『エルヴィス、我が心の歌』 *アルマンド・ボー ②2016年06月26日 12:56

           根っこのない人間、インパーソネーターの危機

 

A: 誰でもある程度は他人を真似て生きているわけですが、主人公カルロスのようにピッタリ重なってしまうと救済できない。恐ろしい社会派ドラマです。自分で拵えた壁だから壊すこともできたのだが、愛が壊れると残るのは喪失感だけです。孤独には幻滅も付いてくるから、現実は地獄と化す。

B: アイデンティティーの喪失とか自己否定とかではすまない。「そっくりさん」をやっているうちに誇大妄想に陥り、コチラとアチラの境界が消滅してしまう。

 

A: かろじてコチラに踏みとどまっていられたのは、妻や娘への愛だった。最初カルロスは、エルヴィスとして自分を完結させるか家族を選ぶか、二つの間で揺れていた。しかし家族が壊れてしまえばコチラに未練はない。プレスリーは妻プリシラが娘のリサ・マリーを連れて新しい男に走ってから急激に崩れていった。

B: 監督はモデルの人生に、そっくりさんの人生を重ねていく。

A: モデルは妻が新しい男に走ったことで苦しむが、そっくりさんの方は、妄想にとり憑かれ現実を受け入れない夫に同情しながらも一緒に暮らすことができなくなった妻の方が苦しむ。ここが二人の大きな違いです。

 

B: 自分に根っこがないと境界は無きが如しだから、行き来している自覚もやがて消えてしまうことになる。

A: 自分も含めて周りはそういう人が溢れている。アルマンド・ボー監督もこの映画は「狂気のメタファー」だと語っています。

 

B: インパーソネーターはただの「そっくりさん」ではなく、モデルの内面に深く入り込み、完全一体化していかなければならない。カルロスはそれを実践した。

A: スペイン語映画ファンなら、『トニー・マネロ』08)を思い出す観客が多かったはず、主役を演じたアルフレッド・カストロの狂気にショックをうけた。パブロ・ララインの「ピノチェト政権三部作」の第一部を飾った作品、監督、俳優とも二人をおいて現代チリ映画は語れない。

B: 大抵の方はハーモニー・コリンの『ミスター・ロンリー』07)でしょうか。パリに住むアメリカ青年役にディエゴ・ルナが扮し、マイケル・ジャクソンのそっくりさんを演じた。マリリン・モンロー、マドンナ、ジュームス・ディーンなどのそっくりさんも登場する。結末は本作とは異なりますが。 

  

               (『トニー・マネロ』のポスター)

 

A: マイケル・ジャクソンのインパーソネーターNo.1NAVIは、マイケル自身のお墨付きをもらっていた。本人没後はツアーを組んで大忙しだとか。しかしエルヴィスにしろマイケルにしろ、若くして亡くなっているから、モデルの享年が近づくにつれインパーソネーターに危機がやってくる。

B: まさにカルロスがそうでした。カルロスにとって42歳の誕生日は、41歳とはまるで違う。

 

        ちりばめられた伏線の貼り方、メタファーとしての選曲

 

A: 昼は「お前の代わりなんか直ぐ見つかる」と馘首をちらつかせ、カルロスの誇りをズタズタにする現場主任のもとで働いている。ここは自分の居場所ではない。夜はエルヴィスのトリビュート・アーティストとして取替不可能な存在、大きな野心が生れてくる。

B: ここでは自分を〈エルヴィス〉と呼ばせ、音響設備が悪いとぶちギレしてステージを下りてしまう。「俺は神様から素晴らしい声を授けられたエルヴィス」なのだから。

A: このとき歌っていたのが最後のシーンに流れる「アメリカの祈り」、だからゆめ疎かにできないのです。それが最後に分かる。しかし出演料は安く、おまけに滞りがち、これでは間に合わない。映画の早い段階で帰宅途中に飛行場の側を通るシーンが映りますが、これもいずれメンフィスにあるエルヴィスの聖地に飛ぶ伏線でしょう。

 

    

             (「ザ・キング」エルヴィス・プレスリー)

 

B: 老母が入所しているケアハウスでギターを手に弾き語る「オールウェイズ・オン・マイ・マインド」は、喪失感を象徴する曲、母に最後の別れを告げる伏線になっている。

A: シンガーの田中タケル氏が「カタログ」に寄せた紹介文によると、カルロスが決行前夜クラブでピアノの弾き語りをしながら熱唱する「アンチェインド・メロディ」は、死別を象徴する曲、カルロスが着ていた衣装もエルヴィスにとっては死装束だそうです。

B: エルヴィス・ファンには、選曲のすべてがメタファー、伏線だと分かる仕掛けになっている。勿論、そんな知識がなくてもジョン・マキナニーの歌に酔うことができます。

 

         奇跡は結構起きる、ジョン・マキナニーとの出会い

 

A: 工場の制服を焼却し、スケート場で親子三人の最後の時を過ごす。準備万端整ったところで、妻が交通事故で意識不明の重体となる。ここから実は本当のドラマが始まると思う。

B: これ以前は予想通りの筋書き、しかし疎遠だった娘との距離が次第に縮まるにつれ、もしかして娘の愛の力で正気に戻るのか。不安で眠れない娘に子守唄代わりにカルロスが歌った「ハワイアン・ウェディング・ソング」は心に沁みた。

 

  

           (妻アレハンドラ、娘リサ・マリー、カルロス)

  

A: プレスリーが主演した『ブルー・ハワイ』で歌われた曲、娘との距離の縮め方は自然でとてもよかった。奇跡的にアレハンドラの意識が戻り、二人で面会にいくシーンでは、監督は二人に手を繋がせていた。奇跡はめったに起こらないと言いますが、結構起きるのです(笑)。

 

B: プレスリーの音源は一切使用されていない、すべてジョン・マキナニーが歌っている。

A: ボー監督がトリビュート・バンド「エルビス・ビベ」のジョン・マキナニーに接触したのは、当時構想していた主役の演技指導を打診するためだった。ところが会った瞬間、主役が目の前に立っていた、というわけです。奇跡は起こるのですね。

B: しかし、この逸話は眉唾だね。マキナニーはエルヴィスのトリビュートとして有名だったから、最初から彼に白羽の矢を立てていたにちがいない。声や体型は言わずもがな、マイクを握る太い指、歌唱中に吹きでる汗までそっくりだった。

 

    

     (トリビュート・バンド「エルビス・ビベ」で歌うジョン・マキナニー)

 

A: どちらにしろ彼の人生は変わってしまった。テレビのトーク番組のゲストに呼ばれたり、ガストン・ポルタルが監督したTVミニシリーズ“Babylon”(12)に1話だけですが出演した。

B: エルヴィスとはまったく関係ない刑事ドラマでした。

 

              親の「七光り」もラクではない

 

A: 前回アルマンド・ボーのキャリアについては簡単にご紹介しましたが、祖父と姓名が同じのため二人はごちゃまぜに紹介されています。父親のビクトルがミドルネームを付けなかったせい、アルゼンチンでは「nieto孫」を付けて区別しています。ミューズだったイサベル・サルリが出演している作品は祖父の監督作品です

 

B: ボー監督は現在6歳になる長男にも同じアルマンドを付けた。日本では戸籍法があるからこういう自体はあり得ない(笑)。

A: 有名人の「○○の子供」「××の孫」は七光りの反面重荷になることもある。彼は勉強嫌いだったらしく、特に数学がダメだった。16歳から広告業界で働き始めたのもそれがあるね。ニューヨーク・フィルム・アカデミーも父親に行かされたと語っている。たったの4ヶ月在籍しただけ、縛られるのが嫌いなのでしょう。

B: 本作を共同執筆したニコラス・ヒアコボーネはエルサルバドル大学で学んでいる。アルマンド・ボーの長女の子供、というわけで従兄弟同士です。

 

A: 前回も書きましたが、現在はロスアンゼルスの閑静なベニス地区に転居している。理由はコマーシャルの仕事にはアメリカのほうがいいから。それもあるでしょうが、何につけ祖父や父親と比較されるのが重荷になっているのかもしれない。

B: 脚本を共同執筆した『バードマン』がアカデミー賞を受賞したことも大きい。ガラではジョージ・クルーニーと一緒にコーヒーを飲み、ミック・ジャガーと歓談し、ベッカムが「見たなかではバードマンが一番面白かったよ」と言うために近寄ってきたとか。

A: 「受賞したから言うわけじゃないが、息子を誇りに思う」父親も我が子の晴れ舞台にアルゼンチンから駆けつけた。「私の父も私も成し遂げなかった快挙」と興奮気味のビクトル、妻ルチアナともどもボー一家は興奮の渦に巻き込まれた。たかが映画ですが、これがオスカーなのです。

 

B 他にも祖父のミューズだったイサベル・サルリの逆鱗が理由の一つだったのでは?

