ベルリン映画祭2017*結果発表2017年02月22日 21:35

         セバスティアン・レリオの新作、銀熊脚本賞を受賞

 

★この映画祭はやたらカテゴリーが多くて(コンペ、パノラマ、フォーラム、ゼネレーション、他)、イベロアメリカ映画だけに絞っているのに漏れが避けられない。コンペティション部門は、セバスティアン・レリオUna mujer fantástica(チリ独米西)だけだったから、さすがに漏れは避けられた。下馬評が高得点だったので何かの賞に絡んで欲しいと思っていた。思いが通じたか監督とゴンサロ・マサが共同執筆した「銀熊脚本賞」とエキュメニカル審査員賞スペシャルメンション、テディー賞を受賞した。

 

  

    (左から、主役のダニエラ・ベガ、監督、共同執筆者ゴンサロ・マサ)

 

 

        (テディー賞のトロフィーを手にしたダニエラ・ベガ)

 

★前作『グロリアの青春』13)ではグロリアに扮したパウリナ・ガルシアが女優賞を受賞、監督にとってベルリン映画祭は相性がいい。ラテンビート上映後公開される幸運に恵まれました。本作もラテンビートあるいは2016年から「レインボー・リール東京~東京国際レズビアン&ゲイ映画祭」と名称が変わった映画祭などを期待していいでしょう。ダニエラ・ベガが扮するマリナ・ビダル性転換して女性に生れ変わる男性の物語、テーマとしては、もう抵抗ないですね。

 

     

      (プレス会見に臨んだセバスティアン・レリオ、ベルリン映画祭より)

 

    カルラ・シモンのデビュー作、第1回作品賞オペラ・プリマ賞を受賞

 

★スペインからはジェネレーション部門出品のカルラ・シモンVerano 1993(原題「Estiu 1993」、「Summer 1993」)が、第1回監督作品賞、観客賞を受賞した。母親の死にあって養女に出される6歳の少女フリーダの物語。新しい家族となった養父母と一緒に最初の夏を過ごし、新しい世界に溶け込むことを学んでいく。監督の子供時代がもとになっている由。フリーダをライア・アルティガス、養母をブルナ・クシ、養父をダビ・ベルダゲルが演じる。各紙誌ともこぞってポジティブ評価で、今年のスペイン映画の目玉になりそうです。田園の美しい映像、情感豊かで細やかな描写は予告編を見るだけで伝わってきます。子役とアニマルが出る映画には勝てないと言われるが、どうやらハンカチが必需品のようだ。

 

    

 (映画の一部を取り込んだVerano 1993」のポスター)

 

   

                          (養母に抱かれたフリーダ)

 

★カルラ・シモンは、1986年バルセロナ生れの監督、脚本家。2009年バルセロナ自治大学オーディオビジュアル・コミュニケーション科を卒業、その後カリフォルニア大学で脚本と監督演出を学び、試験的な短編「Women」と「Lovers」を制作する。2011年、ロンドン・フィルム学校に入り、ドキュメンタリーやドラマを撮っている。アルベルト・ロドリゲス監督の強い後押しのお蔭で製作できたと語っている。いずれ詳細をご紹介したい作品です。

 

           

   (カルラ・シモン、ベルリン映画祭にて)

 

     エベラルド・ゴンサレスのドキュメンタリー、アムネスティ映画賞を受賞

 

★ベルリナーレ・スペシャル部門のアムネスティ国際映画賞受賞作品は、メキシコのエベラルド・ゴンサレスのドキュメンタリーLa libertad del diablo(「Devil's Freedom」)。ベルリンの観客を身動きできなくさせたと報道された暴力と悪事が主人公のドキュメンタリー。現在のメキシコで起きている地獄の暴力が描かれており、同情は皆無、犠牲者、殺し屋、警察官、軍人などの証言で綴られている。

 

 

★昨年のモレリア映画祭の受賞作品、ベルリンがワールド・プレミア。「残虐な行為はいとも簡単に行われる」とゴンサレス監督。

 

     

 (エベラルド・ゴンサレス監督、ベルリン映画祭にて)

 

★今年の金熊賞はハンガリーのIldiko Enyediイルディコ・エニェディOn Body and Soulが受賞した。他に国際批評家連盟賞FIPRESCIもゲット、寡作ですがカンヌやベネチアでも受賞しているベテラン、1955年ハンガリーのブダペスト生れの監督、脚本家。監督賞に甘んじたフィンランドのアキ・カウリスマキを推す審査員もいたのではないでしょうか。グランプリ審査員賞はセネガル、アルフレッド・バウアー賞はポーランド、男優賞はドイツ、女優賞は韓国など、受賞者がばらけて閉幕しました。

 

   

         (大賞を射止め満面に笑みのイルディコ・エニェディ監督)

   

『キリング・ファミリー』アドリアン・カエタノ*「シネ・エスパニョーラ2017」2017年02月20日 15:10

       『キリング・ファミリー 殺し合う一家』は犯罪小説の映画化

 

325日から2週間限定で開催される「シネ・エスパニョーラ20175作品の一つ、アドリアン・カエタノ『キリング・ファミリー 殺し合う一家』のご紹介。前回アドリアン・カエタノ映画はオール未公開と書きましたが、未公開には違いないのですが、2013年の前作「Mala」が『イーヴィル・キラー』の邦題でDVD発売(20139月)されておりました。本作の原題「El otro hermano」が『キリング・ファミリー 殺し合う一家』と、いささかセンセーショナルな邦題になった遠因かもしれません。新作はアルゼンチンの作家カルロス・ブスケドの小説Bajo este sol tremendoに着想を得て映画化されたもの。

 

 

『キリング・ファミリー 殺し合う一家』(「El otro hermano」英題「The Lost Brother」)2017

製作:Rizoma Films(アルゼンチン) / Oriental Films(ウルグアイ) / MOD Producciones(西) / Gloria Films()    協賛:Programa Ibermedia/ INCAA / ICAU / ICAA

監督・脚本:イスラエル・アドリアン・カエタノ

脚本():ノラ・Mazzitelli(マッツィテッリ?) 原作:カルロス・ブスケド

撮影:フリアン・アペステギア

音楽:イバン・Wyszogrod

編集:パブロ・バルビエリ・カレラ

製作者:ナターシャ・セルビ、エルナン・ムサルッピ

 

データアルゼンチン、ウルグアイ、スペイン、フランス合作、スペイン語、2017年、犯罪スリラー、113分、撮影地:サン・アントニオ・デ・アレコ(ブエノスアイレス)、ラパチト(アルゼンチン北部のチャコ州)など、撮影は2016125日から311日の約7週間、これから開催される第34マイアミ映画祭2017がワールド・プレミア、第20マラガ映画祭2017の正式出品が決定しています。

 

キャスト:ダニエル・エンドレル(セタルティ)、レオナルド・スバラグリア(ドゥアルテ)、アンヘラ・モリーナ(セタルティの母)、パブロ・セドロン、アリアン・デベタック、アレハンドラ・フレッチェネル、マックス・ベルリネル、他

 

プロット・解説:故郷ラパチトで暮らしていた母親と弟ダニエルの死を機に闇の犯罪組織に否応なく巻き込まれていくセタルティの物語。セタルティは打ちのめされた日々を送っていた。仕事もなく、何の目的も持てず、テレビを見ながらマリファナを吸って引きこもっていた。そんなある日、見知らぬ人から母親と弟が猟銃で殺害されたという情報がもたらされる。ブエノスアイレスからアルゼンチン北部の寂れた町ラパチトに、家族の遺体の埋葬と僅かだが掛けられていた生命保険金を受け取る旅に出発する。そこではドゥアルテと名乗る町の顔役が彼を待ち受けていた。元軍人で家族の殺害者の友人でもあるというドゥアルテの裏の顔は、この複雑に入り組んだ町の闇組織を牛耳るボスで誘拐ビジネスを手掛けていた。セタルティは次第に思いもしなかった裏組織の犯罪に巻き込まれていく。

 

   

        (ドゥアルテ役のスバラグリアとセタルティ役のエンドレル)

 

★まだワールド・プレミアしていないせいか、現段階ではプロットが日本語公式サイトとスペイン語版にかなりの齟齬が生じています。人名もダニエル・エンドレルが演じるハビエルは、スペイン語版及びIMDbではカルロス・ブスケドの原作と同じセタルティとなっている。映画化の段階で変更したとも考えられるが一応上記のようにしました。監督が小説にインスピレーションを受けて映画化したと語っているので、映画でハビエルに変更したとも考えられます。プロットも映画のほうが複雑になっている。原作と映画は別作品ですから人名やプロットの変更は問題なしと思います。いずれにしろ公開までにはっきりすると思うので、それを待って追記いたします。

 

  

              (ダニエル・エンドレル、映画から)

 

本作クランクイン時のインタビューで「登場人物の行動を裁く意図はなく、むしろアウトサイダー的な生き方しかできない彼らに寄り添いながら旅をして支えていく、そういう彼らの紆余曲折を語りたい。そうすることが政治的な不正や反逆の方向転換になると考えるから」と語っている。存在の空虚さ、責任感のなさ、拷問についての政治的な倫理観の欠如、これらは過去の監督作品Un oso rojo『イーヴィル・キラー』の通底に流れるテーマと言えます。

