『アナザー・デイ・オブ・ライフ』アニメーション*ラテンビート2018あれこれ ⑩2018年11月19日 20:39

 

         

          (主な登場人物を入れたフランスのポスター)

    

★後半はラウル・デ・ラ・フエンテダミアン・ネノウ『アナザー・デイ・オブ・ライフ』CGアニメーションと実写の融合が最後を飾りました。最終回に相応しく会場から拍手が起こりました。1975年のアンゴラ内戦初期、ポーランドの報道記者リシャルト・カプシチンスキは首都ルアンダ取材に派遣される。凄惨な戦場を駆けめぐった3ヵ月の体験記録、ノンフィクションAnother Day of Life(英語版1976刊)の映画化。当時のアンゴラは宗主国ポルトガルとの休戦協定に調印したが、現実はソ連主導のMPLAと米国主導のFNLAの対立により混迷を深めていた。ストーリー、時代背景、映画化の動機、その複雑な経緯、原作者リシャルト・カプシチンスキ、両監督フィルモグラフィーなどは既に紹介しております。

 

『アナザー・デイ・オブ・ライフ』の紹介記事は、コチラ20181008

スペイン版タイトルUn día más con vida

 

     「悪夢の瞬間もありましたが、最終的には求めていた作品になりました」

 

A: 導入部で冷戦時代の米ソの対立構図が説明されますが、少し予備知識が必要かな。分からないと楽しめないというほどではありませんが、知っていたほうがよりベター。何しろ遠い大西洋に面したアフリカの、今から40年前の内戦だから、生まれていなかった観客も多かったでしょう。

B: 高校の世界史では学ばない? 公用語が元の宗主国ポルトガルの言語、アフリカ最大のポルトガル語人口を擁している共和国です。

 

A: 作品の言語もポルトガル語、英語、スペイン語、ポーランド語、日本語字幕なしでは厳しい。翻訳者は大変な作業だったでしょう。YouTube予告編では英語または西語入りなどあります。

B: Toutubeでも描線の美しさは伝わってきますが、スクリーンは圧倒的、比較になりません。映画ファンと一緒に同じ空間と時間を共有しているからかもしれない。

A: いくらネットで簡単に見ることができる時代になっても、映画は映画館で観るは変わらない。デ・ラ・フエンテ監督が「観客がカプシチンスキの心の中に入り込めるように努力した」と語っていたが、それはある程度成功したのではないか。

 

      

                                (凄惨を極めたルアンダ)

 

B: 最初からアニメーションで撮ろうとしたわけではなく、結果的にそうなったと。

A: アニメ作家ではありませんからね。製作の発端は10年前、デ・ラ・フエンテと公私ともにパートナーである製作者で脚本家のアマイア・レミレスが原作を読み、二人同時に感銘を受けたこと7年前のアンゴラ取材旅行から本格始動した。2012年にリスボンに行き、国立シネマテカを訪れた。そこで1975年当時のアンゴラで撮影された16ミリのコピーを見た。そこにカルロタが現れた。

 

        

  (サンセバスチャン映画祭観客賞受賞のアマイア・レミレスとラウル・デ・ラ・フエンテ)

 

B: 映画ではカプシチンスキと別れた後、死が伝えられた女性革命家カルロタのことすね。

A: 死の数時間前の映像で、圧倒的な存在感があったということです。彼女を軸にして脚本が進みだした瞬間だった。「想像してみてよ、40年前には生きていた若い女性ゲリラの姿が映っていたの」とアマイア・レミレス。本作のアイデアはカルロタに負っている部分が大きいとも。

B: カルロタへのオマージュを強く印象づけられた。

 

      

                             (カプシチンスキとカルロタ)

 

A: シュールなシーンは実写よりアニメーションのほうがいいということで、ワルシャワで仕事をしていた友人を通じて原作者の故国ポーランドに打診した。最初「どうしてスペインの監督がカプシチンスキのノンフィクションをアニメ化したいのか、びっくりというかショックを受けた」とデ・ラ・フエンテ。

B: そしてヨーロッパでも有数のアニメ・スタジオPlatige Imageとコンタクトが取れ、共同監督ダミアン・ネノウとタッグを組むことになった。完成までの道程は大分長かった。

 

A: 配給に尽力してくれたナバラのGolem のホセチョ・モレノのように完成を見ずに鬼籍入りした関係者もいた由、彼の死は思い出しても辛い。「悪夢の瞬間がいくつもありましたが、最終的には求めていた作品になりました」とデ・ラ・フエンテ。

B: 製作国は最初はポーランドとスペインだけだった。しかしベルギー、ドイツが続き、最終的にハンガリーにも参加してもらえた。

 

A: ジャーナリズムとアートの境界線は消えてしまっていた。不条理な惨い現実がカプシチンスキを報道記者から作家に転身させてしまった。

B: デ・ラ・フエンテは、カプシチンスキはジャーナリストというより活動家だったと語っていますが。

A: 理想主義者だったのではないでしょうか。この作品は無名の英雄たち、カプシチンスキファルスコルイス・アルベルトアルトゥル・ケイロカルロタほか内戦で亡くなった多くの市民に捧げられています。これにてラテンビート2018はお開きにいたします。

 

 *カンヌ映画祭以降の主なデータ(管理人覚え)

〇アヌーシー・アニメーション映画祭(612日)

〇ビオグラフィルム映画祭(伊、618日)

T-Mobil New Horizons(ポーランド、728日)

〇サンセバスチャン映画祭(922日)

CPH PIX(デンマーク、928日)

〇アニメーション・イズ・フィルムフェス(米、1020日)

〇ストックホルム映画祭(117日)

〇ラテンビート(1111日)

〇メルボルン映画祭(20198月)

〇第2回ヨーロッパ・アニメーションEmile賞ノミネーション

★公開:スペイン、ポーランド、ポルトガル、公開予定:フランス、イタリア、他

 

アニメーション『アナザー・デイ・オブ・ライフ』*ラテンビート2018 ③2018年10月08日 16:42

     カンヌ映画祭からサンセバスチャン映画祭へ、アニメファンを魅了した!