A: 「私のことを祖父のアマンテだったと言ったけど、私は彼の祖父のアモールだったのよ。彼の祖父が死んだとき、孫は赤ん坊だった。私についてよくも知らず、あんな発言をするのは恩知らずの碌でなしがすること。ボー一族について話すのは気分が良くない。私にはボーという姓はアルマンドの死とともに終わったの。まったく○×△☆・・・」

B: もう女優は引退していると思うが意気軒昂、やはりボー一族とは確執があったようですね。

A: 孫も悪気があって言ったわけではないが、口は禍いの門、狭い世界です。

 

         映画だけでは食べていけない―今後の活躍

 

B: 一生制作するとは思わないが、コマーシャルを制作するのは映画だけでは食べていけないから。映画は34年かかる。両方やってみて分かったことだが、映画とコマーシャルを同時に進行させるのは無理だと語っている。

A: 広告と映画はとても異なった世界、素晴らしい広告を制作できたからといって素晴らしい映画が作れるわけではない。すべての映画監督に当てはまるわけではないけど、その逆も同じ、とインタビューに答えている。

 

B: 家では映画があふれていたけど、若い時は映画を見なかった。見ていたのはサッカーだったとか。アルゼンチンの普通の若者像です。

A: 無意識のうちに祖父や父の重圧に反発していたのかも。好きだった映画は196070年代のハリウッドやヨーロッパ映画、コッポラの『ゴッド・ファーザー』、キューブリックの『2001年宇宙の旅』や『時計じかけのオレンジ』、キューブリックは今でも無敵を誇る存在とか。

B: 『2001年宇宙の旅』に使用されたリヒャルト・シュトラウスの交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」が本作にも登場していた。

 

A: より若い監督作品では、ポール・トーマス・アンダーソンの群像劇『マグノリア』、スパイク・ジョーンズ『マルコヴィッチの穴』、スティーブン・ソダーバーグ『セックスと嘘とビデオテープ』を挙げている。ベン・スティーラーが自作自演した『ズーランダー』も大好きだそうです。

B: 自国の映画はお呼びでないようです。

 

A: 新作Lifeline16)は30分の中短編、来年には『バードマン』のスタッフが再びチームを組んで10話構成のTVミニ・シリーズThe One Percent(“1%”)が始まる。エド・ハリスやエド・ヘルムズ、ヒラリー・スワンクなどが出演する。ボー監督は脚本と製作の一翼を担うことになる。

  

『女体蟻地獄』(1958El trueno entre las hojas”、1962公開)、脚本をアウグスト・ロア・バストスが執筆したもので高評価だった。またミス・ユニヴァースのアルゼンチン代表、セックス・シンボルだったイサベル・サルリ(1935~)のデビュー作でもある。『裸の誘惑』(1966Naked Temtation”、1967公開)はイギリス映画、『獣欲魔地獄責め』(1973Furia infernal”、1974公開)には、息子ビクトルが初めて出演した。祖父の映画はセックスを売り物にしたploitation映画と言われ、邦題もそれに準じて付けられておりますが、かなり表層的な見方と思います。最後の作品となる“Una viuda descocada”(仮題「厚かましい未亡人」80)は、エロティック・コメディながら裏に皮肉な社会批判が込められている。豊かな胸を武器に次々にエロおやじを餌食にして墓石のコレクターになる未亡人にサルリが扮した。当時のアルゼンチンは「恐怖の文化」が支配した軍事独裁政権時代、こういう映画を見ると複雑です。翌年脳腫瘍のため67歳で没したとき、孫アルマンドは未だ2歳でした。

 

『エルヴィス、我が心の歌』*模倣の人生を生きる ①2016年06月22日 18:29

       エルヴィスのトリビュート・アーティスト、カルロスの生き方

 

      

2012年と大分前のアルゼンチン映画『エルヴィス、我が心の歌』が劇場公開された。これも偏にアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの『バードマン』2015年アカデミー作品賞を受賞したお陰です。アルマンド・ボー監督が脚本の共同執筆者の一人だったからです。『エルヴィス、我が心の歌』がサンセバスチャン映画祭「ホライズンズ・ラティノ」部門のグランプリ、トゥールーズ映画祭「シネラティノ」部門の批評家賞、UNASUR映画祭の脚本賞などなどを受賞しただけでは公開されなかったでしょう。それと同胞ダミアン・ジフロンの『人生スイッチ』が後押ししてくれたかもしれない。

 

     『エルヴィス、我が心の歌』(原題“El ultimo Elvis”、英題“The Last Elvis”)2012

製作:Anonymous Content / K&S Films / Rebolucion / Kramer & Sigman Films

      協力:INCAA / Telefe

監督・脚本・編集・製作者:アルマンド・ボー

脚本():ニコラス・ヒアコボーネGiacobone

美術:ダニエル・Gimeleberg

音楽:セバスティアン・エスコフェ

撮影:ハビエル・フリア

録音:マルティン・ポルタ

編集():パトリシオ・ペナ

衣装デザイン:ルチアナ・マルティ

メイクアップ:アルベルト・モッチャMoccia

特殊効果:クラウディオ・ラングサム

製作者:ビクトル・ボー

 

データ:製作国アルゼンチン=米国、スペイン語・英語、201291分、撮影地ブエノスアイレス、公開アルゼンチン2012426日、フランスとスペイン20131月、他ブラジル、オランダ、ポルトガルなど。

映画祭・受賞歴:サンセバスチャン映画祭2012ホライズンズ賞、2012年アルゼンチン・アカデミー賞6部門(作品賞・新人監督賞は逃す)、UNASUR(南米諸国連合)映画祭2012美術・衣装・脚本の3賞、トゥールーズ映画祭シネラティノ批評家賞、チューリッヒ映画祭監督賞、イースト・エンド映画祭作品賞、2013年コンドル賞(アルゼンチン批評家賞)などを受賞。2012年のサンダンス、ビアリッツ「ラテンアメリカシネマ」などの映画祭で上映された。

 

キャスト:ジョン・マキナニー(エルヴィス/カルロス・グティエレス)、グリセルダ・シチリアニ(プリシラ/妻アレハンドラ・オレンブルグ)、マルガリータ・ロペス(娘リサ・マリー・グティエレス)、コリナ・ロメロ(秘書)、ロシオ・ロドリゲス・プレセド(ニナ)、他

 

   

プロット:エルヴィス・プレスリーの幻影を生きたカルロス・グティエレスの人生が語られる。カルロスはブエノスアイレスの貧しい労働者地区の工場で働きながら、夜は〈エルヴィス〉のトリビュート・アーティストとしてステージに立っている。妻アレハンドラをプリシラと呼び、一人娘にはリサ・マリーと名付けた。自分は神から素晴らしい声を授かった特別な人間、エルヴィスの化身なのだ。だからエルヴィスと同じ体型を維持するため彼の好物ピーナッツバター・バナナサンドを毎日食べているのではないか。妻は妄想にとり憑かれた夫の言動に耐えられず、娘を連れて遠の昔に家を出てしまっていた。しかし彼の心を占めているのは、自分が間もなくエルヴィスの旅立った年齢に近づいていること、カルロスに〈その後〉はないのだった。仕事を辞めてグレースランドへの準備を始めた矢先、思わぬ事故が起きて娘を引き取ることになったカルロス、計画は頓挫してしまうのだろうか。自己否定がゆえに他人の人生を選んでしまった男の物語。

 

    

         (ジョン・マキナニー、グリセルダ・シチリアニ、監督)

 

監督紹介アルマンド・ボーArmando Bo/Bó (nieto)1978年ブエノスアイレス生れ、脚本家、監督、製作者、編集者。父親ビクトル・ボーは俳優、製作者、本作の製作者の一人。祖父アルマンド・ボー(191481、脳腫瘍のため死去、享年67歳)は伝説的なシネアスト、俳優、脚本家、監督、作曲家。アルゼンチンで〈アルマンド・ボー〉といえば、1939年にデビューした美男俳優、50年代半ばから監督もした祖父のことを指した。それで「アルマンド・ボーの孫」、またはJr.ジュニアを付けたり、愛称のアルマンディートと呼ばれている。いわゆる親の「七光り」派、未だ10代の終わり、何も発表していない頃からデビュー作の受賞が期待されていた。

 

★ブエノスアイレスのベルグラノ地区の私立高校で学ぶ。俳優デビューは12歳の頃、父ビクトルが製作したコメディ“Ya no hay hombres”(1991、監督アルベルト・Fischerman)に経費節減のため無料で出演した。1997年、アンドレス・ペルシバレ他によって制作したTeleganasのゲーム・プログラムに参加する。

その後、制作会社「La Brea」に入社、多数のコマーシャルに携わる。撮影はぶつ続け30時間と殺人的な作業だったが、ここでの経験が後で役に立った。しかし監督という家業を継ぐのは運命と思い定め、3年ほどで退社、ニューヨークの映画学校で本格的な映画製作の勉強を始める。

 

  

 (お洒落ではないが身だしなみには気をつけているという最近の監督、20161月撮影)

 

2005年、パトリシオ・アルバレス・カサドと一緒にコマーシャル制作会社「Rebolucion」(本部はアルゼンチンとブラジル)を設立、イベロアメリカの優秀なプロデューサーの一人となった。制作した120のコマーシャルのうち、50作近くが国際的な賞を受賞している(これには祖父や父親の「七光」を割り引かねばならないが)。2010年、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの『ビューティフル』の脚本をN・ヒアコボーネ、監督と共同執筆し、アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた。2014年、同監督の『バードマン』が第87回アカデミー賞の作品・監督・脚本・撮影の4賞を受賞、脚本の共同執筆者の一人として授賞式に出席した。

 

   

    (左から、N・ヒアコボーネ、AG・イニャリトゥ、アレクサンダー・ディネラリス、

   今宵のために新調したタキシード姿のA・ボー、アカデミー賞2015授賞式にて)

 

★脚本の共同執筆者ニコラス・ヒアコボーネは従兄弟、脚本家、作家、製作者、短編映画も撮っている。A・G・イニャリトゥの最新作『レヴェナント 蘇りし者』の製作にも参加している。衣装デザインを担当したルチアナ・マルティは妻、既に6歳と2歳の息子がいる。20151月よりロスアンゼルスのベニス地区に転居、仕事の本拠地をアメリカに移している。

  

