第39回ゴヤ賞2025栄誉賞にアイタナ・サンチェス=ヒホン*ゴヤ賞2025 ① ― 2024年12月09日 11:41
総合司会者にベテラン女優マリベル・ベルドゥとレオノール・ワトリング
(アイタナ・サンチェス=ヒホン)
★第39回ゴヤ賞2025の授賞式は、既に2月8日(土)のグラナダ開催が決まっておりました(グラナダ展示会議宮殿にて開催)。今年はノミネーション発表が遅れていますが、10月8日、スペイン映画アカデミー会長フェルナンド・メンデス=レイテ、グラナダ市長マリフラン・カラソ、副会長ラファエル・ポルテラ、グラナダ市議会文化評議員フアン・ラモン・フェレイラなどが出席して、イスラム建築であるサント・ドミンゴの王の間にてゴヤ賞の大枠が発表されました。
(映画アカデミー会長メンデス=レイテ、グラナダ市長マリフラン・カラソ)
★11月13日、ガラ当日の総合司会者の発表がありました。マリベル・ベルドゥとレオノール・ワトリング、日本でも公開作品の多い知名度抜群の女優二人が仕切ることになりました。
(総合司会者マリベル・ベルドゥ、レオノール・ワトリング)
★マリベル・ベルドゥ(マドリード1970)は「レオノールと私は親友同士、私たちは共にエネルギッシュです。二人ともやるべき仕事を理解しており、チームを組んでやります。だからガラでは、ご覧になってくださる方々が楽しめるよう司会することに務めます。ゴヤ賞という特別な夕べに愛をこめて取りくみます。どうか上手くいきますように!」と表明した。
*ゴヤ賞ではビセンテ・アランダの『アマンテス』(91)で初ノミネートされてから何回も対抗馬に敗れ、グラシア・ケレヘタの「Siete mesas de billar francés」(07)が「5度目の正直」となって受賞するまでの道程が長かった。しかしその後の怒涛の受賞歴は以下のキャリア紹介に譲ります。
*マリベル・ベルドゥのキャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ⇒2014年04月07日
★レオノール・ワトリング(マドリード1975)は「ゴヤ賞のガラに、私が尊敬するマリベルと一緒に司会することが夢でした。名誉なことでありますが責任も感じています。素晴らしいシナリオ作家たちが私たちと一緒だなんて何と力強いことでしょう!」と強調しました。やはりガラ全体を構成する脚本家の良し悪しが鍵を握っています。
*ゴヤ賞関連では、アントニオ・メルセロの「La hora de los valientes」(98)、イネス・パリス他の『マイ・マザー・ライクス・ウーマン』(02)でノミネートされただけです。デビューは1990年代初めですが、ビガス・ルナの『マルティナは海』(01)で日本初登場、次いで翌年アルモドバルの『トーク・トゥ・ハー』でブレイクした。バンド Marlango のボーカルとしても活躍している。
*レオノール・ワトリングのキャリア紹介は、コチラ⇒2014年06月11日
ゴヤ栄誉賞2025の受賞者アイタナ・サンチェス=ヒホン
★11月17日、スペイン映画アカデミーは、ゴヤ賞2025ゴヤ栄誉賞受賞者にアイタナ・サンチェス=ヒホン(ローマ1968)をアナウンスしました。映画のみならず舞台、TVシリーズで40年に及ぶキャリアの持ち主です。アカデミー理事会は「最初から仲間から愛され、尊敬され、批評家のみならず観客からの評価も高い」、メンデス=レイテ会長は「真面目で責任感が強く、有能で親密、すべての作品に誠実さと深みを与える方法を熟知している」ことを授賞理由に挙げました。
(インタビューを受ける受賞者、プレス会見にて)
★一方、アイタナは授賞の知らせに「圧倒され、とても感謝して幸せに浸っています」とコメント、また女優にとって栄誉賞は「名誉であり、仲間から愛されていると感じられる、映画ファミリーの一員であることを意味します。プロとして40年が経ちましたが、自分が愛されていると感じて感動しています。これからの前進の励みになります」と語った。
(メンデス=レイテ会長とアイタナ・サンチェス=ヒホン)
★過去の女性受賞者は8名、うち直近10年間の受賞者が5対5と男性と拮抗していて、やっと女性シネアストが評価される時代が到来したことを実感します(他の4人はアンヘラ・モリーナ、ぺパ・フローレス〈マリソル〉、マリサ・パレデス、アナ・ベレン)。今は亡きビガス・ルナの『裸のマハVolavérunt』のアルバ公爵夫人役でサンセバスチャン映画祭1999銀貝賞の女優賞を受賞、アルモドバルの『パラレル・マザーズ』(21)でゴヤ賞助演女優賞に初ノミネートされ、フェロス賞とイベロアメリカ・プラチナ賞には受賞した。別途紹介記事を予定していますが、スペイン映画アカデミー金のメダルをフアン・ディエゴと受賞した折に、紹介記事をアップしています。
*アイタナ・サンチェス=ヒホンの紹介記事は、コチラ⇒2015年08月01日
アルモドバルのドノスティア栄誉賞ガラ*サンセバスチャン映画祭2024 ㉙ ― 2024年09月29日 17:21
アルモドバルにドノスティア栄誉賞――プレゼンターはティルダ・スウィントン
★9月26日(木)クルサール・ホール、ペドロ・アルモドバルのドノスティア栄誉賞ガラが、スペイン首相ペドロ・サンチェス夫妻も出席して賑々しく行われました。受賞者は前日25日が75歳の誕生日だった由、サンセバスチャン映画祭に初めて参加したのは44年前、デビュー作『ペピ、ルシ、ボンと他大勢の娘たち』がニュー・ディレクターズ部門にノミネートされたときでした。そして今年、第81回ベネチアFFの金獅子賞を受賞したばかりの「The Room Next Door / La habitación de al lado」がセレモニーの後上映されました。本作は東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門にラテンビート共催作品として『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』の邦題で上映されます。
(左から、首相夫人ベゴーニャ・ゴメス、ペドロ・サンチェス首相、
ペドロ・アルモドバル、ティルダ・スウィントン、SSIFF2024ガラ、9月26日)
★プレゼンターはラ・マンチャの監督が英語で長編を撮った『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』の主役の一人を演じたティルダ・スウィントン、彼女はジャン・コクトーの戯曲に基づいた短編『ヒューマン・ボイス』にも主演している。最後にスペインサイドの共演者、フアン・ディエゴ・ボット、ラウル・アレバロ、メリナ・マシューズ、ビクトリア・ルエンゴも登壇して、受賞者を祝福しました。もう一人の主演者ジュリアン・ムーアは残念ながら不参加でした。プレゼンターはアルモドバルの映画について「人間的な親しみのこもった慰めをあたえ、私たちが必要としているときに私たちを明るくし」、「私たちを虜にし、楽しませ、感動させ、ほぼ半世紀を分かち合ってきた。そして終りの兆しが感じられない」と称揚した。
