作品賞はラウル・アレバロの手に*フォルケ賞2017結果発表2017年01月15日 22:35

       トロフィーを手にしたのはエンマ・スアレスとロベルト・アラモ

 

 
 (左からアントニオ・デ・ラ・トーレ、ルス・ディアス、製作者ベアトリス・ボデガス、監督)      

 

114日、フォルケ賞の授賞式が初めてセビージャで開催され、 結果は以下のとおりです。ラウル・アレバロTarde para la iraが受賞したとなると、ゴヤ賞もちょっと分からなくなってきました。2016年スペインで観客動員数第1位はフアン・アントニオ・バヨナUn monstruo viene a verme”(450万人、売上高2600万ユーロ)だった。受賞作は第4位のダニエル・カルパルソルの『バンクラッシュ』(650万ユーロ)、第6位のパコ・レオンの『KIKI~愛のトライ&エラー』(610万ユーロ)にも満たない。いずれも100万人以上の観客を集めたという。勿論、動員数や売上高の多寡で決まるわけではありませんが、少し驚きました。次のフェロス賞(123日)、最後のゴヤ賞(24日)まで続くかどうかは神のみぞ知るです。

 

12日にはゴヤ賞の候補者が一堂に会して行う顔合わせカクテル・パーティがあり、いつもなら同じマドリード市内ということで問題なかったのですが、今回はセビージャということで両方にノミネートされている人は忙しかったでしょう。

 

長編映画賞(フィクション、アニメーション)

El homre de las mil caras”“Smoke&Mirrors”『スモーク・アンド・ミラーズ』

監督アルベルト・ロドリゲス  

Julieta 『ジュリエッタ』監督ペドロ・アルモドバル  

Que Dios nos perdone”“May God Save Us”監督ロドリゴ・ソロゴイェン 

Tarde para la iraThe Fury of a Patient Man”監督ラウル・アレバロ 

製作者ベアトリス・ボデガス

Un monstruo viene a verme”“A Monster Calls”(西・米・英・カナダ)

監督フアン・アントニオ・バヨナ 

1898, Los últimos de Filipinas”監督サルバドル・カルボ

 

    

  (ホセ・コロナドの手からトロフィーを受け取り、もみくちゃの祝福を受けるアレバロ)

 

男優賞

エドゥアルド・フェルナンデス『スモーク・アンド・ミラーズ』監督アルベルト・ロドリゲス 

ロベルト・アラモQue Dios nos perdone 監督ロドリゴ・ソロゴイェン 

アントニオ・デ・ラ・トーレ“Tarde para la ira 監督ラウル・アレバロ 

アレックス・モネール“La propera pell”(“La próxima piel”) 

監督(共同)イサキ・ラクエスタ、イサ・カンポ 

オスカル・マルティネスEl ciudadano ilustre”(アルゼンチン、スペイン)

 監督(共同)ガストン・ドゥプラット、マリアノ・コーン 

 

 

ロベルト・アラモは、マドリードの舞台の仕事で欠席した。代理でトロフィーを受け取ったのは、ロドリゴ・ソロゴイェン監督、アラモの「感謝の辞」はビデオで上映された(上記の写真)。

 

女優賞

アドリアナ・ウガルテ『ジュリエッタ』監督ペドロ・アルモドバル 

◎エンマ・スアレス『ジュリエッタ』監督ペドロ・アルモドバル

カルメン・マチ“La puerta abierta”(“The Open Door”)監督マリナ・セレセスキー 

バルバラ・レニー“María (y los demás)”監督ネリー・ネゲラ 

アナ・カスティージョ『The Olive Tree』監督イシアル・ボリャイン 

インマ・クエスタ“La novia 監督パウラ・オルティス 

 

     

         (「映画の夢に向かって全力を尽くす」と感謝したエンマ・スアレス)

 

長編ドキュメンタリー賞

2016, Nacido en Siria監督エルナン・シン

El Bosco, El jardín de los sueños”(スペイン、フランス)監督ホセ・ルイス・ロペス=リナレス

Omega”監督(共同)ヘルバシオ・イグレシアス、ホセ・サンチェス=モンテス

Jota de Saura”監督カルロス・サウラ 

La historia de Jan”監督ベルナルド・モル・オットー

Miguel Picazo, Un cineasta extramuros”監督エンリケ・エスナオラ

 

         

 短編映画賞

Timecode『タイムコード』(15分)監督フアンホ・ヒメネス 

Graffitti 30分)監督リュイス・キレスLluís Quílez (スペイン、ウクライナ)

Bla Bla Bla”監督アレクシス・モランテ

 

         

長編ラテンアメリカ映画賞

Neruda”(チリ、メキシコ)監督パブロ・ラライン 

El ciudadano ilustre『名誉市民』(アルゼンチン、スペイン) 

監督(共同)ガストン・ドゥプラットマリアノ・コーン 

Aquí no ha pasado nada”(“Much Ado About Nothing”)(チリ)

監督アレハンドロ・フェルナンデス・アルメンドラス 

El acompañante”(キューバ)監督パベル・ジロー

Sin muertos no hay carnaval”(エクアドル、メキシコ、独)監督セバスティアン・コルデロ

 

★ドキュメンタリー賞、ラテンアメリカ映画賞は予想通りの結果でしたが、短編映画賞はカンヌ映画祭パルムドールの『タイムコード』と思っていたので外れました。2作ともオスカー賞2017短編部門のプレセレクション・リスト10作に残っています。どちらもアルカラ・デ・エナレス短編映画祭2016の受賞作品。

 

★栄誉賞にあたるゴールデン賞を受賞したアントニオ・P・ペレスは、前日の金曜日に母親を亡くして「悲しみと喜びとは交互に相次ぐ」を実感しているようでした。人生においてはこういう偶然はときどき起こりますね。

 

 (アントニオ・P・ペレス)

  

  

アルモドバルの『ジュリエッタ』*ゴヤ賞2017 ⑧2017年01月14日 15:51

        ゴヤ賞は7個ノミネーションだが、いくつゲットできるか?

 

★間もなくセビーリャのマエストランサ劇場で開催される(114日)フォルケ賞には、長編映画部門の作品賞とエンマ・スアレスの女優賞がノミネートされており、結果が分かるのは日本時間では15日になります。続くフェロス賞には作品賞、監督賞を含めて9個、数だけで判断できないのが映画賞です。4月公開と早いこと、アルモドバル・アレルギーなどを勘案すると勝率は低いと予想します。最近のアルモドバル作品は必ず劇場公開されますが、プロット重視の観客には物足りないかもしれない。もともと監督もプロットで勝負するつもりはありませんから、それはそれで良いのです。楽しみ方はいくつもあって、それぞれ観客が視点を定めて愉しめばいいことです。赤を基調としながらもヒロインの心理状態で巧みに変化する色使いが素晴らしかったとか、アルモドバルが初めて起用したジャン=クロード・ラリューの荒々しいガリシアの海が良かったとか、『私の秘密の花』95)以来、アルモドバルの専属みたいなアルベルト・イグレシアスの音楽を堪能したとか、いろいろ楽しみ方は考えられます。

 

 

  (初期タイトル”Silencio”のポスター、エンマ・スアレス、アドリアナ・ウガルテ)

 

★アルモドバルはスペインの監督としては国際的に一番知名度があると思いますが、ゴヤ賞ノミネーションの選考の仕方に異議を唱えてからというもの、スペイン映画アカデミーとの長い軋轢が続いていた。ノミネーションを受けてもガラには欠席続き、なんとか解消したのが『私が、生きる肌』でした。今でも完全に修復されたとは思えませんが、そんなこんなでゴヤ賞には恵まれていない。『神経衰弱ぎりぎりの女たち』1989、作品賞・脚本賞)、『オール・アバウト・マイ・マザー』00、作品賞・監督賞)、最後の『ボルベール〈帰郷〉』07、作品賞・監督賞)以来、監督としては賞から遠ざかっている。

 

  

    (左から、マリア・バランコ、アントニオ・バンデラス、カルメン・マウラ、

        フリエタ・セラーノ、『神経衰弱ぎりぎりの女たち』から)

 

★アルモドバル・ファンには二つの流れがあって、『グローリアの憂鬱』84)、『神経衰弱ぎりぎりの女たち』あたりまでが好きな人、『オール・アバウト・マイ・マザー』でオスカー監督になってからを好む人、大勢は後者です。前者のファンには最近の彼の映画は見ないというファンもおり、『抱擁のかけら』09)など批評に値しない駄作と切り捨てた批評家もおります。「プロなのにあまりにも感情的すぎる」と考える管理人は前者に属しているが必ず見るという両刀使いです。両刀使いにお薦めの鑑賞法は、理詰めにストーリーを追うことを止めて、他の監督には真似できない色彩感覚、過去の監督作品へのオマージュ、背景が雄弁に物語るデティール、監督が仕掛けた遊びごころを楽しむことです。手法は新しくても本質は良質なメロドラマブラック・コメディ作家、スペインで最も愛された映画監督ガルシア・ベルランガの優等生がアルモドバルなのです。

 

     

    (本作を最後にミューズを卒業したペネロペ・クルス、『抱擁のかけら』から)

 

