J・A・バヨナの新作「怪物はささやく」*トロント映画祭ガラコレクション2016年08月02日 18:37

          第41回トロント映画祭201698日から18日まで

 

フアン・アントニオ・バヨナの新作A Monster Calls(仮題「怪物はささやく」米=西)が、サンセバスチャン映画祭に先駆けて開催される「トロント国際映画祭2016」でワールド・プレミアされることが発表になりました。本映画祭は非コンペティションですから審査員はおりません。「ガラコレクション」(19本)の中から選ばれた観客賞が事実上のグランプリとなります。米国に近い地の利をうけて本映画祭の人気度がオスカー賞に繋がることも多く、その後を左右することもあります。バヨナ監督の前作『インポッシブル』(2012)もトロントがワールド・プレミアでした。ガラコレクションにはこれ1作だけ、見落としがあるかもしれませんが、ラテンアメリカ諸国の作品は見当たりませんでした。

 

   

          (モンスターとコナー少年、“A Monster Calls”から)

 

シガニー・ウィーバーがサンセバスチャン映画祭2016の「栄誉賞」受賞の記事をアップしたばかりですが、トロントなら近くですからプロモーションに駆けつけるのではないか。栄誉賞の授賞式は本作上映の921日ですから日にち的には可能です。

シガニー・ウィーバー「栄誉賞」受賞の記事は、コチラ⇒2016722

 

★「スペシャル・プレゼンテーション」(49作)に、当ブログのカンヌ映画祭2016「監督週間」でもご紹介した、パブロ・ラライン“Neruda(仮題「ネルーダ」チリ=アルゼンチン=西=仏)が選ばれています。もう1本がヴェルナー・ヘルツォークSalt and Fire(独=米=仏=メキシコ)、英語映画ですが製作国にメキシコが参加、「ネルーダ」にも出演しているガエル・ガルシア・ベルナルが重要な役柄で出演しています。

Neruda”の監督・キャスト・物語の紹介記事は、コチラ⇒2016516

 

   

             (ネルーダになったルイス・ニエッコ)

 

ベネチア映画祭2016のノミネーションも発表され、こちらにもパブロ・ララインの新作Jackie(「ジャッキー」)がノミネートされていました。ナタリー・ポートマンがジャクリーンを演じます。他にピーター・サースガードがロバート・ケネディ、キャスパー・フィリップ(Caspar Phillipson)がジョン・F・ケネディになるようで、結構ソックリさんです。彼は1971年デンマーク生れの舞台俳優、主にミュージカルで活躍している。デンマークではハリウッド進出が話題になっているようです。英語映画ですからいずれ公開されるでしょう。

 

       

          (キャスパー・フィリップとナタリー・ポートマン)


シガニー・ウィーバーがドノスティア賞を受賞*サンセバスチャン映画祭2016 ②2016年07月22日 11:52

       JA・バヨナのファンタジー「怪物はささやく」はコンペ外上映

 

63回サンセバスチャン映画祭の栄誉賞ドノスティア賞は英国女優エミリー・ワトソン一人でしたが、今年は米国女優のシガニー・ウィーバーアナウンスされました。今のところ受賞者は一人、時期的にはかなり早い発表ですから、増える可能性があります。フアン・アントニオ・バヨナの新作A Monster Calls(西題Un monstruo viene a verme仮題「怪物はささやく」)に出演しているので、周囲は予想していたかも知れません。授賞式は本作上映の921日当日に、メイン会場クルサール・オーディトリアムの予定です。イチイの大木の怪物(リーアム・ニーソン)と13歳のコナー少年(ルイス・マクドゥーガル)のファンタジー・ドラマ。シガニーはコナー少年の祖母役です。 

     

      (シガニー・ウィーバー、右手にあるのがドノスティア賞のトロフィー)

 

★“A Monster Calls”の製作発表は20143月でしたから大分待たされました。オリジナル言語は英語です。第64回サンセバスチャン映画祭2016のコンペティション外でワールド・プレミアされます。癌で夭折したシヴォーン・ダウドの原案をパトリック・ネスとイラストレーターのジム・ケイが完成させたもの。若い読者のためのベストセラー小説の映画化、本作ではパトリック・ネスが脚本を手掛けました。日本では、児童図書出版社から『怪物はささやく』の邦題で既に翻訳書が出ています(2011年、あすなろ書房)。

 

       

         (イチイの大木とコナー少年、映画“A Monster Calls”)

 

