス・テンニナTennina

プロダクション・デザイン&衣装デザイン:アナ・カンブレ

製作者:メラニー・シャピロ

 

データ:製作国アルゼンチン、フランス、スペイン語、2020年、ドラマ、80分、撮影地ブエノスアイレス、コルドバ、クランクインは20181月、20198月にクランクアップ。

映画祭・受賞歴:第70回ベルリン映画祭2020エンカウンター部門(226日)スペシャル・メンションを受賞。

キャスト:マリア・ビジャール(マリエル)、アグスティナ・ムニョス(ルシアナ)、パブロ・シガル(ミゲル)、ガブリエラ・サイドン(ソル)他

 

ストーリー:ブエノスアイレス生れの女優マリエルは、シェイクスピアのコメディ劇『尺には尺を』のヒロイン、イザベラ役の獲得に挑戦している。マリエルはオーディションで何度も、避けられない運命のように、ルシアナを見かけます。ルシアナは影のように振舞うが、同時に彼女を照らし魅了する。シェイクスピア喜劇における女性の役割について、現代の欲望の定義の難しさについて、ピニェイロ映画常連のマリア・ビジャールとアグスティナ・ムニョスが火花を散らす。 

                                    (文責:管理人)

   

    

       (マリア・ビジャールとアグスティ・ムニョス、映画から)

 

★新作「Isabella」の情報は少なく、シェイクスピア劇『尺には尺を』の知識が若干あったほうが楽しめそうです。マリエル役のマリア・ビジャール1980)は、ピニェイロ映画には長編デビュー作以来、シェイクスピア・シリーズ全5作は勿論のこと、ほぼ全作に出演している。国立芸術大学演技科卒、同窓にマリア・オネットやリカルド・バルティスがいる。カルメン・バリエロがコーディネートする音楽グループのメンバー、他監督作品ではアレホ・モギジャンスキーの話題作「La vendedora de fosforos」やハビエル・パジェイロの「Respirar」に出演しているほか、舞台女優としても活躍している。同じくピニェイロ映画出演の多いロミナ・パウラとは親しく、最近彼女は監督デビューも果たした。

ロミナ・パウラの紹介記事は、コチラ20190910

 

(マリア・ビジャール)

    

★もう一人の主演者、ルシアナ役のアグスティナ・ムニョスは、女優、舞台演出家、劇作家と才色兼備。女優としては、2005年イネス・デ・オリベイラ・セサルのCómo pasan las horasで映画デビュー、「Extranjera」ほか同監督の作品に出演、マティアス・ピニェイロとのコラボはシェイクスピア・シーリーズ第1作からすべてに出演している。第2作目『ビオラ』ではマリア・ビジャールやロミナ・パウラとBAFICIの最優秀女優賞を一緒に受賞している。他監督作品では、サンティアゴ・パラベシノのAlgunas chicasが第70回ベネチア映画祭で上映され、監督と共演者たちと現地入りした。

 

    

          (アグスティナ・ムニョス『フランスの王女』から)

  

    

(左から、共演者アゴスティナ・ロペス、パラベシノ監督、ムニョス、ベネチアFFフォトコール)

 

★他にペパ・サン・マルティンのRaraに主演、本作は第66回ベルリン映画祭2016のゼネレーションKplus部門にエントリーされ審査員賞、ハバナFF特別審査員賞、バルデビアFF観客賞、サンセバスチャンFFホライズンズ・ラティノ部門グランプリを受賞した。ストーリーは2人の娘がいる女性とパートナーの4人家族、普通に見えながらフツーでないのはパートナーも女性であるから。主役が子供たち、特に長女の視点で語られる。

  

     

 (サンセバスチャンFF「ホライズンズ・ラティノ」グランプリ受賞作「Rara」から)

    

★ピニェイロ監督によると、第5作目に『尺には尺を』を選んだのは「女性を主役にして映画を撮る場合、シェイクスピアの喜劇はテーマが豊富だからだが、原作はコメディの要素が少なく問題劇の要素を持っているので、トーンを変えるのに適切だった」と語っている。さらに「一般的に悲劇は男性の権力を取り扱っているが、コメディは女性たちの英知が物を言うからです」とも語っている。イザベラは修道院で修練者として暮らしている。ところが兄が婚前交渉で恋人を妊娠させてしまい裁判官から死刑の宣告を受けてしまう。正義、慈悲、真実、プライドと屈辱が語られる。罠がかけられて、結局兄は助かるが大団円とは違うようです。

 

     

       (自作を紹介するマティアス・ピニェイロ監督、226日)

 

2013年、シェイクスピア・シリーズの第2作目『ビオラ』でベルリン映画祭のフォーラム部門に参加している。「今回はカルロ・チャトリアンやマーク・ペランソンの手に委ねられたエンカウンター部門にノミネートされた。とても興味をそそられる部門で興奮している。受賞というのは少し審査員の独断もはいるから、3人とか5人とかの人が決める一種の福引のようなものです」と受賞前に語っていましたが、運よく当たりました。またアルゼンチンでは独立系の映画が映画館に届くことは難しく、1週間とか10日間とか日数を限ってラテンアメリカ・アート美術館や国立映画協会の映写室で限定上映をしてもらっているということでした。

 

          

       

                 (元ロカルノ映画祭ディレクターのカルロ・チャトリアンと監督、226日)

   

     

(プログラミング主任のマーク・ペランソンと監督)

  

  

  (スペシャル・メンションの受賞スピーチをするメラニー・シャピロ、229日ガラ)

 

第23回マラガ映画祭2020の延期が発表になりました ①2020年03月12日 19:20

          第23映画2020延期がアナウンスされました!

