ペルラス部門にハイメ・ロサーレス新作*サンセバスチャン映画祭2018 ⑨2018年08月08日 16:01

             3 作ともカンヌ映画祭2018のノミネーション作品です!

    

       

   

★ペルラス(パールズ)部門は、かつてはサバルテギ部門に含まれていたセクションでした。今年はアルゼンチンとの合作、ルイス・オルテガEl Ángelハイメ・ロサーレスPetraと、スペイン人とポーランド人の監督ラウル・デ・ラ・フエンテ&ダミアン・NenowのアニメーションUn día más con vida(ポーランド合作)の3作がエントリーされました。うち「El Ángel」はカンヌ映画祭2018「ある視点」部門に、「Petra」はカンヌ映画祭と同時期に併催される「監督週間」に正式出品された作品で、最後のアニメーションはカンヌのコンペティション外上映でした。「El Ángel」はカンヌで既にアップしておりますので割愛いたしますが、「死の天使」と恐れられた美貌の青年殺人鬼カルロス・ロブレド・プッチのビオピックです。

 

El Ángel(アルゼンチン、スペイン)2018 ルイス・オルテガ

 

    

El Ángel」の記事・監督紹介は、コチラ20180515

 

 

Un día más con vida/Another Day of Life(西、ポーランド)2018 アニメーション

 ラウル・デ・ラ・フエンテ&ダミアン・Nenow

 

    

 

       5度目のカンヌに挑戦したハイメ・ロサーレスの新作「Petra

    

 

       

Petra(スペイン、フランス、デンマーク)ハイメ・ロサーレス 2018

キャスト:バルバラ・レニー(ペトラ)、ジョアン・ボテイ(造形芸術家ジャウマ)、マリサ・パレデス(ジャウマの妻マリサ)、アレックス・ブレンデミュール(ジャウマの息子ルカス)、ペトラ・マルティネス(ペトラの母フリア)、カルメ・プラ(テレサ)、オリオル・プラ(パウ)、チェマ・デル・バルコ(フアンホ)、ナタリエ・マドゥエニョ(マルタ)

 

スタッフ:監督・脚本ハイメ・ロサーレス、共同脚本ミシェル・ガスタンビデ、クララ・ロケ、製作者(エグゼクティブプロデューサー)ホセ・マリア・モラレス、(プロデューサー)アントニオ・チャバリアス、カトリン・ポルス、音楽クリスティアン・エイドネス・アナスン、撮影エレーヌ・ルバール、編集ルシア・カサル、美術ビクトリア・パス・アルバレス、衣装イラチェ・サンス

 

物語:ペトラの父親の素性は彼女には全て秘密にされていた。母親の死をきっかけにペトラは危険な探索に着手する。真相を調べていくうちに、権力をもつ無慈悲な男、著名な造形芸術家ジャウマ、ジャウマの息子ルカスと妻マリサに出会う。次第に登場人物の人生は、ぎりぎりの状況にまで追いこまれ、悪意、家族の秘密、暴力のスパイラルに捻じれこんでいく。運命は希望と贖罪のための窓が開くまで、残酷な筋道を堂々巡りすることだろう。カタルーニャのブルジョア家庭の暗い内面が語られるが、悲劇は避けられるのでしょうか。

 

データ:製作国スペイン(Fresdeval Films / Wanda Visión / Oberón Cinematográfica)、フランス(Balthazar Productions)、デンマーク(Snowglobe Films)、言語スペイン語・カタルーニャ語、2018年、107分、協賛TVETV3Movistar+他。スペイン公開20181019

映画祭・受賞歴:カンヌ映画祭2018併催「監督週間」正式出品、サンセバスチャン映画祭2018「ペルラス」部門上映

 

       

               (ペトラ役のバルバラ・レニー)

 

      

          (ペトラとルカス役のアレックス・ブレンデミュール)

 

★「監督週間」では時間切れでご紹介できなかったハイメ・ロサーレスの第6作「Petra」のご紹介。もっぱらカンヌに焦点を合わせているカンヌの常連ハイメ・ロサーレス監督(バルセロナ、1970)だが、サンセバスチャン映画祭2008に長編第3Tiro en la cabezaが正式出品されている。バスク原理主義者によって殺害されたスペインの2人の警察官の物語ということで、カンヌでは拒まれ、サンセバスチャンに持ってきたのだが、こちらでも散々な評価だった。唯一評価したのがフォトグラマス・デ・プラタ作品賞のみでした。自然の音以外音声のない無声映画のような、ドキュメンタリー手法で望遠レンズで撮影された。今作以外はすべてカンヌでワールドプレミアされ、新作「Petra」が5回目のノミネーションだった。

 

★デビュー作Las horas del día03)が「監督週間」に出品され、いきなり国際映画批評家連盟賞を受賞した。ここで主役を演じたのが今回ジャウマの息子ルカスになったアレックス・ブレンデミュールで、15年ぶりに監督と邂逅した。欲に眩んだ造形芸術家ジャウマに扮したジョアン・ボテイは、偶然監督と知り合いリクルートされた自身もアーティスト、カメラの前に立つのは初めてだそうです。女性陣の二人バルバラ・レニーマリサ・パレデスは割愛、ペトラの母親フリアを演じたペトラ・マルティネスは、ロサーレス監督の第2作目『ソリチュード:孤独のかけら』で3人姉妹の母親役をしたベテラン、アルモドバルの『バッド・エデュケーション』でもガエル・ガルシア・ベルナルの母親になった。地味な役柄が多いが存在感のある実力派女優です。

   

国際色豊かなのがスタッフ陣、名前からも分かるように、撮影監督エレーヌ・ルバールはフランスのポンタルリエ生れ(1964)、アニエス・ヴァルダの『アニエスの浜辺』(08)、ヴィム・ヴェンダースの『Pina/ピナ・バウシュ踊り続けるいのち』(11)、アリーチェ・ロルヴァケルの『夏をゆく人々』(14)などの美しい映像は今でも心に残っている。音楽のクリスティアン・エイドネス・アナスンはデンマーク出身、高い評価を受けたパウェウ・パヴリコフスキの『イーダ』(13)やアマンダ・シェーネルの『サーミの血』(16)などを手掛け、国境を超えて活躍している。監督キャリア紹介は以下にまとめてあります。

  

2作目La soledad」(『ソリチュード:孤独のかけら』)紹介は、コチラ20131108

5作目Hermosa juventud」と監督紹介記事は、コチラ20140504同年0526

 

     

(マリサ役マリサ・パレデスとジャウマ役ジョアン・ボテイ)

      

 

               (監督を挟んで撮影中のマリサ・パレデスとバルバラ・レニー)

  

『日曜日の憂鬱』 ラモン・サラサールの新作*ネットフリックス2018年06月21日 12:37

            母と娘の対決はスシ・サンチェスとバルバラ・レニーの女優対決

 

     

★ベルリン映画祭2018「パノラマ」部門に正式出品されたラモン・サラサールの第4作目La enfermedad del domingo(「Sunday's Illness」)が、『日曜日の憂鬱』という若干ズレた邦題で資金を提供したネットフリックスに登場いたしました。三大映画祭のうち大カンヌは別として、ベルリナーレやベネチアはNetflixを排除していません。観て元気がでる映画ではありませんが、デビュー作『靴に恋して』同様シネマニア向きです。母娘に扮したスシ・サンチェスバルバラ・レニーの女優対決映画でしょうか。以下に既に紹介しているデータを再構成してアップしておきます。

La enfermedad del domingo」の内容、監督キャリア紹介記事は、コチラ20180222

 

La enfermedad del domingo(「Sunday's Illness」)

製作:Zeta Cinema / ON Cinema / ICEC(文化事業カタルーニャ協会)/

     ICOInstituto de Credito Oficial/ICAA / TVE / TV3 / Netflix

監督・脚本:ラモン・サラサール

撮影:リカルド・デ・グラシア

音楽:ニコ・カサル

編集:テレサ・フォント

キャスティング:アナ・サインス・トラパガ、パトリシア・アルバレス・デ・ミランダ

衣装デザイン:クララ・ビルバオ

特殊効果:エンリク・マシプ

視覚効果:イニャキ・ビルバオ、ビクトル・パラシオス・ロペス、パブロ・ロマン、

     クーロ・ムニョス、他

製作者:ラファエル・ロペス・マンサナラ(エグゼクティブ)、フランシスコ・ラモス

 

データ:製作国スペイン、スペイン語・フランス語、2018年、113分、ドラマ、撮影地バルセロナ、ベルリン映画祭2018パノラマ部門上映220日、ナント・スペイン映画祭フリオ・ベルネ賞、観客賞受賞、スペイン公開223日、Netflix本邦放映 6

 

キャスト:バルバラ・レニー(キアラ)、スシ・サンチェス(母アナベル)、ミゲル・アンヘル・ソラ(アナベルの夫ベルナベ)、グレタ・フェルナンデス(ベルナベの娘グレタ)、フレッド・アデニス(トビアス)、ブルナ・ゴンサレス(少女時代のキアラ)、リシャール・ボーランジェ(アナベルの先夫マチュー)、デイビット・カメノス(若いときのマチュー)、Abdelatif Hwidar(町の青年)、マヌエル・カスティーリョ、カルラ・リナレス、イバン・モラレス、ほか牝犬ナターシャ

   

プロット8歳のときに母親アナベルに捨てられたキアラの物語。35年後、キアラは変わった願い事をもって、今は実業家の妻となった母親のもとを訪れてくる。理由を明らかにしないまま、10日間だけ一緒に過ごしてほしいという。罪の意識を押し込めていたアナベルは、娘との関係修復ができるかもしれないと思って受け入れる。しかし、キアラには隠された重大な秘密があったのである。ある日曜日の午後、キアラに起こったことが、あたかも不治の病いのように人生を左右する。アナベルは決して元の自分に戻れない、彼女の人生でもっとも難しい決断に直面するだろう。長い不在の重み、無視されてきた存在の軽さ、地下を流れる水脈が突然湧き出すような罪の意識、決して消えることのない心の傷、生きることと死ぬことの意味が語られる。母娘は記憶している過去へと旅立つ。                              (文責:管理人)

