開幕作品はアルゼンチンのコメディ*サンセバスチャン映画祭2018 ⑩2018年08月14日 16:16

         リカルド・ダリンとメルセデス・モランが夫婦になります

 

    

★サンセバスチャン映画祭は921日開幕、まだひと月以上ありますが、オープニング作品にアルゼンチンの新人監督フアン・ベラのロマンティックコメディEl amor menos pensadoが選ばれました。結婚25年目、子供も巣立ちして鳥の巣が空っぽになった熟年夫婦の危機が語られる。夫マルコスにリカルド・ダリン、妻アナにメルセデス・モラン、脇をベテラン勢が固めています。フアン・ベラの監督デビュー作だが、既に製作者としては、ルクレシア・マルテルの『サマ』、パブロ・トラペロの『檻の中』(08)でアシスタント・プロデューサーとして初参加、続いて『ハゲ鷹と女医』(「カランチョ」10)、『ホワイト・エレファント』(12)などを手掛け、ディエゴ・カプランの『愛と情事の間』(「2212)では、ダニエル・クパロと脚本も共同執筆している。クパロは本作の脚本の共同執筆者です。アルゼンチンでは既に劇場公開され(82日)、前夜祭にはスタッフ、出演者以外の大勢のセレブたちが毛皮や革のコートに身を包んで馳せつけました。

 

        

    (フアン・ベラ監督、リカルド・ダリン、メルセデス・モラン、真冬の81日)

 

El amor menos pensado(「An Unexpected Love」)2018

製作:Patagonik Film Group / Kenya Films / Boneco Films / INCAA(協賛)

監督:フアン・ベラ

脚本(共):ダニエル・クパロ、フアン・ベラ

撮影:ロドリゴ・プルペイロ

編集:パブロ・バルビエリ

製作者:クリスティアン・ファイジャセ、フアン・パブロ・ガジィ、フェデリコ・パステルナク、チノ・ダリン、リカルド・ダリン、フアン・ベラ

(エグゼクティブ・プロデューサー)フアン・ロベセ

 

データ:製作国アルゼンチン、スペイン語、2018年、ロマンティック・コメディ、136分、撮影地ブエノスアイレス、配給元 Walt Disney Studios Motion Pictures(アルゼンチン)、公開アルゼンチン82

映画祭:サンセバスチャン映画祭2018オープニング作品(921日上映)。カンヌ映画祭2018フィルム・マーケットに出品、Film Sharksにより欧米アジア各国(スペイン、フランス、ギリシャ、台湾、ブラジル他)での配給が契約された。

 

キャスト:リカルド・ダリン(マルコス)、メルセデス・モラン(アナ)、クラウディア・フォンタン、ルイス・ルビオ、アンドレア・ピエトラ、ジャン・ピエール・ノエル、クラウディア・ラパコ、チノ・ノバロ、アンドレア・ポリティ、ガブリエル・コラード、アンドレス・ジル(ルチアーノ)、マリウ・フェルナンデス、ノルマン・ブリスキ、フアン・ミヌヒン他

 

物語:結婚25年目、アナとマルコス夫婦の一人息子が外国で大学課程を始めるため出立した。空っぽになった鳥の巣に危機が訪れる。互いが邪魔になったわけではないが、深く考えることもなく別の人生を歩むことに決心する。独身生活は興味深く魅惑的にうつる。最初は刺激的で興奮したが、順調に思えた別居生活もたちまち彼女にはモノトーンに、彼には受難の連続となる。二人は愛について、本当の望みについて、貞節について、互いに疑問を投げかけあうことに。それぞれの人生は永遠に変わることになるだろう。熟年夫婦の危機がコミカルに語られる。

 

            

           (一人息子を見送るアナとマルコス夫婦)

 

★熟年夫婦の危機をテーマにしたアルゼンチン・コメディで、直ぐに思いつくのがダニエル・ブルマンEl nido vacío08)、『笑う故郷』のオスカル・マルティネスと『オール・アバウト・マイ・マザー』のセシリア・ロスが夫婦役を演じ好評だった。本作の評価は、136分というコメディとしては破格の長さにもかかわらず、各紙誌とも概ねポジティブなのは、主演のリカルド・ダリンとメルセデス・モランの好感度もさりながら、コメディで一番重要だと言われる脇役に演技派を揃えたことによるのではないか。公開第1週目にトップテンの第1位、22万人が映画館に足を運んだ。トム・クルーズの『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』を抜いたということです。ストーリーは特別際立っているわけではないから、「もう全然面白くない」とオカンムリの観客もいるでしょうが、何事によらず好みは十人十色です。

 

      

               (アナとマルコス、映画から)

 

フアン・ベラ監督は上述したようにプロデューサー歴が長く、TVシリーズを手掛けた後、フアン・ホセ・カンパネラの成功作El hijo de la novia01)のエグゼクティブプロデューサー、本作にはリカルド・ダリンも出演している。ルクレシア・マルテルの『サマ』、パブロ・トラペロの『ハゲ鷹と女医』や『ホワイト・エレファント』などを手掛けている。他にサンダンス映画祭2018でワールドプレミアされ、マラガ映画祭に正式出品されたヴァレリア・ベルトゥッチェリ&ファビアナ・ティスコルニアLa reina del miedoがある。製作と同時に初めて脚本を手掛けたのが、ディエゴ・カプランIgualita a mi10)、同22(『愛と情事の間』未公開、DVD)、アリエル・WinogradMamá se fue de viaje17)と本作の4本、すべてコメディで共同執筆です。

 

『サマ』の紹介記事は、コチラ20171013

La reina del miedo」の紹介記事は、コチラ20180410

 

★サンセバスチャン映画祭のオープニング作品に選ばれて、にわかに身辺が慌ただしくなった監督、以前から「たとえオーストラリアの熊の物語でも、すべての映画は自伝的な要素を含んでいます」と語っていましたが、当たり前の話です。

 

       

     (「すべての映画は自伝的な要素を含んでいます」と語るフアン・ベラ監督)

 

リカルド・ダリン(ブエノスアイレス、1957)は、2015年、セスク・ゲイ『しあわせな人生の選択』で共演のハビエル・カマラと男優賞、昨年はラテンアメリカ初のドノスティア賞受賞、今年もオープニング作品の主役ですから現地入りとなるでしょう。キャリアは割愛するとして、もう一人のメルセデス・モラン(サン・ルイス、1955)は、アルゼンチンのルクレシア・マルテル、フアン・ホセ・カンパネラ、アナ・カッツにとどまらず、ブラジルのウォルター・サレス、チリのパブロ・ララインなどに起用されているベテランです。

  

       

     (ドノスティア賞のトロフィーを手にしたリカルド・ダリン、SSIFF2017授賞式)

 

★メルセデス・モランは、マルテルの出身地サルタを舞台にした「サルタ三部作」の第1『沼地という名の町』01)と第2『ラ・サンタ・ニーニャ』04)に出演、前者でクラリン女優賞を受賞しています。カンパネラのLuna de Avellaneda04)ではダリンと共演、サレスの『モーターサイクル・ダイヤリーズ』(04)ではチェ・ゲバラの母親役、アナ・カッツのLos Marzianoは、本映画祭SSIFF2011に正式出品されています。ララインの『ネルーダ 大いなる愛の逃亡者』16)では、詩人の妻に扮しました。

『ネルーダ 大いなる愛の逃亡者』の紹介記事は、コチラ20160516/20171122

 

      

              (本作撮影中のメルセデス・モラン)

 

