ブラジル映画『ベンジーニョ』*ラテンビート2018あれやこれや ⑧2018年11月15日 14:49

             ピッツィ監督一家が総出演で撮った『ベンジーニョ』

 

      

★後半2日目、アリ・ムルチバ『サビ』に続いて、グスタボ・ピッツィ『ベンジーニョ』(英題Loveling」)を見てきました。1月開催のサンダンス映画祭でスタートした本作のヒロインを力演したのが監督夫人のカリネ・テレスでした。パンフレットに紹介されているようにグラマド映画祭2018ブラジル映画部門で女優賞を受賞、姉を演じたアドリアナ・エステベス助演女優賞、監督が観客賞を受賞しました。その他、例年4月に開催されるマラガ映画祭2018イベロアメリカ映画部門の作品賞「金のビスナガ」審査員特別賞「銀のビスナガ」他を受賞した。因みに駄々をこねて兄さんたちを困らせた双子の兄弟は監督夫妻の実子であり、文字通り<ベンジーニョ>です。

  

『ベンジーニョ』の紹介記事(配役のみ再録)は、コチラ20180430

 

配役:カリネ・テレス(イレーニ)、オッタヴィオ・ミュラー(夫クラウス)、アドリアナ・エステベス(イレーニ姉ソニア)、コンスタンティノス・サリス(長男フェルナンド)、セザル・トロンコソ(ソニアの夫アラン)、マテウス・ソラーノ(パソカ)、ルカス・ゴウヴェア(登記所職員)、パブロ・リエラ(サンダー)、ビセンテ・デモリ、ルアン・テレ、アルトゥル&フランシスコ・テレス・ピッツィ(双子の3男4男)

 

         

     (女優賞のトロフィーを手にしたカリネ・テレス、グラマド映画祭授賞式にて)

 

A: <Benzinho>は市販のポルトガル辞典に見当たらなかったので、英題Loveling」から類推しておりましたが、字幕は「かわいい子供」(?)と訳されていたかと思います。愛らしい好もしい事柄に使用する造語でしょうか。

B: 監督夫妻の実子という双子の可愛らしさは、写真で見る以上に愛らしかった。5歳ぐらいの設定でしたが、どこからどこまでが演技なのか、現実と虚構の境が定かではありませんでした。

A: 実際のところ「今のママはホントのママか、映画のママかどっちなの?」というわけで、ベテランのカリネ・テレスもタジタジでした。

 

           

         (イレーニ、双子の兄弟、チューバが得意の次男ロドリゴ)

 

B: 10歳という設定の次男ロドリゴは、出来のいい長男フェルナンドの陰に隠れて、母親の評価は必ずしも高くないけれど、オッタヴィオ・ミュラー扮する優しい父親の性格を受け継いで、弟の面倒をよくみる穏やかな子でした。

A: 名前がエンディング・クレジットでメモできず、キャスト紹介では特定できませんでした。体形も父親似でかなり肥っている。母親につまみ食いを叱られているのか、夜中に隠れて父子して盗み食いをするシーンには、気の毒やら可笑しいやら。

B: 次男は父親っ子、長男は母親っ子です。肥満に厳しい母親に二人して一矢を報いているようでした。頑張り屋だが強すぎるイレーニから受けるストレスが二人の肥満の原因かもしれない。

  

A: しかしラストのパレードのシーンで面目を果たしました。母親自慢の息子フェルナンドに扮したコンスタンティノス・サリスはイケメン、ハンドボールだけでなく成績も良いという設定。そういう子にありがちの自己中心的な性格でないのがいい。総じて登場人物の人格がくっきりしていました。

B: それぞれ短所はあるものの長所がそれをカバーしていて、家族揃って安心して見られるホームドラマに仕上がっていた。

  

     

     (ドイツでの夢を膨らませる自立したい長男、寂しさと喜びが交錯する母)

  

A: 性格は穏やかだが夢を追い続けては失敗ばかりする夫クラウスに、愛しているけれど歯がゆい妻、自然と強くならざるを得ない。ハイスクールの卒業証書が欲しいのも、それがあれば正社員になれる道が開かれるからです。

B: 舞台となっている地方都市でも実力だけでなく学歴が必要になっている印象でした。

A: リオデジャネイロ州のペトロポリスという都市は、高地にあるため避暑地でもあるらしく、監督夫妻の生れ故郷です。監督が大好きな町なので撮影もここで行われたということです。リオデジャネイロとは時間の流れがゆったりしている。かつてはドイツ人の入植が奨励されたのでドイツ移民が多い。夫クラウス役のオッタヴィオ・ミュラーが起用されたのも自然です。

 

       

      (将来の夢を語るクラウス、不安を隠して夫の提案にうなずくイレーニ)

 

        

         (新しい計画の夢が頓挫して落ち込む夫を慰める妻)

  

B: ブラジルと言えばサッカーですが、ハンドボールもドイツ同様盛んです。だから息子がドイツのチームからオファーを受けたのは、父としては名誉なことだった。

A: しかしイレーネはそう単純には喜べない。何しろ我が家の希望の星なのだ。それに未だ子供なのにドイツに行ってしまうなんて。早すぎる子供の巣立ちに心は千々に乱れる(笑)。

B: 理性と感情は重ならない。母親のストレスの爆発に戸惑う子供たち、こんなママを見たことない。

 

A: イレーニのお姉さんソニア役を演じたアドリアナ・エステベスは、グラマド映画祭で助演女優賞を受賞した。夫の家庭内暴力から逃れて一人息子を連れて駆け込んできた。40歳近くなってハイスクールの卒業証書を手にした妹イレーニが誇らしい。

