『あなたに触らせて』あるいは『スキン』*ラテンビート2017 ②2017年08月20日 15:39

          末恐ろしいエドゥアルド・カサノバのデビュー作

 

  

               (ピンクのシャツで全員集合)

 

エドゥアルド・カサノバのデビュー作 PielesSkinsは、ラテンビートでは英題の『スキン』ですが、ネットフリックス『あなたに触らせて』として既に放映されています。ネットフリックスの邦題は本作に限らずオリジナル・タイトルに辿りつけないものがが多く、これも御多分に漏れずです。セリフの一部から採用しているのですが・・・。ネットフリックスの資金援助とアレックス・デ・ラ・イグレシアカロリナ・バングの制作会社Pokeepsie Filmsキコ・マルティネスNadie es Perfecto後押しで、1年半という新人には考えられない短期間で完成できた作品。新プラットフォームの出現でスクリーン鑑賞が後になるというのも、時代の流れでしょうか。なおカロリナ・バングはプロデュースだけでなく精神科医役として特別出演しています。

 

ベルリン映画祭2017パノラマ部門マラガ映画祭正式出品の話題作。デフォルメされた身体のせいで理不尽に加えられる暴力が最後に痛々しいメロドラマに変化するという、社会批判を込めた辛口コメディ、ダーク・ファンタジー。好きな人は涙、受けつけない人は苦虫、どちらにしろウトウトできない。

 

   PielesSkins)『スキン』(または『あなたに触らせて』2017

製作:Nadie es Perfecto / Pokeepsie Films / Pieles Producciones A.I.E.

   協賛The Other Side Films

監督・脚本:エドゥアルド・カサノバ

撮影:ホセ・アントニオ・ムニョス・モリナ(モノ・ムニョス)

編集:フアンフェル・アンドレス

音楽:アンヘル・ラモス

録音:アレックス・マライス

録音デザイン:ダビ・ロドリゲス

美術・プロダクションデザイン:イドイア・エステバン

メイク&ヘアー:ローラ・ゴメス(メイク主任)、オスカル・デル・モンテ(特殊メイク)

        ヘスス・ジル(ヘアー)

衣装デザイン:カロリナ・ガリアナ

キャスティング:ピラール・モヤ、ホセ・セルケダ

プロダクション・マネジャー:ホセ・ルイス・ヒメネス、他

助監督:パブロ・アティエンサ

製作者:キコ・マルティネス、カロリナ・バング、アレックス・デ・ラ・イグレシア、他

視覚効果:Free your mindo

 

データ:スペイン、スペイン語、2017年、コメディ、ダーク・ファンタジー、77分、ベルリン映画祭2017パノラマ部門出品、マラガ映画祭2017セクション・オフィシアル出品(ヤング審査員特別賞受賞)、ビルバオ・ファンタジー映画祭上映。配給ネットフリックス190ヵ国放映、スペイン公開69日、ラテンビート2017予定。

 

プロット:普通とは異なった身体のため迫害を受ける、サマンサ、ラウラ、アナ、バネッサ、イツィアルを中心に、周りには理解してもらえない願望をもつ、クリスティアン、エルネスト、シモン、後天的に顔面に酷い火傷を負い再生手術を願っているギリェなどを絡ませて、「普通とは何か」を問いかけた異色のダーク・ファンタジー。人は「普通」を選択して生まれることはできない。しかし人生をどう生きるかの選択権は他人ではなく、彼ら自身がもっている。ピンクとパープルに彩られたスクリーンから放たれる暴力と痛み、愛と悲しみ、美と金銭、父と娘あるいは母と息子の断絶、苦悩をもって生れてくる人々にも未来はあるのか。

 

キャスト

アナ・ポルボロサ:消化器官が反対になったサマンサ(Eat My Shit『アイーダ』)

マカレナ・ゴメス:両眼欠損の娼婦ラウラ(『トガリネズミの巣穴』『スガラムルディの魔女』)

カンデラ・ペーニャ:顔面変形片目のアナ(『時間切れの愛』『オール・アバウト・マイ・マザー』)

エロイ・コスタ:身体完全同一性障害、人魚になりたいクリスティアン(TVCentro mrdico

ジョン・コルタジャレナ:顔面火傷を負ったギリェ(米『シングル・マン』TVQuantico

セクン・デ・ラ・ロサ:異形愛好家エルネスト(『クローズド・バル』 Ansiedad

アナ・マリア・アヤラ:軟骨無形成症のバネッサ

ホアキン・クリメント:バネッサの父アレクシス(『クローズド・バル』)

カルメン・マチ:クリスティアンの母クラウディア(『クローズド・バル』『ペーパーバード』『アイーダ』)

アントニオ・デュランモリス’:クリスティアンの父シモン(『プリズン211』『月曜日にひなたぼっこ』)

イツィアル・カストロ:肥満症のイツィアル(『ブランカニエベス』『Rec3Eat My Shit

アドルフォ・フェルナンデス:(『トーク・トゥ・ハー』)

マリア・ヘスス・オジョス:エルネストの母?(『スガラムルディの魔女』『ペーパーバード』)

アルベルト・ラング:(『トガリネズミの巣穴』『グラン・ノーチェ』)

ハビエル・ボダロ:街のチンピラ(『デビルズ・バックボーン』)

ミケル・ゴドイ:2017年の娼館のアシスタント

特別出演

カロリナ・バング:精神科医(『気狂いピエロの決闘』)

ルシア・デ・ラ・フエンテ

マラ・バジェステロ:2000年の娼館経営者(『アイーダ』)

 

  監督キャリア&フィルモグラフィ

エドゥアルド・カサノバEduardo Casanova19913月マドリード生れの26歳、俳優、監督、脚本家。人気TVシリーズ Aída「アイーダ」(0514)に子役としてデビュー、たちまちブレークして232話に出演した。他、アレックス・デ・ラ・イグレシアの『刺さった男』や『グラン・ノーチェ!最高の大晦日』、アントニア・サン・フアンの Del lado del verano などに脇役として出演している。

 

 

「アイーダ」に出演していた頃のカサノバ、ダビ・カスティリョ、アナ・ポルボロサ)

 

★監督・脚本家としては、2011年ゾンビ映画 AnsiedadAnxiety)で監督デューを果たす。この短編にはアナ・ポルボロサとセクン・デ・ラ・ロサを起用している。短編8編のうち、2014年の凄まじいメロドラマ La hora del baño17分)にはマカレナ・ゴメス、2015年のEat My Shit には再びアナ・ポルボロサが出演、長編 Pieles『スキン』のベースになっている。他に2016年にホセ・ルイス・デ・マダリアガをフィデル・カストロ役に起用して Fidel5分)を撮る。短期間だがハバナのサン・アントニオ・デ・ロス・バニョスの映画学校でビデオクリップの制作を学んでいる。カサノバによるとキューバや独裁者たちや紛争対立に興味があるようです。「アイーダ」での役名は偶然にもフィデル・マルティネスだった。

  

      ("Eat My Shit"のイツィアル・カストロ、監督、アナ・ポルボロサ)

   

    

          (エドゥアルド・カサノバ、ベルリン映画祭2017にて)

 

         冒頭から度肝をぬくマラ・バジェステロの怪演

 

A: 物語はドール・ハウスのようにピンクに彩られた「愛の館」から始まる。マラ・バジェステロ扮する娼館の女主人は、「本能は変えられない」と客のシモンを諭す。先ず彼女の風体に度肝をぬかれる。シモンは妻クラウディアが無事男の子を出産したことを確認すると妻子の前から姿を消す。この男の子がクリスティアンです。この親子がグループ1

B: クリスティアンは身体完全同一性障害BIIDという実際にある病気にかかっている。四肢のどれかが不必要と感じる病気です。彼の場合は両足がいらない、人魚のようになりたいと思っている。彼のメインカラーはパープルである。このピンクとパープルが一種のメタファーになっている。 

   

                 (「本能は変えられない」とシモンを諭す娼館のマダム)

 

  

A: このプロローグには作品全体のテーマが網羅されている。娼館マダムのマラ・バジェステロの風体にも混乱させられるが、その病的な理念「美とノーマルが支配する無慈悲な社会秩序を支えているマヤカシ」を静かに告発している。

B: 深い政治的な映画であることがすぐ分かるプロローグ。ただ苦しむために生まれてくるかのような人々の存在が現実にある。

 

   

                   (人魚になりたいクリスティアンのエロイ・コスタ)

 

    

(息子の葬儀に17年ぶりに邂逅する、クラウディアのカルメン・マチとシモン)

 

A: シモンは身体的に普通でない女性が好きなことを恥じている。女主人が紹介するのが目が欠損している当時11歳というラウラにたじろぐが、ラウラに魅せられてしまう。シモンはラウラに2個のダイヤの目をプレゼントする。シモンにはアントニオ・デュランモリス、ラウラには『トガリネズミの巣穴』のマカレナ・ゴメスが扮した。

B: ラウラのメインカラーはピンク、時代は17年後の2017年にワープして本当のドラマが始まる。

A: ラウラに肥満症のイツィアルが絡んでグループ2となる。イツィアル・カストロは、カサノバ監督のお気に入りで短編 Eat My Shit15)にも出演している。

 

 

                   (シモンからダイヤの目をもらったラウラ)

 

 
 (ラウラのダイヤを盗んだイツィアル)

 