 

     

             (第23回マラガ映画2020のポスター)

 

310日(火)、既にレッドカーペットも敷かれ準備万端整った段階で、マラガ市議会が新型コロナウイルスを理由に映画祭延期を発表しました。1週間前の33日にはセクション・オフィシアルにノミネートされた製作者や監督、映画祭関係者がマドリードに集まって記者会見をしたばかりでしたが、危惧した通りになってしまいました。延期の日程は当然ながら不明のわけで、中止も視野に入っているのかもしれません。チケットの払い戻しには応じるようですが、そうなると経済的には大打撃です。昨年の観客数15万人が消えるわけですから、観光収入が大きいマラガ市の損失は計り知れない。リーマンショックどころの話ではなくなりました。

 

    

       (マラガ映画祭開催についてのプレス会見、マドリード、33日)

 

  

           (メイン会場となるセルバンテス劇場前)

 

★映画祭だけでなく、観光の目玉であるマドリードの三代美術館(プラド、ソフィア王妃芸術センター、ティッセン・ボルミネッサ)以下、国立考古学博物館、王宮も閉鎖されて文字通りSFの世界になってしまいました。21億円の資金提供を受けた国に遠慮していたWHOがやっとパンデミックを宣言しましたが、何を今更と怒りを禁じえない。もう誰もWHOの言うことなど信頼しないでしょう。日本も同じですが、一人一人がやりたいことを少しずつ我慢して、ウイルスが終息するまで我慢の子に徹するしかありません。

 

★マラガ特別賞の一つ「レトロスペクティブ―マラガ・オイ」受賞のためマラガ入りするはずだった、メキシコの監督アルトゥーロ・リプスタインが渡西をキャンセルしました。昨年はセシリア・ロスが受賞した賞でした。セクション・オフィシアルには、イシアル・ボリャインLa boda de Rosaダビ・トゥルエバA este lado del mundo10年ぶりに新作を発表するアチェロ・マニャスUn mundo normalダビ・イルンダインUno para todosなどがノミネーションされています。中止でなく延期を願ってご紹介するつもりです。

 

    

   (イシアル・ボリャインの「La boda de Rosa」の製作者クリスティナ・スマラガ)

 

    

           (「Un mundo normal」のアチェロ・マニャス監督)

 

   

          (「A este lado del mundo」のダビ・トゥルエバ監督)

 

     

           (「Uno para todos」のダビ・イルンダイン監督)

  

 

★ベルリン映画祭は滑り込みセーフ、あと1週間遅かったら開催できなかったかもしれない。EU域内では最も中国と関係が深いと言われるイタリアはゴーストタウンと化し、フランスも感染者が増加、文化イベントの中止、教育機関は幼稚園から大学までオール閉鎖となりましたので、カンヌ映画祭も雲行きが怪しくなってきました。

ピラール・パロメロのデビュー作*マラガ映画祭2020 ②2020年03月16日 19:14

   ビエンナーレに続いてマラガ映画祭にもノミネートされたピラール・パロメロ

 

      

★マラガ映画祭2020は、延期か中止かまだはっきりしませんが、取りあえずセクション・オフィシアルの中から話題作をご紹介したい。ピラール・パロメロのデビュー作Las niñas20)は、先だって閉幕したばかりのベルリン映画祭2020「ゼネレーションKplus」部門で既にワールド・プレミアされています。当時からマラガのセクション・オフィシアルにノミネートされていることが分かっていたので、アップを見合わせておりましたが、まさかこんなことになるとは思いませんでした。製作者は第67回ビエンナーレの同じセクションのグランプリ、カルラ・シモンの『悲しみに、こんにちは』(17Summer 1993」)を手掛けたバレリー・デルピエールです。

 

    

    (ピラール・パロメロ、マラガFF2020プレス会見、マドリード33日)

 

ピラール・パロメロ Pilar Palomero は、北スペインのアラゴンの州都サラゴサ出身の監督、脚本家。サラゴサ大学スペイン哲学科卒。2013年、ハンガリーの監督タラ・ベーラ(最後の作品『ニーチェの馬』2011)の指導のもと、サラエボでの「フィルム・ファクトリー」映画監督マスター課程に参加する。短編はワルシャワ映画祭、バルセロナのD'A Film Festival、ウエスカFF、マラガFF、釜山短編FFなどで上映されている。2017年ベルリナーレ・タレント養成の一員に選ばれる。2009年短編「Niño balcón」、2016年「La noche de todas las cosas」、2017年「Horta」など。Las niñas」が長編デビュー作。 

 

 

 Las niñas(「School Girls」)

製作:Inicia Films / Bteam Pictures / Las Niñas Mujeres A.I.E

監督・脚本:ピラール・パロメロ

撮影:ダニエラ・カヒアス

音楽:カルロス・ナヤ

編集:ソフィ・エスクデ

製作者:バレリー・デルピエール

 

データ:製作国スペイン、スペイン語、2020年、ドラマ、100分、配給Bteam Pictures、インターナショナル販売Film Factory、スペイン公開202094日予定

映画祭・受賞歴:第70回ベルリン映画祭2020「ゼネレーションKplus」部門ワールド・プレミア、第23回マラガ映画祭2020セクション・オフィシアルに正式出品

 

キャスト:アンドレア・ファンドス(セリア、11)、ナタリア・デ・モリーナ(セリアの母)、ソエ・アルナオ(友人ブリサ)、フリア・シエラ(クリスティナ)、エバ・マガニャ(アリシア)、アイナラ・ニエト(クララ)、エリサ・マルティネス(レイレ)、フランセスカ・ピニョン、他

 

