セクション・オフィシアル(コンペ部門)③*マラガ映画祭2023 ⑥ ― 2023年03月08日 17:24
9)La pecera (仮題「金魚鉢」)
データ:製作国プエルトリコ=スペイン、2023年、スペイン語、ドラマ、92分、長編デビュー作、本作のプロジェクトはハバナ映画祭の未発表脚本に対するサンゴ賞、トライベッカ基金、マラガFFのMAFIZ でEAVE賞を受賞している。サンダンス映画祭2023ワールド・コンペティション部門正式出品、ヨーテボリ映画祭デビュー作部門出品、公開スペイン4月21日

(主役のイセル・ロドリゲスと監督、サンダンス映画祭2023にて)
監督紹介:グロリマー・マレロ・サンチェス、1978年プエルトリコのバランキータス生れ、学際的な映画製作者でアーティスト。テーマはアイデンティティ、植民地主義、ジェンダー問題に関連している。シカゴ大学とマサチューセッツ現代美術館のアーティスト・イン・レジデンス、プリンストン大学ラテンアメリカ研究プログラムの客員アーティストに選ばれている。フィルモグラフィーは、2013短編「Tokio」、2016「Todavia」と「Biopsia」、2017「Revuelo en la Roosvelt」、2018年ドキュメンタリー「Juana(s) matos」を撮っている。

キャスト:イセル・ロドリゲス(ノエリア)、モデスト・ラセン、カローラ・ガルシア、ヘオルヒナ・ボッリ、アナミン・サンティアゴ、マキシミリアノ・リバス、マガリ・カラスキーリョ、ナンシー・ミリャン
ストーリー:癌が進行するにつれ、治療を望まないアーティストのノエリアは、生れ故郷のビエケス島に戻ろうと決心する。自身の運命を決断するために自由になることが必要だった。彼女は60年間にわたる軍事演習のためアメリカ海軍が残した汚染処理に携わっている友人や家族と再会することになる。



10)Las buenas compañías (仮題「親切な仲間」)
データ:製作国スペイン=フランス、2023年、スペイン語、ドラマ、93分、撮影地サンセバスティアン、バスク自治州から資金提供を受けている。公開スペイン5月5日予定
監督紹介:シルビア・ムント、1957年バルセロナ生れ、女優、監督、脚本家、舞台演出家。女優として50作以上の映画に出演、なかでもフアンマ・バホ・ウジョア監督の「Alas de mariposa」(蝶の羽)主演でゴヤ賞1992主演女優賞、シネマ・ライターズ・サークル賞を受賞した。ほかに1989モンチョ・アルメンダリスの『心の秘密』、ペドロ・オレアの「Akelarrre」(84)など。女優レティシア・ドレラの監督デビュー作、コメディ「Requisitos para ser una persona normal」(15)を最後に監督に専心する。


(ゴヤ賞主演女優賞のシルビア・ムント、1992年)
*TVムービーを含む監督フィルモグラフィーは、1999年に短編ドキュメンタリー「Lelia」で監督としてのキャリアを始め、翌年ゴヤ賞2000短編ドキュメンタリー賞を受賞、2001年「Quia」で長編デビュー、2004年長編ドキュメンタリー「Gala」がトゥデラ・オペラ・プリマ映画祭で受賞、TVムービー「Coses que passen…」(06)でマラガFF 2006 TVムービー部門観客賞、バルセロナ映画賞を受賞した。「Pretextos」はマラガFF 2008 銀のビスナガ監督賞を受賞した他、トゥールーズFF、カルロヴィヴァリFFなどに出品。TVムービー「Mentiders」(12)、同「El Café de la Marina」(14)、2015年ドキュメンタリー「La Granjas del Pas」(カタルーニャ語)は、バジャドリード映画祭でプレミアされ、ドキュメンタリー賞を受賞ほか、ガウディ賞にノミネートされた。
キャスト:アリシア・ファルコ(ベア)、エレナ・タラッツ(ミレン)、イツィアル・イトーニョ(フェリ)、アイノア・サンタマリア(ベレン)、マリア・セレスエラ(トト)、ナゴレ・セニソ(アスン)、イバン・マサゲ(ラファ)、イツィアル・アイスプル(サグラリオ)ほか
ストーリー:1976年の夏、16歳のベアは、スペイン全土が騒然として怒涛の変化をしているなか、フェミニストの大義を目に見えるようにと、尊厳ある中絶の権利を要求する女性グループに協力していた。この血がたぎるような反逆の行為は、予想もしない感情とごちゃ混ぜになっていた。それはベアが少し年上の良家の女の子ミレンと非常に特別な友情を築くからです。その夏起きたことがベアの人生を決定的に変えてしまうでしょう。実際の出来事に基づいている。


