イシアル・ボリャインの新作「Soy Nevenka」*サンセバスチャン映画祭2024 ③2024年07月20日 16:04

     イシアル・ボリャインの「Soy Nevenka―セクション・オフィシアル①

 

       

  

★サンセバスチャン映画祭SSIFF「セクション・オフィシアル」にノミネートされたスペイン映画はイシアル・ボリャイン以下4作、全体像がはっきりするのは、年によって違いがあり、今年は8月に入ってからと思います。まずはスペイン映画を1作ずつアップしていきます。ボリャイン監督の「Soy Nevenka」は、今世紀初頭レオン県ポンフェラダ市で実際に起きた、スペイン最初のセクハラ訴訟、いわゆる「ネベンカ事件」に材をとっています。約20年後の2021年、既にマリベル・サンチェス≂マロトによって、ネットフリックス・ドキュメンタリー『ネベンカ・フェルナンデス:沈黙を破いて』Nevenka : Breaking the Silence3話)としてストリーミング配信されており、セクハラ事件のみならず、地方都市が抱える複雑な政治的体質を浮き彫りにしています。スペイン#metoo 運動の先駆けとなった事件を、SSIFF2021で「Maixabel」がノミネートされたボリャインがどのように料理するか期待したい。

Maixabel」マイシャベルの紹介記事は、コチラ20210805同年0921

 

      

     (TVミニシリーズ「Nevenka」ネットフリックス・ドキュメンタリー)

 

Soy Nevenka / Im Nevenka

製作:Kowalski Films / Feelgood Media / Nva Peli AIE / Gorbo Produzioni / 

   Movistar Plus

監督:イシアル・ボリャイン

脚本:イサ・カンポ、イシアル・ボリャイン、ネベンカ・フェルナンデス

音楽:シャビ・フォント

撮影:グリス・ホルダナ

編集:ナチョ・ルイス・カピリャス

美術:ミケル・セラノ

製作:コルド・スアスア、フアン・モレノ、ギジェルモ・センペレ

 

データ:製作国スペイン、2024年、スペイン語、100分、撮影地サモラ、ビルバオ、2024129日クランクイン、総予算460万ユーロ(ICAA援助120万ユーロ含む)、配給ブエナビスタ・インターナショナル、公開スペイン927

映画祭・受賞歴:第72回サンセバスチャン映画祭2024セクション・オフィシアル

 

キャスト:ミレイア・オリオル(ネベンカ・フェルナンデス)、ウルコ・オラサバル(イスマエル・アルバレス市長)、リカルド・ゴメス、カルロス・セラノ、ルシア・ベイガ、ルイス・モレノ、ハビエル・ガジェゴ、メルセデス・デル・カステーリョ、フォント・ガルシア、他

 

ストーリー2000年、24歳になったネベンカ・フェルナンデスは、ポンフェラダ市議会の財務担当の議員になった。政治的にも個人的にも自分の意思を貫くことに慣れていたイスマエル・アルバレス市長から執拗な性的嫌がらせに苦しんでいた。ネベンカは非常に高い代償を払わなければならないことを覚悟して告訴することを決意する。所属する国民党の議員でネベンカをサポートする人はなく、ポンフェラダの市民も市長側にまわり背を向けた。孤独な闘いに勇気をもって臨んだ若い女性のスペイン#Me Too 運動のパイオニアとなった実話。司法闘争には勝利したが、社会闘争には敗れたと評されたネベンカ事件の性差別、権力の力学が語られる。

    

      

       (撮影中の監督、ミレイア・オリオル、ウルコ・オラサバル)

 

★撮影がポンフェラダでなくサモラ市で行われたのは、ポンフェラダ市からのプロジェクトへの撮影許可が下りなかったためである。製作者は「近隣のサモラ市が協力を提供したのでサモラでの撮影を選択した」と語っている。この件に対してポンフェラダの社会労働党PSOEはポンフェラダ市を批判し、市長に説明を求めたと報じられた。2023年当時、ポンフェラダの市議会議員はPSOEが多数派を占めていたが市長は国民党PP であり、ネベンカ事件のしこりは解消されていない。

   

      

★コンペ部門にノミネートされたボリャイン監督は、「サンセバスチャン映画祭に行くのが楽しみです。今年は激戦が予想されますが、ネベンカも私たちに同行します。私たちにとっても、ネベンカにとっても、それはエモーショナルなことです」とインタビューに応えている。前作「Maixabel」では、バスク映画イリサル賞を製作者を代表してコルド・スアスアが登壇してトロフィーを受け取った。彼は新作も手掛けている。

 

ネベンカ・フェルナンデス・ガルシア19741025日生れ、経済学者、政治家(ポンフェラダ市議会議員19992000)。国民党のイスマエル・アルバレス市長に対してセクハラ行為で有罪判決を下した最初のスペイン人として知られている。2017年に台頭したスペインの#Me Too 運動のパイオニアとして記憶されることになる。サンパブロCEU大学経済学の学位取得、マドリードのコンプルテンセ大学で修士号取得。1999年の地方選挙で国民党より出馬して当選、ポンフェラダ市議会の財務担当の議員に就任。

   

   

  (ネベンカ・フェルナンデス、ネットフリックス・ドキュメンタリーから)

   

  

           (イスマエル・アルバレス市長)

 

ミレイア・オリオル1996年、カタルーニャのアルヘントナ生れ、女優。2018年ダビ・ビクトリのホラー「El Pacto」(『ザ・パクト~白蜘蛛の呪縛』)にベレン・ルエダの娘役で長編デビュー、ペドロ・コリャンテスの「El arte de volver」(20)でマカレナ・ガルシアやナチョ・サンチェスなど若手と共演する。カタルーニャTVシリーズ「Les de l'hoquei The Hockey Girls」(192026話)出演で認知度が上がり、セルヒオ・G. サンチェスのホラー・ミステリー『Alma / アルマ』(20229話)のアルマ役に繋がった。コメディ「La mirada de la Fiona」(236話)でもフィオナ役に起用されている。

   

    

        (ネベンカに扮したミレイア・オリオル、フレームから)

 

ウルコ・オラサバル1978年ビルバオ生れ、俳優、フィルム編集者。代表作はボリャインの「Maixabel」のルイス・カラスコ役、ゴヤ賞2022助演男優賞を受賞した。ハコボ・マルティネスのホラースリラー「13 exorcismos」(22)、パウラ・オルティスの「Teresa」(23)では、ブランカ・ポルテーリョが扮したアビラのテレサの父親役を演じた。アイトル・ガビロンドの「Patria」(208話)他、TVシリーズ出演も多い。

        

        

   

             (アルバレス市長に扮したオラサバル、フレームから)

 

イシアル・ボリャイン:上述の「Maixabel」ほか、『テイク・マイ・アイズ』(03)、「Mataharis」(07)、「Yuli」(18)の監督の主なキャリア&フィルモグラフィー紹介は、「En tierra extraña」(14)、『オリーブの樹は呼んでいる』(16)、「La boda de Rosa」(20)などでアップしていますので割愛します。

      

   

『オリーブの樹は呼んでいる』の紹介記事は、コチラ20160719

La boda de Rosa」の紹介記事は、コチラ20200321

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