ハビエル・バルデム、新作はスピルバーグ製作のTVミニシリーズ2018年10月17日 14:05

         Todos lo saben」の次はTVミニシリーズ「Cortés

 

★去る914日、カンヌ映画祭2018のオープニング作品だったアスガー・ファルハディTodos lo saben(「Everybody Knows」)が、やっとスペインで公開された。オープニングに選ばれたスペイン映画は、過去にはアルモドバルの『バッド・エデュケーション』(04)があります。オスカー賞2冠に輝くイランの監督(『別離』『セールスマン』)、日本でも知名度のあるスペインのエリート俳優+アルゼンチン俳優、おまけに子供誘拐のミステリーとくれば公開は決まりです。日本公開は来年6月になりますが、邦題はエブリバディ・ノウズになるようです。当ブログでは2016年の製作発表段階から記事にしていましたが、カンヌまでなかなかプロットが見えてこなかった。苦悩する母国イランを離れて、独自の視点で映画を撮り続けている監督を無視することはできません。出来はどうあれ百聞は一見に如かずです。

Todos lo saben」の作品・キャスト・スタッフ紹介は、コチラ20180508

         

      

(幸せに酔う結婚式のシーンを入れた、スペイン公開のポスター)

   

         

                         (カンヌ映画祭の英語ポスター)

 

スペイン公開日にエルパイスの編集室を訪れたハビエル・バルデムが撮影余話を語ってくれた。

本作のアイデアは、ファルハディ監督が4歳だったお嬢さん連れでスペインを家族旅行したとき、行方不明になっている子供の「尋ね人」の張り紙を見たとき浮かんだという。「私は嫉妬心が強く妬みぶかい。しかし少なくともそのことを自覚している」とバルデムは笑いながら告白。監督が映画を撮りたいと最初にコンタクトをとってきたのは(自分でなく)ペネロペ・クルスだった。自分にオファーがあったのは1か月半後、「とても気分がよかったし、私の自惚れも満たされた」とジョークを飛ばした。

 

      

          (エルパイス紙の編集室で冗談をとばすハビエル・バルデム、2018914日)

 

★バルデムは、監督が準備期間中にスペインに居を移しスペイン語をマスター、完璧なスペイン映画を撮ることに力を注いでいたことを指摘した。監督がクランクイン時に既に「マドリード近郊の、ラ・マンチャの乾いた風土や生粋の村民の、逞しく、親切な、愛すべき気質を理解していた」と、その抜きんでた才能と努力を褒めていた。妹の結婚式に出席するため家族を伴って、ブエノスアイレスから故郷ラ・マンチャに里帰りした女性が払う過去の請求書。踊り好きお祭り好きの村民が披露宴で幸福感に酔いしれているとき誘拐事件が起きる。犯人が隣人であることがはっきりしてくる。一見仲睦まじく見えた共同体の重さは未来永劫に続くのか。時には嘘も方便、共生には必要なんですが。

 

★クルス、バルデムほかの主な共演者は、リカルド・ダリンエドゥアルド・フェルナンデスラモン・バレアバルバラ・レニーインマ・クエスタエルビラ・ミンゲスとエリート演技派が集合している。それぞれがエゴをむき出すこともなく撮影はスムーズだった。それは「各人とも台本を読み込んでいて、人物のつながりをよく理解していたからだ」とバルデムは語っていた。

        

         

 (カンヌ映画祭オープニングに勢揃いしたスタッフとキャスト)

 

               

                (共演中でも仕事を家庭に持ち込まないという賢いカップル)

      

★監督をする可能性についての質問には、「その気はない。多くの俳優が挑戦してることは知ってるが、取り巻く状況を考えると、自分にはきつすぎる。優柔不断な人間だから耐えられないだろう。さしあたっては監督業は考えていない」、特別撮りたいテーマがあるなら別だが、別にないようです。

 

★新しい作品は、スピルバーグ製作のTVミニシリーズCortés4エピソード)でスペインの征服者エルナン・コルテス役。二つの文明の衝突、二人の戦略家、メシカ族アステカ帝国の第9代君主モンテスマとコルテスの遭遇を描く歴史ドラマだそうです。まだ詳細は不明です。スピルバーグの大ファンで『ET.』はスクリーンで24回観た由(!)、「監督は理知的で謙虚、印象深い映画を撮る可能性を秘めている」と絶賛している。


映画国民賞2018はエステル・ガルシアに*「エル・デセオ」プロデューサー2018年09月17日 14:46

         意欲溢れる女性、エステル・ガルシアが映画国民賞を受賞

 

★映画国民賞は1980年から始まり第1回はカルロス・サウラでした。女性初の受賞者は1988年のカルメン・マウラ、女性プロデューサーが受賞するのは今回が初めてです。一時期2人受賞の時代が続きましたが、1995年以降は1人に固定されています。最近の受賞者は、昨年がアントニオ・バンデラス、順に遡ると、アンヘラ・モリーナフェルナンド・トゥルエバロラ・サルバドール(脚本家)J.A.バヨナイボンヌ・ブレイク(故人)と男女交互でしたので、「もっと女性にチャンスを!」運動もあり、今年は女性を予想していました。しかし製作者は俳優や監督と違い、あまり顔が見えない存在ということもあって、エステル・ガルシアを予想していた人は多くはなかったのではないでしょうか。

 

        

         (エル・デセオのプロデューサー、エステル・ガルシア)

 

エステル・ガルシアEsther García Rodríguez(セゴビア、1956)は、製作者、プロダクション・マネージャー、本人はそう思っていないでしょうがチョイ役で10作ほど出演しているので女優です。1986年にアルモドバル兄弟の制作会社「エル・デセオ」に入社、三十数年に亘って兄弟とコラボしている製作者が今年の受賞者に選ばれました。「意志の強さと仕事に対する計り知れない可能性」が受賞理由ですが、加えて女性たちの地位向上に尽力していることが評価された。彼女ほどスペイン映画界で愛され尊敬されているプロデューサーはそんなに多くないはずです。女性プロデューサーも監督同様増加しておりますが、裏方の受賞は後に続く人にとっても励みになるでしょう。

 

★最初から映画界に興味があったわけではなく、19歳のときペドロ・オレア<マドリっ子三部作>2作目「Pim, pam, pum...! Fuego!」(75)にプロダクション助手として雇われたのがきっかけ。本作はコンチャ・ベラスコ、フェルナンド・フェルナン・ゴメスなどが出演したコメディ、その魅力にすっかりハマってしまった。それ以来、フェルナンド・トゥルエバ、フェルナンド・コロモ、マルティネス・トレスなど、新生の監督作品に参加していった。1975年というのはフランコ体制が終焉を迎えた年でした。

 

1985年、フェルナンド・トゥルエバの第3作「Sé infiel y no mires con quién」にプロダクション・マネージャーとして本格的に第一歩を踏みだす。本作はアナ・ベレン、カルメン・マウラ、ベロニカ・フォルケ、アントニオ・レシネスなど芸達者が顔を揃えたコメディでした。1986年「エル・デセオ」に入り、アルモドバルの『マタドール』にプロダクション・マネージャーのアシスタントとしてアルモドバル作品に参画した。続いて『欲望の法則』、『神経衰弱ぎりぎりの女たち』『アタメ!』『ハイヒール』『私の秘密の花』・・・・そしてアカデミー賞外国語映画賞を受賞した『オール・アバウト・マイ・マザー』99)で、2個目となるゴヤ賞作品賞も受賞した。ゴヤ賞作品賞は4貰っていますが、1個目はアレックス・デ・ラ・イグレシア『ハイル・ミュタンテ!/電撃XX作戦』93)、監督も新人監督賞にノミネートされた。イサベル・コイシェ『あなたになら言える秘密のこと』05)、そしてアルモドバルの『ボルベール<帰郷>06)です。

 

      

 (『ハイル・ミュタンテ~』のポスター、アントニオ・レシネス左とフレデリック・フェデル)

    

★ゴヤ賞イベロアメリカ映画部門を加えると、アルゼンチンのダミアン・ジフロン『人生スイッチ』14)、パブロ・トラペロ『エル・クラン』15)がある。「エル・デセオ」は、積極的にラテンアメリカ映画に資金を提供しており、二人の他にメキシコのギレルモ・デル・トロ(『デビルズ・バックボーン』)、アルゼンチンのルクレシア・マルテル(『頭のない女』『サマ』)、今年のSSIFF「ペルラス部門」上映のルイス・オルテガEl ángerなどが代表作として挙げられるだろう。ゴヤ賞以外で『人生スイッチ』がフォルケ賞2015「ラテンアメリカ部門」の作品賞をアグスティン・アルモドバルと一緒に受け取った。

