フェロス栄誉賞2021の受賞者ビクトリア・アブリルが物議を醸す ― 2021年02月28日 20:29
ワクチン接種拒否発言のビクトリア・アブリルに困惑するAICE

★去る2月25日、第8回フェロス賞2021の栄誉賞受賞者ビクトリア・アブリルがプレス会見で発言した「コロナ・ワクチン接種反対」が論争を引き起こしています。現在はフランス在住ですが、授賞式のため帰国、恒例の受賞プレス会見時の発言「ワクチンは安全性の確証がなくモルモットにはなりたくない。スウェーデンのような集団免疫に戻るべき」と主張して会見場はてんやわんや。

(司会者の制止を振り切って発言するビクトリア・アブリル、2月25日プレス会見にて)
★フェロス賞を主催するAICE(スペイン映画ジャーナリスト協会)の会長、ジャーナリストのマリア・ゲーラと、協賛するアルコベンダス市長ラファエル・サンチェス・アセラは、対応に困惑しています。当然のごとく、女優の主張とAICEは「意見をまったく共有していない」と発表、一線を画しています。気性が激しく信じたいことだけを信じるタイプのアブリル、接種するしないは個人の自由ですが、スウェーデン・モデルの失敗も認めてないようです。主催者側はコロナ禍のなかの映画について語ってもらいたかったでしょうに、その話はほんの少しだった。日本でも<わきまえない女>で盛り上がっていますが、数日後に迫った授賞式では、アブリルの栄誉賞スピーチが作品賞以上に話題になりそうです。各メディアは現時点で公表されている海外の具体的な数字を示して反論していますが、彼女には役に立ちそうもありませんね。
★ガラは予定通り3月2日、アルコベンダス市オーディトリオ劇場、YouTubeで生中継される予定です。司会者はベテラン女優ピラール・カストロ、アリッツ・モレノの『列車旅行のすすめ』のヒロインを演じた女優さんです。

(授賞式司会者ピラール・カストロ)
第26回フォルケ賞2021*結果発表&授賞式 ― 2021年01月17日 17:15
作品賞はピラール・パロメロのデビュー作「Las niñas」が受賞

★1月16日、第26回フォルケ賞2021の受賞結果が発表になりました。総合司会者はアイタナ・サンチェス=ヒホンとミゲル・アンヘル・ムニョスが担いました。教育・文化・スポーツ大臣ホセ・マヌエル・ロドリゲス・ウリベス、マドリード共同体副会長イグナシオ・アグアド、そしてEGEDAオーディオビジュアル著作権管理協会の会長エンリケ・セレソが出席した。ソーシャルディスタンスを守って座れない座席にはマークが入り、トロフィーもプレゼンターの手渡しでなく台座に置いてあるなど、やはり例年とは異なるガラとなったようです。

(司会者のアイタナ・サンチェス=ヒホンとミゲル・アンヘル・ムニョス)
★EGEDAが選考母体のフォルケ賞は、1990年代初頭のスペイン社会に青春期を送った少女たちを描いたピラール・パロメロのデビュー作「Las niñas」を最優秀作品賞に選んで閉幕しました。長編ドキュメンタリー映画賞には、同じく1992年のスペイン、特にムルシアに焦点を当てたルイス・ロペス・カラスコの「El año del descubrimiento」がトロフィーを手にしました。

(EGEDA会長エンリケ・セレソ)
★フォルケ賞は初めてTV作品を新設、もはや無視できないことを認識したようです。作品賞の他、TV男優・女優の2部門も新設、受賞者の幅が広がりました。TVシリーズ作品賞にフェリックス・ビスカレッド、オスカル・ペドラサの「Patria」、女優賞に「Ane」のパトリシア・ロペス・アルナイス、TV女優賞に「Patria」のエレナ・イルレタなど、バスク映画が評価された2021年ガラだった。
*第26回ホセ・マリア・フォルケ賞受賞結果*(○印ゴチック体が受賞)
◎作品賞(フィクション&アニメーション)副賞30,000ユーロ
Adú 製作Ikiru Films、ICAA 他 *
Akelarre 製作Sorcin Films 他 *
La boda de Rosa 製作Hally Production 他 *
○ Las niñas 製作Bteam Pictures / Inicia Films / Las Ninas Mujeres, A.I.E. 他 *

(製作者バレリー・デルピエール)

◎長編ドキュメンタリー映画賞 副賞6,000ユーロ
Antonio Machado, Los días azules 監督Laura Hojman ラウラ・ホイマン
Cartas mojadas 監督パウラ・パラシオス
El drogas 監督ナチョ・レウサ
○ El año del descubrimiento 監督ルイス・ロペス・カラスコ


◎短編映画賞 副賞3,000ユーロ
A la cara (13分) 監督ハビエル・マルコ・リコ
Yo (13分) 監督ベゴーニャ・アロステギ
○ Yalla (10分) 監督Carlo D'Ursi カルロ・ドゥルシ


◎TVシリーズ作品賞(新設)副賞6,000ユーロ
○ Antidisturbios (監督ロドリゴ・ソロゴジェン、ボルハ・ソレル)
La casa de papel 『ペーパー・ハウス』(監督ヘスス・コルメナル、アレックス・ロドリゴ)
Veneno (監督ハビエル・アンブロッシ、イサベル・トーレス、他)
Patria (監督フェリックス・ビスカレッド、オスカル・ペドラサ)

(ロドリゴ・ソロゴジェン)

◎男優賞 副賞3,000ユーロ
ダビ・ベルダゲル (Uno para todos) 監督ダビ・イルンダイン *
フアン・ディエゴ・ボトー(Los europeos)フランスとの合作、監督ビクトル・ガルシア・レオン
マリオ・カサス(No matarás)2019年、監督ダビ・ビクトリ
○ ハビエル・カマラ(Sentimental) 監督セスク・ゲイ

(今年最初の授賞式に出席できなかったハビエル・カマラ、映画から)

◎女優賞 副賞3,000ユーロ
アンドレア・ファンドス (Las niñas) 監督ピラール・パロメロ
カンデラ・ペーニャ (La boda de Rosa) 監督イシアル・ボリャイン
キティ・マンベール (El inconveniente) 監督ベルナベ・リコ
○ パトリシア・ロペス・アルナイス (Ane) 監督ダビ・ペレス・サニュド

(感激の晴れ舞台、パトリシア・ロペス・アルナイス)

◎TVシリーズ男優賞(新設) 副賞3,000ユーロ
アレックス・ガルシア(Antidisturbios) 監督ロドリゴ・ソロゴジェン、ボルハ・ソレル
ハビエル・カマラ(Vamos Juan) 監督ボルハ・コベアガ、ビクトル・ガルシア・レオン、他
ラウル・アレバロ(Antidisturbios)監督ロドリゴ・ソロゴジェン、ボルハ・ソレル
○ Hovik Keuchkerian(Antidisturbios) 監督ロドリゴ・ソロゴジェン、ボルハ・ソレル

(コロナの犠牲者に黙祷を捧げるよう呼びかけたホービック・ケウケリアン)


◎TVシリーズ女優賞(新設) 副賞3,000ユーロ
アネ・ガバライン (Patria)
ダニエラ・サンティアゴ (Veneno)
ビッキー・ルエンゴ (Antidisturbios)
○ エレナ・イルレタ (Patria)

(ライバルのアネ・ガバラインを制してトロフィーを手にしたエレナ・イルレタ)

El agente topo (チリ『老人スパイ』)監督マイテ・アルベルディ *
El olvido que seremos (コロンビア) 監督フェルナンド・トゥルエバ *
El robo del siglo (アルゼンチン) 監督アリエル・ウィノグラド
○ Nuevo Orden (メキシコ=フランス) 監督ミシェル・フランコ

(ベネチア映画祭銀獅子賞審査員大賞受賞作品「Nuevo Orden」アップ予定作品)

(銀獅子賞のトロフィーを手にしたミシェル・フランコ、ベネチア映画祭2020)
◎ Cine en Educación y Valores
Las niñas
La boda de Rosa
Adú
○ Uno para todos 監督ダビ・イルンダイン *

(トロフィーを手にダビ・イルンダイン)

(*印は当ブログで紹介している作品)
★優れた製作者に贈られるEGEDA金のメダルは、フェルナンド・コロモとベアトリス・デ・ラ・ガンダラが受賞した。キャリア&フィルモグラフィーは次回に。