 

 

             (フリオ・チャベスが好演したUn oso rojoのポスター)

 

イスラエル・アドリアン・カエタノIsrael Adorián Caetanoは、1969年モンテビデオ生れのウルグアイの監督、脚本家。ウルグアイは小国でマーケットが狭く主にアルゼンチンで映画を撮っている。デビュー作Bolivia01)がカンヌやロッテルダム映画祭で高評価を受け、その後Un oso rojo02A Red Bear)、Crónica de una fuga06Chronical of an Escapa)、Francia09Mala13、英題「Evil Woman『イーヴィル・キラー』DVDなどの問題作を撮っている。その他、短編、長編ドキュメンタリー、シリーズTVドラなどで活躍している実力者。

 

    

                      (イスラエル・アドリアン・カエタノ監督)

 

 

(本作撮影中の監督とダニエル・エンドレル)

 

原作者カルロス・ブスケドは、1970年チャコ州のロケ・サエンス・ペニャ生れ、現在はブエノスアイレス在住。小説執筆の他、ラジオ番組、雑誌「El Ojo con Dientes」に寄稿している。

 

   

               (原作者カルロス・ブスケド)

 

キャスト陣、ドゥアルテ役のレオナルド・スバラグリアは、1970年ブエノスアイレス生れ、エクトル・オリヴェラの『ナイト・オブ・ペンシルズ』(86)でデビュー、TVドラで活躍後、1998年スペインに渡り活躍の場をスペインに移す。マルセロ・ピニェイロの『炎のレクイエム』(00)、フアン・カルロス・フレスナディジョの『10億分の1の男』(01)、ビセンテ・アランダの『カルメン』(03)のホセ役、マリア・リポルの『ユートピア』(03)など、スペイン映画出演も多い。最近ヒットしたダミアン・ジフロンの『人生スイッチ』(14)の第3話「エンスト」でクレージーなセールスマンを演じてファンを喜ばせた。

『人生スイッチ』やキャリア紹介は、コチラ2015729

 

  

                      (レオナルド・スバラグリア、映画から)   

 

★母親役アンヘラ・モリーナはパブロ・ベルヘルの『ブランカニエベス』の祖母役、アルモドバルの『抱擁のかけら』の母親役、細い体にもかかわらず5人の子だくさんは女優として珍しい。海外作品の出演も多く、昨2016年の国民賞(映画部門)を受賞した。仕事と家庭を両立させていることが、ペネロペ・クルスのような若手女優からも「将来なりたい女優」として尊敬されている。

アンヘラ・モリーナの紹介記事は、コチラ2016728

 

  

      (最近のアンヘラ・モリーナ)

 

★当ブログ初登場のダニエル・エンドレルは、1976年モンテビデオ生れのウルグアイの俳優、監督、脚本家、製作者。上記のスバラグリア同様アルゼンチンで活躍している。2000年、ダニエル・ブルマンのいわゆる「アリエル三部作」の主人公アリエル役でデビュー。第一部『救世主を待ちながら』は東京国際映画祭で特別上映され、2004年、第二部僕と未来とブエノスアイレスは、ベルリン映画祭の審査員賞グランプリ(銀熊)、クラリン賞(脚本)、カタルーニャのリェイダ・ラテンアメリカ映画祭では作品・監督・脚本の3を独占した。第三部Derecho de familia06)は未公開、今作ではかつてのアリエル青年も結婚した父親役を演じた。公開作品ではパブロ・ストール&フアン・パブロ・レベージャのウルグアイ映画『ウイスキー』04)にも脇役で出演、両監督の「25 Watts」でも主役を演じた。

 

 

    (邦題僕と未来とブエノスアイレス』と訳された「El abrazo partido」のポスター

 

  

(父親役を演じたアリエル、Derecho de familia」の一場面

 

『インビジブル・ゲスト』オリオル・パウロ*「シネ・エスパニョーラ2017」」2017年02月17日 14:04

       『ロスト・ボディ』オリオル・パウロ2作目、早くも劇場公開!

  

325日から始まる「シネ・エスパニョーラ2017の上映作品の一つ『インビジブル・ゲスト 悪魔の証明』のご紹介。先日ベルリン映画祭に出品されるアレックス・デ・ラ・イグレシアの新作をご紹介ついでに、「こちらは公開されるかもしれない」と予想した通りになりました。こちらとは本作のこと、スペイン公開が16日、まだDVD発売もクローズ期間中に公開されるとは思いませんでした。現在デ・ラ・イグレシア監督のお気に入りマリオ・カサスがやり手の実業家アドリアン・ドリアを演じる。彼は愛人殺害の容疑者として突然逮捕される。その愛人ラウラにバルバラ・レニー『マジカル・ガール』)、息子の復讐に燃える父親にホセ・コロナド『悪人に平穏なし』『スモーク・アンド・ミラー』)、重要人物の辣腕弁護士ビルジニア・グッドマンにベテランのアナ・ワヘネル『ビューティフル』『スリーピング・ボイス~沈黙の叫び』)という申し分のないキャスト陣で展開されます。

 

 

 

『インビジブル・ゲスト 悪魔の証明』Contratiempo 英題 The Invisible Guest2016

製作:Atresmedia Cine / Think Studio / Nostromo Pictures / TV3 Films / ICAA / Movister / ほか

監督・脚本:オリオル・パウロ

撮影:ハビ・ヒメネス(『アレクサンドリア』Palmeras en la nieves

音楽:フェルナンド・ベラスケス(『インポッシブル』Gernika

編集:ジャウマ・マルティ(『インポッシブル』Un monstruo viene a verme

美術:エバ・トーレス

衣装デザイン:ミゲル・セルベラ

メイクアップ&ヘアー:ルベン・マルモル

製作者:ソフィア・ファブレガス(エグゼクティブ)、メルセデス・ガメロ、サンドラ・エルミダ、アドリアン・ゲーラ、他多数

 

データ:製作国スペイン、スペイン語、2016106分、スリラー、製作費約400万ユーロ、撮影地バルセロナ自治州テラサTerrassa、ピレネー山地のVall de Núria、期間201512月ほか、配給元ワーナー・ブラザーズ・ピクチャー・イスパーニャ。米国ファンタスティック・フェスト(2016923日)、ポートランド映画祭20172月、ベルグラード映画祭20173月、スペイン公開201716日、日本公開同325日、他

 

キャスト:マリオ・カサス(実業家アドリアン・ドリア)、アナ・ワヘネル(弁護士ビルジニア・グッドマン)、バルバラ・レニー(ドリアの愛人ラウラ・ビダル、写真家)、ホセ・コロナド(ダニエルの父トマス・ガリード)、フランセスク・オレリャ(ドリアの顧問弁護士フェリックス・レイバ)、パコ・トウス(運転手)、ダビ・セルバス(ブルーノ)、イニィゴ・ガステシ(ダニエル・ガリード)、マネル・ドゥエソ(ミラン刑事)他

 

物語:突然災難に見舞われるハイテク企業の経営者アドリアン・ドリアの物語。アドリアンは山岳ホテルの部屋に踏み込まれた警察によって目覚める。傍らには愛人ラウラの死体があり、ラウラ殺害容疑者として逮捕される。彼はアジア市場の商取引で知り合った辣腕弁護士ビルジニア・グッドマンを雇い入れることを決心する。二人は無実を証明するべく事件解明に着手するが、彼は昨晩のことをよく思い出せない。どうしても刑務所への収監を逃れたいアドリアンは、愛人ラウラとの関係、自動車衝突事故によるダニエル・ガリードの死に二人が苦しんでいたことを語った。そこで弁護士は新証人を登場させて混乱させる戦略に出る。ほとんど完成が不可能と思われるジグソーパズルの真実と嘘を嵌めこむことになるだろう。

 

  

 

                                           (アドリアン・ドリア役のマリオ・カサス)

 

 

(ラウラ・ビダル役のバルバラ・レニー)

  

 

             (グッドマン弁護士役のアナ・ワヘネル)

 

 

                    (ダニエル・ガリードの父親役のホセ・コロナド)

 

 

(マリオ・カサスとバルバラ・レニー)

 

オリオル・パウロOriol Pauloは、1975年バルセロナ生れ、監督、脚本家。1998年「McGuffin」で短編デビュー、カタルーニャTVのドラマ・シリーズ「El cor de la ciutat」(カタルーニャ語20040970エピソード)を執筆して脚本家として経験を積む。2010年ギリェム・モラレスの『ロスト・アイズ』の脚本を監督と共同執筆、2012『ロスト・ボディ』で長編デビュー、ゴヤ賞2013の新人監督賞にノミネートされた。本作が第2作となる。

 

  

         (ホセ・コロナドに演技指導をするオリオル・パウロ監督)

 

★原タイトルの「Contratiempo」の意味は、不慮の出来事、災難のこと、邦題は英語題のカタカナ起こしです(多分字幕は英語訳と思います)。いずれにせよ、フアン・アントニオ・バヨナやアメナバル作品を手掛けているスタッフ陣、スペインでもベテラン中堅若手と実力派で固めたキャスト陣、特に脇役の弁護士フェリックス・レイバ役のフランセスク・オレリャ『ロスト・アイズ』)、ミラン刑事役のマネル・ドゥエソ(『EVAエヴァ』『ロスト・ボディ』)はバルセロナ派のベテランです。デ・ラ・イグレシアの『クローズド・バル~』やキケ・マイジョの『ザ・レイジ~』主演のマリオ・カサス以下は当ブログでも度々登場させています。映画祭上映、公開作品も多いので既にスペイン映画ファンにはお馴染みの面々かと思います。

公式サイトと固有名詞の表記が若干異なりますが、当ブログではスペイン語読みに近い表記でアップしております。


スペイン映画公開作品*2017年前半2017年02月15日 17:45

         かつてのホラーからスリラー&アクション映画へ?