ストーリー1992年サラゴサ、11歳のセリアは母親と二人で暮らしている。サラゴサのある修道会の女子高に通っている。セリアは父親を知らない、そのことが友達の噂の種になっている。最近バルセロナから新しい生徒ブリサが編入してきて、新しい世界が開けてくる。スペインの1992年は、バルセロナ五輪とセビーリャ万博があった年だった。セリアは人生が多くの真実といくつかの嘘から成り立っていることを知ることになる。

 

         

       (11歳の子供の母親役を演じるナタリア・デ・モリーナ)

 

 

    「セリアは私と類似性がありますがフィクションです」とピラール・パロメロ

 

★ベルリナーレのインタビューで「セリアは自分と重なり合う部分がありますが、フィクションで伝記映画ではありません。サラゴサの修道会女子高、ディスコ、トランポリンなどは、私が記憶している部分です。観客がセリアの内部に入り込めるようにエモーショナルな部分をプッシュする筋書にしました。少女時代から思春期のとば口に少しばかり入りかけた女の子の物語です」と語っていた。セリアは父親がいないことで学校では汚名を着せられる。スペインの1992年は、オリンピックと万博という二大イベントがあった年で、大きな変化があった。

 

               

           (トランポリンに興じるセリアと友人、映画から)

 

★「当時の女の子が受けていた教育や時代がどのようなものだったか、変えねばならないのは何かについて、映画を観た人が議論してほしい」、現在でもスペインでは男女間の不平等が存在している。「それは多くは表面化していないが、セリアに強いられた従順さ、将来は良妻賢母というメッセージが残響している」と監督。脚本を書き上げたときに、ここには男性の登場人物が多くなかったことに気づいた。「周囲には父親、弟、二人の従兄弟以外、男の子の友達は一人もいなかったからです」と、少女時代の不自然な環境に触れている。2013年、サラエボで体験したタラ・ベーラの教育プロジェクトに参加したことが、大きな転換となった。そこで「映画を撮ろうと自分の方向が決まったのです」と。

 

  

  

(女友達だけで完結していたセリアの狭い世界)

 

★現在スペインはイタリアに次ぐ新型コロナウイルスの蔓延で、政治も経済も麻痺状態、勿論映画館はオール閉鎖されました。感染者約7900人、死者288人からまた増えて295人と発表されましたが、今後も増え続けるのは必至です。パンデミックはアメリカを含むヨーロッパに中心が移ったようです。欧米諸国のリーダーたちの危機管理の甘さが問われることになる。

   

ビスナガ栄誉賞にハビエル・フェセル監督*マラガ映画祭2020 ③2020年03月18日 11:52

           23回マラガ映画祭のビスナガ特別賞のご紹介

             

       

 

★新型コロナウイリスの蔓延で、全世界の映画祭&映画賞の延期または中止が報道されていますが、マラガ映画祭もその例にもれず今後の動向は皆目分かりません。しかし完成した作品はいずれ近い将来には観客に届くはずです。気を取り直して、まず既に発表になっておりましたマラガの特別賞を列挙しておきます。例年なら授与式にキャリア&フィルモグラフィを紹介してきましたが、今年は取りあえず名前だけアップしておきます。

 

ビスナガ栄誉賞

ハビエル・フェセル(マドリード1964、監督、脚本家)

 

     

201912『だれもが愛しいチャンピオン』が劇場公開された。マラガ映画祭では最新作Historias lamentablesが上映予定。

『だれもが愛しいチャンピオン』と監督紹介は、コチラ2018061220190701

   

     

             (最新作「Historias lamentables」から)

 

 

マラガ・スール賞

ガエル・ガルシア・ベルナル(メキシコ、監督、俳優、製作者)

 

  

*本賞はマラガの最高賞で海岸沿いの遊歩道に手形入りの記念碑を建ててもらえる。カンヌ映画祭2019特別上映枠で上映された、監督第2作目Chicuarotesがコンペティション外で上映予定。

Chicuarotes」の紹介記事は、コチラ20190513

  

               

                        (監督第2作目Chicuarotes」のポスター

 

 

マラガ才能賞-ラ・オピニオン・デ・マラガ

カルロス・マルケス=マルセ(バルセロナ1983、監督)

  

    

*本映画祭でデビュー作10,000 KMが作品賞を受賞、ゴヤ賞2015新人監督賞を受賞している。本映画祭2019ではEls dies que vindranが監督賞を受賞するなどマラガ映画祭の常連監督。

監督キャリア&フィルモグラフィの紹介記事は、コチラ2014041120190411

 

 

 

  

リカルド・フランコ賞

タチアナ・エルナンデス(衣装デザイナー)

 

    

 

*ゴヤ賞2011Lopeで衣装デザイン賞を受賞している。

 

 

レトロスペクティブ賞-マラガ・オイ

アルトゥーロ・リプスタイン(メキシコ・シティ1943、監督)

 

   

*来マラガをキャンセルしたニュースをアップいたしましたが残念でした。セクション・オフィシアルに最新作El diablo entre las piernasが上映予定。字幕入りで鑑賞できた代表作は、カンヌ映画祭に出品された『夜の女王』94)、ベネチア映画祭に正式出品された『ディープ・クリムゾン 深紅の愛』96)など、後者はアリエル賞を独占している。新作はいずれご紹介したい。

   

   

                                 (新作の英語題ポスター)

 

 

ビスナガ・シウダ・デル・パライソ賞(今年は2人)

キティ・マンベール(マラガ1953)、女優、映画、舞台、TVで活躍

 

     

アルモドバル『神経衰弱ぎりぎりの女たち』『抱擁のかけら』エンリケ・ウルビスTodo por la pastaでゴヤ賞1992の助演女優賞を受賞している。

 