『或る終焉』 ミシェル・フランコ ②2016年06月18日 16:43

             『父の秘密』を受け継ぐ喪失感と孤独

 

   

                DVDのジャケット)

 

A: メキシコとアメリカと舞台背景はまったく異なりますが、『父の秘密』のテーマを引き継いでいる印象でした。喪失感とか孤独感などは普遍的なものですから受け入れやすいテーマです。

B: なかでこれはメキシコではあり得ない、例えばセクハラ訴訟のことですが、訴訟社会のアメリカだから可能だったと思います。本作は監督の個人的体験から出発しているようですが、終末期医療は映画の入れ物にすぎない。

 

A: 個人的体験を出発点にするのは少なからずどの監督にも言えることですが、特にフランコの場合は第1作からともいえます。本作に入る前に、第4作目 A los ojosに触れますと、製作は2013年と本作より前、モレリア映画祭2013でお披露目している。しかし一般公開は20165月と結果的には反対になりました。これについてはスペイン語版ウィキペディアとIMDbとに異同があり、こういう事例は他にも結構あります。

B: ストーリーも『父の秘密』を撮った後のインタビューで語っていた通りでした。いわゆるドキュメンタリー・ドラマ、メキシコの今が語られています。

A: キャストは、モニカ・デル・カルメンが臓器移植の必要な眼病を患う息子オマールの母親になり、その母子にメキシコ・シティの路上生活者、ストリート・チルドレンのベンハミンを絡ませています。言語はスペイン語なのでいずれご紹介したい。

 

   

       (“A los ojos”の共同監督ビクトリア&ミシェル・フランコ兄妹)

 

B: さて本作『或る終焉』ですが、重いテーマのせいか上映後、椅子から立ち上がるのに一呼吸おく観客が多かった(笑)。サスペンス調で始まる冒頭部分、淡々と進む看護師の日常、そしてフィナーレに予想もしないサプライズが待っていた。

A: プレタイトルの冒頭部分は「おいおいこれじゃパクリだよ」と、思わずマヌエル・マルティン・クエンカの『カニバル』(13)を思い出してしまいました。あちらは車中の男の正体は分からないまま事件が起きる。こちらは車のフロントグラス越しに若い娘を追っている男は直ぐ判明しますが、若い娘が誰かは捨ておかれる。男の目線に導かれてスクリーンに入っていった観客は突然梯子を外される。

B: 続いて男はフェイスブックで「Nadia Wilson」なる若い女性を検索している。若い娘がナディア・ウィルソンらしきことを暗示したまま、これまたスクリーンから姿を消してしまう。ストーカー男か、はたまた雇われ殺人者かと不安にさせたまま観客を宙吊りにする。この娘が再びスクリーンに登場するのは後半に入ってから。そこから次第にダヴィッドの過去が明かされ、本当のドラマが始まっていく。

 

  

     (疎遠だった父親から突然声を掛けられて戸惑う娘ナディア、映画から)

 

A: この冒頭部分が大きな伏線になっています。デヴィッドが元の町に戻ってきたのは、セクハラ訴訟で失職した後ではなく、時おり密かに訪れていたことや、この町で起こったことが彼の喪失感の原点であることを観客は知ることになる。エイズ患者のサラや半身不随になった建築家ジョンまでをフラッシュバックとすることも可能ですが、やはり同時進行が自然でしょう。

B: フランコは『父の秘密』でもフラッシュバックは使用しなかったと思います。

 

            互いに求め合う患者と看護師の共犯関係

 

A: 非常に興味深かったのは、デヴィッドは患者との関係はうまくいくのに、患者以外の身近な人、妻や娘も含めての自身の家族、患者の家族とは距離をおいている。サラの告別式に出席したとき、サラの姪から「叔母のことを聞きたい」と話しかけられても避けてしまう。

B: 避けるというより逃げる印象、彼は病める人としか心を通いあえない一種の患者なのですね。バーで隣り合った見ず知らずの他人とは、嘘と真をないまぜにして、談笑しながら自然体で接することができるのに。

A: 患者が看護師を求めるように看護師も患者を求めている。患者と看護師のあいだに親密な共犯関係が成立している。だからメキシコ版のタイトル“El último pacienteChronicは意味深なのです。 

  

          (見ず知らずの他人と談笑するデヴィッド、映画から)

 

B: 「最後の患者」は誰なのか。スペイン語の冠詞は基本的には英語と同じと考えていいのでしょうが、英語より使用した人の気持が反映されるように感じます。定冠詞「el」か、不定冠詞「un」かで微妙に意味が変化する。

A: 邦題の『或る終焉』については目下のところ沈黙しますが、「或る」が何を指すかです。また原題の“Chronic”はギリシャ語起源の「永続する時間を意味するchronikós」から取られている。悪い状態や病気が「慢性の、または長期に渡る」ときに使用される。

B: 監督インタビューでも、しばしば看護師を襲う「chronic depression慢性的な鬱病」について語っています。

 

A: 『父の秘密』で突然妻に死なれた父親が罹っていたのが、この「慢性的な鬱病」です。テーマを受け継いでいると前述したのも、これが頭にあったから。「秘密」を抱えていたのは父ではなく娘です。映画には現れませんが娘は母の死の原因に何か関係があることが暗示されていた。だから学校でのイジメを父親には知らせずに健気にも耐えたのですね。

B: 両作とも、監督がさり気なく散りばめたメタファーをどう読み取るかで評価も印象も異なってくるはずです。

 

         ドラッグのように頭を空っぽにするジョギング

 

A: デヴィッドは看護師という職業柄、ジムで体を鍛えて健康維持に努めている。しかし、それは表層的な見方であり、その一心不乱の表情からは別のことが読み取れる。

B: スポーツにはドラッグのような陶酔感、辛い現実からの逃避があり、更に達成感も得られるから、人によってはのめり込む。本作でも場面転換で有効に使われていた。

 

A 深い喪失感を癒やすには、ただただ走ること、頭を空っぽにすることで、自分が壊れるのを防いでいる。失職してからは安い給料ではジムに通えなくなったという設定か、監督はデヴィッドに歩道を走らせている。彼は何も考えない、何も彼の目には入らない、ただ一心に走るだけ。このジムから歩道への移行もまた、大きな伏線の一つになっている。

B: 『父の秘密』でも娘が現実逃避からか唯一人、プールでひたすら泳ぐ。光と水の美しいシーンであったが、最後にこれが伏線の一つだったことに観客は驚く。

 

A: デヴィッドの看護の内容は、これといって特別新しい視点はなかったように思える。例えばマーサの自殺幇助に手を貸すストーリー、マーサは癌治療の副作用と転移に生きる意味や価値、根拠を見いだせなくなっていた。合法非合法を含めて既に映画のテーマになっている。

B: ステファヌ・ブリゼの『母の見終い』(12)のほうが、テーマの掘下げがより優れていた。

A: スイスで2005年に認められた医師による安楽死が背景にあるが、こちらも安楽死は道具、愛し合いながらもぶつかり合ってしまう母と息子の和解が真のテーマだった。息子役ヴァンサン・ランドンの演技も忘れがたい。 

        

                    (髪をカットしてもらうマーサ、見守るデヴィッド)

 

B: ポール・トーマス・アンダーソンの群像劇『マグノリア』(99)の自宅看護師フィリップ・シーモア・ホフマンの演技、ミヒャエル・ハネケが連続でパルムドールを受賞した『愛、アムール』(12)の妻を看護する夫ジャン=ルイ・トランティニャンなどを思い起こす人もいたでしょうか。

A: 看護ではないが孤独死を扱った、ウベルト・パゾリーニの『おみおくりの作法』(13)などもありますね。ティム・ロスが6ヶ月ほど看護の仕事を体験して、そこで得た情報や体験が脚本に流れ込んでいるそうですが、本作の終末期医療はやはり入れ物の感が拭えません。

 

             主人公と監督の親密な共犯関係

 

B: 「脚本はティム・ロスとの共同執筆のようなもの」と、監督はティム・ロスに花を持たせています。こんなに親密な主人公と監督の関係は珍しいのではないか。

A: 例年10月下旬に開催されるモレリア映画祭FICMがメキシコ・プレミアでしたが、ロスも栄誉招待を受けて赤絨毯を踏んだ。フランコは「この映画祭にティムを迎えることができたのはとても名誉なことです。彼の監督作品『素肌の涙』を見れば、彼の感性が私たちメキシコの映画とまったく異なっていないことに気づくでしょう」と挨拶した。父と娘の近親相姦、息子の父殺しというタブーに挑戦した映画。

 

B: 1999年に撮った“The War Zone”のことですね。なんとも陳腐としか言いようのない邦題です。彼はこれ1作しか監督していない。

A: 閉ざされた空間で起こる権力闘争の側面をもつアレキサンダー・スチュアートの同名小説の映画化、ベルリン映画祭パノラマ部門CICAE賞、英国インディペンデント映画賞、バジャドリード銀の穂賞、ヨーロッパ映画ディスカバリー賞ほかを受賞した。ロスがこのタブーに挑戦したのには自身が過去に受けた傷に関係があるようです。

 

B: 「どのようにストーリーを物語るかというミシェルのスタイルが重要です。ある一人の看護師の物語ですが、それだけではない。彼の映画の主人公を演じられたことを誇りに思いますが、それがすべてではありません」とロス。

A: ティムがメキシコで監督する可能性をフランコの製作会社「ルシア・フィルム」が模索中とか。ロスの第2作がメキシコで具体化するかもしれません。

B: ロスもモレリア映画祭を通じて2ヶ月近く滞在、多くのメキシコの映画人と接触したようです。 

    

  (左から、モイセス・ソナナ、ロス、監督、ガブリエル・リプステイン、FICM 2015

 

A: 二人の親密ぶりはカンヌ以降、わんさとネットに登場しています。フランコが「舞台はメキシコ・シティ、言語はスペイン語」という最初の脚本にアディオスする決心をしたのは、フランコに「もし看護師を女性から男性へ、場所をアメリカにすることが可能なら、私に看護師を演らせて欲しい」というロスの一言だった。

B: 既に女性看護師役も内々に決まっていたとか。でも国際的大スターに迫られて、夢心地にならない駆出し監督はいませんよ。熟慮のすえ変更を決意した。

 

A: ロス自身もBBCのシリーズTVドラマに出演していたが、「君と一緒に仕事ができるなら素晴らしい。カンヌで『父の秘密』にグランプリを与えたとき私のほうから頼んだのだ」と快諾、こうして舞台をロスアンゼルスにして始まった。監督によると戸外での撮影には安全を期して市当局にパトロールを申請しなくてはいけないのだが、それをしなかった。

B: じゃ、デヴィッドが歩道をジョギングするシーンも無許可だったの?

