ブニュエルを主人公にしたアニメーション*ゴヤ賞2020 ⑱2020年02月05日 18:39

    サルバドール・シモーの「Buñuel en el laberinto de las tortugas」が受賞

 

   

 

★ゴヤ賞2020アニメーション部門は、サルバドール・シモーBuñuel en el laberinto de las tortugas18が受賞した。他に新人監督賞、脚色賞、オリジナル作曲賞がノミネートされていたが叶わなかった。受賞はほぼ確実だったのに作品紹介が後回しになっていた。マラガ映画祭2019ASECAN賞、アヌーシー・アニメーション映画祭審査員賞受賞作品。本作はエストレマドゥーラ州カセレス出身のイラストレーター、フェルミン・ソリス(カセレス1972のモノクロ同名コミックの映画化です(カラー版として約10年後に再版された)。原作は2008年ビルバオのAstiberri社からエストレマドゥーラだけで発売され、翌年一般公刊された。コミック国民賞2008の最終候補に残った。いわゆる国民賞選考母体は文化省で、副賞の賞金は少ないが権威のある賞です。コミック部門が設けられたのは2007年、その2回めの最終候補に残りましたが、パコ・ロカArrugasに敗れた(2011年に映画化され、本邦でも『しわ』の邦題で劇場公開された)。 

パコ・ロカと『しわ』の紹介は、コチラ⇒2018年04月15日

    

            

            (本作をバックにしたサルバドール・シモー)

 

★映画化するに対してシモー監督は、もう一人の協力者にイラストレーターのホセ・ルイス・アグレダ(セビーリャ1971をアート・ディレクターとして迎えた。物語1930年代当時のスペインで最も貧しかったというエストレマドゥーラのラス・ウルデスのドキュメンタリー『ラス・ウルデス(糧なき土地)』1933Las Hurdes. Tierra sin pan27)をルイス・ブニュエル如何にして製作したか、そのプロセスが語られるアニメーションです。

 

(ホセ・ルイス・アグレダ)

  

   

   

  (ホセ・ルイス・アグレダによるブニュエルの下絵)

 

★登場人物はブニュエル自身、彼の親友で製作者のラモン・アシン、『ヴォーグ』誌の特派員でシュールレアリスト詩人のピエール・ユニク、カメラマンのルーマニア出身のエリー・ロタール4人が主演者、ところどころに挿入される『ラス・ウルデス(糧なき土地)』の実写で構成されています。タイトルの直訳「カメの迷宮の中のブニュエル」は、ラモン・アシンが「撮影隊が村を探索した際、道は迷路のように曲がりくねり、屋根がカメの甲羅に似た箱型の家屋がびっしりひしめきあっていた」と指摘したことから付けられたようです。

 

 

    

     (ラス・ウルデスの村を探索するクルー、カメの甲羅のような屋根)

 

    

       (迷路のように曲がりくねった道、ドキュメンタリーから)

 

 

 Buñuel en el laberinto de las tortugasBuñuel in the Labyrinth of the Turtles

製作:Sygnatia Films / Glow Animation(バダホス)/ Hampa Animation Studio(バレンシア)/

   Submarine(オランダ)

   協賛RTVE / Moviastar+ / Telemadrid / エストレマドゥーラTV / アラゴンTV / ICCA

監督:サルバドール・シモー

脚本:エリヒオ・R・モンテロ、サルバドール・シモー、(原作)フェルミン・ソリス

音楽:アルトゥーロ・カルデルス

編集:ホセ・マヌエル・ヒメネス

アート監督:ホセ・ルイス・アグレダ

プロダクションマネージメント:フリアン・サンチェス

製作者:マヌエル・クリストバル、ホセ・マリア・フェルナンデス・デ・ベガ、アレックス・セルバンテス、ブルノ・フェリックス、Femke Wolting

 

データ:製作国スペイン=オランダ=ドイツ、スペイン語・フランス語、2018年、77分、アニメーション(+実写)、伝記ドラマ、スペイン公開2019426日、オランダ同418日、フランス同619日、米国同816日、他

映画祭・受賞歴:アニメーションFF201810月プレミア(ロスアンジェルス)、マイアミ映画祭2019、グアダラハラFF、マラガFFASECAN賞、音楽賞アルトゥーロ・カルデルス)、アヌーシー・アニメーションFF(審査員賞・オリジナル作曲賞アルトゥーロ・カルデルス)、ヨーロッパ映画賞2019アニメーション賞受賞、ペリフェリアスFF2019観客賞、シネマ・ライターズ・サークル賞2020新人監督賞・脚色賞(エリヒオ・R・モンテロ&サルバドール・シモー)、ゴヤ賞アニメーション賞受賞、他多数

 

キャスト(ボイス):ホルヘ・ウソン(ルイス・ブニュエル)、フェルナンド・ラモス(ラモン・アシン)、ルイス・エンリケ・デ・トマス(ピエール・ユニク)、シリル・コラールCyril Corral(エリー・ロタール)、ハビエル・バラス(少年時代ルイス)、ガブリエル・ラトーレ(ルイスの父)、ペパ・グラシア(ルイスの母)、フェルミン・ヌニェス(マエストロ/馬方)、ラケル・ラスカル(ノアイユ子爵夫人)、サルバドール・シモー(サルバドール・ダリ)、マリア・ぺレス(コンチータ)、エステバン・G・バリェステロス(村長/鶏肉売り)、ピエダ・ガリャルド(宝くじ売り)、ほか多数

 

ストーリー:ブニュエルは長編デビュー作『黄金時代』の上映中に起きた事件のせいで、フランスでの新しい作品を撮れなくなっていた。モーリス・ルジャンドルというスペインのラス・ウルデス地方の民族史研究をしている人類学者から、この地域の社会的な現実についてのドキュメンタリーを撮る気はないかという打診を受ける。最初は資金的な問題から不可能に思われたが、結果的に撮れることになった。それはブニュエルの親友の一人ラモン・アシンが、もしクリスマス宝くじに当たったら、賞金の一部を提供すると約束していたからだ。19321222日、クリスマス宝くじが当選、ラッキーナンバーは「29757」だった。アシンは約束を守り、撮影隊はラ・アルベルカの町でクルーを起ち上げた。監督のブニュエル、製作者のラモン・アシン、撮影のエリー・ロタール、脚本を共同で手掛けるピエール・ユニクたちは、修道院を宿舎にして、この不毛の土地の探索に着手する。                                 (文責:管理人)

 

 

      純粋なドキュメンタリーではなかった『ラス・ウルデス(糧なき土地)』

 

★ドキュメンタリーを可能にしてくれたラモン・アシンは、1888年アラゴン州のウエスカ生れ、アナーキストで画家だった。監督と同じアラゴン人だったが、イデオロギーの異なるアナーキストとコミュニストのブニュエルが親友同士というのもおかしなことだが、自分は共産主義の「シンパ」だったに過ぎないと語っている。ある日サラゴサのカフェで「ルイス、もし宝くじが当たったら、映画のお金を出してあげるよ」と言ってくれた。10万ペセタ当たり、2万ペセタくれた。約束を守ってくれたわけです。利益が出たらお礼をするわけだったが上映禁止で収益はゼロ、それでもアシンは文句を言わなかった。クリスマス宝くじは、日本でいうと年末ジャンボ宝くじにあたる。

 

1936年スペイン内戦が勃発すると、アシンはフランコ軍に抵抗したことで身に危険が迫り、自宅に隠れていた。しかしフランコ軍が家探しにきて、応対に出た妻を暴行した。その悲鳴を聞いて出てきたところを即逮捕、86日にウエスカで銃殺された。妻コンチータ・モンラスもアナーキストで、犯罪者を匿った廉で17日後に殺害された。多分、クレジットにあるコンチータではないかと思う。ドキュメンタリーは1936年まで上映禁止だったが、1960年までアシンの名前はクレジットから削除されていた。

 

(アニメとよく似ているラモン・アシン)

     

    

(ラモンとルイス、アニメーションから)

 

★ブニュエルのドキュメンタリーが正確な意味ではフィクション部分を含んでいることは、生前のインタビューや自伝で周知のことだが、彼が「この作品は現実をもとに撮られている」と述べているのも確かなことでしょう。ブニュエルがスタッフの反対を押し切って、劇的な効果のために多くのシーンをやってもらった。例えば、山羊が足を滑らせて崖から転落するという話から、そういうシーンを撮りたいと思ったが、短い撮影期間を考えると事故を待つわけにいかなかった。それでピストルで発砲して山羊を転落させたという。発砲の煙が画面に残ってしまったが、村人の憤激を怖れて撮り直しはできなかったと語っている。しかし山羊が崖から転落するのは事実である。

 

    

    (谷底に落下する山羊、ドキュメンタリー「Las Hurdes. Tierra sin pan」から)

 

★雄鶏の首をひきさくという地元の伝統を再現させるためにラモンに農民を雇わせたり、また村人の苦しみの象徴として、大切な家畜ロバがハチに刺されて死ぬようなシーンも手配させたという。しかし村人の貧しさは撮影隊をゾッとさせ、孤児たちは彼らの潤沢な食べ物を求めて群がってきたという。ブニュエルは路上で死んでいる少女を目にしたときには無力感に襲われたという。

 

    

                           (雄鶏の頭を切り裂く農民)

      


(ドキュメンタリーから)

  

モーリス・ルジャンドルというのは、1878年パリ生れのフランス人だがスペイン文化研究家で、1955年マドリード没。当時マドリードのフランス研究所の所長だった。ラス・ウルデス地方の動植物学、気候学、社会学などの総合研究をしており、20年間、夏になるとこの地方を訪れていた。ブニュエルはその論文を読んでおり、19329月には現地に赴いていた。このドキュメンタリーの原作としてクレジットされている。ブニュエルの協力者として、もう一人サンチェス・ベントゥーラが同行したが、アニメーションには登場しない。原作者のフェルミン・ソリスが入れなかったからで、後に原作者はそのことを後悔することになる。

 

     

            (フェルミン・ソリスとコミックの表紙)

 

★ブニュエルの『ラス・ウルデス』が正確な意味ではドキュメンタリーでなかったことは前述したが、シモー監督によれば、私たちのアニメも現実には正確ではありません。ブニュエルはアニメ版のようではなかったかもしれない。これは「フィクションとして撮った」と語っている。アニメーションもソリスの原作に敬意を払っているが、多くの変更が加えられた。コミックと映画が別物であることは、どの作品にも言えることです。ソリスは脚色家のエリヒオ・R・モンテロに、2つのシーンだけは削らないで欲しいと頼んだ。一つはブニュエルは子供時代に悪夢に苦しめられていた。母親の顔をした聖母マリアで登場させること、もう一つはブニュエルが修道女に変装するシーンを削除しないことだった。シモーは「ブニュエルはラス・ウルデスに変化をもたらそうとしたが、反対にラス・ウルデスが彼を変えてしまった」と説明している。親の遺産を食いつぶしていた監督にとって、この地方の貧困は想像に絶するものだったに相違ない。

     

     