11)Las hijas (仮題「娘たち」英題「Sister & Sister」)
データ:製作国パナマ≂チリ、2023年、スペイン語、ドラマ、80分、撮影地パナマ、長編デビュー作(監督・脚本・製作)、マラガと同時期開催のSXSWサウス・バイ・サウスウエスト映画祭グローバルセクション出品され、3月1日ワールドプレミアされる。
監督紹介:カティア・G・スニィガ、パナマ系コスタリカ人、監督、脚本家、女優、製作者。コスタリカ大学で理学療法とオープンダンスの学位を取得、女優としてスタートした。アレホ・クリソストモ監督の「Nina y Laura」(15)に主演、イカロ・シネ・ビデオ映画祭で女優賞と美術監督賞を受賞、ほかパス・ファブレガの「Viaje」(15)に主演、さまざまな視聴覚プロジェクトで製作や女優として活躍。2012年短編「Es Cecilia」(23分)で監督デビューした。2017年に「Cosas que no se rompen」(14分)、2019年にはクリソストモのSF「Live Cinema Astronauta Fantasma」に主演、脚本も執筆した。「Las hijas」ではクリソストモが製作と撮影を手がけている。

キャスト:アリアナ・チャベス・ガビラン(マリナ17歳)、カラ・ロセル・カンポス(ルナ14歳)、フェルナンド・ボニーリャ、ミラグロス・フェルナンデス、ほか
ストーリー:夏休み、マリアナとルナの姉妹は、コスタリカからパナマに、不在の父親を探す旅に出る。二人の間に時おり吹きだす軋轢に対処しながら、彼女たちの望み、新しい友情、恋人、スケートボードを楽しむ空間を見つけだす。ただぶらぶらと時間をつぶすことの長所を学びながら自分たちを解放していく旅であった。熱帯地方の町で姉妹愛を深める親密で愛情のこもった物語であり、多感な青春時代の深遠な肖像画でもある。監督の半自伝的な要素を盛り込んでいる。



12)Matria (仮題「マトリア」)
データ:製作国スペイン、2023年、ガリシア語、字幕上映、社会派ドラマ、99分、長編映画デビュー作、脚本も執筆、ベルリン映画祭2023パノラマ部門でプレミアされた。2017年の短編と同じタイトル。
監督紹介:アルバロ・ガゴ、1986年ガリシア州のビゴ生れ、監督、脚本家。バラエティ誌のスパニッシュ・タレント、スクリーン・インターナショナル誌のトゥモロー・スターに選出されている。ポンテベドラで視聴覚コミュニケーションと音楽、シカゴで演劇、ロンドン映画学校で映画を学び、2013年卒業。卒業制作の短編「Curricán」がマラガ映画祭2013に出品された。2017年「Matria」を撮り、ゴヤ賞2018短編映画部門にノミネートされ、サンダンス映画祭審査員賞を受賞、続いて「16 de decembro」もゴヤ賞2019にノミネート、ロカルノ映画祭で上映された。現在、長編2作目「Posto alegre」が進行中である。


(アルバロ・ガゴ監督とラモナ役のマリア・バスケス)
キャスト:マリア・バスケス(ラモナ)、サンティ・プレゴ(アンドレス)、ソラヤ・ルアセス(エストレーリャ)、スサナ・サンペドロ(カルメ)、E. R. クーニャ・タタンCunha ‘Tatán’(ソセ)
ストーリー:ラモナは40歳、ガリシアの海辺の町で、個人的に張り詰めた不安定な労働環境に没頭して暮らしている。彼女は娘のエストレーリャが苦労しないで、より良い未来が描けるよう掛け持ちで仕事をこなしている。しかし娘が自分の道を歩む準備ができると、自分自身のために何かできるのではないかと初めて気づくのでした。長年母親業に徹していた女性の鮮やかな肖像画。ガリシア地方の家父長制神話を解体する社会派ドラマ、数年間監督の祖父の介護者だった女性に触発されている。

(荒々しい魅力で観客を酔わせたマリア・バスケス)

第94回アカデミー賞2022ショートリスト発表*国際長編映画賞部門 ― 2021年12月25日 10:01
ショートリスト15作中スペイン語映画3作が残る!