A: 大袈裟になるし高くつくしで「ティムと私のスタッフはパトロールなしを決意した。勿論、罰金を科されないように慎重に誰にも気づかれないように撮影したのは当然だよ」とフランコ。

 

B: 審査委員長だったコーエン兄弟が本作に脚本賞を与えたのは見事なフィナーレのせいだったとか。受賞を意外だと評する向きもありましたが。

A: 誰が受賞しても文句が出るのが映画祭。審査員は批評家でないから、どうしても両者の評価には隔たりが出る。2015年のパルムドール、ジャック・オディアールの『ディーパンの闘い』のフィナーレなんかに比べれば、数段良かったですよ。

B: あれは蛇足でした、でもブーイングするほど悪くなかったです。『キャロル』ファンはおさまらなかったでしょうが。トッド・ヘインズ監督も先にルーニー・マーラが女優賞に呼ばれた時点で、さぞかしがっかりしたことでしょう。

A: それも人生、これも人生です。


『或る終焉』ミシェル・フランコ*患者と共に死に向き合う ①2016年06月15日 17:30

癒やされない喪失感と孤独、そして愛についての物語

    

ミシェル・フランコ『或る終焉』という邦題で公開中のChronicは、カンヌ映画祭2015の脚本賞受賞作品、当時、本作の受賞を予想した人はそう多くはなかったでしょう。そうそうパルムドールがブーイングという年でしたね。デビュー作Daniel & Ana09)がカンヌ映画祭と併行して開催される「監督週間」、第2『父の秘密』12Después de Lucía”)がカンヌ映画祭「ある視点」のグランプリ、そして本作がコンペティション部門の脚本賞と順調に11段、階段を上っている。カンヌ以降、多数の国際映画祭に招待されたが、受賞はカルタヘナ映画祭2015での「Gemas賞」1個にとどまった。当ブログで第3作目としてご紹介したA los ojos2013、“In Your Eyes”、妹ビクトリアと共同監督)は、第11回モレリア映画祭2013で上映されていますが、公開は順序が逆になり今年520日にメキシコで限定上映されました。

 

医学の進歩とともに終末医療は、以前とは比較にならないほど引き伸ばされ、死が生の一部であることを感じさせるようになりました。時には自分の最期を自ら選ばなくてはならなくなってもいる。それにつれて別の世界に入ろうとしている人の命と向き合いながら自宅でケアし、最後には看取るという孤独な新しい職業が成立した。細心の注意をはらって患者の恐怖心を和らげることが求められる厳しい職業です。終末医療の看護師とは、医療技術は勿論のこと、忍耐と心の平静、冷静な判断が求められる。以前当ブログで、「『父の秘密』同様、フィナーレに衝撃が待っている」と書きましたが、確かに見事な幕切れが待っていました。ネタバレさせずに書くのは容易ではありません。 

 

 (20155月、カンヌ入りした監督以下主な出演者、左からサラ・サザーランド、監督、

  ティム・ロス、ロビン・バートレット、ナイレア・ノルビンド。

  他に製作者のガブリエル・リプステイン、モイセス・ソナナなども参加した

 

 

『或る終焉』 (原題“Chronic”) 2015

製作:Stromboli Films / Vamonos Films

監督・脚本・編集()・製作() :ミシェル・フランコ、

撮影:イヴ・カープ

編集():フリオ・ペレス4

衣装デザイン:ディアス

プロダクション・デザイン:マット・ルエム

音響デザイン:フランク・ガエタ

製作者:ガブリエル・リプスティン、モイセス・ソナナ、ジーナ・クォン、製作総指揮ティム・ロス、ベルナルド・ゴメス、フェルナンド・ペレス・カビラン、エミリオ・アスカラガ・ヘアン

データ:製作国メキシコ=フランス、言語英語、93分、撮影地ロスアンゼルス、メキシコ公開201648日(メキシコ・タイトル“El último pacienteChronic”)

映画祭・受賞歴:カンヌ映画祭2015脚本賞、カルタヘナ映画祭2015Gemas賞」受賞。メルボルン、サラエボ、サンセバスチャン(ホライズンズ・ラティノ部門)、ヘルシンキ、釜山、バンクーバー、ロンドン、シカゴ、テッサロニキなど国際映画祭で上映、メキシコでは例年10月下旬に開催されるモレリア映画祭で上映された。

 

キャスト:ティム・ロス(介護師デヴィッド)、ロビン・バートレット(マーサ)、マイケル・クリストファー(ジョン)、レイチェル・ピックアップ(サラ)、サラ・サザーランド(デヴィッドの娘ナディア)、ナイレア・ノルビンド(デヴィッドの元妻ローラ)、ビッツィー・トゥロック(ジョンの娘リディア)、デヴィッド・ダストマルチャン(レナード)、メアリーベス・モンロー(サラの姪)、カリ・コールマン(サラの妹)、ジョー・サントス、他

 

解説:終末期の患者をケアする看護師デヴィッドの物語。息子ダンの死をきっかけに妻とは別れ、別の土地で看護師の仕事をしている。サラを見送ったあと受け持ったジョンとの信頼関係は築かれていたが、家族から思いもかけないセクハラ告訴をえて失職する。長く疎遠だった妻と娘が暮らす町に戻ったデヴィッドは、医学を学ぶ娘ナディアと一度は再婚したが今は一人の元妻ローラと、共に悲しみを共有した家族が再会する。やがて新しい患者マーサと出会うが、彼はある難しい決断を求められる。終末期の患者とその家族との関係性が淡々と語られるが、それがテーマではない。ドラマの背後で進行するデヴィッドの深い喪失感と孤独からくる長く深くつづく憂鬱が真のテーマであろう。                               (文責:管理人)

 

   

      (メキシコのタイトル“El último pacienteChronic”のポスター)

 

監督紹介ミシェル・フランコ Michel Franco1979年メキシコ・シティ生れ、監督、脚本家、製作者。イベロアメリカ大学でコミュニケーションを専攻、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥのスタッフとして仕事をした後、ニューヨークの映画アカデミーで監督・演出を学ぶ。短編、TVコマーシャル、音楽ビデオの制作、ルシア・フィルムを設立した。 

 

 *主なフィルモグラフィー*(最近の短編は除く)

2001Cuando seas GURANDE

2003Entre dos”短編 ウエスカ映画祭グランプリ、ドレスデン映画祭短編賞受賞

2009Daniel & Ana 監督、脚本、製作 長編デビュー作

  カンヌ映画祭2009監督週間正式出品、サンセバスチャン、シカゴほか国際映画祭で上映、フランス、メキシコ、米国ほかで公開

2012 Después de Lucía”『父の秘密』監督、脚本、製作、編集

  カンヌ映画祭2012「ある視点」グランプリ、シカゴ映画祭審査員特別賞、サンセバスチャン映画祭ホライズンズ・ラティノ作品賞、ハバナ映画祭監督賞

作品紹介ほか関連記事は、コチラ⇒20131120

2013A los ojos”ビクトリア・フランコとの共同監督、脚本、製作、編集

  第11回モレリア映画祭2013上映、公開は20165月限定上映

2015Chronic”『或る終焉』省略

2015Desde allá”製作 (監督ロレンソ・ビガス、製作国ベネズエラ==メキシコ)

ベネチア映画祭2015金獅子賞受賞作品

作品紹介ほか関連記事は、コチラ⇒201588日、921日、108

2015600 millas”製作 (監督ガブリエル・リプスティン、製作国メキシコ)

  ベルリン映画祭2016パノラマ部門初監督作品賞、アリエル賞2016初監督作品賞受賞作品

作品紹介ほか関連記事は、コチラ⇒201661

 

2001年の“Cuando seas GURANDE ”は短編ではなく、「汚職撲滅運動」のキャンペーンの一環として製作された映画の一部を監督したもののようで、メキシコの500館で上映された(スペイン語版ウィキペディア)。

 

  

   (フランコ兄妹に挟まれたモニカ・デル・カルメン、“A los ojos”のプレス会見から)


公開中または近日公開予定のスペイン&ラテンアメリカ映画2016年06月12日 15:26

 *急がないと終了してしまう公開中の映画*

『エルヴィス、我が心の歌』原題“Ultimo Elvis”、英題“The Last Elvis 2012

監督・脚本・製作アルマンド・ボー、脚本(共)ニコラス・ヒアコボーネ、撮影ハビエル・フリア、製作(共)ビクトル・ボー、製作国アルゼンチン、言語スペイン語・英語 91