 

オスカル・マルティネス(ブエノスアイレス1949)俳優、作家、舞台演出家

  

 

*公開された作品では、ダミアン・ジフロン『人生スイッチ』14)、ベネチア映画祭に正式出品されたガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーン『笑う故郷』16「名誉市民」)で本邦でもお馴染みになった。マルティネスは男優賞を受賞した。

『人生スイッチ』の紹介記事は、コチラ20150729

『笑う故郷』の紹介記事は、コチラ20161013同年1023

     

  
                                                     (『笑う故郷』 のポスター)

イシアル・ボリャインの新作はコメディ*マラガ映画祭2020 ④2020年03月21日 18:34

           イシアル・ボリャインの新作「La boda de Rosa」はコメディ

 

      

319日、映画祭中止の噂も流れていた第73回カンヌ映画(512日~23日)の正式な<延期>発表がありました。事務局は6月下旬、または7月上旬の線で検討しているようです。マクロン政府により1000人以上の集会が禁止されている現状で開催できるわけがありません。一応スパイク・リーが審査委員長に決定しておりますが、ラインナップは4月中旬の予定、予定はあくまで未定です。先日テキサス州オースティンで開催されるはずだったSXSWサウス・バイ・サウスウェスト映画祭の中止がアナウンスされたばかりでした。中止なら1968年の五月革命の混乱を機に、若いシネアストたちの映画祭ボイコットで中断して以来のことになる。

 

★一方、マラガ映画祭のセクション・オフィシアルにノミネートされているイシアル・ボリャインLa boda de Rosaは、主役ロサ(45歳の設定)にお気に入りのカンデラ・ペーニャ(バルセロナ1973)を配したコメディ。ボリャインは自身の監督デビュー作Hola, ¿estás sola?95、コメディ)に、イマノル・ウリベのシリアス・ドラマ『時間切れの愛』で脇役ながら存在感を発揮したペーニャを起用、、両作ともおよそ実年齢と重なる役柄です。映画祭上映になったTe doy mis ojos03『テイク・マイ・アイズ』)にも主人公の妹役に起用している。新作の脚本はTe doy mis ojos」で共同執筆したアリシア・ルナと今回もタッグを組んだ。撮影地にバレンシアのベニカシムを選び、2018年盛夏にクランクインした。

   

   

       (撮影中のボリャイン監督とロサ役のカンデラ・ペーニャ)

 

 

  La boda de Rosa

製作:Tamdem Films / Turanga Films / Setembro Cine / Halley Production  

   協賛Movistar+、RTVE、バレンシア文化協会

監督:イシアル・ボリャイン

脚本:イシアル・ボリャイン、アリシア・ルナ

撮影:セルジ・ガリャルド、ベアトリス・サストレ

編集:ナチョ・ルイス・カピリャス

音楽:バネッサ・ガルド

キャスティング:デボラ・ボルケ、ミレイア・フアレス

美術:ライア・コレト

衣装デザイン:ジョバンナ・リベス

メイク&ヘアー:アネ・マルティネス(メイク)、アンパロ・サンチェス(ヘアー)

製作者:クリスティナ・スマラガ、リナ・バデネス、フェルナンダ・デル・ニド、アレクサンドラ・レブレト

 

データ:製作国スペイン=フランス、スペイン語、2020年、コメディ・ドラマ、97分、撮影地バレンシア州のベニカシム、アルカサル、コスタ・デル・アサアル海岸、他、スペイン公開73日予定

映画祭・受賞歴:第23回マラガ映画祭2020セクション・オフィシアル出品

 

キャスト:カンデラ・ペーニャ(ロサ)、ナタリア・ポサ、セルジ・ロペス、パウラ・ウセロ、ラモン・バレア(父アントニオ)、ハボ・ヒメネス、マリア・マロト、エリック・フランセス、ルシン・ポベダ、マリア・ホセ・イポリト、パロマ・ビダル(マルガ)、他

 

ストーリー45歳を迎えたロサは、自身が自分のためでなく他の人のために並外れた努力をして生きていることに気づく。そこで自分の生き方を変えようと核のボタンを押そうと一大決心をした。人生の主導権を取ること、自身のビジネスをもつという夢を実現することだ。しかしロサは直ぐに、父親や娘や兄姉たちが別のプランをもっていることを知る。人生を変えるのは容易なことではない。それに家族は厄介だ。ロサとおせっかいでエゴイスト、いささかシュルレアリストだがとても愛情あふれた家族の物語。「家族と上手くやるにはどうしたらいい?」「離れて暮らすことだよ」

 

      

 (左から、ラモン・バレア、セルジ・ロペス、ナタリエ・ポサ、パウラ・ウセロ、映画から)

 

★『オリーブの樹は呼んでいる』(16)以来、久々にコメディのメガホンをとった。Yuli18)、『ザ・ウォーター・ウォー』10)の脚本を手掛けた夫君ポール・ラヴァティは参加せず、前述したように『テイク・マイ・アイズ』のアリシア・ルナとタッグを組んだ。クルーの多くが女性であることが列挙したクレジットから察することができます。ボリャインは長らく女優だったこともあり撮り直しを好まない。監督スタートが遅く、従って作品数も多いほうではない。しかし低予算ながら奇をてらわずに社会に疑問を静かに投げかけている。『オリーブの樹は呼んでいる』がラテンビート2016で上映された折り来日した。監督キャリア&フィルモグラフィは以下にご紹介しています。

監督キャリア&フィルモグラフィについては、コチラ20160719

ラテンビート2016来日の記事については、コチラ20161017

 

      

    (ボリャイン監督とラテンビートのディレクターであるカレロ氏、LB2016Q&A

 