★更にアナ・カッツの最新コメディSueño Florianópolisが、7月開催のカルロヴィ・ヴァリ映画祭2018に正式出品され、モランがベスト女優賞、監督がFIPRESCIと審査員特別賞と3賞を受賞した。SSIFFのパールズ部門でEl Angelがエントリーされたことは既に紹介しておりますが、今作ではリカルドの息子チノ・ダリン扮する暗殺仲間ラモンの母親役で登場しています。チノ・ダリンは本作「El amor menos pensado」には出演しませんが、父親とともに製作者デビューを果たしました。


カルメン・マウラ、ヨーロッパ映画賞「生涯貢献賞」受賞のニュース2018年08月11日 07:26

            カルロス・サウラに続いて二人目の受賞者

 

★ヨーロッパ映画賞の特別賞にはいくつかあって、なかで一番大きいのが「生涯貢献賞」、次がワールドシネマに貢献したシネアストに贈られる「世界的貢献賞」でしょうか。どちらもいわゆる名誉賞で、前者は1988年から始まり、第1回受賞者はイングマール・ベルイマン、スペイン人では2004年にカルロス・サウラが受賞しています。後者は1997年から始まり、第1回受賞者はミロシュ・フォアマン監督、スペイン人ではアントニオ・バンデラス、ビクトリア・アブリル、つい最近2013年にアルモドバルが受賞しています。カルメン・マウラマドリード、1945女優賞1988年アルモドバルの『神経衰弱ぎりぎりの女たち』、1990年サウラの『歌姫カルメーラ!』で受賞しています。他の受賞者はペネロペ・クルスが『赤いアモーレ』と『ボルベール』2回、ベレン・ルエダが『永遠のこどもたち』などです。

 

  

 

★既に150作に出演しているマウラだが、芸術家、政治家、学者などを輩出している一家で、いわゆる良家の子女、芸能界入りなどもってのほか、親戚一同から反対されたという。1960年代末期に舞台女優として出発、並行して短編映画やTVにも出演していた。タッグを組んだ監督は、フェルナンド・トゥルエバ(「Se intil y no mires con quien85)、マリオ・カムス(「Sombras en una Batalla93)、アグスティ・ビリャロンガ(「Carta a Eva12)、サンセバスチャン映画祭女優賞ゴヤ主演女優賞をもたらしたアレックス・デ・ラ・イグレシア(『13 みんなのしあわせ』00)、以後『マカロニ・ウエスタン 800発の銃弾』、『スガラムルディの魔女』など、デ・ラ・イグレシア映画の常連となった。しかし国際舞台に彼女を押し上げたのは、1980年代最も輝いていた監督の一人、アルモドバル『神経衰弱ぎりぎりの女たち』でした。

  

       

 (初のゴヤ主演女優賞を受賞した『神経衰弱ぎりぎりの女たち』から、共演のバンデラスと

 

★アルモドバルのデビュー作『ペピ、ルシ、ボン、その他大勢の娘たち』(80)以後、『バチ当たり修道院の最期』(83)、『グロリアの憂鬱/セックスとドラッグと殺人』(84)、『マタドール』(86)、『欲望の法則』(87)、そして『神経衰弱ぎりぎりの女たち』と立て続けに出演した。しかしこれを最後に喧嘩別れしてしまい、再びタッグを組んだのが『ボルベール<帰郷>06)、カンヌ映画祭で女性出演者6名全員が異例の女優賞を受賞し、ゴヤ賞では助演女優賞を受賞した。その後これといった諍いがあったわけではないが、「もう決してアルモドバル映画には出ない」と発言し、仲直りしたように見えたのは表面だけで、結局溝が埋まらなかったことが分かった。まあ、映画を見れば理由は想像できます。一時は「アルモドバルのミューズ」とまで言われた仲でしたが、現在では「喧嘩別れした元仲良しカップル」が特集されると、ナンバーワンに登場します。

 

     

    (アラスカとカルメン・マウラ、『ペピ、ルシ、ボン、その他大勢の娘たち』から)

    

       

 (辛口批評家からも合格点を貰った『グロリアの憂鬱~』から、共演のベロニカ・フォルケと)

 

★邦題が原題とあまりにかけ離れていて辿りつけない映画の一つが、パートに追いまくられている主婦が、気障なぐうたら亭主を殺害してしまうが誰からも疑われないというブラック・コメディ『グロリアの憂鬱~』(「¿ Qué he hecho yo para merecer esto?」)、アレックス・デ・ラ・イグレシアの『13 みんなのしあわせ』(La comunidad)が挙げられる。後者でゴヤ賞主演女優賞を受賞した。サウラの『歌姫カルメーラ!』を含めてゴヤ賞は合計4個になります。そのほか、貢献賞というか名誉賞は、スペイン映画国民賞(98)、サンセバスチャン映画祭ドノスティア賞(13)、マラガ映画祭とロカルノ映画祭(07)バジャドリード映画祭(08)、スペイン映画アカデミーの「金のメダル」(09)と、貰えるものはすべて貰っている。

 

        

      (サンセバスチャン映画祭ドノスティア賞のトロフィーを手に、2013年)

 

       

    (3個目のゴヤ賞主演女優賞を受賞した『13 みんなのしあわせ』から)

 

★現在フランス在住のマウラ、フランス語、ポルトガル語にも堪能で、自国以外の監督からもオファーを受けている。エティエンヌ・シャティリエの『しあわせはどこに』(95)、リスボンを舞台にした5人の女性たちの生き方を描いた、ルイス・ガルヴァン・テレシュの『エル』(97)、アンドレ・テシネの『溺れゆく女』(98)、セザール賞助演女優賞を受賞したフィリップ・ル・ゲイのコメディ『屋根裏部屋のマリアたち』(10)、フランシス・フォード・コッポラの『テトロ 過去を殺した男』(09)ほか、公開作品を中心に列挙したが、何しろ出演本数は150作、これから来年にかけて公開される映画も数本あるから、今後の活躍も楽しみである。

 

    

     (フランス映画『屋根裏部屋のマリアたち』に出演したスペインの女優たち)

 

★ヨーロッパ映画賞のガラ開催は参加国持ち回りで毎年変わり、今年はセビーリャで開催されることになっています。ベルリン開催が最多でスペインではバルセロナで開催されたことがあります。第31回ヨーロッパ映画賞2018授賞式は1215日です。

 

『スガラムルディの魔女』の紹介記事は、コチラ20141012同年1018

『屋根裏部屋のマリアたち』の紹介記事は、コチラ20131208同年1213


ペルラス部門にハイメ・ロサーレス新作*サンセバスチャン映画祭2018 ⑨2018年08月08日 16:01

             3 作ともカンヌ映画祭2018のノミネーション作品です!

    

       

   

★ペルラス(パールズ)部門は、かつてはサバルテギ部門に含まれていたセクションでした。今年はアルゼンチンとの合作、ルイス・オルテガEl Ángelハイメ・ロサーレスPetraと、スペイン人とポーランド人の監督ラウル・デ・ラ・フエンテ&ダミアン・NenowのアニメーションUn día más con vida(ポーランド合作)の3作がエントリーされました。うち「El Ángel」はカンヌ映画祭2018「ある視点」部門に、「Petra」はカンヌ映画祭と同時期に併催される「監督週間」に正式出品された作品で、最後のアニメーションはカンヌのコンペティション外上映でした。「El Ángel」はカンヌで既にアップしておりますので割愛いたしますが、「死の天使」と恐れられた美貌の青年殺人鬼カルロス・ロブレド・プッチのビオピックです。

 

El Ángel(アルゼンチン、スペイン)2018 ルイス・オルテガ

 

    

El Ángel」の記事・監督紹介は、コチラ20180515

 

 

Un día más con vida/Another Day of Life(西、ポーランド)2018 アニメーション

 ラウル・デ・ラ・フエンテ&ダミアン・Nenow

 

    

 

       5度目のカンヌに挑戦したハイメ・ロサーレスの新作「Petra

    

 

       