キャスト:ジョン・マキナニー、グリセルダ・シチリアニ、マルガリータ・ロペス

映画祭・受賞歴:アルゼンチン・アカデミー賞2012(主演男優賞以下6部門)、サンセバスチャン映画祭2012ホライズンズ・ラティノ部門作品賞、チューリッヒ映画祭2012初監督賞、ほか多数受賞

渋谷ユーロスペース、528日ロードショー

 

 

『或る終焉』原題“Chronic”、2015

監督・脚本・編集()・製作()ミシェル・フランコ、撮影イヴ・カープ、製作ガブリエル・リプスティン他、製作総指揮ティム・ロス他、製作国メキシコ=フランス、言語英語、94

キャスト:ティム・ロス、ロビン・バートレット、マイケル・クリストファー、レイチェル・ピックアップ、サラ・サザーランド、ナイレア・ノルビンド、他

映画祭・受賞歴:カンヌ映画祭2015脚本賞受賞

渋谷ル・シネマ Bunkamura文化村 528日ロードショー

当ブログでの紹介記事は、コチラ⇒2015528

 

 

 

*近日公開予定の映画* 

『パコ・デ・ルシア 灼熱のギタリスト』原題“Paco de Lucía: La búsqueda”、英題“Paco de Lucia a Journey” 2014年 ドキュメンタリー

監督・脚本()クーロ・サンチェス・バレタ、脚本()カシルダ・サンチェス、撮影カルロス・ガルシア・デ・ディオス他、製作者アンチョ・ロドリゲス、ルシア・サンチェス・バレラ他

キャスト:パコ・デ・ルシア、カルロス・サンタナ、ジョン・マクラフリン、チック・コリア、サビーカス、ぺぺ・デ・ルシア他多数

受賞歴:ゴヤ賞2015長編ドキュメンタリー賞、シネマ・ライターズ・サークル賞2015ドキュメンタリー賞、トゥリア賞2015ドキュメンタリー賞を受賞、第2回イベロアメリカ・プラチナ賞ドキュメンタリー部門ノミネーション、他

渋谷ル・シネマ Bunkamura文化村 723日ロードショー

当ブログでの紹介記事は、コチラ⇒2015131

 

   

 

『ラスト・タンゴ』原題Un tango más2015年 ドラマ・ドキュメンタリー

監督ヘルマン・クラル、ヴィム・ヴェンダース製作総指揮、製作国ドイツ=アルゼンチン、言語スペイン語、85

映画祭:トロント、ベルリン、山形、ストックホルム、クリーブランド、各国際映画祭正式出品

キャスト:マリア・ニエベス、フアン・カルロス・コペス、パブロ・ベロン、アレハンドラ・グティ、フアン・マリシア、他多数

渋谷ル・シネマ Bunkamura文化村 79日ロードショー

 

    

 

『チリの闘い』La batalla de ChileLa lucha de un pueblo sin armas19751978

ドキュメンタリー三部作

『光のノスタルジア』『真珠のボタン』のパトリシオ・グスマン監督の初期のドキュメンタリー

渋谷ユーロスペースにて9月、日本初公開

『光のノスタルジア』の主な作品紹介記事は、コチラ2015年11月11日

『真珠のボタン』の主な作品紹介記事は、コチラ2015年11月16日

 

  

     (第3部“El poder popular”、2013914日マラガでの上映会のポスター)

 

*ポルトガル映画ですが・・・*

『ホース・マネー』原題“Cavalo Dinheiro”、英題“Horse Maney2014

監督・脚本ペドロ・コスタ、撮影レオナルド・ジモエス、製作国ポルトガル、言語ポルトガル語・クレオール語、ドキュメンタリー、104

映画祭・受賞歴:ロカルノ国際映画祭20414監督賞ほか3賞、ミュンヘン映画祭2015 ARRI/OSRAM賞、山形国際ドキュメンタリー映画祭2015大賞受賞など、他ノミネーション多数。

渋谷ユーロスペース、618日ロードショー、627日(1830~)監督トークイベントあり、上映期間中『ヴァンダの部屋』と『コロッサル・ユース』を上映予定(期間・時間など要確認)

 

   


サンティアゴ・セグラ、「金のメダル」受賞のニュース2016年06月11日 18:02

         「そろそろ私にくれてもいいのじゃないかな・・・」

 

4月半ばに発表されていたスペイン映画アカデミーの金のメダル」、今年はサンティアゴ・セグラ、「スペイン映画における多方面にわたる全功績に対して」贈られる。授賞式は秋なので近くなってからと思っていましたが、第3回イベロアメリカ・プラチナ賞の総合司会者に決定したこともあり、早めにアウトラインをアップすることにしました。昨年はフアン・ディエゴとアイタナ・サンチェス=ヒホンという異例の二人受賞でした。アナウンスされるたびに、「彼(彼女)は未だ貰っていなかったのね」と驚きますが、今年も同じ感想をもちました。

 

     

    (イベロアメリカ・プラチナ賞の司会者に選ばれて、右側にあるのがトロフィー)

 

メダルの正式名は、Medalla de Oro de la Academia de las Artes y las Ciencias Cinematográficas de España と長く、通称金のメダルです。スペイン映画アカデミーが選考、受賞対象者は、製作者、監督、脚本家、俳優、音楽家、撮影者などオール・シネアスト。 1991年から始まり、第1回受賞者はフェルナンド・レイでした。内戦前のスペイン映画界に寄与した製作会社CIFESAの設立者であったビセンテ・カサノバに敬意を表して、1986年に設けられた賞が前身。最近の受賞者は、アンヘラ・モリーナ(13、女優)、マヌエル・グティエレス・アラゴン(12、監督)、ホセ・ルイス・アルカイネ(11、撮影監督)、ロサ・マリア・サルダ(10、女優)、カルメン・マウラ(09、同)、マリベル・ベルドゥ(08、同)、ほかジェラルデン・チャップリン(06)、コンチャ・ベラスコ(03)など女優の受賞者が目立っている。

2015年の「金のメダル」の記事は、コチラ⇒201581同年1120

 

サンチャゴ・セグラSantiago Segura Silva1965717日、マドリードの下町カラバンチェル生れの50歳、俳優・監督・製作者・脚本家・テレビ司会者・声優と多方面で活躍、ポルノ小説のペンネームはBeaベア、またはBeatrizベアトリス(イラストはホセ・アントニオ・カルボが描いた)、「トレンテ」と言えば彼を指す。本気でキャリアを紹介しようとすれば、二足どころか五足も六足も履いているから、そう簡単にはいかない。見た目からは窺い知れない複雑でインテリジュンスの持ち主、最近30年間のスペイン映画は、アレックス・デ・ラ・イグレシア同様彼なしには語れない。日本語ウィキペディアはスペインのシネアスト紹介としては充実しており全体像はつかめます。まずは喜びの談話から。

 

「私の最初のリアクションは驚きと責任の重さです。(発表がある度に)いつももっと他に相応しい人物がいるのじゃないかと思ったり、時には自分にくれてもいいのじゃないかと思ったり」と相変わらず冗談を飛ばしながらもホンネをポロリ。「私のキャリアも既に終盤戦に入ってきているから、多分早くやらないと間に合わなくなると思ったのかもしれない。私自身はまだ将来有望な若者と思っているけれど、気がついてみれば、愛するファンに言いたい放題をしてもう30年も経っている」。アカデミーによると、授賞の知らせを伝えると、一呼吸してから、「私に票を投じてくれたアカデミーのメンバーに感謝を申し上げたいが、実は、それだけでなく反対意見の人にも敬意を表したい」と返答したそうです。

 

★マドリードの公立中高学校サン・イシドロで学ぶ。12歳のときマドリードの蚤の市で購入した(900ペセタ)ボレックスBolexのスーパー8ミリで3分程度の短編を撮り始める。マドリードのコンプルテンセ大学では趣味が嵩じて美術を専攻、デッサンの才能をあらわした。卒業後はポルノ小説を執筆するかたわら、声優、仲間とのインディペンデント演劇、ウエイター、書籍の訪問販売などの仕事をした。1989年、わずか6000ペセタの資金で撮った8ミリの“Relatos de medianoche”が、翌年バレンシア青年シネマ・コンクールに入賞、10万ペセタを獲得した。このコンクールの審査員の一人がフェルナンド・トゥルエバだった。バレンシアのお礼にトゥルエバ宅を訪れると、35ミリで撮ることを勧められた。この幸運の出会い、トゥルエバの賞賛と助言によって今日のセグラが存在する。(トゥルエバ作品では1995年『あなたに逢いたくて』、1998年『美しき虜』に出演している。)

 

5人の仲間と協力して5本の短編を撮り、テレビ局のコンクールに応募、そのうちの“Vivan los novios”が受賞して7万ペセタを得る。最初のプロとしての短編1作目はホラー映画『エルム街の悪夢』の主人公フレディ・クルーガーのような精神病質者の物語“Evilio”(92)、第2作目は美しい女性ばかりを狙う殺人鬼の反社会的な物語“Perturbado”(93)、本作がゴヤ賞1994の短編映画賞を受賞し、国営テレビでも放映された。

 

★俳優としては、何といっても相性がいいのがアレックス・デ・ラ・イグレシア映画の常連、デビュー作『ハイルミュタンテ!電撃××作戦』(93)から、つづく『ビースト 獣の日』でゴヤ賞2016新人男優賞を受賞、いきなりスターダムにのし上がった。『ペルディータ』、『どつかれてアンダルシア』、『気狂いピエロの決闘』、『刺さった男』、女装して魔女になった『スガラムルディの魔女』など。もう一人がメキシコのギレルモ・デル・トロ監督、『ブレイド2』(02)を始めとして、『ヘルボーイ』、『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』、最新作は『パシフィック・リム』(13)でしょうか。

