ナオミ・ワッツにドノスティア栄誉賞*サンセバスチャンFF26 ⑭2026年09月08日 18:07

       インディーズ映画と大作での実績をもつ女優にして起業家のナオミ・ワッツ

 

     

 

★去る831日、二人目となるドノスティア栄誉賞ナオミ・ワッツの発表がありました。2001年、デヴィッド・リンチのミステリー『マルホランド・ドライブ』で国際的な名声を得た女優の道程は、必ずしも順風満帆ではありませんでした。「十年以上もオーディションに落ち続け、自分自身さえ見失っていた私を見つけてくれた・・・彼のお蔭で有名になりました」と、監督没後(20251月)に追悼している。既に30歳を超えており、当時のハリウッドでは「女優の40歳は90歳の老婆」と言われていた時代でした。しかし、ベティ・エルムスとダイアン・セルウィン役の忘れがたい二役で、映画界で最も魅力的な才能の一人としての地位を確立、ナショナル・ボード・オブ・レビュー、全米映画批評家協会などの最優秀女優賞を手にしました。2006年、監督の最後となる長編『インランド・エンパイア』でウサギのボイス出演をしている。

   

      

          (撮影中のナオミ・ワッツとデヴィッド・リンチ)

 

ナオミ・ワッツは、1968年イギリスのケント州ジョアハム生れ、女優、モデル、演技以外でもプロデューサーのキャリアを磨き、起業家として女性の健康に関する活動をしている。イギリス生れだが、父親没後、14歳で母方の祖母の故郷オーストラリアに家族で移住した。演技はシドニーの演技学校で学んでいる。1991年、ジョン・デュイガンのティーン・ロマンス「Flirting」にニコール・キッドマンと出演した。スコット・コフィ―の短編「Ellie Parker」(0116分)を監督と初プロデュース、主演もした。本作はサンダンスFFで上映され、その後2005年に長編映画化された。2004年オーストラリア映画協会のグローバル・アチーブメント賞を受賞している。

  

★出演作はTVシリーズを含めると3桁に及ぶ。その確かな演技力は多くの監督に愛されている。2003アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ21グラム』でアカデミー賞主演女優賞初ノミネートほか、ボストン、フロリダ、ロサンゼルスなどの映画批評家協会賞を受賞、ショーン・ペンやベニチオ・デル・トロと共演、2005年、ピーター・ジャクソンの『キング・コング』では、アメリカSFファンタジー・ホラー映画アカデミーの主演女優賞やロンドン映画批評家協会の年間女優賞を受賞、同年マーク・フォースターのサイコスリラー『ステイ』でユアン・マクレガーを共演した。デヴィッド・クローネンバーグの『イースタン・プロミス』(07)では、ヴィゴ・モーテンセンやヴァンサン・カッセルと共演している。

 

        

         (ショーン・ペンとナオミ・ワッツ、『21グラム』から)

 

   

        (ポスター)

 

       

              (『キング・コング』から)

 

ミヒャエル・ハネケが『ファニーゲーム』(97)をセルフリメイクした『ファニーゲームU.S.A.』(08)で再びモーテンセンと共演した。ロドリゴ・ガルシアの『愛する人』(09)は、トロントFFでプレミア、本祭のクロージング作品で、その後国際映画祭巡りをした作品。同年トム・ティクヴァの『ザ・バンク堕ちた虚像』ではクライヴ・オーウェンと、ダグ・リーマンがブレイム事件を描いた実録ポリティカル・サスペンス『フェア・ゲーム』(10)では、3度目の共演となるショーン・ペンと夫婦役を演じた。クリント・イーストウッドの『J・エドガー』(11)でレオナルド・ディカプリオと、そして翌年、J.A.バヨナ『インポッシブル』2度目となるオスカー賞主演女優賞にノミネートされた。2004年のスマトラ沖地震による未曾有のツナミを生き延びた家族を描いた実話の映画化、ユアン・マクレガーと夫婦役を演じた。スペインのシネマ・ライターズ・サークル賞2013主演女優賞、パームスプリングFF功績賞、サンタバーバラFFモンテシート賞ほか受賞歴多数、スペインでの世界興行売上ナンバーワンは、いまだに破られていない。

 

      

     

           (『インポッシブル』スペイン語版ポスター)

 

★何作かを掛け持ちで出演しているから選ぶのに迷うが、2013年、オリヴァー・ヒルシュピーゲルの『ダイアナ』では、ウェールズ公妃ダイアナの最後の2年間を演じたが、脚本が雑で低評価だった。2014年、アレハンドロ・G・イニャリトゥがアカデミー賞作品賞以下、数々の映画賞を受賞した『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』に脇役で出演、ノア・バームバックのコメディ『ヤング・アダルト・ニューヨーク』で、ベン・スティラーやアダム・ドライバーと共演、2015年、ジャン=マルク・ヴァレの遺作となったドラマ『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』にジェイク・ジレンホークと共演、2017年、コリン・トレヴォロウの『ザ・ブック・オブ・ヘンリー』に主演、Netflixで配信された。2019年、サンダンスFFでプレミアされ高評価だった、ジュリアス・オナーの社会派サスペンス『ルース・エドガー』ではティム・ロスと夫婦役を演じた。

 

2020年、オーストラリアが製作した、グレンディン・イヴィンの『ペンギンが教えてくれたこと』に主演、2016年にキャメロン・ブルーム他が上梓したノンフィクションの映画化、Netflixで配信されている。2021年、フィリップ・ノイスのスリラー『デスパレート・ラン』に主演・製作、2024年、オドレイ・ディヴァン(ディワン)の『エマニュエル』は、エマニュエル・アルサンの同名小説の映画化、製作はフランスだが言語は英語、本祭セクション・オフィシアルのオープニングを飾った。当ブログで作品紹介をしています。

『エマニュエル』の紹介記事は、コチラ20240701

 

2025年、Dare I Say It: Everything I Wish Id Know About Menopause がニューヨーク・タイムズのベストセラーのリスト入りしている。ドノスティア栄誉賞の授与式は、919日メイン会場のクルサール・ホールで行われ、その後、ベン・シリニアンの長編デビュー作「The Housewife」が上映されることになっています。ワッツが主役の主婦を演じます。

  

 

 The Housewife / La esposa perfecta(仮題「主婦」)

データ:製作国アメリカ合衆国、2026年、歴史ドラマ、102分、撮影地カナダのモントリオール、チューリッヒFF、トロントFF、サンセバスチャンFF、各映画祭上映

監督:ベン・シリニアン、脚本アリッサ・ヒル

キャスト:ナオミ・ワッツ、タイ・シェリダン、ルーク・エヴァンス(ラッセル)、マイケル・インペリオリ(アンソニー)、レナ・オリン、デビ・マザール、他

ストーリー:ニューヨーク、1964年、若いジャーナリストがクイーンズ地区にナチス将校と思われる男が秘密裏に暮らしていることを嗅ぎつける。彼が目指す容疑者の魅力的な妻と親しくなり、ジャーナリスティックな完璧さで追い詰めていくと、捜査は意外な展開を迎える。実話に基づいています。

 

  

             (ナオミ・ワッツ、フレームから)

 

     

監督紹介ベンジャミン・シリニアン、カナダのケベック州モントリオール生れ、監督、脚本家、俳優、クイーンズ大学で映画製作を学んでいる。短編「Lost in Motion」(124分、監督、共同脚本)は、カナダ国立バレエ団のプリンシパルダンサー兼振付師、作曲家ギヨーム・コーテをフィーチャーしている。トロントFFでプレミアされた。「Lost in Motion 2」(134分、監督、共同脚本)は、コーテの妻ヘザー・オグデン出演、第二次世界大戦中にフランス南部で孤児になったユダヤ人の少年と少女のラブストーリー「Josef et Aimee」(1517分、監督、共同脚本)は、フランス語のファンタジードラマ。共同脚本家は3作ともレスリー・ゴットリーブ。

 

   

             (ベン・シリニアン監督)

  

リカルド・ダリンのキャリア & フィルモグラフィー*サンセバチャンFF26 ②2026年06月27日 15:00

        公式ポスターの顔リカルド・ダリンのキャリア&フィルモグラフィー

  

     

 

★第66回サンセバスチャン映画祭2018年のイザベル・ユペールから始まった公式ポスターの顔に今年はアルゼンチンの俳優でプロデューサー、監督のリカルド・ダリンが選ばれました。出演した作品紹介の折にキャリア&フィルモグラフィーを断片的にアップしてきましたが、今回纏めてみました。出演映画は既に3桁、40を超える受賞歴、5歳でTVシリーズにデビューして以来、はや半世紀になります。大衆向けと作家性の強い映画をバランスよく交互に演じてきました。飽きのこない俳優として、国内外の多くの監督に愛され、例えばアドルフォ・アリスタライン、フアン・ホセ・カンパネラ、ファビアン・ビエリンスキー、フェルナンド・トゥルエバ、パブロ・トラペロ、セスク・ゲイ、サンティアゴ・ミトレ、エトセトラ。悪い噂が皆無というわけではありませんが、ラテンアメリカを代表する演技派の一人であることは万人が認めるところでしょう。

 

        

         (ドノスティア栄誉賞を受賞、65SSIFF2017、ガラにて

 

経歴1957年ブエノスアイレス生れの69歳、俳優、製作者、監督。両親とも俳優でアルゼンチンのショービジネス界と深い繋がりのある家庭で育った。テレビシリーズ出演は5歳、演劇デビューは両親との共演で10歳、以来テレビや映画での成功にもかかわらず演劇から離れることはない。1990年には舞台演出家としてデビューしています。舞台出演で演技を磨いたダリンの映画デビューは、1972年、カトラノ・カトラニの「He nacido en la ribera」、生れながらのサッカー選手ミゲル・ノタリの少年時代を演じてスタートさせた。フリオ・ポーターの「La carpa del amor」(79)で主演、フェルナンド・シロの「La canción de Buenos Aires」(80)のミュージカル・コメディ、今年4月鬼籍入りしたアドルフォ・アリスタライン初期のロマンチックコメディなど若者向け映画に出演した。1984年、ダビ・リプシックのドラマ「La Rosales」で、エクトル・アルテリオやオスカル・マルティネス、ウリセス・デュモンなどの演技派俳優と共演した。

 

★演技が注目され始めたのは90年代からで、アルベルト・レッキのデビュー作、スリラー「Perdido por perdido」(93)で心ならずも悪に手を染めてしまう工場経営者を演じた。エドゥアルド・ミニョニャのスペインとの合作「El faro」に出演、本作はゴヤ賞スペイン語外国映画賞1999にノミネートされた作品、更にアルゼンチンの国家破産を目前にしていた時代に撮られた、フアン・ホセ・カンパネラのラブストーリー「El mismo amor, la misima lluvia」で、共演者のソレダード・ビジャミルとアルゼンチン映画批評家協会賞2000銀のコンドルを初めて受賞した(合計7回受賞している)。これは2000年代から始まる国際的な評価を獲得するうえで重要な作品となった。

   

     

   (フアン・ホセ・カンパネラの「El mismo amor, la misima lluvia」のポスター)

 

2000年、ファビアン・ビエリンスキーの「Nueve reinas」にガストン・パウルスと共演、アルゼンチンの金融危機のさなかに詐欺師となった男を好演して不動の地位を確保した。2001年、エドゥアルド・ミニョニャの犯罪スリラーでミゲル・アンヘル・ソラ、ノルマ・アレアンドロなどベテランと共演、本作はゴヤ賞2002のスペイン語外国映画賞を受賞した作品。再びカンパネラのコメディ「El hijo de la novia」にアルテリオやアレアンドロ、ナタリア・ベルベケなどと共演、銀のコンドル他受賞、アカデミー賞2002外国語映画賞ノミネート作品です。


★マルセロ・ピニェイロの「Kamchatka」では、1976年に起きた軍事独裁クーデタから逃亡者となった人権派弁護士を演じた。タイトルの〈カムチャツカ〉は理想郷の代名詞になっている。アカデミー賞のアルゼンチン代表作品でしたがノミネートされなかった。メルセデス・モランやエドゥアルド・ブランコと共演したカンパネラの「Luna de Avellaneda」(04)、ファビアン・ビエリンスキーの「El aura」で剝製師に扮して、ドロレス・フォンシと共演、銀のコンドル、クラリン・エンターテイメント賞、本作もアカデミー賞アルゼンチン代表作品に選ばれている。

 

2007年、ルシア・プエンソの「XXY」がカンヌ映画祭併催の「批評家週間」でグランプリを受賞したことで国際映画祭巡りをした。日本でも『XXY』の邦題でラテンビートLBFF07で上映された。10代のインターセックスの娘の父親を演じた。人生の選択権は誰にあるかというのがテーマ、主役を演じたイネス・エフロンが銀のコンドルを受賞、プエンソ監督は国際映画祭の作品賞を数多受賞した。BSスカパーで『XXY~性の意思』として放映された。同年エドゥアルド・ミニョニャが未完のまま遺した「La señal」に主演、マルティン・ホダラと共同で監督デビューを果たした。ディエゴ・ペレッティに銀のコンドル助演男優賞をもたらした。

 

2009年、カンパネラのサスペンス・ミステリー「Secreto de sus ojos」が大ヒット、アカデミー外国語映画賞を筆頭に受賞歴は列挙しきれない。銀のコンドルは主なスタッフ、キャストのほぼ全員が受賞するなどした。ダリンに限ると男優賞として、銀のコンドル、ハバナ映画祭、クラリン賞、SESC映画祭(ブラジル)ほか、ノミネートはゴヤ賞2010主演男優賞ほか多数でした。東京で2009年12月に開催された「スペイン映画祭」で『瞳の奥の秘密』の邦題で上映され、翌年夏公開された。同じ映画祭で上映されたフェルナンド・トゥルエバの「El baile de la victoria」(『泥棒と踊り子』)では金庫破りの名人に扮し、こちらはゴヤ賞助演男優賞にノミネートされ、主演・助演のカテゴリーに同時にノミネートされた初の外国人俳優となりました。

