ハビエル・バルデム*古典ホラー『フランケンシュタイン』のリブートに出演?2016年07月25日 15:33

        フランケンシュタイン博士、あるいはモンスター役?

 

★ショーン・ペンのアフリカ内戦もの『ザ・ラスト・フェイス』(“The Last Face”)が今年のカンヌ映画祭でワールド・プレミア、シャーリーズ・セロンと共演(公開が予定されている)、今年夏公開が予定されていた「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズ第5は遅れて来年になる由、久々のスペイン語映画フェルナンド・レオン・デ・アラノアのEscobar(麻薬王パブロ・エスコバルのビオピック、妻ペネロペ・クルスと共演)、ダーレン・アロノフスキーの新作ジェニファーローレンスと出演、更にイランのアスガル・ファルハディの新作に夫婦で出演、来年夏にはスペインでのクランクインが予定されている。

 

★“Escobar”は、コロンビアのメデジン・カルテルの麻薬王パブロ・エスコバルの伝記映画。エスコバルの1980年代の愛人、元ジャーナリストのビルヒニア・バジェッホの同名回想録“Amando a Pablo, odiando a Escobar”(2007年刊)の映画化。バルデムがエスコバル、クルスが愛人ビルヒニアになります。

 

    

             (ハビエル・バルデムとペネロペ・クルス)

 

★そして今回アナウンスされたのが、1930年代にユニバース・ピクチャーズが製作した一連のホラー映画の一つ『フランケンシュタイン』のリブート出演のニュースです。本作はイギリスのメアリー・シェリー(17971851)が、1818年に匿名で発表したゴシック小説『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』を、1931年にジェイムズ・ホエールが映画化したもの(当時の女性作家は匿名)。ボリス・カーロフが扮した怪物の造形イメージが今日でもモンスター像として定着している。小説と映画の人物造形にはかなりの違いがあり、新作が原作重視か、あるいは映画重視かは分からない。そもそもバルデムがフランケンシュタイン博士になるのかモンスターになるのかさえ不明である。今後も紆余曲折がありそうです。製作は2019年と大分先になるようだ。

 

  

       (ボリス・カーロフ、1931年映画版のフランケンシュタインの怪物)

 

★ジェイムズ・ホエールは1935年に『フランケンシュタインの花嫁』も監督しており、モンスターは同じくボリス・カーロフが扮した。こちらには原作者のメアリー・シェリーまで登場するというもので、ますます原作から離れてしまっている。新作「フランケンシュタイン」には、両作を合体させるのかもしれない。資金力はあっても企画力が乏しくなっているせいか、リブートだのリメイクだの新鮮味に欠けるニュースのご紹介です。

 

★新作は、昨年の夏以来、アレックス・カーツとクリス・モーガンを主軸に、ユニバース・ピクチャーズが「古典モンスター映画」のリブートを企画した第3作目に当たる。第1作は『ミイラ再生』(1932)の“The Mummy”、トム・クルーズが主役のタイラー・コルトに、ラッセル・クロウがジキル博士を演じた。このジキル博士役のオファーをバルデムが断ったと聞いている。20176月公開予定。第2作が『透明人間』(1933)、ジョニー・デップが主役を演じる。

 

アスガル・ファルハディの新作の記事は、コチラ⇒201666


新人監督賞『トガリネズミの巣穴』3個*ゴヤ賞2015ノミネーション ⑧2015年01月30日 17:47

 新世代の監督たちが輩出した年でした!

★カルロス・サウラがフェロス賞栄誉賞受賞の折りに「新しい世代が育って、スペイン映画の未来は明るい」と述べたように、昨年は新人監督の活躍が際立った年でした。マラガ映画祭2014の大賞受賞者は全て新人監督がゲットしました。その折りサウラも旧作『従姉アンヘリカ』が「金の映画賞」を受賞するので来マラガしていたから新世代にエールを送ったのかもしれない。サウラにとって彼らは孫世代ですからね。新人監督賞ノミネーション4作品は以下の通り、(3)以外は当ブログに登場しています。

 

1カルロス・マルケス≂マルセCarlos Marqués-Marce 10.000 km

マラガ映画祭201444日&411
2 フアンフェル・アンドレスエステバン・ロエル Juanfer Andrés y Esteban Roel

Musarañas『トガリネズミの巣穴』(トロントFF2014813LB 20141022
3クーロ・サンチェス・バレラCurro Sánchez Varela Paco de Lucía: La búsqueda
4ベアトリス・サンチス Beatriz Sanchís Todos están muertos

マラガ映画祭2014411、トロントFF2014813

 


◎フアンフェル・アンドレスエステバン・ロエル 

★ラテンビート2014スクリーンで見た作品ということで贔屓目もありますが、『トガリネズミの巣穴』がトップを走っているのではないでしょうか。

MusarañasShrew’s Nest2014 スリラー・ホラー 95分 

ノミネーション3個は、新人監督賞主演女優賞(マカレナ・ゴメス)とメイク・ヘアメイク賞(ペドロ・ロドリゲス、カルメン・ベイナト、他)です。エグゼクティブ・プロデューサーにアレックス・デ・ラ・イグレシア、カロリーナ・バングという有力布陣でニュース・バリューもあり、各紙のコラムニストも好意的。トロント映画祭2014「バンガードVanguard 部門でワールド・プレミア、続いてスペインのシッチェス・ファンタジック映画祭正式出品、ラテンビートがアジアン・プレミアでした。


新人監督賞:二人とも本作が長編デビュー作、二人は共にマドリードの映画研究所の受講生。彼らの短編0362011)は、Youtube 200万回のアクセスがあり数々の賞を受賞した。本作は上述したようにデ・ラ・イグレシアがファンタジー、スリラー、ホラーと才能豊かな若い二人に資金援助をして製作された。カロリーナ・バングはデ・ラ・イグレシアの異色ラブストーリー『気狂いピエロの決闘』(2010)に曲芸師として出演、本作にも脇役で登場。短編“036”出演が機縁でプロデューサー・デビューした。 

             (左から、エステバン・ロエル、フアンフェル・アンドレス)

 

主演女優賞マカレナ・ゴメスMacarena Gomez1978年コルドバ生れ、女優。デ・ラ・イグレシアの『スガラムルディの魔女』に出演、狂気の「マドリードの魔女」を演じた。スパニッシュ・ホラーには欠かせない存在になっている。未公開だが、ミゲル・マルティのコメディ・ホラー“SexyKiller, morirás por ella”(2008)が『セクシー・キラー』の邦題でDVD化された。本作は「ブリュッセル・ファンタジー映画祭」ペガサス観客賞を受賞、マカレナ自身もスペイン俳優組合賞にノミネートされた。その他、アントニア・サン・フアンの監督第2作コメディ“Del lado del verano”(2012)では主役タナに起用された。「14歳のとき女優になろうと決心した。先輩女優の演技から学ぶことが多く、特にベロニカ・フォルケから影響を受けている」と語っている。私生活ではミュージシャンのアルド・コマスと結婚、今夏ママになる予定。

 

  (マカレナ・ゴメス、映画から)

 

プロット:広場恐怖症のモンセ(マカレナ・ゴメス)の物語。1950年代のマドリード、母親が出産したばかりの赤ん坊を残して死んでしまうと、臆病な父親(ルイス・トサール)は耐えきれなくなって蒸発してしまう。モンセは不吉なアパートから一歩も出られず、父と母と姉の3役を背負って青春を奪われたまま、義務感から洋服の仕立てをしながら赤ん坊を育てていた。苦しみから主の祈りとアベマリアの世界に逃げ込んで、今では一人の女性に成長した妹(ナディア・デ・サンティアゴ)を通して現実と繋がっている。ある日のこと、この平穏の鎖が断ち切られる。上階の隣人カルロス(ウーゴ・シルバ)が不運にも階段から落ち、唯一這いずってこられるモンセの家の戸口で助けを求めていた。誰か特に若い男がトガリネズミの巣に入ってしまうと、たいてい二度とは出て行かれない。

