ラウル・アレバロのデビュー作”Tarde para la ira”*ゴヤ賞2017 ⑥2017年01月09日 10:13

                      ラウル・アレバロは監督もできます!

 

  

 

★昨年の2月にラウル・アレバロ監督デビューの第一報をお届けしてから早くも1年近くの歳月が流れました。ベネチア映画祭2016「オリゾンティ」部門に正式出品された折にも追加記事をアップするなどして注目しておりましたが、ゴヤ賞作品賞・新人監督賞を含む11個ノミネートには驚きました。作品賞はともかく、新人監督賞のトップを走っているのは間違いありません。1馬身差で追っているのが前回ご紹介したサルバドル・カルボの“1898, Los últimos de Filipinas”と予想しています。今どき俳優の監督掛持ちなど珍しくもありませんが、改めて飛び飛びだった記事をまとめて再構成することにしました。

以下、ゴチック体はゴヤ賞ノミネートを受けたもの、印はフェロス賞にノミネートされたもの

 

   Tarde para la ira(“The Fury of a Patient Man”)2016

製作:Agosto la Pelicula / La Canica Films / TVE 

監督・脚本:ラウル・アレバロ 

脚本(共):ダビ・プリド 

撮影:アルナウ・バルス・コロメル

編集:アンヘル・エルナンデス・ソイド

音楽:ルシオ・ゴドイ

衣装デザイン:アルベルト・バルカルセル・ロドリゲスクリスティナ・ロドリゲス

美術:セラフィン・ゴンサレス

メイクアップ&ヘアー:マルタ・アルセエステル・ギリェムピルカ・ギリェム

特殊効果:イケル・デ・ラ・カジェ・ラタナ、ラオル・ロマニリョス

録音:タマラ・アレバロ、ミゲル・バルボサ、ほか

製作者:ベアトリス・ボデガス、セルヒオ・ディアス

 

基本データ:製作国スペイン、スペイン語、2016年、スリラー・ドラマ、92分、製作費約120万ユーロ、スペイン国営放送RTVEの援助、撮影開始20157月より6週間、撮影地はマドリードほかセゴビアなど。スペイン公開201699日、IMD7.5

映画祭・受賞歴:ベネチア映画歳2016「オリゾンティ」正式出品、ルス・ディアス女優賞受賞。トロント映画祭、ロンドン映画祭、テッサロニキ映画祭、ストックホルム映画祭などに正式出品

映画賞:フォルケ賞2017作品賞・男優賞(アントニオ・デ・ラ・トーレ)、ガウディ賞2017撮影賞、フェロス賞2017作品賞以下7部門、いずれもノミネーション。

 

キャストアントニオ・デ・ラ・トーレ(ホセ)ルイス・カジェホ(クーロ)ルス・ディアス(アナ、フアンホの義妹)ラウル・ヒメネス(フアンホ)、アリシア・ルビオ(カルメン)、マノロ・ソロ(トリアナ)、フォント・ガルシア(フリオ)、ピラール・ゴメス(ピリ)、ベルタ・エルナンデス(ホセのガールフレンド)、ルナ・マルティン(サラ)その他多数

 

解説:ホセとクーロの物語、無口だが用心深いホセはフアンホがオーナーのバルで終日ウエイターとして働いている。不眠症に苦しんでおり、フアンホの義姉妹アナを想っている。そんな折、フアンホの兄弟クーロが8年ぶりに出所してくる。20078月マドリード、クーロは仲間と宝石店を襲い販売員を昏睡状態にしたうえ仲間の一人が女店員を殺害してしまうという事件を起こしていた。暗い過去の亡霊にとり憑かれているが、アナと小さな息子と一緒に人生をやり直そうと考えていた。しかしアナの愛は既にクーロになく、見知らぬ男ホセと出逢うことで歯車が狂ってくる。やがて販売員がホセの父親だったこと、女店員がホセのガールフレンドだったことが明らかになってくる。人間の心の闇に潜む暴力、復讐、父と子の関係が語られることになるだろう。

 

     

        

                          (アントニオ・デ・ラ・トーレとルイス・カジェホ、映画から)

 