 

          短編「El domingo」をベースにした許しと和解

 

A: 前回触れたように、2017年の短編El domingo12分)が本作のベースになっています。キアラと父親が森の中の湖にピクニックに出かける。しかしママは一緒に行かない。帰宅するとママの姿がない。キアラは窓辺に立ってママの帰りを待ち続ける。出演はキアラの少女時代を演じたブルナ・ゴンサレスと父親役のデイビット・カメノスの二人だけです。ブルナ=キアラが付けているイヤリングをバルバラ=キアラも付けて登場する。不服従で外さなかったのではなく理由があったのです。

B: 多分家出した母親が置いていったイヤリング、アナベルなら一目で我が娘とわかる。スタッフはすべて『日曜日の憂鬱』のメンバーが手掛けており、二人は本作ではキアラが母親に見せるスライドの中だけに登場する。母娘はそれぞれ記憶している過去へ遡っていく。後述するがリカルド・デ・グラシアのカメラは注目に値する。

 

    

 (キアラが規則を無視して外さなかったイヤリングを付けた少女キアラ、短編El domingo

 

A: キアラの奇妙な要求「10日間一緒に過ごすこと」の謎は、半ばあたりから観客も気づく。お金は要らないと言うわけですから最初からうすうす気づくのですが、自分の予想を認めたくない。

B: 観客は辛さから逃げながら見ている。しかし、具体的には最後の瞬間まで分かりません。許しと和解は避けがたく用意されているのですが、歩み寄るには或る残酷な決断が必要なのです。

 

A: 二人の女優対決映画と先述しましたが、実際に母娘を演じたスシ・サンチェスバルバラ・レニーの一騎打ちでした。ほかはその他大勢と言っていい(笑)。来年2月のゴヤ賞ノミネーションが視野に入ってきました。

B: 「その他大勢」の一人、霊園で働いている飾り気のない、キアラの数少ない理解者として登場するトビアス役のフレッド・アデニスが好印象を残した。

  

    

 (撮影合間に談笑する、フレッド・アデニスとバルバラ・レニー、キアラの愛犬ナターシャ)

 

A: アデニスとベルナベの娘役グレタ・フェルナンデスは、イサキ・ラクエスタ&イサ・カンポの『記憶の行方』(「La próxima piel16Netflix)に出演している。二人ともカタルーニャ語ができることもあってバルセロナ派の監督に起用されている。グレタはセスク・ゲイの「Ficció」で長編デビュー、『しあわせな人生の選択』(「Truman)にもチョイ役で出演していた。

 

      

       (義母の過去を初めて聞かされるグレタ、グレタ・フェルナンデス)

 

B: フェルナンド・E・ソラナス作品やカルロス・サウラの『タンゴ』(98)などに出演したミゲル・アンヘル・ソラが、アナベルの現在の夫役で渋い演技を見せている。

A: アルゼンチン出身ですがスペイン映画の出演も多い。アルゼンチンの有名な映画賞マルティン・フィエロ賞を2回受賞しているほか、舞台でも活躍している実力者。フランスからアナベルの先夫マチュー役にリシャール・ボーランジェを起用、キャスト陣は国際色豊かです。

 

B: 本作と『記憶の行方』の導入部分は似てますね。ツララが融けていくシーンが音楽なしで延々と流れる。両作とも全体に音楽が控えめなぶん映像に集中することになる。

A: 音楽については後述するとして、マラガ映画祭2016の監督賞受賞作品です。カタルーニャ語映画でオリジナル題は「La propera pell」、作家性の強い、結末が予測できないスリラーでした。こちらもピレネーを挟んだスペインとフランスが舞台でした。

 

        「あまりに多くのことを求めすぎた」ことへの代償

 

B: ストーリーに戻ると、冒頭のシーンはピレネーの山間らしく樹間に湖が見える。映像は写真のように動かず無音である。祠のような大穴のある樹幹が何かを象徴するかのように立っている。若い女性が現れ穴の奥を覗く、これが主役の一人キアラであることが間もなく分かる。

A: この穴は伏線になっていて、後に母親アナベラの夢の中に現れる。湖も何回か現れ、謎解きの鍵であることが暗示される。シーンは変わって鏡に囲まれたきらびやかな豪邸の広間を流行のドレスを身に纏った女性がこちらに向かって闊歩してくる。ハイヒールの留め金が外れたのか突然転びそうになる。伏線、悪夢、鏡、悪い予感など、不穏な幕開けです。

 

       

            (樹幹の大きい穴を覗き込むキアラ)

 

B: 冒頭で二人の女性の生き方が対照的に描かれるが、最初はことさら不愛想に、無関心や冷淡さが支配している。なぜ母親は娘を置いて失踪したのか、なぜ娘は風変わりな願いを携えて、35年ぶりに唐突に母親に会いに来たのか、娘はどこに住んでいるのか、謎のまま映画は進行する。

A: 復讐か和解か、キアラの敵意のある眼差しは、時には優しさにあふれ、陰と陽が交互にやってくる。謎を秘めたまま不安定に揺れ動く娘、罪の意識を引きずってはいるが早く合理的に解決したい母、歩み寄るには何が必要か模索する。日曜日の午後、派手な化粧をして出ていったまま戻ってこない。それ以来、娘は窓辺に立って母を待ち続ける。娘にとって母の長い不在の重さは、打ち捨てられた存在の軽さに繋がる。

 

B: 母親が消えた8歳から溜め込んできた怒りが「お母さんにとって私は存在しない」というセリフになってほとばしる。「木登りが大好きだった」という娘のセリフから、帰宅する母親を遠くからでも見つけられるという思いが伝わってくる。ウソをつくことが精神安定剤だった。

A: アナベラは母よりも女性を優先させた。キアラが死んだことにしたマチューとの邂逅シーンで「あまりに多くのことを求めすぎた」と語ることになる。二人の青春は1960年代末、先の見えないベトナム戦争にアメリカのみならず世界の若者が反旗を翻し、大人の権威が否定された時代でした。

 

B: アナベラもマチューも辛い記憶を封印して生きてきた。「遠ざけないと生きるのに邪魔になる思い出がある」と、今は再婚してパリで暮らしているマチュー。

A: 記憶はどこかに押し込められているだけで消えてしまったわけではない。しかし辛い過去の思い出も作り直すことはできる。楽しかった子供の頃のフィルムを切り貼りして、別の物語を作ってキアラは生きてきた。

 

         

     (光の当て方が美しかった、スライドを見ながら過去の自分と向き合う母娘)

 

B: 全体的に音楽が入るシーンは少なく、だからアナベラがママ・キャスのバラード「私の小さな夢」の曲に合わせて踊るシーンにはっとする。外にいると思っていたキアラが部屋の隅にいて、踊っている母を見詰めて笑っている。そして「楽しそうでよかった」というセリフが入る。

A: 緊張が一瞬ほどけるシーン、「私の小さな夢」は1968年発売のヒット曲、アナベラの青春はこの時代だったわけです。ママ・キャスは絶頂期の32歳のとき心臓発作で亡くなったが、父親を明かさない娘がいたことも話題になった。時代設定のためだけに選曲したのではなさそうです。

 

B: 1968年当時、アナベラがマチューと暮らしていただろうフランスでは、怒れる若者が起こした「五月革命」が吹き荒れた時代でもあった。キアラが母親を連れ帰った家は、ピレネー山脈の山間の村のようです。今はキアラが愛犬のナターシャと住んでいるが、35年前は親子三人で暮らしていた。

A: フランス側のバスクでしょうか。「ラ・ロッシュの先は迷うから危険」という村人のセリフから、レジオン的にはヌーヴェル=アキテーヌ地域圏かなと思います。実際そこで撮影したかどうか分かりませんし、この地名に何か意味があるのかどうかも分かりません。

 

          キアラは「キアラ・マストロヤンニ」から取られた名前

 

B: キアラというイタリアの名前を付けた理由は「イタリアのナントカという苗字は忘れたが、その俳優の娘から取った」とアナベル。それでマルチェロ・マストロヤンニとカトリーヌ・ドヌーヴの娘キアラ・マストロヤンニから取られたと分かる。

A: フランスの女優キアラ・マストロヤンニのこと。二人の初顔合せはフェリーニの『ひきしお』(71)で、正式には結婚しませんでしたが、娘は1972年生れです。ですからキアラ誕生はそれ以降となり、現在は2016年頃の設定になっているようです。多分マチューとアナベルも籍は入れなかった設定でしょうね。アナベルが消えてしまう一つの理由が映画をやりたいからでした。

 

B: 残された娘はやれ切れない。情緒不安定、起伏の激しい人格を演じるのにバルバラ・レニーは適役です。非日常的な雰囲気をつくるのが得意です。

A: スシ・サンチェスは、もっと上背があると思っていましたが、意外でした。バルセロナの豪邸では大柄に見えましたが、だんだん小さくなっていくように見えた。その落差が印象的でした。来年の話で早すぎますすが、二人ともゴヤ賞2019女優賞ノミネートは確実ですね。

 

     

                        (自宅の客間を闊歩するアナベル)

 

B: ゴヤ賞ついでに撮影監督リカルド・デ・グラシア1972年、マドリード)について触れると、こちらもゴヤ賞ノミネートは間違いないのではないか。心に残るシーンが多かった。

A: サラサール監督の第2作、コメディ・ミュージカル20 centimetros、第310.000 noches en ninguna parteほか、本作のベースになった短編El domingoも手掛けています。ほかの監督では、アレックス・ピナの「KAMIKAZE」(14)、IMDbによればTVシリーズでも活躍している。

                

   (山の斜面を急降下するアナベルとキアラ)

    

B: 冒頭のシーンから惹きつけられます。特に後半、母に抱かれたキアラが雪の積もった山の斜面に敷かれたレールを急降下してくるシーン、ジェットコースターに乗れない人は汗が出る。前方にカメラを積んで撮影したようです。