      

★ポーランドの作家リシャルト・カプシチンスキによるノンフィクションAnother Day of Lifeの映画化。原作はポーランド語だが映画は1976年に刊行された英訳本によっている。時代背景は、冷戦時代の米ソ代理戦争の典型と言われるアンゴラ内戦、首都ルアンダに赴いて3ヵ月間取材したときの記録。内戦は19753月勃発、2002年までつづいた紛争だが、本作は内戦初期に限られている。脆弱だったアンゴラ解放人民運動MPLAの分析、1976年までのアンゴラの簡単な外史で構成されている。当時アンゴラは、ソ連・キューバ主導のMPLA 、米国・南ア・ザイール・中国主導のアンゴラ民族解放戦線FNLA、アンゴラ全面独立民族同盟ウニタUNITAの三つ巴の闘争が続いていた。しかしアンゴラは19753月、宗主国ポルトガルとの休戦協定に調印した。現実はソ連主導のMPLAと米国主導のFNLAの対立により混迷を深めていたが、形式的には一応独立を果たした。

 

      

             (サンセバスチャン映画祭用のポスター)

 

★原作者のリシャルト・カプシチンスキ19322007)は、当時ポーランド領だったミンスク出身のジャーナリスト、報道記者、作家。現在のミンスク市はベラルーシ共和国の都市。家族は1945年ポーランドに移住、ワルシャワ大学で歴史学を学んだ。「ジャーナリズムの巨人」または「20世紀の最も偉大な報道記者」とも称されるが、当然毀誉褒貶は避けられないようです。ノーベル文学賞の候補に数回選ばれており、翻訳書も多数あるが、「Another Day of Life」は未訳のようです。関連翻訳書としては、40年に亘ってアフリカ諸国を取材して綴ったルポルタージュ「Heban」(2001)が、『黒檀』の邦題で刊行されている(著作目録・年譜付き)。

 

   

             (リシャルト・カプシチンスキ)

 

 『アナザー・デイ・オブ・ライフ』(原題「Another Day of Life」)アニメーション+実写

製作:Kanaki Films(西)/ Platige Image(ポーランド)/ Puppetworks Animation(ハンガリー)/

   Walking The Dog(ベルギー)/ Umedia(ベルギー)/ Animationsfabrik(独)、他

監督:ラウル・デ・ラ・フエンテ&ダミアン・ネノウ

脚本:ラウル・デ・ラ・フエンテ、アマイア・レミレス、ニール・ジョンソン、他

原作:リシャルト・カプシチンスキ著「Another Day of Life

撮影:ゴルカ・ゴメス・アンドリュー、ラウル・デ・ラ・フエンテ

編集:ラウル・デ・ラ・フエンテ

音楽:ミケル・サラス

製作者:アマイア・レミレス(西)、Jaroslaw Sawko(ポーランド)、Ole Wendorff Ostergaad、他

 

データ:製作国スペイン・ポーランド・ハンガリー・ベルギー・ドイツ、言語ポーランド語・英語・ポルトガル語・スペイン語、2018年、アニメーション+実写、86分、3D-CG、ビオピック、内戦。撮影地アンゴラ・キューバ・ポルトガル。公開ポーランド2018112日、ポルトガル118日、フランス2019123

映画祭・受賞歴:カンヌ映画祭2018コンペティション外出品ワールドプレミア、アヌシー・アニメーション映画祭、ビオグラフィルム・フェスティバル(伊)観客賞受賞、ポーランド映画祭「他の視点」出品、サンセバスチャン映画祭「ペルラス」部門、観客賞受賞、副賞として50.000ユーロが授与された。

 

出演:ミロスワフ・ハニシェフスキ(リシャルト・カプシチンスキ)、Vergil J. Smith(ケイロツQueiroz/ルイス・アルベルト/ネルソン)、Tomasz Zietek(ファルスコ少佐Farrusco)、オルガ・Boladz(カルロタ)ほか(以上実写部分)。ケリー・シェール(リシャルト・カプシチンスキ)、ダニエル・フリン(ケイロツ)、Youssef Kerkour(ファルスコ)、リリー・フリン(カルロタ)ほか(以上アニメーション部分のボイス)

 

ストーリー:ポーランドの報道記者カプシチンスキは、冷戦時代の1975年、危険なミッションを受けてアフリカの戦場アンゴラへ出発する。カリスマ的な女性ゲリラのカルロタと知り合うが、混沌とした内部への旅は理想主義者のジャーナリストを永遠に作家に変えてしまう。映画はカプシチンスキの体験に基づいており、私たちは40年前の恐怖に向き合うことになるだろう。主人公はジャーナリスト自身というより革命家カルロタのようで、彼女を女性が公正に評価され、新しい社会の中核的な存在であることの象徴として描いている。アニメ部分80パーセント、残りが実写部分だが、二つの境界はぼやけていく。                      (文責:管理人)

   

     

                              

      

 

 

    

     

        

 監督キャリア&フィルモグラフィー

ラウル・デ・ラ・フエンテ Raul de la Fuente、監督、脚本家、編集者、製作者。ナバラ大学オーディオビジュアル・コミュニケーション科卒業。1996年よりTV番組やドキュメンタリーを手掛ける。2006年長編ドキュメンタリーNomadak Tx(パブロ・イラブル他との共同監督、89分)がサンセバスチャン映画祭SSIFF2006に出品される。2013年短編ドキュメンタリーMinerita28分、ボリビアとの合作)が同じくSSIFFのシネミラ部門の短編映画Kimuakに出品、翌年のゴヤ賞短編ドキュメンタリー賞を受賞する。ボリビアのポトシ鉱山で働く女性労働者たちに寄り添い、自らも坑内に入って撮影、暴力、セクハラ、希望を語らせて胸を打つ。ポーランドのクラクフ映画祭2014ゴールデン・ドラゴン賞のスペシャル・メンション、サンディエゴ・ラテン映画祭コラソン賞を受賞している。 

        

 

       

     (中央の二人が製作者アマイア・レミレスと監督、ゴヤ賞2014授賞式にて)

 

2014年ドキュメンタリーI am Haiti60分、ハイチとの合作、仏語)はSSIFF「シネミラ」部門のイリサルIrizarを受賞、2017年短編ドキュメンタリーLa fiebre del oro25分「Gold Fever」モザンビークとの合作)もSSIFFKimuakに出品、以上でドキュメンタリー三部作になっている。3作とも脚本家で制作会社Kanaki Filmsの代表者アマイア・レミレスが手掛けている(2009年にデ・ラ・フエンテと設立、本部はサンセバスチャン)。二人は公私ともにパートナーであり、レミレスの視点が注目される。

 

    

        (ラウル・デ・ラ・フエンテとアマイア・レミレス)

 

最新作『アナザー・デイ・オブ・ライフ』は上記の通りカンヌ映画祭でワールド・プレミアした。製作の発端は10年ほど前に読んだ原作に二人が同時に感銘を受けたこと、本格始動は「7年前のアンゴラ取材旅行」とインタビューに応えている。最初の構想はアニメーションと実写のミックスではなかったが、シュールなシーンはアニメのほうが適切だったこと、また将来の可能性に賭けたかったことの2つを上げている。「カプシチンスキがポーランド人だったので、制作会社 Platige Imageにコンタクトを取り、最終的にダミアン・ネノウとのコラボが決定した」とレミレス。距離的に遠く離れていたので専らスカイプで連絡を取り合った。カプシチンスキの時代のテレックスとは様変わりしている。カプシチンスキについては「ジャーナリストというより、活動家だった」と監督。カンヌよりも緊張すると話していたサンセバスチャンで、見事「観客賞」を受賞した。

