マリオ・カサス、初のゴヤ賞ノミネート*ゴヤ賞2021 ⑫2021年02月23日 11:01

         まさかのゴヤ賞初ノミネートにびっくり――マリオ・カサス

      

       

       (ノミネート対象作品のダビ・ビクトリの「No matarás」)

 

★ゴヤ賞2021主演男優賞は、マリオ・カサス(ダビ・ビクトリ「No matarás」)、ハビエル・カマラ(セスク・ゲイ「Sentimental」)、エルネスト・アルテリオ(アチェロ・マニャス「Un mundo normal」)、ダビ・ベルダゲル(ダビ・イルンダイン「Uno para todos」)の4人、ノミネーション発表の最初からカサスかカマラのどちらかと予想しています。ダビ・ビクトリNo matarás以外は作品紹介をしているので、公平を期して作品紹介もしておこうとしたら、なんとマリオ・カサスはゴヤ賞は初ノミネートに驚きました。というのもTVシリーズも含めると20年近いキャリアがあり、それも話題作に出演していたからです。本邦でもアクション、スリラーが多いので、映画祭上映、ビデオやDVDNetflix配信などで知名度があり、当ブログでも度々登場させていたから、受賞は別としてノミネートくらいはあると思っていたのでした。

 

             

            (マリオ・カサス、「No matarás」から)

 

★マリオ・カサスは1986年、ガリシア州の県都ア・コルーニャ生れ、5人弟妹の長子、大工だった父親が19歳、母親が17歳のときに生まれた。1994年家族でバルセロナに転居、1995年からスペイン国有鉄道RENFEレンフェのコマーシャルに出演している。本格的に俳優を目指して18歳でマドリードに、演技はアルゼンチン出身の女優が設立したクリスティナ・ロタ演劇学校で学んだ。クリスティナ・ロタはフアン・ディエゴ・ボトー(助演ノミネート)、マリア・ボトーの母親でもある。卒業生にはゴヤ賞2021ノミネートのエルネスト・アルテリオ(主演)のようなアルゼンチン出身者だけでなく、ナタリエ・ポサ(助演)、アルベルト・サン・フアン(助演)、ペネロペ・クルス、エドゥアルド・ノリエガなどがおり、スペイン映画の隆盛に貢献している。

 

        

        (マラガ映画祭主演男優賞を受賞した「La mula」のポスター)

 

★ダビ・ビクトリの「No matarás」主演で、ホセ・マリア・フォルケ賞に初ノミネートされましたが、ライバルのハビエル・カマラの手に渡った。現在結果が出ているのはサン・ジョルディ賞(スペイン男優賞)とディアス・デ・シネ賞(スペイン男優賞)の2賞です。今年はコロナ禍で映画賞は軒並みガラ開催が遅れています。ゴヤ賞(36日)、フェロス賞(32日)、ガウディ賞(321日)と大きい映画賞の発表はこれからです。以下に主なフィルモグラフィーを年代順に列挙しておきます。(邦題、原題、監督名、主な受賞歴の順)

 

2006年「El camino de camino」脇役、アントニオ・バンデラス

2009年『セックスとパーティーと嘘』(『灼熱の肌』「Mentiras y gordas」)群像劇

   アルフォンソ・アルバセテ&ダビ・メンケス 

   マドリード・レズビアン&ゲイ映画祭2009レズゲイ賞、サラゴサFF 2009若い才能賞受賞   

2009年「Fuga de cerebros」主役、フェルナンド・ゴンサレス・モリーナ

    サラゴサ映画祭2009若い才能賞受賞

2010年「Carne de neón」主役、パコ・カベサス

2010年『空の上3メートル』(「Tres metros sobre el cielo」)主役、

    フェルナンド・ゴンサレス・モリーナ   ACE2011新人男優賞受賞

2012年『UNITO 7 ユニット7/麻薬取締第七班』(「Grupo 7」)脇役、アルベルト・ロドリゲス

       フォトグラマス・デ・プラタ賞2013映画部門男優賞受賞

2012年『その愛を走れ』(「Tengo ganas de tí」)主役、フェルナンド・ゴンサレス・モリーナ

2013年「La mula」主役、マイケル・ラドフォード マラガ映画祭2013主演男優賞受賞

2013『スガラムルディの魔女』(「Las brujas de Zugarramurdi」)

    アレックス・デ・ラ・イグレシア フェロス賞2014助演男優賞受賞

2013年「Ismael」マルセロ・ピニェエロ

2015年『チリ33人、希望の軌跡』(「Los 33」)群像劇、パトリシア・リッヘン

2015年『グラン・ノーチェ!最高の大晦日』(「Mi gran noche」)

    アレックス・デ・ラ・イグレシア フェロス賞2016助演男優賞受賞

2015年『ヤシの木に降る雪』(「Palmeras en la nieve」)主役、フェルナンド・G・モリーナ

    フォトグラマス・デ・プラタ賞2016映画部門男優賞受賞

2016『ザ・レイジ 果てしなき怒り』(「Toro」)主役、キケ・マイーリョ

2016『インビジブル・ゲスト 悪魔の証明』(「Contratiempo」)主役、オリオル・パウロ

2017『クローズド・バル 街角の狙撃兵と8人の標的』(「El bar」)群像劇、

    アレックス・デ・ラ・イグレシア

2017年『オオカミの皮をまとう男』(「Bajo la piel de lobo」)主役、サム・フエンテス

2018『マウトハウゼンの写真家』(「El fotógrafo de Mauthausen」)主役、マル・タルガロナ

2019年「Adiós」パコ・レオン

2020『その住民たちは』(「Hogar」)脇役、ダビ&アレックス・パストール

2020年『パラメディック――闇の救急救命士』(「El practicante」)主役、カルレス・トラス

    ディアス・デ・シネ賞2021スペイン男優賞受賞

2020No matarás省略

ゴチック体は当ブログに紹介記事があります。ビデオ、短編、TVシリーズは割愛。

 

『スガラムルディの魔女』の紹介記事は、コチラ20141012

『ザ・レイジ 果てしなき怒り』の紹介記事は、コチラ20160414

『インビジブル・ゲスト 悪魔の証明』の記事は、コチラ201702170414

『クローズド・バル 街角の狙撃兵と8人の標的』の紹介記事は、コチラ20170404

『マウトハウゼンの写真家』の紹介記事は、コチラ201903030305

『その住民たちは』の紹介記事は、コチラ20200331

 

TVシリーズでお茶の間ファンを獲得、映画デビューはアントニオ・バンデラスEl camino de caminoに脇役で出演した。これはバンデラス監督と同郷の作家アントニオ・ソレルの同名小説の映画化だった。カサスをスターにしたのはMentiras y gordasでした。お茶の間のアイドル脱出を模索していたときにオファーを受け、結果を出した。邦題は英語タイトルの直訳、原題を直訳すると「嘘っぱちとデブ女たち」になるが、gordaは強めの要素で会話などで使う「まさかそんなこと嘘でしょ」くらいになる。コメディと紹介されることもあるが、それは見た目だけで的外れ、居場所のない孤独と愛を探す若者たちを描いた青春ドラマでした。カサスは好きな親友に愛を告白できないゲイを演じた。本作はアルモドバルのカンヌ映画祭パルムドールにノミネートされた『抱擁のかけら』を抜いて興行成績ナンバーワンになったが、批評家の評価は当然のごとく分かれた。1996年のダニー・ボイル『トレインスポッティング』が下敷きになっているようです。本作でユアン・マクレガーはスターの座にのしあがった。

 

           

             (『セックスとパーティーと嘘』から)

 

★ゴヤ賞関連では、共演者はノミネートされるが、カサス自身は外されることが多く、アルベルト・ロドリゲスUNITO 7 ユニット7/麻薬取締第七班』で助演男優賞ノミネーションを期待したが、共演者のフリアン・ビジャグランがノミネートされ受賞した。またサム・フエンテス監督のオファーを台本を読まずに話だけでOKした『オオカミの皮をまとう男』でもノミネートがなく、翌年の『マウトハウゼンの写真家』では減量して挑戦したもののまたもや素通り、映画アカデミーから嫌われているのかと思っていた。新作「No matarás」の監督は、マリオ・カサスを念頭において脚本を書いたと語っているが、サム・フエンテスもカサスに惚れ込んで「彼しかこの役はできない」とインタビューに応えていた。以下に新作の紹介をしておきます。

 

    

                  (『UNITO 7 ユニット7/麻薬取締第七班』から)

 

      

          (『マウトハウゼンの写真家』のポスター

 

 

No matarás(英題「Cross the Line」)

製作:Castelao Pictures / Castelao Production / Filmax / Movistar/ RTVE / TV3 他

監督:ダビ・ビクトリ

脚本:ダビ・ビクトリ、ジョルディ・バリェホ、クララ・ビオラ

音楽:フェデリコ・フシド、エイドリアン・フォルケス

撮影:エリアス・M・フェリックス

編集:アルベルト・グティエレス

キャスティング:アレハンドロ・ヒル

プロダクション・デザイン&美術:バルテル・ガジャルト

衣装デザイン:オルガ・ロダル、イランツゥ・カンポス

メイクアップ&ヘアー:ナタリア・アルベール、パトリシア・レイェス、(特殊メイク)ルシア・ソラナ

舞台装置:Thais・カウフマン

プロダクション・マネージメント:エステル・べラスコ、アルフレッド・アベンティン

製作者:ラウラ・フェルナンデス・Brites、(エグゼクティブ)カルロス・フェルナンデス

 