A: 夜の遊園地で回転木馬がゆっくり回る光のシーン、二人でスライドを見るシーン、最後の静謐な湖のシーン。ただ美しいだけでなく、カメラの目は二人の女優の演技を引き立たせようと周到に向けられている。総じて会話が少ない本作では、俳優の目の演技が要求されるからカメラの果たす役目は大きい。

B: 映像美という言葉では括れない。カメラが映画の質を高めていると感じました。

 

      

       (撮影中のサラサール監督と撮影監督リカルド・デ・グラシア)

 

 

  主要キャスト紹介     

バルバラ・レニーは、『マジカル・ガール』(14、カルロス・ベルムト)以来日本に紹介された映画、例えば『インビジブル・ゲスト悪魔の証明』(16、オリオル・パウロ)、『家族のように』(17、ディエゴ・レルマン)と、問題を抱えこんだ女性役が多い。サラサール作品に初出演、本作で着るダサい衣装でもその美しさは際立つ。彼女の普段着、母親アナベルの豪華な衣装は、母娘の対照的な生き方を表している。

バルバラ・レニーのキャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ2015年0327

 

    

         (35年ぶりに対面する母と娘、バルセロナの豪邸)

 

スシ・サンチェス1955、バレンシア)は、今まで脇役専門でトータル70作にも及ぶ。本作では8歳になる娘を残して自由になろうと過去を封印して別の人生を歩んでいる母親役に挑んだ。日本初登場は今は亡きビセンテ・アランダの『女王フアナ』(01、俳優組合賞助演女優賞ノミネート)のイサベル女王役か。他にもアランダの『カルメン』(04)、ベルリン映画祭2009金熊賞を受賞したクラウディア・リョサの『悲しみのミルク』(スペイン映画祭09)、ベニト・サンブラノの『スリーピング・ボイス~沈黙の叫び』(11)、アルモドバル作品では『私が、生きる肌』(11、俳優組合賞助演女優賞ノミネート)、『アイム・ソー・エキサイテッド!』(13)、『ジュリエッタ』など、セスク・ゲイの『しあわせな人生の選択』(16)でも脇役に徹していた。『日曜日の憂鬱』で主役に初挑戦、ほかにサラサール作品では、『靴に恋して』以下、「10.000 noches en ninguna parte」(12)でゴヤ賞助演女優賞にノミネートされた他、俳優組合賞助演女優賞を受賞した。TVシリーズは勿論のこと舞台女優としても活躍、演劇賞としては最高のマックス賞2014の助演女優賞を受賞している。

 

        

      (本当の願いを母に告げる娘、スシ・サンチェスとバルバラ・レニー)

 

 

  監督フィルモグラフィー

ラモン・サラサールRamón Salazarは、1973年マラガ生れの監督、脚本家、俳優。アンダルシア出身だがバルセロナでの仕事が多い。1999年に撮った短編Hongosが、短編映画祭として有名なアルカラ・デ・エナーレスとバルセロナ短編映画祭で観客賞を受賞した。長編デビュー作Piedrasがベルリン映画祭2002に正式出品され、ゴヤ賞2003新人監督賞にもノミネートされたことで、邦題『靴に恋して』として公開された。200520 centimetrosは、ロカルノ映画祭に正式出品、マラガ映画祭批評家賞、マイアミ・ゲイ&レスビアン映画祭スペシャル審査員賞などを受賞した。201310.000 noches en ninguna parteはセビーリャ(ヨーロッパ)映画祭でアセカン賞を受賞している。2017年の短編El domingo12分)、2018年のLa enfermedad del domingo」が『日曜日の憂鬱』の邦題でNetflixに登場した。

 

     

『モルタデロとフィレモン』のハビエル・フェセル*「Campeones」が大ヒット2018年06月12日 16:24

          主人公は知的障害をもつ10人のバスケットボール選手たち

   

     

★『モルタデロとフィレモン』のハビエル・フェセルが、Campeonesで長編コメディに戻ってきました。主人公は初出演の10人の知的障害者と、『マーシュランド』や「El autor」で、ゴヤ賞の主演男優賞を2回受賞したハビエル・グティエレス、本作の演技で3回目の受賞も夢ではない。46日の封切り以来、9週目にして興行成績1600万ユーロ、観客動員数は既に270万人を突破、今なお快進撃を続行中。この記録を超えるのは、2014年公開されたエミリオ・マルティネス=ラサロの大ヒット作「オーチョ・アペジードス・バスコス」だけということで、公開以来トップ3をキープしている。

 

 Campeones(「Champions」)2018

製作:Morena Films / Movistar+ / Pelicula Pendelton(以上スペイン)/ Realizaciones Sol S.A.(メキシコ)

監督:ハビエル・フェセル

脚本:ダビ・マルケス、ハビエル・フェセル

撮影:チェチュ・グラフ

編集:ロベルト・ボラド、ハビエル・フェセル

音楽:ラファエル・アルナウ、歌曲「Este es el momento」演奏Coque Malla

キャスティング:ホルヘ・ガレオン

美術:ハビエル・フェルナンデス

衣装デザイン:アナ・マルティネス・フェセル

メイクアップ&ヘアー:エリ・アダネス(チーフ)、ペドロ・ラウル・デ・ディエゴ(特殊メイク)、リュイス・ソリアノ(ヘアー)

製作者:ルイス・マンソ、アルバロ・ロンゴリア、ガブリエル・アリアス=サルガド

 

データ:製作国スペイン=メキシコ、スペイン語、2018年、コメディ・ドラマ、124分&118分、製作資金約450万ユーロ、撮影地マドリード、ウエルバ、撮影期間約9週間、配給元ユニバーサル・ピクチャー(スペイン)、公開マドリード限定43日、スペイン公開46日、メキシコ518日、フランス66日、ドイツ726

 

キャスト:ハビエル・グティエレス(マルコ・モンテス)、フアン・マルガジョ(フリオ)、アテネア・マタ(ソニア)、ルイサ・ガバサ(アンパロ)、ダニエル・フレイレ(カラスコサ)、ルイス・ベルメホ(ソニアの同僚)、(他「ロス・アミーゴス」の選手として)セルヒオ・オルモ、フリオ・フェルナンデス、ヘスス・ラゴ、ホセ・デ・ルナ、グロリア・ラモス、フラン・フエンテス、ヘスス・ビダル、ステファン・ロペス、アルベルト・ニエト・フェランデス、ロベルト・チンチジャ、ほか対戦チーム「ロス・エナノス」の選手多数、ハビエル・フェセルも新聞記者役で出演している。

  

   

物語:マルコ・モンテスはスペイン・バスケット・ナショナルリーグのチームABCの副監督である。マナーが悪く横柄なことから他のコーチとは上手くいってない。プロとしてのキャリアも人間的にも多くの問題を抱えこんでお先真っ暗である。むしゃくしゃして飲酒運転、あげくの果てに事故ってしまい解雇されてしまった。裁判官は懲らしめの罰金として2年間の服役か、または90日間の奉仕活動「ロス・アミーゴス」という知的障害者のバスケットボール・チームの監督のどちらかを選択するよう言い渡した。後者を選んだマルコにとってこんな罰則は好みではなかったが、やがてこの奇妙なチームの面々から、学ぶべき事柄の多さに気づいていく。彼らの病気のイメージからは程遠い、率直で独立心の強い、肩ひじ張らずに生きていく姿に我が人生を見つめ直していく。

 

         「フツウ」の定義、「幸せ」の定義、誰が決めるの?

 

ハビエル・フェセルと言えば『モルタデロとフィレモン』(03)、古くからのファンなら『ミラクル・ぺティント』(98)、あるいは未公開ながらラテンビート上映の『カミーノ』(08)、短編ドキュメンタリー『ビンタと素晴らしきアイディア』(04)が、スペイン新進作家5人のオムニバス映画「En el mundo a cada rato」(邦題『世界でいつも・・・』ユニセフ制作)に採用され上映されました。『カミーノ』はゴヤ賞2009の作品・監督・脚本賞以下6冠制覇の話題作でした。ラテンビート上映時に来日、Q&Aでの飾らない人柄から多くのファンを獲得しました。1985年暮に14歳という短い生涯を閉じたアレクシア・ゴンサレス=バロスの実話にインスピレーションを受けて製作されたフィクションでしたが、家族が敬虔なオプス・デイの信者だったことから、後々訴訟問題に発展、監督は長らく長編から遠ざかっておりました。

 

2014年アニメーションMortadelo y Filemon contra Jimmy el Cachondo以外は、すべて短編(11作)で、うちBienvenidos28分)がアルカラ・デ・エナレス短編映画祭2015の観客賞を受賞、ほか国際映画祭での受賞が相次ぎました。もう長編ドラマは撮らないのかと気になっていたところでした。『カミーノ』から10年の歳月が流れた昨年11月に、監督がTV番組に宣伝を兼ねて出演、「3月公開」をアナウンスしました。ファンが心待ちにしていた結果が、この興行成績にストレートに出ているようです。コメディCampeonesは、上記したように目下快進撃を続けています。映画祭、DVD、あるいは公開を期待しても良さそうです。

 

   

             

        (新作をプレゼンするフェセル監督とグティエレス)

 

★予告編からも充分面白さが伝わってきますが、本作のテーマの一つが、「フツウ」の定義、「幸せ」の定義、障害を大いに楽しもうという視点が観客を虜にしている。エル・パイスによると、成功の秘密は3つあるという。一番目は、スペインで興行成績がよい映画は民放テレビ局がお膳立てした映画が多いが、本作は該当しない。二番目は、知名度のある俳優はマルコ・モンテス役のハビエル・グティエレス唯一人、それ以外は知的障害のあるアマチュアたち、三番目は、テーマの切り取り方、人間的にもコーチとしても、社会的信用が失墜したダメ男マルコが主人公、ハビエル・グティエレスの魅力が大きいようです。7歳以下は保護者同伴だが、なかには子供に分からないジョークもある由、しかし全く問題ではないそうで、子供たちは楽しんでいると家族連れは口を揃える。