 

★多くの批評家が、1960年代のマリオ・バーヴォ『血ぬられた墓標』1960)との類似性を指摘している。イギリス女優バーバラ・スティールがヒロインを演じた伝説的なイタリアン・ゴシック・ホラー映画。また、ナルシソ・イバニェス・セラドールの第1作“La residencia”(1969)、ドン・シーゲルの『白い肌の異常な夜』1971)を思い起こさせるという人も。さしずめイーストウッドがカルロス役のウーゴ・シルバというわけです。マカレナは、ホセ・ルイス・ボラウがマヌエル・グティエレス・アラゴンと撮ったスパニッシュ・ホラー“Furtivos”(1975)の主演女優ローラ・ガオスが演じた恐ろしい母親とも比較されてもいる。本作はサンセバスチャン映画祭の「金貝賞」受賞作品。しかし、なんといっても似ているのは、ロブ・ライナーの『ミザリー』1990)です。モンセの複雑な動きをする心理は、キャシー・ベイツ扮するアニーにそっくり。彼女は本作でアカデミー主演女優賞に輝いたが、それに倣ってマカレナも狙えるか、やはり“Magical Girl”のバルバラ・レニーでしょう。

  


カルロス・マルケス≂マルセ

★春4月に開催されるマラガ映画祭の大賞を独占した作品ですが、ゴヤ賞は、どうしてもアカデミー会員の記憶が薄れてしまいますから、苦戦すると思います。それでゴヤ賞狙いは秋開催のサンセバスチャンに焦点を合わせるわけです。

*“10.000 KM”のノミネーション3個は、新人監督賞新人女優賞新人男優賞

マラガ映画祭2014の作品賞「金のジャスミン賞」受賞作品。カルロス・マルケス=マルセが最優秀作品賞金賞)、最優秀監督賞最優秀新人脚本賞(共同執筆者クララ・ロケ)、ナタリア・テナが最優秀女優賞、他にFNACから批評家特別賞(マラガは作品賞以外はすべて銀賞です)を受賞。他にガウディ賞2015のカタルーニャ語以外の部門に作品賞監督賞男優賞女優賞などがノミネーションされている。発表は間もなくの21日です。

 

プロット:アレックスとセルジの二人はバルセロナで恋に落ち一緒に暮らしていたが、今は別々のアパートで孤独な一人暮らしだ。写真家のアレックスはロスアンゼルス、セルジはバルセロナ。アレックスがロスの奨学資金を貰って1年間の予定でアメリカに発ってしまったからだ。親になることも凍結した二人の会話はすべてインターネット越し、果たして10,000キロ離れた愛の行方は?

 

★カルロス・マルケス=マルセCarlos Marqués-Marceは、バルセロナ生れの30歳、監督、脚本家、製作他。本作が長編第1作。短編多数、IMDb では2010年の“I’ll Be Aloneから掲載されておりますが、それ以前から撮っている。アッバス・キアロスタミとビクトル・エリセがコラボで指導しているバルセロナの映画学校に参加。スペイン最大手の貯蓄銀行ラ・カイシャLa Caixa 財団の奨学資金を得て、アメリカのカリフォルニア大学ロサンゼルス校UCLAの映画&テレビ学部、監督学科のマスター・コースに留学、この時の体験が長編デビュー作に織り込まれている。ここで製作した前述の“I’ll Be Alone がロスのラテンアメリカ映画祭、その他で上映されました。他に“Caraquemada2010)、“I Felt Like Love2013)、2012年の“The Yellow Ribbon は各地の映画祭で受賞した。 

                    マルケス=マルセ監督、マラガ映画祭授賞式にて)

 

La Panda のメンバー(動物のパンダではなくグループの意味)。ロスに在住しているスペイン人11名(監督、製作者、脚本家、撮影監督、編集者など)が参加している。このグループとの出会いが刺激となって本作は誕生した由。EU加盟後のスペインは、英語を学ぶのが主流、若い世代は英米を目指すようになりましたが、長編デビュー作は「絶対スペイン語で撮りたかった」と監督。

 

新人女優賞ナタリア・テナは、1984年ロンドン生れのイギリス人、イギリス育ちの女優、歌手だが、両親がスペイン系でスペイン語が堪能。クリス&ポール()・ワイツ兄弟の『アバウト・ア・ボーイ』(2002)で映画デビュー、もう「ハリーポッター」のニンファドーラ・トンクス役でお馴染み。またジョージ・RR・マーティンのファンタジー小説『氷と炎の歌』をテレビドラマ化したシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』にオシャOcha役で出演。オースティンのSXSW映画祭2014で女優賞受賞。

 

新人男優賞ダビ・ベルダゲルは、1980年、バルセロナ生れ、俳優、脚本家。2001年よりシリーズTVドラマでデビュー、マル・コルの『家族との3日間』(2009、東京国際女性映画祭タイトル)に脇役で映画出演、本作が2作目となり、オースティンのSXSW映画祭2014で男優賞受賞。カルメ・プチェの短編コメディ“Etiquetats”(2012)に脚本を共同執筆、出演もした。

 

       (ナタリア・テナとダビ・ベルダゲル、映画から)

 

ベアトリス・サンチス  

Todos están muertos (ドイツメキシコ≂スペインノミネーション2個は、新人監督賞主演女優賞マラガ映画祭2014審査員特別賞受賞作品、他に最優秀女優賞にエレナ・アナヤ、オリジナル・サウンドトラック賞にAkrobats が受賞、マラガ大学が選ぶ青年審査員特別賞も受賞。

 

プロット:若いころポップ・ロック歌手として輝かしい成功をおさめていたルぺの15年後が語られる。彼女の人生に過去のある幻影が忍び寄ってくる。一方、ちょうど思春期を迎えたテーンエイジャーの息子パンチョとの関係がぎくしゃくしてイライラが募ってくる。

新人監督賞ベアトリス・サンチスBeatriz Sanchís、監督、脚本家、アート・ディレクター。エレナ・アナヤとの5年間(200813)にわたるパートナー関係を解消して本作を撮った。2010年の短編“ Mi otra mitadがワルシャワ映画祭にノミネート。

 

  (ベアトリス・サンチェスとエレナ・アナヤ、マラガ映画祭授賞式にて)

 

主演女優賞エレナ・アナヤの紹介は省略、ペドロ・アルモドバル『私が、生きる肌』(2011)やフリオ・メデム『ローマ、愛の部屋』(2010)などで認知度バツグンだから。2012年「マラガ賞受賞者」でもある。 

    (エレナ・アナヤ、映画から)

アレックス・デ・ラ・イグレシア特集 『トガリネズミの巣穴』 *LB2014 ⑫2014年10月22日 22:08

★トロント映画祭2014「バンガードVanguard 部門でワールド・プレミア、続いてスペインのシッチェス・ファンタジック映画祭正式出品、ラテンビートがアジアン・プレミアでした。「スペイン公開前に東京で上映して頂けて製作者として本当に誇りに思う」と、エグゼクティブ・プロデューサーのアレックス・デ・ラ・イグレシアEFEのインタビューに語っていましたが、日本はスペイン産ホラーのファンが多い。スペイン公開はクリスマスの1225日が決定しています。なおMusarañasShrew’s Nest)のデータは、簡単にトロント映画祭ノミネーションでアップしていますが(コチラ⇒813)、文末にキャストとプロット、監督紹介を付録として採録しました。

 


     登壇しなかったカロリーナ・バング

 