データ:製作国スペイン、スペイン語・英語、2020年、アクション・スリラー、92分、撮影地バルセロナ、シッチェス映画祭20201010日上映)、公開スペイン1016日、チリ1016日(ネット)、アルゼンチン121日、ドイツ225日(DVD発売35日)、他

 

キャストマリオ・カサス(ダニ)、ミレナ・スミット(ミラ)、フェルナンド・バルディビエルソ(レイ)、エリザベス・ラレナ(ラウラ)、ハビエル・ムラ(ベルニ)、アレックス・ムニョス(デルガド)、アンドレウ・Kreutzer(フォルニド)、オスカル・ぺレス(従兄弟)、シャビ・シレス(刑事)、ミゲル・アンヘル・ゴンサレス(物乞い)、アルベルト・グリーン、ヘラルド・オムス(ヘラルド)、シャビ・サエス(ルベン)、ビクトル・ソレ(見張り役)、ミゲル・ボルドイ(ダニの父親)、他

ゴチック体はゴヤ賞にノミネートされている俳優、新人女優賞、新人男優賞

 

ストーリー:ダニはここ数年、病気の父親の介護をしながら旅行会社で働いていた。父親が亡くなると自分の人生を変えようと世界をめぐる旅に出ようと決心する。そんな折も折、セクシーだが精神が不安定なミラという女性と運命の出会いをしてしまう。その夜を境にダニの人生は本物の悪夢と化してしまうだろう。ミラはダニを想像もできない破局に導いていく。本作はもし平凡な人間が誰かを殺すことが可能かどうか考える物騒な映画。

 

    

            (マリオ・カサス、映画から)

 

★カサスによると、シナリオを読むなりこのプロジェクトに参加したいと思った。「この役柄を演じられる自信はなかったが、これも挑戦だと魅了された。スリラーが好きなのです」と。監督もカサスについて「脚本は常にマリオを念頭において書きすすめた」と打ち明ける。「マリオの視線を通して、この登場人物を変身させる。観客もこの人物のなかにある真実を体験できるだろう」とコメントしている。

 

       

                (撮影中の監督とカサス)

 

ダビ・ビクトリ1982年バルセロナ生れの監督、脚本家、製作者。スペインと米国で映画を学んだ。2008年短編「Reaccion」でデビュー、同Zero15)がアリカンテのラルファス・デル・ピ映画祭で監督賞と作品第2席を受賞、2018年長編デビュー作El pactoは公開された。ベレン・ルエダやダリオ・グランディネッティが出演している。本作は第2作目。

 

   

   (シッチェス映画祭2020、フォトコール)

 

      

          (マリオ・カサスとミレナ・スミットに挟まれた監督)

 

★ゴヤ賞新人女優賞にノミネーションされている、ミレナ・スミット1996年エルチェ生れ、ホテルのフロントで働いていたところをスカウトされた。未だ24歳だが妖艶な雰囲気があり、もしかすると受賞するかもしれない。次回作はアルモドバルの新作Madres paralelasに出演が決まり、既にクランクインしている。共演者はペネロペ・クルスとアイタナ・サンチェス=ヒホン、他にアルモドバル常連のロッシ・デ・パルマ、フリエタ・セラーノ、イスラエル・エレハルデなど賑やかです。ゴヤ賞のライバルは「Ane」のホネ・ラスピウルか。

 

    

    

            (ミレナ・スミットとカサス、映画から)

 

★新人男優賞ノミネーションのフェルナンド・バルディビエルソは、1984年マドリード生れ。2005年短編でデビュー、主にTVシリーズに出演している。2008イサベル・デ・オカンポのスリラー短編「Miente」でラルファス・デル・ピ映画祭2008男優賞を受賞している。当ブログで作品紹介をしているダニエル・カルパルソロのスリラーHasta el cieloに警官役で出演している。特異な風貌から役柄が限られそうだが、異色の新人として大いに脈がありそうです。

 

  

    

       (フェルナンド・バルディビエルソ、シッチェスFFのフォトコール)

 

ダビ・マルティンのデビュー作 『マリアの旅』*ラテンビート2020 ⑦2020年10月27日 20:33

       ベテラン女優ペトラ・マルティネスを主役に起用した自由への旅

 

★ラテンビートに新たにドラマ2作が発表になりました。共催作品ではありませんが、両作とも1031日にオープンするTIFF東京国際映画祭TOKYOプレミア2020部門で上映されます。一つはスペイン映画からダビ・マルティン・デ・ロス・サントスの長編デビュー作『マリアの旅』(「La vida era eso」)、もう一つはポルトガル映画からマリオ・バローゾ『モラル・オーダー』(「Ordem Moral」)です。今回はTIFFがワールド・プレミアの前者のご紹介。監督のダビ・マルティンは短編では国際映画祭の受賞歴が多数あり、デビュー作とはいえ見ごたえのあるドラマになっているようです。

 

      

 

『マリアの旅』(「La vida era eso」英題「Life Was That」)

製作:Lolita Films / Mediaevs / Smiz and Pixel / Canal Sur Televisión / ICAA /

    La vida era eso   協賛マドリード市、アルメリア市

監督・脚本:ダビ・マルティン・デ・ロス・サントス

撮影:サンティアゴ・ラカ(『さよならが言えなくて』『悲しみに、こんにちは』)

編集:ミゲル・ドブラド(『さよならが言えなくて』「La zona」)

美術:ハビエル・チャバリア

キャスティング:トヌチャ・ビダル(『さよならが言えなくて』)

録音:エバ・バリニョ(『悲しみに、こんにちは』「Yuli」)

衣装デザイン:ブビ・エスコバル

メイクアップ:マリア・マヌエラ・クルス

サウンドトラック:”LA VIDA ERA ESO”フェルナンド・バカス&エストレーリャ・モレンテ曲

         エストレーリャ・モレンテ歌

製作者:(エグゼクティブ)ダミアン・パリス、マリア・バロッソ、ホセ・カルロス・コンデ、他

 

データ:製作国スペイン=ベルギー、スペイン語・フランス語、2020年、ドラマ、109分、撮影地アンダルシア州アルメリアのカボ・デ・ガタ(猫岬)、クランクイン2019526

 

映画祭・受賞歴:東京国際映画祭TOKYOプレミア2020部門正式出品(116日上映)、第17回セビーリャ・ヨーロッパ映画祭セクション・オフィシアル部門(116日~14日)、ラテンビート2020オンライン上映

 

キャスト:ペトラ・マルティネス(マリア)、アンナ・カスティーリョ(ベロニカ)、ラモン・バレア(マリアの夫ホセ)、フローリン・ピエルジク・Jr.(バルのオーナー、ルカ)、ダニエル・モリリャ(ベロニカの元恋人フアン)、ピラール・ゴメス(美容室経営のコンチ)、マリア・イサベル・ディアス・ラゴ(イロベニー)、アリナ・ナスタセ(クリスティナ)、ジョルディ・ヒメネス(看護師)、クリストフ・ミラバル(マリアの長男ペドロ)、マールテン・ダンネンベルク(同次男フリオ)、他

 

ストーリー:世代の異なる二人のスペイン女性マリアとベロニカは、ベルギーの病院で偶然同室となる。マリアは若い頃に家族とベルギーに移住してきた。ベロニカは故国では決して手に入れることのできないチャンスを求めて最近来たばかりであった。ここで二人は友情と親密な関係を結んでいくが、ある予期せぬ出来事が、ベロニカのルーツを探す旅にマリアをスペイン南部のアルメリアに誘い出す。それは彼女自身の世界を開くと同時に、人生の信条としてきた確かな土台を揺るがすことにもなるだろう。                                                 (文責:管理人)

 

       

    (マリア役のペトラ・マルティネス、ベロニカ役のアンナ・カスティーリョ)

 

          自由と欲求に目覚めた女性の未知への遭遇

   

監督キャリア&フィルモグラフィーダビ・マルティン・デ・ロス・サントスは、監督、脚本家、製作者。短編やドキュメンタリーを手掛け、2004年の短編Llévame a otro sitioは、アルメリア短編FFのナショナル・プロダクション賞、ニューヨーク市短編FF観客賞ノミネート、2015年のMañana no es otro díaは、アルカラ・デ・エナレス短編FFのマドリード市賞・脚本賞を受賞、続く2016年の短編ドキュメンタリー23 de mayoは、メディナ映画祭の作品賞・撮影賞を受賞した。今回の「La vida era eso」が長編映画デビュー作。セビーリャ・ヨーロッパFFの上映日がまだ発表されていないようで東京国際映画祭がワールド・プレミアのようです。スペインはコロナ禍第2波の関係でカナリア諸島を除いて夜間外出禁止のニュースも飛び込んできているので、今後スペインで開催される映画祭の行方が懸念されます。

  

       

                         (短編「Llévame a otro sitio」のポスター)

 

★本作について、アルメリアのカボ・デ・ガタでクランクインしたときの監督インタビューで「マリアは家族つまり夫や子供たちや両親を優先するような教育を受けた世代に属している。自分自身の欲求は二の次、抑圧されることに甘んじていた。マリアのエロティシズムを目覚めさせることを含めて、観客は自由と友情を通して、マリアの未知への遭遇に沈思するだろう」とコメントしている。さしずめマリアは良妻賢母教育を受けた世代の代表者という設定です。いくつになっても人生の転機はやってくる、勇気をもらいましょう。