               (修道女に変装したブニュエル)

 

  

         (脚色を監督と手掛けたセリヒオ・R・モンテロ)

 

★アヌーシーFFやマラガ映画祭でオリジナル作曲賞を受賞したアルトゥーロ・カルデルスは、1981年マドリード生れのピアニスト、作曲家。サラマンカの高等音楽院、ロンドンの王立音楽院、ブタペストのフランツ・リスト・アカデミー、ボストンのバークリー音楽大学などで学んでいる。ゴヤ賞2020でもオリジナル作曲賞にノミネートされていたが、『ペイン・アンド・グローリー』のアルベルト・イグレシアスが受賞した。

 

   

             (アルトゥーロ・カルデルス)

 

★最後のご紹介となったサルバドール・シモー(シモ・ブソン)は、1975年バルセロナ生れ、監督、アニメーター、視覚効果やライターなどカバー範囲は広い。監督デビューは2000年の短編「Aquarium」、TVシリーズ、長編アニメーションの監督は本作が初めて、受賞歴は上記の通り。米国でも活躍、『ウルフマン』(10)や『パイレーツ・オブ・カリビアン最後の海賊』(17)などでビジュアル効果を担当している。

  

   

        (ヨーロッパ映画アニメーション賞2019を受賞したシモー監督、127日ガラ)


第34回ゴヤ賞2020授賞式*あれやこれや落穂ひろい ⑰2020年01月31日 10:45

       予想通りというか結局バンデラスが受賞した主演男優賞

 

      

 

★主演男優賞のトロフィーは結局アントニオ・バンデラスの手に渡りました。これでカンヌ映画祭男優賞、フォルケ賞、フェロス賞の3冠、そして生れ故郷のマラガでマラガの人々に囲まれてゴヤ賞もゲット、ジャンボ宝くじに当選しました(笑)。54歳という最年少で2015年にゴヤ栄誉賞を既に受賞しておりましたが、やはり主演男優賞受賞は感慨深いものがあったことでしょう。『マタドール』(助演)以来、主演の『アタメ』、『あなたに逢いたくて』、『私が、生きる肌』、今回のDolor y gloriaでやっと受賞したのです。本作は初夏に英語題のカタカナ起こし『ペイン・アンド・グローリー』の邦題で劇場公開が予定されています。好き嫌いが分かれる作品ですね。

 

     

(赤絨毯登場のバンデラスと<プロノビアス>のサテンのドレスのニコール・ケンプルさん)

 

★今年のプレゼンターは、大先輩フアン・ディエゴ、オスカル・ハエナダ、アルベルト・ロドリゲス監督、ハビエル・グティエレスなど男性4人でした。それぞれゴヤ胸像の保持者です。「スピーチを用意していたのですが、読むのは止めます。私の心臓医の気に入るようにしなければなりません。口の中に心臓があるからです。生きてるだけでなく生きてると感じています」と、今からだと丁度3年前になる心筋梗塞の発作で苦しんだことを語った。アルモドバル監督には「知り合ったのは40年前、この出会いは幸運そのものでした。私たちは8本の映画を作りました。私はあなたの誠実な映画に出ることで、映画について人生について多くのことを学んだのです」と感謝の言葉を述べた。

 

      

   (左から、フアン・ディエゴ、ハエナダ、ロドリゲス監督、グティエレス)

 

★有終の美を飾ったのは、受賞の後ブロードウェイのミュージカル『コーラルライン』のため舞台に立っときでした。マルティン・カルペナの観客は大喜びでした。残るはオスカー像、ライバルがひしめいていますが確率ゼロではありません。29日、ロスアンジェルスのドルビー・シアターで開催される第92回アカデミー賞が待ちかまえています。オスカーなどキャリアに関係ないというのは、貰ったことのない人が言うことです。早くもプロモーションのためにパートナーのニコール・ケンプルさんとニューヨークに旅立ちました。「アントニオ、幸運を祈ります!」

 

       

  (真ん中のダンサーは誰? ミュージカル『コーラスライン』も披露した!)

 

 

         運も左右する作品賞、受賞するのはなかなか難しい?

 

3時間半に及ぶセレモニーの中で一番のクライマックスが最優秀作品賞、やっとゴヤ胸像が3人のプロデューサー、エステル・ガルシアペドロ&アグスティン・アルモドバル兄弟の手に渡りました。1986年、制作会社「エル・デセオ」を兄弟で起ち上げて30数年が経った。スペイン映画アカデミーとは、誤解や行き違いを含めて対立した時代もあったから、感慨ひとしおだったでしょう。プレゼンターはマリサ・パレデスとホセ・コロナドでした。最多ノミネーション175賞)の『戦争のさなかで』でのアレハンドロ・アメナバルと拮抗していた。アメナバルは欠席したエドゥアルド・フェルナンデスの助演男優賞のトロフィーを受け取るため登壇しました。   

    

         

    (3人のプロデューサー、エステル・ガルシア、ペドロ、アグスティン)

 

★アルモドバルは監督・脚本賞も受賞したから言うことなしです。ノミネーション16で7賞は貰いすぎかもしれない。監督以下スタッフ陣もロス入りすることになるが、29日の赤絨毯を一緒に踏むのはペネロペ・クルスになりそうです。主演女優賞にノミネートされていましたが、本作には主演女優はいなかったのではないでしょうか。「ゴヤを受賞するのは、とても難しいのよ」と。クルスの衣装はシャネルを選ぶと思われていましたが、オートクチュール・コレクションの<ラルフ&ルッソ>の花柄のドレス、ベスト・ドレッサーの一人に選ばれました。

 

       

    (ペネロペ・クルスと監督、オリジナル脚本賞受賞で登壇する前のフォト)

    

        

       (パステル調の花柄のドレス、デザインはラルフ&ルッソ)

 

★主演女優賞を手にしたのは、フェロス賞に続いてベレン・クエスタでした。助演のノミネートはありますが主演は初めて、初受賞でした。バスクの3監督が監督したLa trinchera infinitaで主演男優賞ノミネートのアントニオ・デ・ラ・トーレと夫婦を演じ、28歳から60歳の老け役に挑戦したことが報われました。デ・ラ・トーレは昨年の受賞者でしたから自身も期待していなかったでしょう。ライバルはペネロペ・クルスの他、フォルケ賞のマルタ・ニエト、サンセバスチャン映画祭女優賞のグレタ・フェルナンデス、誰が受賞しても不思議ではなかったでしょう。クエスタのパートナーは2012年以来タマル・ノバス、「これを私の人生で一番大切な人と分かち合いたい。タマル、愛しています」と叫んで、満場の喝采を受けました。タマル・ノバスは『海を飛ぶ夢』でハビエル・バルデム演じるラモンの甥を演じた俳優です。プレゼンターは、スペイン映画アカデミー副会長ノラ・ナバスバルバラ・レニー、共に過去の受賞者です。

 

   

(背後にノラ・ナバスとバルバラ・レニー、「タマル、愛しています」とクエスタ)

 

   

        (ライバルだった「Madre」のマルタ・ニエト)

 

   

  (ライバルだったグレタ・フェルナンデス、好評だったグッチのミディ)

 

   

(バルバラ・レニー、カロリナ・エレーラのアラバスター色のサテンのドレス)

 

 

★ガラの総合司会は、今年が2回目となるシルビア・アブリルアンドレウ・ブエナフエンテの奮闘もあり、ここ10年間では最高視聴率26.7%を記録した。マリアノ・バロッソ会長が「ビジュアルなガラにした」と言うだけありました。相変わらずエロチックなシーンも織り込んでいましたが、眉を顰めないのがスペイン人、シルビアとアンドレウの夫婦コンビのいくつか・・・。また招待席にはペドロ・サンチェス首相の姿もあり、結構政治的発言もあったとか。

     

   

       (レッド・カーペットに登場した見た目は婦唱夫随の総合司会者)

      

    

    

(ポップコーン売りの衣装で会場を回って配っているフォト)

 

     

(ペネロペに扮した太めのシルビア、ハビエル・バルデム役のお腹の出たアンドレウ、

 今は亡きビガス・ルナの『ハモンハモン』にオマージュを捧げて)

   

  

(愛され続けるホセ・ルイス・クエルダの不条理コメディ「Amanece, que no es poco」

 で父子を演じたアントニオ・レシネスとルイス・シヘスに扮した二人)

   

   

                     (黒の正装と思いきや後ろ姿は・・・)

 

  

 (涙を堪える新人男優賞受賞のエンリク・アウケル)

   

       

          (メイク&ヘアーのプレゼンター、これだと誰だか分かりませんが

      エルネスト・セビージャとホアキン・レイェスだそうです)

    

 (中央がペドロ・サンチェス首相)

 

       

★ちょっと珍しいショットのご紹介。

 

   

         (談笑するペネロペ・クルスとクララ・ラゴ)

 

   

(ベスト・ドレッサーに選ばれたクララ・ラゴと主演男優賞候補者のデ・ラ・トーレ、

 クララのデザインはオスカル・デ・ラ・レンタ)

 

★赤絨毯でのフォトコールから、取材を受けていたのは大体がプレゼンターのようでした。

  

  

    

    

(歩くのが大変なベレン・ルエダ、『アナと雪の女王』をイメージした同色の長手袋、

 デザインはベンハミン・フリーマン、靴は見えないが人気のジミー・チュウ)

    

   

  (パコ・カベサスの「Adiós」で助演女優賞ノミネートのモナ・マルティネス)

 

        

     (同じ「Adiós」で助演女優賞ノミネートのナタリア・デ・モリーナ、

 デザインはクララ・ラゴと同じオスカル・デ・ラ・レンタ、羽根使用は今年の流行)

   

  

     (いつも斬新なドレスのナイワ・ニムリ、デザインはロエベ)

 

   

       (バツグンのスタイルを強調したドレスのパス・ベガ)

 

   

         (黄色いドレスが目立ったエレナ・サンチェス)

   

   

(マラガ生れのマリア・バランコ、『神経衰弱ぎりぎりの女たち』で助演女優賞受賞)

 

   

        (マカレナ・ゴメスとアルド・コマスのカップル)

 

    

                 (舞台とは異なる衣装のアマイア・ロメロ

   

   

      (常に冷静で礼儀正しい『戦争のさなかで』のアメナバル)

   

     

   (登壇したベネディクタ・サンチェスを慈愛の目で静かに見守っていた

      『ファイアー・ウィル・カム』のオリベル・ラシェ監督)

 

   

            (やはり人気のパコ・レオン)

  

     

      (もう誰も驚かなくなったエドゥアルド・カサノバのマント)

 

★こんなところですかね。南のアンダルシア州は「シエスタばかりして働かない税金泥棒」と北の人々は非難するけれど、アンダルシアの夏の暑さは半端じゃない。今宵は南北問題を忘れて珍しく団結して楽しんだマラガの授賞式でした。視聴者の皆さん、お疲れさまでした。

第34回ゴヤ賞2020授賞式*落穂ひろい ⑯2020年01月29日 10:08

          アルモドバルの<Gloria>の夕べだったゴヤ賞2020授賞式

  

