イシアル・ボリャイン*ドキュメンタリーに初挑戦 ― 2014年12月04日 16:24
イシアル・ボリャイン、初挑戦のドキュメンタリー、舞台はエディンバラ
★“Katmandu, un espejo en el cielo”(2011)以来、イシアル・ボリャインのニュースが届きませんでしたが、ドキュメンタリーに初挑戦していたようです。サンセバスチャン映画祭2014で特別上映された作品。マドリード(11月1日)に続いて、1週遅れでバルセロナでも公開されました。長引く経済危機のせいでスペインでは暮らせない、つまり就職できない「挫折世代」と言われる若者たちがチャンスを求めて国を後にしています。スーツケース一つに全てを詰め込んで向かう先はスコットランドのエディンバラ市です。移民たちの証言と社会学者などの分析で構成されている。
*“En
tierra extraña”*
製作:TVE / Tormenta Films / Turanga
Films
監督・脚本・製作者:イシアル・ボリャイン
共同製作者:リナ・バデネス、クリスティナ・スマラパ
データ:スペイン、スペイン語、2014、ドキュメンタリー、72分
キャスト:アルベルト・サン・フアン
主な証言者:
グローリア:美術学校卒、32歳、エディンバラでのデザイン教師採用試験に合格して移住したが、不定期雇用で、2年前から商店の店員をしている。スペインの家族とはスカイプを利用している。金融危機が始まった初期からの移民者。「la acción de los guantes」*の活動をしている。
ソニア:清掃員として働いている37歳、「私が二十歳なら外国で働く冒険も悪くはないが、スペインには4歳の娘を残してきている」、37歳という年齢は厳しい。
マリビ:もう若くはない50歳、商人、失業中。「移民せざるを得なかったからしたのだが、これが良かったのかどうか」と嘆く。
マリア・ホセ:化学技術者、30歳、エディンバラではホテルの清掃員として働く。「私たちの両親は私たちを育てるために物凄く頑張った。しかし、いまは・・・スペインで化学技術者として働くより、ここの清掃員のほうが給料が高い」。親が頑張ったのは、子供に高い教育を受けさせるためだったが、子供が学んだキャリアは何の役にも立っていない。
ミリアン:26歳、心理学の学士号をもっている。ここでは清掃員、ウエートレス。
フラン:26歳、政治学の学士号をもっている。ソーシャルワーカー。かつて「スペインにやってきた移民たちの姿を映し出している」と分析している。
*la acción de los guantes (手袋の活動)というのは、スペインの挫折世代と言われる若い移民たちが‘Ni perdidos, ni callados’というスローガンで始めた抗議運動。手袋は団結のメタファーと思われる。エディンバラの街路の柵に置かれ(写真下)、いずれ柵は手袋で埋め尽くされる。最終的には集められエディンバラのスペイン大使館の前に置かれることになる。今ではこの活動はエディンバラで働く2万人が参加している。また、2013年4月からマドリードで始まったアルベルト・サン・フアンのコミック独り芝居“Autorretrato de un joven capitalista espanol”(スペインの若い資本主義者の自画像という意味)でも触れている。現在もロングランを続けている。ドキュメンタリーに唯一名前がクレジットされているのは、この独り芝居がドキュメンタリーに挿入されているから。