 

        

                          (自作を語るダビ・マルティン監督)

 

      

          (ペトラ・マルティネスとアンナ・カスティーリョと打ち合わせをする監督)

 

キャスト紹介ペトラ・マルティネス(ハエン県リナレス1944)は、舞台、映画、TVの女優。父親がスペイン内戦で共和派で戦ったことで亡命、その後逮捕されてビルバオのタバカレア刑務所に収監された。3歳のときマドリードに移住、16歳のときロンドンに旅行して舞台女優になる決心をする。米国からスペインに移住した劇作家ウィリアム・レイトンが設立したTeatro Estudio de MadridTEM)に入学、そこで後に夫となる舞台演出家で俳優のフアン・マルガーリョと知り合う。演劇グループ Tábano に参加、フランコ末期の1970年代は国内では検閲のため上演ができなかったこともあって、米国やヨーロッパ諸国の国際演劇祭に参加している。1985年マルガーリョとUroc Teatro を設立、スペイン国内に限らずヨーロッパやラテンアメリカ諸国を巡業した。フアン・マルガーリョは、俳優としてハビエル・フェセルの『だれもが愛しいチャンピオン』(18)に出演、ゴヤ賞2019助演男優賞にノミネートされている。

 

    

                                (ペトラ・マルティネス)

 

★映画出演は、公開、TV放映作品ではマテオ・ヒルの長編デビュー作『パズル』(99)、アルモドバルの『バッド・エデュケーション』(04)の母親役、ハイメ・ロサーレスの『ソリチュード~孤独のかけら』(07、スペイン俳優連合主演女優賞)や『ペトラは静かに対峙する』(18)、ジャウマ・バラゲロの『スリーピング・タイト』(11、スペイン俳優連合助演女優賞)など上げられる。未公開作だが代表作に選ばれているのがミゲル・アルバラデホNacidas para sufrir09)で、シネマ・ライターズ・サークル賞女優賞を受賞した。一見地味な辛口コメディだが、女性が置かれている社会的地位の低さや男性による不寛容、女性の不屈の精神を描いて訴えるものがあった。これは『マリアの旅』に繋がるものがあり、TIFF のスクリーン上映、並びに LBFF オンライン上映が待たれる。

 

     

                         (Nacidas para sufrir」のポスター

 

★ラテンビートの作品紹介にあるように、もう一人の主役ベロニカ役のアンナ・カスティーリョ(バルセロナ1993)は、イシアル・ボリャインの『オリーブの樹は呼んでいる』(16)でゴヤ賞新人女優賞を受賞している。共演のハビエル・グティエレスは「女優になるべくして生まれてきた」と。他にハビエル・カルボハビエル・アンブロッシの『ホーリー・キャンプ!』(17)に出演している。両作ともLBFF 上映作品です。

 

     

         (ゴヤ賞2017新人女優賞のトロフィーを手に喜びのアンナ)

 

★他に評価の高かったセリア・リコ・クラベリーノViaje al cuarto de una madre18)では、ロラ・ドゥエニャスと母娘を演じて成長ぶりを披露した。ガウディ賞、フェロス賞、シネマ・ライターズ・サークル賞の助演女優賞を受賞、ゴヤ賞は逃した。次回作はハイメ・ロサーレスの新作に起用されている。『オリーブの樹は呼んでいる』とViaje al cuarto de una madre」の作品紹介でキャリア紹介をしています。共演者にロラ・ドゥエニャスにしろペトラ・マルティネスにしろ、演技派の先輩女優に恵まれている。今後が楽しみな若手女優の一人。

    

Viaje al cuarto de una madre」は、コチラ20190106

『オリーブの樹は呼んでいる』は、コチラ20160719

 

        

         (ロラ・ドゥエニャスとアンナ、サンセバスチャン映画祭2018にて)

 

★エグゼクティブ・プロデューサーのダミアン・パリスは、制作会社 Lolita Films ハビエル・レボーリョロラ・マヨ設立、リノ・エスカレラの『さよならが言えなくて』でASECAN2018を受賞、同監督の「Australia」(14分)はゴヤ賞短編ドラマ部門にノミネートされた。ハビエル・レボーリョの「La mujer sin piano」(09、カルメン・マチが主演)や「El muerto y ser feliz」(12、ホセ・サクリスタンが主演)など高評価の作品を手掛けている。

 

      

     (左から、ダミアン・パリス、ダビ・マルティン、フェルナンド・ヒメネス)

 

★次回はマリオ・バローゾの『モラル・オーダー』の予定。


ヴィゴ・モーテンセンにドノスティア栄誉賞*サンセバスチャン映画祭2020 ②2020年07月08日 16:57

          ヴィゴ・モーテンセンにドノスティア栄誉賞の発表

 

      

 

★去る622日、第68回サンセバスチャン映画祭2020918日~26日)の栄誉賞ドノスティア賞の発表がありました。開催自体を危惧してアップしないでおきましたが、どうやら動き出しました。栄誉賞受書者は、最近では複数(2人か3人)が多いので、もう一人くらい選ばれるのではないでしょうか。アメリカの俳優ヴィゴ・モーテンセンは、ピーター・ジャクソン『ロード・オブ・ザ・リング』三部作(0103)のアラゴルン役で多くのファンを獲得しました。アメリカ映画は日本語版ウイキペディアに詳しいので紹介要りませんので、スペイン語映画を中心にアップいたします。当ブログではリサンドロ・アロンソ『約束の地』14)の劇場公開に合わせて作品&キャリアを紹介しております。

『約束の地』の記事は、コチラ20150701

 

       

      (リサンドロ・アロンソの『約束の地』の原題「Jauja」から)

 

★本映画祭で初監督作品Falling(カナダ=イギリス合作)が上映されます。サンダンス映画祭2020のクロージング作品、カンヌ映画祭2020のコンペティションにも選ばれました。ベテランのランス・ヘンリクセンと彼自身が親子を演じたほか、脚本も自ら執筆した。父と息子の確執、受け入れ、許しが語られるようです。102日スペイン公開も予定されています。

     

    

       

    (監督デビュー作Falling」で親子を演じた、ランス・ヘンリクセンとヴィゴ

 

ヴィゴ・モーテンセン1958年ニューヨークのマンハッタン生れ、俳優、脚本家、詩人、写真家、画家、ミュージシャン、出版社パーシヴァル・プレス(Perseval Presse2002年設立)経営者、今年Falling」で監督デビューも果たした。父親はデンマーク人の農業経営者、母親は米国人(ヴィゴ11歳のとき離婚、共同親権)、父親の仕事の関係で特に幼少年期にはベネズエラ、アルゼンチンで育ったことからスペイン語が堪能、父親の母語デンマーク語、加えて母親がノルウェー語ができたのでノルウェー語、ほかスウェーデン語、フランス語、イタリア語もできる。

 

    

 

1985年、ピーター・ウィアー『刑事ジョン・ブック/目撃者』のアーミッシュ役でスクリーンに本格デビューした。米アカデミー賞主演男優賞ノミネート3回、デヴィッド・クローネンバーグ『イースタン・プロミス』07)、マット・ロス『はじまりへの旅』16)、ピーター・ファレリー『グリーンブック』18)がある。クローネンバーグとは『ヒストリー・オブ・バイオレンス』05)や『危険なメソッド』11)でもタッグを組んでいる。

 

     

          (クローネンバーグの『イースタン・プロミス』から)

 

★スペイン語映画ではアグスティン・ディアス・ヤネス『アラトリステ』06)のディエゴ・アラトリステ役、アルゼンチン映画では、双子の兄弟を演じたアナ・ピターバーグ『偽りの人生』12)、上記のリサンドロ・アロンソの『約束の地』(14、アルゼンチン、デンマーク合作)のグンナー・ディネセン大尉役など。

    

      

 (ディエゴ・アラトリステ役のヴィゴ・モーテンセン)

 

★他にショーン・ペーンの初監督作品『インディアン・ランナー』91)、ブライアン・デ・パルマ『カリートの道』93)、ジェーン・カンピオン『ある貴婦人の肖像』96)、リドリー・スコットG.I. ジェーン』97)、エド・ハリスの監督2作目となるウエスタン『アパルーサの決闘』08)、コーマック・マッカーシーのベストセラー小説をジョン・ヒルコートが映画化した『ザ・ロード』09)、ブラジル仏合作のウォルター・サレス『オン・ザ・ロード』12)、アルベール・カミュの短編の映画化、監督のダヴィド・オロファンが、ヴィゴを念頭において台本を執筆したという『涙するまで、生きる』14)などなど数えきれない。モーテンセンのような経歴の持主はそうザラにはいないのではないか。

 

        

         (フランス映画『涙するまで、生きる』のポスター

 

★私生活では、12年前から『アラトリステ』で共演したアリアドナ・ヒルとマドリードのダウンタウンに在住している。現在のパートナーに映画同様永遠の愛を捧げているとか。お互い再婚同士、当時アリアドナはダビ・トゥルエバと結婚しており2人の子供もいた。ヴィゴの一人息子ヘンリーはドキュメンタリー作家。またサッカー・ファンでもあり、『約束の地』の脚本家で詩人のファビアン・カサスとクラブチーム「サンロレンソ・デ・アルマグロ」の熱狂的なサポーターである。カサスの詩集を自分が経営するパーシヴァル・プレスから出版したのが縁ということです。

 

     