★「最初から二人の女優を起用しようと決めていた」と監督、その一人、現在のジュリエッタを演じたエンマ・スアレス主演女優賞にノミネートされただけで、若い頃のジュリエッタを力演したアドリアナ・ウガルテはノーマークでした。助演というわけにもいかず新人でもないしで不運でした。主演男優賞のように4人枠に二人を押し込むことは無理だったようです(5人枠のフェロス賞には二人ともノミネーションされています)。ライバルはカルメン・マチペネロペ・クルスバルバラ・レニーです。エンマ・スアレスは、イサキ・ラクエスタ&イサ・カンポの“La próxima piel”で助演女優賞にもノミネーションされており、確率的にはこちらのほうが高いかもしれない。ライバルはテレレ・パベスカンデラ・ペーニャシガニー・ウィーバーです。

 

      

     (監督、二人のジュリエッタ、エンマ・スアレスとアドリアナ・ウガルテ)

 

★ノミネーション14回目になるアルベルト・イグレシアス1955、サンセバスチャン)が初めて映画音楽を手掛けたのは、フリオ・メデムの『バカス』(92)、いきなりゴヤ賞にノミネートされた。同監督の『赤いリス』(93)で1個めをゲット、『ティエラ~大地』、『アナとオットー』、『ルシアとSEX』とメデム作品で4個受賞、アルモドバル作品の1個めは、『オール・アバウト・マイ・マザー』99)、続いて『トーク・トゥ・ハー』『ボルベール〈帰郷〉』『抱擁のかけら』『私が、生きる肌』11)、2監督で9個、更にイシアル・ボリャインの『ザ・ウォーター・ウォー』(10)を加えると合計10個というゴヤ胸像のコレクター。今年で31回目を迎えるゴヤ賞だが、うち14回ノミネートされている。スペイン映画に限らずアカデミー賞にノミネートされた『ナイロビの蜂』、『君のためなら千回でも』、『裏切りのサーカス』など、海外の監督からも熱い視線が寄せられている。授賞式では恥ずかしそうに登壇、短いスピーチと謙虚さで好感度抜群ではないでしょうか。

 

  

(『私が、生きる肌』で10個めのゴヤ胸像を手にアルベルト・イグレシアス、2012年授賞式)

 

★未だタイトル“Silencio”と出演者パルマ・デ・ロッシだけがアナウンスされたときから記事をアップしていたので、実際にスクリーンを前にしたときには新鮮味が失せていた。パンフの宣伝文句にあるような「数奇な運命に翻弄された母と娘の崇高な愛の物語」という印象ではなく、それは失踪したジュリエッタの娘アンティアの人格の描き方に説得力がなかったせいかと思います。むしろスペインによくある古いタイプの「負の父親像」やアルモドバルが拘る「死」が、ここでもテーマの一つになっていた。どの作品にも監督本人が投影されているわけだから、根本的に変化したというふうには感じられないのは当然かも知れない。また偶然が重なりすぎると、メロドラマでも嘘っぽくなるのではないかと感じた。ストーリー、スタッフ、キャスト紹介は以下にアップしています。

 

エマ・スアレスとアドリアナ・ウガルテのキャリア紹介記事は、コチラ⇒201545

アルモドバル、主な作品紹介の記事は、コチラ⇒2016219201658

『ジュリエッタ』のトレビア記事については、コチラ⇒201693

 

マリナ・セレセスキー”La puerta abierta” *ゴヤ賞2017 ⑦2017年01月12日 11:37

          カルメン・マチ、激戦区の主演女優賞に初めて挑戦

 

    

 

★女優マリナ・セレセスキーの長編映画初監督作品La puerta abiertaのご紹介、母娘二代にわたる売春婦家族の物語と聞けば何やら悲惨なイメージをかき立てられますが、これはコメディ仕立てのドラマ。今は現役を引退した母親にテレレ・パベス、母親の稼業を引き継いだ現役娼婦にカルメン・マチ、同じピソに暮らす性転換娼婦にアシエル・エチェアンディア、この3人を軸にドラマは展開します。現在スペインには約30万人の娼婦がいるということですが、多いのか少ないのか皆目分かりません。ワールドプレミアが2016年のアムステルダム・スパニッシュ映画祭と他のノミネーション作品に比して早くスペイン公開も92日ですから、投票者の記憶も薄れて若干分が悪いかもしれない。新人監督賞主演女優賞助演女優賞3カテゴリーにノミネートされました。

以下ゴチック体はゴヤ賞ノミネートを受けたもの、印はフェロス賞にもノミネートされたもの

 

 

 (左からテレレ・パベス、セレセスキー監督、カルメン・マチ、アシエル・エチェアンディア)

 

   La puerta abierta(“The Open Door”)2016

製作:Ad hoc studios / Babilonia Films S.L. / Meridional Producciones

監督・脚本:マリナ・セレセスキー 

音楽:マリアノ・マリン

撮影:ロベルト・フェルナンデス

美術:ハビエル・クレスポ、他

編集:ラウル・デ・トーレス

衣装デザイン:マラ・コリャソ、マウロ・ガストン、パトリシア・ロペス、クルス・プエンテ他

視覚効果:オスカル・ゴメス

キャスティング:ロサ・エステベス

製作者:セルヒオ・バルトロメ、R・フェルナンデス、アルバロ・ラビン、ホセ・A・サンチェス

 

基本データ:スペイン製作、スペイン語、2016年、82分、コメディ・ドラマ、製作費約766,000ユーロ、IMD7.9点、filmaffinity(スペイン)6.7点、スペイン公開201692

映画祭・受賞歴:アムステルダム・スパニッシュ映画祭2016正式出品、トランスシルバニア映画祭TIFF 2016(観客賞)、アリカンテ映画祭正式出品、トゥールーズ・スパニッシュ映画祭(観客賞)、アルカラ・デ・エナーレス短編映画祭正式出品、第32回グアダラハラ映画祭20173月開催)出品予定。フォルケ賞2017女優賞(カルメン・マチ)、フェロス賞(コメディ部門)作品賞・女優賞(C・マチ)、ゴヤ賞新人監督賞・主演女優賞・助演女優賞、いずれもノミネーション。

キャストカルメン・マチ(ロサ)テレレ・パベス(ロサの母アントニア)、アシエル・エチェアンディア(ルピータ)、ルシア・バラス(リュウバ、マーシャの娘)、パコ・トゥス(パコ)、ソニア・アルマルチャ(フアナ)、ヨイマ・バルデス(テレサ)、エミリオ・パラシオス(ユーリ、リュウバの兄)、モニカ・コワルスカ(ロシア人娼婦マーシャ)、クリスティアン・サンチェス(カルロス)、スサナ・エルナイス(スサナ)、アナ・パスクアル(チャロ)、他多数

 

物語:ロサは母親から受け継いだ娼婦稼業を任されている。サラ・モンティエルの熱烈なファンであった母親アントニアは、最近では自分のことを彼女と錯覚して混乱のなかにいる。このマドリード界隈のピソに暮らしている人々は、性転換した娼婦ルピータのように概ね幸せからは見放された規格品外の住人である。実際のところロサは幸せとは無縁であった。そんな折、同じ階のロシア人娼婦がドラッグの過剰摂取で死んでしまい、幼い娘リュウバを世話する羽目に陥ってしまう。リュウバには既におとなになっている兄の存在もわかってくる。リュウバは3人が失ってしまった無垢と希望を運んできてくれるのだろうか。

 

      

     (左から、一家団欒の母親アントニア、ロサ、リュウバ、ルピータ、映画から)

 

★ロサは仕事に出かけるとき、初期の認知症になった母親のために常に玄関のドアにカギを掛けない、それがタイトルになった。母親に死なれたリュウバはやすやすと部屋に侵入でき、帰宅したロサが女の子を発見する。そこからドラマが展開していく。ロサは路上で客引きをする立ちん坊の娼婦だから現実は厳しい。役作りに「実際の娼婦3人に会ったが、それぞれ状況は異なっていても普通の人、ただし社会から排除されていた」とカルメン。エル・パイス紙でも「カルメン・マチ以外にこの役を演じられる女優はいない」と絶賛されており、批評家と観客の乖離が少ない印象です。1963年マドリード生れ、エミリオ・アラゴンの『ペーパー・バード 幸せは翼にのって』10)が「ラテンビート2010」で上映された折、監督と来日している(翌年公開)。

 

        

             (路上で客引きをするロサ、映画から)

 

TVシリーズAidaアイーダ」 他で、数々の受賞歴のあるカルメンだが、ゴヤ賞主演女優賞ノミネーションは初めてである。アルモドバル作品でお馴染みの女優だが、殆ど脇役だからゴヤ賞には縁が薄かった(数年前ゴヤ賞授賞式の総合司会をしたことがある)。スペイン中がフィイバーした“Ocho apellidos vascos”(14)でやっと助演女優賞受賞をゲットした。今年の主演女優賞は、『ジュリエッタ』のエンマ・スアレス、“La reina de España”のペネロペ・クルス、“María(y los demás)”のバルバラ・レニーと激戦区ではあるが、可能性は高いと予想しています。受賞したらもう少し詳しいキャリア紹介の予定。

 