B: この女優さんも、酒乱の夫アラン役のセザル・トロンコソ上手かった。イレーニが卒業式に着ていく豪華なドレスを提供するゲイのブティック店主、新居を請け負った大工の棟梁など、おしなべてキャスト陣は安心して見ていられました。

 

     

(「とても尊敬するわ」と姉、ラメ入りの貸衣装を着て証書を手にした妹、卒業式シーン)

 

      

(こんな崩壊寸前のボロ家にソニア母子は転がり込んできた、庭にいるのは双子の兄弟)

 

A: ホワイトカラーの登記所職員役ルカス・ゴウヴェア、お役所のタテマエ主義に皮肉もちょっぴり利かせている。前回アップしたアナ・カッツの『夢のフロリアノポリス』にもブラジル人俳優が多数出演していましたが、とても演技のレベルが高く、多様性に富んでいる。ブラジルはラテンアメリカ諸国ではアルゼンチン同様、映画先進国だと改めて思いました。なお、ストーリー、監督フィルモグラフィー、カリネ・テレス、主なスタッフ紹介は、すでにアップしている紹介記事をご参照してください。

大阪梅田ブルク71118日(日)上映

『夢のフロリアノポリス』*ラテンビート2018あれやこれや⑦2018年11月14日 14:41

           後半1日目はアナ・カッツの『夢のフロリアノポリス』でスタート

 

★第5回イベロアメリカ・フェニックス賞の結果が発表になっておりますが、記憶が薄れないうちにラテンビートの感想を先に。後半は『夢のフロリアノポリス』、『ベンジーニョ』、『夏の鳥』、最終上映となった『アナザー・デイ・オブ・ライフ』4本を鑑賞しました。アルゼンチンの監督アナ・カッツ『夢のフロリアノポリス』(アルゼンチン・ブラジル・仏、アルゼンチン語・ポルトガル語、106分)は、パンフレットでブラジル映画の特集欄に入っていたこともあって、スペイン語映画ではないと思っていた方がいらしたかもしれない。4本のなかでは一番空席が目立っていて勿体なかった。言語だけでなく両国の国民性の違いがアイロニーを込めて語られ、シリアス・コメディとしては若干長すぎましたが楽しめました。本作Sueño Florianópolisについては、サンセバスチャン映画祭「ホライズンズ・ラティノ」部門にエントリーされた折り、ストーリー、キャスト、監督フィルモグラフィーなどを紹介しています。

『夢のフロリアノポリス』の紹介記事(配役は下記に再録)は、コチラ20180921

 

          ブラジル映画でなく、やはりアルゼンチン映画です

 

A: 舞台は1992年のブラジルのリゾート地フロリアノポリス、25年前ほどのお話とはいえ両国のお国柄は変わらない。アルゼンチンは債務不履行を性懲りもなく繰り返している国、90年代初頭は正義党(ペロン党)のメネム大統領時代で、2001年の国家破産前夜だった。そういうブエノスアイレスから精神分析医をしているペドロとルクレシアの夫婦が、年頃の子供二人とフロリアノポリスにオンボロ車でやってくる。

B: 一方、アルゼンチン一家を迎えるブラジルは、南米第一の人口を抱える汚職大国、1992年のインフレ率は1110%という信じられないハイパー・インフレだった。

 

    

  (マルコも荷物持ちを手伝ってフロリアノポリスの梅に到着した一家、中央が娘フローラ)

 

A: そんな事態になってもめげないブラジルに、マンネリムードの夫婦がバケーションにやって来た。目下お試し別居中だがバケーションは別というわけです。せっかく一緒にきたのだから久しぶりにセックスもいいか(笑)。医者という職業柄中流階級に属しているが台所状態は中流のイメージとは程遠く、朝食に出たパンを昼食用にそっとトートバッグに詰め込んだりして笑わせる。

B: まだ二人だけだった頃、夫婦は来たことがあるという設定、暮らし向きも今より良かったらしく、もっと高級なホテルに滞在していた良き思い出を引きずっている。予約したコンドミニアムは耐え難く、途中ガス欠が取り持つ縁で知り合ったブラジル人のマルコの別荘に宿替えする。

 

A: その別荘というのがマルコの自宅で、彼の家族はもっと狭い家に移って稼ぎ時の夏場の商売に精を出す。借り手も貸し手も経済状態はイマイチ、魅力的なのはタダで泳げる海と素晴らしい景観、週末にマルコの元恋人ラリッサのバーで開催されるカラオケでのサンバのリズムというわけです。互いに自国の言葉で話すからチグハグになることもあり、その意思疎通のあやが面白さの一つになっている。

B: 字幕だけでは分からないおもしろさです。ややこしい話、具合の悪い話になると、「えっ、なんて言ったの?」と通じないふりをする。

 

       

        (人生は短いのだからと波乗りに興じるマルコとペドロの家族、

         左から、フリアン、ペドロ、ルクレシア、ラリッサ、マルコ)

 

A: お互い見えないところでは相手国の悪口を言ってるが、表面的には教養ある大人らしく友好ムードに終始する。これが正しい国際関係というものです。

B: 別居中なのだから相手の自由は尊重しないといけない。というわけでルクレシアはマルコと、ペドロはラリッサとつかの間の恋のアバンチュールを楽しむが・・・

A: 理性と感情は理屈通りにいかないのが世の常、バツの悪さもさりながら二人の微妙な心の揺れも見所の一つである。

 

   

                  (ガードの堅いルクレシアに言い寄る伊達男マルコ)

 

   