: 21時からの上映にも拘わらず結構入っていたのは、ホラー映画だったからですかね。

: デ・ラ・イグレシア来日が大きかったのじゃないですか。一口にホラーといってもタイプによりけり、『REC』シリーズはあまり怖くないですが、これはちょっと不気味。

: 『スガラムルディの魔女』でもクレームつけましたが、共同プロデューサー、出演者でもあったカロリーナ・バングをどうして登壇させなかったんですかね。シッチェス・ファンタジック映画祭のプレス会見では並んで座っていた。写真の角度がずれてバングのプレートがウーゴ・シルバの前にきてしまっていますが。

 

   (左から、マカレナ、シルバ、バング、デ・ラ・イグレシア、シッチェス104

 

: 今年のゲストはたったの二人と稀少価値もあったのに。デ・ラ・イグレシアが前列に座っていたバングを見やって、「この作品は彼女が持ってきた企画です」と気遣ってましたが、二人の監督の紹介すらなかった()

: プレス会見席上、デ・ラ・イグレシアは「二人はまだ駆け出しの監督ですが、この映画は<完全に>二人の監督の映画です」と、自分に質問が集中しないよう二人の才能と経験を賞讃していました。「トビー・フーバーの『悪魔のいけにえ』4回も観たという友人と一緒に楽しみを共有できた」とも。

1974年製作のホラー映画の原点、原題は直訳すると「テキサス・チェーンソー虐殺」。4000万ドルの製作費で60億(2006データ)の収益をあげたというヒット作。

 

: 二人の新人監督とは、フアン・フェルナンド(フアンフェル)・アンドレスとエステバン・ロエルです。共に長編デビュー作、脚本も同じです。バングは以前、二人の短編0362011)に出演しており、その関わりです。

: Youtube 200万回のアクセスがあったという短編ですね。

: デ・ラ・イグレシアが若い二人に資金援助をして製作した。デ・ラ・イグレシアはカロリーナと新しく製作会社 PokeepsieFilmsを立ち上げ、その第1作が本作。ファンタジー、スリラー、ホラーと才能豊かな二人を船出させた。

 

            (シッチェスに勢揃いしたスタッフとキャスト)

 

: かつてのデ・ラ・イグレシア自身がアルモドバル兄弟の「エル・デセオ」の資金援助を受け、『ハイルミュタンテ!~』をデビューさせたのでした。

: 兄弟に足を向けては寝られない。初めてシナリオを目にしたシネアストは、「これは時代をスペイン内戦後の1940年代に設定したら面白くなる」と直感したそうです。

: 結局は1950年代のマドリードになったわけですが、50年代の一般庶民は内戦を引きずって飢え死にこそしなかったが貧しかった。それにしては姉妹の部屋は広く生活に困っているふうではなかった。

 薄暗いマンションでしたが、それに比較して調度品やコーヒーセットなどは、映画の宣伝ポスターからも分かるように高級感がありましたね。驚くことに父親がカメラを持っていた!

 

     『何がジェーンに起こったか?』がアタマにあった

 

: フアンフェル・アンドレス監督によると、シナリオを書いているあいだ常に『何がジェーンに起こったか?』が念頭にあった。

: ロバート・アルドリッチの1962年製作の映画、ベティ・デイヴィスが妹、ジョーン・クロフォードが姉を演じた。その後多くの監督のみならず俳優たちにも影響を与えたクラシック名画。

: ロブ・ライナーの『ミザリー』も挙げていた。キャシー・ベイツにアカデミー主演女優賞をもたらした、怖い映画でした。

: こちらは1990年製作だし吹替え版もあるほどだから観てる人多いでしょう。この2作は「トガリネズミ」のヒントになります。それにカメラ、ホラー・スリラーですから、衝撃のラストは言えませんけど()。ジグソーパズルのように嵌めこんでみてください。

 

: ラテンビートの上映は、まだ大阪・横浜とありますからネタバレできない。シネアストのトークの全てを書いてしまうと分かってしまう。

: 本ブログは新作とか上映中のもの、特にスリラーのネタバレは避けている。何人か血は流れますが、誰とか凶器とかは書けません。ただ普通はモンスターは男性だがここでは逆転している。怖がるのは女でなく男です。

 

: 親が子供に与える虐待は、当時も実際に起こっていたことだと語っていました。

: これはフランコ体制に対するメタファーです。本作はホラーとしてはかなり政治的メッセージが濃厚で、強制された宗教教育の弊害も盛り込まれています。

 

     モンセの妹役は最初からナディアに決めていた

 

: この映画の成功はひとえにモンセ役のマカレナ・ゴメスの怪演につきます。『スガラムルディの魔女』でもマドリードの魔女を見事に演じました()

: 監督たちも「マカレナはホラー・ファンには絶大な人気があり、彼女は日常では見せない顔を出してくれると確信していた。その通りになった」と、彼女が引き受けてくれた幸運を喜んでいた。

: 真に迫った狂気の目が印象的です。

: 素顔のマカレナ・ゴメス(1978コルドバ)はとてもかわいい。ミュージシャンのアルド・コマスと結婚、マカレナは妊娠を公開したばかり。未公開ながらミゲル・マルティのコメディ・ホラー“SexyKiller, morirás por ella”(2008)が『セクシー・キラー』の邦題でDVD化されている(2010発売)。

 

: ブリュッセル・ファンタジー映画祭でペガサス観客賞を受賞、マカレナ自身もスペイン俳優組合賞にノミネートされた。

: アントニア・サン・フアンの監督第2作コメディ“Del lado del verano”(2012)では主役タナに起用された。サン・フアンはアルモドバルの『オール・アバウト・マイ・マザー』で女性に性転換したアグラード役で、観客に鮮烈な印象を残した女優。現在は女優と監督の二足の草鞋を履いている。

: 主役のセシリア・ロスやマリサ・パレデスを食ってしまった。

 

           (アツアツの夫アルド・コマスとのツーショット)

 

: モンセの妹役は最初からナディアに決めていた。ナディア・デ・サンティアゴは、1990年マドリード生れだから、10代の妹役はギリギリです。12歳のテレビ・デビューから数えると結構芸歴は長く本数も比例して多い。サンティアゴ・タベルネロの『色彩の中の人生』(ラテンビート2006)や『アラトリステ』(06)にも出演している。ゴヤ賞ノミネートの話題作だったエミリオ・マルティネス・ラサロの“Las 13 rosas”(07)やハビエル・レボジョの“La mujer sin piano”(09)にも。

: 初お目見えではないわけですね。 

                    (ナディア・で・サンティアゴ、映画のワンシーン)

 

: カルロス役にはウーゴ・シルバ以外に誰が考えられますか、というほどだから決まっていたのでしょう。父親ルイス・トサールはシッチェスには現れなかったから談話は取れなかったが、相変わらずのらりくらりのカメレオン俳優だ。

: 付録としてプロットを再録しましたが、果たして真実が語られているのかいないのか、劇場でお確かめ下さい。 

             (ルイス・トサール、映画のワンシーン)

 ≪付録

*監督紹介:二人はともに本作が長編デビュー作。マドリードの映画研究所のクラスメイトだった。彼らの短編0362011)は、Youtube 200万回のアクセスがあり数々の賞を受賞している。本作はデ・ラ・イグレシアがファンタジー、スリラー、ホラーと才能豊かな若い二人に資金援助をして製作された。エステバン・ロエルはテレビ俳優としても活躍しているようです。カロリーナ・バングはデ・ラ・イグレシアの異色ラブストーリー『気狂いピエロの決闘』(2010)に曲芸師として出演していた女優、プロデューサーの仕事は初めて。“036”に出演している。

 

*キャスト:マカレナ・ゴメス(モンセ)、ナディア・デ・サンティアゴ(モンセの妹)、ルイス・トサール(姉妹の父親)、ウーゴ・シルバ(隣人カルロス)、カロリーナ・バング(カルロスの婚約者)、グラシア・オラヨ(モンセの顧客)、シルビア・アロンソ(顧客の姪)、他