B: この短編を取り込んで、サマンサを中心にしたグループ3に発展させた。サマンサのメインカラーはパープルです。

A: サマンサ役のアナ・ポルボロサが長短編どちらにも同じ役で出演している。消化器官が反対、つまり顔に肛門、お尻に口とかなりグロテスクだが、ポルボロサの美しさが勝っています。カサノバ監督とポルボロサは人気TVシリーズ「アイーダ」の子役時代からの親友、彼女のほうが2歳年上です。サマンサは外では人々の哄笑とチンピラの理不尽な暴力に屈している。なおかつ家では父親の見当はずれの過保護に疲れはて、悲しみのなかで生きている。

B: サマンサに倒産寸前の食堂経営者イツィアル、BIID患者のクリスティアンが絡んで、最終的にはエルネストに出会うことになる。

 

(サマンサのアナ・ポルボロサ)

 

           

        外見は手術によって変えられる―悪は自分の中にある

 

A: エルネストは外見が奇形でないと愛を感じられないシモンと同系列の人間。片目がふさがり頬が垂れ下がっているアナを愛している。母親はそんな息子を受け入れられない。エルネストはアナと一緒に暮らそうと家を出るが、賢いアナはエルネストが愛しているのは Solo me quieres por mi físico 外見であって内面ではないと拒絶する。

B: 外見は手術によって変えられる。アナが愛しているのは、顔面頭部全体が大火傷でケロイドになってしまっているギリェだ。これがグループ4で、アナのメインカラーはピンクです。

 

                          

                                                (アナのカンデラ・ペーニャ)

 


 

(監督とエルネスト役のセクン・デ・ラ・ロサ)

 

A: しかしギリェは偶然手に入れたお金をネコババして再生手術を受け、終局的にはアナを裏切る。アナもやっと自立を決意する。エルネストはアナのときはピンク、サマンサに遭遇してからは、パープルに変わる。相手に流される人物という意味か。

 

    

            (ギリェを演じたジョン・コルタジャレナ)

 

B: ギリェが愛していたのは美青年だった頃の自分自身だった。聡明なアナも見抜けなかった。アナ役のオファーをよく受けたと思いませんか。監督もカンデラ・ペーニャのような有名女優が引き受けてくれたことに感激していました。

A: 彼女はインタビューで、「エドゥアルドにはショックを受けた。こんな脚本今までに読んだことなかったし、比較にならない才能です。私の女優人生でも後にも先にもこんな役は来ないと思う」とベタ褒めでした。ラウラとアナの特殊メイクを担当したのがオスカル・デル・モンテ、2時間ぐらいかかるので、ヘアーも同時にしたようです。タイトルが「スキン」だから、常にスキン、スキン、スキンとみんなで唱えていたと、責任者のローラ・ゴメスは語っていた。冒頭に出てくる娼館マダムのヌードの意味もこれで解けます。

 

        本当の家族を求めるバネッサ、娘の幸せより金銭を求める父親

 

B: 低身長のバネッサは軟骨無形成症という病気をもって生まれてきた。今はピンクーという着ぐるみキャラクターとしてテレビに出演、子供たちの人気者になっている。しかし欲に目のくらんだプロダクション・オーナーと父親に酷使され続けている。

A: 体外受精で目下妊娠しているから胎児のためにも番組を下りたい。しかし娘の幸せより金銭を愛する父親は断固反対する。こんな父親は本当の家族とは言えない。このバネッサと父親、札束で頬を叩くようなオーナーが最後のグループ5です。ここにギリェが絡んだことでアナは目が覚める。

B: このグループの社会批判がもっとも分かりやすい。バネッサのメインカラーはピンクです。

 

   

            (ピンクーの着ぐるみを着せられるバネッサ)

 

A: この映画のメタファーは差別と不公正だと思いますが、こういう形で見せられると悪は自分の中にあると考えさせられます。

B: 固定観念にとらわれていますが、普通とは一体何かです。

A: 「常に母親という存在や先天的奇形に取りつかれている」という監督は、登場人物たちは自分の目的を手に入れるために乗り越えねばならない壁として先天的奇形を利用していると言う。肌に触れたい登場人物には目を取りのぞく(ラウラ)、あるいはキスをしたい登場人物には口を取り去ってしまう(サマンサ)ように造形した。

 

B: スクリーンがパステルカラーに支配されているとのはどうしてかという質問には、「なぜ、ピンク色かだって? いけないかい? 僕の家はピンク色なんだよ」と答えている。

A: 建築物がピンク色ではおかしいという固定観念に囚われている。

 

B: 影響を受けた監督としてスウェーデンのロイ・アンダーソンとブランドン・クローネンバーグを挙げていますが。

A: アンダーソン監督の『散歩する惑星』はカンヌ映画祭2000の審査員賞、『さよなら、人類』はベネチア映画祭2014の金獅子賞、本作は東京国際映画祭ではオリジナルの直訳「実存を省みる枝の上の鳩」といタイトルで上映された。シュールなブラック・ユーモアに富み、不思議な登場人物が次々に現れる恐ろしい作品。クローネンバーグはデヴィッド・クローネンバーグの息子、近未来サスペンス『アンチヴァイラル』(12)が公開されている。これまたSFとはいえ恐ろしい作品、今作を見た人は『スキン』のあるシーンに「あれッ」と思うかもしれない。カサノバ監督の第2作が待たれます。

  

サンセバスチャン映画祭2017*オフィシャル・セレクション発表 ①2017年08月15日 17:55

           TVシリーズ La peste がオフィシャル・セレクションに初登場!

 

   

          (第65回サンセバスチャン映画祭2017のポスター)

 

オフィシャル・セレクション(セクション・オフィシアル)は、現在12作品がアナウンスされていますが追加される予定です。しかし目下検討中なのか追加発表はありません。スペイン映画は4作品とアナウンスされているのですが現在のところ3作品です。コンペティション外に2作品、特別上映1作品のトータル6作品です。その他スペイン語映画では、アルゼンチンからディエゴ・レルマン Una especie de familia がエントリーされています。

 

★話題になっているのがコンペティション外とはいえ、金貝賞を競うオフィシャル・セレクションにアルベルト・ロドリゲス TVシリーズ La peste が選ばれていることです。これは本映画祭では初めてのこと、映画祭も変化を余儀なくされているということでしょうか。テレビでは2018年に放映されるようで、IMDbでは第6話までがアナウンスされており、その第1話と第2話が上映される予定。

以下、タイトルと監督名をアップして、個別に作品紹介をしていくつもりです。

 

 オフィシャル・セレクション正式出品

El autor スペイン=メキシコ、監督:マヌエル・マルティン・クエンカ、スペイン語

Handia スペイン、監督:ジョン・ガラーニョアイトル・アレギ、バスク語

Life and Nothing More La vida y nada más)スペイン=米国、

監督:アントニオ・メンデス・エスパルサ、英語

Una especie de familia アルゼンチン=ブラジル=ポルトガル=フランス、

  監督:ディエゴ・レルマン、スペイン語  

 

 コンペティション外

La peste スペイン、監督:アルベルト・ロドリゲス、スペイン語 TVシリーズ(第12話)

Marrowbone El secreto de Marrowbone)スペイン、監督:セルヒオ・G・サンチェス、英語

 

 特別上映

Morir スペイン、監督:フェルナンド・フランコ、スペイン語

 

★ラテンアメリカ諸国の作品を集めた「ホライズンズ・ラティノ」部門は、まだ作品の一部が発表になっているだけです。まだ選考途中の部門が多く、発表になったらアップいたします。

 

    

           (「ホライズンズ・ラティノ」部門のポスター)

  

上映作品の一部がアナウンスされました*ラテンビート2017 ①2017年08月14日 08:23

       パブロ・ラライン、カルラ・シモン、エドゥアルド・カサノバ・・・

 

  

814日現在で7作品が発表されただけですが、そのうち当ブログでピックアップしたパブロ・ララインの Neruda とカルラ・シモンの Verano 1993(カタルーニャ語題Estiu 1993)の2作、ゴヤ賞2017でご紹介したかったエドゥアルド・カサノバの Pieles が含まれていました。

 

パブロ・ララインの「ネルーダ」は、公開が以前から予告されており、この度『ネルーダ 大いなる愛の逃亡者』という邦題で1111日に公開が決定しています(新宿シネマカリテ、恵比寿ガーデン・シネマ)。従って宣伝を兼ねた先行上映になりますね。既にカンヌ映画祭2016の「監督週間」にノミネーションされた折りに、監督紹介、スタッフ、キャスト、プロットなど詳細を記事にしておりますので、ラテンビートでは割愛します。

「ネルーダ」の記事は、コチラ2016516

 

  

カルラ・シモン Verano 1993(西題)オリジナル・タイトルは Estiu 1993、ベルリン映画祭、マラガ映画祭などの折に、ラテンビートを意識してその都度ご紹介してきましたが、今回新しいニュースを補足して再構成いたします。監督自身の少女時代が語られます。こちらは『夏、1993と邦題もすっきり、余計な副題からも救われています。変更しないことを切に願っております。

 Verano 1993 の主な記事は、コチラ⇒2017222

 

  

エドゥアルド・カサノバのデビュー作 Pieles は、ラテンビートでは『スキン』で上映される。しかし本作は既にネットフリックスで『あなたに触らせて』の邦題で放映されているから、新たに字幕を入れ替えて上映するということでしょうか。スクリーン鑑賞が後になるということに時代の変化を感じています。ベルリン映画祭2017パノラマ部門、マラガ映画祭セクション・オフィシアル部門での話題作。理不尽な暴力が痛々しいメロドラマに変化するという、社会批判を込めた辛口コメディ、ダーク・ファンタジー、とにかくスペインにアンファン・テリブルが誕生した。アレックス・デ・ラ・イグレシアカロリナ・バング夫婦が、カサノバの才能に惚れ込んで製作した。本作については改めてアップいたします。

 

   

        (エドゥアルド・カサノバとアレックス・デ・ラ・イグレシア)

 

★カルロス・サウラの Jota de Saura は、いずれ公開されるでしょうし、解説の必要はないでしょう。


「国際批評家週間」アルゼンチン映画*ベネチア映画祭2017ノミネーション2017年08月12日 11:56

            ナタリア・ガラジオラの長編デビュー作 Temporada de caza

 

★最近国際映画祭での活躍が目覚ましいのが若手女性監督のデビュー作です。「国際批評家週間」コンペティション部門に選ばれた Temporada de caza 1982年生れという若いナタリア・ガラジオラの長編デビュー作。ベネチアの「批評家週間」は新人登竜門的な役割らしく、今年の7作品もすべて第1回作品のようです。昨年はコロンビアフアン・セバスチャン・メサのデビュー作Los nadieThe Nobody”)が観客賞を受賞しています。都会でストリート・チルドレンとして暮らす5人兄妹の愛と憎しみが語られる映画でしたが、こ Temporada de caza はアルゼンチン南部パタゴニアの森が舞台です。

 

   

 Temporada de cazaHunting Season2017 アルゼンチン

製作:Rei Cine (アルゼンチン) / Les Films de LEtranger () / Augenschein Filmproduktion () /

      Gamechanger Films () / 協賛INCAA

監督・脚本:ナタリア・ガラジオラ(ガラジョーラ?)