 

2月末から3月にかけて短期間ながら公開されるスペイン映画(11回上映、レイトショーを含む)スリラー2本のご紹介。ヒューマントラストシネマ渋谷、上映スケジュールが変則です。特に『バンクラッシュ』の上映時間は要確認です。

 

『スモーク・アンド・ミラー 1000の顔を持つスパイ』(「El hombre de las mil caras」)

 監督:アルベルト・ロドリゲス(『マーシュランド』)、サスペンス、2016、123

 ヒューマントラストシネマ渋谷、レイトショー2105

 225日(土)~27日(月)、31日(水)~33日(金)、37日(火)

 DVD発売201745

当ブログの主な作品・監督紹介記事は、コチラ2016924

 

 

 

    (左から、ロルダン役のカルロス・サントス、カモエス役のホセ・コロナド)

 

  

 (ロルダンとその妻マルタ・エトゥラ)

 

『バンクラッシュ』(「Cien años de perdón」)スペイン・アルゼンチン・フランス、2016

 監督:ダニエル・カルパルソロ(『インベーダー・ミッション』)、スリラー、96

 ヒューマントラストシネマ渋谷

 228日(火1915)、34日(土1140)、35日(日1520)、36日(月1930)、

 38日(水1930)、39日(木2130)、310日(金1140

 DVD発売201733

当ブログの主な作品・監督紹介記事は、コチラ201673

 

   

 

325日(土)よりシネマート新宿とシネマート心斎橋にて、2週間限定で公開される「シネ・エスパニョーラ2017のご紹介。アレックス・デ・ラ・イグレシアの最新作を含む5本です。『キリング・ファミリー 殺し合う一家』は、アルゼンチン、ウルグアイ他の合作映画、アドリアン・カエタノ監督は1969年モンテビデオ生れのウルグアイの監督、脚本家。デビュー作「Bolivia」(01)がカンヌやロッテルダム映画祭で高評価、その後「Un oso rojo」(02)、「Cronica de una fuga」(06)、「Francia」(09)などすべて未公開ながら問題作を撮っている実力者。新作はカルロス・ブスケドの小説「Bajo este sol tremendo」の映画化、邦題が凄まじいがお薦め作品です。またデ・ラ・イグレシアの新作は今秋のラテンビート上映はなくなりそうですね。

 

上映スケジュール、紹介記事はコチラ

  http://www.albatros-film.com/movie/cineespanola2017/

 

 

『ザ・レイジ 果てしなき怒り』(「Toro」)2016 

 監督:キケ・マイジョ(『EVAエヴァ』)、マラガ映画祭2016コンペティション外上映作品、

 スリラー・アクション、107

当ブログの主な作品・監督紹介記事は、コチラ2016414

 

    

     (ポスター左から、ルイス・トサール、マリオ・カサス、ホセ・サクリスタン)

 

『インビジブル・ゲスト 悪魔の証明』(「Contratiempo」)2016

 監督:オリオル・パウロ(『ロスト・ボディ』)、サスペンス、106

 

  

 (ポスター左から、ホセ・コロナド、マリオ・カサス、アナ・ワヘネル、バルバラ・レニー)

 

『クリミナル・プラン 完全なる強奪計画』(「Plan de Fuga」)2017

 監督:イニャキ・ドロンソロ、サスペンス・アクション、105

 

 

 (ポスター左から、アライン・エルナンデス、アルバ・ガローチャ、ルイス・トサール、

  ハビエル・グティエレス)

 

『クローズド・バル 街角の狙撃手と8人の標的』(「El bar」)2017

 監督:アレックス・デ・ラ・イグレシア(『スガラムルディの魔女』)、107

 ベルリン映画祭2017コンペティション外上映作品、スリラー群集劇

当ブログの簡単な紹介記事は、コチラ2017122

 

   

        (バルに閉じ込められた8人と中央にデ・ラ・イグレシア監督)

 

『キリング・ファミリー 殺し合う一家』El otro hermano」、英題The Lost Brother」)、2017

 アルゼンチン、ウルグアイ、スペイン、フランス合作、マイアミ映画祭2017上映

 監督:イスラエル・アドリアン・カエタノ、犯罪ドラマ、113

 

  

      (ポスター左から、ダニエル・エンドレル、レオナルド・スバラグリア)

  

ゴヤ賞2017授賞式*あれこれ落穂ひろい ⑫2017年02月11日 17:48

         男女平等をアピールした栄誉賞受賞者、アナ・ベレン

     

              

                 (勢揃いした受賞者たち)

 

★授賞式はマドリード・マリオット・オーディトリウム・ホテルで24日(土)2200より少し遅れて開始されました。スペイン国営テレビが1800から赤絨毯に現れるシネアストたちを中継して盛り上げるという大イベントでした。ベスト・ドレッサーにも選ばれた栄誉賞受賞のアナ・ベレンは 2011年に他界したスペインのデザイナー、ヘスス・デル・ポソが創設したデルポソDelpozonoブランドのオフホワイトのドレスで赤絨毯を踏みました。一緒だったのはアトリエ・ヴェルサーチがご贔屓の黒い衣装を纏ったペネロペ・クルス、昨年も同じヴェルサーチのミラノ・ファッションでした。今回は夫君ハビエル・バルデムは欠席、アルモドバルと旧交を温めていたようです。

 

      

       (アルモドバルとぴったり肌を被った黒いドレスのペネロペ・クルス)

 

★授賞式は約3時間と時間短縮がアナウンスされていたように、総合司会者のダニ・ロビラの皆さん「おやすみなさい、そして名画を」(0057)で無事お開きとなりました。受賞者が友人、両親、祖父母、叔父さん叔母さんなど長々と感謝の辞を連ねる場合には、壇上に控えるフィルム・シンフォニー・オーケストラが警告の足踏みを始めるとなっていました(笑)。茶目っ気のある魅力的な素質がぎっしり詰まったダニ・ロビラの進行ぶりを「よくやった」と褒める人が多かったようです。開会前に「政治の話は10秒だけ」と冗談をとばしていた通り、政治的発言を自らに封じたこともあったかもしれない。

 

           

              (3度目の総合司会者ダニ・ロビラ)

 

★一番会場が盛り上がったのは、もちろん栄誉賞でした。プレゼンターは3人の監督、マヌエル・ゴメス・ペレイラ、フェルナンド・コロモ、ホセ・ルイス・ガルシアと実に豪勢でした。アナ・ベレンは手にしたメモを見ながら「私は約50年前から映画界で仕事をしているが、女性シネアストは正当に評価されていない」というようなことをスピーチした。1972年に結婚した作曲家で歌手のビクトル・マヌエルに触れて「彼なしの人生はなかった」と感謝の言葉、ビクトルは娘さんと赤絨毯を踏みました。栄誉賞は一度きり、さすがに時間制限はなかったのか長かった。最後に「健康と映画を祝して」で締めくくりました。

 

   

    (左から、アナ・ベレン、M・ゴメス・ペレイラ、F・コロモ、JL・ガルシア)

 

★初めてではないがアカデミー映画会長が女性ということもあって、男女平等、機会均等が叫ばれ、クカ・エスクリバノのように「もっと女性にチャンスを」と編み込んだショールを纏って赤絨毯を踏んだ女優も現れました。活躍が目立つようになったのはここ十年くらいで、第1回ゴヤ賞1987では女性受賞者は女性でしか貰えない主演・助演女優賞だけでした(新人賞は未だなかった)。初めて監督賞を受賞したのは、ピラール・ミロ1997『愛は奪った』)、次がイシアル・ボリャイン2004『テイク・マイ・アイズ』)、そしてイサベル・コイシェ2006『あなたになら言える秘密のこと』)と続きました。三人とも来日しています。ノミネーションまで広げるなら昨年のパウラ・オルティス2回のグラシア・ケレヘタなどがあげられます。最近来日予定のチュス・グティエレス、今回新人監督賞ノミネートのネリー・レゲラ、他のカテゴリーで自作がノミネーションされている監督では、マリア・リポルマリナ・セレセスキーイサ・カンポと層の厚さを感じさせます。また例外的なのは衣装デザイン賞とメイクアップ&ヘアー賞の2部門、受賞者の半分以上が女性です。

 

    

                (クカ・エスクリバノ)

 

                  ラウル・アレバロの執念が実った夕べでした!