 

      

                     (チャンピオンの表彰台に立つ監督&選手一同)

   

      

(ロス・アミーゴスの選手に演技を指示するフェセル監督)

 

★フェセル監督曰く「私たちはキャスト選定の段階で、実際の知的障害者を起用すべきか、あるいは役者に演じてもらうほうがよいか事前に決めていなかった。しかしオーディション初日に、彼らが発する誠実さと信頼性に出会ってしまった」ので彼らに出演依頼をしたようです。「私は根っからの楽観主義者なんだ、それに最初から登場人物たちの能力が観客と繋がっていると信仰のように確信していたんですよ」「私は若者たちのエモーショナルな知性や人生を大いに楽しんじゃおうという考え方に魅了された」「何が何だか分からない感情に満たされ泣いたり笑ったりしているうちに、幸せな2時間が過ぎてしまう」エトセトラ、ということです。笑う門には福来る、つかの間の幸せでも充分ですから浸りたい。

 

    

          (ハビエル・グティエレスと「ロス・アミーゴス」)

 

★まだ先の話ですが、2009年『カミーノ』を上映してくれたラテンビートが今年15周年を迎えるそうです。アグスティン・アルモドバルをゲストに開催された第1回、当初は「ヒスパニックビート」でした。2回目が開催されるかどうか危ぶみましたが、どっこい15年間続いているのでした。ということで今年の目玉に「チャンピオン」は打ってつけではないでしょうか。他に2018年興行成績トップ3の一つ、アレックス・デ・ラ・イグレシアのシリアス・コメディPerfectos desconocidosもスクリーンで鑑賞したい。

 

 

 

  *劇場公開映画*

ミシェル・フランコLas hijas de Abril『母という名の女』の邦題でスケジュールが決定しました。劇場は『父の秘密』や『ある終焉』を公開したユーロスペース2018616日(土)~です。カンヌ映画祭2017「ある視点」部門の審査員賞受賞作品。

 

    

カルラ・シモンのデビュー作Verano 1993『悲しみに、こんにちは』の邦題で、同じユーロスペースで7月下旬公開です(日時は未定)。以前ラテンビートで『夏、1993』として上映予定だった映画です。まったくの的外れとまで言わないが、どうしてこんな陳腐な邦題にしたのか理解に苦しむ。ゴヤ賞2018新人監督賞受賞作品。

 

     

Perfectos desconocidos」の紹介記事は、コチラ20171217

Las hijas de Abril」の紹介記事は、コチラ20170508

El verano 1993」の主な紹介記事は、コチラ20170222

アメナバル始動*新作のテーマはウナムノとスペイン内戦2018年06月01日 14:13

         14年ぶりスペイン語で撮る「Mientras dure la guerra

 

★年明け2日に新作をアナウンスしていたアレハンドロ・アメナバルが、去る528日、サラマンカ市のプラサ・マジョールでクランクインしました。新作のタイトルはMientras dure la guerra哲学者、著作家ミゲル・デ・ウナムノの最晩年、1936717日スペイン内戦勃発から彼の死の1231日までの6か月が描かれる。主な製作はフェルナンド・ボバイラと彼の制作会社MOD ProduccionesMovistar+Himenoptero、ほかICAAの援助を受けている。MODは過去に『アレクサンドリア』(09)や「Regression」(15、未公開)などアメナバル作品を手掛けている。製作資金638万ユーロ、うち昨年10月に140万を受け取っている。サラマンカ、トレド、マドリード、チンチョン、バスクなど、期間は8週間の予定。

 

     

 (1936年当時を再現するため植木鉢を設置したプラサ・マジョールを散策するアメナバル)

 

★発表時にはキャスト陣は伏せられていましたが、主人公のウナムノに同じバスク出身のカラ・エレハルデ、彼に対立するフランコ将軍の友人にして陸軍将官ホセ・ミリャン・アストライエドゥアルド・フェルナンデス、ほかフランコ総統にサンティ・プレゴナタリエ・ポサ、、パトリシア・ロペスインマ・クエバスルイス・ベルメホなどが共演する。過去にアメナバル映画に出演したキャストは起用しない方針の監督、オール初出演となります。カラ・エレハルデはコメディ「オーチョ・アペジード」シリーズ、イシアル・ボリャインの『ザ・ウォーター・ウォー』、古くはフリオ・メデムの『バカス』『赤いリス』ほか、当ブログでも何度もご登場願っているベテラン、対するエドゥアルド・フェルナンデスも演技は折り紙付き、『スモーク・アンド・ミラーズ』『エル・ニーニョ』『ブラック・ブレッド』などあくの強い役柄が多い。

 

     

   (ウナムノに扮したカラ・エレハルデ)

 

         

                     (カラ・エレハルデとミゲル・デ・ウナムノ)

  

2004年の『海を飛ぶ夢』以来14年ぶりにスペイン語で撮ることになったアメナバル、「このプロジェクトは特別です。と言うのも言語が長いあいだ撮っていなかったスペイン語だからです。スペインの過去の歴史に基づいているにもかかわらず、現在について語っています。スペイン内戦が始まったばかりの、軍人と文学者をめぐる二つの世界の一致と対立について語ります」とテーマを語っている。「ほかの作品ではクランクインする前はよく眠れないのですが、今回はかなり良く睡眠がとれています。多分スペイン語で撮るからだと思います。この変化でからだの調子もいい。矛盾しているようだが、今作は穏やかとは言えないテーマだからです」と撮影前のインタビューに応えていた。

 

        

     (アメナバル監督とウナムノ役のカラ・エレハルデ、サラマンカで撮影開始)

 

19361012日、サラマンカ大学講堂でのミゲル・デ・ウナムノとミリャン・アストライの対決がクライマックスの一つと予想されます。ミリャン・アストライ18791954)は、1920年、フランコ将軍の指揮のもとにスペイン外人部隊(Legión Española)を設立した(異説もある)。スペイン・モロッコ戦争(192026)で右目と左腕を失っている。アメナバルは、外人部隊の退役軍人から「ウナムノとの対決については(ミリャン・アストライ)将軍の回顧録を読み、真実に基づいて語ること」という警告をうけている。つまり名誉を損なうような映画なら裁判に訴えるというわけです。「そんな脅しに屈服するようなアメナバルではない」というのが大方の予想です。二人とも鬼籍入りして半世紀以上も経つわけですが、ことスペイン内戦に関する限り、「ついこのあいだ終わったばかりの戦争」なのでしょう。スペインで「先の大戦」とは第二次世界大戦ではなくスペイン内戦を指すことに変わりない。

 

(フランコ総統とミリャン・アストライ)

    

 

    

 (フランコ総統のサンティ・プレゴ、ミリャン・アストライのエドゥアルド・フェルナンデス)

 

★まだ撮影が始まったばかりですが外野はかなり熱くなっているようです。アメナバルは「ウナムノは魅力的な人物、何に対しても妥協しない。言ったこと考えたことを練り上げる。そして修正し、撤回する・・・だからドラマ作りの観点からいえば金ですね」と語っている。やはり矛盾に満ちた哲学者に魅せられているようです。スペインではコメディが主流で、ドラマを撮るのは困難、『アレクサンドリア』が興行的に失敗だったことをまだ覚えているけれど、挑戦したいということです。ウナムノに「カラ・エレハルデ起用が意外と受け取られているが、彼はもう大した役者です。彼も脚本を気に入ってくれた。私は彼の演技や役作りが観客をきっと魅了するだろうことを確信している」と。

 

  

 (撮影風景、アメナバル監督)

 

            

                     (黒い帽子をかぶった白髭の老人がウナムノ役のカラ・エレハルデ)

  

★脚本は2年前に完成していたそうで、アレハンドロ・エルナンデスとの共同執筆です。脚本家エルナンデスはキューバ出身、2000年にスペインに亡命した才能流出組の一人、マヌエル・マルティン・クエンカの『カニバル』(15、監督との共同執筆)や「El autor」(17)、スペイン史のキイポイントとなるフィリピン割譲を余儀なくされた1898年を描いたサルバドル・カルボの「1898Los últimos de Filipinas」(16)などを手掛けており、作品は当ブログでご紹介しています。

 

★ウナムノのビオピックとしてマヌエル・メンチョンLa isla del viento2016)があり、こちらのウナムノにはホセ・ルイス・ゴメスが扮した。架空の人物も登場させたフィクション性の高い映画ですが、同じサラマンカ大学講堂での「19361012日の論争」が一つの山場になっており、哲学者のいる。当ブログでは、映画紹介のほか、ミゲル・デ・ウナムノの経歴、ミリャン・アストライとの対決などを紹介しております。

La isra del viento」の紹介記事は、コチラ20161211

 

 

   

           (ホセ・ルイス・ゴメスが扮したウナムノ)


「監督週間」にロマのレスビアンの愛を語った映画*カンヌ映画祭2018 ④2018年05月13日 16:19

       アランチャ・エチェバリアのデビュー作「Carmen y Lola

 

★「ある視点」は後回しにして、ビルバオ生れの新人アランチャ・エチェバリアのデビュー作Carmen y Lolaについて。女性同士の愛が禁じられているロマ社会で、偏見や差別、家族の無理解と闘って愛を貫徹しようとする十代の娘カルメンとロラの物語。エチェバリア監督談によると、本作は2009年スペインでロマ女性の同性婚第1号となったロサリオとサラのニュースにインスパイアーされて製作したということです。実在の二人はロマの居住が多いグラナダ出身ですが、映画はマドリードの町外れに舞台を移している。スペインでは、2005年同性婚が正式に認められるようになった。「ある視点」でも、ケニアの女性監督ワヌリ・カヒウWanuri Kahiuが首都ナイロビを舞台にして撮った長編デビュー作Rafiki / Friendが、レズビアンの愛をテーマにしている。ケニアでは現在でもケニアの法律や文化、またモラルに反するとして、同性愛は御法度で14年間の禁固刑が科せられる。今作はホモセクシュアルなシーンを理由に本国では上映禁止になった。