  監督キャリア紹介                                  

★ラウル・アレバロRaúl Arévalo1979年マドリード生れ、俳優、監督、脚本家。クリスティナ・ロタの演劇学校で演技を学んだ。「妹と一緒に父親のカメラで短編を撮っていた。17歳で俳優デビューしたのも映画監督になりたかったから」というから根っからの監督志望だった。俳優としてキャリアを磨きながら、今回やっと長年の夢を叶え、監督としても通用することを証明した。

  

 

★日本デビューはダニエル・サンチェス・アレバロの第1『漆黒のような深い青』06ラテンビート2007上映)、同作にはサンチェス・アレバロ監督と「義」兄弟の契を結んでいるアントニオ・デ・ラ・トーレも共演している。彼はデビュー作の主人公ホセ役として出演している。サンチェス・アレバロは合計4作撮っているが、二人とも全4作に出演しています。ゴヤ賞絡みではサンチェス・アレバロの第2『デブたち』09)で助演男優賞を受賞している。ホセ・ルイス・クエルダ(“Los girasoles ciegos”)、公開作品ではアレックス・デ・ラ・イグレシア(『気狂いピエロの決闘』)、イシアル・ボリャイン(『ザ・ウォーター・ウォー』)、アルモドバル(『アイム・ソー・エクサイテッド!』)、アルベルト・ロドリゲスの『マーシュランド』、今年ゴヤ賞脚本賞にノミネートされたダニエル・カルパルソロの『バンクラッシュ』(“Cien años de perdón”)などに起用されている。舞台にも立ち、TVドラ出演も多く、NHKで放映された『情熱のシーラ』で日本のお茶の間にも登場した。

 

   トレビア       

★アレバロ監督は「脚本執筆に7年、資金集めに4年の歳月をかけたのに、撮影に6週間しかかけられなかったのはクレージー」と嘆いている。それでも長年の夢をやっと叶えることができた。マドリードとセゴビアのマルティン・ムニョス・デ・ラス・ポサダスというアレバロが育った町で2015年夏にクランクインした。町の人々がエキストラとして協力しており、主人公の一人クーロ役のルイス・カジェホもセゴビア出身。ホセ役のアントニオ・デ・ラ・トーレとはダニエル・サンチェス監督の全作で共演している。さらにカルメン役のアリシア・ルビオは恋人ということです。監督と俳優が互いに知りすぎているのは、時にはマイナスにはたらくことも懸念されたが杞憂に過ぎなかった。 

(本作撮影中のアレバロ監督)

            

                      

 ★ベネチア映画祭2016「オリゾンティ」部門の女優賞受賞者ルス・ディアス談、「自分の名前が呼ばれたときには思わず涙が出てしまいました」と語っていたルス・ディアス、1975年カンタブリアのレイノサ市生れ、女優、監督。舞台女優として出発、1993年『フォルトゥナータとハシンタ』が初舞台、映画、テレビで活躍。チュス・グティエレス『デリリオ―歓喜のサルサ―』(ラテンビート2014)に出演、他にジャウマ・バラゲロ、ハビエル・レボージョなどの監督とコラボしている。2013 Porsiemprejamón で短編デビュー、脚本も手がけている。ただし、「何よりもまず、私は女優」ときっぱり。

 

   

(ルス・ディアスとアントニオ・デ・ラ・トーレ、映画から)

 

★二人の主役、アントニオ・デ・ラ・トーレは1968年生れ、ルイス・カジェホは1970年生れと監督より一回り年上であり、それぞれ映画デビューも早い。ゴヤ賞では主役二人がダブルで主演男優、助演にマノロ・ソロ、新人にラウル・ヒメネス、主演女優にルス・ディアスと5人もノミネートされた。特にマノロ・ソロの演技を評価する批評家が多く、昨年のダビ・イルンダインの“B, la pelicula”に続いて2回めのノミネーションであるが、長い芸歴に比して少ない印象を受ける。脇役に徹しているせいか日本での知名度は低いが、『パンズ・ラビリンス』『プリズン211』『ビューティフル』『カニバル』、最近の『マーシュランド』ではフリーの新聞記者を演じていた。また、デ・ラ・トーレはフェロス賞2017の総合司会を務めることになっている。

 

   

             (中央がマノロ・ソロ、映画から)

    

 追加 : 邦題 『物静かな男の復讐』 で ネットフリックス配信されました。