 

★最初から決定していたのではないかと思われたのが作品賞のTarde para la iraの受賞でした。制作会社はLa Canica Filmsベアトリス・ボデガスラウル・アレバロ監督でした。『E.T.』やブルース・リーに夢中だった少年が撮った映画は、構想9年、俳優の仕事を掛け持ちしながらの脚本執筆、資金集めと執念のデビュー作でした。国営テレビの資金援助は受けたが民放TV局からは受けずに、200万ユーロで撮ったことがアカデミー会員の心象を好くした一因かもしれない。今までに培った人間関係なくしてこの映画は完成させられなかっただろうことは、キャスト、スタッフの顔ぶれをみればわかることす。新人監督賞、オリジナル脚本賞、マノロ・ソロが助演男優賞と4賞を制した。『ゴモラ』(08、マッテオ・ガローネ)、『わらの犬』(71、サム・ペキンパー)やダルデンヌ兄弟、ジャック・オーディアール、カルロス・サウラの映画がミックスされているそうです。

 

    

            (ベアトリス・ボデガスとラウル・アレバロ)

 

★監督賞ノミネーションはオール男性でしたが、作品賞にはベアトリス・ボデガスの他、『ジュリエッタ』のエステル・ガルシアメルセデス・ガメロは『スモーク・アンド・ミラー』と Que Dios nos perdone 2作、同じく Que Dios nos perdone マリエラ・ベスイエブスキーUn monstruo viene a vermme ベレン・アティエンサという具合に、男性陣に交じって女性プロデューサーの進出が顕著でした。

 

★以前から本作を本命としていた「エル・パイス」の批評家カルロス・ボジェロ、辛口でめったに褒めない批評家として嫌われ者だが、今回は「この胡散臭い、過激で、見る人を不安にさせる、地方都市の風土をぎっしり詰め込んだ映画が受賞することに、何ら異論の余地はない」とアレバロの並外れた活力、透明な才知を称賛しています。それが即 Un monstruo viene a vermme  Ocho apellidos vascos<トレンテ・シリーズ>のような興行成績につながらない現状が悩みの種かもしれません。

         

        ずっとうるうるだったフアン・アントニオ・バヨナ監督

 

★どうしてフアン・アントニオ・バヨナがうるうるだったかというと、自身の監督賞以外に撮影・編集・美術・録音以下8賞も受賞してしまったから。その度に壇上の受賞者から感謝の言葉が贈られるので涙の乾く暇がなかったというわけでした(笑)。なかにはうんざり組も大勢いたことでしょうが、何しろ2016年の興行成績が国内だけでダントツの2600万ユーロ(観客動員数450万人)ですから大目にみなければなりません。4位の『バンクラッシュ』、6位の『KIKI~』以下は桁が違います。2位、3位、5位はノミネートされていませんでした。

 

           

          (涙腺が開いたままのフアン・アントニオ・バヨナ

 

★フランコ体制時代に一家でバルセロナ市郊外のベッドタウンに移り、『スーパーマン』に魅せられながら育ったバヨナ少年も41歳、スペイン人俳優を起用せず英語で撮った作品で効率よく9賞をゲットした。彼の涙に感染した来場者も多かったようだが、先のボジェロ氏曰く「映画を見て泣いた人は僅かだったのでは」とワサビの効きすぎた批評、だから嫌われる。本作は『永遠のこどもたち』『インポッシブル』に続く「母子三部作」の最終作、第2作目は世界規模の成功を収めて、危機に瀕したスペイン経済の外貨獲得に寄与した。政府もその貢献度に報いるため2013年度の「国民賞」(映画部門)を贈った。これは今後とも破られることがない最年少受賞でしょう。これからのスペイン映画界を背負う存在なのは間違いありません。本作の日本公開は初夏6月の予定です。

 

       エンマ・スアレス、主演・助演のダブル受賞は30年ぶりの快挙

 

エンマ・スアレスダブル受賞に違和感を覚えたファンも少なからずいたことでしょう。とりあえずアルモドバルが無冠にならずほっとした関係者がいたに違いありません。アルモドバルも登壇しましたが、女優賞に監督まで登壇するのはあまり例を見たことがありません。ダブル受賞は第2回ゴヤ賞1988ベロニカ・フォルケ以来のこと、フェルナンド・コロモのコメディLa vida alegre で主演、ガルシア・ベルランガの同じくコメディ"Moros y Cristianes"で助演を受賞しました。女優男優を問わずノミネーションは結構おりますが受賞までいかない。アルモドバル嫌いはスアレスの魅力的な演技を褒めたついでに「映画は空虚なまやかしの悲劇」とくさし、ペネロペ・クルスの演技は申し分なかったと、無冠に終わったフェルナンド・トゥルエバに気配りした。何事によらず十人十色です。

 

     

            (ゴヤの胸像をを両手にエンマ・スアレス)

 

★主演男優賞のロベルト・アラモは、三大映画賞(フォルケ、フェロス、ゴヤ)を制したことになりますが、これまた『スモーク・アンド・ミラー』の「エドゥアルド・フェルナンデスの演技は完璧だった」と、暗にアラモの三冠に異を唱える意見も聞かれました。アラモ登壇の折には若いロドリゴ・ソロゴイェン監督もバヨナと同じく目を潤ませていました。

 

      シルビア・ペレス・クルスの歌曲賞「Ai, ai, ai」に会場盛り上がる

 

エドゥアルド・コルテスのミュージカル・ドラマ Cerca de tu casa の中で、シルビア・ペレス・クルスが歌うAi, ai, aiが歌曲賞に輝いた。経済危機のあおりを受けて二人とも失業してしまった若い夫婦の物語。彼女はこの妻ソニア役で新人女優賞にもノミネートされていた。家賃が払えずアパートを追い出され、仕方なく10歳の息子を連れて親の家に転がり込むが、両親も・・・という切ない話ですが、ゴヤの胸像を胸にシルビアが「耐えられないのは住む家のない人、住む人のいない家」と「アイ・アイ、アイ」の一節を歌った。これは出席者の心を揺さぶる瞬間だったとか。 

          

        (「アイ・アイ、アイ」を口ずさむシルビア・ペレス・クルス)

 

★残念ながら無冠に終わった『KIKI~』組の皆さん、ビシッときめた白装束でカメラに収まったパコ・レオン監督を中央にベレン・クエスタ(新人女優賞)とカンデラ・ペーニャ(助演女優賞)の曲者3人組。 

       

作品賞候補者の5監督がスペイン映画の可能性を語り合う*ゴヤ賞2017 ⑪2017年02月08日 13:34

    「消費税増税以外のことも話し合いたい・・」とフアン・アントニオ・バヨナ

 

★授賞式を目前にした128日(土)の午前中、作品賞ノミネーションの5監督が一堂に会する座談会が「エル・パイス」紙の編集室でもたれました。ガラ以前にアップするつもりで準備しておりましたが、順序が逆になってしまいました。今では恒例になっている座談会のようですが、1961年生れのアルモドバルが最年長と、平均年齢も下がって世代交代の印象を受けました。増税問題(7%から21%の増税)に対する考えも少しずつニュアンスが異なり、それがとりもなおさず映画制作の違いにもなっているようです。出席5監督とは、以下の5人です。

 

     

   (左から、J.A.バヨナ、R.アレバロ、R.ソロゴイェン、A.ロドリゲス、P.アルモドバル)

 

ペドロ・アルモドバル(カルサダ・デ・カラトラバ194967

 Julieta 『ジュリエッタ』(作品・監督賞以下7個)

アルベルト・ロドリゲス(セビーリャ197145

 El homre de las mil caras”『スモーク・アンド・ミラーズ』(作品・監督賞以下11個)

ロドリゴ・ソロゴイェン(マドリード198135

 Que Dios nos perdone”“May God Save Us”(作品・監督賞以下6個)

ラウル・アレバロ(モストレス197937

 Tarde para la ira”“The Fury of a Patient Man”(作品・新人監督賞以下11個)

フアン・アントニオ・バヨナ(バルセロナ197541

 Un monstruo viene a verme”“A Monster Calls”(作品・監督賞以下12個、西米英カナダ)

 

J.A.バヨナ「消費税増税以外のことも話し合いたい・・」とまず口火を切った。彼はスペイン映画の危機は増税だけが問題ではなく、もっと学校教育など社会構造的な問題があると常日頃から発言しています。それに対してアルモドバルは、それは勿論そうだがこれを除外することはできない、小さな問題ではないからと主張する。「大きい問題には違いないがそれが唯一ではない・・・フランスでは興行成績が落ち込んだとき、文化大臣と製作者たちが会合をもって改善策を話し合った。しかしスペインでは決してそうならない」とバヨナ。「それは一理あるが、私たちはフランスにいるわけじゃないから、両国のやり方を比較しても始まらない。フランス人は過度の自国崇拝主義者だし、フランス映画はすでに減価償却している。私たちは観客にスペイン映画を好きになってくれとは頼めない。子供のときからスペイン映画はスペイン的特質を誇張したものばかりだと蔑む意見を聞かされてきた」とアルモドバル。ごもっともな意見です。「私たちは観客に何かを要求すべきじゃないが、政府には言うべきことは言うべきです」と一番若いR.ソロゴイェン、増税と闘う必要があるという立場をとった。

 

 

(左から、ロベルト・アラモ、ソロゴイェン、デ・ラ・トーレQue Dios nos perdone

 

    「財政赤字が解消されたら消費税を見直します」とメンデス・デ・ビゴ文化相

 