 

*プロット:広場恐怖症のモンセの物語。1950年代のマドリード、母親が出産したばかりの赤ん坊を残して死んでしまうと、臆病な父親は耐えきれなくなって蒸発してしまう。モンセは不吉なアパートから一歩も出られず、父と母と姉の3役を背負って青春を奪われたまま、義務感から洋服の仕立てをしながら赤ん坊を育てていた。苦しみから主の祈りとアベマリアの世界に逃げ込んで、今では一人の女性に成長した妹を通して現実と繋がっている。ある日のこと、この平穏の鎖が断ち切られる。上階の隣人カルロスが不運にも階段から落ち、唯一這いずってこられるモンセの家の戸口で助けを求めていた。誰かが特に無責任だが若い男がトガリネズミの巣に入ってしまうと、たいてい二度と出て行くことはできない。                                       (文責:管理人)

 

続 『スガラムルディの魔女』 *ラテンビート2014 ⑨2014年10月18日 12:18

★『スガラムルディの魔女』の第2弾を予告しておきながら、ラテンビートが終わったら気が抜けてしまいました。アレックス・デ・ラ・イグレシアが「バスク映画祭」に初来日したのが2001年ですから一昔前になります。今回は夏に再婚したばかりのカロリーナ・バングを伴っての再来日でした。Q&Aでは「この映画が二人に幸せをもたらしてくれた」と語っていましたが、出会いは御存じのように『気狂いピエロの決闘』(2010)で、先妻アマヤ・ディエスと離婚したのも同じ年でした(19972010)。ゴヤ賞2014の話題作で最初に公開されるのは本作と予想しましたが見事外れて、前作『刺さった男』と同日の1122日に公開されます。因みに1番目はマヌエル・マルティン・クエンカのロマンティック・ホラー『カニバル』でした。ムシャムシャ人肉を食べるカニバルを期待した観客には概ね不評でした。バックボーンに流れるカトリックの知識がないと良さが分からない難しい映画でした。 

                                                (スガラムルディの洞窟)

 

     少しトンマな男が作った悪賢い女性讃歌の映画です

 

: Q&Aというより監督の独演会でしたね。もっともトークショーになることは想定内でしたが、制限時間を超えて制止されても・・・

: まだ喋り足りないよ、という顔して残念そうに退場しました()

: 上映前のベスト作品賞のコケシ授与などで時間を取られ、映画も114分とコメディにしてはかなり長めでした。アルモドバルが言うように、コメディは90分、少なくても100分以内ね。

: そう、長すぎました。デ・ラ・イグレシア作品が初めての観客には展開が予測できなくてワクワクしますが、これは少し中だるみが気になりました。

: トークと同じで少し遊びすぎ。彼特有のドンチャン騒ぎも騒々しさもこうテンコ盛りだと、前に観たことあるよね、聞いたことあるよね、ということになる。

 

: 日本でも「お金と女は魔物」と言いますが、実体が分からないものは恐ろしくもあり妖しい魅力に富んでもいるということですね。悪賢い女たちに振り回されるトンマな男たちの映画ですと監督は解説していましたが。

: 特別オンナが悪賢くオトコが間抜けというわけではなく、男から見ると女の考えていることは不可解だということで、歴史上の極悪人は大体男に相場が決まっています。タイトル・ロールに流れる実在した魔女連の顔ぶれも、政治家のエリザベス一世鉄の女は別として、20世紀の魔女連の大方は愛すべき女性だったと思いますけど。

: 列挙できませんね、公開前ですから。

 

     スガラムルディは実在の魔女村です

 

: スガラムルディは、フランスと国境を接するナバラ自治州、サン・フェルミンの牛追いで有名なパンプローナから北西83キロの位置にあり、その先はフランスという、現在では人口220人の過疎の村です。監督は100キロと言ってましたが、それだとフランスに着いてしまう。「スガラムルディの魔女」は、バスクといわず多分スペインの魔術史のなかで最も有名なケースです。

: ロケはこのスガラムルディの洞窟で撮影されたとか、かなりの高さがありました。

: アケラーレAkelarre / Aquelarres)の洞窟、または魔女の洞窟とも言うらしく、トンネルの長さ約100m、幅20m、高さは30mということですからビルの10階ぐらいに相当する。アケラーレの意味はバスク語で「雄ヤギの牧草地」で行われる魔女の集会を指す。そしてスガラムルディは、読みかじりですが、「大木にならない楡の木が沢山生えている」場所という意味らしい。

: 魔女の集会というと黒い雄ヤギが描かれます。ゴヤの絵でも分かるように黒い雄ヤギは悪魔の代名詞です。 

         (「エル・アケラーレ」ゴヤ作、マドリードのラサロ・ガルディアノ美術館蔵)

 
: そのことからスガラムルディ村は、「悪魔の大聖堂」の渾名を頂戴しています。161011月にログローニョ(ラ・リオハの県都)で行われた異端審問の記録によると、スガラムルディの魔女であると告発された40名のうち12名が火あぶりの刑に処された。しかし既に死亡していた5名は画像が燃やされたのだという。これも信頼できる証言から得られた数字ではないと断っていますが。

: 監督が挙げた数字と違いますね。記憶が曖昧ですが、魔女4000人のうち39名が告発され、実際に火刑になったのはたったの4名だけだから大した人数ではないと。

 

: 17世紀初頭には何回か異端審問があったから年号が違うのかもしれない。いずれにしろ伝説ですから。814日から18日にかけてフィエスタ「聖母アスンシオン」が祝われ、多くの観光客が訪れるほか、洞窟自体も観光の目玉です。2007年、観光と文化プロモーションを兼ねた「魔女の博物館」が開館されて魔女の歴史が学べるそうです。名物料理はヒツジの焼肉、人肉は食べられません。村から56キロ離れたところにホテルやオスタルがあります。国際映画祭で有名なサンセバスチャンには、アケラーレ料理を出す有名レストランやホテルもありますから、ご興味のある方はどうぞ。

 

: 監督が面白かった日本映画は「ゴジラ映画」(第1作は1954年)と言ってましたが。どの時期のゴジラ・シリーズを見たのでしょうか。

: 双子の姉妹が出てくると言ってましたから、第4作『モスラ対ゴジラ』(1964)ではないかな。ザ・ピーナッツ(伊藤エミ&ユミ姉妹)が小美人に扮して歌った「モスラの歌」は大ヒットしたんでした。なんと半世紀前の映画ですね。あのサッカー王国でサッカーボールを一度も蹴ったことがないというコミック・オタクがアレックス少年でした。

 

     楽しそうだったカルメン・マウラの貫禄

 

: 魔女軍団のリーダーを演じたカルメン・マウラは本当に楽しそうでした。『みんなのしあわせ』や『マカロニ・ウエスタン800発の銃弾』のマウラが戻ってきたと思いました。

: 本作が上映された2013年のサンセバスチャン映画祭の「栄誉賞」受賞者です。アルモドバルの『ボルベール 帰郷』では不本意だったのか、もう彼の映画には出ないと公言しましたが、あの映画はマウラが久方ぶりにアルモドバル映画に戻ってくるはずでしたが、表面的にはペネロペ映画になってしまいました。映画の根っこにはマウラの夫殺しが隠れており、無責任な女たらしの男への復讐劇でしたから、主役でもあったのでした。

: でもデ・ラ・イグレシア映画には出たいと言ってました。彼女は『気狂いピエロの決闘』の製作段階では出演がアナウンスされていたのではありませんか。

: 結局出演しなかったが、いまさら詮索しても意味がありませんね。しかし、こんな憎たらしい人食い魔女をやっても育ちの良さが隠せない。認知が始まっているらしい母親テレレ・パベスとも息があって見ごたえがありました。パベスは本作でゴヤ賞助演女優賞受賞を手にしました

