金のビスナガ受賞作品、カルロス・マルケス=マルセ*マラガ映画祭2019 ⑬ ― 2019年04月11日 15:33
カルロス・マルケス=マルセの「Els dies que vindran」が3賞
★カルロス・マルケス=マルセの長編第3作「Els dies que vindran」が、作品賞金のビスナガ・監督賞、主役のマリア・ロドリゲス・ソトが女優賞と、大賞3冠を受賞しました。今回は特別栄誉賞に時間を割き、作品紹介ができないまま閉幕してしまいました。これから何作か受賞作品をアップしてお茶を濁すことにします。「金のビスナガ」賞は、スペインとラテンアメリカ諸国に分けて与えられる。金賞は作品賞だけで、その他は銀賞です。
★まずスペイン製作の「金のビスナガ」受賞作品から。カルロス・マルケス=マルセ(バルセロナ1983)は、2014年のデビュー作「10.000 km」に続いて2度目の受賞となりました。新作も第1作と同じ若いカップルが主人公、雰囲気が似通っている印象は、主役の一人が監督の友人でもあるダビ・ベルダゲルということに関係しているかもしれません。第1作は泣いたり笑ったりと観客の心をつかみましたが、新作も観客と審査員を虜にできたようです。言語はカタルーニャ語で字幕入り上映でした。因みに第2作「Tierra firme」は、セビーリャ映画祭2017のオープニング作品、ASECAN(アンダルシア・シネマ・ライターズ協会)賞を受賞している。
(マリア・ロドリゲス、監督、ダビ・ベルダゲル、マラガ FF 2019フォトコールから)
* 第1作「10.000 km」と監督紹介記事は、コチラ⇒2014年04月11日
* 第2作「Tierra firme」の紹介記事は、コチラ⇒2017年11月07日
「Els dies que vindran」(「Los días que vendrán」)
製作:Lastor Media / Avalon P.C. 協賛ICAA / ICEC 参画 Movistar+ / TVE / TVC
監督・脚本・編集:カルロス・マルケス=マルセ
脚本:クララ・ロケ、コラル・クルス
撮影:アレックス・ガルシア
編集:オスカル・デ・ジスペルト、フリアナ・モンタニェス、アナ・プファッフ(パフ)Pfaff
音楽:マリア・アルナル
プダクション・デザイン:アナ・ポンス=フォルモサ
メイクアップ&ヘアー:ダナエ・ガテル、ヘスス・マルトス
製作者:トノ・フォルゲラ、セルジ・モレノ、マリア・サモラ
データ:製作国スペイン、カタルーニャ語、2019年、ロマンティック・コメディ、94分、スペイン公開2019年6月28日予定、配給元Avalon D. A
映画祭・受賞歴:ロッテルダム映画祭2019正式出品(1月31日上映)、第22回マラガ映画祭2019正式出品3月20日上映(作品賞・監督賞・女優賞受賞)、D'A映画祭(バルセロナ)正式出品5月4日上映予定
キャスト:マリア・ロドリゲス・ソト(妻ビル)、ダビ・ベルダゲル(夫リュイス)、ルぺ・ベルダゲル・ロドリゲス(娘ソエ)他多数
プロット:30歳のビルはジャーナリスト、32歳のリュイスは弁護士、妊娠に二人が気づいたとき、まだ付き合い始めて1年しか経っていなかった。子供は欲しいが今ではない。どうしたらいい? カメラは9ヵ月間この若いカップルの思いがけない体験を見守っていく。子供を生むという重大な推移、彼らの怖れ、喜び、期待、落胆、特に日に日に大きくなっていく妻の現実を細やかに追っていく。二人が三人になるということはどういうことかをカップルは学ぶことになる。主役を演じたカップルは実生活でも夫婦であり、ベビーは一人娘である。 (文責:管理人)
(ベビーは欲しいが、今ではないと、逡巡するビルとリュイスの夫婦)
★プレス会見での監督談話を要約すると「アイデアは『Tierra firme』撮影中に、ベルダゲルから父親になるという知らせを受けたときに閃いた。ストーリーは現実に支えられているが、勿論フィクションです。ドキュメンタリーの部分も含んでいるが、妊娠と同時進行で撮影していったので、費やした日数は50日間ほどだが、結局1年以上かかってしまった。舞台となった家屋も彼らの自宅で、彼らは同じマンションの別の部屋に引っ越してもらった。映画の中に現れるベビーは彼らの娘ルぺだが映画ではソエにした。もう2歳になっている。お飾りでない、仕掛けもせずに、父親になる過程を不自然でなくフィルターを掛けずに描こうとした」ということになる。ただ観客は少し混乱しますよね。
(本作のアイデアを明かすマルケス=マルセ監督とダビ・ベルダゲル、3月20日のプレス会見で)
★別のインタビューだが「舞台女優のベルダゲルの奥さんが、妊娠したことで舞台に出られなくなってしまった。つまり失業してしまった」と。「ドキュメンタリーの部分も含んでいる」というのは、出産シーンは、彼女の両親の友人のカメラマンが撮ったホーム・ビデオの由、それを作中に滑り込ませていることを指しているようです。さすがに友人の妻の分娩シーンは撮れなかったと。彼女の母親は教師で、生徒たちに「赤ちゃんはどこからやってくる」みたいな授業をしていて、その教材にしようと考えたらしい。タイトルもそこから思いついたということでした。
(銀のビスナガ監督賞を受賞したマルケス=マルセ)
★友人の妻の失業対策のために撮ったわけではないでしょうが、結果的にはマリア・ロドリゲスに「銀のビスナガ」女優賞がもたらされ、彼女は大きなお腹を抱えて約50日間頑張った甲斐があった。「生まれた娘は家宝です」とロドリゲス、トロフィーは大先輩のスシ・サンチェスの手から受け取りました。来年のゴヤ賞まで人気が持続すると新人女優賞のカテゴリーになる。マルセル・バレナの実話を映画化した『100メートル』(16、Netflix)、カタルーニャTV3シリーズ「El café de la marina」(14)ほか短編に出演している。主に舞台に軸足をおいているようだが、今回の受賞で変わるかもしれない。
(銀のビスナガ女優賞プレゼンターのスシ・サンチェスと抱き合うマリア・ロドリゲス)
(受賞スピーチをするマリア・ロドリゲス)
★ダビ・ベルダゲル(ジローナ1983)は、カルラ・シモンのデビュー作『悲しみに、こんにちは』に出演、孤児になってしまった姪を引き取って育てる養父役で、ゴヤ賞2018助演男優賞を受賞している。本作は第20回マラガ映画祭2017の作品賞受賞作品、こちらも言語はカタルーニャ語でした。ベルダゲル自身も母語はカタルーニャ語です。他カルロス・マルケス=マルセのデビュー作「10.000 km」で、ゴヤ賞2015新人男優賞ノミネート、ガウディ賞男優賞を受賞している。
(金のビスナガ賞2014受賞の「10.000 km」のポスター)
最近のコメント