金のメダル2015発表*スペイン映画アカデミー2015年08月01日 11:27

     アイタナ・サンチェス≂ヒホンとフアン・ディエゴ

 

★先日、フェルナンド・トゥルエバが国民映画賞を受賞するニュースをお届けしたばかりですが、今回はスペイン映画アカデミー金のメダル受賞者のお報せです。各年1名ですが、今年はアイタナ・サンチェス≂ヒホンとフアン・ディエゴの二人がアナウンスされました。授賞式は10月、2回前の2013年から同日午前中にアカデミー本部でメダル授与が各メディアに公開され、夜にガラがあります。受賞対象者は国民映画賞と同じ、製作者、監督、脚本家、俳優、音楽家、撮影者などオール・シネアスト。 


メダルの正式名は:Medalla de Oro de la Academia de las Artes y las Ciencias Cinematográficas de España と長たらしい。通称金のメダルです。1991年から始まり、第1回受賞者はフェルナンド・レイでした。内戦前のスペイン映画界に寄与した製作会社CIFESAの設立者であったビセンテ・カサノバに敬意を表して、1986年に設けられた賞が前身。

 

★昨年は作曲家のアントン・ガルシア・アブリルと日本での知名度が低かったので記事に致しませんでした。最近の受賞者、アンヘラ・モリーナ(13、女優)、マヌエル・グティエレス・アラゴン(12、監督)、ホセ・ルイス・アルカイネ(11、撮影監督)、ロサ・マリア・サルダ(10、女優)、カルメン・マウラ(09、同)、マリベル・ベルドゥ(08、同)、ほかジェラルデン・チャップリン(06)、コンチャ・ベラスコ(03)など女優の受賞者が目立つか。

 

★メダルのデザインには2回変更があり、現在のは1996年、スペインを代表する画家アントニオ・ロペスがデザインしたものが定着している。エリセのドキュメンタリー『マルメロの陽光』(92)の主人公ですね。1996年はスペイン映画100周年の節目の年、『光と影 スペインシネマ100年』が製作された年でもありました。本作は1997年、日本スペイン協会創立40周年記念行事の一環として「スペイン映画祭」が開催された折りに上映された。

 

アイタナ・サンチェス≂ヒホン1968年ローマ生れ、映画・舞台女優。父は歴史学教授、スペイン語翻訳者(2007年没)、母はイタリアの数学教授という学者一家の生れ。アイタナという名前はスペイン文学「27年世代」を代表する詩人で戯曲家のラファエル・アルベルティの娘の名前から取られた。日本登場はアルフォンソ・アラウの『雲の中で散歩』95、米)、イタリア映画のリメイク版、後のオスカー撮影監督エマニュエル・ルベッキの映像美やキアヌ・リーヴスが出演していたことで話題になった。アラウ監督は『赤い薔薇ソースの伝説』を撮った監督。マヌエル・ゴメス・ペレイラの『電話でアモーレ』95、西)ではハビエル・バルデムとタッグを組んだ。しかしビガス・ルナの『裸のマハ』のアルバ公爵夫人役は忘れがたい。他に役に合わせて30キロ減量したというクリスチャン・ベールと共演したサイコ・スリラー『マシニスト』、ルイス・プエンソの『娼婦と鯨』04)のように未公開だがDVD発売の作品もあり、比較的知られているほうか。最近は映画を離れて舞台に専念、7月下旬に開催された「メリダ演劇フェスティバル」でギリシャ悲劇『メデア』に出演した。それが金のメダル受賞の喜びの談話に現れている。

 


★「(受賞は)もしかして間違いではないかと当惑しています。映画ではあまり知られていないから。でも映画界の方々が私を評価してくれたことに元気づけられました」と。加えて「大先輩のフアン・ディエゴと一緒に受賞できるなんて、彼は私の代父、16歳でデビューしたときいろいろ相談にのってくれ、スタニスラフスキー・システムの本を贈って支えてくれた」とも。スペイン映画アカデミーの女性初の会長を務めた(19992000)から、「当惑している」は謙遜です。

 

フアン・ディエゴ1942年セビーリャのボルムホス生れ。農作業がイヤで田舎を飛び出し、18歳でセビーリャの舞台に立ったのが病みつきとなる。それ以来役者が天職と俳優一筋の人生を歩む。まだゴールデン・メダルを貰っていなかったなんて、トゥルエバが国民映画賞を貰っていなかったと同様驚きです。好きな俳優ということもあって折々にご紹介してきましたが、マラガ映画祭2014でチェマ・ロドリーゲスのAnochece en la Indiaで最優秀男優賞受賞した記事に詳しい。なかで忘れられないのが、マリオ・カムスの『無垢なる聖者』84)、故ガルシア・ベルランガのParís Tombuctú99)、サウラのLa noche oscura89)、引退宣言してしまったオスカー監督ホセ・ルイス・ガルシのYou’re the one00)、故ビガス・ルナの『ハモンハモン』92)、初のゴヤ賞主演に輝いたVete de mí06)などか。

マラガ映画祭2014の記事や輝かしい受賞歴、主な作品紹介は、コチラ⇒2014421

 


★受賞談話を要約すると、「とても嬉しい、アイタナにとっても私自身にとっても、どの賞よりも素晴らしい賞だからね。何が人の心を打つかは人さまざまだけど、これは運命なんだ。星のめぐり合せが良かったとも言えるし、仲間たちからのプレゼントだとも言える・・・現在はとてもワクワクしている。ずっと前から待っていたからね。役者をつづけること、それにはいい脚本に出合うこと」だと。