★監督がこのドキュメンタリーを撮ろうと決心したのは、エディンバラに滞在していたとき、多くのスペイン人移住者の失望、望郷、悲嘆に出会ったからだという。取材を始めて思いあたったのは、1960年代に大挙して豊かなドイツ、スイス、フランスを目指して出稼ぎに出掛けた、両親や祖父母の世代との類似性だった。あの時代よりずっと情報もあり準備をして移住を決意したはずなのに、味わう失望、フラストレーションはむしろ今のほうが大きい。若者も年とともに既に若者とはいえなくなっている。多くが大学や専門学校を卒業しているのに、そのキャリアを活かせるチャンスは故国でもエディンバラにもない。まず、自分の未来が描けないということに苦しんでいる。学士号をもちながら、多くはホテルの清掃員、商店の店員、ベビーシッターなどに従事している。
(イシアル・ボリャイン監督、サンセバスチャン映画祭にて)
★CSIC Consejo Superior de Investigaciones Cientificas 科学研究評議会の報告によると、海外への労働移民は、225,000人であるが、実際には、2013年の調査で約70万人に増加しているという。人口が約4600万の国で現在の失業者が540万人、失業率は史上初めて25%を超えた(若年失業率は55%)という。それにもかかわらず、なんら有効な手が打てないでいる政府に対する抗議活動が続くが、明りは見えない。
★『テイク・マイ・アイズ』、『花嫁の来た村』や『ザ・ウォーター・ウォー』の監督として、社会に静かに質問を投げかけ、日本でも多くのファンをもっている。彼女の複眼的な視点は、当事者を決して糾弾しないところが魅力だ。観客を引きつけるのは、遠くに住んでいて一緒に行動できなくても、このドキュメンタリーを見たり、証言を聞いたりして、一緒に考えたりすることは出来る、と語りかけるからだ。
★長引く経済危機のせいで労働市場は不安定、失業者があふれている一方で、「なぜ莫大な利益を得ている銀行家や大企業の経営者が存在しているのか」と監督は問いかけている。「どの政党も大きな失望しか与えていない。両手に札束を抱えた大勢の汚職者にいたっては、ただただ国民を当惑させるだけだ」。現政権(国民党ラホイ政権)も無能だが、もともとこの経済危機を招いたのは、長いこと政権を任されながら財政悪化を先送りした先の政権(社労党サパテロ政権)にも責任がある。
★素人考えだが、先進国は第三世界を犠牲にして莫大な利益を得て成長したが、搾取するところがなければ成長できないというのでは、何か資本主義自体に構造的な欠陥があるように思えてならない。スペインは第三世界の仲間入りをしてしまったのだろうか。スペインは経済のパイが大きいから、観光だけで食べていくのは土台無理なのではないだろうか。1960年代に移民した経験をもつグロリアの祖父ホセの「なんて忌々しい国なんだ、子どもたちが食べていけないなんて」という怒りの声が轟く。
サンセバスチャン映画祭2014*受賞結果 ― 2014年09月30日 11:54
★サンセバスチャン映画祭2014の受賞結果が発表になりましたので、一旦ラテンビートは中休みして、結果だけをご報告いたします。La isla mínima とMagical Girl の2作品は下馬評で高い位置にありましたので何かの賞に絡むと予想していましたが、まさかMagical Girl がダブル受賞をするとは誰も考えていなかったのではないでしょうか。サンセバスチャンは国際映画祭ですが、6個の大賞のうち半分以上の4個をスペインが独占する結果になり、少しローカル色が気になりました。昨年の金貝賞はベネズエラ映画、監督賞はメキシコ、女優賞はスペイン、シェル賞ではありませんが審査員特別賞もスペインなどスペイン語映画が受賞しています。
*オフィシャル・セレクション受賞作品(スペイン語のみ)*
◎最優秀作品賞(金貝賞):ペドロ・エルナンデス(プロデューサー)
Magical Girl 監督カルロス・ベルムト (スペイン=フランス)2014
*金貝賞は製作者に贈られる賞です。金賞は作品賞のみで以下は全て銀賞です。
◎最優秀監督賞(銀貝賞):カルロス・ベルムト Magical Girl