(EGEDA金のメダルのフェルナンド・コロモとベアトリス・デ・ラ・ガンダラ)
★ミュージック・パートをパブロ・アルボランとパブロ・ロペスが担いました。

(パブロ・ロペス)
第8回フェロス賞2021*ノミネーション発表 ― 2021年01月13日 17:59
フェロス賞2021ノミネーション発表、最多は「La boda de Rosa」の9個

★2020年12月10日、第8回フェロス賞2021の19カテゴリーのノミネーション発表がありました。今回からドキュメンタリーと特別賞の2カテゴリーが新設されました。フェロス賞はゴヤ賞の前哨戦といわれながらもかなり違いがあります。作品賞がドラマ部門とコメディ部門に分かれ、各5作品がノミネートされるのでノミネート・チャンスが大きい。また撮影や衣装デザインがない代わり、予告編、ポスターの2カテゴリーがあるなどの特徴があります。作品賞(ドラマ&コメディ)は製作と監督名を載せました。TVシリーズ・ミニシリーズは鑑賞できる確率が低いこともあり、受賞結果のみをアップすることにしました。今年に限りオンライン上映のみの作品もカバーしたということです。コロナで世界が一変した2020年は忘れられない年になるでしょう。 授賞式は2月8日(月)、アルコベンダスにて開催されます。
*第8回フェロス賞2021ノミネーション*
◎作品賞(ドラマ部門)
Akelarre 製作Sorgin Films, A.I.E. 他 監督パブロ・アグエロ
Ane 製作Amania Films, Euskal Irrati Telebista, TVE 他 監督ダビ・ペレス・サニュド
El año del descubrimiento (ドキュメンタリー) 製作Lacima Producciones S.L. 他
監督ルイス・ロペス・カラスコ
Las niñas 製作Las Ninas Majicas, A.I.E. 他 監督ピラール・パロメロ
No matarás 製作Castelao Pictures, Filmax, RTVE 他 監督ダビ・ビクトリ
◎作品賞(コメディ部門)
La boda de Rosa 製作La Boda de Rosa La Pelicula, A.I.E. 他 監督イシアル・ボリャイン
Los europeos 製作Gonita, Apache Films, 他 監督ビクトル・ガルシア・レオン
Historias lamentable 製作Comunidad de Madrid, Crea SGR, ICAA, 他 監督ハビエル・フェセル
Orígenes secretos 製作In Post We Trust, La Chica de la Curva, RTVE 他
監督ダビ・ガラン・ガリンド 邦題『ヒーローの起源 アメコミ連続殺人事件』
Sentimental 製作Impossible Films, ICEC, TV3 他 監督セスク・ゲイ
◎監督賞
イシアル・ボリャイン(La boda de Rosa)
セスク・ゲイ(Sentimental)
ルイス・ロペス・カラスコ(El año del descubrimiento)
ピラール・パロメロ(Las niñas)
ダビ・ビクトリ(No matarás)
◎主演女優賞
アマイア・アベラストゥリ (Akelarre)
アンドレア・ファンドス (Las niñas)
パトリシア・ロペス・アルナイス (Ane)
キティ・マンベール (El inconveniente)
カンデラ・ペーニャ (La boda de Rosa)
◎主演男優賞
ラウル・アレバロ (Los europeos)
ハビエル・カマラ (Sentimental)
マリオ・カサス (No matarás)
ハビエル・グティエレス (Hogar)
ダビ・ベルダゲル (Uno para todos)
◎助演女優賞
フアナ・アコスタ (El inconveniente)
ベロニカ・エチェギ (Explota explota)
ナタリア・デ・モリーナ (Las niñas)
ナタリエ・ポサ (La boda de Rosa)
パウラ・ウセロ (La boda de Rosa)
◎助演男優賞
チェマ・デル・バルコ (El plan)
ラモン・バレア (La boda de Rosa)
フアン・ディエゴ・ボトー (Los europeos)
アレックス・ブレンデミュール (Akelarre)
セルジ・ロペス (La boda de Rosa)
アルベルト・サン・フアン (Sentimental)
◎脚本賞
マリナ・ペレス・プリド、ダビ・ペレス・サニュド (Ane)
ルイス・ロペス・カラスコ、ラウル・リアルテ (El año del descubrimiento)
イシアル・ボリャイン、アリシア・ルナ (La boda de Rosa)
ハビエル・フェセル、クラロ・ガルシア (Historias lamentable)
ピラール・パロメロ (Las niñas)
◎音楽賞
ロケ・バニョス (Adú)
マイテ・アロタハウレギ、アランサス・カジェハ (Akelarre)
コルド・ウリアルテ、Bingen Mendizabal (Baby)
ロケ・バニョス (Explota explota)
フェデリコ・フシド、アドリアン・フォルケス (No matarás)
◎予告編賞
マルタ・ロンガス、ラファ・マルティネス (Akelarre)
フアン・サンティアゴ (La boda de Rosa)
ミゲル・アンヘル・トルドゥ (Explota explota)
ハビエル・フェセル、ラファ・マルティネス (Historias lamentable)
マリナ・フランシスコ、フアン・ガブリエル・ガルシア・ロマン (Las niñas)
◎ポスターFlixOlé 賞
ナタリア・モンテス (Akelarre)
パブロ・ダビラ、エスピナル・ガブリエル (El arte de volver)
ダビ・デ・ラス・エラス (Los europeos)
アルフレッド・ボレス、ベルタ・ゴンサレス (La reina de los lagartos)
ジョルディ・ラバンダ (Rifikin’s Festival)米国、監督ウディ・アレン
◎ドキュメンタリー賞(新設)
A media voz (キューバ、2019 監督ハイディ・ハッサン、パトリシア・ぺレス・フェルナンデス
El año del descubrimiento 監督ルイス・ロペス・カラスコ
Courtroom 3H (『家庭裁判所 第3法廷』) 監督アントニオ・メンデス・エスパルサ
Dear Werner 監督パブロ・マケダ
El desafío: ETA (TVミニシリーズ) 監督Hugo Stuven

◎特別賞(新設)
Lúa vermella 監督ロイス・パティーニョ
Blanco en blanco (チリ、2019) 監督テオ・コート
My Mexican Bretzel 監督ヌリア・ヒメネス・ロラング
El plan 監督ポロ・メナルゲス
La reina de los lagartos 監督ブルニン・ペルセベス、ナンド・マルティネス、
フアン・ゴンサレス

★<TVシリーズ・ミニシリーズ>も、作品賞はドラマ部門、コメディ部門の2カテゴリー、主演女優賞、主演男優賞、助演女優賞、助演男優賞の計6カテゴリーありますが、ノミネートは割愛、受賞結果だけアップいたします。
★新設された2カテゴリーには小さくて分かりにくいですがポスターを入れました。またスペイン映画以外には国名を入れましたが、国際映画祭の受賞作から選ばれているようです。どんどん間口が拡がっていく傾向が顕著になってきました。
追加情報:授賞式の日程が3月2日に変更になりました。コロナに振り回される2021年です。
ヴィゴ・モーテンセンにドノスティア栄誉賞*サンセバスチャン映画祭2020 ⑭ ― 2020年09月26日 18:14
プレゼンターは『アラトリステ』のアグスティン・ディアス・ヤネス

★9月24日、メイン会場クルサールで初監督、主演作品「Falling」の上映後、本映画祭のハイライトの一つであるドノスティア栄誉賞の授与式がありました。今年の受賞者ヴィゴ・モーテンセンは、登場したばかりは若干緊張して動揺しているようでしたが、以下のように素晴らしい授与式になりました。1986年から始まった栄誉賞受賞者の68人目、奇しくも本映画祭回数と同じでした。プレゼンターは『アラトリステ』の大物プロデューサーで監督のアグスティン・ディアス・ヤネスがトロフィーを手渡しました。「Falling」(カナダ=英、字幕スペイン語入り上映)のフォトコールでは、コロナ禍でヤジウマが制限されていましたが、あちこちから「ヴィゴ、ヴィゴ!」と声がかかり、その人気ぶりがうかがえました。第1回目上映後のプレス会見も彼一人で応対していた。
*「Falling」の作品&キャリア紹介は、コチラ⇒2020年07月08日