★母親役のテレレ・パベスもアレックス・デ・ラ・イグレシア作品でお馴染み、『スガラムルディの魔女』13)で、ゴヤ賞2014助演女優賞を受賞しています。ラテンビートで上映されたときキャリア紹介をアップています(20141018日)。最初のキャスティングではアントニア役は、TVドラでカルメンと共演しているアンパロ・バロが予定されていた。しかし間もなく体調を崩し、結局癌に倒れて帰らぬ人となった(2015129日、享年77歳)。映画では仲の悪い親子、娘を不幸にしてしまう母親になるわけですが、「誰がなりたくて無慈悲な母親になりたいなどと思いますか」とカルメン、母と娘の関係は難しい。プロットにあるサラ・モンティエル(1928年生れ)は、往時ではグラマーで歌える美人女優として有名、作中ではラファエル・ヒルのミュージカル“Samba”(65)のなかでサラが歌った「ファンタジー」を、テレレ・パベスが歌うということです。    

           

           (母アントニア役のテレレ・パベス、映画から)

 

★ゴヤ賞には絡んでおりませんが、もう一人の重要人物ルピータ役のアシエル・エチェアンディアは、1975年ビルバオ生れの41歳、俳優、歌手、TV、演劇でも活躍しています。ビスカヤの学校でエグスキ・スビアとフアン・カルロス・ガライサバルから演技の指導を受けている。他の教師とは水と油の関係だったようで、「する必要のないことを沢山学んだ」と語っている。20歳のときバスクを離れマドリードに移り、セックス・ショップで働きながら演技の勉強を続けた。TVドラUn paso adelante02)のホモセクシュアルな青年役が評価される。歌える俳優としてミュージカルCabaret(スペイン版、03)にも出演、俳優組合の新人男優賞を受賞している。

 

★映画デビューは、ナチョ・ペレス・デ・ラ・パス&ヘスス・ルイス監督のLa mirada violeta04)、フェルナンド・コロモ、エミリオ・マルティネス・ラサロなどに起用されている。最近、フアンフェル・アンドレス&エステバン・ロエルの『トガリネズミの巣穴』(14、ラテンビート2014)で登場している。他フリオ・メデムのMa ma14)、パウラ・オルティスのLa novia15)では花嫁役インマ・クエスタの花婿を演じて、ゴヤ賞2016主演男優賞にノミネートされた。演劇、TVドラでの受賞歴多数。

 

    

          (ルピータ役のアシエル・エチェアンディア、映画から)

 

マリナ・セレセスキー Marina Seresesky は、1969年ブエノスアイレス生れの女優、監督、脚本家、製作者。短編El cortejo10)で監督デビュー、オルデンブルク映画祭ジャーマン・インデペンデンス賞ノミネーション、バージニア州のラッパハノック・インデペンデント映画祭審査員賞受賞、短編第2La boda12)がティラナ映画祭(スペシャル・メンション)、ニューヨーク・シティ短編映画祭(作品賞・観客賞)、ポルトガルのアロウカ映画祭(作品賞)など国際映画祭で多数受賞した。ゴヤ賞2013でも短編映画賞部門にノミネートされている。長編デビュー作は上記の通り。 

 

(観客賞のトロフィーを手にした監督、トランスシルバニア映画祭授賞式、201665日)

 

ラウル・アレバロのデビュー作”Tarde para la ira”*ゴヤ賞2017 ⑥2017年01月09日 10:13

                      ラウル・アレバロは監督もできます!

 

  

 

★昨年の2月にラウル・アレバロ監督デビューの第一報をお届けしてから早くも1年近くの歳月が流れました。ベネチア映画祭2016「オリゾンティ」部門に正式出品された折にも追加記事をアップするなどして注目しておりましたが、ゴヤ賞作品賞・新人監督賞を含む11個ノミネートには驚きました。作品賞はともかく、新人監督賞のトップを走っているのは間違いありません。1馬身差で追っているのが前回ご紹介したサルバドル・カルボの“1898, Los últimos de Filipinas”と予想しています。今どき俳優の監督掛持ちなど珍しくもありませんが、改めて飛び飛びだった記事をまとめて再構成することにしました。

以下、ゴチック体はゴヤ賞ノミネートを受けたもの、印はフェロス賞にノミネートされたもの

 

   Tarde para la ira(“The Fury of a Patient Man”)2016

製作:Agosto la Pelicula / La Canica Films / TVE 

監督・脚本:ラウル・アレバロ 

脚本(共):ダビ・プリド 

撮影:アルナウ・バルス・コロメル

編集:アンヘル・エルナンデス・ソイド

音楽:ルシオ・ゴドイ

衣装デザイン:アルベルト・バルカルセル・ロドリゲスクリスティナ・ロドリゲス

美術:セラフィン・ゴンサレス

メイクアップ&ヘアー:マルタ・アルセエステル・ギリェムピルカ・ギリェム

特殊効果:イケル・デ・ラ・カジェ・ラタナ、ラオル・ロマニリョス

録音:タマラ・アレバロ、ミゲル・バルボサ、ほか

製作者:ベアトリス・ボデガス、セルヒオ・ディアス

 

基本データ:製作国スペイン、スペイン語、2016年、スリラー・ドラマ、92分、製作費約120万ユーロ、スペイン国営放送RTVEの援助、撮影開始20157月より6週間、撮影地はマドリードほかセゴビアなど。スペイン公開201699日、IMD7.5

映画祭・受賞歴:ベネチア映画歳2016「オリゾンティ」正式出品、ルス・ディアス女優賞受賞。トロント映画祭、ロンドン映画祭、テッサロニキ映画祭、ストックホルム映画祭などに正式出品

映画賞:フォルケ賞2017作品賞・男優賞(アントニオ・デ・ラ・トーレ)、ガウディ賞2017撮影賞、フェロス賞2017作品賞以下7部門、いずれもノミネーション。

 

キャストアントニオ・デ・ラ・トーレ(ホセ)ルイス・カジェホ(クーロ)ルス・ディアス(アナ、フアンホの義妹)ラウル・ヒメネス(フアンホ)、アリシア・ルビオ(カルメン)、マノロ・ソロ(トリアナ)、フォント・ガルシア(フリオ)、ピラール・ゴメス(ピリ)、ベルタ・エルナンデス(ホセのガールフレンド)、ルナ・マルティン(サラ)その他多数

 

解説:ホセとクーロの物語、無口だが用心深いホセはフアンホがオーナーのバルで終日ウエイターとして働いている。不眠症に苦しんでおり、フアンホの義姉妹アナを想っている。そんな折、フアンホの兄弟クーロが8年ぶりに出所してくる。20078月マドリード、クーロは仲間と宝石店を襲い販売員を昏睡状態にしたうえ仲間の一人が女店員を殺害してしまうという事件を起こしていた。暗い過去の亡霊にとり憑かれているが、アナと小さな息子と一緒に人生をやり直そうと考えていた。しかしアナの愛は既にクーロになく、見知らぬ男ホセと出逢うことで歯車が狂ってくる。やがて販売員がホセの父親だったこと、女店員がホセのガールフレンドだったことが明らかになってくる。人間の心の闇に潜む暴力、復讐、父と子の関係が語られることになるだろう。

 

     

        

                          (アントニオ・デ・ラ・トーレとルイス・カジェホ、映画から)

 

  監督キャリア紹介                                  

★ラウル・アレバロRaúl Arévalo1979年マドリード生れ、俳優、監督、脚本家。クリスティナ・ロタの演劇学校で演技を学んだ。「妹と一緒に父親のカメラで短編を撮っていた。17歳で俳優デビューしたのも映画監督になりたかったから」というから根っからの監督志望だった。俳優としてキャリアを磨きながら、今回やっと長年の夢を叶え、監督としても通用することを証明した。

  

 

★日本デビューはダニエル・サンチェス・アレバロの第1『漆黒のような深い青』06ラテンビート2007上映)、同作にはサンチェス・アレバロ監督と「義」兄弟の契を結んでいるアントニオ・デ・ラ・トーレも共演している。彼はデビュー作の主人公ホセ役として出演している。サンチェス・アレバロは合計4作撮っているが、二人とも全4作に出演しています。ゴヤ賞絡みではサンチェス・アレバロの第2『デブたち』09)で助演男優賞を受賞している。ホセ・ルイス・クエルダ(“Los girasoles ciegos”)、公開作品ではアレックス・デ・ラ・イグレシア(『気狂いピエロの決闘』)、イシアル・ボリャイン(『ザ・ウォーター・ウォー』)、アルモドバル(『アイム・ソー・エクサイテッド!』)、アルベルト・ロドリゲスの『マーシュランド』、今年ゴヤ賞脚本賞にノミネートされたダニエル・カルパルソロの『バンクラッシュ』(“Cien años de perdón”)などに起用されている。舞台にも立ち、TVドラ出演も多く、NHKで放映された『情熱のシーラ』で日本のお茶の間にも登場した。

 

   トレビア       

★アレバロ監督は「脚本執筆に7年、資金集めに4年の歳月をかけたのに、撮影に6週間しかかけられなかったのはクレージー」と嘆いている。それでも長年の夢をやっと叶えることができた。マドリードとセゴビアのマルティン・ムニョス・デ・ラス・ポサダスというアレバロが育った町で2015年夏にクランクインした。町の人々がエキストラとして協力しており、主人公の一人クーロ役のルイス・カジェホもセゴビア出身。ホセ役のアントニオ・デ・ラ・トーレとはダニエル・サンチェス監督の全作で共演している。さらにカルメン役のアリシア・ルビオは恋人ということです。監督と俳優が互いに知りすぎているのは、時にはマイナスにはたらくことも懸念されたが杞憂に過ぎなかった。 

(本作撮影中のアレバロ監督)

            

                      