          

                 (イルミネーションで彩られた会場の正面玄関前)

  

★初のマラガ開催となった今年の授賞式、会場となったホセ・マリア・マルティン・カルペナ・スポーツジムは、小雨が降ったり止んだりのあいにくの空模様でした。それでも会場前に馳せつけたファンは、赤絨毯に降り立つシネアストたちを辛抱強く出迎えました。Dolor y gloriaの一団が到着したときは一段と大きな歓声が上がりました。アルモドバル兄弟にペネロペ・クルス、少し遅れてマラガ名誉市民の称号をもつアントニオ・バンデラスと現在のパートナーであるニコール・ケンプルさん、そして製作者エステル・ガルシアに付き添われたフリエタ・セラノなどが到着しました。終わってみれば、作品・監督・オリジナル脚本・オリジナル作曲・主演男優・助演女優・編集と7冠を制したのでした。

 

      

        (赤絨毯でのフォトコール、ノラ・ナバスやレオナルド・スバラグリアの姿も)

 

★会場はマラガ市のスポーツ・センターですから、中央に競技スペースがあり、その周囲を360度取り囲むように階段状の客席が埋めています。ちょっと分かりにくく足場が悪いという印象でした。84歳で新人女優賞受賞という記録を打ち立てたベネディクタ・サンチェスは、案内係にエスコートされて登壇しましたし、より高齢の助演女優賞受賞者フリエタ・セラノが履いていたのは、なんと白いスニーカーでした。しかしドレスより素敵だったと称賛されました。

     

      

                            (オープニング前の内部)

 

 

★会場を魅了したのは、いつもそうですがゴヤ栄誉賞受賞の瞬間ですが、今宵はマラガの天才少女と謳われたペパ・フローレス<マリソル>の出席はありませんでした。マラガで悠々自適の生活をパートナーと過ごしておりますが、最初から出席は危ぶまれていました。何しろ35年前の1985年に銀幕を去った女優で歌手ですから、受賞の報に接して一番驚いたのが本人だったでしょう。マラガ開催でなければ受賞はあり得なかったでしょう。フラメンコ界の大御所だった故アントニオ・ガデスとの間に生まれた三姉妹マリア・エステベスタマラ・ガデスセリア・フローレスが登場、代理でゴヤ胸像を受け取りました。マリソルの出演作が映し出される大画面をバックに、「La canción de Marisol」をアマイア・ロメロが情感豊かに熱唱、長女の女優マリアは涙を抑えることができずアマイアと抱き合っていました。三女の歌手セリアも「Estando contigo」を歌うため舞台に上がりました。タマラは芸能界とは関係なく心理学者だそうです。

ペパ・フローレス<マリソル>のキャリア紹介は、コチラ20191213

  

  

                        (アマイアと抱き合う長女マリア)

 

60年代、70年代のフランコ政権時代を駆け抜けた女優にゴヤ栄誉賞が贈られ、感無量の方もいたことでしょう。長いオベーションのあいだ三人姉妹は涙を堪えていました。マリア・エステベスが「私たちの母親は、30年前に銀幕から去ることを決心しました。そして永遠にスクリーンから姿を消しました。そして今宵よみがえりました。エモーショナルな、素晴らしい賞を下さったアカデミーに最大級の感謝をいたします。私たちはとても誇りに思います・・・親愛なるペピータ、このゴヤ栄誉賞はあなたのものです」と感謝の辞を述べました。

 

   

           (涙にぬれるマリソルの娘たち、セリア、タマラ、マリア)

 

 

★プレゼンターが登場しただけで受賞者の発表前にトロフィーの行方が分かってしまう例が少なからずありました。例えば作品賞はマリサ・パレデスホセ・コロナド、パレデスは『オール・アバウト・マイ・マザー』の主演者、監督賞はアンヘラ・モリーナペネロペ・クルス、二人は『抱擁のかけら』で母娘を演じています。オリジナル脚本賞は、スペイン映画アカデミー会長を任期半ばで突然辞任、社会労働党サパテロ政権時代の文化相(200911)に転身した、アンヘレス・ゴンサレス=シンデと、受賞者アルモドバルの親友、TV 評論家にして作家、モード界のエキスパートであるボブ・ポフ(本名ロベルト・エンリケス)でした。昨年3月に多発性硬化症を公にしておりましたが、病状が進行しているのかゴンサレス=シンデ氏がしっかりとボブ・ポフと腕を組んで支えていました。

 

     

       (作品賞のプレゼンター、人気の衰えないマリサ・パレデスとホセ・コロナド)

   

     

      (監督賞のプレゼンター、老いても美貌のアンヘラ・モリーナ、ペネロペ・クルス)

 

   

       (脚本賞のプレゼンター、アンヘレス・ゴンサレス=シンデとボブ・ポフ、

 両人は脚色賞のプレゼンターも務め、最もアイロニーに富んだプレゼンターだった由)

 

 

★助演女優賞のフリエタ・セラノ(バルセロナ1933)が87歳とは数えるまで分かりませんでしたが、新人女優賞のベネディクタ・サンチェスのほうが年上に見えました。ゴヤ賞受賞は初、助演にノミネートはアルモドバルの『神経衰弱ぎりぎりの女たち』とグラシア・ケレヘタの「Cuando vuelvas a mi lado」で、今回が三度目の正直となった。スタッフのなかでも特に監督に対して「再会して私にもたらされた役柄はとても深遠なもので、個人的体験としても多くの思い出が残った」とスピーチした。好評だったドレスはファビナ・フィリピのデザイン、それより素晴らしかったのが白のスニーカー、とても87歳には見えない若々しさでした。

 

    

                         (ドレスの下からスニーカーが見える)

 

 

★最高齢記録を作った新人女優賞のベネディクタ・サンチェス(ルゴ1935)のスピーチは、会場を幸せに包んだ。「人生は驚きに満ちています。これ(受賞)がその一つです。大勢の人々に、私の娘や孫たちにこのゴヤを捧げます」と。何を話せばいいのか途中でスピーチにつまると「どなたか助けてください」と応援の声をあげていました。実に可愛らしい女性なのでした。母語はガリシア語なのでしょう。ドレスはアドルフォ・ドミンゲスのデザインだそうです。昨年は『誰もが愛しいチャンピオン』出演で新人男優賞を受賞した視力10%という視覚障碍者ヘスス・ビダル(今年も出席)が素晴らしいスピーチをしたことを思い出したことでした。ゴヤ賞を受賞したことで入った情報によると、17歳で結婚、夫とブラジルに移民、リオデジャネイロの書店で働きながらカメラマンとしても15年間働いたようです。娘さんがオーデションを受けるよう勧めて会場に連れて行ってくたことが幸運を呼び寄せた。受賞者が一堂に会するフォトコールでは、アルモドバルからも祝福のベソをうけました。本当に人生は幾つになっても驚きに満ちています。

    

     

 (会場を幸せにしてくれたベネディクタ、ブラボー!)

   

   

                  (アルモドバルから祝福を受けるベネディクタ)

 

 

★マラガ出身の歌手パブロ・アルボランが熱唱する「Sobreviviré」にも会場は酔いました。今は亡きマンサニータ1999年にリリースしたヒット曲が流れました。パブロ・アルボラン自身も、フェルナンド・ゴンサレス・モリーナ『ヤシの木に降る雪』で、ルカス・ビダルと一緒にゴヤ賞2016オリジナル歌曲賞を受賞しています。アルフォンソ・アルバセテとダビ・メンケスが1999年に撮った同タイトルのSobreviviréは、若い頃のエンマ・スアレスフアン・ディエゴ・ボトーが主演したラブコメです。マラガ色の強いガラですね。

 

  

                         (聴衆を沸かせたパブロ・アルボラン)

 

★主演女優賞、主演男優賞以下ののトレビアは次回に。

  

第34回ゴヤ賞2020授賞式*結果発表 ⑮2020年01月26日 18:33

          アルモドバルの「Dolor y gloria」が作品・監督・脚本などを受賞

 

  

 

★今年はほぼ80%くらいの確率で予想が当たりました。メインは「Dolor y gloria」が独占の形でしたが、作品賞にノミネーションされながら無冠という作品はありませんでした。バスクの3人共同監督のLa trinchera infinitaを推す評論家もおりましたが、結果は以下の通りです。まだガラ全体のビデオを見ておりませんので、トリビアは後日落穂ひろいのかたちでアップいたします。以下は受賞者の結果のみアップしておきます。

  

     

      (スピーチに立つ、スペイン映画アカデミー会長マリアノ・バロッソ)

  

   
      
       

 (総合司会者のシルビア・アブリルとアンドレウ・ブエナフエンテ夫婦)

 

 

作品賞(作品賞のみ5ノミネート)

Dolor y gloria製作 El Primer Deseo A.I.E. / El Deseo D.A.S.L.U. 

Intemperie

La trinchera infinita

Lo que arde」(『ファイアー・ウィル・カム』)

Mientras dure la guerra」(『戦争のさなかで』)

 

    

   (作品賞初受賞と聞いて驚くが、登壇した製作者エステル・ガルシア、監督、

右端アグスティン・アルモドバル、背後にプレゼンターのホセ・コロナドとマリサ・パレデス)

 

    

   (左から、プレゼンターのマリサ・パレデス、エステル・ガルシア、監督、

    アグスティン・アルモドバル)

 

   

◎監督賞

ペドロ・アルモドバル(「Dolor y gloria」)

アイトル・アレギ、ジョン・ガラーニョ、ホセ・マリ・ゴエナガ(La trinchera infinita

オリベル・ラシェ(『ファイアー・ウィル・カム』)

アレハンドロ・アメナバル(『戦争のさなかで』)

      

    

     (ゴヤ胸像を手にするのは『ボルベール<帰郷>』以来13年ぶり、プレゼンターは

      アンヘラ・モリーナとペネロペ・クルス)

 

 

◎新人監督賞

ベレン・フネス(「La hija de un ladrón」)

サルバドール・シモー(「Buñuel en el laberinto de las tortugas」)  

ガルデル・ガステル=ウルティア (「El hoyo」)

アリッツ・モレノ(「Ventajas de viajar en tren」『列車旅行のすすめ』)

 

     

          (第7回フェロス賞に続いて受賞したベレン・フネス)

 

◎オリジナル脚本賞

ペドロ・アルモドバル(「Dolor y gloria」)

ダビ・デソラ&ペドロ・リベロ(「El hoyo」)

ホセ・マリ・ゴエナガ&ルイソ・ベルデホ(La trinchera infinita

アレハンドロ・アメナバル&アレハンドロ・エルナンデス(『戦争のさなかで』)

 

  

 

◎脚色賞

ベニト・サンブラノダニエル・レモンパブロ・レモン(「Intemperie」監督サンブラノ)

エリヒオ・モンテロ&サルバドール・シモー(「Buñuel en el laberinto de las tortugas」)

イサベル・ペーニャ&ロドリゴ・ソロゴジェン(「Madre」監督ロドリゴ・ソロゴジェン)