★スペインのジョークに「あなたが家族と上手くやるには離れて暮らすことが最善」というのがある。家族は大切だが厄介でもある。女性ならロサは私の分身と感じる方もいると思う。昨年インスティトゥト・セルバンテス東京で開催された「スペイン映画祭2019」で上映されたネリー・レゲラ『マリアとその家族』16)と重なる部分がある。それぞれ特に悪い人ではないがちょっと迷惑な家族、父親だったり兄弟姉妹だったりする。

『マリアとその家族』の紹介記事は、コチラ20190814

 

★主役のカンデラ・ペーニャの他、ボリャイン映画初出演のナタリエ・ポサ(『さよならが言えなくて』『ジュリエッタ』)、セルジ・ロペス(『パンズラビリンス』『ナイト・トーキョー・デイ』)、ラモン・バレア(『列車旅行のすすめ』『誰もがそれを知っている』)、バレンシア出身で『オリーブの樹は呼んでいる』に出演していたパウラ・ウセロなどのベテランが脇を固めている。撮影は下の写真のように笑いが絶えないのがボリャイン流です。

 

      

                   (撮影の合間に談笑する、監督とカンデラ・ペーニャ)

        

    

         (監督、セルジ・ロペス、横向きがカンデラ・ペーニャ)

 

   

       (ナタリエ・ポサ)

 

  

                 (セルジ・ロペス)

 

★本作の製作者は女性が4人、国際的に活躍している先輩格のクリスティナ・スマラガやアルゼンチン出身のフェルナンダ・デル・ニドはそれなりの認知度がありますが、もう一人のエグゼクティブ・プロデューサーリナ・バデネスは、今までドキュメンタリーを手掛けることが多かったので認知度はこれからの人、最近ドラマを手掛けるようになった。2008年バレンシア工科大学オーディオビジュアル・コミュニケーション科卒、翌年キューバの国際映画テレビ学校で1年間ドキュメンタリーと監督のワークショップに参加、2011年 制作会社 Turanga Films を設立、2012年メディア・ビジネス・スクールのマスター・コースでマネージメントと映画製作を学ぶ。ボリャインが初めてドキュメンタリーに挑戦したEn tierra extrañaをスマラガと共同製作、今回コメディ・ドラマを初めて製作した。将来が期待される女性製作者の一人。

En tierra extraña」の紹介記事は、コチラ20141204

 

  

 

                   (リナ・バデネス)


アチェロ・マニャスの十年ぶりの新作*マラガ映画祭2020 ⑤2020年03月26日 14:04

       アチェロ・マニャスの新作はブラック・コメディ「Un mundo normal

 

   

   

★利害が複雑に絡みあってなかなか延期に踏み切れなかったIOCも、どうやら東京オリンピック・パラリンピック延期に舵を切った。安倍総理に下駄を預けたかたちのバッハ会長の狡さが際立った。元来決定権はIOCにあったと考えていたけれど、これじゃ責任転嫁です。中止があり得ないのは、もしそんなことをしたら2028年ロスが最後のオリンピックになってしまう恐れがあるからでしょう。新型コロナウィルスの勢いは増すばかり、ヒト、モノ、カネがストップして世界はマヒ状態、「コロナはアジアの感染症」と高を括っていた、WHOや欧米のリーダーたちの無能ぶりには開いた口が塞がらない。

 

★さて、第7回イベロアメリカ・プラチナ賞2020のノミネーションが発表になっていますが、ガラがいつ開催されるかは未定です。沈黙していたマラガ映画祭事務局も、MAFIZMálaga Festival Industry Zone2020Málaga WIPMálaga Work in Progress)が323日からオンラインでの開催を発表した(320日)。22作が参加するということです。

 

    

       (マラガ映画祭2020記者会見のフォトコール、33日マドリード)

 

★気になる監督、アチェロ・マニャスAchero MañasJuan Antonio Mañas Amyach)は、1966年マドリード生れの監督、脚本家、俳優。父は劇作家アルフレッド・マニャス、母は女優パロマ・ロレナ2014年に自伝 Como un relámpago(仮題「稲妻のように」)を出版している。マドリードの下町カラバンチェロで、文学やアート、演劇に囲まれながら育った。高校では絵画を、1984年に家族でニューヨークに移ってからは、Real Stageの演劇科で1年間演技を学んだ。映画界入りは俳優としてスタート、リドリー・スコットの『1492:コロンブス』(92)、カルロス・サウラの『愛よりも非情』93)、1995年には立て続けに、マヌエル・グティエレス・アラゴンのEl rey del río、アドルフォ・アリスタラインのLa ley de la frontera、そしてフアン・セバスティアン・ボリャインのBelmonteでは、ヘミングウェイを虜にした実在の闘牛士フアン・ベルモンテを演じている。舞台やTVシリーズにも出演しているが、監督デビューしてからは映画出演はない。

  

(アチェロ・マニャス監督)

                         

     

   

             (自伝を手にした母親パロマ・ロレナ)

 

★第4作目となるUn mundo normal20)は、2010年の第3Todo lo que tú quieras以来久々のブラック・コメディです。10年間近く新作を発表しなかったわけで、スペインでも若い人にはよく知られていないかもしれない。2000年に父親の虐待をテーマにしたEl Bolaで鮮烈デビューして、翌年のゴヤ賞では新人監督賞とオリジナル脚本賞の2冠、主役のフアン・ホセ・バジェスタが若干13歳で新人男優賞、更に作品賞にも輝いた。憎まれ役の父親にはマヌエル・モロンが扮した。監督が貰える賞のうち、ASECAN、トゥリア、サンジョルディ、スペイン俳優組合など23賞を獲得した。第2Noviembre03)はトロント映画祭FIPRESCI賞、サンセバスチャン映画祭審査員ユース賞などを受賞している。第2作と3作に母親のパロマ・ロレナが出演している。

 

       

 (第1作El Bola」バジェスタを配したポスター

 


(第2作「Noviembre」)

 

 Un mundo normal2020

製作:Tornasol Films / Last Will Producciones Cinematográficas A.I.E. / Sunday Morning Production S.L.