 

               (魔女軍団の統率者グラシアナ)

 

: やっとゴヤの胸像を抱きしめることができました。ゴヤ賞受賞者のなかでもパベスの登壇は一番のハイライトでした。

: ベテラン勢は俳優としてのピーク時にゴヤ賞が存在しなかったから、デビュー作で受賞する後輩たちを複雑な心境で眺めている。なかにはアカデミーとの不仲でゴヤ賞を無視する向きもありますけど。来日したカロリーナ・バングは1985年カナリア諸島サンタ・クルス・デ・テネリフェ生れの女優、製作者。ゴヤ賞は『気狂いピエロの決闘』で新人女優賞ノミネートだけ、TV出演も多く、ロベルト・ベリソラ監督のコメディ“Dos a la carta”(2014)が間もなくスペインで公開される。

 

: 『トガリネズミの巣穴』には出演もし共同製作者でもあったのに、上映後のQ&Aでは紹介されたが登壇しなかった。

: 主催者のミスじゃないですか。「この企画はカロリーナがもってきた」と新妻に花を持たせていたのにね。彼女に質問したい観客もいたのではと思います。<マドリードの魔女>になったマカレナ・ゴメスについては、『トガリネズミの巣穴』のQ&Aで触れます。

: カルロス・アレセスは直ぐ分かりましたが、サンチャゴ・セグラは・・・

: これからご覧になる方、お楽しみに。

 

: 本作の受賞者はパベス以外は制作サイドに集中、あまり紹介されることのないスタッフの一人が編集賞のパブロ・ブランコ**衣装デザイン賞のパコ・デルガード***の二人は折り紙つきの実力者。

: 昨年『ブランカニエベス』で受賞したから今年はないと予想した撮影賞のキコ・デ・ラ・リカ****もゴヤ賞常連さんになりつつある。前回も書きましたが「面白くなかったから御代を返して」ということにはならないでしょう。

 

助演女優賞受賞のテレレ・パベスTerele Pávezは、1939年ビルバオ生れ、監督と同郷だが育ったのはマドリード。デ・ラ・イグレシアがゴヤ監督賞を受賞した『ビースト、獣の日』にも出演。映画デビューが、ガルシア・ベルランガ19212010の“Novio a la vista(1953「一見、恋人」仮題)だから60年のキャリアの持ち主、出演映画は80数本に上る。デ・ラ・イグレシア映画の常連さんの他、彼女の最高傑作と言われているのが、マリオ・カムスの『無垢なる聖者』(“Los santos inocentes1984)のレグラ役です。残念ながらゴヤ賞はまだ始まっておりませんでした。他にヘラルド・ベラの『セレスティーナ』(1995)など、ゴヤ賞ノミネートはすべて助演女優賞、今回三度目ではなく「五目の正直」で宿願を果たしました。

 

     (ゴヤ胸像を手に涙、涙のテレレ・パベスとプレゼンターのハビエル・バルデム)

 

**編集賞受賞のパブロ・ブランコPablo Blancoは、デ・ラ・イグレシアのデビュー作『ハイル・ミュタンテ!電撃XX作戦』という邦題になった“Acción mutante”でゴヤ賞1993にノミネート、ビルバオ時代からの友人エンリケ・ウルビスの『悪人に平穏なし』(2011)で受賞した。それ以前にハイメ・チャバリの『カマロン』(2005、ラテンビート2006)、バジョ・ウジョアの“Airbag”(1997)でも受賞している。1981年デビューだから既に30年以上のキャリアがあり、多くが未公開作品なのが残念なくらい優れた作品が多い。短編を除外しても40作は超えるからベテランと言ってもいい。

 

***衣装デザイン賞受賞のパコ・デルガードFrancisco Delgado Lópezは、昨年のパブロ・ベルヘルの『ブランカニエベス』に続いて今年も受賞した。ゴヤ賞だけでなく「ヨーロッパ映画賞2013」にも受賞したニュースは(2013112)でご紹介しております。トム・フーパーのミュージカル映画『レ・ミゼラブル』(12)でオスカーにノミネートされたことで、海外でも認知度が高くなりました。デ・ラ・イグレシア作品参加は『みんなのしあわせ』(2000)から、引き続いて『マカロニ・ウエスタン800発の銃弾』(02)、『オックスフォード殺人事件』(08)、『気狂いピエロの決闘』(10)など。他にアルモドバルの『バッド・エデュケーション』(04)と『私が、生きる肌』(11)、アレハンドロ・G・イニャリトゥの『ビューティフル』(10)など、手掛けた多くが劇場公開されている。 

             (アン・ハサウェイとデルガード、アカデミー賞2013年授賞式にて)

 

****連続受賞を逃した撮影監督キコ・デ・ラ・リカKiko de la Ricaは、1965年ビルバオ生れ、デ・ラ・イグレシア監督と同年生れの同郷です。最初にタッグを組んだのが『みんなのしあわせ』、この頃からメキメキ実力をつけ大作を手掛けるようになりました。『オックスフォード殺人事件』、『気狂いピエロの決闘』、『刺さった男』(11)、他にフリオ・メデムの『ルシアとセックス』(01)、未公開だがフェリックス・サブロソ&ドゥーニャ・アジャソの『チル・アウト!』(03DVD発売08)など。2013年にパブロ・ベルヘルの『ブランカニエベス』で受賞した。パブロ・ベルヘルの第1作“Torremolinos 73”(03)以来の信頼関係にあるようです。バスク出身監督の作品を多く手掛けている。

 

アレックス・デ・ラ・イグレシア『スガラムルディの魔女』*ラテンビート2014 ⑧2014年10月12日 13:04

★トロント国際映画祭2013年「Midnight Madness部門」のピープルズ・チョイスの次点に選ばれた記事以来、ゴヤ賞2014ノミネーション予想記事&結果(113日・15日、213)、第1回イベロアメリカ・プラチナ賞ノミネーションと何回となく登場させました。劇場公開日時も決定、公式サイトもアップされたので割愛しようと考えていましたが、データ中心に纏めたくなりました。というのも鑑賞後「面白くなかったからチケット代返して!」と要求する観客はいないでしょうから。長編第11作目、ほぼ全作が公開かDVD化されるという人気監督、今回「アレックス・デ・ラ・イグレシア特集」が組まれ、結婚したばかりのカロリーナ・バング(エバ役)とハネムーンも兼ねて再来日した。 


   スガラムルディの魔女 Las brujas de ZugarramurdiWitching and Bitching

 

製作Enrique Cerezo Producciones Cinematográficas S.A. /

La Fermel Production, arte France Cinéma

監督:アレックス・デ・ラ・イグレシア

脚本:ホルヘ・ゲリカエチェバリア、アレックス・デ・ラ・イグレシア

撮影:キコ・デ・ラ・リカ

編集:パブロ・ブランコ

美術:アルトゥロ・ガルシア、ホセ・ルイス・アリサバラガ

音楽:ジョアン・バレント

音響:ニコラス・デ・ポウルピケ 他

衣装デザイン:フランシスコ・デルガド・ロペス

メイクアップ・ヘアー:マリア・ドロレス・ゴメス・カストロ 他

特殊効果:フアン・ラモン・モリナ、フェラン・ピケ

プロダクション・ディレクター:カルロス・ベルナセス

製作者:エンリケ・セレソ、ベラネ・フレディアニ、フランク・リビエレ

 

データ:スペイン=フランス、スペイン語、2013、コメディ・ホラー、112分、映倫区分R15+

サンセバスチャン映画祭2013のコンペ外で上映(922日)後、スペイン公開927日。

 