(アグスティン・ディアス・ヤネスからトロフィーを受け取るヴィゴ)
★ガラの司会者エドゥルネ・オルマサバル(タバカレラ理事会ディレクター)によるヴィゴ・モーテンセンのキャリア紹介がバスク語とスペイン語で始り、彼のようにどんなタイプの役柄でも演じ分けられる <ジャンボな俳優> は多くないと、その35年間にわたるキャリアを称賛した。代表的な出演映画『ロード・オブ・ザ・リング』のアラゴルン役に触れ、次々とコンパクトにモンタージュされた映像で『アラトリステ』『G.I.ジェーン』『イースタン・プロミス』『インディアン・ランナー』『ザ・ロード』『グリーンブック』などが紹介された。
★受賞スピーチは、素晴らしいアーティストに贈られるドノスティア賞受賞者の一員になれたことに感動していること、このように伝統のある賞を手にできた幸運に感謝していること、これからも精進して良い仕事をしていきたい、と述べた。最後のスピーチは「人生とは不確実なものだが、贈り物であることも忘れないようにしたい。孤独な人々に寄り添い、もうここにはいない人々に敬意を払って、できる限りの精進をし続けたい」、そしてバスク語で「ドノスティア映画万歳!」、よく響くスペイン語で「ビバ・エル・シネ!」と締めくくって退場した。

(会場の歓声に感動するヴィゴ・モーテンセン)
★モーテンセンの友人3人のビデオメッセージ、イギリスの製作者ジェレミー・トーマス、アルゼンチンの元サッカー選手ベト・アコスタ、シネアストのデヴィッド・クローネンバーグがビデオで祝福を送った。製作者は彼の俳優だけでなく詩人やミュージシャン、監督のような分野での活躍に触れ、彼と一緒に仕事をする素晴らしさを語った。元サッカー選手は彼がサッカーチーム <サンロレンソ・デ・アルマグロ> の熱狂的なサポーターであることを紹介、ユニホームを贈りたいと(ベトは現役時代にサンロレンソでもプレイした)。その後、サンセバスティアンが本拠地のサッカークラブ、レアル・ソシエダのミッドフィルダーのアシエル・イジャラメンディの手から、青と白のレアル・ソシエダと濃紺のサンロレンソのユニホーム2着が贈られた(サンロレンソといえば赤と青が有名だが、新しいデザインでしょうか)。

(アシエル・イジャラメンディから2着のユニホームを受け取るヴィゴ)

(VIGGOとネームの入ったレアル・ソシエダのユニホームを来場者に披露するヴィゴ)
★最後に『イースタン・プロミス』の監督が彼とコラボできたのは非常に光栄なことで、「君は素敵な俳優というだけでなく、製作、脚本、美術、撮影、小道具にまで通じていた。もし君が望むなら、また一緒に仕事をしたい。映画のどんな分野にも精通し、いつも愉快で、思いやりのある愛すべき協力者、これがヴィゴという人間だ」と最大級の祝辞を送った。

(映画祭参加者の署名をするヴィゴ)

(カメラマンの要望に気軽に応えるヴィゴ、9月24日、フォトコール)
第12回ガウディ賞2020*結果発表 ― 2020年01月23日 14:31
作品賞はカルロス・マルケス=マルセの辛口コメディ「Els dies que vindran」

★ガウディ賞の正式名称は「カタルーニャ映画アカデミー<ガウディ賞>」、2002年から始まったバルセロナ映画賞がその前進、第1回は2009年でした。カタルーニャ語映画に特化した映画賞ですが、別枠にカタルーニャ語以外の映画賞もあって、こちらにゴヤ賞やフォルケ賞にノミネートされた作品が並ぶことになります。しかし当然傾向は異なり、どちらかというとバルセロナ派の作品が選ばれています。アカデミー会員は年々増える傾向にあり、現在では400名を超えていると思いますが、メンバーの投票で決定します。授賞式の規模も大きく派手になってきております。マドリード派への対抗意識が強く、それがゴヤ賞とは異なる受賞結果になっています。
★作品賞(カタルーニャ語)は、カルロス・マルケス=マルセの「Els dies que vindran」(スペイン語題「Los días que vendrán」)、カタルーニャ語以外の作品賞は、ベレン・フネスの「La hija de un ladrón」が受賞しました。フネス監督は監督賞、共同執筆者マルサル・セブリアンと脚本賞も受賞しました。両作ともゴヤ賞作品賞にはノミネートされておりません。またゴヤ作品賞ノミネートの5作は、ガウディ賞ではノミネーションはゼロでした。21カテゴリーのうちメイン・カテゴリーの受賞作品は以下の通りです。
◎作品賞(カタルーニャ語)
Els dies que vindran 監督カルロス・マルケス=マルセ、脚本カルロス・マルケス=マルセ、クララ・ロケル、コラル・クルス
製作:Lastor Medias / Avalon Productora Cinematográfica 協賛TV3カタルーニャTV
*作品紹介は、コチラ⇒2019年04月11日

(カルロス・マルケス=マルセ監督)

◎作品賞(カタルーニャ語以外)
La hija de un ladrón 監督ベレン・フネス、脚本ベレン・フネス&マルシャル・セブリアン
製作:Obelon Cinematográfica / Bteam Pictures 協賛TV3カタルーニャTV

(実のエドゥアルドとグレタのフェルナンデス父娘が主役を演じた)
◎監督賞
ベレン・フネス 映画「La hija de un ladrón」

(ベレン・フネス監督)
◎脚本賞
ベレン・フネス、マルサル・セブリアン 映画「La hija de un ladrón」

(ベレン・フネス、マルサル・セブリアン)
◎主演女優賞
マリア・ロドリゲス 映画「Els dies que vindran」

(撮影中は大きなお腹を抱えて奮闘したマリア・ロドリゲス)
〇サンセバスチャン映画祭2019女優賞受賞のグレタ・フェルナンデス(「La hija de un ladrón」)と予想しましたが外れました。
◎主演男優賞
カラ・エレハルデ 映画『戦争のさなかで』(監督アレハンドロ・アメナバル)

(ノミネーションの山でしたが、やっと1賞しました)
〇他の候補者は、エドゥアルド・フェルナンデス(「La hija de un ladrón」)、ダビ・ベルダゲル(「Els dies que vindran」)などでした。
◎助演女優賞
ライア・マルル 映画「La inocencia」(監督ルシア・アレマニー)

(大喜びのライア・マルル)

(主演女優賞ノミネートのカルメン・アルファと母娘を演じたライア・マルル)
〇意外だったか意外でなかったかは人によるでしょう。他の候補者はアルモドバルの「Dolor y gloria」出演のフリエタ・セラノとノラ・ナバスなどでした。
*「La inocencia」の作品紹介は、コチラ⇒2019年07月24日
◎助演男優賞
エンリク・アウケル 映画「Quíen a hierro mata」(監督パコ・プラサ)

(受賞のアナウンスに白のロングコートで走り回って喜んだエンリク・アウケル)
〇フェロス賞の映画部門&TV シリーズ部門で2冠だったエンリク・アウケル、これで3冠となりました。ゴヤ新人賞が楽しみになってきました。対抗馬は『戦争のさなかで』のエドゥアルド・フェルナンデス、ロドリゴ・ソロゴジェンの「Madre」出演のアレックス・ブレンデミュール、「La hija de un ladrón」のアレックス・モネールでした。
◎プロダクション賞
オリオル・マイモ 映画「Quíen a hierro mata」

(パコ・プラサ監督のスリラー「Quíen a hierro mata」のポスター)
◎編集賞
アナ・プファフ、カルロス・マルケス=マルセ、オスカル・デ・ジスペルト
映画「Els dies que vindran」

(アナ・プファフ、カルロス・マルケス=マルセ)
◎撮影賞
マウロ・エルセ 映画『ファイアー・ウィル・カム』(監督オリベル・ラシェ)
〇本作では オリベル・ラシェがヨーロッパ映画賞の栄誉賞も受賞しました。

(やっと1賞したオリベル・ラシェ監督)
◎美術賞
マルタ・バサコ 映画「La hija de un ladrón」
★簡単でしたが以上です。去る1月19日(現地)に結果発表になっておりましたが、大分遅れてしまいました。いよいよ25日のゴヤ賞が目前となりましたが、どんな結果になるでしょうか。監督賞ノミネーションの4人の監督が出席して行われる恒例座談会(エル・パイス紙主催)で、それぞれ思いを語っていますが、今回はアルモドバルが取るのではないでしょうか。
第7回フェロス賞2020*結果発表 ― 2020年01月22日 13:57
アルモドバルの「Dolor y gloria」が6カテゴリーを独占したフェロス賞

