第20回マラガ映画祭が開幕*オープニングは『クローズド・バル』2017年03月21日 14:28

    最新のサプライズはアントニオ・バンデラスに「名誉金のビスナガ賞」授与

 

★特別賞のうち銀のビスナガ「シウダ・デル・パライソ」賞の紹介が残っておりますが(受賞者はマラゲーニャ女優フィオレリャ・ファルトヤノ)、もたもたしているうちに開幕してしまいました。1週間ほど前に「アントニオ・バンデラス名誉金のビスナガ賞授与」のニュースが飛び込んできました。レトロスペクティブ賞の他にこんな賞あったかしらね。バンデラスはマラガ出身、20代初めに故郷を後にしてからも、第1回映画祭からずっと名誉総裁みたいに本映画祭に尽力してきた。マラガ市の名士、名誉市民でもあるから誰も異存はない。ゴヤ賞2015の栄誉賞受賞のときほどは驚かないでしょう。メインディッシュの授賞式は閉会式とアナウンスされました。離婚後さっそくマラガに新居を購入するなど生れ故郷に軸足を移してきています。

バンデラスのキャリア紹介記事は、コチラ2014621

バンデラスのゴヤ賞栄誉賞の主な記事は、コチラ2014115

 

(バンデラス)

   

   

        マラガ映画祭はスペイン映画祭ではなくイベロアメリカ映画祭?

 

★大西洋を挟んでイベリア半島と中南米大陸が一つになったマラガ映画祭のオープニング作品は、コンペ外のアレックス・デ・ラ・イグレシア『クローズド・バル 街角の狙撃手と8人の標的』、監督以下スタッフやキャストが現地入りしてファンの期待に応えました(日本でも325日から2週間限定で公開されます)。今年からラテンアメリカ映画の質向上を願って、二つに分かれていたオフィシャル・セクションの垣根が取り払われました。正式出品23作のうち、コンペティションは17作、スペイン側が9作、ラテンアメリカ側が8作、コンペ外が6作です。

 

 

(左から、ハイメ・オルドーネス、セクン・デ・ラ・ロサ、監督、ブランカ・スアレス、

 カルメン・マチ、マリオ・カサス、マラガ映画祭2017にて)

  

★審査委員長にエミリオ・マルティネス=ラサロ、以下パブロ・ベルヘル監督(1963年ビルバオ、『ブランカニエベス』)、マリア・ボトー(アルゼンチン出身のスペイン女優)、イバン・ヒロウド・ガラテ19942010までハバナ映画祭ディレクター)、エレナ・ルイス1997年バルセロナのカルドナ、編集者)、アレハンドラTrolles1974モンテビデオ、ウルグアイのプロデューサー)の6名です。

 

★イスラエル・アドリアン・カエタノの『キリング・ファミリー 殺し合う一家』も上映されました。主役のレオナルド・スバラグリアのマラガ賞授与式も済んだようです(18日、上映は19日でした)。プレゼンターは母親で女優のロクサナ・ラドンがアルゼンチンからはるばる息子のために馳せつけました。他に「キリング・ファミリー」のダニエル・エンドレル、同じくオフィシャル・セクションにノミネートされているマルティン・オダラのスリラーNieves negraの面々も登壇して、涙、なみだの授賞式だったようです。エンドレルは監督でもあり、今回El candidatoがノミネーションされている。授賞式の行われるセルバンテス劇場はどうやらアルゼンチン一色だったようです。Nieves negra」の主役はリカルド・ダリンとスバラグリア、仲の悪い兄弟に扮する。マラガ賞受賞者は海沿いの遊歩道に記念碑を建ててもらえる。写真下は記念碑の前でカメラにおさまるスバラグリア。

 

   

           (左側が母親ロクサナ・ラドン、トロフィーを手に喜びのスバラグリア)

 

     

 (自身の記念碑の前で、レオナルド・スバラグリア)

 

★翌日19日は、シルヴィ・インベールのリカルド・フランコ賞授賞式、20日は『ベルエポック』が「金の映画」に選ばれたフェルナンド・トゥルエバの授賞式がありました。

 

      

                                                 (シルヴィ・インベール)

 

 

      (フェルナンド・トゥルエバ)


『ベルエポック』が「金の映画」受賞*マラガ映画祭20172017年03月19日 16:35

         フェルナンド・トゥルエバのオスカー受賞作『ベルエポック』

 

 

フェルナンド・トゥルエバのオスカー受賞作『ベルエポック』1992)が「金の映画」に選ばれました。昨年、『美しき虜』(98)の続編La reina de Españaが公開され、ベルリン映画祭2017のベルリナーレ・スペシャル部門で上映されこと、『ベルエポック』も第43回ベルリン映画祭の正式出品、そして節目の25周年にあたることも受賞理由かもしれない。昨年の「金の映画」は、前年20156月に鬼籍入りしたビセンテ・アランダに哀悼の意をこめて、彼の代表作『アマンテス/ 愛人』が受賞しているからです。

 

 

★『ベルエポック』は、ホセ・ルイス・ガルシの『黄昏の恋』以来10年ぶりに、スペインに2個目のオスカー像をもたらした。もはや古典映画入りしているが、その活力あふれた、魅力的な語り口で内戦勃発5年前の「ベルエポック」良き時代を語りながら、時として悲劇をも入り込ませている。シュルレアリスムでメランコリックでさえある。本作でトゥルエバは自身の自画像を描いたと評されたが、例えば美に対する厚い尊敬の念、人間の知恵、喜び、寛容さ、そして自由意志である。価値ある生き方とは何か、彼が考えている愛国心が何であるかを語った作品です。

 

  

 (オスカー像を手にした製作者アンドレス・ビセンテ・ゴメスとフェルナンド・トゥルエバ)

  

★長編第5作『目覚めの年』(86)で初めてコンビを組んだ、名脚本家ラファエル・アスコナは既に鬼籍入りしており、そのほかにもフェルナンド・フェルナン・ゴメス、アグスティン・ゴンサレスやチュス・ランプレアベなどの名優たちが旅立った。当時若さにあふれていた脱走兵ホルヘ・サンス、ペネロペ・クルス(四女)、アリアドナ・ヒル(次女)などは実人生では父親や母親になり、マリベル・ベルドゥ(三女)はドラマやコメディに出ずっぱり、ミリアム・ディアス・アロカ(長女)はテレドラ出演と、各自キャリアを積んでトゥルエバが予測した通りの活躍をしている。

 

        

       (美しい4人姉妹に囲まれて幸せいっぱいの脱走兵ホルヘ・サンス)

 

『ふたりのアトリエ~ある彫刻家とモデル』12)がラテンビート2013で上映されたとき初の来日を果たしている。2015年の国民賞(映画部門)受賞の折に紹介記事を書いております。ビリー・ワイルダーを映画の神様と尊敬して、オスカー受賞スピーチで「ミスター・ワイルダー、ありがとう」と述べ、後日「もしもし、こちらは神様です」とお茶目な神様からお祝いの電話をもらった。スペインではガルシア・ベルランガを師と仰ぎ、彼の「Plácido」(61)と『死刑執行人』(63)をスペイン映画2大傑作と語っている。ベルランガとトゥルエバの共通項は脚本家のラファエル・アスコナとタッグを組んだことでしょう。