 

    

(デ・ラ・フエンテ、ダミアン・ネノウ、アマイア・レミレス、カンヌ映画祭フォトコール)

 

   

  (観客賞受賞のデ・ラ・フエンテとレミレス、ネノウ監督は帰国、SSIFF2018ガラ)

 

ダミアン・ネノウDamian Nenow1983年ポーランドのクヤヴィ=ポモージェ県都ビドゴシュチ生れ、監督、脚本、編集、視覚効果、アニメーター。ポーランド第2の都市ウッチのウッチ映画学校卒、2005Platige Image Film Studioに入り、3Dによるアニメーションの制作、監督、編集を手掛ける。短編アニメーションThe Aimでデビュー、ウッチの国際アニメーション映画祭で若い才能に贈られるオナラブル・メンションを受賞、2006The Great Escapeが多くの国際映画祭に出品される。2010Paths of Hate10分)がコルドバ国際アニメーション映画祭2011で審査員賞、アヌシー国際アニメーション映画祭2011スペシャル栄誉賞、サンディエゴ・インディペンデント映画祭審査員チョイス、札幌国際短編映画祭で『パス・オブ・ヘイト』の邦題で上映され、最優秀ノンダイアログ賞を受賞している。第84回アカデミー賞2011のプレセレクション10作にも選ばれている。

 

       

    

   

(アニメーション『パス・オブ・ヘイト』から

 

2011City of Ruins5分、ポーランド題「Miasto ruin」)は、ワルシャワ映画祭出品、2015年ホラー・アニメFly for Your Life5分、米国)はインターネットで配信された。

 

 (ダミアン・ネノウ)

      

 

    

  (カンヌではしゃぐ、ダミアン・ネノウとラウル・デ・ラ・フエンテ)

  

     

       (ラウル・デ・ラ・フエンテ、ダミアン・ネノウ、アマイア・レミレス、

         ポーランド製作者Jaroslaw Sawko、サンセバスチャン映画祭2018

   

ベロドロモにパコ・レオンのTVシリーズ*サンセバスチャン映画祭2018 ⑪2018年08月19日 15:37

          大型スクリーンで楽しむベロドロモに今年はアニメを含む5作品

 

★既に「ホライズンズ・ラティノ」部門の12作品が発表になっておりますが、一足先にアナウンスされていた「ベロドロモ」部門5作品からご紹介します。サンセバスチャン郊外にあるベロドロモ・アントニオ・エロルサというスポーツ複合施設(5500人収容)で上映される。自転車レースやモトクロスのようなスポーツ以外のコンサートや映画祭でも使用され、SSIFFでは大型スクリーン(400平方メートル)を設置することから約3000人くらいになる。例年、家族で楽しめるエンターテインメント作品が選ばれ、今年はアニメーションが2作エントリーされている。

 

  

             (ベロドロモ・アントニオ・エロルサの内部

 

Arde Madrid(スペイン)パコ・レオン&アンナ・R・アコスタ 

★モビスターMovistar+製作のTV新シリーズArde Madrid(全8話)の先行上映。パコ・レオンが監督・脚本・主演を兼ね、アンナ・R・アコスタと共同監督する。背景は1961年のフランコ独裁政権時代のマドリード、アメリカ女優エバ・ガードナーや失脚後アルゼンチンから亡命してきたフアン・ドミンゴ・ペロン元大統領が登場するスリラー・コメディ。フラメンコ、治安警備隊、諜報機関、セックス、ウィスキー、ロックン・ロールが入り乱れる、ローマを舞台にしたフェリーニの『甘い生活』のマドリード版。時代を反映したモノクロ撮影が話題になっている。

 

      

(製作記者会見をする左から、インマ・クエスタ、パコ・レオン、アンナ・R・アコスタ監督、

 Movistar+ディレクターのドミンゴ・コラル、20171128日)

 

キャスト:パコ・レオン(マノロ)、インマ・クエスタ(アナ・マリ)、デビ・マサル(エバ・ガードナー)、アンナ・カスティージョ(ピラール)、フリアン・ビジャグラン(フロレン)、オスマル・ヌニェス(フアン・ドミンゴ・ペロン)、ファビアナ・ガルシア・ラゴ、モレノ・ボルハ、ミレン・イバルグレン、ケン・アプレドルン(ビル・ギャラガー)、エドゥアルド・カサノバ、他 

 

物語1961年マドリード、アナ・マリは独身、脚が不自由なフランコ主義者、女性部門のインストラクターである。フランコ総統の命令でアメリカの女優エバ・ガードナーが諜報活動をしていないか探るため彼女の家にお手伝いとして住みこむことになる。それには既婚者のほうが都合がよく、エバの運転手で詮索好きのマノロと偽装結婚をする羽目になる。

 

     

   (エバ・ガードナーに扮したデビ・マサル)

 

   

(左から、インマ・クエスタ、アンナ・カスティージョ、レオン、左端エドゥアルド・カサノバ)

 

 

Dilili a Paris / Dilili in Paris(仏・独・ベルギー、アニメーション)

  ミッシェル・オスロ

★日本でも2003年公開されたミッシェル・オスロの『キリクと魔女』(98)から20年、その映像は溜息が出るほど美しい。日本のアニメーターも多数参加する「アヌーシー・アニメーション映画祭」ほか国際映画祭での受賞を記録し、本邦でも公開された。新作はニューカレドニアの少女ディリリが活躍するミステリー・アニメ。フランス公開20181010日。

            

   

          (ポスター、左端がディリリ、中央が配達人の友達)

 

物語:ニューカレドニア生れの少女ディリリは、ベルエポック時代のパリで若い娘たちを狙った連続誘拐事件の謎を調査するため、配達人の友達と協力する。調査の過程で手掛かりを与えてくれるたくさんの人々に出会うことになる。

 

        

           (大人も子供も魅了する美しい映像、本作から)

 

Ni distintos ni diferentes: Campeones(スペイン、ドキュメンタリー)

  アルバロ・ロンゴリア

Campeonesとダブル・セッションですが、同作に出演した登場人物たちの現実を描いたエモーショナルなドキュメンタリー。彼らが生きている世界を殆ど知らない観客は、学ぶべき多くのことを発見するだろう。アルバロ・ロンゴリア監督が製作も手掛けている。ロンゴリア監督の「The Propaganda Game」はSSIFF2015に出品されている。北朝鮮に入って政治プロパガンダ戦略の真相に迫るドキュメンタリー。現地で暮らす人々へのインタビューを交えている。ゴヤ賞2016ドキュメンタリー映画賞にノミネーションされ、『プロパガンダ・ゲーム』の邦題でNetflixで配信されている。