監督・脚本:アチェロ・マニャス

撮影:ダビ・オメデス

音楽:バネッサ・ガルデ

編集:ホセ・マヌエル・ヒメネス

衣装デザイン:クリスティナ・ロドリゲス

メイク&ヘアー:ビセン・ベティ(ヘアー)、アントニア・ぺレス(メイク)、アントニオ・ナランホ(特殊メイク)

製作者:ヘラルド・エレーロ、ペドロ・パストール、(エグゼクティブ)マリエラ・ベスイエフスキー

 

データ:製作国スペイン、スペイン語、2020年、ブラック・コメディ、103分、撮影地バレンシア州のリィリア、アルプエンテ、アルカセル、他。スペイン公開522日予定

映画祭・受賞歴:マラガ映画祭2020セクション・オフィシアル出品

 

キャスト:エルネスト・アルテリオ(エルネスト)、ガラ・アムヤチ(娘クロエ)、ルス・ディアス(フリア)、パウ・ドゥラ(マックス)、マグイ・ミラ(カロリナ)、オスカル・パストール、アブデラティフ・ウイダルHwidar、ラウラ・マニャス、他

 

ストーリー:エキセントリックな舞台演出家エルネストの物語。母の訃報を受けたエルネストは帰郷する。セメンテリオに向かう途中、母の遺骨をおさめた柩を盗んでしまう。海に散骨することが母の願いだったからである。娘のクロエは世間の慣習に拘らない父親についていけず疲労困憊している。しかし父との旅のなかで、彼の振る舞いが狂気でないことが分かってくる。父が望んでいることは自分自身に誠実なこと、しばしば世間の常識と異なっていることもあるのだ。

   

    

        (霊柩車の運転手を追い出して柩を盗んだ父と揉める娘クロエ)

  

★監督曰く「人はそれぞれ違っている独特な存在。家族との繋がり、そして死による別れがある。私を此の世に連れてきてくれた母へのオマージュ、常識に抵抗するのに必要なのは愛と支えだと気がついた。多くのことが私たちの精神を痛めつけている。そこからフラストレーション、無力感、苛立ち、失望が生み出されている」と。もっと人生は自由であっていいのではないかという提案らしい。もしかしたら母の死が今回の新作の動機の一つだったのかもしれない。

 

    

              (父エルネストと娘クロエ、映画から)

 

★主役のエルネスト・アルテリオ1970)は、ブエノスアイレス出れだが、家族(父エクトル・アルテリオ)と一緒に5歳でスペインに移住している。アレックス・デ・ラ・イグレシアPerfectos desconocidosに、2018年夏別れたフアナ・アコスタと危機に瀕した夫婦役で出演していた。オシドリ夫婦の評判でしたが映画完成後に本当に別れてしまった。キャリア&フィルモグラフィは以下にアップしています。

エルネスト・アルテリオのフィルモグラフィは、コチラ20180711

 

      

                (父エクトルとエルネスト)

 

★娘クロエを演じたガラ・アムヤチは、映画初出演、まだ情報がない。カロリナ役のマグイ・ミラ(バレンシア1944)はTVシリーズ出演が多いが、ソエ・ベリエトゥアEn las estrellas18)に出ている。アレックス・デ・ラ・イグレシアとカロリナ・バングが製作を手掛けているせいか、『パパと見た星』の邦題でNetflixで配信されている。フリア役のルス・ディアス(カンタブリア1975)は、ラウル・アレバロ『物静かな男の復讐』に出演、ベネチア映画祭2016「オリゾンティ部門」の女優賞を受賞している。短編を撮るなど監督デビューもしている。

ルス・ディアスの紹介記事は、コチラ20170109

    

(クロエ役のガラ・アムヤチ)

  

 (エルネストとカロリナ)

        

                      

 (ルス・ディアス)

 

  

★強力な3人のベテラン製作者ヘラルド・エレーロペドロ・パストールマリエラ・ベスイエフスキーは制作会社Tornasol Films に所属している。字幕入りで最近観られた作品のなかで、受賞歴の多いヒット作、『瞳の奥の秘密』、『ゴッド・セイブ・アス~マドリード連続老女強姦事件』、『12年の長い夜』などを手掛けている。

パストール兄弟の第3作目『その住人たちは』*マラガ映画祭2020 ⑥2020年03月31日 16:27

           ダビ&アレックス・パストール兄弟の新作Hogar」は心理サスペンス

 

   

 

ダビ&アレックス・パストール兄弟の新作Hogarはサスペンス、第23回マラガ映画祭202013日~22日)コンペティション部門に選ばれている。今回は映画祭が開催されていないのでスクリーンでは観られなかったが、既に326日からNetflix 配信が始まっている。スペインでは珍しくない見栄っ張りな計算高い男の納得いかない成功物語。愚かな登場人物が出たり入ったりして、後半にかけて心がザラザラしてくるが、主人公ハビエル・ムニョスの鬼気迫る眼光に目が離せなくなる。これほどユーモア無しでは観客は救われないが、1980年代から90年代にかけて急速に民主化が行われたスペイン社会の、いささか図式的とはいえ、強い男を強制される社会の病んだ一面を切りとっている。競争社会の敗北者なら主人公の中に「本当はオレもこうしたかった」と夢想する自分を発見するのではないか。批評家と観客の評価が真っ二つに分かれる作品の好例。