 ★ベネチア映画祭2016「オリゾンティ」部門の女優賞受賞者ルス・ディアス談、「自分の名前が呼ばれたときには思わず涙が出てしまいました」と語っていたルス・ディアス、1975年カンタブリアのレイノサ市生れ、女優、監督。舞台女優として出発、1993年『フォルトゥナータとハシンタ』が初舞台、映画、テレビで活躍。チュス・グティエレス『デリリオ―歓喜のサルサ―』(ラテンビート2014)に出演、他にジャウマ・バラゲロ、ハビエル・レボージョなどの監督とコラボしている。2013 Porsiemprejamón で短編デビュー、脚本も手がけている。ただし、「何よりもまず、私は女優」ときっぱり。

 

   

(ルス・ディアスとアントニオ・デ・ラ・トーレ、映画から)

 

★二人の主役、アントニオ・デ・ラ・トーレは1968年生れ、ルイス・カジェホは1970年生れと監督より一回り年上であり、それぞれ映画デビューも早い。ゴヤ賞では主役二人がダブルで主演男優、助演にマノロ・ソロ、新人にラウル・ヒメネス、主演女優にルス・ディアスと5人もノミネートされた。特にマノロ・ソロの演技を評価する批評家が多く、昨年のダビ・イルンダインの“B, la pelicula”に続いて2回めのノミネーションであるが、長い芸歴に比して少ない印象を受ける。脇役に徹しているせいか日本での知名度は低いが、『パンズ・ラビリンス』『プリズン211』『ビューティフル』『カニバル』、最近の『マーシュランド』ではフリーの新聞記者を演じていた。また、デ・ラ・トーレはフェロス賞2017の総合司会を務めることになっている。

 

   

             (中央がマノロ・ソロ、映画から)

 

サルバドル・カルボ ”1898, Los ultimos de Filipinas” *ゴヤ賞2017 ⑤2017年01月05日 14:40

          歴史に基づく勝利無き英雄たちのアクション・アドベンチャー

 

★スペインで戦争歴史映画といえば、イコール「スペイン内戦」、今もって懸案事項の一つであり続けています。しかし本作は内戦物ではなく、その時代背景はタイトル通り19世紀末の1898年、舞台はフィリピンのルソン島にあるシティオ・デ・バレル、そこの小さな教会に337日間立てこもって戦ったスペイン駐屯軍のレジスタンスが語られる。1898年は、スペイン人にとっては植民地キューバに続いてフィリピンも失い、かつて栄華を誇ったスペイン帝国が完全に瓦解した不名誉な年である。

 

 

 (左から、カラ・エレハルデ、エドゥアルド・フェルナンデス、アルバロ・セルバンテス、

  ルイス・トサール、ハビエル・グティエレス、カルロス・イポリト、リカルド・ゴメス)

 

サルバドル・カルボの長編デビュー作1898, Los últimos de Filipinasのご紹介。ゴヤ賞ノミネーション9個(新人監督・新人男優・撮影・プロダクション・美術・録音・衣装デザイン・メイク&ヘアー・特殊効果)、フォルケ賞作品賞ノミネーション(Enrique Cerezo P.C.)と熱い視線が注がれている。デビュー作とはいえ、カルボ監督は既にTVドラで活躍中、それがキャスト、スタッフの豪華さに繋がっている。撮影は2016年の5月から6月にかけて、赤道ギニア共和国やカナリア諸島のグラン・カナリアで9週間にわたって行なわれた。1945年、アントニオ・ロマンがLos últimos de Filipinasのタイトルで映画化している。そこでは当時の政権に不都合だったエピソードは語られることはなかったが、本作では隠された真実も姿を表わすようです。

 

    1898, Los últimos de Filipinas2016

制作:13TV / CIPI Cinematografica S.A. / Enrique Cerezo Producciones Cinematograficas S.A. /

 ICAA / TVE

監督:サルバドル・カルボ

脚本:アレハンドロ・エルナンデス

音楽:ロケ・バニョス・ロペス

撮影:アレックス・カタラン・フェルナンデス

美術:カルロス・ボデロン

録音:エドゥアルド・エスキデフアン・フェロニコラス・デ・ポウルピケ

編集:ハイメ・コリス

衣装デザイン:パオラ・トーレス

メイクアップ&ヘアー:アリシア・ロペスペドロ・ロドリゲス、ほか

特殊効果:パウ・コスタカルロス・ロサノ

プロダクション:カルロス・ベルナセス

製作者:エンリケ・セレソ、ペドロ・コスタ

 

基本データ:製作国スペイン、スペイン語、2016年、105分、戦争歴史物、製作費約600万ユーロ、撮影地・期間、赤道ギニア共和国、グラン・カナリア、9週間、フォルケ賞2017作品賞ノミネーション、ゴヤ賞9部門ノミネーション、映倫PG12IMDb評価6.7点、スペイン公開2016122

 

キャスト:ルイス・トサール(サトゥミノ・マルティン・セレソ中尉)、ハビエル・グティエレス(ヒメノ軍曹)、エドゥアルド・フェルナンデス(エンリケ・デ・ラス・モレナス艦長)、アルバロ・セルバンテス(兵士カルロス)、カラ・エレハルデ(カルメロ司祭)、カルロス・イポリト(ロヘリオ・ビヒル・デ・キニョネス医師)、リカルド・ゴメス(兵士ホセ)、ミゲル・エラン(兵士カルバハル)、パトリック・クリアド(兵士フアン)、ペドロ・カサブランク(クリストバル・アギラール中佐)、フランク・スパノ(タガログ人の密使)、アレクサンドラ・マサングカイ(先住民テレサ)、エミリオ・パラシオス(モイセス)、シロ・ミロ(騎馬兵)ほか多数

*ゴチック体はゴヤ賞にノミネートされたスタッフとキャスト

 

     

             (指揮官エドゥアルド・フェルナンデス)

 

物語1898年の夏、ルソン島の海岸沿いの小村バレル、スペインの兵士たちが独立のため蜂起した先住民の一団に苦戦している。立てこもった教会を包囲された指揮官エンリケ・デ・ラス・モレナスとマルティン・セレソ中尉は、50名にも満たないわずかな陣容で戦わざるをえなかった。指揮官の死後、ヒメノ軍曹とともに駐屯軍を指揮したセレソ中尉は、熱病やマラリアにも苦しめられながら勝利も栄光もない戦いを強いられた。度重なる警告にも拘わらず何の対策も打ち出せなかった政府は、米国の援助を受けた反乱軍を前にしてなす術もなく、領土の割譲を余儀なくされる。1898630日から翌年62日、337日間に及ぶ兵士たちの抵抗はパリ条約の締結により終りを告げた。

 

    

   (左から、ルイス・トサール、カルロス・イポリト、後方が籠城したバレルの教会)

 

 トレビア

サルバドル・カルボSalvador Calvo1970年マドリード生れのテレビ&映画監督。2000TVドラ・シリーズ“Policias, en el corazón de la calle”の助監督として出発、2002年には同ドラマ4挿話を監督する。代表作は“Las aventuras del capitán Alatriste”(20134挿話)や“Hermanos”(20144挿話)、ほか多数手掛けておりテレビ監督としてはベテラン。46歳で長編映画デビューを果たした。

 

★監督談によると、最初のプランは村の教会に閉じ込められたスペイン駐屯軍のウエスタン風の「潜水艦ドラマ」を構想していた。しかし最後の植民地喪失がスペイン帝国の決定的な崩壊であることを明確にして、そのメタファーを強める意味で敢えて「1898年」という崩壊の年号をタイトルに入れ、新しい時代の出発を強調したかった。実際は米国に敗北して領土割譲という屈辱的なパリ条約を締結するわけですから、本質的にはペシミスティックではあるが、この独創的なスペインの未来に期待しているのかもしれない。

 

★製作会社「Enrique Cerezo Producciones Cinematograficas S.A.」の設立者エンリケ・セレソは、フォルケ賞を主催するEGEDA会長、それで作品賞にノミネーションされたのでしょうか。と言うのも122日公開だから、本当は来年回しのはずです(対象は2015121日~20161130日)。多分受賞はないと予想しますが、原則論者からは不満が出るかもしれない。

 

  

       (サルバドル・カルボ監督とプロデューサーのエンリケ・セレソ)

 

★アントニオ・ロマンの「1945年版」では当然ながら監督以下、アルマンド・カルボ(中尉役)、ホセ・ニエト(指揮官役)、ギジェルモ・マリン(医師役)ほか、日本でもクラシック映画で知名度の高いフェルナンド・レイ、フアン・カルボ(アルマンドの実父)、トニー・ルブランなどが出演、当然ながら殆どが鬼籍入りしています。兵士の逃亡などは、フランコ政権の不都合によりカットされていたようです。

 

★俳優陣のうち、ルイス・トサール(『プリズン211』『暴走車 ランナウエイ・カー』)、エドゥアルド・フェルナンデス(『スモーク・アンド・ミラーズ』『エル・ニーニョ』)、ハビエル・グティエレス(『マーシュランド』『The Olive Tree』)、カラ・エレハルデ(『ネイムレス』『ザ・ウォーター・ウォー』)のベテラン勢は日本語ウィキペディアで紹介記事が読める。当ブログにも度々登場願っているので割愛。

 

   

    (左から、カラ・エレハルデ、エドゥアルド・フェルナンデス、ルイス・トサール)

 

