ゴヤ賞2017授賞式*あれこれ落穂ひろい ⑫2017年02月11日 17:48

         男女平等をアピールした栄誉賞受賞者、アナ・ベレン

     

              

                 (勢揃いした受賞者たち)

 

★授賞式はマドリード・マリオット・オーディトリウム・ホテルで24日(土)2200より少し遅れて開始されました。スペイン国営テレビが1800から赤絨毯に現れるシネアストたちを中継して盛り上げるという大イベントでした。ベスト・ドレッサーにも選ばれた栄誉賞受賞のアナ・ベレンは 2011年に他界したスペインのデザイナー、ヘスス・デル・ポソが創設したデルポソDelpozonoブランドのオフホワイトのドレスで赤絨毯を踏みました。一緒だったのはアトリエ・ヴェルサーチがご贔屓の黒い衣装を纏ったペネロペ・クルス、昨年も同じヴェルサーチのミラノ・ファッションでした。今回は夫君ハビエル・バルデムは欠席、アルモドバルと旧交を温めていたようです。

 

      

       (アルモドバルとぴったり肌を被った黒いドレスのペネロペ・クルス)

 

★授賞式は約3時間と時間短縮がアナウンスされていたように、総合司会者のダニ・ロビラの皆さん「おやすみなさい、そして名画を」(0057)で無事お開きとなりました。受賞者が友人、両親、祖父母、叔父さん叔母さんなど長々と感謝の辞を連ねる場合には、壇上に控えるフィルム・シンフォニー・オーケストラが警告の足踏みを始めるとなっていました(笑)。茶目っ気のある魅力的な素質がぎっしり詰まったダニ・ロビラの進行ぶりを「よくやった」と褒める人が多かったようです。開会前に「政治の話は10秒だけ」と冗談をとばしていた通り、政治的発言を自らに封じたこともあったかもしれない。

 

           

              (3度目の総合司会者ダニ・ロビラ)

 

★一番会場が盛り上がったのは、もちろん栄誉賞でした。プレゼンターは3人の監督、マヌエル・ゴメス・ペレイラ、フェルナンド・コロモ、ホセ・ルイス・ガルシアと実に豪勢でした。アナ・ベレンは手にしたメモを見ながら「私は約50年前から映画界で仕事をしているが、女性シネアストは正当に評価されていない」というようなことをスピーチした。1972年に結婚した作曲家で歌手のビクトル・マヌエルに触れて「彼なしの人生はなかった」と感謝の言葉、ビクトルは娘さんと赤絨毯を踏みました。栄誉賞は一度きり、さすがに時間制限はなかったのか長かった。最後に「健康と映画を祝して」で締めくくりました。

 

   

    (左から、アナ・ベレン、M・ゴメス・ペレイラ、F・コロモ、JL・ガルシア)

 

★初めてではないがアカデミー映画会長が女性ということもあって、男女平等、機会均等が叫ばれ、クカ・エスクリバノのように「もっと女性にチャンスを」と編み込んだショールを纏って赤絨毯を踏んだ女優も現れました。活躍が目立つようになったのはここ十年くらいで、第1回ゴヤ賞1987では女性受賞者は女性でしか貰えない主演・助演女優賞だけでした(新人賞は未だなかった)。初めて監督賞を受賞したのは、ピラール・ミロ1997『愛は奪った』)、次がイシアル・ボリャイン2004『テイク・マイ・アイズ』)、そしてイサベル・コイシェ2006『あなたになら言える秘密のこと』)と続きました。三人とも来日しています。ノミネーションまで広げるなら昨年のパウラ・オルティス2回のグラシア・ケレヘタなどがあげられます。最近来日予定のチュス・グティエレス、今回新人監督賞ノミネートのネリー・レゲラ、他のカテゴリーで自作がノミネーションされている監督では、マリア・リポルマリナ・セレセスキーイサ・カンポと層の厚さを感じさせます。また例外的なのは衣装デザイン賞とメイクアップ&ヘアー賞の2部門、受賞者の半分以上が女性です。

 

    

                (クカ・エスクリバノ)

 

                  ラウル・アレバロの執念が実った夕べでした!

 

★最初から決定していたのではないかと思われたのが作品賞のTarde para la iraの受賞でした。制作会社はLa Canica Filmsベアトリス・ボデガスラウル・アレバロ監督でした。『E.T.』やブルース・リーに夢中だった少年が撮った映画は、構想9年、俳優の仕事を掛け持ちしながらの脚本執筆、資金集めと執念のデビュー作でした。国営テレビの資金援助は受けたが民放TV局からは受けずに、200万ユーロで撮ったことがアカデミー会員の心象を好くした一因かもしれない。今までに培った人間関係なくしてこの映画は完成させられなかっただろうことは、キャスト、スタッフの顔ぶれをみればわかることす。新人監督賞、オリジナル脚本賞、マノロ・ソロが助演男優賞と4賞を制した。『ゴモラ』(08、マッテオ・ガローネ)、『わらの犬』(71、サム・ペキンパー)やダルデンヌ兄弟、ジャック・オーディアール、カルロス・サウラの映画がミックスされているそうです。

 

    

            (ベアトリス・ボデガスとラウル・アレバロ)

 

★監督賞ノミネーションはオール男性でしたが、作品賞にはベアトリス・ボデガスの他、『ジュリエッタ』のエステル・ガルシアメルセデス・ガメロは『スモーク・アンド・ミラー』と Que Dios nos perdone 2作、同じく Que Dios nos perdone マリエラ・ベスイエブスキーUn monstruo viene a vermme ベレン・アティエンサという具合に、男性陣に交じって女性プロデューサーの進出が顕著でした。

 

★以前から本作を本命としていた「エル・パイス」の批評家カルロス・ボジェロ、辛口でめったに褒めない批評家として嫌われ者だが、今回は「この胡散臭い、過激で、見る人を不安にさせる、地方都市の風土をぎっしり詰め込んだ映画が受賞することに、何ら異論の余地はない」とアレバロの並外れた活力、透明な才知を称賛しています。それが即 Un monstruo viene a vermme  Ocho apellidos vascos<トレンテ・シリーズ>のような興行成績につながらない現状が悩みの種かもしれません。

         

        ずっとうるうるだったフアン・アントニオ・バヨナ監督

 

★どうしてフアン・アントニオ・バヨナがうるうるだったかというと、自身の監督賞以外に撮影・編集・美術・録音以下8賞も受賞してしまったから。その度に壇上の受賞者から感謝の言葉が贈られるので涙の乾く暇がなかったというわけでした(笑)。なかにはうんざり組も大勢いたことでしょうが、何しろ2016年の興行成績が国内だけでダントツの2600万ユーロ(観客動員数450万人)ですから大目にみなければなりません。4位の『バンクラッシュ』、6位の『KIKI~』以下は桁が違います。2位、3位、5位はノミネートされていませんでした。

 

           

          (涙腺が開いたままのフアン・アントニオ・バヨナ

 

★フランコ体制時代に一家でバルセロナ市郊外のベッドタウンに移り、『スーパーマン』に魅せられながら育ったバヨナ少年も41歳、スペイン人俳優を起用せず英語で撮った作品で効率よく9賞をゲットした。彼の涙に感染した来場者も多かったようだが、先のボジェロ氏曰く「映画を見て泣いた人は僅かだったのでは」とワサビの効きすぎた批評、だから嫌われる。本作は『永遠のこどもたち』『インポッシブル』に続く「母子三部作」の最終作、第2作目は世界規模の成功を収めて、危機に瀕したスペイン経済の外貨獲得に寄与した。政府もその貢献度に報いるため2013年度の「国民賞」(映画部門)を贈った。これは今後とも破られることがない最年少受賞でしょう。これからのスペイン映画界を背負う存在なのは間違いありません。本作の日本公開は初夏6月の予定です。

 

       エンマ・スアレス、主演・助演のダブル受賞は30年ぶりの快挙

 

エンマ・スアレスダブル受賞に違和感を覚えたファンも少なからずいたことでしょう。とりあえずアルモドバルが無冠にならずほっとした関係者がいたに違いありません。アルモドバルも登壇しましたが、女優賞に監督まで登壇するのはあまり例を見たことがありません。ダブル受賞は第2回ゴヤ賞1988ベロニカ・フォルケ以来のこと、フェルナンド・コロモのコメディLa vida alegre で主演、ガルシア・ベルランガの同じくコメディ"Moros y Cristianes"で助演を受賞しました。女優男優を問わずノミネーションは結構おりますが受賞までいかない。アルモドバル嫌いはスアレスの魅力的な演技を褒めたついでに「映画は空虚なまやかしの悲劇」とくさし、ペネロペ・クルスの演技は申し分なかったと、無冠に終わったフェルナンド・トゥルエバに気配りした。何事によらず十人十色です。

 

     

            (ゴヤの胸像をを両手にエンマ・スアレス)

 

★主演男優賞のロベルト・アラモは、三大映画賞(フォルケ、フェロス、ゴヤ)を制したことになりますが、これまた『スモーク・アンド・ミラー』の「エドゥアルド・フェルナンデスの演技は完璧だった」と、暗にアラモの三冠に異を唱える意見も聞かれました。アラモ登壇の折には若いロドリゴ・ソロゴイェン監督もバヨナと同じく目を潤ませていました。

 

      シルビア・ペレス・クルスの歌曲賞「Ai, ai, ai」に会場盛り上がる

 

エドゥアルド・コルテスのミュージカル・ドラマ Cerca de tu casa の中で、シルビア・ペレス・クルスが歌うAi, ai, aiが歌曲賞に輝いた。経済危機のあおりを受けて二人とも失業してしまった若い夫婦の物語。彼女はこの妻ソニア役で新人女優賞にもノミネートされていた。家賃が払えずアパートを追い出され、仕方なく10歳の息子を連れて親の家に転がり込むが、両親も・・・という切ない話ですが、ゴヤの胸像を胸にシルビアが「耐えられないのは住む家のない人、住む人のいない家」と「アイ・アイ、アイ」の一節を歌った。これは出席者の心を揺さぶる瞬間だったとか。 

          

        (「アイ・アイ、アイ」を口ずさむシルビア・ペレス・クルス)

 

★残念ながら無冠に終わった『KIKI~』組の皆さん、ビシッときめた白装束でカメラに収まったパコ・レオン監督を中央にベレン・クエスタ(新人女優賞)とカンデラ・ペーニャ(助演女優賞)の曲者3人組。 

