マラガ映画祭2019受賞作品*落穂ひろい ⑯ ― 2019年04月18日 10:48
元気だったコメディ映画とマラゲーニョスが活躍したマラガ映画祭

★例年ならアルゼンチン映画が何かに絡むのに、今年は盛り上がらなかった。なかでスペインとの合作コメディ、セビーリャ出身のサンティ・アモデオのコメディ「Yo, mi mujer y mi mujer muerta」の主役を演じたオスカル・マルティネスがひとり気を吐いた。ブエノスアイレス大学の建築学教授を演じて銀のビスナガ主演男優賞を受賞した。『人生スイッチ』や『笑う故郷』で本邦でもお馴染みになったベテランです。プレゼンターはアルフォンソ・コルテス=カバニリャスのアクション・ドラマ「Sordo」に共演のイマノル・アリアスとウーゴ・シルバでした。本作もセクション・オフィシアルにノミネートされていた作品でしたが、こちらは無冠でした。

(中央が受賞者オスカル・マルティネス)
★観客賞は、老いてますます元気なフェルナンド・コロモ(マドリード1946)のコメディ「Antes de la quema」、主役はマラゲーニョのサルバ・レイナがトロフィーを受け取りました。そのほか2人受賞だった銀のビスナガ助演女優賞にこれまたマラガ生れのマギー・シバントスが受賞しました。プレゼンターのマカレナ・ゴメスからトロフィーを受け取りました。もう一人の受賞者は、コロンビアのルベン・メンドサの「Niña errante」出演のカロリナ・ラミレスでした。

(サルバ・レイナとフェルナンド・コロモ監督、フォトコールで)

(受賞スピーチをする、サルバ・レイナ)

(マカレナ・ゴメスからトロフィーを受け取るマギー・シバントス)
★銀のビスナガ助演男優賞はダニエル・デ・ラ・オルデンの「Litus」出演のキム・グティエレスと、前回アップしたハリ・サマの「Esto no es Berlin」のマウロ・サンチェス・ナバロが分け合いました。

(受賞スピーチするキム・グティエレス)
*セクション・オフィシアルのドキュメンタリー部門*
◎銀のビスナガ作品賞(副賞8000ユーロ)
「Terra franca」監督レオノル・テレス
◎銀のビスナガ監督賞
フェリペ・モンロイ「Los fantasmas del Caribe」
◎審査員特別メンション
「Titix」監督タニア・エルナンデス・べラスコ
◎観客賞
「Baracoa」監督パブロ・ブリオネス
★ソナチネ部門以下、短編、アニメーションの受賞者名は割愛します。オープニングもクロージングもダニ・ロビラ主演のコメディでした。
★セクション・オフィシアル部門ノミネーションのなかで、ホタ・リナレスの「¿ A quién te llevarías a una isla desierta ?」が、『無人島につれていくなら誰にする?』という邦題で、既にNetflix で配信が始まっています。TVシリーズ『ペーパー・ハウス』のハイメ・ロレンテ、ほかエステバン・クレスポの『禁じられた二人』のポル・モネンとマリア・ペドラサのコンビ、アンドレア・ロスの若手4人が出演している。


(表面的には和気あいあいだが、それぞれ抱える重大な秘密が明かされていく)
審査員特別賞受賞作品「Esto no es Berlín」*マラガ映画祭2019 ⑮ ― 2019年04月17日 11:49
「Esto no es Berlín」は監督の半自伝的な作品

★イベロアメリカ金のビスナガに続いて審査員特別賞もメキシコのシネアスト、ハリ・サマの「Esto no es Berlín」が受賞しました。ほかに批評家審査員特別賞、アルフレッド・アルタミラノのデラックス銀のビスナガ撮影賞、マウロ・サンチェス・ナバロの銀のビスナガ助演男優賞と4冠に輝きました。本映画祭でメキシコがこんなに評価された記憶はなく、そもそもノミネーション自体がありませんでした。舞台設定が80年代と「Las niñas bien」とほぼ同じですが、所属している社会階級が異なれば、見えてくる世界も全く別の姿を現すというわけです。映画祭には監督の分身カルロスを演じたハビアニ・ポンセ・デ・レオンと本作には出演のなかった俳優ダニエル・ビジャルと3人で出席した。

(左から、ダニエル・ビジャル、サマ監督、ハビアニ・ポンセ・デ・レオン、マラガ映画祭にて)
★ハリ・サマHari Sama(本名Carlos)、1967年メキシコシティ生れ。監督、脚本家、製作者、ミュージシャン。Hariは通称、デビュー作「Sin ton ni Sonia」のクレジットはカルロス・サマ、以降本名と通称を混在させている。メキシコシティの中流階級が多く住んでいるロマス・ベルデスの出身。映画養成センター(CCC)の映画科卒、メキシコシティの音楽研究スタジオセンター(CIEM)で作曲法を学んだ。若いときから映画と音楽に多くの情熱を注いでいる。彼の映画には痛みと居場所探し、衝動的な闇と光が混在している。作品の多くが自伝的な要素をもち、登場人物の造形には彼自身が投影されている。茶道や禅に魅せられており、ドキュメンタリー「Sunka Raku」を撮っている。グアダラハラやモレリアなどの国内映画祭のほか、サンセバスチャン、上海、ビアリッツ・ラテンアメリカ、各映画祭に出品、受賞している。フィルモグラフィーは後述。


「Esto no es Berlín」(「This Is Not Berlin」)
製作:Catatonia Cine 共同La Palma de Oro Films
監督・脚本・編集・プロデューサー:ハリ・サマ
脚本:ロドリゴ・オルドニェス、マックス・スニノ
音楽:Joy Division、Roxy Music、Devo他多数
撮影:アルフレッド・アルタミラノ(撮影賞受賞)
編集:ロドリゴ・リオス、ヒメナ・クエバス
美術:ディアナ・キロス
衣装デザイン:ガブリエラ・フェルナンデス
メイクアップ:カリナ・ロドリゲス
プロデューサー:アレ・ガルシア、アントニオ・ウルダピジェタ、ベロニカ・バラデス
データ:メキシコ、スペイン語、2019年、ドラマ、105分、公開スペイン6月予定
映画祭・受賞歴:第16回モレリア映画祭2018のインプルソ・モレリア Cinépolis Distribución賞特別メンションを受賞。サンダンス映画祭2019「ワールド・シネマ」ドラマ部門(1月25日)、マラガ映画祭正式出品(3月16日)審査員特別賞・批評家審査員特別賞・撮影賞・助演男優賞受賞、トライベッカ映画祭(4月28日予定)、マイアミ映画祭イベロアメリカ部門、モレリア映画祭もアナウンスされている。
キャスト:ハビアニ・ポンセ・デ・レオン(カルロス)、ホセ・アントニオ・トレダノ(親友ヘラ)、ヒメナ・ロモ(ヘラの姉リタ)、マウロ・サンチェス・ナバロ(ニコ)、クラウディア・ガルシア(マウド)、アメリコ・ホランダーHollander(ティト)、アリ・サマ(エステバン)、マリナ・デ・タビラ(カルロスの母カロリナ)、フアン・カルロス・レモリナ(エミリオ)、ルミ・カバソス(スサナ)、フェルナンド・アルバレス・レベイルRebeil、他多数
ストーリー:1986年メキシコシティ、居場所の見つからない17歳の高校生カルロスの物語。うつ状態の母親、いつも不在の父親、退屈な友達、しかし有名なナイトクラブ<El Azteca>に足を踏み入れたことで世界が一変する。夜のアンダーグラウンドでは、ポストパンク、奔放なセックス、ドラッグが充満していた。親友ヘラ、パンクロックのヘラの姉リタへのプラトニックな愛、アートへのパッションなど、奥深いヒューマニズムと実存的なドラマが語られる。監督が辿った人生の一部がノスタルジックに語られる自伝的な要素を含んでいる。映画は眠り込んだ現代社会を目覚めさせるために激しく反逆的だった時代に観客を運んでいくだろう。 (文責:管理人)