★若手で今回「新人男優賞」ノミネートのリカルド・ゴメスは、1994年マドリード生れの俳優、テレビ、舞台でも活躍の22歳。現在マドリードのコンプルテンセ大学比較文学科に在籍中、勉学と俳優業の二足の草鞋を履いている。2001年から始まったTVドラ・シリーズCuéntame cómo pasó7歳でデビュー、スペインで放映時間が近づくと通りから人影が消えてしまうと言われた人気ドラマ。「フランコ小父さんって何をした人なのか僕たちに話してよ」と、軍事独裁時代を知らない若者にドラマでスペイン現代史を教えるという内容。もちろん秘密のベールに覆われていた時代だから、大人でさえも知らないことだらけ、それで一家揃ってお茶の間に陣取った。マドリードに暮らすアルカンタラ一家の8歳になる末っ子カルロスの人生が語られ、時間とともに成長するカルリート・ゴメスをスペイン人はずっと見てきており、現在も続行中です。

 

             

               (リカルド・ゴメスの今と昔)

 

★映画デビューは、アントニオ・ナバロのアニメLos Reyes Mago03)のボイス、ホセ・ルイス・ガルシのコメディTiovivo c. 195004)、同作はオスカー賞スペイン代表作品の候補にもなったが、アメナバルの『海を飛ぶ夢』に敗れた。というわけで本作出演が成人してからの本格的な映画デビューと言っていいでしょう。

 

    

  (プレス会見でインタビューに応えるリカルド・ゴメスと共演者アルバロ・セルバンテス)

 

★脚本を執筆したアレハンドロ・エルナンデスは、キューバ出身の脚本家、2000年にスペインに移住しているシネアスト流出組の一人。今回ノミネートはありませんでしたが、以前紹介したマヌエル・マルティン・クエンカのMalas temporadas(『不遇』)を監督と共同執筆しています。ノミネーションを受けた撮影監督のアレックス・カタランは『マーシュランド』でゴヤ賞を受賞したばかり、『スモーク・アンド・ミラーズ』も手掛けているが、今回はどうでしょうか。スペイン各紙の映画評は概ね好意的で、何かの賞には絡むのではないかと思います。

 

スペインの映画賞2017の行方を占う2017年01月01日 17:23

 

期待値を下げればハッピーになれるかもしれない

 

★当ブログも4回目の新年を穏やかに迎えることができました。映画の世界も世の中の危機と無縁ではありませんが、映画の未来を信じて発信していきたいと思っています。多くを望まず期待値を若干修正すればそれなりにハッピーになれるかもしれない。秋開催のサンセバスティアン映画祭も節目の65回目を迎えます。サプライズを期待したいところです。

 

★スペインでは新春早々フォルケ賞114日)、フェロス賞123日)、そしてゴヤ賞24日)と大きなイベントが開催されます。それぞれ主宰する組織は異なりますが、前年公開された映画の総決算だから、ノミネーションは当然似てきてしまいます。いわば釣師は違っていても同じ釣堀から釣るわけだから当然なのかも知れません。なかで一番盛大なのが殿りのゴヤ賞ですが、無い袖は振れないというわけで、今年は「地味路線」がはっきりしています。

 

★大体三つの映画賞に共通している最優秀作品賞は、長短はあれ既にご紹介済みの作品です。なかでフォルケ賞にだけノミネートされたサルバドル・カルボのデビュー作1898, Los últimos de Filipinasは当ブログ初登場、ご紹介したいと思っています。タイトルから歴史物であることは一目瞭然、1898年という年は米西戦争によってかつて栄華を誇ったスペイン帝国が完全に瓦解した失意の年です。ゴヤ賞9個(新人監督・新人男優・撮影・プロダクション・美術・録音・衣装デザイン・メイク&ヘアー・特殊効果)は、技術部門に集中しているとはいえ気になります。本作が長編デビューの監督ですが、ルイス・トサール、ハビエル・グティエレス、エドゥアルド・フェルナンデス、カラ・エレハルデなどの演技派ベテランに、リカルド・ゴメス、ミゲル・エラン、アルバロ・セルバンテスなどの若手人気俳優を揃えて、122日封切り以来アクション・アドベンチャーとして若者から年配の男性観客のあいだで評判になっています。

 

  

           (1898, Los últimos de Filipinas”のポスター

 

★他に受賞に絡みそうな作品として、マリナ・セレセスキーLa puerta abiertaもなかなか面白そうです。カルメン・マチ(主演)にテレレ・パベス(助演)がノミネーションとくれば、受賞しなくても鑑賞したい映画リスト入りです。   

 

      
        (“La puerta abierta”のポスターを背にしたカルメン・マチ

 

★ゴヤ賞にはノミネートされませんでしたが、フォルケ賞ラテンアメリカ映画部門のセバスティアン・コルデロSin muertos no hay carnaval(エクアドル、メキシコ、独)なども、ラテンビートを視野に入れてご紹介したい。授賞式までに間に合うよう順を追ってアップできたらと思っています。

 

   

          (Sin muertos no hay carnaval”のポスター

 

 

第22回フォルケ賞2017*ノミネーション発表2016年12月30日 22:57

       授賞式はセビーリャで114日開催――マドリード以外は初めて

 

 

★授賞式がマドリードを離れて開催されるのは初めて、地域振興の意味合いがあるのかもしれません。これは今年67日、EGEDA会長エンリケ・セレソ、アンダルシア評議会文化大臣ロサ・アギラル、セビーリャ市助役アントニオ・ムニョス同席のもと発表されておりました。フォルケ賞はゴヤ賞の前哨戦といわれ、正式名は「ホセ・マリア・フォルケ賞Premios Cinematográfico José María Forqué」です。EGEDAの初代会長だったフォルケの栄誉を讃えて創設された賞。縁の下の力持ち的な製作者の功績を讃えるために設けられた賞、というわけで監督賞はありません。

 

  

  (左から、アントニオ・ムニョス、ロサ・アギラル、エンリケ・セレソ、201667日)

 

★最初は作品賞のみで始まり、第9回から「長編ドキュメンタリー」、「アニメーション」部門が加わり、第15回から男優賞・女優賞、2015年から「ラテンアメリカ映画」、2016年から「短編映画」と「Cine y Educacion en Valores」という賞が加わり、カテゴリーは増加する傾向にあります。栄誉賞にあたる金賞加わりました(該当者なし、あるいは団体のケースもあります)作品賞には3万ユーロ、長編ドキュメンタリーとアニメーション賞には6000ユーロ、男優・女優賞の賞金3000ユーロはAISGE財団**が拠出し、120名以上の映画関係のジャーナリストが選考しています。第22回は2015121日~20161130日の1年間にスペインで公開された作品が対象。

 

Entidad de Gestión de Derechos de los Productores Audiovisuales の頭文字。いわゆる視聴覚製作に携わる人々の権利を守るための交渉団体です。1990年創設だが活動は1993年から。現会長はエンリケ・セレソ、副会長はアグスティン・アルモドバル。

**Artistas Intérpretes, Sociedad de Gestión の頭文字。声優を含む俳優、舞踊家、映画監督などの権利を守る非営利団体、2002年設立、現会長は女優ピラール・バルデム

 

   フォルケ賞ノミネーション

 

長編映画賞(フィクション、アニメーション)

El homre de las mil caras”“Smoke&Mirrors”『スモーク・アンド・ミラーズ』

監督アルベルト・ロドリゲス ★ 

Julieta 『ジュリエッタ』監督ペドロ・アルモドバル ★ 

Que Dios nos perdone”“May God Save Us”監督ロドリゴ・ソロゴイェン ★

Tarde para la ira”“The Fury of a Patient Man”監督ラウル・アレバロ ★ 

Un monstruo viene a verme”“A Monster Calls”(西・米・英・カナダ)

監督フアン・アントニオ・バヨナ ★

1898, Los últimos de Filipinas”監督サルバドル・カルボ

 

男優賞

エドゥアルド・フェルナンデス『スモーク・アンド・ミラーズ』監督アルベルト・ロドリゲス ★

ロベルト・アラモ“Que Dios nos perdone 監督ロドリゴ・ソロゴイェン ★

アントニオ・デ・ラ・トーレ“Tarde para la ira 監督ラウル・アレバロ ★

アレックス・モネール“La propera pell”(“La próxima piel”) 

監督(共同)イサキ・ラクエスタ、イサ・カンポ 

オスカル・マルティネスEl ciudadano ilustre”(アルゼンチン、スペイン)

 監督(共同)ガストン・ドゥプラット、マリアノ・コーン 

 

女優賞

アドリアナ・ウガルテ『ジュリエッタ』監督ペドロ・アルモドバル ★

エンマ・スアレス『ジュリエッタ』同上

カルメン・マチ“La puerta abierta”(“The Open Door”)監督マリナ・セレセスキー 

バルバラ・レニー“María (y los demás)”監督ネリー・ネゲラ ★

アナ・カスティージョ『The Olive Tree』監督イシアル・ボリャイン ★

インマ・クエスタ“La novia 監督パウラ・オルティス 

 

長編ドキュメンタリー賞

2016, Nacido en Siria”監督エルナン・シン

El Bosco, El jardín de los sueños”(スペイン、フランス)

  監督ホセ・ルイス・ロペス=リナレス

Omega”監督(共同)ヘルバシオ・イグレシアス、ホセ・サンチェス=モンテス

Jota de Saura”監督カルロス・サウラ 

La historia de Jan”監督ベルナルド・モル・オットー

Miguel Picazo, Un cineasta extramuros”監督エンリケ・エスナオラ

 