      (ヴィゴの息子ヘンリー、ヴィゴ・モーテンセン、アリアドナ・ヒル、

   『グリーンブック』で主演男優賞にノミネートされた米アカデミー賞2019の授賞式)

ナタリア・メタの第2作「The Intruder」*ベルリン映画祭20202020年02月27日 08:48

             ベルリン映画祭2020開幕、アルゼンチンからサイコ・スリラー

 

     

29日から始まっていたベネチアのカーニバルが途中で中止になりましたが、220日、ベルリン映画祭2020は開幕しました(~31日)。ドイツも新型コロナウイルスが無縁というわけではありませんが予定通り開幕しました。ドイツは19日、フランクフルト近郊のハーナウで起きた連続銃乱射事件で8名の犠牲者がでたりと、何やら雲行きがあやしい幕開けでした。天候もあいにくの雨続きのようですが既に折り返し点にきました。

   

     

        (左から、セシリア・ロス、ナタリア・メタ、エリカ・リバス) 

   

    

       (出演者とメタ監督、ベルリン映画祭2020、フォトコールにて)

 

★コンペティション部門18作のうち、スペイン語映画はアルゼンチン=メキシコ合作のEl prófugo(映画祭タイトルは英題The Intruder1作のみです。監督は『ブエノスアイレスの殺人』(ラテンビート2014)のナタリア・メタの第2作目です。ある外傷性の出来事によって現実に起きたことと想像上で起きたことの境界が混乱している女性の物語、悪夢や現実の概念の喪失がテーマのようですが、審査委員長ジェレミー・アイアンズ以下審査員の心を掴むことができるでしょうか、ちょっと難しそうですね。

『ブエノスアイレスの殺人』の作品&監督紹介は、コチラ201409291101

 

     

              (ナタリア・メタ、プレス会見にて)

 

 

 El prófugo(英題The Intruder2020

製作:Rei Cine / Barraca Producciones / Infinity Hill / Picnic Produccionas / Piano / Telefe

監督・脚本:ナタリア・メタ

原作:C. E.フィーリング「El mal menor」(1996年刊)

撮影:バルバラ・アルバレス

音楽:Luciano Azzigotti

編集:エリアネ・カッツKatz

視覚効果:ハビエル・ブラボ

製作者:ベンハミン・ドメネチ、サンティアゴ・ガジェリGallelli、マティアス・ロベダ、他

 

データ:製作国アルゼンチン=メキシコ、スペイン語、2020年、サイコ・スリラー、90分、撮影地ブエノスアイレス、メキシコのプラヤ・デル・カルメン、他。ベルリン映画祭2020コンペティション部門でワールド・プレミア。

 

キャスト:エリカ・リバス(イネス)、セシリア・ロス(母マルタ)、ナウエル・ぺレーズ・ビスカヤート(アルベルト)、ダニエル・エンドレル(レオポルド)、アグスティン・リッタノ(ネルソン)、ギジェルモ・アレンゴ(マエストロ)、他

 

ストーリー:女優のイネスは歌手として合唱団で歌っている。パートナーのレオポルドと一緒に出掛けたメキシコ旅行で受けたひどい外傷性の出来事により、現実に起きたことと想像上のことの境界が混乱するようになり、悪夢と日常的に襲ってくる反復的な音に苦しんでいる。イネスはコンサートのリハーサルで若いアルベルトと知り合うまで母親マルタと暮らしていた。彼とは問題なく過ごしているようにみえたが、ある危険な予感から逃れられなかった。夢からやってくるある存在が、彼女の中に永遠に止まりたがっていた。 (文責:管理人)

 

        豪華なキャスト陣を上手く泳がすことができたでしょうか

 

★主役イネスにエリカ・リバス(ブエノスアイレス1974)は、ダミアン・ジフロン『人生スイッチ』14)で、結婚式当日に花婿の浮気を知って逆上する花嫁を演じた。若い女性役が多いが実際は既に40代の半ば、銀のコンドル賞(助演『人生スイッチ』、女優賞「La luz inncidente」)、スール賞、クラリン賞、マルティン・フィエロ賞、イベロアメリカ・プラチナ賞などを受賞、映画以外にもTVシリーズ出演は勿論のこと、舞台でも活躍しているベテランです。フォード・コッポラのモノクロ映画『テトロ』09)、サンティアゴ・ミトレ『サミット』17)では、リカルド・ダリン扮するアルゼンチン大統領の私設秘書を演じた。2作ともラテンビート映画祭で上映されている。

 

   

 

      

 (母親役のセシリア・ロスとエリカ・リバス、映画から)

 

★イネスの恋人レオポルドには監督デビューも果たしたダニエル・エンドレル(モンテビデオ1976)が扮した。ウルグアイとアルゼンチンで活躍、『夢のフロリアノポリス』のアナ・カッツ監督と結婚している。アドリアン・カエタノ『キリング・ファミリー 殺し合う一家』17)他で何回かキャリア紹介をしている。彼も銀のコンドル賞、スール賞以下、アルゼンチンのもらえる賞は全て手にしている。

キャリア&フィルモグラフィーの紹介は、コチラ201702200409日 

 

  

        (レオポルド役のダニエル・エンドレル、映画から) 

 

★イネスの新しい恋人アルベルト役のナウエル・ぺレーズ・ビスカヤート(ブエノスアイレス州1986)は、アルゼンチンとフランスで活躍している(スペイン語表記ナウエル・ペレス・ビスカヤルト)。ロバン・カンピヨBPMビート・パー・ミニット』(17)がブレイクしたので、フランスの俳優と思っている人が多いかもしれない。彼自身もセザール賞やルミエール賞の男優賞を受賞したことだし、公開されたアルベール・デュポンテル『天国でまた会おう』(17)もフランス映画だった。最初は俳優になるつもりではなかったそうですが、2003アドリアン・カエタノTVミニシリーズDisputas17歳でデビュー、2005年にはエドゥアルド・ラスポTatuadoで銀のコンドル新人賞を受賞している。アルゼンチンではTVシリーズ出演がもっぱらだが、トロント映画祭2014年で上映されたルイス・オルテガLulú / Lu-Luに主役ルカスを演じた。2016年に公開されるとヒット作となり、彼も銀のコンドル賞にノミネートされた。家庭の愛をうけることなく成長した車椅子のルドミラLudmiraとルカスLucasの物語、タイトルは二人の名前から取られた。

    

     

                   (アルベルト役のナウエル・ペレーズ・ビスカヤート)

 

   

           (アルベルトとイネス、映画から)  

 

★ラテンアメリカ映画、特にラプラタ地域では悪夢や分身をテーマにすることは珍しくない。さらに特徴的なのが <移動> した先で事件が起きること。本作でも主人公はアルゼンチンからメキシコに旅行している。資金調達のために合作が当たり前になっているラテンアメリカでは都合がいい。原作はブエノスアイレス市内で起きた事件なのに、舞台をスペイン北部に移してしまう作品だって過去にはあった。賞に絡むことはないかもしれないが、『ブエノスアイレスの殺人』の監督、ナタリア・メタの第2作ということでご紹介しました。

 

ベテランと中堅入りまじり混戦模様の助演男優賞*ゴヤ賞2020 ⑪2020年01月11日 07:10

         難しい候補者選び――「Dolor y gloria」から2人ノミネート

 

        

  (ライバル同士になったスバラグリアとエチェアンディア、スペイン・プレミア313

 

★ベテランのエドゥアルド・フェルナンデスは、娘のグレタと親子を演じたベレン・フネスのLa hija de un ladrónでは、主役の常習窃盗犯に扮した。主演男優賞からは漏れたがアメナバルの『戦争のさなかで』で、ウナムノを弾劾するホセ・ミリャン・アストライ役で助演にまわった。2002年、イシドロ・オルティス他のFausto 5.0主演男優賞を取っている。アルベルト・ロドリゲスの『スモーク・アンド・ミラーズ』では、サンセバスチャン映画祭2016銀貝賞男優賞受賞だったのでゴヤも取るかと予想したが外れた。『イン・ザ・シティ』03)で助演受賞以来、主演・助演ノミネーションの山を築くだけで賞からは遠ざかっている。

 

★アルモドバルのDolor y gloriaから、アルゼンチン出身ながらスペインでの出演が多いレオナルド・スバラグリアと、アシエル・エチェアンディアが揃ってノミネートされた。前者は甘いマスクから日本でもファンが多いと思いますが、後者は公開作品がないことから馴染みがないのではないでしょうか。パウラ・オルティスのLa noviaで主演男優賞にノミネートされている。アルモドバルのイマイチだった『抱擁のかけら』(09)でボーイ役として参加したそうですが、編集の段階でボツになりクレジットされなかった。というわけで今回は2度目のオファーでした。残るベニト・サンブラノのIntemperieルイス・カジェホは、ゴヤ賞関連ではノミネートは今回を含めて3回、まだ受賞はない。Netflix配信されたラウル・アレバロの『物静かな男の復讐』16、『静かなる復讐』DVD)で主演男優賞にノミネートされたが受賞には至らなかった。

 

最優秀賞助演男優賞

 