       

作品賞候補者の5監督がスペイン映画の可能性を語り合う*ゴヤ賞2017 ⑪2017年02月08日 13:34

    「消費税増税以外のことも話し合いたい・・」とフアン・アントニオ・バヨナ

 

★授賞式を目前にした128日(土)の午前中、作品賞ノミネーションの5監督が一堂に会する座談会が「エル・パイス」紙の編集室でもたれました。ガラ以前にアップするつもりで準備しておりましたが、順序が逆になってしまいました。今では恒例になっている座談会のようですが、1961年生れのアルモドバルが最年長と、平均年齢も下がって世代交代の印象を受けました。増税問題(7%から21%の増税)に対する考えも少しずつニュアンスが異なり、それがとりもなおさず映画制作の違いにもなっているようです。出席5監督とは、以下の5人です。

 

     

   (左から、J.A.バヨナ、R.アレバロ、R.ソロゴイェン、A.ロドリゲス、P.アルモドバル)

 

ペドロ・アルモドバル(カルサダ・デ・カラトラバ194967

 Julieta 『ジュリエッタ』(作品・監督賞以下7個)

アルベルト・ロドリゲス(セビーリャ197145

 El homre de las mil caras”『スモーク・アンド・ミラーズ』(作品・監督賞以下11個)

ロドリゴ・ソロゴイェン(マドリード198135

 Que Dios nos perdone”“May God Save Us”(作品・監督賞以下6個)

ラウル・アレバロ(モストレス197937

 Tarde para la ira”“The Fury of a Patient Man”(作品・新人監督賞以下11個)

フアン・アントニオ・バヨナ(バルセロナ197541

 Un monstruo viene a verme”“A Monster Calls”(作品・監督賞以下12個、西米英カナダ)

 

J.A.バヨナ「消費税増税以外のことも話し合いたい・・」とまず口火を切った。彼はスペイン映画の危機は増税だけが問題ではなく、もっと学校教育など社会構造的な問題があると常日頃から発言しています。それに対してアルモドバルは、それは勿論そうだがこれを除外することはできない、小さな問題ではないからと主張する。「大きい問題には違いないがそれが唯一ではない・・・フランスでは興行成績が落ち込んだとき、文化大臣と製作者たちが会合をもって改善策を話し合った。しかしスペインでは決してそうならない」とバヨナ。「それは一理あるが、私たちはフランスにいるわけじゃないから、両国のやり方を比較しても始まらない。フランス人は過度の自国崇拝主義者だし、フランス映画はすでに減価償却している。私たちは観客にスペイン映画を好きになってくれとは頼めない。子供のときからスペイン映画はスペイン的特質を誇張したものばかりだと蔑む意見を聞かされてきた」とアルモドバル。ごもっともな意見です。「私たちは観客に何かを要求すべきじゃないが、政府には言うべきことは言うべきです」と一番若いR.ソロゴイェン、増税と闘う必要があるという立場をとった。

 

 

(左から、ロベルト・アラモ、ソロゴイェン、デ・ラ・トーレQue Dios nos perdone

 

    「財政赤字が解消されたら消費税を見直します」とメンデス・デ・ビゴ文化相

 

★文化にかける大幅消費税IVA増税問題は下火になる気配は全くない。文化相メンデス・デ・ビゴは、「財政赤字が解消されたら見直します」と口約束しているが、いつ「解消」されるのか。財政はかなり上向きになってきているようだが厳しさは変わらない。それに財務省がおいそれと首をたてに振るとは思えない。

 

バヨナが学校教育の在り方に拘るのは、「文化などにお金をかける必要はないと考えていた軍事独裁政が40年間も続いたから、70年前には読み書きができない人々がたくさんいた。このような悲しむべき歴史的な遺産を乗り越えて、最近の数十年で飛躍的な向上を遂げた。政府の消費税減税などはうわべを取り繕っているだけ。スペイン映画の問題は、学校教育や統治者たちの姿勢にかかっている」と主張。それに対して「フランスでは、文化の保護と輸出がある程度一致しているから恵まれている」とソロゴイェン。伝統というものは革新以上に隅に置けない。

 

★「質問があるんですが、『無垢なる聖者』(84、マリオ・カムス)が公開されたときは興行的にも成功した。うちは中流家庭に属していて父や叔父たちから素晴らしい映画だったとずっと聞かされていました。僕は小さかったから当時は見ていませんが、現在公開してもほんのわずかしか観客は集まらないのではないか。父の世代も今見たらテンポが遅く長く感じると。庶民は退行したのでしょうか」とR.アレバロ。「映画の好みが変化してしまった。私が思うに悪いほうにね。この変化をもたらしたのが私たちなのかどうか分からないし、元に戻す方法も分からない」とアルモドバル。「観客は退行しているようです。『無垢なる聖者』を再公開しても切符売り場には足を運ばないかもしれない」とアレバロ

 

        

             (Tarde para la ira”撮影中のアレバロ

 

★「変化はスペインだけのことではなく世界的現象、情報は増え続けるが知識は減る一方、デジタル情報ばかりで何を見たらよいのか教えてくれない。作家性の強い映画を作るには覚悟がいる。第一にすべきことは学校が映画館に連れていくこと、私たちは『タシオ』(84、モンチョ・アルメンダリス)や『無垢なる聖者』を見て大きくなったんだ」と学校教育の重要性に拘るバヨナ監督でした。日本でもテレビがなかった時代には、教師に引率されて映画館に出かける「映画教室の日」があって、ディズニーのアニメ『ピノキオ』や『ダンボ』、チャップリン映画を見に連れて行った。中学生にはイングリッド・バーグマンがジャンヌに扮した『ジャンヌ・ダーク』(48、ヴィクター・フレミング)などが選ばれていた。

 

     「映画は映画館の椅子に座って見てほしい」と言うけれど・・・

    

★スペインではラテンアメリカや欧州の一部で事業展開しているモビスターMovistar(テレフォニカ傘下の携帯電話事業会社)の加入者が2200万人と多く、米国のオンラインDVDレンタル配信会社ネットフリックスNetflixDVD4200万枚保有している)やアマゾンは少ない。司会者より両者を競争させたらスペインの映画産業は変化するだろうかと質問が投げかけられた。「莫大な資金投入が産業界の変革を促すかどうか分からない」と懐疑的なA.ロドリゲス。お金が産業界変革の全てではない立場のようです。「現実は、若い人々が以前のようには映画館に出かけなくなった。演劇も見なくなったし本も読まなくなった。ほかの分野、例えばテレビゲームだ。米国の大学生にスピーチしたとき感じたことだが、彼らもビリー・ワイルダーのような作品をよく知っていると思えなかった」とアルモドバル。映像媒体の多様化は世界規模です。

 

      

          (ロドリゲス『スモーク・アンド・ミラーズ』から

 

★「デジタル・プラットフォームの導入は有力なテレビチャンネルの寡頭政治を少しはセーブする」とソロゴイェン。映画の成功が有力なテレビチャンネルに握られている現状は、作家性の強い映画作りをしている監督には不利にはたらく。この現状を少しでも和らげるにはネットフリックスなどの到着は役に立つかもしれない。映画は映画館のスクリーンで見るという世代は、もはや絶滅危惧種なのかもしれませんが、同じ作品でもスクリーンで見るのとテレビとでは雲泥の差があることを強調したい。

 

★「プラットフォームの到着に気をもんでいる。中流階級の人は既に映画館で見なくなっているばかりかこのプラットフォームで見ている。映画館で見るのはスペクタクル映画だけと考えるのは間違っている。観客はスーパーヒーローや特殊効果だけを見に行くわけではない。私たちの作品を映画館で見てほしい。映画愛を育てる教育が必要なのです」とバヨナ。映画を「映画館の椅子に座って見ることは独特な素晴らしさがある」と観客の醸しだす雰囲気を楽しむのがロドリゲス。「反対に携帯を持ち出してみている観客に注意が散漫になる」と一部の観客の無作法を口にするソロゴイェン。「少し前、映画好きの学生たちと一緒に見ていて気付いたことだが、彼らは2000年以前の映画を見ていない」と驚きを隠さないアレバロ。「それは観客の罪ではなく現代社会のせいだ」とロドリゲス。「つまるところ、観客は見たい映画を自由に選んでいいのだと思う。それに応じて私たちは映画作りをしている。できれば私の作品を見てほしいものだが」とアルモドバルがケリをつけました。

 

       「最終候補5作品のどれも見ていない」とマリアノ・ラホイ首相

 

★政治家は映画館に足を向けない、忙しくてそんな時間はないからと。その筆頭がマリアノ・ラホイ首相です。「最終候補5作品のどれも見ていない」ときっぱり。「時間が取れない、時間があれば小説を読んでいる。映画は自宅か事務所のテレビで見ている」が、まだ候補作はどれも見ていない。時間があっても見ない派ですね。あれば小説を読むと言ってるから。とにかく伝統的に国民党PPは社労党PSOEほど文化にお金を使いたがらない。今年のガラにはメンデス・デ・ビゴ文化相の姿もあったが、壇上から批判されたり暗に皮肉を言われたりするために忙しい時間はさけないというのがホンネでしょう。以前は当日にマドリードを離れて海外出張に出かける文化担当相もいたほどです。

 

★スペイン映画は民間のテレビ局の協力なしには立ちいかなくなっている。「手の負えなくなっているのは、テレビ局がスペイン映画のプロデューサーたちで占められているだけでなく、スペイン映画の屋台骨になっている・・・スペイン映画が民放用の映画に変化してしまったことです」が、それは必ずしも「民放だけの罪ではない」とバヨナ、「勿論彼らの罪ではない。少なくとも控えめなら、観客育成に役に立つからね」とアルモドバル。もはやテレビやスマホなどで映画を見るデジタル世代の時代になったということです。

  

      

          (バヨナUn monstruo viene a verme”をバックに

 

          皆さん、スピルバーグの映画はいかがですか?