★去る1月16日、第7回フェロス賞2020の結果発表が、マドリードのアルコベンダスで開催されました。総合司会は女優のマリア・エルバス。ドラマ部門は ペドロ・アルモドバルの「Dolor y gloria」がメインの作品・監督・脚本・主演男優・助演女優・オリジナル作曲賞の6冠を制しました。主演男優のアントニオ・バンデラスは欠席でしたが、ホセ・マリア・フォルケ賞に続いての受賞、第92回米アカデミー賞の男優賞にもノミネートされましたから、2020年は大変な年になりそうです。「Dolor y gloria」も国際映画賞部門の最終候補5作に選ばれ、師弟揃ってハリウッド入りになります。本作でアルモドバルの分身サルバドールを演じたバンデラスについて「彼は時には私の内面に入り込んできた」とガラで語っていた。

(赤絨毯に登場した総合司会者のマリア・エルバス)
★助演女優賞にはペネロペ・クルスとフリエタ・セラノの2人が同じ枠にノミネートされていましたが、予想通り先輩に軍配が上がりました。自分を起用してくれた監督に対して「贈り物だった」と感謝のスピーチをした。オリジナル作曲賞は最近のアルモドバル映画の殆ど全作を手掛けているアルベルト・イグレシアスでした。下の写真は6冠の「Dolor y gloria」、それぞれトロフィーを手にした4人、ペドロ・アルモドバルが3個手にしているのはバンデラスの分が含まれているのか。本当の勝負は間もなく開催されるマラガ対決です。

(左から、アルベルト・イグレシアス、監督・脚本賞のP・アルモドバル、
フリエタ・セラノ、A・アルモドバル)

(3個のトロフィーを手にしてご満足のアルモドバル監督)
★6部門ノミネートだった「La trinchera infinita」は、ベレン・クエスタの主演女優賞のみ、3部門ノミネートのアメナバルの『戦争のさなかで』は無冠でした。11部門しかないなかで、今年のように1作に集中した結果に白けた方もいたはずです。両作の監督たちの姿も見当たりませんでした。ベレン・クエスタの受賞は意外と受け止められたようです。下馬評ではロドリゴ・ソロゴジェンの「Madre」出演のマルタ・ニエトを推す人が多かったということでしたが、どちらも未見ですから何とも言えません。
★フェロス賞はドラマ部門とコメディ部門に分かれ、後者アリッツ・モレノの『列車旅行のすすめ』でした。ダニエル・サンチェス・アレバロの『SEVENTEENセブンティーン』は残念でした。以下が受賞結果です(ゴチック体が受賞)。
*映画*(11カテゴリー)
◎作品賞(ドラマ部門6作)
Dolor y gloria El Primer Deseo AIE / El Deseo DASLU (10個)
El hoyo(The Platform) Basque Films (6個)
La trinchera infinita Irusoin / La Claqueta / Manny Films / Moriarti Produkzioak(6個)
Lo que arde Miramemira, SL / Kowalski Filma / 4 a 4 Productions / Tarantura Luxemburgo
『ファイアー・ウィル・カム』(5個)
Los días que vendrán Avalon PC / Lastor Media SL
Quien a hierro mata Vaca Films / Atresmedia Cine, SLU

〇作品賞のプレゼンターはドレスが不評だった『アタメ!』主演のビクトリア・アブリル、「El Deseo」のアグスティン・アルモドバルが代表で受け取りスピーチ、続いて兄が弟より長いスピーチをしました。壇上にはペネロペ・クルス、フリエタ・セラノ、アルベルト・イグレシアス、助演ノミネートのアシエル・エチェアンディアなどが登壇しました。
◎作品賞(コメディ部門5作)
Diecisiete Atípica Films 監督:ダニエル・サンチェス・アレバロ『SEVENTEEN セブンティーン』
El incríble finde menguante Montreux Entertainment / Trepamuros Producciones
Litus A Contracorriente Films / SL AlamoPASL / Neón Producciones SL
監督:ダニエル・デ・ラ・オルデン
Lo dejo cuando quiera Telecinco Cinemas, SAU / Mod Pictures, Mod Producciones, SL
Ventajas de viajar en tren Morena Films / Señor y Señora, SL 『列車旅行のすすめ』(7個)
〇ダニエル・サンチェス・アレバロ『SEVENTEEN セブンティーン』は残念でした。
◎監督賞
ペドロ・アルモドバル 「Dolor y gloria」
ジョン・ガラーニョ、ホセ・マリ・ゴエナガ、アイトル・アレギ 「La trinchera infinita」
ガルデル・ガステル⋍ウルティア 「El hoyo(The Platform)」
オリベル・ラシェ 『ファイアー・ウィル・カム』
アリッツ・モレノ 『列車旅行のすすめ』

(監督・脚本どちらか区別できませんが、受賞スピーチをするアルモドバル)
◎主演女優賞
ピラール・カストロ 『列車旅行のすすめ』
ベレン・クエスタ 「La trinchera infinita」
グレタ・フェルナンデス 「La hija de un ladrón」 監督:ベレン・フネス
マルタ・ニエト 「Madre」 監督:ロドリゴ・ソロゴジェン
マリア・ロドリゲス・ソト 「Los días que vendrán」 監督:カルロス・マルケス=マルセ

〇「La trinchera infinita」からは、ベレン・クエスタの1賞だけでした。今年のドレスは白と黒が流行でしたが、彼女のドレスはレトロ過ぎたということで若干不評でした。襟元がⅤ字にあいているのも今年の流行のようです。
◎主演男優賞
アントニオ・バンデラス 「Dolor y gloria」(欠席)
アントニオ・デ・ラ・トーレ 「La trinchera infinita」
カラ・エレハルデ 『戦争のさなかで』(4個)
ルイス・トサール 「Quien a hierro mata」 監督:パコ・プラサ
ダビ・ベルダゲル 「Los días que vendrán」
◎助演女優賞
ペネロペ・クルス 「Dolor y gloria」
モナ・マルティネス 「Adiós」
ライア・マルル 「La inocencia」
アントニア・サン・フアン 「El hoyo(The Platform)」
フリエタ・セラノ 「Dolor y gloria」

〇大喜びの受賞者、自分を起用してくれたアルモドバル監督に感謝の辞を述べました。
◎助演男優賞
エンリク・アウケル Enric Auquer 「Quien a hierro mata」
アシエル・エチェアンディア 「Dolor y gloria」
エドゥアルド・フェルナンデス 『戦争のさなかで』
キム・グティエレス 『列車旅行のすすめ』
レオナルド・スバラグリア 「Dolor y gloria」

〇飛び上がって喜ぶ受賞者は、TVシリーズ部門でもレティシア・ドレラの「Vida perfecta」出演で助演男優賞を受賞しました。今宵のダブル受賞はこれからの人生でも忘れられない一日となるでしょう。
◎脚本賞
ペドロ・アルモドバル 「Dolor y gloria」
ダビ・デソラ&ペドロ・リベロ 「El hoyo(The Platform)」
ホセ・マリ・ゴエナガ&ルイソ・ベルデホ 「La trinchera infinita」
オリベル・ラシェ&サンティアゴ・フィリョル 『ファイアー・ウィル・カム』
ハビエル・グジョン 『列車旅行のすすめ』
◎オリジナル音楽賞
セルティア・モンテス 「Adiós」
アルトゥーロ・カルデルス 「Buñuel en el laberinto de las tortugas」
アルベルト・イグレシアス 「Dolor y gloria」
パスカル・ゲーニュ 「La trinchera infinita」
アレハンドロ・アメナバル 『戦争のさなかで』
クリストバル・タピア・デ・ベエル 『列車旅行のすすめ』

〇トロフィーのコレクター、いつも穏やかで謙虚なアルベルト・イグレシアス。久しぶりに音楽を担当したアレハンドロ・アメナバルは残念でした。
◎予告編賞
ミゲル・アンヘル・トゥルドゥ 「Adiós」
ホルヘ・ルエンゴ 「Dolor y gloria」
ラウル・ロペス 「El hoyo(The Platform)」
マルコス・フロレス 『ファイアー・ウィル・カム』
ラファ・マルティネス 『戦争のさなかで』