   

     

       (アカデミー外国語映画賞受賞の『瞳の奥の秘密』のポスター)

 

2010年代になると、ラテンビート映画祭(LBFF)に代表されるスペイン語ポルトガル語に特化したミニ映画祭での上映が増えるにつれ、公開、ネット配信、DVDなどで良作が字幕入りで鑑賞できるようになった。例えば、パブロ・トラペロの「Carancho」(『カランチョ』LBFF2010)の交通事故専門の弁護士役、「Elefante blanco」(『ホワイト・エレファント』LBFF2012)のスラム地区に派遣された司祭役など、ワールドプレミアされた年に鑑賞できた。ダリンが初めてサンセバスチャン映画祭に参加したのは、ファビアン・ビエリンスキーの「El aura / The Aura」がセクション・オフィシアルにノミネートされた2005年でした。それから9回も訪れています。その代表が2017年に受賞したドノスティア栄誉賞と、2015年にセスク・ゲイの「Truman」での銀貝男優賞受賞でした。

 

          

            (銀貝男優賞を受賞、SSIFF2015ガラにて)

 

2015年のセスク・ゲイTruman」(『しあわせな人生の選択』)の製作は、アルゼンチンと合作したスペイン映画、SSIFF2015銀貝男優賞を共演のハビエル・カマラと受賞、翌年のゴヤ賞では主演男優賞を受賞した。相思相愛の妻フロレンシア・バスとガラに出席していた。勿論助演男優賞はカマラ、意気投合していた犬のトルーマンは撮影後亡くなり、ダリンは1週間以上も涙にくれたのでした。アルゼンチン以外の映画出演には、カンヌ映画祭の常連であるイランのアスガー・ファルハディの「Todos lo saben」(『誰もがそれを知っている』西仏伊合作)がある。ペネロペ・クルスの夫役、経営していた会社が倒産して失業中、ずっと仏頂面で不機嫌でした(笑)。

 

    

      (ゴヤ賞2016主演男優賞のトロフィーを手にしたリカルド・ダリン)

 

サンティアゴ・ミトレとは、「La cordillera」(『サミット』)のアルゼンチン大統領役、軍事クーデタの歴史に基づいた法廷ドラマ「Argentina, 1985」(『アルゼンチン1985』)の主任検事役でタッグを組んだ。本祭ではペルラス部門の観客賞を受賞、アルゼンチンに初めてゴールデングローブ賞のトロフィーをもたらして大ヒットした。現在アルゼンチンは、他のラテンアメリカ諸国同様、国家が文化芸術に敬意をはらわない国になっており、映画界も苦戦している。国際映画祭でのノミネートが先細りしており、カンヌ映画祭など、ここ数年ノミネートなしが続いている。

   

       

   (ミトレの軍事政権裁判劇『アルゼンチン1985』、共演のピーター・ランサニと)

 

★主なフィルモグラフィー(ゴチック体は当ブログで紹介した作品)

1972He nacido en la ribera」ミュージカル・コメディ、監督カトラノ・カトラニ

1977Asi es la vida」コメディ、同エンリケ・カレラス

1979La carpa del amor」ミュージカル・コメディ、同フリオ・ポーター、主演

1980La playa del amor」ロマンチックコメディ、同アドルフォ・アリスタライン

1980La canción de Buenos Aires」ミュージカル・コメディ、同フェルナンド・シロ

1980La dicoteca del amor」ロマンチックコメディ、同アドルフォ・アリスタライン

1984La Rosales」ドラマ、同ダビ・リプシック

1987Revancha de un amigo」スリラー、同アルベルト・レッキ

1987The Stranger / Traición y venganza」(米、英語)スリラー、ミステリー

   同アドルフォ・アリスタライン

1993Perdido por perdido」スリラー、同アルベルト・レッキ、

   SSIFFニューディレクター部門、ダリンは不参加

1998El faro」(西合作)ドラマ、同エドゥアルド・ミニョニャ

1999El mismo amor, la misima lluvia」ドラマ、同フアン・ホセ・カンパネラ

   アルゼンチン映画批評家協会賞2000銀のコンドル初受賞

 

2000Nueve reinas / Nine Queens」『華麗なる詐欺師たち』犯罪スリラー、

   監督ファビアン・ビエリンスキー、銀のコンドル、クラリン・エンターテイメント賞、

   サン・ジョルディ賞(外国人俳優部門)、ビアリッツ・ラテンアメリカ・シネマ男優賞

2001La fuga」犯罪スリラー、同エドゥアルド・ミニョニャ、SSIFFコンペティション部門

2001El hijo de la novia」(西合作)コメディ、同フアン・ホセ・カンパネラ、

   銀のコンドル、サン・ジョルディ(外国人俳優部門)、クラリン・エンターテイメント賞

2002Kamchatka」ドラマ、同マルセロ・ピニェイロ

2004Luna de Avellaneda」(西合作)コメディ・ドラマ、同フアン・ホセ・カンパネラ

2005El aura / The Aura」(西仏合作)犯罪スリラー、同ファビアン・ビエリンスキー

      銀のコンドル、クラリン賞受賞

2006La educación de las hadas」(仏・ポルトガル・西合作)ドラマ、

   同ホセ・ルイス・クエルダ

2007XXY」『XXY~性の意思』心理ドラマ、同ルシア・プエンソ

2007La señal」犯罪ドラマ、共同監督リカルド・ダリン&マルティン・ホダラ、主演

2009Secreto de sus ojos / The Secret in Their Eyes」『瞳の奥の秘密』ドラマ

   (西合作)、同フアン・ホセ・カンパネラ

  作品紹介は、コチラ20140809

2009El baile de la victoria / The Dance and the Thief『泥棒と踊り子』

   (スペイン映画)、同フェルナンド・トゥルエバ

 

2010Carancho」『カランチョ/ハゲ鷹と女医』犯罪スリラー、監督パブロ・トラペロ

   SSIFFペルラク部門、LBFF2010上映

2011Un cuento chino」コメディ、同セバスティアン・ボレンステイン、

  簡単な作品紹介は、コチラ20200118

2012Elefante blanco」『ホワイト・エレファント』社会派ドラマ、同パブロ・トラペロ

   LBFF2012オープニング作品、スラム地区に赴任する司祭役

2012Una pistola en cada mano」コメディ、同セスク・ゲイ

  簡単な作品紹介は、コチラ20170804

2013Tesis sobre un homicidio」『ある殺人に関するテーゼ』(西合作)サスペンス、

   元弁護士の教師役、同エルナン・ゴルドフリード、WOWOW2013放映、2014DVD発売

2013Séptimo」『ロスト・フロア』(西合作)サスペンス、同パチ・アメスクア、Netflix

   公開

2014Relatos salvajes」『人生スイッチ』ブラック・コメディ(第4話「発破屋」主演)

   同ダミアン・シフロン、公開

  主な作品紹介は、コチラ20150729

2015Truman」『しあわせな人生の選択』(スペイン=アルゼンチン)ドラマ、

   同セスク・ゲイ、SSIFF2015銀貝男優賞ゴヤ賞主演男優賞受賞、他受賞歴多数、公開

  作品紹介は、コチラ2016010920170804

2016Capitán Kóblic」『コブリック大佐の決断』犯罪スリラー、

   同セバスティアン・ボレンステイン

  作品紹介は、コチラ20160430

2017Nieve negra」『黒い雪』(西合作)犯罪ミスリラー、同マルティン・オダラ、Netflix

2017La cordillera」『サミット』スリラー、同サンティアゴ・ミトレ

作品紹介は、コチラ20170518同年1025

2018Todos lo saben」『誰もがそれを知っている』(西仏伊合作)スリラー・ドラマ、

   同アスガー・ファルハディ、カンヌ映画祭2018オープニング作品

作品紹介は、コチラ2018050820190623

2018El amor menos pensado」ロマンティック・コメディ、同フアン・ベラ、出演・製作

   SSIFFオープニング作品

  作品紹介は、コチラ20180814

2019La odisea de los giles」『明日に向かって笑え!』アドベンチャー・コメディ、

   同セバスティアン・ボレンステイン、出演・製作

  *主な作品紹介は、コチラ20200118

2022Argentina, 1985」『アルゼンチン1985』法廷ドラマ、同サンティアゴ・ミトレ、

   主演・製作、アルゼンチン初のゴールデングローブ賞受賞作品、プライムビデオ

  *主な作品紹介は、コチラ20221123

2024Descansar en paz」『安らかに眠れ』同セバスティアン・ボレンステイン、製作のみ、

   Netflix

  *作品紹介は、コチラ20240416同年0430

2025El Eternauta」『エテルナウタ』(7話、TVシリーズ、SF

   クリエーター、ブルーノ・スタグナロ

   イベロアメリカ・プラチナ賞2026男優賞TVシリーズ部門)、Netflix

 

★主なフィルモグラフィーは以上です。ラテンアメリカの俳優としては知名度もずば抜けています。受賞歴は作品紹介にアップしています。なお印はサンセバスチャン映画祭に参加した年です。2019年には初めて共演した息子チノ・ダリンと現地入りしました。最近では若い人から「リカルド・ダリンってチノ・ダリンのパパなんだってよ」といわれる由、いえいえ、それはまだ早い、「チノがリカルド・ダリンの息子」です。

 

     

         (現地入りしたダリン親子、SSIFF2019,フォトコール)

 

映画国民賞2026受賞者にカルメン・マチ*スペイン映画賞2026年06月17日 17:21

        マラガ-スール賞2025に続いて映画国民賞を受賞するカルメン・マチ

  

       

            (映画国民賞2026の受賞者カルメン・マチ)

 

★映画国民賞2026受賞者にカルメン・マチ(マドリード1963)のアナウンスがありました。毎年6月に入るとスペイン文化スポーツ教育省が授与する国民賞の発表があります。文学、スポーツ、科学、映画など各分野ごとに選ばれます。映画関係の選考母体は文化省とスペイン映画アカデミーで、授与式は秋に開催されるサンセバスチャン映画祭の会期中と決まっています。副賞は3万ユーロと多額ではありませんが、とても名誉な賞です。因みに昨年はエドゥアルド・フェルナンデスでした。受賞理由は、「スペイン映画史におけるコメディといわず全てのジャンルをカバーできる最も重要な俳優の一人。数多の製作者の企画をよく理解して、かつ大衆化が損なわれないように努めて、多くの観客を惹きつける術を知っている」でした。審査員全員の満場一致、反対する理由なんてないでしょう。

 

   

       (第29回ゴヤ賞2015助演女優賞のトロフィーを手にしたカルメン)

 

★受賞の知らせを受けて、「びっくりしています。受賞の知らせに感動して、感謝の言葉もありません」と。テレビのコメディではアドリブもあるのではないかと思っていましたが意外や、「台本が優れていれば、それを演じればいい。セリフを捉えて、コンマ一つ変えません。シェイクスピア劇を演じるのと同じことで、脚本家に最大級の敬意をはらっています」ということでした。舞台一筋だったせいか、長編映画出演はペドロ・アルモドバルの『トーク・トゥ・ハー』の看護婦役でした。彼の映画には『抱擁のかけら』、『私が、生きる肌』、『アイム・ソー・エキサイテッド!』、最新作「Amarga Navidad」など。キャリア&フィルモグラフィーは、マラガ-スール賞を受賞した折にアップしましたが、マラガFF以降のフィルモグラフィーを追加して以下に再録しておきます。

マラガ-スール賞、キャリア&フィルモグラフィの記事は、コチラ2025406

 

           主なフィルモグラフィー

1999Lisa」短編、カルロス・プジェ

2002Hable con ella」『トーク・トゥ・ハー』ペドロ・アルモドバル、看護婦役

2003Descongélate」『チル・アウト』ドゥニア・アヤソ&フェリックス・サブロソ

  「Torremolinos 73」『トレモリーノス73パブロ・ベルヘル、美容院の客

2004Escuela de seducción」ハビエル・バラゲル、ウエートレス役

2005Vida y color」『色彩の中の人生』サンティアゴ・タベルネロ

2006Lo que sé de Lola」ハビエル・レボーリョ

2009Las abrazos roto」『抱擁のかけら』ペドロ・アルモドバル

La mujer sin piano」ハビエル・レボーリョ、主役ロサ、

 カセレス・スペインFF女優賞受賞

2010Pájaros de papel」『ペーパーバード 幸せは翼にのって』エミリオ・アラゴン、

   ラテンビート2010女優賞受賞

  「Que se mueran los feos」ナチョ・G・ベリリャ、主役ナティ

2011La piel que habito」『私が、生きる肌』ペドロ・アルモドバル、結婚式招待客

2013Los amantes pasajeros」『アイム・ソー・エキサイテッド!』ペドロ・アルモドバル

2014Ocho apellidos vascos」エミリオ・マルティネス=ラサロ、メルチェ役、

ゴヤ賞2015助演女優賞受賞

2015Perdiendo el norte」『夢と希望のベルリン生活』ナチョ・G・ベリリャ、

   ベニ・マリン役

Mi gran noche」『グラン・ノーチェ!最高の大晦日』アレックス・デ・ラ・イグレシア

2015Ocho apellidos catalanes」『オチョ・アペリードス・カタラネス』

   E・マルティネス=ラサロ、メルチェ / カルメ役

2016Las furias」ミゲル・デル・アルコ、カサンドラ役

La puerta abierta」マリナ・セレセスキー、娼婦ロサ、スペイン俳優組合賞受賞

2017El bar」『クローズド・バル 街角の狙撃手と8人の標的』サスペンス、

   アレックス・デ・ラ・イグレシア

Pieles」『スキン~あなたに触らせて』エドゥアルド・カサノバ

2018Thi Mai, rumbo a Vietnam」『ティ・マイ 希望のベトナム』パトリシア・フェレイラ、

   主役カルメン・ガラテ

La tribu」『ダンシング・トライブ』フェルナンド・コロモ、母親ビルヒニア役

 モンテカルロ・コメディ映画祭2018主演女優賞受賞

2019Perdiendo el este」パコ・カバジェロ、ベニ・マリン役

Lo nunca visto」マリナ・セレセスキー、主役テレサ

2020Nieva en Benidorm」ネオノワール、イサベル・コイシェ、警官マルタ役

  「Un efecto óptico」フアン・カベスタニー

2021El cover」ミュージカル、セクン・デ・ラ・ロサ、マリエ・フランセ役

2022Amor de madre」『僕とママの じゃない”ハネムーン』パコ・カバジェロ、母親役

Rainbow」ミュージカル、パコ・レオン

La voluntaria」政治ドラマ、ネリー・レゲラ

Cerdita」『PIGGYピギー』コメディ・ホラー、カルロタ・ペレダ、母親役

2024Tratamos demasiado bien a las mujeres」シリアスコメディ、クララ・ビルバオ、主演

  「Verano en diciembre」カロリナ・アフリカ、主演母親役

2025La viuda negra」犯罪ドラマ、カルロス・セデス、刑事役

Día de caza」スリラー・ドラマ(サウラの『狩り』の女性版)、ペドロ・アギレラ

2026Aída y vuelta」パコ・レオン、アイーダ・ガルシア・ガルシア役

Los justos」コメディ、ホルヘ・ララ&フェルナンド・ぺレス、主役

Amarga Navidad」悲喜劇、ペドロ・アルモドバル、医師ガルシア訳

53 domingos」『53回の日曜日』コメディ、セスク・ゲイ、ナタリア役

El director」ドラマ、ダニ・デ・ラ・オルデン(11月公開予定)