ハビエル・グジョン(『列車旅行のすすめ』)

 

    

                   (レモン兄弟とベニト・サンブラノ右端

 

◎オリジナル作曲賞

アルベルト・イグレシアス(「Dolor y gloria」)

アルトゥーロ・カルデルス(「Buñuel en el laberinto de las tortugas」)

パスカル・ゲーニュLa trinchera infinita

アレハンドロ・アメナバル(『戦争のさなかで』)

 

    

 (2012年の『私が、生きる肌』以来だが11個目となるゴヤ胸像、アルベルト・イグレシアス

 

 

◎オリジナル歌曲賞

Intemperieハビエル・ルイバル(「Intemperie」)

Invisible」カロリネ・ペルネル、Jussi Llmari KarvinenJustin Tranter(「Klaus」)

Allli en la arena」トニ・M.ミル(「La inocencia」監督パロマ・フアネス)

Nana de las dos lunas」セリヒオ・デ・ラ・プエンテ(「La noche de las dos lunas」)

   

     

         

主演男優賞

アントニオ・バンデラス(「Dolor y gloria」)

アントニオ・デ・ラ・トーレLa trinchera infinita

カラ・エレハルデ(『戦争のさなかで』)

ルイス・トサール(「Quien a hierro mata」)

   

  

   

     

主演女優賞

ベレン・クエスタLa trinchera infinita

ペネロペ・クルス(「Dolor y gloria」)

グレタ・フェルナンデス(「La hija de un ladrón」)

マルタ・ニエト(「Madre」)監督ロドリゴ・ソロゴジェン

   

    

               (フェロス賞に続いての受賞)

   

助演男優賞

エドゥアルド・フェルナンデス(『戦争のさなかで』)

アシエル・エチェアンディア(「Dolor y gloria」)

レオナルド・スバラグリア(「Dolor y gloria」)

ルイス・カジェホ(「Intemperie」)

 

       

                   (欠席のためアメナバル監督が受け取った

 

助演女優賞

フリエタ・セラノ(「Dolor y gloria」)

モナ・マルティネス(「Adiós」監督パコ・カベサス)

ナタリア・デ・モリーナ(「Adiós」)

ナタリエ・ポサ(『戦争のさなかで』)

 

 (フェロス賞に続いての受賞)

 

    

新人男優賞

エンリク・アウケル(「Quien a hierro mata」)

ナチョ・サンチェス(「Diecisiete」『SEVENTEENセブンティーン』Netflix

   監督ダニエル・サンチェス・アレバロ

ビセンテ・ベルガラLa trinchera infinita

サンティ・プレゴ(『戦争のさなかで』)

 

    

      (フェロス賞、ガウディ賞と続くのはあまり例がないホールインワン)

 

 

新人女優賞

ベネディクタ・サンチェス(『ファイアー・ウィル・カム』)

ピラール・ゴメス(「Adiós」)

カルメ・アルファト(「La inocencia」監督ルシア・アレマニー)

アイノア・サンタマリア(『戦争のさなかで』)

 

    

 84歳新人賞は初。両親、オーデションにつきそってくれた娘、勿論監督や仲間に感謝の辞 

 

 

◎プロダクション賞

カルラ・ぺレス・デ・アルベニス(『戦争のさなかで』)

トニ・ノベリャ(「Dolor y gloria」)

マノロ・リモン(「Intemperie」)

アンデル・システィアガLa trinchera infinita

 

     

              (プレゼンターはシルビア・アブリル

 

 

◎撮影賞

マウロ・エルセ(『ファイアー・ウィル・カム』)

ホセ・ルイス・アルカイネ(「Dolor y gloria」)

ハビ・アギレ・エラウソLa trinchera infinita

アレックス・カタラン(『戦争のさなかで』)

 

     

           (フェロス賞に続いて受賞、下馬評通りでした)

 

 

◎編集賞

テレサ・フォント(「Dolor y gloria」)

ラウレント・ドゥフレチェ&ラウル・ロペスLa trinchera infinita

アルベルト・デル・カンポ(「Madre」)

カロリナ・マルティネス・ウルビナ(『戦争のさなかで』)

 

     

                      (プレゼンターはベレン・ルエダ)

 

◎美術賞

フアン・ペドロ・デ・ガスパー(『戦争のさなかで』)

アンション(アンチョン)・ゴメス(「Dolor y gloria」)

ペペ・ドミンゲスLa trinchera infinita

ミケル・セラーノ(『列車旅行のすすめ』)

  

    

   

◎衣装デザイン賞

ソニア・グランデ(『戦争のさなかで』)

パオラ・トレス(「Dolor y gloria」)

ロウルデス・フエンテス&サイオア・ララLa trinchera infinita

アルベルト・バルカルセル(「Paradise Hills」監督アリス・Waddington

 

   

           (プレゼンターはカルロス・バルデム)

 

 

◎メイク&ヘアー賞

アナ・ロペス⋍プイグセルベルベレン・ロペス・プイグセルベルナチョ・ディアス

   (『戦争のさなかで』)

アナ・ロサノ、セルヒオ・ぺレス・ベルベル、モンセ・リベ(「Dolor y gloria」)

ヨランダ・ピニャ、フェリックス・テレノ、ナチョ・ディアスLa trinchera infinita

カルメレ・ソレル&オルガ・クルス(『列車旅行のすすめ』)

 

     

 

◎録音賞

イニャーキ・ディエスサンティ・サルバドールアラスネ・アメストイ

  ナチョ・ロジョ・ビリャノバ   La trinchera infinita

セルヒオ・ブルマン、ペラヨ・グティエレス、マルク・オルツ(「Dolor y gloria」)

アイトル・べレンゲル&ガブリエル・グティエレス(『戦争のさなかで』)

ダビ・マチャード、ガブリエル・グティエレス、ヤスミナ・プラデラス

   (「Quien a hierro mata」)

   

       

◎特殊効果賞

El hoyo

La trinchera infinita

『戦争のさなかで』

Perdiendo el Este

    

      

           (マリオ・カンポイとイニャーキ・マダリアガ)

      

◎アニメーション賞

Buñuel en el laberinto de las tortugas監督サルバドール・シモー

Elcanoy Magallanes: la primera vuelta al mundo」監督アンヘル・アロンソ

Klaus」監督セルヒオ・パブロス

   

        
    

   (左から製作者、アレックス・セルバンテス、ホセ・マリア・フェルナンデス・デ・ベガ、

   マヌエル・クリストバル)

 

              

◎ドキュメンタリー賞

Ara Malikian una vida entre las cuerdas監督ナタ・モレノ

Aute retrato」監督ガイスカ・ウレスティ

El cuadro」監督アンドレス・サンス

Historias de nuestro cine」監督アナ・ぺレス⋍ロレンテ&アントニオ・レシネス

 

   

           (アラ・マルキアンとナタ・モレノ監督)

    

       

 

◎イベロアメリカ映画賞

La odisea de los giles監督セバスティアン・ボレンステイン(アルゼンチン)

Araña」『蜘蛛』監督アンドレス・ウッド(チリ)

El despertar de las hormigas」監督アントネジャ・スダサシ(コスタリカ)

Monos」『猿』監督アレハンドロ・ランデス(コロンビア)

 

   

             (現地入りした3人のスタッフ

    

   

◎ヨーロッパ映画賞

Les Misérabbles」『レ・ミゼラブル』 監督ラジ・リ(フランス)

Border」『ボーダー 二つの世界』 監督アリ・アバッシ(スウェーデン)

Portrait of a Lady on Fire 監督セリーヌ・シアマ(フランス)

Yesterday 監督ダニー-・ボイル(イギリス)

   

      

      

◎短編映画賞

Suc de Sindria監督イレネ・モライ

El nadador

Foreigner

Maras

Xiao Xian

 

     

        (イレネ・モライ監督と同伴した女優のエレナ・マルティン)

   

       

 

◎短編ドキュメンタリー賞

Nuestra vida como niños refugiados en Europa

   フアン・アントニオ・モレノシルビア・ベネガス

2001 destellos en la oscuridad

El infierno

El sueño europeo: Serbia

 

   

        (フアン・アントニオ・モレノ、シルビア・ベネガス

    

   

◎短編アニメーション賞

Madrid 2120ホセ・ルイス・キロスパコ・サエスニコラス・Matji

El árbol de las almas perdidad

Homomaquia

Muedra

 

          

 

    

★ゴヤ栄誉賞受賞者ペパ・フロレス<マリソル>の出席はなく、3人の娘セリア・フロレス、タマラ・ガデス、マリア・エステべがトロフィーを受取りました。スペインの歌姫アマイアが「Canción de Marisol」を詠唱しました。

   

     

 

   (左から、セリア、タマラ、マリアの3人娘)

   

  

            (「Canción de Marisol」を歌うアマイア) 

  

                    

                                         (マリソルの映像をバックに熱唱するアマイア)

     

★以上が受賞結果でした。赤絨毯でフォトコールされたシネアスト・リストは次回に回します。

 

ゴヤ賞恒例の監督座談会*ゴヤ賞2020 ⑭2020年01月25日 22:58

        映画監督はもはや絶滅危惧種――生態系を守るため文化保護区が必要です

 

        (作品賞ノミネートの5人の監督、右端がベニト・サンブラノ) 

  

★エル・パイス恒例の監督賞にノミネートされた監督の座談会がもたれるのですが、今回は昨年末に行われました。1月はスケジュールが込み合っていることやマラガ開催だからでしょうか。年功序列で行きますとDolor y gloriaペドロ・アルモドバル70歳)、『戦争のさなかで』でのアレハンドロ・アメナバル47歳)、La trinchera infinitaを代表してホセ・マリ・ゴエナガ43歳)、『ファイアー・ウィル・カム』オリベル・ラシェ37歳)、写真右端は作品賞にノミネートされたIntemperieベニト・サンブラです。座談会は小一時間、ゴヤ賞、プラットフォーム、現実とフィクション、映画祭上映だけで公開されない映画も含めて国際映画祭が巻き起こす功罪、スペイン映画の未来について語りあいました。

 

       

(オリベル・ラシェ、ホセ・マリ・ゴエナガ、アルモドバル、アメナバル、201912月末)

 

★特に今回のノミネーションでは、『戦争のさなかで』や「La trinchera infinita」のように、歴史に基づいた作品が選ばれたことで、歴史(Historia)と物語(una historia real)の違いについて意見が交わされていた。また米アカデミー作品賞にノミネートされている、スコセッシの『アイリッシュマン』や、ノア・バームバックの『マリッジ・ストーリー』がNetflix 配信の映画であることから、映画館のスクリーンで観ることの不思議な高揚感が語られました。互いに見知らぬ者同士が同じ空間で観ることの神秘的な関係性は謎だということでした。映画を映画館で観ることを前提に撮り続けている監督は減り続け、もはや絶滅危惧種で動物園の中にいるようなものだと。アルモドバルは「生態系を守るために文化保護区が必要」だし、TVシリーズやネット配信の作品を撮るだけでは「これからのスペイン映画はどうなるのか」と疑問を投げかけていました。示唆に富んだ座談会なので、いずれ個々の発言をアップするつもりです。