     (にこやかに談笑しているが、心穏やかでないルクレシアとラリッサ)

 

B: ルクレシアを演じたメルセデス・モラン(サン・ルイス、1955)は、カルロヴィ・ヴァリ映画祭で女優賞を受賞した。

A: 彼女はパンフでの紹介以外にも、サンセバスチャン映画祭2018の開幕作品だったフアン・ベラEl amor menos pensadoリカルド・ダリンとタッグを組んでいる。同じような離婚の危機を迎えた夫婦の機微を描いたロマンティック・コメディです。こちらはアルゼンチンでは大ヒットした。

B: ハリウッドと違うのは、少々太めの熟女でもヒロインに起用されることでしょう。ハリウッドでは40代はもはや90代のおばあさんが常識、熟女で主役を演じられるのはメリル・ストリープくらいででしょうか。

    

       

   (ペドロのラリッサとの不倫告白に、自分を棚に上げて機嫌を損ねるルクレシア)

 

A: ペドロ役のグスタボ・ガルソンは、1955年ブエノスアイレス生れの俳優、脚本家。1981年デビューのベテラン。数多くのTVシリーズに出演、映画ではロリー・サントスのスリラー「Qué absurdo es haber crecido」の主役、『人生スイッチ』が大ヒットしたダミアン・ジフロンの「El fondo del mar」で2003年、銀のコンドル賞クラリン・エンターテインメント賞男優賞を受賞しています。

B: ラテンビート2016では『名誉市民』の邦題で上映された、ガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーンのコメディ『笑う故郷』にも脇役だが出演している。

 

A: 夫婦の二人の子供を演じたホアキン・ガルソンマヌエラ・マルティネスは、彼の実子だそうです。フローラ役のマヌエラはラストで両親を窮地に陥れます。

B: 冒頭に張られた伏線通りになりました。まったく笑ってなどいられません。

A: アルゼンチン・コメディのファンにはお薦めの映画、大阪、横浜会場で上映されます。なお監督紹介は前回アップしております。

 

    

(カルロヴィ・ヴァリ映画祭「審査員特別賞」のトロフィーを手にしたアナ・カッツ監督)

 

 

 付録・キャスト紹介

キャスト:グスタボ・ガルソン(夫ペドロ)、メルセデス・モラン(妻ルクレシア)、ホアキン・ガルソン(息子フリアン)、マヌエラ・マルティネス(娘フロレンシア、フローラ)、マルコ・ヒッカ(ブラジル人マルコ)、アンドレア・ベルトラン(マルコの元恋人ラリッサ)、カイオ・ホロヴィッツ(マルコの息子セザル)、他

 

El amor menos pensado」の紹介記事は、コチラ20180814    


『I Hate New York』&『サビ』他:ラテンビートあれやこれや⑥2018年11月09日 15:18

 

 114日に見たグスタボ・サンチェスのドキュメンタリーI Hate New York』、アランチャ・エチェバリアのデビュー作『カルメン&ロラ』、アリ・ムリチバの『サビ』、3作ともに考えさせられる作品でした。I Hate New York』と『カルメン&ロラ』には監督のQ&Aがありました。真摯な人柄が分かるサンチェス監督、見るたびにふくよかになっていく元気印のエチェバリア監督、アレックス・デ・ラ・イグレシアのようにならないことを切に願います。バジャドリード映画祭2018で新設なった「ドゥニア・アヤソ賞」受賞の記事をアップしたばかりです。先輩女性監督の名を冠した賞の名誉ある受賞者になりました。前回に続いて見た順に感想をメモランダムに。

  

          10年前1台のカメラで撮りはじめたI Hate New York

 

     

 (Q&A終了後のフォトコール、サンチェス監督とアルベルト・カレロ氏、LBサイトから拝借)

 

A: 昨日に続いて第2回目の上映となったグスタボ・サンチェスI Hate New York』は、9.11後に訪れたNYを見たことが原点にあるようでした。その後2007年に再訪、はっきりした構想もプロデューサーも決まっていなかったが、9.11後のNY市民の日常を1台のカメラで自由に回し続けていた。

B: パブリックの資金援助は貰っていない、エグゼクティブ・プロデューサーとしてエンディング・クレジットにあったJ.A.バヨナカルロス・バヨナ兄弟の参画は、最初からあったわけではないと語っていた。

 

         

        (サンチェス監督とJ.A.バヨナ、マラガ映画祭2018のプレス会見)

 

A: 制作会社「Colosé Producciones」のサンドラ・エルミダJ.A.バヨナは、以前から共同で製作しているから、そういう繋がりで参画したのではないか。サウンドトラックなどを手掛けているカルロス・バヨナは、本作で製作者デビューを果たしたようです。

 

I Hate New York』の紹介記事は、コチラ20180905

 J.A.バヨナのキャリア&フィルモグラフィー記事は、コチラ20180324

 

B: 80人ほどの証言者のうちアンダーグラウンドのLGBTQのアーティスト4人に絞り込み完成させた。その4人とは、ドラッグクイーンのアマンダ・ルポール、キューバから夢を抱いて亡命してきたソフィア・ラマル、元パンクバンドの歌手クロエ・ズビロ、クロエのパートナーで前衛アーティストのT・デ・ロング、彼の出生時の性は女性です。

 

        

                (アマンダとソフィア)

 

A: 見る前はアマンダを中心にしたドキュメンタリーだと思っていましたが、HIV偏見と闘い、常に死と隣り合わせで生きているクロエ、彼女を心から愛しているT・デ・ロングの印象が強かった。コネチカット出身のクロエは、1982年にNYに移住、その死まで暮らしていた。この二人に絞ったほうがよかったと思ったくらいです。