 

ホセ・ルイス・トレンテは時代錯誤、映画はそうじゃない

 

★長編映画デビューは、1998年から始まった「トレンテ・シリーズ」、第1作“Torrente, el brazo tonto de la rey”の監督・脚本・製作者・主役と4足の草鞋を履いた。本作の邦題は『トレンテ ハゲ!デブ!大酒飲みの女好き!超肉食系スーパーコップ』というタブー語混じりのなんともはや凄まじいもの。彼はスコセッシの『レイジング・ブル』(80)で実在のミドル級ボクサーに扮したロバート・デ・ニーロに見倣って、体重を20キロ増量して悪徳警官ホセ・ルイス・トレンテになった。デ・ニーロはアカデミー主演男優賞、セグラはゴヤ賞1999新人監督賞を受賞し、三つ目のゴヤ胸像を手にしました。 

   

        (第1作“Torrente, el brazo tonto de la rey”のジャケット)

 

★悪徳警官トレンテの人格造形は、ピーター・セラーズ演ずるパリ警察のクルーゾー警部から1981223日クーデタ、いわゆる23-Fの実行部隊を指揮した実在のアントニオ・テヘロ中佐(1996年釈放、現在故郷マラガ在住84歳)までを網羅しているといわれる。批評家と観客の乖離が甚だしい毀誉褒貶のシリーズだが、毎回興行成績は飛びぬけている。どの「トレンテ」も物議を醸したのだが、なかで『トレンテ4』が一番賑やかだった。

 

   

            (いろいろあった『トレンテ4』のポスター)

 

★「EUの重病患者」または「EU のお荷物」と世界から批判された経済破綻の時期に製作された。タイトルもそのものずばりのTorrente 4 : Lethal Crisisでした。2011年のスペイン国内での観客動員数264万人、興行成績1957万ユーロを叩き出し、「スペイン映画界の救世主」とまでいわれた。しかし翌年のゴヤ賞のノミネーションはゼロ、たちまちネット上では不満や非難のつぶやきが始まり、220日のガラで頂点に達した。セグラ自身が舞台上で、映画初出演ながら真剣に映画に取り組んだ歌手キコ・リベラを軽視した映画アカデミーを挑発したからです。キコ・リベラは闘牛士パキーリことフランシスコ・リベラとコプラ歌手イサベル・パントーハの息子。パキーリを継いだパキリンが渾名、彼自身は「やあ皆さん、ありがとう、少し気落ちしているだけで怒っていないよ。(テレビの)授賞式は見なかった」とツイートした。

 

          

             (サンティアゴ・セグラとキコ・リベラ)

 

★「4」はラテンビート2011『トレンテ4として上映された。この年は『私が、生きる肌』、『ブラック・ブレッド』、『気狂いピエロの決闘』、『ザ・ウォーター・ウォー』、アニメ『チコとリタ』など充実のラインナップでした。第5作目Torrente 5 : Operación Eurovegasには、ハリウッドスター、アレック・ボールドウィンが出演して話題をまいた。現在2017年公開予定の6作目が進行中(タイトルは未定)、その度に体重の20キロ増減を繰り返している(笑)。トレンテについては別項を設けたほうがいいかもしれないが、彼が出演した他の映画にも触れないと。

 

  

         (「トレンテ5出演の アレック・ボールドウィンと監督)


アスガー・ファルハディ✕バルデム=クルス✕エル・デセオ2016年06月06日 15:53

      アスガー・ファルハディの次回作の舞台はスペインのアンダルシア

 

★イランのアスガー・ファルハディハビエル・バルデムペネロペ・クルスのカップル、アルモドバル兄弟の製作会社エル・デセオが手を組んで新作を撮る。ファルハディはカンヌ映画祭2016The Salesman(英題「ザ・セールスマン」)が脚本賞を受賞したばかりです。先にシャハブ・ホセイニが男優賞を受賞していたので「1作品1賞」というカンヌの原則を破ったことで場内はざわめいたようです。それにはベルリン映画祭金熊賞受賞の『別離』11)ほどの出来ではなかったことも背景にあるようです。つまり、受賞に値する作品が他にもあったではないかという不満です。タイトルはアーサー・ミラーの『セールスマンの死』から採られている。

 

       

           (最近のハビエル・バルデムとペネロペ・クルス)

 

★クルス出演は既にアナウンスされておりましたが、バルデムが共演することはファルハディがカンヌに到着するまで伏せられていた。そもそもはエル・デセオのアグスティン・アルモドバルが『私が、生きる肌』(11)のプロモーションのためロス入りして接触したのが始まりだった。ファルハディはアルモドバルがJulietaをマドリードで撮影していたとき立ち寄っていたから,水面下では大分前から進んでいたということになります。ファルハディによると「6月にロケ地見分にスペインを訪れ雰囲気を掴みたい。できれば夏にはクランクインしたい」とインタビューに応えている。2017年秋公開でしょうか。。

 

  

               (アルモドバルとファルハディ)

 

IMDbによれば、タイトルは目下未定ですが、言語はスペイン語英語、製作は他にフランスのMemento Films、今のところ製作国はスペインとフランスのみ。脚本は監督自身が執筆、あらあらのプロットは「アンダルシア地方のブドウ栽培農家の家族を中心にした愛の三角関係」らしく、絡んでくるもう一人にはアメリカの俳優が起用される模様です。テーマ的には複雑な家族関係を描くなどファルハディとアルモドバルは似通っている。アグスティンによると「ファルハディはロンダやスペインの南部が気にいっている」ということですから撮影地もほぼ決定しているのでしょうか。(Memento Filmsは、『The Salesman』や『ある過去の行方』も製作している)

 

   

            (ファルハディ監督、カンヌ映画祭2016にて)

 

★スペイン語を解さない外国で撮影する不安はないかとの質問に、「外国での撮影としては第2作目、不安は感じていない」、第1作はフランスで撮った『ある過去の行方』13、仏・伊・イラン合作)、言語はフランス語とペルシャ語だった。『アーティスト』に出演していたベレニス・ベジョの演技に感心して主役に起用した。カンヌ映画祭2013で女優賞を受賞して監督の期待に応えました。「過去に向き合わないで未来は描けない」が信条とか。しかし公開3作品のうち一番感心したのは、ベルリン映画祭で監督賞(銀熊)に輝いた『彼女が消えた浜辺』09)でした。イランの中流階級の問題が凝縮されていて、こういう声高ではない方法で問題提起ができるのだと感心した。邦題の許容範囲は広いのですが、内容に余計なものを「付け足さない」という翻訳のイロハを逸脱して興醒めでしたが。(2009年に開催された「アジアフォーカス福岡国際映画祭」のタイトルは英題”About Elly”のカタカナ表記『アバウト・エリ』でした。監督も来日)

   

パコ・レオンの第3作ロマンティック・コメディ”Kiki, el amor se hace”2016年06月05日 12:12

              41日封切り、早くも観客数100万人突破!

 

  

★今年期待できるスペイン映画としてアップしましたパコ・レオンKiki, el amor se haceが期待通りの快進撃、セックス絡みのコメディ大好きなスペイン人の心を掴みました。「数は多いが面白い映画は少ない」とスペイン人は文句を言うけれど、これはどこの国にも言えること、とにかく封切り8週間調べで観客数100万人の壁を突破した。やはり「クチコミ」効果のおかげ、5月末には1,012,597人、興行成績約592万ユーロは、一向に改善の萌しが見えない国庫にとっても歓迎すべきことです。しかし34日公開、アルゼンチン=西=仏合作の犯罪サスペンス、ダニエル・カルパルソロのCien años de perdón1,073,397人は超えられていない。カルパルソロは『インベーダー・ミッション』が公開されている監督。ルイス・トサール、ラウル・アレバロ、ホセ・コロナドなど、日本でもお馴染みになった演技派が出演しています。

Kiki, el amor se hace”の記事は、コチラ⇒2016224

Cien años de perdón”の記事は、コチラ⇒2016221

 

      

2014年の大ヒット作、「危機のスペイン映画界の救世主」とまで言われたエミリオ・マルティネス=ラサロのOcho apellidos vascosは、リピーターを含めてトータル約1000万人が見た。いわゆる映画祭向きのコメディではなかったので、中々海外での上映に至らなかったが2015年にはスペイン語圏諸国やその他でも公開された。批評家の評価は真っ二つに割れたが、その映画界への貢献度は無視できず、ゴヤ賞の新人男優・助演男優・助演女優の3賞を受賞した。「二匹目のドジョウ」を狙った続編カタルーニャ編Ocho apellidos catalanesも、2015年の興行成績ベストワンの450万人、ほかはすべて100万台、第4位のアメナバルの“Regression”は封切り1週目こそ上々のすべり出しだったが、142万と期待にそえなかった。これで2015年が如何に低調だったかが分かります。日本公開のニュースは未だでしょうか。

 

        一風変わったセクシュアル趣味の面々が織りなす合唱劇

 

パコ・レオンといっても日本での知名度はイマイチだが、スペインでは人気シリーズのテレドラ出演で、まず知らない人はいないと思います。1974年セビーリャ生れの俳優・監督・脚本家。日本ではホアキン・オリストレルの寓話『地中海式 人生のレシピ』(09)出演だけかもしれない。オーストラリア映画、ジョッシュ・ローソンThe Little Death14)が土台になっている。ローソン監督も俳優との二足の草鞋派、テレビの人気俳優ということも似通っている。プロットか変わった性的趣向をもつ5組のカップルが織りなすコメディ。このリメイク版というか別バージョンというわけで、レオン版も世間並みではないセックスの愛好家5組の夫婦10人と、そこへ絡んでくるオトコとオンナが入り乱れる。ノーマルとアブノーマルの境は、社会や時代により異なると思うが、ここでは一種のparafilia(語源はギリシャ語、性的倒錯?)に悩む人々が登場する。