短編映画賞

Timecode”『タイムコード』監督フアンホ・ヒメネス 

Graffitti”監督リュイス・キレスLluís Quílez

Bla Bla Bla”監督アレクシス・モランテ

 

長編ラテンアメリカ映画賞

Neruda”(チリ、メキシコ)監督パブロ・ラライン ★

El ciudadano ilustre”『名誉市民』(アルゼンチン、スペイン) 

監督(共同)ガストン・ドゥプラット、マリアノ・コーン ★

Aquí no ha pasado nada”(“Much Ado About Nothing”)(チリ)

監督アレハンドロ・フェルナンデス・アルメンドラス ★

El acompañante”(キューバ)監督パベル・ジロー

Sin muertos no hay carnaval”(エクアドル、メキシコ、独)監督セバスティアン・コルデロ

 

Cine y Educacion en Valores

El olivo”監督イシアル・ボリャイン ★

100 metros”監督マルセル・バレナ ★

Un monstruo viene a verme 監督フアン・アントニオ・バヨナ ★

 (★は紹介記事をアップしているもの)

 

栄誉賞

アントニオ・P・ペレスAntonio P. Pérez は、独立系のプロデューサー、彼が手掛けた代表作品を列挙すると、ベニト・サンブラノの『ローサのぬくもり』(99)と『スリーピング・ボイス~沈黙の叫び』(11)、マテオ・ヒルの『パズル』(99)、最近ではイマノル・ウリベの“Lejos del mar”(15)など。

 

     

               (アントニオ・P・ペレス)

 

作品賞は、約110作の候補から選考され最終的に以上の6作に絞られた。サルバドル・カルボの“1989, Los últimos de Filipinas”が加わっただけで、ゴヤ賞とフェロス賞に同じ、女優賞にフェロス賞2016受賞のインマ・クエスタが選ばれているのは、スペイン公開が1211日だったせいです。公開が境目にあるとノミネーションが分かれるケースが出てくるのは仕方がありません。短編映画賞はゴヤ賞と同じです。いずれもカンヌ映画祭を始めとして国際短編映画祭での受賞歴多数。

 

ドキュメンタリー部門(候補は86作)には、サウラのようなベテランからベルナルド・モル・オットーのような新人、『スモーク・アンド・ミラーズ』の製作者ヘルバシオ・イグレシアス、『マーシュランド』の製作者ホセ・サンチェス=モンテスなど多彩な顔ぶれを揃えたようです。ラテンアメリカ映画部門にキューバとエクアドルがノミネートされたのも久方ぶりのことです。“Sin muertos no hay carnavalコルデロの長編6作目、いずれご紹介したい作品です。

 

★授賞式は年明け早々の2017114日、セビーリャのマエストランサ劇場にて。俳優のイングリッド・ガルシア・ヨンソン、アルバロ・セルバンテス、ハビエル・グティエレスなどが進行を担当する予定。


ゴヤ賞2017ノミネーション発表 ④2016年12月28日 11:01

                  作品賞ノミネーションはフェロス賞と全く同じ!

 

  

 

米国のゴールデン・グローブ賞と同じ位置づけで2013年から始まったフェロス賞とカブるのは当たり前の話とも言えますが、作品賞は全く同じでした。ゴヤ賞は、前もって決定している栄誉賞を除くと28カテゴリーと多く、例えば監督賞・男優・女優に「新人」枠があり、今後のスペイン映画の行方を占うのに役立ちますし、音楽賞も作曲賞と歌曲賞の2カテゴリーに分かれているなど、やはり大枠だけでもアップしておきます。字幕入り上映も『スモーク・アンド・ミラーズ』、『ジュリエッタ』、『The Olive Tree』、『KIKI~愛のトライ&エラー』、『名誉市民』、『囚われた少女たち』(DVD題名、映画祭題名『選ばれし少女たち』)ほか映画祭を含めると78作あります。当ブログ未紹介ながら気になる作品も散見いたしますので、つまみ食いしながらご紹介したいと思います。2017年の栄誉賞は既にご紹介しております通り女優で歌手のアナ・ベレン、ガラ総合司会者3年連続のダニ・ロビラです。

 

  

(作品賞ノミネーションを読み上げるハビエル・カマラとナタリア・デ・モリーナ、1214日)

 

           ゴヤ賞2017ノミネーション

(原題・英題・邦題・監督の順、初出には監督名を入れ、★印はフェロス賞ノミネーションとカブるもの、印は紹介作品、合作は国名、多数ノミネーションには個数を入れました)

 

作品賞

El homre de las mil caras”“Smoke&Mirrors”『スモーク・アンド・ミラーズ』(11個)

監督アルベルト・ロドリゲス ★

Julieta 『ジュリエッタ』(7個)監督ペドロ・アルモドバル ★

Que Dios nos perdone”“May God Save Us”(6個)監督ロドリゴ・ソロゴイェン ★

Tarde para la ira”“The Fury of a Patient Man”(11個)監督ラウル・アレバロ ★

Un monstruo viene a verme”“A Monster Calls”(最多12個、西・米・英・カナダ)

監督フアン・アントニオ・バヨナ ★

 

   

         (この3作に絞られるか、右側か左側のどちらかを予想)

 

監督賞

アルベルト・ロドリゲス『スモーク・アンド・ミラーズ』★

ペドロ・アルモドバル『ジュリエッタ』★

ロドリゴ・ソロゴイェン“Que Dios nos perdone”★

フアン・アントニオ・バヨナ“Un monstruo viene a verme”★

 

新人監督賞

ラウル・アレバロ“Tarde para la ira

サルバドル・カルボ“1898, Los últimos de Filipinas”(9個)

マルク・クレウエト“El rey tuerto

ネリー・レゲラ“María (y los demás)

 

オリジナル脚本賞

ホルヘ・ゲリカエチェバリア“Cien años de perdón”『バンクラッシュ』

監督ダニエル・カルパルソロ

ポール・ラヴァティ“El olivo”『The Olive Tree』監督イシアル・ボリャイン 

イサベル・ペーニャ、ロドリゴ・ソロゴイェン“Que Dios nos perdone”★

ダビ・プリド、ラウル・アレバロ“Tarde para la ira”★

 

脚色賞

アルベルト・ロドリゲス、ラファエル・コボス『スモーク・アンド・ミラーズ』★

ペドロ・アルモドバル『ジュリエッタ』★

フェルナンド・ペレス、パコ・レオン“Kiki, el amor se hace”『KIKI~愛のトライ&エラー』

パトリック・ネス“Un monstruo viene a verme”★

 

オリジナル作曲賞

フリオ・デ・ラ・ロサ『スモーク・アンド・ミラーズ』★

パスカル・ゲイニュ『The Olive Tree

アルベルト・イグレシアス『ジュリエッタ』★

フェルナンド・ベラスケス“Un monstruo viene a verme”★

 

オリジナル歌曲賞

ルイス・イバルス‘Descubriendo India’(“Bollywood Made in Spain”)

  監督ラモン・マルガレト

シルビア・ペレス・クルス‘Ai, ai, ai’(“Cerca de tu casa”)

  監督エドゥアルド・コルテス ★

セルティア・モンテス‘Muerte’(“Frágil equilibrio”、ドキュメンタリー)

監督ギジェルモ・ガルシア・ロペス

アレハンドロ・アコスタ、パコ・レオン他‘KikiMr. Ki feat Nita

  (『KIKI~愛のトライ&エラー』)

 

主演男優賞

エドゥアルド・フェルナンデス『スモーク・アンド・ミラーズ』★

ロベルト・アラモ“Que Dios nos perdone”★

アントニオ・デ・ラ・トーレ“Tarde para la ira”★

ルイス・カジェホ“Tarde para la ira”(フェロス賞は助演★)

 

主演女優賞

エンマ・スアレス『ジュリエッタ』★

カルメン・マチ“La puerta abierta”(“The Open Door”)監督:マリナ・セレセスキー ★

ペネロペ・クルス“La reina de España”監督:フェルナンド・トゥルエバ 

バルバラ・レニー“María (y los demás)”★

 

助演男優賞

カラ・エレハルデ“100 metros”監督:マルセル・バレラ 

ハビエル・グティエレス『The Olive Tree

ハビエル・ペレイラ“Que Dios nos perdone”★

マノロ・ソロ“Tarde para la ira”★

 

助演女優賞

カンデラ・ペーニャ『KIKI~愛のトライ&エラー』★

エンマ・スアレス“La próxima piel”監督:イサキ・ラクエスタ、イサ・カンポ 

テレレ・パベス“La puerta abierta”★

シガニー・ウィーバー“Un monstruo viene a verme

 

新人男優賞

リカルド・ゴメス“1898, Los últimos de Filipinas

ロドリゴ・デ・ラ・セルナ『バンクラッシュ』

カルロス・サントス『スモーク・アンド・ミラーズ』(フェロス賞は助演★)

ラウル・ヒメネス“Tarde para la ira

 

新人女優賞

シルビア・ペレス・クルス“Cerca de tu casa

アナ・カスティージョ『The Olive Tree』(フェロス賞は主演★)

ベレン・クエスタ『KIKI~愛のトライ&エラー』

ルス・ディアス“Tarde para la ira”(フェロス賞は助演★)