 

     

 

 Carmen y Lola2018

製作:TvTec Servicios Audiovisuales

   協賛:ICAA、教育文化スポーツ省、マドリード市、Orange Spain Film madrid

監督・脚本:アランチャ・エチェバリア

音楽:ニナ・アランダ

撮影:ピラール・サンチェス・ディアス

編集:レナート・サンフアン

キャスティング:ディエゴ・ベタンコル、クリスティナ・モレノ

衣装デザイン:テレサ・モラ

メイクアップ:ソレ・パディリャ、グロリア・ピナル

製作者:アランチャ・エチェバリア、ピラール・サンチェス・ディアス

 

データ:スペイン、スペイン語、2018年、90分、撮影地マドリード、サンタンデール(カンタブリア州)、製作費約700,000ユーロ。脚本はSGAE基金(作家編集者協会)が設立したフリオ・アレハンドロ賞の特別メンションを受賞。カンヌ映画祭2018併催の「監督週間」正式出品作品、初監督作品に与えられるカメラ・ドール賞の対象作品に選ばれている。

 

キャスト:サイラ・モラレス(ロラ)、ロジー・ロドリゲス(カルメン)、モレノ・ボルハ(ロラの父パコ)、ラファエラ・レオン(ロラの母フロール)、カロリナ・ジュステ(パキ)、他

 

物語:カルメンは、マドリードの町外れに住んでいるロマの娘である。他の女の子たち同様、結婚して、できるだけ沢山の子供を産み育てるという、なん世代にも亘って繰り返されてきた人生を運命づけられている。美容院で働いているが、父親も恋人も、彼女が仕事をしていることを特別意に介しない。17歳になれば結婚することになるだろう。ロラは16歳、他のロマの娘とは一風変わっていて、大学に行くことが夢である。内気なロラは時々壁に小鳩のグラフィティをして周りを驚かせている。男の子には興味がなく、テレビで女性同士がキスをしているのを見るとチャンネルを変えてしまう。野菜の露天商を営む父親は娘が地域の合唱団で歌っているのを誇りに思い、字の読めない母親は娘が学校に通っていることを誇りにしている。そんな二人がある日、雨の降り出した市場で偶然運命の出会いをしてしまった。カルメンはロラに抗しがたい魅力を感じ、ロラも不思議な感情を抱く。ロマ社会の偏見や差別、家族の口出しにもかかわらず二人は急速に惹かれあっていく。

 

     

            (一目で惹かれあうカルメンとロラ)

 

★プロフェッショナルな俳優は、パキを演じたカロリナ・ジュステ唯一人だそうで、他はオーディションに押し掛けた1000人ほどのアマチュアから、エキストラを含めて約150人を選んだ。大変な作業で6か月もかかり、特にカルメン役の人選に難航した。もう半ば諦めかけたときにロジー・ロドリゲスが現れ、彼女のエントリーナンバーはなんと897番だった。結婚しても6か月後に夫を見捨てるという、ロマ・コミュニティに見られる典型的な「不幸な結婚」の一例を演じる。サイラ・モラレスが扮したロラは16歳、ロマとロマでない両親の娘という設定、父親が営む野菜の露天商を手伝っている。恥ずかしがり屋で目立つのが好きではないが、カルメンと出会うことで心を急速に解放していく。   

        

                    (カルメン役のロジー・ロドリゲス)

  

        

(壁に小鳩のグラフィティをして心を発散させるロラ)

 

★冒頭で触れたように監督の肩を押したのは、2009年の「ロマ女性の同性婚第1号」というグラナダ・ニュースを聞いたことによる。二人は顔写真なしの仮名を条件に新聞社の取材に応じた。だからロサリオもサラも本名ではない。周囲からも家族からもロマ・コミュニティからも追い出され、闘いはまるでボクシングの試合のようだったという。いわゆる「村八分」以上の扱いを受けたが、二人の決心は揺るがなかった。ロマの女性であることは、家父長制が敷かれたマチスモが常識である社会では、そもそも女性の同性婚など存在すべきではないということです。ロサリオとサラの話は遠い前世紀のことではなく、ついこの間の話なのである。今もってスペインのロマの女性は、用箪笥ではなく金庫室に閉じ込められているから、容易なことではカミングアウトできない。

 

      

           (本作撮影中の左から、母親、父親、弟、ロラ)

 

★エチェバリア監督が「カルメンとロラ」で語りたいのは、二人が愛を育むなかで自分たちの視野を広げ、それぞれの視点を世界に向けること、ロマの女性たちの声を世界に届けることのようです。監督にとって重要なことは、現代的な素材を使ってクラシックな表現形式に生気を吹き込むことにある。かつてのパルム・ドール受賞作品、ダルデンヌ兄弟の『ロゼッタ』『ある子供』、またはジャック・オーディアールの『ディーパンの闘い』のように、現実を操らないで語ることを目指して。最も以上の3作は、受賞発表時には会場からブーイングと称賛が同時に起きたのでした。

 

アランチャ・エチェバリアArantxa Echevarria は、1918年ビルバオ生れの監督、脚本家、製作者。マドリードのコンプルテンセ大学で映像科学を学び、同大学でオーディオビジュアル演出を専攻した。その後オーストラリアのシドニー・コミュニティ・カレッジで映画製作を学んだ。1991年から広告宣伝と映画を両立させながら、オーディオビジュアル産業のプロフェッショナルなキャリアを出発させる。

 

          

            (本作撮影中のアランチャ・エチェバリア監督)

 

2010年、短編デビュー作となるPanchitoは、アマチュアだけを起用して撮ったコメディ。同2010年、国営テレビの要請でDocumentos TVのルポルタージュCuestión de pelotas、を撮る。これは女性サッカー・クラブReal Federación Española de Fútbolについてのドキュメンタリー。2013年、短編サイコ・スリラーDe noche y de prontoを監督、翌年ゴヤ賞2014短編映画部門にノミネートされた。2016年、短編El último busが、メディナ・デル・カンポ映画祭の作品賞を受賞した。2017年、ドキュメンタリー7 from Etheriaは、7人の共同監督作品(製作は米国)。2018年、長編デビュー作Carmen y Lolaが監督週間にノミネートされた。

 

     

         (サイコ・スリラーDe noche y de pronto」のポスター)


アスガー・ファルハディの「エブリバディ・ノウズ」*カンヌ映画祭2018 ③2018年05月08日 17:53

            イランの監督が撮っても「Everybody Knows」はスペイン映画です

    

    

 (ジャン=リュック・ゴダールの『気狂いピエロ』を採用した第71回カンヌ映画祭ポスター)

 

★「批評家週間」にはポルトガル映画だけでスペイン語映画はノミネートなしです。コンペティションのオープニング作品Everybody Knowsは、イランの監督アスガー・ファルハディがスペインの大物俳優を起用して、言語はスペイン語、スペイン、フランス、イタリアが製作国になって約10,000,000ユーロで製作、スペイン語題はTodos lo sabenです。アカデミー外国語映画賞2冠の監督がスペイン語で撮るということで、2016年の製作発表時から鳴り物入りで逐一報道され話題を提供してきた。監督はカンヌ映画祭の常連でもあるからノミネーションは確実視されていたが、オープニング作品とは驚きました。ジャン=リュック・ゴダールの「The Image Book」を差し置いて選ばれたわけですから。今年のカンヌ映画祭ポスターは彼の『気狂いピエロ』です。スペイン映画が選ばれるのは、2009年アルモドバルの『バッド・エデュケーション』以来だそうです。

 

★カンヌ映画祭は英語題が基本ですが、一応スペイン映画なので西語タイトルにします(IMDbを採用)。まだ日本語データが揃っておりませんので、情報源は西語、英語のウイキペディアです。IMDbではペネロペ・クルスが扮するヒロインの名前が、キャスト欄ではラウラ、ストーリーラインではカロリナとチグハグですが、ウイキペディアと予告編を見る限りではラウラなのでこちらを採用します。

 

          

              (スペイン語タイトル採用のポスター)

 

Todos lo sabenEverybody Knows2018

製作:Memento Films(仏)/ Morena Films(西)/ Lucky Red(伊)/ El Deseo / France 3 Cinéma

監督・脚本:アスガーファルハディ(イラン)

撮影:ホセ・ルイス・アルカイネ(スペイン)

音楽:アルベルト・イグレシアス(スペイン)

編集:ハイデー・サフィヤリ(イラン、『別離』『セールスマン』)

衣装デザイン:ソニア・グランデ(スペイン、『アザーズ』『ミッドナイト・イン・パリ』)

メイクアップ:アナ・ロサノ、マリロ・オスナ

プロダクション・デザイン:マリア・クララ・ノタリ

プロダクション・マネージメント:アルバロ・サンチェス・ブストス

製作者:アレバロ・ロンゴリア(スペイン)、アレクサンドル・マレ=ギ(フランス)、アンドレア・オキピンティ(イタリア)、他

 

データ:製作国スペイン=フランス=イタリア、スペイン語、2018年、サイコ・スリラー、130分、撮影地マドリード北方トーレラグナ、グアダラハラ、撮影期間2017821日クランクイン、12月まで。カンヌ映画祭2018オープニング作品。

 

キャスト:ペネロペ・クルス(ラウラ)、ハビエル・バルデム(ラウラ元夫パコ)、リカルド・ダリン(ラウラの夫アレハンドロ)、バルバラ・レニー(パコの妻ビクトリア)、インマ・クエスタ(ラウラの妹)、エドゥアルド・フェルナンデス、エルビラ・ミンゲス、ハイメ・ロレンソ、ロヘル・カサマジョール(ラウラ妹の花婿)、ラモン・バレア(ラウラの父)、サラ・サロモ、カルラ・サンプラ、セルヒオ・カステジャーノス、ネイジャ・ロハス、パコ・パストル・ゴメス(ガブリエル)、他

 