◎ポスター賞
ミゲル・ナビア 「El crack cero」
エドゥアルド・ガルシア 「El hoyo(The Platform)」
ラウラ・レナウ 『8月のエバ』 監督:ホナス・トゥルエバ
アイトル・エラスキン&カルロス・イダルゴ 『ファイアー・ウィル・カム』
ホセ・アンヘル・ペーニャ 『列車旅行のすすめ』

〇このポスターは文句なしの受賞でしょうか。実に素晴らしい。「El crack cero」は引退したとばかり思っていたホセ・ルイス・ガルシが監督しました。私立探偵ヘルマン・アレタを主人公にした、1981年の「El crack」と1983年の「El crackⅡ」と合わせて三部作になる。今回はモノクロでガルシ監督が撮るということで、ルイス・アンヘル・ぺレス、カエタナ・ギジェン・クエルボ、カルロス・サントス、マカレナ・ゴメスなど演技派が参集しました。ガルシは『黄昏の恋』(82)でスペインに初のオスカーをもたらした監督です。
★TVシリーズ部門は、主要作品を満遍なく選び、4作品にばらけました。コメディ部門で選ばれた、レティシア・ドレラが監督主演した「Vida perfecta」は、第2回カンヌ国際シリーズ映画祭2019で作品賞に当たるシリーズ賞と主演賞(演技賞)をレティシア・ドレラ、アイシャ・ビリャグラン、セリア・フレイジェイロの3人が揃って受賞した作品。サンセバスチャン映画祭の大型スクリーンで上映されるベロドロモ部門でも上映されているから受賞は想定内でした。レティシアは主演、アイシャとセリアは助演女優賞にノミネートされていましたが、カンデラ・ペーニャ(主演)とヨランダ・ラモス(助演)の手に渡りました。代わりにエンリク・アウケルが今宵2個目となる助演男優賞を手にしました。
*「Vida perfecta」の作品紹介は、コチラ⇒2019年08月04日
*TVシリーズ*(6カテゴリー)
◎作品賞(ドラマ部門)
Hierro (Movistar+)

(Movistar+ の製作者のようですが・・・)
〇「Hierro」(シーズン1、8話)のキャスト陣は、主演女優賞のカンデラ・ペーニャの他、ダリオ・グランディネッティが主演男優賞ノミネートされていた。他にKimberley Tell、フアン・カルロス・ベジィド、マルガ・アルナウ、アントニア・サン・フアンも出演している。カナリア諸島を舞台にしたスリラー。
◎作品賞(コメディ部門)
Vida perfecta (Movistar+)

(喜びのスピーチをする監督主演のレティシア・ドレラ、右端)

(全員登壇して喜び合ったスタッフと俳優陣)
◎主演女優賞
カンデラ・ペーニャ 作品「Hierro」

〇ミニスカート姿のカンデラ・ペーニャ、以前と雰囲気が変わった印象、レティシア・ドレラやヨランダ・ラモスもミニスカートでしたが、これも今年の流行でしょうか。
◎主演男優賞
ハビエル・カマラ 作品「Vota Juan」(コメディ)


◎助演女優賞
ヨランダ・ラモス 作品「Paquita Salas」(コメディ『パキータ・サラス』Netflix配信)

◎助演男優賞
エンリク・アウケル 作品「Vida perfecta」

*特別賞*
◎栄誉フェロス賞(Premio Feroz de Honor)

(受賞者フリア・グティエレス・カバとエミリオ・グティエレス・カバの姉弟)

(左側にプレゼンターのベレン・ルエダの姿が見える)
★今年AICE(スペイン映画ジャーナリスト協会)が選んだ栄誉フェロス賞は、フリア・グティエレス・カバ、エミリオ・グティエレス・カバの姉弟シネアストでした。フリアは1932年マドリード生れの舞台・映画・TVシリーズで活躍する女優。アントニオ・バルデムの「Nunca pasa nada」(63、1966フォトグラマス・デ・プラタ賞)やホセ・マリア・フォルケのコメディ「Un millón en la basura」(67)、代表作はマリオ・カムスの「El color de las nubes」で主役を演じゴヤ賞1998にノミネート、ホセ・ルイス・ガルシの「You're the One」でゴヤ賞2001の助演女優賞を受賞した。公開作品ではギリェム・モラレスの『ロスト・アイズ』(10)がある。本作の主役を演じたベレン・ルエダがプレゼンターでした。シネマ・ライターズ・サークル賞3回、フォトグラマス・デ・プラタ賞2回、サン・ジョルディ賞2回、マラガ映画祭2019の特別賞ビスナガ・シウダ・デル・パライソ賞を受賞している。
*フリア・グティエレス・カバのキャリア紹介は、コチラ⇒2019年03月17日

(ゴヤ賞2001助演女優賞のトロフィーを手にしたフリア)

(マラガ映画祭2019ビスナガ・シウダ・デル・パライソ賞の受賞スピーチをするフリア)
★エミリオ・グティエレス・カバは1942年バジャドリード生れの俳優。両親とも俳優という俳優一家の末っ子として父親と同じ名前エミリオを貰った。長姉イレーネも女優でしたが1995年に鬼籍入りしている。周囲の環境もあって子供の頃にスタート、芸歴は長く勿論現役で200作を超える。映画は1966年にカルロス・サウラの『狩り』やバシリオ・マルティン・パティノの「Nueve cartas a Berta」に出演した。ピラール・ミロの「Wether」(86)、マラガ映画祭1998に出品されたミゲル・アルバラデホの「La primera noche de mi vida」で男優賞を受賞した。しかし忘れていけないのがアレックス・デ・ラ・イグレシアのヒット作『13みんなのしあわせ』で第15回ゴヤ賞2001助演男優賞、スペイン俳優ユニオンやシネマ・ライターズ・サークルの助演男優賞などを受賞した。翌年アルバラデホのロマンティック・コメディ「El cielo abierto」で2個目のゴヤ賞助演を受賞した。

(『13みんなのしあわせ』でゴヤ賞助演男優賞受賞)
★他にパブロ・ララインの『ネルーダ』(16)でのピカソ役、アルベルト・ロドリゲスの『スモーク・アンド・ミラーズ』(17)、Netflixで配信されたフェルナンド・ゴンサレス・モリナの『ヤシの木に降る雪』(15)やフリオ・メデムの『ファミリー・ツリー~血族の秘密~』(18)がある。マラガ映画祭2016で姉より一足先に特別賞ビスナガ・シウダ・デル・パライソ賞に輝いた。
*エミリオ・グティエレス・カバのキャリア紹介は、コチラ⇒2016年04月14日

(マラガ映画祭2016ビスナガ・シウダ・デル・パライソ賞を姉から受け取った)
★ドキュメンタリー賞に、ビクトル・モレノの「La ciudad oculta」が受賞しました。ノミネートがあったのかどうか気づきませんでしたが、今までなかったカテゴリーです。ゴヤ賞にはノミネートされておりません。

(ビクトル・モレノ監督と撮影監督のホセ・アラヨン)
★ノミネートされたり、プレゼンターとして招かれた出席者のうち、ベスト・ドレッサー、ワースト・ドレッサーは、こんなシネアストたちでした。

(スパンコールのシャネル・スーツのペネロペ・クルス、エレガントではあるが平凡の採点)

(『列車旅行のすすめ』で主演女優賞ノミネートのピラール・カストロ)

(昨年12月にはなかったというタトゥーを披露した、ベレン・ルエダ、栄誉賞プレゼンター)

(ベストに選ばれたグレタ・フェルナンデスの左右対称の黒のドレス)

(「El hoyo」で助演女優賞ノミネートのアントニア・サン・フアン、ワースト採点)

(ドラマ部門作品賞プレゼンターのビクトリア・アブリル、ワースト採点)

(今年の流行、黒のミニスカートのレティシア・ドレラ)

(セリア・フレイジェイロ、「Vida perfecta」で助演助演女優賞ノミネート)

(常に品よくはみ出さない、ロドリゴ・ソロゴジェンとマルタ・ニエトのカップル)

(グレーのスリー・ピースのアントニオ・デ・ラ・トーレ)

(相変わらず目立つスーツのアシエル・エチェアンディア)
第25回ホセ・マリア・フォルケ賞2020*結果発表 ― 2020年01月13日 14:37
最優秀作品賞はバスクの監督トリオの「La trinchera infinita」に!

