アレックス・デ・ラ・イグレシアの新作*悲喜劇「Perfectos desconocidos」2017年12月17日 16:22

         パオロ・ジェノベーゼの『おとなの事情』リメイク版

 

★イタリア映画『おとなの事情』(2016、日本公開20173)は、イタリアのアカデミー賞ドナテッロ賞の作品・脚本賞受賞作品、興行成績約20億円をたたき出した話題作(邦題はmierdaというほどではありませんが、テーマとはズレているかも)。各国からリメイク版の要請があった中でアレックス・デ・ラ・イグレシアが権利を獲得、今回アナウンス通り121日にスペインで公開されました。スペイン版は同じ意味のPerfectos desconocidos(仮題「まったくの見知らぬ人」)です。多分こちらも日本公開が期待されますが、どんな邦題になるのでしょうか。今年『クローズド・バル』がスペインと同時に公開され、その折に本作についても簡単な紹介をいたしました。1年に長編2作というのは監督にとっても初めてのことではないか。

Perfectos desconocidos」の紹介記事は、コチラ2017226

 

    

 

★大体プロットはオリジナル版と同じようですから、詳細は公開時にアップするとして、キャスト陣を含む簡単なデータだけご紹介しておきます。批評家の評価は概ねポジティブで、公開最初の土曜日にはチケット売り場に行列ができたということですから、観客の評判もまずまずなのかもしれません。1213日ノミネーションの発表があった「ゴヤ賞2018」(授賞式23日)には『クローズド・バル』が録音部門に絡んでいるだけのようです。プレス会見では「観に来てください。そうすればその資金でまた次回作が撮れるから」とデ・ラ・イグレシア監督は相変わらず意欲的でした。

 

          

           (行列をする観客たち、122日、マドリードで 

 

  Perfectos desconocidos

製作:Telecinco Cinema / Nadie es perfecto / Pokeepie Films / Mediaset Espana /

    Movistar 協賛:スペイン教育・文化・スポーツ省

監督・脚本:アレックス・デ・ラ・イグレシア

脚本:ホルヘ・ゲリカエチェバリア (リメイク:パオロ・ジェノベーゼ、他)

撮影:アンヘル・アモロス

音楽:ビクトル・レイェス

編集:ドミンゴ・ゴンサレス

製作者:エグゼクティブ・プロデューサー(カロリナ・バング、キコ・マルティネス、パロマ・モリナ)、プロデューサー(アルバロ・アウグスティン、Ghislain Barrois

 

データ:スペイン、スペイン語、2017年、96分、ブラックコメディ、20171128日マドリードでプレミア、一般公開121

 

主要キャスト

エドゥアルド・フェルナンデス(アルフォンソ、整形外科医)

ベレン・ルエダ(アルフォンソ妻エバ、臨床心理医)

エルネスト・アルテリオ(アントニオ、弁護士)

フアナ・アコスタ(アントニオ妻アナ、主婦?)

エドゥアルド・ノリエガ(エドゥアルド、タクシードライバー)

ダフネ・フェルナンデス(ブランカ、獣医)

ペポン・ニエト(ペペ、ギムナジウムの中学教師)

 

プロット:夏の月食の晩、お互い相手の人生を分かりあっていると思っている4つのカップルが、夕食を共にすることにした。ホストはアルフォンソとエバ、客人はアントニオ&アナ夫婦、新婚ホヤホヤのエドゥアルド&ブランカ、「新恋人ルシア」の都合がつかなく一人でやってきたペペの5人。宴もたけなわ、各自のスマートフォンをオープンにして遊ぶゲームをブランカが提案する。掛かってきたメールやメッセージは即座に声に出して読み上げねばならないというもの。一瞬しり込みする面々、しかし一人二人とスマホがテーブルに並んでいく。秘密など何もないはずの夫婦や友人間に次々に明らかになっていく知られたくない不都合な事柄、秘密が暴かれ丸裸になると人間どうなるか、プライバシーの喪失はアイデンティティの喪失につながるという怖ろしいオハナシ。ワンシチュエーション・コメディ。

 

   

  (左から、ベレン・ルエダ、エドゥアルド・ノリエガ、フアナ・アコスタ、エルネスト・

  アルテリオ、エドゥアルド・フェルナンデス、ダフネ・フェルナンデス、ペポン・ニエト)

 

         プライバシーの喪失はアイデンティティの喪失を意味する

 

★オリジナル版『おとなの事情』とプロットはあまり変わっていない印象です。便利このうえないスマホもひとたび使い方を誤ると暴虐な武器になり、スマホが独裁者となって人間を支配するという本末転倒が起きる。痛くもない腹をさぐられ、信頼関係は崩れてしまう。プライバシーの喪失はアイデンティティの喪失を意味するがテーマでしょうか。

 

デ・ラ・イグレシア(1965、ビルバオ)は20146月、女優カロリナ・バング1985、テネリフェ)と20歳の年齢差を超えて結婚、約1年前の2016年に女の子フリアの父親となった。来年にはもう一人の女の子が生まれるそうです。カロリナ・バングはまだ4ヵ月とかでウエストを絞ったドレスにハイヒール姿で新作のプレゼンテーションに出席した。今作には出演はなくエグゼクティブ・プロデューサーを務めている。元ファッションモデルだけあって身長の高さは半端じゃない。ツーショットは常に頭半分ほど違う。女優復帰が待たれる。

 

  

(新作Perfectos desconocidos」のプレゼンに現れた夫妻、1129マドリードにて

 

★脚本は、前作『クローズド・バル』を手掛けたホルヘ・ゲリカエチェバリア、リメイク版がオリジナルを超えることは簡単ではないが、果たして今作は超えられるか、脚本家の料理の腕の見せどころです。現実には『おとなの事情』のように次々と事件が起こるとは思えないが、携帯のなかにデーモンが隠れていることは確かでしょう。掛けてくる相手は、まさかゲームをしているとは思わないから時と場合を選ばない。登場人物も観客も張り詰めた緊迫感でドキドキハラハラする。人の秘密は覗きたいものだが、かなり危険なゲーム、実際こんな悲喜劇にはならないはずだが、大昔から秘密をもつことは罪ではないし、曖昧にしておいたほうがベターなケースもあるでしょう。

 

★ホームパーティのホスト役エドゥアルド・フェルナンデスは、コメディは何本か出演しているがデ・ラ・イグレシア作品は意外や初めて、ホステス役のベレン・ルエダ、イネス・パリスの第4作「La noche que mi madre mató a mi padre」の辛口コメディに初挑戦、かなり話題をよんだ。コメディが気に入ったのか今度はデ・ラ・イグレシア作品に初挑戦した。パリス作品でも両人は夫婦役を演じていた。弁護士夫婦を演じたエルネスト・アルテリオフアナ・アコスタは実際でも夫婦、ペポン・ニエトはデ・ラ・イグレシアの常連の一人、幾つになっても老けないエドゥアルド・ノリエガ、当ブログ初登場のダフネ・フェルナンデス、テレビの紹介番組に出まくって宣伝に努めている旬の女優。芸達者揃いで危なげないが、問題はチームワークでしょうか。

 

   

★ゴヤ賞2018には絡んでいないようですが、コメディはだいたい大賞候補には縁遠いようです。来年にはオリジナル版同様、大笑いさせてもらえるでしょうか。

 

La noche que mi madre mató a mi padre」の紹介記事は、コチラ2016425


スペイン内戦をバスクを舞台にコメディで*「La higuera de los bastardos」2017年12月03日 16:28

           アナ・ムルガレンの「La higuera de los bastardos」―小説の映画化

  

    

★今年のサンセバスチャン映画祭で上映された(928日)ボルハ・コベアガFe de etarraは、カンヌで話題になった『オクジャ』と同じネットフリックスのオリジナル作品だったから、さっそく『となりのテロリスト』の邦題で配信されました。エタETA(バスク祖国と自由)の4人のコマンドが、ワールドカップ2010を時代背景にマドリードで繰り広げる悲喜劇。脚本にディエゴ・サン・ホセと、大当たり「オチョ・アペリード」シリーズ・コンビが、今度は人気のハビエル・カマラを主役に迎えて放つ辛口コメディ。いずれアップしたい。

 