(退屈な高校生活をおくっていた頃のカルロス、ハビアニ・ポンセ・デ・レオン)

(アートで生きる道を発見したカルロス)

(カルロスの親友ヘラ、ホセ・アントニオ・トレダノ)
★プレス会見のQ&Aでは「この映画はとても個人的な難解な映画で製作が難しかった。現代のスペインで評価してもらえてとても嬉しい」と監督。自分はとても保守的な環境で育ち、鬱ぎみの母親と父親はいつも不在の家庭でした。本質的な痛みを昇華させる方法をアートに求めた狂気の面白い人々と知り合うことで、私の人生は変わりました。つまりアートで生きる道があることを発見したのです。タトゥー、イヤリング、髪を染めること、同性愛が許される世界でした。自身はゲイでドラッグを常習していました。友人の多くが死んで、親友も90年代の初めにエイズで亡くなりました。この映画には当時の自分が投影されています。80年代のメキシコの若者の憧れの地は、ベルリン、ロンドンなどのヨーロッパ、メキシコの現実を考えないですむ美学や言語がとても必要だったのです。そこからタイトルが付けられました。

(自伝的作品と語るサマ監督、マラガ映画祭プレス会見、3月16日)
★大体こんな内容でした。本作にはトレードマークの帽子を脱いで鬘を被って登場します。主役の青年に自分のクリスチャン・ネームを付けたことからも分かるように、主人公は当時の監督の等身大かと想像します。脚本にロドリゴ・オルドニェスの助けを借り客観性をもたせようとしたのも、自身を語ることの難しさを感じたからのようです。
★キャスト紹介:主役のカルロスを演じたハビアニ・ポンセ・デ・レオンは当時16歳だった由。2011年TVシリーズでデビュー、2013年からの長寿TVシリーズ「Violetta」(160話)に出演、映画は本作が初めて。マラガではかなり大人っぽい感じでしたが、細い鼻すじの美形で女性ファンが付きそうです。一体にイケメン揃いなのは監督の好みかもしれない。親友ヘラ役のホセ・アントニオ・トレダノは映画初出演、アニメーションのボイス出演がある。助演男優賞を受賞したマウロ・サンチェス・ナバロは、2010年TVシリーズでデビュー以来テレビでの仕事が多く、お茶の間の人気度は高いようです。本作出演は2作目。

(ニコ役で助演男優賞を受賞したマウロ・サンチェス・ナバロ)
★ヘラの姉リタを演じたヒメナ・ロモは、2008年「Voy a explotar」でデビュー、映画とTVシリーズにかなり出演しているが脇役に甘んじている。現在進行中のマリアナ・ゴンサレスのデビュー作「Fractal」には主演している。アルフォンソ・キュアロンの『ROMA/ローマ』の演技で一躍脚光を浴び、アカデミー賞助演女優賞にノミネートされたマリナ・デ・タビラが,カルロスの鬱ぎみの母親役で出演している。

(パンクロッカーのリタを演じたヒメナ・ロモ)

(カルロスの母親を演じたマリナ・デ・タビラ、映画から)
*主なフィルモグラフィー*
1996「Una suerte de galleta」短編デビュー
2003「Sin ton ni Sonia」長編デビュー、グアダラハラ映画祭観客賞、モレリア映画祭出品
2005「La cola entre las patas」短編、グアダラハラ映画祭短編賞
2007「Tiene la tarde ojos」短編
2011「El sueño de Lu」モレリア映画祭栄誉メンション、上海映画祭正式出品
2013「Despertar el polvo」
2014「La tiara vacía」短編
2015「Sunka Raku: alegrñia evanescente」ドキュメンタリー
2015「El espacio que buscas」アルバロ・フェルナンデスとの共同監督
2016「Ya nadie toca el trombón」短編ドキュメンタリー
2017「Pinocho」
2019「Esto no es Berlín」省略
(TVシリーズは割愛)
イベロアメリカ「金のビスナガ」受賞作品*マラガ映画祭2019 ⑭ ― 2019年04月14日 14:31
メキシコを襲った経済危機をバックに上流階級の女性たちのカオスを描く

★イベロアメリカ諸国で製作された映画に贈られる「金のビスナガ」賞は、メキシコのアレハンドラ・マルケス・アベジャの第2作「Las niñas bien」が受賞した。トロント映画祭2018でプレミアされて以来、国際映画祭での受賞歴をもつコメディ、何かの賞に絡むとは思っていましたが、金のビスナガは想定外でした。他に脚本賞・編集賞の3冠、少し意外でした。サン・ルイス・ポトシ生れだがメキシコ・シティで育った。バルセロナのカタルーニャ映画スタジオ・センターの映画監督科で学ぶ。監督紹介によれば、2009年に撮った短編「5 recuerdos」が140ヵ所の国際映画祭で上映されたとある。映画祭の多さにはあきれるばかりですが、2015年長編デビュー作「Semana Santa」がトロント映画祭に出品、SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト映画祭)やカルロヴィ・ヴァリ映画祭でも上映された。

(自作を語るアレハンドラ・マルケス・アベジャ)
★メキシコ公開日(3月22日)と重なったことから残念ながら来マラガはなく、上映後のプレス会見も検索できなかった。脚本賞のプレゼンターは、今回リカルド・フランコ賞を受賞した脚本家のラファエル・コボスであったが、マルケス・アベジャはビデオ参加にとどまった。

(ビデオ参加のアレハンドラ・マルケス・アベジャ、右端にラファエル・コボス)
「Las niñas bien」(「The Good Girls」)
製作:Woo Films / LATAM & North America Distribution / Cinepolis
監督・脚本:アレハンドラ・マルケス・アベジャ
原作グアダルーペ・ロアエサの同名小説
撮影:ダリエラ・ルドロー
編集:ミゲル・シュアードフィンガー
音楽:トマス・バレイロ
美術:クラウディオ・ラミレス・カステリ
製作者:ロドリゴ・ゴンサレス、ラファエル・レイ、ガブリエラ・マイレ、マリア・コルドバ
データ:製作国メキシコ、スペイン語、2018年、コメディ・ドラマ、93分、公開メキシコ3月22日
映画祭・受賞歴:トロント映画祭2018、ローマ、シカゴ、モレリア、テッサロニキ、ストックホルム、マラケシュ、マカオ(観客賞)、ハバナ(女優賞イルセ・サラス)以上2018年開催。パームスプリングス映画祭2019(Directors to Watch)、マラガ(作品賞・脚本賞・編集賞)、D'A映画祭、他
キャスト:イルセ・サラス(ソフィア)、フラビオ・メディナ(ソフィアの夫フェルナンド)、カサンドラ・シアンヘロッティ(アレハンドラ)、パウリナ・ガイタン(アナ・パウラ)、ヨハンナ・ムリージョ(イネス)、ヒメナ・ゲーラ(クリスティナ)、アナ・ホセ・アルドレテ(ロレナ)、パブロ・チェモル(ダニエル)、クラウディア・ロボ(マリルス)、ダニエル・アダッドHaddad(ベト)、アレハンドラ・マルドナド、ディエゴ・ハウレギ(ハビエル)、レベッカ・デ・アルバ(同)、ガブリエル・ヌンシオ、他多数

(4人の良家の子女、ソフィア、アレハンドラ、アナ・パウラ、イネス)
ストーリー:時はホセ・ロペス・ポルティージョ政権の1982年、メキシコは重大な経済危機に陥っていた。想像だにしたこともない社会崩壊が起きるまで、ソフィアは魅力にあふれ、その上品さにおいても完璧な女性、友人グループのリーダー的存在だった。ソフィアは体面を保とうと腐心するが、夫の負債、世間の中傷に晒される。彼女の精神的ダメージは避けられず、金の切れ目は縁の切れ目であることに気づく。ソフィアを中心に社会的ピラミッドの頂点に立つ4人の女性たち、アレハンドラ、イネス、アナ・パウラが辿る救済ではなく成熟への旅が語られる。 (文責:管理人)