シガニー・ウィーバー(ウィーヴァー)Siigourney Weaver1949年ニューヨーク生れの66歳、40年のキャリアがあります。リドリー・スコット、ピーター・ウィアー、ジュームス・キャメロンなどに起用されている。一応代表作はシリーズ『エイリアン』のリプリー役、ゴールデン・グローブ賞助演女優賞の『ワーキング・ガール』(88、マイク・ニコルズ)、同主演女優賞(ドラマ部門)の『愛は霧のかなたに』(88)、ロマン・ポランスキーの『死と乙女』(94)、英国アカデミー助演女優賞『アイス・ストーム』(97、アン・リー)、J・キャメロンの『アバター』(09)など多数。 

 

   (リーアム・ニーソン、ルイス・マクドゥーガル、パトリック・ネスと一緒に)

 

フアン・アントニオ・バヨナ「母子三部作」の最終編、「母子三部作」というのは、第1作『永遠のこどもたち』07)と第2作『インポッシブル』(12)、本作が第3作になります。「これで母子三部作は終りにするつもりだ」と監督は語っています。公開は来年でしょうか。

 

         

                (撮影中のJA・バヨナ)

 

A Monster Callsの主な紹介記事は、コチラ⇒20141213


バヨナ、新作「怪物はささやく」の予告編を披露した2015年11月26日 13:02

          公開は1年先の201610月に決定

 

★昨年12月にキャストやスタッフなど大枠をアップいたしましたが、先日最初の予告編が監督のツイッター上に登場しました。1分ちょっとの本当に短いものですが見上げるようなイチイの大木です。リーアム・ニーソンがこのイチイのモンスターになります。スペイン語題はUn monstruo viena a vermeですが、言語は英語です。邦題がどうなるか分かりませんが、パトリック・ネスの同名小説“A Monster Calls”が既に『怪物はささやく』として翻訳されておりますので、決定するまで当ブログではこれを採用します。

 

      

              (イチイの大木を見上げるコナー少年)

 

★フアン・アントニオ・バヨナの「母子三部作」の最終回です。「母子三部作」というのは、2007年の『永遠のこどもたち』2012年の『インポッシブル』のこと、テーマ的には第1作に近い。というのは「現実的な家族を描きますが、領域的には死が身近にあり、エモーショナルな激しさを共有しているから」だそうです。『インポッシブル』は、昨年のOcho apellidos vascosが記録を塗り替えるまで、スペインでの興行成績ナンバーワン、国内でこそ記録は破られましたが、世界記録は保持しています。本作でバヨナはゴヤ賞監督賞のみならず、最年少「国民賞」(映画部門)受賞者にも輝いた。今年の受賞者がフェルナンド・トゥルエバでしたから、いかに異例の受賞だったかが分かります。

 

主役のコナー少年にはオーディションを受けた約1000人の中から選ばれたルイス・マクドゥーガル、ほか主な登場人物は、癌闘病中の母親にフェリシティ・ジョーンズ、祖母にシガニー・ウィーバー、『永遠のこどもたち』にも出演したジェラルディン・チャップリンなどがクレジットされている。リーアム・ニーソンを含めて大物俳優が脇を固めている。

 

(最後列L・ニーソン、脚本家P・ネス、S・ウィーバー、前列L・マクドゥーガル)

 

本作“Un monstruo viena a verme”のデータは、コチラ⇒20143171213


フアン・アントニオ・バヨナの『怪物はささやく』*イギリスでの撮影終了2014年12月13日 20:46

★以前フアン・アントニオ・バヨナの新作のご案内をしたときは(コチラ⇒2014317)、まだキャスト陣が決まってない段階でしたが、11月に3週間かけてイギリスでの撮影が終了、現在はバルセロナ近郊のテラッサでの撮影が始まりました。予定は3カ月、公開は再来年2016年秋と大分先になります。ベストセラー作家パトリック・ネスの小説“A Monster Calls”(“Un monstruo viene a verme”)の映画化。癌で夭折したシヴォーン・ダウドの原案をパトリック・ネスとイラストレーターのジム・ケイが完成させたもの。原作は既に2011『怪物はささやく』として翻訳が刊行されています。 


    A Monster Calls(“Un monstruo viene a verme”)

製作Apaches Entertainment / La trini / Participant Media / River Road Entertainment

監督:フアン・アントニオ・バヨナ

脚本:パトリック・ネス

撮影:オスカル・ファウラ(前2作と同じ)

音楽:フェルナンド・ベラスケス(前2作と同じ)