*作品賞と監督賞をダブらせないのが基本方針と聞いておりましたが、今年は重なりました。
1997年のクロード・シャブロルの『最後の賭け』以来のことだそうです。
良識派の観客の中にはこの奇妙なダダイズム映画のダブル受賞を非難するむきもあったようです。
(ダブル受賞となったMagical Girl のペドロ・エルナンデス左とカルロス・ベルムト右)
◎最優秀男優賞(銀貝賞)ハビエル・グティエレス
La isla mínima 監督アルベルト・ロドリゲス (スペイン)2014
*本人欠席のため共演者のラウル・アレバロが代理で登壇してメッセージを読み上げました。
◎最優秀撮影賞(銀貝賞)アレックス・カタラン
La isla mínima 監督アルベルト・ロドリゲス
*ロドリゲス監督の右腕アレックス・カタランの撮影賞受賞は、監督にとって殊のほか嬉しいことだったようです。
★以上の作品は「サンセバスチャン映画祭2014*オフィシャル・セレクション」にプロット他、監督紹介などもしております(⇒9月16日)。
*ホライズンズ・ラティノHorizontes Latinos*
◎ベスト・フィルム賞 グエロスGüeros アロンソ・ルイスパラシオス監督(メキシコ)2014
*ベルリン映画祭2014ベスト・ファースト・フューチャー(初監督作品)賞受賞のコメディ。
ラテンビート2014(新宿バルト9上映予定10月10日・13日の2回)
◎スペシャル・メンション
Ciencias naturales(Natural
Sciences)マティアス・ルッチェシ監督(アルゼンチン≂仏)2014
Gente de bien フランコ・ロジィ監督 (仏≂コロンビア)2014
*カンヌ映画祭「批評家週間」(⇒5月8日)にUP。
(Gente de bien のシーンから)
*ヨーロッパ映画観客賞 Premio del Público / Premio película Europa: *
◎Relatos Salvajes ダミアン・Szifrón監督(アルゼンチン)2014
*カンヌ映画祭正式出品(⇒5月1日)/トロント映画祭(⇒8月15日)にUP。
*SIGNIS 賞スペシャル・メンション*
◎Loreak(Flowers)ジョン・ガラーニョ& ホセ・マリ・ゴエナガ 監督(スペイン)2014
*ラテンビート2014(東京10月13日上映予定)(⇒9月22日)にUP。
*ユース賞 Premio de la
Juventud*
◎ グエロスGüeros アロンソ・ルイスパラシオス監督(メキシコ)
*ベスト・フィルム賞とのダブル受賞。
(喜びが重なったアロンソ・ルイスパラシオス監督)
★次回ラテンビート映画祭2014⑥に『グエロス』を予定しています。
サンセバスチャン映画祭2014*オフィシャル・セレクション③ ― 2014年09月16日 14:12
★オフィシャル・セレクション21本のうちコンペ外3本を除いた18作品で競います。オープニングはアメリカのアントワン・フークワの“The Equalizer”(コンペ外)、クロージングはフランスのエリック・トレダノ&オリヴィエ・ナカシュの“Samba”です。両方ともトロント映画祭「ガラ・プレゼンテーション」と重なります。スペイン語映画は6本、スペインが合作を含めて4本、アルゼンチン、チリ各1本ずつ、他にスペインはコンペ外2作品がエントリーされています。
★審査員は委員長フェルナンド・ボバイラ以下8人で構成されています(例年は7人)。ウクライナの監督・製作者Oleg Sentsov は、クリミア危機の時のテロ行為を理由にFSBロシア連邦保安局によって自宅で逮捕(5月11日)、現在モスクワの刑務所に収監中だから実際には参加できない。ヨーロッパ映画アカデミーが彼をサポートしており、アニエスカ・オランダ、ケン・ローチ、マイク・リー、ペドロ・アルモドバルなどが署名した釈放要求の手紙をプーチンに送っている。ウクライナ紛争は映画祭運営にも影響が及んでいます。『TATSUMI タツミ』のエリック・クー監督、ベネズエラのマリアナ・ロンドン監督・プロデューサー(昨年の金貝賞受賞者)、女優ナスターシャ・キンスキー他。