 

なかなか映画の話にならない。そこで「まだ映画の中身について話し合っていません。そろそろ私たちが作った映画の話、どうしてフィルモテカ(フィルム・ライブラリー)や映画アカデミーが重要なのか?」というバヨナの提案で、やっと核心にたどり着きました。アレバロの「そうですね、始めましょう、スピルバーグ映画はどうですか」に一同大笑い。「とてもいいよ」とバヨナ。「僕がとっても好きなのはLas amigas de Agataと、素晴らしかったのは『KIKI~愛のトライ&エラー』です」ソロゴイェン。前者はライア・アラバート、アルバ・クロス、ほか女性4人が監督したカタルーニャ語の映画、ガウディ賞2017にノミネートされた作品です。パコ・レオンの『KIKI~』は残念ながら無冠でした。アレバロMaría(y los demásLa próxima pielを挙げました。

 

★「ノミネートの有無に関係なく挙げるとEsa sensaciónLa próxima piel”それに君たちの作品だ。年に3作か4作はとても興味を引く映画に出会う」とアルモドバル。前者はノーマークですが、フアン・カサベスタニー以下、男性3人が監督したコメディです。ロッテルダム映画祭でワールド・プレミア、マラガ、バルセロナ、リオなどの映画祭に出品されています。ロドリゲスバヨナは具体的な作品名を挙げませんでしたが、ロドリゲスは「1作品に10個とか12個とかノミネーションが集中するのは問題」と不透明なノミネーションの在り方に警鐘を鳴らしました。これは誰が見ても異論なく問題です。それぞれ撮影や編集の苦労話、サプライズに触れていましたが割愛です。

 

    

            (アルモドバルの『ジュリエッタ』から)

 

★既に結果は発表になっておりますが、どのくらい字幕入りで見られるか、あるいは見られないか、楽しみにしています。バヨナのUn monstruo viene a verme20176月公開が決定しているようです。『インポッシブル』の監督だし、オリジナル言語が英語ですから6月は遅すぎるくらいです。ゴヤ、フォルケ、フェロスとスペインの三大映画賞を制したアルバロのTarde para la iraはどうでしょうか。

  

第31回ゴヤ賞2017*結果発表 ⑩2017年02月05日 20:33

      今宵の主人公はラウル・アレバロとフアン・アントニオ・バヨナでした!

   

 

        (アカデミー会長イボンヌ・ブレイクと副会長マリアノ・バロッソ)

Tarde para la ira作品賞と新人監督賞Un monstruo viene a vermeが監督賞と大賞を分け合いました。終わってみれば前者がノミネーション11個で4個ゲット、後者が最多ノミネーション129個と2作品に集中しました。エンマ・スアレスが主演と助演の二つをものにして、ゴヤ賞1996、ピラール・ミロの『愛は奪った』で主演女優賞を受賞して以来、遠ざかっていたガラで20年ぶりに脚光を浴びました。まずは結果発表だけアップしておきます。

 

           

             (3度目の総合司会者ダニ・ロビラ)

 

★受賞結果は以下の通り(印は当ブログ紹介作品)

作品賞

El homre de las mil caras”“Smoke&Mirrors”『スモーク・アンド・ミラーズ』(11個)

監督アルベルト・ロドリゲス 

Julieta 『ジュリエッタ』(7個)監督ペドロ・アルモドバル 

Que Dios nos perdone”“May God Save Us”(6個)監督ロドリゴ・ソロゴイェン 

Tarde para la iraThe Fury of a Patient Man”(11個)監督ラウル・アレバロ 

  製作者:ベアトリス・ボデガス

Un monstruo viene a verme”“A Monster Calls”(最多12個、西・米・英・カナダ)

監督フアン・アントニオ・バヨナ 

 

 

(ベアトリス・ボデガスとアレバロ監督、プレゼンターはアメナバルとペネロペ・クルス)    

 

監督賞

アルベルト・ロドリゲス『スモーク・アンド・ミラーズ』

ペドロ・アルモドバル『ジュリエッタ』

ロドリゴ・ソロゴイェンQue Dios nos perdone

アン・アントニオ・バヨナUn monstruo viene a verme

 

  

   (JA・バヨナ、プレゼンターはジェラルディン・チャップリンとホセ・コロナド)

 

新人監督賞

ラウル・アレバロTarde para la ira 

サルバドル・カルボ1898, Los últimos de Filipinas”(9個)

マルク・クレウエトEl rey tuerto 

ネリー・レゲラMaría (y los demás) 

 

  

                (ラウル・アレバロ)

 

オリジナル脚本賞

ホルヘ・ゲリカエチェバリアCien años de perdón”『バンクラッシュ』

監督ダニエル・カルパルソロ 

ポール・ラヴァティEl olivo”『The Olive Tree』監督イシアル・ボリャイン 

イサベル・ペーニャ、ロドリゴ・ソロゴイェンQue Dios nos perdone

ダビ・プリドラウル・アレバロTarde para la ira 

 

 

脚色賞

アルベルト・ロドリゲスラファエル・コボス『スモーク・アンド・ミラーズ』

ペドロ・アルモドバル『ジュリエッタ』

フェルナンド・ペレス、パコ・レオンKiki, el amor se hace”『KIKI~愛のトライ&エラー』

パトリック・ネスUn monstruo viene a verme

 

   

     (アルベルト・ロドリゲス、プレゼンターはアイタナ・サンチェス・ヒホン)

 

オリジナル作曲賞

フリオ・デ・ラ・ロサ『スモーク・アンド・ミラーズ』

パスカル・ゲイニュ『The Olive Tree

アルベルト・イグレシアス『ジュリエッタ』

フェルナンド・ベラスケスUn monstruo viene a verme

 

 

                           (フェルナンド・ベラスケス) 

 オリジナル歌曲賞

ルイス・イバルスDescubriendo India’(“Bollywood Made in Spain”)

  監督ラモン・マルガレト

シルビア・ペレス・クルスAi, ai, aiCerca de tu casa”)

  監督エドゥアルド・コルテス 

セルティア・モンテスMuerte’(“Frágil equilibrio”、ドキュメンタリー)

監督ギジェルモ・ガルシア・ロペス

アレハンドロ・アコスタ、パコ・レオン他KikiMr. Ki feat Nita

  (『KIKI~愛のトライ&エラー』)

 

  

                       (シルビア・ペレス・クルス)

 

主演男優賞

エドゥアルド・フェルナンデス『スモーク・アンド・ミラーズ』

ロベルト・アラモQue Dios nos perdone

アントニオ・デ・ラ・トーレTarde para la ira

ルイス・カジェホTarde para la ira

 

 

     (ロベルト・アラモ、プレゼンターはノラ・ナバスとリュイス・オマール)

 

主演女優賞

エンマ・スアレス『ジュリエッタ』

カルメン・マチLa puerta abierta”(“The Open Door”)監督:マリナ・セレセスキー 

ペネロペ・クルスLa reina de España”監督:フェルナンド・トゥルエバ 

バルバラ・レニーMaría (y los demás)

 

 

      (エンマ・スアレスとアルモドバル、プレゼンターはマリア・ブランコ)

 

助演男優賞

カラ・エレハルデ100 metros”監督:マルセル・バレラ 

ハビエル・グティエレス『The Olive Tree

ハビエル・ペレイラQue Dios nos perdone

マノロ・ソロTarde para la ira

 

  

 (M・ソロ、プレゼンターはナタリア・デ・モリーナ、ミゲル・エラン、ダニエル・グスマン)

 

助演女優賞

カンデラ・ペーニャ『KIKI~愛のトライ&エラー』

エンマ・スアレスLa próxima piel”監督:イサキ・ラクエスタ、イサ・カンポ 

テレレ・パベスLa puerta abierta

シガニー・ウィーバーUn monstruo viene a verme

 

    

           (ゴヤ胸像を両手にしたエンマ・スアレス)

 

新人男優賞

リカルド・ゴメス1898, Los últimos de Filipinas

ロドリゴ・デ・ラ・セルナ『バンクラッシュ』

カルロス・サントス『スモーク・アンド・ミラーズ』

ラウル・ヒメネスTarde para la ira

 

   

                              (カルロス・サントス)

 新人女優賞

シルビア・ペレス・クルスCerca de tu casa

アナ・カスティージョThe Olive Tree

ベレン・クエスタ『KIKI~愛のトライ&エラー』

ルス・ディアスTarde para la ira

 

  

 (アナ・カステージョ、プレゼンターはカジェタナ・ギジェン・クエルボとマカレナ・ゴメス)

 

プロダクション賞

カルロス・ベルナセス1898, Los últimos de Filipinas

マヌエラ・オコン『スモーク・アンド・ミラーズ』

ピラール・ロブラLa reina de España

サンドラ・エルミダ・ムニィスUn monstruo viene a verme

 

 

撮影監督賞

アレックス・カタラン1898, Los últimos de Filipinas

ホセ・ルイス・アルカイネLa reina de España

アルナウ・バルス・コロメルTarde para la ira

オスカル・ファウラUn monstruo viene a verme

 

 

編集賞

ホセ・M・G・モヤノ『スモーク・アンド・ミラーズ』

アルベルト・デル・カンポ、フェルナンド・フランコQue Dios nos perdone

アンヘル・エルナンデス・ソイドTarde para la ira

ベルナ・ビラプラナジャウマ・マルティUn monstruo viene a verme

 

 

 

美術監督賞

カルロス・ボデロン1898, Los últimos de Filipinas

ぺぺ・ドミンゲス・デル・オルモ『スモーク・アンド・ミラーズ』

フアン・ペドロ・デ・ガスパルLa reina de España

エウヘニオ・カバジュロUn monstruo viene a verme

 

 

衣装デザイン賞

パオラ・トーレス1898, Los últimos de Filipinas

ロラ・ウエテLa reina de España

クリスティナ・ロドリゲスNo culpes al karma de lo que te pasa por gilipollas

監督マリア・リポル

アルベルト・バルカルセル、クリスティナ・ロドリゲスTarde para la ira

 

 

             (パオラ・トーレスは欠席、マヌエル・ブルケが代理で受け取った)

 

メイクアップ&ヘアー賞

アリシア・ロペス、ミル・カブレル、ペドロ・ロドリゲス1898, Los últimos de Filipinas

ヨランダ・ピナ『スモーク・アンド・ミラーズ』

アナ・ロペス=プイグセルベル、ダビ・マルティ、セルヒオ・ペレス・ベルベル『ジュリエッタ』

ダビ・マルティマレセ・ランガンUn monstruo viene a verme

 

  (ダビ・マルティ)

 