★文化にかける大幅消費税IVA増税問題は下火になる気配は全くない。文化相メンデス・デ・ビゴは、「財政赤字が解消されたら見直します」と口約束しているが、いつ「解消」されるのか。財政はかなり上向きになってきているようだが厳しさは変わらない。それに財務省がおいそれと首をたてに振るとは思えない。

 

バヨナが学校教育の在り方に拘るのは、「文化などにお金をかける必要はないと考えていた軍事独裁政が40年間も続いたから、70年前には読み書きができない人々がたくさんいた。このような悲しむべき歴史的な遺産を乗り越えて、最近の数十年で飛躍的な向上を遂げた。政府の消費税減税などはうわべを取り繕っているだけ。スペイン映画の問題は、学校教育や統治者たちの姿勢にかかっている」と主張。それに対して「フランスでは、文化の保護と輸出がある程度一致しているから恵まれている」とソロゴイェン。伝統というものは革新以上に隅に置けない。

 

★「質問があるんですが、『無垢なる聖者』(84、マリオ・カムス)が公開されたときは興行的にも成功した。うちは中流家庭に属していて父や叔父たちから素晴らしい映画だったとずっと聞かされていました。僕は小さかったから当時は見ていませんが、現在公開してもほんのわずかしか観客は集まらないのではないか。父の世代も今見たらテンポが遅く長く感じると。庶民は退行したのでしょうか」とR.アレバロ。「映画の好みが変化してしまった。私が思うに悪いほうにね。この変化をもたらしたのが私たちなのかどうか分からないし、元に戻す方法も分からない」とアルモドバル。「観客は退行しているようです。『無垢なる聖者』を再公開しても切符売り場には足を運ばないかもしれない」とアレバロ

 

        

             (Tarde para la ira”撮影中のアレバロ

 

★「変化はスペインだけのことではなく世界的現象、情報は増え続けるが知識は減る一方、デジタル情報ばかりで何を見たらよいのか教えてくれない。作家性の強い映画を作るには覚悟がいる。第一にすべきことは学校が映画館に連れていくこと、私たちは『タシオ』(84、モンチョ・アルメンダリス)や『無垢なる聖者』を見て大きくなったんだ」と学校教育の重要性に拘るバヨナ監督でした。日本でもテレビがなかった時代には、教師に引率されて映画館に出かける「映画教室の日」があって、ディズニーのアニメ『ピノキオ』や『ダンボ』、チャップリン映画を見に連れて行った。中学生にはイングリッド・バーグマンがジャンヌに扮した『ジャンヌ・ダーク』(48、ヴィクター・フレミング)などが選ばれていた。

 

     「映画は映画館の椅子に座って見てほしい」と言うけれど・・・

    

★スペインではラテンアメリカや欧州の一部で事業展開しているモビスターMovistar(テレフォニカ傘下の携帯電話事業会社)の加入者が2200万人と多く、米国のオンラインDVDレンタル配信会社ネットフリックスNetflixDVD4200万枚保有している)やアマゾンは少ない。司会者より両者を競争させたらスペインの映画産業は変化するだろうかと質問が投げかけられた。「莫大な資金投入が産業界の変革を促すかどうか分からない」と懐疑的なA.ロドリゲス。お金が産業界変革の全てではない立場のようです。「現実は、若い人々が以前のようには映画館に出かけなくなった。演劇も見なくなったし本も読まなくなった。ほかの分野、例えばテレビゲームだ。米国の大学生にスピーチしたとき感じたことだが、彼らもビリー・ワイルダーのような作品をよく知っていると思えなかった」とアルモドバル。映像媒体の多様化は世界規模です。

 

      

          (ロドリゲス『スモーク・アンド・ミラーズ』から

 

★「デジタル・プラットフォームの導入は有力なテレビチャンネルの寡頭政治を少しはセーブする」とソロゴイェン。映画の成功が有力なテレビチャンネルに握られている現状は、作家性の強い映画作りをしている監督には不利にはたらく。この現状を少しでも和らげるにはネットフリックスなどの到着は役に立つかもしれない。映画は映画館のスクリーンで見るという世代は、もはや絶滅危惧種なのかもしれませんが、同じ作品でもスクリーンで見るのとテレビとでは雲泥の差があることを強調したい。

 

★「プラットフォームの到着に気をもんでいる。中流階級の人は既に映画館で見なくなっているばかりかこのプラットフォームで見ている。映画館で見るのはスペクタクル映画だけと考えるのは間違っている。観客はスーパーヒーローや特殊効果だけを見に行くわけではない。私たちの作品を映画館で見てほしい。映画愛を育てる教育が必要なのです」とバヨナ。映画を「映画館の椅子に座って見ることは独特な素晴らしさがある」と観客の醸しだす雰囲気を楽しむのがロドリゲス。「反対に携帯を持ち出してみている観客に注意が散漫になる」と一部の観客の無作法を口にするソロゴイェン。「少し前、映画好きの学生たちと一緒に見ていて気付いたことだが、彼らは2000年以前の映画を見ていない」と驚きを隠さないアレバロ。「それは観客の罪ではなく現代社会のせいだ」とロドリゲス。「つまるところ、観客は見たい映画を自由に選んでいいのだと思う。それに応じて私たちは映画作りをしている。できれば私の作品を見てほしいものだが」とアルモドバルがケリをつけました。

 

       「最終候補5作品のどれも見ていない」とマリアノ・ラホイ首相

 

★政治家は映画館に足を向けない、忙しくてそんな時間はないからと。その筆頭がマリアノ・ラホイ首相です。「最終候補5作品のどれも見ていない」ときっぱり。「時間が取れない、時間があれば小説を読んでいる。映画は自宅か事務所のテレビで見ている」が、まだ候補作はどれも見ていない。時間があっても見ない派ですね。あれば小説を読むと言ってるから。とにかく伝統的に国民党PPは社労党PSOEほど文化にお金を使いたがらない。今年のガラにはメンデス・デ・ビゴ文化相の姿もあったが、壇上から批判されたり暗に皮肉を言われたりするために忙しい時間はさけないというのがホンネでしょう。以前は当日にマドリードを離れて海外出張に出かける文化担当相もいたほどです。

 

★スペイン映画は民間のテレビ局の協力なしには立ちいかなくなっている。「手の負えなくなっているのは、テレビ局がスペイン映画のプロデューサーたちで占められているだけでなく、スペイン映画の屋台骨になっている・・・スペイン映画が民放用の映画に変化してしまったことです」が、それは必ずしも「民放だけの罪ではない」とバヨナ、「勿論彼らの罪ではない。少なくとも控えめなら、観客育成に役に立つからね」とアルモドバル。もはやテレビやスマホなどで映画を見るデジタル世代の時代になったということです。

  

      

          (バヨナUn monstruo viene a verme”をバックに

 

          皆さん、スピルバーグの映画はいかがですか?

 

なかなか映画の話にならない。そこで「まだ映画の中身について話し合っていません。そろそろ私たちが作った映画の話、どうしてフィルモテカ(フィルム・ライブラリー)や映画アカデミーが重要なのか?」というバヨナの提案で、やっと核心にたどり着きました。アレバロの「そうですね、始めましょう、スピルバーグ映画はどうですか」に一同大笑い。「とてもいいよ」とバヨナ。「僕がとっても好きなのはLas amigas de Agataと、素晴らしかったのは『KIKI~愛のトライ&エラー』です」ソロゴイェン。前者はライア・アラバート、アルバ・クロス、ほか女性4人が監督したカタルーニャ語の映画、ガウディ賞2017にノミネートされた作品です。パコ・レオンの『KIKI~』は残念ながら無冠でした。アレバロMaría(y los demásLa próxima pielを挙げました。

 

★「ノミネートの有無に関係なく挙げるとEsa sensaciónLa próxima piel”それに君たちの作品だ。年に3作か4作はとても興味を引く映画に出会う」とアルモドバル。前者はノーマークですが、フアン・カサベスタニー以下、男性3人が監督したコメディです。ロッテルダム映画祭でワールド・プレミア、マラガ、バルセロナ、リオなどの映画祭に出品されています。ロドリゲスバヨナは具体的な作品名を挙げませんでしたが、ロドリゲスは「1作品に10個とか12個とかノミネーションが集中するのは問題」と不透明なノミネーションの在り方に警鐘を鳴らしました。これは誰が見ても異論なく問題です。それぞれ撮影や編集の苦労話、サプライズに触れていましたが割愛です。

 

    

            (アルモドバルの『ジュリエッタ』から)

 

★既に結果は発表になっておりますが、どのくらい字幕入りで見られるか、あるいは見られないか、楽しみにしています。バヨナのUn monstruo viene a verme20176月公開が決定しているようです。『インポッシブル』の監督だし、オリジナル言語が英語ですから6月は遅すぎるくらいです。ゴヤ、フォルケ、フェロスとスペインの三大映画賞を制したアルバロのTarde para la iraはどうでしょうか。

  

第31回ゴヤ賞2017*結果発表 ⑩2017年02月05日 20:33

      今宵の主人公はラウル・アレバロとフアン・アントニオ・バヨナでした!