 

   

(カルメン・マチとカラ・エレハルデ、「Ocho apellidos vascos」のフレームから)

   

原題ゴチック体は当ブログで紹介記事をアップしております。Netflix配信中の『53回の日曜日』は、3人の兄弟姉妹ハビエル・グティエレス、カルメン・マチ、ハビエル・カマラ、そのパートナーであるアレクサンドラ・ヒメネスが進行役のシリアスコメディ。認知症の傾向が見え始めた一人暮らしの老父の面倒は誰がみる? 今年11月公開予定の「El director」では、ダビ・ベルダゲルとアルベルト・サン・フアンと共演、両作とも鉄壁の布陣です。TVシリーズ、舞台出演については前回で紹介しています。

       

                  

                            (『53回の日曜日』ポスター)


ロドリゴ・ソロゴジェンの「El ser querido」*カンヌ映画祭20262026年06月04日 16:13

          スリラーというジャンルのコルセットを脱ぎすてたソロゴジェン

        


             (英語版プロモーション・ポスター)

 

★今年のカンヌ映画祭にはスペインから3作がコンペティションにノミネートされました。ペドロ・アルモドバルの「Amarga Nadidad」、ロドリゴ・ソロゴジェンの「El ser querido / The Beloved」、前回アップしたロス・ハビスの「La bola negra」の3作品です。個人的に期待していたのがソロゴジェン、『ザ・ビースト』のような彼の過去の映画がもっていたスリラーの要素を除いたことが理由でした。プレミアム上映後の感触は悪くなかったようですが、下馬評はイマイチでした。フランス公開はカンヌでワールドプレミアされた当日の516日(配給ル・パクト)、スペインは826日(同ア・コントラコリエンテ・フィルム)、公開後モビスター・プラスで配信されます。近いうち鑑賞できることを期待してアウトラインをアップします。

 

★プレミアム上映後のスタンディングオベーションは、ソロゴジェンのスピーチを入れて78分くらい、夕方からのコンペ上映時には観客にもフォーマルな服装が求められるから蝶ネクタイ姿がいっぱい。映画祭関係者、カメラマンも黒服だからライトが当たった人しか判別できない。ソロゴジェン監督以下、脚本家イサベラ・ペーニャ、製作者ギジェルモ・ファレ、エドゥアルド・ビリャヌエバ、キャスト陣はハビエル・バルデム、ビクトリア・ルエンゴ、マリナ・フォイス、ラウル・アルバレス、ラウル・プリエトなど、本作には関係してないと思うが、ホセ・アントニオ・バヨナの姿もあった。

 

      

  

     (ワールドプレミア後のレッドカーペット、カンヌ映画祭2026516日)

 

★新作「El ser querido」は、単独デビュー作「Stockholm」(ゴヤ賞2014新人監督賞ノミネート)から数えると6作めになる。長いあいだ離れて会うこともなかった父親エステバン(ハビエル・バルデム)と娘エミリア(ビクトリア・ルエンゴ)の物語、長年疎遠だった著名な映画監督の父、売れない女優の娘が再会して一緒に仕事をするとどうなるか。バルデムの起用は初、ルエンゴはTVシリーズ「Antidisturbios / Riot Police」の主役に抜擢している。スペインの過去の植民地であったサハラ砂漠を舞台に、現実とフィクションを交錯させている。

 

 「El ser querido / The Beloved」(愛しきもの)

製作:Caballo Films / Movistar Plus/ El Ser Querido AIE / Le Pacte / 

   Comunidad de Madrid / ICEC / ICAA / Crea SGR / Triodos Bank

監督:ロドリゴ・ソロゴジェン

脚本:イサベル・ペーニャ、ロドリゴ・ソロゴジェン

撮影:アレハンドロ・デ・パブロ

音楽:オリヴィエ・Arson

編集:アルベルト・デル・カンポ

キャスティング:パウラ・カマラ、アランツァ・ベレス

プロダクションデザイン&美術:ホセ・ティラド

衣装デザイン:サイオア・ララ

メイクアップ&ヘアー:フランシス・ボディ、イレネ・ペドロサ、ヘスス・ヒルGil、他

製作者:フラン・アラウホ、ギジェルモ・ファレ、ホルヘ・ペッツィPezzi、(共同)アリス・ラバディ、ジャン・ラバディ、(エグゼクティブ)ハビエル・バルデム、クララ・ラゴ、ナチョ・ラビリャ、エドゥアルド・ビリャヌエバ

 

データ:製作国スペイン=フランス、2026年、スペイン語、ドラマ、135分、撮影地:カナリア諸島フエルテベントゥラ島のパハラ、ラ・オリバ、マドリードなど、20252月クランクイン、公開フランス516日、スペイン826日、スウェーデン1218日(予定)

映画祭・受賞歴:カンヌ映画祭2026コンペティション部門、ジャカルタ・ワールド・シネマ(10月予定)

 

ストーリー:著名な映画監督エステバン・マルティネスは、映画だけでなく、過剰に彩られた過去でも伝説的な存在です。新作では、長年疎遠だった女優の娘エミリアに役を提供しようとします。一緒に撮影現場で暮らすことで、何年も分かち合うことのなかった親密さが芽生えるが、同時に癒えなかった古い傷口が再び開くことになる。互いに目を見て話すことのなかった二人の人間についての映画。 

 

キャスト:ハビエル・バルデム(エステバン・マルティネス)、ビクトリア・ルエンゴ(エミリア・マルティネス)、マリナ・フォイス(マリナ)、ラウル・アレバロ(セサル)、ムラド・ウアニ Mourad Quani(ビラル)、メリナ・マシューズ(バルバラ)、ラウラ・ビルン(アリス)、ヌリア・プリムス(チャロ)、パブロ・ゴメス=パンド(パブロ)、マレナ・ビリャ(マレナ)、ペパ・グラシア(ぺパ)、他多数

  

★壊れた家族の再会、権力者と犠牲者のあいだで起こるエモーショナルな暴力、互いに調和しない記憶、ストーリーからはよくあるテーマのように思われます。多くの批評家がヨアキム・トリアーの『センチメンタル・バリュー』との類似性を指摘しています。あちらの父娘も監督と女優だった。比較は避けられないと思いますが、だからと言ってソロゴジェン映画の興味がゼロかというわけではない。短い予告編からは、沈黙が支配しているように見える。登場人物のクローズアップされた視線、沈黙、表情から、壊れた父娘の関係を探ることになりそうです。

   

         

             

       (ハビエル・バルデムとビクトリア・ルエンゴ、フレームから)

 

監督紹介ロドリゴ・ソロゴジェン(マドリード1981)、監督、脚本家、製作者。単独監督デビュー作以来、何回かキャリア紹介をしておりますので、今回は主なフィルモグラフィー&受賞歴だけ以下にアップしておきます(TVシリーズは割愛)。

 

    

                         (監督、ルエンゴ、バルデム、カンヌFF5月16日

 

2013Stockholm」マラガFF、監督賞、イサベル・ペーニャと脚本賞受賞

2016Que dios nos perdone」『ゴッド・セイブ・アス マドリード連続老女強姦殺人事件』

   サンセバスチャン映画祭セクション・オフィシアル初ノミネート

2017Madre」短編、ゴヤ賞2018短編映画賞受賞、米アカデミー賞2019ノミネート

2018El Reino / The Realm」サンセバスチャン映画祭セクション・オフィシアル、

   ゴヤ賞2019監督賞、イサベル・ペーニャと脚本賞、フェロス賞監督賞・脚本賞受賞

2019Madre」『おもかげ』公開

2022As Bestas / The Beasts」『ザ・ビースト』TIFF、邦題『理想郷』で公開、SSIFF観客賞

   ゴヤ賞2023作品・監督・イサベル・ペーニャと脚本賞受賞、セザール賞2023外国映画賞

2026El ser querido」カンヌ映画祭コンペティション初ノミネート

 

Stockholm」とキャリア紹介記事は、コチラ20140617

Que dios nos perdone」の紹介記事は、コチラ20160811

キャリア&フィルモグラフィーの紹介記事は、コチラ20180326

El reino」の作品紹介は、コチラ20180725

 

 

キャスト紹介

ハビエル・バルデム(カナリア諸島ラス・パルマス1969)、俳優、製作者。伯父にフアン・アントニオ・バルデム監督、母に女優のピラール・バルデム、俳優で作家の兄カルロス、女優の姉モニカ、妻ペネロペ・クルスと、まさに映画一家です。2023年、第71ドノスティア栄誉賞受賞が発表された折に、かなり詳しいキャリア&フィルモグラフィーをアップしています。1年遅れの授与式に、ビクトリア・ルエンゴと「El ser querido」に主演することをアナウンスしておりました。

キャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ20230609

ドノスティア栄誉賞授与式の記事は、コチラ20240923

 

  

                             (新作フレームから)

 

   

                        (カンヌFFフォトコール、5月17日)

 

ビクトリア・ルエンゴ・サエス1990年、パルマ・デ・マジョルカ生れのバルセロナ育ち、映画、テレビ、舞台女優。ヴィッキー・ルエンゴでデビューしたが、2020年ごろからビクトリアを使用している。バルセロナのメモリー・スクールで演技、ダンス、歌を学んでいる。2010年、TVシリーズでスタートをきる。主な映画出演は以下の通りです。ミケル・グレアのデビュー作「Suro」に主演、高評価で翌年のゴヤ賞主演女優賞にノミネート、ガウディ賞では受賞を果たした。2022年にメディナ映画祭「21世紀の女優賞」を受賞、舞台女優としては、モノローグ劇「Prima Facie」を演じ好評を博している。

 

     

                (新作フレームから)


    

    (カンヌFFフォトコール、5月17日

 

TVシリーズでは、警察を舞台にしたスリラー「Antidisturbios / Riot Police」(206話)に機動隊員ライア・ウルキホ役で主演、オンダス賞2021主演女優賞フォトグラマス・デ・プラタ主演女優賞を受賞、フォルケ賞やフェロス賞、イリス賞などにノミネートされた。ソロゴジェン監督にとっても大きな転機になったTVシリーズでした。他にコルド・セラが手がけるサスペンス「Reina Roja」(『レッド・クイーン』24、シーズン17話)で、IQ242のアントニア・スコットを演じている。再びホヴィク・ケウチケリアンとタッグを組んだ。プライムビデオで配信されている。

 

2014Born」『ボルンの街に、灯る火』監督クラウディオ・スリアン

   ニューヨーク市映画祭2015主演女優賞受賞

2018Las leyes de la termodinamica」『熱力学の法則』コメディ、監督マテオ・ヒル

2020Hogar」スリラー、共同監督アレックス・パストール&ダビ・パストール

2021Chavalas」コメディ、監督カロル・ロドリゲス・コラス

   ガウディ賞2022主演女優賞ノミネート

2021El sustituto / The Replacement」クライムスリラー、監督オスカル・アイバル

2022Suro / Cork」監督ミケル・グレア、カタルーニャ語、フランス語ほか

   ゴヤ賞2023主演女優賞ノミネート、ガウディ賞主演女優賞を受賞

2024La habitacion」『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』監督ペドロ・アルモドバル

2024Verano en diciembre」監督カロリナ・アフリカ

2026Amarga Navidad」監督ペドロ・アルモドバル

2026El ser querido」監督ロドリゴ・ソロゴジェン

  

『熱力学の法則』の作品紹介は、コチラ20180402

Suro / Cork」の紹介記事は、コチラ20220801

Amarga Navidad」の紹介記事は、コチラ20250617

 

批評家から演技が絶賛されているマリナ・フォイスラウル・アレバロの立ち位置がまだ分かりません。もう4年前になるが『ザ・ビースト / 理想郷』のマリナ・フォイスの演技は忘れられません。東京国際映画祭2022では東京グランプリなど受賞しましたが、素晴らしい演技にも拘わらず女優賞は逃しました。ラウル・アレバロ、メリナ・マシューズも『ザ・ルーム・ネクスト・ドア』に出演しており、スタッフ同様キャストも気心の知れた布陣のようです。秋の映画祭を期待したい。