 

       

 (フォルケ賞2015ラテンアメリカ部門で『人生スイッチ』が受賞、A.アルモドバルとガルシア)

   

     

  (ゴヤ賞2016イベロアメリカ映画部門の『エル・クラン』が受賞、ゴヤ胸像を手にした)

 

★本邦公開のアルモドバル作品、例えば2002年の『トーク・トゥ・ハー』(02から、『バッド・エデュケーション』『抱擁のかけら』『私が、生きる肌』『アイム・ソー・エキサイテッド!』、2016年の最新作『ジュリエッタ』までの全てを手掛けている。そして映画国民賞受賞の知らせは、現在進行中のDolor y gloriaの撮影現場であるエル・エスコリアで、有線電話にて文化相からの「おめでとう」を直々に受けた。同僚のトニ・ノベリャが大声で「ちょっと、ちょっと、みんな聞いて!」と叫んでロケ隊に知らせたようだ。しかし撮影は続行され、仕事が終わった9時半に小エビとシャンペンでお祝いしたそうです(撮影期間は46日間の予定で当日は39日目だった由)。

 

            (ガルシアが手掛けたアルモドバル作品)

 

★進行中のDolor y gloria公開2019年が予定されているが、撮影現場には昨年の受賞者アントニオ・バンデラスもいて「お祝いの抱擁を受けた、勿論アグスティンからも。ペドロは感動してしまって」と彼女は喜びを語った(P.アルモドバルは1990年受賞)。映画の詳細はまだ分かりませんが、バンデラスの他、ペネロペ・クルス、ラウル・アレバロ、ノラ・ナバス、レオナルド・スバラグリア、セシリア・ロス、アシエル・エチェアンディア、フリエタ・セラノ他、豪華メンバーを揃えています。来年のカンヌを目指しているのかもしれない。

 

★自分はエル・デセオしか経験がないが「ここは仕事がしやすい。自由に作品を選ばせてくれるから・・・居心地がいい。ほかでキャリアを積んだら、と言われるが、その必要を感じない」。ガルシアにとって、受賞は付加価値がつく。「この受賞は映画製作を可能にしているグループの他のメンバーに陽が当たったと思う。だって多くの人々は誰が映画を支えているか知らないもの。プロデューサーという職業は、人の目に見えない存在、特に女性はまだまだよ」と。最後に厳しい仕事をサポートしてくれる家族への感謝の言葉で締めくくった。

 

★授賞式はサンセバスチャン映画祭期間中に行われるのが慣例、スペイン教育文化スポーツ大臣の手で授与される。交代がなければ今年6月に就任したホセ・ギラオ・カブレラ大臣になります。922日(土)が予定されており、どんな受賞スピーチをするのか見守りたい。

2014年受賞者ロラ・サルバドールの紹介記事は、コチラ⇒2014年07月24日

2015年受賞者フェルナンド・トゥルエバの紹介記事は、コチラ⇒2015年07月17日


イザベル・ユペール公式ポスターの顔に*サンセバスチャン映画祭2018 ⑰2018年09月03日 15:56

            66回サンセバスチャン映画祭2018の公式ポスターが決定

 

        

★第66回サンセバスチャン映画祭の公式ポスターにフランスの女優イザベル・ユペールが選ばれました。ユペールは2003年のドノスティア賞受賞者です。公式ポスターは1000部印刷され映画祭会場やその他関連施設に張り出される。そのほかカタログの表紙、ガイドブックにも使用される。公式ポスターはGetty Imagesの写真からナゴレ・ガルシア・パスクアルやチェマ・ガルシア・アミアノ他によって、TGA ドノスティアのデザイン・スタジオが作成した。

 

★紹介するまでもないのですが、イザベル・ユペール(パリ、1953)は、三大映画祭の受賞者として老若男女を問わずファンが多いと思います。先ず1978年、初めてクロード・シャブロルとタッグを組んだ『ヴィオレット・ノジエール』(未公開)でカンヌ映画祭女優賞、1988年同監督の『主婦マリーがしたこと』でベネチア映画祭女優賞、1995年再び『沈黙の女/ロウフィールド館の惨劇』でベネチア映画祭女優賞、2001ミヒャエル・ハネケ『ピアニスト』でカンヌ映画祭女優賞とヨーロッパ映画賞女優賞他を受賞した。2002年、フランソワ・オゾンのスリラー・コメディ8人の女たち』では、女優8人全員がベルリン映画祭芸術貢献賞(銀熊)とヨーロッパ映画賞女優賞を受賞した。本作ではカトリーヌ・ドヌーヴと仲の悪い姉妹を演じた。1980年マイケル・チミノの『天国の門』でアメリカに進出したこともあり、製作費の10分の1も回収できなかった失敗作と言われたが、ユペール本人は国際的スターとして認知されたのではないか。

 

       

          (共演のブノワ・マジメルと、『ピアニスト』から)

 

2012年、ミヒャエル・ハネケの『愛、アムール』(カンヌFFのパルムドール受賞作品)に出演、本作はオスカー像も手にした成功作。そのほか最近の出演映画は、マルコ・ベロッキオの『眠れる美女』(12、伊仏合作)、ポール・ヴァーホーヴェンのスリラー『エル ELLE16)はサンセバスチャン映画祭にもエントリーされ、ゴールデン・グローブ賞、ヨーロッパ映画賞、セザール賞などの女優賞を独占した。ミア・ハンセン=ラヴの『未来よ、こんにちは』(16)、ハネケの『ハッピーエンド』(17)では『愛、アムール』と同様ジャン=ルイ・トランティニャンと父娘を演じている。

 

      

             (ヴァーホーヴェンの『エル ELLE』から

 

2009年カンヌ映画祭審査委員長をつとめ、この年のパルムドールはハネケの『白いリボン』だったから彼女自らが監督にトロフィーを手渡した。同映画祭2017の「ウィメン・イン・モーション賞」を受賞している。最新作は公開されたばかりのブノワ・ジャコー『エヴァ』、第68回ベルリン映画祭のコンペティションに正式出品された。ファム・ファタールのエヴァを演じる。

 

      

      (エヴァに翻弄される共演者ギャスパー・ウリエルと、『エヴァ』から)

 

カルロス・レイガダス、6年ぶりの新作*サンセバスチャン映画祭2018 ⑯2018年09月02日 15:54

        イガダス一家総出演で「Nuestro tiempo」―ホライズンズ・ラティノ第2弾

 

    

2012年の『闇のあとの光』の後、カルロス・レイガダスは新作がなかなか完成しませんでしたが、沈黙していたわけではなく、2016年のベルリンやカンヌのフィルムマーケットではワーキングタイトル「Where Life is Born」が噂になっていた。予定していた今年のカンヌに間に合わなかったのか、ベネチア映画祭2018でワールドプレミアされることになった。最終的にタイトルはNuestro tiempoOur Time)になりました。他にトロント映画祭「マスターズ」部門上映も決定しています。デビュー作『ハポン』(02)以来、レイガダスを支えている制作会社Mantarraya Produccionesハイメ・ロマンディアと、監督自身のNoDream Cinema が中心になって製作された。

*追記:東京国際映画祭2018「ワールドフォーカス」部門上映決定、邦題『われらの時代』

 

      

         (ワーキングタイトルWhere Life is Bornのポスター)

   

   Nuestro tiempoOur Time2018

製作:Mantarraya Producciones / NoDream Cinema / Bord Cadre Films / Film i Väst / Snowglobe Films / Le Pacto / Luxbox / Mer Films / Detalla Films

監督・脚本・編集・製作:カルロス・レイガダス

編集:(共)カルラ・ディアス

撮影:ディエゴ・ガルシア

プロダクション・デザイナー:エマニュエル・Picault

衣装デザイン:ステファニー・ブリュースターBrewster

録音:ラウル・ロカテッリ

製作者:ハイメ・ロマンディア、(以下共同製作者)エバ・ヤコブセン、ミケル・Jersin、アンソニー・Muir、カトリン・ポルス

 

データ:製作国メキシコ・仏・独・デンマーク・スウェーデン、スペイン語・英語、2018年、ドラマ、173

映画祭:ベネチア映画祭コンペティション部門(上映95日)、トロント映画祭「マスターズ」部門(同99日)、サンセバスチャン映画祭ホライズンズ・ラティノ部門正式出品作品

 

キャスト:カルロス・レイガダス(フアン)、ナタリア・ロペス(エステル)、フィリップ・バーガーズ(フィル)、ルートゥ・レイガダス、エレアサル・レイガダス

 