物語:ブエノスアイレスに住んでいるラウラは、妹の結婚式に出席するためアルゼンチンの夫アレハンドロや子供たちと連れ立って、生れ故郷であるマドリード北方の小さな町に帰郷する。ラウラの元夫であるパコとその妻ビクトリアも出席するという。しかし、あることを切っかけに予期せぬ突発事件が起き、巻き込まれた全員の人生を徹底的に変えてしまうことになる。過去の秘密が次第に明らかになっていく。

 

★本作の舞台となる小さな町は、マドリード北方に位置するトーレラグナという、現在人口5000人に満たない町です。町中央の広場プラサ・マジョールに面して「サンタ・マリア・マグダレナ教会」があり、映画にも出てくる教会はここではないかと思います。他には市民戦争で破壊された建造物が文化遺産としてそのまま残されているようです。こんな小さな町で事件が起きればどうなるか? 秘密は誰も口にしないだけで「エブリバディ・ノウズ」である。作中のセリフ「Todos lo saben」がタイトルになっている。

 

      

               (再会した元夫婦、ラウラとパコ)

 

★ヒロイン役のペネロペ・クルス、ゴヤ賞2018で主演女優賞にノミネートされて来マドリードしていたとき、本作の撮影中のエピソードを語っていた。「ファルハディ(監督)から、私を主役にした脚本を書いている、という電話を貰ったの・・・アスガーは感性がとても特別な監督で、例えば私がパニックの発作を起こして救急車に乗るシーンがあった。撮影が済んで救急車から下りてくると私を抱きしめて、別のシーンも撮りたいと頼むの。やり直すとそれが気に入った。私のキャリアの中でも非常に難しい登場人物でした」。気に入らないと不機嫌になって怒鳴る監督もいるからね。ハビエル・バルデムとの結婚10周年を迎えたクルス、7歳と4歳の子供の母親、親しい友人たちは「女優として女性として、今が最も充実している」と口を揃える。間もなく開幕するカンヌ初日、最も輝く女性は彼女でしょう。

 

          

               (44歳になったペネロペ・クルス)

 

アスガー・ファルハディフィルモグラフィーは、劇場公開作品では2009『彼女が消えた浜辺』2011『別離』2013『ある過去の行方』2016『セールスマン』4作でしょうか。タイトルがネタバレしていて頂けないが、個人的には最初の『彼女が~』には衝撃を受けた。厳しい検閲を掻い潜ってイランでもこんな素晴らしい映画が撮れるのだという驚きでした。アカデミー外国語映画賞を受賞した『別離』や『セールスマン』も悪くないが、『彼女が~』ほどではなかった。家庭のもめごとを軸にして、社会全体の闇を炙り出すテーマが大好きな監督、今度はスペインの何が炙り出されるのでしょうか。

 

         

            (本作撮影中のアスガー・ファルハディ監督)

 

★主なキャスト以外では、リカルド・ダリン(『サミット』『瞳の奥の秘密』、)バルバラ・レニー(『マジカル・ガール』『家族のように』)、ラウラの妹役インマ・クエスタ(『スリーピング・ボイス 沈黙の叫び』『ブランカニエベス』)、その結婚相手になるロヘル・カサマジョール(『パンズ・ラビリンス』『ブラック・ブレッド』)、エドゥアルド・フェルナンデス(『スモーク・アンド・ミラーズ』『エル・ニーニョ』)、ハイメ・ロレンテNetflix配信TVシリーズ『ペーパー・ハウス』)、エルビラ・ミンゲス(『暴走車 ランナウェイ・カー』『時間切れの愛』)、ブドウ栽培をしているラウラの父役ラモン・バレア(『ブランカニエベス』Netflix配信『となりのテロリスト』)など、演技派のベテラン、新人を取り揃えています。

  

           

     (ラウラと夫アレハンドロ)

     

        

        (パコと妻ビクトリア、後ろ向きのバルバラ・レニーで残念)

 

      

                        (ラウラと妹役のインマ・クエスタ)

     

★フランスのプロデューサーのアレクサンドル・マレ=は、『ある過去の行方』と『セールスマン』を手掛けており、俳優としても活躍中のミラノ出身のアンドレア・オキピンティは、『イル・ディーヴォ』、『少年と自転車』、『海を飛ぶ夢』など。アルバロ・ロンゴリアは、フリオ・メデム映画を手掛るプロデューサーで、クルスががん患者を演じた「Ma ma」、『ローマの部屋』、『セブン・デイズ・イン・ハバナ』、古くはサウラの『イベリア』などをプロデュースしている。撮影監督ホセ・ルイス・アルカイネは、サウラ、今は亡きビガス・ルナ、アルモドバルを撮っているベテラン、音楽のアルベルト・イグレシアスは毎年ゴヤ賞にノミネートされ、ゴヤ胸像のコレクター、やはりお金が掛かっているなぁという印象です。

 

            

       (左から、バルデム、ファルハディ監督、ダリン、フェルナンデス)

 

「金のビスナガ」 受賞作 「Las distancias」*マラガ映画祭2018 ⑯2018年04月27日 14:54

         エレナ・トラぺが作品賞「金のビスナガ」と監督賞受賞

 

     

エレナ・トラぺの長編第2Las distancias作品賞(スペイン映画部門)、トラペ自身も監督賞を受賞しました。昨年のカルラ・シモンの『夏、1993』に続いて、カタルーニャの若い女性監督が「金のビスナガ」を受賞したことになります。ESCACの監督科出身、先輩イサベル・コイシェの薫陶を受けているようです。秋の映画祭上映への期待やゴヤ賞2019ノミネーションを考えてアップしておきます。

ESCACEscuela Superior de Cine y Audiovisuales de Cataluña1994年バルセロナ大学の付属上級映画学校として設立された。現在は近郊のタラサに本部を移して活動している。フアン・アントニオ・バヨナ、キコ・マイリョ、マル・コル、ハビエル・ルイス・カルデラなどバルセロナ派の監督の多くが本校の出身者です。

 

        

      (赤絨毯に現れた、左からブルノ・セビーリャ、エレナ・トラぺ監督、

   アレクサンドラ・ヒメネス、マリア・リベラ、ミキ・エスパルベ、マラガ映画祭2018

 

 Las distancias(「Les distáncies」)2018

製作:Coming Soon Films / Miss Wasabi

      協賛 TV3(カタルーニャTV/ RTVE / ICEC / ICAA

監督:エレナ・トラぺ

脚本:エレナ・トラぺ、ミゲル・イバニェス・モンロイ、Josan Hetero

撮影:フリアン・エリサルデ

編集:リアナ・アルティガル

美術:アンヘラ・リベラ

録音:ジョルディ・ロシニョール・コロメル、アルベルト・マネラ

キャスティング:アンナ・ゴンサレス

衣装デザイン:マルタ・ムリーリョ、サラ・クレメンテ

メイクアップ:ダナエ・ガテル

プロダクション・デザイン:バネッサ・Locke、ノラ・ウィリー

助監督:アンナ・カプデビラ

製作者:マルタ・ラミレス、(協力)イサベル・コイシェ、マルセロ・ブッセ

 

データ:製作国スペイン、言語カタルーニャ語・スペイン語、2018年、99分、ドラマ、マラガ映画祭2018正式出品、417日上映、スペイン今秋公開が決定している。配給Sherlock Films

 

キャスト:アレクサンドラ・ヒメネス(オリビア)、ミキ・エスパルベ(コマス)、イサク・フェリス(ギリェ)、ブルノ・セビーリャ(エロイ)、マリア・リベラ(アンナ)他

 

プロット:オリビア、エロイ、ギリェ、アンナの仲間4人は冬のベルリンにやって来る。35歳の誕生日を迎えるコマスを驚かすためだ。しかしコマスは彼らが期待したようではなかった。週末までずっとグループは彼の友情の感じ方に疑問をもちながら次第にばらばらになっていくだろう。彼の生き方が、彼らが若かった頃に共有していたようなものではないことを受け入れ、それぞれ失望に向き合うことになる。

  

     

 (左から、ミキ・エスパルベ、マリア・リベラ、ブルノ・セビーリャ、トラペ監督、

 アレクサンドラ・ヒメネス、プロデューサーのマルタ・ラミレス、417日マラガにて)

 

           永遠にはつづかない壊れやすい友情についての物語

 

★ストーリーからは特別なハプニングが起きる印象を受けませんが、見た目にそうであっても実は深層では登場人物が葛藤しているという作品があるから未見では判断できない。というのは中心人物コマスの寡黙さが逆に雄弁に感じられるからです。若者たちが30代半ばになり、友情の美名のもとに邂逅する。ところが彼らがかつて描いていた夢の挫折に直面すると、美名に隠れていたフラストレーションが引き起こされ徐々に覆いが外されていく。友情は永遠にはつづかない。コマスを演じたミキ・エスパルベ1983バルセロナ)はコマスと同世代、マラガ映画祭2016コンペティション部門に出品されたマルク・クレウエトの辛口コメディEl rey tuercoの主役を演じている。

El rey tuerco」の紹介記事は、コチラ20160505

 

★もう一人の主役オリビア役で女優賞を受賞したアレクサンドラ・ヒメネス1980サラゴサ)は、目下引っ張り凧の女優の一人、バレリーナとして15歳でプロデビューしたという抜群のプロポーション、本映画祭でもベストドレッサーとしてメディアの注目を浴びていた。公開作品はナチョ・G・ベリジャの『シェフズ・スペシャル』(08)、ハビエル・ルイス・カルデラ『最終爆笑計画』(09、未公開DVD『ゴースト・スクール』(12SPY TIME スパイ・タイム』15)、パコ・レオンKIKI~恋のトライ&エラー』など比較的公開作品が多く、コメディ・ファンにはお馴染みです。未公開ですがフアナ・マシアスのコメディ「Embarazada」では、パコ・レオンとタッグを組み、40代で子供を持とうと奮闘する夫婦役を演じた。夫とは子供願望度に温度差があり次第に食い違っていく妻役が高評だった。バレリーナから転向後、マドリードのEscuela Superior de Artes TAI1970年創立)で演技を学んだという努力家でもある。