 

 
  

 

           (プレス会見、カンヌFFフォトコール、5月17日

 

チリ映画「Hangar Rojo」フアン・ペドロ・サジャト*マラガ映画祭2026 ⑨2026年04月28日 16:09

     フアン・パブロ・サジャトのデビュー作「Hangar Rojo――観客賞など4

 

      

 

★今年のマラガ映画祭はイベロアメリカの映画が気を吐いた。チリのフアン・パブロ・サジャトのデビュー作「Hangar Rojo / The Red Hangar」は、1973911日チリの首都サンティアゴで勃発した軍事クーデタの実話に着想を得てモノクロで撮影された政治映画です。ベルリン映画祭2026「視点」部門でワールドプレミアされ、マラガ映画祭で男優賞編集賞エル・パイス観客賞特別批評家審査員賞の「銀のビスナガ」4冠を制しました。スペイン語圏で「もう一つの9.11」と称されるチリの軍事クーデタは、陸軍総司令官ピノチェトがアジェンデ社会主義政権を転覆した事件、その後ピノチェトはチリ大統領として19903月に失脚するまで独裁者として君臨した。パトリシオ・グスマンのドキュメンタリー『光のノスタルジア』を含む「チリ三部作」、パブロ・ララインの『Noノー』を含む「ピノチェト政権三部作」や『伯爵』、ニコラス・アクーニャのTVシリーズ「Los mil dias de Allande」など数々の名作が世に送り出された。では、サジャトの「赤い格納庫」がどんな切り口で語られるのか探ってみたい。

 

    

   (来マラガしたクルー、中央がサジャト監督、マラガFF37日フォトコール)

 

 

 「Hangar Rojo / The Red Hangar

製作:Villano Producciones / Brava Cine / Rain Dogs / Caravan / Berta Film /

      協賛:INCAA / Corfo / Mendoza Film Commission / Programa Ibermedia / 

      Florenz(イタリア) 他

監督:フアン・パブロ・サジャト(サラト)

脚本:ルイス・エミリオ・グスマン

   フェルナンド・ビジャグランの著作 Disparen a la bandada

音楽:アルベルト・ミケッリ、マッテオ・マレッラ

撮影:ディエゴ・ペケーニョ

編集:バレリア・エルナンデス、セバスティアン・ブラム

美術:ニコラス・グラム

衣装デザイン:フリオ・レボッタロ

製作者:フアン・イグナシオ・サバティーニ(Villano)、フアン・パブロ・サジャト(同)、(共同プロデューサー)ライカ・ホスラヴィ、ステファノ・ムトロ、カロリナ・ペッツィーニ、バレンティナ・クアランティーニ、他

 

データ:製作国チリ=アルゼンチン=イタリア、2026年、スペイン語、政治スリラー・ドラマ、モノクロ、81分、撮影は202410月、チリと国境を接するアルゼンチンのメンドーサ市、約3週間。公開チリ202610月予定

映画祭・受賞歴:ベルリン映画祭2026視点部門、マラガ映画祭セクション・オフィシアル、銀のビスナガ主演男優賞(ニコラス・サラテ)、編集賞(バレリア・エルナンデス、セバスティアン・ブラム)、エル・パイス紙観客賞(フアン・パブロ・サジャト)、批評家審査員特別賞(同)を受賞、フリブール映画祭(スイス、3月)、第44回ウルグアイ映画祭俳優賞(ニコラス・サラテ)特別メンション受賞、以下4月から開催されるグアダラハラ、マイアミ、シアトル、ロンドンなどの映画祭上映が予定されている。

 

キャスト:ニコラス・サラテ(ホルヘ・シルバ空軍大尉)、マルシアル・タグレ(ヤーン大佐)、ボリス・ケルシア、カタリナ・ストゥアルド(ロサ)、アロン・エルナンデス(エルナンデス軍曹)、フランシスコ・カラスコ(カラスコ中尉)、フアン・カノ(ムヒカ軍曹)、レンゾ・フィオレッティ(フェルナンド・ビジャグラン)、タイウ・ブラベル・イオソビッチ(フェリペ・アグエロ)、他

  

ストーリー:チリの首都サンティアゴ、1973911日に勃発した軍事クーデタが全国で展開するなか、元空軍諜報機関の長官だったホルヘ・シルバ空軍大尉は、彼の人生を永遠に変える命令を受け取る。それは、現在若い士官候補生を訓練している空軍士官学校を、逮捕者の尋問、並びに拘留と拷問の拠点に変えることでした。シルバは傍観者でいようとするが、かつてのライバルであったヤーン大佐が絶大な権力をもって到着すると、過去だけでなく信念とも深く向きあわざるを得なくなる。格納庫がトラックで運ばれてくる逮捕者でいっぱいになり、軍の権力が日増しに容赦なくなるにつれ、シルバは服従と良心の板挟みになる。不服従は命の危険をともなうかもしれないが、従順もまた命を落とす可能性があるからでした。ピノチェト独裁政権初期の軍の内情を描いた実話に着想を得ている。抑制された語り口とモノクロで撮影された政治的スリラー。

 

     

       (格納庫に集められた逮捕者を見つめるシルバ、フレームから)

 

 

       「シルバという人物の心の葛藤」に寄り添うモノクロ撮影

 

★監督紹介:フアン・パブロ・サジャト Juan Pablo Sallato1978年サンティアゴ生れ、監督、製作者、脚本家、制作会社「Villano Producciones」をフアン・イグナシオ・サバティーニと共同で設立した。2004年、ニコラス・グラムと短編「El duelo」(13分)で監督デビューする。2010年、チリで最も視聴されたというチリ代表サッカー・チームの8年間の敗北と勝利を掘り下げたドキュメンタリー「Ojos Rojos / Red Eye」をフアン・イグナシオ・サバティーニと共同監督、TVミニシリーズには、「Adictos al Claxon」(138話)、「La Cultura del sexo」(156話)、「Libre」(218話)などがある。また製作で自作以外に手掛けた映画にはフアン・イグナシオ・サバティーニの「Matar a Pinochet」(20)、TVシリーズでは、ダニエル・サムディオ事件に触発された「Zamudio」(154話)、謎の失踪事件に基づいた犯罪スリラー「La Caceria: En el fin del mundo」(2425)などが挙げられる。

 

     

         (インタビューを受けるサジャト監督、マラガ映画祭)

 

    

               (メンドーサで本作撮影中のフアン・パブロ・サジャト)

 

  

(ドキュメンタリー「Ojos Rojos」のポスター)

 

★モノクロで撮影した理由を訊かれたサジャト監督は、理由の一つにクーデタに反対したチリ空軍の登場人物たちが持っていた〈灰色〉を私たちは際立たせたかったからで、とくに「明暗とグレーで描く世界は、苦境にあるシルバという人物の心の葛藤をビジュアル化するには完璧でした」と説明している。

 

      

  (製作者サバティーニ、監督、シルバ役のニコラス・サラテ、マラガFFフォトコール)

 

    

ニコラス・サラテが演じた主人公のホルヘ・シルバは実在した人物で当時37歳、独裁政権下で自身も投獄されている。釈放後家族、特に大学教師の妻ロサの身の安全のためイギリスに亡命、ピノチェト亡き後もチリに戻らず、20248月ロンドンで没した。監督によると録画を始める2ヵ月前だったと「エル・パイス」のインタビューに語っている。シルバの役目は、転覆したアジェンデ政権を支持したことで逮捕された人たちの尋問から始まって、処刑場になったチリ・スタジアムに移送するまで監禁することだった。因みにフォルクローレのシンガーソングライターのビクトル・ハラがギターを奏でる両手を打ち砕かれ、顔を切り裂かれて銃殺された場所がこのスタジアムでした。

 

    

  (当時37歳だったホルヘ・シルバ空軍大尉に扮したニコラス・サラテ、フレームから)

 

 

        フェルナンド・ビジャグランの Disparen a la bandada

 

★監督が触発されたというDisparen a la bandada: Cronica secreta de los crímenes en la FACH contra Bachelet y otros(プラネタ社、2002年刊) の著者フェルナンド・ビジャグラン(サンティアゴ1949)は、チリの作家、ジャーナリスト、経済学者、ドキュメンタリー製作者、コラムニスト。チリ大学で経済学、サンティアゴ大学でジャーナリズムを専攻、1983年から1995年まで政治誌「Apsi」の副編集長としてチリの民主化移行期の独立系ジャーナリズムに貢献した。1996年からはテレビの文化番組の司会者として活躍している。チリの政治史をジャーナリズムの厳密な手法で検証し、特に軍事独裁政権の弾圧メカニズム、関連する歴史的人物にフォーカスした書籍を多数出版している。本作の土台となった Disparen a la bandada は、翌年文学部門のアルタソル賞を受賞した。1973年のクーデタに反対したチリ空軍(FACH)の将軍や士官に加えられた弾圧や拷問は数十年にわたって隠蔽されてきた。本書はその記録にビジャグラン自身の個人的な体験も活用して事実を明らかにしている。

 

       

 (フェルナンド・ビジャグラン)

   

        

(アルタソル文学賞受賞の Disparen a la bandada 表紙)

 

★個人的な体験とは、当時20代前半であったビジャグランは、彼の友人フェリペ・アグエロと共に「赤い格納庫」と命名された場所に運ばれてきた逮捕者の一人だった。二人は即決死刑の運命にあったが、FACH 職員が阻止してくれたことを回想している(本作のキャスト欄に二人もクレジットされている)。副題にある Bachelet とは、アルベルト・バチェレ空軍准将(192374、獄死)で、ピノチェトのクーデタに反対したためクーデタ当日に逮捕された。その後釈放と自宅監禁、逮捕が繰り返され、1218日に「反逆罪」で裁かれ、翌1974312日、サンティアゴの刑務所での拷問中に心臓発作で亡くなった。シルバ大尉はバチェレの最期を看取った人物としても知られています。第33代(200610)と第35代(201418)の2期、チリ初の女性大統領を務めたミシェル・バチェレの実父である。

 

★サジャト監督は、本作の準備中にビジャグランとアグエロと昼食を摂りながら、ホルヘ・シルバの行為は「小さなことに思えるけれど、本当に勇気ある行為だ。彼のお蔭で命を繋げることができ、希望を与えてくれた」と、二人を見やりながら語っている。

 

★その他、ビジャグランの代表作として、La muerte de Pinochet: Cronica de un delirio2003、マルセロ・メンドーサとの共著)、Represión en dictadura: El papel de los civiles2005)、他にイグナシオ・アグエロがアルタソル監督賞を受賞した「El diario de Agustín」(08)の脚本と製作を手掛けている。ニクソン、キッシンジャー時代に米CIAから資金提供を受け、ピノチェト政権下で行われた人権侵害を隠蔽しようとしたチリ最大の日刊紙「エル・メルクリオ」の内情を暴露している。 Agustínとは「エル・メルクリオ」の所有者アグスティン・エドワーズである。アーカイブ映像でアグスティン自身の他、アジェンダやピノチェト、リカルド・ラゴス、各大統領も登場するドキュメンタリー。

 

         

              (ドキュメンタリー「El diario de Agustín」のポスター)

 

キャスト紹介ニコラス・サラテ Nicolás Zárate 映画テレビ俳優、ミュージシャン、1997TVシリーズ出演でスタートを切る。2015年のアレハンドロ・トーレスのスリラー「El TilaFragmentos de un Psicópata」で実在したレイプ犯エル・ティラを演じている(カルーチェ賞ノミネート)。シモン・バルガスの「Sobre los muertos」(18)主演、セバスティアン・ムニョスがベネチア映画祭「国際批評家週間」でクィア獅子賞を受賞した話題作「Principe」(19)、ホルヘ・リケルメ・セラーノのサスペンスAlgunas Bestias」(19)では、アルフレッド・カストロやパウリナ・ガルシアと共演している。老いと健康問題と格闘する夫婦を演じたイグナシオ・パベスの「Vieja Viejo」(22)、パオロ・ペスセがモノクロで撮ったデビュー作「La Soledad De Las Plagas」(23)に主演している。

Caleuche カルーチェはマプチェ語(先住民マプチェ族の言語)に由来している。諸説あるが、チリ南部のチロエ神話に出てくる幽霊船・魔法船から採られた演技賞。チリ映画ではよく目にする賞の一つ。

   


      (実在したサイコパス「エル・ティラ」を演じたニコラス・サラテ)

 

  

   (ホルヘ・シルバ空軍大尉を演じて銀のビスナガ主演男優賞を受賞したサラテ)

 

★本作に関連する作品として、フェリペ・カルモナのサスペンス「Penal Cordillera / Prison in the Andes」(23)出演がある。ピノチェト政権下での拷問者5人が、アンデス山脈の麓にある〈高級〉刑務所で服役している。彼らはテレビのインタビュー後に通常の刑務所に移送されることを怖れ、留まるためにあらゆる手段を尽くす。カルモナ監督がケララ映画祭でFIPRESCI賞を受賞した作品。当ブログで紹介したマイテ・アルベルディの『イン・ハー・プレイス』にも出演しているが未紹介、ヤーン大佐役のマルシアル・タグレは判事を演じていた。

     

       

       (44回ウルグアイ映画祭俳優賞特別メンションを受賞したサラテ

   

マルシアル・タグレは、パブロ・ララインの「ピノチェト三部作」から出演しているラライン常連の一人、やはりピノチェトをテーマにした『伯爵』(23)にも出演している他、セバスティアン・レリオの『グロリアの青春』、『ナチュラルウーマン』、東京国際映画祭で上映されたマヌエラ・マルテッリのデビュー作『1976年』、最近ではベレン・フネスの「Los Tortuga」などスペイン映画にも活躍の場を広げている。当ブログで作品紹介をしています。

             

     