 

★今年のベルリン映画祭のインタビューでも語っていたことですが、「大切なのは物語を語ること、自分にとって映画を作れることはそれぞれ奇跡に近いのです。それで感謝するのは、特に私のプロデューサー、クリスティナ・ウエテです。年がら年中彼女と格闘しています」。クリスティナ・ウエテとは監督夫人のこと、夫唱婦随の反対とか(笑)。

 

『ふたりのアトリエ~』のラテンビートQ&Aの記事は、コチラ20131031

国民賞(映画部門)受賞とフィルモグラフィーの記事は、コチラ2015717

La reina de España」の記事は、コチラ2016228


レトロスペクティブ賞にフェルナンド・レオン*マラガ映画祭20172017年03月18日 10:29

          レトロスペクティブ賞はフェルナンド・レオン・デ・アラノア

 

★レトロスペクティブ賞は貢献賞または栄誉賞の色合いが強い賞、直近では2014年ホセ・サクリスタン、2015年イサベル・コイシェ、昨年がグラシア・ケレヘタ、2年連続で女性監督でした。さて、今年のフェルナンド・レオン・デ・アラノアは、19685月マドリード生れの監督、脚本家、製作者。マドリード・コンプルテンセ大学情報科学部卒、テレビドラマの脚本家としてキャリアをスタートさせた。48歳と受賞者としては若いほうかもしれません。マラガ映画祭にエントリーされた映画もなく、個人的には少し意外感がありました。何かしら社会に意義を唱える作家性の強い監督だが、同時に商業映画としての目配りもおろそかにしないバランスの良さ、いわゆる社会の空気が読める柔軟性がある。

 

     

長編第1Familia1996)は、幸運にも「スペイン映画祭1998」に『ファミリア』の邦題で上映された。この映画祭のラインナップは画期的なものでアルモドバルが面白かった時期の『ライブ・フレッシュ』、失明の危機にあったリカルド・フランコの『エストレーリャ』、モンチョ・アルメンダリスの『心の秘密』など名作揃いだった。そして本映画祭で初めて知った監督がフェルナンド・レオン・デ・アラノアだった。中年の独身男(フアン・ルイス・ガリアルド)が1日だけ理想的な家族を演じる人々を募集して、対価を払って家族ごっこをする。社会制度としての永続的な家族に疑問を呈した。役者もよかったが辛口コメディとして成功した。妻役がアンパロ・ムニョス、十代の娘役になるのが本作がデビュー作となるエレナ・アナヤだった。ゴヤ賞新人監督賞受賞、バジャドリード映画祭では国際映画批評家連盟賞と観客賞を受賞した作品。写真下、和やかなのは疑似家族だから。

 

 

2作がBarrio98)は、現代のどこの都市でも起こり得るマージナルな地域バリオで暮らす3人の若者群像を描いた。サンセバスチャン映画祭監督賞、ゴヤ賞監督賞と脚本賞を受賞したほか、フォルケ賞、サン・ジョルディ賞、トゥリア賞など、スペインの主だった映画賞を受賞している。

 

3作がハビエル・バルデムを主役に迎えたLos lunes al sol02)、『月曜日にひなたぼっこ』の邦題で「バスクフィルム フェスティバル2003」で上映された。バスクと言ってもスペイン語映画で、主にバスク出身の若い監督特集映画祭の色合いが濃かった。アレックス・デ・ラ・イグレシアが『マカロニ・ウエスタン800発の銃弾』をお披露目かたがた来日した。マドリード出身のフェルナンド・レオンの映画が加わったのは異例で、それは北スペインの造船所閉鎖にともなう労働争議が舞台背景にあり、ヒホン造船所がモデルだった。撮影はヒホンと雰囲気が似通っているガリシアの港湾都市ビゴが選ばれたと言われている。ビゴはルイス・トサールの出身地でもある。ゴヤ賞監督賞を受賞したほか作品賞を含めてバルデムが主演、トサールが助演、ホセ・アンヘル・エヒドが新人と男優賞全てをさらった。さらにアカデミー賞スペイン代表作品にも選ばれるなどした(ノミネーションには至らなかった)。スペイン北部の造船所閉鎖によって失業を余儀なくされた落ちこぼれ中年男たちの群像劇。観客を憂鬱にさせないユーモアを効かせた筋運び、それでいてしっかり怒り、挫折、失望、人生の浮沈を織り込んでいる。デモシーンの実写を取り入れる画面構成もなかなか迫力があった。一番の成功作かもしれない。

 

            

                    (ルイス・トサールとハビエル・バルデム)

 

4作がカンデラ・ペーニャを起用してのPrincesas05)、本作で初めてプロデューサーとして参画、主役に初めて女性を据え、二人の女優に友人同士の娼婦を演じさせた。一人はスペインの娼婦、もう一人はドミニカから移民してきた娼婦、女性の一番古い伝統的職業である娼婦、スペインへ押し寄せる移民という問題を取り入れた。二人ともゴヤ賞主演にカンデラ・ペーニャ、新人女優賞にミカエラ・ネバレスが受賞した他、マヌ・チャオがオリジナル歌曲賞を受賞した。

 

  

         (カンデラ・ペーニャとミカエラ・ネバレス

 

ゴヤ賞に絡まなかったのは第5Amador10)だけ。第6作は英語で撮ったA Perfect Day。スペイン語題はUn dia perfectoでカンヌ映画祭2015「監督週間」で上映され、ゴヤ賞2016では脚色賞を受賞、プレゼンターだった再婚ホヤホヤのバルガス=リョサからゴヤ胸像を受け取った。本作については紹介記事をアップしています。

Un dia perfecto」の紹介記事は、コチラ2015517

 

   

      (バルガス=リョサからゴヤ胸像を手渡されて、ゴヤ賞ガラ2016年)

 

★長編ドキュメンタリーも4作あり、第3Invisibles07)はイサベル・コイシェやマリアノ・バロッソ以下5監督合作だが、ゴヤ賞2008長編ドキュメンタリー賞を受賞している。寡作ではあるがゴヤ賞との相性がよい監督である。最新ドキュメンタリーは、新党ポデモスを追ったPolitica, manual de instrucciones16)である。政治的には旗幟鮮明ということもあって評価は分かれるようですが、何はともあれスペイン映画の一つの顔であることには間違いない。運も幸いしているのかもしれませんが彼のような映画も必要だということです。

 