撮影:フェルナンド・ロケット

編集:ゴンサロ・トバル

美術:マリナ・ラッジオ

メイクアップ&ヘアー:ネストル・ブルゴス

助監督:ブルノ・ロベルティ

製作者:ベンハミン・ドメネク、サンティアゴ・ガリェリ、マティアス・ロベダ、

    ゴンサロ・トバル、他共同プロデューサー多数

 

データ:製作国アルゼンチン・米・仏・独・カタール、スペイン語、2017年、ドラマ、100分。撮影期間2015年から翌年にかけてサン・マルティン・デ・ロス・アンデスで撮影された。資金提供、トゥールーズ映画祭ラテンアメリカ映画基金、ドイツのワールド・シネマ基金より3万ユーロ、他ロッテルダムやトリノ・フィルム・ラボのサポートを受けています。第74回ベネチア映画祭「国際批評家週間」正式出品された。アルゼンチン公開914日予定。

 

キャスト:ヘルマン・パラシオス(父親エルネスト)、ラウタロ・ベットニ(息子ナウエル)、ボイ・オルミ、リタ・パウルス、ピラール・ベニテス・ビバルト、他

 

プロット:母親が急死したとき、ナウエルはブエノスアイレスの高校を終了する間際だった。別の家族と暮らす父親には、息子が18歳になるまでの3か月間の養育義務があった。二人は10年間も会っていなかったが一緒に暮らすことになる。父エルネストは、パタゴニアのサン・マルティン・デ・ロス・アンデスの山間の村で腕利きのハンターとして尊敬を集めていた。怒りをため込み心の荒んだナウエルのパタゴニアへの旅が始まる。自然が人間を支配する新しい環境に直面しながら、ナウエルは殺すことと同じように愛することの力を学ぶことになるだろう。

 

         厳しいパタゴニアの風景をバックに対立する父と息子

 

★日本でパタゴニアと言えば氷河ツアーが人気のようだが、人間よりグアナコのような動物のほうが多い。舞台となるサン・マルティン・デ・ロス・アンデスもラニン国立公園がツアーに組み込まれるようになっている。「南米のスイス」と称されるバリローチェが舞台になったのは、ルシア・プエンソの心理サスペンス『ワコルダ』(『見知らぬ医師』DVD)でした。また詳細はアップしませんでしたが、今年のマラガ映画祭2017に正式出品されたマルティン・オダラの Nieve negra もパタゴニアが舞台、リカルド・ダリン扮する主人公は人里離れた山奥の掘立小屋に一人で暮らしている。父親が亡くなり遺産相続のため長らく会うこともなかった弟が妻を伴ってスペインから戻ってくる。この弟にレオナルド・スバラグリアが扮した。相続をめぐって対立する兄弟の暗い過去が直ちに表面化していくサスペンス。Temporada de caza のプロットを読んで真っ先に思い出したのが今作でした。

 

★ラテンアメリカ映画に特徴的なのが、何かを契機にA点からB点に移動して対立が起きる物語です。たいてい Nieve negra  Temporada de caza のように家族の死が多く、「シネ・エスパニョーラ2017」で短期上映されたイスラエル・アドリアン・カエタノの『キリング・ファミリー 殺し合う一家』も音信不通だった母親と弟の死がきっかけでした。二人に掛けられていたという僅かな死亡保険金欲しさにブエノスアイレスから北部のラパチトに移動して殺人事件に巻き込まれるストーリーでした。 

 

★父エルネストを演じたヘルマン・パラシオスは、1963年ブエノスアイレス生れ。ルシア・プエンソの『XXY』(07)に、リカルド・ダリン扮する主人公の友人医師ラミロとして登場していました。TVシリーズでの出演が多い。息子ナウエル役のラウタロ・ベットニは本作が初出演のようです。ピラール・ベニテス・ビバルトは、Yeguas y cotorras に出演している。

 

    

 

 (パタゴニアの風景をバックにした父と子、映画から)

 

★製作者のベンハミン・ドメネク、サンティアゴ・ガリェリ、マティアス・ロベダ、ゴンサロ・トバル、撮影監督のフェルナンド・ロケットは、共に Yeguas y cotorras に参画している。特にゴンサロ・トバルは、Temporada de caza で編集も担当しています。1981年生れの監督、脚本家、製作者、長編デビュー作 Villegas がカンヌ映画祭2012のカメラドールにノミネートされたほか、ブエノスアイレス国際インディペンデント映画祭BAFICIのアルゼンチン映画コラムニスト連合賞ACCA他を受賞している。映画後進国の南米においては、アルゼンチンは飛びぬけて輩出している。  

    

  (左から、ゴンサロ・トバル、監督、サンティアゴ・マルティ、マイアミ映画祭2016にて)  

 

 監督キャリア&フィルモグラフィー

ナタリア・ガラジオラNatalia Garagiola1982年ブエノスアイレス生れ、監督、脚本家。祖先はイタリア系移民だが、一応英語発音でカタカナ表記した(ガラジョーラかもしれない)。映画大学卒業後、2014年にスペインのメネンデス・ペラヨ国際大学(視聴覚研究財団)のシナリオ科の博士課程終了。短編がカンヌ映画祭に出品されていることもあり、若手監督として注目されている。

 

   

2011Rincón de López(短編11分)脚本、BAFICI出品

2012Yeguas y cotorras (短編30分)カンヌ映画祭2012「批評家週間」短編部門出品

2014Nordic Factory (フィンランド、デンマーク製作)監督6人のオムニバス

2014Sundays(短編16分)共同監督、脚本、カンヌ映画祭2014「監督週間」短編部門出品

2017Temporada de caza 省略

Yeguas y cotorras は、YouTube(英語字幕)で鑑賞できます。

 

 

ベネチア映画祭2017*パブロ・エスコバルの伝記映画2017年08月09日 17:02

       今年のコンペティション部門にスペイン語映画はゼロ!

 

 

★サンセバスチャン映画祭のオフィシャル・セレクション15作も発表になりましたが、まず先発のベネチア映画祭の紹介から。と言っても今年のノミネーション21作の中に、スペイン、ポルトガルを含むイベロアメリカからは1作も選ばれませんでした。イタリアの映画祭なのにハリウッドやフランス映画が幅を利かせるようになって偏りが顕著になったベネチア映画祭、しかし国際映画祭ですから文句は言えません。ご紹介の手間が省け、これでサンセバスチャンに集中できると拗ねています。こちらローカルの映画祭には『カニバル』のマヌエル・マルティン・クエンカやバスク語で撮った『フラワーズ』のジョン・ガラーニョが今度は脚本を担当したアイトル・アレギと組んで戻ってきます。やはり言語はバスク語です。

 

★というわけでコンペティション外で上映される「エスコバル」と、第32回「批評家週間」にエントリーされた、ナタリアGaragiolaのデビュー作 Temporada de caza をアップいたします。

 

★折にふれ、ご紹介してきたフェルナンド・レオン・デ・アラノアEscobarが英題 Loving Pablo でワールド・プレミアされることになりました。メデジン・カルテルの麻薬王パブロ・エスコバルのビオピックハビエル・バルデムがエスコバル、その愛人ビルヒニア・バジェッホペネロペ・クルスと、夫婦揃って出演、久々のスペイン語映画である。この伝説的なコロンビアの麻薬王を主人公にした映画やTVシリーズは、虚実ごちゃまぜで多数製作されています。そのせいで実像は分かりにくくなっていますが、本作もバジェッホの回想録の映画化なので、犯罪ドラマと考えたほうがいいかもしれません。どちらにしろ二人とも権力、名声、お金大好き人間、愛でつながったとしても共犯関係にあった悪党同士、監督がフェルナンド・レオンでなければ食指は動きません。バルデムはアメナバルの『海を飛ぶ夢』でもラモン・サンペドロのそっくりさんになりましたが、エスコバルにも上手く化けました。

 

    

 

    (エスコバルとバジェッホに扮した、ハビエル・バルデムとペネロペ・クルス)

 