Petra(スペイン、フランス、デンマーク)ハイメ・ロサーレス 2018

キャスト:バルバラ・レニー(ペトラ)、ジョアン・ボテイ(造形芸術家ジャウマ)、マリサ・パレデス(ジャウマの妻マリサ)、アレックス・ブレンデミュール(ジャウマの息子ルカス)、ペトラ・マルティネス(ペトラの母フリア)、カルメ・プラ(テレサ)、オリオル・プラ(パウ)、チェマ・デル・バルコ(フアンホ)、ナタリエ・マドゥエニョ(マルタ)

 

スタッフ:監督・脚本ハイメ・ロサーレス、共同脚本ミシェル・ガスタンビデ、クララ・ロケ、製作者(エグゼクティブプロデューサー)ホセ・マリア・モラレス、(プロデューサー)アントニオ・チャバリアス、カトリン・ポルス、音楽クリスティアン・エイドネス・アナスン、撮影エレーヌ・ルバール、編集ルシア・カサル、美術ビクトリア・パス・アルバレス、衣装イラチェ・サンス

 

物語:ペトラの父親の素性は彼女には全て秘密にされていた。母親の死をきっかけにペトラは危険な探索に着手する。真相を調べていくうちに、権力をもつ無慈悲な男、著名な造形芸術家ジャウマ、ジャウマの息子ルカスと妻マリサに出会う。次第に登場人物の人生は、ぎりぎりの状況にまで追いこまれ、悪意、家族の秘密、暴力のスパイラルに捻じれこんでいく。運命は希望と贖罪のための窓が開くまで、残酷な筋道を堂々巡りすることだろう。カタルーニャのブルジョア家庭の暗い内面が語られるが、悲劇は避けられるのでしょうか。

 

データ:製作国スペイン(Fresdeval Films / Wanda Visión / Oberón Cinematográfica)、フランス(Balthazar Productions)、デンマーク(Snowglobe Films)、言語スペイン語・カタルーニャ語、2018年、107分、協賛TVETV3Movistar+他。スペイン公開20181019

映画祭・受賞歴:カンヌ映画祭2018併催「監督週間」正式出品、サンセバスチャン映画祭2018「ペルラス」部門上映

 

       

               (ペトラ役のバルバラ・レニー)

 

      

          (ペトラとルカス役のアレックス・ブレンデミュール)

 

★「監督週間」では時間切れでご紹介できなかったハイメ・ロサーレスの第6作「Petra」のご紹介。もっぱらカンヌに焦点を合わせているカンヌの常連ハイメ・ロサーレス監督(バルセロナ、1970)だが、サンセバスチャン映画祭2008に長編第3Tiro en la cabezaが正式出品されている。バスク原理主義者によって殺害されたスペインの2人の警察官の物語ということで、カンヌでは拒まれ、サンセバスチャンに持ってきたのだが、こちらでも散々な評価だった。唯一評価したのがフォトグラマス・デ・プラタ作品賞のみでした。自然の音以外音声のない無声映画のような、ドキュメンタリー手法で望遠レンズで撮影された。今作以外はすべてカンヌでワールドプレミアされ、新作「Petra」が5回目のノミネーションだった。

 

★デビュー作Las horas del día03)が「監督週間」に出品され、いきなり国際映画批評家連盟賞を受賞した。ここで主役を演じたのが今回ジャウマの息子ルカスになったアレックス・ブレンデミュールで、15年ぶりに監督と邂逅した。欲に眩んだ造形芸術家ジャウマに扮したジョアン・ボテイは、偶然監督と知り合いリクルートされた自身もアーティスト、カメラの前に立つのは初めてだそうです。女性陣の二人バルバラ・レニーマリサ・パレデスは割愛、ペトラの母親フリアを演じたペトラ・マルティネスは、ロサーレス監督の第2作目『ソリチュード:孤独のかけら』で3人姉妹の母親役をしたベテラン、アルモドバルの『バッド・エデュケーション』でもガエル・ガルシア・ベルナルの母親になった。地味な役柄が多いが存在感のある実力派女優です。

   

国際色豊かなのがスタッフ陣、名前からも分かるように、撮影監督エレーヌ・ルバールはフランスのポンタルリエ生れ(1964)、アニエス・ヴァルダの『アニエスの浜辺』(08)、ヴィム・ヴェンダースの『Pina/ピナ・バウシュ踊り続けるいのち』(11)、アリーチェ・ロルヴァケルの『夏をゆく人々』(14)などの美しい映像は今でも心に残っている。音楽のクリスティアン・エイドネス・アナスンはデンマーク出身、高い評価を受けたパウェウ・パヴリコフスキの『イーダ』(13)やアマンダ・シェーネルの『サーミの血』(16)などを手掛け、国境を超えて活躍している。監督キャリア紹介は以下にまとめてあります。

  

2作目La soledad」(『ソリチュード:孤独のかけら』)紹介は、コチラ20131108

5作目Hermosa juventud」と監督紹介記事は、コチラ20140504同年0526

 

     

(マリサ役マリサ・パレデスとジャウマ役ジョアン・ボテイ)

      

 

               (監督を挟んで撮影中のマリサ・パレデスとバルバラ・レニー)

  

サバルテギ-タバカレラ部門 3*サンセバスチャン映画祭2018 ⑧2018年08月05日 16:00

       サバルテギの3作目はアルゼンチンのドキュメンタリー「Teatro de guerra

 

 

ロラ・アリアスTeatro de guerraは、1982年に勃発したマルビナス(フォークランド)戦争に従軍したアルゼンチンとイギリスのかつての兵士6人の個人的な記憶に基づいたドキュメンタリー。両陣営合わせて約1000名の犠牲者を出した戦争は、旧型兵器の在庫一掃、兵器開発国にとっての巨大な実験場とも称された。イギリス軍の圧勝に終わった戦争だが、アルゼンチンではマルビナス諸島の統治権についての論争は未だに続いている。戦争終結35周年の節目に両国のユニークなコラボレーションで製作された。本作は既にベルリン映画祭2018「フォーラム」部門でワールドプレミアされ、エキュメニカル審査員賞C.I.C.A.E.Art Cinema賞を受賞している。

 

      

 Teatro de guerra(「Theatre of War」)ロラ・アリアス

キャスト:ダビ・ジャクソン、ルベン・オテロ、マルセロ・バジェッホ、ルー・アーマーLou Armour、ガブリエル・サガストゥメSagastume、スクリム・ライSukrim Rai

 

     

 (前列、マルビナス諸島の地図をもつ、左からマルセロ・バジェッホ、ルー・アーマー、

後列、ガブリエル・サガストゥメ、ダビ・ジャクソン、スクリム・ライ、ルベン・オテロ)

 

監督・脚本:ロラ・アリアス

撮影:マヌエル・アブラモヴィチ

製作者:ジェマ・フアレス・アジェン(Gema Films代表者)、アレハンドラ Grinschpum、ベティナ・ワルター、他

 

データ:製作国(制作会社)アルゼンチン(Gema Films、スペイン(BWP、ドイツ(Sutor Kolonko)、スペイン語・英語、2018年、ドキュメンタリー、73分、撮影地ブエノスアイレス、ロンドンのロイヤル・コート・シアター、製作資金約23万ユーロ、アルゼンチン配給INCAA、公開アルゼンチン201842

 

映画祭・受賞歴:ベルリン映画祭2018フォーラム部門(ワールドプレミア)エキュメニカル審査員賞C.I.C.A.E.Art Cinema賞を受賞、SXSW米国サウス・バイ・サウス映画祭出品、イスタンブール映画祭、エルサレム映画祭(ベスト・ドキュメンタリー賞)他

 

     

 (C.I.C.A.E.Art Cinemaのトロフィーを手に、ジェマ・フアレス・アジェン、ベルリン映画祭)