★コロンビアのメデジン・カルテル伝説的な麻薬王エスコバルビオピックを撮るとアナウンスして大分経ちますが、やっと201610月クランクインした。198090年代のエスコバルをハビエル・バルデム、その愛人のビルヒニア・バジェッホにペネロペ・クルス、両人とも久々のスペイン語映画になります。元ジャーナリストだったビルヒニア・バジェッホの同名回想録Amando a Pablo, odiando a Escobar2007年刊)の映画化。タイトルはズバリEscobarです。今年後半公開の予定ですが、あくまで予定は未定です。これは公開を期待していいでしょう。

 

   

            (まだ未完成だがポスターは完成している)

 

エロイ・デ・ラ・イグレシア賞にクラウディア・リョサ*マラガ映画祭20172017年03月16日 16:37

       クラウディア・リョサがエロイ・デ・ラ・イグレシア賞を受賞

 

★前回に続いてマラガ映画祭の特別賞受賞者のご紹介、エロイ・デ・ラ・イグレシア賞受賞のクラウディア・リョサについてはマラガ映画祭2014に長編第3No lleres, vuelaがエントリーされた折に少しだけ紹介しました。本作の原題はAloftで英語で撮られた初めての作品、ニコラス・ボルデュクが撮影監督賞を受賞した。リカルド・フランコ賞のシルヴィ・インベールは初めて当ブログ登場のメイクアップ・アーティストです。片仮名表記はこれでOKでしょうか。

 

 

エロイ・デ・ラ・イグレシア賞 

クラウディア・リョサ Claudia Llosaは、1976年リマ生れ、ペルー出身の監督、脚本家、製作者。伯父にノーベル賞作家で政治家のマリオ・バルガス=リョサ、映画監督のルイス・リョサ、母親パトリシア・ブエノ・リッソは造形アーティスト、エンジニアの父親アレハンドロ・リョサ・ガルシアと、ペルーでは裕福な一族の家庭に生まれる。ニュートン・カレッジを卒業後、リマ大学で映画演出を専攻、続いて1998年アメリカに渡り、ニューヨーク大学やサンダンス・インスティテュートでも学ぶ。同時期にはマドリードの私立学校TAITransforming Arts Instituto)のマスター・コースでも映画を学んでいる。しかし生まれ故郷ペルーに軸足をおいて映画を撮っているようです。デビュー作、第2作とも舞台はアンデス、ここが彼女の原点なのかもしれない。

 

      

                (クラウディア・リョサ)

 

2006年デビュー作Madeinusaがロッテルダム映画祭で国際映画批評家連盟賞受賞を皮切りに、サンダンス、マル・デル・プラタ、マラガ(ラテンアメリカ部門)、トゥールーズ(同部門)ほか、各映画祭で上映された。リマ映画祭の第1回監督作品賞とCONACINE賞を受賞する。本作は2003年ハバナ映画祭で脚本がプレミアされ脚本賞を受賞、翌2004年カロリーナ財団他の資金援助を受けてアンデスを舞台に撮る。ラテンビート2006で『マデイヌサ』の邦題で上映された。2007年にもカルタヘナ映画祭作品賞を受賞するなど受賞ラッシュは続き、14歳の少女マデイヌサを演じたマガリ・ソリエルは全くの素人だったが、この成功で女優の道に進む決心をした。

 

   

                         (『マデイヌサ』のポスター)

 

2La tita asustadaは、再びマガリ・ソリエルを主演に起用、アンデスに吹き荒れたペルー内戦を舞台に恐怖から解放されるまでの若い女性の自立の旅を描いた。デビュー作の成功もあって、ベルリン映画祭2009に正式出品、金熊賞と国際映画批評家連盟賞FIPRESCIを受賞した。続くグアダラハラ、リマ、ボゴタ、ハバナなど各映画祭でも受賞、ゴヤ賞2010イスパノアメリカ部門、オスカー賞外国語映画賞にもノミネートされ、アリエル賞イベロアメリカ部門の作品賞を受賞した。スペイン映画祭2009で『悲しみのミルク』の邦題で上映された。

 

         

 

        

        (金熊賞のトロフィーを手に喜びの監督とマガリ・ソリエル、ベルリン映画祭)

 

3作が上述したAloftです。ジェニファー・コネリー、メラニー・ロラン、キリアン・マーフィーを起用して、今回は母娘ではなく母と息子の関係を描いている。撮影は主にカナダのマニトバで行われた。本作もベルリン映画祭に正式出品、後マラガ、リオ、プサン、サンダンス、トライベッカなど各映画祭で上映された。他に短編「Loxoro」(2011)がベルリン映画祭2012の短編部門のテディ賞を受賞している。マラガ映画祭に縁が深いとはいえ、長編3作品で本賞受賞は珍しいケースかもしれない。

 

   

         シルヴィ・インベールがリカルド・フランコ賞を受賞

 

リカルド・フランコ賞 

シルヴィ・インベールSylvie Imbertは、メイクアップアーティスト。1995年フランス映画、パトリック・アレサンドランのコメディAinsi soient elles(仏=西合作、西題「Mujeres a flor de piel」)のメイクアップでキャリアを出発させるが、アーティストは複数だった(アレサンドランは2003年の『赤ちゃんの逆襲』が公開されている)。1996年、一人で担当したのがヘラルド・エレロのMalena es un nombre de tangoとペドロ・ぺレス・ヒメネスMambrú2作、続いてアメナバルの『オープン・ユア・アイズ』にメイクとヘアーを担当してゴヤ賞1998にノミネートされた。 

 

                 (シルヴィ・インベール)

 

以後1年に23作のペースで仕事をこなし、2008年ホセ・ルイス・クエルダのLos girasoles ciegos、アルモドバルの『私が、生きる肌』11)、コメディ『アイム・ソー・エキサイテッド!』13)、パブロ・ベルヘルの『ブランカニエベス』12)でゴヤ賞を受賞した。他にゴヤ賞受賞はイサベル・コイシェのNadie quiere la noche15)があり、同作はガウディ賞も受賞した。他にフェルナンド・トゥルエバの『ふたりのアトリエ ある彫刻家とモデル』12)、ベルヘルの第3Abracadabra17)など。目下はテリー・ギリアムのThe Man Who Killed Don Quixote(西題「El hombre que mató a Don Quijote」公開2018予定)を担当している。

 

    

    (初のゴヤ胸像を手にしたインベール、『ブランカニエベス』ゴヤ賞2013授賞式)

 

★シルヴィ・インベールは、『エレファント・マン』や『エイリアン』、またはデル・トロの『デビルズ・バックボーン』や『パンズ・ラビリンス』のメイクアップを担当したダビ・マルティ、ジャウマ・バラゲロの『REC』のような特殊メイクを得意とするダビ・アンビトのようなタイプではない。しかしメイク・アーティストとしてのテクニックの高評価が受賞につながったようです。

  

マラガ賞にレオナルド・スバラグリア*マラガ映画祭20172017年03月13日 09:30

        一番の大賞であるマラガ賞に『キリング・ファミリー』のスバラグリア

 