 

 

 

Campeones(スペイン)ハビエル・フェセル

★本作はアカデミー賞外国語映画賞スペイン代表作品にノミネーションされており、紹介記事も既にアップしております。コチラ2018612

 

     

 

Smallfoot(米国、アニメーション)カレイ・カークパトリック

カレイ・カークパトリックは、ニック・パークのストップモーション・アニメーション『チキンラン』(00)の脚本を手掛けており、初監督した『森のリトル・ギャング』06)も公開されている。Smallfootはセルヒオ・パブロスの原作「Yeti Tracks」をベースにしてアニメ化した。若くて利口な雪男が存在しないと思っていた<あるもの>に出くわしてしまう。<あるもの>とは人間ですね。それで雪男のコミュニティが大騒動になる。いずれ日本でも公開されるでしょう。

 

 

  

パコ・ロカのコミックのアニメーション*マラガ映画祭2018 ⑪2018年04月15日 15:44

       ビデオゲーム作家カルロス・フェルフェルが映画に戻ってきた!

 

    

★カンヌ映画祭2018のコンペティション部門と「ある視点」のノミネーションが発表になりました。まだ全部ではないようですがよく見る顔と初めての顔とが入り混じっています。この時期は、例年ならマラガは終了していたのですが、今年はオープニングしたばかりです。オープニング作品マテオ・ヒルの新作「Las leyes de la termodinamica」の批評も出ました。これから紹介するカルロス・フェルナンデス・デ・ビゴ(カルロス・フェルフェル)のアニメーションMemorias de un hombre en pijamaも既に上映されました。実際はアニメ部分80%、実写部分20%、ということでキャスト紹介はヴォイスになっておりません。

 

    

        (カルロス・フェルナンデス・デ・ビゴ、マラガ映画祭にて)

 

 Memorias de un hombre en pijama」 2018

製作:Dream Team Concept / Ezaro Films / Hampa Studio / Movistar/ TVE 他多数

監督:カルロス・フェルナンデス・デ・ビゴ

脚本:パコ・ロカ、アンヘル・デ・ラ・クルス、ディアナ・ロペス・バレラ

撮影:マルコス・ガルシア・カベサ

音楽:Love of Lesbian

編集:エレナ・ルイス

視覚効果:マルコス・ガルシア・カベサ、モイセス・レハノ・アルホナ

アニメーション監督:ロレナ・アレス

製作者:マリア・アロチェ(エグゼクティブ)、アンヘル・デ・ラ・クルス、マヌエル・クリストバル、ジョルディ・メンディエタ、アレックス・セルバンテス

 

データ:製作国スペイン、スペイン語、2018年、アニメーション+ 実写、74分、コメディ・コミック、マラガ映画祭2018正式出品(上映414日)

 

キャスト:ラウル・アレバロ(パコ)、マリア・カストロ(ヒルゲロ)、マヌエル・マンキーニャ(メッセンジャー)、サンティ・バルメス(エスコルピオ)、フリアン・サルダリアガ(タウロ)、ジョルディ・ブルネト、タチョ・ゴンサレス、エレナ・S・サンチェス

 

プロット40代の独身男性パコの物語。子供のときからの夢を手に入れ充実した人生を送っている。つまりパジャマを着たまま家でずっと仕事をして、まさに幸福感を満喫していた。ところがまったく予期せぬことが出来してしまった。ヒルゲロに出会い恋してしまったのだ。カップルが直面せざるを得ない日々の困難が語られる。パコは相変わらずパジャマを手放そうとはせず、家の中に留まることの正当性を主張する。二人の友人たちの忠告や彼らの人生を織り交ぜながら、物語はコミカルな色合いのなかで進んでいくことになる。

 

     

             (パコ役、アニメと実写のラウル・アレバロ) 

 

★本作はパコ・ロカ(フランシスコ・ホセ・マルティネス・ロカ、1969年バレンシア生れのコミック作家)原作のコミックの映画化です。20年以上のキャリアをもつ、スペインを代表する漫画家。パコ・ロカは2007年のArrugasが国際的にも大成功をおさめ、日本でも『皺』の邦題で翻訳刊行(ShoPro Book20117月刊)された。20122月に来日、セルバンテス文化センターで講演会が持たれました。映画化の邦題は『しわ』となり、イグナシオ・フェレーラス監督も翌年6月の劇場公開時に来日していたはずです。今回映画化されたMemorias de un hombre en pijama」のコミック版は2011年刊、既に映画化が決定していたから完成の道のりは長かった。

 

        

              (パコ・ロカと原作コミック)

 

★脚本の共同執筆者アンヘル・デ・ラ・クルスは『しわ』でもタッグを組んでいる。ウェンセスラオ・フェルナンデス・フローレスの同名小説「El bosque animado」をアニメ化(2001)した監督、脚本家、アニメの脚本を多数手掛けている実力者です。この小説は1987ホセ・ルイス・クエルダがアルフレッド・ランダを主役にして既に映画化しており、『にぎやかな森』の邦題で第2回スペイン映画祭上映後公開されています。ディアナ・ロペス・バレラはクレジットされておりませんが、同じように参加していたようです。製作者マヌエル・クリストバルも『しわ』El bosque animado参加組の一人です。

 

      

               (日本版『しわ』のDVDポスター)

   

 監督キャリア&フィルモグラフィー

カルロス・フェルナンデス・デ・ビゴ(カルロス・フェルナンデス・フェルナンデス)は、ビデオゲーム作家、監督、脚本家、製作者。ニックネーム、カルロス・フェルフェル(IMDb)、カルロス・F・ビダルなど、幾つもの名前がある。ビゴ大学卒。ガリシアのビゴ出身から本作ではカルロス・フェルナンデス・デ・ビゴでクレジットされている。アニメーション2D/3Dのキャリアは20数年になり、2012年ビデオゲームFireplacing(ニンテンドーWii)や2014Zombeer(ソニー・プレイステーション3)などがある。監督は主演者ラウル・アレバロともどもマラガ入りしており、上映後のプレス会見も済んだようです。

 

      

             (上映後のプレス会見、中央が監督、右端がラウル・アレバロ)

 

2013年短編アニメーション3DMortiを撮る。長編アニメはMemorias de un hombre en pijamaが初となる。これからの予定としてSFアクションTesla 3327SFホラーSkizoがアナウンスされています。毎年6月にフランスで開催される「アヌシー国際アニメーション映画祭2018」に出品されます。それに先立ってカンヌ映画祭のフィルム・マーケットのなかの「Goes to Cannes」で519日に一部分の上映が決定したようで、宣伝効果が期待されます。この映画祭では宮崎駿の『紅の豚』や、ついこのあいだ鬼籍入りした高畑勲の『平成狸合戦ぽんぽこ』、昨年は湯浅正明の『夜明け告げるルーのうた』がグランプリを受賞している世界最大のアニメーション映画祭です。 