アシエル・エチェアンディア 映画「Dolor y gloria」監督ペドロ・アルモドバル

〇アシエル・エチェアンディア(ビルバオ1975)は、俳優、舞台、歌手。バスク出身だが若くしてマドリードに移住、1995TVシリーズで俳優デビュー。ゴヤ賞関連では、パウラ・オルティスのLa noviaで主演男優賞にノミネートされている。映画、TVに並行して舞台でも活躍、演劇界の最高賞マックス賞2012主演男優賞をLa averíaで、俳優ユニオン賞2011も受賞している。人気TVシリーズVelvet1315)の第2シーズンで同じ俳優ユニオン賞2015助演男優賞を受賞するなどしている。アルフォンソ・アルバセテ他の群集劇『セックスとパーティーと嘘』(ラテンビート2009)、当ブログではフアンフェル・アンドレス他の『トガリネズミの巣穴』(同2014)やフリオ・メデムの『あなたのママになるために』14)をアップしています。2005年ごろ出会ったホセ・ルイス・ウエルタスが別れていなければパートナー。

  

  

       (バンデラスとエチェアンディア、映画「Dolor y gloria」から)

 

   

   (パウラ・オルティスの「La novia」で主演男優賞ノミネート、ゴヤ賞2016授賞式)

 

 

レオナルド・スバラグリア 映画「Dolor y gloria」監督ペドロ・アルモドバル

〇レオナルド・スバラグリア(ブエノスアイレス1970)は、アルゼンチン俳優ながらフアン・カルロス・フレスナディジョの『10億分の1の男』でゴヤ賞2002新人男優賞受賞、2007助演男優賞にマヌエル・ウエルガが実話をもとにして映画化した『サルバドールの朝』でノミネートされている。スペインとの繋がりはマルセロ・ピニェイロの実話に基づいたPlata quemada00、アルゼンチン・スペイン他)に出演したこと、当時人気絶頂だったエドゥアルド・ノリエガとタッグを組んで悲劇の銀行強盗犯を演じた。2001年東京国際レズビアン&ゲイ映画祭で『逃走のレクイエム』の邦題で上映され、第1回ラテンビート2004では『炎のレクイエム』と改題されて再上映された。本作の成功がきっかけになりスペインに軸足をおくようになった。翌年『10億分の1の男』(01)、マリア・リポールの『ユートピア』03)、ビセンテ・アランダの『カルメン』03)、『サルバドールの朝』06)とスペイン映画が続いた。公開作品ではダミアン・ジフロンの『人生スイッチ』14、スール賞ノミネーション)、イスラエル・アドリアン・カエタノの『キリング・ファミリー 殺し合う一家』17、銀のコンドル賞受賞)など故国アルゼンチンの映画賞、銀のコンドル賞、マルティン・フィエロ賞など受賞、ノミネーションはかなりの数にのぼる。Netflix配信作品(マルティン・オダラの『黒い雪』ほか多数)を含めるとかなりの作品が見られる。マラガ映画祭2017の最高賞「マラガ賞」を受賞して海岸沿いの遊歩道に手形入りの記念碑を建ててもらっている。

『人生スイッチ』の紹介記事は、コチラ20150729

『キリング・ファミリー 殺し合う一家』の紹介記事は、コチラ20170220

マラガ映画祭2017マラガ賞&キャリア紹介は、コチラ20170313

 

     

      (レオナルド・スバラグリア、映画「Dolor y gloria」から)

 

    

     (マラガ賞の記念碑の前で両手を広げるスバラグリア、20173月)

 

 

ルイス・カジェホ 映画Intemperie」 監督ベニト・サンブラノ

〇ルイス・カジェホ(カイェホもあり、セゴビア1970)は、1998TVシリーズでデビュー。ゴヤ賞関連ではフェルナンド・レオン・デ・アラノアのPrincesas2006年新人、上記したようにラウル・アレバロの『物静かな男の復讐』で2017主演(俳優ユニオンは受賞)、今回の悪役農園主役で助演とノミネートは3回です。比較的遅いデビューの割には脇役が多いせいか出演本数はTVシリーズ、短編を含めると114作になる。なかでアントニオ・ムニョス・デ・メサのAmigos de Jesús07)では主役を演じている。オスカル・サントスの『命の相続人』(ラテンビート2010)、アレックス・デ・ラ・イグレシアの『グラン・ノーチェ!最高の大晦日』(同2015)、パコ・レオンのKIKI~愛のトライ&エラー』(同2016)、他にアルベルト・ロドリゲスの『スモーク・アンド・ミラーズ』(同2016)、フェルナンド・ゴンサレス・モリーナのヒット作『ヤシの木に降る雪』にも出演している。他にセルヒオ・バレホンのデビュー作、コメディJefe18)では清掃員フアナ・アコスタに翻弄される社長役で主演している。コメディを得意としているが、演技の幅は広い。

『物静かな男の復讐』の主な紹介記事は、コチラ20170109

 

     

  (少年を追う農園主を演じたルイス・カジェホ、映画Intemperieから)

 

    

      (主演男優賞にノミネートされたカジェホ、ゴヤ賞2017授賞式)

 

 

エドゥアルド・フェルナンデス 映画『戦争のさなかで』 監督アレハンドロ・アメナバル

〇エドゥアルド・フェルナンデス(バルセロナ1964)は、俳優。上記した以外に、主演・助演ノミネーションの山というのを列記すると、2000新人賞マリアノ・バロッソLos lobos de Washington2002助演ビガス・ルナ『マルティナは海』2006主演マルセロ・ピニェイロMetodo2011助演アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ『ビューティフル』2015助演ダニエル・モンソン『エル・ニーニョ』(ザ・トランスポーター)、2019助演アスガル・ファルハディ『誰もがそれを知っている』などが主なものであるが、ゴヤ賞以外のガウディ賞、マラガ賞、サン・ジョルディ賞などに広げると書ききれない。バジャドリード映画祭2018栄誉賞を受賞している。

『エル・ニーニョ』の主な紹介記事は、コチラ20141103

『スモーク・アンド・ミラーズ』の紹介記事は、コチラ20160924

『誰もがそれを知っている』の主な紹介記事は、コチラ20180508

 

  

     (ホセ・ミリャン・アストライに扮したフェルナンデス、映画から)

 

     

(銀貝賞のトロフィーを手にしたフェルナンデス、サンセバスチャン映画祭2016授賞式)


フリエタ・セラノが助演女優賞にノミネート*ゴヤ賞2020 ⑩2020年01月07日 18:13

              パコ・カベサスの「Adiós」から2人がノミネート

 

    

 (候補者がマドリードに参集したゴヤの夕べから、Adiós」クルーのモナ・マルティネス、

 ナタリア・デ・モリーナ、新人女優賞ノミネートのピラール・ゴメスの3人、2019年12月17日

 

★ゴールデン・グローブ賞の結果発表があり、スペイン各紙も写真入りで大きく報道していました。外国語映画部門にノミネートされていたアルモドバルのDolor y gloriaは、カンヌ同様ポン・ジュノの『パラサイト 半地下の家族』(110日公開)に敗れました。監督もガラ当日に馳せつけましたが残念でした。しかし本番のアカデミー賞が残っておりますが(まだノミネートが確定していない)最近ではこのカテゴリーは一致する傾向にあるからダメかな。またドラマ部門の男優賞ノミネートのバンデラスは、今度は『ジョーカー』のホアキン・フェニックスに敗れました。

  

   

          (ガラに駆けつけたアルモドバル監督、2020年1月5日)

 

★気を取り直して。Dolor y gloria」にかつてのアルモドバル映画の常連フリエタ・セラノがノミネートされました。1980年のデビュー作『ペピ、ルシ、ボンと他のフツーの女たち』以来、1983『バチ当たり修道院の最期』1986『マタドール』1988『神経衰弱ぎりぎりの女たち』から1989年の『アタメ』まで出演している。今回は久々のアルモドバル映画の出演となります。アメナバルの『戦争のさなかで』の中でサラマンカ市長夫人を演じたナタリエ・ポサ、パコ・カベサス(セビーリャ1976)のスリラーAdiós(未紹介)から、モナ・マルティネスナタリア・デ・モリーナが揃ってノミネートされていますが、予想は難しい。

 

最優秀賞助演女優賞

 

ナタリア・デ・モリーナ 映画Adiós 監督パコ・カベサス

〇ナタリア・デ・モリーナ(ハエン近郊のリナレス1990)は、非常に強い星のもとに生まれた女優。作品は未紹介ですが、セビーリャを舞台にしたドラッグ絡みの殺人劇のようです。主演はマリオ・カサスだが、運悪くアキがなくついてなかった。映画の評価が分かれていることも損しているようです。ゴヤ賞関連では、ダビ・トゥルエバの『「ぼくの戦争」を探して』デビューするや2014新人女優賞、フアン・ミゲル・デル・カスティジョのTecho y comidaのシングルマザー役で2016主演女優賞と立て続けにゴヤ胸像を手にしたシンデレラガール。他にパコ・レオンのKIKI~愛のトライ&エラー16)、カルロス・ベルムトの『シークレット・ボイス』18)、イサベル・コイシェの『エリサ&マルセラ』19)では男装姿をお披露目した。当ブログでは何回も登場してもらっている。独身にアディオスして音楽プロデューサーのヘスス・アモレスがパートナーです。

Techo y comida」&主なキャリア紹介は、コチラ20160116

 

   

          (マリオ・カサスと、映画Adiósから)

   

      

 (涙が止まらなかった主演女優賞受賞のナタリア・デ・モリーナ、ゴヤ賞2016授賞式

 

 