(誕生会のドレスを綿密に点検するソフィア、冒頭シーンから)
グアダルーペ・ロアエサの同名小説「良家の子女」をベースに製作された
★1987年に刊行されたグアダルーペ・ロアエサの小説「Las niñas bien」がベースになっている。作家によると「脚本にはタッチしていないが、私の小説の映画化では最もよくできている。セリフも衣装も当時の雰囲気を上手く再現できている。映画に登場する宝石類は、友人のデザイナーダニエル・エスピノサが制作したコレクションから提供されたものです」と語っている。

(作家ロアエサとデザイナーのエスピノサ、メキシコのオープニング、3月22日)

(監督、原作者、パウリナ・ガイタン、カサンドラ・シアンヘロッティ、サラス)
★<niñas bien>というのは、日本語の「良家の子女」に当たるだろうか。経済的に恵まれた上流階級の娘たちで、子供時代は祖母や母親から躾けられ、文化や伝統が優先される家庭環境で過ごしている。お金は天から降ってくるのであるから心配する必要がないはずだが実はそうではなかった。ヒロインのソフィアは、夫がどうやってお金を稼いでいるか知らないし知ろうともしない。興味があるのは自分たちエリート階級の特権的な生活を楽しむことである。お金を失うと、金持ちは何を失うのでしょうか。銀食器、シャネルのバッグ、ディオールのドレス、ジュエリー、シャンパン、エトセトラ。この映画は社会的不平等を批判的に見ているが告発しているのではなく、エリートが失う特権は何かを探す映画である。

(豪華なジュエリー、シャンパン、贅沢は永遠に続くと思っていたソフィア)

(ソフィアと夫のフェルナンデス)
★1981年の石油価格の暴落が引き金となって、メキシコ・ペソは大暴落、海外の銀行は融資を拒絶する。翌年8月、ロペス・ポルティージョ大統領は利払いの一時停止を宣言するが時すでに遅し、国民は急激なインフレと失業の増大に苦しむことになる。階級差別と不平等が根づいた時代が背景になっている。「何が起ころうがメキシコは変わらない。そういうことを気づかせるために年代物の映画を作っている。この分析で分かったことは、自分が抑圧される代わりに抑圧者となることができるなら直ちにチャンスを掴むべきだという権力の理想がまだ浸透していないということだった」と監督。
★メキシコの階級主義は常に身近にあるが、現在では面と向かい合ってと同じくらいネットワーク上での関心が高まってきている。2018年総領選挙ではメキシコをこき下ろす隣国大統領に怒りが集中、「反トランプ」に掻き立てられた国民が団結して、新興左派政党を勝利させ、新大統領ロペス・オブラドールは得票率53%の歴史的勝利をおさめた。しかしこの政権交代の流れは欧米が望む左派政党の退潮の維持と矛盾している。階級主義と不平等は現在でも80年代と変わらずメキシコに根づいてしまっているが、映画も政治に無関心ではいられない。
★ソフィアを演じたイルセ・サラスは、1981年メキシコ・シティ生れ、映画、TV、舞台で活躍。国立演劇学校で演技を学んだ。舞台やTVシリーズ出演後、アントニオ・セラノ・アルグエジェスの「Hidalgo, La historia jamás contada」(10)のオーディションを受け映画デビューする。続いてセバスティアン・デル・アモの「Cantinflas」や本邦でも話題になったアロンソ・ルイスパラシオスがモノクロで撮ったデビュー作『グエロス』と第2作「Museo」に出演している。ロベルト・スネイデルの「Me estás matando Susana」には、G.G.ガエルと共演している。NetflixオリジナルのTVシリーズ「Historia de un criman: Colosio」(7話)が、『コロシオ 犯罪アンソロジー大統領候補の暗殺』という邦題で3月22日から配信されている。1994年にティフアナで起きたコロシオ暗殺事件をベースにした犯罪ドラマ。サラスはコロシオの妻ディアナ・ラウラを演じている。アロンソ・ルイスパラシオス監督とのあいだに2児、母親業も楽しんでいる。メキシコに根をおろしてしまった社会問題の解決を目指す文化芸術グループに参加している、物言う女優の一人でもある。
*『グエロス』の作品紹介は、コチラ⇒2014年10月03日
*「Museo」の作品紹介は、コチラ⇒2018年02月19日
*「Me estás matando Susana」の作品紹介は、コチラ⇒2016年03月22日

(不治の病と闘っている大統領候補者の妻に扮したイルセ・サラス、TVシリーズ)
★アナ・パウラ役のパウリナ・ガイタン(メキシコ・シティ1992)は、キャリー・フクナガの『闇の列車、光の旅』で意志の強い女性を演じて好評だった。アレハンドラ役のカサンドラ・シアンヘロッティ(メキシコ・シティ1987)は、映画やTVシリーズのほか舞台女優としても活躍、サラス同様「Cantinflas」のほか、イシアル・ボリャインの『雨さえも、ボリビアの熱い一日』に出演している。イネス役のヨハンナ・ムリジョは、TVシリーズ出演が多く舞台でも活躍しているせいか、本邦公開作品は見つからなかった。映画ではディエゴ・ルナのロード・ムービー「Sr. Pig」に脇役ながら出演のほか、まだ未公開だが Axel Muños ムニョスの「Noches De Julio」では主役に起用されている。
*『闇の列車、光の旅』の作品紹介は、コチラ⇒2013年11月10日
★次回は、審査員特別賞のアリ・サマの「Esto no es Berlín」を予定しています。こちらも1980年代のメキシコが舞台のようです。当時のメキシコ人の憧れの地は、ロンドンかベルリンだったそうです。
追加情報:『グッド・ワイフ』の邦題で2020年07月10日に劇場公開されました。
金のビスナガ受賞作品、カルロス・マルケス=マルセ*マラガ映画祭2019 ⑬ ― 2019年04月11日 15:33
カルロス・マルケス=マルセの「Els dies que vindran」が3賞

★カルロス・マルケス=マルセの長編第3作「Els dies que vindran」が、作品賞金のビスナガ・監督賞、主役のマリア・ロドリゲス・ソトが女優賞と、大賞3冠を受賞しました。今回は特別栄誉賞に時間を割き、作品紹介ができないまま閉幕してしまいました。これから何作か受賞作品をアップしてお茶を濁すことにします。「金のビスナガ」賞は、スペインとラテンアメリカ諸国に分けて与えられる。金賞は作品賞だけで、その他は銀賞です。
★まずスペイン製作の「金のビスナガ」受賞作品から。カルロス・マルケス=マルセ(バルセロナ1983)は、2014年のデビュー作「10.000 km」に続いて2度目の受賞となりました。新作も第1作と同じ若いカップルが主人公、雰囲気が似通っている印象は、主役の一人が監督の友人でもあるダビ・ベルダゲルということに関係しているかもしれません。第1作は泣いたり笑ったりと観客の心をつかみましたが、新作も観客と審査員を虜にできたようです。言語はカタルーニャ語で字幕入り上映でした。因みに第2作「Tierra firme」は、セビーリャ映画祭2017のオープニング作品、ASECAN(アンダルシア・シネマ・ライターズ協会)賞を受賞している。