★今回アップするアナ・ムルガレンLa higuera de los bastardosは、スペイン内戦後のビスカヤ県ゲチョGetxoが舞台、時代は大分前になるがスペイン人にとって、特にバスクの人にとっては、そんなに遠い昔のことではない。本作はラミロ・ピニーリャ(ビルバオ1923~ゲチョ2014)の小説 La higuera2006)の映画化。ピニーリャはビスカヤについての歴史に残る作品を書き続けたシンボリックな作家、1960年に Las ciegas hormigas でナダル賞、2006年、バスクのような豊かだが複雑な世界についての叙事詩的な「バスク三部作」ほか、彼の全作品に対して文学国民賞が贈られている。ヘンリー・デイヴィッド・ソローの回想録『ウォールデン 森の生活』(1854刊)から採った自宅「ウォールデンの家」で執筆しながら人生のほとんどを過ごした。

 

    

     (ディケンズの『デイヴィッド・コパフィールド』を手にしたピニーリャ)

 

★「健康だし未だ頭もはっきりしている。実際のところ私の精神年齢は20歳なんですよ。死は怖くはありませんが、ただ残念に思うだけです。まだそこへ行きたいとは考えていません、何もないのでしょうね。健康が続くかぎり生きていかねばなりません」とインタビューに応えるラミロ・ピニーリャ。若いころは生活のために船員、ガス会社勤務など多くの職業を転々、小説家デビューは1960年と比較的遅かった。以降半世紀以上バスクの物語を書き続けた。インタビューの約1ヵ月後、1023日老衰のため死去、享年91歳でした。

 

  

 (「ウォールデンの家」でインタビューに応じるラミロ・ピニーリャ、2014914日)

 

 

 「La higuera de los bastardosThe Bastards Fig Tree2017

製作:The Fig Tree AIE / Blogmedia 協賛Ana Murugarren PC

監督・脚本・編集:アナ・ムルガレン

原作:ラミロ・ピニーリャ La higuera

撮影:Josu Inchaustegui(ヨス・インチャウステギ?)

録音:セルヒオ・ロペス=エラニャ

音楽:アドリアン・ガルシア・デ・ロス・オホス、アイツォル・サラチャガ

製作者:ヨアキン・トリンカダ(Joaquin Trincada

データ:製作国スペイン、スペイン語、2017、コメディ・スリラー、103分、2016年夏ビスカヤ県ゲチョで撮影。11月開催のオランダのフリシンゲン市「Film By The Sea2017に正式出品、スペイン公開1124

 

キャスト:カラ・エレハルデ(ロヘリオ)、エルモ(カルロス・アレセス)、ペパ・アニオルテ(村長の妻シプリアナ)、ジョルディ・サンチェス(村長ベニート)、ミケル・ロサダ(ペドロ・アルベルト)、アンドレス・エレーラ(ルイス)、ラモン・バレア(ドン・エウロヒオ)、イレニア・バグリエットYlenia Bagliettoロレト)、マルコス・バルガニョン・サンタマリア(ガビノ)、キケ・ガゴ(ガビノ父シモン・ガルシア)、エンリケタ・ベガ(ガビノ母)、アレン・ロペス(ガビノ兄アントニオ)、アスセナ・トリンカド(ガビノ姉妹)、イツィアル・アイスプル(隣人)他

 

プロット・解説:市民戦争が終わった。ファランヘ党のロヘリオは、毎晩のこと仲間と連れ立ってアカ狩りに出かけていた。なかにはアカと疑われる人物も含まれていた。ある日のこと、一人のマエストロとその長男を殺害した。下の息子が憎しみを込めた目でロヘリオを睨んでいた。その視線が彼の人生をひっくり返してしまう。少年は父と兄を埋葬し、その墳墓にはイチジクの小さな苗を植えることだろう。やがて大人になれば復讐するにちがいない。ロヘリオは己れを救済するために似非隠者になり、毎朝毎晩イチジクがすくすくと成長するように世話しようと決心する。新しい村長の妻シプリアナは、ロヘリオ似非隠者の名声を利用して、この地を聖地の一大センターに変えようと画策する。そんな折りも折り、家族を捨ててきた告げ口屋の強欲なエルモが現れる。イチジクの木の下に宝物を隠しているにちがいないと確信して、ロヘリオから離れようとしなくなる。10歳の少年ガビノの視点とロヘリオを交錯させながら物語は進んでいく。

 

   

            (マルコス・バルガニョン・サンタマリアが扮するガビノの視線)

 

    

          (父親のキケ・ガゴと兄のアレン・ロペス)

 

(父親と兄を埋葬するガビノ)

  

     寓意を含んだ贖罪の物語、紋切型の市民戦争を避ける

 

★アナ・ムルガレンの長編第2作。作品数こそ少ないがキャリは長い。2006年刊行の原作を読んだとき、二つの映画のシーンが思い浮かんだという。「一つはブニュエル『砂漠のシモン』の中で柱に昇ったままのシモン、もう一つがフェリーニ『アマルコルド』の中で大木に登ったままの狂気の伯父さんのシーンでした。その黒さのなかに思いつかないようなアスコナ流のユーモアのセンスに出会って驚いた」と。「本作で製作を手掛けたトリンカドと私は作家と知り合いになった。ピニーリャ自身が映画化するならと薦めてくれたのが本作でした。多分、この小説は突飛でシニカルなユーモアが共存しているからだと思います。コメディとドラマがミックスされている非常にスペイン的な何かがあるのです」とも。

 

★ステレオタイプ的な市民戦争ではなく、コメディで撮りたかったという監督。コメディを得意とするカラ・エレハルデカルロス・アレセスペパ・アニオルテを主軸に、常連のミケル・ロサダアスセナ・トリンカド、バスク映画に欠かせないラモン・バレアを起用した。資料に忠実すぎて動きが取れなくならないように、演技にはあまり制約をつけなかったようです。

 

   

(ファランヘ党員のロヘリオ、カラ・エレハルデ)

 

(密告屋エルモ、カルロス・アレセス)

   

★「スペインは対立を克服できなかったヨーロッパで唯一の国、それを現在まで引きずっている。そのため今もってイチジクの木の下で眠っている人は浮かばれない」と語るエレハルデ。「カラ・エレハルデのような優れた俳優に演じてもらえた。ロヘリオの人間性に共感してもらえると思います。このファランヘ党員は隠者になったことを悔やんでいない。はじめは恐怖から始まったことだが、次第にイチジクの木を育てることに寛ぎを感じ始めてくる」と監督。当然「粗野なメタファー満載だ」との声もあり、評価は分かれると予想しますが、コメディで描く内戦の悲痛は、深く心に残るのではないか。

 

    

          (ポスターを背に、ロヘリオ役のカラ・エレハルデ)

 

 監督キャリア・フィルモグラフィ

アナ・ムルガレンAna Murugarren1961年ナバラのマルシーリャ生れ、監督、編集者、脚本家。バスク大学の情報科学部卒。198090年代に始まったバスクのヌーベルバーグのメンバーとしてビルバオで編集者としてキャリアを出発させる。メンバーには本作で製作を手掛けたヨアキン・トリンカド、ルイス・マリアス、『悪人に平穏なし』のエンリケ・ウルビス、『ブランカニエベス』のパブロ・ベルヘル、日本ではお馴染みになったアレックス・デ・ラ・イグレシアなどがいる。 

 

2005年「Esta no es la vida privada de Javier Krahe」ドキュメンタリー、監督・編集

   (ヨアキン・トリンカドとの共同監) 

2011年「El precio de la libertad」監督・編集(TVミニシリーズ2話)

2012年「La dama guerrera」監督・編集(TV映画)

2014年「Tres mentiras」監督・編集、長編映画デビュー作

2017年 本作割愛

他にエンリケ・ウルビス、パブロ・ベルヘル、ヨアキン・トリンカドの編集を手掛けている。

 

    

         (アナ・ムルガレンとヨアキン・トリンカド、20167月)

 

★受賞歴:「Tres mentiras」がフィリピンのワールド・フィルム・フェス2015で「グランド・フェスティバル賞」を受賞、他に主役のノラ・ナバスが女優賞を受賞した。他にサラゴサ映画祭2015作品賞、サモラ県のトゥデラ映画祭20141回監督賞他を受賞している。エンリケ・ウルビスの「Todo por la pasta」でシネマ・ライターズ・サークル1991の最優秀編集賞を受賞している。

 

        

             (本作撮影中のアナ・ムルガレン監督)