 

     

   (左から、アレックス・パストール、ハビエル・グティエレス、ダビ・パストール)

 

 Hogar(「Occupant」)2020

製作:Nostromo Pictures

監督:ダビ・パストール、アレックス・パストール

脚本:アレックス・パストール、ダビ・パストール

撮影:パウ・カステジョン

音楽:ルカス・ビダル

編集:マルティ・ロカ(AMMAC

キャスティング:アンナ・ゴンサレス

衣装デザイン:イランツゥ・カンポス

メイク:ルシア・ソラナ(特殊メイク)

プロダクション・マネージメント:ダビ・クスピネラ

製作者:ヌリア・バルス、マルタ・サンチェス、アドリアン・ゲーラ、(ライン)マグダ・ガルガリョ

 

データ:製作国スペイン、スペイン語、2019年、スリラー・ドラマ、103分、撮影地バルセロナ、配給ネットフリックス(326日配信開始)

映画祭・受賞歴:第23回マラガ映画祭2020セクション・オフィシアル正式出品

 

キャスト:ハビエル・グティエレス(ハビエル・ムニョス)、マリオ・カサス(トマス・ブラスコ)、ルス・ディアス(ハビエルの妻マルガ)、ブルナ・クシ(トマスの妻ララ)、イリス・バリェス・トレス(トマスの娘モニカ)、クリスティアン・ムニョス(ハビエルの息子ダニ)、ダビ・ラミネス(庭師ダミアン)、ダビ・ベルダゲル(広告会社役員ラウル)、ヴィッキー・ルエンゴ(ナタリア)、ダビ・セルバス(広告会社役員ダリオ)、ラウル・フェレ(ダリオの部下ルカス)、ヤネス・カブレラ(家政婦アラセリ)、サンティ・バヨン(受付係)、エルネスト・コリャド(教師)、エリ・イランソ(断酒会指導者アンパロ)、その他断酒会メンバー多数

 

ストーリー:かつては有名な広告会社の役員だったハビエル・ムニョスの物語。1年前から失業しており、家族は豪華なマンション生活を断念しなければならなくなった。もう若くはないハビエルにとって再就職は難しく、もはや自尊心は打ち砕かれていた。ある日のこと、かつてのマンションの鍵を持っていることに気づくと、ある怖ろしい計画を思いつく。失った栄光を取り戻すために新しい住人をスパイし始めるが、次第に新入居者の人生に深く侵入していく。しかしそれは破滅への道でもあったのだが・・・

   

(策略を練る病んだ主人公ハビエル)

   

           

 

            自分は変えられないが、社会は変化していく

 

A: 正義感の強い人には耐えられない映画でしょうか。ハビエルのようなクソ野郎は小型なら世間にごまんといるでしょう。しかし想像するだけで実際にはやらないだけの話です。

B: しかし、脚本が少しザツすぎませんか。格差社会は万国共通ですが、シリアス・ドラマとして人物造形が単純、例えば広告会社面接官の慇懃無礼な態度、応募者を下にみる横柄さ、小市民を隠れ蓑にしている小児性愛者、アルコール依存症患者、断酒会の指導者、夫を信頼できない妻、言葉の暴力、自分を同定できる登場人物が一人も出てこない。

 

A: そうではなく、自分に同定したくない人物ばかりなのです。自分はあれほどワルじゃないしバカじゃないと。ハビエルは社会は変化しているのに自身を変えられないの典型です。過去の栄光を手放せない虚栄心の強い、自分が前世紀に制作したBMWや大手電機会社のコマーシャルに固執している。

B: 現在の自分は、かつて制作したCMあなたにふさわしい暮し」をしていない。「自分にふさわしくない妻や息子」のいる<仮の我が家>が我慢ならない。

 

A: <真の我が家>占拠している新しい住人は、元来ならここにいるべき人間ではなく排除しても許されると。しかし正義を行う相手が間違っていた。「目には目を歯には歯を」から逸脱していることが観客をいらいらさせる。それにしてもユーモアが少し欲しかったですね。

B: 屋外に出られなくなるパンデミックで社会が崩壊した世界を描いた『ラスト・デイズ』でさえありましたからね。

 

A: 他人の人生を乗っ取ろうとする話と言えば、最近話題になっているポン・ジュノの『パラサイト 半地下の家族』ですが、こちらはブラック・コメディ。「観客に大いに笑ってもらおうとして撮った」と監督。前半は笑えますが、後半は恐ろしくて静まり返ります。

B: パラサイトしている家族は、果たして上階に暮らす金持ちか、半地下に暮らす失業者か、そのどちらかが問われている。

 

           アイディアの誕生は旧居の鍵だった!