(マリア・ロドリゲス、監督、ダビ・ベルダゲル、マラガ FF 2019フォトコールから)
* 第1作「10.000 km」と監督紹介記事は、コチラ⇒2014年04月11日
* 第2作「Tierra firme」の紹介記事は、コチラ⇒2017年11月07日
「Els dies que vindran」(「Los días que vendrán」)
製作:Lastor Media / Avalon P.C. 協賛ICAA / ICEC 参画 Movistar+ / TVE / TVC
監督・脚本・編集:カルロス・マルケス=マルセ
脚本:クララ・ロケ、コラル・クルス
撮影:アレックス・ガルシア
編集:オスカル・デ・ジスペルト、フリアナ・モンタニェス、アナ・プファッフ(パフ)Pfaff
音楽:マリア・アルナル
プダクション・デザイン:アナ・ポンス=フォルモサ
メイクアップ&ヘアー:ダナエ・ガテル、ヘスス・マルトス
製作者:トノ・フォルゲラ、セルジ・モレノ、マリア・サモラ
データ:製作国スペイン、カタルーニャ語、2019年、ロマンティック・コメディ、94分、スペイン公開2019年6月28日予定、配給元Avalon D. A
映画祭・受賞歴:ロッテルダム映画祭2019正式出品(1月31日上映)、第22回マラガ映画祭2019正式出品3月20日上映(作品賞・監督賞・女優賞受賞)、D'A映画祭(バルセロナ)正式出品5月4日上映予定
キャスト:マリア・ロドリゲス・ソト(妻ビル)、ダビ・ベルダゲル(夫リュイス)、ルぺ・ベルダゲル・ロドリゲス(娘ソエ)他多数
プロット:30歳のビルはジャーナリスト、32歳のリュイスは弁護士、妊娠に二人が気づいたとき、まだ付き合い始めて1年しか経っていなかった。子供は欲しいが今ではない。どうしたらいい? カメラは9ヵ月間この若いカップルの思いがけない体験を見守っていく。子供を生むという重大な推移、彼らの怖れ、喜び、期待、落胆、特に日に日に大きくなっていく妻の現実を細やかに追っていく。二人が三人になるということはどういうことかをカップルは学ぶことになる。主役を演じたカップルは実生活でも夫婦であり、ベビーは一人娘である。 (文責:管理人)

(ベビーは欲しいが、今ではないと、逡巡するビルとリュイスの夫婦)
★プレス会見での監督談話を要約すると「アイデアは『Tierra firme』撮影中に、ベルダゲルから父親になるという知らせを受けたときに閃いた。ストーリーは現実に支えられているが、勿論フィクションです。ドキュメンタリーの部分も含んでいるが、妊娠と同時進行で撮影していったので、費やした日数は50日間ほどだが、結局1年以上かかってしまった。舞台となった家屋も彼らの自宅で、彼らは同じマンションの別の部屋に引っ越してもらった。映画の中に現れるベビーは彼らの娘ルぺだが映画ではソエにした。もう2歳になっている。お飾りでない、仕掛けもせずに、父親になる過程を不自然でなくフィルターを掛けずに描こうとした」ということになる。ただ観客は少し混乱しますよね。

(本作のアイデアを明かすマルケス=マルセ監督とダビ・ベルダゲル、3月20日のプレス会見で)
★別のインタビューだが「舞台女優のベルダゲルの奥さんが、妊娠したことで舞台に出られなくなってしまった。つまり失業してしまった」と。「ドキュメンタリーの部分も含んでいる」というのは、出産シーンは、彼女の両親の友人のカメラマンが撮ったホーム・ビデオの由、それを作中に滑り込ませていることを指しているようです。さすがに友人の妻の分娩シーンは撮れなかったと。彼女の母親は教師で、生徒たちに「赤ちゃんはどこからやってくる」みたいな授業をしていて、その教材にしようと考えたらしい。タイトルもそこから思いついたということでした。

(銀のビスナガ監督賞を受賞したマルケス=マルセ)
★友人の妻の失業対策のために撮ったわけではないでしょうが、結果的にはマリア・ロドリゲスに「銀のビスナガ」女優賞がもたらされ、彼女は大きなお腹を抱えて約50日間頑張った甲斐があった。「生まれた娘は家宝です」とロドリゲス、トロフィーは大先輩のスシ・サンチェスの手から受け取りました。来年のゴヤ賞まで人気が持続すると新人女優賞のカテゴリーになる。マルセル・バレナの実話を映画化した『100メートル』(16、Netflix)、カタルーニャTV3シリーズ「El café de la marina」(14)ほか短編に出演している。主に舞台に軸足をおいているようだが、今回の受賞で変わるかもしれない。

(銀のビスナガ女優賞プレゼンターのスシ・サンチェスと抱き合うマリア・ロドリゲス)

(受賞スピーチをするマリア・ロドリゲス)
★ダビ・ベルダゲル(ジローナ1983)は、カルラ・シモンのデビュー作『悲しみに、こんにちは』に出演、孤児になってしまった姪を引き取って育てる養父役で、ゴヤ賞2018助演男優賞を受賞している。本作は第20回マラガ映画祭2017の作品賞受賞作品、こちらも言語はカタルーニャ語でした。ベルダゲル自身も母語はカタルーニャ語です。他カルロス・マルケス=マルセのデビュー作「10.000 km」で、ゴヤ賞2015新人男優賞ノミネート、ガウディ賞男優賞を受賞している。

(金のビスナガ賞2014受賞の「10.000 km」のポスター)
ホセ・ルイス・クエルダ、「金の映画賞」受賞*マラガ映画祭2019 ⑫ ― 2019年04月03日 18:54
ホセ・ルイス・クエルダの「Amanece, que no es poco」が金の映画賞

★3月18日ピカソ美術館ホールで、ビスナガ特別賞の一つ「金の映画賞」が ホセ・ルイス・クエルダの不条理コメディ「Amanece, que no es poco」(1989)に授与されました。「こんな賞を戴けるなんて本当に厚かましく思いますが、チーム全員大喜びしています」と、カスティージャ・ラ・マンチャはアルバセテ生れ(1947)の受賞者はスピーチしました。続いて映画同様ユーモアたっぷりのスピーチで聴衆を沸かせ、シュールレアリストとしての健在ぶりを示しました。プレゼンターはジャーナリストのルイス・アレグレとフェルナンド・メンデス=レイテ監督、トロフィーはクエルダ映画を熟知しているメンデス=レイテが手渡しました。本作に出演した分身術が使える酔っ払いのミゲル・レジャンや自殺願望者のギジェルモ・モンテシノスも出席、ホセ・ササトルニル、カルメン・デ・リリオ、チュス・ランプレアベなど、重要な役を演じた出演者が既に旅立っています。それを補うかのようにクエルダの新作「Tiempo después」(2018年12月公開)のプロデューサー、カルメラ・マルティネス・オリアルトやフェリックス・トゥセル、出演のダニエル・ペレス・プラダなどがお祝いに駆けつけました。

(メンデス=レイテからビスナガのトロフィーを受け取るホセ・ルイス・クエルダ、3月18日)
★作家、ジャーナリスト、シネアストのルイス・アレグレ(テルエル1962)によると、「1989年の公開時にはパッとしなかった。しかし時間が経つにつれて、じわじわとカルト映画として浸透していき、毎年舞台となった町を巡り歩く観光ツアーを楽しむ<アマネシストたちAmanecistas>の出現をもたらした」。いわゆるファンクラブみたいなものができたわけです。クエルダ監督も「公開時の不評は、実際のところ落胆しなかった。それはヒットすると期待していなかったからね。公開日に映画館に偵察に出かけたら、こんな映画を見るためにお金は使いたくないと怒っているご婦人がいたんだよ」と、相変わらずジョークをとばしていた。