 

解説19823月、アルゼンチンとグレートブリテンは、大西洋上のフォークランド(マルビナス)諸島の領有権をめぐって軍事衝突した。約3か月後の614日、両陣営合わせて約900名の犠牲者を出して終結した。イギリスの圧倒的な勝利に終わった戦争だが、アルゼンチンではマルビナス諸島の統治権についての論争は未だに続いている。出演者6名は、オーディションに応募してきたマルビナス戦争の従軍兵士から各3名ずつ選ばれた。彼らが戦った戦争の記憶の掘り起こしに数か月間かけて再構築した。このドキュメンタリーはかつての敵同士を出合わせて、戦争で深い傷を負った元兵士たちの個人史を語らせるという社会的な実験でもある。彼らの記憶の掘り起こしの舞台となった空間は、それぞれスイミングプール、建設中の工事現場、軍の連隊であったりした。すべてのシーンは、本物であると同時に人工的につくられたものでもある。戦争終結35周年に際して、アルゼンチンとイギリス両国のユニークなコラボレーションで製作された。

 

           

                     (プールサイドで記憶を再構築する元兵士たち)

 

★ドキュメンタリーというより、ドキュメンタリーとフィクションがミックスされた印象を受ける。かなり革新的な手法で撮られており、これからのドキュメンタリーの方向性を占う参考にもなりそうです。この戦争については優れたドキュメンタリーもあり(ヨークシャーTVThe Farkland War1987)、字幕入りで放映されたものが、部分的にYouTubeで見ることができる。湾岸戦争の先駆け、旧型兵器の在庫一掃、兵器開発国にとっての巨大な実験場などと称されるが、死傷者654名を出したアルゼンチン兵士の多くは、にわか仕立ての訓練が不十分な若者だったと言われています。戦場と帰還した本国のギャップに苦しみ、自殺した兵士の数は戦死者と同数だったともいわれている。

 

    

   (国民の不満を逸らすためマルビナスに軍隊を派遣した軍事独裁者ガルティエリ大統領、

国連の勧告を無視して機動艦隊と原子力潜水艦を派遣、人気挽回を図った鉄の女サッチャー首相)

 

トリスタン・バウエルIlminados por el fuego05『火に照らされて』アルゼンチン)は、18歳でマルビナスの戦場に放り込まれた青年エステバンが20年後に戦争の記憶を辿る物語。サンセバスチャン映画祭2005の審査員特別賞を受賞したほか、ゴヤ賞2006スペイン語外国映画賞(現イベロアメリカ映画賞)を受賞している。戦争の記憶は生きている限り消えることはない。

 

監督紹介ロラ・アリアスLola Ariasは、1976年ブエノスアイレス生れ、監督、脚本家、作曲家、女優、舞台演出家。ブエノスアイレス大学卒。舞台演出家としてのキャリアが長く、長編ドキュメンタリーTeatro de guerra42歳でのデビュー作。プロジェクト・チームの立ち上げは2013年、準備に時間をかけている。その間、同じテーマで劇化した「Minefield」(地雷敷設区域)は既に何回も上演されているようです。キャストもマルビナス戦争に従軍した6人の元兵士です。今年10月に開催される京都国際舞台芸術2018『記憶の地雷原』100分)の邦題で3回の上演が決定しています。アリアスは5年前に『憂鬱とデモ』で当京都国際舞台芸術祭に参加しているそうで、演劇界では実績のある演出家。

   

    

   (「Minefield」に出演のマルセロ・バジェッホ、ロイヤル・コート・シアター、2016年)

 

★お気に入りの監督は、ベルギーの故シャンタル・アケルマン、特に「Je, tu, il, elle」(75、モノクロ)は、独創的で、センシティヴ、詩的で美しい。女性同士のセックスシーンの美しさは今まで見たことがなかった」と。本邦では第19回カイエ・デュ・シネマ週間「シャンタル・アケルマン追悼特集」で『私、あなた、彼、彼女』として上映された。ジャム・ジャームッシュ以下影響を受けた監督は数多い。私生活では作家のアラン・パウルスと結婚、2児の母親。パウルスの小説で映画化されたものは、先年鬼籍入りしたエクトル・バベンコの『失われた肌』(07)があり、他にフィト・パエスの『ブエノスアイレスの夜』(07)、当ブログでもご紹介したグスタボ・タレットの『ブエノスアイレス恋愛事情』(11)などの脚本を手掛けている。

  

            

                      (ロラ・アリアス、ベルリン映画祭2018にて)

  

サバルテギ-タバカレラ部門 2*サンセバスチャン映画祭2018 ⑦2018年08月03日 13:29

                  フェデリコ・ベイローの第4作「Belmonte

 

★サバルテギ部門の長編2本目は、フェデリコ・ベイローの第4作目Belmonteです。長編デビュー作Acné08)が邦題『アクネACNE』(12)として、第2La vida útil10)が『映画よ、さようなら』(16)として公開された。時間が経ちすぎて公開した頃にはすっかり忘れれていたが、とにかくスクリーンで見ることができた。さらに3作目El Apóstata15)がNetflixで『信仰を捨てた男』の邦題で放映されるなど幸運な監督と言えるかもしれない。それだけ魅力的な監督ということでしょうか。まだ新作の情報がわずかしか入手できていませんが、取りあえずご紹介いたします。

 

Belmonte(ウルグアイ、メキシコ、スペイン合作)フェデリコ・ベイロー 

キャスト:ゴンサロ・デルガド(ベルモンテ)、オリビア・モリナロ・エイホ(娘セレステ)、トマス・ワーマン(Wahrmannヴァールマン?)

 

物語:小さい娘と暮らしている造形アーティストのベルモンテの物語。肖像画を描くことに関心があり、モンテビデオのビジュアルアート美術館に収蔵されている絵画を手本に接近していく。しかし最近家族に起きた変化が気がかりで専念できない。別居している妻は妊娠しているが、お腹の子供の父親は別の男である。娘のセレステは気づいている。弟が生まれれば父と過ごす時間は少なくなるだろう。ベルモンテはできだけ多く娘と過ごそうと昼食の用意をして、学校に送りとどける。娘はそれなりに相応しい大人になるだろうが、とにかく内面の心配事を隠さないで、娘と気持ちを分かち合おうとする。

 

 

    

  監督紹介

フェデリコ・ベイローFederico Veiroj(綽名Cote Veiroj)は、1976年モンテビデオ生れ、監督、脚本家、製作者、俳優。現在はスペインの国籍を取得して両国で撮っている。ウルグアイ・カトリック大学でコミュニケーション学を専攻した。デビュー作Acné08)は、第23回ゴヤ賞2009イスパノアメリカ(現イベロアメリカ)映画賞にノミネートされたが、チリ代表アンドレ・ウッドの「La buena vida」(『サンティアゴの光』)に敗れた。2作目、3作目は上記の通りですが、最も成功したEl Apóstataは第63SSIFF2015「コンペティション部門」にノミネートされ、国際映画批評家連盟賞FIPRESCI、審査員特別メンションを受けた。カトリックの信仰を捨てたい男ゴンサロ・タマヨの有為転変が語られる。批評家受けのするブニュエル風の人を食った作品だが、観客も現代の寓話として楽しめる映画になっている。2000年から6年間ほどマドリードで暮らしていたこともあってマドリードで撮影した。

 

 

     

ゴンサロ役アルバロ・オガーリャ、棄教したいゴンサロを諭すホルヘ司教フアン・カロ)

 