(グレタ・フェルナンデス、アントニオ・レシネス、イツィアル・カストロ、第25回ガラ)
★1月11日、マドリード市庁舎IFEMAのイベント会場(1800人収容)で第25回ホセ・マリア・フォルケ賞の授賞式がありました。総合司会は今回3回目となるエレナ・サンチェスとサンティアゴ・セグラ。ホセ・マリア・フォルケの生れ故郷サラゴサ市で、2年連続開催されていたガラもマドリードに戻ってきました。ノミネーションを受けた人々、トロフィーのプレゼンターたちは勿論ですが、マドリードとあって多くのシネアストたちが赤絨毯を踏みました。ゴヤ賞の前哨戦といわれていた本賞も、フォルケ賞が始まってからはその役目は終わったと判断したのか、独自の視点で授賞者を選んでいるようです。監督のようには光の射さない縁の下の力持ち、製作者集団を讃える賞がその始り、従って監督賞はなく、現在ある俳優賞も後に追加されたものでした。

(息の合った総合司会者、エレナ・サンチェスとサンティアゴ・セグラ)
★フォルケ賞の選考母体はEGEDA(オーディオビジュアル著作権管理協会)で、会長はエンリケ・セレソです。会長がEGEDA金のメダルという栄誉賞のプレゼンターを務めます。今年は比類ないシネアストであるゴンサロ・スアレス(オビエド1934、85歳)が受賞しました。
*フォルケ賞2020のノミネーション記事は、コチラ⇒2019年11月27日

(EGEDA金のメダルを手にしたゴンサロ・スアレス)
第25回ホセ・マリア・フォルケ賞結果発表(*ゴチック体が受賞)
◎作品賞(長編ドラマ&アニメーション)
Dolor y gloria 監督ペドロ・アルモドバル
*La trinchera infinita 監督ジョン・ガラーニョ、アイトル・アレギ、ホセ・マリ・ゴエナガ
Mientras dure la guerra (『戦争のさなかで』)監督アレハンドロ・アメナバル
O que arde (『ファイアー・ウィル・カム』)監督オリベル・ラシェ

(プレゼンターのグラシア・ケレヘタ監督と女優のパス・ベガ)

(ジョン・ガラーニョ、アイトル・アレギ、ホセ・マリ・ゴエナガ)
◎女優賞
ベレン・クエスタ(La trinchera infinita)
*マルタ・ニエト(Madre)監督ロドリゴ・ソロゴイェン
グレタ・フェルナンデス(La hija de un ladlón)監督ベレン・フネス
ピラール・カストロ(Ventajas de viajar en tren)『列車旅行のすすめ』 同アリッツ・モレノ


(赤絨毯に現れたマルタ・ニエトとロドリゴ・ソロゴジェンのカップル)
◎男優賞
*アントニオ・バンデラス(Dolor y gloria)
アントニオ・デ・ラ・トーレ(La trinchera infinita)
カラ・エレハルデ(Mientras dure la guerra)『戦争のさなかで』
Enric Auquer(Quien a hierro mata) 監督パコ・プラサ
〇アントニオ・バンデラスは欠席。代理として製作者のアグスティン・アルモドバルが受け取りました。プレゼンターはナタリア・デ・モリーナとマルタ・アサス。
◎ラテンアメリカ映画賞
*La odisea de los giles(アルゼンチン) 監督セバスティアン・ボレンステインBorensztein
Monos(コロンビア)『猿』 監督アレハンドロ・ランデス
Araña(チリ)『蜘蛛』 監督アンドレス・ウッド
La camarista(メキシコ) 監督リラ・アビレス
〇受賞作は、ゴヤ賞イベロアメリカ映画賞にもノミネートされています。 リカルド・ダリンとチノ・ダリンが共演している。監督は長年リカルドを主役にした映画を撮っていることで有名)

(右側が製作者のフェルナンド・ボバイラ、『戦争のさなかで』もプロデュースしている)
◎ Cine en Educación y Valores 賞
Abuelos 監督サンティアゴ・レケホ
Vivir dos veces 監督マリア・リポル
Elisa y Marcela 『エリサ&マルセラ』 監督イサベル・コイシェ (Netflix邦題)
*Diecisiete 『SEVENTEENセブンティーン』監督ダニエル・サンチェス=アレバロ(Netflix邦題)
〇アスペルガー障害のある弟(ビエル・モントロ)と、彼に振り回される兄との再生を語るロードムービー『SEVENTEENセブンティーン』が受賞、前回の受賞作品であるハビエル・フェセルの『だれもが愛しいチャンピオン』(劇場公開中)に出演した視覚障害者のヘスス・ビダルがプレゼンターでした。
*『SEVENTEENセブンティーン』の紹介記事は、コチラ⇒2019年10月29日

(サンチェス=アレバロ監督、主役のビエル・モントロ、プレゼンターはヘスス・ビダル)

(マドリード市長ホセ・ルイス・マルティネス=アルメイダ、ヘスス・ビダル、
マドリード共同体委員長イサベル・ディアス・アジュソ)
◎長編ドキュメンタリー賞
Ara malikian: una vida entre las cuerdas 監督ナタ・モレノ
〇マドリード在住のレバノン人バイオリニストのアラ・マリキアンを主軸に国境を越えてきた移民たちの人生が語られる。
〇ゴヤ賞にもノミネートされています。

(トロフィーを手にしたナタ・モレノ監督とアラ・マリキアン)
◎短編映画賞
El nadador 監督パブロ・バルセ
〇ゴヤ賞にもノミネートされています。

(トロフィーを手にした中央がパブロ・バルセ監督)
◎ EGEDA金のメダル
〇ゴンサロ・スアレス(オビエド1934年)は、脚本家、脚本家。スペインの監督としては特異な地位をしめているスアレス監督ですが、御年85歳になっても現役です。長編デビューは1969年のコメディ・スリラー「Ditirambo」で決して笑わない風変わりな英雄ディティランボを演じた。代表作は、1974年のレオポルド・アラス筆名クラリンの同名小説「La Regenta」の映画化、1985年TVシリーズ「Los pazos de Ulloa」、「Remando al viento」がサンセバスチャン映画祭1988で監督賞を受賞(撮影監督の弟カルロスも撮影賞を受賞)、第3回ゴヤ賞1989でも監督賞を受賞した。「Don Juan en los infiernos」(91)、ハビエル・バルデム、スアレス映画の常連カルメロ・ゴメスやチャロ・ロペスが出演した話題作「El detective y la muerute」(94)、2000年マリベル・ベルドゥ、カルメロ・ゴメス、アントニオ・レシネスなどを起用した「El portero」などがある。
〇2007年の「Oviedo Express」は、クラリンの小説La Regentaを舞台化した演劇集団の巡業を描いたロマンス・コメディ。カルメロ・ゴメス、アイタナ・サンチェス=ヒホン、バルバラ・ゴエナガ、ナイワ・ニムリ、マリベル・ベルドゥ、ホルヘ・サンスなど豪華キャストだった。ゴヤ賞2008にノミネートされたが無冠だった。これを最後に引退したのかと思っていたら、昨年アニメーション「El sueño de Malinche」を発表、周囲を驚かせた。アステカ帝国崩壊を舞台にしたアニメ、マリンチェにマリアン・アルバレス、コルテス総督にサンティアゴ・メレンデス、モクテスマ王には数年前引退宣言をしたはずのカルメロ・ゴメスがボイスを担当していたのでした。
〇撮影監督のカルロス・スアレス(オビエド1946)は実弟、二人三脚で映画を製作していた。しかし兄より一足先に昨年10月に旅立ちました。スペインで最も愛されている監督ガルシア・ベルランガの撮影監督でもありました。弟のことを思い出しながら製作者について「一番いいのは私のことなど思い出さなくてもいいと考えているが、私は製作者のことを常に思い出している」~「製作は非常に困難な仕事で、とても尊敬している」とも。製作者に光を当てる EGEDA金のメダルを受賞できたことは嬉しいに違いない。会長エンリケ・セレソがスペイン映画の保護に果たしている努力を感謝したようです。

(エンリケ・セレソとゴンサロ・スアレス、フォルケ賞2020授賞式で)
★以前は地味だった授賞式も年々華やかになってきました。以下、こんな衣装のシネアストが赤絨毯を踏みました。お楽しみください。

(アンドレス・ウッド『蜘蛛』の主役マリア・バルベルデ)

(女優賞ノミネートのベレン・クエスタ)

(女優賞ノミネートのグレタ・フェルナンデス)

(ベストドレッサーのミシェル・ジェンナー、ディオールのデザイン)

(白いドレスが評判だったバネッサ・ロメロ)