★コンペティション作品紹介前にマラガ映画祭の主な特別賞を簡単に列挙しておきます。スペイン製作とイベロアメリカ諸国製作の垣根が取り払われたこともあるのか、受賞者にアルゼンチンとペルー出身者が選ばれました。二人とも日本での認知度はあるほうだと思います。まずはマラガ賞からご紹介。

各賞の性格については、コチラ201447

 

マラガ賞 レオナルド・スバラグリア1970年ブエノスアイレス生れ、俳優)

★特別賞のうち一番の大賞が「マラガ賞」、最近の受賞者は2014マリベル・ベルドゥ2015アントニオ・デ・ラ・トーレ2016パス・ベガとスペイン勢が受賞しています。最近はスペインを本拠地にアルゼンチンとスペインを行ったり来たりして活躍しているが、アルゼンチン出身のレオナルド・スバラグリアに贈られるのは珍しい。国内外の受賞歴を誇るリカルド・ダリンでさえもらっていないが、スペイン映画出演ではスバラグリアのほうが多い。最近アドリアン・カエタノの『キリング・ファミリー 殺し合う一家』でキャリア紹介をしておりますが、マラガ賞受賞ですから少しばかり補足して再構成します。16歳でデビュー以来トータルで50作を超えます。節目になった作品、受賞した話題作に絞ってのご紹介になります。

 

   

              (喜びのレオナルド・スバラグリア)

 

                    キャリア&フィルモグラフィー

 

16歳の1986年に『ナイト・オブ・ペンシルズ(監督エクトル・オリヴェラ)で長編映画デビューを果たす。本作では軍事独裁政権に抵抗する学生の一人に扮した。その後7年間はテレドラ出演が続き、1993年マルセロ・ピニェイロのTango feroz: la leyenda de Tanguito(スペイン合作)に脇役で出演、その演技が監督の目に止まり、2年後のCaballos salvajes(ウエルバ映画祭主演男優賞)やCenizas del paraiso97)出演につながった。当時はピニェイロの若手お気に入り俳優だった。1998スペインに渡り活躍の場をスペインにも広げるテレドラ出演と並行して2000年、ふたたびピニェイロの炎のレクイエムにエドゥアルド・ノリエガやパブロ・エチャリと出演、「銀のコンドル賞」にノミネートされるなど大成功を収めた。実話に基づいて書かれた小説の映画化、アルゼンチンでは映画より小説のほうが面白いと評されたが、映画も充分堪能できたのではないか。

 

   

     (札束を燃やすシーンのノリエガとスバラグリア、『炎のレクイエム』から)

 

★スペイン映画では、2001フアン・カルロス・フレスナディジョの10億分の1の男』がヒット、一気に国際舞台に躍り上がった。翌年のゴヤ賞新人男優賞を受賞、監督も新人監督賞を受賞した。日本でも公開され話題を呼んだサスペンス。しばらくスペイン映画出演が多くなる。例えば2002年ヘラルド・ベラのDeseoではセシリア・ロスやレオノル・ワトリングと共演、2003年にはマリア・リポルの『ユートピア』やビセンテ・アランダの『カルメン』など。その後アルゼンチンに戻り、2004年ルイス・プエンソの『娼婦と鯨』(スペイン合作)にアイタナ・サンチェス=ヒホンと、次いで最後のガローテ刑に処せられた実在のサルバドール・プッチ・アンティックにダニエル・ブリュールを迎えて撮った実話、マヌエル・ウエルガの『サルバドールの朝』06)では看守役になり、ゴヤ賞助演男優賞にノミネートされた。2007年ゴンサロ・ロペス=ガジェゴのEl rey de la monntana2009年ヘラルド・エレロのEl corredor nocturno、同年マルセロ・ピニェイロのサスペンス群集劇『木曜日の未亡人』では、銀のコンドル賞とスール賞にノミネートされた。 

   

      (危険なゲームを強要された男トマスを演じた10億分の1の男』から

  

2010年以降もアルゼンチンとスペインで活躍、2012年ロドリゴ・コルテスのハリウッド・デビュー作スリラー『レッド・ライト』(米国=西)にロバート・デ・ニーロやシガニー・ウィバーなどの大物俳優と共演、ハリウッド映画に出演したアルゼンチン俳優の一人となった。最近オスカー賞外国語映画賞2015ノミネーションのダミアン・ジフロンの『人生スイッチ』3話「エンスト」)他、アナイ・ベルネリのロマンティック・ドラマAire libreや、マラガ映画祭2017正式出品の『キリング・ファミリー 殺し合う一家』、同正式出品のマルティン・オダラのNieve negraにも出演、ここではリカルド・ダリンと渡り合う。既にアルゼンチンでは公開されており、面白い、いや駄作と観客の評価は真っ二つに分かれている。コメディからサスペンス、シリアスドラマ、イケメンながら汚れ役も厭わない成長株。

 

 

     (Nieve negra」のポスターをバックにしたスバラグリア、右側がダリン)

 

『キリング・ファミリー』の紹介記事は、コチラ2017220

『人生スイッチ』の紹介記事は、コチラ2015729

  

「Brava」ロセル・アギラルの第2作*マラガ映画祭20172017年03月11日 14:40

              罪と苦しみから抜け出す出口を模索する女性の物語

 

  

ロセル・アギラルRoser Aguilarは、1971年バルセロナ生れ、監督、脚本家、バルセロナ派に属する。新作Bravaは長編2作目にあたります。バルセロナ・オーディオビジュアル大学でジャーナリズムを専攻、続いてバルセロナ大学付属のカタルーニャ・シネマ・オーディオビジュアル学校ESCACで監督演出を学ぶ。数編の短編を撮った後、2007La mejor de míをロッテルダム映画祭に正式出品ヒロインのマリアン・アルバレスが最優秀女優賞を受賞するなど高い評価を受ける。監督自身も国内のサンジョルディ賞、トゥリア賞、他を受賞している。主な短編、Cuando te encontré199914)、Ahora no puedo2011)は、ガウディ賞2012の短編部門で作品賞、アルカラ・デ・エナーレス短編映画祭ではヒロインのクリスティナ・ブランコが女優賞を受賞した。 

(ロセル・アギラル監督)

  

 

  *「Brava」* 2016、スペイン

製作:Setmagic Audiovisual / Iberrota Films / TV ON Producciones(カタルーニャTV3

   後援 ICCA / Media Desarrollo / IVAC(バレンシア映画協会)他

監督・脚本:ロセル・アギラル

脚本(共):アレハンドロ・エルナンデス

音楽:ビンセント・バリエレ

撮影:ディエゴ・ドゥスエル

編集:リアナ・アルティガル、フランク・グティエレス

製作者:(エグゼクティブプロデューサー)オリオル・マルコス、パロマ・モラ、他

 

データ:製作国スペイン、スペイン語、2016年、ドラマ、91分、撮影地バレンシア、本映画祭「オフィシャル・セクション」がプレミア、321日上映。

 