   

 

        (アカデミー会長イボンヌ・ブレイクと副会長マリアノ・バロッソ)

Tarde para la ira作品賞と新人監督賞Un monstruo viene a vermeが監督賞と大賞を分け合いました。終わってみれば前者がノミネーション11個で4個ゲット、後者が最多ノミネーション129個と2作品に集中しました。エンマ・スアレスが主演と助演の二つをものにして、ゴヤ賞1996、ピラール・ミロの『愛は奪った』で主演女優賞を受賞して以来、遠ざかっていたガラで20年ぶりに脚光を浴びました。まずは結果発表だけアップしておきます。

 

           

             (3度目の総合司会者ダニ・ロビラ)

 

★受賞結果は以下の通り(印は当ブログ紹介作品)

作品賞

El homre de las mil caras”“Smoke&Mirrors”『スモーク・アンド・ミラーズ』(11個)

監督アルベルト・ロドリゲス 

Julieta 『ジュリエッタ』(7個)監督ペドロ・アルモドバル 

Que Dios nos perdone”“May God Save Us”(6個)監督ロドリゴ・ソロゴイェン 

Tarde para la iraThe Fury of a Patient Man”(11個)監督ラウル・アレバロ 

  製作者:ベアトリス・ボデガス

Un monstruo viene a verme”“A Monster Calls”(最多12個、西・米・英・カナダ)

監督フアン・アントニオ・バヨナ 

 

 

(ベアトリス・ボデガスとアレバロ監督、プレゼンターはアメナバルとペネロペ・クルス)    

 

監督賞

アルベルト・ロドリゲス『スモーク・アンド・ミラーズ』

ペドロ・アルモドバル『ジュリエッタ』

ロドリゴ・ソロゴイェンQue Dios nos perdone

アン・アントニオ・バヨナUn monstruo viene a verme

 

  

   (JA・バヨナ、プレゼンターはジェラルディン・チャップリンとホセ・コロナド)

 

新人監督賞

ラウル・アレバロTarde para la ira 

サルバドル・カルボ1898, Los últimos de Filipinas”(9個)

マルク・クレウエトEl rey tuerto 

ネリー・レゲラMaría (y los demás) 

 

  

                (ラウル・アレバロ)

 

オリジナル脚本賞

ホルヘ・ゲリカエチェバリアCien años de perdón”『バンクラッシュ』

監督ダニエル・カルパルソロ 

ポール・ラヴァティEl olivo”『The Olive Tree』監督イシアル・ボリャイン 

イサベル・ペーニャ、ロドリゴ・ソロゴイェンQue Dios nos perdone

ダビ・プリドラウル・アレバロTarde para la ira 

 

 

脚色賞

アルベルト・ロドリゲスラファエル・コボス『スモーク・アンド・ミラーズ』

ペドロ・アルモドバル『ジュリエッタ』

フェルナンド・ペレス、パコ・レオンKiki, el amor se hace”『KIKI~愛のトライ&エラー』

パトリック・ネスUn monstruo viene a verme

 

   

     (アルベルト・ロドリゲス、プレゼンターはアイタナ・サンチェス・ヒホン)

 

オリジナル作曲賞

フリオ・デ・ラ・ロサ『スモーク・アンド・ミラーズ』

パスカル・ゲイニュ『The Olive Tree

アルベルト・イグレシアス『ジュリエッタ』

フェルナンド・ベラスケスUn monstruo viene a verme

 

 

                           (フェルナンド・ベラスケス) 

 オリジナル歌曲賞

ルイス・イバルスDescubriendo India’(“Bollywood Made in Spain”)

  監督ラモン・マルガレト

シルビア・ペレス・クルスAi, ai, aiCerca de tu casa”)

  監督エドゥアルド・コルテス 

セルティア・モンテスMuerte’(“Frágil equilibrio”、ドキュメンタリー)

監督ギジェルモ・ガルシア・ロペス

アレハンドロ・アコスタ、パコ・レオン他KikiMr. Ki feat Nita

  (『KIKI~愛のトライ&エラー』)

 

  

                       (シルビア・ペレス・クルス)

 

主演男優賞

エドゥアルド・フェルナンデス『スモーク・アンド・ミラーズ』

ロベルト・アラモQue Dios nos perdone

アントニオ・デ・ラ・トーレTarde para la ira

ルイス・カジェホTarde para la ira

 

 

     (ロベルト・アラモ、プレゼンターはノラ・ナバスとリュイス・オマール)

 

主演女優賞

エンマ・スアレス『ジュリエッタ』

カルメン・マチLa puerta abierta”(“The Open Door”)監督:マリナ・セレセスキー 

ペネロペ・クルスLa reina de España”監督:フェルナンド・トゥルエバ 

バルバラ・レニーMaría (y los demás)

 

 

      (エンマ・スアレスとアルモドバル、プレゼンターはマリア・ブランコ)

 

助演男優賞

カラ・エレハルデ100 metros”監督:マルセル・バレラ 

ハビエル・グティエレス『The Olive Tree

ハビエル・ペレイラQue Dios nos perdone

マノロ・ソロTarde para la ira

 

  

 (M・ソロ、プレゼンターはナタリア・デ・モリーナ、ミゲル・エラン、ダニエル・グスマン)

 

助演女優賞

カンデラ・ペーニャ『KIKI~愛のトライ&エラー』

エンマ・スアレスLa próxima piel”監督:イサキ・ラクエスタ、イサ・カンポ 

テレレ・パベスLa puerta abierta

シガニー・ウィーバーUn monstruo viene a verme

 

    

           (ゴヤ胸像を両手にしたエンマ・スアレス)

 

新人男優賞

リカルド・ゴメス1898, Los últimos de Filipinas

ロドリゴ・デ・ラ・セルナ『バンクラッシュ』

カルロス・サントス『スモーク・アンド・ミラーズ』

ラウル・ヒメネスTarde para la ira

 

   

                              (カルロス・サントス)

 新人女優賞

シルビア・ペレス・クルスCerca de tu casa

アナ・カスティージョThe Olive Tree

ベレン・クエスタ『KIKI~愛のトライ&エラー』

ルス・ディアスTarde para la ira

 

  

 (アナ・カステージョ、プレゼンターはカジェタナ・ギジェン・クエルボとマカレナ・ゴメス)

 

プロダクション賞

カルロス・ベルナセス1898, Los últimos de Filipinas

マヌエラ・オコン『スモーク・アンド・ミラーズ』

ピラール・ロブラLa reina de España

サンドラ・エルミダ・ムニィスUn monstruo viene a verme

 

 

撮影監督賞

アレックス・カタラン1898, Los últimos de Filipinas

ホセ・ルイス・アルカイネLa reina de España

アルナウ・バルス・コロメルTarde para la ira

オスカル・ファウラUn monstruo viene a verme

 

 

編集賞

ホセ・M・G・モヤノ『スモーク・アンド・ミラーズ』

アルベルト・デル・カンポ、フェルナンド・フランコQue Dios nos perdone

アンヘル・エルナンデス・ソイドTarde para la ira

ベルナ・ビラプラナジャウマ・マルティUn monstruo viene a verme

 

 

 

美術監督賞

カルロス・ボデロン1898, Los últimos de Filipinas

ぺぺ・ドミンゲス・デル・オルモ『スモーク・アンド・ミラーズ』

フアン・ペドロ・デ・ガスパルLa reina de España

エウヘニオ・カバジュロUn monstruo viene a verme

 

 

衣装デザイン賞

パオラ・トーレス1898, Los últimos de Filipinas

ロラ・ウエテLa reina de España

クリスティナ・ロドリゲスNo culpes al karma de lo que te pasa por gilipollas

監督マリア・リポル

アルベルト・バルカルセル、クリスティナ・ロドリゲスTarde para la ira

 

 

             (パオラ・トーレスは欠席、マヌエル・ブルケが代理で受け取った)

 

メイクアップ&ヘアー賞

アリシア・ロペス、ミル・カブレル、ペドロ・ロドリゲス1898, Los últimos de Filipinas

ヨランダ・ピナ『スモーク・アンド・ミラーズ』

アナ・ロペス=プイグセルベル、ダビ・マルティ、セルヒオ・ペレス・ベルベル『ジュリエッタ』

ダビ・マルティマレセ・ランガンUn monstruo viene a verme

 

  (ダビ・マルティ)

 

録音賞

エドゥアルド・エスキデ、フアン・フェロ他1898, Los últimos de Filipinas

セサル・モリナ、ダニエル・デ・サヤス他『スモーク・アンド・ミラーズ』

ナチョ・ロジョ=ビリャノバ、セルヒオ・テスタンOzzy”(アニメーション、西・カナダ)

オリオル・タラゴペーター・グロスポUn monstruo viene a verme

  

 (オリオル・タラゴ)

                        

特殊効果賞

カルロス・ロサノ、パウ・コスタ1898, Los últimos de Filipinas

ダビ・エラス、ラウル・ロマニリョスGernika. The Movie”『ゲルニカ』監督コルド・セラ

エドゥアルド・ディアス、レジェス・アバデス『ジュリエッタ』

フェリックス・ベルヘスパウ・コスタUn monstruo viene a verme

 

 

アニメーション賞

Ozzy 監督アルベルト・ロドリゲス、ナチョ・ラ・カサ

Psiconautas, los niños olvidados監督ペドロ・リベロ、アルベルト・バスケス

Teresa eta Galtzagorri”(“Teresa y Tim”)