物語:闘牛用の牛を飼育しているある家族の物語。エステルは牧場を任されていおり、夫のフアンは世界的に有名な詩人であると同時に動物の選別や飼育をしている。エステルがフィルと呼ばれるアメリカ人の馬の調教師と恋に落ちると、夫は嫉妬心を抑えられない。夫婦は感情的な危機を乗りこえるために闘うことになる。

            

★目下のところ情報が少なくて(わざと伏せているのでしょうか)、こんなありきたりの筋書で173分も続くのかと不安ですが、そこは一筋縄ではいかないレイガダスのことだから、幾つも秘密兵器が隠されているのではないかと期待しています。監督自身が夫フアン役、いつもは編集を手掛けている監督夫人ナタリア・ロペスが妻エステルを演じている。ルートゥとエレアサルは夫妻の実子、前作『闇のあとの光』にも出演していた。6年経っているからかなり大きくなっている。

 

★ベネチア映画祭公式作品紹介の監督メッセージによると「私たちが誰かを愛しているとき、彼女または彼の幸福安寧をなによりも望んでいるでしょうか。あるいは、そのような寛大な無条件の行為は、自分にあまり影響を与えない程度のときだけでしょうか。要するに、愛は相対的な問題なのではないか?」とコメントしています。

 

              

                 (カルロス・レイガダス)

 

ハイメ・ロマンディアJaime Romandia は、『ハポン』02、カンヌFFカメラドール受賞)、『バトル・イン・ヘブン』05、カンヌFFノミネート)、『静かな光』07、カンヌFF審査員賞受賞)、『闇のあとの光』12、カンヌFF監督賞受賞)とレイガダスの全作を手掛けている。ほか『ハポン』で助監督をつとめたアマ・エスカランテのデビュー作『サングレ』04、カンヌFF「ある視点」国際映画批評家連盟賞受賞)、『よそ者』08)、『エリ』13、監督賞受賞)、『触手』16、ベネチアFF監督賞受賞)、アルゼンチンの監督リサンドロ・アロンソ『約束の地』14、カンヌFF国際映画批評家連盟賞)など、三大映画祭の話題作、受賞作をプロデュースしている。

 

ナタリア・ロペスNatalia Lópezは、映画編集、製作、脚本、監督。今回本作で女優デビュー。レイガダスの『静かな光』、『闇のあとの光』、アマ・エスカランテの『エリ』、リサンドロ・アロンソの『約束の地』などの編集を手掛けるほか、短編「En el cielo como en la tierra」(0620分)を撮っている。

 

      

            (エステル役のナタリア・ロペス、映画から)

 

フィリップ・バーガーズPhil (Philip) Burgersは、アメリカの俳優、脚本家、プロデューサー。代表作はアメリカTVシリーズThe Characters16、全8話)の1話に出演、脚本、エグゼクティブプロデューサーとして製作も手掛ける。本作は『プレゼンツ:ザ・キャラクターズ』としてNetflixで配信されている。アメリカン・コメディSpivak18)など。レイガダスはプロの俳優は起用しない方針と思っていたが、そういうわけではなかったようです。

 

                

        (フィル役バーガーズとフアン役のレイガダス、映画から)

 

★評価の分かれた第4作『闇のあとの光』は、カンヌ映画祭2012の監督賞受賞作品。全員一致の受賞作品は皆無だそうですが、最も審査員の意見が割れたのがレイガダスの監督賞受賞だった。カフェでは13年振りに戻ってきたレオス・カラックスに上げたかったようだ。個人的にはメディアの悪評にレイガダスはあり得ないと思っていたが、審査委員長ナンニ・モレッティによるとレイガダス、カラックス、ウルリッヒ・サイドルの三人に意見が分かれた。結局アンドレ・アーノルド監督がレイガダスを強く推して決まったと。続いてサンセバスチャン映画祭「ホライズンズ・ラティノ」部門でも上映されたが酷評が目立ったスペインではレイガダス・アレルギーが結構多い。多分『静かな光の続きを期待していた人には不評だったのかもしれない。レイガダスが求めるものと他の監督が求めるものとは違うから評価は分かれる。監督自身はメディアの酷評謙虚に分析していたようです。

 

      

         (カンヌ映画祭監督賞受賞の『闇のあとの光』ポスター)

 

★本映画祭の今年のスペイン映画の話題作を集めた「メイド・イン・スペイン」部門11作が発表になったり、アルフォンソ・キュアロンRomaがベネチア映画祭コンペティションに選ばれたり、5回フェニックス賞2018のノミネーションが発表になったりとニュースが多く、アップ順位に迷っています。またマラガ映画祭2018のオープニング作品マテオ・ヒルのLas leyes de la termodeinámica『熱力学の法則』の邦題で早くもNetflixで配信が始まっています。

ジュディ・デンチにドノスティア賞*サンセバスチャン映画祭2018 ⑮2018年08月31日 19:00

        伝説的な英国女優ジュディ・デンチ、ドノスティア賞受賞

     

★ベネチア映画祭がいよいよ開幕(29日)、審査委員長ギレルモ・デル・トロも元気な姿を現しました。金獅子賞を競うコンペティション部門21作中に女性監督作品はたったの1、既に女性監督数30%に及ばんというにしては少なすぎるのではないかと、ひと頃のMeToo運動を思い出して溜息をついていましたら、EWA(欧州女性オーディオビジュアル・ネットワーク、現会長イサベル・コイシェ)がベネチア映画祭のディレクター、アルベルト・バルベラに抗議の書簡を送ったニュースに接しました。1作では全体の5%にも満たないから、不公平感は否めません。サンセバスチャン映画祭も「ドノスティア賞に男性2人はどうかな」と思っていた矢先、前述したように去る28日にジュディ・デンチ受賞の報がありました。

オーストラリアのジェニファー・ケントの「The Nightingale」、世界三大映画祭初参加作品、スペインのメディアでは話題になっています。

 

       

ジュディ・デンチは、1934年ヨークシャー州ヨーク生れ、女優。クエーカー教徒の家庭で育つ。ロンドンの「セントラル・スクール・オブ・スピーチ・アンド・ドラマ」に入学、1957年『ハムレット』のオフィーリア役で初舞台ということから、その優等生ぶりが分かる。1961年ストラトフォード・アポン・エイヴォンを拠点にする劇団「ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー」に入団、1977年『マクベス』でローレンス・オリヴィエ賞ドラマ主演女優賞受賞を皮切りに5度、ミュージカル主演女優賞とドラマ助演女優賞を1度ずつ、1999年にはトニー賞ドラマ主演女優賞を受賞している。

 

1957年から舞台と併行してTVシリーズにも出演、映画界入りは、クライトン・チャールズの「The Third Secret」(64)、タッグを組んだ監督には例えば、ジェイムズ・アイヴォリー『眺めのいい部屋』86、英国アカデミー賞BAFTA助演女優賞受賞)、ジョン・マッデンQueen Victoria 至上の恋』97BAFTA主演女優賞、ゴールデン・グローブ賞主演女優賞ほか受賞歴多数)、マッデンとは続いてエリザベスⅠ世役でアカデミー賞、BAFTAの助演女優賞を受賞した『恋におちたシェイクスピア』99)にも出演した。

 

                    

                                (マッデン監督の『Queen Victoria 至上の恋』から)

   

       

     (エリザベスⅠ世に扮した『恋におちたシェイクスピア』から)

 

ラッセ・ハルストレム『ショコラ』00)は、ジョアン・ハリスの同名小説の映画化、主演のジュリエット・ビノシュともどもアカデミー賞以下ゴールデン・グローブ賞にもノミネートされたが叶わなかったが、デンチが全米映画俳優組合賞助演女優賞を受賞した。2001年、晩年アルツハイマーになった小説家アイリス・マードックのビオピック、リチャード・エアー『アイリス』で主役を演じ、BAFTA主演女優賞を受賞した。スティーヴン・フリアーズ『ヘンダーソン夫人の贈り物』05)で主役を演じた。本作はイギリス初のヌード・レビューを興行した富豪の未亡人ローラ・ヘンダーソン夫人の実話に基づいて映画化された。2006年リチャード・エアーの『あるスキャンダルの覚え書き』06)、この2作でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされている。

 

     

            (『ヘンダーソン夫人の贈り物』のポスター)

 

★しかし、一番デンチを有名にしたのは、なんといっても「007シリーズ」の女性初となる3代目「M」役でしょうか。1995年のマーティン・キャンベルの007ゴールデンアイ』から2012年のサム・メンデス007スカイフォール』まで17年間、7作に出演して大いに知名度を上げた。

 

     