SPY TIME スパイ・タイム』の紹介記事は、コチラ20160202

KIKI~恋のトライ&エラー』の紹介記事は、コチラ20160605

 

      

        (ミキ・エスパルベとアレクサンドラ・ヒメネス、映画から)

 

30代後半というのは微妙な年齢で、自分に合った仕事、夢見るような愛などの限界が見えてしまう世代だから生き辛い。彼らの望みは次第にしぼんでいき、見た目ほどにはお気楽な独身生活を送っているわけではないのだろう。青春時代の確固たる友情は脆く、冬のベルリンで各自失望や幻滅を味わうことになる。セリフを極力ふるい落とし、5人はしぐさや視線での演技を要求され、充分それに応えたという。このことも作品賞受賞に繋がったのかもしれない。目の演技は役者にとって難問、却って途切れなく続くセリフで意思伝達をするほうが易しい。舞台を寒々とした冬のベルリンに選んだのはトラぺ監督の希望だったそうですが、これもなにかのメタファーと思われます。

 

    

   (コマスを訪ねてベルリンにやってきた、エロイ、オリビア、マリア、ギリェ、映画から)

  

  監督キャリア&フィルモグラフィー

エレナ・トラぺ Elena Trapé は監督、脚本家。バルセロナ自治大学で芸術史を専攻、バルセロナ大学Gestió Culturalのマスター卒。2004ESCAC監督科を出る。2003年短編「Dónde París」、2006年「No quiero la noche」、2008年「Pijamas」、同年TV映画「La Ruïna」はガウディ賞2009にノミネートされた。2010年長編デビュー作Blogはサンセバスチャン映画祭「サバルテギ」部門に正式出品「Otra Mirada」を受賞した。2015年のドキュメンタリーPalabras, mapas, secretos, otras cosasは、イサベル・コイシェ監督についてのポートレート、一種のロード・ムービー、コイシェ監督の友人、家族、ジャーナリストへのインタビューからなる。マラガ映画祭2015で上映された。本作Las distanciasが長編2作目となる。

 

    

                    (エレナ・トラぺ、マラガ映画祭2018 授賞式にて)

 

        

     (長編デビュー作Blog」のポスター

 

エステバン・アレンダ兄弟のデビュー作「Sin fin」*マラガ映画祭2018 ⑭2018年04月21日 17:24

       現在、過去、そして未来を飛び越えて旅するSFトーンのロマンス

     

     

 419日、セサル・エステバン・アレンホセ・エステバン・アレンダ兄弟の長編デビュー作Sin finが上映されました。父親は映画プロデューサーで配給を手掛けるホセ・エステバン・アレンダ(息子と同名)、1983年、スペインに初めてアカデミー賞外国語映画賞をもたらしたホセ・ルイス・ガルシの『黄昏の恋』のプロデューサーとして知られている。兄弟二人は子供のころから、この父親の影響を受けて育った。既に短編では国際的に多くの受賞歴の持ち主です。ストーリーが時間を飛び越えて進むので、不自然にならないよう編集に多くの時間を割いた、とプレス会見で語っていた。主人公ハビエルとマリアの愛と失われた愛の物語。2014年、兄弟二人で撮った同じタイトルの短編がもとになっており、主役の二人も同じハビエル・レイマリア・レオンが演じている。

 

      

          (右がセサル、左がホセ、マラガに現れた兄弟監督)

 

Sin fin」 2018

製作:Producciones Transatlanticas / Solita Films / Elamedia Estudios /

      協賛RTVE / ICAA / Canal Sur / Crea SGR / アンダルシア評議会文化部

監督・脚本:セサル・エステバン・アレンダ&ホセ・エステバン・アレンダ

撮影:アンヘル・マモロス

音楽:セルヒオ・デ・ラ・プエンテ

編集:セサル・エステバン・アレンダ

美術:ロシオ・ペーニャ

製作者:ホセ・エステバン・アレンダ、フェリックス・ブルゴス、ホセ・アントニオ・エルゲタ、ロベルト・ブトラゲーニョ

 

データ:製作国スペイン、スペイン語、ドラマ、SF97分、撮影地マドリード、マラガ、カディス(コニル・デ・ラ・フロンテラ)、マラガ映画祭2018正式出品419日上映、配給フィルマックス・インターナショナル

 

キャストハビエル・レイ(ハビエル)、マリア・レオン(マリア)、フアン・カルロス・サンチェス(70代のハビエル)、マリ・パス・サヤゴ(マリ・カルメン)、パコ・オチョア(アントニオ)、ロベルト・カンピジョ(ペドリート)、アセンシオ・サラス(祖父)、パコ・モラ(チャーリー)、クリスティアン・ガメロ(ルカス)、ほか

 

プロット:ハビエルはマリアへの失われた愛を取り戻すために未来からやって来る。一緒に知り合った魅惑的な日を思い出す。明け方にマドリードを発ち夕暮れどきのアンダルシアの海岸にやって来る。すべては、マリアがかつて愛しあった頃の活気あふれる女性に戻れるようにするためだ。マドリード、マラガ、カディスを巡る一種のロード・ムービー。

 

   

                       (カディスの浜辺の二人)

     

     

(かつてのマリアとハビエル)

 

★マリアを演ずるマリア・レオン1984セビーリャ)は、「マリアは旅が決して終わらないことを望んでいる」とプレス会見で語っている。ハビエル・レイ(ガリシア生れ)は、「マリア・レオンはマリアというとても複雑な人格を演じるのに相応しかった。この作品は時間の飛躍がずっと続くせいで、異なった側面をその都度切り替えて演じなければならなかった。綿密に検討しながら、結果的には満足したものになった」と語っている。マリア・レオンの公開作品は、ベニート・サンブラノの『スリーピング・ボイス~沈黙の叫び~』に出演、サンセバスチャン映画祭2011女優賞、ゴヤ賞2012新人女優賞を受賞している。批評家からは「映画はさておき、マリア・レオンという逸材を発掘した」と、その演技力が絶賛された。ハビエル・レイは、マリア・レオンの実兄パコ・レオンの『KIKI~愛のトライ&エラー』(16、ラテンビート上映)に小さな役で出演している。

 

『スリーピング・ボイス~沈黙の叫び~』の紹介記事は、コチラ20150509

KIKI~愛のトライ&エラー』の紹介記事は、コチラ20161008

  

     

               (現在のマリアとハビエル)

 

 監督キャリア&フィルモテカ

ホセ・エステバン・アレンダ(・ロドリゲス)は、監督、脚本家、製作者、俳優(クレジットはホセ・エステバン・ジュニア)。2003年ビジネス・スクールMEGAMaster Europeo en Gestion Audiovisual)卒業。セサル・エステバン・アレンダは、監督、製作者、脚本家、編集者。建築学を専攻。2004年、兄弟二人でアニメーション製作を主にした「Solita Films」を設立した。主な短編6作で500ヵ所の映画祭、100以上の受賞歴があるということです。他にドキュメンタリーなど他の監督作品を製作している。

 

主なフィルモグラフィーは以下の通り。

2008Manolo marca registrada」(9分、アニメ)監督・脚本セサル、製作ホセ

2008La increible historia del hombre sin sombra」(9分、アニメ)監督・脚本・製作ホセ、

   撮影・編集セサル。ゴヤ賞2009短編アニメーション賞受賞、

2010El orden de las cosas」(20分)共同監督・脚本・製作、ゴヤ賞短編映画賞ノミネート、

   エルチェ映画祭監督賞、、ワルシャワ映画祭短編賞スペシャル・メンション、

   ナント・スペイン映画祭短編賞、他受賞歴多数

2011Matar a un niño」(9分、アニメ)共同監督・脚本・製作、

   マラガ映画祭2011短編銀のビスナガ国際シネマ・バイア・デイズ短編賞受賞

2012Inertial Love」(6分)マラガ映画祭2013短編銀のビスナガ

   夕張ファンタスティック映画祭2014短編賞、他

2014Not the End」(29分)長編「Sin fin」のもとになった短編、

   ヒホン映画祭、セビーリャ・ヨーロッパ映画祭上映

2018Sin fin」省略

 

  

(左がホセ・エステバン・アレンダ、右セサル、ゴヤ賞2009短編アニメーション賞を受賞)

 

   

(アニメーション「La increible historia del hombre sin sombra」のポスター)

  

俳優パウ・ドゥラの監督デビュー作*マラガ映画祭2018 ⑫2018年04月17日 13:18

      ホセ・サクリスタンが自由を求めて生きる老いたヒッピーを演じる

   

   

パウ・ドゥラは、アルゼンチンの「La reina del miedo」を初監督したヴァレリア・ベルトゥチェッリ同様、俳優としてのキャリアが長い。デビュー作Formentera Ladyは、名優ホセ・サクリスタンを主人公にして70年代からヒッピーとしてフォルメンテラ島で暮らしている老人サムエルの物語。タイトルのFormentera は、地中海のバレアレス諸島の一つフォルメンテラ島のことで、渡航ルートは、1999年世界遺産に登録されたイビサ島からだけという不便な島です。イビサ島から大型フェリーが出ていて日帰りで楽しめるが、観光地としては美しいビーチがある以外何もないようです。

 

  「Formentera Lady2018

製作:Fosca Films / Good Machine Films / Sunrise Picture / La Periferica Produccions

監督・脚本:パウ・ドゥラ

撮影:ミゲル・リョレンス

音楽:ジョアン・アラベドラ

編集:ルカス・ノリャ

衣装デザイン:クリスティナ・マルティン

メイクアップ&ヘアー:ビセン・ベティ、フィナ・エスペルト

製作者:ラミロ・アセロ、ダビ・シウラナ、ナチョ・テヘドル、(アシスタント)クルス・ロドリゲス

 

データ:製作国スペイン、スペイン語、2018年、コメディ・ドラマ、85分、撮影地フォルメンテラ島、バレンシア、バルセロナなど。マラガ映画祭2018正式出品VOSE上映416日、スペイン公開629