    (ニコラス・サラテ、上司ヤーン大佐役のマルシアル・タグレ、フレームから)


マルタ・マトゥテのデビュー作が金のビスナガ作品賞*マラガ映画祭2026 ⑦2026年04月11日 11:41

        金のビスナガは若手監督マルタ・マトゥテのデビュー作が受賞

 

        

 

★マラガ映画祭のセクション・オフィシアルは、スペイン映画とイベロアメリカ映画の2本立て、前者の最高賞「金のビスナガ」作品賞は新人監督マルタ・マトゥテのデビュー作「Yo no moriré de amor」が受賞、後者はメキシコのホアキン・デル・パソの「El jardín que soñamos」の手に渡りました。先ず前者の作品紹介から始めます。脚本にマトゥテ監督自身が投影されているという主役を演じたフリア・マスコルトが銀のビスナガ主演女優賞、父親役のトマス・デル・エスタルが銀のビスナガ助演男優賞を受賞しています。昨年もエバ・リベルタードのデビュー作「Sorda」が受賞して女性監督の活躍を印象づけた。本作は『幸せの、忘れもの』という邦題でゴールデンウイークに劇場公開されます。相変わらず陳腐なタイトルですが、何とかなりませんかね。

 

 Yo no moriré de amor / I Wont Die for Love

製作:Elastica Films(スペイン)/ Solita Films(同)/ Saga Film(ベルギー)

   協賛:ICAA / RTVE / Movistar Plus+ / Ayuntamiento de Madrid / Filmin /

       Comunidad de Madrid 

監督・脚本:マルタ・マトゥテ

撮影:サラ・ガジェゴ・グラウ

編集:カルロス・カニャス・カレイラ

音楽:シモン・フランケ

美術:ロシオ・ペーニャ

キャスティング:マリア・ロドリゴ

衣装デザイン:エステル・ルカス・ハケティ Jaqueti

メイクアップ&ヘアー:アンネ・モラリス、サンドラ・オブリエン

製作者:マリア・サモラ(Elastica Films)、ホセ・エステバン・アレンダ、セサル・エステバン・アレンダ(Solita Films)、(エグゼクティブ)セシリア・リバス、フラビア・ビウルン(Saga Film

 

データ:製作国スペイン=ベルギー、2026年、スペイン語、ドラマ、94分、撮影地:マドリード自治州バルデモロ(監督の故郷)、公開スペイン202658

映画祭・受賞歴;第29回マラガ映画祭セクション・オフィシアル作品、金のビスナガ作品賞、銀のビスナガ助演女優賞(フリア・マスコルト)、助演男優賞(トマス・デル・エスタル)受賞、フェロス賞プエルタ・オスクラ2026受賞(AICEスペイン映画ジャーナリスト協会メンバーが選ぶ賞)

 

キャスト:フリア・マスコルト(クラウディア)、ソニア・アルマルチャ(母親)、トマス・デル・エスタル(父親)、ラウラ・ワイスマー、ギジェルモ・ベネト、フラン・カントス(ペペ)、レティシア・エタラ、マルク・ドミンゴ(アルベルト)、ダニエル・ゲーロ、ホルヘ・バサンタ、ロレア・インチャウスティ(レイレ)、他

 

ストーリー18歳になるクラウディアの物語、母親のアルツハイマー病が静かな嵐のように押し寄せ、長らく断絶していた家族の役割を定義し直す必要に迫られている。クラウディアは早めに始まった介護で彼女の青春は息ができない。介護する義務と同世代の他の女性のように青春を謳歌したい願望のはざまで引き裂かれている。この目の前の現実を生きる方法を探し始めるが、それは家族全員の絆を変えることになるだろう。愛、独立、道義心、義務と願望の葛藤についての物語。

 

      

    (左から、トマス・デル・エスタル、フリア・マスコルト、マトゥテ監督、

 ソニア・アルマルチャ、ラウラ・ワイスマー、マラガFF311日、フォトコール)

 

監督紹介マルタ・マトゥテ Marta Matute García1988年マドリード自治州バルデモロ生れ、監督、脚本家、女優、撮影監督。2011年、マドリード・コンプルテンセ大学視聴覚コミュニケーション卒、ウィリアム・レイトン劇場ラボラトリーで演劇芸術の学位を取得する。女優として短編映画に出演。ゴン・ラモスやエバ・ミルなどの演出で舞台にも立っている他、パウラ・アモールやハビエル・ヒネルの演出助手も手掛けており、独立系の映画のフィルム編集者でもある。

*フィルモグラフィー

2016Zong」短編、監督ボルハ・エチェベリア、女優出演

2017Grasse Matinée」短編、監督イバン・アルティレス、女優出演

2023Una amiga」短編、監督、脚本

2024Xiao Wei」短編、監督Jiajie Yu Yan、脚本共同執筆・女優出演

2026Yo no moriré de amor」長編デビュー作、監督、脚本

 

  

   

 (短編Una amiga」のポスター) 

 

★金のビスナガ作品賞の「Yo no moriré de amor」は、2020年スペイン映画アカデミーのレジデンシアに選ばれる。2021年に第18回「フリオ・アレハンドロ長編脚本SGAE」を受賞、Ventana CineMadVentana Sur、などのワークショップに参加して制作した。アルツハイマー型認知症になった母親を10年間にわたって介護した家族や監督自身が投影されている。同世代のカルラ・シモンやベレン・フネス、ピラール・パロメロの作品からも着想を得ていると語っている。本格的な評価はこれからですが、将来が有望視されている。

フリオ・アレハンドラ(ウエスカ1906~デニア1995)は、スペイン、メキシコ、アルゼンチン映画の脚本家、ルイス・ブニュエルの『ビリディアナ』(61)や『哀しみのトリスターナ』(70)の脚本を監督と共同執筆している。SGAE Sociedad Genaral de Autores y Editoresは、1995年設立された著作権管理団体でスペイン著者出版社協会。

 

    

       (フリオ・アレハンドロ長編脚本SGAE賞のトロフィを掲げる監督)

 

キャスト紹介フリア・マスコルトJulia Mascort、バルセロナ出身の映画・舞台女優、歌手、楽器はギターとチェロ。ラウラ・オブラドールズの短編単独デビュー作「Las chicas/The Girls」(2416分、スペイン語)、クリスティアン・アビレスの「La herida luminosa」(2223分、スペイン語)出演の他、カタルーニャTVシリーズ「Com si fos ahir/With That Same Look」(20228話出演)、「Un nuevo amanecer」(20242話出演)、長編出演は今回が初、主役も女優賞も初のようです。カタルーニャ語、スペイン語のバイリンガル、英語もできる。マラガではスペイン語でインタビューを受けていた。

   

     

          (銀のビスナガ主演女優賞受賞、マラガFFガラ)

 

トマス・デル・エスタル Tomás del Estal1967年サラマンカ生れ、俳優。TVシリーズ出演でスタート、脇役専門とはいえ本数が3桁は多すぎる。コメディからホラー、社会派シリアスドラマと芸域は広いから、スペイン映画ファンなら必ず見覚えがあるでしょう。受賞歴は、今回の銀のビスナガ助演男優賞受賞が初、検索している管理人も驚いている。最近では、こんな映画に出演しています、2024『叫び』、2021『ウェイ・ダウン』、2018『誰もがそれを知っている』、2016『スモーク・アンド・ミラーズ』、同『ジュリエッタ』、2015『ヤシの木に降る雪』、2014『トガリネズミの巣穴』、2010BIUTIFUL ビューティフル』、同『ペーパーバード 幸せは翼にのって』など、当ブログでも作品紹介をしています。TVシリーズではシーズン2が始まった『ガリシアン・ギャング』、『鉄の手』などがNetflixで配信されている。

   

  

        (銀のビスナガ助演男優賞受賞、マラガFFガラ)

 

★アルツハイマー認知症の母親を演じたソニア・アルマルチャ(アリカンテ州ピノソ1972)は、バレンシアの演劇芸術学校とウィリアム・レイトンで演技を学んだ。マラガ関連では、マラガFF2025の短編部門でポロ・メナルゲスの「Una vocal」で銀のビスナガ主演女優賞を受賞した。2020年ハビエル・マルコの「A la cara」で同じ短編部門の同賞を受賞している。この短編は2025年に同タイトルで長編化され、ロラ・ガオス賞の主演女優賞にノミネートされた。

  

       

             (母親とクラウディア、フレームから)

 

★ハイメ・ロサーレスがゴヤ賞2008作品賞と監督賞を受賞した『ソリチュード:孤独のかけら』に主役に抜擢され、物静かだが我が道を着々と準備する芯の強い女性を演じて、スペイン俳優組合新人女優賞を受賞しています。他2017年にエステバン・クレスポの『禁じられた二人』、パコ・プラサのホラー『エクリプス』、ロドリゴ・ソロゴジェンのスリラー「El reino」、フェルナンド・レオン・デ・アラノアのブラックコメディ「El buen patrón/The Good Boss」では、ゴヤ賞2022助演女優賞ノミネート、俳優組合女優賞などを受賞、ジョン・ガラーニョ&アイトル・アレギの「Marco」、クラウディア・ピントの「Las consecuencias」(21)、最近は主に映画出演にシフトしている。

『ソリチュード:孤独のかけら』の作品紹介は、コチラ20131108

Las consecuencias」の作品紹介は、コチラ20210701

El buen patrón」の作品紹介は、コチラ20210810

 

ラウラ・ワイスマー(ヴァイスマール)Laura Weissmahr1992年タリファ生れ、女優、製作者。バルセロナのエオリア高等演劇芸術学校で演技を学んだ後、イギリスのウエストミンスター大学で映画テレビ制作の学位を取得する。ドキュメンタリーを撮っている。エレナ・マルティン・ヒメノ監督の「Júlia Ist」(17)やダビ・ビクトリの「No matarás」(20)に出演、2024年にマル・コルのサスペンス「Salve María」主演して、ゴヤ賞2025新人女優賞ほか、ガウディ賞、フェロス賞、バジャドリード映画祭、サンジェルマン賞などを受賞して脚光を浴びた。これからの活躍を予感させる。

   

     

             (ゴヤ賞2025新人女優賞受賞のガラ)

  

★今秋の東京国際映画祭2026での上映を期待したいところです。


特別賞マラガ―スール賞にロッシ・デ・パルマ*マラガ映画祭2026 ③2026年03月19日 11:10

          特別賞の大賞マラガ―スール賞は女優のロッシ・デ・パルマ

 

     

 

★マラガ〈特別賞〉は、マラガ―スール賞を含めて、レトロスペクティブ賞、才能賞、リカルド・フランコ賞、ビスナガ・シウダ・デル・パライソ賞の5賞、それに栄誉賞を含めると6賞となります。今年は紹介が後手に回っておりますが一応アップしておきます。大賞のマラガ―スール賞の受賞者は地中海を眼下にした遊歩道アントニオ・バンデラス通りに手形入りの記念碑を建ててもらえます。マラガ生れのバンデラスはマラガの〈名誉市民〉で、映画祭にも資金を提供しています。今回建ててもらえるのは、スペインの女優ロッシ・デ・パルマです。


★ビスナガ栄誉賞にはウルグアイの女優で歌手のナタリア・オレイロが選ばれ、313日に感動的な授与式がありました。今回は他に、アルゼンチンのマリアノ・コーンガストン・ドゥプラットの監督デュオ、昨年12月に死去したヒホン、セビリア、バジャドリードなど各映画祭のディレクターを歴任したホセ・ルイス・シエンフエゴスを偲んでオマージュが捧げられました。今回は数が多いので、先ず特別賞5賞を駆け足でアウトラインをアップしておきます。

 

             マラガ映画祭2026特別賞

 

マラガ―スール賞(スール紙とのコラボ)

ロッシ・デ・パルマ(パルマ・デ・マジョルカ1964)、スペインの女優、モデル、歌手と多才。アルモドバルに映画出演を口説かれてデビューしたのが『欲望の法則』、以来アルモドバルのミューズの一人、『キカ』と『私の秘密の花』でゴヤ賞にノミネートされている。スペイン映画だけでなく、英語、フランス語、カタルーニャ語に堪能で、ロバート・アルトマン、パトリス・ルコンテ、テリー・ギリアム、カリム・ドリディなど国際的に著名な監督のもとで仕事をしており、ドリディの「Hors Jeu」の演技により、ロカルノ映画祭1998特別女優賞を受賞している。他にアマンダ・スターズの英仏西語が飛びかう『マダムのおかしな晩餐会』主演で、フロリダ州のガスパリラ映画祭2017国際演技賞を受賞している。本作については当ブログにアップしています。

 

    

★授与式は37日、ペドロ・アギレラの「Día de caza」(25)が上映されました。本作はカルロス・サウラの名作と言われる「La caza」(65)の女性版、カルメン・マチ、ブランカ・ポルティージョなど豪華キャスト、公開を期待しています。部分的にキャリア紹介しておりますが、追って授与式の模様も交えてキャリア&フィルモグラフィーの紹介記事を予定しています。

   

      

   (自身の手形に手を添える受賞者、バンデラス通りに建てられた記念碑、37日)

 

 

レトロスペクティブ賞-マラガ・オイ(マラガ・オイ紙とのコラボ)

フランシスコ・ロンバルディ(ペルーの監督、タクナ1949)、アルゼンチンのサンタフェ映画学校で学ぶ。長編デビュー作「Muerte al amanecer」(76)が海外で注目され、ロカルノ映画祭1997エキュメニカル審査員賞スペシャル・メンションを受賞、ハバナやカルタヘナの映画際で上映された。代表作はマリオ・バルガス⋍リョサの同名小説を映画化した『都会と犬達』が、カンヌ映画祭1985併催の「監督週間」にノミネート、サンセバスチャン映画祭では銀貝監督賞を受賞した。ほか『ライオンの棲みか』(88)、『豚と天国』はモントリオール映画祭1990アメリカ部門のグランプリを受賞した。本祭で「El corazón del lobo」(25)がノミネートされているので、新作紹介を兼ねて別途にアップを予定しています。