 

 

★ゴヤ賞2020のマラガ開催の授賞式が迫ってきました。会場となるホセ・マリア・マルティン・カルペナ・スポーツ場3200人収容)も赤絨毯の準備に追われているようです。もともとはマラガ市スポーツセンターでしたが、2000年にETAによって殺害された国民党の政治家ホセ・マリア・マルティン・カルペラを讃えて2010年に名称が変更された。今年は主演男優賞にマラガ生れのアントニオ・バンデラスやアントニオ・デ・ラ・トーレがノミネートされているので、町全体も盛り上がっている。デ・ラ・トーレは既に現地入りして生れ育った界隈を散策、旧知の知人、隣人からの「オーラ!」にハグしまわっています。また著名な映画評論家たちの下馬評も出回っておりますが、結構ばらばらです。

 

 

  (赤絨毯敷きつめに大わらわの関係者たち、ホセ・M・マルティン・カルペナ・スポーツ場)

 

         

     (あちこちからの「オーラ!」に気軽に応えるアントニオ・デ・ラ・トーレ)

 

★昨年の好評につき今年も総合司会者を務める、コメディアン夫婦、シルビア・アブリル&アンドレウ・ブエナフエンテのカップルも用意万端、下記の写真はスペイン映画アカデミー会長マリアノ・バロッソとのスリーショット。年々ビジュアルなフィエスタが加速しているようです。セレブたちの赤絨毯登場からテレビ放映は始まると思いますが、開会式は125日(土)2200~です。

 

    

   (左から、マリアノ・バロッソ、シルビア・アブリル、アンドレウ・ブエナフエンテ)



ダリン父子が初共演の「La odisea de los giles」*ゴヤ賞2020 ⑬」2020年01月18日 17:25

    イベロアメリカ映画賞部門にアルゼンチンの「La odisea de los giles」が有力

 


   

★アルゼンチン興行成績史上初という快挙を遂げたセバスティアン・ボレンステインLa odisea de los gilesは、2019815日公開以来過去の記録を更新し続けている。しかしアドベンチャー・コメディ、スリラーなら何でも成功するというわけではない。アルゼンチン人なら誰一人として忘れることができない20011223日の<デフォルト>宣言に始まる<コラリート>を時代背景にしているからです。世界を震撼させた無責任国家の破産を舞台にして、煮え湯を飲まされた住民が反旗を翻す物語、それをリカルド&チノのダリン父子が初共演、ベテランのルイス・ブランドニリタ・コルテセを絡ませているから、何はともあれ映画館に足を運ばねばならない。第1週380館でスタートしたが、12月半ばには482館、180万枚のチケットが売れたそうです。地元紙は2018年のルイス・オルテガEl Angel(『永遠に僕のもの』354館)をあっさり抜いたと報じている。因みにコラリートとは預金封鎖のことで、銀行に預けた自分のお金が引き出せないということです。

 

        

  (現地入りしたダリン父子とブランドニ、サンセバスチャン映画祭2019フォトコールから)

 

★個人的には、アルゼンチン国民ほど近隣諸国から嫌われている国はないと考えていますが、このデフォルトによって中間層が貧困層に転落、それは国民の60%近くに及んだという。20世紀初頭には「南米のパリ」ともてはやされたブエノスアイレスも、夜中にゴミあさりをする人たちで、塵一つ落ちていない清潔な街になったと皮肉られた。アルゼンチン経済立て直しと称して、1990年にメネム政権が打ち出した1弗=1ペソ政策は見た目には成功しているかに思われたが、所詮錯覚に過ぎず、厚化粧が剥げれば経済だけでなく政治も社会も三つ巴になってデフォルトに直進した。相続・贈与税がそもそもなく、累進課税制度もないから、富める者はますます富み、貧しい人々はますます貧しくなる構図があり、自分さえよければよいという風潮が蔓延している。見た目と実態がこれほど乖離している国家も珍しい。そういう国で起きた騙されやすいオメデタイ人々が起こしたリベンジ・アドベンチャーです。

 

 La odisea de los giles(「Heroic Losers」)2019

製作:Mod Producciones / K&S Films / Kenva Films  協賛:TVE / Televisión FederaTelefe

監督:セバスティアン・ボレンステイン

脚本:セバスティアン・ボレンステイン、原作者エドゥアルド・サチェリ

音楽:フェデリコ・フシド

撮影:ロドリゴ(ロロ)・プルペイロ

編集:アレハンドロ・カリージョ・ペノビ

特殊効果:Vfx Boat

録音:ビクトリア・フランサン

製作者:フェルナンド・ボバイラ、ハビエル・ブライア、ミカエラ・ブジェ、レティシア・クリスティ、チノ・ダリン、リカルド・ダリン、シモン・デ・サンティアゴ、Axel Kuschevatzky、他

 

データ:製作国アルゼンチン、スペイン語、2019年、アドベンチャー・コメディ、スリラー、116分、配給元ワーナーブラザーズ。第92回米アカデミー賞国際映画賞アルゼンチン代表作品(落選)。公開アルゼンチン815日、ウルグアイ同22日、パラグアイ同29日、以下ボリビア、チリ、コロンビア、ペルー、ブラジル、メキシコなどラテンアメリカ諸国、スペイン1129

映画祭・受賞歴:トロント映画祭2019特別上映、サンセバスチャン映画祭2019正式出品、パルマ・スプリングス映画祭2020外国語映画部門上映、など。

 

キャスト:リカルド・ダリン(フェルミン・ペルラッシ)、ルイス・ブランドニ(友人アントニオ・フォンタナ)、チノ・ダリン(息子ロドリゴ)、ベロニカ・リナス(妻リディア)、ダニエル・アラオス(駅長ロロ・ベラウンデ)、カルロス・ベジョソ(爆発物取扱いのプロ、アタナシオ・メディナ)、リタ・コルテセ(実業家カルメン・ロルヒオ)、マルコ・アントニオ・カポニ(カルメンの息子エルナン)、アレハンドロ・ヒヘナ&ギレルモ・ヤクボウィッツJucubowicz(エラディオ&ホセ・ゴメス兄弟)、アンドレス・パラ(弁護士フォルトゥナト・マンツィ)、ルチアノ・カゾーCazaux(銀行家アルバラド)、アイリン・ザニノヴィチ(弁護士秘書フロレンシア)、他

 

ストーリー20018月、アルシナはこれといった資源もない、アルゼンチン東部の寂れた小さな町である。元サッカー選手だったフェルミンと妻リディアは、廃業したサイロを購入して協同組合を立ち上げ、地域経済の活性化を図ろうと決意する。年長者の友人アントニオ・フォンタナ(自称アナーキストでバクーニンの信奉者)、駅長ロロ・ベラウンデ、実業家カルメン・ロルヒオ、爆発物のエキスパートのアタナシオ・メディナ、ゴメス兄弟などが資金を出し合ってグループ事業を計画する。フェルミンとリディアは、アルシナには銀行がなかったので、銀行家のアルバラドを信用して金庫ごと、近郊のビジャグラン市に運ぶことにする。一方銀行家は彼自身の銀行に金庫の中身を移し替えるよう二人を説得にかかる。果たしてマネーの行方は・・・? 破産させられた住民たちが彼ら独自の方法でリベンジできるチャンスを見つけるが、その方法とは? コラリートを生き延びるために隣人たちが乗り出したアドベンチャーが語られる。 (文責:管理人)

 

       『瞳の奥の秘密』の原作者エドゥアルド・サチェリの小説の映画化

 

★原作はエドゥアルド・サチェリ(カステラル1967)の小説 La noche de la Usina2016年刊)の映画化、サチェリは2個目のオスカー像をアルゼンチンにもたらしたフアン・ホセ・カンパネラ『瞳の奥の秘密』09)の原作者でもあります。大学では歴史学を専攻、現に高校や大学で教鞭を執っているから、時代背景などはきちんと裏が取れている。アルゼンチンの経済危機は1998年から2002年まで、多くの国が煮え湯を飲まされた。IMFの不手際も原因の一つだったから、日本も借金を棒引きして救済したのでした。彼らにしてみれば、返せる能力もない人にお金を貸すほうが悪いというわけで、ぼくたちは悪くない。

 

セバスティアン・ボレンステイン(ブエノスアイレス1963)は、2011年のヒット作Un cuento Chino(「Chinese Take-Away」)で、リカルド・ダリンの魅力を思う存分引き出した監督。あれはまさにリカルドのための映画だった。アルゼンチン映画アカデミーの作品・主演男優・助演女優賞(ムリエル・サンタ・アナ)を受賞、米アカデミー賞アルゼンチン代表作品にも選ばれた。更にゴヤ賞2012イベロアメリカ映画賞も受賞した。

 

     

 

★コメディとスリラーを交互に撮っている監督は、2015年にスリラーKóblic(スペインとの合作)を撮った。マラガ映画祭2016に正式出品、1977年の軍事独裁政権を時代背景に軍務と良心の板挟みになるコブリック大佐にリカルド・ダリンが扮した。悪玉の警察署長を演じたオスカル・マルティネスが助演男優賞、撮影監督ロドリゴ・プルペイロが撮影賞を受賞した(プルペイロはロドリゴの愛称Roloロロでも表記される)。スペイン側からインマ・クエスタが出演しているが、なかなかマネできないアルゼンチン弁に苦労した。翌年9月『コブリック大佐の決断』でDVDも発売されている。当ブログでは、詳細な監督紹介と時代背景をアップしています。

監督キャリア&フィルモグラフィー、「Kóblic」の紹介記事は、コチラ20160430

 

   

  (『コブリック大佐の決断』撮影中のボレンステイン監督とリカルド・ダリン)

 

     一癖も二癖もあるキャスト陣が大いに興行成績に寄与している?