プロダクション・デザイン:エウヘニオ・カバジェロ

製作者:ベレン・アティエンサ(アパッチ・エンターテインメント)、サンドラ・エルミダ、
    ジョナサン・キング、他

配給会社:フォーカス・ヒューチャーズ/ライオンズゲイト(米国)、
     ユニバーサル・ピクチャー(スペイン)など。

 

データ:米国=スペイン、英語、製作費2500万ユーロ、2016年秋公開(米国1014日)

キャスト:ルイス・マクドゥーガル(コナー)、リーアム・ニーソン(イチイのモンスター)、フェリシティ・ジョーンズ(母)、シガニー・ウィーバー(祖母)、トビー・ケベル(父)、ジェラルディン・チャップリン、他

 

ストーリー イチイの大木の怪物と13歳のコナー少年のファンタジー・ドラマ。両親は離婚して父親はアメリカで新しい家族と暮らしている。少年は癌と闘っている母親と一緒に暮らしており、学校ではイジメにあって孤立している。禁欲的で厳しい祖母がコナーの面倒をみるため到着した。ある夜、怪物が少年の家にやってきて、「私が先に三つの物語を語ります。それが終わったら君が四つめを語りなさい。その物語は君が心に閉じ込めている真実の物語でなければなりません。なぜなら君はそれを語るために私を呼んだのだから」と。

 

   (最後列ニーソン、脚本家パトリック・ネス、ウィーバー、前列マクドゥーガル)

 

★キャストの顔ぶれを見れば、予告通り、大物俳優起用が頷けます。コナー少年はオーデションを受けた1000人ぐらいの中から選ばれたとか。本作より先に『パン』(ピーターパン)で来年夏以降に登場することになるでしょう。

 

         (2015年夏アメリカ公開の『パン』のポスター)


 

★祖母役は初めてというシガニー・ウィーバーはオファーがあったとき、監督の過去の作品から判断して、脚本を読まずにオーケーした由。読んでからこれは挑戦的なプロジェクトになると思ったそうです。「こんな才能豊かな独特の視点をもった監督の映画に参加できるとはなんと幸運なのと思った。いちいちどこがと列挙するのは難しいけど」と監督の傍らで褒めちぎった。撮影の大部分が水の中、顔は傷だらけという汚れ役に、恐る恐るオファーをかけたら一発でOKしてくれた『インポッシブル』のナオミ・ワッツの例を思い出しました。バヨナもスペインを代表する監督の仲間入りということですか。

 

★母親役のフェリシティ・ジョーンズ(1983バーミンガム生れ)は、『アメジング・スパイダーマンⅡ』に出ています。リーアム・ニーソン(1952北アイルランド生れ)は有名すぎて説明いりませんね。ニーソン演じるモンスター、不吉な墓場に立っているイチイの大樹は12メートル、この撮影が大変らしい。『インポッシブル』では打ちつける大波の撮影が難しかったそうですが。技術的にはジェームズ・キャメロンの『アバター』や、ピーター・ジャクソンの『ロード・オブ・ザ・リング』などを応用することになるそうです。ギジェルモ・デル・トロの『パンズ・ラビリンス』でオスカー賞(美術賞)を受賞したエウヘニオ・カバジェロが担当、鉄製の足場を組んだようです。

 

★「母子三部作」というのは、第1作『永遠のこどもたち』07)と『インポッシブル』(12)のことで、本作が第3作になります。これで母子三部作は終りにするつもりだとも語っています。「この映画は、現実と虚構の間を描きますが、ジャンル的には第2作に近く、テーマ的には第1作に近い。というのもより現実的な家族を描きますが、領域的には死が身近にあり、エモーショナルな激しさを共有しているから」と監督。あるシーンを撮り終えたとき、スタジオにいた俳優やスタッフが、製作会社メディアセットの代表者のパオロ・ヴァシレまで不覚にも感動の涙を流してしまったそうです()

 

『インポッシブル』も本作も、ハリウッドの「ブラック・リスト」に載っていた。つまり多額の資金供給を探している脚本のリストです。「ハリウッドのプロデューサーたちも最近は保守的になっていてリスクをとりたがらない。スーパーヒーローが出演するとか、大企業が業務委託してくれるものが優先される」と監督。賭けを望まないのがホンネのようです。本作の製作費も2500万ユーロとハンパじゃない。2作の実績があったればこそです。米国の配給会社フォーカス・ヒューチャーズほか、上記の製作会社が出資している。

 