パブロ・ベルヘルの新作コメディ「アブラカダブラ」*いよいよ今夏公開2017年07月05日 18:37

           大分待たされましたが84日スペイン公開が決定

 

   

『ブランカニエベス』の成功で国際的にも知名度を上げたパブロ・ベルヘルの第3Abracadabra がいよいよ公開されることになりました(84日)。どうやら9月開催のサンセバスチャン映画祭を待たないようです。昨年の初夏にクランクイン以来、なかなかニュースが入ってきませんでしたが、YouTubeに予告編もアップされ笑ってもらえる仕上りです。モノクロ・サイレントの前作は、2012年のトロント映画祭を皮切りにサンセバスチャン、モントリオール、USAスパニッシュ・シネマ、ロンドン・・・と瞬く間に世界の各映画祭を駆け抜けました。サンセバスチャン映画祭では金貝賞こそ逃しましたが、審査員特別賞他を受賞、翌年のゴヤ賞は作品賞の大賞以下10冠を制覇、米アカデミーのスペイン代表作品、アリエル賞などなど受賞歴は枚挙に暇がありません。ということで2013年、はるばる日本にまでやってきてラテンビート上映後、公開に漕ぎつけたのでした。新作は果たして柳の下の二匹目のドジョウとなるのでしょうか。

 

 Abracadabra  2017

製作:Arcadia Motion Pictures / Atresmedia Cine / Persefone Films / Pegaso Pictures / Movistar +  Noodles Production(仏)/ Films Distribution(仏)

監督・脚本・音楽:パブロ・ベルヘル

撮影:キコ・デ・ラ・リカ

音楽:アルフォンソ・デ・ビラジョンガ

編集:ダビ・ガリャルト

衣装デザイン:パコ・デルガド

美術:アンナ・プジョル・Tauler

プロダクション・デザイン:アライン・バイネエAlain Bainee

キャスティング:ロサ・エステベス

メイクアップ&ヘアー:Sylvie Imbert(メイク)、ノエ・モンテス、パコ・ロドリゲス(ヘアー)他

製作者:サンドラ・タピア(エグゼクティブ)、イボン・コルメンサナ、イグナシ・エスタペ、アンヘル・ドゥランデス、ジェローム・ビダル、他

 

データ:スペイン=フランス、スペイン語、2017年、ブラック・コメディ、ファンタジー、サスペンス、カラー。公開:スペイン84日、フランス111日、配給ソニー・ピクチャー

 

キャスト:マリベル・ベルドゥ(カルメン)、アントニオ・デ・ラ・トーレ(カルロス)、ホセ・モタ(カルメンの従兄ペペ)、ジョセップ・マリア・ポウ(ドクター・フメッティ)、キム・グティエレス(ティト)、プリスシリャ・デルガド(トニィ)、ラモン・バレア(タクシー運転手)、サトゥルニノ・ガルシア(マリアノ)、ハビビ(アグスティン)、フリアン・ビジャグラン(ペドロ・ルイス)他

 

プロット:ベテラン主婦のカルメンとクレーン操縦士のカルロス夫婦は、マドリードの下町カラバンチェルで暮らしている。カルロスときたら寝ても覚めても「レアル・マドリード」一筋だ。そんな平凡な日常が姪の結婚式の当日一変する。カルロスが結婚式をぶち壊そうとしたので、アマチュアの催眠術師であるカルメンの従兄ペペが仕返しとして、疑り深いカルロスに催眠術をかけてしまった。翌朝、カルメンは目覚めるなり夫の異変に気付くことになる。霊が乗り移って自分をコントロールできないカルロス、事態は悪いほうへ向かっているようだ。そこで彼を回復させるための超現実主義でハチャメチャな研究が始まった。一方カルメンは、奇妙なことにこの「新」夫もまんざら悪くないなと感じ始めていた。果たしてカルロスは元の夫に戻れるのか、カルメンの愛は回復できるのだろうか。

 

        

             (カルメンとカルロスの夫婦、映画から)

 

★大体こんなお話のようなのだが、監督によれば「新作は『ブランカニエベス』の技術関係のスタッフは変えずに、前作とは全くテイストの違った映画を作ろうと思いました。しかし、二つは違っていても姉妹関係にあるのです。私の全ての映画に言えることですが、中心となる構成要素、エモーション、ユーモア、驚きは共有しているのです」ということです。キコ・デ・ラ・リカパコ・デルガドアルフォンソ・デ・ビラジョンガなどは同じスタッフ、キャストもマリベル・ベルドゥジョセップ・マリア・ポウラモン・バレアなどのベテラン起用は変わらない。『SPY TIMEスパイ・タイム』のイケメンキム・グティエレスの立ち位置がよく分からないが、カルロスに乗りうつった悪霊のようです。監督はそれ以上明らかにしたくないらしい。コッポラの『地獄の黙示録』のカーツ大佐が手引きになると言われても、これでは全く分かりませんが「映画館に足を運んで確かめてください」だと。若手のプリスシリャ・デルガドは、アルモドバルの『ジュリエッタ』でエンマ・スアレスの娘を演じていた女優。

 

  

       (撮影中の左から、ホセ・モタ、マリベル・ベルドゥ、ベルヘル監督)

 

★マリベル・ベルドゥ以下三人の主演者、アントニオ・デ・ラ・トーレ、ホセ・モタの紹介は以下にアップしています。アントニオ・デ・ラ・トーレは、マヌエル・マルティン・クエンカの『カニバル』やラウル・アレバロのデビュー作『物静かな男の復讐』で見せた内省的な暗い人格、デ・ラ・イグレシアの『気狂いピエロの決闘』の屈折した暴力男とは全く異なるコミカルな男を演じている。多分ダニエル・サンチェス・アレバロのコメディ『デブたち』のノリのようだ。どんな役でもこなせるカメレオン役者だが、それが難でもあろうか。デ・ラ・イグレシアの『刺さった男』のホセ・モタについては、「アブラカダブラ」で紹介しております。

 

         

               (ペペ役のホセ・モタ、映画から)

 

「アブラカダブラ」の監督以下スタッフ&キャスト紹介は、コチラ2016529

マリベル・ベルドゥの紹介記事は、コチラ2015824

アントニオ・デ・ラ・トーレの紹介記事は、コチラ201398


『The Olive Tree』 Q&A*ラテンビート2016 ⑧2016年10月17日 16:32

          イシアル・ボリャイン『The Olive TreeQ&A

 

★「イシアル・ボリャイン監督が、エリセの『エル・スール』に出ていた女優さんに衝撃をうけた」というツイートに衝撃を受けているオールド・シネマニアもいるでしょう。もっとも1985年公開だからリアルタイムで見た人は、そろそろ化石人間入りでしょう。2回め上映の109日で鑑賞しました。Q&Aに登壇した監督、さばさばした飾らない人柄がにじみ出ていて好感度バツグンでした。アイディアの発端、キャスティングの苦労、オリーブの樹はスペインあるいは地中海文化のメタファーなどなど、前日の第1回と大体同じような内容だったでしょうか。「一番お金がかかったのは、〈モンスター〉オリーブの樹のオブジェ製作とその移動だった」には、会場から笑いが上がった。 

     

     (Q&Aに登壇したボリャイン監督と映画祭ディレクターのカレロ氏、109日)

 

        費用が一番かかったのはオリーブの樹のオブジェとドイツへの移動!