     

                       (短編アニメーションMorti」のポスター

  

「モルタデロとフィレモン」アニメ3D*ゴヤ賞2015ノミネーション ⑩2015年02月01日 16:50

 ハビエル・フェセルが3Dアニメで帰還:ノミネーション6

★アニメ部門は割愛するつもりでしたが、なにしろ「モルタデロ&フィレモン」だし、6個だし、封切り12週調べで48万人が見たという話だし、あれやこれやでアップすることにしました。いずれ公開されますから()、その折り再アップしますので今回は手短かにいきます。

 


   Mortadelo y Filemón contra Jimmy el Cachondo

長編アニメーション賞:Zeta Cinema(フランシスコ・ラモス、ルイス・マンソ)

脚色賞:ハビエル・フェセル、クリストバル・ルイス、クラロ・ガルシア

プロダクション賞:ルイス・フェルナンデス・ラゴ、フリアン・ララウリ

オリジナル歌曲賞:“Morta y File”ラファエル・アルナウ作曲

美術賞:ビクトル・モニゴテ

録音賞:ニコラス・デ・ポウルピケ、ジェイムズ・ムニョス

 

*データ:スペイン、スペイン語版とカタルーニャ語版、2014、アニメーション3D、コメディ、91分、製作:Zeta Cinema TVE、カタルーニャTV他、配給ワーナー・ブラザーズ・ピクチャー、スペイン公開1128

受賞歴:フォルケ賞2015「ドキュメンタリー&アニメーション」部門で作品賞受賞

ノミネーション:間もなく発表される「シネマ・ライターズ・サークル賞」(22日)、「ガウディ賞」(21日)に多数ノミネートされている。

 


*キャスト:(ヴォイス)カラ・エレハルデ(モルタデロ)、ハンフリ・トペラ(フィレモン)、ビクトル・モニゴテ、ホセ・アティアス、マリアノ・ベナンシオ(上司エル・スーパー)、ガブリエル・チャメ(ジミー・エル・カチョンド)、エンリケ・ビリャン(バクテリオ教授)、ベルタ・オヘア(オフェリア)、エミリオ・ガビラ(ロンペテチョス)、アテネア・マタ、他。(スペイン語版のヴォイスです)

 

解説:ジミー・エル・カチョンドとその子分たちは、諜報機関から小型バッグの中にあった、T.I.A.の極秘書類を盗みだすことに成功した。エル・スーパー局長は書類奪還と悪漢懲らしめの任務をモルタデロとフィレモンの二人に託すほか手がなかった・・・(管理人:二人では心もとないですね)。

 

★フェセル監督が、フランシスコ・イバニェスのコミック“La gran aventura de Mortadelo y Filemón”(2003)を実写化した第1作は『モルタデロとフィレモン』の邦題で公開された。ミゲル・バルデムが監督した第2作“Mortadelo y Filemón, Mision: salvar la Tierra”(2008)に続く第3弾が本作。「モルタとフィレ」シリーズとしては3作目ですが、フェセル監督としては2作目になります。詳細は公開が決まってからにして、ヒントはいわゆる23-Fと言われる、1981223日に起きた軍事クーデタ未遂事件のパロディだそうです。アントニオ・テヘロ中佐が200人の治安警備隊員と下院に押し入り、首相以下350人の議員を人質にとった。テレビで生中継されたのでスペイン国民の多くが未だ記憶している。まあ、そんなこと知らなくても楽しめるはずです。

 


★前2作に出演していたマリアノ・ベナンシオ(エル・スーパー)、ベルタ・オヘア(オフェリア)、エミリオ・ガビラ(ロンペテチョス)は、同じ役柄のヴォイスを担当、バクテリオ教授を演じていたハンフリ・トペラはフィレモンに変わった。フェセル監督、美術監督ビクトル・モニゴテ、製作者ルイス・マンソのダンゴ三兄弟は、『カミーノ』がラテンビート2009で上映されたとき来日、Q&Aに参加してくれました。スタッフ、キャストに『カミーノ』のメンバーも重なっていますね。“モニゴテ”は児童劇シンデレラの指導者、マリアノ・ベナンシオはカミーノの父親になった俳優です。カラ・エレハルデは“Ocho apellidos vascoa”で助演男優賞にノミネーションされているから、2015年は記念すべき年になりそうです。

 

フアン・ホセ・カンパネラ*メネンデス・ペラーヨ国際大学で講演2014年08月02日 15:04

★フアン・ホセ・カンパネラが、メネンデス・ペラーヨ国際大学UIMPの招きでサンタンデール(カンタブリア自治州)に滞在、映画についての講演が目的、午後には彼の映画が連続上映されたようです。例年、多くの大学が夏期限定の特別講座を一般公開する。なかでもUIMPは夏のリゾート地マグダレナ半島の先っぽに建てられたマグダレナ宮殿に本部がある。この宮殿は1908年アルフォンソ13世の夏の離宮として建造されたが1931年に閉じられていた。UIMPの沿革は、1932年に「サンタンデール夏季国際大学」として創立されたこともあって、避暑地での夏季講座は講師陣にも参加者にも人気です。 

                   (サンタンデール、マグダレナ半島に建つUIMP本部)

 

★カンパネラといえば『瞳の奥の秘密』ですね。2010年アカデミー賞外国語映画賞をアルゼンチンにもたらした映画、日本でも劇場公開されました。2009年暮に開催された「スペイン映画祭2009」でアジアン・プレミアされました。スペイン文化省と在日スペイン大使館が主催した映画祭で、スペインはまだEU のお荷物ではなかった頃でした。個人的には「来年のゴヤ賞はコレで決まりだね」と確信した映画祭、コレとは『瞳の奥の秘密』でなく、ダニエル・モンソンの『第211号監房』のことで、主役の「マラ・マードレ」のルイス・トサルにしびれた映画祭でもありました。

 

★映画にテレビに舞台にと、二足どころか三足の草鞋を履いて大忙しのカンパネラ監督、アニメーションMetegol2013、スペイン題Futbolín)が今年のゴヤ賞最優秀アニメーション賞を受賞した。とにかく新しい技術ズキ、「いの一番」ズキ、政治的な目配りも怠りなく、それでいてユーモアに富んだエンターテインメントの急所を押さえている。その代表作が『瞳の奥の秘密』でした。 

       (オスカー監督アルモドバルから祝福を受けるカンパネラ 2010年)

 