キャスト:ウーゴ・シルバ(強盗ホセ・フェルナンデス・クエスタ)、マリオ・カサス(強盗トニー/アントニオ)、ハイメ・オルドーニェス(タクシー運転手マヌエル・サンチェス・ガルシア)、カルメン・マウラ(人食い魔女リーダー/グラシアナ)、テレレ・パベス(グラシアナ母マリチェ)、カロリーナ・バング(グラシアナ娘エバ)、カルロス・アレセス(魔女コンチ)、サンティアゴ・セグラ(魔女ミレン)、セクン・デ・ラ・ロサ(警部ハイメ・パチェコ)、ペポン・ニエト(警部アルフォンソ・カルボ)、マカレナ・ゴメス(ホセの元妻シルビア)、ガブリエル・デルガド(ホセとシルビアの息子セルヒオ)、ハビエル・ボテ(ルイス・ミゲル/ルイスミ)、マリア・バランコ(魔女アンシアナ)、アレクサンドラ・ヒメネス(トニーの恋人ソニア)他

 


受賞歴ゴヤ賞2014、:10部門ノミネート(助演女優賞・オリジナル作曲賞・撮影賞・編集賞・美術賞・プロダクション・ディレクター賞・衣装デザイン賞・メイクアップ・ヘアー賞・音響賞・特殊効果賞)され、オリジナル作曲賞・撮影賞を除いて8部門で受賞した。

◎寸評:過去には『みんなのしあわせ』(2000)や『気狂いピエロの決闘』(2010)などが主要な作品賞に絡んだ年もありましたが、本作は素通りしました。ゴヤ賞受賞の記事にも書いたことだが、10個のなかに監督賞・作品賞が含まれていない。10個もノミネートしながら指揮官たる船長が無視されるなんておかしい。彼自身のゴヤ賞は、『ビースト、獣の日』(1995)一作だけと聞いたら「まさかぁ」とビックリする人が多いのではないか。

 

ブリュッセル・ファンタジー映画祭2014:金のワタリガラス賞・ペガサス観客賞受賞

シネマ・ライターズ・サークル賞(西)2014:助演女優賞受賞テレレ・パベス

ファンタスポルト2014:観客審査員賞・特殊効果賞受賞

フェロス賞(西)2014:助演男優賞マリオ・カサス・助演女優賞受賞テレレ・パベス

フォトグラマ・デ・プラタ賞2014:フォトグラマ・デ・プラタ賞受賞

◎他ノミネートは、多数で書ききれないから省略。

 

プロット:妻と別れたホセは、最愛の息子セルヒオにパリのデズニーランドに連れて行くと約束していた。女たらしのトニーは、女に惚れやすくその趣向の幅も広いのだ。二人の共通項と言えば、昨今のスペインじゃ珍しくもなくなった失業者。手っ取り早く経済的問題を解決するには何をしたらいい? それは貴金属店を襲うに決まってるでしょ。まんまと強盗に成功したにわか作りの強盗団、タクシーに飛び乗って一路フランスへ高跳びしようと一目散。ところが道に迷った一行を待ちうけていたのは、ナバラの小村スガラムルディの親子三代にわたる由緒ある魔女軍団、はたして軍杯はどちらの手に。                                                    (文責管理人)

 

                                    (母子三代の魔女軍団)

 

             (左から、テレレ・パベス、カルメン・マウラ、カロリーナ・バング)

 

★デ・ラ・イグレシア作品にお馴染みの面々が登場、大物サンティアゴ・セグラ、アルモドバル作品にはもう出ないがアレックスのには出ると発言していたカルメン・マウラ、『気狂いピエロの決闘』の泣きピエロ役だったカルロス・アレセス、半世紀以上にわたる女優人生を歩むテレレ・パベスの怪演も見物です。シリーズ『REC』のニーニャ・メデイロス役の大当たりから『気狂いピエロの決闘』や『刺さった男』に起用されたハビエル・ボテ、『トガリネズミの巣穴』のマカレナ・ゴメス。かてて加えてマリア・ブランコ、ペポン・ニエト・・・など。

 

★そして、デ・ラ・イグレシア学校の新入生が主役を演じたウーゴ・シルバマリオ・カサスのイケメン二人、これで「お茶の間OB」になれたでしょうか。もう一人の新入生が子役のガブリエル・デルガド、子供は親を選べません。悪い星の下に生れると魔女の生贄にされかねません。

 

                         (左から、ウーゴ・シルバ、マリオ・カサス)

 

★デビュー作『ハイルミュタンテ!』(1993)に出てくる粉屋の主人のセリフ「40年間、好きで粉屋の社長をやってたわけじゃない」に大笑いしてから20年、貴金属店強盗たちのコスプレ(キリストと兵士)を見れば、監督が一貫して拘ってきたテーマが見えてきます。大袈裟なドンチャン騒ぎ、これでもかと言わんばかりの型にハマった特殊効果など、すでに見たり聞いたりしたことがあるような感じを受けるかもしれませんが、そんな不満はゼイタクというものです。

 

                                    (キリストと兵士)

 

★監督、主役女優の来日で急遽アップしましたが、第2弾として本日予定されている上映後のQ&Aを交えて感想を追加いたします。

 

「レック4」 がトロント映画祭2014にノミネーション2014年08月13日 15:27

トロント国際映画祭2014*ノミネーション

★秋の映画祭の季節がめぐってきました。今年のトロント映画祭は94日から14日まで。開催日が近いサンセバスティアン映画祭(919日~27日)とノミネーションが重なりますが、今年もフランソワ・オゾン(仏)のThe New Girlfriendやクリスチャン・ペツォルト(独)のPhoerixなどがダブっています。スペイン語映画に絞って列記いたしますと:

 

★ミッドナイト・マッドネス部門 Midnight Madness

“[REC] 4: Apocalypse” 「レック4 アポカリプス」西 ワールド・プレミア 2014 ホラー
製作:フリオ・フェルナンデス、カルロス・フェルナンデス

監督・脚本:ジャウマ・バラゲロ 助監督:フェルナンド・イスキエルド

脚本:マヌ・ディアス

撮影:パブロ・ロッソ

キャスト:マヌエラ・ベラスコ(アンヘラ・ビダル)、パコ・マンサネド(グスマン)、エクトル・コロメー(リカルテ医師)、イスマエルIsmael Fritschi(ニック)、クリスプロ・カベサス(ルーカス)、パコ・オブレゴン(ジナルド医師)、マリア・アルフォンサ・ロッソ(老婦人)

 

ストーリー:TVレポーターのアンヘラ・ビダルは、汚染されたビルから兵士たちによって救出され検査のためオイル・タンカーに隔離される。しかし彼らはアンヘラが未知の伝染性の種を運んできたことに気づいていない。 


○パコ・プラサが監督した「レック3」は、前2作と同じレック・シリーズでも独立していましたが、第4作はバラゲロ監督に戻り、ストーリーでも分かるように「レック」「レック2」に繋がっています。完成予定は2013年でしたが、同年7月にクランクイン、7週間かけてバルセロナ、カナリア諸島、スタジオで撮影した。本作では赤と青が、つまり血と海がたっぷり目にできると監督が請け合っています。また「レック2」の最後に突然現れたニーニャ・メデイロスのような驚きもたくさん用意しているそうです。受賞に関係なく日本公開も間違いなしです。

 

★バンガードVanguard 部門

Shrew’s NestMusarañas”西 ワールド・プレミア 2014 スリラー・ホラー 95

エグゼクティブ・プロデューサー:アレックス・デ・ラ・イグレシア、カロリーナ・バング他

監督・脚本:フアン・フェルナンド・アンドレス、エステバン・ロエル(共に長編第1作)

音楽:ジョアン・バレント  

撮影:アンヘル・アモロス
製作:Pokeepsie Films

キャスト:マカレナ・ゴメス(モンセ)、ナディア・デ・サンティアゴ(モンセの妹)、ルイス・トサール(姉妹の父親)、ウーゴ・シルバ(隣人カルロス)、カロリーナ・バング(カルロスの婚約者)、グラシア・オラヨ(モンセの顧客)、シルビア・アロンソ、他