★俳優歴は短編を含めると56本あるが、有名なのは『ウィスキー』(04、ウルグアイ、アルゼンチン、独、西)の監督コンビ、パブロ・ストール&フアン・パブロ・レベージャのデビュー作25 Watts25ワッツ)01)のヘラルディートと呼ばれる少しぼうっとした若者役でした。小国ウルグアイの映画市場は狭く、1国だけの製作は難しく、監督以下、掛け持ちで役割を複数担当することになる。国土の広い隣国ブラジルとアルゼンチンに挟まれているので、ボカディージョ(フランスパンのサンドイッチ)に挟まれたパセリなどと悪口を言われる。自国だけでは食べていけないので同じ言語のアルゼンチンに出稼ぎに行く。それで本邦紹介がアルゼンチン映画だったりすると、アルゼンチン人と間違われることになる。

 

    

             (フェデリコ・ベイロー監督)

 

  キャスト紹介

★「Belmonte」の主役ゴンサロ・デルガドGonzaro Delgado Galianaは、1975年モンテビデオ生れ、脚本家、アートディレクター、監督、俳優。パブロ・ストール&フアン・パブロ・レベージャと同じウルグアイ・カトリック大学の映画仲間で、同じコミュニケーション学を専攻した。『ウィスキー』では、脚本を監督と共同執筆、美術も担当している。他にAcné」やミニ映画祭として短期間公開されたアルゼンチンのアドリアン・カエタノのEl otro hermano(邦題『キリング・ファミリー 殺し合う一家』、17、アルゼンチン、ウルグアイ、西、仏)でも美術を担当、『映画よ、さようなら』、『信仰を捨てた男』では脚本を共同執筆している。初監督はベロニカ・ぺロタと共同で監督したファミリー・コメディLas toninas van al Este16)、ブラジル南部の都市グラマドで開催されるグラマド映画祭(第11973年)で主演のベロニカ・ぺロタが女優賞を受賞した。デルガドも出演している。当時デルガドは、「役者になりたかった。それも主人公を演りたかった」とインタビューで語っていた。

 

           

                      (ゴンサロ・デルガドとベロニカ・ぺロタ)

 

    

         (ゴンサロ・デルガド、Las toninas van al Este」から

 

★ベイロー監督は「ゴンサロは私の映画には欠かせない才能の一人、本作(Belmonte)も彼のために書かれた映画です。ベルモンテを中心に据え、中年にさしかかった男の危機が語られます」とインタビューに応えている。というわけでデルガドも今回は主人公を演じられて念願が叶いました。

 

★製作は、ウルグアイ(Nadador Cine / Cinekdoque)、メキシコ(Corazon Films / Charles Barthe-Labo Digital)、スペイン(Ferdydurke Films)、SSIFFなどの映画祭のほか、年内のウルグアイ公開が予定されている。

 

★第5作目となるEl cambistaの撮影の準備も始まっている。偶然目にしたフアン・エンリケ・グルベルの小説「Así habló el cambista」が下敷きになっているようです。ベネズエラ出身だがモンテビデオで死去している(192481)。主役の両替商にダニエル・エンドレルほか、ドロレス・フォンシ、ベンハミン・ビクーニャ、ルイス・マチン、ホルヘ・ボラニなど、2019年完成を目指している。両替商ということですからアンチヒーローでしょうか。主人公を演じるダニエル・エンドレルは、1976年モンテビデオ生れ、アルゼンチンのダニエル・ブルマン監督の「アリエル三部作」(『救世主を待ちながら』『僕と未来とブエノスアイレス』など)の主役アリエルを演じたことから、アルゼンチン出身と思われているシネアストの一人です。25 Watts」や『ウィスキー』に出演している。


サバルテギータバカレラ*サンセバスチャン映画祭2018 ⑥2018年08月01日 14:52

                    サバルテギは「何でもありの部門」です!

 

     

サバルテギZabaltegiは、バスク語で「自由」という意味で、その名の通り言語やジャンルを問わない。従って本数も多く今年はスペイン語映画は、長編3短編2で、バスク語は見当たりません。タバカレラTabakaleraは、かつてのスペイン煙草専売公社だった建物を2010年から5年がかりで大改装、現在ではサンセバスチャンの現代文化国際センターに生まれ変わりました(開館は2015911日)。展覧会などができる展示場のほか、常設の映画館、レストラン、ホテル、博物館のような機能も兼ね備えており、市の観光スポットになっています。サンセバスチャン映画祭SSIFF2016年からサバルテギ部門の映画を上映しています。映画国民賞の授賞式は当映画祭が恒例ですが、昨年の受賞者アントニオ・バンデラスの授賞式はタバカレラで行なわれました。

 

               

         (現代文化国際センターに生まれ変わったタバカレラ全景)

 

★長編は、ガリシアはルゴ出身のシャシオ・バーニョの「Trote」、フェデリコ・ベイローの「Belmonte」、アルゼンチンのロラ・アリアスTeatro de guerra」の3本、短編はパンプローナ出身(1988)のマディ・バルベルの「592 metroz goiti」、アリカンテのオリウエラ出身(1982)のエレナ・ロペス・リエラの「Los que desean」の2本です。

 

592 metroz goiti短編ドキュメンタリー(24分)製作国スペイン 2018

監督・脚本・撮影:マディ・バルベル(バーバー?)Maddi Barber

物語:土地の姿が完全に変わってしまったとき、人生にはどんな可能性が残されるのだろうか。1990年代にナバラ州のピレネー山腹にイトイツ・ダムの建設が始まり、7つの村と3つの自然保護区が水没した。むき出しの帯状地帯に標高592メートルの外観が谷の景観を二分している。下では水が流れ、上では人生が続いている。建設予定当初から現在まで建設の是非が問われている。イトイツの名称は水没した村の名前から取られている。

 

   

 

      

                (イトイツ・ダムの遠景)

 

Los que desean短編ドキュメンタリー(24分)、製作国スイス、スペイン、2018

監督:エレナ・ロペス・リエラ Elena López Riera

スイスのジュネーブ大学、マドリードのカルロスⅢ大学で学ぶ。本作はロカルノ映画祭にエントリーされている。短編「Pueblo」(15)がカンヌ映画祭併行開催の「監督週間」にエントリーされている。

物語:スペイン南部、手書きで彩色された小バトのレースについての映画。変わっているのはスピードを競うのではなく、小バトの可愛らしさと滞空時間の長さを競うレースである。

 

 (飛翔する小バトを見上げる参加者たち)

  

    

                (それぞれ彩色された小バト)

 

Trote(「Trot」、スペイン、リトアニア)シャシオ・バーニョ

キャスト:マリア・バスケス(カルメ)、セルソ・ブガーリョ(父ラモン)、ディエゴ・アニド(兄ルイス)、タマラ・カノサ(兄嫁マリア)、フェデリコ・ぺレス、他

 

物語:カルメはガリシア内陸部の山村のパン屋で働きながら両親と暮らしている。父親ラモンとの会話は少なく、母親は病に伏している。この息のつまるような生活から逃げ出したいが、いつも今一歩のところで邪魔がはいる。週末には村伝統の祭り、馬と人間が闘う「ラパ・ダス・ベスタス」が開催される。村では祭りの準備が始まり、カルメの兄ルイスも妻マリアを伴ってマドリードから帰郷、数日間過ごすことになるだろう。トロット、逃亡、人間と馬の、理性と本能の闘いが語られるだろう。

  

     

監督シャシオ(サシオ?)・バーニョXacio Baño(ルゴ、1983)の長編デビュー作。レオン大学の映画学科で学ぶ。短編では既に数々の受賞を得ており、なかで2012年のAnacosは、マラガ映画祭2012の短編部門の審査員特別賞「銀のビスナガ」を受賞したほか、メディナ・デ・カンポ映画週間2013でも「もう一つの視点」賞を受賞している。続く2014年の短編ドキュメンタリーSer e voltar(バルセロナ・インディペンデント映画祭審査員スペシャル・メンション)、2015年のEco(同映画祭観客賞)ほか受賞歴多数。SSIFFより一足早く8月初旬に開催されるロカルノ映画祭の「現在のシネアストたち」部門に正式出品が決定しています。