 

A こんなプロットはあり得ないと思いながらも、笑いを噛みころして愉しむことができました。ピレネーの向こうはアフリカと言われながらも、EU一人勝ちのドイツに対するスペイン庶民の屈折した感情がわかりやすく描かれていた。ヨーロッパの南北問題、経済の二極化が深層にあるようです。もともとスペイン人は、地道に働くドイツ人が嫌い、それにフランコ時代に出稼ぎに行って辛い仕事をした記憶がトラウマになっている。

B 場内から笑い声が聞こえてこなかったのは難聴のせいかな。これじゃ面白くないのかと誤解されてしまうから、お行儀良いのも良し悪しだね。揶揄されたドイツの観客が大いに笑ってくれたと、監督は嬉しそうに話していたからね。

 

A ドイツ人は余裕があるから寛大なのです。それにしても「費用が一番かかったのはオリーブの樹のオブジェ製作とドイツへの移動」には笑えました。

B: スペイン人のアメリカ嫌いも相当なもの、スペイン人が僻みっぽいのには貧しさと関係があるように思います。豊かな国に憧れながらも大国に翻弄される恨みが染みついている。「自由の女神像」に罪はないのに叩き壊されて気の毒でした。

 

A あんなレプリカを庭に設置していたなんてびっくりものです。バブルとは弾けるまで気がつかない。アルマの父も叔父もバブルの犠牲者だと考えているように描かれていたが、やはり騙されやすいスペイン人気質も一因ですね。

B: 実際には起こりそうもない「オリーブ奪還作戦」も、デュッセルドルフへの珍道中もスペイン気質ならではの展開、アルマ・キホーテに従う二人のサンチョ・パンサ、恋人未満のラファ、叔父アルカチョファの再生劇です。

 

 

     (一番の金食い虫だったモンスター・オリーブのオブジェ)

 

A 作品紹介に書いたことだけれど、アルマは表層的には祖父のために起こした行動に見えますが、実は自分の生き方を変えたかった。ラファはアルマへの愛ゆえに嘘と気づいていたのに付き添わずにいられなかったし、叔父も抱え込んだ借金と妻との人生の立て直しをしたかった。

 

アルマの原点にある男性不信、父と娘の和解

 

B: 特にアルマは境地に陥っていた。二十歳にもなっているのに自分の将来図が描けていない。ラファを好きなのに受け入れられない。それが少女時代に受けた人格者といわれる人からの性的いたずらだった。親にも話せず、勇気を出して打ち明けると、父親からデタラメを言っていると逆に詰られてしまう。 

A: 予告編からは見えてこなかった核心がこのシーンでした。アルマの父親を含めた男性一般に対する不信感でした。父親を許していないことが祖父に肩入れする理由の一つ。父親も今では娘を守ることができなかったことを後悔しているが、謝罪を切り出せない。

 

B: 素直に謝れない苦悩を抱え込んでいる。これが最後の父と娘の和解シーンに繋がっていく。見ていてロバート・ロレンツの『人生の特等席』を思い浮かべてしまいました。

A: クリント・イーストウッドが寡夫の野球スカウトマンになった映画ですね。娘をエイミー・アダムスが演じた。父親は娘が6歳頃にレイプされそうになったことがトラウマになっている。娘は覚えていないが、突然親戚に預けられた理由を父から嫌われたと勘違いして大人になる。

B: 最後に真相が分かって父と娘は和解する話でした。

 

  

         (生き方に行き詰まって混乱しているアルマ、映画から)

 

A: 叔父も最後にやっと顔を出した別居中の妻と手をつなぎ、いずれアルマもラファと結ばれることが暗示されて映画は終わる。

B: 祖父を救うことはできなかったが、観客は幸せな気分で席を立てるというわけです。コメディとしてもヒューマンドラマとしても品良く仕上がっていた。

 

A: 伏線の貼り方も巧みで、例えば8歳のアルマが切り倒されそうなオリーブの樹に登って抵抗するシーンは、エネルギー関連会社に飾られたオブジェに攀じ登るシーンとリンクする。
B
: 祖父が接木の方法をアルマに教えるシーンは、デュッセルドルフから持ち帰ったオリーブの小枝の接木に繋がっていく。ツボを押さえた構成に感心した。

 

 

    (アルマに接木の仕方を教える祖父ラモン、映画から)


A
: ディレクターのカレロ氏による監督キャリア紹介、この映画のアイディアはどこから生れたか、樹齢2000年の「モンスター・オリーブ」の樹をどのようにして見つけたか、祖父のキャスティングはどうやって見つけたか、などが会場で話し合われた。

B: 作品紹介で既に紹介しておりますから、そちらにワープして下さい。

 

A: やはり祖父役探しに苦労したと語っていました。オーディション会場にきてくれる人がいなくて、演ってもらえそうな人に声をかけたが「忙しい」と断られたとか(笑)。

B: トラクターから下りてきた農民のマヌエル・クカラさんに監督とキャスティング担当のミレイア・フアレスが一目惚れ、出演を粘って引き受けてもらえた。

A: 彼のように農作業をしている手をしたプロの俳優さんはいませんからね、現地で見つけるしかない。セリフは少なくてもアマチュア離れしていた。

 

B: セリフが少ないのはラファ役も同じ、却って難しい。ペプ・アンブロスも難しかったと語っていた。却ってアナ・カスティーリョ(アルマ)やハビエル・グティエレス(叔父)のほうが演りやすい。グティエレスはアルベルト・ロドリゲスの『マーシュランド』(14)でゴヤ賞を含めて主演男優賞を総なめしたが、こちらは思慮深い刑事役でした。

A: ロドリゲス監督の『スモーク・アンド・ミラーズ』は、今年のラテンビートの目玉でした。

B 来春、劇場公開が決まったようで、見逃した方で、人生を立て直したい人、幸せになりたい人にお薦めの映画です。

The Olive Tree』(“El olivo”)の作品紹介は、コチラ⇒2016719

  

『名誉市民』 アルゼンチン*ラテンビート2016 ⑦2016年10月13日 11:17

         『ル・コルビュジエの家』の監督コンビが笑わせます!

 

 

★ベネチア映画祭2016正式出品、ガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーン『名誉市民』原タイトルは、El ciudadano ilustre”、〈名誉市民〉を演じるオスカル・マルティネス男優賞を受賞しました。東京国際FF「ワールド・フォーカス」部門と共催上映(3回)作品です。『ル・コルビュジエの家』の監督コンビが放つブラック・ユーモア満載ながら、果たしてコメディといえるかどうか。アルゼンチン人には、引きつる笑いに居心地が悪くなるようなコメディでしょうか。

 

   

   (男優賞のトロフィーを手に喜びのオスカル・マルティネス、ベネチア映画祭にて

 

  『名誉市民』El ciudadano ilustre”“The Distinguished Citizen

製作:Aleph Media / Televisión Abierta / A Contracorriente Films / Magma Cine

     参画ICAA / TVE 協賛INCAA 

監督・製作者・撮影:ガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーン

脚本:アンドレス・ドゥプラット

音楽:トニ・M・ミル

美術:マリア・エウヘニア・スエイロ

編集:ヘロニモ・カランサ

録音:アドリアン・デ・ミチェーレ

衣装デザイン:ラウラ・ドナリ

製作者:(エグゼクティブ)フェルナンド・リエラ、ヴィクトリア・アイゼンシュタット、エドゥアルド・エスクデロ他、(プロデューサー)フェルナンド・ソコロビッチ、フアン・パブロ・グリオッタ他

 

データ:アルゼンチン=スペイン、スペイン語、2016年、118分、シリアス・コメディ、撮影地バルセロナ他、配給元Buena Vista、公開:アルゼンチン・パラグアイ9月、ウルグアイ10月、スペイン11

映画祭・受賞歴:ベネチア映画祭2016正式出品、オスカル・マルティネス男優賞受賞、釜山映画祭、ワルシャワ映画祭、ラテンビート、東京国際映画祭

 

キャストオスカル・マルティネス(ダニエル・マントバーニ)、ダディ・ブリエバ(アントニオ)、アンドレア・フリヘリオ(イレネ)、ベレン・チャバンネ(フリア)、ノラ・ナバス(ヌリア)、ニコラス・デ・トレシー(ロケ)、マルセロ・ダンドレア(フロレンシオ・ロメロ)、マヌエル・ビセンテ(市長)、他

 

解説:人間嫌いのダニエル・マントバーニがノーベル文学賞を受賞した。40年前にアルゼンチンの小さな町を出てからはずっとヨーロッパで暮らしている。受賞を機にバルセロナの豪華な邸宅には招待状が山のように届くが、シニカルな作家はどれにも興味を示さない。しかし、その中に生れ故郷サラスの「名誉市民」に選ばれたものが含まれていた。ダニエルは自分の小説の原点がサラスにあることや新しい小説の着想を求めて帰郷を決心する。しかしそれはタテマエであって、ホンネは優越感に後押しされたノスタルジーだったろう。幼な友達アントニオ、その友人と結婚した少年時代の恋人イレネ、町の有力者などなどが待ちかまえるサラスへ飛びたった。「預言者故郷に容れられず」の諺どおり、時の人ダニエルも「ただの人」だった?