監督アグルツァネ・インチャウラガAgurtzane Intxaurraga

 

 

 

ドキュメンタリー賞

2016, Nacido en Siria”監督エルナン・シン

El Bosco, El jardín de los sueños”(西仏)監督ホセ・ルイス・ロペス=リナレス

Frágil equilibrio 監督ギジェルモ・ガルシア・ロペス

Omega”ヘルバシオ・イグレシアス、ホセ・サンチェス=モンテス

 

 

イベロアメリカ映画賞

Anna”(コロンビア仏)監督ジャック・トゥールモンド

Desde alla”“From Afar”『彼方から』(ベネズエラ・メキシコ)監督ロレンソ・ビガス

El ciudadano ilustre”『名誉市民』(アルゼンチン西)

監督(共同)ガストン・ドゥプラット、マリアノ・コーン 

Las elegidas”『囚われた少女たち』(メキシコ)ダビ・パブロス 

 

 

(受賞を確信して来西していた代表者)

                      

★ノミネーションを割愛したヨーロッパ映画賞・短編映画賞・短編ドキュメンタリー賞・短編アニメーション賞の結果は以下の通りです。

 

ヨーロッパ映画賞Elle(仏・独・ベルギー、言語フランス語)

          監督ポール・ヴァーホーヴェン(Paul Verhoeven

 

      

  

短編映画賞Timecode 『タイムコード』監督フアンホ・ヒメネス・ペーニャ

 

 

 

短編ドキュメンタリー賞Cabezas Habladoras 監督フアン・ビセンテ・コルドバ

  

  

 

短編アニメーション賞Decorado 監督アルベルト・バスケス

 

(アルベルト・バスケスは長編・短編の両方を受賞)

  

★ヨーロッパ映画賞のポール・ヴァーホーヴェンはオランダ出身の監督、オランダ語読みだとパウル・ヴァーフーヴェ()となる由。ついでながら彼は「ベルリン映画祭2017」の審査委員長に就任しました。ほかの審査員に、ディエゴ・ルナ、マギー・ギレンホール、ゾフィー・ショルなどもアナウンスされています。

 

★これまたついでながら、アルモドバルが自作と縁の深い「カンヌ映画祭2017517日~28)の審査委員長に決定しました。「ありがたく、名誉なことですが、少しばかり重荷です」とコメント。

 

                

                           (栄誉賞受賞のアナ・ベレン)

 

           

                       (歓談するアルモドバルとペネロペ・クルス) 



ドキュメンタリー『サクロモンテの丘~ロマの洞窟フラメンコ』の監督来日2017年02月01日 15:42

        『デリリオ~歓喜のサルサ』のチュス・グティエレス監督来日

 

 

★ドキュメンタリー『サクロモンテの丘~ロマの洞窟フラメンコ』公開に合わせてチュス・グティエレス監督が来日します。公開前日の217日、東京セルバンテス文化センターで「映画監督との出会い:チュス・グティエレス」という催しのご案内です。

『サクロモンテの丘~ロマの洞窟フラメンコ』

   (ドキュメンタリー Sacromonte: los sabios 2014

日時:2017217日(金曜日)1800~(入場無料、要予約)

場所:東京セルバンテス文化センター、地下1階オーディトリアム

セルバンテス文化センターの紹介文はコチラ

フラメンコ発祥の地、グラナダの洞窟サクロモンテに生きた伝説的アーティストらのドキュメンタリー『サクロモンテの丘 ロマの洞窟フラメンコ』。この作品の公開に向け監督チュス・グティエレスが来日します。グラナダ出身の彼女は、映画監督、脚本家、女優、アーティストそして映画産業に携わる女性らの平等を求める協会に携わるなど幅広い活動をしています。同ドキュメンタリー製作にまつわる逸話をはじめ、スペインの映画事情などについてお話を伺います。 

  

★「ラテンビート2014」上映の『デリリオ~歓喜のサルサ~』と同じ年の製作です。フィクションとドキュメンタリーというジャンルの違いもありますが、スペインでの評価は本作のほうが高かったようです。公式サイトも起ちあがっておりますので詳細はそちらにワープしてください(2017218日、有楽町スバル座、アップリング渋谷ほか、全国順次公開)。監督紹介は『デリリオ~歓喜のサルサ~』をアップした折の記事を再構成したものを参考資料として載せておきます。

 

  *キャリア&フィルモグラフィー*

チュス・グティエレスChus Gutiérrez (本名María Jesús Gutiérrez):1962年グラナダ生れ、監督、脚本家、女優。本名よりチュス・グティエレスで親しまれている。8歳のとき家族でマドリードに移転、197917歳のときロンドンに英語留学、帰国後映像の世界で働いていたが、1983年本格的に映画を学ぶためにニューヨークへ留学し、グローバル・ビレッジ研究センターの授業に出席、フレッド・バーニー・タイラーの指導のもと、スーパー8ミリで短編を撮る(Porro on the Roof1984、他2篇)、1985年、シティ・カレッジに入学、1986年、最初の16ミリ短編Mery Go Roundo”を撮る。ニューヨク滞在中にはブランカ・リー、クリスティナ・エルナンデス、同じニューヨークでパーカッション、電子音楽、作曲を学んでいた弟タオ・グティエレスと一緒に音楽グループ“Xoxonees”を立ち上げるなどした。2007年には、CIMAAsociacion de Mujeres de Cine y Medios Audiovisuales)の設立に尽力した。これは映画産業に携わる女性シネアストたちの平等と多様性を求める連合、現在300名以上の会員が参加している。

 

(チュス・グティエレス監督)

    

                

1987年帰国、長編デビュー作となるSublet1991)を撮る。まだ女優業に専念していたイシアル・ボリャインを主人公に、製作は女性プロデューサーの代表的な存在であるクリスティナ・ウエテが手掛けた。夫君フェルナンド・トゥルエバ『ベルエポック』『チコとリタ』『ふたりのアトリエ』ほか、義弟ダビ・トゥルエバの Living Is Easy with Eyes Closed「僕の戦争」を探してDVD) 手掛けたベテラン・プロデューサー。

受賞歴カディスのアルカンセス映画祭1992金賞、バレンシア映画祭1993作品賞、1993シネマ・ライターズ・サークル賞(スペイン)、ゴヤ賞1993では新人監督賞にノミネートされイシアル・ボリャインもムルシア・スペイン・シネマ1993が、ベスト女優賞にあたる「フランシスコ・ラバル賞」を受賞した。

 

2Alma gitana96)は、プロのダンサーになるのが夢の若者がヒターノの女性と恋におちるストーリー、新作『デリリオ』と同じよう二つの文化の衝突あるいは相違がテーマとして流れている。5人の若手監督のオムニバス・ドキュメンタリー En el mundo a cada rato (04) 『世界でいつも・・・』の邦題で「ラテンビート2005」で上映された。第3エピソード、アルゼンチンの3歳の少女マカがどうして幸せかを語る Las siete alcantarillas を担当、アルゼンチンで撮影され「七つの橋」の邦題で上映されている。

 

 (3歳の少女マカ、映画から

 

         

他に代表作としてEl Calentito05『ヒステリック・マドリッド』)も高い評価を受け、こちらも「ラテンビート2005」で上映されたベロニカ・サンチェスを主役に、フアン・サンス、ルス・ディアス(ゴヤ賞2017新人賞ノミネート)、マカレナ・ゴメス『トガリネズミの巣穴』のヒロイン、本作でマラガ映画祭新人女優賞のヌリア・ゴンサレスなど若手の成長株を起用したコメディ

受賞歴モンテカルロ・コメディ映画祭2005作品賞他受賞、マラガ映画祭2005ジャスミン賞ノミネート、トゥールーズ映画祭で実弟タオ・グティエレスが作曲賞を受賞した。なお彼は姉の全作品音楽を担当している。 

(グティエレス姉弟)

        

 最も高い評価を受けたのが7作目Retorno a Hansala08)当時、実際に起きた事件に着想を得て作られた。海が大荒れだった翌日、カディスのロタ海岸にはモロッコからの若者11名の遺体が流れ着いた。服装からサハラのハンサラ村の出身であることが分かる。既に移民していたリデアはその一人が弟のラシッドであることを知る。リデアは葬儀社のオーナーと遺体を埋葬するため故郷に向かう。これは異なった二つの社会、価値観、言語の違いを超えて理解は可能か、また若者の海外流失止められないイスラム共同体の誇りについての映画でもある。

受賞歴バジャドリード映画祭審査員特別賞カイロ映画祭2008作品賞「ゴールデン・ピラミッド賞」国際批評家連盟賞トゥールーズ映画祭脚本賞グアダラハラ映画祭監督・脚本賞など受賞。ゴヤ賞2009ではオリジナル脚本賞にノミネートされた。

 

    

『デリリオ~歓喜のサルサ』の監督&作品紹介記事は、コチラ2014925

  

第4回フェロス賞2017*結果発表2017年01月29日 10:04

            フォルケ賞に続いてラウル・アレバロが大賞3個をゲット!