★ひどい風邪を引いていたらしく咳で中断しながらも、「見渡したところ私が一番の年寄りかな」と冗談を飛ばすことは忘れない監督。1959年ブエノスアイレス生れの55歳、まだ老人の仲間には入れてやらない。アメリカのTVドラマ・シリーズで出発、アメリカでキャリアを積んだ。そういう経験もオスカーに繋がったかもしれない。Strangers with Candey20006話)、Law & Order200617話)、Dr. House200710米、5回)などが代表作。『瞳の奥の秘密』以下4作でタッグを組んだ盟友リカルド・ダリンについては、いずれUPしたい映画なのでそちらに回します。2006年に外国人に与えられるスペインの市民権を貰っている。

 

★舞台監督としては、アメリカのハーブ・ガードナーの作品を自身で翻案したParque Lezamaを演出している。ガードナー作品は日本の演劇界でも公演されてますね。ブエノスアイレスのレサマ公園で知り合った仲の良い二人の老人に暗雲が垂れ込めるシリアス・コメディ。二人にはカンパネラ映画でもお馴染みのエドゥアルド・ブランコと一時期下院議員(19932001)でもあったルイス・ブランドニが扮した。ブランドニはカンパネラ映画には出演していないと思う。

 


★カンパネラによれば、テレビの仕事が続いていたのでそちらは暫くお休みして、今後は舞台と映画に交互に取り組みたいと語っておりました。「映画の場合では1ヵ月とか2ヵ月、編集室に籠ってやる作業が一番好き」とニヤリ、「自分が気に入ってみんなも見たい映画にコントロールしていき、ただし撮影したものがもっていた要素を残して再創造していく」。ただちに大笑いする個所と静寂の個所の違いをセリフではっきりさせる。多分職人仕事が好きなんだろう。「演劇は映画のように多くの観客をカバーできない。自分のやるべき仕事は映画かな」と考えているようです。演劇の演技はそのとき限りだが、フィルムは残っていく。しかし200年経てばネガだってすべて消滅してしまう。まあ、200年先を心配しても仕方がない。

 

★アルゼンチンのアカデミー賞と言われる「スール賞」(Premios Sur)は、12月上旬に授賞式が行われる。2013年はルシア・プエンソの『ワコルダ』が独り勝ちしたような印象だったが、カンパネラのアニメMetegolも脚色・撮影・録音・作曲の4賞受賞と奮闘した。現会長でもあるカンパネラにとって、「スール賞」の授賞式はフィエスタ、「クリスマス・イブのようなものだと理解している。会員すべてに意思表示の権利があるが、公的な声明を発表するというより気晴らしなんだよ」とコメント。

 

アルゼンチン映画アカデミー AACCA 2004年に設立された比較的新しい組織である。前身は1941年に設立されたが1955年のクーデターで崩壊した。現アカデミー会員は約290人ほど、プロデューサー、監督、脚本家、音楽家、撮影監督、等などで構成されている。スール賞、オスカー賞、ゴヤ賞、アリエル賞などの選出を行っている。

 

★『瞳の奥の秘密』とMetegolの共同執筆者エドゥアルド・サチェリは、1967年ブエノスアイレス生れの作家、脚本家。大学では歴史学を専攻し、実際に大学や高校で歴史を教えている。第1作は“Esperandolo a Tito y otros cuentos de futbol(2000)というサッカーをめぐる物語のようです。ディエゴ・マラドーナに捧げられた短編(‘Me van a tener que disculpar’)が含まれているようです。大のサッカー好きとして有名、最もアルゼンチン男性でサッカー嫌いを探すのは大変だ。 

           (エドゥアルド・サチェリ)

 

★もうひとりMetegolで撮影監督賞を受賞したフェリックス・モンティは、フェルナンド・E・ソラナスの『タンゴ ガルデルの亡命』(1985)や『スール、その先は愛』(88)、ブラジルのブルーノ・バレットのリオで起きたアメリカ大使誘拐事件をテーマにした『クアトロ・ディアス』(97)、『瞳の奥の秘密』も撮っているベテランです。

 

            (フィギュアに囲まれたカンパネラ監督)

 

★サッカー・ファンではありませんが、Metegolの公開を待ちわびております。

 

第28回ゴヤ賞2014ノミネーション⑥2014年01月19日 20:56

 続・落ち穂拾い

★長編ドキュメンタリー賞 

Món petitMundo pequeño監督:マルセル・バレーナ 2012、スペイン


昨年のゴヤ賞にノミネートがなかったので「残念だなぁ」と思っていましたが、スペイン公開が3月と遅かったので今年になったようです。若いアルベール・カサルスAlbert Casals)は、恋人と一緒に世界一周の旅に出ようと決心する。ただしお金もなく手作りの車椅子でなのだ。お金とか荷物、細々した計画など冒険の魅力には必要ない。生れ故郷のバルセロナを出発してニュージーランドに到着するまでの彼の人生哲学が語られる。道中で起こる問題の数々をどうやって克服したか、冒険旅行はそのまま彼自身の力強い生き方を示すことになる。子供のときの白血病が原因で下半身麻痺になり車椅子生活になったようです。

 


*マルセル・バレーナMarcel Barrenaは、1981年バルセロナ生れ、監督・脚本家・俳優・プロデューサー他。Cuatro estaciones2010でガウディ賞1911テレビ映画部門受賞、Món petitでアムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭2013DOC U!」賞受賞、観客賞3位。ボルダー国際映画祭(米コロラド州)2013ベスト・ヒューチャー・ドキュメンタリー賞を受賞しています。(写真上はアルベール・カサルス、下はマルセル・バレーナ監督)

 

 ★長編アニメーション賞

FutbolínMetegol)”監督: フアン・ホセ・カンパネラ 20133D
  アルゼンチン
=スペイン

原題はアルゼンチンのMetegol、ゴヤ賞なのでスペイン題のFutbolínになっています。カンパネラ監督といえば、アカデミー賞外国映画賞受賞の『瞳の奥の秘密』(2009)ですね。受賞したお蔭で公開されました。主演のリカルド・ダリンが多くの女性ファンを獲得した映画でもありました。カンパネラ監督が大のサッカー・ファンなのは周知のこと、「瞳」でもサッカー場の特撮とか、ダリンの相棒ギジェルモ・フランセージャに蘊蓄を語らせていました。新しいことも大好きでロドリーゴ・S・トマッソのサッカー場の特撮技術はアルゼンチンでは初めてと話題になりました。でも3Dアニメを撮るとは想像しませんでした。もっともフェルナンド・トゥルエバもアニメ『チコとリタ』を撮りましたが。

 