  (6代目ボンド役ダニエル・クレイグと、最後のM役となる『007 スカイフォール』から)

 

20122月、加齢黄斑変性症による視力低下で台本が読みづらくなっていることを公表した。しかし2013年にはスティーヴン・フリアーズのイギリス映画『あなたを抱きしめる日まで』に出演、アカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞、BAFTAの主演女優賞にノミネートされ、女性映画批評家協会賞他を受賞した。本作は第70回ベネチア映画祭に正式出品され、クィア獅子賞、脚本賞を受賞したこともあって吹替版でテレビ放映された。さらに2017にはVictoria & Abdulで再びヴィクトリア女王に扮している。同年ケネス・ブラナー『オリエント急行殺人事件』にもロシアのドラゴミロフ公爵夫人役で相変わらず現役続行中です。

   

         

    (息子探しの旅を共にするジャーナリスト役のスティーヴ・クーガンとデンチ。

     『あなたを抱きしめる日まで』から)

 

授賞式は925日、サンセバスチャン映画祭には初めての参加ということです。デンチが主役を演じる、サー・トレバー・ナンの新作スリラーRed Joanの上映がある。ジェニー・ルーニーのベストセラー「Red Joan」(2013年刊)の同名小説の映画化。実在したメリタ・ノーウッドの人生に触発されて書かれた小説。舞台は1930年代半ば、ケンブリッジ大学の学生ジョーン・スタンレーはソビエトと共産党の信奉者だった。間もなくイギリスの公務員に雇われるが、やがてKGBにスパイとしてリクルートされる。半世紀以上に渡ってKGBに仕え、英国をスパイし続けていたことを晩年になって暴露する。若いころをソフィー・クックソン、現在をデンチが演じる。本作はトロント映画祭2018「ガラ」部門で97日に上映される予定。順次スペイン、ロシア、イギリス、オランダで公開される。

      

     

    

                       (ジュディ・デンチ、「Red Joan」から)

 

★ナン監督とは初顔合わせでしょうか。ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーやブロードウェイの仕事が中心だから、映画は4作しか撮っていない。1986年の第2作『レディ・ジェーン/愛と運命のふたり』(未公開、ビデオ発売)と、公開された1996年の第3作目『十二夜』が、SSIFFのコンペティション部門に正式出品された。第4作目になる本作で22年ぶりにフィルムに戻ってきたから、復帰を願っていたファンは待ち遠しいことでしょう。

 

ダニー・デヴィートにドノスティア賞*サンセバスチャン映画祭2018 ⑭2018年08月30日 09:51

          今年のドノスティア賞受賞者が3人になりました?

 

★「ホライズンズ・ラティノ」のご紹介中ですがドノスティア賞に、アメリカの俳優、監督、プロデューサーのダニー・デヴィートとイギリス女優のジュディ・デンチ受賞の発表がありました。もう一人女性が受賞するのではないかと予想していましたが、820日にデヴィート受賞の発表があり「男性優先?」と気分を害していましたら、28日にデンチ受賞のアナウンスがありました。既に是枝裕和監督の受賞が決まっているので、今年は3人のようです。デヴィートもデンチも日本語版ウイキペディアで充分と思いますが、発表順に先ずはデヴィートから簡単にご紹介しておきます。

 

     

ダニー・デヴィートDanny DeVitoは、1944年ニュージャージー州ネプチューン・シティ生れ、イタリア系アメリカ人、俳優、監督、プロデューサー。1975年ミロス・フォアマンの『カッコーの巣の上で』で映画デビュー、TVシリーズ「Taxi」(197883)のルイ・デ・パルマ役でエミー賞(助演男優賞)受賞。1987年ブラックコメディ『鬼ママを殺せ』で監督デビュー、自身も出演して共演者アン・ラムジーと揃ってゴールデン・グローブ賞の男優賞、女優賞にノミネートされ、ラムジーはオスカー賞助演女優賞にもノミネートされた。本邦未公開だが「どうしてなんだ?」とファンから苦情がでた映画。

   

       

       (アン・ラムジーとダニー・デヴィート、『鬼ママを殺せ』から)

 

★監督・製作を手掛け、親友マイケル・ダグラスが主演した『ローズ家の戦争』89)、ジャック・ニコルソン主演の『ホッファ』92)は、ベルリン映画祭のコンペティション部門に正式出品された。ティム・バートンの『バットマン・リターンズ』のペンギン役、またファンタジー映画『ビッグ・フィッシュ』03)にも出演した。いずれも何度もテレビ放映されている。代表作の一つが『マチルダ』96、監督・出演・製作)、イギリスの作家ロアルド・ダールの『マチルダは小さな天才』に材をとったファンタジー・コメディ。赤ん坊にして既に読み書きができたという天才少女マチルダを�りとばす横暴な父親ハリー役を演じた。

 

    

 (マチルダ役のマーラ・ウィルソンと、子供と並ぶと身長147センチには見えない?)

 

★現在は製作や声優の仕事が多いようです。2012年の3Dアニメーション『ロラックスおじさんの秘密の種』のロラックスおじさん役でボイス出演、日本版では志村けんが吹替に初挑戦して話題になった。ドノスティア賞の授賞式922日、映画祭メイン会場のクールサルで手渡される。翌日3000人が収容できるベロドロモ・アントニオ・エロルサで、カレイ・カークパトリックの新作アニメーションSmollfootが上映される。従ってボイス出演です。

Smollfoot」の紹介記事は、コチラ20180819

 

 

 

★次回にジュディ・デンチをアップします。


ウルグアイ映画「La noche de 12 años」*サンセバスチャン映画祭2018 ⑬2018年08月27日 15:48

           「ホライズンズ・ラティノ」第1弾-「La noche de 12 años

 



        

★サンセバスチャン映画祭より一足先にベネチア映画祭2018「オリゾンティ」部門で上映される、アルバロ・ブレックナーLa noche de 12 añosは、簡単に言うと前ウルグアイ大統領ホセ・ムヒカ(任期201015)のビオピックであるが、1970年代ウルグアイに吹き荒れた軍事独裁時代の政争史の色合いが濃い。物語は1973年から民主化される1985年までの12年間、刑務所に収監されていた都市ゲリラ組織トゥパマロスのリーダーたち、ホセ・ムヒカエレウテリオ・フェルナンデス・ウイドブロマウリシオ・ロセンコフ3人を軸に展開される。ウルグアイ前大統領ムヒカ、元防衛大臣で作家のウイドブロ、ジャーナリストで作家のロセンコフのビオピックでもある。

 

★獄中で「もし生きのびて自由の身になれたら、この苦難の事実を必ず書き残そう」と誓い合ったロセンコフとウイドブロの共著Memorias del calabozo(「Memories from the Cell」)をベースに映画化された。

Memorias del calabozo」(3巻)198788年刊、1989年「バルトロメ・イダルゴ賞」を受賞。2013年に優れたジャーナリストで作家のエドゥアルド・ガレアノの序文を付して再刊された。

 

         

                 (本作のベースになった「Memorias del calabozo」の表紙)

 

★ホセ・ムヒカは大統領退任後の201645日に来日(~12日)、収入のあらかたを寄付、月1000ドルで質素に暮らしていることから「世界で最も貧しい大統領」と日本では報道された。愛称エル・ペペ、今年のベネチア映画祭にはコンペティション外ではあるが、ムヒカを主人公にした、鬼才エミール・クストリッツアが5年がかりで撮ったドキュメンタリーEl Pepe, una vida suprema(ウルグアイ、アルゼンチン、セルビア、74分)もエントリーされ、思いがけず話題を集めている。このセクションには他に『笑う故郷』のガストン・ドゥプラット、『エル・クラン』のパブロ・トラペロの新作も上映され、ラテンアメリカが気を吐いている。

 

La noche de 12 años(ワーキングタイトル「Memorias del calabozo」)2018

製作:Tornasol Films / Alcaravan AIE / Hernández y Fernández Producciones Cinematográficas(以上西)、Haddock Films(アルゼンチン)/ Salado Media(ウルグアイ)/ Manny Films(仏)、Movistar+参画

監督・脚本:アルバロ・ブレックナー

撮影:カルロス・カタラン

編集:イレネ・ブレクア

音楽:フェデリコ・フシド

プロダクション・デザイン:ラウラ・ムッソ

製作者:フェルナンド・Sokolowicz、マリエラ・ベスイエブスキー、フィリップ・ゴンペル、Birgit Kemner、(エグゼクティブプロデューサー)セシリア・マト、バネッサ・ラゴネ、他多数

 