 

    

          (ノーベル文学賞授賞式のスピーチをするダニエル)

 

   

           (サラスの人々に温かく迎え入れられたダニエル)

 

     

           (幼友達アントニオと旧交を温めるダニエル)

 

★ベネチア映画祭では上映後に10分間のオベーションを受けたという。56分ならエチケット・オベーションと考えてもいいが、10分間は本物だったのだろう。「故郷では有名人もただの人」なのは万国共通だから、アルゼンチンの閉鎖的な小さな町を笑いながら、我が身と変わらない現実に苦笑するという分かりやすい構図が観客に受けたのだろう。勿論オスカル・マルティネスの洒脱な演技も成功のカギ、アルゼンチンはシネアストの「石切場」、リカルド・ダリンだけじゃない。人を食った奥行きのあるシリアス・コメディ。

 

  

    (左から、ガストン・ドゥプラット、マリアノ・コーン、ベネチア映画祭にて)

 

2度の国家破産にもかかわらず、気位ばかり高くて近隣諸国を見下すことから、とかく嫌われ者のアルゼンチン、平和賞2、生理学・医学賞2,科学賞1と合計でも5個しかなく、文学賞はゼロ個、あまりノーベル賞には縁のないお国柄です。ホルヘ・ルイス・ボルヘスやフリオ・コルタサル以下、有名な作家を輩出している割には寂しい。経済では負けるが文化では勝っていると思っている隣国チリでは、「ガブリエラ・ミストラル(1945)にパブロ・ネルーダ(1971)と2個も貰っているではないか」と憤懣やるかたない。アルゼンチン人のプライドが許さないのだ。そういう屈折した感情抜きにはこの映画の面白さは伝わらないかもしれない。ボルヘスは毎年候補に挙げられたが、スウェーデン・アカデミーは選ばなかった。それは隣国チリの独裁者ピノチェトが「ベルナルド・オイギンス大十字勲章」をあげると言えば貰いに出掛けたり、独裁者ビデラ将軍と昼食を共にするような作家を決して許さなかったのです。これはボルヘスの誤算だったのだが、ノーベル賞は文学賞といえども極めて政治的な賞なのです。

 

オスカル・マルティネス1949年ブエノスアイレス生れ。ダニエル・ブルマンのEl nido vacío08)の主役でサンセバスチャン映画祭「男優賞」を受賞、カンヌ映画祭2015「批評家週間」グランプリ受賞のサンティアゴ・ミトレの『パウリーナ』(ラテンビート)、公開作品ではダミアン・ジフロンの『人生スイッチ』(エピソード5「愚息」)に出演しているベテラン。ベネチアのインタビューでは、「30代から40代の若い監督は、おしなべてとても素晴らしい」と、若い監督コンビに花を持たせていた。

 

     

            (撮影中のドゥプラット監督とマルティネス)

 

 

『KIKI~恋のトライ&エラー』 パコ・レオン*ラテンビート2016 ⑥2016年10月08日 10:33

        パコ・レオンの新作コメディ―テーマはままならぬ恋の行方

 

★当ブログで何回も登場させているコメディの旗手パコ・レオン、やっと日本にやってきました。実母カルミナと実妹マリア・レオンを主人公にしたコメディCarmina o revienta”(12)で鮮烈デビュー、2014年、続編“Carmina y amén”もヒットを飛ばし、2015年には早くもマラガ映画祭のエロイ・デ・ラ・イグレシア賞を受賞した。第3KIKI~恋のトライ&エラー』も公開後たちまち100万人突破と勢いは止まらない。スペインは経済も政治も不安定から脱却できないから、庶民はコメディを見て憂さ晴らししているのかもしれないが、そればかりではないでしょう。

 

  

 (出演者を配したポスター、クマ、ワニ、ライオンなど各々の愛のかたちが描かれている

 

KIKI~恋のトライ&エラー』Kiki, el amor se hace”)

製作: ICAA / Mediaset España / Telecinco Cinema / Vértigo Films

監督:パコ・レオン

脚本(共):パコ・レオン、フェルナンド・ペレス、ジョッシュ・ローソン(フィルム)

撮影:キコ・デ・ラ・リカ

編集:アルベルト・デ・トロ

キャスティング:ピラール・モヤ

美術:ビセンテ・ディアス、モンセ・サンス

衣装デザイン:ハビエル・ベルナル、ぺぺ・パタティン

メイクアップ&ヘアー:ロレナ・ベルランガ、ペドロ・ラウル・デ・ディエゴ、他

 

データ:スペイン、スペイン語、2015102分、ロマンチック・コメディ

キャスト:パコ・レオン、ナタリア・デ・モリーナ、アレックス・ガルシア、カンデラ・ペーニャ、ルイス・カジェホ(アントニオ)、ルイス・ベルメホ、アレクサンドラ・ヒメネスマリ・・パス・サヤゴ(パロマ)、フェルナンド・ソト、アナ・Katzベレン・クエスタ、ダビ・モラ(ルベン)、ベレン・ロペス、セルヒオ・トリコ(エドゥアルド)、ほか。

()なしは概ね実名と同じ。

 

 

(記者会見に出席した面々、左からカンデラ・ペーニャ、マリ・パス・サヤゴ、ダビ・モラ、

     ベレン・クエスタ、監督、ナタリア・デ・モリーナ、アレックス・ガルシア)

 

解説オーストラリア映画、ジョッシュ・ローソンThe Little Death14)が土台になっている。プロットか変わった性的趣向をもつ5組のカップルが織りなすコメディ。このリメイク版というか別バージョンというわけで、レオン版も世間並みではないセックスの愛好家5組の夫婦10人と、そこへ絡んでくるオトコとオンナが入り乱れる。ノーマルとアブノーマルの境は、社会や時代により異なるが、ここでは一種のparafilia(語源はギリシャ語、性的倒錯?)に悩む人々が登場する。ローソン監督も俳優との二足の草鞋派、テレビの人気俳優ということも似通っている。

 

★さて、スペイン版にはどんな夫婦が登場するかというと、

1組目は、レオン監督自身とアナ・Katzのカップルにベレン・クエスタが舞い込んでくる。

2組目は、ゴヤ賞2016主演女優賞のナタリア・デ・モリーナ(『Living is Easy with Eyes Closed』)とアレックス・ガルシア(“La novia”)のカップル、この夫婦を軸に進行する(harpaxofilia

3組目は、カンデラ・ペーニャ(『時間切れの愛』『チル・アウト!』)とルイス・ベルメホ(『マジカル・ガール』)のカップル(dacrifilia

4組目は、ルイス・カジェホ(ラウル・アレバロの“Tarde para la ira”)、とマリ・パス・サヤゴのカップル(somnofilia

5組目が、ダビ・モラとアレクサンドラ・ヒメネス(フアナ・マシアスのEmbarazadosではレオン監督と夫婦役を演じた)のカップル(elifilia)。

そこへフェルナンド・ソト、ベレン・ロペス、セルヒオ・トリゴ、ミゲル・エランなどが絡んで賑やかです。どうやら「機知に富んだロマンチック」コメディのようだ。

 

                

            (ナタリア・デ・モリーナとアレックス・ガルシアのカップル)

 

★〈-filia〉というのは、「・・の病的愛好」というような意味で、harpaxofilia の語源はギリシャ語の〈harpax〉からきており、「盗難・強奪」という意味、性的に興奮すると物を盗むことに喜びを感じる。dacrifiliaは最中に涙が止まらなくなる症状、somnofiliaは最中に興奮すると突然眠り込んでしまう、いわゆる「眠れる森の美女」症候群、elifiliaは予め作り上げたものにオブセッションをもっているタイプらしい。にわか調べで正確ではないかもしれない。

 

  

     (パコ・レオンとアナ・Katzのカップルにベレン・クエスタが割り込んで)

 

★製作の経緯は、監督によると「最初(製作会社)Vértigo Filmsが企画を持ってきた。テレシンコ・フィルムも加わるということなので乗った」ようです。しかし「プロデューサーからはいちいちうるさい注文はなく、自由に作らせてくれた」と。「すべてのファンに満足してもらうのは不可能、人それぞれに限界があり、特にセックスに関してはそれが顕著なのです。私の作品は厚かましい面もあるが悪趣味ではない。背後には人間性や正当な根拠を描いている」とも。「映画には思ったほどセックスシーはなく(期待し過ぎないで)、平凡で下品にならないように心がけた」、これが100万人突破の秘密かもしれない。

 

                   

              (ルイス・バジェホとカンデラ・ペーニャのカップル)

 