★ベロニカ・フォルケを悼む記事が続いていますが、気を取り直して来年のアカデミー賞の話題に切り替えます。第94回のガラは、2022年3月27日、以前のドルビー・シアターに統一して開催されるということです。それに先立つ12月21日に、国際長編映画賞部門のセミ・ファイナリスト(ショートリスト)15作が発表されました。92ヵ国から応募があり、スペイン代表フェルナンド・レオン・デ・アラノアの「El buen patorón」、メキシコ代表タティアナ・ウエソの「Prayer for the Stolen」(原題Noche de fuego)、パナマ代表アブナー・ベナイムの「Plaza Catedral」の3作が残りました。ノミネーションが正式に発表になるのは、来年2月8日がアナウンスされていますが予定です。パナマ作品は未紹介ですが、データを後述します。濱口竜介の『ドライブ・マイ・カー』のような強敵も残りましたから、ファイナルリスト4作に残るのは容易じゃありません。ましてや受賞となると結構長い道程です。

(スペイン代表作品「El buen patorón」のポスター)

(メキシコ代表作品「Noche de fuego」のポスター)

(パナマ代表作品「Plaza Catedral」のポスター)
*「El buen patorón」の主な作品紹介記事は、コチラ⇒2021年08月10日
*「Noche de fuego」の主な作品紹介記事は、コチラ⇒2021年08月19日
★監督紹介:パナマ代表作品「Plaza Catedral」は、アブナー・ベナイムの長編第2作め。1971年パナマ生れ、監督、製作者、脚本家、造形アーティスト。米国ペンシルバニア大学で国際関係学を専攻、映画はテルアビブのカメラ映画学校で学んだ。映画はドキュメンタリーでスタートを切り、ドキュメンタリー作家としての評価は高い。2004年パナマで制作会社Apertura Films を設立、2005年ドクメンタリー・シリーズ「El otora lado」(11エピソード)で、ニューヨークTVフェスティバルの作品賞を受賞している。2009年長編映画デビュー作「Chance」は興行的にも成功し、埼玉県で開催される「スキップ・シティD シネマフェスティバル2011」に『チャンス!男メイドの逆襲』)の邦題で上映され、脚本賞を受賞している。

(新作撮影中のアブナー・ベナイム監督)
★2014年の「Invasion」は、1989年のアメリカによるパナマ侵攻をめぐる捏造された集団記憶のドキュメンタリー。本作はパナマのIFF映画祭で観客賞ほか受賞歴多数、第87回アカデミー賞(ドキュメンタリー部門)に選ばれたがノミネートはされなかった。コロンビアのバランキージャFFドキュメンタリー賞、マラガ映画祭観客賞ほかを受賞している。2018年の「Ruben Blades is Not My Name」も第91回アカデミー賞代表作品に選ばれたが、ノミネートには至らなかった。

(ドキュメンタリー「Ruben Blades is Not My Name」ポスター)
★オスカー賞3回目のパナマ代表作品となる新作「Plaza Catedral」は、パナマ=メキシコ=コロンビア合作、スリラー・ドラマ、94分、スペイン語・英語、撮影地パナマシティ、製作Apertura Films。既にパナマ映画祭2021の観客賞を受賞しているほか、グアダラハラ映画祭MEZCAL賞にノミネートされ、フェルナンド・ハビエル・デ・カスタが男優賞を受賞したが、その前にパナマで射殺されるという悲劇に見舞われていた。ダンサーでサッカー選手でもあった少年の死は、パナマでは珍しいことではない。他にキャストはメキシコのベテラン女優イルセ・サラス、コロンビアのマノロ・カルドナなど。イルセ・サラス(メキシコ・シティ1981)は、『グエロス』の監督アロンソ・ルイスパラシオスと結婚、2児の母親でもある。マラガ映画祭2019金のビスナガ賞を受賞したアレハンドラ・マルケス・アベジャの「Las niñas bien」(邦題『グッド・ワイフ』公開)で主役を演じている。カルドナはハビエル・フエンテス=レオンの話題作『波に流されて』(09)で日本に紹介されている(東京国際レズビアン&ゲイ映画祭、レインボー・リール東京FFに改名)。本作でマコンド賞2010助演男優賞を受賞している。

(彼の才能を惜しんだイルセ・サラスとフェルナンド)

(イルセ・サラスとフェルナンド・ハビエル・デ・カスタ)

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