昨年暮れ授賞式があったアルゼンチン・アカデミー賞≪スール賞Premio Sur≫では、脚色賞(原作は、ロベルト・フォンタナロッサの短編Memorias de un wing derecho)・撮影賞・作曲賞・録音賞を受賞しています。作品賞はルシア・プエンソの『ワコルダ』が受賞した。本賞は第1回が2006年と新しく、アルゼンチンでは1943年創設の≪銀のコンドル賞≫のほうが高い権威をもっています。『瞳の奥の秘密』が作品賞・監督賞など大賞を取った賞ですね。

アニメは子供にせがまれて映画館にしぶしぶ出掛けるものではなく、大人だけで楽しめるまでに成長したということでしょうか。718日公開、最初の3日間だけで観客動員数が418,000人、オスカー受賞作品の約2倍ということがそれを証明しています。劇場公開が待たれる作品。

 

★短編アニメーション賞

Via tango 監督:アドリアナ・ナバロ・アルバレス 2012  スペイン 317

 


企画、デッサン、イラスト、プロモーションなど何から何まで一人でこなしてゴヤ賞に辿りついたと話題なのが本作です。アドリアナ・ナバロ・アルバレス Adriana Navarro Alvarez は、1985年バスク州ビスカヤ生れの28歳のアニメーター、まだバレンシア工科大学のアニメーション修士コースで学ぶ学生。デザイン科のマリア・デル・カルメン・ポベダ教授の指導のもとで作られた。アドリアナの個人的な体験が盛り込まれているとインタビューで語っています。テーマはミュージカルの振り付けをとおして語られるロマンスのようです。

 


既に2013年中にアメリカから台湾まで70以上の短編フェスティバル(特に大学主催)で上映、7つの賞を手にしています。その中には北スペインの港湾都市ヒホンで開催された映画祭の若手審査員賞も含まれています。写真はVia tangoのワンシーンからとアドリアナ・ナバロ。

 

 

『使途』 El apóstol フェルナンド・コルティソ2013年12月27日 11:02

使徒El apóstol フェルナンド・コルティソ

★セルバンテス文化センターで10月から始まった「土曜映画上映会ガリシア特集」の最終回が1220日にありました。原題はガリシア語でO Apóstolo2012The Apostle)というアニメーション。映画上映後のシネフォーラムも含めて、スペイン初となるストップ・モーションで撮られた「大人のためのアニメーション」、この極めてユニークなラテックス人形劇を楽しんでまいりました。

 


監督・脚本:フェルナンド・コルティソ(Fernando Cortizo Rodríguez

製作国:スペイン

製作:アルテファクト・プロダクション他  エグゼクティブ・プロデューサー:イサベラ・レイ他

撮影:マシュー・センレイチ

音楽:フィリップ・グラス他

 

キャスト(ボイス):カルロス・ブランコ(ラモン)、ホセ・マヌエル・オリベイラ≪ピコ≫(ドン・セサレオ司祭)、ポール・ナッシー(首席司祭)、ホルヘ・サンス(パブロ)、セルソ・ブガーリョ(セルソ)、ジュラルディン・チャップリン(ドリンダ)、ルイス・トサール(シャビエル)、マヌエル・マンキーニャ(アティラノ)、イサベラ・ブランコ(巡礼者イサベル)、ハコボ・レイ(医師)他

データ:言語スペイン語・ガリシア語 2012年 80分 201210月スペイン公開

 

受賞・ノミネート歴:ファンタスポルト国際映画祭2013最優秀作品賞、アヌシー国際アニメ映画祭2013観客賞、アルゼンチンExpotoors 映画祭グランプリ受賞

マラガ映画祭2012、シッチェス・カタロニア国際映画祭2012、モスクワ国際映画祭2012、ザグレブ国際アニメ映画祭2013ワールド・パノラマ部門出品、他

ゴヤ賞2013長編アニメ部門、スペイン映画脚本家サークルのベスト・アニメ賞ノミネート他

ファンタスポルトFFはポルトガルのポルト市で開催され、シッチェスFFと共に世界三大ファンタジー映画祭の一つと言われています)

 

プロット:脱獄に成功したラモンは、かつてサンチャゴ巡礼路沿いの村に隠しておいた盗品を取り戻すべく脱獄仲間のシャビエルに別れを告げる。たちこめた霧に迷うなか出会った老人に不気味な村に導かれていく。そこでラモンが出会った世界は牢獄よりも恐怖に満ちたものだった。果たしてラモンは無事帰還できるのでしょうか。サンタ・コンパーニャ、深い霧、サンチャゴ巡礼路、今では知る人の少なくなったガリシア伝説を掘り起こしたガリシア発のダーク・ファンタジー。(文責:管理人)

 


★まず『使徒』のユニークさは、ストップ・モーション(コマ撮り)で撮られたステレオスコープとしてはスペイン初の長編アニメーション映画という点です。フェルナンド・コルティソ監督は1973年サンチャゴ・デ・コンポステラ生れ、2007年にガリシア語でLeoという短編アニメ(12分)をストップ・モーションで撮っている。第2作がO coidador de gatos200914分)、第3作目が本作になる。撮影は20089月から20105月まで、トータルでは約5年近くかかっている。ラテックスを素材にした人形アニメである。ラテックスというのはゴムの木のような木材から抽出した乳白色の樹液のことで、粘土のように時間が経つと乾燥して崩れてしまうことがない。チューインガムを想像して欲しい。映画会トークでも粘土の「クレイメーション」と思っていた方が多かったようだ。スペインの春四月に開催されるマラガ映画祭に、俳優たちが演技する映画に混じって本作のような立体映像のアニメが選ばれるのも珍しいことで、「大人も楽しめるアニメーション」というキャッチコピーは誇大広告ではなかった。

 

★まず2週間ほどかけて各俳優たちに自由に自分の役を演じてもらうことから始めた。演劇の舞台稽古のようにやってもらい、アニメーターに俳優の動きの特徴を掴んでもらった。冒頭に登場する二人の脱獄者のように俳優を知っていると、あまりによく似ているのでビックリする。こんなに似ていては海外で吹替え版にしたとき困るのではないかと思ってしまう。

 

★『ジュラシックパーク』以降、映画界はCGに移行しつつあり、本作のような手作り人形は衰退の傾向にある。そういう逆風が吹く中で敢えてテマヒマかかるフィギュアに挑戦したのは、映画に対する大いなる愛がなければできないことでしょう。「極めて小さな独立系のプロダクションのメリットを活かしたとも言えますが、危険な賭けをするようなものでした」と監督も語っています。約30センチぐらいの人形を動かしながら、1秒間に24枚写真を撮ったそうです。1日で撮れるのが平均して30秒から50秒分という全く気の遠くなるような話です。撮影監督マシュー・センレイチMatthew Hazelrig)は勿論のこと、スタッフの執念を感じます。彼は、セス・グリーンのストップ・モーション・アニメ『ロボットチキン/スター・ウォーズ』(2007『スター・ウォーズ』のパロディ化)や、ヘンリー・セレックのファンタジー・アニメ『コララインとボタンの魔法』(2010)などに照明技術者として参加しています。