フアン・ディエゴ8年ぶりの主役*マラガ映画祭20142014年04月21日 10:44

★今年のマラガで一番興味を惹かれたのは、チェマ・ロドリーゲスのAnochece en la Indiaでした。フアン・ディエゴが最優秀男優賞を受賞、「再びゴヤ賞の扉を開けるだろう」と噂されている映画です(彼はマラガ賞も2009年に受賞しています)。「再び」というのは8年前のビクトル・ガルシア・レオンのVete de mí2006)で受賞しているからです。主演助演含めて9回ノミネート、受賞も主演1回、助演2回とありますが(フィルモグラフィー参照)、受賞作を含めて代表作といわれる映画は日本では未公開です。映画祭上映後公開されたマリオ・カムス『無垢なる聖者』は例外的で、彼の転機となった重要な役を演じました。スペインでは人気があり評価も高いのに日本に紹介されていない俳優がたくさんおりますが、彼もその一人です。というわけで新作Anochece en la India 公開の期待を込めてご紹介したい(作品紹介はコチラ)。
(写真はEl rey pasmado  のポスター

 


    代表的フィルモグラフィー

1966  Fantasía...3  エロイ・デ・ラ・イグレシア (映画デビュー)

1975 Largo retorno 『熱愛』ペドロ・ラサガ ◎1977公開 SFラブ・ロマンス

1984  Los santos inocentes 『無垢なる聖者』マリオ・カムス ◎1986公開

1986  Dragon Rapide ハイメ・カミーノ ゴヤ賞主演男優賞ノミネート

1987 Laura, del cielo llega la noche LAULA ラウラ情念の女―』ゴンサロ・エラルデ 

◎未公開・ビデオ

1987 Asi como habían sido 『非情のレクイエム』アンドレ・リナレス ◎未公開・ビデオ

1989  La noche oscura カルロス・サウラ ゴヤ賞主演男優賞ノミネート

1991  El rey pasmado  イマノル・ウリベ ゴヤ賞助演男優賞を初受賞

1992 Jamón, jamón  『ハモン・ハモン』ビガス・ルナ ◎1993公開、大手下着メーカー社長役

1993  Tirano Banderas  ホセ・ルイス・ガルシア・サンチェス

1998  Yerma  ピラール・タボラ *ロルカの戯曲「イェルマ」の映画化、フアン役

1999  Entre las piernas 『スカートの奥で』マヌエル・ゴメス・ペレイラ 
   ◎未公開・ビデオ・
DVD

1999 París Tombuctú  ルイス・ガルシア・ベルランガ 2回目のゴヤ賞助演男優賞、アナーキスト役

2000  You’re the one  ホセ・ルイス・ガルシ ゴヤ賞助演男優賞ノミネート、司祭役

2002 Smoking Room  ロジャー・グアル他 マラガ映画祭男優賞(銀賞)受賞

2003  Torremolinos 73  『トレモリノス73 』パブロ・ベルヘル 

ゴヤ賞助演男優賞ノミネート、アマのアダルトビデオ監督役

2004  Noviembre  アチェロ・マニャス

2004  El séptimo día カルロス・サウラ ゴヤ賞助演男優賞ノミネート

2004  María querida ホセ・ルイス・ガルシア・サンチェス

2006 Remake ロジャー・グアル

2006  El camino de los ingleses 『夏の雨』アントニオ・バンデラス 

バンデラス初監督、ベルリン映画祭ヨーロッパ作品賞受賞、ラテンビート2007上映 

2006  Vete de mí ビクトル・ガルシア・レオン 

ゴヤ賞主演男優賞を初受賞、及びサンセバスチャン映画祭2006男優賞(銀貝賞)受賞

2010 Lope  アンドルチャ・ワディンゴトン ロぺ・デ・ベガの伝記映画

2011 23-F : la película  チェマ・デ・ラ・ペーニャ ゴヤ賞助演男優賞ノミネート、1981223日に実際に起きた極右派軍人によるクーデタ未遂事件が題材。アルフォンソ・アルマダ将軍役

2012 InsensiblesPainless)『ペインレス』 フアン・カルロス・メディナ初監督 

◎スクリーム・フェスト スペイン20132週間限定公開されたサイコスリラー

2012 Todo es silencio  ホセ・ルイス・クエルダ

2014 Anochece en la India マラガ映画祭男優賞銀賞受賞

◎印は彼の代表作ではないが公開された、または未公開だがビデオ・DVD化された作品。他にもあるのかもしれないが、一応拾えた作品を載せました。

ゴチック体がゴヤ賞受賞作品。

写真Vete de mí  サンセバスチャン映画祭の男優賞銀貝賞を手にしたディエゴ)

 


★舞台で出発、テレビ、映画の順ですが、時期的にはだいたい同じです。初期はシリーズ・テレドラが多く、以後もテレビと映画を行ったり来たりしている。テレドラは人気シリーズの主役が多いせいか二股かけられないのかもしれない。合わせると120作を超えるから、彼のキャリアを語ることはミニ・スペイン映画史を語ることに繋がります。

 

★第1回ゴヤ賞(1987年)にハイメ・カミーノのDragon Rapide1986)で主演男優賞にノミネートされたのを皮切りに、ゴヤ賞とは相性がいいほうだと思います。ここではフランコ将軍役の演技が認められてノミネートされました。タイトルの「ドラゴン・ラピード」はイギリスの航空機メーカーが1930年代に開発した双発輸送機、戦時下では軍用機としても使用された。フランコ将軍が19366月の軍事クーデタに使ったことから付けられた。ゴヤ賞関連では、フェリクス・ムルシアが美術賞、フェルナンド・フロリードがメイクアップ賞を受賞しました。カミーノ監督の映画は、1984年に開催された「スペイン映画の史的展望<195177>」に『1936年の長い休暇』(1975)が上映されただけでしょうか。

(写真はポスター、手前の飛行機がドラゴン・ラピード)

 


★カルロス・サウラの La noche oscura1989)で2回目の主演ノミネートとなりました。しかしフアン・ディエゴの迫真の演技にも拘わらず受賞には至らなかった。「十字架のヨハネ」といわれる洗足カルメル会の司祭、キリスト教神秘思想家サン・フアン・デ・ラ・クルスが、危険思想の異端者としてトレドに9カ月間幽閉されていたときの伝記映画。後に彼の代表作となった『暗夜』誕生が、この幽閉生活にあったことから原題が付けられた。1986年に「スペイン映画講座カルロス・サウラ」が開催されましたが、まだ本作は誕生しておりませんでした。『暗夜』の翻訳が難解ということもあるのか、サウラの代表作であるにも拘わらず未公開です。