(トロフィーを手に「もうときめかないし、涙も出ないんだ」という受賞者)
★1966年以来の友人、クエルダのデビュー作「Pares y nones」(仮題「丁半勝負」)にも出演したフェルナンド・メンデス=レイテ(マドリード1944)監督は、文化省のオーディオビジュアル・アート協会の総ディレクター(1986~88)だったときのことを思い出して、彼は「この業界では最も仕事熱心な男です」と。全員に脚本が配られ読み始めるや、「そこにいた全員が、一体全体このジョークは何なんだい、と議論が始まり、それが楽しかったのを思い出します」と挨拶した。可笑しな論理のすり替えやナンセンス・ギャグあり、セリフはチグハグで繋がらない、ブラックユーモアとは違う意味不明なやり取りに役者たちは面食らったらしい。それを観に行った観客も同じだったわけですが。
★本作はいわゆる群像劇で誰が主役なのか、あるいは主役はいないのかどうか判然としない。酔っ払いカルメロを演じたミゲル・レジャンは、グティエレス伍長に扮したホセ・ササトルニル<ササ>が天真爛漫に動き回りながら確信していたある逸話を紹介した。彼は「本物の映画だと気づいたとき、われわれはスペインから追い出されたところにいる」と言ったそうです。舞台はスペインのどこかのはずですが、どこでもない山間の村、多分監督の生れ故郷アルバセテ周辺の村なのです。「もし自分がアルバセテで生まれていなかったら、この映画も生まれなかった」と監督も語っていました。

(ミゲル・レジャンとホセ・ササトルニル、映画から)
★こういう村に、超大国アメリカのオクラホマ大学で教鞭を執っているアントニオ・レシネス扮するテオドロが、サバティカル休暇で帰郷してくる。自慢の息子が帰ってきてルイス・シヘス扮する父親ジミーは大喜び、二人はサイドカーで旅行に出かけることにする。母親は息子が留守のあいだに父親が口うるさいと殺してしまっているが何故かお咎めなし。この変な親子が、人間が畑から生えてくるような村をぐるぐる巡るストーリーなのです。アメリカへの屈折したオブセッションも見所の一つでしょうか。映画生誕20周年記念の2009年にはアルバセテ市観光局が村おこしのため観光ツアーを企画して、クエルダ監督もサイドカーに乗って宣伝に一役買いました。30周年には「金の映画賞」が転がり込んでめでたしメデタシ、観光ツアーがあったかどうか分かりませんが、スペイン映画史に残る一作なのは間違いありません。

(オクラホマ大学教授役のアントニオ・レシネスと父親役のルイス・シヘス、映画から)

(畑から人間が生えてくる、風変わりな村です)
★サンセバスチャン映画祭2018でプレミアされ、12月に公開されたクエルダの新作「Tiempo después」は、どうやら受賞作と対になっているらしく、時代は9177年という超未来のアンサンブル・ドラマ、現在活躍中の芸達者が揃って出演している。カルロス・アレセス、ブランカ・スアレス、ベルト・ロメロ、ロベルト・アラモ、セクン・デ・ラ・ロサ、アントニオ・デ・ラ・トーレ、アルトゥーロ・バルス、前作にも出演したガビノ・ディエゴ、などなど。第6回フェロス賞2019コメディ部門にノミネートされたが、強敵ハビエル・フェセルの「Campeones」に軍配が上がった。


(中央が監督、左側はデ・ラ・トーレ)

(自身も出演したアンドレウ・ブエナフエンテのトーク番組で自作を語る監督)
★ホセ・ルイス・クエルダは寡作な映画作家です。第2作の『にぎやかな森』(87)は、ゴヤ賞作品・脚本賞を受賞、監督賞は逃した。またサンセバスチャン映画祭OCIC 賞ホナラティブ・メンションを受賞するなどした。マヌエル・リバスの短編集を映画化した『蝶の舌』(99)はゴヤ賞脚色賞を受賞、どちらも本邦でも公開され好評だった。しかしクエルダ・ファンの一押しは「Amanece, que no es poco」ではないかと思います。アメナバルのデビュー作『テシス、次に私が殺される』(96)や『オープン・ユア・アイズ』(97)、『アザーズ』(01)などの製作を手掛け、後進の育成にも寄与している。キャリア&フィルモグラフィーについては、第6回フェロス賞2019栄誉賞を受賞したおりアップしております。
*フェロス賞2019栄誉賞の記事は、コチラ⇒2019年01月23日

(フェロス賞2019栄誉賞のトロフィーを手にした監督)
★「Amanece, que no es poco」については、現在休眠中のCabinaブログが日本語で読める唯一の作品紹介ではないかと思います。示唆に富んだ紹介なのでご興味のある方はどうぞワープして下さい。管理人もコメントを投稿しています。コチラ⇒
http://azafran.tea-nifty.com/blog/2009/03/amanece-que-no-.html
『オフィシャル・ストーリー』にラテン金の映画賞*マラガ映画祭2019 ⑪ ― 2019年03月31日 11:53
「ラテン金の映画賞」にルイス・プエンソの『オフィシャル・ストーリー』

(養父母に扮したエクトル・アルテリオとノルマ・アレアンドロ、養女役アナリア・カストロ)
★今回から「ラテン金の映画賞」が始まり、第1回目はルイス・プエンソのアルゼンチン映画『オフィシャル・ストーリー』(La historia oficial)が選ばれました。1986年に南米大陸に初のアカデミー外国語映画賞のオスカー像をもたらした映画、さらにゴールデン・グローブ賞も受賞しており、両賞を受賞した唯一のアルゼンチン映画でもある。その他カンヌ映画祭1985審査員エキュメニカル賞、養母を演じたノルマ・アレアンドロが女優賞を受賞している。そのほか銀のコンドル賞など数々の国際映画賞を受賞しており、今回の「ラテン金の映画賞」受賞は文句なしと言えるでしょうか。アルゼンチンが次にオスカー像を手にするには2009年のフアン・ホセ・カンパネラの『瞳の奥の秘密』まで待たねばならなかった。
★2016年、公開30周年を記念して修復版が再上映されています。公開30年後のプレス会見で、民主化されたとはいえ軍事独裁政権(1976~83)の総括はなされていなかったから「撮影中には多くの脅迫や嫌がらせをうけた。当時4歳だった養女役のアナリア・カストロが撮影のため外出できないよう自宅を見張って妨害した」と監督は語っていた。また「脚本については、五月広場の祖母たちから貴重なデータや協力を受けた」とも語っています。有名なのは五月広場の母親たちですが、逮捕時に妊娠していた娘たちが出産後直ちに殺害されていたことが既に分かっていたから、孫捜索に切り替わっていた。『オフィシャル・ストーリー』で政府高官夫妻が養女にした子供の母親は、そういう犠牲者の一人でした。オフィシャルな歴史と現実は、往々にして一致しないものです。

(30年後の養母役ノルマ・アレアンドロ、監督、養女ガビを演じたアナリア・カストロ)
★3月21日、来マラガできなかったプエンソ監督の代理として、映画修復録音部門の責任者で、アルゼンチンの国立映画製作学校長、国立映画視聴覚芸術協会INCAA員のカルロス・アバテがビスナガのトロフィーを受け取った。彼はアルゼンチンのベテラン監督カルロス・ソリンやマルセロ・ピニェエロ、フアン・ホセ・カンパネラの録音を手掛けている。プレゼンターはマラガ・フェスティバル・プログラム委員会のメンバーの一人ミリト・トレイロ氏でした。

(カルロス・アバテとミリト・トレイロ、3月21日)
*ルイス・プエンソの代表作*
1985「La historia oficial」(『オフィシャル・ストーリー』)アルゼンチン
監督・脚本・製作、公開
1989「Old Gringo」(『私が愛したグリンゴ』)アメリカ、監督・脚本、公開
1992「La Peste」(『プレイグ』)フランス、監督、カミュの小説『ペスト』の映画化、公開
2004「La puta y la ballena」(『娼婦と鯨』)アルゼンチン=西、監督・脚本・製作、DVD
2007「XXY」(『XXY~性の意思~』)アルゼンチン、製作、監督ルシア・プエンソ、BSスカパー
(以上字幕入りで観られるもの)
イングリッド・ガルシア・ヨンソン、RTVA賞授与式*マラガ映画祭2019 ⑩ ― 2019年03月29日 16:02
第4回RTVAアンダルシア才能賞はイングリッド・ガルシア=ヨンソンに
★3月22日、アルベニス館で第4回RTVAマラガ才能賞が女優のイングリッド・ガルシア=ヨンソンに授与されました。こんな栄誉賞があるとは気がつきませんでした。RTVA(アンダルシア・ラジオ・テレビ)が与える賞でトロフィーはビスナガでなく「El Gilemaエル・ジレンマ」と意味深なネーミングです。授賞式には、チャンネル・スールのディレクターホセ・アントニオ・デル・サス、マラガ映画祭総ディレクターのフアン・アントニオ・ビガルなどが出席、デル・サスより「エル・ジレンマ」のトロフィーが渡されました。