★フェルナンド・ボバイラは、アメナバルのヒット作『アザーズ』『海を飛ぶ夢』、フリオ・メデムの『ルシアとセックス』、ホセ・ルイス・クエルダの『蝶の舌』などの製作を手掛けている。最近はマヌエル・マルティン・クエンカ『カニバル』、オスカル・サントス“Zipi y Zape y el Culb de la
Canica”などをサンセバスチャン映画祭にエントリーさせている。1963年カステジョン生れ。
(フェルナンド・ボバイラ審査委員長)
*銀貝賞として、監督賞/ 女優賞/ 男優賞 の3賞
*審査員賞として、撮影賞/ 脚本賞 の2賞
以上合計6賞の選出をする。基本的にはカンヌ映画祭と同じように「1作につき1賞」です。
*オフィシャル・セレクション*
◎
Aire
libre アナイー・ベルネリ (アルゼンチン)2014
脚本:アナイー・ベルネリ/ハビエル・バン・デ・Couter
プロット:ルシア(セレステ・シッド)とマヌエル(レオナルド・スバラグリア)の夫婦は、結婚、仕事、子ども、郊外に家を持つという夢にもがいていた。やがて別れが訪れ再会するも、もはや二人の夢は遠ざかっていた。
*トロント映画祭「コンテンポラリー・ワールド・シネマ」部門出品(9月4日上映)
アルゼンチン公開5月22日
◎
Autómata
/ Automata ガベ・イバニェス (ブルガリア≂スペイン)2014
脚本:ガベ・イバニェス、イゴール・レガレータ(Legarreta)他
出演:アントニオ・バンデラス(Jacq Vaucan)、Birgitte・ヨルト・ソーレンセン(レイチェル・Vaucan)、メラニー・グリフィス(デュプレ博士)、ディラン・マクダーモット、ロバート・フォースター他
プロット:近未来SFスリラー、Jacq Vaucanはサイバネティクス会社ROCの保険ディーラー、保安証書に違反してロボットを混乱させている一連の奇妙な事件を調査している。
*チューリッヒ映画祭(9月26日上映)、10月9日クウェート公開を皮きりに中国、米国など順次公開予定。言語:英語、撮影地:ブルガリアの首都ソフィア他、製作費:約1500万ドル。
*離婚前のバンデラスとグリフィスが出演している。
◎ La isla mínima アルベルト・ロドリゲス (スペイン)2014、105分
脚本:ラファエル・コボス/アルベルト・ロドリゲス
出演:ラウル・アレバロ(刑事ペドロ)、ハビエル・グティエレス(刑事フアン)、アントニオ・デ・ラ・トーレ(ロドリーゴ)、ネレア・バロス(ロシオ)、ヘスス・カストロ、ヘスス・カロッサ(キニ)、マノロ・ソロ(新聞記者)ほか。
プロット:1980年の、アンダルシア、グアダルキビール河沿いの低湿地帯で2人の少女が行方不明になる。この忘れられたような小村で起きた刑事事件を捜査するためマドリードの殺人課の2人の刑事が派遣される。思想の面で反体制的な2人は言わば左遷されたかたちである。過去の因習に縛られた小さなコミュニティで起きた殺人事件の真相が暴かれることになるだろう。
(グアダルキビール河の低湿地帯を走る2人の刑事ペドロとフアン)
*“7 Virgenes”(2005、『七人のバージン』の邦題でラテンビート上映)も本映画祭2005に正式出品、主演のフアン・ホセ・バジェスタが最優秀男優賞(銀貝賞)を受賞しています。
*今年後半の大ヒット作ダニエル・モンソンの“El Niño”(ラテンビート2014上映予定、後日アップします)の新人二枚目ヘスス・カストロ、“7 Virgenes”のヘスス・カロッサもクレジットされています。