キャストライア・マルル(ジャニーヌ、ジャニネ?)、ブリュノ・トデスキーニ(ピエール)、フランセスク・オレリャ、エミリオ・グティエレス・カボ、ミケル・イグレシアス(ルベン)、セルヒオ・カバリェロ(マルティ)、エンパル・フェレール、マリア・リベラ、他

 

プロット:母親の死にあいながらもジャニーヌの人生はすべて順調に過ぎていくように思えたが、それもメトロで強盗にあうまでの話だった。以来、歯車が狂って罪の意識と不安に苛まれるようになる。恋人から離れて、内なる苦しみから抜け出そうと父親が暮らしている小さな村を目指して出発する。そこで鉄で彫刻をしている風変わりな男ピエールと出会う。自分の罪と恐れを悟られないように寛いでいるように振舞うが、内実は自己破壊的な悪循環に陥っていた。自身の人生を立て直す唯一つの出口は現実と対峙することだが、果たして痛みを乗り越えて罪を明らかにすることができるだろうか。 

    

                                   (ライア・マルルとブリュノ・トデスキーニ、映画から)

 

    

      (ライア・マルル、映画から)

 

★ヒロインのライア・マルルLaia Marullは、1973年バルセロナ生れ、TVドラ、舞台でも活躍。ミゲル・エルモソのFugitivas00)でゴヤ賞2001新人女優賞を受賞、イシアル・ボリャインの『テイク・マイ・アイズ』03)でルイス・トサールとタッグを組んで夫婦役を演じた。本作でゴヤ賞2004に二人揃って主演男優・主演女優賞を受賞、他に作品賞、監督賞、脚本賞、マルルの妹役を演じたカンデラ・ペーニャも助演女優をもらった話題作。他にゴヤ賞助演女優賞を取ったアグスティ・ビリャロンガの『ブラック・ブレッド』02)と出演数が少ないわりには女優がもらえる3賞を獲得している。昨年のマラガ映画祭コンペティション出品のポル・ロドリゲスのブラック・コメディQuatretondeta16)に出演していた。こちらでより詳しいキャリアをご紹介しております。

Quatretondeta」の作品紹介記事は、コチラ2016422  

 

(ライア・マルル)

  

 

★ピエール役のブリュノ・トデスキーニBruno Todeschiniは、1962年スイス生まれ。パトリス・シェロー監督のシリアス・ドラマ『ソン・フレール 兄との約束』03、フランス映画)が公開されている。ベルリン映画祭2003銀熊賞受賞作品。難病に冒され死期の迫った兄と彼を見守る弟の関係、また生と死が描かれた。彼は十数キロ体重を落として兄を演じて話題を呼んだ。

 

 

 (ブリュノ・トデスキーニ、『ソン・フレール』から)

  

第20回マラガ映画祭2017*ノミネーション発表2017年03月09日 16:27

               オフィシャル・セクションに大きな変更がありました

 

 

★昨年秋から五月雨式に発表になっていたオフィシャル・セクションの全容が、3月に入ってやっと見えてきました。大きな変更というのは、前回までスペインとイベロアメリカ諸国にざっくり分かれていたのを一つにまとめたことです。昨今のように1国だけで製作することが資金的に難しくなっていることが背景にあるのかもしれません。どうしても合作になるから、どちらに振り分けるか迷う作品が多くなってきていた。ということでオフィシャル・セクションは23が最終的に残り、うちコンペティションは17、コンペ外が6です。正式出品作品のうち、一応スペインが製作国なのは9、イベロアメリカが8とほぼ半分ずつになりました。以下、作品名監督名・主なる製作国、今年は珍しいことに公開作品も含まれているので邦題も入れました。

 

     コンペティション17(順不同、ゴチック体は紹介済み作品)

 

Selfie ビクトル・ガルシア・レオン85分、2017年、スペイン)

 

Nieves Negra マルティン・オダラ Hodara87分、2017年、アルゼンチン=西)

 

Amar エステバン・クレスポ 100分、2016年、スペイン)

 

La niebra y la doncella アンドレス・M・コペル 104分、2017年、スペイン)

 

No sé decir adiós リノ・エスカレラ 96分、2016年、スペイン)

 

Brava ロセル・アギラル 91分、2016年、スペイン)

  追加で紹介記事をアップ、コチラ⇒2017年3月11日

 

La mujer del animal ビクトル・ガビリア120分、2016年、コロンビア)

 

Verano 1993 カルラ・シモン97分、2015年、スペイン、カタルーニャ語、吹替)

 紹介記事は、コチラ2017222

 

El otro hermano イスラエル・アドリアン・カエタノ

    (113分、アルゼンチン・ウルグアイ・スペイン・フランス)

 『キリング・ファミリー 殺し合う一家』の紹介記事は、コチラ2017220

 

Ültimos días en La Habana フェルナンド・ぺレス92分、2016年、キューバ)

 紹介記事は、コチラ201738

 

Plan de fuga イニャキ・ドロンソロ 105分、2017年、スペイン)

 『クリミナル・プラン 完全なる強奪計画』の紹介記事は、コチラ201734

 

Pieles エドゥアルド・カサノバ 74分、2016年、スペイン)

 

El jugador de ajedrez ルイス・オリベロス 98分、2016年、スペイン)

 

 El candidato ニエル・エンドレル84分、2016年、ウルグアイ=アルゼンチン)

 

Me estas matanto Susana ロベルト・スネイデル101分、2016年、メキシコ)

 紹介記事は、コチラ2016322

 

La memoria de mi padre ロドリゴ・バシガルーペ Bacigalupe (87分、2016年、チリ)

 

Redemoinho ホセ・ルイス・Villamarim100分、ブラジル、ポルトガル語、吹替)

 

 

       コンペティション外6

 

El Intercambio イグナシオ・ナチョ (84分、2016年、スペイン)

 

Señor, dame paciencia アレバロ・ディアス・ロレンソ2016年、スペイン)

 

El bar アレックス・デ・ラ・イグレシア102分、2017年、スペイン) オープニング作品

 『クローズド・バル 街角の狙撃手と8人の標的』の記事は、コチラ2017226

 

Maniac Tales キケ・メサロドリゴ・サンチョ、他 (107分、2017年、スペイン)

 

Gilda, no me arrepiento de este amor ロレーナ・ムニョス118分、2016年、アルゼンチン)

 

Me casé con un boludo フアン・タラトゥトTaratuto (2016年、アルゼンチン)

 

★今回はとりあえずラインナップだけアップ、時間が許す限り、賞に絡みそうな、または初監督の話題作などをご紹介していきます。23作中女性監督が3人とは寂しい限り、手始めにバルセロナ派のロセル・アギラルBravaを紹介したい。2007年のオペラ・プリマLa mejor de miをロッテルダム映画祭に正式出品、ヒロインのマリアン・アルバレスが最優秀女優賞を受賞したほか、アギラル監督もサンジョルディ賞、トゥリア賞などを受賞したが、スペインでの評価は分かれた。

 