(トロフィーを高く掲げた受賞者とホセ・アントニオ・デル・サス)
★ホセ・アントニオ・デル・サスは、受賞者は「映画界のホープであり、将来が期待される重要な女優」と、ガルシア=ヨンソンを讃えた。またフアン・アントニオ・ビガルは「私たちとRTVAの関係は特別です。映画祭になくてはならない存在、非常に重要な仕事をしています」と、先ずチャンネル・スールが本映画祭に果たしている宣伝及び普及への尽力に感謝の意を述べた。次いで受賞者イングリッドがスペイン映画に果たした実績を称賛した。

(左から、J. A.ビガル、イングリッド・ガルシア=ヨンソン、J. A.デル・サス)
★受賞者イングリッド・ガルシア=ヨンソンは、嵐のような拍手の中で「エル・ジレンマ」のトロフィーを与えてくれたRTVAとマラガ映画祭にお礼を述べた。「このトロフィーは常に私の人生の目印となるでしょう。人間は自分を明確にすることはできませんが、ジレンマを家の中に持ち込むことは私をわくわくさせる」とスピーチした。「自分はアンダルシア人だと思っています。ここで育って、アクセントもアンダルシア訛りです。私に常に幸せを与えてくれるのもここ、さらに常に重要な仕事もアンダルシアでした。アンダルシア万歳、皆さまにも幸運を」と締めくくった。
★イングリッド・ガルシア=ヨンソン Ingrid García Jonsson は、1991年9月6日、スウェーデンで生まれるが育ったのはセビーリャである。父はセビーリャ出身のスペイン人、母はスウェーデン人。現在はマドリード在住、スペイン語、スウェーデン語、フランス語、英語と語学に堪能。彼女の実績でまず取り上げたいのが、ハイメ・ロサーレスのカンヌ映画祭「ある視点」部門に出品された「Hermosa juventud」(14)の主役ナタリア、赤ん坊を抱え将来に夢が描けない若い夫婦の絶望とバイタリティを好演した。本作は受賞には至らなかったがゴヤ賞、フォルケ賞、フェロス賞、ガウディ賞にノミネートされた他、サン・ジョルディ、トゥールーズ(シネ・エスパーニャ)、トゥリア新人賞を受賞した。

(「Hermosa juventud」から)

(左から、ハイメ・ロサーレス、イングリッド、夫役のカルロス・サストレ)
★2015年ラファ・マルティネスのホラー「Sweet Home」、2016年キケ・マイジョのスリラー「Toro」、2018年アンドレア・ハウリエタの分身もの「Ana de día」、今年に入ってからはリュイス・ミニャロの「Love Me Not」、本映画祭のオープニング作品となったアレホ・フラのコメディ「Taxi a Gibraltar」、オスカル・マルティネスが銀のビスナガ男優賞を受賞したサンティ・アモデオのコメディ「Yo, mi mujer y mi mujer muerta」ほか、公開がアナウンスされている映画が数本控えている。シリアスドラマ、コメディ、ホラー、スリラーとジャンルを厭わない。更にはフェロス賞2019授賞式のメイン司会者を一人で務めたばかりの才媛、過去にはアントニオ・デ・ラ・トーレとかコメディアンのシルビア・アブリルなどベテランが仕切ったから、若干27歳の女優の手に委ねたのは異例のことだったのではないか。

(昼のアナと夜のニナの二役を演じ分けた「Ana de día」のポスター)

(主演のオスカル・マルティネスと。「Yo, mi mujer y mi mujer muerta」から)

(女性兵士に扮した「Love Me Not」から
*「Hermosa juventud」の紹介記事は、コチラ⇒2014年05月04日/05月26日
*「Ana de día」のの紹介記事は、コチラ⇒2019年01月08日
セシリア・ロス、レトロスペクティブ賞授与式*マラガ映画祭2019 ⑨ ― 2019年03月28日 16:16
「アルモドバルとスルエタは自由で斬新な人、それが私を魅了した」

★3月22日、スペイン映画で最も有名な女優の一人、アルゼンチン出身のセシリア・ロスに「レトロスペクティブ賞―マラガ・オイ」のトロフィーがギター奏者の弟アリエル・ロス(Rotロット、1960)から手渡されました。授賞式に先だって「AC マラガ」ホテルのフォーラムで開催された、マラガ映画祭総ディレクターフアン・アントニオ・ビガルのインタビューでは、「アルモドバルとスルエタは自由で斬新な人、それが私を魅了した」と語った。特に自由のコンセプトについて「芸術は自由な創造から生まれる。限界を設けたり自己検閲していては、核心に迫れない」と強調した。

(ビガルのインタビューを受ける受賞者セシリア・ロス)
★セシリア・ロスの「キャリア&フィルモグラフィー」については、ビルバオで初冬に開催される第56回「ビルバオ記録映画&短編映画祭ZINEBI 2014」で栄誉賞を受賞した折に紹介しております。イバン・スルエタ監督についても言及しております。
*セシリア・ロスの「キャリア&フィルモグラフィー」の紹介は、
★インタビュアーのビガルからアドルフォ・アリスタラインとの接点を訊かれたセシリアは、彼は1975年当時「私のデビュー作であるフアン・ホセ・フシド監督の「No toquen a la nena」の助監督だった。彼とはキャスティングのときに知り合い、私は未だ16歳、それ以来だから40年以上になります」と応えている。「私たちは長きにわたる友情と経験、映画への冒険を共に歩んできました。アドルフォは本当に不思議な監督なの。みんながそう認めている」と。
★デビュー作はスペイン亡命前の映画、アルゼンチンでは他にセルヒオ・レナンの「Crecer de golpe」(77)に出演している。1976年に軍事独裁政権の手で行方不明者になった作家ハロルド・コンティの小説の映画化でした。家族で亡命を決意したには、自分たちも突然行方不明者になるかもしれないという恐怖が背景にあった。当時のアルゼンチンを支配したのは「恐怖の文化」だった。スペインでは比較的早くホセ・ルイス・ガルシの「Las verdes praderas」(77)に起用され幸運な滑り出しであった。
★女性記者からの「男社会の中で働く女性たちの立ち位置について」の質問には、「女性たちはカメラの前でも後でも変革を起こそうとして団結して闘っています。しかし賃金の点からも登場人物の重要性の点からも平等とは言えません。女性の役柄は男性を支えるような物語が多いのです」と映画界の男性優位を否定しませんでした。「自分は少女のときからの夢が叶えられ、とても幸運だったが、<キャリア>という言葉は好きではありません。好きなのは人生に必要な仕事の熟練度と結果と考えています」と、ただ長ければいいというわけではないということでしょうか。
「感謝と名誉なことだと・・仕事と人生は常に繋がっています」とセシリア
★授賞式の進行役は、受賞者と34年前から親友だというアルゼンチン人のパストラ・ベガだった。この受賞が質量ともにプロフェッショナルな仕事をし、常に未来を見据えていた女優セシリア・ロスに与えられたこと、故国を捨てずに大西洋を挟んだ二つの国の橋渡しをしたことに触れた。「スペインに来てからも故国を捨てなかった。彼女は決して二つの国の分断を望まなかったからだ」とパストラ・ベガ。スペインとラテンアメリカ諸国を映画で結びつけようとする「本映画祭の精神にぴったりな代表的な女優の一人です。私たちは離れ離れではありません」とも。