 

★新作La odisea de los giles」出演の顔ぶれを見ると、なかなか味のあるキャスティング、主演のダリン父子は何回か登場してもらっているので、さしあたり自称アナーキストでバクーニンのファンというフォンタナ役を演じたルイス・ブランドニから。1940年ブエノスアイレス州の港湾都市アベジャネダ生れ、俳優で政治家、アルゼンチン映画界の重鎮の一人、UCR(ユニオン・シビカ・ラディカル)党員で国会議員に選ばれている。1962年舞台俳優としてデビュー、翌年TVシリーズ、映画デビューは1966年。1970年代から主役を演じている。1984年のアレハンドロ・ドリアのDarse cuentaで主役に起用された。本作は銀のコンドル賞の作品・監督賞他を受賞したことで話題になった。ブランドニはドリア監督のEsperando la carroza85)でも起用されている。『笑う故郷』のガストン・ドゥプラットMi obra maestra18)にギレルモ・フランチェラ(ギジェルモ・フランセージャ)と共演している。間もなく80代に突入だが依然として主役に抜擢されている。

 

     

  (ガストン・ドゥプラットのMi obra maestra」から、左側はギレルモ・フランチェラ

 

★長寿TVシリーズMi cuñado9396)で2回マルティン・フィエロ賞を受賞、他作でも2回、計4回受賞している。新作ではロシアの哲学者、無政府主義者の革命家ミハイル・バクーニン(181476)の信奉者という役柄、日本では教科書で習うだけの思想家バクーニンが、アルゼンチンでは今でもファンがいるというのがミソ、マルクスのプロレタリア独裁に対立した革命家でもあった。

リカルド・ダリンの主な紹介記事は、コチラ20171025

 

    

         (ラテンアメリカから初のドノスティア賞のリカルド・ダリン、SSIFF 2017

 

      

     (リカルド・ダリン、ベロニカ・リナス、ルイス・ブランドニの三人組、映画から)

 

チノ・ダリンは、1989年ブエノスアイレスのサン・ニコラス生れ、俳優、最近父親リカルド・ダリンが主役を演じたフアン・ベラの「El amor menos pensado」で製作者デビューした。本作はSSIFF2018のオープニング作品である。映画デビューはダビ・マルケスのEn fuera de juego11)、本邦登場はナタリア・メタの『ブエノスアイレスの殺人』Muerte en Buenos Aires14)の若い警官役、ラテンビートで上映された。翌年韓国のブチョン富川ファンタスティック映画祭で男優賞を受賞した。続いてディエゴ・コルシニのPasaje de vida15)で主役に抜擢されるなど、親の七光りもあって幸運な出発をしている。他にルイス・オルテガのEl Angel18、『永遠に僕のもの』)、ウルグアイの監督アルバロ・ブレッヒナーの12年の長い夜で実在した作家でジャーナリストのマウリシオ・ロセンコフを演じた。役者としての勝負はこれからです。

他にチノ・ダリンの紹介記事は、コチラ20190115

 

     

              (劇中でも父子を演じたリカルド&チノ・ダリン親子、映画から)

 

★女優軍は、フェルミンの妻リディア役のベロニカ・リナス1960年ブエノスアイレス生れ、女優、舞台、TVシリーズで活躍、映画監督、舞台演出家でもある。父は最近癌で鬼籍入りした作家のフリオ・リナス、母は若くして癌に倒れた画家のマルタ・ペルフォ、映画監督のマリアノ・リナス(1975)は実弟。自らラウラ・シタレジャと共同監督・主演したLa mujer de los perros15)撮影中に夫も癌で亡くしている。本邦では馴染みがないなかで、サンティアゴ・ミトレの『パウリナ』に出演している。コメディ出演が多いが、マルティン・フィエロ賞をコメディとドラマ部門で受賞、銀のコンドル賞も受賞するなどの演技派です。

   

     

         (デフォルトのニュースを聞いて気絶する夫フェルミンを支える妻リディア)

 

    

                                      (監督&主演したLa mujer de los perros」から

 

★実業家カルメン・ロルヒオ役のリタ・コルテセは、ダミアン・ジフロンの『人生スイッチで、同僚のウエートレスの家族を破滅に追い込んだお客に猫いらず入りの料理を出して殺害しようとする料理女(ゴリラ)、塀の中体験者で「刑務所暮らしのほうがシャバより余程まし」とうそぶく、アルゼンチンの社会的不公平を逆手にとって金持ちに復讐する迫力満点の料理人を演じた。パウラ・エルナンデスの『オリンダのリストランテ』0108年公開)で主役のオリンダに扮した。ここでも料理をしていた(笑)。物言う女優の一人、リタ・コルテセについては別の機会にご紹介したい。

    

                       (カルメン・ロルヒオ役のリタ・コルテセ)

     

         

         (料理人に扮したリタ・コルテセ、『人生スイッチ』から) 

   

その他の出演者たち、アレハンドロ・ヒヘナ&ギレルモ・ヤクボウィッツが扮したゴメス兄弟、アンドレス・パラが扮したマンツィなど。

    

   

★いずれ何かの形で、つまりネット配信、ミニ映画祭、劇場公開、DVDなどで字幕入りで観られる機会があるのではないでしょうか。

 

近未来SF「El hoyo」*ゴヤ賞2020 ⑫2020年01月14日 14:31

        El hoyo」はシッチェス映画祭2019のグランプリ作品

 

  

   

★シネアスト紹介に時間が取られ作品紹介がストップしていました。ガルデル・ガステル=ウルティアのデビュー作El hoyoは、新人監督賞・オリジナル脚本賞・特殊効果賞の3カテゴリーにノミネートされました。タイトルの意味は地中に掘られたズバリ<>ですが、唯の穴ではなくエゴイズムの穴のようです。ホラー、SF、スリラーなどジャンル分けを拒否している風ですが一応近未来SFです。トロント映画祭ミッドナイト・マッドネス部門でワールドプレミア、観客賞受賞を皮切りに、シッチェス映画祭2019の作品賞・新人監督賞・ビジュアル効果賞・観客賞の4冠を制覇した。ゴヤ賞の他、結果待ちのスペイン映画賞のうち、フェロス賞、ガウディ賞にもノミネートされています。Netflix配信決定の記事に接し、やれ嬉しやと思いきや、よく読むとアジア諸国は除外されているのでした。

 

       

   (作品賞のトロフィーを手にした監督とスタッフ、シッチェス映画祭2019ガラ)

 

ガルデル・ガステル=ウルティアは、1974年ビルバオ生れの監督、脚本家、製作者。カテゴリー新人監督賞で触れたように短編2作を撮っている。このカテゴリーには『列車旅行のすすめ』のアリッツ・モレノもいるので予想は難しいが彼もサンセバスティアン生れとバスク出身、ベレン・フネスとサルバドール・シモーがバルセロナだから、若いシネアストはマドリード派以外から輩出しているようだ。

 

★ガステル=ウルティア監督がシッチェス映画祭で語ったところによれば、構想から4年掛かったが、撮影には「6週間しかかけられなかった」と語っている。「この映画の目論見は、愛情をもって額面通り以上に観客を誘導することなんです。主人公ゴーレンが陥っている事柄にどうやって対処するか、私たちのエゴイズムや無関心を他人の苦しみのほうへ観客を誘導させたいと思っている。人間であることは、あくまで個人的な意見ですが、ある種不幸なことなのです。この映画は泣き続け求め続けるエゴのボールの誕生に抗して闘うことについて語っています」と監督。

 

        

   (作品賞以下3つのトロフィーを手にしたガステル=ウルティア、シッチェスFF2019

 

 

 El hoyo(英題The Platform

製作:Basque Films / Mr. Miyagi Films / Plataforma La Película AIE

監督:ガルデル・ガステル=ウルティア

脚本:ダビ・デソラ、ペドロ・リベロ

撮影:ジョン・D・ドミンゲス

音楽:アランサス・カジェハ

編集:エレナ・ルイス、アリッツ・スビリャガ

美術:アセギニェ・ウリゴイティア

特殊効果&視覚効果:イニャキ・マダリアガ、マリオ・カンポイ、イレネ・リオ

製作者:カルロス・フアレス、ラケル・ぺレア、アンヘレス・エルナンデス、他

 

データ:製作国スペイン、スペイン語、2019年、SF、ファンタジー・スリラー、ホラー、94分、公開スペイン118日、映画館上映後Netflix配信が決定(アジアは除く)

 

映画祭・受賞歴:トロント映画祭2019ミッドナイト・マッドネス部門」でワールドプレミア、観客賞受賞、シッチェス映画祭2019の作品賞・新人監督賞・ビジュアル効果賞・観客賞受賞、トリノ映画祭2019脚本賞受賞。以下はノミネーション、ゴヤ賞2020新人監督賞・オリジナル脚本賞・特殊効果賞、フェロス賞2020作品賞・監督賞・脚本賞・助演女優賞(アントニア・サン・フアン)、予告編賞(ラウル・ロペス)、ポスター賞(エドゥアルド・ガルシア)、ガウディ賞2020脚本賞・視覚効果賞・作品賞(カタルーニャ語以外部門)など。

 

キャスト:イバン・マサゲー(ゴーレン)、ソリオン・エギレオル(トリマガシ)、アントニア・サン・フアン(イモギリ)、エミリオ・ブアレ(バアラト)、アレクサンドラ・マサングカイ(ミハル)、マリオ・パルド(バアラトの友人)、エリック・ゴーデ(ブランバング氏)、ほか囚人、レストラン支配人、料理人など多数

 

ストーリー:近未来のある刑務所舞台、一人の男ゴーレンが真ん中に巨大な穴が開いているコンクリートの部屋で目覚めると、見知らぬ男が一緒だった。ベテランの囚人トリマガシである。地下に掘られた穴は垂直に何階にも分割され、ここはレベル18のようだ。床は階下の天井であり、天井は上階の床でもある。レベル0の居住者が社会的強者、彼らが食べ残した料理が順々に下りてくるが、止まっているのは2分だけ、猛スピードで食べなくてはならない。自分のレベルまで毎日ご馳走が下りてくることは期待できないからスピードが求められる。運次第でレベルを変えることもできるが、個々の違いを乗り越えて団結しなければ、今や正気をたもつことはできない。社会的不平等とエゴイズムむき出しの不正行為、団結と連帯が語られる。

  

          

 

      エゴイズムの穴――社会的不平等についての薄暗いメタファー

 

★インパクトのある予告編を見ただけで食欲が失せてしまうでしょうか。かなり政治的なメッセージが読み取れます。近未来がバラ色でないことは判っているが、今より富の不正な分配が進み、社会的不平等が促進されるとするなら、ばらばらに分断された個人のミッションは何か。最下位が見えない分割されたコンパートメントは、閉所恐怖症に陥りかねない。カナダのヴィンチェンゾ・ナタリが国際映画祭で数々の作品・監督賞を受賞したSFスリラーCube97『キューブ』)を思い起こさせるようなシーンが頻出するようです。本作もシッチェス映画祭1998の作品賞を受賞しています。本邦では公開後テレビ放映(吹替)もされた。

 

       

  (主役イバン・マサゲーとソリオン・エギレオル、シッチェス映画祭のフォトコール)

   

    

         (料理を貪り食う同階の住人トリガマシ、映画から)

 

イバン・マサゲー(バルセロナ1976)は、2000TVシリーズでデビューした俳優。ゴヤ賞関連ではノミネーションもありません。しかしTVシリーズでは主役を演じるほど人気がある。ギレルモ・デル・トロが「批評家からも観客からも受け入れられた初めての作品」と語った『パンズ・ラビリンス』06)でセルジ・ロペス扮する冷酷無比なビダル大尉に抵抗するマキの兵士エル・タルタ役で出演している。その特徴ある鼻ですぐ分かる。他にダビ&アレックス・パストル兄弟のSFスリラー『ラスト・デイズ』13)でホセ・コロナドやキム・グティエレスと共演している。TVシリーズのコメディGym Tony1416回)では、下町のジムのオーナー、トニー役でお茶の間の人気者になった。

 

  

                     (ゴーレン役イバン・マサゲー、映画から)

 

     