 

 

プロダクション賞

カルロス・ベルナセス“1898, Los últimos de Filipinas

マヌエラ・オコン『スモーク・アンド・ミラーズ』

ピラール・ロブラ“La reina de España

サンドラ・エルミダ・ムニィス“Un monstruo viene a verme

 

撮影監督賞

アレックス・カタラン“1898, Los últimos de Filipinas

ホセ・ルイス・アルカイネ“La reina de España

アルナウ・バルス・コロメル“Tarde para la ira

オスカル・ファウラ“Un monstruo viene a verme

 

編集賞

ホセ・M・G・モヤノ『スモーク・アンド・ミラーズ』

アルベルト・デル・カンポ、フェルナンド・フランコ“Que Dios nos perdone

アンヘル・エルナンデス・ソイド“Tarde para la ira

ベルナ・ビラプラナ、ジャウマ・マルティ“Un monstruo viene a verme

 

美術監督賞

カルロス・ボデロン“1898, Los últimos de Filipinas

ぺぺ・ドミンゲス・デル・オルモ『スモーク・アンド・ミラーズ』

フアン・ペドロ・デ・ガスパル“La reina de España

エウヘニオ・カバジュロ“Un monstruo viene a verme

 

衣装デザイン賞

パオラ・トレス“1898, Los últimos de Filipinas

ロラ・ウエテ“La reina de España

クリスティナ・ロドリゲス“No culpes al karma de lo que te pasa por gilipollas

監督マリア・リポル

アルベルト・バルカルセル、クリスティナ・ロドリゲス“Tarde para la ira

 

メイクアップ&ヘアー賞

アリシア・ロペス、ミル・カブレル、ペドロ・ロドリゲス“1898, Los últimos de Filipinas

ヨランダ・ピナ『スモーク・アンド・ミラーズ』

アナ・ロペス=プイグセルベル、ダビ・マルティ、セルヒオ・ペレス・ベルベル『ジュリエッタ』

ダビ・マルティ、マレセ・ランガン“Un monstruo viene a verme

 

録音賞

エドゥアルド・エスキデ、フアン・フェロ他“1898, Los últimos de Filipinas

セサル・モリナ、ダニエル・デ・サヤス他『スモーク・アンド・ミラーズ』

ナチョ・ロジョ=ビリャノバ、セルヒオ・テスタン“Ozzy”(アニメーション、西・カナダ)

オリオル・タラゴ、ペーター・グロスポ“Un monstruo viene a verme

 

特殊効果賞

カルロス・ロサノ、パウ・コスタ“1898, Los últimos de Filipinas

ダビ・エラス、ラウル・ロマニリョス“Gernika. The Movie”『ゲルニカ』監督コルド・セラ

エドゥアルド・ディアス、レジェス・アバデス『ジュリエッタ』

フェリックス・ベルヘス、パウ・コスタ“Un monstruo viene a verme

 

アニメーション賞

Ozzy 監督アルベルト・ロドリゲス、ナチョ・ラ・カサ

Psiconautas, los niños olvidados”監督ペドロ・リベロ、アルベルト・バスケス

Teresa eta Galtzagorri”(“Teresa y Tim”)

監督アグルツァネ・インチャウラガAgurtzane Intxaurraga

 

ドキュメンタリー賞

2016, Nacido en Siria”監督エルナン・シン

El Bosco, El jardín de los sueños”(西仏)監督ホセ・ルイス・ロペス=リナレス

Frágil equilibrio 監督ギジェルモ・ガルシア・ロペス

Omega”ヘルバシオ・イグレシアス、ホセ・サンチェス=モンテス

 

イベロアメリカ映画賞

Anna”(コロンビア仏)監督ジャック・トゥールモンド

Desde alla”“From Afar”『彼方から』(ベネズエラ・メキシコ)監督ロレンソ・ビガス

El ciudadano ilustre”『名誉市民』(アルゼンチン西)

監督(共同)ガストン・ドゥプラット、マリアノ・コーン 

Las elegidas”『囚われた少女たち』(メキシコ)ダビ・パブロス 

 

★以下、ヨーロッパ映画賞・短編映画賞・短編ドキュメンタリー賞・短編アニメーション賞は割愛します。受賞結果のみアップする予定。短編映画賞のなかにはフアンホ・ヒメネス・ペーニャの『タイムコード』(カンヌ2016の短編パルムドール受賞作品)のようにご紹介記事も混じっております。イベロアメリカ映画賞には、スペイン公開が遅かったせいか2014年の『彼方から』と2015年の『囚われた少女たち』がノミネートされており、時間が逆戻りした印象でした。

 

      

        (アルフレッド・カストロとルイス・シルバ、『彼方から』)

 

★受賞してもらいたい作品はあっても星取表には興味が沸かないので割愛、年明けに未紹介の作品をアップする予定なので、そのなかで随時触れたいと思います。ドキュメンタリー賞の監督のなかにはプロデューサーとして数々の問題作に関わったベテランの名前も散見します。反対に編集賞のなかには“Que Dios nos perdone”のフェルナンド・フランコのように、“La herida”(13)でゴヤ賞新人監督賞を受賞した監督も混じっております。技術スタッフは掛持ちで仕事をしているせいか複数でノミネートされ、毎年顔ぶれが同じように感じるのは管理人んだけでしょうか。

 

★フェロス賞ノミネーション0個のフェルナンド・トゥルエバの“La reina de España”が7個と違いをみせました。フランコ体制終焉から40年、それでもフランコ支持者は意気軒昂、上映館を取り巻く彼らのボイコット運動に恐れをなして客足に影響があるとかないとか。75年経っても戦後は終わらないのと同じです。

 

        

           (トゥルエバ監督とヒロインのペネロペ・クルス)


ゴヤ賞を初めて統率する映画アカデミー会長イボンヌ・ブレイク2016年12月20日 14:11

       困難な会長職を引き受けたわけ――私たちはカオスの中にいる

 

★去る1214日、ゴヤ賞2017のノミネーション発表がありました。次回の授賞式を統率するのが新会長イボンヌ・ブレイク、マンチェスター生れのイギリス系スペイン人、母語は英語なので話が込み入ってくると了解を得ながらも英語混じりになる。なり手のなかった会長職をどうして引き受けたかというと、理事会役員の仲間から説得されたからだという。特に女優のアンパロ・クリメント、女性プロデューサーの草分け的存在のソル・カルニセロ、アルモドバル兄弟の「エル・デセオ」の中心的な製作者エステル・ガルシア・ロドリゲスなど、女性シネアストからの懇望に負けたからだという。

 

  

     (イボンヌ・ブレイク、映画アカデミー本部にある事務所にて、1129日)

 

★問題山積の中でも、新会長の肩に重くのしかかるのが活動資金調達の困難さ、「とにかく資金不足、掻き集めてくれる外郭団体があるにはあるが、問題は司令塔が存在しないこと」だと。「2017年はもう間に合わないが、2018年には授賞式を催すための他のグループを立ち上げたい。より多くの後援者を見つけないと今後は開催できなくなる事態になる」、パトロン探しが重要と新会長。2017年は質素なガラになるようです。より現代的な舞台装置、ミュージカル風でなく、多分本来の授賞に重きをおき、興行的にはしない方針のようです。1015日の就任以来、殆ど休みなく朝に夕に本部に詰めているという。

 

ブレイク新会長の女性ブレーン紹介

アンパロ・クリメントは、バレンシア生れの女優、最近はTVドラ出演が多いのでご紹介するチャンスがありませんが、かつてはグティエレス・アラゴンの『庭の悪魔』(82)やホセ・ルイス・ガルシア・サンチェスの「Tranvia a la Malvarrosa」(96)に出演しているベテラン女優。

ソル・カルニセロは、1963年スペインテレビTVEのプログラム制作で第一歩を踏み出した。スペイン人から最も愛されたと言われる監督ガルシア・ベルランガの「ナシオナル三部作」といわれる辛口コメディ、ピラール・ミローの1910年代の実話に基づいた『クエンカ事件』(79)、治安警備隊の拷問シーンが残酷すぎると上映阻止の動きがあり、ミロー監督も一時的に収監されるという前代未聞の事態に発展した。民主化移行期とはいえフランコ時代が続いていたことを内外に知らせる結果になった。1年半後に公開されると空前のヒット作となった。

エステル・ガルシア・ロドリゲスは「エル・デセオ」のプロデューサー、2015年、数々の映画賞をさらったダミアン・ジフロンの『人生スイッチ』で、20回フォルケ賞をアグスティン・アルモドバルと一緒に受賞しています。

イボンヌ・ブレイクのキャリア紹介記事は、コチラ⇒20161029

 

ヨーロッパ映画賞は全滅でした!

 

★スペイン語映画は全滅でした。ドイツ=オーストリア合作のマーレン・アデの「Toni Erdmann」が独占、ちょっと口をあんぐりの結果でした。「最多ノミネーション5個(作品、監督、脚本、女優サンドラ・フラー、男優ペーター・シモニシェック)、どれか一つくらい受賞するのではないでしょうか」と予想はしていましたが、なんと全部受賞してしまいました。過去にこのような例があるのかどうか調べる気にもなりませんが、他の映画もちゃんと観てくれた結果なのでしょうか。『ジュリエッタ』グループもアルモドバル監督以下揃って現地入りしていましたが、無冠に終り残念でした。

ヨーロッパ映画賞ノミネーションの紹介記事は、コチラ⇒2016118

 

   

                    (監督賞トロフィーを手に喜びのマーレン・アデ)

 

    

(監督を挟んでサンドラ・フラーとペーター・シモニシェック)

 

       アカデミー賞外国語映画賞プレ・セレクション9作品も全滅でした!