 

      

             (元パンクバンドの歌手のクロエ・ズビロ)

 

B: 監督は同じスペイン語話者であるソフィアに惹かれていたようですが、掘り下げが足りない印象を受けた。1回目のQ&Aで会場から10年で区切りをつけた理由を質問されて、「クロエの死だ」と答えていたようです。

A: 見ていてそう感じました。強い愛が介在していた死は重たい、たまたまそれが10年目だった。フィルム編集は監督ではなかったが、惜しい。続けてT・デ・ロングのその後を追ってほしい。NYという都会は、ウディ・アレンに限らず多くのシネアストを刺激し続けている。誰もが夢を見るNYだけれど、その背後に潜む理不尽な現実を10年間も追い続けたドキュメンタリーはそんなに多くない。

 

B: タイトルについての質問が当然出ました。「I Love New York」に対抗してアイロニーを込めている。「大都会NYから得られるものを人々は本当に望んでいるのか」という疑問も込めて「Hate」にした。表舞台でなく裏舞台で暮らしている人たちへの共感をこめている印象でした。

A: 「Love」だったら、もっと皮肉だ。

 

B: コメンテーターのカトリナ・デル・マルLGBTQ分析が面白かった。

A: NY在住の写真家、ビデオアーティスト、ライター、短編映画を数作撮っているドキュメンタリー監督、海外の大学にも招聘されて講義をしている。短編ドキュメンタリー「Hell on Wheels Gang Girls Forever」(12)が代表作。音楽好きの方はご存知でしょう。彼女をコメンテーターとして登場させたことが成功の一つでした。

B: マラガ映画祭、サンセバスチャン映画祭上映のお蔭か、J.A.バヨナのネームバリューのお蔭か、スペイン本国でも公開になり(119日)、映画祭用映画で終わらなかったことを証明した。これから「梅田ブルク7」でも上映されます、と宣伝しておきます。

 

            

            (サンセバスチャン映画祭宣伝用のポスター)

 

 

         閉ざされたロマ社会の禁じられた愛を描く『カルメン&ロラ』

 

     

 (Q&A終了後のフォトコール、エチェバリア監督、スペイン大使、カレロ氏、同上

 

A: Q&A2日前に着任したばかりという駐日スペイン大使の飛入りもあって盛り上がりました。日西国交150周年だそうで、これまたびっくりしました。カンヌ映画祭と併催の「監督週間」正式出品以来、快進撃を続けている『カルメン&ロラ』をスクリーンで見ることができたことは考え深い。

 

B: 本作の字幕翻訳者の方も会場におられて、司会者からコメントを要請されていましたが。

A: ロマ社会の実情は翻訳者もご存じなかったそうで、個人的にはこれまた考え深いことでした。本作の製作意図、ストーリーやアランチャ・エチェバリア監督の紹介はダブらせたくないので省きますが、伏線が巧みに張られておりラストシーンはその通りになりました。上述したように1027日に閉幕したバジャドリード映画祭でドゥニア・アヤソ賞を受賞しました。

 

『カルメン&ロラ』の紹介記事は、コチラ20180513

ドゥニア・アヤソ賞受賞の記事は、コチラ20181102

 

B: 東京4日目という監督は疲れもみせず元気いっぱいの登壇でした。司会者の監督紹介の後、本作のアイデアを訊かれて「初恋」がもとになっており、2009年にロマ女性の同性婚の記事を新聞で読み、タブー視されているテーマを絡ませようと考えた、と応えていました。

A: カンヌの紹介記事に書いた通りです。映画に描かれた内容に誇張はないときっぱり、マドリードのような大都会でも周辺は別で、特にロマ社会は家父長的な考えが強い。カルメンの父親も、ロラの父親も、さらには息子世代もマッチョがまかり通っている。

 

     

           (素顔の主役二人とアランチャ・エチェバリア監督)

 

B: スペインでは、同性婚が法的に認められていますが、マドリードやバルセロナのような都会はいざ知らず、地方の現実はまだまだ、理解は得られていないのではないか。

A: ロマ社会のタブーを炙り出すことですが、二人の若い女性、カルメンとロラが困難に直面することで強くなり、視野が広がること、人は変わることができるのだ、というのが真のテーマでしょう。

B: マックス・オフュルスの『歴史は女で作られる』(55)ではありませんが、女は自由を求めている、変革は女性の手で、というわけです。応募に1000人もの人が押し寄せたというのも変化の表れだと思いませんか。

 

A: 微妙に変化していくロラの母親役ラファエラ・レオンも、変われない父親役のモレノ・ボルハも素人、唯一のプロがパキ役のカロリナ・ジュステでした。モレノ・ボルハは初出演とは思えない上手さでしたが、果たしてトゥールーズ・スペイン映画祭で男優賞を受賞、他に観客賞ヴィオレト・ドール(ゴールデン・スミレ賞)を受賞した。

 

B: 監督からロラ役のサイラ・モラレスは、作中でカルメン役のロジー・ロドリゲスが選ぼうとした職業「美容師になろうと考えていたが、今は次回作も決まって女優を目指している」と監督。

A: 何がきっかけで人生が変わるか分かりませんが、ペルー映画『悲しみのミルク』(09)のヒロイン、マガリ・ソリエルも教会前で露店の売り子をしていたとき、クラウディア・リョサ監督に見いだされ、女優の道を歩くようになった。

 

    

(海を見たことがないカルメンとマラガの海を知っているロラが辿りついた海辺のラストシーン)

 

B: より厳しい現実が二人を待っているのだが、自分で決めた自由は素晴らしい。

 