(写真:Fotogramas de Honor 2013 をサウラから手渡されるディエゴ、2014225日)

 


★ゴヤ賞助演男優賞受賞のEl rey pasmado は、ゴヤ賞14部門ノミネート、8受賞の話題作(ただし作品賞・監督賞はとれなかった)。ゴンサロ・トレンテ・バリェステルの小説の映画化。スペイン王で最も政治と女性に疎かったというフェリペ4世の物語。ある日のこと、フェリペ4世は「王妃イサベル・デ・ボルボンのヌードが見たい」と言いだして・・・。タイトルの‘pasmado’は「呆れた・とぼけた・ボケっとした」の意味。フェリペ4世のソックリさんになったガビノ・ディエゴは主演男優賞にノミネートされたが受賞できなかった。フアン・ディエゴは修道士ヴィリャエスクサに扮した。

(写真は修道士に扮したディエゴとオリバーレス公伯爵役のハビエル・グルチャガ)

 


この後ブランクがあるのは舞台に専念していたからで、1999年映画に戻って演じたのが、ガルシア・ベルランガのParís Tombuctú のアナーキスト役、2回目のゴヤ賞助演男優賞を受賞した。スペインで最も愛された監督といわれながら、ベルランガ映画は映画祭上映以外1作も公開されておりません。特集が組まれてもおかしくない監督なのに残念です。

 

パブロ・ベルヘルのデビュー作『トレモリノス73 』が、「バスク映画祭2003」(『貸し金庫507で触れてます)にて上映されましたが未公開、ここではアマチュアのアダルトビデオの監督に扮しました。パブロ・ベルヘルは『ブランカニエベス』の成功で、第2作にして有名監督に昇格しました。

 

★ゴヤ賞主演男優賞とサンセバスチャン映画祭男優賞(銀貝賞)をゲットしたVete de mí は、アルコール中毒の舞台俳優サンチャゴの悲喜劇。小さなアパートで年の離れたガールフレンドと暮らしていたところ、ある日突然30代になってもプータローをしているピーターパン息子ギジェルモ(フアン・ディエゴ・ボトー)が転がり込んでくる。フアン・ディエゴ・ボトーも助演男優賞にノミネートされたが及ばなかった。(写真:サンチャゴとギジェルモ、映画のワンシーン)

 


★エル・パイスの映画評に、新作Anochece en la India は、盲目の退役軍人をヴットリオ・ガスマンが演じた『女の香り』1974)や、そのリメイク版アル・パチーノが演じた『夢の香り』(1992)を思い起こさせるとありました。前者は1975年のカンヌ映画祭男優賞、後者はアル・パチーノに念願のオスカー像をもたらしました。しかしそんなに遡らなくても、今年のマラガで名誉賞にあたるレトロスペクティブ賞を受賞したホセ・サクリスタンが演じた雇われ殺し屋の死出の旅 El muerto y ser feliz(ハビエル・レボージョ)のほうが類似している。こちらも老人のロード・ムービーだ。サクリスタンはサンセバスチャン2012の男優賞(銀貝賞)と2013年のゴヤ賞男優賞を受賞した。両方とも死と生がイコールというか、自分らしい死をどう迎えるかは「どう生きるかにある」と言っている。尊厳死のことでもあるのだと思う。

ホセ・サクリスタンについてはゴヤ賞2013予想と結果②UP済み(2013818日)。

 

★フアン・ディエゴJuan Diego Ruiz Moreno1942年セビリャ州のボルムホス生れ。セビリャから西に8キロ、彼はボルムホスの有名人です(笑)。フランコ体制ながら田舎でサッカーに興じる幸せな少年時代を過ごした。農作業がしたくなくて1957年セビリャに移住、そこで初めて舞台に立ち、これが自分の天職だと思ったという根っからの役者。最初の本格的舞台は18歳で演じたベケットの『ゴドーを待ちながら』、それからは主にテレドラのシリーズに出演、映画デビュー、現在は201211月から始めた独り芝居La lengua madre(フアン・ホセ・ミジャスの脚本)がロングランを続けており(スペイン各地を巡業)、役者人生も半世紀を超えた。政治意識の高い俳優で、ごく若い頃には労働者・学生運動にもコミットしており、スペイン共産党の活動家として知られている。しかし、彼の政治活動は複雑で、現在の立ち位置はどうなのだろうか。



(写真は長寿テレドラ
Los hombres de Paco200510)の仲間と。ディエゴは警察署長ドン・ロレンソ・カストロ役)

 

第17回マラガ映画祭2014*パコ・レオン&落ち穂拾い2014年04月13日 17:12

★マラガ映画祭2012年でデビュー作Carmina o revienta が審査員特別賞と観客賞を受賞したパコ・レオン、カルミナ第2弾 Carmina y amén で再びマラガにやって来ました。前作と同じ母カルミナ・バリオス、妹マリア・レオンの親子三人が中心になって作ったコメディ。待っていたカルミナ・ファンも多かったことでしょう。

 

パコ・レオンが最優秀脚本賞銀賞)、ヨランダ・ラモス最優秀助演女優賞銀賞)を受賞しました。デビュー作での予告タイトルはCarmina でしたが変更したようです。また前作で女優賞を受賞したカルミナ・バリオスは今回は無冠でした。親子三人については、20138月にUPしたゴヤ賞2013予想と結果で紹介済みです。付け加えるとすると、レオン監督はホアキン・オリストレルの『地中海式 人生のレシピ』(20092013年公開、DVD発売)に不動産業者トニ役で出演、俳優としてテレビ、映画で活躍している。

 

*ストーリー、夫の突然の死に遭遇したカルミナは、死亡通知を2日間遅らせることを娘マリアに納得させる。そうすれば夫の未払い給料が倍額で受け取ることができるからだ。秘かに遺体と一緒に2日間を過ごすことになったカルミナとマリア母子は・・・セビリャの庶民的な慎ましいバリオの日常を描くコメディ。(写真:夫の棺の前で悲嘆にくれるカルミナとマリア)