★“Escobar”は、コロンビアのメデジン・カルテルの麻薬王パブロ・エスコバル194993の伝記映画。エスコバルの1980年代の愛人、ジャーナリスト、ニュースキャスター、モデル、女優、作家、など幾つもの顔をもつ、当時のコロンビアきっての大スター、ビルヒニア・バジェッホ・ガルシア1949の回想録Amando a Pablo, odiando a EscobarLoving Pablo, Hating Escobar 2007年刊)の映画化。1983年、メデジンでエスコバルのインタビューをしたのが馴れ初めの始まり。たちまち恋に落ちたと称しているが、互いに持ちつ持たれつの利害関係にあり、後に麻薬密売人パブロ・エスコバルの逃亡幇助のためコロンビア国家警察の捜索を攪乱した廉で、特捜隊ウーゴ・アギラル大佐らによって告発されている。

 

(回想録)

 

 ★この回想録にはコロンビアの歴代大統領のうち、アルフォンソ・ロペス・ミケルセン(197478)、エルネスト・サンペール(199498)、アルバロ・ウリベ(200210)についての言及があり、映画が触れているかどうか興味があります。ウリベ大統領は、麻薬密売人パブロ・エスコバルとは全く面識がなかったことを繰り返し断言している。しかし回想録では、1983614日、FARCに拉致殺害された父親アルベルト・ウリベの遺体を引き取るために用意されたヘリコプターは、パブロ・エスコバルによって提供されたものだとある。

 

     

            (フェルナンド・レオン・デ・アラノア監督)

 

★パブロの妻ナタリア・ビクトリア・エナオも美人の才媛、夫の悪事を支えたことは、ネットフリックス・オリジナルTVシリーズ『ナルコス』(201517、コロンビア・米国)に詳細に描かれています。フィクションですが、実名で登場する人、仮名でもすぐ同定できる人物などいろいろです。エスコバルにワグナー・モウラ(20話)、妻タタにパウリナ・ガイタン(19話)、父親にアルフレッド・カストロ(1話)、母親にパウリナ・ガルシア(15話)、ビルヒニア・バジェッホVirginia Vallejoはバレリア・ベレスValeria Velezと同じVVで登場し(11話)、ステファニー・シグマンが演じました。他にもカリ・カルテルの密売人にアルベルト・アンマン、ダミアン・アルカサル、パブロの手下にディエゴ・カターニョなど、コロンビアだけでなく、スペイン、ブラジル、メキシコ、チリ、米国などの有名俳優が勢揃いしております。主人公はメデジンで捜査するアメリカ麻薬捜査局のハビエル・ペーニャ(21話、ペドロ・パスカル)と実在の麻薬捜査官スティーブ・マーフィー(20話、ボイド・ホルブルック)です。この犯罪ドラマは一応エスコバルの死をもってメデジン編は終了、次はカリ・カルテルに舞台を移すようです。

 

 

(エスコバル一家、夫婦には一男一女があり、パブロ亡き後はアルゼンチンに亡命した)

 

 

       (エスコバルをインタビューするビルヒニア・バジェッホ)

 

★コンペティション外ですが、多分来年劇場公開になると思います。その折に改めてアップしたいと考えています。次回は、アルゼンチンのナタリア・Garagiolaのデビュー作 Temporada de caza (亜米独仏カタール合作)をご紹介したい。

 

『しあわせな人生の選択』の主役は「トルーマン」*セスク・ゲイの新作2017年08月04日 17:27

          「命は時間」だと実感するエモーショナルな4日間

 

       

★「トルーマン」のタイトルで紹介してきたセスク・ゲイ Truman が『しあわせな人生の選択』という邦題で公開されています。当ブログでは、マイナーなスペイン語映画を公開してくれるだけで感謝、邦題のつけ方に難癖をつけるなどのゼイタクは慎もうと控えておりますが、これはあまりに凡庸すぎて残念です。もっともこれから岩波ホールで公開されるアルゼンチン映画『笑う故郷』ほどではありませんが。下手の考え休むに似たり、こねくり回さずそのまま「トルーマン」とカタカナにしておけばよかったのです。トルーマンはただの犬ではないのですから。「命は時間」だと実感するエモーショナルな4日間が語られる。若干ネタバレしております。ご注意ください。

「トルーマン」の作品紹介、監督フィルモグラフィー、主演キャストの記事は、

 コチラ201619

ゴヤ賞2016、作品賞以下5冠受賞の記事は、コチラ20162月12日

 

   

    (プレゼンター、バルガス=リョサから脚本賞の胸像を受け取る、ゴヤ賞2016ガラ

       

★ストーリーは公式サイトに譲るとして、3人と1匹の主役の他の登場人物を少し補足しておきます。群集劇ではありませんが、主役級の俳優が脇を固めていることが分かります。出演作品はできるだけ邦題の付いた映画から選びましたので代表作というわけではありません。セスク・ゲイの映画なら脇役でも出たいという演技派を揃えられたことも成功のカギだったと思います。

主なキャスト

リカルド・ダリン:舞台俳優フリアン(『瞳の奥の秘密』『XXY』『人生スイッチ』他)

ハビエル・カマラ:カナダの教授トマス(『トーク・トゥ・ハー』『「僕の戦争」を探して』)

ドロレス・フォンシ:フリアンの従妹パウラ(『パウリーナ』『ブエノスアイレスの夜』他)

トロイロ:フリアンの老犬トルーマン、犬種はブルマスティフ

エドゥアルド・フェルナンデス:旧友ルイス(『スモーク・アンド・ミラーズ』『イン・ザ・シティ』)

アレックス・ブレンデミュール:獣医(『イン・ザ・シティ』『ワコルダ』『ペインレス』)

ペドロ・カサブランク:フリアンの主治医(『時間切れの愛』B, la película

ホセ・ルイス・ゴメス:プロデューサー(『抱擁のかけら』『ベラスケスの女官たち』)

ハビエル・グティエレス:葬儀社顧問(『マーシュランド』『オリーブの樹は呼んでいる』)

エルビラ・ミンゲス:フリアン元妻グロリア(『時間切れの愛』『暴走車ランナウェイ・カー』)

オリオル・プラ:フリアン息子ニコ、アムステルバムに留学中(No sé decir adiós

ナタリエ・ポサ:トルーマン里親候補1(『不遇』『ジュリエッタ』No sé decir adiós

アガタ・ロカ:トルーマン里親候補2(『フリアよみがえり少女』Ficció

スシ・サンチェス:トルーマン里親候補3(『悲しみのミルク』『ジュリエッタ』)

シルビア・アバスカル:ルイスの新妻モニカ(『マイ・マザー・ライクス・ウーマン』)

フランセスク・オレーリャ:レストランにいた俳優

アナ・グラシア:レストランにいた女優

キラ・ミロー:舞台女優、フリアンの相手役

 

  

(上段左から、ナタリエ・ポサとアガタ・ロカ、エドゥアルド・フェルナンデス、ハビエル・グ  ティエレス 下段、スシ・サンチェス、エルビラ・ミンゲス、キラ・ミロー)

 

★セスク・ゲイ映画が「劇場公開されるのは初めて」と聞いて驚くファンもいるかと思いますが、長編第2Krámpack『ニコとダニの夏』という邦題でテレビ放映されています。作品紹介のおり、既に監督キャリアもアップいたしましたが、主なフィルモグラフィーを改めてコンパクトに再構成しておきます。

 

セスク・ゲイFrancesc Gay i Puig1967年バルセロナ生れ、監督、脚本家、戯曲家。バルセロナの市立視聴覚学校EMAVで映画を学ぶ。1998年長編映画Hotel Room(アルゼンチンのダニエル・ギメルベルグとの共同)でデビュー。2000年ロマンチック・コメディKrámpack『ニコとダニの夏』で一躍脚光を浴びる。性愛に目覚めかけた男女4人の一夏の物語。ゴヤ賞2001新人監督賞・脚色賞ノミネートされたサンセバスチャン映画祭2000セバスチャン賞、トゥリア賞、カタルーニャ作品賞、バレンシア映画祭初監督作品賞などを受賞。

 

日本で話題になった第3En la ciudad03は、『イン・ザ・シティ』邦題でセルバンテス文化センターで上映された。セスク・ゲイの得意とする群像劇(スペインでは合唱劇)の形式をとったドラマ。無関係だった複数の登場人物が絡みあって進行するが、最後に1本に繋がっていく。それぞれ人格造形がくっきり描き分けられていたが、サンセバスチャン映画祭でもゴヤ賞でも監督賞・脚本賞ノミネーションどまり、監督お気に入りのエドゥアルド・フェルナンデス唯一助演男優賞を受賞しただけに終わった

 

2012年のコメディ群集劇Una pistola en cada manoは、ゴヤ賞2013では、前評判にもかかわらず助演女優賞がノミネートされただけでした。カンデラ・ペーニャが受賞するにはしましたが、映画アカデミー執行部の候補者選考の不透明さや見識が批判されました。「トルーマン」出演のリカルド・ダリン、ハビエル・カマラ、エドゥアルド・フェルナンデスの他、ルイス・トサール、エドゥアルド・ノリエガ、レオナルド・スバラグリア、ジョルディ・モリャ、アルベルト・サン・フアン、この40代になった男8人が人生の岐路に直面して右往左往するコメディ。それぞれに絡んでくる女性陣にペーニャの他、レオノル・ワトリング、カジェタナ・ギジェン・クエルボ、クララ・セグラ、シルビア・アブリルなどがいる。ゴヤ賞では無視されたが、ガウディ賞(カタルーニャ語以外の部門)では、脚本賞、助演男優(フェルナンデス)、助演女優(ペーニャ)ほか4賞を受賞した。撮影中にダリンとカマラを主役にした新作を構想しており、完成したのが「トルーマン」でした。

 

         