 

        ネットに潜む危険と不在がもたらす孤独についての『サビ』

 

     

A: 3本目はブラジル映画、アリ・ムリチバの『サビ』、ポルトガル語ということで簡単にしか内容紹介ができませんでしたが、若者の遊び半分が重大な悲劇をもたらすというサスペンスドラマ。

B: 第1部がSNSに熱中する16歳の女子高校生タチ、第2部がタチの同級生ヘネとその家族、二人が通う高校の教師でもある父親、弟と妹、3人を捨て新しい夫との間に身ごもっている元母親の話。

 

         

      (ネットに流出した個人情報に愕然とするタチ役のティファニー・ドプケ)

       

A: 家族を捨てるのが夫ではなく妻という設定が時代の流れを感じさせる。ネタバレさせずに語るのは難しいが、衝撃的なシーンがあるとだけ言っておきます。タチの家族はスクリーンに現れず、当然存在すべきものが不在しているという不気味さがある。

B: 反対にヘネの家族は全員登場するのだが、関係はばらばらであたかも家族ではないような希薄さがある。特に中流家庭の子供が通う高校教師である父親の被害者面をしたずる賢さが、映画の進行につれて母親の出奔をもたらしたと分かってくる。

 

    

           (タチとヘネ役のジョヴァンニ・デ・ロレンツィ)

 

A: 自分に無関心な夫を捨てるのはいいとして、まだ母親を必要とする3人の子供をおいて新しい恋人のもとに走るというのが一般的にあるのか分かりませんが、少なくとも二人の息子は母親を許さない。

B: ヘネの弟は母親を小母さんと呼んで無視していた。

A: 学校でのイジメがテーマではないのですが、それぞれ自己中心的で自分の殻に閉じこもっていることで、以前見たミシェル・フランコの『父の秘密』(12)を連想しながら鑑賞しました。

 

B: あのメキシコ映画もイジメではなく突然の不在がテーマでした。

A: タチを演じたティファニー・ドプケと『父の秘密』のアレハンドラ役のテッサ・イアが似ていたせいかもしれません。なかなか興味深い映画でしたが、邦題『サビ』は若干分かりにくいのではないでしょうか。原題はFerrugemで直訳すると「鉄錆」という意味ですが、無教養、怠惰、活力の減退などマイナス・イメージの単語です。

 

     

   (アリ・ムリチバ監督、ティファニー・ドプケと友人ラケル役のクラリッサ・キスチ)

 

 B: 大阪梅田会場は上映されませんが、横浜ブルク13で上映されます。本日からアナ・カッツの『夢のフロリアノポリス』で後半が始まります。

 

『サビ』の簡単紹介記事は、コチラ20180924

 

アナ・カッツの「Sueño Florianópolis」*サンセバスチャン映画祭2018 ㉑2018年09月21日 12:39

         「ホライズンズ・ラティノ」第4弾―カルロヴィ・ヴァリのFIPRESCI受賞作品

 

       

★「ホライズンズ・ラティノ」部門12作品のうち3作が女性監督、うちアルゼンチンのアナ・カッツの新作コメディSueño Florianópolis」は、カルロヴィ・ヴァリ映画祭2018に正式出品され、既に国際映画批評家連盟賞 FIPRESCI ほか審査員特別賞、主演のメルセデス・モランが女優賞を受賞している。アナ・カッツは過去にもサンセバスチャン、カンヌ、サンダンスなどの映画祭にエントリーされている監督、紹介がアルゼンチンに偏ってしまうので迷っていましたが、やはり今年の目玉の一つであるのでアップすることにしました。

 

        

(トロフィーを手に喜びのアナ・カッツとメルセデス・モラン、カルロヴィ・ヴァリ映画祭2018

 

 Sueño Florianópolis(「Florianópolis Dream」)2018

製作:Bellota Films(仏、ドミニク・Barneaud/

    El Campo Cine(アルゼンチン、ニコラス・Avruj/ Laura Cine(同、アナ・カッツ)/

      Groch Films(ブラジル、カミラ・Groch/ Prodigo Films(同、ベト・ガウス)

監督・脚本・製作:アナ・カッツ

脚本:(共)ダニエル・カッツ(アナ・カッツ「Los Marziano」)

撮影:グスタボ・ビアッツィBiazzi(サンティアゴ・ミトレ『パウリナ』『エストゥディアンテス』)

編集:アンドレス・タンボルニノ(アナ・カッツ「Mi amiga del parque」)

美術:ゴンサロ・デルガド(『ウィスキー』)

音楽:エリコ・テオバルド(ブラジル)、マクシミリアノ・シルベイラ(「Mi amiga del parque」)

製作者:ニコラス・Avruj(エグゼクティブ、アルゼンチン『家族のように』)、ディエゴ・レルマン(アルゼンチン)、カミラ・Groch(ブラジル)、ベト・ガウス(同)、フランセスコ・シビタ(同)、ドミニク・Barneaud(仏)ほか

 

データ:製作国アルゼンチン=ブラジル=フランス、スペイン語・ポルトガル語、2018年、コメディ・ドラマ、106

映画祭・受賞歴:カルロヴィ・ヴァリ映画祭201874日)、国際映画批評家連盟賞・審査員特別賞・女優賞受賞。トロント映画祭(96日)、サンセバスチャン映画祭(924日)、シカゴ映画祭(1012日)、他

 