 

★スペイン版のKiki, el amor se hace にはどんな夫婦が登場するかというと、1組目はレオン監督自身とアナ・Katzのカップルにベレン・クエスタが舞い込んでくる。2組目はゴヤ賞2016主演女優賞のナタリア・デ・モリーナ(『Living is Easy with Eyes Closed』)とアレックス・ガルシアのカップル(harpaxofilia)。3組目はカンデラ・ペーニャ(『時間切れの愛』『チル・アウト!』)とルイス・ベルメホ(『マジカル・ガール』)のカップル(dacrifilia)、4組目はルイス・カジェホ、とマリ・パス・サヤゴのカップル(somnofilia)、最後がダビ・モラとアレクサンドラ・ヒメネスのカップル(elifilia)、そこへフェルナンド・ソト、ベレン・ロペス、セルヒオ・トリゴ、ミゲル・エランなどと賑やかです。

 

   

  (記者会見に出席した面々、左からカンデラ・ペーニャ、マリ・パス・サヤゴ、ダビ・モラ、

    ベレン・クエスタ、監督、ナタリア・デ・モリーナ、アレックス・ガルシア

 

★〈-filia〉というのは、「・・の病的愛好」というような意味で、harpaxofilia の語源はギリシャ語の〈harpax〉からきており、「盗難・強奪」という意味、性的に興奮すると物を盗むことに喜びを感じる。dacrifiliaは最中に涙が止まらなくなる症状、somnofiliaは最中に興奮すると突然眠り込んでしまう、いわゆる「眠れる森の美女」症候群、elifiliaは予め作り上げたものにオブセッションをもっているタイプらしい。にわか調べで正確ではないかもしれない。

 

★製作の経緯は、監督によると「最初(製作会社)Vertigo Filmsが企画を持ってきた。テレシンコ・フィルムも加わるということなので乗った」ようです。しかし「プロデューサーからはいちいちうるさい注文はなく、自由に作らせてくれた」と。「すべてのファンに満足してもらうのは不可能、人それぞれに限界があり、特にセックスに関してはそれが顕著なのです。私の作品は厚かましい面もあるが悪趣味ではない。背後には人間性や正当な根拠を描いている」とも。「映画には思ったほどセックスシーはなく(期待し過ぎないほうがいい?)、平凡で下品にならないように心がけた」、これが100万人突破の秘密かもしれない。

 

   

                (ナタリア・デ・モリーナとアレックス・ガルシアのカップル)

 

 

        (パコ・レオンとアナ・Katzのカップルにベレン・クエスタが割り込んで)

 

 

                   (ルイス・バジェホとカンデラ・ペーニャのカップル)

 

★前の2Carmina o revienta12)とCarmina y amen14)は、レオンの家族、母親カルミナ・バリオスと妹マリア・レオンが主役だったが、第3作には敢えて起用しなかった。

 

 

                  (孟母でなく猛母カルミナ・バリオスと孝行息子のパコ)


第3回イベロアメリカ・プラチナ賞2016*ノミネーション発表2016年06月03日 13:11

        授賞式はウルグアイのプンタ・デル・エステ、724日開催

 

    

★「イベロアメリカ・プラチナ賞」は23カ国が参加するシネ・フェスティバルですが、ノミネーションから見えてくるのはスペイン、アルゼンチン、チリ、メキシコの作品がズラリ。申しわけ程度にペルー、コロンビア、グアテマラ、ブラジル、ポルトガル、肝心のウルグアイは何かノミネーションされていたかしら、いいえゼロです。メキシコでもアリエル賞と重なったのはガブリエル・リプスティンの"600 millas"だけのようです。映画祭の審査員も映画賞も「批評家」が選ぶわけではないので当然といえば当然かもしれない。作品賞にノミネートされた5作品のうち、グアテマラの8個はすべて『火の山のマリア』です。映画後進国グアテマラを応援する意味があるのでしょう。これは『大河の抱擁』についても言えること、アリエル賞の「イベロアメリカ映画賞」受賞作品です。

 

1986年、いわゆる「ウルグアイ・ラウンド」という通商交渉が行われたプンタ・デル・エステが開催地に選ばれた。ウルグアイは人口328万人(2011年)という南米でも2番めに小さい国、比較的治安の良い国と言われておりますが、昨今ではそうでもないということです。プンタ・デル・エステは大西洋に面したマルドナル県にある南米でも有数のリゾート地、富裕層がバカンスに訪れる。会場となる‘Centro de Convenciones de Punta del Este’は、まだ完成していないのか模型しか写真が入手できなかった。

 

   

             (お金持ちが集まる南米有数のリゾート地、プンタ・デル・エステ)

 

 

  

(会場となるプンタ・デル・エステ会議センターCentro del Convenciones の完成模型)

 

★主なカテゴリーのノミネーション(邦題『』は公開・映画祭上映作品、「」は仮題)

作品賞
"El Abrazo de la Serpiente"
 『大河の抱擁』 コロンビア、ベネズエラ、アルゼンチン 最多8
"El Clan"
 「ザ・クラン」 アルゼンチン、スペイン 6
"El club" 『ザ・クラブ』 チリ 6
"Ixcanul"
 『火の山のマリア』 グアテマラ 最多8
"Truman"
 「トルーマン」 スペイン、アルゼンチン 5


 『大河の抱擁』

   

          "El Clan"

    

               『ザ・クラブ』

    

      『火の山のマリア』

 

 
"Truman"

監督賞
アロンソ・ルイスパラシオス Alonso Ruizpalacios  "Güeros"『グエロス』(メキシコ)
セスク・ゲイ Cesc Gay 「トルーマン」
チロ・ゲーラ Ciro Guerra 『大河の抱擁』
パブロ・ララインPablo Larraín 『ザ・クラブ』
パブロ・トラペロ Pablo Trapero 「ザ・クラン」


         『グエロス』のアロンソ・ルイスパラシオス


男優賞
アルフレッド・カストロAlfredo Castro 『ザ・クラブ』
ダミアン・アルカサルDamián Alcázar "Magallanes"(ペルー、アルゼンチン・

  コロンビア・西) 監督:サルバドル・デル・ソラル
ギジェルモ・フランセージャGuillermo Francella 「ザ・クラン」
ハビエル・カマラJavier Cámara 「トルーマン」

リカルド・ダリンRicardo Darín  「トルーマン」


                    "Magallanes"のダミアン・アルカサル


女優賞
アントニア・セヘルスAntonia Zegers 『ザ・クラブ』
ドロレス・フォンシDolores Fonzi『パウリーナ』(アルゼンチン、ブラジル、フランス)

監督:サンティアゴ・ミトレ

エレナ・アナヤ Elena Anaya  "La memoria del agua"(チリ、アルゼンチン、西・独)

 監督:マティアス・ビゼ
インマ・クエスタInma Cuesta "La novia"(西・トルコ・独)監督:パウラ・オルティス
ペネロペ・クルスPenélope Cruz  "Ma Ma"(スペイン) 監督:フリオ・メデム



         『ザ・クラブ』のアントニア・セヘルス



『パウリーナ』のドロレス・フォンシ

 

 

              "La memoria del agua" のエレナ・アナヤ

 

              

                                                                 "La novia" のインマ・クエスタ

 

            

                            "Ma Ma" のペネロペ・クルス

 

オリジナル音楽賞
アルベルト・イグレシアス Alberto Iglesias  "Ma Ma"
フェデリコ・フシド Federico Jusid  "Magallanes"
ルカス・ビダル Lucas Vidal  "Nadie quiere la noche" 監督:イサベル・コイシェ
ナスクイ・リナレス Nascuy Linares 『大河の抱擁』
パスクアル・レイジェス Pascual Reyes『火の山のマリア』監督:ハイロ・ブスタマンテ


 "Nadie quiere la noche" ルカス・ビダル


ドキュメンタリー
"Allende mi abuelo Allende"
(チリ、メキシコ)『アジェンデ』

監督:マルシア・タンブッティ・アジェンデ
"Chicas nuevas 24 horas"
(西、アルゼンチン、パラグアイ、コロンビア、ペルー)

監督:マベル・ロサノ
"El botón de nácar" 『真珠のボタン』(チリ・仏・西) 監督:パトリシオ・グスマン
"La Once"
(チリ)監督:マイテ・アルベルディ
"The Propaganda Game"
(スペイン)監督:アルバロ・ロンゴリア
 

             マルシア・タンブッティ・アジェンデの "Allende mi abuelo Allende"

 

                  マベル・ロサノの "Chicas nuevas 24 horas"

 

        パトリシオ・グスマンの 『真珠のボタン』

 

マイテ・アルベルディの "La Once"

 

        アルバロ・ロンゴリアの "The Propaganda Game"


脚本賞
セスク・ゲイ、トマス・アラガイ Tomás Aragay 「トルーマン」
チロ・ゲーラ、ジャック・トゥーレモンド Jacques Toulemonde 『大河の抱擁』
ハイロ・ブスタマンテ Jayro Bustamante 『火の山のマリア』"
パブロ・ラライン、ギジェルモ・カルデロンGuillermo Calderón他 『ザ・クラブ』"
サルバドル・デル・ソラルSalvador Del Solar  "Magallanes"