(トロフィーにキスするラ・マンチャの監督)
(お祝いのスピーチをするティルダ・スウィントン)
★受賞者は開口一番、会場に夫人を同伴して出席していたサンチェス首相に「文化を支援するためにここに来ていただき本当にありがとう」とまず感謝を送った。こう挨拶されては支援しないわけにいかないです。「私の映画を際立たせるものがあるとすれば、それは登場人物たちが享受している自由であり、自由がなければ人生は生きる価値がない」と語った。便箋4~5枚手にしていたから長い受賞スピーチだった。「私のような年齢でドノスティア賞を貰うのは終着を意味するかもしれない。これまでの行程のご褒美かもしれないが、私はそう思っていない。私にとって映画は、祝福か呪詛か、休むことなく脚本を書き監督すること以外の人生は考えられないし、仮にそれが酷い作品だったとしても作り続けるつもりだ、何故ならその反対は空っぽだからだ」とスピーチし、これからも映画を作り続けることが自分の命であり、映画なしの人生はあり得ないことを強調した。
(左から、ラウル・アレバロ、メリナ・マシューズ、受賞者、ビクトリア・ルエンゴ、
フアン・ディエゴ・ボット、ティルダ・スウィントン)
★ティルダ・スウィントンとジュリアン・ムーアが主演する新作について「憎しみのメッセージが支配する現実において、私の映画はその反対です。共感、寄り添い、助け合うことを提案しています」と、かつてのキャバレー・アーティスト、危険を怖れずメロドラマを撮りつづけるアルモドバルは、これから上映される新作のほのめかしをした。
★1970年代に徒手空拳でマドリードにやってきた映画界の異端児の本祭登場は、先述したように1980年の『ペピ、ルシ、ボンと他大勢の娘たち』、その後セクション・オフィシアルに『セクシュリア』(82)、アウト・オブ・コンペティションに『私の秘密の花』(95)、1993年には「アルモドバルの夕べ」という特集が組まれている。またドノスティア栄誉賞のプレゼンター役で、1996年アル・パチーノ、2004年ウディ・アレン、2008年愛弟子アントニオ・バンデラスにトロフィーを手渡すためにやってきている。
★さらにメイド・イン・スペイン部門で『オール・アバウト・マイ・マザー』(99)、『トーク・トゥ・ハー』(02)、『バッド・エデュケーション』(04)、『ボルベール〈帰郷〉』(06)、『抱擁のかけら』(09)、『アイム・ソー・エキサイテッド!』(13)、『ジュリエッタ』(16)、『ペイン・アンド・グローリー』(19)が上映されている。因みに本賞は1986年から始まっており、スペインの受賞者としては8人目、受賞順に1999年フェルナンド・フェルナン=ゴメス、2001年パコ・ラバル、2008年アントニオ・バンデラス、2013年カルメン・マウラ、2019年ペネロペ・クルス、2023年ビクトル・エリセ、同ハビエル・バルデムです。
★ガラの司会者はバスク自治州ビスカヤ出身のエネコ・サガルドイ(1994)、バスク語とスペイン語で進行役を務めた。サガルドイは『アルツォの巨人』でゴヤ賞2018新人男優賞を受賞している、俳優、製作者、最近バスク語で短編「Betiko gaua / The Eternal Night」を監督、マラガ映画祭2023短編部門にノミネートされた。
(司会者エネコ・サガルドイ)
★ドノスティア栄誉賞ガラのフォト集(クルサール・ホールにて)
(右から2人目、ペドロ・サンチェス首相夫妻、会場にて)
(受賞者とティルダ・スウィントン)
(メリナ・マシューズ)
(ビクトリア・ルエンゴ)
(フアン・ディエゴ・ボット)
(ラウル・アレバロ)
(『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』のスタッフ&キャスト、
制作会社エル・デセオのアグスティン・アルモドバル、エステル・ガルシアを交えて)
*『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』の記事は、コチラ⇒2024年06月18日
*『ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ』のきじは、コチラ⇒2023年05月04日
*『ヒューマン・ヴォイス』の記事は、コチラ⇒2020年08月16日
*『ペイン・アンド・グローリー』の記事は、コチラ⇒2019年04月22日
*『ジュリエッタ』の記事は、コチラ⇒2016年02月19日
*『アイム・ソー・エキサイテッド』の記事は、コチラ⇒2013年09月21日
映画国民賞受賞のマリア・サモラ*サンセバスチャン映画祭2024 ㉗ ― 2024年09月26日 15:31
製作者マリア・サモラに映画国民賞2024の授与式
(受賞者マリア・サモラ)
★9月21日タバカレラで、2024年の映画国民賞の授与式がありました。受賞者マリア・サモラ(バレンシア1976)は、カルラ・シモンや今年のセクション・オフィシアル審査委員長を務めるハイオネ・カンボルダなど、インディペンデント映画中心の作品を手掛けています。6月に受賞がアナウンスされていましたが、映画部門の授与式はサンセバスチャン映画祭と決まっており、副賞は30.000ユーロです。選考母体はスペイン文化スポーツ教育省とスペイン映画アカデミーで、今回のプレゼンターはエルネスト・ウルタスン文化相でした。
*マリア・サモラのキャリア&フィルモグラフィーは、コチラ⇒2024年06月16日
(マリア・サモラとエルネスト・ウルタスン文化相)
★21日からコンペティション部門、その他の第1回目の上映が始まり、海外勢を含めた国内の監督、製作者、俳優がレッドカーペットに登場しました。これまで作品紹介をしてきましたチームを中心にフォトをアップします。まずは審査員メンバーから。
*キャリア紹介は、コチラ⇒2024年09月21日
(審査委員長スペインの監督ハイオネ・カンボルダ)
(審査員アルゼンチンの作家レイラ・ゲリエロ)
(審査員アメリカの俳優フラン・クランツ)
(審査員ギリシャの監督クリストス・ニク)
(審査員フランスの製作者キャロル・スコッタ)
(審査員オーストリアの監督ウルリヒ・ザイドル)
★セクション・オフィシアル出品作、イシアル・ボリャインの「Soy Nevenka / I’m Nevenka」のチーム
(女優ミレイア・オリオル、監督、俳優ウルコ・オラサバル、9月21日)