キャスト:グスタボ・ガルソン(夫ペドロ)、メルセデス・モラン(妻ルクレシア)、ホアキン・ガルソン(息子フリアン)、マヌエラ・マルティネス(娘フロレンシア、フロール)、マルコ・ヒッカ(ブラジル人マルコ)、アンドレア・ベルトラン(マルコの元恋人ラリッサ)、カイオ・ホロヴィッツ(マルコの息子セザル)、他

 

物語1992年夏、ルクレシアとペドロの夫婦は、二人のティーンエイジャーの子供フリアンとフロレンシアを連れて休暇を過ごすため、蒸し暑いブエノスアイレスを逃れてブラジルのリゾート地フロリアノポリスにやって来た。夫婦は少し前から別居をしていたがバカンスの計画は中止しなかった。ブラジル人のマルコの別荘を借り、マルコの元ガールフレンドのラリッサともどもバカンスを満喫することに。浜辺では波乗り、カラオケ、水中散歩、言葉の壁を越えて幾つか恋も生まれ、子供たちは子供たちで、大いにブラジルの休暇を楽しんでいたが、陽気なサンバのリズムにも次第に飽きがきて・・・思わぬ事態に遭遇することに。

 

      

 (左から、メルセデス・モラン、監督、ニコラス・Avruj、カルロヴィ・ヴァリ映画祭2018

 

1990年代のアルゼンチンでは、夏のバカンスはブラジルのリゾート地に行くのが中流階級のステータスだったらしい。国家破産を何度も繰り返し、国際的な援助のお蔭で救われても「喉元過ぎれば熱さを忘れる」が得意な国民は、プライドばかり高く実績に見合わない贅沢好き。現在も通貨ペソの下落でIMFに泣きついている。アルゼンチンはラテンアメリカでは、ブラジルと並んで映画先進国、大いに楽しませてもらっているが、政治経済的には問題国、隣国からは嫌われている。本作のコメディもそんな意地悪な視点から見ると面白いかもしれない。

 

         

        (ブラジルのリゾート地フロリアノポリスにやって来た家族)

 

アナ・カッツ Ana Katz は、1975年ブエノスアイレス生れ、監督、製作者、女優。

2002El juego de la silla

 (デビュー作、SSIFFシネ・エン・コンストルクシオン参加、メイド・イン・スぺインの

  スペシャル・メンション受賞、2003年サバルテギ・ニューディレクターズに正式出品)

2007Una novia errante

  (シネ・エン・コンストルクシオンIndustria賞受賞、カンヌ映画祭「ある視点」正式出品)

2011Los MarzianoSSIFFコンペティション部門正式出品)

2014Mi amiga del parque

 (シネ・エン・コンストルクシオン出品、サンダンス映画祭2016出品、審査員賞・脚本賞受賞)

2018Sueño Florianópolis省略

 

(本作撮影中の監督)

          

★女優としては、自作のEl juego de la silla」「Una novia errante」「Mi amiga del parque」のほか、フアン・パブロ・レベージャ&パブロ・ストールの『ウィスキー』04)、パコ・レオンのKIKI~愛のトライ&エラー~(ラテンビート2016)などに出演している。私生活ではウルグアイ出身の俳優、監督ダニエル・エンドレル2007年に結婚、『ウィスキー』では二人ともチョイ役だが共演している。

 

      

 (左から、ベレン・クエスタ、パコ・レオン、アナ・カッツ、『KIKI~愛のトライ&エラー~』) 

 

      

             (ダニエル・エンドレルとアナ・カッツ)

 

★脚本を共同執筆したダニエル・カッツは弟、他に「Los Marziano」も手掛けているほか、Una novia errante」のアシスタント監督、「Mi amiga del parque」に出演している

 

      

 

★本映画祭では3回上映(924日~26日)され、Q&Aには監督、メルセデス・モラン、マヌエラ・マルティネス、製作者のカミラ・Groch、美術を手掛けたゴンサロ・デルガドが登壇予定。デルガドはモンテビデオ出身のアート・ディレクター、監督、脚本家、俳優。美術では『ウィスキー』を手掛けている他、2016年、コメディLas toninas van al Esteを女優のベロニカ・ぺロッタと共同で監督、脚本も共同執筆、共に出演、ぺロッタは主役でした。子供を演じた二人は夫ペドロ役のグスタボ・ガルソンの実の子供だそうです。

追記:ラテンビート2018に邦題『夢のフロリアノポリス』で上映が決定しました。


ブラジル映画「Benzinho」が金のビスナガ*マラガ映画祭2018 ⑰2018年04月30日 17:31

              ブラジル中流家庭の或る一面を切り取った映画

 

      

★今年はブラジルから2作ノミネートされ、その一つウルグアイとの合作、グスタボ・ピッツィの長編第2Benzinhoが、イベロアメリカ部門の作品賞「金のビスナガ」を受賞した。ピッツィ監督は目下TVミニシリーズ撮影中で来マラガできなかったが、製作者を代表して参加したウルグアイの共同プロデューサー、アグスティナ・チアリノ金のビスナガのトロフィーを受け取りました。サンダンス映画祭2018でワールドプレミア、続いてロッテルダム映画祭、スウェーデンのヨーテボリ映画祭、ウルグアイのプンタ・デル・エステ映画祭などに出品された後、マラガにやってきました。ブラジル中流家庭の日常、新居の購入、息子の自立、母親の子離れの難しさをコメディタッチで描く。いずれにしろ子供は親の知らないうちに大人になってしまうのです。

 

         

      (トロフィーを手に喜びのスピーチをする製作者アグスティナ・チアリノ)

 