 


前作と本作の大きな違いは製作費、第1作がたったの5万ユーロ(4万というのもあり)だったのに、今回はテレシンコ・シネマTelecinco Cinema から65万ユーロの資金を得て製作されたこと。二つ目は第1作が親子3人と殆どが隣り近所のアマチュアだけだったが、今回は家族に加えてプロも出演していること。プロ&アマ半々、助演女優賞受賞のヨランダ・ラモスほか、マノロ・ソロ(『第211号監房』)、ホセ・ルイス・ガルシア・ペレス、前作にも出演していたパキ・モントーヤ、カルミナの夫役でデビューしたパコ・カサウスもプロの仲間入りですね。今回のプロットは、私的な逸話が脚本のベースになってはいるが、第1作よりフィクション性が高い。死とコメディをめぐるドラマの中に遊びを入れている。

(写真:Carmina y amén 撮影中のパコ・レオン)

 


前作 Carmina o revienta は、DVD発売や型破りのインターネット配信(有料)で映画館が空っぽになったといわれた。今回は430日封切りだが、同時にオンラインで配信したいと。これは通常の仕来たりを壊すもので批判もあることです。彼に言わせると公開後4か月経たないとDVDが発売できないのは理不尽である(以前は6カ月後だったが数年前改正された)、それでも海賊版の横行であまりに長すぎる。消費税税増税でますます映画館から観客の足が遠のいている現実からもおかしい。さらに均一料金も納得できない。莫大な資金をかけた『ホビット』のような大作と自作のような映画とが同じなのはヘンというわけ。アメリカ製<モンスター>に太刀打ちするには工夫が必要、一理ありますよね。「自分は映画を当てて金儲けしようと考えている監督じゃない。新作もチケットは5ユーロで販売したいが、裁判所はノーと言っているが、闘いは止めない」と監督。

トールキンの『ホビットの冒険』を映画化したピーター・ジャクソンの三部作。

 

映画以上に怒りは盛り上がっているが、新人監督の作品は配給元が見つからず公開のチャンスが少ない。いわゆる<映画祭映画>で終わってしまうから、彼の意見に賛同する人は多いのではありませんか。

 

◎その他いろいろ落ち穂拾い

★『マデイヌサ』や『悲しみのミルク』のクラウディア・リョサの第3No llores, vuela(原題Aloft)の撮影監督ニコラス・ボルデュクNicolas Bolduc最優秀撮影賞銀賞)を受賞しました。監督こそペルーですが、米西仏合作、言語は英語ですから当ブログの範疇外かな。ただしベルリン映画祭にも出品され、キャスト陣も有名どころが起用されている。前2作のテーマは母と娘だったが、本作は母と小さいときに生き別れになった息子の話。またチャーリー・チャップリンの孫、ジュラルディン・チャップリンの娘、つまりユージン・オニールの曾孫ウーナ・チャップリンOona Castilla Chaplin1986、マドリード生れ)が出演している。話題性があり、映画祭上映に止まらず公開も期待できそう。

 

ウーナ・チャップリンは本映画祭でデビューしたPau Teixidor監督のPurgatorio の主役マルタにも抜擢されてマラガ入りしていました。彼女は日本に既に登場しています。『007慰めの報酬』(2008)にホテルの受付役で出演、テレドラ・シリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』**のタリサ・マイギアに扮しました。母親似のほっそりした体形、170センチと長身です。父親は当時ジュラルディンのパートナーだったチリの撮影監督パトリシオ・カスティリャ、両親が正式に結婚したのは2006年です。

**このテレドラについては、最優秀女優賞受賞のナタリア・テナ(10.000 KM)でご紹介しています(4月11日)。

 

★デビュー作が元気だった今回のマラガ映画祭でしたが、Purgatorioは、評価が分かれたようで受賞には絡みませんでした。スリーラー仕立てのホラー映画、息子を失うという重いトラウマを抱えた若い母親マルタは、新しい隣人の男の子を世話している。「製作者も男性、脚本家も男性、監督も男性・・・息子を亡くしたばかりの女性について語ったものですが、そういう苦しみを共有するのは難しかった」とウーナ。

脚本はテレドラのシリーズを手掛けているルイス・モレノと、『インポッシブル』や『永遠のこどもたち』の脚本を書いたセルヒオ・G・サンチェスです。スペイン映画のホラー好きがナニするかもしれない。(写真:Purgatorio のウーナ・チャップリン)

 


★受賞に近いと見られていたホルヘ・トレグロサの第2作、コメディ La vida inesperada も無冠に終わりました。撮影がニューヨークだったり、エルビラ・リンド(『めがねのマノリート』の原作者)が脚本を手掛けたということで話題になっていたのですが。ハビエル・カマラとラウル・アレバロの息の合った上手すぎる演技が、マラガではちょっと食傷気味だったかもしれない。面白さと受賞は必ずしも一致しないから字幕入りで・・・と期待。

(写真:左からラウル、ハビエル、トレグロサ監督)

 

第17回マラガ映画祭2014*審査員特別賞、他2014年04月11日 19:18

★最優秀作品賞の次に大きい賞が審査員特別賞、こちらもベアトリス・サンチスデビュー作Todos están muertos が受賞しました。他に最優秀女優賞にエレナ・アナヤ、オリジナル・サウンドトラック賞にAkrobats  が受賞。またマラガ大学が選ぶ青年審査員特別賞も受賞しています。330日スペイン公開。

 

*ストーリー、若いころポップ・ロック歌手として輝かしい成功をおさめていたルぺの15年後が語られる。彼女の人生に過去のある幻影が忍び寄ってくる。一方、ちょうど思春期を迎えたテーンエイジャーの息子パンチョとの関係がぎくしゃくしてイライラが募ってくる。
(写真:映画のワンシーン)

 