(ボリャイン監督、共同脚本執筆者イサ・カンポ)
★セクション・オフィシアル出品作、「Conclave」のエドワード・ベルガー監督
★セクション・オフィシアル特別上映、カンヌ映画祭総代表のティエリー・フレモーのドキュメンタリー「Lumiere!, L’aventure continue」(16、『リュミエール!』)のチーム
(ティエリー・フレモーとエグゼクティブプロデューサーのマエル・アルノー)
★オリソンテス・ラティノス部門、「El jockey / Kill The Jockey」の監督と出演者たち
(ルイス・オルテガ監督)
(左から、ウルスラ・コルベロ、ナウエル・ぺレス・ビスカヤート、オルテガ監督、
マリアナ・ディ・ジロラモ)
ケイト・ブランシェットのドノスティア栄誉賞ガラ*サンセバスチャン映画祭2024 ㉖ ― 2024年09月25日 17:59
ブランシェットにドノスティア栄誉賞―プレゼンターはアルフォンソ・キュアロン
★9月21日、ドノスティア栄誉賞2024の受賞者ケイト・ブランシェットのドノスティア栄誉賞の授与式がクルサール・ホールでありました。プレゼンターは、イギリスと米国の合作のTVミニシリーズ「Disclaimer」(24、7話)でタッグを組んだメキシコのアルフォンソ・キュアロン(クアロン)、受賞者の「厳格さと卓越した演技」を称賛しました。
(ハグしあうケイト・ブランシェットとアルフォンソ・キュアロン)
★ケイト・ブランシェット(メルボルン1969)は、紹介するまでもなくオーストラリアを代表するオスカー女優、主演女優賞(『ブルージャスミン』13)と助演女優賞(『アビエイター』04)と受賞、ノミネートは主演した『エリザベス』(98)、『エリザベス ゴールデン・エイジ』(07)、『キャロル』(15)、『TAR ター』(22)など4回、助演も含めると合計6回、IMDbによると合計218賞、288ノミネートとあり、今後も増え続けるでしょう。2022年から始まった国際ゴヤ賞の第1回受賞者でもあり、因みにプレゼンターはペドロ・アルモドバルとペネロペ・クルスでした。アルモドバルも今回のドノスティア栄誉賞二人目の受賞者、授与式は26日の予定です。
*ブランシェットの国際ゴヤ賞受賞の記事は、コチラ⇒2022年02月13日
★「海外で仕事をするオーストラリアの女性として、多くの国境を越えて世界中を旅するという光栄に浴してきました。そして文化的、映画的な国境も超えた、この素晴らしく活気に満ちたバスクの映画祭で、この賞を受け取るのは名誉なことです」と感謝した。キュアロン監督のプレゼンに感謝し、自分を多くの場所に運んでいったキャリアは、折衷的で奇妙なものだと分析した。ただ共通するのは「知りたいという願望」であり、人間であることが何を意味するのか知りたいということです。私たちのようにものを作るのが仕事である場合、疑問や不確実性は付きまといます。謙虚に認めねばなりません。「私は知りません、だから学びに来ました」と言わねばなりません。性急に答えを見つけることには反対です。知らないことが私の一部になり、少しずつ理解が始まります。「知りたいという欲求」で旅は続きます。
(受賞スピーチをするケイト・ブランシェット)
ケイトを泣かせたジョージ・クルーニー、ビデオ祝辞はサプライズ!?
★ビデオ出演でヴェネチアから祝福を送ったのは、友人で共演者でもあったジョージ・クルーニーでした。「私はあなたを監督し、共演する幸運に恵まれました。周りの人たち皆に幸せをもたらしました。私はあなたの友人であることを誇りに思います」と。さらに演技を芸術レベルに高めたパフォーマーの一人だと称賛、マーロン・ブランド、キャサリン・ヘプバーン、モンゴメリー・クリフト、ジャック・ニコルソン、かつてのドノスティア栄誉賞受賞者でもあるメリル・ストリープとロバート・デ・ニーロの名前を挙げ、「ケイト、あなたもその一員になりました」と語りました。「私もそこへ行きたかったのですが行けません。今、ヴェネチアにいて飲んでいます。おまけにズボンを履いていません。しかし、もしズボンを履いてヴェネチアで飲んでなかったら、そこで一緒に乾杯したでしょう」とユーモアたっぷりに称賛した。涙で目張りが崩れるのを気にしながら「ファッキング・ジョージ!」とやっと一言お返ししました。
(ズボンを着用していないクルーニーの祝賀ビデオに涙するブランシェット)
★授与式の司会を務めたのは女優のマルタ・エトゥラでした。「卓越性とリスクに取りくむ」演技者、「メッセージを持った、強い女性で献身的な複雑なキャラクターに命を吹き込んだ」と称賛した。またフェミニズム、移民問題、母国オーストラリアの先住民に関連したプロジェクトの演出&製作を手掛けていることを強調した。米アカデミー以下の3桁に及ぶ受賞歴の紹介、多くの監督に愛され、例えばマーティン・スコセッシ、テレンス・マリック、スティーブン・ソダーバーグ、リドリー・スコット、サリー・ポッター、ウディ・アレン他を次々に列挙して、女優の幅広い活躍を称揚した。
(受賞者を称賛するマルタ・エトゥラ)
★ガラの後、ブランシェットの最新作となるコメディ・ホラー「Rumours」(24、カナダ=独=米合作)が上映された。カナダのガイ・マディン、エヴァン・ジョンソン、ゲイレン・ジョンソンのトリオが監督している。カンヌ映画祭2024でプレミアされ、映画祭巡りをしている。
(中央がケイト・ブランシェット、ポスター)
★ケイト・ブランシェットのドノスティア栄誉賞関連のフォト集
(現地入りしたケイト・ブランシェット、出迎えた総ディレクター)
(恒例のサインをする)
(ファンサービスも怠りなく・・・)
(アルフォンソ・キュアロンとのツーショット)
ハビエル・バルデムのドノスティア栄誉賞授与式*サンセバスチャン映画祭2024 ㉕ ― 2024年09月23日 17:43
ハビエル・バルデム――1年遅れのドノスティア栄誉賞授与式
★9月20日、第72回サンセバスチャン映画祭が開幕しました。進行役の司会者はスペインを代表するコメディアン、アンドレウ・ブエナフエンテとベルト・ロメロのご両人、昨年ベロドロモ部門で上映されたTVシリーズ「El otro lado」(6話)の共演者、登壇早々舌戦をたたかわせて会場を沸かせました。もう一人がバスク出身の女優バルバラ・ゴエナガが、ユーモアに満ちた援護射撃でプレゼンターのミッションを果たしました。
(進行役のベルト・ロメロ、アンドレウ・ブエナフエンテ、バルバラ・ゴエナガ)