★美男俳優として活躍しているエドゥアルド・カサノバのデビュー作Pielesも不思議な印象を残す作品、今年のゴヤ賞ガラに初めて出席して、その妖しげな雰囲気で話題を集めた。

 

★マラガ賞(俳優オナルド・スバラグリア)、レトロスペクティブ賞(監督フェルナンド・レオン・デ・アラノア)、エロイ・デ・ラ・イグレシア賞(監督クラウディア・リョサ)、リカルド・フランコ賞(メイクアップ・アーティスト、シルヴィ・インベール)他、各賞は既にアナウンスされています。


『苺とチョコレート』の続編?*フェルナンド・ぺレスの新作2017年03月08日 17:21

        トマス・グティエレス・アレアに捧げる―ディエゴのその後

 

★ディエゴとは、トマス・グティエレス・アレア『苺とチョコレート』の中で造形した主人公、ホルヘ・ぺルゴリアが演じた。こちらのディエゴは亡命許可証を入手して間もなく愛するキューバを後にするだろうアーティスト。片やフェルナンド・ぺレスの新作Últimos días en La Habanaの中のディエゴは、ハバナの古びたアパートのベッドに横たわっている。エイズに体をむしばまれ、もはや亡命の夢は潰えている。やつれたディエゴの傍らには同世代のミゲルが付き添っている。レストランの皿洗いをしながらアメリカへのビザが届くのを待っている。もはやイデオロギー論争にはうんざりした、ただ生き残りを賭けて暮らす庶民で溢れた「ハバナ」での「最後の日々」を性格の異なった二人の男は送っている。アレア監督の下で映画を学んだペレス監督が恩師に捧げる最新作。

 

   

   Últimos días en La Habana(「Last Days in Havana」)2016

製作:ICAIC (キューバ) / WANDA VISIÓN S.A. (スペイン) / Besa Films

監督・脚本:フェルナンド・ぺレス

脚本(共):アベル・ロドリゲス

撮影:ラウル・ペレス・ウレタ

編集:セルヒオ・サヌス

録音:エベリオ・マンフレッド・ガイ・サリナス

美術:セリア・レドン

製作者:ダニロ・レオン、ホセ・マリア・モラレス

 

データ:製作国キューバ=スペイン、スペイン語、2016年、ドラマ、93分、撮影地ハバナ

映画祭・受賞歴:第38回ハバナ映画祭2016審査員特別賞受賞(12月)、ベルリン映画祭2017ベルリナーレ・スペシャル部門出品(2月)、マラガ映画祭2017コンペティション正式出品(3月)、他

 

キャスト:ホルヘ・マルティネス(ディエゴ)、パトリシオ・ウード(ミゲル)、ガブリエラ・ラモン(ディエゴの姪)、クリスティアン・ヘスス、ジャイレネ・シエラ、コラリタ・ベロス、アナ・グロリア・ブドゥエン、カルメン・ソラル、他

 

プロット:現代のハバナを舞台に繰り広げられる友情と犠牲の物語。ディエゴはゲイの45歳、エイズに冒され、もはや夢を描くことができない。同世代のミゲルは「北」に脱出することを夢見て、来る日も来る日もアメリカの地図を眺めている。決して届くことのないビザを待ち続けて、レストランの皿洗いの仕事をこなしながら英語の独学に励んでいる。二人を取り巻く魅力溢れた人々がディエゴの部屋を訪れる。ある日、届くはずのないビザが届けられてくる。このただ事でない運命を前にして二人は突然岐路に立たされる。二人はどんな決断をするのだろうか。大きな変化が予感される小さな「島」を舞台に、友情、それに伴う犠牲、憂鬱、痛み、パッション、貧困、ユーモアに富んだダイヤローグが見る人を魅了する。

 

     

  (審査員特別賞のトロフィーを手に、監督とホルヘ・マルティネス、ハバナ映画祭2016

 

フェルナンド・ぺレス1944年ハバナ生れ)はキューバの監督、脚本家。既に何本か字幕入りで見ることができるが、2003年の異色の無声ドキュメンタリー『永遠のハバナ』(「Suite Habana」)しか公開されていない。1987年の長編デビュー作「Clandestino」が『危険に生きて』の邦題でキューバ映画祭2004で上映されているほか、『ハロー ヘミングウェイ』1990、東京国際映画祭上映)、『口笛高らかに』98NHKBS放映)も、20世紀のキューバ映画を特集したミニ映画祭などで何回か上映されている。そもそもキューバ映画は今世紀に入ってからは本数も少なく、かつての輝きを失っている。従ってキューバ映画祭を開催しようとすれば、いきおい20世紀の映画を選ぶことになる。キューバを舞台にしているが、例えばアグスティ・ビリャロンガの『ザ・キング・オブ・ハバナ』15、スペイン)やパディ・ブレスナックの『ビバ』15、アイルランド)などは、製作国も監督もキューバではない。当ブログで紹介したマリリン・ソラヤのVestido de novia14)、カルロス・レチュガのSanta & Andres16)などは公開はおろか映画祭上映さえ難しい。

 

                  (ハバナの中心街を歩くミゲル役のパトリシオ・ウード)


 

(ディエゴ役のホルヘ・マルティネスと姪役のガブリエラ・ラモス)

 

  

           (扇風機がないので常にうちわを動かしているディエゴとジャイレネ・シエラ)

 

★本作は長編映画8作目となる。製作者にホセ・マリア・モラレス、撮影監督にラウル・ペレス・ウレタなど長年映画作りを共にしてきた仲間とタッグを組んでいる。キャスト選考はかなり難航したとベルリンで語っていた。上記したようにベルリン映画祭のベルリナーレ・スペシャル部門での上映、因みにこのセクションではフェルナンド・トゥルエバのLa reina de España16、西)やアムネスティ国際映画賞受賞したメキシコのエベラルド・ゴンサレスのドキュメンタリーLa libertad del diabloもエントリーされていた)、これから始まるマラガ映画祭コンペ上映などで何らかの賞に絡めば、日本での知名度の高さ、または山形国際ドキュメンタリー映画祭2011の審査員としての来日などを勘案すれば、映画祭上映は期待できるのではないか。

 

 

             (フェルナンド・ぺレス監督)

 

★『永遠のハバナ』以降のフィルモグラフィー、2010José Martí: el ojo del canario2014La pared de las palabras2作、前者はキューバのどちら側からも尊敬されているホセ・マルティの物語、後者は進行性筋萎縮症になって書くことはおろか話すこともできなくなっていく息子とその家族、母親、兄弟、祖母との闘いの物語、原題の「言葉の壁」はそこからきている。息子に初めての起用となるホルヘ・ぺルゴリア、母親に『危険に生きて』や『口笛高らかに』出演のイサベル・サントスが扮した。監督によると実話にインスパイアーされて制作したということです。 

   

    (ホルヘ・ぺルゴリアとイサベル・サントス「La pared de las palabras」から)

  

『クリミナル・プラン 完全なる強奪計画』*「シネ・エスパニョーラ2017」2017年03月04日 17:52

         スペイン本国より一足先に日本で公開される!