撮影賞
アルナルド・ロドリゲス Arnaldo Rodríguez  "La memoria del agua"
ダビ・ガジェゴ David Gallego  『大河の抱擁』
ルイス・アルマンド・アルテアガ Luis Armando Arteaga 『火の山のマリア』
ミゲル・アンヘル・アモエド Miguel Ángel Amoedo  "La novia"
セルヒオ・アームストロング Sergio Armstrong  『ザ・クラブ』 

初監督作品賞
"600 millas"
(メキシコ) 監督:ガブリエル・リプスティン
"El desconocido"
(スペイン)『暴走車 ランナウェイ・カー』 監督:ダニ・デ・ラ・トーレ
"El patrón: Radiografía de un crimen"
(アルゼンチン、ベネズエラ)

監督:セバスティアン・シンデルSchindel
『火の山のマリア』 監督:ハイロ・ブスタマンテ
"Magallanes"
 監督:サルバドル・デル・ソラル


           セバスティアン・シンデルの"El patrón: Radiografía de un crimen"

 

        ガブリエル・リプスティンの "600 millas"

 

 ダニ・デ・ラ・トーレの『暴走車 ランナウェイ・カー』

初出に国名を入れ、写真は多数につき1作品1枚を原則に適宜選びました。録音賞・編集賞・美術賞などは割愛。

 

★昨年の作品賞は、ダミアン・ジフロンの『人生スイッチ』が10個ノミネーション、8個受賞とあんまりの結果にしらけました。今年はイベロアメリカ映画の将来を見据えての結果を期待したい。今回の総合司会者は、ウルグアイの女優・歌手・デザイナーのナタリア・オレイロ、お馴染みのサンティアゴ・セグラの二人。オレイロはルシア・プエンソの『ワコルダ』で少女の母親になった。

 

EGEDA (Entidad de Gestión de Derechos de los Productores Audiovisuales FIPCAFederación Iberoamericana de Productores Cinematográficos y Audiovisuales) が主催します。いわゆる視聴覚製作に携わる人々の権利を守るための管理交渉団体です。EGEDA1990年創設、活動は1993年から。スペイン、チリ、コロンビア、US、ペルー、ウルグアイ他などが参加しており、現会長はスペインのエンリケ・セレソ、副会長は同アグスティン・アルモドバル。

 

アリエル賞2016結果発表*『選ばれし少女たち』が大賞を独占!2016年06月01日 19:16

           ダビ・パブロス監督、両手にトロフィー

 

★今年58回目を迎えたアリエル賞、『選ばれし少女たち』の5個、“Gloria”の同5個、技術部門を制した“El más buscado”の4個という具合に3作に集中して幕を閉じました。なかで作品賞を含めて大賞を独り占めした『選ばれし少女たち』は、作品賞(カナナのパブロ・クルス)のほか監督賞・オリジナル脚本賞(ダビ・パブロス)・撮影賞(カロリーナ・コスタ)・新人女優賞(ナンシー・タラマンテス)、パブロスが両手にしているのは監督賞と脚本賞です。

 

           

            (両手にトロフィー、喜びのダビ・パブロス)

 

★本作はホルヘ・ボルピの同名小説“Las elegidas”に着想を得ている。原作は1970年代以降売春、人身売買の忌まわしい慣習の町として悪名高いトラスカラ州テナンシンゴの「ファミリー」に着想を得て書かれた小説。カナナのパブロ・クルスが映画化権を取り監督を探していた。若いダビ・パブロスに白羽の矢が立ち、しかし原文が難解なことから脚本をボルピに委ねた。ところが作家と監督の話合いの結果、場所をテナンシンゴから監督が育ったティフアナに移すとか、どんどん原作から離れてしまった。しかし原作と脚本に相違があるのはどの映画にも言えることで個人的にはノミネーションの段階からオリジナル脚本賞が妥当かどうか疑問に思っていました。ホルヘ・ボルピは今年の3月に来日して講演したのですが、後に監督も一緒だったと知りましたが、後の祭りでした。

 

★製作会社カナナについてはガエル・ガルシア・ベルナルディエゴ・ルナしか日本では紹介されていませんが、二人は俳優・監督と忙しく、実際にカナナを総括しているのはパブロ・クルスです。トロフィーも製作会社を代表して彼の手に渡りました。作品賞は製作者がもらう賞です。パブロ・クルスと監督のキャリア紹介は、カンヌ映画祭2015「ある視点」を参照してください。

 

       

      (トロフィーを高く掲げているのがパブロ・クルス、右後方に監督)

 

★カロリーナ・コスタの撮影賞受賞は嬉しい。カンヌ映画祭「ある視点」やラテンビートの紹介記事でも、彼女の画面構成、照明の当て方などを褒めたように記憶しています。ナンシー・タラマンテスはシンデレラ娘、まだ子供といってもいい15歳、キャリアはこれからです。

関連記事:カンヌ映画祭2015「ある視点」の記事は、コチラ⇒2015531

ラテンビート2015の記事は、コチラ⇒20151021

 

        文句なしのソフィア・エスピノサの女優賞受賞

 

★もう一つの5個受賞はクリスティアン・KellerGloria、女優賞(ソフィア・エスピノサ)・男優賞(マルコ・ペレス)・編集賞(アドリアナ・マルティネスパトリシア・ロメル)、メイクアップ賞(ダビ・ガメロス)・録音賞(マティアス・バルベロ他)の5賞です。

 

★女優賞は下馬評通りでした。他にジェラルディン・チャップリン(“Dolares de arena”)やハナ(ジャナ)・ラルイ(『モンスター・ウィズ・サウザン・ヘッズ』)など、既にご紹介した映画のヒロインもおりましたが、ソフィア・エスピノサの迫力には及びませんでした。メキシカン・ポップやロック界のアイコン、現在も活躍中のグロリア・トレビの栄光と転落を素材にしたビオピックだから強い。ノミネーション以来、アカデミー会員の信頼を事実上得たも同然だったし、自身も受賞を確信していたでしょう。プロデューサーのセルヒオ・アンドラーデ役のマルコ・ペレスも男優賞を受賞した。アルフォンソ・キュアロンの『アモーレス・ペロス』で長編デビュー、今回、特殊効果賞以下4賞を受賞した“El más buscado”、キュアロンの息子ホナス・キュアロン(クアロン)の第2作目“Desierto”などに出演している。

 

    

                          (ソフィア・エスピノサ)

 

    

 (ガラの写真が入手できないマルコ・ペレス、映画から)

 

         実在の銀行強盗を描いたミステリアスな人生

 

★タイトルが二転三転したホセ・マヌエル・クラビオトのEl más buscado、特殊効果賞(アレハンドロ・バスケス他)、視覚効果賞(エドガルド・メヒア他)、衣装賞(ヒルダ・ナバロ)、美術賞(バルバラ・エンリケス)の4賞。脱獄を繰り返している実在の銀行強盗アルフレッド・リオス・ガレアナを素材にしている。2006年に撮った短編El charro misteriosoを土台にして出来たのが長編El más buscado”である。IMDbはこちらを採用しているが、最近タイトルをMexican Gangsterに変更した。多分アメリカでの公開を意識しているのかもしれない。『選ばれし少女たち』は実際のテナンシンゴの「ファミリー」に着想を得ているし、Gloria”は実在のモデルがいる。「事実は小説よりも奇なり」と、今後ビオピックが映画界を席巻するのではないかと危惧してしまいます。

 

      

              (“El más buscado”のポスター)

 

600 millas2賞は、助演男優賞(ノエ・エルナンデス)とガブリエル・リプステイン(リプスタイン)の初監督作品賞です。ベルリン映画祭2015「パノラマ」部門の初監督作品賞受賞作品、サンセバスチャン映画祭2015「ホライズンズ・ラティノ」部門ほか、国際映画祭で上映されていた。ノミネーションも14カテゴリーと多く、アカデミー賞メキシコ代表作品でもあったから、もう少し賞に絡むかと思っていましたが残念でした。批評家の評価は高かったのですが、メキシコ公開では期待を裏切る興行成績、両者の乖離が明白になった印象です。メキシコ監督としては『夜の女王』や『大佐に手紙は来ない』など、カンヌ映画祭の常連だったアルトゥーロ・リプステインの息子。プロデューサー、脚本家。『大佐に手紙は来ない』の製作者の一人として映画界入りした。父親も現役ですからライバルです。

 

    

          (トロフィーを手にしたガブリエル・リプステイン)

 

★残念ついでに、ロドリゴ・プラの『モンスター・ウィズ・サウザン・ヘッズ』の脚色賞1個は如何にも寂しい。監督夫人のラウラ・サントゥリョの同名小説の映画化、脚本も彼女が手がけた。ということでオリジナル脚本賞にノミネーションされると考えていました。昨年の東京国際映画祭で上映され、監督とプロデューサーが来日して、Q&Aに出席した。

東京国際FF『モンスター・ウィズ・サウザン・ヘッズ』の記事は、コチラ⇒2015113

 

★栄誉賞にあたる「金のアリエル賞」は、ロシータ・キンテロポール・ルデュク、共にメキシコ映画黄金期のシネアスト二人が受賞した。

 

   

          (体調崩して車椅子で登壇したロシータ・キンタナ)

 

★イベロアメリカ映画賞は、パブロ・トラペロの“El Clan”(アルゼンチン)、セスク・ゲイの“Truman”(スペイン)などを制して、コロンビアのチロ・ゲーラ『大河の抱擁』でした。誰が受賞しても納得のいくノミネーションでした。3作とも既に紹介記事をアップしております。