★セレモニーには昨年のドノスティア栄誉賞受賞者の一人、ハビエル・バルデムへの1年遅れの授与式、ヨルゴス・ランティモスの『哀れなるものたち』の国際映画批評家連盟賞FIPRESCI 2024 の授与式、スペインのウォルト・ディズニー・スタジオの総ディレクターマヌエル・ムロが登壇して、ブラジルの批評家エラ・ビッテンコートからトロフィーを受け取りました。またセクション・オフィシアルの審査委員長ハイオネ・カンボルダ以下審査員紹介、オープニング作品、フランスのオドレイ・ディヴァンの新作「Emmanuelle」の出演者ノエミ・メルラン、ウィル・シャープ、チャチャ・ホアン、ジェイミー・キャンベル・バウアーなどの紹介、上映などがありました。
★スペイン7人目となるドノスティア栄誉賞2023の受賞者ハビエル・バルデムの登壇は、拍手と歓声が鳴りやみませんでした。キャリア&フィルモグラフィー紹介は既に昨年アップ済みですが、背後のスクリーンに次々に映し出される『ハモンハモン』、『ペルディーダ』、『ライブ・フレッシュ』、『月曜日にひなたぼっこ』『海を飛ぶ夢』、『ノーカントリ―』、『007スカイフォール』、『ラビング・パブロ』、「El buen Patrón」エトセトラに、貰うのが遅すぎたのではないかと思うほどでした。
*ハビエル・バルデムのキャリア&フィルモグラフィーは、コチラ⇒2023年06月09日
(祝福する姉モニカ、兄カルロスとバルデム3姉弟)
★彼の本祭での受賞歴は、1994年にイマノル・ウリベの『時間切れの愛』とゴンサロ・スアレスの「El detective y la muerte」の2作により銀貝男優賞を受賞しただけで、これは大方の予想を裏切るサプライズ受賞でした。マリサ・パレデスからトロフィーを受け取ったまま「ありがとう」以外感涙でスピーチができず、そのまま会場の歓声に見送られて退場してしまったのでした。この前代未聞の映像が今夜も流れて、会場の拍手喝采を浴びていました。
★登壇したときから涙だった女優の姉モニカ・バルデム、作家で俳優の兄カルロス・バルデム、そしてプレゼンターは、受賞者の演技指導の師フアン・カルロス・コラッツァでした。1959年アルゼンチンのコルドバ出身の演出家兼演技指導者、1990年にスペインのアンダルシア演劇センターに招かれて来西、マドリードに演劇学校を設立、以来スペインで活動している。本校の優等生の一人バルデムに「ハビエル、芸術は社会を豊かにするために不可欠という信念をもって、芸術の壊れやすく神秘的な思潮への君の献身に、ありがとう」と断言しました。
(フアン・カルロス・コラッツァ、ハビエル)
★俳優の仕事は「真実と誠実さに関係がある」と教えてくれた恩師に感謝し、自分を見いだしてくれた今は亡きビガス・ルナ監督と女優だった母親ピラール・バルデムに、最後に会場にいる妻ペネロペ・クルス、二人の子供たちレオとルナにトロフィーを捧げました。姉弟3人抱き合って涙ナミダの退場でした。
(涙が止まらないペネロペ・クルス)
★以下、9月20日オープニング当日のフォト集
(FIPRESCI賞、マヌエル・ムロとエラ・ビッテンコート)
(コンペティション部門の審査委員長カンボツダ以下審査員、右から3人目が監督)
(開幕作品「Emmanuelle」のオドレイ・ディヴァン監督以下出演者たち
左から2人目が監督、レッドカーペットでのフォトコール)
(現地入りしたハビエル・バルデム)
(恒例のサインをするバルデム)
(ペネロペ・クルスと赤絨毯に登場したバルデム)
アロンソ・ルイスパラシオスにバレンシア・ルナ賞*シネマ・ジュピター ― 2024年06月29日 17:59
『グエロス』のアロンソ・ルイスパラシオスがバレンシア・ルナ賞
(受賞者アロンソ・ルイスパラシオス、バレンシアFF 6月21日)
★6月21日、2014年『グエロス』で鮮烈デビューを果たした、メキシコのアロンソ・ルイスパラシオス監督(メキシコシティ1978)が、バレンシアの第39回シネマ・ジュピター・フェスティバルで「バレンシア・ルナ賞」を受賞しました。本賞は過去のキャリアよりこれからの活躍が期待される独創的なシネアストに与えられる賞です。マラガ映画祭の特別賞の一つ「才能賞」に似ています。昨年トロフィーを受け取るためにバレンシアにやってきたのは、今年のカンヌ映画祭で「Anora」(10月30日公開予定)で初めてパルムドールに輝いたショーン・ベイカー(ニュージャージー1971)でした。
★フェスティバルは、授賞理由として作品が「新鮮さ、知性、ヒューマニズム」に貢献し、「非常に異なるキャラクター、特に互いに相反する精神に対しても惜しみない理解を示した」こと、「現代メキシコの有為転変の大いなる記録者であり、皮肉やユーモアを失うことなく日々の不条理を活写した」ことなどをあげております。ルイスパラシオスは「とても感動して興奮しています。大人になりたくない登場人物という点で、私の映画には青春の要素があると思います。テーマの一つにピーターパン症候群のようなものがあります」と語っている。
★メキシコのボブ・ディランを探すロードムービー『グエロス』の登場人物がそうでした。デビュー作の成功で、第2作「Museo」にガエル・ガルシア・ベルナルを起用することができました。既に作品紹介で書きましたように、この物語は1985年のクリスマスイブにメキシコ人類学歴史博物館で起きた150点にものぼる美術品盗難事件にインスパイアされたもので、ベルリン映画祭で脚本賞を受賞しました。つづく第3作「Una película de policías」も、ベルリン映画祭2021の映画貢献銀熊賞を受賞、『コップ・ムービー』の邦題でNetflixで配信されています。ドキュメンタリーとジャンル分けされていますが、個人的にはドラマドキュメンタリー(ドクドラ)、フィクション性の高いユニークなドラマの印象です。2人の警察官に扮するモニカ・デル・カルメンとラウル・ブリオネスの演技に注目です。
*『グエロス』の作品紹介は、コチラ⇒2014年10月03日
*「Museo」の作品紹介は、コチラ⇒2018年02月19日
*「Una película de policías」『コップ・ムービー』の紹介は、コチラ⇒2021年08月28日
(第4作「La cocina」のポスター)
★第4作がアメリカで撮った「La cocina」(24、139分、モノクロ、メキシコ=米国合作)で、言語は英語とスペイン語、前作『コップ・ムービー』主演のラウル・ブリオネスと『ドラゴン・タトゥーの女』やトッド・ヘインズの『キャロル』でカンヌ映画祭2015女優賞を手にしたルーニー・マーラが主演しています。いずれ作品紹介を予定していますが、イギリスのアーノルド・ウェスカーの戯曲 “The Kitchen” (1957)がベースになっている。20世紀半ばのロンドンから現代のニューヨークのタイムズスクエアに舞台を移しかえている。ランチタイムのラッシュ時に、世界中の文化が混ざりあうレストランの厨房で働く移民の料理人たちの生活を描いた群像劇。監督はロンドンの王立演劇学校で演技を学んでいたとき、レストランでアルバイトしていたときの経験が役に立ったと語っています。本作はベルリンFFコンペティションでプレミアされ、トライベッカ映画祭のワールド・ナラティブ・コンペティションにもノミネートされました。いずれ公開されるでしょう。