   監督キャリア&フィルモグラフィー

パコ・レオン Paca Leon1974年セビーリャ生れ、監督、俳優、製作者。スペインでは人気シリーズのテレドラ“Aida”(200512)出演で、まず知らない人はいない。2012Carmina o revientaでデビュー、マラが映画祭でプレミアされて一躍脚光を浴び、翌年のゴヤ賞新人監督賞にノミネートされた。つづくカルミナ・シリーズ2Carmina y aménもマラガ映画祭2014に正式出品した。第3作がKIKI~恋のトライ&エラー』です。カルミナ・シリーズでは、レオン監督の家族、孟母ならぬ猛母カルミナ・バリオスと妹マリア・レオンが主役だったが、第3作には敢えて起用しなかった。フアナ・マシアス監督のEmbarazados紹介記事にレオン監督のキャリア紹介をしています。

フアナ・マシアスの“Embarazados”は、コチラ⇒20141227

 

  

  (孟母でなく猛母カルミナ・バリオスと孝行息子のパコ、管理人お気に入りのフォト)

 

カルミナ・シリーズでは監督業に専念しておりましたが、今回の第3作には監督、脚本、俳優と二足どころか三足の草鞋を履いています。俳優と監督を両立させながら独自のポリシーで映画作りをしている。将来的にはスペイン映画の中核になるだろうと予想しています。日本では俳優として出演したホアキン・オリストレル監督の寓話『地中海式 人生のレシピ』2009、公開2013)が公開されている。マラガ映画祭2015エロイ・デ・ラ・イグレシア賞を受賞している。

 

★ “Carmina o revienta は、DVD発売や型破りのインターネット配信(有料)で映画館を空っぽにしたといわれた。第2作“Carmina y amén”も封切りと同時にオンラインで配信したいと主張したが、これには通常の仕来りを壊すものと批判もあった。彼によれば「公開後4か月経たないとDVDが発売できないのは長すぎて理不尽であり、それが海賊版の横行を許している。消費税税増税でますます映画館から観客の足が遠のいている現実からもおかしい。さらに均一料金も納得できない。莫大な資金をかけた『ホビット』のような大作と自作のような映画とが同じなのはヘン」というわけ。これはトールキンの『ホビットの冒険』を映画化したピーター・ジャクソンの三部作。アメリカ製<モンスター>に太刀打ちするには工夫が必要、今までと同じがベターとは言えないから、この意見は一理あります。

 

関連記事・管理人覚え

パコ・レオンの主な紹介記事は、コチラ⇒2015319

Carmina o revienta”はコチラ⇒2013818(ゴヤ賞2013新人監督賞の項)

Carmina y amén”はコチラ⇒2014413(マラガ映画祭2014

ラウル・アレバロの“Tarde para la ira”は、コチラ⇒2016226

  

『The Olive Tree』イシアル・ボリャイン*ラテンビート2016 ②2016年09月29日 14:06

        ボリャインがラテンビートに戻ってきました!

 

★今年のラテンビートは、前半(107日~10日)後半(1014日~16日)と2分割、作品も13作とこじんまりしています。当ブログでは前回アップした『スモーク・アンド・ミラーズ』を含めて、The Olive Tree『彼方から』600マイルズ』『ビバ』『盲目のキリスト』『キキ~恋のトライ&エラー』『名誉市民』と長短の差はありますが、既に8作をご紹介しています。映画の良し悪し、好き嫌いは別として、直感に頼ってアップしていますが、結構当たりました。なかでこれ以上屋上屋を架していじくり回さないほうがいいもの(1)、再構成して1本化したほうがいいもの(2)、データ不足を補って改めて紹介しなおしたほうがいいもの(3)に分けることにしました。

 

   

 

★まず(1)に当たるイシアル・ボリャインThe Olive TreeEl olivo(仮題「オリーブの樹」)として、ブリュッセル映画祭で観客賞を受賞した折に詳しく紹介しております。2017年アカデミー賞スペイン代表作品の候補にもなっておりましたが、結局アルモドバルの『ジュリエッタ』に決定しました。地味すぎて残る確率は低いと予想していましたが、その通りになりました。

 

   

        (オリーブの樹の下で、8歳のアルマと祖父ラモン、映画から

 

★監督、キャスト、スタッフのキャリアも紹介しておりますので、そちらにワープしてください。特に音楽監督のパスカル・ゲーニュ、ボリャインの夫で脚本執筆のポール・ラヴァティも有名すぎて紹介するまでもないと思いましたが、コンパクトに纏めてあります。現在、夫妻は2014年からエジンバラを本拠地にして活動しています。

 

        
       (イシアル・ボリャイン監督と夫で脚本家のポール・ラヴァティ)

 

ブリュッセル映画祭観客賞受賞“El olivo”の記事は、コチラ⇒2016719

 

 

ホライズンズ・ラティノ部門第4弾*サンセバスチャン映画祭 ⑨2016年08月29日 17:14

       アルゼンチンからダニエル・ブルマンの新作“El rey del Once

 

2年おきくらいに新作を発表しているが、ここ10年ほどは紹介されることがなかった。国内外あまたの受賞歴を誇る、アルゼンチンではベテラン監督の仲間入りをしていると思いますが、『救世主を待ちながら』2000、東京国際映画祭TIFF)と『僕と未来とブエノスアイレス』200406公開)を含むいわゆる「アリエル三部作**」、NHK衛星第2で放映された『アル・シエロ 空へ』01)が、字幕入りで見ることができた作品です。なかで『僕と未来とブエノスアイレス』は、ベルリン映画祭の審査員賞グランプリ(銀熊)、クラリン賞(脚本)、カタルーニャのリェイダ・ラテンアメリカ映画祭では作品・監督・脚本の3賞、バンコク映画祭作品賞、他ノミネーションは多数だった。 

  

        (アリエルと父親、『僕と未来とブエノスアイレス』のポスター)

 

原題El abrazo partidoについては、目下休眠中のCabinaさんブログに長いコメントを投稿しています。作品&監督キャリア紹介、特に新作に関係のあるオンセ地区の情報も含んでいます。

Cabinaブログの記事は、コチラ⇒200861

**ブエノスアイレスのユダヤ人地区のガレリアを舞台に、主人公アリエルの青年から父親になるまでの成長を描いた作品。3作目がDerecho de familia06)である。

 

6El rey del OnceThe Tenth Man) 

製作:BD Cine / Pasto / Television Federal(Telefe) / 後援アルゼンチン映画アカデミーINCAA

監督・脚本・製作:ダニエル・ブルマン

撮影:ダニエル・オルテガ

編集:アンドレス・タンボルニノ

美術:マルガリータ・タンボリノ

録音:ミゲル・テニナ、カトリエル・ビルドソラ

衣装デザイン:ロベルタ・ペッシPesci

メイクアップ:マリエラ・エルモ

プロダクション・マネージメント:デルフィナ・モンテッチア(モンテッキアMontecchia)、

セシリア・サリム

製作者(共):バルバラ・フランシスコ(エグゼクティブ、グスタボ・タレット『ブエノスアイレス恋愛事情』)、ディエゴ・ドゥボコフスキー(『救世主を待ちながら』『僕と未来とブエノスアイレス』)、ルシア・チャバリ(セスク・ゲイ「トルーマン」)、セシリア・サリム、ほか

 

データ:製作国アルゼンチン、言語スペイン語・ヘブライ語・イディッシュ語、2016年、コメディ、82分、撮影地ブエノスアイレス、公開アルゼンチン211日、ブラジル55日、ウルグアイ519日、米国(限定)729

映画祭・受賞歴:ベルリン映画祭2016パノラマ部門オープニング作品、トライベッカ映画祭インターナショナル部門男優賞(アラン・Sabbagh)、韓国チョンジュ全州市映画祭、シアトル映画祭、いずれも2016年開催  

  

                   (プレス会見のアランと監督、ベルリン映画祭2016

 

キャスト:アラン・Sabbagh(アリエル)、フリエタ・ジルベルベルグ(エバ)、ウシェル・バリルカ(アリエル父ウシェル)、エルビラ・オネット(スージー)、エリサ・カリカッホCarricajo(モニカ)、アドリアン・ストッペルマン(マムニェ)、ダニエル・ドロブラス(エルクレス)、ダルミロ・ブルマン(アリエル11歳)、ほか

 

    