 

2015ダミアン・ジフロンの『人生スイッチ』(アルゼンチン他)、2016年チロ・ゲーラの『彷徨える河』(コロンビア他)と2年続きでノミネートされたオスカー賞、2017年はプレ・セレクション9作品にも残れませんでした。有力視されていた(?)アルモドバルの『ジュリエッタ』、パブロ・ララインの「Nerudaネルーダ」も手が届きませんでした。ヨーロッパ映画賞を独占したドイツのマーレン・アデ「Toni Erdmann」は、予想通り残っていますね。来年まで勢いが続くかどうか、ハリウッドはドイツ嫌いが多い印象を受けています。


第4回フェロス賞2017のノミネーション発表2016年12月18日 17:35

        総合司会者にアントニオ・デ・ラ・トーレ、授賞式は123

 

              

                (第4回フェロス賞ポスター)

 

★フェルナンド・トゥルエバの“La Reina de Espanña”のゼロ個が、アルベルト・ロドリゲスの『スモーク・アンド・ミラーズ』(ラテンビート2016上映)の10個以上に話題になっています。ゼロ個ということはヒロインのペネロペ・クルスもノミネートされなかったということで、何があったかを探ると、かなり複雑な現実が見えてきそうです(これは別の話なのでここでは触れません)。ゴヤ賞2017のノミネーションも発表になり、付き合わせると90パーセントは重なるようです。こちらにはさすがにPPも主演女優賞に名前が載っておりました。総合司会者にアントニオ・デ・ラ・トーレ、アルゼンチン出身の女優マレナ・アルテリオAICE会長パドロ・バリン3人が進行役です。マレナ・アルテリオはエクトル・アルテリオの娘、“Una palabra tuya”(08)で共演したルイス・ベルメホ(『マジカル・ガール』『KIKI』)と結婚、国籍はスペイン。

 

            

            (総合司会者アントニオ・デ・ラ・トーレ)

 

正式名は「Premios Feroz AICE(スペイン映画記者協会)が米国のゴールデン・グローブ賞と同じ位置づけで201311月に設立した映画賞。当初カテゴリーは栄誉賞と特別賞を除く11部門でしたが、増加する傾向にあります。ノミネーション発表は11月下旬から12月初旬、授賞式は翌年1月下旬、映画記者協会のメンバー約170人が選定する。前年度の各映画祭での受賞作、劇場公開された作品(全国展開でなくても大都市公開なら対象とし、オンライン配信も含まれる)、さらに国際映画祭受賞作品ながら配給元が見つからないケースも対象になる。

 

 ★基本カテゴリーは、作品賞(ドラマ)/作品賞(コメディ)/監督賞脚本賞主演男優賞主演女優賞助演男優賞助演女優賞オリジナル音楽賞レーラー賞(ゴヤ賞にはない)/映画ポスター賞(ゴヤ賞にはない)の11部門、今年から助演男優賞助演女優賞ドキュメンタリー賞が入り、更にTVドラシリーズの作品賞(ドラマ&コメディ)/男優賞女優賞助演男優賞助演女優賞6賞も追加されることになりました。規模が拡大する傾向にあり、内容が似通った映画賞ばかり増えても映画産業の発展や集客率にはつながらないと危惧します。

 

★今回2017年のの栄誉賞は、チチョ・イバニェス・セラドールChicho Narciso Ibáñez Serradorがアナウンスされました。駆け足で紹介すると、映画界とテレビ界の結合、発展に寄与した人物、1935年モンテビデオ生れの81歳、舞台監督、俳優、脚本家、監督、製作者、国籍はウルグアイとスペイン。舞台監督、俳優だったナルシソ・イバニェスの一人息子。1960年“Obras maestras del terror”の脚本で映画界デビュー、同年“Todo el año es Navidad”に俳優出演、監督作品としてはホラー映画La residencia69)と¿Quién puede matar a un niño?76)が代表作。TVドラシリーズでは、Historias para no dormirHistoria de la frivolidadUn, dos, tres….responda otra vezなど1960年代後半から80年代にかけてヒット作を多数お茶の間に送り届けています。2001年舞台監督に復帰、“Aprobado en castidad”を演出、2002年“El aguila y la niebla”でロペ・デ・ベガ賞を受賞、2004年新バージョンUn , dos, tres…a leer esta vez”、2005年、アレックス・デ・ラ・イグレシア、ジャウマ・バラゲロ、マテオ・ヒル、エンリケ・ウルビスのような若手監督を起用して“Películas para no dormir”をテレシンコで企画・監修して成功させた。このTVシリーズは日本でも「スパニッシュ・ホラー・プロジェクト」としてテレビ放映され、ホラー好きに歓迎されました。2010年、文化・教育・スポーツ省が授与する最高賞「国民賞(テレビジョン部門)」を受賞しています。

 

             

             (ナルシソ・イバニェス・セラドール)

 

★今回TVドラ部門のカテゴリーが追加されたのと無関係ではないでしょう。栄誉賞と特別賞は、主にAICEの執行部が中心になって決めるようです。因みに過去の受賞者は、カルロス・サウラ、昨年はロサ・マリア・サルダでした。

 

主なフェロス賞ノミネーション

作品賞(ドラマ部門)

El hombre de las mil caras『スモーク・アンド・ミラーズ』 監督アルベルト・ロドリゲス(10個)
Julieta『ジュリエッタ』 監督ペドロ・アルモドバル(9個)
Que Dios nos perdone 監督ロドリゴ・ソロゴイェン(7個)
Tarde para la ira 監督ラウル・アレバロ(8個)
Un monstruo viene a verme 監督フアン・アントニオ・バヨナ(7個)

作品賞(コメディ部門)

Kiki, el amor se hace 『KIKI~愛のトライエラー 監督パコ・レオン
María (y los demás)」監督ネリー・レゲラ

La noche que mi madre mató a mi padre 監督イネス・パリス
La puerta abierta 監督マリナ・セレセスキー
El rey tuerto 監督マルク・クレウエトCrehuet

監督賞

ペドロ・アルモドバル『ジュリエッタ』
ラウル・アレバロ 「
Tarde para la ira
フアン・アントニオ・バヨナUn monstruo viene a verme
アルベルト・ロドリゲス 『スモーク・アンド・ミラーズ』
ロドリゴ・ソロゴイェン「
Que Dios nos perdone

主演女優賞

アナ・カスティージョ「El olivoThe Olive Tree

バルバラ・レニー María (y los demás)
カルメン・マチLa puerta abierta
エンマ・スアレス『ジュリエッタ』

アドリアナ・ウガルテ『ジュリエッタ』

主演男優賞

ロベルト・アラモ「Que Dios nos perdone

エドゥアルド・フェルナンデス 『スモーク・アンド・ミラーズ』

アライン・エルナンデス El rey tuerto
ルイス・マクドゥーガル Un monstruo viene a verme
アレックス・モネール La propera pell
アントニオ・デ・ラ・トーレ「Tarde para la ira

助演女優賞

ルス・ディアス Tarde para la ira
マルタ・エトゥラ 『スモーク・アンド・ミラーズ』

ロッシ・デ・パルマ『ジュリエッタ』
テレレ・パベス 
La puerta abierta
カンデラ・ペーニャ 『KIKI~愛のトライ&エラー
助演男優賞

カルロス・サントス 『スモーク・アンド・ミラーズ
ルイス・カジェホ Tarde para la ira

ホセ・コロナド 『スモーク・アンド・ミラーズ
ハビエル・ペレイラ「Que Dios nos perdone
マノロ・ソロ Tarde para la ira
脚本賞
アルベルト・ロドリゲス、ラファエル・コボス 『スモーク・アンド・ミラーズ』 

ペドロ・アルモドバル 『ジュリエッタ 
パトリック・ネス Un monstruo viene a verme
イサベル・ペニャ、ロドリゴ・ソロゴジェン Que Dios nos perdone
ダビ・プリド、ラウル・アレバロ Tarde para la ira
オリジナル音楽賞

シルビア・ペレス・クルス  Cerca de tu casa
フリオ・デ・ラ・ロサ 『スモーク・アンド・ミラーズ』

アルベルト・イグレシアス 『ジュリエッタ』

フェルナンド・ベラスケス Un monstruo viene a verme
オリビエル・アルソン「Que Dios nos perdone

予告編賞

El hombre de las mil caras『スモーク・アンド・ミラーズ
 
Julieta」 『ジュリエッタ

 Kiki, el amor se hace」 『KIKI~愛のトライ&エラー
Un monstruo viene a verme
Que Dios nos perdone

ポスター賞

El hombre de las mil caras」 『スモーク・アンド・ミラーズ
Julieta」 『ジュリエッタ

Kiki, el amor se hace KIKI~愛のトライ&エラー
Monstruo viene a verme

Tarde para la ira

予告編賞とポスター賞は未決定らしく、なかで1作が脱落するようです。当ブログでは、TVドラマ・シリーズ部門は省略します。

3回フェロス賞ノミネーションは、コチラ20151218

3回フェロス賞受賞結果は、コチラ2016121