ベアトリス・サンチスは監督、脚本家、アート・ディレクター。エレナ・アナヤとの5年間(200813)のパートナー関係を昨年の夏解消した。本作がデビュー作、2010年の短編 Mi otra mitad  がワルシャワ映画祭にノミネートされている。Todos están muertos はドイツ、メキシコ、スペイン合作、327日に上映された。他にパブロ・ベルヘルの『ブランカニエベス』のマカレナ・ガルシアが出演している。(写真:授賞式でのベアトリスとエレナのツーショット)

 


エレナ・アナヤの紹介はもういいかな、アルモドバル『私が、生きる肌』(2011)やフリオ・メデム『ローマ、愛の部屋』(2010)などで認知度バツグンだから。2012年のマラガ賞受賞者でもある(写真は自分の記念碑の前で)。

 


最優秀男優賞受賞のフアン・ディエゴのゴヤ賞受賞が早くも取りざたされているのが、チェマ・ロドリーゲスのAnochece en la India です。これも長編映画としてはデビュー作です。他にホセ・マヌエル・ガルシア・モヤノが最優秀編集賞を受賞している。411日スペイン公開。

 


*ストーリー、下半身不随の老ヒッピーの車椅子冒険ロード・ムービー。リカルド(フアン・ディエゴ)は人生の最期をインドで迎えようと、ルーマニア女性ダナ(クララ・ボダ)を介助者にして車椅子での旅を決心する。ヨーロッパを横断、トルコ、パキスタンとインドに向かうが本当に辿りつけるのでしょうか。

(写真:映画のワンシーンから、右が実際もルーマニア人のクララ・ボダ)

 


チェマ・ロドリーゲスは、1967年セビリャ生れ、作家、監督、脚本家。テレビのドキュメンタリー映画ではベテラン。2006年の Estrellas de la Linea が、ベルリン映画祭パノラマ部門で観客賞を受賞している。また2006年のマラガ映画祭で審査員特別メンション、サンセバスチャン映画祭でセバスチャン賞、カルロヴィ・ヴァリ、モントリオール、エジンバラ、シカゴ等々に正式出品は多数。その他 Coyote 2009)、El abrazo de los peces 2011)が代表作。

(写真:左からディエゴ、監督、共演のハビエル・ペレイラ。記者会見にて)

 


フアン・ディエゴ(1942年セビリャ生れ)が下半身不随の老ヒッピーのリカルドを演じます。車椅子で出発、ヨーロッパを横断してインドに到達しようと旅に出る。勿論死出の旅ですよ。わざわざ何でインドまで行って死にたいのか。ずっと車椅子の撮影だから、ディエゴは断るだろうと思ったと監督。ディエゴ自身も「自分とかけ離れたもの、下半身不随とかヒッピーとかね、そういう役は好きじゃない」と。まず撮影前の5カ月間、車椅子で暮らしてみることにした。散歩も車椅子、知り合いやファンが「どうしたんだい?」と()。座りづめで体は浮腫むし、車椅子から転落しそうになるしで恐怖だったそうです。しかしそうこうしているうちに何故リカルドがインドにまで旅して死にたいかが理解できるようになったと。萎えた足で椅子に縛り付けられた人生がどんなものか、飽き飽きしてたんだよ。

 

「死を望むのは、人生をこよなく愛しているから」なんですね。愛と失われた時間の取り戻しがテーマでしょうか。館内が一番沸いた映画だったそうで、早く見たい1本です。最近ディエゴが出演したマリオ・カムスの『無垢なる聖者』(1984)をUPしましたが、もう演技は言うことなし。いずれ日本上陸、きちんとご紹介できる機会が必ず訪れると思います。

 

★今年は観客賞もエンリケ・ガルシアのデビュー作 321 dias en Michigan が選ばれた。助演男優賞にもサルバ・レイナエクトル・メディナが同時受賞、新人監督が際立った年だった。

 

第17回マラガ映画祭2014*カルロス・マルケス=マルセ2014年04月11日 13:09

★受賞結果は既にUP済みですが、9月のサンセバスチャン映画祭「メイド・イン・スペイン」やラテンビート上映が期待される作品、気が早いですが2015年のゴヤ賞に絡みそうな作品、個人的に見たいものを拾ってみました。(写真:映画祭でのプレゼンテーション)

 


★まずは作品賞受賞の10.000 KM  から監督、主演女優、プロット、トレビアを交えてご紹介。

(作品賞以外はすべて銀賞)

カルロス・マルケス=マルセが最優秀作品賞金賞)、最優秀監督賞最優秀新人脚本賞(共同執筆者クララ・ロケ)、ナタリア・テナが最優秀女優賞、他にFNACから批評家特別賞を貰った。

 

 
 
(写真:ダビとナタリア)

ストーリーは分かりやすい。アレックスとセルジの二人はバルセロナで恋に落ち一緒に暮らしていたが、今は別々のアパートで一人暮らしだ。写真家のアレックスはロスアンゼルス、セルジはバルセロナ。アレックスがロスの奨学資金を貰って1年間の予定でアメリカに発ってしまったからだ。会話はすべてインターネット越し、果たして10,000キロ離れた愛は上手くいくのでしょうか。

 

★カルロス・マルケス=マルセはバルセロナ生れの30歳、監督、脚本家、製作他。本作が長編第1作だが、かなりの短編を立て続けに発表している。IMDb では2010年のI’ll Be Alone2010)から掲載されておりますが、それ以前から撮っている早熟なシネアストです。アッバス・キアロスタミとビクトル・エリセがコラボで指導しているバルセロナの映画学校に参加、ちょっとハードルの高い学校です。ここの優等生が『シルビアのいる街で』のホセ・ルイス・ゲリン、渋谷のイメージフォーラムで特集が組まれたとき来日しました。

 


スペイン最大手の貯蓄銀行ラ・カイシャLa Caixa 財団の奨学資金を得て、アメリカのカリフォルニア大学ロサンゼルス校UCLAの映画&テレビ学部、監督学科のマスター・コースに留学、この時の体験が長編デビュー作に織り込まれているそうですが、あくまでフィクションです。ここで製作した前述のI’ll Be Alone がロスのラテンアメリカ映画祭、その他で上映されました。他にCaraquemada2010、ベネチア)、I Felt Like Love2013、サンダンス)、2012年のThe Yellow Ribbon は各地の映画祭で受賞しています。