キャリア&フィルモグラフィーと新作紹介は、コチラ⇒2026年05月07日

 

     

312日、セルバンテス劇場にて、授与式進行役は女優のエリサ・スルエタ、受賞者は友人や仲間に囲まれて、ラテンアメリカ映画について語りました。ラテンアメリカ諸国とのコラボを推進する製作者のヘラルド・エレーロ、代表作の『ライオンの棲みか』や『豚と天国』をプロデュースした。同プロデューサーのマリエラ・ベスイエフスキー、ペルーとの合作映画「No se lo digas a nadie」や「Tinta roja」に主演したスペイン女優ルシア・ヒメネス、新作の撮影監督テオ・デルガド、同じく新作の製作者グスタボ・サンチェスが登壇しました。受賞者は最後に自身を支えてくれた家族に感謝しました。  

 

      

          

        (受賞スピーチするレトロスペクティブ賞受賞者、312

 

 

マラガ才能賞-マラガ・オピニオン(マラガ・オピニオン紙とのコラボ)

アラウダ・ルイス・デ・アスア(バラカルド1978)、スペインの監督、脚本家。デウスト大学では英文学を専攻、映画はマドリード映画学校 ECAM で学んだ。長編デビュー作「Cinco lobitos」はベルリン映画祭2022パノラマ部門にノミネート、続くマラガ映画祭セクション・オフィシアルでいきなり金のビスナガ作品賞ほか7冠の快挙、第2作はロマンティック・コメディが『だから、君なんだ』の邦題でNetflixで配信されている。3作目「Los domingos」がゴヤ賞ほか受賞ラッシュとなり、当ブログでも度々登場させていますから割愛しますが、TVシリーズ「Querer」(244話)も受賞歴を誇り、既に文化省が選考母体の「金のメダル芸術功労賞」を受賞しており、目が離せない。

Cinco lobitos」の作品紹介は、コチラ20220514同年1213

Los domingos」の作品とキャリア紹介記事は、コチラ20250727

Querer」の紹介記事は、コチラ20241009

   

    

★授与式は38日、セルバンテス劇場にて、進行役の女優ノエミ・ルイスが務め、映画仲間や友人たちが駆けつけました。ECAMで知り合ったというフィルム編集者のアンドレス・ジル、脚本家のエドゥアルド・ソラ、「Cinco lobitos」の主役を演じたライア・コスタ、「Querer」や「Los domingos」でタッグを組んだナゴレ・アランブル、それぞれゴヤ賞、フォルケ賞、フェロス賞の受賞者たち、思い思いに受賞者の豊かな力量と魅力、ほかの人を魔法にかけて巻き込んでしまう稀有な才能について語り、才能賞受賞が相応しいシネアストであることを印象づけました。

 

 


          (受賞スピーチをするルイス・デ・アスア、38日)

 

 

リカルド・フランコ賞(スペイン映画アカデミーとのコラボ)

マヌエラ・オコン・アブルト(ウエルバ1973、製作者)、スペインでもっとも確固たる、かつ認知度の高い映画製作者の一人、1996年以来およそ30年に及ぶキャリアの持ち主である。複雑なプロジェクトを運営する映画製作者としてプロフェッショナルな地位を築いてきている。20作以上の長編、テレビ・シリーズなど、カテゴリーを問わず手掛けている。カルロス・サウラ(98、『ボルドーのゴヤ』)やフェルナンド・フェルナン=ゴメス(99、「Lazaro de Tormes」)のような主要な監督のもとでスタートした後、アルベルト・ロドリゲスとの出合いが決定的、さらにマテオ・ヒル(99、『パズル』)、サンティアゴ・アモデオ(05、「Cabeza de perro」)、アナ・ロサ・ディエゴ、パコ・バニョスといった監督たちと結びつき、同時代の製作者の視点からアンダルシア及びスペイン映画の展望を再生することに貢献しています。

  

   

★主な受賞歴:2015ACECANホセフィナ・モリーナ賞2016年、実在のスパイを主人公にしたアルベルト・ロドリゲスの『スモーク・アンド・ミラーズ』でACECANプロダクション賞、ウエルバ・イベロアメリカFFライト賞、同監督の「Modelo 77」でゴヤ賞2023プロダクション賞、アンダルシア映画アカデミーのカルメン賞を受賞しています。ほかノミネートは多数あり、なかでもロドリゲスのフィルム・ノワール『グループ 7』でゴヤ賞2013、公開された『マーシュランド』もゴヤ賞2014でノミネートされています、「La Peste」(171912話)などTVシリーズも手掛けています。作品紹介は、ロドリゲス監督のフィルモグラフィーで紹介しています。

『マーシュランド』の紹介記事は、コチラ20150124

『スモーク・アンド・ミラーズ』の紹介記事は、コチラ⇒20160924

 

★授与式は310日、アカデミー会長フェルナンド・メンデス=レイテがプレゼンター、監督アルベルト・ロドリゲス、製作者ベレン・サンチェス、ゲルバシオ・イグレシアス、キャスティング監督エバ・レイラ・イ・ヨランダ・セラノなどが登壇した。

 

 

     

                                                (授与式、310日)

 

 

ビスナガ・シウダ・デル・パライソ賞

ビクトリア・ベラ(マドリード1953)、映画、舞台、テレビ女優。4歳でクラシック・バレエを学び始め、当時マドリードを拠点にしていたデンマークのバレリーナで教師でもあったカレン・タフトのバレエ学校やコペンハーゲン歌劇場の演出家レイフ・オルベングのもとで技術を学んだ。13歳からウィリアム・レイトンやミゲル・ナロスの学校でスタニスラフスキー・メソッドを学び、ブレヒトの『第三帝国の恐怖と悲惨』で舞台デビュー、マガジャネス小劇場で活躍する。『アンネの日記』の主役に抜擢され、これが本格的なキャリアの始りとなった。

   

      

           (エレガントで誠実な女優ビクトリア・ベラ)

 

★映画デビューは、TVシリーズに出演していた70年代初め、ペドロ・マッソの「Las adolescentes」(76)で女学生役で主演、『新・青い体験』で公開されている。ほかにセバスティアン・ダルボの「Acosada」(85)やハビエル・アギレの「La diputada」(88)に主演する。代表作は、『黄昏の恋』でスペイン初のオスカー監督となったホセ・ルイス・ガルシが、アカデミー賞ノミネート3回目となる「Asignatura aprobada」(87)、ベルリン映画祭1989に出品されたフランシスコ・ロドリゲス・フェルナンデスのサスペンス「Testigo azul」などに主演している。米、イタリア、メキシコなどの合作映画に出演していることもあって、アンソニー・クイン、ピーター・フォンダ(G・ニコラス・ハエックの『ファミリー・エキスプレス』90BS放映)、アリス・クーパー(クライド・アンダーソンのホラー『モンスター・ドッグ』86、ビデオ)などと共演している。

 

TVシリーズでは、ブラスコ・イバニェスの小説をベースにした人気ドラマ「Cañas y barro」(786話)でブレイクし、金のテレプログラマを受賞した。「El jardín de Venus」(834話、助演)、「Ninette y un señor de Murcia」(848話、主演)、イタリアのQuattro piccole donne」(90)など海外のTVシリーズにも出演、さらに自身の作品「Dame un beso」を監督、プロデュースしている。舞台女優としては、ギリシャ悲劇から前衛派のファスビンダーまで幅広く、オスカー・ワイルド、スペインの劇作家バジェ=インクラン、ベニート・ペレス・ガルドス、ミゲル・ミウラなどの作品に出演しています。優雅さと誠実さを兼ねそなえ、フランコ体制が終焉した民主主義移行期に活躍した〈移行期のミューズ〉と称され、映画と舞台を支配した女優です。

  

      

     

            (セルバンテス劇場での授与式、39日)

 

★授与式は、39日、セルバンテス劇場にて、アリシア・ロマイ(ジャーナリスト)、セバスティアン・ダルボ(監督)、マヌエル・フランシスコ・レイナ作家が登壇しました。受賞者は国際的な映画に主演できたこと、撮影中に出会った俳優アンソニー・クインの優しさを称賛した。「疲労困憊しているときにみんなをチェスに誘って、自分の人生やフェリーニの映画について語ってくれ、とても素晴らしい友情を示してくれた」と回想した。またアリシア・ロマイは「大女優というだけでなく、自由で本物の女性でもあるベラを今宵祝えることが重要です」とスピーチした。受賞者は「パライソの都市マラガにいる幸せを感謝する」とスピーチを締めくくった。

 

ジェマ・ブラスコの「La furia」*ゴヤ賞2026 ⑦2026年02月25日 14:54

        深い闇を描くジェマ・ブラスコのデビュー作「La furia

 

     

 

★第40回ゴヤ賞2026新人監督賞ジェマ・ブラスコ)と主演女優賞アンヘラ・セルバンテス)の2カテゴリーにノミネートされている「La furia」は、スペインでは第28回マラガ映画祭2025でプレミアされました。長編劇映画デビュー作、タイトルが「激怒」と穏やかでない。年越しのパーティでレイプされた若い舞台女優の恥辱と復讐に燃える心の闇が物語られるが、レイプ復讐映画ではなさそうです。マラガでは主役アレックスを演じたアンヘラ・セルバンテスの圧倒的なパフォーマンスが脚光を浴びました。

   

          

         (インタビューを受ける監督、マラガ映画祭2025にて

   

     

   (アレックス・モネル、監督、アンヘラ・セルバンテス、マラガFFフォトコール)

 

 「La furia / The Fury

製作:Ringo Media / Aragon TV / Filmin / ICEC / ICAA / RTVE

監督:ジェマ・ブラスコ

脚本:ジェマ・ブラスコ、エバ・パウマ

音楽:ジョナ・ハマン

撮影:ネウス・オレ

編集:ディダック・パロウ、トマス・ロペス

キャスティング:イレネ・ロケ

プロダクションデザイン&美術:アンナ・アウケル

衣装デザイン:エステル・パラウダリエス

メイクアップ&ヘアー:ダナエ・ガテル、アレ・サルバット

製作者:ミレイア・グラエル・ビバンコス

 

データ:製作国スペイン、2025年、カタルーニャ語・スペイン語、ドラマ、107分、撮影地バルセロナ、アラゴン州テルエル(トレベリーリャ村)、配給元フィルマックス(スペイン)、公開スペイン2025328

映画祭・受賞歴SXSWサウス・バイ・サウスウエスト映画祭2025ワールドプレミア、マラガ映画祭2025セクション・オフィシアル、銀のビスナガ主演女優賞(アンヘラ・セルバンテス)、助演男優賞(アレックス・モネル)、編集賞(ディダック・パロウ、トマス・ロペス)、マイアミ映画祭初監督賞ノミネート、DA映画祭(バルセロナ)オープニング作品、インド映画祭、第31回フォルケ賞2025女優賞ノミネート。以下2026年、シネマ・ライターズ・サークル賞新人監督賞ノミネート、スペイン俳優組合賞(アンヘラ・セルバンテス)、フェロス賞主演女優賞ノミネート、ガウディ賞新人監督賞主演女優賞受賞、助演女優賞(カルラ・リナレス)・助演男優賞・オリジナル脚本賞ノミネート、ディアス・デ・シネ賞作品賞・女優賞(アンヘラ・セルバンテス)受賞、ヒホン映画祭、他

 

キャスト:アンヘラ・セルバンテス(アレックス/アレクサンドラ)、アレックス・モネル(兄アドリアン)、エリ・イランソ(母エレナ)、カルラ・リナレス(フリア)、サリム・ダプリンセ(サミル)、アナ・トレント(舞台演出家)、ジュディット・コルティナ(フリア)、パウ・エスコバル(ダビ)、ビクトリア・リベロ、他多数

 

ストーリー:舞台女優のアレックスは、年越しのパーティでレイプされる。彼女は兄アドリアンに救いを求めますが、彼は妹を守れなかった怒りで苦しみます。1年間のあいだアレックスは兄や友人と距離をおき嫌悪感と恥辱のなかで孤立して生きていく。アドリアンは怒りに沈潜し、アレックスが必要としているものから遠く離れて、次第に闇のなかに堕ちていく。一方アレックスにとって痛みと激怒を追い払うための唯一の方法は、舞台で演じる復讐心に燃えるメディアの人格に自分を託して体現することだった。『メディア』はエウリピデスによって書かれた神話に基づくギリシャ悲劇だが、ここでは性的暴力が引き起こした兄妹の現代悲劇が語られる。

   

       

 

            (アレックスと兄アドリアン、フレームから)

  

    

        「語りたくてたまらないテーマ」とブラスコ監督

 

監督紹介ジェマ(ジェンマ)・ブラスコ Gemma Blasco1993年バルセロナ生れ、監督、脚本家。2014年バルセロナ映画学校Bande à Partを卒業。短編映画、広告、舞台の映像化を手掛けている。8ミリ、16ミリ、デジタル、ミニDVなど異なったフォーマットの経験を重ね「バルセロナでアッバス・キアロスタミと一緒に撮る」というワークショップにも参加している。2013年、キャストが盲人の女性と聾啞者の男性という設定の短編「Matices」を撮る。続いて2015年の「Formas de jugar」がカタルーニャ映画祭「新しい展望」部門短編賞を受賞する。2017年、「Jauría」製作の資金援助をICAAより受け、マラガ映画祭2018短編部門のセクション・オフィシアルにノミネートされる。その後、シッチェス、マドリード、アルシネ、ヒホン、アルメリア、アミアン、ボゴショートなど国内外の国際映画祭巡りをし、翌年のゴヤ賞短編映画賞のプレセレクションやガウディ賞にノミネートされている。

        