 

イニャキ・ドロンソロの長編第2『クリミナル・プラン 完全なる強奪計画』のスペイン公開は428日と日本より1か月先になります。劇場公開は早くて半年後か1年後が常識のスペイン映画が、期間限定とはいえ本国より先とは前代未聞ではないか。201510月にバスク自治州ビスカヤ県の県都ビルバオでクランクインした。イバニェス通りに面したビスカヤ地方評議会都市開発省本部をスイス・クレジット銀行に早変わりさせて、マドリード警察犯罪捜査部の突入シーンで撮影を開始した。交通制限をしての撮影はマドリードでは不可能、ましてや小規模ながら交通量の多い街中で火災を起こすなどもっての外、ビルバオでも撮影時間の制限を受け大勢のヤジウマに取り巻かれての撮影だったようです。 


     

   

 『クリミナル・プラン 完全なる強奪計画』(原題「Plan de fuga」、英題「Escape Plan」)

製作:Atresmedia Cine / Euskal Irrati Telebista(EiTB) / Lazonafilms / Scape Plan

監督・脚本:イニャキ・ドロンソロ

撮影:セルジ・ビラノバ・クラウディン

音楽:パスカル・ゲイニュ

美術:セラフィン・ゴンサレス

プロダクション・デザイン:アントン・ラグナ

衣装デザイン:クララ・ビルバオ

メイクアップ:ナチョ・ディアス、ラケル・アルバレス(特殊メイクアップ)、

       セルヒオ・ぺレス、カルメレ・ソレル(メイクアップ)

製作者:ゴンサロ・サラサル=シンプソン(エグゼクティブ)、ダビ・ナランホ

 

データ:スペイン、スペイン語、2017年、アクション・スリラー、105分、撮影地バスク州ビルバオとマドリードの数か所、撮影期間20151012日より約8週間、配給元ワーナー・ブラザース・ピクチャー・スペイン、スペイン公開2017428日、日本公開325

 

キャスト:アラン・エルナンデス(ビクトル)、ルイス・トサール(警察犯罪捜査官リーダー)、ハビエル・グティエレス(ラピド)、アルバ・ガローチャ、フロリン・オプリテスク(ダミール)、イスラエル・エレハルデ(弁護士)、イツィアル・アティエンサ(マルタ)、エバ・マルティン(経済犯罪係官)、マリオ・デ・ラ・ロサ(消防士)、トマス・デル・エステ、ペレ・ブラソ(尋問官)、ほか

 

プロット:金庫破りのプロフェショナル、ビクトルの物語。ヨーロッパ旧共産圏の元軍人たちで概ね組織された犯罪グループは、仲間の一人を失って活動休止に陥っていた。銀行に押し入り金庫室を掘削機で穴を開けるには、どうしてもプロをリクルートする必要があった。こうして一匹狼のビクトルに白羽の矢が立ち、彼も合流する決心をする。しかし何者かの通報で強盗一味は一網打尽に逮捕されてしまった。事件はあっけなく終わったかに見えたが、ビクトルが請け負ったミッション、金庫室の穴開け作業は開始されることになるだろう。ビクトルの本当の狙い、警察犯罪捜査部の本当の狙いとは果たして何だったのか。ここから本当のドラマが始まる。「罠に落ちるのは誰か?」「結末はどうなるか?」何人も100パーセント安全なものはいない。

 

     

             (ビルバオでの撮影初日、20151012日)

 

★最近日本で公開される映画でルイス・トサールほど出演本数が多い俳優はいないのではないか。公開が始まったダニエル・カルパルソロの『バンクラッシュ』、キケ・マイジョの『ザ・レイジ 果てしなき怒り』(「シネ・エスパニョーラ2017」上映)、ダニ・デ・ラ・トーレの『暴走車 ランナウェイ・カー』、ダニエル・モンソンの『エル・ニーニョ』、少し古いがイシアル・ボリャインの『ザ・ウォーター・ウォー』10)などです。1999年、同監督の『花嫁のきた村』の主役で登場以来、『テイク・マイ・アイズ』など、誠実だが不器用にしか生きられない屈折した男を好演してきた。転機が訪れたのは声帯をつぶし肉体改造をしてまで取り組んだ、ダニエル・モンソンの『プリズン21109)のマラ・マドレ役だったと思う。「こういうトサールを見たかった」と興奮したのを思い起こします。役者になることを反対し続けてきた父親から「やっと認めてもらえた」と彼も当時インタヴューで語っていた。しかしこの成功が役柄のマンネリ化をきたしているのではないかと個人的には危惧しています。

 

  

            (指揮を執るルイス・トサール、映画から)

 

★主役ビクトル役のアラン・エルナンデスは、1975年バルセロナ生れ、ということでカタルーニャ語とのバイリンガル、2007年、舞台俳優として出発、同時にTVシリーズドラマ「La Riera」(1521話)、「Mar de plástico」(151614話)などで演技の実績を積んでいる。代表作はフェルナンド・ゴンサレス・モリナのPalmeras en la nieve15)、これは2015年暮れに公開され翌年ブレイクして2016年興行成績がフアン・アントニオ・バヨナの新作『ア・モンスター・コールズ』(6月公開予定)についで第2位となったヒット作。主役はマリオ・カサスとアドリアナ・ウガルテ、彼は準主役を演じた。ゴヤ賞2017新人監督賞ノミネートのマルク・クレウエトのEl rey tuerto16)では、機動隊所属の警察官に扮した。エミリオ・マルティネス=ラサロのOcho apellidos catalanes15)にも少しだけ顔を出していた。『ホテル・ルワンダ』の英監督テリー・ジョージの「The Promise」(16)にも出演しているが目下は未公開、つまり日本初登場ということになるのでしょうか。

 

   

      (金庫室の穴開けのヘルメット姿のアラン・エルナンデス、映画から)

 

★ラピド役のハビエル・グティエレスについてはアルベルト・ロドリゲスの『マーシュランド』やイシアル・ボリャインのThe Olive Treeご紹介済み、彼も『暴走車 ランナウェイ・カー』で出番は少なかったが存在感を示した。アルバ・ガローチャは、1990年サンチャゴ・デ・コンポステラ生れ、アルベルト・ロドリゲスの『スモーク・アンド・ミラー』やマリア・リポルの新作No culpes al karma de lo que te pasa por gilipollas16)に出演、これはゴヤ賞2017で衣装デザイン賞にノミネートされていた作品。弁護士役のイスラエル・エレハルデ『マジカル・ガール』で既に登場、バルバラ・レニーの現恋人、演技には定評があります。かなり期待していいキャスト陣です。尚キャスト、スタッフの人名表記は公式サイトと若干異なります。当ブログではスペイン語に近い発音を採用しています。

 

   

        (アラン・エルナンデスとハビエル・グティエレス、映画から)

 