 

A: 世界の映画祭で高評価を得た短編映画La ruta natural05)の後、2009年に世界終末を描いた『フェーズ6(原題「Carries」)で長編デビューした。しかしこれは監督と脚本を担ったアメリカ映画、2006年に完成していたがリリースされたのは2009年という経緯がある。第2作が2013年に撮ったパニック・スリラーSFLos últimos díasで、スペイン語映画の長編デビュー作でした。本邦では『ラスト・デイズ』の邦題で公開され、『フェーズ6』同様アマゾン・プライムで配信されている。

 

     

               (日本語版ポスター、2013年公開)

 

B: 電気が通じてないのにエスカレーターが動いていたり、マドリード動物園の熊が出てきたり、無理に付け足したような唐突なエンディングなど脚本にアラが目立ったが、『フェーズ6』やホセ・コロナドキム・グティエレスマルタ・エトゥラレティシア・ドレラなど、日本でも少しは知られた俳優を起用できたお蔭で公開された。

A: ガウディ賞受賞作品ということもあったかもしれない。2作とも現在世界を恐怖に陥れている新型コロナウイルス感染症 COVID-19を予見したような内容なので、今見ると当時とは感想が変わるかもしれない。パンデミック物は終りにしたのか、第3作目は人間の心に巣食う闇をテーマに選んだ。しかしプロット運びに観客を納得させない部分が目立ち、相変わらず足を引っ張っている。

 

B: 本作のアイディアの誕生は、ほったらかしにしていた以前住んでいた古い家の鍵を保存していたことだそうです。

A: この鍵で我々が以前住んでいた家に入れると気づいたことでした。それが「元は自分が住んでいたが今は他人が住んでいる家に侵入する」というアイディアに発展した。解雇を切り出された家政婦のアラセリが雇い主のハビエルに鍵を投げつけるシーンを伏線にした。

 

B: このシーンには違和感を覚えたが、試行錯誤の結果だったのかな。新入居者トマスがピーナッツ・アレルギーを口走るシーンも不自然だった。

A: スリラー好きなら直ぐピーンとくるセリフですね。ハビエル・グティエレスマリオ・カサスの一騎打ちをもっと期待していた観客は消化不良を起こしているかも。主人公を怒らせる広告会社の面接官ラウルを演じたダビ・ベルダゲルは、カルラ・シモン『悲しみに、こんにちは』で少女の養父となった叔父を演じた俳優、養母を演じたのが、今回はおバカなトマスの妻ララ役のブルナ・クシでした。

 

    

            (ハビエル・グティエレスとマリオ・カサス)

 

      

   (夫トマスを信じきれない妻を演じたブルナ・クシとモニカ役のイリス・バリェス)

 

B: 表面は夫の失業に理解を示す良き妻を装いながら、その実、夫を優しく責め立てる看視者マルガを演じたのが、ラウル・アレバロ『物静かな男の復讐』でベネチア映画祭女優賞受賞者のルス・ディアスでした。

A: 彼女とマリオ・カサスはサム・フエンテス『オオカミの皮をまとう男』17)で共演している。落とせないのが小児性愛者の庭師ダミアン役のダビ・ラミレス1971年バルセロナ出身、ホセ・コルバチョ&フアン・クルスの『タパス』05)で映画デビューしたが、もっぱらTVシリーズに出演、映画は他に [REC] 312)に出ている。

 

    

          (夫を優しく責め立てるマルガ役のルス・ディアス)

 

 

B: 画面構成には斬新とまでは言えないが、若い監督たちが好きそうなスタイリッシュな、鏡を利用した構図が多用されていた。しかし筋運びとアンバランスの印象を受けた。

A: 監督はプロットで勝負するタイプではないのかもしれない。撮影監督のパウ・カステジョンは、クリスチャン・ベールが主演した『マシニスト』の撮影助手でキャリアをスタートさせ、イギリス、イタリア映画、カタルーニャTVシリーズなどを手掛けている。

 

           批評家と観客の乖離――真っ二つに分かれた評価

 

B: 冒頭シーンに出てくるフリジスマート電機のアメリカンドリームを皮肉ったようなコマーシャルと、計画通りトマスに入れ替わったハビエルの実人生をエンディングでダブらせている。冒頭とエンディングは円環的で、これはスペイン語映画の特徴の一つでした。

A: どちらも子供は女の子で、ハビエルの理想の子供はモニカのような愛らしい少女であって、肥満でイジメられっ子のダニではない。「自分にふさわしくない」息子、洗剤の臭いが残る清掃員のマルガも「自分にふさわしくない」妻として、視界から消去してしまっている。本作では、CMのリード「あなたにふさわしい暮らし」La vida que merecesを受け取るために許される限界はどこまでかが問われている。

 

B: 不愉快な映画と感じた観客はスペインでも結構いて、「今までの人生で見たサイテーの映画、否、チョーサイテー」なんていうコメントもあった。

A: 制裁を加える相手が、自分を愚弄した広告会社の面接官、受講生の面前で恥をかかせた教師、規則規則を連呼する受付係ならまだしも、罪があるとは全然思えないトマスに向かったからでしょう。トマスの不運は、何も知らずにハビエルの<我が家>の占拠者になってしまったことだけでした。

 

B: 批評家と観客の乖離はよくあることで、あっち良ければこっちダメ、こっち良ければあっちダメ、両方揃うのは難しい。

A: 批評家は概ねポジティブな評価です。だからマラガ映画祭のセクション・オフィシアルに選ばれたわけでしょう。映画祭が開催されていればプレス会見の様子も伝わってきたのですが、コロナの猛威は収束の兆しもなく、スペインは政治経済文化オール息をひそめています。

 

B: 最後になりましたが、パストール兄弟の簡単なキャリア紹介。

A: ダビ・パストール1978年バルセロナ生れ、監督、脚本家、コロンビア大学の監督マスターコース卒。アレックス・パストール1981年バルセロナ生れ、監督、脚本家、カタルーニャ映画視聴覚上級学校ESCACで脚本を専攻する。上記に紹介した作品の他、ターセム・シンSFアクション『セルフレス/覚醒した記憶』15米、ライアン・レイノルズ、ベン・キングズレー主演)の脚本を二人で執筆している。これは2011年度ハリウッド優秀脚本リスト入りしていたもの。

 

ハビエル・グティエレスのキャリア&フィルモグラフィは、コチラ20190325

マリオ・カサスのキャリア&フィルモグラフィは、コチラ201903030305