        (悩める男8人衆、Una pistola en cada manoポスターから)

 

その他は以下の通り2004Canciones de amor y de droga監督、ミュージカル2006Ficció / Ficción監督・脚本・録音、ドラマ2009V.O.S. 監督・脚本、コメディ。私生活では、女優アガタ・ロカと結婚、一男一女がいる。

 

               「誠実」のメタファーとして登場するトルーマン

 

A: フリアンの愛犬トルーマンが映画の進行役、「誠実」のメタファーとして登場する。邦題はどう付けてもいい決りだが、タイトルはいわば映画の顔だから原題を尊重しなくてはいけない。

B: 監督も「トルーマン」というタイトルに拘っていましたからね。

A: 50代にして不本意にも人生のカウントダウンが始まってしまった男の悲劇が語られるのだが、「トルーマン」にはそういう重さを吹き飛ばす軽やかさがあった。観客には辛辣なユーモアやエレガントな肌触りのセリフから、ほろ苦いコメディを楽しんでもらいたいと思っていたに違いありません。

B: 観客もちゃんと反応して、ときどき笑い声が聞こえてきました。後戻りのできない病いや死がテーマなのにね。

 

    

             (撮影中も一緒に暮らしたリカルド・ダリンとトロイロ)

 

A: フリアンがトマスと再会して真っ先にしたことはトルーマンの獣医を訪ねること。フリアンの一番の気がかりは、自分亡き後の足腰の弱った老犬の処遇です。今まで通りの幸せを得られる新しい安住の家を探さねばならない。犬だって大切な人を失えば、喪失感を覚えるに違いない。

B: まず獣医役のアレックス・ブレンデミュールを登場させる。フリアンの具体的な質問に戸惑いながらも丁寧に接する獣医役。出番はこのシーンだけでした。   

 

   

                (獣医に質問するフリアン、聞き役に徹するトマス)

 

A: 翌日は里親候補第1号の家にトルーマンを連れていく。一人息子が犬を飼いたがっているレズビアン夫婦の家庭です。そして現れるのがナタリエ・ポサアガタ・ロカ、トルーマンに導かれて冒頭部分で登場する人物です。

B: 本作ではさりげなく挿入されますが、まだスペインで養子縁組の権利を含んだ同性婚が認められなかった時代に撮られた『イン・ザ・シティ』の一つのテーマが同性婚問題でした。

200573日発効)

 

A: 自分には二人の息子がいる。一人はアムステルバムに留学中のニコ、もう一人がトルーマンだと、フリアンに言わせている。フリアンとの別れが近いことを一番よく理解していたのがトルーマンだったのではないか。それが最後のシーンで見られるわけですが、伏線が何か所も張られていました。

B: 観客が望んだような里親に引き取られることが暗示されている。トマスと歩かせたり、里親候補のみならずトマスにも、トルーマンの好物やら癖を聞かせたりする。

A: ダメ押しは「別れを言いたくないから、見送りに空港には行かない」です。ああ、トルーマンを連れてやってくるのね(笑)。

 

(ニコ役のオリオル・プラとダリン)

      



 

    

B スクリーンに現れるとつい身を乗り出してしまうのがハビエル・グティエレス、最近『マーシュランド』や『オリーブの樹は呼んでいる』、『クリミナル・プラン~』などが公開されて認知度も高くなってきたようです。

A: 葬儀社のコンサルタントに扮したが、この人もカメレオン俳優です。コミカルな役からアウトロー役まで危なげない。セスク・ゲイ映画は初めてかもしれない。反対にほとんどの監督作品に出演しているのがエドゥアルド・フェルナンデス、本作では友人のフリアンに女房を寝取られたコキュ役でした。

 

       (本人の葬儀とは思わず相談にのるコンサルタント役ハビエル・グティエレス)

 

            動のフリアンVS静のトマスのタイトルマッチ

 

B: フリアンは品行方正な男ではなく、どちらかというと行き当たりばったりに人生を送ってきたから懐具合も良くない。このコキュ事件で友人どころか妻まで失ってしまう。

A: 少し高慢で、気はいいが壊れやすく、皮肉屋ときてる。しかしどうも憎めない。ダリンにぴったりの人格造形です。誰でもやれる役ではない。そして彼の賢い元妻役がエルビラ・ミンゲスです。息子ニコの母親でもある。

 

B: 道路に繋がれていたトルーマンを偶然目にしてフリアンと邂逅する。トルーマンが呼び寄せたわけです。突然会いに行ったアムステルダムでは、本当の理由をとうとう言えなかったフリアンも、母親を通じて息子が既に知っていたことを初めてここで聞かされる。

A: 自分の病状を知らないと思っていた息子が、実は熟知していて父親と最後のハグを交わしたことを観客も理解するシーンです。このエルビラ・ミンゲスは、テレドラ『情熱のシーラ』でシーラの母親になった女優です。出番は3話と少なかったが存在感がありました。

B: ニコ役のオリオル・プラは、繊細な役柄で既に何作か出ていますが、評価はこれからです。

        

A: ダリンの動と反対にカマラの静の演技が光りました。二人の演技合戦が見ものでしたが、監督は早口で喋りまくる役が多いカマラに今回は沈黙を求めた。そしてダリンにアルゼンチン弁でまくしたてる役を振った。過去の出演作品『トーク・トゥ・ハー』や『あなたになら言える秘密のこと』などは、セリフは多くなかったかもしれない。

B: カマラは普段は立て板に水ですね(笑)。本作では目で演技しなければならなかった。トマスは寡黙で控えめ、寛大で寛容で気前もいい。アルゼンチン男の魅力に惹きつけられて、遠いカナダから別れにやってきた。

 

A: 男の友情をめぐる映画だが、再会前の二人の関係はほとんど語られない。どうしてこんなに気前がいいのか、少し現実離れしすぎじゃないかなどと、観客はあれこれ類推しながら観ることになる。

B: わざと語らなかった。笑わせ、泣かせ、ほろ苦いコメディを観ているのかと錯覚させ、すかさず示唆に富むセリフを割り込ませて考えさせる

A: コメディとドラマを行ったり来たりさせながら観客を巻き込んだことが成功のカギです。最後には尊厳死まで踏み込んでしまうからドキッとする。監督が死というテーマの扉を開けた最初の作品かもしれない。

 

           従妹パウラが受け入れられない死と怒り

 

B: フリアン同様、アルゼンチンから移住してきた従妹パウラのドロレス・フォンシ、フリアンの病状を逐一トマスに知らせていた。自分一人では治療を断念したフリアンを支えきれなくなっていた。

A: 過去にトマスと何らかの関係があったのではないかと感じさせる役。夫サンティアゴ・ミトレの『パウリーナ』で自分の信じる道を突き進む意志の強い女性を好演した。役柄的にはそれに近いかもしれないが、ダリンとうまくやれるアルゼンチン女優として選ばれたようです。

B: ダリンとなら誰でもうまくやれますよ。不思議な包容力があるから。最近パートナーと別れたので、フリアン亡き後に故郷に戻ることも考えている。移住先で根を張る難しさが暗示される。

 

(トマスとパウラ)

    

A: 無情にも時間だけは刻々と流れていき、里親も決まらないのにトマスの帰国が迫ってくる。三人は別れの夕べを迎えることになる。その席でフリアンが漏らした尊厳死に単純で怒りっぽいパウラは爆発してしまう。このシーンにも考えさせられました。 

B: 自分ならどんな道を選ぶだろうか。まだスペインでも尊厳死はタブー視されているテーマ。

A: フリアンには容赦なく迫ってくる死を座して待つことは敗北、屈辱に思える。しかし誰もフリアンの痛みを共有できない。その夜、トマスとパウラのベッドシーンが挿入され、やや唐突に感じた人もいたかもしれない。しかし死と生は性に繋がっているから自然だったとも言えます。

 

(別れの夕べの三人)

  

 

           痛みと敗北の共有は誰にも強制できない

 

B: 無条件の友情で結ばれていても、最終的には痛みと敗北は共有できない

A: または共有を強制できないと言い換えてもいい。テーマは大きく括れば、自由へのオマージュということです。他人と共有できない死を、何時、どのようにして受け入れるか。個人的な自由の選択はどこまで許されるのか。やがて誰にも訪れてくる問題です。

 

B: 舞台はカナダで始まり、マドリードからアムステルダムへ、ふたたびマドリードに移動する。スタッフもキャストもバルセロナ出身が多いのに、なぜマドリードにしたのでしょうか。

A: 理由は簡単らしく、二人の主人公がマドリードに家作をもっていたからだと監督。

 

B: リカルド・ダリンとドロレス・フォンシは、ここでは従兄妹になりますが、次回作 La cordilleraThe Summit)では、父親と娘になります。

A: カンヌ映画祭2017「ある視点」部門に正式出品されました。

 

『パウリーナ』の紹介記事は、コチラ2015521 

ミトレ監督の新作 La cordillera の紹介記事は、コチラ2017518 

 

第70回ロカルノ映画祭2017*ノミネーション発表2017年07月30日 17:26

    

         古稀を迎えた小規模ながら世界有数の国際映画祭ロカルノ

 

   

             (82日水曜日、いよいよ開幕されます)

 

70回目で思い出すのは、戦後間もない1946年に始まったカンヌ映画祭です。ロカルノ映画祭もカンヌと同じ年に生まれました。カンヌやベネチア、ベルリンやトロントのような大規模な映画祭ではありませんが、芸術と商業のバランスを上手く取りながら、今では夏本番8月に開催される世界有数の国際映画祭としてレベルAに成長しました。ベネチアやトロント、サンセバスチャンなど秋開催の先陣を切って開催され、特に新人監督に広く門戸を開いています。スイス南部イタリア語圏のロカルノ市という立地条件の良さ、世界最大の野外スクリーン「ピアッツア・グランデ」(7500席)の上映などで人気を集めています。しかしどの映画祭も直面しているのが資金難と若い人の映画に対する考え方の変化です。今年のカンヌでも感じたことですが、未来に向けての新しい戦略が待たれるところです。