(左から、製作者ラミロ・ルイス、アンナ・ディアス、ラウル・ブリオネス、
ムーニー・マーラ、ルイスパラシオス監督、ベルリン映画祭2024のフォトコール)
「メキシコで文化が贅沢品でないと見なされることを願っています」と監督
★「ハリウッドで仕事をしても、自分はメキシコを離れることはありません。ハリウッドに移住してグリンゴの物語を撮ることに興味はありません」と強調している。先だってのメキシコ大統領選挙で勝利を手にした新大統領クラウディア・シェインバウムが10月1日付で就任します。彼女の助言者である現大統領アンドレス・ロペス・オブラドールとの決別を願う監督は、「女性が遂にこのような権力の座についたことは喜ばしい。人によってはいろいろ感情が入り混じることですが、メキシコが必要としていたことです。現大統領との繋がりが深いため事態はより複雑ですが、関係を断ち切ることを願っています。彼から独立して自由になることを信じています」と。
(バレンシア・ルナ賞の受賞スピーチをするルイスパラシオス監督)
★現大統領の6年の任期が「文化に背を向けてきた」と指摘する監督は、「文化が贅沢だと見るのを止める」よう求めた。文化が贅沢品で生活必需品ではないという文化軽視は、多かれ少なかれどこの国でもスペインでも日本でも見られる現象ですが、監督は「メキシコ映像ライブラリーが果たす役割の重要性」を受賞スピーチで強調しました。メキシコに変化があることを認める監督は、それでも「道のりはまだ遠い」と語り、映画を作るのはお金がかかることなので誰でも可能ではないが、「映画は私にとって抗議の手段なのです」ともコメントしている。
★私生活では女優イルセ・サラスとの間に2人の息子がいる。『グエロス』や「Museo」出演の他、『グッド・ワイフ』(18)、TVシリーズ『犯罪アンソロジー:大統領候補の暗殺』(19)、ロドリゴ・ガルシアの『Familia:我が家』(23)主演などで、日本では監督より認知度が高いかもしれない。
(監督とイルセ・サラス、ベルリン映画祭2018)
映画国民賞2024に製作者マリア・サモラ*スペイン映画賞 ― 2024年06月16日 14:45
2024年の映画国民賞はヒット作を連発しているマリア・サモラが受賞
(インディペンデント映画製作者マリア・サモラの近影)
★今年の映画国民賞は、インディペンデント映画製作者マリア・サモラ(バレンシア1976)が受賞することになりました。映画国民賞の選考母体は文化スポーツ教育省で、副賞は30,000ユーロと控えめですが、毎年一人という名誉ある賞です。ほかにスポーツ、文学、科学など各分野ごとに選ばれます。映画部門の審査員は文化省とスペイン映画アカデミーなどで構成されます。基本的に年齢に拘らず、前年に活躍した人から選ばれることが多い。
★今年の受賞者は、昨年の受賞者カルラ・シモンの「Alcarràs」(22)やハイオネ・カンボルダがガリシア語で撮った「O corno」(23)などを手掛けています。前者でベルリン映画祭金熊賞を受賞した初のスペイン女性プロデューサーとなりました。後者はサンセバスチャン映画祭で金貝賞を受賞、製作者でもあったカンボルダ監督、もう一人の製作者アンドレア・バスケスの3人で喜びを分かち合いました。本作は東京国際映画祭2023ワールド・フォーカス部門バスク映画特集で『ライ麦のツノ』として上映されました。
*映画国民賞の授与式は、第72回サンセバスチャン映画祭2024の開催中に行われ、プレゼンターは選考母体である文化省の大臣です。
(金熊賞受賞のマリア・サモラとカルラ・シモン、ベルリン映画祭2022ガラ)
(金貝賞受賞のマリア・サモラ、サンセバスチャンFF2023、プレス会見)
★授賞理由は、マリア・サモラは「国際市場におけるスペインの独立系映画の存在感を高め、感受性豊かで多様性のある視点に影響を与えている」こと、「サンセバスチャン映画祭で金貝賞を受賞し、2024年のゴヤ賞で8部門ノミネートされた複数の作品」を手掛けたことを挙げている。複数の作品の一つが『ライ麦のツノ』(新人女優賞受賞ジャネット・ノバス)、ほかにアルバロ・ガゴの「Matria」(新人監督・主演女優賞)やエレナ・マルティン・ヒメノがガウディ賞を制覇するもゴヤ賞はノミネートに終わった「Creatura」(監督・助演男優・助演女優・新人女優賞)などが含まれます。
★審査員は以前から危険を顧みずに無名のプロジェクトに支援を続ける独立系の制作会社に光を与えたいと考えていたようでした。それも監督や俳優のように常に脚光を浴びる存在ではなく、縁の下の力持ちである製作者を選びたかったそうです。というのも製作者が選ばれたのは2018年、アルモドバル兄弟が設立した「エル・デセオ」のエステス・ガルシアまで遡る必要があったからです。彼女が女性プロデューサーの初の受賞者でした。
*エステル・ガルシアの紹介&授与式の記事は、コチラ⇒2018年09月17日/09月26日
★マリア・サモラは、1976年バレンシア生れの47歳、プロデューサー。バレンシア大学で企業経営と運営管理を専攻、視聴覚制作管理の修士号を取得した。2000年、バレンシアのテレビ局チャンネル9(現チャンネルNou)でキャリアをスタートさせる。2001年、マドリードに移り、アバロン・プロダクションのプログラム・アシスタント、プロデューサーとして働く。2007年5月、アバロンPCの創設メンバーとなり、エグゼクティブディレクターとなる(~2021)。
★初期には、ダニエル・サンチェス・アレバロ(04「Física II」)、ダビ・プラネル(05「Ponys」)、ベアトリス・サンチス(08「La clase」、10「La otra mitad」)、カルラ・シモン(19「Después también」)などの短編を手掛けている。その後ダビ・プラネルの「La vergünza」、ベアトリス・サンチスの「Todos están muertos」、カルラ・シモンの『悲しみに、こんにちは』などの長編で成功をおさめている。
★2021年にアバロンPCを退社、エンリケ・コスタ(アバロンの配給会社兼パートナー)とエラスティカ・フィルム Elastica Films を設立、独立系の主に女性監督の映画を手掛ける。その1作目がカルラ・シモンの「Alcarràs」で、幸先よくベルリンの金熊賞を受賞する。続いてカンボルタの『ライ麦のツノ』、アルバロ・ガゴのデビュー作「Matria」、エレナ・マルティン・ヒメノの「Creatura」と先述した通りの快進撃、今年から来年にかけて、話題作が目白押しである。シモンの3作目「Romería」は撮影も終わり、ロドリゴ・ソロゴジェンのパートナーで『おもかげ』に主演したマルタ・ニエトを監督として長編デビューさせるようです。