 

★チェコのヤン・シュヴァンクマイエル=エヴァ・シュヴァンクマイエロヴァー夫妻のようにCGを拒否している監督も勿論健在です。チェコの民話に出てくる恐ろしいオテサーネクOtesanekを題材にした『オテサーネク、妄想の子ども』2000)に出てくる人形は木の枝。これは枝探しから始めるわけで、こちらも気の遠くなるような話です。エドガー・アラン・ポーやマルキ・ド・サドの人物像、作品世界をモチーフにして恐怖に満ちています。2005年に死去したエヴァとの共同作品Lunacy(ルナシー)が合作としては最後になった。

 

★モスクワ国際映画祭2012で『使徒』を見たティム・バートンが「まさにゴシック」と評したように、大聖堂に代表されるようなガリシアの風土が醸しだす神秘さに溢れています。モスクワのような国際的な映画祭にエントリーされたことだけでも快挙なのに、大先輩バートンに見てもらえたことを監督は素直に喜んでいます。しかし自身は「ゴシック美術的の批評はとても嬉しいが、これは私の様式です。地方に暮らす人々がもっている閉所恐怖症的な、凝りすぎた雰囲気が好きなんです」と語っています。バートン流burtoniana の夢のような雰囲気のなかで進行していきますが、それとは少し異質な印象を受けました。

 


★キイワードの一つに≪サンタ・コンパーニャ≫が挙げられます。この伝説は1031日の12時から翌日にかけて行われるハローウィンに繋がるもので、いわゆる「死者の行列」です。地域によって呼び名が異なり、ガリシアではサンタ・コンパーニャ、アストゥリアス地方、サモラ、レオン、サラマンカではHuéspedaと呼ばれています。写真でも分かるように、十字架をもった骸骨の主導者の後に白い頭巾を被った白装束の煉獄からやってきた魂が蝋燭を手にして2列になって従っている。地域によって違うようですが、普通は裸足でスダリオという死者に被せる布にくるまっている。ロザリオの祈りを唱えながらやってくると、犬も猫も怖れおののいて逃げ出してしまうというもの。ガリシア名物の深い霧が白装束のイメージに繋がっているのかもしれません。

 

★監督は、ある特別な意味を込めて取り入れたようで、それは監督が「魔法使が住むお城を舞台にするより既に忘れられてしまったようなガリシアの伝説を語りたいと思った。サンタ・コンパーニャにはモンスターは現れず、善人と悪人が絡み合っています。完全な善や完全な悪というのは存在しない、人間とはそういうものですから」と語っていることからも頷けます。

 

(写真:左からトサール、監督、ブランコ、サンス)

★前述したように本作では、以前に実際に扮する役者の動きをコピーして取り入れています。写真でも分かるようにシャビエルはルイス・トサールの、同じく主人公ラモンはカルロス・ブランコのそっくりさんです。ホルヘ・サンスが手にしているのはドリンダ(ジュラルディン・チャップリン)とドン・セサレオ司祭(ホセ・マヌエル・オリベイラ≪ピコ≫)です。監督のは耳が大きすぎるようだが多分セルソ(セルソ・ブガーリョ)と思う。アメナーバルの『海を飛ぶ夢』でバルデム扮するラモン・サンペドロの兄さんに扮した役者。日本でも比較的劇場公開になった映画に出演しているホルヘ・サンス(マドリード生れ)やジュラルディン以外はガリシア出身が多い。

 

カルロス・ブランコCarlos Blanco Vila)は、1959年ガリシアのポンテベドラ生れ、俳優・監督・脚本家、舞台出演、ガリシア・テレビTVGのウイットに富んだ人気司会者。ヘラルド・エレーロのHeroína2005)やUna mujer invisible2007)が代表作、公開作品ではアルモドバルの『ボルベール』(2006)に出ている。コルティソの短編デビュー作Leoにも声優として出演。本作でも独特の太い眉が上下に動いて可笑しいやら感心するやらでした。

 

ホセ・マヌエル・オリベイラ≪ピコ≫Xosé Manuel Olveira ‘Pico’)は、1955年ラ・コルーニャのムロス生れ、ガリシアを舞台にしたホセ・ルイス・クエルダの『蝶の舌』や『海を飛ぶ夢』、今年公開されたホルヘ・コイラの『朝食、昼食、そして夕食』では、移動音楽団を主宰し歌手のオーデションをしている最中に心臓発作を起こして亡くなってしまう役を演じていた。大きな鼻が特徴的で、本作でも鼻をピクピクさせて主人公ラモンを恐ろしがらせていた。カルロス・ブランコ同様Leoに出演。


 

(写真:ポール・ナッシー)

ポール・ナッシーPaul Naschy)の本名はハシント・モリーナ・アルバレス。俳優・脚本家・監督・製作者、1934年マドリード生れ、20091130日に前立腺ガンのため本作完成を見ることなく死去してしまった。俳優以外は本名を名乗り、狼男シリーズ、ドラキュラ伯爵などスパニッシュ・ホラー映画のキングとして活躍、シッチェス映画祭の常連だった。「ポール・ナッシーのいないシッチェスなんて」と、ホラー・ファンはその死を悼んだ。日本でもDVDがボックスになっているほどファンが多い。首席司祭の造形はナッシーだが、時間的に不可能だからボイスは他の声優と思われます(未確認)。これは余談ですが、彼の泌尿器科医に前立腺ガンの生体検査を行わなかったとして、43.682ユーロの罰金が科された。主治医からは「本人が検査を拒絶した」と家族に説明があった由、もう藪の中ですね。サンタ・コンパーニャ行列の先頭にたって旅立ってしまいました。

 

★ルイス・トサール、ホルヘ・サンス、ジュラルディンの御紹介は割愛、主役を演じた別作品にいたします。最もその必要もないほどメジャー入りしてますが。

 

★ゴヤ賞はノミネートだけに終わりました。パイオニアとして貰う価値があったと思いますが、2013年はライバルがエンリケ・ガトの『タデオ・ジョーンズの冒険』と運も悪かった。シャビエル役のルイス・トサルに言わせると、「スペインより海外のほうが評価が高い」そうです。2014年アカデミー賞のアニメ部門19作品にエントリーされていますが、5作品に残るのは難しそう。選ばれるには年内に最低でも1週間以上の公開が条件、まだそれすら満たしておりません。アメリカでは9月のオースティン・ファンタジック映画祭上映だけですからもう無理でしょう。物語の背景には、サンタ・コンパーニャ、霧、サンチャゴ巡礼など極めてガリシア的なローカルな物語ですが、同時にユニバーサルでもありますね。