           

★長編「El zoo」がヒホン映画祭2018で上映される。若い俳優のグループが舞台でリアリティショーを演じている。現実と架空の境界では一人しか留まることができない、登場人物たちは互いに食べつくしていくという実験映画のようです。

 

★フィクションとしてはデビュー作になる長編2作めが2018年から着手していた本作「La furia」で、自身の体験がミックスされている。監督によると、この映画は未だ映画を学びはじめる前の「18歳のとき自分の身に起きた街路での性的暴力の体験から生まれました。私が創作した復讐の映画です。居場所を奪われた犠牲者がどんな痛みを抱え、何が必要で、何を望んでいるかについて、もう語りたくてたまらない」とインタビューに応えている。キューバのサンアントニオ・デ・ロス・バニョスの映画テレビ学校で「登場人物の構成」というセミナーに参加してテーマの細分化をした。その後、マジョルカ・タレント・ラボ(Filmin)、トリノ・フィルム・ラボ、2021年カンヌのシネフォンダシオン最終候補者になった。さらにスペイン女性映画製作者協会CIMAの新企画に選ばれるなどした。撮影地の一つアラゴン州テルエルのトレベリーリャは、父方の家族が住んでいる由。厳しい誠実さで難しいテーマに取りくみ、観客にとっては座り心地は決して良くないが、現実の本質的なことを突きつけている。今回のゴヤ賞ノミネートは〈新人監督賞〉枠ですが、キャリア的には新人とは言えません。

  

         

         (撮影中のブラスコ監督、セルバンテス、モネール)

 

*フィルモグラフィー

2013Matices3分、監督、脚本、スペイン語・英語、トレス・コートFFモンディアレ賞受賞

2015Formas de jugar」短編、監督、脚本、スペイン語

2017La mujer del escaparate」短編、ファンタジア、スペイン語、監督、脚本

2018Jauría」短編19分、スペイン語、監督、脚本(マルタ・フォント共同執筆)

   マラガFF短編部門上映、

2018El zoo」長編デビュー作、実験映画、96分、スペイン語、監督

   ヒホン映画祭、ラスパルマス映画祭、DA映画祭上映

2025La furia」長編劇映画(割愛)

 

キャスト紹介

アンヘラ・セルバンテス Angela Cervantes Sorribas1993年バルセロナ生れ、女優、アルバロ・セルバンテスは実兄、「Sorda」でゴヤ賞助演男優賞にノミネートされており、兄妹受賞が期待されている。カタルーニャTVシリーズ出演でスタート、長編デビューは、カロル・ロドリゲス・コラスのコメディドラマ「Chavalas / Girlfreinds」(21)でバルのオーナーに扮し、ゴヤ賞2022新人賞にノミネート、ガウディ賞を受賞した。ピラール・パロメロの「La maternal / Motherhood」(22)で、14歳で出産することになった娘の若い母親役を演じ、ゴヤ賞・フェロス賞助演女優賞ノミネート、ガウディ賞受賞。ジョルディ・ヌニェスの「Valenciana」(24)出演など。

 

  

    (揃ってゴヤ賞にノミネートされているセルバンテス兄妹、2026223日)

    

本作「La furia」について、ジェマ監督とは演劇学校時代に出会い、当時から映画化を語り合ってきたから、「最初から、脚本の最初のバージョンから、既に読んでいた」とRTVEのインタビューで語っている。マラガ映画祭2025銀のビスナガ女優賞受賞、フォルケ賞ノミネート、ガウディ賞2026主演女優賞受賞、フェロス賞ノミネート、ゴヤ賞と俳優組合賞は結果待ち。同じ年のマラガ映画祭で上映されたガラ・グラシアの「Lo que queda de ti」(25、西=伊=葡)にも主演、最新作は、間もなく始まるマラガ映画祭2026で上映されるダビ・セラーノのラップランドを舞台にしたコメディ「Lapönia」に主演している、ブレイクスルー(ブレイクアウトロー)の演技者として今後が期待できる女優の一人。

      

      

          

                     (La furia」のフレームから

    

       

          (ガウディ賞のトロフィーを手にしたアンヘラ、2026年2月8日授賞式)

                

アレックス・モネール Alex Mpnner19951月バルセロナ生れ、既に短編、TVシリーズを含めると50作以上に出演している。TVシリーズ「Polseres vermelles」(20111328話、カタルーニャTV)でフォトグラマス・デ・プラタ主演男優賞を受賞する。2012年、パコ・プラサの『RECレック3ジェネシス』で長編映画デビュー、同年パトリシア・フェレイラの「Els nens salvatges / Los niños salvajes」で注目され、マラガ映画祭2012助演男優賞・ガウディ賞2013主演男優賞・トゥリア賞2013新人賞受賞など受賞、ゴヤ賞新人男優賞にもノミネートされた。

 

    

当ブログ紹介作品には、2014年のベレン・マティアスの「Marsella」、2016年、イサ・カンポ&イサキ・ラクエスタの「La propera pell / La proxima piel」でフォルケ賞とフェロス賞2017の主演男優賞にノミネート、『記憶の行方』の邦題でネットフリックスが配信した。2019年、ベレン・フネスの「La hija de un ladrón」、マラガ映画祭2021でセクン・デ・ラ・ロサが監督デビューした「El Cover」、マルセル・バレナの実話に基づいた「Mediterraneo」(21、『地中海のライフガードたち』)は、難民映画祭2022オンラインで配信されている。ペドロ・マルティン=カレロの心理ホラー「El llanto」(24『叫び』)など、多くの問題作に出演している。

  

  

      (RTVEのインタビューを受けるアレックスとアンヘラ、202441

  

作品紹介はしていないが、ルイス・キレスの密室サスペンス「Bajocero」(21、邦題『薄氷』)、日本で人気の高いダニエル・カルパルソルのアクション映画「Centauro」(22、『ケンタウロス』)などがNetflixで配信されている。2022年から始まっているTVシリーズ「La ruta」(14話)で主役を演じている。1996年バレアレス諸島のイビサ島が舞台、フランコ時代を生きた父親世代との断絶のなかで、居場所探しをする若者5人の軌跡を描いている。


マルタ・フェルナンデス・ムロに第13回フェロス賞2026栄誉賞2026年01月28日 11:41

     演劇、映画、テレビ女優、作家でもあるマルタ・フェルナンデス・ムロ

 

               

 

★昨年1117日、スペイン映画ジャーナリスト協会(AICE)は、第13回フェロス賞2026栄誉賞に女優のマルタ・フェルナンデス・ムロ授賞を発表しました。「80年代のスペイン映画界の重要な顔であり、コメディ役を超えた深みのある演技者に授与することにした」が授賞理由。若い人たちにはTVシリーズ「Poquita Fe」(シーズン2)のラウル・シマス演じる主人公ホセ・ロマンの母親役でお馴染みですが、受賞者は映画、演劇、TVの女優として、ほぼ40年以上のキャリアの持主、また実業家でもあり、La cabeza a pájaros の著者でもある。

 

1950年マドリード生れ、フランコ政権終焉時には20代の半ばだったことになる。4人姉妹の末っ子、父親は化学者で娘たちが大学に行くことを望んだが、末娘だけは望まなかった。ビートルズの熱烈なファン、ビートルズが来西したときには、マドリードのバラハス空港に出掛けて行った。高校を卒業すると、ヨーロッパで2年間、パリでフランス語、その後ロンドンで英語を学び、秘書や翻訳家として働いていたが、20代半ばに女優になろうと決心、アルゼンチン独裁政権を逃れてスペインに亡命していたマルティン・アドジェミアンの演劇学校に入り演技を学んだ。


★その後ニューヨークに渡り、演劇学校 HBスタジオでドイツ出身の女優でもあった演技教師ウタ・ハーゲンに演技指導を受けている。他にハーゲンの生徒でもあったジュラルディン・ペイジからも教えを受けている。二人ともアメリカで最も尊敬される演技教師としてアメリカ演劇殿堂入りを果たしている。

   

    

            (イバン・スルエタの「Arrebato」から)

   

★映画デビューは、マルタの姉テレサの友人だったリカルド・フランコの「Los restos del naufragio」(77)だった。カンヌ映画祭1978のパルムドールにノミネートされ、監督自身も出演したほかフェルナンド・フェルナン=ゴメスやアンヘラ・モリーナと共演している。続いてフェルナンド・コロモの「¿ Qué hace una chica como tú en un sitio como éste ?」(78)で、人気上昇中のカルメン・マウラやアルゼンチン出身のベテラン俳優エクトル・アルテリオ、キティ・マンベルなどと共演、ハイメ・チャバリ監督がカメオ出演していた話題作。マウラもマンベルも既に女優としてのキャリアがあって、共演は「驚きの連続だった」と後に述懐している。その後、友人イバン・スルエタの「Arrebato」(79)、再びコロモの「La mano negra」(80)や「Estoy en crisis」(82)、スペインの批評家からは酷評されたが、米国では高評価、結果としてスペイン初のオスカー賞(外国語映画賞)を受賞した、ホセ・ルイス・ガルシの「Volver a empezar」(82『黄昏の恋』)に脇役だったが出演、つまりオスカー女優(!)でもある。

      

    

      (オスカー像を手にした受賞者、『欲望の法則』のフレームなど)

 

ペドロ・アルモドバル学校の女生徒の一人である受賞者は、「Laberinto de pasiones」(82、『セクシリア』95年公開)でイマノル・アリアスやセシリア・ロス、アルモドバル映画に初めて起用されたアントニオ・バンデラスなどと共演、フォトグラマス・デ・プラタ助演女優賞にノミネートされた。本作はサンセバスチャン映画祭にノミネートされている。続いて「La ley del deseo」(87、『欲望の法則』)では、エウセビオ・ポンセラ、再びカルメン・マウラ、加えてアントニオ・バンデラスと共演している。本作は東京で開催された「第2回スペイン映画祭1989」で上映された。

 

     

     (アントニオ・バンデラスとマルタ、アルモドバルの『欲望の法則』から)

  

     

     (セシリア・ロス、アルモドバル監督、マルタ、サンセバスチャンFF1982

 

★検閲も廃止された80年代のスペイン映画界は、政府の助成もあり良作が量産された時代でしたが、なかでも文芸路線にシフトしたことが当たった。ノーベル賞作家カミロ・ホセ・セラの同名小説 La colmena をマリオ・カムスが映画化(82『蜂の巣』)、1985年ヘスス・フェルナンデス・サントスの同名小説 Extramuros をミゲル・ピカソが映画化した折にも起用されている。脇役が多いなかで、ラモン・J・センデルの短編をベースにアルフレッド・カステリョンが映画化した「Las gallinas de Cervantes」(88)では、少々風変わりだったというセルバンテスの妻カタリーナに扮した。妻の変容振りに苦悩するセルバンテスの友人としてエル・グレコも登場する風刺劇。本作は日本スペイン協会50周年を記念したミニ映画祭2008で『カタリーナ』の邦題で上映されている。

 

      

     (カタリーナ役のマルタとセルバンテス役のミゲル・アンヘル・レリャン)

 

★1990年代には、いずれもコメディだがヘラルド・ベラの「Una mujer bajo la lluvia」(92)、スペインで最も愛された監督と言われる、ルイス・ガルシア・ベルランガの「Todos a la cárcel」(93)、ペドロ・コスタが50年代初めに起きた実話に着想をえて製作した犯罪ドラマ「El crimen del cine Oriente」(97)に出演している。またエルビラ・リンドの大ベストセラー小説『めがねっこマノリート』を映画化した、ミゲル・アルバラデホの「Manolito Gafotas」(99)では、マノリートの隣人役、本作は100万人以上が映画館に足を運んで、興行収入に大いに寄与した。脚本には作家も共同執筆者として参加している。

    

  

  (マリア・アスケリノ、マルタ・フェルナンデス・ムロ、『みんなのしあわせ』から

    

2000年に製作されたアレックス・デ・ラ・イグレシアの「La comunidad」は、大ヒットしたダークコメディ。『みんなのしあわせ』の邦題で公開され、デ・ラ・イグレシアの人気も急上昇した。主演のカルメン・マウラがゴヤ賞以下、スペイン映画賞を軒並み制覇したヒット作。トンネル崩落事故を生き延びた人々のその後が語られるぺポン・モンテロの「Los del túnel」(17)、若いときからの友人でもあるエミリオ・マルティネス=ラサロの政治コメディ「Un hipster en la España  vacía」にパコ・レオン、ベルタ・バスケス、マカレナ・ガルシアなど若手俳優と共演した。ダニエル・ガスコンの同名小説をベースにした笑劇。クーロ・ベラスケスのコメディ「Cuerpo escombro」(24)ではダニ・ロビラと共演している。

      

  

 (左から、マルタ、ロセル・ビラホサナ、ヌリア・メンシア、Los del túnel

 

★最近はTVシリーズ出演が多く、上記したように「Poquita Fe」(15話)では主人公ホセ・ロマンの母親役で出演、クリエーターはぺポン・モンテロ&フアン・マイダガン。アラセリ・アレバレス・デ・ソトマヨール他の「Sin gluten」(258話)に特別出演している。

      

     

         (ホセ・ロマン役のラウル・シマスと、「Poquita Fe」から)

 

★バルセロナの演劇界を牽引している舞台女優で演出家のヌリア・エスペルト(1935~)や故アドルフォ・マルシラック(マルシヤック、2002年没)など著名な演劇人と舞台に立っている。エドワード・オールビーの『ヴァージニア・ウルフなんか怖くない』や、チェーホフの『カモメ』などに出演している。映画やテレビの出演料を演劇に注ぎ込んでいるようです。

 