データ:製作国スペイン、アルゼンチン、フランス、ウルグアイ、スペイン語、2018年、実話に基づくビオピック、撮影地モンテビデオ、マドリード、パンプローナ、20176月クランクイン、公開ウルグアイ920日、アルゼンチン927日、スペイン1123

映画祭:ベネチア映画祭2018オリゾンティ部門正式出品(91日上映)、サンセバスチャン映画祭2018ホライズンズ・ラティノ部門正式出品

 

キャスト:アントニオ・デ・ラ・トーレ(ホセ・ムヒカ)、チノ・ダリン(マウリシオ・ロセンコフ)、アルフォンソ・トルト(エレウテリオ・フェルナンデス・ウイドブロ)、セサル・トロンコソ(軍人)、ソレダー・ビジャミル(精神科医)、シルビア・ペレス・クルス(イヴェット)、ミレージャ・パスクアル(ルーシー)、ニディア・テレス(ロサ)ルイス・モットーラ(軍人)、他多数

 

物語19739月、ウルグアイは軍事クーデタにより独裁政権が実権を握った。都市ゲリラ「トゥパマロス」運動は勢いを失い壊滅寸前になって既に1年が経過していた。多くのメンバーが逮捕収監され拷問を受けていた。ある秋の夜、軍部の秘密作戦で捕えられたトゥパマロスの3人の囚人がそれぞれ独房から引き出されてきた。全国の異なった営倉を連れまわされ、死に関わるような新式の実験的な拷問、それは精神的な抵抗の限界を超えるものであった。軍部の目的は「彼らを殺さずに狂気に至らせる」ことなのは明らかだった。一日の大半を頭にフードを被せられ繋がれたまま狭い独房に閉じ込められた12年間だった。この3人の囚人とは、ウルグアイ前大統領ホセ・ムヒカ、元防衛大臣で作家のエレウテリオ・フェルナンデス・ウイドブロ、ジャーナリストで作家のマウリシオ・ロセンコフのことである。

 

        

          (独房から引き出された3人の囚人、映画から

 

         1970年代ラテンアメリカ諸国を覆った軍事独裁の本当の黒幕

 

ホセ・ムヒカ(モンテビデオ、1935)の最後になる逮捕は1972年、民政移管になった19854月釈放だから、大雑把に約12年間になるが(正確には116ヵ月7日間だそうです)、それ以前の収監を含めると約15年間に及ぶという。映画では3人に絞られているが、他にトゥパマロス(ツパマロス)のリーダー6人も収監されており、上述の「Memorias del calabozo」は全9人の証言で構成されているようです。

 

★冷戦時代の1970年代のラテンアメリカ諸国は、ウルグアイに限らずアルゼンチン、チリ、ブラジル、ペルーなどが米国の後押しで軍事独裁政権が維持されていた。アメリカは人権より我が家の裏庭の赤化を食い止めるのに必死だったというわけです。米国にとっては赤化より軍事独裁制のほうが国益に叶っていたからです。新式の拷問とはCIAがベトナム戦争で培ったノウハウを、領事館員やビジネスマンに偽装して潜入させ伝授したことは、その後の資料、証言、調査で明らかになっている。 

(ホセ・ムヒカ)

     

エレウテリオ・フェルナンデス・ウイドブロ(モンテビデオ、19422016、享年74歳)は、196910月逮捕されたが、19719110人の仲間と脱走に成功した。しかし1972414日再逮捕、これが最後の逮捕となって以後1985年まで収監されている。ですから彼もトータルで刑期は15年くらいになるようです。釈放後は政治家としてムヒカ大統領のもとで防衛大臣、作家としては上記以外にプンタ・カレタス刑務所から110名の仲間とトンネルを掘って脱獄した体験を書いた「La fuga de Punta Carretas」(2巻、1990)、本作は1992年モンテビデオ市賞を受賞した。その他多数の著作がある。

 

(晩年のウイドブロ)

  

マウリシオ・ロセンコフ(本名Moishe Rosenkopf、ウルグアイのフロリダ、1933)は、ジャーナリスト、作家、脚本家、詩人、戯曲家。両親は1931年、ナチの迫害を逃れてポーランドから移民してきたユダヤ教徒。2005年からモンテビデオ市の文化部長を務め、週刊誌「Caras y Caretas」のコラムニストとして活躍している。2014年ウルグアイの教育文化に貢献した人に贈られる「銀のMorosli」賞を受賞。「Memorias del calabozo」の他、著作多数。

 

(マウリシオ・ロセンコフ)

    

 

キャスト紹介

アントニオ・デ・ラ・トーレは、1968年マラガ生れ、俳優、ジャーナリスト。本作でホセ・ムヒカを演じる。当ブログでは何回も登場させていますが、いずれも切れ切れのご紹介でした。大学ではジャーナリズムを専攻、卒業後は「カナル・スール・ラディオ」に入社、テレビのスポーツ番組を担当、かたわら定期的にマドリードに出かけ、俳優養成所「クリスティナ・ロタ俳優学校**で演技の勉強を並行させていた。TVシリーズ出演の後、エミリオ・マルティネス・ラサロのコメディ『わが生涯最悪の年』(94)のチョイ役で映画デビュー、俳優としての出発は遅いほうかもしれない。

**クリスティナ・ロタ俳優学校は、アルゼンチンの軍事独裁政権を逃れてスペインに亡命してきた女優、プロデューサー、教師クリスティナ・ロタが1979年設立した俳優養成所。現在スペインやアルゼンチンで活躍中のマリア・ボトー、フアン・ディエゴ・ボトー、ヌル・アル・レビ姉弟妹の母親でもある。

 

        

               (ホセ・ムヒカに扮したデ・ラ・トーレ、独房のシーンから)

 

1990年代から2000年初めまでは、イシアル・ボリャインの『花嫁のきた村』『テイク・マイ・アイズ』、アレックス・デ・ラ・イグレシアの『ビースト 獣の日』、『どつかれてアンダルシア』、『13 みんなのしあわせ』、サンティアゴ・セグラの「トレンテ」シリーズなど同じ年に掛け持ちで出演しているが、どんな役だったか記憶にないほどの脇役に甘んじていた。転機が訪れたのは、ダニエル・サンチェス・アレバロの短編デビュー作Profilaxis03、仮題「予防法」)で主役を演じたことだった。バダホス短編映画祭2004で監督が作品賞、デ・ラ・トーレも男優賞を受賞した。

 

     

     (33キロ体重を増やして臨んだ『デブたち』、義兄弟のサンチェス・アレバロ監督と)

 

★サンチェス・アレバロの家族が一丸となって資金集めに奔走して完成させた長編デビュー作『漆黒のような深い青』がブレーク、ゴヤ賞2007で新人監督賞、主役のキム・グティエレスが新人男優賞、彼も助演男優賞を受賞した他、俳優組合賞も受賞した。続いて体重を33キロ増量して臨んだ『デブたち』(09)、『マルティナの住む街』(11)と二人はタッグを組んでいる。監督と彼は義兄弟の契りを結んでおり、監督は彼を「兄さん」と呼ぶ仲、以上3作に共演したラウル・アレバロも親友、2016年アレバロが念願の監督デビューした『静かなる復讐』Netflix『静かな男の復讐』)では主役の一人を演じた。

 

       

                        (ラウル・アレバロの『静かなる復讐』から)

 

★その他、アレックス・デ・ラ・イグレシアの『気狂いピエロの決闘』の悪役ピエロ(サン・ジョルディ賞・トゥリア賞)や『刺さった男』、アルモドバルの『ボルベール<帰郷>』『アイム・ソー・エキサイテッド!』、アルベルト・ロドリゲスの『ユニット7』と『マーシュランド』、今までで一番難役だったと洩らしたマヌエル・マルティン・クエンカ『カニバル』ではゴヤ賞こそ逃したが、フェロス賞2014の男優賞、シネマ・ライターズ・サイクル賞、俳優組合賞の男優賞を制したほか、「El autor」にも出演している。グラシア・ケレヘタのコメディ「Felices 140」、パブロ・ベルヘルのコメディAbracadabraロドリゴ・ソロゴジェンの『ゴッド・セイブ・アス マドリード連続老女強盗殺人事件』、そして新作El Reinoが今年のSSIFFコンペティション部門に正式出品され主役に起用されています。

 

     

                     (人肉を食するデ・ラ・トーレ、『カニバル』から)

 