(レトロスペクティブ賞のトロフィーを高く掲げたセシリア・ロス、3月22日)
★続いてアルモドバル映画で共演したロレス・レオン「私たちは知り合って何年も経ちますが、重要なのは最初からの友情が変わらずにずっと続いているということです。女性としても母親としても波長が合って、今日まで全てのことに協力し合っています」と。同じくアルモドバル映画の常連カルロス・アレセスは「彼女はとびぬけた才能の持ち主、彼女の物腰、声、目、あなたは嘘を真のように演じることができる。わざとらしくなくできるのです。映画で楽しんで今では友人としても楽しんでいる」とスピーチ。「アルモドバルの娘たち」の一人であるセシリアのお祝いには、本来ならアルモドバル自身が来マラガしたかったはずですが、この日は新作「Dolor y gloria」の封切り日でした。
★トロフィーのプレゼンターは上述したように、ミュージシャンの弟アリエル・ロットだった。「子供のときから女優になるのが夢だった姉の最初の観客は私でした。彼女のリハーサルに魅惑されていたのでした。今では私一人のためではなく多くのファンのために演技しています。ロス家の家族を代表して感謝を捧げます」と挨拶しました。

(受賞スピーチをするセシリア、後ろは弟アリエル・ロットとロレス・レオン)
★受賞者自身は「ただただ感謝と名誉なことだと感じております。このレトロスペクティブ賞を戴けるのは極めて重要な一つの道程と考えています。キャリアも人生も常に繋がっており、それは同じことなのです」と、受賞が一つの区切りではあっても終りでないことを語ったようでした。

(セシリアとアリエルの姉弟)
★セシリア・ロス Cecilia Roth、1956年8月8日ブエノスアイレス生れ。ユダヤ系ウクライナ人の父は1930年代にアルゼンチンに移民してきた作家、ジャーナリスト、母はメンドーサ生れのセファルディの歌手。1975年3月に起きた軍事クーデタに危険を感じた一家は、翌年家族でスペインに亡命した。軍事独裁政権崩壊後、大西洋を往復しながら映画、TVシリーズなどで活躍している。1997年、アドルフォ・アリスタラインの「Martín Hache」で、スペイン生れでない女優が初めてゴヤ賞1998主演女優賞を手にしたことで話題になりました。更にアルモドバルの『オール・アバウト・マイ・マザー』がアカデミー賞2000外国語映画賞を受賞、セシリアも2個目のゴヤ賞主演女優賞、ヨーロッパ映画賞1999女優賞、フォトグラマス・デ・プラタ2000女優賞、他数々の国際映画祭で受した。

(息子役のエロイ・アソリンと、『オール・アバウト・マイ・マザー』から)
★アルモドバルの『アイム・ソー・エキサイテッド』(13)の後アルゼンチンに戻り、パブロ・トラペロの『エル・クラン』のTVシリーズ版、2018年ルイス・オルテガの「El Ángel」では、「死の天使」と言われた実在した殺人犯のビオピック映画に母親役で出演した。つい最近3月22日公開されたアルモドバルの新作「Dolor y gloria」出演のためスペインに戻った。アルモドバル自身のビオピック映画と言われているが、プラス・フィクションのようです。監督の分身サルバドール・マジョに扮するのがアントニオ・バンデラス、他にペネロペ・クルスが子供時代のサルバドールの母親役で出演している。2019年公開予定のエステバン・クレスポの「Black Beach」の公開が待たれる。
◎主なフィルモグラフィー(短編、TVシリーズは除く)
1976 No toquen a la nena アルゼンチン、監督フアン・ホセ・フシド
1977 Crecer de golpe (仮題「拡がる衝突」)、アルゼンチン、セルヒオ・レナン
1979 La familia, bien, gracias ペドロ・マソー
1979 Las verdes praderas (「緑の大草原」)ホセ・ルイス・ガルシ
1980 Arrebato (「激情」)イバン・スルエタ
1981 Pepi, Luci, Bom y otras chicas del montón 『ペピ、ルシ、ボン、その他の娘たち』
ペドロ・アルモドバル
1982 Laberinto de pasiones 『セクシリア』P. アルモドバル
1983 Entre tinieblas 『バチ当り修道院の最期』同上
1984 ¿ Qué he hecho yo para merecer esto ? 『グロリアの憂鬱』同上
1988 Las amores de Kafka 『カフカの恋』アルゼンチン=チェコスロバキア
ベダ・ドカンポ・フェイホー
1992 Un lugar en el mundo (「世界のある所」)アルゼンチン
アドルフォ・アリスタライン
1997 Martín (Hache) (「マルティン・アチェ」)アルゼンチン=西 同上
1999 Todo sobre mi madre 『オール・アバウト・マイ・マザー』P. アルモドバル
2000 Segunda piel 『第二の皮膚』ヘラルド・ベラ(東京国際レズ&ゲイ映画祭上映邦題)
2001 Vidas privadas 『ブエノスアイレスの夜』アルゼンチン=西 フィト・パエス
2002 Hable con ella 『トーク・トゥ・ハー』P. アルモドバル
2002 Deseo スペイン=アルゼンチン、ヘラルド・ベラ
2002 Kamchatka (「カムチャツカ」)アルゼンチン=西=伊 マルセロ・ピニェイロ
2003 La hija del caníbal 『カマキリな女』メキシコ=西 アントニオ・セラノ
2005 Padre Nuestro (「我らが父」)チリ ロドリーゴ・セプルベダ
2008 El nido vacío (「空っぽの巣」)アルゼンチン=西=仏=伊 ダニエル・ブルマン
2013 Los amantes pasajeros 『アイム・ソー・エキサイテッド』P. アルモドバル
2013 Matrimonio アルゼンチン、カルロス・ハウレギアルソ
2016 Migas de pan スペイン=ウルグアイ、マナネ・ロドリゲス
2018 El Ángel アルゼンチン=ウルグアイ、ルイス・オルテガ
2019 Dolor y gloria スペイン=アルゼンチン、P. アルモドバル
2019 Black Beach スペイン、エステバン・クレスポ
リカルド・フランコ賞授与式、ラファエル・コボス*マラガ映画祭2019 ⑧ ― 2019年03月26日 19:11
スペインで脚本家として食べていくのは大変です

★3月21日、脚本家ラファエル・コボスの第22回マラガ映画祭「リカルド・フランコ賞」の授賞式がありました。本賞はスペイン映画アカデミーとコラボレーションしています。授賞式を前にして短時間だが本映画祭総ディレクターフアン・アントニオ・ビガルのインタビューに応じた。「裏方である脚本家に光を当ててくださって感謝に堪えない・・・この受賞は私たちがしている仕事の可視化に寄与してくれて、二重に嬉しい」と語った。観客を泣かせたり笑わせたりするのも脚本家の仕事、ホンが悪ければ良作は存在しない。「それにしては脚本家に支払われる報酬は少なすぎると私たちは常々考えています・・・スペインで脚本家として暮らせるのは14パーセント未満」と厳しい実情を明らかにした。これはスペインだけの話ではないでしょう。映画で食べていけるのは一握りのスターだけかもしれない。

(フアン・アントニオ・ビガルのインタビューを受ける受賞者)
★授賞式は年来の友人で仕事仲間でもある女優ブランカ・ロメロと俳優フリアン・ビリャグランの司会で始まり、彼が脚本だけでなく、いつもアルベルト・ロドリゲス監督に寄り添って、キャスティングから撮影クルーのリハーサルにも積極的に参加していることが紹介された。20年来の親友アントニオ・アセド、さらにはアントニオ・デ・ラ・トーレも「最初、どうして撮影中の監督のそばに脚本家が座っているのか奇異に思っていた。しかし次第に各々のセリフや言い方に注意を払っていることが分かり、真底から映画に情熱を傾けていることに感動した」と祝辞を述べた。有終の美を飾ったのは、勿論アルベルト・ロドリゲス監督、「一緒に脚本を書き続けて16年になった。この16年間、君は多くの質問を私に投げかけてきた。そのことが嬉しかったと先ず言いたい。更に私たちがなすべき唯一のことは世の中を理解しようと努力することだ」と心境を吐露した。
★ラファエル・コボスはマーク・トウェインの名言の引用からスピーチを始めた。「作家は説教師には二つのタイプがあると言っている。一つは怖れを持っている人、もう一つは嘘をつく人です。私はいつも嘘はつかないように努めたい」と。続けて自分が常に魅了されてきた脚本家でもあったリカルド・フランコ監督の名前を冠した賞を貰えたことをとても誇りに思っていること、陰の存在である脚本家に光を当ててくれた映画アカデミーに感謝すると述べた。