 (エル・タルタ役のイバン・マサゲーとセルジ・ロペス、『パンズ・ラビリンス』から)

 

★アルモドバルの『オール・アバウト・マイ・マザー』99)で、女性に性転換した男性を演じて多くのファンの心を掴んだ、アントニア・サン・フアンが出演する。1961年グランカナリア島ラス・パルマス生れの女優、監督、脚本家。2本の長編、5本のショートを監督している。うち2005年のディエゴ・ポスティゴと共同で撮り、自身も主演したLa China20分)がNYシティ短編映画祭(外国語映画部門)作品賞、パルマ・スプリング短編映画祭で審査員賞を受賞したほか、メディナ映画祭では女優賞を受賞した。ゴヤ賞関連では『オール・アバウト・マイ・マザー』で新人賞にノミネートされ、俳優ユニオンでは助演女優賞を受賞している。劇場公開作品では、ラモン・サラサールの『靴に恋して』02)がある。他イバン・マサゲー主演のTVシリーズ「Gym Tony」(1415110話)に出演して、ジムの受付、メンテナンス責任者、同時に清掃員と三面六臂の大活躍。非常に頭の回転の速い女優で、ゴヤ賞の総合司会者を務めたことがある。

   

        

                     (イモギリ役のアントニア・サン・フアン)

 

     

    (名演技を披露したアントニア、『オール・アバウト・マイ・マザー』から)

 

 (短編La China」のポスター

  

   

★オリジナル脚本賞ノミネーションのダビ・デソラ(バルセロナ1971ペドロ・リベロ(ビルバオ1969のキャリアは、オリジナル脚本賞でご紹介しています。 

カテゴリー「オリジナル脚本賞」の記事は、コチラ20191226

*追加情報: 『プラットフォーム』の邦題でプライムビデオ他でストリーミング配信された。
  

ベテランと中堅入りまじり混戦模様の助演男優賞*ゴヤ賞2020 ⑪2020年01月11日 07:10

         難しい候補者選び――「Dolor y gloria」から2人ノミネート

 

        

  (ライバル同士になったスバラグリアとエチェアンディア、スペイン・プレミア313

 

★ベテランのエドゥアルド・フェルナンデスは、娘のグレタと親子を演じたベレン・フネスのLa hija de un ladrónでは、主役の常習窃盗犯に扮した。主演男優賞からは漏れたがアメナバルの『戦争のさなかで』で、ウナムノを弾劾するホセ・ミリャン・アストライ役で助演にまわった。2002年、イシドロ・オルティス他のFausto 5.0主演男優賞を取っている。アルベルト・ロドリゲスの『スモーク・アンド・ミラーズ』では、サンセバスチャン映画祭2016銀貝賞男優賞受賞だったのでゴヤも取るかと予想したが外れた。『イン・ザ・シティ』03)で助演受賞以来、主演・助演ノミネーションの山を築くだけで賞からは遠ざかっている。

 

★アルモドバルのDolor y gloriaから、アルゼンチン出身ながらスペインでの出演が多いレオナルド・スバラグリアと、アシエル・エチェアンディアが揃ってノミネートされた。前者は甘いマスクから日本でもファンが多いと思いますが、後者は公開作品がないことから馴染みがないのではないでしょうか。パウラ・オルティスのLa noviaで主演男優賞にノミネートされている。アルモドバルのイマイチだった『抱擁のかけら』(09)でボーイ役として参加したそうですが、編集の段階でボツになりクレジットされなかった。というわけで今回は2度目のオファーでした。残るベニト・サンブラノのIntemperieルイス・カジェホは、ゴヤ賞関連ではノミネートは今回を含めて3回、まだ受賞はない。Netflix配信されたラウル・アレバロの『物静かな男の復讐』16、『静かなる復讐』DVD)で主演男優賞にノミネートされたが受賞には至らなかった。

 

最優秀賞助演男優賞

 

アシエル・エチェアンディア 映画「Dolor y gloria」監督ペドロ・アルモドバル

〇アシエル・エチェアンディア(ビルバオ1975)は、俳優、舞台、歌手。バスク出身だが若くしてマドリードに移住、1995TVシリーズで俳優デビュー。ゴヤ賞関連では、パウラ・オルティスのLa noviaで主演男優賞にノミネートされている。映画、TVに並行して舞台でも活躍、演劇界の最高賞マックス賞2012主演男優賞をLa averíaで、俳優ユニオン賞2011も受賞している。人気TVシリーズVelvet1315)の第2シーズンで同じ俳優ユニオン賞2015助演男優賞を受賞するなどしている。アルフォンソ・アルバセテ他の群集劇『セックスとパーティーと嘘』(ラテンビート2009)、当ブログではフアンフェル・アンドレス他の『トガリネズミの巣穴』(同2014)やフリオ・メデムの『あなたのママになるために』14)をアップしています。2005年ごろ出会ったホセ・ルイス・ウエルタスが別れていなければパートナー。

  

  

       (バンデラスとエチェアンディア、映画「Dolor y gloria」から)

 

   

   (パウラ・オルティスの「La novia」で主演男優賞ノミネート、ゴヤ賞2016授賞式)

 

 

レオナルド・スバラグリア 映画「Dolor y gloria」監督ペドロ・アルモドバル

〇レオナルド・スバラグリア(ブエノスアイレス1970)は、アルゼンチン俳優ながらフアン・カルロス・フレスナディジョの『10億分の1の男』でゴヤ賞2002新人男優賞受賞、2007助演男優賞にマヌエル・ウエルガが実話をもとにして映画化した『サルバドールの朝』でノミネートされている。スペインとの繋がりはマルセロ・ピニェイロの実話に基づいたPlata quemada00、アルゼンチン・スペイン他)に出演したこと、当時人気絶頂だったエドゥアルド・ノリエガとタッグを組んで悲劇の銀行強盗犯を演じた。2001年東京国際レズビアン&ゲイ映画祭で『逃走のレクイエム』の邦題で上映され、第1回ラテンビート2004では『炎のレクイエム』と改題されて再上映された。本作の成功がきっかけになりスペインに軸足をおくようになった。翌年『10億分の1の男』(01)、マリア・リポールの『ユートピア』03)、ビセンテ・アランダの『カルメン』03)、『サルバドールの朝』06)とスペイン映画が続いた。公開作品ではダミアン・ジフロンの『人生スイッチ』14、スール賞ノミネーション)、イスラエル・アドリアン・カエタノの『キリング・ファミリー 殺し合う一家』17、銀のコンドル賞受賞)など故国アルゼンチンの映画賞、銀のコンドル賞、マルティン・フィエロ賞など受賞、ノミネーションはかなりの数にのぼる。Netflix配信作品(マルティン・オダラの『黒い雪』ほか多数)を含めるとかなりの作品が見られる。マラガ映画祭2017の最高賞「マラガ賞」を受賞して海岸沿いの遊歩道に手形入りの記念碑を建ててもらっている。

『人生スイッチ』の紹介記事は、コチラ20150729

『キリング・ファミリー 殺し合う一家』の紹介記事は、コチラ20170220

マラガ映画祭2017マラガ賞&キャリア紹介は、コチラ20170313

 

     

      (レオナルド・スバラグリア、映画「Dolor y gloria」から)

 

    

     (マラガ賞の記念碑の前で両手を広げるスバラグリア、20173月)

 

 

ルイス・カジェホ 映画Intemperie」 監督ベニト・サンブラノ

〇ルイス・カジェホ(カイェホもあり、セゴビア1970)は、1998TVシリーズでデビュー。ゴヤ賞関連ではフェルナンド・レオン・デ・アラノアのPrincesas2006年新人、上記したようにラウル・アレバロの『物静かな男の復讐』で2017主演(俳優ユニオンは受賞)、今回の悪役農園主役で助演とノミネートは3回です。比較的遅いデビューの割には脇役が多いせいか出演本数はTVシリーズ、短編を含めると114作になる。なかでアントニオ・ムニョス・デ・メサのAmigos de Jesús07)では主役を演じている。オスカル・サントスの『命の相続人』(ラテンビート2010)、アレックス・デ・ラ・イグレシアの『グラン・ノーチェ!最高の大晦日』(同2015)、パコ・レオンのKIKI~愛のトライ&エラー』(同2016)、他にアルベルト・ロドリゲスの『スモーク・アンド・ミラーズ』(同2016)、フェルナンド・ゴンサレス・モリーナのヒット作『ヤシの木に降る雪』にも出演している。他にセルヒオ・バレホンのデビュー作、コメディJefe18)では清掃員フアナ・アコスタに翻弄される社長役で主演している。コメディを得意としているが、演技の幅は広い。

『物静かな男の復讐』の主な紹介記事は、コチラ20170109

 

     

  (少年を追う農園主を演じたルイス・カジェホ、映画Intemperieから)

 

    

      (主演男優賞にノミネートされたカジェホ、ゴヤ賞2017授賞式)

 

 

エドゥアルド・フェルナンデス 映画『戦争のさなかで』 監督アレハンドロ・アメナバル

〇エドゥアルド・フェルナンデス(バルセロナ1964)は、俳優。上記した以外に、主演・助演ノミネーションの山というのを列記すると、2000新人賞マリアノ・バロッソLos lobos de Washington2002助演ビガス・ルナ『マルティナは海』2006主演マルセロ・ピニェイロMetodo2011助演アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ『ビューティフル』2015助演ダニエル・モンソン『エル・ニーニョ』(ザ・トランスポーター)、2019助演アスガル・ファルハディ『誰もがそれを知っている』などが主なものであるが、ゴヤ賞以外のガウディ賞、マラガ賞、サン・ジョルディ賞などに広げると書ききれない。バジャドリード映画祭2018栄誉賞を受賞している。

『エル・ニーニョ』の主な紹介記事は、コチラ20141103

『スモーク・アンド・ミラーズ』の紹介記事は、コチラ20160924

『誰もがそれを知っている』の主な紹介記事は、コチラ20180508

 

  

     (ホセ・ミリャン・アストライに扮したフェルナンデス、映画から)

 

     

(銀貝賞のトロフィーを手にしたフェルナンデス、サンセバスチャン映画祭2016授賞式)


フリエタ・セラノが助演女優賞にノミネート*ゴヤ賞2020 ⑩2020年01月07日 18:13

              パコ・カベサスの「Adiós」から2人がノミネート

 

    

 (候補者がマドリードに参集したゴヤの夕べ、Adiós」クルーのモナ・マルティネス、

 ナタリア・デ・モリーナ、新人女優賞ノミネートのピラール・ゴメス、2019年12月17日

 

★ゴールデン・グローブ賞の結果発表があり、スペイン各紙も写真入りで大きく報道していました。外国語映画部門にノミネートされていたアルモドバルのDolor y gloriaは、カンヌ同様ポン・ジュノの『パラサイト 半地下の家族』(110日公開)に敗れました。監督もガラ当日に馳せつけましたが残念でした。しかし本番のアカデミー賞が残っておりますが(まだノミネートが確定していない)最近ではこのカテゴリーは一致する傾向にあるからダメかな。またドラマ部門の男優賞ノミネートのバンデラスは、今度は『ジョーカー』のホアキン・フェニックスに敗れました。