★マリア・サモラはインタビューで「製作する映画を選ぶ理由は常に同じとは限りません。脚本だけに拘るわけではないのです。しかし決して安易な決定ではなく、それらがありきたりでなく語られるに値するストーリーのあることが決め手です。自分にインパクトをあたえたり共鳴したりするプロジェクトであれば、興味を持ってくれる人が増えるのではないかと思っているからです」と語っている。一例としてカルラ・シモンの『悲しみに、こんにちは』を挙げている。本作のメインのプロデューサーは、バレリー・デルピエールでしたが、サモラも共同プロデューサーとして参画しています。脚本の要約を読んだとき「嘘が微塵もなかったことに感銘を受けました。瞬時に共感できる真実があり、まさにそれは純金でした」と、エルパイスのインタービューに応えている。
★サモラは長いあいだ女性監督とタッグを組んできた理由として、「男女間の平等の欠如を懸念していた時期があり、そのことが女性監督をサポートしてきた理由」であることを認めている。これからは「多様性に焦点を当てて、新しいジャンル、新しい視点、あまり馴染みがない、自分にとって居心地がよくない場所から語られる物語も探求したい。しかし、それは挑戦です」と。まだ公表できる段階ではないが、3つのプロジェクトが進行中ということでした。
★審査員の紹介:審査委員長はイグナシ・カモス・ビクトリア(ICAA映画視聴覚芸術研究所長官)、カミロ・バスケス・ベリョ(ICAA副長官)、理事としてフアン・ビセンテ・コルドバ・ナバルポトロ(スペイン映画アカデミー代表)、ジョセップ・ガテル・カストロ(視聴覚メディア著者文学代表)、ダニエル・グラオ・バリョ(俳優組合代表)、パウラ・パラシオス・カスターニョ(CIMAスペイン女性映画製作者協会代表)、ICAA理事デシレ・デ・フェス・マルティン、スサナ・エレラス・カサド、アリアドナ・コルテス・プリオ、前年の受賞者カルラ・シモンの10名です。
◎フィルモグラフィー(邦題、監督名、短編・TVシリーズは除く)
2008「Acné」『アクネACNE』フェデリコ・ベイロ(ハバナ映画祭新人監督賞)
2009「La vergünza」ダビ・プラネル(マラガ映画祭2009金のビスナガ賞)
2009「La mujer sin piano」ハビエル・レボーリョ(サンセバスチャン映画祭銀貝監督賞)
2010「Un lugar lejano」ジョセップ・ノボア
2011「La cara oculta」『ヒドゥン・フェイス』アンドレス・バイス
2012「Mapa」(ドキュメンタリー)エリアス・レオン・シミニアニ
(セビーリャ・ヨーロッパ映画祭ドキュメンタリー賞)
2014「Todos están muertos」ベアトリス・サンチス
(マラガ映画祭銀のビスナガ審査員特別賞)
2016「María ( y los demás)」『マリアとその家族』共同プロデューサー、ネリー・レゲラ
(メストレ・マテオ賞)
2017「Verano 1993」『悲しみに、こんにちは』エグゼクティブディレクター、
カルラ・シモン (ベルリン映画祭新人監督賞)
2017「Amar」『禁じられた二人』
エステバン・クレスポ&マリオ・フェルナンデス・アロンソ
2018「Apuntes para una pelícla de atracos」(ドキュメンタリー)
エリアス・レオン・シミニアニ
2019「Los días que vendrán」カルロス・マルケス≂マルセ(マラガ映画祭金のビスナガ賞)
2019「My Mexican Bretzel」『メキシカン・プレッツェル』(ドキュメンタリー)
ヌリア・ヒメネス・ロラング
2021「Libertad」『リベルタード』クララ・ロケ&エドゥアルド・ソラ(ゴヤ新人監督賞)
*以下はElastica Films エラスティカ・フィルム製作
2022「Alcarràs」カルラ・シモン
2022「Qué hicimos mal」リリアナ・トーレス
2023「Matria」アルバロ・ガゴ
2023「Creatura」エレナ・マルティン・ヒメノ
2023「O corno」『ライ麦のツノ』ハイオネ・カンボルダ
2024「Polvo serás」カルロス・マルケス≂マルセ
*プレ&ポストプロダクション
2025「Romería」プレプロダクション、カルラ・シモン3作目
「Hildegart」ポストプロダクション、パウラ・オルティス、「La novia」(15)の監督
「Las madres no」同上、マル・コル、2009年『家族との3日間』で長編デビュー
「La mitad de Ana」同上、マルタ・ニエト、短編「Son」(22)に続く長編デビュー作
◎関連記事・管理人覚え◎
*『ライ麦のツノ』の作品紹介記事は、コチラ⇒2023年07月17日
*「Creatura」の作品紹介記事は、コチラ⇒2023年05月22日
*「Matria」の作品紹介記事は、コチラ⇒2023年03月08日
*「Alcarràs」の作品紹介記事は、コチラ⇒2022年01月27日
*『リベルタード』の作品紹介記事は、コチラ⇒2021年10月12日
*『メキシカン・プレッツェル』の作品紹介記事は、コチラ⇒2020年09月14日
*「Los días que vendrán」の作品紹介記事は、コチラ⇒2019年04月11日
*『悲しみに、こんにちは』の作品紹介記事は、コチラ⇒2017年02月22日
*『マリアとその家族』の紹介記事は、コチラ⇒2016年08月14日
*「Todos están muertos」の作品紹介記事は、コチラ⇒2014年04月11日
マルセロ・ピニェイロ、レトロスペクティブ賞ガラ*マラガ映画祭2024 ⑨ ― 2024年03月18日 17:04
アルゼンチンの監督マルセロ・ピニェイロにレトロスペクティブ賞
★3月8日金曜日、日刊紙マラガ・オイがコラボするレトロスペクティブ賞―マラガ・オイが、アルゼンチンの監督、脚本家、製作者のマルセロ・ピニェイロに与えられました。総合司会者はセリア・ベルメホでした。本賞は映画功労賞の意味合いがありベテラン・シネアストが受賞する賞です。1953年ブエノスアイレス生れのピニェイロは、70歳を超えていますが勿論現役です。プレゼンターは撮影監督のアルフレッド・マヨ、監督で製作者のヘラルド・エレーロ、Netflix ラテンアメリカ担当の副会長フランシスコ・ラモス、俳優のホアキン・フリエル、作家で脚本家のクラウディア・ピニェイロの5名でした。