モナ・マルティネス 映画Adiós 監督パコ・カベサス

〇モナ・マルティネス(マラガ)は、2002年当時係争中だった事件をTVミニシリーズ化して話題になったベニト・サンブラノのPadre corajeでデビュー、ゴヤ賞受賞歴はない。サンブラノ監督がIntemperieで脚色賞他にノミネートされているが、本作にも出演している。Adiósが初ノミネーションだが、フェロス賞助演女優賞にもノミネートされている。他に当ブログ紹介作品としてアンドレア・ハウリエタAna de día18)やロドリゴ・ソロゴジェンのEl reino出演がある。作品についてはナタリア・デ・モリーナの項を参照、主人公の7歳になる娘の死が中心にあり、涙なしには見られない作品とか。

 

   

      

      (モナ・マルティネスとマリオ・カサス、映画Adiós」から

 

 

フリエタ・セラノ 映画Dolor y gloria」 監督ペドロ・アルモドバル

フリエタ・セラノ(バルセロナ1933)は、1964TVシリーズでデビュー。ゴヤ賞関連では受賞は一度もなく、『神経衰弱ぎりぎりの女たち』とグラシア・ケレヘタのCuando vuelvas a mi lado99)で2回助演にノミネートされている。上記のアルモドバル作品以外ではハイメ・デ・アルミニャンのMi querida señorita72)、TVシリーズTeatro de siempre196771)でフォトグラマ・デ・プラタ賞を受賞している。また『マタドール』ではファンタスポルト2005の国際ファンタジア映画賞、20146ガウディ賞栄誉賞、マラガ映画祭特別賞の一つ銀のビスナガシウダ・デル・パライソ2015年に受賞している。デビュー以来生涯現役を続けているが、86歳という年齢から最後のチャンスかもしれない。

 

    

      (バンデラス扮する主人公サルバドールの母親役、映画から)

 

   

  (ガウディ栄誉賞のトロフィーを手にしたセラノ、第6回ガウディ賞2014授賞式

 

 

ナタリエ・ポサ 映画「Mientras dure la guerra」(『戦争のさなかで』

        監督アレハンドロ・アメナバル

ナタリエ・ポサ(マドリード1972)は、ゴヤ賞関連ではノミネートに終わることが多かったが、2018年リノ・エスカレラのNo sé decir adiósで主演女優賞を受賞している。本作はスペイン映画祭2019『さよならが言えなくて』の邦題で上映された。他では脇役だが、アルモドバルの『ジュリエッタ』、セスク・ゲイの『しあわせな人生の選択』などの公開作品に出演している。

キャリア紹介は、コチラ20170625

 

       

     (芯の強いサラマンカ市長夫人に扮したナタリエ・ポサ、映画から)

 

     

   (主演女優賞のトロフィーを手にしたナタリエ・ポサ、ゴヤ賞2018授賞式)


ほぼ決まりの主演男優賞*ゴヤ賞2020 ⑨2020年01月06日 17:16

              アントニオ・バンデラスVSカラ・エレハルデ

 

     

(左から、バンデラス、アントニオ・デ・ラ・トーレ、エレハルデ、ルイス・トサール)

  

★アルモドバルVSアメナバルという監督対決が、そのまま主演男優賞アントニオ・バンデラスVSカラ・エレハルデにもちこまれている。前者は海外での受賞歴に比してゴヤ賞は、ゴヤ賞2015栄誉賞を受賞しただけである。ハリウッド時代が長いこともあり、帰国後主演したアルモドバルの『私が、生きる肌』(11)でもノミネーションに終わっている。Dolor y gloriaがカンヌ映画祭2019にノミネートされ、バンデラスは男優賞を受賞している。後者はスペイン映画史上最高額の5600万ユーロという破格の興行収益を上げたエミリオ・マルティネス=ラサロのコメディOcho apellidos vascos2度目の助演男優賞を受賞している。

 

★アントニオ・デ・ラ・トーレは昨年、ロドリゴ・ソロゴジェンのEl reinoで宿願の主演男優賞を受賞しており、今回体重を15キロ増やして臨んだLa trinchera infinitaではあるが、連続受賞はないと予想します。残るルイス・トサールも長い下積み生活を乗りこえて、2004年イシアル・ボリャインの『テイク・マイ・アイズ』、続く2010年ダニエル・モンソンの『プリズン211のマラ・マードレ役で主演男優賞を受賞している。今回パコ・プラサのスリラーQuien a hierro mataがメイン・カテゴリーにノミネートされていないこともあり、若干分が悪いのではないか。

 

 

  最優秀主演男優賞

 

アントニオ・バンデラス Dolor y gloria」 監督ペドロ・アルモドバル

〇アントニオ・バンデラス(マラガ1960)俳優、監督、製作者。ゴヤ賞2015栄誉賞のほか、1年に1人選ばれる国民賞の映画部門、スペイン映画国民賞2017年に受賞している。ゴヤ賞以上に格上の映画賞である。キャリアについては以下の記事にワープして下さい。

ゴヤ栄誉賞受賞についての記事は、コチラ2014110520150215

スペイン映画国民賞についての記事は、コチラ20170928

 

  

 (映画「Dolor y gloria」から)

    

    

      (カンヌ映画祭2019男優賞のトロフィーを手にしたバンデラス)

 

 

アントニオ・デ・ラ・トーレ La trinchera infinita」 監督アイトル・アレギ、他

〇アントニオ・デ・ラ・トーレ(マラガ1968)は俳優、ジャーナリスト。ゴヤ賞関連ではダニエル・サンチェス・アレバロの長編デビュー作『漆黒のような深い青』(06)で助演男優賞を受賞して以来、毎年のように主演か助演にノミネートされるが縁遠く、昨年やっとロドリゴ・ソロゴジェンの「El reino」で主演男優賞を受賞した。今回の「La trinchera infinita」では、フォルケ賞とフェロス賞にノミネートされているが、多分ないと予想します。

主なキャリア紹介は、コチラ20180827

 

        

                       (映画「La trinchera infinita」から)

    

   

     (主演男優賞のトロフィーを手にしたデ・ラ・トーレ、ゴヤ賞2019ガラ)

 

カラ・エレハルデ 「Mientras dure la guerra」(『戦争のさなかで』) 監督アレハンドロ・アメナバル

〇カラ・エレハルデ(バスク州ビトリア1960)は、俳優、脚本家、監督。ゴヤ賞絡みでは、イシアル・ボリャインの『ザ・ウォーター・ウォー』(『雨さえも―ボリビアの熱い一日』)でゴヤ賞2011助演男優賞を受賞、エミリオ・マルティネス=ラサロのコメディOcho apellidos vascos14)で、2度目の助演男優賞を受賞している。脇役が多いので主演男優賞は初ノミネートです。

主なキャリア紹介は、コチラ⇒2015年01月28日

 

     

(ミゲル・デ・ウナムノを演じたエレハルデ)

 

  

        (助演男優賞のトロフィーを手にしたエレハルデ、ゴヤ賞2015ガラ)

 

 

ルイス・トサール Quien a hierro mata」 監督パコ・プラサ

〇ルイス・トサール(ルゴ1971)、ゴヤ賞関連では上述の他、イシアル・ボリャインの『花嫁のきた村』99)で新人男優賞ノミネートを皮切りに、フェルナンド・レオン・デ・アラノアの『月曜日にひなたぼっこ』02)で助演男優賞受賞、ボリャインの『ザ・ウォーター・ウォー』10)、ジャウマ・バラゲロの『スリーピングタイト~』11)、ダニー・デ・ラ・トーレの『暴走車ランナウェイ・カー』15)の3作が主演男優賞にノミネートされており、シリアス・ドラマ、ホラー、スリラー、コメディと何でもこなすカメレオン俳優らしく比較的恵まれている。今回の映画はガリシアを舞台にしたスリラー仕立ての復讐劇、というわけで英題は「Eye for an Eye」です。他に彼が主演したアリッツ・モレノの『列車旅行のすすめ』や、ベニト・サンブラノ&レモン兄弟のIntemperieもノミネーションされているので、3グループをぐるぐる駆け回らなくてはならない。2015年からチリ出身の女優マリア・ルイサ・マジョールがパートナー、マラ・マードレも昨年2児の父親になった。

最近のキャリア紹介は、コチラ20191217

 

     

              (介護士に扮したルイス・トサール、映画「Quien a hierro mata」から)

   

    

(『プリズン211』で2度目の主演男優賞のトロフィーを手にしたトサール、ゴヤ賞2010

 

2020年のフェロス賞(116日)には4人揃ってノミネートされ、ホセ・マリア・フォルケ賞(111日)にはルイス・トサール以外ノミネートされています。一人に集中するのかバラけるのか、間もなくです。


中堅と若手が競う主演女優賞*ゴヤ賞2020 ⑧2020年01月05日 11:16

                  予測が難しい主演女優賞――ベテランを追う若手の二人

    

   

(左から、ベレン・クエスタ、マルタ・ニエト、グレタ・フェルナンデス、ペネロペ・クルス)

 

2020年が明けました。今年は1月中にガラ開催と早いのに未だ作品紹介が途中ですが、気分を変えてキャスト紹介から始めることにしました。4人の候補者のうち、本カテゴリーのノミネート及び受賞経験者は「Dolor y gloria」のペネロペ・クルス唯一人、他は初ノミネーションです。なかでグレタ・フェルナンデスが主演した「La hija de un ladrón」は未紹介作品ですが、簡単に触れますと、刑務所を出たり入ったりしている窃盗犯の父をもつ娘役、年の離れた弟と自身の赤ん坊の世話をして苦労する若い母親役、歯車が一つ狂うと不幸が連鎖する都会の断面が語られる。父親に実父エドゥアルド・フェルナンデスが扮していることでも話題になっている。