録音賞

エドゥアルド・エスキデ、フアン・フェロ他1898, Los últimos de Filipinas

セサル・モリナ、ダニエル・デ・サヤス他『スモーク・アンド・ミラーズ』

ナチョ・ロジョ=ビリャノバ、セルヒオ・テスタンOzzy”(アニメーション、西・カナダ)

オリオル・タラゴペーター・グロスポUn monstruo viene a verme

  

 (オリオル・タラゴ)

                        

特殊効果賞

カルロス・ロサノ、パウ・コスタ1898, Los últimos de Filipinas

ダビ・エラス、ラウル・ロマニリョスGernika. The Movie”『ゲルニカ』監督コルド・セラ

エドゥアルド・ディアス、レジェス・アバデス『ジュリエッタ』

フェリックス・ベルヘスパウ・コスタUn monstruo viene a verme

 

 

アニメーション賞

Ozzy 監督アルベルト・ロドリゲス、ナチョ・ラ・カサ

Psiconautas, los niños olvidados監督ペドロ・リベロ、アルベルト・バスケス

Teresa eta Galtzagorri”(“Teresa y Tim”)

監督アグルツァネ・インチャウラガAgurtzane Intxaurraga

 

 

 

ドキュメンタリー賞

2016, Nacido en Siria”監督エルナン・シン

El Bosco, El jardín de los sueños”(西仏)監督ホセ・ルイス・ロペス=リナレス

Frágil equilibrio 監督ギジェルモ・ガルシア・ロペス

Omega”ヘルバシオ・イグレシアス、ホセ・サンチェス=モンテス

 

 

イベロアメリカ映画賞

Anna”(コロンビア仏)監督ジャック・トゥールモンド

Desde alla”“From Afar”『彼方から』(ベネズエラ・メキシコ)監督ロレンソ・ビガス

El ciudadano ilustre”『名誉市民』(アルゼンチン西)

監督(共同)ガストン・ドゥプラット、マリアノ・コーン 

Las elegidas”『囚われた少女たち』(メキシコ)ダビ・パブロス 

 

 

(受賞を確信して来西していた代表者)

                      

★ノミネーションを割愛したヨーロッパ映画賞・短編映画賞・短編ドキュメンタリー賞・短編アニメーション賞の結果は以下の通りです。

 

ヨーロッパ映画賞Elle(仏・独・ベルギー、言語フランス語)

          監督ポール・ヴァーホーヴェン(Paul Verhoeven

 

      

  

短編映画賞Timecode 『タイムコード』監督フアンホ・ヒメネス・ペーニャ

 

 

 

短編ドキュメンタリー賞Cabezas Habladoras 監督フアン・ビセンテ・コルドバ

  

  

 

短編アニメーション賞Decorado 監督アルベルト・バスケス

 

(アルベルト・バスケスは長編・短編の両方を受賞)

  

★ヨーロッパ映画賞のポール・ヴァーホーヴェンはオランダ出身の監督、オランダ語読みだとパウル・ヴァーフーヴェ()となる由。ついでながら彼は「ベルリン映画祭2017」の審査委員長に就任しました。ほかの審査員に、ディエゴ・ルナ、マギー・ギレンホール、ゾフィー・ショルなどもアナウンスされています。

 

★これまたついでながら、アルモドバルが自作と縁の深い「カンヌ映画祭2017517日~28)の審査委員長に決定しました。「ありがたく、名誉なことですが、少しばかり重荷です」とコメント。

 

                

                           (栄誉賞受賞のアナ・ベレン)

 

           

                       (歓談するアルモドバルとペネロペ・クルス) 



第4回フェロス賞2017*結果発表2017年01月29日 10:04

            フォルケ賞に続いてラウル・アレバロが大賞3個をゲット!

 

    

       

フォルケ賞に続いて日本時間24日に結果が発表になっておりましたが、管理人PCの不具合でかなり遅れてしまいました。ラウル・アレバロのTarde para la ira作品賞・監督賞・脚本賞と大賞3を手にしたのは、少ないカテゴリーのなかで快挙と言ってもいいでしょう。選考母体がジャーナリストとフォルケ賞とは性格の異なるグループが審査員でしたが、結局似たような結果になりました。こうなるとアカデミー会員約2000人の投票で決まるゴヤ賞ラリーも面白くなってきました。

 

   

  (自らも主演男優賞にノミネートされていた総合司会者のアントニオ・デ・ラ・トーレ)

 

主なフェロス賞ノミネーションと結果

作品賞ドラマ部門

El hombre de las mil caras『スモーク・アンド・ミラーズ』 監督アルベルト・ロドリゲス

  (ノミネーション10個)
Julieta『ジュリエッタ』 監督ペドロ・アルモドバル(同9個)
Que Dios nos perdone 監督ロドリゴ・ソロゴェン(同7個)
Tarde para la ira 監督ラウル・アレバロ(同8個)
Un monstruo viene a verme 監督フアン・アントニオ・バヨナ(同7個)

 

    

         (3賞を手にして次回作が厳しくなったラウル・アレバロ)

 

作品賞(コメディ部門)

Kiki, el amor se hace KIKI~愛のトライエラー 監督パコ・レオン
María (y los demás)」監督ネリー・レゲラ

La noche que mi madre mató a mi padre 監督イネス・パリス
La puerta abierta 監督マリナ・セレセスキー
El rey tuerto 監督マルク・クレウエトCrehuet

 

   

      (右手を挙げているのがパコ・レオン監督、他スタッフとキャスト一同)

 

監督賞

ペドロ・アルモドバル『ジュリエッタ』
ラウル・アレバロ Tarde para la ira
フアン・アントニオ・バヨナUn monstruo viene a verme
アルベルト・ロドリゲス 『スモーク・アンド・ミラーズ』
ロドリゴ・ソロゴイェン「Que Dios nos perdone

 

 

主演女優賞

アナ・カスティージョ「El olivoThe Olive Tree

バルバラ・レニー María (y los demás)
カルメン・マチLa puerta abierta
エンマ・スアレス『ジュリエッタ』

アドリアナ・ウガルテ『ジュリエッタ』

 

 

主演男優賞

ロベルト・アラモQue Dios nos perdone

エドゥアルド・フェルナンデス 『スモーク・アンド・ミラーズ』

アライン・エルナンデス El rey tuerto
ルイス・マクドゥーガル Un monstruo viene a verme
アレックス・モネール La propera pell
アントニオ・デ・ラ・トーレ「Tarde para la ira

 

 

助演女優賞

ルス・ディアス Tarde para la ira
マルタ・エトゥラ 『スモーク・アンド・ミラーズ』

ロッシ・デ・パルマ『ジュリエッタ』
テレレ・パベス La puerta abierta
カンデラ・ペーニャ KIKI~愛のトライ&エラー

 

助演男優賞

カルロス・サントス 『スモーク・アンド・ミラーズ
ルイス・カジェホ Tarde para la ira

ホセ・コロナド 『スモーク・アンド・ミラーズ
ハビエル・ペレイラ「Que Dios nos perdone
マノロ・ソロ Tarde para la ira


脚本賞
アルベルト・ロドリゲス、ラファエル・コボス 『スモーク・アンド・ミラーズ』 

ペドロ・アルモドバル 『ジュリエッタ 
パトリック・ネス Un monstruo viene a verme
イサベル・ペニャ、ロドリゴ・ソロゴジェン Que Dios nos perdone
ダビ・プリドラウル・アレバロ Tarde para la ira

 

       

オリジナル音楽賞

シルビア・ペレス・クルス  Cerca de tu casa
フリオ・デ・ラ・ロサ 『スモーク・アンド・ミラーズ』

アルベルト・イグレシアス 『ジュリエッタ』

フェルナンド・ベラスケス Un monstruo viene a verme
オリビエル・アルソン「Que Dios nos perdone

 

予告編賞

El hombre de las mil caras『スモーク・アンド・ミラーズ
 Julieta」 『ジュリエッタ

 Kiki, el amor se hace KIKI~愛のトライ&エラー
Un monstruo viene a verme
Que Dios nos perdone

 

ポスター賞

El hombre de las mil caras 『スモーク・アンド・ミラーズ
Julieta」 『ジュリエッタ

Kiki, el amor se hace KIKI~愛のトライ&エラー
Monstruo viene a verme

Tarde para la ira

 

ドキュメンタリー賞 Dead Slow Ahead 監督:マウロ・エルセ

特別フェロス賞 La muerte de Luis XIV 監督:アルベルト・セラ

 

栄誉賞受賞のナルシソ・イバニェス・セラドールは車椅子で登場、プレゼンターのアレックス・デ・ラ・イグレシアが「私がもっとも影響を受けた監督の一人」とお祝いの言葉を述べました。今宵のガラで一番盛大な拍手を受けたのがこのときだったようです。また観客や批評家の興味を大いに掻き立てた La muerte de Luis XIVで特別フェロス賞を受賞したアルベルト・セラは「(スペイン以外の)ほかの国々では、私の映画は本日ここにお集まりの方々よりも多い観客に見てもらえました」と若さにまかせて強力パンチをお見舞いした。そうですね、本作はカンヌ映画祭2016ワールド・プレミアした話題作でしたが、ノミネーションされませんでした。

 

    

    (ナルシソ・イバニェス・セラドールとアレックス・デ・ラ・イグレシア)

 

TVシリーズの6カテゴリーは当ブログでは割愛しましたが、コメディ部門では、ハビエル・アンブロシィ Paquita Salas が受賞しました。太っちょで赤毛のぶおとこパキータ・サラスを演じたBrays Efe主演男優賞ベレン・クエスタ助演女優賞と、こちらも3個受賞しました。下の写真はトロフィーを手に喜びの3人と共演者のハビエル・カルボ

 

 

    (左から、アンブロシィ監督、ベレン・クエスタ、Brays Efeビエル・カルボ)

 

 

(パキータに扮したBrays Efeとベレン・クエスタ

 

★結局、最多ノミネーション10個の『スモーク・アンド・ミラーズ はポスター賞1に止まり、半ば予想されていたことですが、ノミネーション9個の『ジュリエッタ』は無冠に終わりました。残るは2月4日開催のゴヤ賞だけになりました。


作品賞はラウル・アレバロの手に*フォルケ賞2017結果発表2017年01月15日 22:35

       トロフィーを手にしたのはエンマ・スアレスとロベルト・アラモ

 

 
 (左からアントニオ・デ・ラ・トーレ、ルス・ディアス、製作者ベアトリス・ボデガス、監督)      