*脚本執筆のラファエル・コボスは“7 Virgenes”、“Grupo 7”でも監督とタッグを組んでいます。
*撮影地:セビーリャ、スペイン公開9月26日
◎
Loreak(Flowers) ジョン・ガラーニョ& ホセ・マリ・ゴエナガ (スペイン)2014
脚本:アイトル・アレギAitor Arregi /ジョン・ガラーニョ/ホセ・マリ・ゴエナガ
製作者:アイトル・アレギ/Xabier Berzosa/フェルナンド・Larrendo
撮影:ハビエル・アギーレ、音楽:パスカル・Gaigne
*言語:バスク語、99分
*チューリッヒ映画祭(9月28日)/ロンドン映画祭(10月18日)
*ラテンビート2014(東京10月13日上映予定)の項で紹介します。
◎
Magical Girl カルロス・ベルムト (スペイン=フランス)2014
脚本・美術:カルロス・ベルムト、撮影:サンティアゴ・Racaj、編集:エンマ・トゥセル
製作:Aquí y Allí Films & Canal+España 1
出演:ホセ・サクリスタン(ダミアン)、バルバラ・レニー(バルバラ)、ルイス・ベルメホ(ルイス)、イスラエル・エレハルデ(アルフレッド)、ルシア・ポリャン(アリシア)、他
プロット:文学教師のルイスは失業中、彼の12歳になる娘アリシアは末期ガンで余命いくばくもない。アリシアの最後の願いは日本のアニメTVシリーズ『マジカル・ガールYukiko』の衣装を着ること、なんとか叶えてやりたい。その高価な衣装のためルイスは恐ろしい恐喝のネットに深く入り込むことになる。ダミアンとバルバラを巻き添えに、彼らの運命も永遠に変えてしまうだろう。
*カルロス・ベルムトの第2作、ミステリー。デビュー作は“Diamond flash”(2011)。1980年マドリード生れ、監督・脚本家・漫画家・プロデューサー。美術学校でイラストを学び、「エル・ムンド」のイラストレーターとして働く。2006年、最初のコミック“El banyan rojo”がバルセロナのコミック国際フェアで評価された。彼の漫画家としての才能と経験は本作にも活かされている。他に短編映画3作、コミック3作、2012年の“Cosmic
Dragon”は、鳥山明の『ドラゴンボール』のオマージュとして描かれたようです。
*本ブログお馴染みのホセ・サクリスタンの紹介は割愛。バルバラ・レニーは、「メイド・イン・スペイン」部門のリュイス・ミニャロの“Stella
cadente”に出演、アントニオ・チャバリアスの『フリア、よみがえりの少女』(“Dictado”2012)で日本初登場、今年のラテンビートで上映されるダニエル・モンソンの『エル・ニーニョ』で再登場いたします。古くはモンチョ・アルメンダリスの“Obaba”(2005)など、多くの監督からオファーを受けています。
*トロント映画祭(9月7日上映)/チューリッヒ映画祭(9月25日)、スペイン公開10月17日
◎
La voz en off(Voice Over) クリスチャン・ヒメネス (チリ≂フランス≂カナダ)2014
脚本:ダニエル・カストロ/クリスチャン・ヒメネス、撮影:インティ・ブリオネス/クリスチャン・ヒメネス、96分
出演:イングリッド・イセンセ Isensee(ソフィア)、マリア・シエバルドSiebald(アナ)、パウリナ・ガルシア(マティルデ)、マイテ・ネイラ(アリシア)、クリスチャン・カンポス(マヌエル)、他
プロット:最近離婚したばかりの美人のソフィアは35歳、2人の子どもを育てている。しかし人生は何もかも悪いほうへと転がっていく。父が母を残して出て行ってしまうかと思うと、姉がチリに戻ってきて彼女流のけんか腰でズカズカと割り込んでくる。ソフィアはベジタリアンだが、子どもたちは肉が食べたいと文句を言うし、更にはふとしたことから父親の不愉快な事実を知ってしまう。