 

   

    (1968年よりグランプリ作品には、トロフィー金豹が授与されるようになった)

 

★第1回のオープニング作品は、ロベルト・ロッセリーニの『無防備都市』(Roma, Citta Aperta 1945)だったそうです。既にカンヌ映画祭でワールド・プレミアされていたが、特別賞を受賞しました。グランプリはルネ・クレールの『そして誰もいなくなった』で、ロッセリーニ自身も1948年に戦争三部作の第3作目『ドイツ零年』で受賞しています。彼のネオレアリズモと言われる映画手法は、スペインの若手シネアスト、ガルシア・ベルランガやアントニオ・バルデムにも大きな影響を与えました。日本も1954年に衣笠貞之助の『地獄門』が受賞しています。スペインは非常に遅くアルベルト・セラのHistoria de la meva mort2013、カタルーニャ語)が初めて受賞しました。

アルベルト・セラの金豹賞受賞の記事は、コチラ2013825

 

    

          (金豹賞のトロフィーを手にしたアルベルト・セラ)

 

★さて2017年のコンペティション部門には、ブラジル映画、フリアナ・ロハスマルコ・ドゥトラ As boas maneirasGood Manners 仏合作)と、チリのラウル・ルイスバレリア・サルミエント La telenovela erranteThe Wandering Soap Opera1990)の2作がノミネーションされています。後者の監督ラウル・ルイスは2011年に亡くなっており、サルミエントはルイス監督夫人で編集者だった。1973年のピノチェトの軍事クーデタ以降フランスに亡命しており、ピノチェト失脚後に帰国した。その帰国後の第1作が本作である。199011月にたったの6日間で撮影したままの未完成作品をこの度サルミエントが完成させた。米国やチリなどにばらばらに保管されていたネガを編集したようです。多作家だったラウル・ルイスの第121番目の作品になるはずです。彼はロカルノでは、長編第2作となる1968年の Tres tristes tigres が、翌年金豹賞を受賞している。そんな経緯もあって今回ノミネーションされたのかもしれない。

 

   

  (ラウル・ルイスとバレリア・サルミエント)

 

 (本作撮影中のルイス監督)

      

                         

 

(出演のパトリシア・リバデネイラ、フランシスコ・レイェス、ルイス・アラルコン、映画から)

 

アルモドバルとスペイン市民戦争*プラチナ賞2017授賞式2017年07月28日 10:05

       スペイン内戦の失踪者家族に捧げられたアルモドバルの受賞スピーチ       

      

★プラチナ賞2017監督賞を受賞したペドロ・アルモドバルの受賞スピーチの続きです。監督はトロフィーを「戦争中に失踪した人を今もって探し続けている何千何万という家族へ」捧げたという献辞の真意について簡単に説明したい。スペインは第二次世界大戦には参戦していませんから、戦争と言えばスペイン内戦193639)を指します。ざっと80年前の戦争です。プレス会見でアルモドバルは、「受賞作『ジュリエッタ』は、失踪した娘アンティアが母親に残した痛みについての物語」と語った。18歳になった娘の失踪の理由が理解できず、ずっと苦しみ続ける母親の話です。かつては夫の過去が許せず家を出た自分と娘をダブらせる話。失踪には死の臭いがただよう。「内戦の失踪者とタイプは異なるが、スペインでは失踪者を探し続ける家族は多い。自分の受賞スピーチは政治的な意味合いはなく、あくまでも人間的な要請から発せられたもの」と強調したようです。

 

    

   (受賞スピーチをするアルモドバル、マドリードのカハ・マヒカにて、722日)

 

★「ついこの間も、80年間閉められていた墓を掘り出したら、傷痕が幾つもある遺体が発見されたというニュースに接した」ことをあげ、内戦が終わっていない家族の存在を語った。「失踪者に関するテーマで映画を撮りたいと考えているが、相応しい脚本がまだ完成していない。それで生死が分からないとか、失踪者のいる家族に接触して取材している。スペインではこのテーマはとても重要だと考えている」とも。スペインにとどまらず、隣国ポルトガルは言うに及ばず、アルゼンチン、チリ、ドミニカ共和国、キューバ、パラグアイ、ペルーなど中南米諸国で軍事独裁を経験しなかった国はないのではないでしょうか。コロンビアやメキシコのように麻薬がらみの失踪者が現在も進行中のイベロアメリカ諸国が一堂に会したフェスティバルであってみれば、あながち唐突なスピーチでもなかったかもしれない。

 

       コミュニスト詩人マルコス・アナの回想録の映画化が実現する?

 

★アルモドバルは、詩人マルコス・アナの回想録 Decidme cómo es un árbol. Memoria de la prisión y la vida (バルセロナUmbriel 2007)の映画化権を2008年に取得している。当時スペインのランサローテ島で暮らしていたジョゼ・サラマーゴの序文が付いている。ポルトガルに初のノーベル文学賞をもたらした作家。どうやらこれと関係しているようです。まずマルコス・アナ(サラマンカ1920~マドリード2016)の紹介から。フェルナンド・マカロ・カスティーリョが本名だが、父親からとったペンネームのマルコス・アナで知られている詩人で作家。内戦終結後の1939年に19歳で逮捕された。容疑は内戦初期の1936年に司祭以下3人殺害の罪。本人は無実を主張したが、第一級殺人罪で死刑宣告、その後禁固30年に減刑され政治犯が収容される刑務所に収監されていた。1961年、設立されたばかりのNGOアムネスティ・インターナショナル、ラファエル・アルベルティやパブロ・ネルーダなどの海外の著名人の尽力によって自由の身になった。この獄中23年間を含む回想録が上記の本である。サラマーゴ、アルベルティ、ネルーダの3人は共にコミュニストでした。

   

       

                (回想録とマルコス・アナ) 

   

★アルモドバルは、『抱擁のかけら』完成後に、計画中の映画4本ほどを挙げていた。その中にマルコス・アナの回想録の映画化も入っていた。しかし2年おきに新作を発表しているのに一向に具体化せず、もう中止したのかと思っていました。というのも詩人も鬼籍入りしたことだし、冤罪ではないというフランコ支持者も多くいるなかで、映画化は難しいのではないかと考えていたからです。当時アルモドバルは「1939年に出所してからの詩人を描くことから始めたい」とインタビューに答えていた。詩人がアルモドバルに、「自由の身になってマドリードに放り出されたとき、私は42歳の幼児だった。痛みは肉体的なものより精神的なほうが辛かった。長いあいだ暗くて狭い空間に閉じ込められていたので広場恐怖症になり、灯りが怖く、車に乗ると酔って嘔吐した。同じように若い女性たちの存在にも慣れることができず、子供のようなリアクションをした」と告白していたそうです。

 

   

           (アルモドバルとマルコス・アナ、2014328日)

 

★映画化が決まったわけではありませんが、詩人のプロフィールを簡単に補足すると、父親は貧しい日雇い労働者、4人姉弟の末っ子としてサラマンカで生まれた。家計を助けるため12歳か13歳で店員として働き始めたから、日本でいう義務教育を最後まで受けられなかった。16歳で共産党に入党、19364月に結成された統一社会主義青年JSU193661)というスペインの共産主義青年同盟に加入している。内戦が始まると前線で戦い、内戦終結後の1939年に19歳で逮捕されたのは、上記の通りです。 

      

                     (フェルナンド・マカロ・カスティーリョ青年)

 

      

 (ラファエル・アルベルティとマルコス・アナ)

 

★刑務所内の巡回図書でスペインの古典、ケベド、ロペ・デ・ベガ、カルデロンなどに触れ、1950年代には禁書だったラファエル・アルベルティ(当時亡命)やミゲル・エルナンデス(1942年肺結核で獄死)、ガルシア・ロルカ(1939年射殺)などを、反フランコの地下組織を通じて入手して読んでいた。獄中で書き始めた詩は海外で出版され、スペイン国内より外国での知名度が高かった。それが釈放に繋がったようです。1961年釈放後はパリに脱出、スペインに戻ったのはフランコ死後の1976年である。200912月、社会労働党のサパテロ政府からゴールド・メダルを授与されたが、勿論フランコ支持者からは非難の矢が飛んだ。翌2010年、フランスの法学者ルネ・カサン(1968年ノーベル平和賞)の功績を讃える「ルネ・カサン人権賞」を受賞した。20161124日、合併症のため96歳で死去、谷あり山ありの波瀾万丈な一生でした。

 

  

  (バスク自治政府パチ・ロペス首相からルネ・カサン人権賞を受け取るマルコス・アナ)

 

★映画化がされるなら、元スパイのフランシスコ・パエサのビオピックを描いたアルベルト・ロドリゲスの『スモーク・アンド・ミラーズ』のように面白くなりそうですが、どんな切り口にしろ物議をかもすのは目に見えています。今は取りあえずお蔵入りしたわけでないことを喜びたい。

ガルシア・ロルカの死に関する記事は、コチラ⇒2015年9月11日

 

第4回イベロアメリカ・プラチナ賞2017*結果発表2017年07月25日 18:36

         作品賞は『笑う故郷』、アルモドバルが『ジュリエッタ』で監督賞!