解説:アリエルはニューヨークを拠点にして働くエコノミスト、彼なりにハッピーだがモニカと連れ立ってブエノスアイレスに戻る準備をしている。モニカはバレリーナを夢見ているガールフレンドだ。まず父親に電話で打診する、父はユダヤ人が多く住んでいる活気あふれるオンセ地区でユダヤ人コミュニティの慈善団体を設立、あまり裕福でないユダヤ教徒に薬品や宗教的規則に従って調理した食品カシェールの配給をしている。オンセはいわばアリエルが青春時代を過ごしたホームタウンだ。戻ったアリエルは生地屋や物売りのスタンドで混雑しているガレリアで迷子になり、そこで好奇心をそそる女性を見かける。再びプーリムPurimというユダヤのお祭りで出くわすことになるその女性エバは、団体で働く独立心旺盛な、それも正統派のユダヤ教徒だった。アリエルは子供のときに捨ててしまった宗教的世界を取り戻すことができるだろうか。

 

  

            (エバの後を付けるアリエル、映画から)

 

★過去を振りはらうことの不可能性は誤りか、失われた信仰の探求、ブルマン好みの父親と息子の葛藤劇、ユダヤ文化の哲学と伝統、信じる信じないは別として「信仰は山をも動かす」というコメディ。テーマ的には「アリエル三部作」の続編(?)のようですが、ブルマン映画でも最もユダヤ教の影響の強い印象を受けます。ユダヤ教徒が一番多い米国、3番めに多いアルゼンチン(イスラエルは2番め)という二つの国の文化がテーマになっている。プーリムPurimというお祭りは、ユダヤ暦アダルの月14日(2月末~3月初め)に行われる移動祝祭日です。


★既にコンペティション部門ではないが、2月のベルリンでワールド・プレミアされ、何カ国かで公開されてもいる作品がエントリーされるのは珍しいのではないか。サンセバスチャン映画祭には、製作国にスペインも参加しているからかEl nido vacío08)がコンペに正式出品されただけです。映画祭以後に公開もされDVDも発売されています。比較的ユダヤ文化が希薄ということもあるかもしれない。 

(ダニエル・ブルマン監督)

 

★アリエル役のアラン・Sabbaghは初登場ですが、エバ役のフリエタ・ジルベルベルグは、ディエゴ・レルマンの『隠された瞳』10TIFF)、ダミアン・ジフロンの『人生スイッチ』の第2話ウエイトレス(14,公開15)で紹介しております。

 

(アリエルとエバ、映画から)

 

 ★トライベッカ映画祭は、アメリカ同時多発テロ事件911以降、被害を受けた復興のためロウアー・マンハッタン地区のトライベッカで2002年から始まった春の映画祭(2016413日から)、米国作品とインターナショナルに分かれている。代表発起人はロバート・デ・ニーロなど。ブルマン監督は新作のほか、La suerte en tus manos12)で審査員(脚本)賞を受賞しており、ベルリン同様、相性のいい映画祭である。

 

パコ・レオンの第3作ロマンティック・コメディ”Kiki, el amor se hace”2016年06月05日 12:12

              41日封切り、早くも観客数100万人突破!

 

  

★今年期待できるスペイン映画としてアップしましたパコ・レオンKiki, el amor se haceが期待通りの快進撃、セックス絡みのコメディ大好きなスペイン人の心を掴みました。「数は多いが面白い映画は少ない」とスペイン人は文句を言うけれど、これはどこの国にも言えること、とにかく封切り8週間調べで観客数100万人の壁を突破した。やはり「クチコミ」効果のおかげ、5月末には1,012,597人、興行成績約592万ユーロは、一向に改善の萌しが見えない国庫にとっても歓迎すべきことです。しかし34日公開、アルゼンチン=西=仏合作の犯罪サスペンス、ダニエル・カルパルソロのCien años de perdón1,073,397人は超えられていない。カルパルソロは『インベーダー・ミッション』が公開されている監督。ルイス・トサール、ラウル・アレバロ、ホセ・コロナドなど、日本でもお馴染みになった演技派が出演しています。

Kiki, el amor se hace”の記事は、コチラ⇒2016224

Cien años de perdón”の記事は、コチラ⇒2016221

 

      

2014年の大ヒット作、「危機のスペイン映画界の救世主」とまで言われたエミリオ・マルティネス=ラサロのOcho apellidos vascosは、リピーターを含めてトータル約1000万人が見た。いわゆる映画祭向きのコメディではなかったので、中々海外での上映に至らなかったが2015年にはスペイン語圏諸国やその他でも公開された。批評家の評価は真っ二つに割れたが、その映画界への貢献度は無視できず、ゴヤ賞の新人男優・助演男優・助演女優の3賞を受賞した。「二匹目のドジョウ」を狙った続編カタルーニャ編Ocho apellidos catalanesも、2015年の興行成績ベストワンの450万人、ほかはすべて100万台、第4位のアメナバルの“Regression”は封切り1週目こそ上々のすべり出しだったが、142万と期待にそえなかった。これで2015年が如何に低調だったかが分かります。日本公開のニュースは未だでしょうか。

 

        一風変わったセクシュアル趣味の面々が織りなす合唱劇

 

パコ・レオンといっても日本での知名度はイマイチだが、スペインでは人気シリーズのテレドラ出演で、まず知らない人はいないと思います。1974年セビーリャ生れの俳優・監督・脚本家。日本ではホアキン・オリストレルの寓話『地中海式 人生のレシピ』(09)出演だけかもしれない。オーストラリア映画、ジョッシュ・ローソンThe Little Death14)が土台になっている。ローソン監督も俳優との二足の草鞋派、テレビの人気俳優ということも似通っている。プロットか変わった性的趣向をもつ5組のカップルが織りなすコメディ。このリメイク版というか別バージョンというわけで、レオン版も世間並みではないセックスの愛好家5組の夫婦10人と、そこへ絡んでくるオトコとオンナが入り乱れる。ノーマルとアブノーマルの境は、社会や時代により異なると思うが、ここでは一種のparafilia(語源はギリシャ語、性的倒錯?)に悩む人々が登場する。

 

★スペイン版のKiki, el amor se hace にはどんな夫婦が登場するかというと、1組目はレオン監督自身とアナ・Katzのカップルにベレン・クエスタが舞い込んでくる。2組目はゴヤ賞2016主演女優賞のナタリア・デ・モリーナ(『Living is Easy with Eyes Closed』)とアレックス・ガルシアのカップル(harpaxofilia)。3組目はカンデラ・ペーニャ(『時間切れの愛』『チル・アウト!』)とルイス・ベルメホ(『マジカル・ガール』)のカップル(dacrifilia)、4組目はルイス・カジェホ、とマリ・パス・サヤゴのカップル(somnofilia)、最後がダビ・モラとアレクサンドラ・ヒメネスのカップル(elifilia)、そこへフェルナンド・ソト、ベレン・ロペス、セルヒオ・トリゴ、ミゲル・エランなどと賑やかです。

 

   

  (記者会見に出席した面々、左からカンデラ・ペーニャ、マリ・パス・サヤゴ、ダビ・モラ、

    ベレン・クエスタ、監督、ナタリア・デ・モリーナ、アレックス・ガルシア

 

★〈-filia〉というのは、「・・の病的愛好」というような意味で、harpaxofilia の語源はギリシャ語の〈harpax〉からきており、「盗難・強奪」という意味、性的に興奮すると物を盗むことに喜びを感じる。dacrifiliaは最中に涙が止まらなくなる症状、somnofiliaは最中に興奮すると突然眠り込んでしまう、いわゆる「眠れる森の美女」症候群、elifiliaは予め作り上げたものにオブセッションをもっているタイプらしい。にわか調べで正確ではないかもしれない。

 

★製作の経緯は、監督によると「最初(製作会社)Vertigo Filmsが企画を持ってきた。テレシンコ・フィルムも加わるということなので乗った」ようです。しかし「プロデューサーからはいちいちうるさい注文はなく、自由に作らせてくれた」と。「すべてのファンに満足してもらうのは不可能、人それぞれに限界があり、特にセックスに関してはそれが顕著なのです。私の作品は厚かましい面もあるが悪趣味ではない。背後には人間性や正当な根拠を描いている」とも。「映画には思ったほどセックスシーはなく(期待し過ぎないほうがいい?)、平凡で下品にならないように心がけた」、これが100万人突破の秘密かもしれない。