Benzinho(「Loveling」)2018

製作:Bubbles Project / Baleia Films / Mutante Cine / TvZERO

監督・脚本・製作者:グスタボ・ピッツィ、脚本クレジットはグスタボ・パッソス・ピッツィ

脚本(共):カリネ・テレス、レイテ・デ・ソウサ・ピッティ

撮影:ペドロ・ファエルステイン

音楽:ダニエル・ロランド、ペドロ・サー、マクシミリアノ・シルベイラ

編集:リビア・セルパ

美術:ディナ・サレム・レヴィ

衣装デザイン:ディアナ・レステ

メイクアップ:ビルヒニア・シルバ

製作者:タティアナ・レイテ(エグゼクティブ)、ロドリゴ・レティエル、アグスティナ・チアリノ(ウルグアイ)、フェルナンド・エプステイン(ウルグアイ)

 

データ:製作国ブラジル=ウルグアイ、ポルトガル語、2018年、コメディ・ドラマ、98分、撮影地リオデジャネイロ近郊のペトロポリス。サンダンス、ロッテルダム、ヨーテボリ、プンタ・デル・エステ、マラガ、各映画祭2018正式出品。マラガ映画祭イベロアメリカ部門の作品賞受賞作品、ブラジル公開823日。配給New Europe Film Saes

キャスト:カリネ・テレス(イレーニ)、オッタヴィオ・ミュラー(夫クラウス)、アドリアナ・エステベス(イレーニ姉ソニア)、コンスタンティノス・サリス(長男フェルナンド)、セザル・トロンコソ(ソニアの夫アラン)、マテウス・ソラーノ(パソカ)、ルカス・ゴウヴェア(登記所職員)、パブロ・リエラ(サンダー)、ビセンテ・デモリ、ルアン・テレ、アルトゥル&フランシスコ・テレス・ピッツィ(双子の3男4男)

 

物語:イレーニとクラウスが結婚したのは随分前のことだ。イレーニは38歳になりクラウスと言えば45歳になった。二人は4人の息子とリオデジャネイロの近郊ペトロポリスに住んでいる。子供が大きくなり狭くなった、おまけにガタのきた家から出たいと思っている。それで夫婦で一生懸命働き数年がかりで新居を建てようと夢をふくらませている。イレーニはハイスクールの卒業証書をもらうための勉強のかたわらセールスの仕事をしている努力家だ。一方クラウスは既に斜陽になったコピーショップを経営、書籍の販売もしているが転職を目論んでいる。16歳になる長男のフェルナンドはハンドボールの有力選手で、シーズンのハイライトの後、ドイツのプロチームからオファーをうけた。嬉しいニュースには違いないが、家族に微妙なさざ波が、特にイレーニが動揺しはじめた。自慢の息子フェルナンドとこんなに早く離れて暮らすとは考えてもいなかった。巣立ちするには早すぎる、新居には彼の部屋も用意していたのだ。もう少し後のはずだったのに間もなくドイツに行ってしまうのだ。フェルナンドのいない新しい生活に順応しなければならない。子供は知らないうちに大きくなってしまうのだ。

 

       ブラジルの観客は社会的階級を反映した映画を見る習慣がありません。

 

★今回映画祭にはウルグアイ側の製作者アグスティナ・チアリノだけが来マラガした。監督はTVミニシリーズの撮影に入ってしまって出席できなかったということです。プレス会見では「フレッシュで飾らない日常を描いた映画には価値があるのですが、ブラジルの観客には、このような社会的階級を反映した映画を見る習慣がありません」とコメント。これはどこの国にもいえることです。物語が身近すぎるから平凡に感じてしまうのです。カンヌやベルリンで評価されても変わりありません。 

          

      (一人で来マラガしたアグスティナ・チアリノ、プレス会見、419日)

 

★また「脚本を共同執筆した監督と主役イレーニを演じたカリネ・テレスは、実生活では夫婦ですが、彼らのビオピックではありません。双子の兄弟を演じた子役は夫妻の実の子供ですから、勿論ストーリーには家族のエッセンスが流れ込んでいます」ということでした。それで撮影中は実生活と映画の線引きがややこしかったこともあったようです。「今のママはどっちなの?」というわけです。

 

           

(双子の兄弟と次男ロドリゴ、映画から)

 

       

                    (家族揃って参加したロッテルダム映画祭2018

 

  監督キャリア&フィルモグラフィー 

グスタボ・ピッツィGustavo Pizziは、1977年ペトロポリス生れ、監督、製作者、脚本家。リオデジャネイロのフルミネンセ連邦大学UFF映画科卒。2006年ドキュメンタリー「Preterito Perfeito」を撮る。2010年、長編デビュー作Riscado(英題「Craft」)は、XAXW映画祭2011でワールドプレミアした。その後40か所以上の映画祭で上映された。同2010年、共同で監督した短編A Distração de Ivanでは製作も手掛け、カンヌ映画祭と併催の「批評家週間」に出品されている。2012年、ドキュメンタリーOncotoを撮る。本作Benzinhoが長編第2作目になる。TVシリーズの脚本を執筆、現在TVミニシリーズ「Gilda」の撮影中で来マラガできなかった。

 

             (長編デビュー作Riscado」のポスター

 

      

         (グスタボ・ピッツイ=カリネ・テレス夫妻、2010年ごろ)

 

★イレネ役のカリネ・テレスは、1978年、監督と同郷のペトロポリス生れの39歳、女優、脚本家、製作者。映画、TVシリーズ、舞台で活躍している。監督長編デビュー作「Riscado」に出演している。ペトロポリスは本作の撮影地、監督が生れ故郷を舞台に選んだのは、子供のころ過ごした好きな町だからです。夫役のオタヴィオ・ミュラーは、1965年リオデジャネイロ生れ、映画にTVにと出演キャリアの長いのベテランです。