 

114日、フォルケ賞の授賞式が初めてセビージャで開催され、 結果は以下のとおりです。ラウル・アレバロTarde para la iraが受賞したとなると、ゴヤ賞もちょっと分からなくなってきました。2016年スペインで観客動員数第1位はフアン・アントニオ・バヨナUn monstruo viene a verme”(450万人、売上高2600万ユーロ)だった。受賞作は第4位のダニエル・カルパルソルの『バンクラッシュ』(650万ユーロ)、第6位のパコ・レオンの『KIKI~愛のトライ&エラー』(610万ユーロ)にも満たない。いずれも100万人以上の観客を集めたという。勿論、動員数や売上高の多寡で決まるわけではありませんが、少し驚きました。次のフェロス賞(123日)、最後のゴヤ賞(24日)まで続くかどうかは神のみぞ知るです。

 

12日にはゴヤ賞の候補者が一堂に会して行う顔合わせカクテル・パーティがあり、いつもなら同じマドリード市内ということで問題なかったのですが、今回はセビージャということで両方にノミネートされている人は忙しかったでしょう。

 

長編映画賞(フィクション、アニメーション)

El homre de las mil caras”“Smoke&Mirrors”『スモーク・アンド・ミラーズ』

監督アルベルト・ロドリゲス  

Julieta 『ジュリエッタ』監督ペドロ・アルモドバル  

Que Dios nos perdone”“May God Save Us”監督ロドリゴ・ソロゴイェン 

Tarde para la iraThe Fury of a Patient Man”監督ラウル・アレバロ 

製作者ベアトリス・ボデガス

Un monstruo viene a verme”“A Monster Calls”(西・米・英・カナダ)

監督フアン・アントニオ・バヨナ 

1898, Los últimos de Filipinas”監督サルバドル・カルボ

 

    

  (ホセ・コロナドの手からトロフィーを受け取り、もみくちゃの祝福を受けるアレバロ)

 

男優賞

エドゥアルド・フェルナンデス『スモーク・アンド・ミラーズ』監督アルベルト・ロドリゲス 

ロベルト・アラモQue Dios nos perdone 監督ロドリゴ・ソロゴイェン 

アントニオ・デ・ラ・トーレ“Tarde para la ira 監督ラウル・アレバロ 

アレックス・モネール“La propera pell”(“La próxima piel”) 

監督(共同)イサキ・ラクエスタ、イサ・カンポ 

オスカル・マルティネスEl ciudadano ilustre”(アルゼンチン、スペイン)

 監督(共同)ガストン・ドゥプラット、マリアノ・コーン 

 

 

ロベルト・アラモは、マドリードの舞台の仕事で欠席した。代理でトロフィーを受け取ったのは、ロドリゴ・ソロゴイェン監督、アラモの「感謝の辞」はビデオで上映された(上記の写真)。

 

女優賞

アドリアナ・ウガルテ『ジュリエッタ』監督ペドロ・アルモドバル 

◎エンマ・スアレス『ジュリエッタ』監督ペドロ・アルモドバル

カルメン・マチ“La puerta abierta”(“The Open Door”)監督マリナ・セレセスキー 

バルバラ・レニー“María (y los demás)”監督ネリー・ネゲラ 

アナ・カスティージョ『The Olive Tree』監督イシアル・ボリャイン 

インマ・クエスタ“La novia 監督パウラ・オルティス 

 

     

         (「映画の夢に向かって全力を尽くす」と感謝したエンマ・スアレス)

 

長編ドキュメンタリー賞

2016, Nacido en Siria監督エルナン・シン

El Bosco, El jardín de los sueños”(スペイン、フランス)監督ホセ・ルイス・ロペス=リナレス

Omega”監督(共同)ヘルバシオ・イグレシアス、ホセ・サンチェス=モンテス

Jota de Saura”監督カルロス・サウラ 

La historia de Jan”監督ベルナルド・モル・オットー

Miguel Picazo, Un cineasta extramuros”監督エンリケ・エスナオラ

 

         

 短編映画賞

Timecode『タイムコード』(15分)監督フアンホ・ヒメネス 

Graffitti 30分)監督リュイス・キレスLluís Quílez (スペイン、ウクライナ)

Bla Bla Bla”監督アレクシス・モランテ

 

         

長編ラテンアメリカ映画賞

Neruda”(チリ、メキシコ)監督パブロ・ラライン 

El ciudadano ilustre『名誉市民』(アルゼンチン、スペイン) 

監督(共同)ガストン・ドゥプラットマリアノ・コーン 

Aquí no ha pasado nada”(“Much Ado About Nothing”)(チリ)

監督アレハンドロ・フェルナンデス・アルメンドラス 

El acompañante”(キューバ)監督パベル・ジロー

Sin muertos no hay carnaval”(エクアドル、メキシコ、独)監督セバスティアン・コルデロ

 

★ドキュメンタリー賞、ラテンアメリカ映画賞は予想通りの結果でしたが、短編映画賞はカンヌ映画祭パルムドールの『タイムコード』と思っていたので外れました。2作ともオスカー賞2017短編部門のプレセレクション・リスト10作に残っています。どちらもアルカラ・デ・エナレス短編映画祭2016の受賞作品。

 

★栄誉賞にあたるゴールデン賞を受賞したアントニオ・P・ペレスは、前日の金曜日に母親を亡くして「悲しみと喜びとは交互に相次ぐ」を実感しているようでした。人生においてはこういう偶然はときどき起こりますね。

 

 (アントニオ・P・ペレス)

  

  

マリナ・セレセスキー”La puerta abierta” *ゴヤ賞2017 ⑦2017年01月12日 11:37

          カルメン・マチ、激戦区の主演女優賞に初めて挑戦

 

    

 

★女優マリナ・セレセスキーの長編映画初監督作品La puerta abiertaのご紹介、母娘二代にわたる売春婦家族の物語と聞けば何やら悲惨なイメージをかき立てられますが、これはコメディ仕立てのドラマ。今は現役を引退した母親にテレレ・パベス、母親の稼業を引き継いだ現役娼婦にカルメン・マチ、同じピソに暮らす性転換娼婦にアシエル・エチェアンディア、この3人を軸にドラマは展開します。現在スペインには約30万人の娼婦がいるということですが、多いのか少ないのか皆目分かりません。ワールドプレミアが2016年のアムステルダム・スパニッシュ映画祭と他のノミネーション作品に比して早くスペイン公開も92日ですから、投票者の記憶も薄れて若干分が悪いかもしれない。新人監督賞主演女優賞助演女優賞3カテゴリーにノミネートされました。

以下ゴチック体はゴヤ賞ノミネートを受けたもの、印はフェロス賞にもノミネートされたもの

 

 

 (左からテレレ・パベス、セレセスキー監督、カルメン・マチ、アシエル・エチェアンディア)

 

   La puerta abierta(“The Open Door”)2016

製作:Ad hoc studios / Babilonia Films S.L. / Meridional Producciones

監督・脚本:マリナ・セレセスキー 

音楽:マリアノ・マリン

撮影:ロベルト・フェルナンデス

美術:ハビエル・クレスポ、他

編集:ラウル・デ・トーレス

衣装デザイン:マラ・コリャソ、マウロ・ガストン、パトリシア・ロペス、クルス・プエンテ他

視覚効果:オスカル・ゴメス

キャスティング:ロサ・エステベス

製作者:セルヒオ・バルトロメ、R・フェルナンデス、アルバロ・ラビン、ホセ・A・サンチェス

 

基本データ:スペイン製作、スペイン語、2016年、82分、コメディ・ドラマ、製作費約766,000ユーロ、IMD7.9点、filmaffinity(スペイン)6.7点、スペイン公開201692

映画祭・受賞歴:アムステルダム・スパニッシュ映画祭2016正式出品、トランスシルバニア映画祭TIFF 2016(観客賞)、アリカンテ映画祭正式出品、トゥールーズ・スパニッシュ映画祭(観客賞)、アルカラ・デ・エナーレス短編映画祭正式出品、第32回グアダラハラ映画祭20173月開催)出品予定。フォルケ賞2017女優賞(カルメン・マチ)、フェロス賞(コメディ部門)作品賞・女優賞(C・マチ)、ゴヤ賞新人監督賞・主演女優賞・助演女優賞、いずれもノミネーション。

キャストカルメン・マチ(ロサ)テレレ・パベス(ロサの母アントニア)、アシエル・エチェアンディア(ルピータ)、ルシア・バラス(リュウバ、マーシャの娘)、パコ・トゥス(パコ)、ソニア・アルマルチャ(フアナ)、ヨイマ・バルデス(テレサ)、エミリオ・パラシオス(ユーリ、リュウバの兄)、モニカ・コワルスカ(ロシア人娼婦マーシャ)、クリスティアン・サンチェス(カルロス)、スサナ・エルナイス(スサナ)、アナ・パスクアル(チャロ)、他多数

 

物語:ロサは母親から受け継いだ娼婦稼業を任されている。サラ・モンティエルの熱烈なファンであった母親アントニアは、最近では自分のことを彼女と錯覚して混乱のなかにいる。このマドリード界隈のピソに暮らしている人々は、性転換した娼婦ルピータのように概ね幸せからは見放された規格品外の住人である。実際のところロサは幸せとは無縁であった。そんな折、同じ階のロシア人娼婦がドラッグの過剰摂取で死んでしまい、幼い娘リュウバを世話する羽目に陥ってしまう。リュウバには既におとなになっている兄の存在もわかってくる。リュウバは3人が失ってしまった無垢と希望を運んできてくれるのだろうか。

 

      

     (左から、一家団欒の母親アントニア、ロサ、リュウバ、ルピータ、映画から)

 

★ロサは仕事に出かけるとき、初期の認知症になった母親のために常に玄関のドアにカギを掛けない、それがタイトルになった。母親に死なれたリュウバはやすやすと部屋に侵入でき、帰宅したロサが女の子を発見する。そこからドラマが展開していく。ロサは路上で客引きをする立ちん坊の娼婦だから現実は厳しい。役作りに「実際の娼婦3人に会ったが、それぞれ状況は異なっていても普通の人、ただし社会から排除されていた」とカルメン。エル・パイス紙でも「カルメン・マチ以外にこの役を演じられる女優はいない」と絶賛されており、批評家と観客の乖離が少ない印象です。1963年マドリード生れ、エミリオ・アラゴンの『ペーパー・バード 幸せは翼にのって』10)が「ラテンビート2010」で上映された折、監督と来日している(翌年公開)。