(男優賞プレゼンターだったナタリア・デ・モリーナ、パンツルックは珍しい)

(いつも出席する律義なアレハンドロ・アメナバル)

(男優賞初ノミネートのEnric Auquer)
第7回フェロス賞2020*ノミネーション発表 ― 2019年12月02日 17:44
アルモドバルの「Dolor y gloria」が最多の10部門ノミネート

★去る11月29日、第7回フェロス賞2020のノミネーション発表がありました。昨年は12月に入ってからの発表でしたが若干早まりました。授賞式は2020年1月16日マドリードのアルコベンダス、総合司会は女優のマリア・エルバスです。選考母体はAICE(スペイン映画ジャーナリスト協会)と米ゴールデン・グローブ賞に性格が似ています。ゴヤ賞とはカテゴリーの種類が異なり、映画とTVシリーズ、フィクション部門もドラマとコメディに分かれるなどの違いがあります。ノミネーションは映画のみにして、結果は Netflix などでTVシリーズを観る機会も最近増えているのでアップしたい。

(AICE会長のマリア・ゲーラと女優のグレタ・フェルナンデス)
★アルモドバルの「Dolor y gloria」が最多の10個、数と受賞は必ずしも一致しませんが、今回は一致する予感がします。アントニオ・バンデラスの主演男優賞受賞ももう決りでしょうか。東京国際映画祭とラテンビートで上映されているアリッツ・モレノの『列車旅行のすすめ』の7個にも驚かされました。

(アントニオ・バンデラス、「Dolor y gloria」から)
*映画*(11カテゴリー)
◎作品賞(ドラマ部門6作)
Dolor y gloria El Primer Deseo AIE / El Deseo DASLU (10個)
El hoyo(The Platform) Basque Films (6個)
La trinchera infinita Irusoin / La Claqueta / Manny Films / Moriarti Produkzioak(6個)
Lo que arde Miramemira, SL / Kowalski Filma / 4 a 4 Productions / Tarantura Luxemburgo
『ファイアー・ウィル・カム』(5個)
Los días que vendrán Avalon PC / Lastor Media SL
Quien a hierro mata Vaca Films / Atresmedia Cine, SLU
◎作品賞(コメディ部門5作)
Diecisiete Atípica Films 監督:ダニエル・サンチェス・アレバロ『SEVENTEEN セブンティーン』
El incríble finde menguante Montreux Entertainment / Trepamuros Producciones
Litus A Contracorriente Films / SL AlamoPASL / Neón Producciones SL
監督:ダニエル・デ・ラ・オルデン
Lo dejo cuando quiera Telecinco Cinemas, SAU / Mod Pictures, Mod Producciones, SL
Ventajas de viajar en tren Morena Films / Señor y Señora, SL 『列車旅行のすすめ』(7個)
◎監督賞
ペドロ・アルモドバル 「Dolor y gloria」
ジョン・ガラーニョ、ホセ・マリ・ゴエナガ、アイトル・アレギ 「La trinchera infinita」
ガルデル・ガステル⋍ウルティア 「El hoyo(The Platform)」
オリベル・ラシェ 『ファイアー・ウィル・カム』
アリッツ・モレノ 『列車旅行のすすめ』
◎主演女優賞
ピラール・カストロ 『列車旅行のすすめ』
ベレン・クエスタ 「La trinchera infinita」
グレタ・フェルナンデス 「La hija de un ladrón」 監督:ベレン・フネス
マルタ・ニエト 「Madre」 監督:ロドリゴ・ソロゴジェン
マリア・ロドリゲス・ソト 「Los días que vendrán」 監督:カルロス・マルケス=マルセ
◎主演男優賞
アントニオ・バンデラス 「Dolor y gloria」
アントニオ・デ・ラ・トーレ 「La trinchera infinita」
カラ・エレハルデ 『戦争のさなかで』(4個)
ルイス・トサール 「Quien a hierro mata」 監督:パコ・プラサ
ダビ・ベルダゲル 「Los días que vendrán」
◎助演女優賞
ペネロペ・クルス 「Dolor y gloria」
モナ・マルティネス 「Adiós」
ライア・マルル 「La inocencia」
アントニア・サン・フアン 「El hoyo(The Platform)」
フリエタ・セラノ 「Dolor y gloria」
◎助演男優賞
エンリク・アウケル 「Quien a hierro mata」
アシエル・エチェアンディア 「Dolor y gloria」
エドゥアルド・フェルナンデス 『戦争のさなかで』
キム・グティエレス 『列車旅行のすすめ』
レオナルド・スバラグリア 「Dolor y gloria」
◎脚本賞
ペドロ・アルモドバル 「Dolor y gloria」
ダビ・デソラ&ペドロ・リベロ 「El hoyo(The Platform)」
ホセ・マリ・ゴエナガ&ルイソ・ベルデホ 「La trinchera infinita」
オリベル・ラシェ&サンティアゴ・フィリョル 『ファイアー・ウィル・カム』
ハビエル・グジョン 『列車旅行のすすめ』
◎オリジナル音楽賞
セルティア・モンテス 「Adiós」
アルトゥーロ・カルデルス 「Buñuel en el laberinto de las tortugas」
アルベルト・イグレシアス 「Dolor y gloria」
パスカル・ゲーニュ 「La trinchera infinita」
アレハンドロ・アメナバル 『戦争のさなかで』
クリストバル・タピア・デ・ベエル 『列車旅行のすすめ』
◎予告編賞
ミゲル・アンヘル・トゥルドゥ 「Adiós」
ホルヘ・ルエンゴ 「Dolor y gloria」
ラウル・ロペス 「El hoyo(The Platform)」
マルコス・フロレス 『ファイアー・ウィル・カム』
ラファ・マルティネス 『戦争のさなかで』
◎ポスター賞
ミゲル・ナビア 「El crack cero」
エドゥアルド・ガルシア 「El hoyo(The Platform)」
ラウラ・レナウ 『8月のエバ』 監督:ホナス・トゥルエバ
アイトル・エラスキン&カルロス・イダルゴ 『ファイアー・ウィル・カム』
ホセ・アンヘル・ペーニャ 『列車旅行のすすめ』
★以上11カテゴリーです。最多のアルモドバルの新作は同じカテゴリーに複数でノミネートされているのでそれを差し引くと8部門です。それにしても多い。いずれにしろ来年には公開されるでしょう。作品賞(ドラマ)の中で当ブログで記事にしなかったのに6個もノミネートされたガルデル・ガステル⋍ウルティアの「El hoyo(The Platform)」は、ホラー・スリラー、SF映画のようでトロント映画祭の「ミッドナイト・マッドネス」で観客賞を受賞、続くシッチェス映画祭で作品賞を受賞しました。ノミネートされている予告編を見ただけでも興味が惹かれる。アントニア・サン・フアンの怪演に久しぶりに対面しました。これも本邦上陸するでしょう。

(「El hoyo(The Platform)」のポスター)
★TVシリーズ(6カテゴリー)は、Netflix で配信されている『パキータ・サラス』や『ペーパー・ハウス』が、今年も候補に挙がっています。結果発表後、受賞作品だけアップします。
第25回ホセ・マリア・フォルケ賞2020*ノミネーション発表 ― 2019年11月27日 15:35
結果発表の授賞式はマドリードで――2020年1月11日