★何しろトータルでは既に出演本数が100本を超えており紹介しきれないが、『カニバル』以下『マーシュランド』、「Felices 140」、Abracadabra」、El autor」などは、個別に紹介記事をアップしております。ゴヤ賞には嫌われてノミネーションのオンパレードで受賞に至らないが、マラガ出身ということもあってかマラガ映画祭2015で一番の大賞といわれる「マラガ賞」(現マラガ-スール賞)を受賞して、地中海を臨む遊歩道に等身大の記念碑を建ててもらっている。「La noche de 12 años」はウルグアイ映画なのでゴヤ賞の対象外になると思いますが、「El Reino」で7度目の正直で主演男優賞を受賞するかもしれません。

 

★マウリシオ・ロセンコフを演じるチノ・ダリンは、1989年ブエノスアイレスのサン・ニコラス生れ、俳優、最近父親リカルド・ダリンが主役を演じたフアン・ベラの「El amor menos pensado」で製作者デビューした。本作はSSIFF2018のオープニング作品である。映画デビューはダビ・マルケスのEn fuera de juego11)、本邦登場はナタリア・メタの『ブエノスアイレスの殺人』Muerte en Buenos Aires14)の若い警官役、ラテンビートで上映された。翌年韓国のブチョン富川ファンタスティック映画祭で男優賞を受賞した。続いてディエゴ・コルシニのPasaje de vida15)で主役に抜擢されるなど、親の七光りもあって幸運な出発をしている。

『ブエノスアイレスの殺人』の紹介記事は、コチラ201409月29日

 

   

 

         

                                          (フードを被せられていたロセンコフ)

 

★アルゼンチンのお茶の間で人気を博したのがパブロ・トラペロの『エル・クラン』のTVシリーズ版Historia de un clanでの長男役でした。今年はルイス・オルテガのデビュー作El Ángelで早くもカンヌ入りを果たした。父親もアスガー・ファルハディのTodos lo sabenでカンヌ入り、家族でカンヌを満喫した。今年のSSIFFにも多分ダリン一家は揃ってサンセバスチャン入りするでしょう。

 

    

                    (『ブエノスアイレスの殺人』のポスター)

 

★ウイドブロ役のアルフォンソ・Tort(トルト?)はウルグアイ出身、昨年のSSIFF「ホライズンズ・ラティノ」部門にノミネートされたアドリアン・ビニエスLas olasで主役を演じた折に紹介したばかりです。アルバロ・ブレックナーのデビュー作「Mal dia para pescar」に出演している。2001年『ウィスキー』の監督コンビのデビュー作25 Wattsで初出演、モンテビデオの3人のストリート・ヤンガーの1日を描いたもの、若者の1人を演じた。『ウィスキー』にもベルボーイ役で出演、イスラエル・アドリアン・カエタノCrónica de una fuga06)、主役を演じたCapital (Todo el mundo va a Buenos Aiires)07)、他ビニエス監督のEl 5 de Talleres にも出演している。「ウイドブロ役はとても複雑で難しい役だった」と語っている。

Las olas」の紹介記事は、コチラ⇒2017年09月13日

 

       

                      (アルフォンソ・トルト、後ろはチノ・ダリン)

 

★女優陣のうち、精神科医役のソレダー・ビジャミルは、フアン・ホセ・カンパネラの『瞳の奥の秘密』で、リカルド・ダリンが思いを寄せる上司役を演じて一躍有名になった。ほかアナ・ピーターバーグのスリラー『偽りの人生』などが公開され、一卵性双生児を演じたヴィゴ・モーテンセンと夫婦役を演じた。イヴェット役のシルビア・ペレス・クルス(ジローナ、1983)は、サウンドトラックを多く手掛けているミュージシャンで、エドゥアルド・コルテスのミュージカルCerca de tu casa16)でゴヤ賞オリジナル歌曲賞を受賞している。ルーシー役のミレージャ・パスクアル(モンテビデオ、1954)は、かの有名な『ウィスキー』でデビュー、淡々とマルタ役を演じて忘れられない印象を残した女優。男優女優ともスペイン、アルゼンチン、ウルグアイと満遍なく起用していることが分かる。

 

      

                           (精神科医役のソレダー・ビジャミル)

    

 

  監督キャリア&フィルモグラフィー

アルバロ・ブレックナー(ブレチネル?)Alvaro Brechner1976年モンテビデオ生れ、現在マドリード定住のウルグアイの監督、脚本家、プロデューサー。ウルグアイのカトリック大学でメディア学の学位を取り、その後スペインに渡り、1999年バルセロナ自治大学マスターコースのドキュメンタリー制作の学位を取得した。ドキュメンタリー映画で出発、約10本ほど撮り、TVで放映された。のち2003年に短編「The Nine Mile Walk」、2005年「Sofia」、2007年「Segundo aniversario」などで評価を得る。

 

 (本作撮影中の監督)

     

★長編映画デビュー作Mal dia para pescar09、スペインとの合作)は、ウルグアイの作家フアン・カルロス・オネッティの短編「Jacob y el Otro」にインスパイアーされて製作された(オネッティも軍事独裁を嫌って1976年にスペインに亡命した)。カンヌ映画祭併催の「批評家週間」に正式出品、カメラドール対象作品に選ばれた。その後、モントリオール、マル・デ・プラタ、ワルシャワ、モスクワ、上海、ロスアンジェルス・ラテン、オースティン、釜山、ヒホン、リマ、サンパウロ他、世界各地の映画祭に出品され、受賞歴多数。本国のウルグアイでは、ウルグアイ映画賞を総なめにして、オスカー賞外国語映画賞ウルグアイ代表作品に選ばれた。

 

★第2Mr. Kaplan14、西・独との合作)はスリラー・コメディ。退職して年金暮らしのハコボ・カプランと運転手のコントレラスは、近所のドイツ人が逃亡ナチではないかと疑って身辺捜査を開始する。ミスター・カプランにチリのベテラン、エクトル・ノゲラ、ドイツ人にロルフ・ベッカーを起用し、本作もオスカー賞外国語映画賞ウルグアイ代表作品、ゴヤ賞2015のイベロアメリカ映画賞ノミネート、第2回イベロアメリカ・プラチナ賞2015では、作品賞、監督賞、脚本賞以下9部門にノミネートされたが、ダミアン・ジフロンの『人生スイッチ』に敗れた。

 

  

★第3作が前作とはがらりと趣向を変えてきたLa noche de 12 años、監督によると、2011年にプロジェクトを立ち上げたが、まだ前作の「Mr. Kaplan」の撮影中だった由。「どんな賞でも拒否はしないが、賞を取るために作っているわけではない。私にとって映画は旅であって観光旅行ではない」とインタビューに応えていた。201512月、米国のエンタメ雑誌「バラエティ」が選ぶ「ラテンアメリカ映画の新しい才能10人」の一人に選ばれた。

 

     

                            (撮影中のデ・ラ・トーレと監督)


カルメン・マウラ、ヨーロッパ映画賞「生涯貢献賞」受賞のニュース2018年08月11日 07:26

            カルロス・サウラに続いて二人目の受賞者

 

★ヨーロッパ映画賞の特別賞にはいくつかあって、なかで一番大きいのが「生涯貢献賞」、次がワールドシネマに貢献したシネアストに贈られる「世界的貢献賞」でしょうか。どちらもいわゆる名誉賞で、前者は1988年から始まり、第1回受賞者はイングマール・ベルイマン、スペイン人では2004年にカルロス・サウラが受賞しています。後者は1997年から始まり、第1回受賞者はミロシュ・フォアマン監督、スペイン人ではアントニオ・バンデラス、ビクトリア・アブリル、つい最近2013年にアルモドバルが受賞しています。カルメン・マウラマドリード、1945女優賞1988年アルモドバルの『神経衰弱ぎりぎりの女たち』、1990年サウラの『歌姫カルメーラ!』で受賞しています。他の受賞者はペネロペ・クルスが『赤いアモーレ』と『ボルベール』2回、ベレン・ルエダが『永遠のこどもたち』などです。

 

  

 

★既に150作に出演しているマウラだが、芸術家、政治家、学者などを輩出している一家で、いわゆる良家の子女、芸能界入りなどもってのほか、親戚一同から反対されたという。1960年代末期に舞台女優として出発、並行して短編映画やTVにも出演していた。タッグを組んだ監督は、フェルナンド・トゥルエバ(「Se intil y no mires con quien85)、マリオ・カムス(「Sombras en una Batalla93)、アグスティ・ビリャロンガ(「Carta a Eva12)、サンセバスチャン映画祭女優賞ゴヤ主演女優賞をもたらしたアレックス・デ・ラ・イグレシア(『13 みんなのしあわせ』00)、以後『マカロニ・ウエスタン 800発の銃弾』、『スガラムルディの魔女』など、デ・ラ・イグレシア映画の常連となった。しかし国際舞台に彼女を押し上げたのは、1980年代最も輝いていた監督の一人、アルモドバル『神経衰弱ぎりぎりの女たち』でした。