 

        

             (路上で客引きをするロサ、映画から)

 

TVシリーズAidaアイーダ」 他で、数々の受賞歴のあるカルメンだが、ゴヤ賞主演女優賞ノミネーションは初めてである。アルモドバル作品でお馴染みの女優だが、殆ど脇役だからゴヤ賞には縁が薄かった(数年前ゴヤ賞授賞式の総合司会をしたことがある)。スペイン中がフィイバーした“Ocho apellidos vascos”(14)でやっと助演女優賞受賞をゲットした。今年の主演女優賞は、『ジュリエッタ』のエンマ・スアレス、“La reina de España”のペネロペ・クルス、“María(y los demás)”のバルバラ・レニーと激戦区ではあるが、可能性は高いと予想しています。受賞したらもう少し詳しいキャリア紹介の予定。

 

★母親役のテレレ・パベスもアレックス・デ・ラ・イグレシア作品でお馴染み、『スガラムルディの魔女』13)で、ゴヤ賞2014助演女優賞を受賞しています。ラテンビートで上映されたときキャリア紹介をアップています(20141018日)。最初のキャスティングではアントニア役は、TVドラでカルメンと共演しているアンパロ・バロが予定されていた。しかし間もなく体調を崩し、結局癌に倒れて帰らぬ人となった(2015129日、享年77歳)。映画では仲の悪い親子、娘を不幸にしてしまう母親になるわけですが、「誰がなりたくて無慈悲な母親になりたいなどと思いますか」とカルメン、母と娘の関係は難しい。プロットにあるサラ・モンティエル(1928年生れ)は、往時ではグラマーで歌える美人女優として有名、作中ではラファエル・ヒルのミュージカル“Samba”(65)のなかでサラが歌った「ファンタジー」を、テレレ・パベスが歌うということです。    

           

           (母アントニア役のテレレ・パベス、映画から)

 

★ゴヤ賞には絡んでおりませんが、もう一人の重要人物ルピータ役のアシエル・エチェアンディアは、1975年ビルバオ生れの41歳、俳優、歌手、TV、演劇でも活躍しています。ビスカヤの学校でエグスキ・スビアとフアン・カルロス・ガライサバルから演技の指導を受けている。他の教師とは水と油の関係だったようで、「する必要のないことを沢山学んだ」と語っている。20歳のときバスクを離れマドリードに移り、セックス・ショップで働きながら演技の勉強を続けた。TVドラUn paso adelante02)のホモセクシュアルな青年役が評価される。歌える俳優としてミュージカルCabaret(スペイン版、03)にも出演、俳優組合の新人男優賞を受賞している。

 

★映画デビューは、ナチョ・ペレス・デ・ラ・パス&ヘスス・ルイス監督のLa mirada violeta04)、フェルナンド・コロモ、エミリオ・マルティネス・ラサロなどに起用されている。最近、フアンフェル・アンドレス&エステバン・ロエルの『トガリネズミの巣穴』(14、ラテンビート2014)で登場している。他フリオ・メデムのMa ma14)、パウラ・オルティスのLa novia15)では花嫁役インマ・クエスタの花婿を演じて、ゴヤ賞2016主演男優賞にノミネートされた。演劇、TVドラでの受賞歴多数。

 

    

          (ルピータ役のアシエル・エチェアンディア、映画から)

 

マリナ・セレセスキー Marina Seresesky は、1969年ブエノスアイレス生れの女優、監督、脚本家、製作者。短編El cortejo10)で監督デビュー、オルデンブルク映画祭ジャーマン・インデペンデンス賞ノミネーション、バージニア州のラッパハノック・インデペンデント映画祭審査員賞受賞、短編第2La boda12)がティラナ映画祭(スペシャル・メンション)、ニューヨーク・シティ短編映画祭(作品賞・観客賞)、ポルトガルのアロウカ映画祭(作品賞)など国際映画祭で多数受賞した。ゴヤ賞2013でも短編映画賞部門にノミネートされている。長編デビュー作は上記の通り。 

 

(観客賞のトロフィーを手にした監督、トランスシルバニア映画祭授賞式、201665日)

 

ラウル・アレバロのデビュー作”Tarde para la ira”*ゴヤ賞2017 ⑥2017年01月09日 10:13

                      ラウル・アレバロは監督もできます!

 

  

 

★昨年の2月にラウル・アレバロ監督デビューの第一報をお届けしてから早くも1年近くの歳月が流れました。ベネチア映画祭2016「オリゾンティ」部門に正式出品された折にも追加記事をアップするなどして注目しておりましたが、ゴヤ賞作品賞・新人監督賞を含む11個ノミネートには驚きました。作品賞はともかく、新人監督賞のトップを走っているのは間違いありません。1馬身差で追っているのが前回ご紹介したサルバドル・カルボの“1898, Los últimos de Filipinas”と予想しています。今どき俳優の監督掛持ちなど珍しくもありませんが、改めて飛び飛びだった記事をまとめて再構成することにしました。

以下、ゴチック体はゴヤ賞ノミネートを受けたもの、印はフェロス賞にノミネートされたもの

 

   Tarde para la ira(“The Fury of a Patient Man”)2016

製作:Agosto la Pelicula / La Canica Films / TVE 

監督・脚本:ラウル・アレバロ 

脚本(共):ダビ・プリド 

撮影:アルナウ・バルス・コロメル

編集:アンヘル・エルナンデス・ソイド

音楽:ルシオ・ゴドイ

衣装デザイン:アルベルト・バルカルセル・ロドリゲスクリスティナ・ロドリゲス

美術:セラフィン・ゴンサレス

メイクアップ&ヘアー:マルタ・アルセエステル・ギリェムピルカ・ギリェム

特殊効果:イケル・デ・ラ・カジェ・ラタナ、ラオル・ロマニリョス

録音:タマラ・アレバロ、ミゲル・バルボサ、ほか

製作者:ベアトリス・ボデガス、セルヒオ・ディアス

 

基本データ:製作国スペイン、スペイン語、2016年、スリラー・ドラマ、92分、製作費約120万ユーロ、スペイン国営放送RTVEの援助、撮影開始20157月より6週間、撮影地はマドリードほかセゴビアなど。スペイン公開201699日、IMD7.5

映画祭・受賞歴:ベネチア映画歳2016「オリゾンティ」正式出品、ルス・ディアス女優賞受賞。トロント映画祭、ロンドン映画祭、テッサロニキ映画祭、ストックホルム映画祭などに正式出品

映画賞:フォルケ賞2017作品賞・男優賞(アントニオ・デ・ラ・トーレ)、ガウディ賞2017撮影賞、フェロス賞2017作品賞以下7部門、いずれもノミネーション。

 

キャストアントニオ・デ・ラ・トーレ(ホセ)ルイス・カジェホ(クーロ)ルス・ディアス(アナ、フアンホの義妹)ラウル・ヒメネス(フアンホ)、アリシア・ルビオ(カルメン)、マノロ・ソロ(トリアナ)、フォント・ガルシア(フリオ)、ピラール・ゴメス(ピリ)、ベルタ・エルナンデス(ホセのガールフレンド)、ルナ・マルティン(サラ)その他多数

 

解説:ホセとクーロの物語、無口だが用心深いホセはフアンホがオーナーのバルで終日ウエイターとして働いている。不眠症に苦しんでおり、フアンホの義姉妹アナを想っている。そんな折、フアンホの兄弟クーロが8年ぶりに出所してくる。20078月マドリード、クーロは仲間と宝石店を襲い販売員を昏睡状態にしたうえ仲間の一人が女店員を殺害してしまうという事件を起こしていた。暗い過去の亡霊にとり憑かれているが、アナと小さな息子と一緒に人生をやり直そうと考えていた。しかしアナの愛は既にクーロになく、見知らぬ男ホセと出逢うことで歯車が狂ってくる。やがて販売員がホセの父親だったこと、女店員がホセのガールフレンドだったことが明らかになってくる。人間の心の闇に潜む暴力、復讐、父と子の関係が語られることになるだろう。

 

     

        

                          (アントニオ・デ・ラ・トーレとルイス・カジェホ、映画から)

 

  監督キャリア紹介                                  

★ラウル・アレバロRaúl Arévalo1979年マドリード生れ、俳優、監督、脚本家。クリスティナ・ロタの演劇学校で演技を学んだ。「妹と一緒に父親のカメラで短編を撮っていた。17歳で俳優デビューしたのも映画監督になりたかったから」というから根っからの監督志望だった。俳優としてキャリアを磨きながら、今回やっと長年の夢を叶え、監督としても通用することを証明した。

  

 

★日本デビューはダニエル・サンチェス・アレバロの第1『漆黒のような深い青』06ラテンビート2007上映)、同作にはサンチェス・アレバロ監督と「義」兄弟の契を結んでいるアントニオ・デ・ラ・トーレも共演している。彼はデビュー作の主人公ホセ役として出演している。サンチェス・アレバロは合計4作撮っているが、二人とも全4作に出演しています。ゴヤ賞絡みではサンチェス・アレバロの第2『デブたち』09)で助演男優賞を受賞している。ホセ・ルイス・クエルダ(“Los girasoles ciegos”)、公開作品ではアレックス・デ・ラ・イグレシア(『気狂いピエロの決闘』)、イシアル・ボリャイン(『ザ・ウォーター・ウォー』)、アルモドバル(『アイム・ソー・エクサイテッド!』)、アルベルト・ロドリゲスの『マーシュランド』、今年ゴヤ賞脚本賞にノミネートされたダニエル・カルパルソロの『バンクラッシュ』(“Cien años de perdón”)などに起用されている。舞台にも立ち、TVドラ出演も多く、NHKで放映された『情熱のシーラ』で日本のお茶の間にも登場した。

 

   トレビア       

★アレバロ監督は「脚本執筆に7年、資金集めに4年の歳月をかけたのに、撮影に6週間しかかけられなかったのはクレージー」と嘆いている。それでも長年の夢をやっと叶えることができた。マドリードとセゴビアのマルティン・ムニョス・デ・ラス・ポサダスというアレバロが育った町で2015年夏にクランクインした。町の人々がエキストラとして協力しており、主人公の一人クーロ役のルイス・カジェホもセゴビア出身。ホセ役のアントニオ・デ・ラ・トーレとはダニエル・サンチェス監督の全作で共演している。さらにカルメン役のアリシア・ルビオは恋人ということです。監督と俳優が互いに知りすぎているのは、時にはマイナスにはたらくことも懸念されたが杞憂に過ぎなかった。 