 

           

 (イレネとクラウスの夫婦、映画から)

 

         

                 (イレネとソニア役のアドリアナ・エステベス、映画から)

 

         

    (ハンドボールの選手フェルナンド役のコンスタンティノス・サリス、映画から)

 

★出演者は、第1作に出演した俳優が多く、スタッフも重なっている印象でした。ウルグアイのもう一人のプロデューサー、フェルナンド・エプステインは、フアン・パブロ・レベージャ&パブロ・ストールの共同監督「25 Watts」や、公開された『ウィスキー』、同じくフェデリコ・ベイロフ『アクネACNE』やアドリアン・ビニエス『大男の秘め事』、最近ではパラグアイ映画ですが、ベルリン映画祭2018のマルセロ・マルティネシ「Las Herederas」など話題作を手掛けています。ウルグアイは小国で市場も限られているので、隣国アルゼンチンやブラジルとの合作が多い。個人的には金のビスナガを受賞するとは考えておりませんでしたが、もしかするとブラジル映画祭にエントリーされるかもしれません。

Las Herederas」の記事紹介は、コチラ20180216

 第15回ラテンビート2018上映が決定、邦題は『ベンジーニョ』

アルモドバル”Julieta”*カンヌ映画祭2016ノミネーション発表 ①2016年05月08日 15:50

                騒々しいカンヌの季節が巡ってきました!

 

           

               (カンヌ映画祭2016のポスター)

 

★第69回カンヌ映画祭は511日に開幕、結果発表が22日という長いショービジネスです。コンペティションには、スペインからはアルモドバルJulieta1作だけですが、ないよりあるだけマシでしょうか。カンヌに照準を合わせて映画製作をしている監督、まだキャストもロッシ・デ・パルマしかアナウンスされていなかったときからノミネーション確率は120パーセントだったから誰も驚かない。逆にノミネーションされなかったらサプライズだったでしょう。パルムドール5回目の挑戦です。過去には『オール・アバウト・マイ・マザー』99)で監督賞、『ボルベール〈帰郷〉』06)で脚本賞、しかし肝心のパルムドールには嫌われている。もっともスペイン人の受賞者は半世紀以上前のブニュエルだけかも。受賞作品はフランコ体制下では物議をかもしても当然だった『ビリディアナ』(1961)でした。他『抱擁のかけら』と『私が、生きる肌』はノミネーションだけ、『バッド・エデュケーション』はコンペ外でした。

 

  

                       (“Julieta”のポスター、2人のフリエタ)

 

★監督自身は兄弟の製作会社「エル・デセオ」が、例の「パナマ文書」に関係していたため大ツナミに襲われ窮地に立たされています。幸い日本ではアルモドバルの名前は報道されなかったと思う。監督は責任を認めていますが、ただしメディアの扇情的な報道の仕方には「遺憾」を表明しています。納税の義務は遅滞なく果たすと強調しておりました。そもそもの発端は、ジュネーブのモサック・フォンセカ法律事務所のPCがハッキングされて流失した機密文書、兄弟はこの法律事務所に1990年代の初めから委託していたようです。つまり他にもヴァージン諸島なども利用していたということでしょうか。 

   

                                    (最近のアルモドバル、20164月、マドリードにて)

 

★映画に戻ると、“Julieta”のテーマは、息が詰まるような性道徳観に風穴をあけたいという監督の思いというか挑戦があるように感じますが、共感するかしないかは、いずれ分かります。ヒロインは30年にわたって無理解に苦しむわけですが、母と娘の関係は難しい。今年のカンヌの顔ぶれは結構大物監督が目立ちます。アルモドバルの下馬評は悪くない位置につけているようですが、こればかりは蓋を開けてみないと分からない。

Julieta”のデータやキャスト紹介の記事は、コチラ⇒2016219

    

  

      メキシコでもなくアルゼンチンでもなく、ブラジル映画がノミネーション

 

★今年のカンヌにはメキシコは残れず、ブラジルからKleber Mendonça Filho1968年生れ、クレベール・メンドンサ・フィリオ)のAquarius(仏合作)がノミネートされています。長編は2作目ですが、1997年より多くの中短編、ドキュメンタリーなどを発表している。デビュー作O som ao redor(“Neighboring Sounds”)は、ロッテルダム映画祭2012で上映され、ヒューバート・バルシ基金を貰った。トロント映画祭を含め海外の映画祭でも上映された作品です。日本で毎年開催されるブラジル映画祭に出品されたかどうか、スペイン語映画ではないので調べておりません。オスカー賞2014のブラジル代表作品に選ばれた由。第2作はソニア・ブラガが演じる音楽評論家クララの物語、3人の子供も独立、夫にも先立たれ執筆活動はしていない。時間を自由に旅することができる身分だが、かつては上流階級用のアパートも老朽化し地上げ屋の餌食になろうとしている。こんなお話のようです。

 

 
               (ソニア・ブラガ、映画から)

 

★ブラジル映画は一時勢いがありましたが、メキシコやアルゼンチンに比較すると、3代映画祭には遅れをとっている印象でした。政治的にも不安定、オリンピックも開催できるかどうか心配なくらいです。しかしブラジルは本作以外にも短編部門にエントリーされていますから、盛り返しつつあるのかもしれません。昨年はコロンビア映画がやたら元気でしたが、今年は相対的にラテンアメリカは静かでしょうか。

 

★次回は「ある視点」部門ノミネーション、アルゼンチン映画La larga noche de Francisco Sanctisという若い二人の監督のデビュー作です。