 

受賞作の製作にも名を連ねている La Panda のメンバー(動物のパンダではなくグループの意味)。ロスに在住しているスペイン人11名(監督、製作者、脚本家、撮影監督、編集者など)が参加している。このグループとの出会いが刺激となって10.000 KM は誕生したそうです。かつて第2外国語はフランス語かイタリア語だったが、EU加盟後は英語が主流、若い世代はアメリカやイギリスを目指すようになりました。しかし、長編デビュー作は「絶対スペイン語で撮りたかった」と語っております。短編はスペイン語以外に英語、カタルーニャ語で撮っている。

 

監督によると、自身がロスとバルセロナとの二重生活をしたときに覚えた気持ちが織り込まれているという。世界が狭くなり単身赴任、留学などで離れて暮らすカップルや家族は珍しくない。毎年3月テキサス州の州都オースティンで開催される音楽祭、映画祭、インタテクティブ・フェスティバル「サウス・バイ・サウスウエストSXSW」のイベントは日本でも知られておりますが、この映画祭(1994年開始)に本作が出品され、なんと男優賞(ダビ・ベルダゲル)と女優賞のダブル受賞がもたらされました。「オースティンでは感受性の強い観客が共感して大いに笑ってくれた。マラガでは祖母世代が目を潤ませていた」と監督。スペイン独特の冗談もアメリカ人に通じた。アメリカ人はスペイン人とは違う視点で見ている。泣いたり笑ったりで盛り上がり、観客の支持を受けたようです。撮影はロスとバルセロナの両方で行う予定だったが、結局バルセロナだけになった。離れ離れのはずが現実の撮影は同じ場所で同時に行われたから、二人にとって不思議な感覚だったようです。

 

★女優賞をTodos están muertosベアトリス・サンチス)のエレナ・アナヤと分け合ったナタリア・テナは、1984年ロンドン生れのイギリス人、イギリス育ちの女優、歌手だが、両親がスペイン系でスペイン語が堪能。クリス&ポール()・ワイツ兄弟の『アバウト・ア・ボーイ』(2002)で映画デビュー、もう「ハリーポッター」のニンファドーラ・トンクス役で日本でもお馴染みですね。またジョージ・RR・マーティンのファンタジー小説『氷と炎の歌』をテレビドラマ化したシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』にオシャOcha役で出演。これは良くできたテレドラで、日本でもファンは多い。

 


★セルジ役のダビ・ベルダゲルは最初から決まっていたがアレックスが決まらない。プロデューサーがこのテレドラの記事をエル・パイスで知り、見たところエネルギッシュなナタリア・テナがアレックスにぴったり。すぐさまダビとロンドンに飛んでナタリアに出演交渉、OKしてくれたのが成功に結び付いたと監督。まさに「彼女は天からの贈り物」だった。日本の観客にも受け入れられるでしょうか。

第17回マラガ映画祭2014*受賞結果②2014年04月07日 19:12

★マラガ映画祭には、コンペ以外に特別賞として本映画祭に貢献したシネアストに贈られる賞が設けられている。マラガ賞、リカルド・フランコ賞、エロイ・デ・ラ・イグレシア賞、レトロスペクティブ賞、今年カルロス・サウラが手にした「金の映画」などがあります。

 

マラガ賞 マリベル・ベルドゥ

一番の大賞、海沿いの遊歩道に記念碑が建てられた。写真でお分かりのようにかなり大きい(等身大)。9日間はちょっと長く雨の日もあったが、トロフィー授与式に訪れた324日はよく晴れて多くのファンが詰めかけた。プロらしくファン・サービスも怠りなく素晴らしい笑顔です。人気に溺れず偉ぶらず、常に庶民的な面をなくさないのも人気の秘密です。「まだ若いけれど、演技は既にベテランの域に達している。プロとしてのキャリアも申し分ない」と映画祭ディレクターのフアン・アントニオ・ビガル。

 


1970年生れだから確かに受賞者としては若いが、既に28年のキャリアがある。13歳でテレビ初出演、映画デビューは1986年のモンチョ・アルメンダリスの27 horasでした。出演映画は70作を超える。ゴヤ賞ノミネート8回、グラシア・ケレヘタのSiete masas de billar francés2007)と、パブロ・ベルヘルの『ブランカニエベス』で受賞している。その他Ondas 2回、銀のフィルム賞3回、フォルケ賞2013、デル・トロの『パンズ・ラビリンス』(2006)では、メキシコのアカデミー賞と言われるアリエル女優賞を貰っています。他にビセンテ・アランダ『アマンテス 愛人』(1990)、フェルナンド・トゥルエバ『ベル・エポック』(1992)、ビガス・ルナ『ゴールデン・ボールズ』(1993)、アルフォンソ・キュアロン『天国の口、終りの楽園』(2001)など劇場公開作品も多い。「ラテンビート2010」上映のコッポラ『テトロ』と国際的な活躍も、英語、フランス語ができるのも強みです。

 

「スペイン映画祭1998」で上映されたリカルド・フランコの La buena estrella1997、『エストレーリャ~星のまわりで』仮題)のベルドゥはゴヤ賞に最も近いと思われたがノミネートに終わった。個人的にはSiete masas de billar francés よりLa buena estrella のほうが良かったと今でも思っています。授賞式前のインタビューでは、199848歳の若さで亡くなった監督について「いま特にリカルドのことを思い出しています」と語っていました。友人としても親しかったようです。「マラガは光も海も独特よね」と語るベルドゥの新作は、今度もガルシア・ケレヘタ作品。タイトルもFelices 140 と決まっています。14000万ユーロの宝くじが当たった女性の物語とか。マラガとは縁が深く、昨年の「金のジャスミン賞」は、ゴヤ賞2014で述べたようにケレヘタの 15 años y un día でした。銀賞として脚本賞、 オリジナル・サウンドトラック賞、批評家特別賞も受賞して二人には相性の良い映画祭といえます。新作はまだ匂いだけで何とも言えませんが期待したいところです。(写真:授賞式での華やかなベルドゥ)