  

       

 (初のゴヤ主演女優賞を受賞した『神経衰弱ぎりぎりの女たち』から、共演のバンデラスと

 

★アルモドバルのデビュー作『ペピ、ルシ、ボン、その他大勢の娘たち』(80)以後、『バチ当たり修道院の最期』(83)、『グロリアの憂鬱/セックスとドラッグと殺人』(84)、『マタドール』(86)、『欲望の法則』(87)、そして『神経衰弱ぎりぎりの女たち』と立て続けに出演した。しかしこれを最後に喧嘩別れしてしまい、再びタッグを組んだのが『ボルベール<帰郷>06)、カンヌ映画祭で女性出演者6名全員が異例の女優賞を受賞し、ゴヤ賞では助演女優賞を受賞した。その後これといった諍いがあったわけではないが、「もう決してアルモドバル映画には出ない」と発言し、仲直りしたように見えたのは表面だけで、結局溝が埋まらなかったことが分かった。まあ、映画を見れば理由は想像できます。一時は「アルモドバルのミューズ」とまで言われた仲でしたが、現在では「喧嘩別れした元仲良しカップル」が特集されると、ナンバーワンに登場します。

 

     

    (アラスカとカルメン・マウラ、『ペピ、ルシ、ボン、その他大勢の娘たち』から)

    

       

 (辛口批評家からも合格点を貰った『グロリアの憂鬱~』から、共演のベロニカ・フォルケと)

 

★邦題が原題とあまりにかけ離れていて辿りつけない映画の一つが、パートに追いまくられている主婦が、気障なぐうたら亭主を殺害してしまうが誰からも疑われないというブラック・コメディ『グロリアの憂鬱~』(「¿ Qué he hecho yo para merecer esto?」)、アレックス・デ・ラ・イグレシアの『13 みんなのしあわせ』(La comunidad)が挙げられる。後者でゴヤ賞主演女優賞を受賞した。サウラの『歌姫カルメーラ!』を含めてゴヤ賞は合計4個になります。そのほか、貢献賞というか名誉賞は、スペイン映画国民賞(98)、サンセバスチャン映画祭ドノスティア賞(13)、マラガ映画祭とロカルノ映画祭(07)バジャドリード映画祭(08)、スペイン映画アカデミーの「金のメダル」(09)と、貰えるものはすべて貰っている。

 

        

      (サンセバスチャン映画祭ドノスティア賞のトロフィーを手に、2013年)

 

       

    (3個目のゴヤ賞主演女優賞を受賞した『13 みんなのしあわせ』から)

 

★現在フランス在住のマウラ、フランス語、ポルトガル語にも堪能で、自国以外の監督からもオファーを受けている。エティエンヌ・シャティリエの『しあわせはどこに』(95)、リスボンを舞台にした5人の女性たちの生き方を描いた、ルイス・ガルヴァン・テレシュの『エル』(97)、アンドレ・テシネの『溺れゆく女』(98)、セザール賞助演女優賞を受賞したフィリップ・ル・ゲイのコメディ『屋根裏部屋のマリアたち』(10)、フランシス・フォード・コッポラの『テトロ 過去を殺した男』(09)ほか、公開作品を中心に列挙したが、何しろ出演本数は150作、これから来年にかけて公開される映画も数本あるから、今後の活躍も楽しみである。

 

    

     (フランス映画『屋根裏部屋のマリアたち』に出演したスペインの女優たち)

 

★ヨーロッパ映画賞のガラ開催は参加国持ち回りで毎年変わり、今年はセビーリャで開催されることになっています。ベルリン開催が最多でスペインではバルセロナで開催されたことがあります。第31回ヨーロッパ映画賞2018授賞式は1215日です。

 

『スガラムルディの魔女』の紹介記事は、コチラ20141012同年1018

『屋根裏部屋のマリアたち』の紹介記事は、コチラ20131208同年1213


フアナ・アコスタ、エルネスト・アルテリオとの別居を公表2018年07月11日 11:35

                15年間のパートナー関係を解消、噂通りになりました

 

★訃報よりまだいいのが離婚報道、2003年、フアナ・アコスタの一目惚れで始まったパートナー関係も、彼女の「私たちはこれまで素晴らしい関係でした。娘も授かり上手くいっておりましたが、今はそれぞれ別の人生を歩むことにしました。変わる時なんです」という宣言で15年の関係に終止符が打たれました。お相手はエルネスト・アルテリオ、二人の間には12歳になるロラというお嬢さんがおります。正式には結婚していないので離婚というのは正確ではありません。アルテリオの言い分は当然異なりますが藪の中、願わくば子供のためにも節度ある対応が望まれる。大分前から噂が先行していましたが「火のない所に煙は立たぬ」というわけで現実になりました。アルテリオの激やせが取り沙汰されていますが、これが原因ではないとアコスタ、憔悴しているのは男、3ヵ月前に或る若い男性とマドリード郊外の新居に移り元気いっぱいな女、時代は変わりました。

 

          

  (フォトグラマス・デ・プラタ賞授賞式に出席していた二人、20172月、マドリード)

 

★二人が出会った2003年当時、アルテリオはそれなりの実績があったが、アコスタはスペインでは駆けだしでした。活躍するのは関係を結んからの2005年以降でした。イタリア映画『おとなの事情』のリメイク版、アレックス・デ・ラ・イグレシアのPerfectos desconocidos17)で危機を迎えた夫婦役を演じましたが、実は撮影時にはすでにぎくしゃくしていたようです。「フアナは仕事の不満を家まで持ち込んで・・」とアルテリオ、アコスタが猪突猛進タイプなのは間違いありません。デ・ラ・イグレシア監督もいささか複雑な心境とか。以下に駆け足でキャリア紹介をしておきます。

 

        

        (アコスタとアルテリオ、Perfectos desconocidos」から

 

エルネスト・フェデリコ・アルテリオ・バカイコア1970、ブエノスアイレス、47歳)は、ルイス・プエンソがアルゼンチンに初のオスカー賞をもたらした『オフィシャル・ストーリー』(85)に出演したエクトル・アルテリオが父親。ファーストネームのエルネストはチェ・ゲバラ、セカンドネームのフェデリコはガルシア・ロルカに因んでつけられたが、子供によっては迷惑なこともあるでしょう。ブエノスアイレス生れだが、政治的に左派だった両親が軍事独裁制を嫌い、1975年、家族でスペインに渡ったからスペインが長い。国籍は父親同様アルゼンチンでは珍しくない二重国籍です。アルゼンチン映画よりもスペイン映画やTVシリーズ出演が多い。

 

1990年代からスペインのTVシリーズに出演、映画ではフェルナンド・コロモの「Los años bárbaros」(98)でゴヤ賞新人賞にノミネートされた。続いてダビ・セラノ・デ・ラ・ペーニャの「Días de fútbol」(03)でゴヤ賞主演賞にノミネートされたが逃した。この年に父親がゴヤ栄誉賞を受賞、女優の妹マレナと一緒にトロフィーを手渡した。そのほかスペイン俳優組合主演男優賞のノミネーションも受けた。2005年マルセロ・ピニェイロの話題作「El método」でシネマ・ライターズ・サークル賞(スペイン)助演男優賞ノミネートされた。アルゼンチン・西・ブラジル合作、実話に基づいた軍時独裁時代の地下潜伏生活を少年の視点で描いたInfancia clandestina11)では、アルゼンチン映画アカデミー賞スール主演男優賞を受賞、シルバー・コンドル賞にもノミネートされ、グアダラハラ映画祭2013では男優賞を受賞するなど高い評価をえた。マラガ映画祭2015に正式出品されたアレホ・フラのデビュー作Sexo fácil, películas tristes銀のビスナガ男優賞を受賞した。

  

      

   (アルテリオ、ビスナガ男優賞を受賞した「Sexo fácil, peliculas tristes」から)

  

★父エクトル・アルテリオはカルロス・サウラの『カラスの飼育』(75)、『アントニエッタ』(82)、ハイメ・デ・アルミニャンの『エル・ニド』(80)などの名作に出演して、ゴヤ賞2003栄誉賞を受賞するなど、父を超えるのは容易でない。同じ世界で仕事をする場合には、メリットとデメリットが常に共存して、「七光り」も時には厳しいものがある。

 

           

         (父エクトル・アルテリオと、200512月のツーショット)

 