 

    

       

フォルケ賞に続いて日本時間24日に結果が発表になっておりましたが、管理人PCの不具合でかなり遅れてしまいました。ラウル・アレバロのTarde para la ira作品賞・監督賞・脚本賞と大賞3を手にしたのは、少ないカテゴリーのなかで快挙と言ってもいいでしょう。選考母体がジャーナリストとフォルケ賞とは性格の異なるグループが審査員でしたが、結局似たような結果になりました。こうなるとアカデミー会員約2000人の投票で決まるゴヤ賞ラリーも面白くなってきました。

 

   

  (自らも主演男優賞にノミネートされていた総合司会者のアントニオ・デ・ラ・トーレ)

 

主なフェロス賞ノミネーションと結果

作品賞ドラマ部門

El hombre de las mil caras『スモーク・アンド・ミラーズ』 監督アルベルト・ロドリゲス

  (ノミネーション10個)
Julieta『ジュリエッタ』 監督ペドロ・アルモドバル(同9個)
Que Dios nos perdone 監督ロドリゴ・ソロゴェン(同7個)
Tarde para la ira 監督ラウル・アレバロ(同8個)
Un monstruo viene a verme 監督フアン・アントニオ・バヨナ(同7個)

 

    

         (3賞を手にして次回作が厳しくなったラウル・アレバロ)

 

作品賞(コメディ部門)

Kiki, el amor se hace KIKI~愛のトライエラー 監督パコ・レオン
María (y los demás)」監督ネリー・レゲラ

La noche que mi madre mató a mi padre 監督イネス・パリス
La puerta abierta 監督マリナ・セレセスキー
El rey tuerto 監督マルク・クレウエトCrehuet

 

   

      (右手を挙げているのがパコ・レオン監督、他スタッフとキャスト一同)

 

監督賞

ペドロ・アルモドバル『ジュリエッタ』
ラウル・アレバロ Tarde para la ira
フアン・アントニオ・バヨナUn monstruo viene a verme
アルベルト・ロドリゲス 『スモーク・アンド・ミラーズ』
ロドリゴ・ソロゴイェン「Que Dios nos perdone

 

 

主演女優賞

アナ・カスティージョ「El olivoThe Olive Tree

バルバラ・レニー María (y los demás)
カルメン・マチLa puerta abierta
エンマ・スアレス『ジュリエッタ』

アドリアナ・ウガルテ『ジュリエッタ』

 

 

主演男優賞

ロベルト・アラモQue Dios nos perdone

エドゥアルド・フェルナンデス 『スモーク・アンド・ミラーズ』

アライン・エルナンデス El rey tuerto
ルイス・マクドゥーガル Un monstruo viene a verme
アレックス・モネール La propera pell
アントニオ・デ・ラ・トーレ「Tarde para la ira

 

 

助演女優賞

ルス・ディアス Tarde para la ira
マルタ・エトゥラ 『スモーク・アンド・ミラーズ』

ロッシ・デ・パルマ『ジュリエッタ』
テレレ・パベス La puerta abierta
カンデラ・ペーニャ KIKI~愛のトライ&エラー

 

助演男優賞

カルロス・サントス 『スモーク・アンド・ミラーズ
ルイス・カジェホ Tarde para la ira

ホセ・コロナド 『スモーク・アンド・ミラーズ
ハビエル・ペレイラ「Que Dios nos perdone
マノロ・ソロ Tarde para la ira


脚本賞
アルベルト・ロドリゲス、ラファエル・コボス 『スモーク・アンド・ミラーズ』 

ペドロ・アルモドバル 『ジュリエッタ 
パトリック・ネス Un monstruo viene a verme
イサベル・ペニャ、ロドリゴ・ソロゴジェン Que Dios nos perdone
ダビ・プリドラウル・アレバロ Tarde para la ira

 

       

オリジナル音楽賞

シルビア・ペレス・クルス  Cerca de tu casa
フリオ・デ・ラ・ロサ 『スモーク・アンド・ミラーズ』

アルベルト・イグレシアス 『ジュリエッタ』

フェルナンド・ベラスケス Un monstruo viene a verme
オリビエル・アルソン「Que Dios nos perdone

 

予告編賞

El hombre de las mil caras『スモーク・アンド・ミラーズ
 Julieta」 『ジュリエッタ

 Kiki, el amor se hace KIKI~愛のトライ&エラー
Un monstruo viene a verme
Que Dios nos perdone

 

ポスター賞

El hombre de las mil caras 『スモーク・アンド・ミラーズ
Julieta」 『ジュリエッタ

Kiki, el amor se hace KIKI~愛のトライ&エラー
Monstruo viene a verme

Tarde para la ira

 

ドキュメンタリー賞 Dead Slow Ahead 監督:マウロ・エルセ

特別フェロス賞 La muerte de Luis XIV 監督:アルベルト・セラ

 

栄誉賞受賞のナルシソ・イバニェス・セラドールは車椅子で登場、プレゼンターのアレックス・デ・ラ・イグレシアが「私がもっとも影響を受けた監督の一人」とお祝いの言葉を述べました。今宵のガラで一番盛大な拍手を受けたのがこのときだったようです。また観客や批評家の興味を大いに掻き立てた La muerte de Luis XIVで特別フェロス賞を受賞したアルベルト・セラは「(スペイン以外の)ほかの国々では、私の映画は本日ここにお集まりの方々よりも多い観客に見てもらえました」と若さにまかせて強力パンチをお見舞いした。そうですね、本作はカンヌ映画祭2016ワールド・プレミアした話題作でしたが、ノミネーションされませんでした。

 

    

    (ナルシソ・イバニェス・セラドールとアレックス・デ・ラ・イグレシア)

 

TVシリーズの6カテゴリーは当ブログでは割愛しましたが、コメディ部門では、ハビエル・アンブロシィ Paquita Salas が受賞しました。太っちょで赤毛のぶおとこパキータ・サラスを演じたBrays Efe主演男優賞ベレン・クエスタ助演女優賞と、こちらも3個受賞しました。下の写真はトロフィーを手に喜びの3人と共演者のハビエル・カルボ

 

 

    (左から、アンブロシィ監督、ベレン・クエスタ、Brays Efeビエル・カルボ)

 

 

(パキータに扮したBrays Efeとベレン・クエスタ

 

★結局、最多ノミネーション10個の『スモーク・アンド・ミラーズ はポスター賞1に止まり、半ば予想されていたことですが、ノミネーション9個の『ジュリエッタ』は無冠に終わりました。残るは2月4日開催のゴヤ賞だけになりました。


セバスティアン・レリオの新作”Una mujer santastica”*ベルリン映画祭20172017年01月26日 21:43

         『グロリアの青春』から新作Una mujer fantástica”へ

 

 

★躍進目覚ましいチリ映画、スペイン語映画ではセバスチャン・レリオ長編5作目Una mujer fantásticaが唯一オフィシャル・セクションに選ばれました。2013年の『グロリアの青春』ではヒロインのパウリナ・ガルシアが生きのいい熟女を好演、銀熊女優賞を受賞して脚光を浴びたのでしたそんなことが幸いしたのか「ラテンビート2013でプレミア上映されたあと公開もされました。「女性は謎だらけ、でも僕は彼女たちを愛している」と語るレリオ監督、「グロリア」のあと、次回作が待たれておりましたが、やっとベルリンに登場しました。

『グロリアの青春』の作品・監督紹介は、コチラ2013912

 

      

       (監督とパウリナ・ガルシア、サンセバスチャン映画祭2013にて)

 

本作も女性(?)が主人公、舞台は現代のサンティアゴ、新人ダニエラ・ベガが演じるのは性転換して女性に生れ変わったマリナ・ビダル、世間の白いに目に晒されながらウエイトレスとナイトクラブのシンガーとして掛け持ちで働いている。20歳も年上のパートナーのオルランドが彼女の腕の中で突然死したことで人生の悲喜劇が転がりだす。脇を固めるのがルイス・ニエッコ(パブロ・ラライン「ネルーダ」)、アリネ・クッペンハイム(オルランドの元妻役、アンドレス・ウッド『マチュカ』)、アンパロ・ノゲラ(「ネルーダ」)、フランシスコ・レイェス(オルランド役、TVドラVuelve Temprano”)などのベテラン勢です。

チリ=独=米=西合作、製作はFabula / Komplizen Film100分、撮影地サンティアゴ。Fabulaはラライン兄弟が設立した製作会社、Komplizen Filmはドイツの製作会社。

 

       

            (ヒロインのダニエラ・ベガ、映画から

 

セバスティアン・レリオ1974年アルゼンチンのメンドサ市生れのチリ人。監督、脚本家、プロデューサー。上記のスタッフとキャスト陣からも分かるように、チリの若手シネアストのグループ「クール世代」に属します。「グロリア」に劣らず数々の受賞歴を誇るデビュー作『聖家族』(La sagrada familia05)がラテンビートで上映された。クリスマスイブに集まった3人のティーンエイジャーの物語”Navidad”(09)やロカルノ映画祭2011の審査員賞の一つである「Environment is Quality of Life」を受賞した”El ano del tigre”そして『グロリアの青春』と続く。

 

アンドレス・ウッドの出世作『マチュカ』(04)やラテンビート2009で好評だった群像劇『サンティアゴの光』(La buena vida08)で忘れられない演技を見せたアリネ・クッペンハイムが出演しているのも楽しみの一つです。何かの受賞に絡めば映画祭上映も期待できます。