 

       (左から2人目、デ・ラ・イグレシア、シルバ、ナディア、マカレナ、ロエル、
      フアンフェル、カロリーナ)

ストーリー:1950年代のマドリード、母親が赤ん坊を残して死んでしまうと、臆病な父親は耐えられなくなって蒸発してしまう。広場恐怖症のモンセは家から外に出られず、ただ姉としての義務感から不吉なアパートの中に閉じこもって赤ん坊を育てることになる。苦しみから主の祈りとアベマリアの世界に逃げ込んで、今では既に成長した妹を通してだけ現実と繋がっている。ある日のこと、この平穏が断ち切られる。若くて無責任な隣人カルロスが不運にも階段から落ち、唯一這いずってこられるモンセの家の戸口で助けを求めていた。誰かがトガリネズミの巣に入ってしまうと、たいてい二度と出て行かれない。

 

 

        (左から、エステバン・ロエル、フアンフェル・アンドレス)

○両監督とも本作が長編デビュー作となる。二人はマドリードの映画研究所のクラスの受講生だった。彼らの短編
0362011)は、Youtube 200万回のアクセスがあり数々の賞を受賞した。本作はデ・ラ・イグレシアがファンタジー、スリラー、ホラーと才能豊かな若い二人に資金援助をして製作された。エステバン・ロエルはテレビ俳優としても活躍しているようです。カロリーナ・バングはデ・ラ・イグレシアの異色ラブストーリー『気狂いピエロの決闘』(2010)に曲芸師として出演していた女優、プロデューサーの仕事は初めて。036に出演している。何かの賞に絡みそうですが、蓋を開けてみないことには分からない。

 

スペシャル・プレゼンテーションSpecial Presentations部門

Learning to drive” 米国 英語 2014 ワールド・プレミア

監督:イサベル・コイシェ

脚本・原作:サラ・ケルノチャン

撮影:マネル・ルイス

キャストパトリシア・クラークソン(ウェンディ)、ベン・キングズレー(ダルワーン)、グレイス・ガマー(娘ターシャ)、ジェイク・ウェバー(夫テッド)



ストーリー
:ウェンディはマンハッタンで活躍する批評家で、最近結婚生活が破綻してしまった。常に夫の車に頼っていたが、これからは自分で運転しなければならない。教習所の教官ダルワーンはシーク教徒で彼自身の結婚もダメになっていた。やがて二人の人生が交差し、予期しないかたちで転機が訪れる。大人のラブロマンス。

 

9-11以後、ニューヨークを舞台に映画を撮るのが夢だったという監督は、これで夢を叶えました。立て続けに新作を発表していますが、本作では教習所教官ダルワーンをシーク教徒のインド系アメリカ人に設定しているところから、アメリカの人種差別問題にも踏み込んでいるのでしょうか。英語映画で本ブログの対象ではありませんが、コイシェの近況報告ということでアップいたしました。 

 
                         (イサベル・コイシェ)

○コイシェのMi otro yoをアップした折り、次回作は、『エレジー』に出演したベン・キングズレーとパトリシア・クラークソンとがタッグを組んだLearning to driveで、ニューヨークでの撮影も昨年終了しましたと書きましたが、早くもトロントにエントリー、英語だと本当に早いです。アメリカ公開も10月に決定しています。テレビでの仕事が多いグレイス・ガマーの母親はメリル・ストリープです。いずれコイシェの映画に出演するのでしょうか。

 

○サラ・ケルノチャンの同名エッセイの映画化。前回の繰り返しになりますが、ケルノチャンはロバート・ゼメキスが監督した『ホワット・ライズ・ビニース』(2000)の原作者、ハリソン・フォードとミシェル・ファイファーが主演したサスペンス・スリラーでした。テレビ放映もありましたね。

 

『使途』 El apóstol フェルナンド・コルティソ2013年12月27日 11:02

使徒El apóstol フェルナンド・コルティソ

★セルバンテス文化センターで10月から始まった「土曜映画上映会ガリシア特集」の最終回が1220日にありました。原題はガリシア語でO Apóstolo2012The Apostle)というアニメーション。映画上映後のシネフォーラムも含めて、スペイン初となるストップ・モーションで撮られた「大人のためのアニメーション」、この極めてユニークなラテックス人形劇を楽しんでまいりました。

 


監督・脚本:フェルナンド・コルティソ(Fernando Cortizo Rodríguez

製作国:スペイン

製作:アルテファクト・プロダクション他  エグゼクティブ・プロデューサー:イサベラ・レイ他

撮影:マシュー・センレイチ

音楽:フィリップ・グラス他

 

キャスト(ボイス):カルロス・ブランコ(ラモン)、ホセ・マヌエル・オリベイラ≪ピコ≫(ドン・セサレオ司祭)、ポール・ナッシー(首席司祭)、ホルヘ・サンス(パブロ)、セルソ・ブガーリョ(セルソ)、ジュラルディン・チャップリン(ドリンダ)、ルイス・トサール(シャビエル)、マヌエル・マンキーニャ(アティラノ)、イサベラ・ブランコ(巡礼者イサベル)、ハコボ・レイ(医師)他

データ:言語スペイン語・ガリシア語 2012年 80分 201210月スペイン公開

 

受賞・ノミネート歴:ファンタスポルト国際映画祭2013最優秀作品賞、アヌシー国際アニメ映画祭2013観客賞、アルゼンチンExpotoors 映画祭グランプリ受賞

マラガ映画祭2012、シッチェス・カタロニア国際映画祭2012、モスクワ国際映画祭2012、ザグレブ国際アニメ映画祭2013ワールド・パノラマ部門出品、他

ゴヤ賞2013長編アニメ部門、スペイン映画脚本家サークルのベスト・アニメ賞ノミネート他

ファンタスポルトFFはポルトガルのポルト市で開催され、シッチェスFFと共に世界三大ファンタジー映画祭の一つと言われています)

 

プロット:脱獄に成功したラモンは、かつてサンチャゴ巡礼路沿いの村に隠しておいた盗品を取り戻すべく脱獄仲間のシャビエルに別れを告げる。たちこめた霧に迷うなか出会った老人に不気味な村に導かれていく。そこでラモンが出会った世界は牢獄よりも恐怖に満ちたものだった。果たしてラモンは無事帰還できるのでしょうか。サンタ・コンパーニャ、深い霧、サンチャゴ巡礼路、今では知る人の少なくなったガリシア伝説を掘り起こしたガリシア発のダーク・ファンタジー。(文責:管理人)

 


★まず『使徒』のユニークさは、ストップ・モーション(コマ撮り)で撮られたステレオスコープとしてはスペイン初の長編アニメーション映画という点です。フェルナンド・コルティソ監督は1973年サンチャゴ・デ・コンポステラ生れ、2007年にガリシア語でLeoという短編アニメ(12分)をストップ・モーションで撮っている。第2作がO coidador de gatos200914分)、第3作目が本作になる。撮影は20089月から20105月まで、トータルでは約5年近くかかっている。ラテックスを素材にした人形アニメである。ラテックスというのはゴムの木のような木材から抽出した乳白色の樹液のことで、粘土のように時間が経つと乾燥して崩れてしまうことがない。チューインガムを想像して欲しい。映画会トークでも粘土の「クレイメーション」と思っていた方が多かったようだ。スペインの春四月に開催されるマラガ映画祭に、俳優たちが演技する映画に混じって本作のような立体映像のアニメが選ばれるのも珍しいことで、「大人も楽しめるアニメーション」というキャッチコピーは誇大広告ではなかった。

 