 

              

              (撮影中の監督とマリア・バスケス)

 

スタッフ:脚本はディエゴ・アメイシェイラス(ホルヘ・コイラの『朝食、昼食、そして夕食』)との共同執筆、撮影はルシア・C・パン、主に港湾都市ポンテべドラで撮影され、製作はFrida Filmsルイサ・ロメオ、ガリシアTVの協力を受けている。

 

    

 (左から、マリア・バスケス、監督、ルイサ・ロメオ、ノミネーション発表会場、720日)

 

★主役のカルメを演じたマリア・バスケス(ビゴ、1979)は、イシアル・ボリャインの「Mataharis」(07)でゴヤ賞2008の助演女優賞にノミネートされ、シネマ・ライターズ・サークル賞では助演女優賞を受賞した。公開作品ではホルヘ・コイラの『朝食、昼食、そして夕食』(10)に小さい役で出演している。SSIFF関連では、ニューディレクターズ部門に正式出品されたネリー・レゲラのMaría (y los demás)16)に出演している。主役のマリアを演じたバルバラ・レニーがフェロス賞の女優賞を受賞した作品、バスケスは2002年から始まったガリシア映画に特化した映画賞メストレ・マテオ賞2017の助演女優賞にノミネートされた。

 

★父親を演じたセルソ・ブガーリョ(ポンテべドラ、1947)は、実話を素材にしたアメナバルの『海を飛ぶ夢』04)の主人公ラモン・サンペドロ(ハビエル・バルデム)の兄役で一躍有名になった。閉鎖的で頑固なガリシア気質の人物を演じてゴヤ賞2005助演男優賞を受賞した。1970年代に舞台俳優として出発、映画デビューはホセ・ルイス・クエルダの『蝶の舌』99)の司祭役ということですから既に50歳を過ぎていた。他にフェルナンド・レオン・デ・アラノアの『月曜日にひなたぼっこ』2002)の失業のため妻に逃げられ孤独死する老人を演じた。脇役が多いが、東京国際映画祭2008Earth Grand Prix賞を受賞したホセ・アントニオ・キロスのコメディ『フェデリコ親父とサクラの木』(原題「Cenizas del cielo」)では主役のフェデリコになった。また レオン・デ・アラノアのAmador10)でもアマドールを主演した。TVシリーズや短編出演のほか声優としても活躍している。   

              

       (カルメ役のマリア・バスケスと父親ラモン役のセルソ・ブガーリョ)

 

★デビュー作「El Apóstata」がSSIFF2015コンペティション部門にノミネートされたフェデリコ・ベイローの「Belmonte」と、アルゼンチンのロラ・アリアスTeatro de guerra」は次回にアップします。前者は『信仰を捨てた男』の邦題でNetflixで放映されている。

 

セクション・オフィシアル-コンペティション外*サンセバスチャン映画祭2018⑤2018年07月29日 11:26

                  エンリケ・ウルビスのTVシリーズ「Gigantes」の先行上映

 

★昨年から始まった2TVシリーズの先行上映は、『悪人に平穏なし』(11)の成功の後、しばらく音沙汰のなかったエンリケ・ウルビスホルヘ・ドラドGigantes(スペイン、全8話)に決定、今回もホセ・コロナドとタッグを組んでいます。コロナドは20174月に心臓の痛みを感じて緊急入院、冠状動脈のトラブルを取りのぞくステント手術を受けています。退院後、マヌエル・リバスのアイデアとなるTVシリーズVivir sin permiso(全14話、201718)に主演、4人の息子をもつガリシアの麻薬王に扮した。今回のGigantes」も3人の息子を麻薬の「巨人」に育て上げようとする父親役で、似たような設定が気に入りませんが、春から話題になっていたドラマです。管理人贔屓のウルビスとコロナドがタッグを組んだということでアップいたします。

 

              

              (ウルビス監督とホセ・コロナド)

 

     

  (左から、ホセ・コロナド、エリザベト・Gelabert、ダニエル・グラオ、ウルビス監督、

   イサク・フェリス、カルロス・リブラド、720日、マドリードの映画アカデミーにて)

    

Gigantes(スペイン、全8話)エンリケ・ウルビス&ホルヘ・ドラド

キャスト:ホセ・コロナド(父親アブラハム・ゲレーロ)、イサク・フェリス(長男ダニエル)、ダニエル・グラオ(次男トマス)、カルロス・リブラドNene(末子クレメンテ)、エリザベト・Gelabert、ヨランダ・トロシオ、ソフィア・オリア、マヌエル・ガンセド、他多数

 

解説:ゲレーロ家は数十年間、マドリードの暗黒街ラ・ラティナ地区でスペインからヨーロッパ諸国にコカインを流す麻薬取引網をコントロールしていた。しかし目下のファミリーは彼らにとって極めて重要な局面に立たされていた。長男ダニエルが15年の刑期を終えて出所してきたが、父アブラハムは病に伏していた。ダニエルは一家の然るべき地位を取り戻そうとするが、彼の知っていた世界はもはや存在していなかった。三男クレメンテの姿はなく、次男トマスが一家の大黒柱になっていたからだ。父親が三兄弟に施した教育は、生き残るためには手段を択ばず、モラルの限界を超えてでも檻の中の闘犬のように、<巨人>のごとく闘うことだった。兄弟の闘いの行くつく先は、兄弟間の愛と憎しみが語られるだろう。

 

★三兄弟は母親の愛を知らずに育った。モンスターのような麻薬密売人の父親は、兄弟を競わせてお金の稼ぎ方と暴力の使い方を教えてきた。長男ダニエル(イサク・フェリス)は後先を考えない衝動的な性格で、父親の姿を追って生きているのだが、父親のような人生は歩みたくないというジレンマを抱えている。三男クレメンテ(カルロス・リブラドNene)は家業から抜け出したいとボクシングに熱中しており、ガールフレンドもファミリーと距離をおくことを願っている。次男トマス(ダニエル・グラオ)は謎めいているが、彼ら三人の共通項は満身傷だらけという点である。ダニエル・グラオは、アルモドバルの『ジュリエッタ』でヒロインの夫を演じた俳優、イサク・フェリスは、マラガ映画祭2018で「金のビスナガ賞」を受賞したエレナ・トラぺの「Las distancias」に出演しています。カルロス・リブラドは当ブログ初登場、ボクシングの練習シーンでムキムキの肉体を披露しています。

 

        

(左から、長男ダニエル、次男トマス、三男クレメンテ)

     

   

    (左から、カルロス・リブラドNene、イサク・フェリス、ダニエル・グラオ)

 

       

                      (リブラドに演技指導をするウルビス監督)

     

  監督&スタッフ

エンリケ・ウルビス(ビルバオ、1962)と、ホルヘ・ドラド(マドリード、1976)の共同監督作品、ウルビスが全8話、ドラドが3話を担当した。ホルヘ・ドラドは、アルモドバルの『トーク・トゥ・ハー』(02)や『バッド・エデュケーション』(09)、ギレルモ・デル・トロの『デビルズ・バックボーン』(01)などで長いこと助監督をつとめたあと、米国との合作で撮ったサイコスリラーAnna(英題「Mindscape」)が、シッチェス映画祭2013にエントリーされた。言語が英語だったことも幸いして『記憶探偵と鍵のかかった少女』の邦題で翌2014年公開された。DVDも発売されたからスリラーファンにはウルビスより認知度が高いかもしれない。

 