 

★ノミネーション発表(531日)から大分時間が空いて気が抜けてしまっていた授賞式が、去る722日にマドリードのカハ・マヒカで開催されました。作品賞は予想通り、本作はラテンビート上映時の邦題『名誉市民』が『笑う故郷』と笑えないタイトルになって公開されます。監督賞J.A.バヨナアルモドバルか迷いましたが、後者に軍配が上がりました。当夜いちばん光が当たった人がアルモドバルでした。彼の授賞式参加は初めて、つまりガラでの発言は皆無でした。「この受賞を市民戦争中に行方不明になった家族を探し続けている人々に」捧げるとスピーチした。えっ『ジュリエッタ』ってそんな映画でした? これにはかなり説明が必要なので別にアップいたします。というのもフランコ時代に無実の罪で23年間服役していた詩人マルコス・アナ(19202016)の回想録の映画化と関係があるからです(アルモドバルはこの回想録の映画化権を持っている)。いずれアップします。

 

   

★ドラマ部門の女優賞はブラジルのソニア・ブラガ、本作で第3回イベロアメリカ・フェニックス賞でも女優賞を受賞している。なお彼女は第1回プラチナ賞の栄誉賞受賞者でもありました。観客賞部門の女優賞ナタリア・オレイロは、ウルグアイ出身であるが主にアルゼンチンで活躍している。前回ウルグアイで開催された第3回ではサンティアゴ・セグラと総合司会者を務めました。ということで今回はベテラン女優が気を吐きました。男優賞のオスカル・マルティネスについてはもう書きすぎました。

 

作品賞(ドラマ部門)

Aquarius アクエリアス」(ブラジル)監督:クレベール・メンドンサ・フィリオ

『笑う故郷』(アルゼンチン、スペイン)監督:ガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーン

『スモーク・アンド・ミラーズ』(スペイン)監督:アルベルト・ロドリゲス

『ジュリエッタ』(スペイン)監督:ペドロ・アルモドバル

「ネルーダ」(チリ・アルゼンチン・スペイン)監督:パブロ・ラライン

 

  

 (左から、アンドレス・ドゥプラット、ガストン・ドゥプラット、オスカル・マルティネス、

  マリアノ・コーン、受賞者一同)

 

監督賞

フアン・アントニオ・バヨナ『怪物はささやく』(スペイン)

クレベール・メンドンサ・フィリオ「Aquarius」(ブラジル)

ガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーン『名誉市民』(アルゼンチン・スペイン)

パブロ・ラライン「ネルーダ」(チリ・アルゼンチン・スペイン)

ペドロ・アルモドバル『ジュリエッタ』(スペイン)

 

(ペドロ・アルモドバル

             

脚本賞

アルベルト・ロドリゲス&ラファエル・コボス『スモーク・アンド・ミラーズ』(スペイン)

アンドレス・ドゥプラット『笑う故郷』(アルゼンチン、スペイン)

セルソ・ガルシアLa delgada línea amarilla」(メキシコ)

ギジェルモ・カルデロン「ネルーダ」(チリ・アルゼンチン・スペイン

パベル・ヒロウド&アレハンドロ・ブルゲス他「El acompañante

 (キューバ、ベネズエラ、コロンビア)

 

 

女優賞

アンジー・セペダLa semilla del silencio」(コロンビア)

エンマ・スアレス『ジュリエッタ』(スペイン)

フアナ・アコスタAnna」(コロンビア・フランス)ジャックToulemondeビダル監督

ナタリア・オレイロGilda, no me arrepiento de este amor」(アルゼンチン)

          ロレナ・ムニョス監督

◎ソニア・ブラガAquarius」(ブラジル)

 

 (ソニア・ブラガ)

  

男優賞

アルフレッド・カストロ『彼方から』(ベネズエラ、チリ)

ダミアン・カサレスLa delgada línea amarilla」(メキシコ)

エドゥアルド・フェルナンデス『スモーク・アンド・ミラーズ』(スペイン)

ルイス・ニェッコ「ネルーダ」(チリ・アルゼンチン・スペイン)

オスカル・マルティネス『笑う故郷』(アルゼンチン、スペイン)

 

 (オスカル・マルティネス)

 

 

オペラ・プリマ(第1回監督作品、ドラマ部門)

『彼方から』(ベネズエラ、チリ)ロレンソ・ビガス

La delgada línea amarilla」(メキシコ)セルソ・ガルシア

Rara」(アルゼンチン、チリ)ペパ・サン・マルティン

Viejo calavera」(ボリビア)キロ・ルッソ

『物静かな男の復讐』(スペイン)ラウル・アレバロ

 

音楽賞

アルベルト・イグレシアス『ジュリエッタ』

ゴヤ賞の胸像を10個、オスカー賞ノミネーション3回、今回プラチナ賞をゲットして、トロフィーのコレクター。アルモドバル作品を一手に引き受けている。

 

美術賞

エウヘニオ・カバジェロ『怪物はささやく』

 

撮影賞

オスカル・ファウラ『怪物はささやく』

 

編集賞

Bernat Vinapiana / Jaune Marti『怪物はささやく』

 

録音賞

Peter Glossop / Marc Orts / オリオル・タラゴ『怪物はささやく』

『怪物はささやく』は言語が英語のため、作品賞から外されました。興行的にはナンバーワンの功労者でしたが残念でした。バヨナ自身は監督賞を逃しましたが、技術部門4個を制しました。 

 

 (フアン・アントニオ・バヨナ)

 

  

ミニシリーズ&テレビシリーズ賞

Cuatro estaciones en La Habana(西、キューバ)監督:フェリックス・ビスカレット

キューバの推理作家レオナルド・パドゥラのマリオ・コンデ警部補が活躍する「四季シリーズ」がベースになっている。

 

ドキュメンタリー賞

2016, Nacido en Siria(スペイン)監督:エルナン・シン

現在ヨーロッパで起きている、各政府が目を背けている証言で綴られている。よりよい生活を求めて旅を続けるシリアの子供たち20人と14か月間、監督は行を共にして作ったドキュメンタリー。

 

アニメーション賞

Psiconautas, los niños olvidados (スペイン)監督:アルベルト・バスケス&ペドロ・リベロ

 

意義のある教育賞

Esteban(キューバ、スペイン)

 

 

作品賞(観客賞部門)

『笑う故郷』(アルゼンチン、スペイン)

 

女優賞(観客賞部門)

◎ナタリア・オレイロ Gilda, no me arrepiento de esta amor

 

 (ナタリア・オレイロ)

     

  

男優賞(観客賞部門)

オスカル・マルティネス『笑う故郷』

 

ポスター賞(観客賞部門)

『ジュリエッタ』アルモドバル

 

プラチナ栄誉賞

エドワード・ジェームズ・オルモス

EGEDA会長エンリケ・セレソがプレゼンターでした。1947年ロサンゼルス生れのメキシコ系アメリカ人俳優。スペインUSA合作『ロルカ、暗殺の丘』(1997、監督マルコス・スリナガ)、代表作は『ブレードランナー』、TVドラマ『特捜刑事マイアミ・バイス』(198489)のマーティン・キャステロ主任警部役がもっとも有名でしょうか。本作で1985年にゴールデングローブ賞、エミー賞を受賞している。531日にロスで開催されたノミネーション発表会のプレゼンターを務めていた。   

 

★記者会見では「時差ボケで睡眠がとれずくたくたです。・・・国ではラテン芸術の理解に奮闘しています。彼らは私たちラテン系に恐怖をもっているのです」と、今や国民の20パーセントを占めるに至ったヒスパニック系アメリカ人に対する差別が増加していると語っていた。トランプが演出する反オバマ政策を支持する一部の人々が存在していること、そういう米国人はアフロ系大統領には我慢できなかった。「しかし私はオプティミストです」と希望も語っていた。

 

★第5回イベロアメリカ・プラチナ賞2018はラテンアメリカに戻って、メキシコのリビエラ・マヤで、4月開催がアナウンスされました。有名なリゾート地カンクンより南へ車で90分ほどにある、外国人セレブに人気のあるリゾート地です。

4回イベロアメリカ・プラチナ賞ノミネーション発表の記事は、コチラ201765

 

バルガス=リョサvsガルシア・マルケス*40年間の沈黙を破る2017年07月20日 14:14

            ガルシア・マルケスとの親密な友情関係の始まり、1967

 

★毎年恒例となっているマドリード・コンプルテンセ大学の夏期講座が、サン・ロレンソ・デ・エル・エスコリア市で始まった。世界各地から受講者を集めるスペインでも有数の夏期講座です。ペルーのノーベル賞作家マリオ・バルガス=リョサ(1936)は本講座のプログラム編成をしています。この度コロンビアのエッセイスト、カルロス・グラネスをインタビューアーに迎えて、作家本人が対談形式でガルシア・マルケス(1927-2014)についての講義を行いました。しかしこの授業の目玉の一つは、1967年に始まったガルシア・マルケスとの幸せだった10年間が、1976年いかにして決裂するに至ったかだったにもかかわらず、新たなデータを掘り起こすまでにはいかなかったいんしょうです。結局、謎は謎のまま、コロンビアの作家同様、ペルーの作家も秘密を墓場まで持って行くつもりのようです。

 

 

 (バルガス=リョサとカルロス・グラネス、サン・ロレンソ・デ・エル・エスコリア、75日)

 