               (本作撮影中のバヨナ監督

★「この小説を読んだとき、映画にしてくれ、と本が自分を呼んでいるように感じた」と監督。また自分にとって『怪物はささやく』は、現実世界に立ち向かうのにファンタジーは必要だと教えてくれたエモーショナルな物語でもあると。翻訳書に倣って『怪物はささやく』と一応しておきますが、日本公開時の邦題がこの通りになるかどうかは分かりません。言語は残念ながら英語ですから、当ブログには該当しませんが、バヨナということで割り込ませています。

 

バヨナ監督『インポッシブル』の次回作は『怪物はささやく』に決定2014年03月17日 00:24

★フアン・アントニオ・バヨナの次回作は、ベストセラー作家パトリック・ネスの小説A Monster CallsUn monstruo viene a verme)の映画化に決定しました。癌で夭折したシヴォーン・ダウドの原案をパトリック・ネスとイラストレーターのジム・ケイが完成させたもの。原作は既に『怪物はささやく』の邦題で、児童図書出版社から刊行されております(2011あすなろ書房)。まだキャストはアナウンスされておりませんが、今秋にはクランクインということですからいずれ発表されるでしょう。言語は残念ながら英語です。国際派の俳優を起用ということですが、スタッフは以前と同じ仲間で構成、製作者はアパッチ・エンターテインメントのベレン・アティエンサ、まずイギリスで撮影、後にスペインでも撮るということです。2016年秋公開を目指しており、配給会社はスペインではユニバーサル・ピクチャー、アメリカはフォーカスとライオンズゲイトなど。公開が期待できそうですが、邦題がこの通りになるかどうか、一応翻訳書に合わせておきます。

 


原作のストーリー イチイの大木の怪物と13歳のコナー少年のファンタジー・ドラマ。両親は離婚して父親はアメリカで新しい家族と暮らしている。少年は癌と闘っている母親と一緒に暮らしており、学校ではイジメに合って孤立している。ある夜、怪物が少年の家にやってきて、「私が先に三つの物語を語ります。それが終わったら君が四つめを語りなさい。その物語は君が心に閉じ込めている真実の物語でなければならない。なぜなら君は語るために私を呼んだのだから」と。

 

  

★辛い現実から逃避して心を閉ざしている少年が、真実の物語を語ることができるのか。バヨナがこのファンタジーをどのように映画化するのか大変興味があります。「この小説を読んだとき、映画にしてくれ、と本が自分を呼んでいるように感じた」と監督。また自分にとって『怪物はささやく』は、現実世界に立ち向かうのにファンタジーは必要だと教えてくれたエモーショナルな物語でもあると。第1作『永遠のこどもたち』、第2作『インポッシブル』、ともに母と子をテーマにしており、これで「母子三部作」は終りにするつもりだとも語っています。

 

(写真:『インポッシブル』 撮影中のバヨナ監督)

★第2作『インポッシブル』は歴史に残る興行成績を上げ、危機に瀕しているスペイン映画界の救世主となりました。キャストにナオミ・ワッツやユアン・マクレガーなど大物ハリウッド・スターを起用できたことも成功の一つだった。今回も国際派の俳優から選ばれる可能性が高く、まもなく発表されるようです。イメージ的には、スパイク・ジョーンズが2009年に実写で撮った『かいじゅうたちのいるところ』(日本公開2010)に近いのだろうか。最近亡くなったモーリス・センダックのベストセラー絵本Where the wild things areの映画化、1963年の刊行以来、全世界でトータル2000万部以上、日本でも神宮輝夫の名訳でミリオンセラーですね。読んだときに大人になっていた人、子供のときに大人に読んでもらった人、みんなドキドキワクワクした絵本です。

 

★バヨナは、ブラッド・ピットが主演したゾンビ映画『ワールド・ウォー Z』(Guerra mundial Z)の続編を撮ることが決まっておりましたが(既に二人は顔合わせをしている)、これは第4作にまわるようです。日本でも昨年6月に劇場公開された第1作は、ブラビの数多くのヒット作の中でも最大だったとか。悪口も聞こえてきた割には興行収入が何百億円とか信じられない数字、桁が違うのではないかと思ってしまいます。『怪物はささやく』も製作費2500万ユーロをつぎ込むそうで、失敗は許されないか。若くして映画部門での「国民賞」を戴き順風満帆です。「へえ、あの人スペイン人だったの」などと、スペイン人は海外で仕事をする人の足を引っ張りがち、度量を大きく持ちたいものです。