 

  最優秀主演女優賞

 

ペネロペ・クルス Dolor y gloria(ペドロ・アルモドバル)

〇「Dolor y gloria」に助演女優の該当者はいても主演女優はいないと考えておりますが、前者には久しぶりのアルモドバル作品出演となったベテラン女優フリエタ・セラノが控えており、クルス自身も久しぶりのアルモドバル作品、苦肉の策として主演にまわしたのではないでしょうか。ノミネーション常連の女優ですが受賞は、ゴヤ賞2009『それでも恋するバルセロナ』(助演)を最後に受賞から遠ざかっています。本作での出番は少ないようですが彼女の演技を褒める批評家は多く好演していることは間違いない。監督自身の露出度が一番多いと言われる本作では、アルモドバルの分身をアントニオ・バンデラスが演じます。クルスは彼がまだ少年だった頃の母親役、晩年の母親をフリエタ・セラノが演じます。若くしてフランスのセザール栄誉賞、サンセバスチャン映画祭SSIFFドノスティア栄誉賞など受賞歴多数、国内外での活躍が際立っている。

最近のキャリア紹介は、コチラ20190520

Dolor y gloria」の記事は、コチラ20190422

 

   

  (ペネロペ・クルス、映画から)

    

    

(ドノスティア栄誉賞のトロフィーを手にしたペネロペ・クルス、SSIFF2019、928日)

 

   

ベレン・クエスタ La trinchera infinita(アイトル・アレギ、ジョン・ガラーニョ、他)

〇ベレン・クエスタは、1984年セビーリャ生れの女優、マラガ育ちでマラガ高等演劇学校で演技を学んだ後、芸術コメディコース他で学びながら舞台女優としてスタート、TVシリーズ、映画の3本建てで活躍中である。映画の代表作品はラテンビート映画祭上映の、パコ・レオンのコメディKIKI~愛のトライ&エラー』(ゴヤ賞2017新人女優賞ノミネート)、ロス・ハビのミュージカル・コメディ『ホーリー・キャンプ!』(同2018助演女優賞ノミネート)、当ブログ紹介作品が代表作品です。主演女優賞は初ノミネーション、受賞すればゴヤ賞初受賞となります。他エミリオ・マルティネス=ラサロの『オーチョ・アペジードス・カタラーネス』15 Netflix)にも出演しています。ゴヤ賞以外では、フェロス賞2017TVシリーズ」部門の『パキータ・サラス』(シーズン1)で助演女優賞を受賞、2019年シーズン2ノミネート、今年2020年もシーズン3でノミネートされている。2012年からタマル・ノバスがパートナー、アメナバルの『海を飛ぶ夢』で主人公の甥に扮しゴヤ賞新人賞を受賞した若手です。

La trinchera infinita」の作品紹介は、コチラ20191220

 

(ベレン・クエスタ、映画から)

   

    

     (フェロス賞のトロフィーを手にしたベレン・クエスタ、2017年)

 

 

マルタ・ニエト 「Madre」(ロドリゴ・ソロゴジェン)

1982年ムルシア生れ、2003年デビューの女優、またスペイン・ヨガの教師でもある。ゴヤ賞ノミネートは初めて。代表作品はアントニオ・バンデラスの監督第2作目『夏の雨』(ラテンビート2007)、ロドリゴ・ソロゴジェンの短編Madre(スペイン短編Fugaz2018女優賞受賞)、ベネチア映画祭2019「オリゾンティ」部門に出品された長編Madreで女優賞、セビーリャ・ヨーロッパ映画祭2019でも女優賞を受賞するなど、有力候補でしょうか。本作でゴヤ賞の他、フォルケ賞とフェロス賞2020にノミネートされています。TVシリーズではHermanos y detectives200709)に脇役で出演している他、多数。ロドリゴ・ソロゴジェン監督がパートナーです。

Madre」の紹介記事は、コチラ20191226

   

(マルタ・ニエト、映画から)

      

 

      

(銀獅子賞のトロフィーを手にしたマルタ・ニエト、ベネチア映画祭授賞式828日)

 

 

グレタ・フェルナンデス 「La hija de un ladrón」(ベレン・フネス)

〇グレタ・フェルナンデスは1995年バルセロナ生れの女優。サンセバスチャン映画祭2019銀貝賞である女優賞を受賞している。父親が今回アメナバルの『戦争のさなかで』でミリャン・アストライ役で助演男優賞にノミネートされているエドゥアルド・フェルナンデス、既にゴヤ賞主演男優賞(2001Fausto 5.0)を受賞しているので、グレタ受賞なら父娘で受賞となる。一番の若手だが子役時代を含めると芸歴はそこそこ長い。イサベル・コイシェの『エリサ&マルセラ』のマルセラ役、ラモン・サラサールの『日曜日の憂鬱』、イサキ・ラクエスタの『記憶の行方』、エステバン・クレスポの『禁じられた二人』、リノ・エスカレラの『さよならが言えなくて』、など、Netflix配信が多いが字幕入りで観られる作品に出演している。

主なキャリア紹介は、コチラ20190211

 

     

                     (実の親子で父娘を演じた、映画から)   

                       

   

  (銀貝賞のトロフィーを手にしたグレタ・フェルナンデス、SSIFF 2019授賞式928日)


オリジナル脚本賞&脚色賞*ゴヤ賞2020 ⑦2019年12月26日 23:22

         作品賞、監督賞に重ならないのがロドリゴ・ソロゴジェンの「Madre1

 

★オリジナル脚本賞は、ペドロ・アルモドバルの「Dolor y gloria」、ダビ・デソラペドロ・リベロの「El hoyo」、ホセ・マリ・ゴエナガルイソ・ベルデホの「La trinchera infinita」、アレハンドロ・アメナバルアレハンドロ・エルナンデスの「Mientras dure la guerra」(『戦争のさなかで』)と、作品賞と新人を含む監督賞に一致しています。共同執筆者で初出となる脚本家だけの紹介。

 

★脚色賞は、エリヒオ・モンテロサルバドール・シモーの「Buñuel en el laberinto de las tortugas」、ベニト・サンブラノダニエルパブロ・レモン兄弟の「Intemperie」、イサベル・ペーニャロドリゴ・ソロゴジェンの「Madre」、ハビエル・グジョンの「Ventajes de viajar en tren」(『列車旅行のすすめ』)、作品賞にも監督賞にも選ばれなかった唯一がMadreでした。これは米アカデミー賞2019短編部門にノミネートされた同タイトル短編を原作として、今回の長編を脚色賞枠に選んだようです。今回初登場ということで、本作だけ作品紹介をしておきます。

 

 

最優秀オリジナル脚本賞

 

ペドロ・アルモドバル 映画「Dolor y gloria2019

 

ダビ・デソラ&ペドロ・リベロ 映画「El hoyo2019

ダビ・デソラは、1971年バルセロナ生れ、戯曲家、脚本家。ジャック・ザガ・カバビエのAlmacenados15)でアリエル賞2017脚色賞を受賞、「El hoyo」でトリノ映画祭2019Scuola Holden賞をペドロ・リベロと受賞している。

 

    

 

ペドロ・リベロは、1969年ビルバオ生れ、アニメ監督、脚本家、製作者。2007年長編アニメーションLa crisis carnivoraでデビュー、ワルシャワ映画祭2008のフリー・スピリット賞を受賞、2011年短編アニメBirdboyをアルベルト・バスケスと共同監督、共に脚本も手掛け、ゴヤ賞2012の短編アニメーション賞を受賞した。長編第2Psciconatas, los niños olvidados15)を監督、ゴヤ賞2017アニメーション賞、イベロアメリカ・プラチナ賞2017アニメーション賞ほか、国際映画祭での受賞歴多数。「El hoyo」ではトリノ映画祭2019Scuola Holden賞をダビ・デソラと受賞している。

   

  

 

ホセ・マリ・ゴエナガルイソ・ベルデホ 映画「La trinchera infinita2019

ホセ・マリ・ゴエナガのキャリア紹介は、コチラ20141109

 

ルイソルイス・ベルデホは、1975年サンセバスティアン生れ、監督、脚本家、製作者。ジャウマ・バラゲロとパコ・プラサのREC/レック』07)で監督と共同執筆、続いてパコ・プラサのREC/レック3ジェネシス』の脚本も手掛けている。フアン・カルロス・メディナの『ペインレス』12)では監督との共同執筆、フェルナンド・ゴンサレス・モリナの『パサジャウンの影』17)など、比較的字幕入りで公開か放映されている、長編監督デビュー作『ネストNEST09)は、ケビン・コスナーのデビュー30周年記念作品、ホラー・スリラーの英語映画ということもあって公開された。第2作は米西合作映画Violet13)で脚本の他、エグゼクティブ・プロデューサーも兼ねている。レティシア・ドレラ、フニオ・バルベルデ、カルロス・バルデム、リカルド・ダリンなど有名どころが共演している。

 

  

 

 

アレハンドロ・アメナバルアレハンドロ・エルナンデス 映画「Mientras dure la guerra

    (『戦争のさなかで』)2019

アレハンドロ・アメナバルのキャリア紹介は、コチラ20180601

 

アレハンドロ・エルナンデスは、1970年ハバナ生れ、スペインに移住、両国で活動している脚本家。現スペイン映画アカデミー会長であるマリアノ・バロッソが監督したTodas las mujeresを監督と共同執筆して、ゴヤ賞2014脚色賞を受賞している。既にキャリア紹介しています。