★後にノーベル賞作家となる二人にとって、1967はカラカスの飛行場で初めて顔を合わせ、それに続く幸せの友情が始まった年でした。またガルシア・マルケスにとっては友人から可能な限りの借金をし、家財道具まで売り払って家族に極貧を強いて完成させた『百年の孤独』が、530日に刊行された年でもありました。どうしてカラカスだったのかと言えば、ペルーの作家の『緑の家』が第1ロムロ・ガジェゴス賞を受賞し、コロンビアの作家がそのプレゼンターだったからです。ベネズエラの小説家で政治家でもあったガジェゴスを記念してベネズエラ政府によって創設された文学賞(スペイン語で書かれた作品を5年ごと1作選ぶ)。1972年、第2回目の受賞作品はマコンドの作家の『百年の孤独』でした。

 

 

 

★バルガス=リョサVLによると、ガルシア・マルケスGMの『大佐に手紙は来ない』(1961年、コロンビア刊)が自分のところにやってきたのは前年の1966年だったという。当時フランス・ラジオ・テレビジョンでラテンアメリカの新刊紹介のような番組を担当していた。本作の翻訳書がパリに現れたのが1966年だったというわけです。厳正なリアリズムと老大佐の明快な描写がとても気に入った。そしてガルシア・マルケスという作者に是非とも会いたいと思うようになった。それから二人の間で熱心な手紙のやり取りが始まり、実際に会う前に既に二人は友人関係を築いており、カラカスを去るころには大の親友になっていたという。

 

★対談にありがちなことだが、会話はあっち飛びこっち飛びしたようだが、例えばカミュ、サルトル、トルストイ、ドストエフスキー、フォークナーやヴァージニア・ウルフの影響など、すでに多くのことは書かれていることですが、VLによると、ウルフの影響が大きいことをよく口にしていたという。カミュは別としてサルトルのようなフランス実存主義の作品は読んでいなくて、どちらかというと英国系の文学をより好んで読んでいたという。これもまた周知のことでしょうか。ごく個人的な二人の共通点、それは母方の祖父母に育てられ、それぞれ両親とは確執があり対立関係にあったこと、二人が若かった時代には、今日のラテンアメリカとは違って文化的連帯が存在しなかったこと、ボゴタやリマでは不可能な何かを求めてヨーロッパに向かったこと、これまた周知のことであり、受講生の多くが期待したテーマは、どうしてこの親密な友情関係が壊れたかということだったに違いありません。

 

       ガルシア・マルケスとの決裂――キューバと「パディーリャ事件」

 

1971のキューバ、ラテンアメリカの<ブーム>の作家たちを政治的に分断した「パディーリャ事件」が起こった。320日、詩人エベルト・パディーリャは妻で詩人のベルキス・クサ=マレと一緒に逮捕された。理由は一言でいえば革命に害悪をもたらす反革命的な作家ということです。妻は2日後に釈放されたが、エベルトは38日間拘留され、427日にキューバ作家芸術家連盟UNEACのホールに集められたメンバーを前に「自己批判文」を読まされるという拷問の末、解放された。この吐き気を催す自己批判文には、反革命的な態度をとる彼の友人作家たちの華麗なリストが含まれていた。すなわち妻ベルキス・クサ=マレ、レサマ=リマ、ビルヒリオ・ピニェラ、セサル・ロペス、ディアス=マルティネス、ノルベルト・フエンテス・・・レサマ=リマのように欠席した人は難を逃れることができたが、名指しされた人々は恐怖にひきつって各自マイクの前で釈明しなければならなかった。冷戦時代のハリウッドを吹き荒れた「赤狩り」を想起させ、パディーリャにエリア・カザンが重なった。

 

(エベルト・パディーリャ)

 

★パディーリャの逮捕の報は、革命を支持していた当時の知識人たちに激震が走った。パリに住んでいたフリオ・コルタサルが自宅にフアン・ゴイティソロを呼んで、後に「フィデル・カストロへの最初の書簡」となる抗議文を作成した。賛同して署名した数は54名に達し、その中にはジャン・ポール・サルトル、シモーヌ・ド・ボーヴォワール、マルグリット・デュラス、カルロス・フエンテス、オクダビオ・パス、フアン・ルルフォ、スーザン・ソンタグ、アルベルト・モラヴィア、勿論バルガス=リョサやコロンビアのジャーナリストで親友プリニオ・アプレヨ=メンドサも署名した。ただはっきりしないのがガルシア・マルケスであった。彼はパディーリャ逮捕を知ると、当時住んでいたバルセロナを急いで離れ、連絡の取れないカリブのどこかへ雲隠れしてしまった。そこで同じバルセロナにいたアプレヨ=メンドサが自分が責任を取ると言って友人の名前を書き加えたのである。当然マコンドの作家は署名しなかったと言い張り、コロンビアのジャーナリストは作家を庇い、他のものは署名したがフィデルの反応を見て撤回した、と真相は闇に紛れてしまった。当のプリニオにとってさえ謎なのである。

 

    

 (ガルシア・マルケス、バルガス=リョサ、フリオ・コルタサル、事件が起きる前の1971年)

 

★以上が大体のいきさつであるが、VLの証言はこの内容と若干ずれるようだ。「パディーリャがCIA のスパイだと告発され逮捕されたとき、バルセロナの私の家にフアンとルイス・ゴイティソロ兄弟、ハンス・マグヌス・エンツェンスベルガーなどが集まり、抗議の書簡を練った。この書簡には多くの知識人が署名した。プリニオがガルシア・マルケスの名前も入れるべきだと言ったが、私たちは本人に相談してからだとコメントした。当時彼の所在は全く不明で確認を取ることができなかったのだ。しかしプリニオが署名すると決断した。これが私が知ってることです。ガルシア・マルケスは激しくプリニオに抗議した。自己批判文の後、パディーリャが解放された後の54日に書かれた抗議文「第二の公開書簡」には、ガルシア・マルケスは署名しなかった」と語った。

 

★多分、バルセロナ在住のバルガス=リョサたちが作成した草案をフアン・ゴイティソロがパリのコルタサルのところに運び込み完成させたということかもしれない。他にもう一人署名しなかったのが、キューバ革命の熱心な擁護者だった当のコルタサルである。世界を歩き回る作家として有名な彼は、1981年にキューバ、ニカラグア、プエルトリコ歴訪計画を中止したが、死の前年の1983年に知識人常任委員会Comité Permanente de Intelectualesの会議出席のためハバナを訪れている。

 

★ペルーの作家によると、「この事件を境に私たちの間に壁ができた。当時私は革命を熱烈に支持していたが、彼はそれほどではなく、それに関しては常に慎重だった。友人のプリニオ・アプレヨと一緒にプレンサ・ラティノで働いていたとき、既に共産党によって排除されていたからだ。「慎重だったのにフィデル・カストロとのツーショット写真に納まるようになったのは、彼に何が起こったのでしょうか?」との質問には、「分からない。彼の生き方は実に現実的で、反キューバより親キューバのほうが自分に有利だと判断したからだと思う」と。もはや立ち位置をキューバ革命賛美に変えた彼を党が再び粛正する心配はなく、ガルシア・マルケスは最期を迎えるまでフィデルとの親密な関係を保ちつづけた。(下の写真は権力で結びついた、コミュニストでなくフィデリストだった二人) 

 (1982年)

   

 

    

★「パディーリャ事件のあと彼とは音信不通だったから、彼に何が起こったかは正確には知らない。プリニオの意見では、彼はキューバが悪い方向に進んでいることは分かっていたが、将来的にはラテンアメリカは団結するという考えをもっていた」という。「ガルシア・マルケスは権力をもつ人間に非常に魅了されており、それは文学に止まらず人生にも不可欠なものだった。いい意味でも悪い意味でも同じく、権力があらゆることを可能にしてくれると考えていた。魅力的で活力のある権力者、例えばメキシコの麻薬王エル・チャポ(ホアキン・グスマン)やパブロ・エスコバルのような人物を主人公に創作したいと考えていた。またフィデル・カストロやトリホス(パナマの最高司令官オマル・トリホス、軍事政権を率いた)のような政治家の完全な虜だった」と、『ヤギの祝宴』の作家は断言した。そう言えばコルタサルも1979年、にオマル・トリホスに会いに当時の妻キャロル・ダンロップとパナマを訪れている。

 

★フアン・ルルフォやアレホ・カルペンティエル、マルケス自身のような作家たちは、「醜悪さ」の美やラテンアメリカの「後進性」を引き出す術に長けていた。「ラテンアメリカ出身の作家たちが想像力豊かな文学を生み出したのは幸運だったということですか」と尋ねられると、「分からないけど、私たちの大陸は優れた文学を生み出すのにいいところだよ。いやいや、そうじゃない。どこの国もそこに相応しい文学があるよ」と訂正した。

 

★バルガス=リョサのガルシア・マルケス殴打事件は1976212日、メキシコ国立芸術院(ベジャス・アルテス宮殿)で起きた。先述したようにその理由は語られることはなかった。いろいろ噂が飛び交っているが、多分それが事実に近いのではないか。互いに不名誉なことだから沈黙は金なのだ。完全に決裂した後でも、今でも『百年の孤独』以下の文学的価値は変わらないとも語った。

  

    

            (左目に大きな痣ができてしまったガボ、1976年)

 

「彼の訃報を知ってどう受け止めましたか」の質問には、「寂しかった。コルタサルやカルロス・フエンテスのときと同じように、一つの時代が終わったと感じた。彼らは大作家というだけでなく親友だったからね。ラテンアメリカ文学の存在を世界に知らしめた世代です。直ぐにこの世代の最後の一人が自分だと思って、少し悲しかった」と。

 

  

 (新婚ホヤホヤのバルガス=リョサと新夫人イサベル・プレイスラー、2016年ゴヤ賞ガラで)


プリニオ・アプレヨ・メンドサの紹介記事は、コチラ⇒2016年3月27日