★去る11月21日(木)来春のスペイン映画賞の先陣を切って、第25回ホセ・マリア・フォルケ賞2020のノミネーション発表がありました。2020年はサラゴサからマドリードに戻ってきます。2019年に製作された映画の中から選ばれ、選考母体はEGEDA(オーディオビジュアル著作権管理協会)です。マドリードのEGEDA本部でイサベル・ディアス・アジュソ、ジャーナリストのエレナ・サンチェス、俳優監督のサンチャゴ・セグラが出席しました。フォルケ賞は、監督ではなく縁の下の力持ちとして映画産業を支える製作者に光を当てるべく設けられた賞で、唯一監督賞のない映画賞です。
★作品賞には、ラテンビートFF、東京国際映画祭で上映された2作品、ラテンアメリカ映画部門にも2作品がノミネートされています。4作とも米アカデミー賞2020の国際長編映画賞部門の各国代表作品になりました。各カテゴリーのノミネーションは以下の通りです。栄誉賞は目下のところ未発表です。
◎作品賞(長編ドラマ&アニメーション)
Dolor y gloria 監督ペドロ・アルモドバル
La trinchera infinita 監督ジョン・ガラーニョ、アイトル・アレギ、ホセ・マリ・ゴエナガ
Mientras dure la guerra (『戦争のさなかで』)監督アレハンドロ・アメナバル
O que arde (『ファイアー・ウィル・カム』)監督オリベル・ラシェ
◎女優賞
ベレン・クエスタ(La trinchera infinita)
マルタ・ニエト(Madre)監督ロドリゴ・ソロゴイェン
グレタ・フェルナンデス(La hija de un ladlón)監督ベレン・フネス
ピラール・カストロ(Ventajas de viajar en tren)『列車旅行のすすめ』 同アリッツ・モレノ
◎男優賞
アントニオ・バンデラス(Dolor y gloria)
アントニオ・デ・ラ・トーレ(La trinchera infinita)
カラ・エレハルデ(Mientras dure la guerra)『戦争のさなかで』
Enric Auquer(Quien a hierro mata) 監督パコ・プラサ
◎ラテンアメリカ映画賞
La odisea de los gires(アルゼンチン) 監督セバスティアン・ボレンステインBorensztein
Monos(コロンビア)『猿』 監督アレハンドロ・ランデス
Araña(チリ)『蜘蛛』 監督アンドレス・ウッド
La camarista(メキシコ) 監督リラ・アビレス
◎ Cine en Educación y Valores 賞
Abuelos 監督サンティアゴ・レケホ
Vivir dos veces 監督マリア・リポル
Elisa y Marcela 『エリサ&マルセラ』 監督イサベル・コイシェ (Netflix邦題)
Diecisiete 『SEVENTEENセブンティーン』監督ダニエル・サンチェス・アレバロ(Netflix邦題)
★その他、長編ドキュメンタリーと短編映画賞は受賞作品のみアップします。
★当ブログで作品紹介がなかった作品の中で、少し意外感のあるのがパコ・プラサのスリラー仕立ての復讐劇「Quien a hierro mata」で男優賞にノミネートされたEnric Auquerはただ一人主役ではなく、主役はルイス・トサールです。数多ある映画祭とは無関係に8月に公開され人気を博している。

(左から、Enric Auque、プラサ監督、ルイス・トサール、イスマエル・マルティネス)
★ラテンアメリカ映画部門のセバスティアン・ボレンステインの「La odisea de los giles」は、サンセバスチャン映画祭で上映されましたが、映画祭開催前の8月にアルゼンチンでは公開されていました。リカルド・ダリンとチノ・ダリンがドラマでも父子を演じ、これまた観客に受け入れられ、米アカデミー賞国際長編映画賞アルゼンチン代表作品に選ばれています。監督はリカルド・ダリンの魅力を引き出すための映画を撮っている。


(ダリン父子、サンセバスチャン映画祭2019のフォトコール)
★メキシコのリラ・アビレスのデビュー作「La camarista」も同じケースです。タイトルのカマリスタは、ホテルなどの部屋係メイドのことで、ベッドメーキングの他、部屋の整理整頓、掃除をこなすメイドさんです。映画はメキシコシティの高級ホテルの一つで働く若いカマリスタが遭遇する人生模様が描かれる。上記の仕事の他に宿泊客のベビーシッターまで仰せつかるようで、各映画祭で観客賞を受賞している。

(カマリスタを演じるガブリエラ・カルメルがリンネ類に押しつぶされているポスター)
★サンティアゴ・レケホのコメディ「Abuelos」は、3人のお祖父さんが孫子守りでてんてこ舞いするお話、芸達者を揃えて観客を幸せにしてくれる。笑う門には福来る、何かを始めるのに遅すぎることはない精神です。マリア・リポルの「Vivir dos veces」は、アルゼンチンのオスカル・マルティネスとインマ・クエスタを起用したファミリードラマです。

(3人のお祖父さんを配した「Abuelos」のポスター)

(オスカル・マルティネスとインマ・クエスタを配した「Vivir dos veces」のポスター)
★アメナバルの『戦争のさなかで』がバレンシアの映画館で10月初め上映されたとき、5人の極右グループのメンバーが上映をボイコットした廉で、1人ずつ3000ユーロ、合計15,000ユーロの罰金が科されました。カラ・エレハルデが「スペインは83年間、1ミリも前進していない」と嘆息していたことが思い起こされます。
★去る11月26日、アルモドバルの「Dolor y gloria」がタイム誌が選ぶ今年のベストテン第1位に輝いたニュースが飛び込んできました。第2位はマーティン・スコセッシの『アイリッシュマン』、第3位はクエンティン・タランティーノの『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』でした。こうなるとアルモドバル新作は米アカデミー賞国際長編映画賞スペイン代表作品ですからノミネートが期待できそう。フォルケ賞も作品賞・男優賞は決りかなぁ、これは独りごとです。
ゴヤ賞はテレビ・シリーズに門戸を閉ざす ― 2019年04月09日 14:51
スペイン映画アカデミーは満場一致でシリーズ・ドラマ締め出しを決定
★スペイン映画アカデミー会長マリアノ・バロッソは、2020年のゴヤ賞は「現在のシステムを維持」して「TVシリーズには門戸を閉ざす」との声明を発表した。「テレビ局製作を含めた作品も認めない」という厳しい枠がはめられた。少なくとも当面はシリーズ・ドラマ除外のようだが、映画アカデミー執行部の「満場一致」の決定とは驚きです。しかしこの決定は、今年のゴヤ賞ガラでの恒例の会長スピーチとは反対方向に向かった印象です。
★現在のようなテレビ局主導になりがちな状況から「数千数百万の小さな画面を敵と見なせば、私たちは立ち行かなくなるでしょう。観客は私たちの映画を映画館で観ていますが、また他の画面で見ている人もたくさん存在します。私たちはあらゆる種類の画面を考慮したい。・・・映画はテレビと対抗すべきではないし、テレビも映画を打ち倒すべきではありません。私たちは勝利者同盟なのです」とバロッソ会長はスピーチしたのでした。映画とテレビは一種の運命共同体、どちらも生き残ろうと語っていたはずです。

(2019年ゴヤ賞授賞式で挨拶するマリアノ・バロッソ会長)
★アカデミーによると、決定までには何回も会合がもたれたようで、特にゴヤ賞の対象作品にシリーズ物も受け入れる可能性を開こうというバロッソ会長提案の核心について討議したようです。エンリケ・ウルビス監督がヨーロッパ・プレスに語ったところによると、ゴヤ賞が「テレビに頼る前」に「スペイン映画がするべきこと」はたくさんある。「私たちは角突き合いするのではなく、互いに支え合わねばならない」と。バロッソのスピーチは「良かった」が、投票には「反対票」を入れたと付け加えた。全員一致も複雑だったようです。互いに助け合わねばならないが、対象作品にシリーズ作品を入れるのは目下はNoということですかね。
★ゴヤ賞対象作品になるには、現在ドラマとアニメーションの場合は劇場での連続上映7日間、ドキュメンタリーは3日間が義務付けられているが、これは変更なしということです。今後アカデミーは、テレビ局、プラットフォーム、制作会社、テレビ・アカデミーとの会合を模索しており、近く開催されるようです。テレビ局の資金援助なしに製作することは至難の業でしょう。やはりNetflixのようなプラットフォームの出現が大きいのではないでしょうか。将来的には『ROMA/ローマ』のようなNetflixでもオリジナル作品の増加が避けられないから、なし崩しではなくきちんと決めておくべき事案です。
★今から8年前の2011年、当時映画アカデミー会長だったアレックス・デ・ラ・イグレシアが「私たちはインターネットに恐怖を覚えるべきではありません。インターネットは映画の救世主になるだろう」とゴヤ賞授賞式でスピーチした。賛成反対が交錯して事態は紛糾した。嫌気がさしてデ・ラ・イグレシアは任期半ばで辞任した。あれから8年、くすぶり続けていた火種が発火したようです。テレビで映画を見る若い層が増え、映画は映画館で見ていたオールドファンが少数派になってきている。それにつれて地方都市での映画館閉鎖にも拍車が掛かってスクリーンそのものが消滅しつつある。テレビはおろか今ではスマホで映画を見る時代になりつつある。結果、映画館はガラ空きで閑古鳥が鳴いている。という状況にアカデミーは危機感を募らせている。

(ネットは映画の救世主とスピーチしたアカデミー会長デ・ラ・イグレシア、2011年ガラ)
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