(本作撮影中のアレバロ監督)

            

                      

 ★ベネチア映画祭2016「オリゾンティ」部門の女優賞受賞者ルス・ディアス談、「自分の名前が呼ばれたときには思わず涙が出てしまいました」と語っていたルス・ディアス、1975年カンタブリアのレイノサ市生れ、女優、監督。舞台女優として出発、1993年『フォルトゥナータとハシンタ』が初舞台、映画、テレビで活躍。チュス・グティエレス『デリリオ―歓喜のサルサ―』(ラテンビート2014)に出演、他にジャウマ・バラゲロ、ハビエル・レボージョなどの監督とコラボしている。2013 Porsiemprejamón で短編デビュー、脚本も手がけている。ただし、「何よりもまず、私は女優」ときっぱり。

 

   

(ルス・ディアスとアントニオ・デ・ラ・トーレ、映画から)

 

★二人の主役、アントニオ・デ・ラ・トーレは1968年生れ、ルイス・カジェホは1970年生れと監督より一回り年上であり、それぞれ映画デビューも早い。ゴヤ賞では主役二人がダブルで主演男優、助演にマノロ・ソロ、新人にラウル・ヒメネス、主演女優にルス・ディアスと5人もノミネートされた。特にマノロ・ソロの演技を評価する批評家が多く、昨年のダビ・イルンダインの“B, la pelicula”に続いて2回めのノミネーションであるが、長い芸歴に比して少ない印象を受ける。脇役に徹しているせいか日本での知名度は低いが、『パンズ・ラビリンス』『プリズン211』『ビューティフル』『カニバル』、最近の『マーシュランド』ではフリーの新聞記者を演じていた。また、デ・ラ・トーレはフェロス賞2017の総合司会を務めることになっている。

 

   

             (中央がマノロ・ソロ、映画から)

 

スペインの映画賞2017の行方を占う2017年01月01日 17:23

 

期待値を下げればハッピーになれるかもしれない

 

★当ブログも4回目の新年を穏やかに迎えることができました。映画の世界も世の中の危機と無縁ではありませんが、映画の未来を信じて発信していきたいと思っています。多くを望まず期待値を若干修正すればそれなりにハッピーになれるかもしれない。秋開催のサンセバスティアン映画祭も節目の65回目を迎えます。サプライズを期待したいところです。

 

★スペインでは新春早々フォルケ賞114日)、フェロス賞123日)、そしてゴヤ賞24日)と大きなイベントが開催されます。それぞれ主宰する組織は異なりますが、前年公開された映画の総決算だから、ノミネーションは当然似てきてしまいます。いわば釣師は違っていても同じ釣堀から釣るわけだから当然なのかも知れません。なかで一番盛大なのが殿りのゴヤ賞ですが、無い袖は振れないというわけで、今年は「地味路線」がはっきりしています。

 

★大体三つの映画賞に共通している最優秀作品賞は、長短はあれ既にご紹介済みの作品です。なかでフォルケ賞にだけノミネートされたサルバドル・カルボのデビュー作1898, Los últimos de Filipinasは当ブログ初登場、ご紹介したいと思っています。タイトルから歴史物であることは一目瞭然、1898年という年は米西戦争によってかつて栄華を誇ったスペイン帝国が完全に瓦解した失意の年です。ゴヤ賞9個(新人監督・新人男優・撮影・プロダクション・美術・録音・衣装デザイン・メイク&ヘアー・特殊効果)は、技術部門に集中しているとはいえ気になります。本作が長編デビューの監督ですが、ルイス・トサール、ハビエル・グティエレス、エドゥアルド・フェルナンデス、カラ・エレハルデなどの演技派ベテランに、リカルド・ゴメス、ミゲル・エラン、アルバロ・セルバンテスなどの若手人気俳優を揃えて、122日封切り以来アクション・アドベンチャーとして若者から年配の男性観客のあいだで評判になっています。

 

  

           (1898, Los últimos de Filipinas”のポスター

 

★他に受賞に絡みそうな作品として、マリナ・セレセスキーLa puerta abiertaもなかなか面白そうです。カルメン・マチ(主演)にテレレ・パベス(助演)がノミネーションとくれば、受賞しなくても鑑賞したい映画リスト入りです。   

 

      
        (“La puerta abierta”のポスターを背にしたカルメン・マチ

 

★ゴヤ賞にはノミネートされませんでしたが、フォルケ賞ラテンアメリカ映画部門のセバスティアン・コルデロSin muertos no hay carnaval(エクアドル、メキシコ、独)なども、ラテンビートを視野に入れてご紹介したい。授賞式までに間に合うよう順を追ってアップできたらと思っています。

 

   

          (Sin muertos no hay carnaval”のポスター

 

 

第22回フォルケ賞2017*ノミネーション発表2016年12月30日 22:57

       授賞式はセビーリャで114日開催――マドリード以外は初めて

 

 

★授賞式がマドリードを離れて開催されるのは初めて、地域振興の意味合いがあるのかもしれません。これは今年67日、EGEDA会長エンリケ・セレソ、アンダルシア評議会文化大臣ロサ・アギラル、セビーリャ市助役アントニオ・ムニョス同席のもと発表されておりました。フォルケ賞はゴヤ賞の前哨戦といわれ、正式名は「ホセ・マリア・フォルケ賞Premios Cinematográfico José María Forqué」です。EGEDAの初代会長だったフォルケの栄誉を讃えて創設された賞。縁の下の力持ち的な製作者の功績を讃えるために設けられた賞、というわけで監督賞はありません。

 

  

  (左から、アントニオ・ムニョス、ロサ・アギラル、エンリケ・セレソ、201667日)

 

★最初は作品賞のみで始まり、第9回から「長編ドキュメンタリー」、「アニメーション」部門が加わり、第15回から男優賞・女優賞、2015年から「ラテンアメリカ映画」、2016年から「短編映画」と「Cine y Educacion en Valores」という賞が加わり、カテゴリーは増加する傾向にあります。栄誉賞にあたる金賞加わりました(該当者なし、あるいは団体のケースもあります)作品賞には3万ユーロ、長編ドキュメンタリーとアニメーション賞には6000ユーロ、男優・女優賞の賞金3000ユーロはAISGE財団**が拠出し、120名以上の映画関係のジャーナリストが選考しています。第22回は2015121日~20161130日の1年間にスペインで公開された作品が対象。

 

Entidad de Gestión de Derechos de los Productores Audiovisuales の頭文字。いわゆる視聴覚製作に携わる人々の権利を守るための交渉団体です。1990年創設だが活動は1993年から。現会長はエンリケ・セレソ、副会長はアグスティン・アルモドバル。

**Artistas Intérpretes, Sociedad de Gestión の頭文字。声優を含む俳優、舞踊家、映画監督などの権利を守る非営利団体、2002年設立、現会長は女優ピラール・バルデム

 

   フォルケ賞ノミネーション

 

長編映画賞(フィクション、アニメーション)

El homre de las mil caras”“Smoke&Mirrors”『スモーク・アンド・ミラーズ』

監督アルベルト・ロドリゲス ★ 

Julieta 『ジュリエッタ』監督ペドロ・アルモドバル ★ 

Que Dios nos perdone”“May God Save Us”監督ロドリゴ・ソロゴイェン ★

Tarde para la ira”“The Fury of a Patient Man”監督ラウル・アレバロ ★ 

Un monstruo viene a verme”“A Monster Calls”(西・米・英・カナダ)

監督フアン・アントニオ・バヨナ ★

1898, Los últimos de Filipinas”監督サルバドル・カルボ

 

男優賞

エドゥアルド・フェルナンデス『スモーク・アンド・ミラーズ』監督アルベルト・ロドリゲス ★

ロベルト・アラモ“Que Dios nos perdone 監督ロドリゴ・ソロゴイェン ★

アントニオ・デ・ラ・トーレ“Tarde para la ira 監督ラウル・アレバロ ★

アレックス・モネール“La propera pell”(“La próxima piel”) 

監督(共同)イサキ・ラクエスタ、イサ・カンポ 

オスカル・マルティネスEl ciudadano ilustre”(アルゼンチン、スペイン)

 監督(共同)ガストン・ドゥプラット、マリアノ・コーン 

 

女優賞

アドリアナ・ウガルテ『ジュリエッタ』監督ペドロ・アルモドバル ★

エンマ・スアレス『ジュリエッタ』同上

カルメン・マチ“La puerta abierta”(“The Open Door”)監督マリナ・セレセスキー 

バルバラ・レニー“María (y los demás)”監督ネリー・ネゲラ ★

アナ・カスティージョ『The Olive Tree』監督イシアル・ボリャイン ★

インマ・クエスタ“La novia 監督パウラ・オルティス 

 

長編ドキュメンタリー賞

2016, Nacido en Siria”監督エルナン・シン

El Bosco, El jardín de los sueños”(スペイン、フランス)

  監督ホセ・ルイス・ロペス=リナレス

Omega”監督(共同)ヘルバシオ・イグレシアス、ホセ・サンチェス=モンテス

Jota de Saura”監督カルロス・サウラ 

La historia de Jan”監督ベルナルド・モル・オットー

Miguel Picazo, Un cineasta extramuros”監督エンリケ・エスナオラ

 

短編映画賞

Timecode”『タイムコード』監督フアンホ・ヒメネス 

Graffitti”監督リュイス・キレスLluís Quílez

Bla Bla Bla”監督アレクシス・モランテ

 

長編ラテンアメリカ映画賞

Neruda”(チリ、メキシコ)監督パブロ・ラライン ★

El ciudadano ilustre”『名誉市民』(アルゼンチン、スペイン) 

監督(共同)ガストン・ドゥプラット、マリアノ・コーン ★

Aquí no ha pasado nada”(“Much Ado About Nothing”)(チリ)

監督アレハンドロ・フェルナンデス・アルメンドラス ★

El acompañante”(キューバ)監督パベル・ジロー

Sin muertos no hay carnaval”(エクアドル、メキシコ、独)監督セバスティアン・コルデロ

 