★プロジェクトチームのリーダーはウルビス監督だが、オリジナルな発案者は俳優のマヌエル・ガンセドだそうで、今回は脚本と製作の他、俳優としても出演(2話)している。脚本はミシェル・ガスタンビデミゲル・バロッソ、マヌエル・ガンセド、ウルビス。ウルビス監督によると「前からの仕事仲間のマヌエルから、モビスター+が<Gigantes>と名付けた彼のアイディアを買ってくれ、それを私に監督して欲しいと言ってきた。そこでTVシリーズの脚本家ミゲル・バロッソに応援を依頼、オリジナル脚本の推敲に着手した。それからは目眩がしそうなトボガンに乗ってるようなもので、最終的にはいつも私の脚本を担当してくれるミシェル・ガスタンビデに参加してもらって完成させた」と経緯を語っている。

 

★撮影はウナックス・メンディア、前作『悪人に平穏なし』に続いての担当、他監督作品ではシッチェス映画祭2013のオープニング作品だったエウヘニオ・ミラの「Grand Piano」(『グランドピアノ 狙われた黒鍵』)、コルド・セラの「Gernika」(16)のほか、「Gran Hotel」(1112)のようなTVシリーズを多く手掛けている。本作ではTV用のフォーマットで撮影、主にマドリードのラバピエス地区、ラ・ラティナ地区、アンダルシアのアルメリアでも撮影した。

 

  

    (左に立っているのがアブラハム役のホセ・コロナドか。第1話の冒頭部分から)

 

      ウルビス&コロナド関連記事

『貸し金庫507』の紹介記事は、コチラ20140325

 ホセ・コロナドのキャリア紹介は、コチラ2014032020170417

コルド・セラのGernika」紹介記事は、コチラ20160420


★他にコンペティション外の特別上映には、テルモ・エスナル(ギプスコアのサラウツ、1966)のDantza(スペイン)と、古くは『にぎやかな森』(87)や『蝶の舌』(99)など本映画祭でも馴染みあるホセ・ルイス・クエルダ(アルバセテ、1947)のTiempo después(スペイン=ポルトガル合作)の2本がエントリーされています。
  
「Dantza」

 
「Tiempo después」

金貝賞を争うセクション・オフィシアル*サンセバスチャン映画祭2018 ④2018年07月25日 11:43

             金貝賞にイシアル・ボリャイン、イサキ・ラクエスタなどが参入!

 

    

★去る720日、サンセバスチャン映画祭SSIFFの総ディレクター、ホセ・ルイス・レボルディノス、コミュニケーション責任者ルス・ペレス・デ・アヌシタにより、イシアル・ボリャイン、イサキ・ラクエスタ、ロドリゴ・ソロゴジェン、カルロス・ベルムトなどベテラン勢が、金貝賞を競うコンペティション部門に参入することがアナウンスされました。他にコンペティション外サバルテギ-タバカレラペルラス、前回アップのニューディレクターズを含めて、スペインの制作会社が手掛ける作品はトータルで19作品となりました。まず金貝賞を争うセクション・オフィシアルにノミネートされた4作品の基本データのご紹介です。4作というのは例年通りの本数、4監督ともコンペティション部門には複数回登場、金貝賞受賞者も混じっております。

 

         セクション・オフィシアル(コンペティション)

 

 El Reino  監督:ロドリゴ・ソロゴジェン(スペイン)

キャスト:アントニオ・デ・ラ・トーレ(マヌエル・ロペス・ビダル)、モニカ・ロペス、ホセ・マリア・ポウ、ナチョ・フレスネダ(パコ)、アナ・ワヘネル、バルバラ・レニー、ルイス・サエラ、フランシスコ・レイェス、マリア・デ・ナティ、パコ・レビリャ、ソニア・アルマルチャ、ダビ・ロレンテ、アンドレス・リマ、オスカル・デ・ラ・フエンテ・マヌエル

 

物語:マヌエル・ロペス・ビダルは、ある政党の自治州副書記官として影響力をもっており、国政への飛躍が期待されていた。しかし親友の一人パコと共に汚職の陰謀に巻き込まれ、秘密漏洩から生き残りをかけての悪のスパイラルに陥っていく・・・

 

監督紹介ロドリゴ・ソロゴジェン(ソロゴイェン、マドリード、1981)のノミネーションは、2016年の長編3作目Que Dios nos perdoneに続いて2回目、脚本賞を受賞している(イサベル・ペーニャとの共同執筆)。ゴヤ賞2017では主役のロベルト・アラモが主演男優賞を受賞した。短編Madreでゴヤ賞2018短編映画賞を受賞、マラガ映画祭2018「マラガ才能賞 エロイ・デ・ラ・イグレシア」に早くも選ばれるなど活躍が目立っている。4作目となるEl Reinoは、前作にも主演したアントニオ・デ・ラ・トーレを起用、汚職に巻き込まれていく政治家を演じる。本作の脚本もイサベル・ペーニャとの共同執筆。

 

Que Dios nos perdone」の作品紹介は、コチラ20160811

 キャリア&フィルモグラフィーについては、コチラ20180326

 短編「Madre」については、コチラ20180210

 

    

 

 

 Entre dos aguas (「Between Two Waters」) 監督:イサキ・ラクエスタ(スペイン)

キャスト:イスラエル・ゴメス・ロメロ(イスラ)、フランシスコ・ホセ・ゴメス・ロメロ(チェイト)

 

解説:イスラとチェイトのロマ兄弟の物語。イスラは麻薬密売の廉で刑に服している。一方チェイトは海兵隊に志願して入隊している。イスラが刑期を終えて出所、チェイトも長期のミッションを終えて、二人はサンフェルナンド島に戻ってきた。再会を果たした兄弟は、まだ二人が幼かったときに起きた父親の変死に思いを馳せる。果たして兄弟のわだかまりは回復できるのか。イスラは妻と娘たちとの関係を取り戻すために帰郷したのだが、スペインで最も失業率の高い地方でどのようにして人生を立て直そうとするのか。ラクエスタの『時間の伝説』から12年後、成人したイスラとチェイト兄弟の現在がゴメス・ロメロ兄弟によって演じられる。

 

監督紹介イサキ・ラクエスタ(ジローナ、1975)のセクション・オフィシアル部門ノミネーションは、コンペティション外(2014Murieron por encima de sus posibilidades)を含めると3回目になる。今作は100%フィクションのコメディだったがあまり評価されなかった。初ノミネーションのLos pasos dobles11)がいきなり金貝賞を受賞、今回のEntre dos aguasは、上述したようにLa leyenda del tiempo06、『時間の伝説』)のその後が語られるようです。当ブログではマラガ映画祭2016に出品され、妻イサ・カンポと共同監督した『記憶の行方』(16La próxima piel)を紹介しています。エンマ・スアレスにゴヤ賞2017助演女優賞をもたらした作品(邦題はNetflixによる)。

  

『記憶の行方』の紹介記事、監督フィルモグラフィーは、コチラ20160429

 

 

   

 

 

Quién te cantará  監督:カルロス・ベルムト(スペイン、フランス)

キャスト:ナイワ・ニムリ(リラ・カッセン)、エバ・リョラチ(ビオレタ)、ナタリア・デ・モリナ(マルタ)、カルメ・エリアス、フリアン・ビリャグラン(ニコラス)、他

 

解説:リラ・カッセンは1990年代に最も成功をおさめたスペインの歌手だったが、突然謎を秘めたまま姿を消してしまった。10年後リラは華々しい舞台復帰の準備をしていたが、待ち望んだ期日の少し前に事故にあって記憶を失ってしまった。一方ビオレタは、関係がぎくしゃくしている娘マルタの意のままに操られており、辛い現実を逃れるためにできる唯一のことは、毎夜働いているカラオケでリラ・カッセンに変身することだった。ある日ビオレタは、リラ・カッセンがもとの彼女に戻れるように教えて欲しいという魅惑的な申し出を受ける。