★プレゼンター各氏の温かい紹介スピーチを会場で聞き入っていた受賞者は、セリア・ベルメホに促されて颯爽と登壇すると、クラウディア・ピニェイロの手からトロフィーを受けとりました。40代で監督デビューした受賞者は、「まず何よりも、私を受賞者に選んでくださったフェスティヴァルに御礼を申し上げたい。以前にこの賞を誰が受賞したか知ったとき、この賞の価値に気づきました。私は多くの素晴らしい人々に支えられて幸運でした、例えば映画や演劇の先生、脚本家、撮影監督、プロデューサー、俳優、私の映画を輝かせてくれた沢山の人々です。皆さんにありがとうを言いたい」と拍手に囲まれながらエモーショナルに締めくくった。
(右端にクラウディア・ピニェイロ)
★当ブログでは2回にわたってキャリア&フィルモグラフィー紹介をしていますが、系統だった記事ではないので補足します。アルゼンチンのラプラタ大学で映画を専攻、1983年、ルイス・プエンソと制作会社シネマニアを設立、アルゼンチンに初めてオスカー像をもたらした『オフィシャル・ストーリー』(85)の製作を手掛けました。アルゼンチン映画アカデミー設立メンバーの一人で副会長に就任している。1993年、「Tango feroz: la leyenda de Tanguito」で監督デビュー、監督第1作に与えられる銀のコンドル賞オペラ・プリマ賞を受賞した。監督デビューが遅かったこともあり、映画作家としては寡作です。しかし評価は高く多くが映画祭や映画賞を受賞している。フィルモグラフィーは以下の通り:
1995年「Caballos salvajes」監督・脚本(共同アイダ・ボルトニク)
サンダンス映画祭1996オナラブルメンション、レリダ映画祭1997観客賞
1997年「Cenizas del paraíso」監督・脚本(共同アイダ・ボルトニク)
ゴヤ賞1998スペイン語外国映画賞、ハバナFF1997脚本賞、レリダFF1998観客賞
2000年「Plata quemada」監督・脚本(共同マルセロ・フィゲラス)
邦題は『炎のレクイエム』『逃走のレクイエム』『燃やされた現ナマ』
ゴヤ賞2001スペイン語外国映画賞、銀のコンドル脚色賞
2001年「Historias de Argentina en Vivo」監督
2002年「Kamchatka」監督・脚本(共同マルセロ・フィゲラス)
カルタヘナ映画祭2003脚本賞、バンクーバーFF2003ポピュラー賞、
ハバナ映画祭2003脚本賞・サンゴ賞3席
2005年「El método」監督・脚本(共同マテオ・ヒル)
ゴヤ賞2006脚本賞、シネマ・ライターズ・サークル賞、フランダース映画祭観客賞
2009年「Las viudas de los jueves」監督・脚本(共同マルセロ・フィゲラス)
『木曜日の未亡人』DVDタイトル
2013年「Ismael」監督・脚本(共同マルセロ・フィゲラス、ベロニカ・フェルナンデス)
2021~23年「El reino」TVシリーズ、監督・脚本(共同クラウディア・ピニェイロ)
邦題『彼の王国』Netflix配信、銀のコンドル2022オリジナル脚本賞、
イベロアメリカ・プラチナ賞2022 TVミニシリーズ部門作品賞
★クラウディア・ピニェイロとは、彼女のベストセラー小説 “Las viudas de los jueves”(2005年刊)を映画化した。公開には至らなかったが『木曜日の未亡人』(09)の邦題で2010年DVD化された。最近ではTVミニシリーズ「El reino」(8話)の共同執筆者でもあり、また今回のマラガ映画祭セクション・オフシアルの審査委員長を務めている。また本シリーズには主演男優賞を受賞したホアキン・フリエルが重要な役どころで出演している。アップが受賞結果と前後したので3月8日段階では 分からなかったが、監督お気に入りのようです。
(監督と脚本家クラウディア・ピニェイロ)
(ヘラルド・エレーロ、監督、ホアキン・フリエル)
★アルフレッド・マヨは「Caballos salvajes」「Cenizas del paraíso」「Plata quemada」「Kamchatka」「El método」とヒット作を手掛けているスペインの撮影監督です。マドリード出身のヘラルド・エレーロは監督と同じ1953年生れ、スペインだけでなく多くのラテンアメリカの監督とタッグを組んでいる。ピニェイロとは、「Plata quemada」や「El método」を製作している。
*「El método」の作品紹介は、コチラ⇒2013年12月19日
*『逃走のレクイエム』の作品紹介は、コチラ⇒2022年06月16日
ハビエル・カマラにマラガ-スール賞ガラ*マラガ映画祭2024 ⑥ ― 2024年03月06日 18:12
プレゼンターは作家エルビラ・リンド―ハビエル・カマラにマラガースール賞
(エモーショナルな受賞スピーチをしたハビエル・カマラ)
★3月4日、セルバンテス劇場でハビエル・カマラ(リオハ1967)のマラガ・スール賞のガラが開催されました。ガラに先立って地中海を臨むマラガの遊歩道アントニオ・バンデラス通りに受賞者の手形入りのモノリス記念碑の除幕式がありました。マラガ出身のバンデラスは本祭に資金提供をしているマラガ名誉市民です。除幕式にはマラガ市長フランシスコ・デ・ラ・トーレ、マラガ文化市議会議員マリアナ・ピネダ、コラボの日刊紙「スール」編集長アナ・ペレス≂ブライアン、総ディレクターのフアン・アントニオ・ビガルが参加しました。
(自身の手形入り記念碑の前のハビエル・カマラ、3月4日)
(左から、フアン・アントニオ・ビガル、受賞者、マラガ市長デ・ラ・トーレ、
市議会議員マリアナ・ピネダ、スール編集長アナ・ぺレス≂ブライアン)
★ガラの進行役はリカルド・フランコ賞ガラと同じマラガ出身の女優ノエミ・ルイス、トロフィーのプレゼンターはジャーナリスト、作家、脚本家、女優と幾つもの顔をもつエルビラ・リンド、監督フェリックス・サブロソ、パロマ・フアネス、リカルド・フランコ賞2008の受賞者でもあるキャスティングディレクターのルイス・サン・ナルシソの4人が登壇しました。日本では『めがねのマノリート』で認知度が高いエルビラ・リンドがプレゼンターには少し驚きましたが、彼女が脚本を手掛けたホルヘ・トレグロッサの「La vida inesperada」(仮題「予期せぬ人生」)主演の繋がりでしょうか。俳優として更なる成功を求めてニューヨークに渡るも現実は厳しく期待したようにはならない。従兄役のラウル・アレバロが共演している。マラガ映画祭2014のクロージング作品だった。
(左から、エルビラ・リンド、ハビエル・カマラ、フェリックス・サブロソ、
パロマ・フアネス、ルイス・サン・ナルシソ)