 

キャスト:ホセ・サクリスタン(サムエル)、サンドロ・バリャステロス(サムエル孫マルク)、ノラ・ナバス(サムエル娘アンナ)、ジョルディ・サンチェス(トニ)、フェラン・ラニェ(ジョアン)、ペパ・フアン(グレタ)、ミレイア・ロス(マリサ)、フリ・ミラ(パコ)、トニ・ミソ(サンティ)、ヌリア・メンシア、パウ・ドゥラ、他

 

物語1970年代にヒッピーだったサムエルは、フォルメンテラにやってきて以来、そこへ住み着いてしまった。浜辺の家には電気がなく、賭博場でバンジョーを弾いて暮らしを立てている。ある日のこと、娘のアンナと孫のマルクが訪ねてくる。娘はしばらく前から失業していたが、フランスで仕事が見つかり引き受けることにしたが、一人が条件だという。老いたヒッピーは最初拒絶するが、娘は助けてくれるよう懇願する。意志の弱い風変わりなヒッピーもほだされ、孫を預かろうと決心する。しかし、それは彼をどこか陰のある過去へ連れ戻す。黄昏への旅になるだろうが、それは期待にふくらむ未知への遭遇であるかもしれない。

 

     

           (サムエルとアンナ、後ろ姿がマルク、映画から)

 

★タイトルの「Formentera Lady」は、1971年に発売されたキング・クリムゾンのアルバムからとられたようです。サムエル役のホセ・サクリスタン1937、チンチョン)は、マラガ映画祭2014レトロスペクティブ賞受賞者、今年の「金の映画」に選ばれたペドロ・オレアUn hombre llamado Flor de Otoñoの主人公を演じている。カルロス・ベルムトの『マジカル・ガール』(14)公開で、日本でも遅ればせながら知名度を挙げました。娘役ノラ・ナバスは、ビリャロンガの『ブラック・ブレッド』の母親役、ガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーンの『笑う故郷』(「名誉市民」)では、ノーベル賞作家の秘書を演じていた。二人ともゴヤ賞主演男優賞、女優賞の受賞者です。孫役のサンドロ・バリャステロスは、TVシリーズ出演の経験はあるが、長編映画は本作が初めてである。 

ホセ・サクリスタン紹介記事は、コチラ⇒2016年04月22日

 

      

                     (サムエル役ホセ・サクリスタン、映画から)

 

     

 (マルク役サンドロ・バリャステロス、映画から)

 

パウ・ドゥラは、1972年バレンシアのアルコイ生れ、俳優、監督、脚本家、製作者。短編デビュー作「Praeludium」(09)、「El hombre」(11)、「L'audífon」(13)、「El cerdo」(15)のほか、TV映画「Tocant el mar」(12)を撮る。俳優デビューは1994TVシリーズ、映画はアグスティ・ビラのコメディ「Un hombre en el parque」(99)、セスク・ゲイ「Krámpack」(00、『ニコとダニ』)、マヌエル・ウエルガ『サルバドールの朝』(06)、昨年のマラガに正式出品されたリノ・エスカランテ「No sé decir adiós」など多数。TVシリーズ出演が多い。最近では舞台演出も手掛けている。

 

     

416日の上映後のプレス会見では「無条件の自由を求めて生きている男の物語ですが、現実的にはありえません。しかし、この島には今でも70年代から住みついているヒッピーがいます」と監督、サムエルがバンジョーを演奏する賭場がいくつかあるようです。自分の信念を曲げないで生きている人物を描くのに遅すぎるということはない。高齢ながらどこかに少年の心をもつホセ・サクリスタンは「映画に登場するのは男たちだが、非常に女らしい物語です。だから少年は家庭とか家族とかを結ぶ懸け橋の象徴でもある」とサクリスタン。「偉大な俳優と一緒の映画に出られて感激」とサンドロ。観客を魅了できたでしょうか。

 

     

       (サンドロ、監督、サクリスタン、上映後のプレス会見、416日)


パコ・ロカのコミックのアニメーション*マラガ映画祭2018 ⑪2018年04月15日 15:44

       ビデオゲーム作家カルロス・フェルフェルが映画に戻ってきた!

 

    

★カンヌ映画祭2018のコンペティション部門と「ある視点」のノミネーションが発表になりました。まだ全部ではないようですがよく見る顔と初めての顔とが入り混じっています。この時期は、例年ならマラガは終了していたのですが、今年はオープニングしたばかりです。オープニング作品マテオ・ヒルの新作「Las leyes de la termodinamica」の批評も出ました。これから紹介するカルロス・フェルナンデス・デ・ビゴ(カルロス・フェルフェル)のアニメーションMemorias de un hombre en pijamaも既に上映されました。実際はアニメ部分80%、実写部分20%、ということでキャスト紹介はヴォイスになっておりません。

 

    

        (カルロス・フェルナンデス・デ・ビゴ、マラガ映画祭にて)

 

 Memorias de un hombre en pijama」 2018

製作:Dream Team Concept / Ezaro Films / Hampa Studio / Movistar/ TVE 他多数

監督:カルロス・フェルナンデス・デ・ビゴ

脚本:パコ・ロカ、アンヘル・デ・ラ・クルス、ディアナ・ロペス・バレラ

撮影:マルコス・ガルシア・カベサ

音楽:Love of Lesbian

編集:エレナ・ルイス

視覚効果:マルコス・ガルシア・カベサ、モイセス・レハノ・アルホナ

アニメーション監督:ロレナ・アレス

製作者:マリア・アロチェ(エグゼクティブ)、アンヘル・デ・ラ・クルス、マヌエル・クリストバル、ジョルディ・メンディエタ、アレックス・セルバンテス

 

データ:製作国スペイン、スペイン語、2018年、アニメーション+ 実写、74分、コメディ・コミック、マラガ映画祭2018正式出品(上映414日)

 

キャスト:ラウル・アレバロ(パコ)、マリア・カストロ(ヒルゲロ)、マヌエル・マンキーニャ(メッセンジャー)、サンティ・バルメス(エスコルピオ)、フリアン・サルダリアガ(タウロ)、ジョルディ・ブルネト、タチョ・ゴンサレス、エレナ・S・サンチェス

 

プロット40代の独身男性パコの物語。子供のときからの夢を手に入れ充実した人生を送っている。つまりパジャマを着たまま家でずっと仕事をして、まさに幸福感を満喫していた。ところがまったく予期せぬことが出来してしまった。ヒルゲロに出会い恋してしまったのだ。カップルが直面せざるを得ない日々の困難が語られる。パコは相変わらずパジャマを手放そうとはせず、家の中に留まることの正当性を主張する。二人の友人たちの忠告や彼らの人生を織り交ぜながら、物語はコミカルな色合いのなかで進んでいくことになる。

 

     

             (パコ役、アニメと実写のラウル・アレバロ) 

 

★本作はパコ・ロカ(フランシスコ・ホセ・マルティネス・ロカ、1969年バレンシア生れのコミック作家)原作のコミックの映画化です。20年以上のキャリアをもつ、スペインを代表する漫画家。パコ・ロカは2007年のArrugasが国際的にも大成功をおさめ、日本でも『皺』の邦題で翻訳刊行(ShoPro Book20117月刊)された。20122月に来日、セルバンテス文化センターで講演会が持たれました。映画化の邦題は『しわ』となり、イグナシオ・フェレーラス監督も翌年6月の劇場公開時に来日していたはずです。今回映画化されたMemorias de un hombre en pijama」のコミック版は2011年刊、既に映画化が決定していたから完成の道のりは長かった。

 

        

              (パコ・ロカと原作コミック)

 

★脚本の共同執筆者アンヘル・デ・ラ・クルスは『しわ』でもタッグを組んでいる。ウェンセスラオ・フェルナンデス・フローレスの同名小説「El bosque animado」をアニメ化(2001)した監督、脚本家、アニメの脚本を多数手掛けている実力者です。この小説は1987ホセ・ルイス・クエルダがアルフレッド・ランダを主役にして既に映画化しており、『にぎやかな森』の邦題で第2回スペイン映画祭上映後公開されています。ディアナ・ロペス・バレラはクレジットされておりませんが、同じように参加していたようです。製作者マヌエル・クリストバルも『しわ』El bosque animado参加組の一人です。

 

      

               (日本版『しわ』のDVDポスター)

   

 監督キャリア&フィルモグラフィー

カルロス・フェルナンデス・デ・ビゴ(カルロス・フェルナンデス・フェルナンデス)は、ビデオゲーム作家、監督、脚本家、製作者。ニックネーム、カルロス・フェルフェル(IMDb)、カルロス・F・ビダルなど、幾つもの名前がある。ビゴ大学卒。ガリシアのビゴ出身から本作ではカルロス・フェルナンデス・デ・ビゴでクレジットされている。アニメーション2D/3Dのキャリアは20数年になり、2012年ビデオゲームFireplacing(ニンテンドーWii)や2014Zombeer(ソニー・プレイステーション3)などがある。監督は主演者ラウル・アレバロともどもマラガ入りしており、上映後のプレス会見も済んだようです。

 

      

             (上映後のプレス会見、中央が監督、右端がラウル・アレバロ)

 

2013年短編アニメーション3DMortiを撮る。長編アニメはMemorias de un hombre en pijamaが初となる。これからの予定としてSFアクションTesla 3327SFホラーSkizoがアナウンスされています。毎年6月にフランスで開催される「アヌシー国際アニメーション映画祭2018」に出品されます。それに先立ってカンヌ映画祭のフィルム・マーケットのなかの「Goes to Cannes」で519日に一部分の上映が決定したようで、宣伝効果が期待されます。この映画祭では宮崎駿の『紅の豚』や、ついこのあいだ鬼籍入りした高畑勲の『平成狸合戦ぽんぽこ』、昨年は湯浅正明の『夜明け告げるルーのうた』がグランプリを受賞している世界最大のアニメーション映画祭です。 

     

                       (短編アニメーションMorti」のポスター