  

   

        (ガラに駆けつけたアルモドバル監督、2020年1月5日)

 

★気を取り直して。Dolor y gloria」にかつてのアルモドバル映画の常連フリエタ・セラノがノミネートされました。1980年のデビュー作『ペピ、ルシ、ボンと他のフツーの女たち』以来、1983『バチ当たり修道院の最期』1986『マタドール』1988『神経衰弱ぎりぎりの女たち』から1989年の『アタメ』まで出演している。今回は久々のアルモドバル映画の出演となります。アメナバルの『戦争のさなかで』の中でサラマンカ市長夫人を演じたナタリエ・ポサ、パコ・カベサス(セビーリャ1976)のスリラーAdiós(未紹介)から、モナ・マルティネスナタリア・デ・モリーナが揃ってノミネートされていますが、予想は難しい。

 

最優秀賞助演女優賞

 

ナタリア・デ・モリーナ 映画Adiós 監督パコ・カベサス

〇ナタリア・デ・モリーナ(ハエン近郊のリナレス1990)は、非常に強い星のもとに生まれた女優。作品は未紹介ですが、セビーリャを舞台にしたドラッグ絡みの殺人劇のようです。主演はマリオ・カサスだが、運悪くアキがなくついてなかった。映画の評価が分かれていることも損しているようです。ゴヤ賞関連では、ダビ・トゥルエバの『「ぼくの戦争」を探して』デビューするや2014新人女優賞、フアン・ミゲル・デル・カスティジョのTecho y comidaのシングルマザー役で2016主演女優賞と立て続けにゴヤ胸像を手にしたシンデレラガール。他にパコ・レオンのKIKI~愛のトライ&エラー16)、カルロス・ベルムトの『シークレット・ボイス』18)、イサベル・コイシェの『エリサ&マルセラ』19)では男装姿をお披露目した。当ブログでは何回も登場してもらっている。独身にアディオスして音楽プロデューサーのヘスス・アモレスがパートナーです。

Techo y comida」&主なキャリア紹介は、コチラ20160116

 

   

        (マリオ・カサスと、映画Adiósから)

   

      

 (涙が止まらなかった主演女優賞受賞のナタリア・デ・モリーナ、ゴヤ賞2016

 

 

モナ・マルティネス 映画Adiós 監督パコ・カベサス

〇モナ・マルティネス(マラガ)は、2002年当時係争中だった事件をTVミニシリーズ化して話題になったベニト・サンブラノのPadre corajeでデビュー、ゴヤ賞受賞歴はない。サンブラノ監督がIntemperieで脚色賞他にノミネートされているが、本作にも出演している。Adiósが初ノミネーションだが、フェロス賞助演女優賞にもノミネートされている。他に当ブログ紹介作品としてアンドレア・ハウリエタAna de día18)やロドリゴ・ソロゴジェンのEl reino出演がある。作品についてはナタリア・デ・モリーナの項を参照、主人公の7歳になる娘の死が中心にあり、涙なしには見られない作品とか。

 

   

      

     (モナ・マルティネスとマリオ・カサス、映画Adiós」から

 

 

フリエタ・セラノ 映画Dolor y gloria」 監督ペドロ・アルモドバル

フリエタ・セラノ(バルセロナ1933)は、1964TVシリーズでデビュー。ゴヤ賞関連では受賞は一度もなく、『神経衰弱ぎりぎりの女たち』とグラシア・ケレヘタのCuando vuelvas a mi lado99)で2回助演にノミネートされている。上記のアルモドバル作品以外ではハイメ・デ・アルミニャンのMi querida señorita72)、TVシリーズTeatro de siempre196771)でフォトグラマ・デ・プラタ賞を受賞している。また『マタドール』ではファンタスポルト2005の国際ファンタジア映画賞、20146ガウディ賞栄誉賞、マラガ映画祭特別賞の一つ銀のビスナガシウダ・デル・パライソ2015年に受賞している。デビュー以来生涯現役を続けているが、86歳という年齢から最後のチャンスかもしれない。

 

    

     (バンデラス扮する主人公サルバドールの母親役、映画から)

 

   

(ガウディ栄誉賞のトロフィーを手にしたセラノ、第6回ガウディ賞2014授賞式

 

 

ナタリエ・ポサ 映画「Mientras dure la guerra」(『戦争のさなかで』

        監督アレハンドロ・アメナバル

ナタリエ・ポサ(マドリード1972)は、ゴヤ賞関連ではノミネートに終わることが多かったが、2018年リノ・エスカレラのNo sé decir adiósで主演女優賞を受賞している。本作はスペイン映画祭2019『さよならが言えなくて』の邦題で上映された。他では脇役だが、アルモドバルの『ジュリエッタ』、セスク・ゲイの『しあわせな人生の選択』などの公開作品に出演している。

キャリア紹介は、コチラ20170625

 

       

    (芯の強いサラマンカ市長夫人に扮したナタリエ・ポサ、映画から)

 

     

  (主演女優賞のトロフィーを手にしたナタリエ・ポサ、ゴヤ賞2018授賞式)


ほぼ決まりの主演男優賞*ゴヤ賞2020 ⑨2020年01月06日 17:16

              アントニオ・バンデラスVSカラ・エレハルデ

 

     

(左から、バンデラス、アントニオ・デ・ラ・トーレ、エレハルデ、ルイス・トサール)

  

★アルモドバルVSアメナバルという監督対決が、そのまま主演男優賞アントニオ・バンデラスVSカラ・エレハルデにもちこまれている。前者は海外での受賞歴に比してゴヤ賞は、ゴヤ賞2015栄誉賞を受賞しただけである。ハリウッド時代が長いこともあり、帰国後主演したアルモドバルの『私が、生きる肌』(11)でもノミネーションに終わっている。Dolor y gloriaがカンヌ映画祭2019にノミネートされ、バンデラスは男優賞を受賞している。後者はスペイン映画史上最高額の5600万ユーロという破格の興行収益を上げたエミリオ・マルティネス=ラサロのコメディOcho apellidos vascos2度目の助演男優賞を受賞している。

 

★アントニオ・デ・ラ・トーレは昨年、ロドリゴ・ソロゴジェンのEl reinoで宿願の主演男優賞を受賞しており、今回体重を15キロ増やして臨んだLa trinchera infinitaではあるが、連続受賞はないと予想します。残るルイス・トサールも長い下積み生活を乗りこえて、2004年イシアル・ボリャインの『テイク・マイ・アイズ』、続く2010年ダニエル・モンソンの『プリズン211のマラ・マードレ役で主演男優賞を受賞している。今回パコ・プラサのスリラーQuien a hierro mataがメイン・カテゴリーにノミネートされていないこともあり、若干分が悪いのではないか。

 

 

  最優秀主演男優賞

 

アントニオ・バンデラス Dolor y gloria」 監督ペドロ・アルモドバル

〇アントニオ・バンデラス(マラガ1960)俳優、監督、製作者。ゴヤ賞2015栄誉賞のほか、1年に1人選ばれる国民賞の映画部門、スペイン映画国民賞2017年に受賞している。ゴヤ賞以上に格上の映画賞である。キャリアについては以下の記事にワープして下さい。

ゴヤ栄誉賞受賞についての記事は、コチラ2014110520150215

スペイン映画国民賞についての記事は、コチラ20170928

 

  

 (映画「Dolor y gloria」から)

    

    

      (カンヌ映画祭2019男優賞のトロフィーを手にしたバンデラス)

 

 

アントニオ・デ・ラ・トーレ La trinchera infinita」 監督アイトル・アレギ、他

〇アントニオ・デ・ラ・トーレ(マラガ1968)は俳優、ジャーナリスト。ゴヤ賞関連ではダニエル・サンチェス・アレバロの長編デビュー作『漆黒のような深い青』(06)で助演男優賞を受賞して以来、毎年のように主演か助演にノミネートされるが縁遠く、昨年やっとロドリゴ・ソロゴジェンの「El reino」で主演男優賞を受賞した。今回の「La trinchera infinita」では、フォルケ賞とフェロス賞にノミネートされているが、多分ないと予想します。

主なキャリア紹介は、コチラ20180827

 

        

                       (映画「La trinchera infinita」から)

    

   

     (主演男優賞のトロフィーを手にしたデ・ラ・トーレ、ゴヤ賞2019ガラ)

 

カラ・エレハルデ 「Mientras dure la guerra」(『戦争のさなかで』) 監督アレハンドロ・アメナバル

〇カラ・エレハルデ(バスク州ビトリア1960)は、俳優、脚本家、監督。ゴヤ賞絡みでは、イシアル・ボリャインの『ザ・ウォーター・ウォー』(『雨さえも―ボリビアの熱い一日』)でゴヤ賞2011助演男優賞を受賞、エミリオ・マルティネス=ラサロのコメディOcho apellidos vascos14)で、2度目の助演男優賞を受賞している。脇役が多いので主演男優賞は初ノミネートです。

主なキャリア紹介は、コチラ⇒2015年01月28日

 

     

(ミゲル・デ・ウナムノを演じたエレハルデ)

 

  

        (助演男優賞のトロフィーを手にしたエレハルデ、ゴヤ賞2015ガラ)

 

 

ルイス・トサール Quien a hierro mata」 監督パコ・プラサ

〇ルイス・トサール(ルゴ1971)、ゴヤ賞関連では上述の他、イシアル・ボリャインの『花嫁のきた村』99)で新人男優賞ノミネートを皮切りに、フェルナンド・レオン・デ・アラノアの『月曜日にひなたぼっこ』02)で助演男優賞受賞、ボリャインの『ザ・ウォーター・ウォー』10)、ジャウマ・バラゲロの『スリーピングタイト~』11)、ダニー・デ・ラ・トーレの『暴走車ランナウェイ・カー』15)の3作が主演男優賞にノミネートされており、シリアス・ドラマ、ホラー、スリラー、コメディと何でもこなすカメレオン俳優らしく比較的恵まれている。今回の映画はガリシアを舞台にしたスリラー仕立ての復讐劇、というわけで英題は「Eye for an Eye」です。他に彼が主演したアリッツ・モレノの『列車旅行のすすめ』や、ベニト・サンブラノ&レモン兄弟のIntemperieもノミネーションされているので、3グループをぐるぐる駆け回らなくてはならない。2015年からチリ出身の女優マリア・ルイサ・マジョールがパートナー、マラ・マードレも昨年2児の父親になった。

最近のキャリア紹介は、コチラ20191217

 

     

              (介護士に扮したルイス・トサール、映画「Quien a hierro mata」から)

   

    

(『プリズン211』で2度目の主演男優賞のトロフィーを手にしたトサール、ゴヤ賞2010

 

2020年のフェロス賞(116日)には4人揃ってノミネートされ、ホセ・マリア・フォルケ賞(111日)にはルイス・トサール以外ノミネートされています。一人に集中するのかバラけるのか、間もなくです。