  

監督紹介カルロス・ベルムト(マドリード、1980)のノミネーションは、金貝賞受賞の第2作目『マジカル・ガール』14Magical girl)に続いて2回目。異例の作品賞・監督賞のダブル受賞をうけ、授賞式では驚きとブーイングが同時におきたことは記憶に新しい。国際映画祭での数々の受賞歴を誇るが、ゴヤ賞2017では主演のバラバラ・レニーが主演女優賞を取っただけに終わった。新作は5年間銀幕から遠ざかっていたナイワ・ニムリをヒロインに迎えて撮った長編3作目、舞台復帰を目前に事故にあって記憶喪失になってしまう歌手の物語が語られる。

  

『マジカル・ガール』の作品紹介の記事は、コチラ2015121

 本邦公開の記事は、コチラ20160215 

 

   

 

 

 Yuli  監督:イシアル・ボリャイン(スペイン、キューバ、イギリス、ドイツ)

キャスト:カルロス・アコスタ、サンティアゴ・アルフォンソ、ケヴィン・マルティネス、エディソン・マヌエル・オルベラ、ラウラ・デ・ラ・ウス、他

 

解説:タイトルの「ユーリ」はカルロス・アコスタの父親ペドロが付けた綽名から採られており、アフリカの戦いの神様オグンの息子という意味ということです。英国ロイヤル・バレエ団で黒人として初めてプリンシパル・ダンサーになったカルロス・ユニオル・アコスタ(キューバ、1973)の「No Way Home」に触発されて製作されたビオピック。アコスタ本人が出演しているがフィクションです。他にキューバの俳優が数多く出演している。アコスタのキャリアについては日本語ウイキペディアで読める。

  

監督紹介イシアル・ボリャイン(マドリード、1967)のノミネーションは3回目、初ノミネーション『テイク・マイ・アイズ』03Te doy mis ojos)では主演のライア・マルルルイス・トサールがそれぞれ女優賞、男優賞を受賞した。第2回目のMataharis07)はナイワ・ニムリを主役にしたコメディだったが無冠に終わった。最新作Yuliは、2016年の『オリーブの樹は呼んでいる』(El olivo)に続いて、夫君でもあるイギリスの脚本家ポール・ラバディが執筆している。

  

El olivo」の作品紹介、監督、脚本家紹介は、コチラ20160719

 

  

    

 

★以上ノミネーション4作のリストです。開幕までに気になる作品を順次アップしたいが、次回はコンペティション外で上映されるエンリケ・ウルビスホルヘ・ドラドGigantes(スペイン)です。

 

ニューディレクターズ部門ノミネーション*サンセバスチャン映画祭2018 ③2018年07月21日 14:25

      奥山大史のデビュー作『僕はイエス様が嫌い』を含め13作がノミネート

   

  

ニューディレクターズ部門は、デビュー作または第2作目までが対象になるセクション、去る712日にノミネーション発表がありました。スペイン3作、アルゼンチンの2作ほか、日本、デンマーク、メキシコ、ルーマニア、コソボ、ロシア、スイス、ベトナム各1作ずつ13作品の上映が決定しました(追加があるかもしれない)。デビュー作8本、第2作が5本、受賞作には50,000ユーロの副賞とスペイン一般公開が保証されます。

 

奥山大史(ヒロシ・オクヤマ、1996)の長編デビュー作『僕はイエス様が嫌い』Jesusがサンセバスチャン映画祭のニューディレクターズにノミネーションされた。22歳の若さでのノミネートは多分最年少でしょう。既に「映画comニュース」などで珍しく報道されています。今年は是枝裕和監督のドノスティア栄誉賞受賞があるせいかもしれません。奥山監督はサンセバスチャン入りを楽しみにしているようです。また2019年の劇場公開も決定しているようです。

 

    

   

★スペイン語映画は、スペイン、アルゼンチン、メキシコの合計6作です。長編は第1作か2作でも、短編ではそれなりの実績を残している新人監督ばかりです。ロラ・ドゥエニャスとアンナ・カスティージョが母娘を演じることで、既に話題になっているViaje al cuarto de una madre」のような映画もありますが、現段階では作品名と監督名だけ列挙しておきます。

 

Oreina (Ciervo) スペイン、監督:Koldo Almandoz(サンセバスチャン、1973

 

   

  

Julia y el zorro アルゼンチン、

  監督:Ines María Barrionuevo(アルゼンチンのコルドバ、1980

 

   

  

La camarista メキシコ・米国合作、監督:Lila Avilés(メキシコ、1982

 

 

        

Apuntes para una película de atracos スペイン、

  監督:Elías León Siminiani(サンタンデール、1971

 

   

  

Para la guerra キューバ・アルゼンチン・スペイン合作、

  監督:Francisco Marise (ラプラタ、1985

 

 

   

 Viaje al cuarto de una madre スペイン・フランス合作、

  監督:Celia Rico Clavellino(セビーリャ、1982

   

 

スペイン映画アカデミー名誉会長イボンヌ・ブレイク逝く2018年07月20日 14:44

         Our duty」の言葉を残して、第15代映画アカデミー名誉会長ブレイク逝く

 

        

         (常に笑みを絶やさなかったイボンヌ・ブレイク)

   

★残念なニュースですが、第15代スペイン映画アカデミー会長イボンヌ・ブレイク氏が、717日旅立ちました(享年78歳)。新年早々の13日、脳卒中でマドリードのラモン・カハル大学病院に緊急入院、以来ICUでの闘病生活を送っておりました。マンチェスター生れ(1940)ながらスペイン映画との関りは長く、4個もゴヤ賞を受賞している。国際的な服飾デザイナーとして『ニコライとアレクサンドラ』(71)でオスカー賞、『ロビンとマリリン』(76)、今は懐かしい『スーパーマン』(78)衣装の生みの親、国民映画賞受賞者、女性シネアストの地位向上など、その功績は数えきれません。生涯現役をモットーに、なり手のなかったスペイン映画アカデミー会長を引き受け、自己主張ばかり強いスペイン映画界を忍耐強く統率してきた女性だった。

 

     

      (スーパーマンの衣装を着た今は亡きクリストファー・リーヴ)

 

★ブレイク会長を支えてきた現会長マリアノ・バロッソの回想によれば、ブレイク氏から事務所に呼ばれ「副会長就任の打診を受けたときは引き受ける気などさらさらなかった。何しろ断る理由は山ほどあったからね。ところが帰るときには何故か引き受けていたんだ。彼女は『私たちで引き受けましょう、マリアノ、そして英語でIts our duty』と言ったんだ」。「イボンヌは、ひたすら情熱的に良心、献身、寛容を実行した人だった。その素晴らしい才能、その視点の確実さ、微笑、ほろ苦いユーモア、常識的な考えについての機知にとんだ言葉は皆を和ませた」とバロッソ。アントニオ・レシノスグラシア・ケレヘタが任期途中で投げ出した「スペイン映画アカデミー」という泥舟に乗らざるを得なかった経緯だった。スペイン語と込み入った話は英語で周りを説得して回った、この逞しさと優しさを兼ね備えたイギリス女性のお蔭で、シネアストのそれぞれが将来の映画について、「Our duty」とは何かについて、改めて考えることになったようだ。

 

   

               (ゴヤ賞2017授賞式で挨拶するブレイク会長とバロッソ副会長)

 

       

      (女性シネアストの機会均等に尽くしたブレイクと盟友アナ・ベレン)

 

   

(共にオスカー受賞者のブレイクとフェイ・ダナウェイ)

 

     

   (『ロビンとマリリン』のヒロイン、オードリー・ヘプバーンの衣装を整えるブレイク)

  

 

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