(スペイン映画アカデミー会長マリアノ・バロッソからトロフィーを受け取る受賞者)

(受賞スピーチをする受賞者)
★ラファエル・コボス Rafael Cobos、1973年セビーリャ生れの脚本家、ショーランナー。アルベルト・ロドリゲス監督と二人三脚で脚本を共同執筆していることは、以下のフィルモグラフィーで歴然とする。「20年前から映画で生きているが、アルベルト・ロドリゲスのお蔭でレベルを高めることができた」とコボス。またロドリゲス監督も「彼にゴヤ賞がもたらされたことが何より嬉しい」と相思相愛の仲である。まだタイトルは未発表だが、目下ロドリゲス監督の新作を共同で執筆している最中とか。皆を「驚かせる」内容ということです。

(ロドリゲス監督とラファエル・コボス、『マーシュランド』でゴヤ賞2015脚本賞)
*アルベルト・ロドリゲス監督作品*
2005 7 vírgenes 『7人のバージン』(ラテンビートLB 2006)
ゴヤ賞2007オリジナル脚本賞ノミネーション
2008 After ゴヤ賞2009オリジナル脚本賞ノミネーション、アセカンAsecan 脚本賞受賞
2012 Grupo 7 『UNIT 7 ユニット 7 麻薬取締第七班』ゴヤ賞2013オリジナル脚本賞ノミネート、
アセカン脚本賞受賞
2014 La isla mínima 『マーシュランド』(公開)ゴヤ賞2015オリジナル脚本賞受賞、
アセカン脚本賞受賞、シネマ・ライターズ・サークル脚本賞受賞
2016 El hombre de las mil caras『スモーク・アンド・ミラー 1000の顔を持つスパイ』
(LB 2016、公開)アセカン脚本賞、シネマ・ライターズ・サークル脚本賞、
ゴヤ賞2017脚色賞受賞
2018 La Peste 1(6話)TVシリーズ、Movistar+/ Atipica Films
2019 La Peste 2(6話)同上
*その他の監督作品*
2013 El amor no es lo que ガブリエル・オチョア監督と共同執筆
2013 Ali パコ・バニョス監督と共同執筆
2015 Toro 『トロ』フェルナンド・ナバロと共同執筆、監督キケ・マイジョ
マラガ映画祭2016オープニング作品(コンペティション外)
2019 Yo, mi mujer y mi mujer muerta サンティ・アモデオ監督と共同執筆
(マラガ映画祭2019正式出品)
★リカルド・フランコ賞受賞を記念してアルベルト・ロドリゲスの『マーシュランド』、『UNIT 7 ユニット 7』、『スモーク・アンド・ミラー』の3作が特別上映された。本映画祭では『マーシュランド』の二人の主演者、ハビエル・グティエレスがマラガ―スール賞、ラウル・アレバロがマラガ才能賞、そしてラファエル・コボスのリカルド・フランコ賞と三つの特別賞を受賞、監督も苦労が報われたか。
ハビエル・グティエレス、マラガ―スール賞授与式*マラガ映画祭2019 ⑦ ― 2019年03月25日 17:56
大賞マラガ―スール賞は怖れ知らずの役者ハビエル・グティエレスの手に

★去る3月17日、マラガ―スール賞の授与式が満員のセルバンテス劇場で行われました。授与式に先だって、マラガ大賞者がアントニオ・バンデラス海岸通りに建ててもらえる記念碑の除幕式がありました。写真で分かるようにほぼ等身大の高さで受賞者の名前と手形が彫ってあります。歴代の受賞者の記念碑が建ち並ぶ遊歩道にまた一つ並ぶことになりました。出席者は、マラガ市長フランシスコ・デ・ラ・トーレ、文化担当の市議会議員ジェマ・デル・コラル、日刊紙「スール」編集長マヌエル・カスティージョ、マラガ映画祭総ディレクターのフアン・アントニオ・ビガル、殺到したファンに囲まれてのお披露目でした。

(アントニオ・バンデラス海岸通りに建てられた記念碑の前で)
★授賞式は「El autor」の共演者でマラゲーニャの女優アデルファ・カルボがプレゼンツ、前年の受賞者であるメキシコの監督ギレルモ・デル・トロからトロフィーを受け取った。授賞式前のインタビューで「賞はたくさんあります。重要なことは観客を熱中させること、私たちは観客のために演じています」と語っていたハビエル・グティエレス、授賞式では「光栄で名誉なことです・・・監督や以前の受賞たちに囲まれて戴けることを誇りに思います」とスピーチした。お祝いに駆けつけた『マーシュランド』のアルベルト・ロドリゲスは「彼は決してNoとは言わない、怖れを知らない」と。「El autor」のマヌエル・マルティン・クエンカは「(撮影中に)一緒に遊びに行くときには、いつも私を待っていてくれた大親友だ」と挨拶した。

★TV界を代表してアレホ・サウラス、舞台演出家ダニエル・エシハ、演劇仲間の女優クリスティナ・カスターニョなどもお祝いに馳せつけて祝辞を述べた。母親や息子も、我が息子、我が父の栄誉を目にしたことでした。マラガとの接点は主にセルバンテス劇場での舞台出演が多いということでした。
★ハビエル・グティエレス Javiel Gutiérrez は、1971年アストゥリアスのルアンコ生れ、映画・舞台・TV俳優。その華麗な20年に及ぶキャリアからスペインでは知らない人はいない。1997年短編デビュー、2000年にはTVシリーズ、長編映画は2002年、エミリオ・マルティネス=ラサロの青春コメディ『ベッドの向こう側で』でデビューした。アレックス・デ・ラ・イグレシア、サンティアゴ・セグラの「トレンテ」シリーズ、しかし彼を一躍スターダムに押し上げたのは、アルベルト・ロドリゲスの『マーシュランド』でした。サンセバスチャン映画祭2014男優賞を手始めに、ゴヤ賞、フォルケ賞、フェロス賞、イベロアメリカ・プラチナ賞、フォトグラマス・デ・プラタ、サン・ジョルディ賞などの男優賞を制覇した。

(落ちこぼれ刑事に扮した『マーシュランド』から)
★2015年から翌年にかけては引っ張り凧、セスク・ゲイ『しあわせな人生の選択』(15)、2016年にはイシアル・ボリャイン『オリーブの樹は呼んでいる』、サルバドール・カルボ『1898年、スペイン領フィリピン最後の日』、イニャキ・ドロンソロ『クリミナル・プラン 完全なる強奪計画』、2017年マヌエル・マルティン・クエンカ「El autor」、そしてゴヤ賞2019作品賞を受賞したハビエル・フェセルの「Campeones」と続く。オリオル・パウロの「Durante la tormenta」が最近『嵐の中で』の邦題でNetflix配信が始まっている。以上のようにシリアスドラマもコメディもこなせる怖れ知らずの役者といわれる所以である。本邦でも映画祭、劇場公開、Netflix配信と字幕入りで鑑賞できる機会が増えたことで知名度は確実に上昇中です。

(主役を演じた「El autor」のポスター)

(障害者を視覚化した「Campeones」の監督ハビエル・フェセルと並んで)
★本映画祭開催中に、彼が出演した『マーシュランド』、『オリーブの樹は呼んでいる』、『1898、スペイン領フィリピン最後の日』と「El autor」の4作が特別に記念上映されました。
最近のコメント