★エルビラ・リンドは、市井の人物を演じるカマラを「私たちは一目で友人になった。やがていとこになり、今では姉弟です。生れながらの演技者、詩人、語りて、アーティスト。あなたのような人材が必要であり、人生を捧げて庶民を体現するコメディアンである」と称賛した。フェリックス・サブロソは「彼の創造的な成熟と生命力は、その芸術的プロセスに影響を与えたシネアストの一人」と評し、才能だけでなく彼のやさしさを強調した。ルイス・サン・ナルシソは「ハビエルについては議論されていないが賞賛されている」と語り、女優のパロマ・フアネスは、「彼は偉大な俳優だが、それ以上に人間的」と断言した。
(エルビラ・リンド、ハビエル・カマラ、フェリックス・サブロソ)
★受賞者は、「ありがとう、ありがとう、ありがとう、この町が私に与えてくれた沢山の愛情に圧倒されています。度々私を招いて賞を授与してくれました」と感謝の言葉を述べた。スペインの小さな町で俳優になるための勉強をしている若い世代に向けて「マドリードやマラガのような都会にやってきた人々を励ましたい。この仕事には皆さんのような才能が必要です。私たちは計り知れない才能を秘めている若い世代を引き受けねばなりません」と変革を訴えたようです。トロフィーを俳優、映画製作者を目指しているすべての人々に捧げました。リオハの片田舎から20歳で大都会マドリードにやってきた受賞者らしいスピーチでした。
「監督も私もマラガには本当に感謝しています」とハビエル・カマラ
★セルバンテス劇場内のロッシーニ・サロンで、恒例のフアン・アントニオ・ビガルによるインタビューがありました。マラガでの受賞歴は、2004年パブロ・ベルヘルの『トレモリノス73』と2008年ナチョ・G・ベリリャの『シェフズ・スペシャル』の銀のビスナガ男優賞、プラス今回のマラガ―スール賞の3賞です。そういえば『トレモリノス73』のパブロ・ベルヘルの姿はなく、多分オスカー賞にノミネートされている『ロボット・ドリームズ』のプロモーションで国内にいないのでしょう。
★カマラは「コメディ役者としてやってきたが、マラガは『トレモリノス73』以来ずっと私を支えてきてくれたと思っています。パブロ・ベルヘルも、役者の私も本当にマラガには感謝しています。本映画祭は常に才能ある人々を支えてくれています」とインタビューに答えている。ベルヘルにとってはデビュー作、カマラもアルモドバルの『トーク・トゥ・ハー』(02)のベニグド役でゴヤ賞主演男優賞にノミネートこそされたが、コメディ俳優の本領を発揮できたとは言い難かった。
(フアン・アントニオ・ビガルのインタビューを受けるハビエル・カマラ)
★現在台頭してきた女性映画製作者について「彼女たちの声に耳を傾け、サポートすべき」と指摘した。また見向きもされない才能が隠れているので、それを探す必要性を語り、映画製作は複雑だが、特権を持つ人々が古いままではいけない、新しい才能に対して両手を広げることも重要と力を込めていた。おしゃべり好きな受賞者は「準備万端整えてセットに出向きます。口出しをしてはいけないときは黙っていますが、それが私には難しい」と冗談をとばした。
★スペイン映画での演技者の成長過程や共に作品を作り上げていく監督たちの貢献については「できる限りよくなるように仕事をしているし、監督たちが私を成長させてくれる。成長にはプロフェッショナルだけでなく個人的なものも必要である」と断言している。カマラは映画俳優を夢見ていたわけではなく舞台俳優を目指していた。しかし落ちこぼれを経験して、ある教師から本格的に演技学校で学ぶように忠告された。しかし演技学校に入ると、舞台は彼の目には小宇宙に見え、自分のやりたいことができるように感じられなかったとも語っている。
★カマラをお茶の間の人気者にした長寿TVシリーズ「7 vidas」(99~06)の撮影休憩中に、共演中のベテラン女優アンパロ・バロ(1937~2015)に、リハーサルではナーバスになるが、あなたはどうですかと聞いたら、「もっともっと多くなるのよ、ハビエル」と言われた。経験を積めば積むほど、それだけ責任も重くなる。「その通りです、この大女優の言葉を肝に銘じています」と締めくくった。
(アンパロ・バロと、TVシリーズ「7 vidas」から)
★ハビエル・カマラのフィルモグラフィー紹介として、ダビ・トゥルエバの『「ぼくの戦争」を探して』でアップしておりますが、それ以降の話題作はセスク・ゲイの『しあわせな人生の選択』(15)、ゴヤ賞2016助演男優賞受賞、コロンビア映画になりますがフェルナンド・トゥルエバの『あなたと過ごした日に』(20)を紹介しています。
*『「ぼくの戦争」を探して』の主な記事は、コチラ⇒2014年11月21日
*『しあわせな人生の選択』の記事は、コチラ⇒2016年01月09日/2017年08月04日
*『あなたと過ごした日に』の主な記事は、コチラ⇒2020年06月14日
マラガ才能賞&リカルド・フランコ賞授与式*マラガ映画祭2024 ⑤ ― 2024年03月05日 10:02
アナ・アルバルゴンサレスにリカルド・フランコ賞
(メンデス=レイテからトロフィーを受け取るアナ・アルバルゴンサレス)
★3月2日セルバンテス劇場で、特別賞の一つ、リカルド・フランコ賞の授与式がありました。プレゼンターはマラゲーニャのノエミ・ルイス、登壇した列席者はスペイン映画アカデミー会長フェルナンド・メンデス≂レイテ、フアン・ルイス・イボラ監督、製作者のイソナ・パソラほか。カルロス・サウラ、ビセンテ・アランダ、ヘラルド・ベラ、アグスティ・ビリャロンガの美術や衣装デザインを手掛けたアナ・アルバルゴンサレスに光が当たった。サウラ以下監督すべてが既に鬼籍入りしており、30年以上というキャリアに感慨無量です。
(受賞スピーチをする受賞者)
ピラール・パロメロ監督にマラガ才能賞
★3月3日セルバンテス劇場で、マラガ才能賞―マラガ・オピニオンの授与式が賑やかに行われました。受賞者ピラール・パロメロの母親も登壇するというちょっとしたサプライズ、親孝行娘に母親も大喜びでした。プレゼンターはセリア・ベルメホ、デビュー作『スクールガールズ』(20)出演者のナタリア・デ・モリーナ、ソエ・アルナウ、アンドリア・ファンドス、第2作「La maternal」(22)のカルラ・キルス、マラゲーニョの応援団アントニオ・デ・ラ・トーレ、若い監督を見守る製作者バレリー・デルピエール、母親、兄弟も登壇するという賑やかさでした。
(ピラール・パロメロ監督と母親)
(壇上に並んだデルピール左端、デ・モリーナ右端、デ・ラ・トーレなどの応援団)
(総ディレクターのフアン・アントニオ・ビガルのインタビューを受ける監督)
★3月4日には大賞マラガ・スール賞のハビエル・カマラが予定されています。
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