フアナ・アコスタ1976、コロンビアのカリ、41歳)は、最初から女優を目指していたわけではなく、コロンビアで美術を学んでいた。しかし間もなく女優に志望変更、フアン・カルロス・コラッサ(アルゼンチン出身)が1990年にマドリードで開校した「コラッサ俳優養成所」に入学、演技を学ぶ。コロンビアとスペインの二重国籍者。1996年、コロンビアTVシリーズ「Mascarada」でデビュー、映画はリカルド・コラルの「Es mejor ser rico que pobre」(99)でデビュー、続いてラウル・ガルシアの話題作「Kalibre 35」(00、コロンビア)に出演、2000年ごろに軸足をスペインに移し、スペインTVシリーズに起用されるようになる。特に20024月から放映が開始された長寿TVシリーズ「Hospital Central」(~201212月)38話に出演して認知度を高めた。

 

2005年、フアン・ビセンテ・コルドバ「A golpes」、エミリオ・マルティネス=ラサロ「Los 2 lados de la cama」(『ベッドサイド物語』)にアルテリオと共演、2006年ダビ・トゥルエバ「Bienvenido a casa」、2015年には、アンドレス・ルケ&サムエル・マルティン・マテオスTiempo sin aireとジャック・トゥールモンド・ビダルAnna(コロンビア・仏)2作に主演した。後者ではマコンド賞2016女優賞を受賞、イベロアメリカ・プラチナ賞2017女優賞ノミネーションと高評価だったが、『ナチュラルウーマン』のダニエラ・ベガの強力パンチに敗れた。

 

       

               (アコスタ、Anna」のポスター

 

★最近では、ロジャー・グアルの「7 años」(16)がネットフリックスに登場している。アレックス・ブレンデミュール、パコ・レオン、フアン・パブロ・ラバ、マヌエル・モロンなどの芸達者とわたり合うサイコ・サスペンス、途中からフィナーレが見えてしまうのだが、それなりに最後まで楽しめた。最新作は脚本家セルジオ・バレホンのデビュー作、コメディJefe、既に76日封切られた。ゴヤ賞2017で作品賞を受賞した『物静かな男の復讐』に出演、主演男優賞にノミネートされたルイス・カジェホを翻弄する役どころです。

 

       

      (フアナ・アコスタと上司のルイス・カジェホ、「Jefe」ポスター)

 

Tiempo sin aire」の紹介記事は、コチラ20150426

Perfectos desconocidosの紹介記事は、コチラ20171217

スペイン映画アカデミー新会長にマリアノ・バロッソ2018年06月23日 18:08

            副会長は女優ノラ・ナバスと製作者ラファエル・ポルテラ

 

  

                   (スペイン映画アカデミーの新トリオ)

             

★去る69日、スペイン映画アカデミーの会長選挙が行われました。第16代会長選挙は対立候補者がゼロでしたので、いわばマリアノ・バロッソ以下二人の副会長候補ノラ・ナバスラファエル・ポルテラ信任投票の形になりました。立候補は会長と2人の副会長、3人セットが原則です。バロッソとナバスは共に第15代の副会長で、年初に前会長イボンヌ・ブレイクが脳卒中で緊急入院、続いて治療専念のための辞任と慌ただしく、実質的には二人が映画アカデミーを運営してきました。従って今回の選挙は、どのくらい反対票が出るかに注目が集まっていた。ブレイク就任以来会員が300名ほど増えてトータル約1500人、会費が滞っている人は失格ということで、投票総数353のうち315票が賛成でした。多かったのか少なかったのかどっちでしょうか。

 

     

 (ラファエル・ポルテラとマリアノ・バロッソ、プレス会見するデュオ、ノラ・ナバス欠席)

 

★映画アカデミーの大仕事の一つがゴヤ賞選考と授賞式、進行に携わる総合司会者にTV司会者・コメディアン・製作者のアンドリュー・ブエナフエンテ(タラゴナ、1965)と女優・コメディアンのシルビア・アブリル(バルセロナ、1971)が選ばれ、同日アナウンスされました。二人は私生活では2005年からパートナーです(1女あり)。縁結びの神様は「トレンテ・シリーズ」のサンティアゴ・セグラかな。ブエナフエンテは今回が3回目のベテラン、久々の大物司会者です。ゴヤ賞201922(土)、演出はブエナフエンテが設立した制作会社「El Terrat」が担当します。マドリード以外の開催が決定していますが、都市名は伏せられています。目下2候補に絞られているようです。以前マドリードとバルセロナが交代で開催されていた時期もありました。新執行部のトリオも司会者もカタルーニャ出身、参加者の利便を考慮すれば、バルセロナが一番有力でしょうか。

 

         

         (アンドリュー・ブエナフエンテとシルビア・アブリル)

 

  トリオ紹介

マリアノ・バロッソMariano Barroso バルセロナ、1959)は、監督、脚本家、製作者生粋のバルセロナっ子を自認している。アメリカン・フィルム・インスティチュートとサンダンス・インスティチュートで映画演出を、テアトロ・エスパニョール・マドリード他で舞台演出を学ぶ。1994スリラーMi hermano del almaゴヤ賞新人監督賞を受賞、ベルリン映画祭出品、サン・ジョルディ賞、カルロヴィ・ヴァリ映画祭金賞を受賞。

 

代表作はハビエル・バルデム、フェデリコ・ルッピを主役に起用したÉxtasis95)がベルリン、ロンドン、ワシントン各映画祭に出品された。1999年、ハビエル・バルデムとエドゥアルド・フェルナンデスを主演にしたアクション・スリラーLos lobos de Washingtonは、トゥールーズ・スペイン映画祭の監督賞、金のスミレ賞を受賞した。2005Hormigas en la bocaでマラガ映画祭審査員特別賞、2007年、国境なき医師団の活躍を追ったドキュメンタリーInvisiblesをハビエル・バルデムなどと製作、ゴヤ賞ドキュメンタリー賞を受賞、2010TVシリーズTodas las mujeres脚本を執筆、2013年に映画化、ゴヤ賞脚色賞他を受賞した。最新作は、イグナシオ・マルティネス・デ・ピソンの同名小説をTVドラマ化したEl día de mañana6話)、1960年代のフランコ時代のバルセロナが舞台のスリラー、2018622日から放映される予定。舞台演出でも活躍している。

 

        

    (オリオル・プラ、アウラ・ガリドと「El día de mañana」の打ち合せをする監督

   

ノラ・ナバスNora Navas バルセロナ、1975)は映画・舞台女優。主にバルセロナ派の監督作品に出演、日本公開作品では、アグスティ・ビリャロンガ『ブラック・ブレッド』の母親役で、サンセバスチャン映画祭2010女優賞、ゴヤ賞2011主演女優賞、ガウディ賞2011女優賞を受賞一躍脚光を浴びた。アントニオ・チャバリアスDictado12)に脇役で出演、ホラー映画と勘違いしたのか翌年『フリアよみがえり少女』の邦題で公開された。ほかにアルゼンチンのガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーン笑う故郷』(「名誉市民」)では、主人公のノーベル賞作家ダニエルの秘書役で登場した。

 

★未公開作品ではガウディ賞やバジャドリード映画祭で女優賞を受賞した、マル・コルTodos queremos lo mejor para alla14)、グラシア・ケレヘタのシリアス・コメディFelices 14015)、マラガ映画祭2018で紹介したパウ・ドゥラFermentera Ladyなど女性監督作品に出演している。当ブログにもしばしば登場願っているバルセロナ派のベテランです。TVムービー、TVシリーズも多く、舞台女優としては、ガルシア・ロルカやアーサー・ミラーの戯曲に出演して、二足ならず三足の草鞋派です。会長不在のゴヤ賞2018授賞式では、バロッソと協力して無事乗り切った。

 

       

      (マリアノ・バロッソとノラ・ナバス、ゴヤ賞2018授賞式にて

 

ラファエル・ポルテラRafael Portela Freire製作者。Paramount Channil Espanaの出版副社長、9年間TCM OriginalTNT Spainの映画チャンネルの番組編成を手掛けた。現在「Sentido Films」のプロデューサー。代表的なフィルモグラフィーは、2006年、俳優・監督のフェルナンド・フェルナン・ゴメスについてのドキュメンタリーLa silla de Fernando(ルイス・アレグレ&ダビ・トゥルエバ)、2008Una palabra tuya(アンヘレス・ゴンサレス・シンデ)、2010年ドキュメンタリーLa noche que no acaba(イサキ・ラクエスタ)、マリアノ・バロッソのスリラーLo mejor de Eva11)、Todas las mujeres13)、イサキ・ラクエスタのコメディMurieron por encima de sus posibilidades14)、La propera pell(『記憶の行方』16)など、バルセロナ派の監督作品を手掛けている。