Cine y Educacion en Valores

El olivo”監督イシアル・ボリャイン ★

100 metros”監督マルセル・バレナ ★

Un monstruo viene a verme 監督フアン・アントニオ・バヨナ ★

 (★は紹介記事をアップしているもの)

 

栄誉賞

アントニオ・P・ペレスAntonio P. Pérez は、独立系のプロデューサー、彼が手掛けた代表作品を列挙すると、ベニト・サンブラノの『ローサのぬくもり』(99)と『スリーピング・ボイス~沈黙の叫び』(11)、マテオ・ヒルの『パズル』(99)、最近ではイマノル・ウリベの“Lejos del mar”(15)など。

 

     

               (アントニオ・P・ペレス)

 

作品賞は、約110作の候補から選考され最終的に以上の6作に絞られた。サルバドル・カルボの“1989, Los últimos de Filipinas”が加わっただけで、ゴヤ賞とフェロス賞に同じ、女優賞にフェロス賞2016受賞のインマ・クエスタが選ばれているのは、スペイン公開が1211日だったせいです。公開が境目にあるとノミネーションが分かれるケースが出てくるのは仕方がありません。短編映画賞はゴヤ賞と同じです。いずれもカンヌ映画祭を始めとして国際短編映画祭での受賞歴多数。

 

ドキュメンタリー部門(候補は86作)には、サウラのようなベテランからベルナルド・モル・オットーのような新人、『スモーク・アンド・ミラーズ』の製作者ヘルバシオ・イグレシアス、『マーシュランド』の製作者ホセ・サンチェス=モンテスなど多彩な顔ぶれを揃えたようです。ラテンアメリカ映画部門にキューバとエクアドルがノミネートされたのも久方ぶりのことです。“Sin muertos no hay carnavalコルデロの長編6作目、いずれご紹介したい作品です。

 

★授賞式は年明け早々の2017114日、セビーリャのマエストランサ劇場にて。俳優のイングリッド・ガルシア・ヨンソン、アルバロ・セルバンテス、ハビエル・グティエレスなどが進行を担当する予定。


第4回フェロス賞2017のノミネーション発表2016年12月18日 17:35

        総合司会者にアントニオ・デ・ラ・トーレ、授賞式は123

 

              

                (第4回フェロス賞ポスター)

 

★フェルナンド・トゥルエバの“La Reina de Espanña”のゼロ個が、アルベルト・ロドリゲスの『スモーク・アンド・ミラーズ』(ラテンビート2016上映)の10個以上に話題になっています。ゼロ個ということはヒロインのペネロペ・クルスもノミネートされなかったということで、何があったかを探ると、かなり複雑な現実が見えてきそうです(これは別の話なのでここでは触れません)。ゴヤ賞2017のノミネーションも発表になり、付き合わせると90パーセントは重なるようです。こちらにはさすがにPPも主演女優賞に名前が載っておりました。総合司会者にアントニオ・デ・ラ・トーレ、アルゼンチン出身の女優マレナ・アルテリオAICE会長パドロ・バリン3人が進行役です。マレナ・アルテリオはエクトル・アルテリオの娘、“Una palabra tuya”(08)で共演したルイス・ベルメホ(『マジカル・ガール』『KIKI』)と結婚、国籍はスペイン。

 

            

            (総合司会者アントニオ・デ・ラ・トーレ)

 

正式名は「Premios Feroz AICE(スペイン映画記者協会)が米国のゴールデン・グローブ賞と同じ位置づけで201311月に設立した映画賞。当初カテゴリーは栄誉賞と特別賞を除く11部門でしたが、増加する傾向にあります。ノミネーション発表は11月下旬から12月初旬、授賞式は翌年1月下旬、映画記者協会のメンバー約170人が選定する。前年度の各映画祭での受賞作、劇場公開された作品(全国展開でなくても大都市公開なら対象とし、オンライン配信も含まれる)、さらに国際映画祭受賞作品ながら配給元が見つからないケースも対象になる。

 

 ★基本カテゴリーは、作品賞(ドラマ)/作品賞(コメディ)/監督賞脚本賞主演男優賞主演女優賞助演男優賞助演女優賞オリジナル音楽賞レーラー賞(ゴヤ賞にはない)/映画ポスター賞(ゴヤ賞にはない)の11部門、今年から助演男優賞助演女優賞ドキュメンタリー賞が入り、更にTVドラシリーズの作品賞(ドラマ&コメディ)/男優賞女優賞助演男優賞助演女優賞6賞も追加されることになりました。規模が拡大する傾向にあり、内容が似通った映画賞ばかり増えても映画産業の発展や集客率にはつながらないと危惧します。

 

★今回2017年のの栄誉賞は、チチョ・イバニェス・セラドールChicho Narciso Ibáñez Serradorがアナウンスされました。駆け足で紹介すると、映画界とテレビ界の結合、発展に寄与した人物、1935年モンテビデオ生れの81歳、舞台監督、俳優、脚本家、監督、製作者、国籍はウルグアイとスペイン。舞台監督、俳優だったナルシソ・イバニェスの一人息子。1960年“Obras maestras del terror”の脚本で映画界デビュー、同年“Todo el año es Navidad”に俳優出演、監督作品としてはホラー映画La residencia69)と¿Quién puede matar a un niño?76)が代表作。TVドラシリーズでは、Historias para no dormirHistoria de la frivolidadUn, dos, tres….responda otra vezなど1960年代後半から80年代にかけてヒット作を多数お茶の間に送り届けています。2001年舞台監督に復帰、“Aprobado en castidad”を演出、2002年“El aguila y la niebla”でロペ・デ・ベガ賞を受賞、2004年新バージョンUn , dos, tres…a leer esta vez”、2005年、アレックス・デ・ラ・イグレシア、ジャウマ・バラゲロ、マテオ・ヒル、エンリケ・ウルビスのような若手監督を起用して“Películas para no dormir”をテレシンコで企画・監修して成功させた。このTVシリーズは日本でも「スパニッシュ・ホラー・プロジェクト」としてテレビ放映され、ホラー好きに歓迎されました。2010年、文化・教育・スポーツ省が授与する最高賞「国民賞(テレビジョン部門)」を受賞しています。

 

             

             (ナルシソ・イバニェス・セラドール)

 

★今回TVドラ部門のカテゴリーが追加されたのと無関係ではないでしょう。栄誉賞と特別賞は、主にAICEの執行部が中心になって決めるようです。因みに過去の受賞者は、カルロス・サウラ、昨年はロサ・マリア・サルダでした。

 

主なフェロス賞ノミネーション

作品賞(ドラマ部門)

El hombre de las mil caras『スモーク・アンド・ミラーズ』 監督アルベルト・ロドリゲス(10個)
Julieta『ジュリエッタ』 監督ペドロ・アルモドバル(9個)
Que Dios nos perdone 監督ロドリゴ・ソロゴイェン(7個)
Tarde para la ira 監督ラウル・アレバロ(8個)
Un monstruo viene a verme 監督フアン・アントニオ・バヨナ(7個)

作品賞(コメディ部門)

Kiki, el amor se hace 『KIKI~愛のトライエラー 監督パコ・レオン
María (y los demás)」監督ネリー・レゲラ

La noche que mi madre mató a mi padre 監督イネス・パリス
La puerta abierta 監督マリナ・セレセスキー
El rey tuerto 監督マルク・クレウエトCrehuet

監督賞

ペドロ・アルモドバル『ジュリエッタ』
ラウル・アレバロ 「
Tarde para la ira
フアン・アントニオ・バヨナUn monstruo viene a verme
アルベルト・ロドリゲス 『スモーク・アンド・ミラーズ』
ロドリゴ・ソロゴイェン「
Que Dios nos perdone

主演女優賞

アナ・カスティージョ「El olivoThe Olive Tree

バルバラ・レニー María (y los demás)
カルメン・マチLa puerta abierta
エンマ・スアレス『ジュリエッタ』

アドリアナ・ウガルテ『ジュリエッタ』

主演男優賞

ロベルト・アラモ「Que Dios nos perdone

エドゥアルド・フェルナンデス 『スモーク・アンド・ミラーズ』

アライン・エルナンデス El rey tuerto
ルイス・マクドゥーガル Un monstruo viene a verme
アレックス・モネール La propera pell
アントニオ・デ・ラ・トーレ「Tarde para la ira

助演女優賞

ルス・ディアス Tarde para la ira
マルタ・エトゥラ 『スモーク・アンド・ミラーズ』

ロッシ・デ・パルマ『ジュリエッタ』
テレレ・パベス 
La puerta abierta
カンデラ・ペーニャ 『KIKI~愛のトライ&エラー
助演男優賞

カルロス・サントス 『スモーク・アンド・ミラーズ
ルイス・カジェホ Tarde para la ira

ホセ・コロナド 『スモーク・アンド・ミラーズ
ハビエル・ペレイラ「Que Dios nos perdone
マノロ・ソロ Tarde para la ira
脚本賞
アルベルト・ロドリゲス、ラファエル・コボス 『スモーク・アンド・ミラーズ』 

ペドロ・アルモドバル 『ジュリエッタ 
パトリック・ネス Un monstruo viene a verme
イサベル・ペニャ、ロドリゴ・ソロゴジェン Que Dios nos perdone
ダビ・プリド、ラウル・アレバロ Tarde para la ira
オリジナル音楽賞

シルビア・ペレス・クルス  Cerca de tu casa
フリオ・デ・ラ・ロサ 『スモーク・アンド・ミラーズ』

アルベルト・イグレシアス 『ジュリエッタ』

フェルナンド・ベラスケス Un monstruo viene a verme
オリビエル・アルソン「Que Dios nos perdone

予告編賞

El hombre de las mil caras『スモーク・アンド・ミラーズ
 
Julieta」 『ジュリエッタ

 Kiki, el amor se hace」 『KIKI~愛のトライ&エラー
Un monstruo viene a verme
Que Dios nos perdone

ポスター賞

El hombre de las mil caras」 『スモーク・アンド・ミラーズ
Julieta」 『ジュリエッタ

Kiki, el amor se hace KIKI~愛のトライ&エラー
Monstruo viene a verme

Tarde para la ira

予告編賞とポスター賞は未決定らしく、なかで1作が脱落するようです。当ブログでは、TVドラマ・シリーズ部門は省略します。

3回フェロス賞ノミネーションは、コチラ20151218

3回フェロス賞受賞結果は、コチラ2016121