   監督キャリア&フィルモグラフィ紹介

イニャキ・ドロンソロIñaki Dorronsoro は、1969年バスク自治州ビトリア生れ、監督、脚本家。スリラーEl ojos del fotógrafo9350分)でデビュー、本作を長編とするか中編とするかで数え方が変わる。当ブログでは次回作La distancia06)を第1回作品としています。ジャンルはスリラー、サンセバスチャン、グアダラハラ、トゥールーズ・シネエスパーニャ、カルロヴィ・ヴァリー、コペンハーゲン、各映画祭に出品、ミゲル・アンヘル・シルベストレ(トゥールーズ・シネエスパーニャ映画祭新人男優賞受賞)、ホセ・コロナド、フェデリコ・ルッピ、リュイス・オマールなどが共演している。グアダラハラ映画祭ではダニエル・アランジョが撮影賞を受賞した。10年ぶりに『クリミナル・プラン 完全なる強奪計画』を撮った。TVドラも手掛けている。 

(撮影中のイニャキ・ドロンソロ監督)

  

(休憩中の監督とルイス・トサール)

 

デ・ラ・イグレシア、新作ホラー・コメディを語る*「シネ・エスパニョーラ2017」2017年02月26日 18:06

         「信用できる唯一の武器は笑いである」とアレックス

 

★ベルリン映画祭も閉幕しました。アレックス・デ・ラ・イグレシアの新作『クローズド・バル 街角の狙撃手と8人の標的』はコンペティション外でしたから賞には絡みませんでしたが、監督はベルリン入りしてプロモーション活動に努めました。スリラーなのかホラーなのか、またはその両方なのか分かりませんが、「死の恐怖」についてのかなりシリアスなコメディ群集劇であるようです。彼はデビュー作以来オーディオビジュアルの致命的な退屈に反旗を翻して終わりなき闘いを続けています。ベルリン映画祭の後、第20マラガ映画祭317日~26日)のオープニング上映が内定しています(ベルリンと同じコンペティション外)。スペイン公開は324日、これは「シネ・エスパニョーラ2017と時差を考えると同日になります。マラガ映画祭については後日大枠をアップいたします。ベルリンの第1回作品賞受賞のカルラ・シモンVerano 1993はセクション・オフィシャルでジャスミン賞を狙います。

 

  

  (エレガントな黒の背広姿のアレックス・デ・ラ・イグレシア、ベルリン映画祭211日)

 

1965年ビルバオ生れの監督は、子供時代に一度もサッカーボールを蹴ったことがなかったという変り種、社会学教授の父親、肖像画家で活動的な母親のもと自由で国家主義的でない家庭環境のなかで育った。政治的な不安は感じなかったが、街路での小競り合いや警官の銃声のなかで、つまりテロリストたちと隣り合って暮らしていた。当時のバスクの流行語は「何かあったのだろう」という一言、何が起ころうとも誰かがそう話すことで終わりだった。フランコ体制が名目上終わるのは10年後の1975年末のこと、しかし同じような思考停止は今でも続いていると監督。

 

★監督によれば、アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』やスティーヴン・キングの『ミスト』、または『皆殺しの天使』からヒントを得ている。「ブニュエルの『皆殺しの天使』は、形而上学的な結末になる。知識などはどこかへ行ってしまって、閉じ込められて抜け出せないという苦痛だけを話し合っている。自分を取り巻く現実を前にして思考停止に陥ってしまっている。現実というのは時には殻のようなもので中身がよく分からない。私たちが度々経験するショーウィンドー越しの商品と同じです」と。登場人物が監禁される場所は、アガサ・クリスティーのは離れ小島、スティーヴン・キングはスーパーマーケット、ブニュエルのは或るブルジョワジーの大邸宅の居間、いわゆる「クローズド・サークル」の代表作品と言われる。邦題が「クローズド・バル」となった延線上には、これがあったかもしれない。

 

★本作ではマドリードのバルが舞台になった。どうしてバルにしたのか、バルは監督にとってどんな意味をもつのか。彼と脚本家のホルヘ・ゲリカエチェバリアは、毎朝9時にマドリードの「エル・パレンティノ」というバルで朝食を摂りながら執筆している。「バルは他人と一緒に居心地のいい時間を過ごせる空間でもあるが、反対に突然人を怯えさせるようなことが起こる場所でもある。隣に座っている客が暗殺者である可能性もあるし、反対に自分が抱えている問題を解決してくれる人かもしれない。あるとき、浮浪者入ってきて、店の女主人が平手打ちを食わせるまで皆を罵りはじめた。一人の客が『何か食べるものを与えるべきだった』と言うと、彼女は『そうしたくなった人に与える』と応酬した。そして彼にコーヒーをついだ。それでみんな黙り込んで固まってしまった」のがアイディアの発端だったそうです。映画にも浮浪者が登場する。

 

  

 

 

 (バルに監禁状態になった、マリオ・カサス、ブランカ・スアレス、カルメン・マチ、ほか)

 

★「現実逃避は映画人として死を意味します。それぞれみんな頭の中に手本があるが、一歩家を出たら身体的強さをもたねばならない」とも。「私たちが暮らしている社会は恐怖が支配しているが、これは現実でなく悪い夢を見ているんだ、と思いたい。しかし実際は悪夢でなく現実、あるとき人生は突然ひっくり返る」と。諺にあるように「男(女も)は敷居を跨げば七人の敵あり」というわけです。「社会的問題を描くのが第一の目的ではないが、背景にそれなくして私の映画は成立しない。私を不安にさせる密室に登場人物を閉じ込める話は魅力的、現実には起こらないことを通して真実を浮き上がらせたい。人間は憎しみで出来上がっている。グロテスクを排除せず、死の恐怖、本能的な衝動、アイデンティティについて語ったホラー・コメディ。

 

★既に次回作Perfectos desconocidosの撮影も終了して今年公開が決定しているようです。イタリア映画『おとなの事情』(2016、パオロ・ジェノベーゼ)のリメイク。イタリアのアカデミー賞ドナテッロ賞を受賞した話題作、間もなく3月公開されます。イネス・パリスの悲喜劇「La noche que tu madre mató a mi padre」(16、マラガ映画祭正式出品)でコメディ女優としての力量を発揮したベレン・ルエダ、『スモーク・アンド・ミラー』のエドゥアルド・フェルナンデス、他にエドゥアルド・ノリエガペポン・ニエトエルネスト・アルテリオダフネ・フェルナンデスフアナ・アコスタなど7人の芸達者が顔を揃えている。ちなみに「La noche que tu madre mató a mi padre」では、ルエダとフェルナンデスは息の合った夫婦役を演じていた。ペポン・ニエト以外はデ・ラ・イグレシア作品は初めての出演かもしれない。こちらはラテンビートに間に合うだろうか。 

   

                      (監督を挟んで7人の出演者たち)

 

 

  (演技を指導中の監督とベレン・ルエダ)

 

イネス・パリスの悲喜劇の紹介記事は、コチラ2016425