 

   

                (ナタリア・デ・モリーナとアレックス・ガルシアのカップル)

 

 

        (パコ・レオンとアナ・Katzのカップルにベレン・クエスタが割り込んで)

 

 

                   (ルイス・バジェホとカンデラ・ペーニャのカップル)

 

★前の2Carmina o revienta12)とCarmina y amen14)は、レオンの家族、母親カルミナ・バリオスと妹マリア・レオンが主役だったが、第3作には敢えて起用しなかった。

 

 

                  (孟母でなく猛母カルミナ・バリオスと孝行息子のパコ)


『ブランカニエベス』の次は『アブラカダブラ』*パブロ・ベルヘルの第3作2016年05月29日 14:57

             アクセル踏んで5年ぶりに新作発表

 

★昨年10月に「第3作はファンタスティック・スリラーのコメディAbracadabra、クランクインは来年夏、公開は2017年」とアナウンスがありましたが、いよいよクランクインしました。大当たりした第2『ブランカニエベス』から5年が経ちましたが、5年というのは監督にしては破格の速さではないでしょうか。デビュー作『トレモリノス7302)と第2作の間隔は2倍の10年でした。思いっきりアクセル踏んでスピードを上げ、55日にマドリードで撮影開始、現在はナバラ州のパンプローナに移動しています。IMDbもアップされましたが、まだ全容は分かりません。撮影地はマドリードとナバラ、約2ヶ月の9週間が予定されています。

 

   

    (左から、ホセ・モタ、ベルドゥ、監督、デ・ラ・トーレ、パンプローナにて)

 

キャスト陣

★主役のカルメンに前作のマリベル・ベルドゥ、その夫カルロスにアントニオ・デ・ラ・トーレ、カルメンの従兄にホセ・モタ、他にキム・グティエレス、ホセ・マリア・ポウ、フリアン・ビジャグラン、サトゥルニノ・ガルシア、ベテランのラモン・バレアまで曲者役者を揃えました。マリベル・ベルドゥアントニオ・デ・ラ・トーレはグラシア・ケレヘタのFelices 14015)で既にタッグを組んでいる。どんなお話かというと、カルメンはマドリードのカラバンチェルに住んでいる主婦、近頃夫カルロスの挙動がおかしいことに気づく。どうやら悪霊か何かにとり憑かれているようだ。そこで従兄のペペに助けを求めることにする。

Felices 140”の紹介記事は、コチラ⇒201517

マリベル・ベルドゥの紹介は、コチラ⇒2015824など

アントニオ・デ・ラ・トーレの紹介は、コチラ⇒201398など

 

     

               (私たち夫婦になりますが・・・)

 

★カルメンの従兄ペペ役のホセ・モタは、1965年シウダレアル生れ、コメディアン、俳優、声優、監督、脚本家。サンティアゴ・セグラの「トレンテ」シリーズの常連、アレックス・デ・ラ・イグレシアのダーク・コメディ『刺さった男』12)で、不運にも後頭部に鉄筋が刺さってしまった男を演じた。TV界ではチョー有名な存在だが、再び映画に戻ってきた。今回は催眠術にハマっている役柄のようで、カルロスに乗り移ってしまった悪霊を払おうとする。写真下はホセ・モタがアントニオ・デ・ラ・トーレに催眠術をかけている絵コンテ、『ブランカニエベス』も手がけたイニゴ・ロタエチェのデッサンから。 

    

                       (イニゴ・ロタエチェの絵コンテ)

 

 

       (ホセ・モタ)

 

キム・グティエレスは、今年公開されたハビエル・ルイス・カルデラのSPY TIMEスパイ・タイム』でエリート諜報員アナクレト(イマノル・アリアス)の息子アドルフォに扮しアクションも披露したばかり。今回の役は、「コッポラの『地獄の黙示録』(79)でマーロン・ブランドが演じたカーツ大佐のように物語の一種の道しるべ的な存在になる」とか、詳しいことは現段階ではバラしたくないと監督。ダニエル・サンチェス・アレバロの『漆黒のような深い青』06)でブレークした後、ドラマ、コメディ、アクションと確実に成長している。

SPY TIMEスパイ・タイム』とキム・グティエレスの紹介は、コチラ⇒201622

 

      

         (アナクレトとアドルフォ父子、映画から)

 

ホセ(ジョセップ)・マリア・ポウは、1944年バルセロナ生れ、『ブランカニエベス』、アメナバル『海を飛ぶ夢』(04)、イネス・パリス“Miguel y William”(07)、ベントゥラ・ポンセ“Barcelona (un mapa)”など、今作ではホセ・モタが熱中する催眠術の先生役。フリアン・ビジャグランは、マラガ映画祭2016でご紹介しています。ベテランのラモン・バレアは、1949年ビルバオ生れ、監督の大先輩、『トレモリノス 73』、ボルハ・コベアガのETAのコメディ“Negociador”(14)では主役の〈交渉人〉を演じた大ベテラン。

フリアン・ビジャグラン紹介は、コチラ⇒“Gernika420Quatretondeta422

ラモン・バレア紹介は、コチラ⇒“Negociador2015111

 

スタッフ紹介

★撮影監督にキコ・デ・ラ・リカ、衣装デザインにパコ・デルガト、編集にダビ・ガリャルトなど国際的評価の高い一流どころがクレジットされています。監督夫人Yuko Haramiは日本人、プロデューサー、カメラ、音楽家、ニューヨークで知り合ったとか。監督デビュー作以来二人三脚で製作に関わっている。『トレモリノス 73』の頃、娘が生まれている。『ブランカニエベス』の白雪姫カルメンシータを10歳に想定したのは娘の年に合わせたようです。ゴヤ賞のガラには着物姿で出席していた。

 

           「私はシネマニア、これは不治の病です」

 

監督紹介

★『ブランカニエベス』を検索すれば簡単にキャリアは検索できます。詳細は完成の折に紹介するとして、1963年ビルバオ生れ、監督、脚本家、製作者。デビュー作『トレモリノス 73は、「バスク・フィルム・フェスティバル2003」で上映されたあと、「ゆうばり国際ファンタステック映画祭2005」でも上映された。第2『ブランカニエベス』、第3作が来年公開のAbracadabraと極めて寡作です。

 

★第2作を企画中の2003年には、「無声モノクロ」はクレージーな企画でどこからも相手にされなかったことが、ブランクの大きな要因だった(モノクロは現在では高価でカネ食い虫)。つまり資金が集まらなかったということ。アカデミー賞作品賞をもらったミシェル・アザナヴィシウスの『アーティスト』(11)に影響を受けてモノクロにしたわけではない。今回はオールカラー、前作の成功もあって資金が比較的早く集まったからで、特別エンジンをふかしたわけではない。クランクイン予告の記者会見では、「ロシア人形のマトリューシュカのように、ホラーのなかにファンタジー、ファンタジーのなかにコメディ、コメディのなかにドラマと、入れ子のようになっている映画が好き。ウディ・アレンのファンで、特に『カイロの紫のバラ』(85)、『カメレオン』(83)、『スコルピオンの恋まじない』(01)などが気に入っている」と語っていた。

 

    

              (新作を語るパブロ・ベルヘル監督)

 

★映画のなかに、「エモーション、ユーモア、驚き、これから何が起きるか予想できないような物語を観客に楽しんでもらいたい。いつもこれが最後の作品になると考えている。自分を本職の監督だとは思っていないから、私にとって映画を撮ることはいわば命知らずのミッションに近い、時にはうまくいくこともあるが、時にはうまくいかないこともある」。「ベルドゥの役はドン・キホーテ的、ホセ・モタの役はサンチョ・パンサ的です。またはベルドゥは泣きピエロ、ホセ・モタは人気のある陽気なピエロとも形容できます」。「マドリード的な映画で、私の大好きな映画、アルモドバルの『グローリアの憂鬱』やビガス・ルナの“Angustia”に関連しています」ということなのですが、何やらややこしくなってきました。私の映画の源泉は映画館にあるという、シネマニアです。

 

原題は“¿Qué he hecho yo para merecer esto?”(84)です。マドリードの下町に暮らす主婦(カルメン・マウラ)がグータラ亭主を殺してしまうが事件は迷宮入りになる傑作コメディ、どうしてこんな平凡な邦題をつけたのか理解できない(笑)。“Angustia”はビデオが発売されているようですが未見です。