 


リカルド・フランコ賞  受賞者ジル・パロンド

★まずリカルド・フランコのご紹介から。1949年マドリード生れの監督、脚本家、俳優、製作者。上記したように既に鬼籍入りしています(1998)。哲学者フリアン・マリアスの甥、作家ハビエル・マリアスは従兄弟、伯父ヘスス・フランコ監督の助監督として出発した。代表作は「カンヌ映画祭1976」のコンペに出品された『パスクアル・ドゥアルテ』、後にノーベル賞作家となるカミロ・ホセ・セラの『パスクアル・ドゥアルテの家族』の映画化。ホセ・ルイス・ゴメスに主演男優賞をもたらした。製作者がグラシア・ケレヘタの父エリアス・ケレヘタでした。日本では「第1回スペイン映画祭1984」で上映された。

フランコはテレビの仕事も多く、俳優としてハイメ・チャバリ、フェルナン・ゴメス、グティエレス・アラゴンの映画に出演している。『パスクアル・ドゥアルテ』以外は、「スペイン映画祭1998」で長編10作目となる『エストレーリャ~星のまわりで』が紹介されただけです。『エストレーリャ~星のまわりで』は、ゴヤ賞1998の最優秀作品賞、監督賞、脚本賞、アントニオ・レシネスが主演男優賞、エバ・ガンセドがオリジナル作曲賞を受賞した作品。公開されなかったことが残念だった映画です。

 


眼病のせいで既に失明の怖れがあり映画を撮るのは難しい状態でした。フェルナンド・バウルスと共同監督したLagrimas negras1998)が遺作、90年代の初めから患っていた心臓病が悪化し、完成を見ることなく、49歳の誕生日を目前に心筋梗塞で亡くなりました。そういうわけで「享年49歳」と書かれることもあります。

 

★受賞者ジル・パロンド1921年アストゥリアス生れ、美術監督。王立サン・フェルナンド美術アカデミーで絵画と建築を学ぶ。映画好きと舞台装置に興味を抱いてこの世界に入る。1939年、エドゥアルド・ガルシア・マロトやフローリアン・レイの映画に参加、1951年、アントニオ・デル・アモの Días tras dia で美術監督を引き受けた。75年の長いキャリアの中でも、フランクリン・J・シャフナーの『パットン大戦車軍団』(1970)と同『ニコラスとアレクサンドラ』(1971)でオスカー像2個、ホセ・ルイス・ガルシのCanción de cuna1994)、You’re the One (una historia de entonces)2000)、Tiovivo c. 19502004)、 Ninette2005)でゴヤ賞4回は、他に類を見ないのではないでしょうか。

 


彼によると約210以上の映画を手掛けているとか。公開作品には、デヴィッド・リーンの『アラビアのロレンス』や『ドクトル・ジバゴ』、ジョン・ミリアス『風とライオン』、リチャード・レスター『ロビンとマリアン』、フランクリン・J・シャフナー『ブラジルから来た少年』、スペイン映画ではフアン・アントニオ・バルデム、ハイメ・チャバリ、ピラール・ミロ、マリオ・カムス他、数えきれない。

 

この75年間、映画や舞台の美術監督以外の仕事は考えられなかったそうで、どんなにデジタル技術の進歩があっても想像力を超えることはできないという。「舞台もテレビも映画の仕事も優劣つけがたく、どれも好きだ。しかし舞台はちょっと特殊なことがあって、強いて言えばぶたいかな」と、受賞前のインタビューに答えていました。

 

最新作は、カルロス・サウラの 33 dias2015年公開予定)、スペイン=カナダ=アルゼンチン、言語はスペイン語・フランス語、キャスト陣はグウィネス・パルトロー、アントニオ・バンデラス、イマノル・アリアスとかなり豪華。パルトローはスペインで過ごしたことがあり、かなり流暢なスペイン語を話す。製作費は概算600万ユーロがアナウンスされています。

 

エロイ・デ・ラ・イグレシア賞  受賞者パブロ・ベルヘル

★エロイ・デ・ラ・イグレシアについては、「バスク映画祭2003」で上映されたエンリケ・ウルビスの『貸し金庫507』をUPした折に簡単に触れました。1944年バスクのギプスコア生れ、2006年癌で死去。映画祭上映の『ブルガリアの愛人』(2003)が遺作。フランコ時代から問題作を撮りつづけていた監督だが、当時は批評家の無理解もあって正当に評価されていないと思う。この監督についてはいずれ作品紹介も兼ねてUPしたい。マラガで彼を顕彰する賞を設けてたことは一ファンとして嬉しい。

日本では『カンニバルマン 精肉男の殺人記録』の邦題でDVDが発売されているだけだと思う。すごいタイトルですが、オリジナルはLa semana del asesino1972)です。

 

★受賞者パブロ・ベルヘルについては、『ブランカニエベス』で何回も触れたし、公式サイトもあるから割愛します。

 

レトロスペクティブ賞  受賞者ホセ・サクリスタン

★本映画祭の貢献賞または栄誉賞の意味合いが強い賞。ホセ・サクリスタンは2012年のサンセバスチャン映画祭で男優賞(銀貝賞)を受賞して以来、ゴヤ賞2013、フォルケ賞2013、と受賞が続いている。その都度ご紹介してきているのでこちらも割愛です。

 


「金の映画」  受賞者カルロス・サウラ

★カルロス・サウラは上記したように新作発表、老いてますます盛んの印象です。今回の受賞は La prima Angélica1973)が「金の映画」に選ばれたからです。1984年開催された「スペイン映画の史的展望<19511977>」で、『従姉アンヘリカ』のタイトルで上映された作品。フランコ末期とはいえまだ検閲制度のあったときの作品、1974年カンヌ映画祭で審査員賞を受賞しています。『狩り』(1965)や『カラスの飼育』(1975)が好きな人は、フラメンコ物や最近の作品を評価しないけれど、「自分は常につくりたい映画を撮っているだけだ」とサウラ。日本ではフラメンコ物は相変わらず人気ですが、スペインでは『フラメンコ・フラメンコ』(2010)の館内はガラガラ、お客さんの入らない映画の代表格でした。