アレハンドロ・エルナンデスのキャリア紹介は、コチラ20180601

   

     

    (ゴヤ胸像を手にしたアレハンドロ・エルナンデス、ゴヤ賞2014授賞式にて)

 

 

最優秀脚色賞

 

エリヒオ・モンテロサルバドール・シモー 映画「Buñuel en el laberinto de las tortugas

エリヒオ・モンテロは、1970年ア・コルーニャ生れ、脚本家。本作以外はTVシリーズ、TVミニ・シリーズの脚本専門に執筆している。

サルバドール・シモーのキャリア紹介は、コチラ20191224

 

 

ベニト・サンブラノダニエル・レモンパブロ・レモン 映画「Intemperie2019

3人のキャリア紹介は、コチラ20191217

 

 

ハビエル・グジョン 映画「Ventajes de viajar en tren」(『列車旅行のすすめ』)2019

〇ハビエル・グジョン(グリョン)Javier Gullónは、1975年スペイン生れ、脚本家、製作者。本邦ではグヨンと表記されている。英語映画のミステリーやスリラーの脚本を手掛けていることから、公開作品も多い。2007年のゴンサロ・ロペス=ガジェゴのスリラーEl rey de la montañaは、レオナルド・スバラグリアやマリア・バルベルデ出演で話題になった。ガベ・イバニェスのミステリーHierro09)は、作品の出来はともかく、主演のエレナ・アナヤがシッチェスやファンタスポルト映画祭で女優賞を受賞した。古い映画だが現在でも『シャッター ラビリンス』の邦題でNetflix配信しているようです。

〇他にダニエル・カルパルソロの『インベーダー・ミッション』12)、ドゥニ・ヴィルヌーヴがジョゼ・サラマーゴの同名小説を映画化したEnemy13、英語)は、『複製された男』の邦題で公開された。アルフレッド・モンテロの『ディープ・サンクタム』14)、エリオット・レスターの『アフターマス』17、米英)にはシュワルツェネッガーが主演したことで話題を提供した。2016年女優でエッセイストの藤谷文子と結婚したことでも話題になった(両親はスティーブン・シーガルと藤谷美也子)。監督のモレノ夫人も日本人です。

 

    

          (本作のインタビューを受けるハビエル・グジョン)

 

 

イサベル・ペーニャロドリゴ・ソロゴジェン 映画Madre2019

〇他にマルタ・ニエトが主演女優賞にノミネートされている。

〇第76回ベネチア映画祭2019出上映された。彼女はソロゴジェンのパートナーで短編でも主役の母親に扮した。セビーリャ・ヨーロッパ映画祭2019女優賞を受賞している。

イサベル・ペーニャのキャリア紹介は、コチラ20190719

ロドリゴ・ソロゴジェンの主なキャリア紹介は、コチラ20180326

短編「Madre」の作品紹介は、コチラ20180210

 

      

   (イサベル・ペーニャ、ロドリゴ・ソロゴジェン、ゴヤ賞2019のフォトコールにて)

 

  

    (ソロゴジェンとマルタ・ニエト、米アカデミーー賞2019の授賞式に出席)

 

  

(監督、マルタ・ニエト、息子役のJules Porier、ベネチア映画祭フォトコール、830日)

   


ゴヤ栄誉賞はペパ・フローレス<マリソル>に*ゴヤ賞2020 ②2019年12月13日 14:46

           ゴヤ栄誉賞2020はマラゲーニャの女優&歌手、ペパ・フローレスに

 

        

       (ペパ・フローレス、マリオ・カムスのLos días del pasado」から)   

   

★ゴヤ栄誉賞は10月下旬に発表になっておりましたが、ノミネーション発表に合わせてアップしようと思いながら忘れてしまいました。次回はベニト・サンブラノIntemperieと予告しましたが栄誉賞に変更します。本名のペパ・フローレスより天才少女マリソルのほうで親しまれている、1948年マラガ生れのマラゲーニャの女優&歌手が受賞します。ブロンドの髪、青い目の美少女、歌えて踊れる天才子役として60年代のミュージカル・コメディを牽引しました。70年代には大人の女優として、フアン・アントニオ・バルデム、マリオ・カムス、カルロス・サウラなどスペイン映画史に名を残す監督に起用されました。

 

★「忘れられない彼女の演技、一般大衆から最も愛され記憶に残る女優の一人」が授賞理由でした。彼女のように35年前の1985年に銀幕引退した俳優が受賞するのは珍しくことです。2020年のガラ開催地がマラガということも関係しているのかもしれません。日本ではCDが入手しやすいことから女優というより歌手のほうが有名でしょうか。受賞のニュースを聞いて「認められたことは非常に光栄です、映画アカデミーに感謝の言葉と共に、これからの我が国の映画発展を願っております」とコメントしました。

 

(子役時代のマリソル、196210月)

      

 ★小さい頃から歌とフラメンコの才能を発揮、姉弟で「合唱と踊り」のグループを結成してTVE出演、1959年マドリードで製作者のマヌエル・ホセ・ゴヤネス・マルティネスの目に留まり、ルイス・ルシア監督のミュージカル・コメディUn rayo de luzの主役に抜擢された。ベネチア映画祭1960で、いきなり最優秀児童女優賞12歳で受賞、これがマリソル神話の始りでした。日本では1967年『太陽は泣かない』の邦題で公開さている。アメリカの人気TV番組「エド・サリバン・ショー」にも出演、ルシア監督のHa llegado un ángel61)、Tómbola62)、Las cuatro bodas de Marisol67)、Solos los dos68)などに出演している。10代半ばは出ずっぱり、強度のストレスと疲労から15歳で胃潰瘍に罹り、映画界を去るつもりだったと語っている。 

      

            (デビュー作Un rayo de luz」のポスター

 

★ルイス・ルシア監督作品以外では、フェルナンド・パラシオスMarisol rumbo a Rio63)、オードリー・ヘップバーンと結婚していた時期(195468)もある、アメリカの俳優、プロデューサー、監督メル・ファーラーがスペイン語で撮ったミュージカル・コメディCabriola65)、ハイメ・デ・アルミリャンのデビュー作Carola de dia, Carola de noche69)などで主役を演じている。

 

       

       (ハイメ・デ・アルミリャンのCarola de dia, Carola de noche

 

70年代に入ってからは、フアン・アントニオ・バルデムのホラー・ミステリーLa corrupción de Chris Miller72)にジーン・セバーグと姉妹を演じた。1973年には最後のミュージカル映画となる、エウヘニオ・マルティンLa chica del Molino Rojoで、今度は俳優出演のメル・ファーラーと共演した。彼の父親がキューバ出身ということもありスペイン語ができた。

 

       

   (ペパ・フローレスとジーン・セバーグ、La corrupción de Chris Miller」から

 

マリオ・カムスLos días del pasado78)がカルロヴィ・ヴァリ映画祭に出品、彼女に初となる女優賞をもたらした。まだ正式に結婚していなかったが、1973年以来パートナーだったフラメンコ界の大御所アントニオ・ガデスと共演したドラマ。フローレスはアンダルシア生れの教師役で、ガデス扮する反フランコのマキのメンバーと出会うことで、孤独と恐怖の日々を生きることになる物語、終焉期を迎えていたとはいえ未だフランコ存命時代の映画だった。

 

 

 

     

        (フローレスとガデス、Los días del pasado」から

 

★その後ガデスとは、カルロス・サウラのフラメンコ三部作と言われるドキュメンタリー仕立ての『血の婚礼』81)、『カルメン』83)の2作で共演している。1983年にマリソルを引退、1985年にはフアン・カーニョCaso serradoを最後に銀幕から引退した。本作には当時実力を発揮し始めた、同郷のアントニオ・バンデラスが脇役で共演している(彼はマラガの名誉市民です)。しばらくTVミニ・シリーズ、舞台に出演したり、アルバム制作はつづけるも、現在は三番目の夫であるイタリア出身のマッシモ・ステッキーニと悠々自適の生活を満喫している。

 

   

      (最後の出演となったCaso serrado」のペパ・フローレス

 

★私生活について触れると、最初の結婚は19695月、カルロス・ゴヤネス(製作者マヌエル・ホセ・ゴヤネスの息子)と教会で挙式、上手くいかず1972年に別居に至ったが、正式に離婚が成立したのは1975年だった。別居中の1973年から、何回も来日しているフラメンコ界の大御所アントニオ・ガデスがパートナーとなり、3人の娘が生まれ(マリア74、タマラ76、セリア81)ている。それぞれ女優、心理学者、歌手として活躍している。正式に再婚したのは198210月、キューバに赴いてフィデル・カストロとアリシア・アロンソの立会で市民婚でした。二人は政治的にはスペイン共産党の支持者、マルキシズムを理想としており、キューバ革命に賛同していた。彼女はフランコ総統から授与された金の記念プレートもキューバに寄付している。しかしこの結婚も1986年に破局して、ガデスとの離婚を機に政党との関係も断った。

 

     

             (3人の娘を連れたフローレスとガデス)

 

★現在は3人目の11歳年下というイタリア人、マッシモ・ステッキーニとマラガで静かに暮らしている。年の差など無関係の由、30年前にピザ専門店で知り合い、それ以来一緒に暮らしている。栄誉賞受賞でもカムバックはないそうですが、当然でしょ。

   

      

           (最近のマッシモ・ステッキーニとフローレス)