2009年、初の短編集 Niñas malas を出版、2年後に “Azogadas”、そして小説 “La cabeza a pájaros” を出版、フェルナンデス・ムロ家 150年間にわたるサガが語られている。1867年、貧しい農民だった母方の曾祖父がマドリードに到着したところから始まっている。当時の庶民の日常生活や風景、勿論スペイン内戦、戦後の経済優先主義、進歩的な社会的自由の到来などが親密な家族史とともに語られている。評論家の評価も高く話題作となっている。

 

     

             (小説 La cabeza a pájaros の表紙

 

★既にフェロス賞2026のガラは終わっています。栄誉賞のトロフィを手にしていますが、受賞スピーチなどは次回アップするとして、今回はフォトのみです。モニカ・ランドル、ビクトリア・アブリル、フリア&エミリオ・グティエレス・カバ、ベロニカ・フォルケ、ホセ・サクリスタンなど著名な受賞者リストの仲間入りをしました。

    

    

      (第13回フェロス賞2026栄誉賞受賞のマルタ・フェルナンデス・ムロ、124日)


エドゥアルド・フェルナンデスに映画国民賞2025のニュース2025年07月13日 18:28

     Marco」と「El 47」のエドゥアルド・フェルナンデスに映画国民賞2025

  

      

  (「Marco」でゴヤ賞2025主演男優賞を受賞したフェルナンデス、右は娘グレタ)

 

630日、今年の映画国民賞受賞者の発表がありました。選考母体はスペイン文化スポーツ教育省と映画部門はスペイン映画アカデミー、副賞は30.000ユーロ、主に前年に映画界で活躍、貢献した人が選ばれます。授与式は秋開催のサンセバスチャン映画祭期間中(2025年は919日~27日)と大枠は変わっておりません。エドゥアルド・フェルナンデス(バルセロナ1964)は、マルセル・バレナの「El 47」とアイトル・アレギ&ジョン・ガラーニョの「Marco」の演技が評価され受賞しました。昨年12月から今年にかけてスペインで開催される映画賞、前者でガウディ賞、ディアス・デ・シネ賞、後者でフォルケ賞を皮切りに、ゴヤ賞、イベロアメリカ・プラチナ賞、シネマ・ライターズ・サークル賞、フォトグラマス・デ・プラタ、スペイン俳優組合賞、フェロス賞、ディアス・デ・シネ賞、文化省が授与する金のメダル芸術功労賞と貰える賞のほとんどを制覇しておりましたので、発表を待たずとも受賞は確実視されておりました。ゴヤ胸像4個保持者はカルメン・マウラと故ベロニカ・フォルケに続く3人目とか。

   

     

           (実在の詐欺師を演じた「Marco」のポスター)

  

★細切れにキャリア&フィルモグラフィーを紹介しておりますが、国民賞受賞を機会に公開作品もかなりありますので、代表作、受賞作を中心に紹介しておきます。19648月バルセロナ生れ、映画・舞台・TV俳優、2024年、短編「El otro」で監督デビュー、バジャドリード映画祭でプレミア上映されました。舞台俳優としてスタートをきる。シェイクスピアの『ハムレット』(マックス賞2013)、『テンペスト』、『ジョン王』、サミュエル・ベケットの『ゴドーを待ちながら』(観客賞)などに出演している。1990年作家のエスメラルダ・ベルベルと結婚、1995年グレタ・フェルナンデス誕生、2015年離婚、現在のパートナーはアイノア・アルダノンド。

    

          

         (パートナー、アイノア・アルダノンドとフェルナンデス)

      

    

    (シェイクスピアの『ハムレット』から、今は亡きマリサ・パレデスと)

 

TVシリーズに出演した後、1994年ロサ・ベルヘスの「Souvenir」で長編映画デビュー、マリアノ・バロッソのスリラー「Los lobos de Washington」(99)でハビエル・バルデムと共演、翌年ゴヤ新人賞にノミネート、サンジョルディ賞、オンダス賞を受賞した。マヌエル・ビセントの同名小説を映画化したビガス・ルナの「Son de mar」(01)は『マルティナは海』の邦題で公開された。本作はフェルナンデス日本初登場となった作品。アレックス・オレ、イシドロ・オルティス、カルロス・パドリサ、演劇集団ラ・フラ・デルス・バウスのホラー・ファンタジー「Faust 5.0」で現代のメフィストフェレス役でゴヤ賞2002主演男優賞受賞の他、シッチェスFF、サンジョルディ賞などを受賞した。ファウスト博士にミゲル・アンヘル・ソラが扮した。セスク・ゲイのアンサンブルドラマ「En la ciudad」でゴヤ賞2004助演男優賞を受賞、本作は『イン・ザ・シティ』の邦題でミニ映画祭で上映された。

 

      

       (ゴヤ賞主演男優賞を手にした「Faust 5.0」のポスター)

   

     

    (レオノール・ワトリングと共演した『イン・ザ・シティ』のポスター)

 

★マル・コルがゴヤ賞2010新人監督賞を受賞した「Tres dies amb la família」に主演、マラガ映画祭2009銀のビスナガ男優賞を受賞した。『家族との3日間』の邦題で東京国際女性映画祭2010で上映された。2010年は、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの「Biutiful」(『ビューティフル』)、アグスティ・ビリャロンガの「Pa negra」(『ブラック・ブレッド』)と収穫の多い年となった。2011年ペドロ・アルモドバルの「La piel que habito」(『私が、生きる肌』)、2014年ダニエル・モンソンの「El niño」(『エル・ニーニョ』)でゴヤ賞2015助演男優賞にノミネート、2015年のイマノル・ウリベの「Lejos del mar」では、エレナ・アナヤとタッグをくんで ETA の元テロリストを演じた。2016年は、アルベルト・ロドリゲスのスリラー「El hombre de las mil caras」(『スモーク・アンド・ミラーズ』)で実在したスペイン政府の元諜報員フランシスコ・パエサを演じて、サンセバスチャン映画祭2016の銀貝男優賞ガウディ賞は受賞したが、ゴヤ賞は逃した。

 

      

 (サンセバスチャンFF 2016 銀貝男優賞を受賞した『スモーク・アンド・ミラーズ』)

 

2016年、エンリケ・セレソがプロデュースしたサルバドール・カルボの「1898, Los últimos de Filipinas」『1898:スペイン領フィリピン最後の日』に指揮官エンリケ・デ・ラス・モレナスに扮し、ルイス・トサールやハビエル・グティエレス、カラ・エレハルデなどと共演した。アレックス・デ・ラ・イグレシアの群像劇「Perfecta desconocidos」(17)、アスガー・ファルハティ「Todos lo saben」『誰もがそれを知っている』(18)、アレハンドロ・アメナバルの「Mientras dere la guerra」(『戦争のさなかで』19)では、哲学者ウナムノを毛嫌いするホセ・ミリャン・アストライ将軍に扮し、2回目のゴヤ賞助演男優賞を受賞した。

  

  

    (フランコ総統の盟友、隻眼片腕のホセ・ミリャン・アストライ将軍を演じた)

 

2019年、ベレン・フネスの「La hija de un ladrón」は、愛娘グレタ・フェルナンデスと初共演、グレタは銀貝女優賞を手にした。親子で銀貝賞を受賞したことになり、自身の受賞よりも何倍も嬉しかったに違いない。スペイン映画賞のノミネートの山を築いたマルセル・バレナの「Mediterráneo」(21)では、受賞こそなかったが監督との絆を固め、次の「El 47」主演に繋がった。オリオル・パウロ「Los lengrones torcidos de Dios」(22)は、邦題『神が描くは曲線で』でネット配信された。上述したアイトル・アレギ&ジョン・ガラーニョの「Marco」、マルセル・バレナの「El 47」の字幕入りを期待したい。2018年、バジャドリード映画祭栄誉スパイク賞を受賞した。

 

 

主なフィルモグラフィー(短編、TVシリーズは割愛、太字代表作)

1994Souvenir」コメディ、ロサ・ベルヘス

1999Zapping」フアン・マヌエル・チュミリャ

1999Los lobos de Washington」スリラー、マリアノ・バロッソ、ゴヤ賞新人賞ノミネート

2000El portero」ゴンサロ・スアレス

2001La voz de su amo」フィルムノワール、エミリオ・マルティネス=ラサロ

2001Son de mar」『マルティナは海』ビガス・ルナ、ゴヤ賞助演男優賞ノミネート

2001Faust 5.0」ファンタジー、アレックス・オレ、イシドロ・オルティス、

   カルロス・パドリサ、ゴヤ賞2002主演男優賞、他受賞歴多数

2002El embrujo de Shanghai」フェルナンド・トゥルエバ

2002Smoking room」ロヘル・グアル、J.D. Wallovits、マラガFF 銀のビスナガ男優賞

2003En la ciudad」『イン・ザ・シティ』セスク・ゲイ、ゴヤ賞助演男優賞、

   スペイン俳優組合賞

 

2004Cosas que hacen que la vida valga la pena」マヌエル・ゴメス・ペレイラ、

   ゴヤ賞主演男優賞・スペイン俳優組合賞ノミネート

2005Hormigas en la boca」マリアノ・バロッソ、マラガFF銀のビスナガ男優賞

2005Obaba」モンチョ・アルメンダリス

2005El método」マルセロ・ピニェイロ、スペイン俳優組合賞受賞、

   ゴヤ賞主演男優賞ノミネート

2006Ficción」セスク・ゲイ

2006Alatriste」『アラトリステ』アグスティン・ディアス・ヤネス

20083 días」『アルマゲドン・パニック』フランシスコ・ハビエル・グティエレス

2009Amores locos」ベダ・ドカンポ・フェイホー

2009Tres dies amb la família」『家族との3日間』マル・コル、

   マラガFF銀のビスナガ男優賞、ブタカ賞受賞、ガウディ賞主演男優賞、

   シネマ・ライターズ・サークル賞ノミネート

2009Luna caliente」『ザ:レイプ 獣欲』ビセンテ・アランダ

 

2010Biutiful」『BIUTIFUL ビューティフル』アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ、

   ゴヤ賞助演男優賞ノミネート

2010La mosquitera」コメディ、アグスティ・ビラ、ガウディ賞主演男優賞受賞、

   フォルケ賞ノミネート

2010Pa negra」『ブラック・ブレッド』アグスティン・ビリャロンガ

2011La piel que habito」『私が、生きる肌』ペドロ・アルモドバル

2012Miel de naranjas」イマノル・ウリベ

2012Una pistola en cada mano」セスク・ゲイ、ガウディ賞助演男優賞

2013Todas las mujeres」マリアノ・バロッソ、フォルケ賞・サンジョルディ賞受賞、

   ゴヤ賞主演男優賞・シネマ・ライターズ・サークル賞・フェロス賞ノミネート

2014Marsella」ベレン・マシアス

2014El niño」『エル・ニーニョ/ザ・トランスポーター』ダニエル・モンソン

   ゴヤ賞助演男優賞ノミネート

 

2015Felices 140」コメディ、グラシア・ケレヘタ

2015Truman」『しあわせな人生の選択』セスク・ゲイ

2015Lejos del mar」スリラー、イマノル・ウリベ

2016La noche que mi madre mató a mi padre」コメディ、イネス・パリス

2016El hombre de las mil caras『スモーク・アンド・ミラーズ』

   アルベルト・ロドリゲス、サンセバスチャンFF銀貝男優賞、ガウディ賞、

   シネマ・ライターズ・サークル賞

20161898Los últimos de Filipinas」『1898:スペイン領フィリピン最後の日』

   サルバドール・カルボ

2017Perfecta desconocidos」ブラックコメディ、アレックス・デ・ラ・イグレシア

2018Todos lo saben」『誰もがそれを知っている』アスガー・ファルハティ

   ゴヤ賞助演男優賞ノミネート

2019Mientras dere la guerra」『戦争のさなかで』アレハンドロ・アメナバル、

   ゴヤ賞助演男優賞、シネマ・ライターズ・サークル賞

2019La hija de un ladrón / A thiefs daughter」ベレン・フネス、

   ガウディ主演男優賞ノミネート

 

2021Mediterráneo」マルセル・バレナ、ゴヤ賞主演男優賞、フォルケ賞、ガウディ賞、

   フェロス賞、イベロアメリカ・プラチナ賞、各男優賞ノミネート

2022Los renglones torcidos de Dios」『神が描くは曲線で』オリオル・パウロ

     ガウディ賞助演男優賞ノミネート

2024Marco」アイトル・アレギ&ジョン・ガラーニョ、ゴヤ賞主演男優賞、

   フォルケ賞男優賞、プラチナ賞、シネマ・ライターズ・サークル賞、

   スペイン俳優組合賞ほか多数

2024El 47」マルセル・バレナ、ガウディ男優賞、ディアス・デ・シネ賞

 

★働き者ですね、出演本数の多さ、多彩さにアップして驚きました。このほかに短編、TVシリーズ、例えば最近では、Netflix 配信中の『鉄の手』(8話)、「30 Monedas」(16話、HBO MAX)に主演しており、さらに舞台にも出演しています。


★スペイン映画だけですが、サンセバスチャン映画祭2025のセクション・オフィシアル他ノミネート発表がありましたので、そろそろ作品紹介を予定しています。

 

 

◎主な関連記事

『エル・ニーニョ』紹介は、コチラ2014092020150115

Lejos del mar」紹介は、コチラ20141130

Felices 140」紹介は、コチラ⇒2015年01月07日

Marsella」紹介は、コチラ⇒2015年02月02日

『スモーク・アンド・ミラーズ』紹介は、コチラ20160924

1898:スペイン領フィリピン最後の日』紹介は、コチラ20170105

Perfecta desconocidos」紹介は、コチラ20170226

『誰もがそれを知っている』紹介は、コチラ20180508

La hija de un ladrón」紹介は、コチラ⇒2019年07月23日

『戦争のさなかで』紹介は、コチラ20191126

Mediterráneo」紹介は、コチラ20211213

Marco」とキャリア紹介は、コチラ20240903

El 47」紹介は、コチラ20241228