1932年、アラゴンのウエスカ生れ、2006年、女優エウラリア・ラモン(1959生れ)と再婚して周囲を驚かせた。彼の『ドン・ジョバンニ』『ゴヤ』『タクシー』に出演している。

 

 

第17回マラガ映画祭2014*受賞結果①2014年04月04日 19:11

★正式名称はスペイン映画マラガ映画祭ですが、マラガ映画祭で通用しています。2014年は321日から29日(例年より2日延長された)の日程で開催されました。デビュー作5本を含む15本が正式コンペティションにノミネート、金のジャスミン賞を争いました。「新人監督の現代的な、かつ各自異なった視点が特徴としてあげられる」と審査ディレクターのフアン・アントニオ・ビガル。グランプリを射止めたのは、カルロス・マルケス=マルセのデビュー作10.000 kilometros10.000 KM)でした。

 

(写真:10.000 KM の監督、ナタリア・テナ、ダビ・ベルダゲル)


★今年のマラガは観光客も含めて来場者が
40%増と、経済危機にも拘わらず大いに賑わい、マラガ市長もホクホク顔とか。コンペ作品の質が高かったこと、マラガ賞受賞のマリベル・ベルドゥ、エロイ・デ・ラ・イグレシア賞のパブロ・ベルヘル、栄誉賞にあたるレトロスペクティブ賞のホセ・サクリスタンカルロス・サウラの来場と話題てんこ盛りのマラガでした。更にウナムーノの小説La tía Tula1963)をミゲル・ピカソが映画化したスチール写真152枚の展覧会も併設されるなど、関係者の努力もあったようです。これは『ひとりぼっちの愛情』の邦題で1966年公開された半世紀前の映画でした。

 


★審査員紹介:マヌエル・ゴメス・ペレイラ(委員長)、エルネスト・アルテリオ、ホセ・アントニオ・ガリーガ・ベラ、マリア・バランコ、ナイワ・ニムリ、ハビ・プエブラ、Jocelyne Faessel

 

最優秀作品賞金賞

10.000 KM カルロス・マルケス=マルセCarlos Marques-Marcet
審査員特別賞銀賞

Todos están muertos  ベアトリス・サンチスBeatriz Sanchís
最優秀監督賞(銀賞)

10.000 KM カルロス・マルケス=マルセ
最優秀女優賞(銀賞)
ナタリア・テナ  10.000 KM  

エレナ・アナヤ  Todos están muertos
最優秀男優賞(銀賞)
フアン・ディエゴ  Anochece en la India
最優秀助演女優賞(銀賞)
ヨランダ・ラモス  Carmina y amén
最優秀助演男優賞(銀賞)
 サルバ・レイナエクトル・メディナ  321 días en Michigan
最優秀脚本賞(銀賞)
パコ・レオン  Carmina y amén
オリジナル・サウンドトラック賞(銀賞)
Akrobats  Todos están muertos
最優秀撮影賞(銀賞)
ニコラス・ボルドゥクNicolas Bolduc  No llores, vuela
最優秀編集賞(銀賞)
ホセ・マヌエル・ガルシア・モヤノ  Anochece en la India
最優秀新人脚本家賞(銀賞)

カルロス・マルケス=マルセ、クララ・ロケ  10.000 KM
観客賞(銀賞)としてエンリケ・ガルシアの321 días en Michigan が受賞しました。
★ドキュメンタリー賞(割愛)

 

★他に、ラテンアメリカ映画部門に与えられる賞があり、今年の審査委員は、アレハンドロ・エルナンデス、ルカス・フィゲロア、スサナ・マセイラス。最優秀作品賞には8000ユーロの賞金が出る。今年はアルゼンチン、メキシコ、ベネズエラなど8作品が競ったが、キューバとウルグアイ=ポルトガル合作の2作品に集中する結果となった。受賞作Conducta は3月30日に授賞式のあったメキシコのグアダラハラ映画祭にも唯一のキューバ映画として出品された。マラガとグアダラハラでは映画のポリシーが異なるので重なることが少ない。他にはラウラ・アストルガのPrincesas Rojas (コスタリカ=ベネズエラ)だけだった。

 

(写真:Conducta のアリーナ・ロドリゲスとアルマンド・バルデス)


最優秀作品賞(銀賞)
Conducta エルネスト・ダラナス (キューバ)
審査員特別賞:(銀賞)
Rincón de Darwin ディエゴ・フェルナンデス・プジョル(ウルグアイ=ポルトガル)
最優秀監督賞(銀賞)
エルネスト・ダラナス   Conducta
最優秀女優賞(銀賞)
アリーナ・ロドリゲス  Conducta
最優秀男優賞(銀賞)
カルロス・フラスカ  Rincón de Darwin
審査員スペシャル・メンション賞をConducta  アルマンド・バルデス(主人公の子役)が受賞した。

観客賞(銀賞)
Conducta  エルネスト・ダラナス
Rincón de Darwin  ディエゴ・フェルナンデス・プジョル

★デビュー作は以下の通り:

1 10.000 kilometros  Carlos Marques-Marcet

2 Kamikaze  Alex Pina

3 Purgatorio  Pau Teixedor

4 Todos están muertos  Beatriz Sanchis

5 321 días en Michigan  Enrique Garcia

 

★本映画祭の受賞作品は9月のサンセバスチャン映画祭の「メイド・イン・スペイン」部門で上映されることが多い。これから順次公開され、批評家の☆の数とか観客の反応などを加味して選ばれるようです。ということで、サンセバスチャン映画祭にはある程度評価の定まった作品が上映されるので、短期間に効率よく鑑賞できます。多分、10.000 kilometros Todos están muertos は上映されるでしょう。

★受賞作、話題作、トレビア、その他「マラガ賞」などについては、次回②で。