★まず2週間ほどかけて各俳優たちに自由に自分の役を演じてもらうことから始めた。演劇の舞台稽古のようにやってもらい、アニメーターに俳優の動きの特徴を掴んでもらった。冒頭に登場する二人の脱獄者のように俳優を知っていると、あまりによく似ているのでビックリする。こんなに似ていては海外で吹替え版にしたとき困るのではないかと思ってしまう。

 

★『ジュラシックパーク』以降、映画界はCGに移行しつつあり、本作のような手作り人形は衰退の傾向にある。そういう逆風が吹く中で敢えてテマヒマかかるフィギュアに挑戦したのは、映画に対する大いなる愛がなければできないことでしょう。「極めて小さな独立系のプロダクションのメリットを活かしたとも言えますが、危険な賭けをするようなものでした」と監督も語っています。約30センチぐらいの人形を動かしながら、1秒間に24枚写真を撮ったそうです。1日で撮れるのが平均して30秒から50秒分という全く気の遠くなるような話です。撮影監督マシュー・センレイチMatthew Hazelrig)は勿論のこと、スタッフの執念を感じます。彼は、セス・グリーンのストップ・モーション・アニメ『ロボットチキン/スター・ウォーズ』(2007『スター・ウォーズ』のパロディ化)や、ヘンリー・セレックのファンタジー・アニメ『コララインとボタンの魔法』(2010)などに照明技術者として参加しています。

 

★チェコのヤン・シュヴァンクマイエル=エヴァ・シュヴァンクマイエロヴァー夫妻のようにCGを拒否している監督も勿論健在です。チェコの民話に出てくる恐ろしいオテサーネクOtesanekを題材にした『オテサーネク、妄想の子ども』2000)に出てくる人形は木の枝。これは枝探しから始めるわけで、こちらも気の遠くなるような話です。エドガー・アラン・ポーやマルキ・ド・サドの人物像、作品世界をモチーフにして恐怖に満ちています。2005年に死去したエヴァとの共同作品Lunacy(ルナシー)が合作としては最後になった。

 

★モスクワ国際映画祭2012で『使徒』を見たティム・バートンが「まさにゴシック」と評したように、大聖堂に代表されるようなガリシアの風土が醸しだす神秘さに溢れています。モスクワのような国際的な映画祭にエントリーされたことだけでも快挙なのに、大先輩バートンに見てもらえたことを監督は素直に喜んでいます。しかし自身は「ゴシック美術的の批評はとても嬉しいが、これは私の様式です。地方に暮らす人々がもっている閉所恐怖症的な、凝りすぎた雰囲気が好きなんです」と語っています。バートン流burtoniana の夢のような雰囲気のなかで進行していきますが、それとは少し異質な印象を受けました。

 


★キイワードの一つに≪サンタ・コンパーニャ≫が挙げられます。この伝説は1031日の12時から翌日にかけて行われるハローウィンに繋がるもので、いわゆる「死者の行列」です。地域によって呼び名が異なり、ガリシアではサンタ・コンパーニャ、アストゥリアス地方、サモラ、レオン、サラマンカではHuéspedaと呼ばれています。写真でも分かるように、十字架をもった骸骨の主導者の後に白い頭巾を被った白装束の煉獄からやってきた魂が蝋燭を手にして2列になって従っている。地域によって違うようですが、普通は裸足でスダリオという死者に被せる布にくるまっている。ロザリオの祈りを唱えながらやってくると、犬も猫も怖れおののいて逃げ出してしまうというもの。ガリシア名物の深い霧が白装束のイメージに繋がっているのかもしれません。

 

★監督は、ある特別な意味を込めて取り入れたようで、それは監督が「魔法使が住むお城を舞台にするより既に忘れられてしまったようなガリシアの伝説を語りたいと思った。サンタ・コンパーニャにはモンスターは現れず、善人と悪人が絡み合っています。完全な善や完全な悪というのは存在しない、人間とはそういうものですから」と語っていることからも頷けます。

 

(写真:左からトサール、監督、ブランコ、サンス)

★前述したように本作では、以前に実際に扮する役者の動きをコピーして取り入れています。写真でも分かるようにシャビエルはルイス・トサールの、同じく主人公ラモンはカルロス・ブランコのそっくりさんです。ホルヘ・サンスが手にしているのはドリンダ(ジュラルディン・チャップリン)とドン・セサレオ司祭(ホセ・マヌエル・オリベイラ≪ピコ≫)です。監督のは耳が大きすぎるようだが多分セルソ(セルソ・ブガーリョ)と思う。アメナーバルの『海を飛ぶ夢』でバルデム扮するラモン・サンペドロの兄さんに扮した役者。日本でも比較的劇場公開になった映画に出演しているホルヘ・サンス(マドリード生れ)やジュラルディン以外はガリシア出身が多い。

 

カルロス・ブランコCarlos Blanco Vila)は、1959年ガリシアのポンテベドラ生れ、俳優・監督・脚本家、舞台出演、ガリシア・テレビTVGのウイットに富んだ人気司会者。ヘラルド・エレーロのHeroína2005)やUna mujer invisible2007)が代表作、公開作品ではアルモドバルの『ボルベール』(2006)に出ている。コルティソの短編デビュー作Leoにも声優として出演。本作でも独特の太い眉が上下に動いて可笑しいやら感心するやらでした。

 

ホセ・マヌエル・オリベイラ≪ピコ≫Xosé Manuel Olveira ‘Pico’)は、1955年ラ・コルーニャのムロス生れ、ガリシアを舞台にしたホセ・ルイス・クエルダの『蝶の舌』や『海を飛ぶ夢』、今年公開されたホルヘ・コイラの『朝食、昼食、そして夕食』では、移動音楽団を主宰し歌手のオーデションをしている最中に心臓発作を起こして亡くなってしまう役を演じていた。大きな鼻が特徴的で、本作でも鼻をピクピクさせて主人公ラモンを恐ろしがらせていた。カルロス・ブランコ同様Leoに出演。


 

(写真:ポール・ナッシー)

ポール・ナッシーPaul Naschy)の本名はハシント・モリーナ・アルバレス。俳優・脚本家・監督・製作者、1934年マドリード生れ、20091130日に前立腺ガンのため本作完成を見ることなく死去してしまった。俳優以外は本名を名乗り、狼男シリーズ、ドラキュラ伯爵などスパニッシュ・ホラー映画のキングとして活躍、シッチェス映画祭の常連だった。「ポール・ナッシーのいないシッチェスなんて」と、ホラー・ファンはその死を悼んだ。日本でもDVDがボックスになっているほどファンが多い。首席司祭の造形はナッシーだが、時間的に不可能だからボイスは他の声優と思われます(未確認)。これは余談ですが、彼の泌尿器科医に前立腺ガンの生体検査を行わなかったとして、43.682ユーロの罰金が科された。主治医からは「本人が検査を拒絶した」と家族に説明があった由、もう藪の中ですね。サンタ・コンパーニャ行列の先頭にたって旅立ってしまいました。

 

★ルイス・トサール、ホルヘ・サンス、ジュラルディンの御紹介は割愛、主役を演じた別作品にいたします。最もその必要もないほどメジャー入りしてますが。

 

★ゴヤ賞はノミネートだけに終わりました。パイオニアとして貰う価値があったと思いますが、2013年はライバルがエンリケ・ガトの『タデオ・ジョーンズの冒険』と運も悪かった。シャビエル役のルイス・トサルに言わせると、「スペインより海外のほうが評価が高い」そうです。2014年アカデミー賞のアニメ部門19作品にエントリーされていますが、5作品に残るのは難しそう。選ばれるには年内に最低でも1週間以上の公開が条件、まだそれすら満たしておりません。アメリカでは9月のオースティン・ファンタジック映画祭上映だけですからもう無理でしょう。物語の背景には、サンタ・コンパーニャ、霧、サンチャゴ巡礼など極めてガリシア的なローカルな物語ですが、同時にユニバーサルでもありますね。