*クリスチャン・ヒメネスの第3作、1975年チリのバルディビア生れ。デビュー作『見まちがう人たち』と第2作『Bonsai~盆栽』が東京国際映画祭2009・2011で上映され、2回ともゲスト出演のため来日しております。前作と同じ流れの作品のようですが、チリ「クール世代」の代表的な監督。『見まちがう人たち』がブラチスラヴァ(スロバキア)映画祭2009でエキュメニカル審査員スペシャル・メンション賞、ケーララ(インド)映画祭2010出品、『Bonsai~盆栽』はカンヌ映画祭2011「ある視点」出品、ハバナ映画祭2011国際批評家連盟賞受賞、マイアミ映画祭2012グランド審査員賞受賞他。
(『Bonsai~盆栽』上映で登壇したヒメネス監督、東京国際映画2011にて)
*イングリッド・イセンセ は、1974年チリのサンチャゴ生れ、『Bonsai~盆栽』に脇役で出演、今回主役ソフィアを射止めた。他にマリアリー・リバスの“Joven y alocada”(2012)に出演、本映画祭2012の「ホライズンズ・ラティーノ」部門の上映作品。今年短編“El Puente”で監督デビューした。
*ベテラン女優パウリナ・ガルシアは、セバスチャン・レリオの『グロリアの青春』(2013)の圧倒的な演技が記憶に新しい。国際的な賞を独り占め、昨年の本映画祭の審査員を務めました(⇒コチラ2013・9・12)。
*リオデジャネイロ映画祭2014、トロント映画祭「コンテンポラリー・ワールド・シネマ」部門出品(9月6日上映)、チューリッヒ映画祭2014(9月25日)、他
*コンペティション外*
◎ Lasa ETA Zabala / Lasa y Zabala パブロ・マロ (スペイン)
◎ Murieron por encima de sus posibilidades イサキ・ラクエスタ (スペイン)
★駆け足でご紹介してきましたが、コンペ外は間もなく開催される「ラテンビート2014」のラインナップの後に回します。
★「おめでとう」トロント映画祭2014でご紹介したイサベル・コイシェの“Learning to Drive”が、ピープルズ・チョイス賞次点に選ばれました。トロントFFはノン・コンペティションの映画祭でいわゆる観客賞にあたるピープルズ・チョイス賞が最高賞ですから、次点は大賞です。(⇒コチラ8月13日)
サンセバスチャン映画祭2014*メイド・イン・スペイン② ― 2014年09月11日 21:33
★このセクションは、既にスペインで公開されたヒット作&話題作で賞には絡みません。今年はカンヌ映画祭、マラガ映画祭の受賞作など、ドキュメンタリー2本を含む11作品がエントリーされています。ということで映画祭上映、あるいは公開される確率の高い部門です。予想通り興行成績ナンバー1のエミリオ・マルティネス=ラサロの“Ocho apellidos vascos”が選ばれています。マラガ映画祭の2作、カンヌ映画祭のハイメ・ロサーレス、ナチョ・ビガロンドの新作(公開決定)など、クチコミ宣伝のお蔭だそうです。
*メイド・イン・スペイン部門*
★上映作品(ゴチック体は既に記事にした作品)
◎ 10.000KM スペイン カルロス・マルケス=マルセ(⇒マラガ映画祭4月4日・11日)
*マラガ映画祭2014*作品賞(金賞)ジャスミン賞受賞 他
◎ Artico スペイン ガブリエル・ベラスケス(監督・脚本)80分
脚本(カルロス・ウナムロ、マヌエル・ガルシア、ブランカ・トーレス)、
撮影(ダビ・アスカノ)
出演(ビクトル・ガルシア、フアンル・セビジャノ、デボラ・ボルヘス、ルシア・マルティネス)
*ベルリン映画祭2014「Generation子ども映画部門」スペシャル・メンション受賞
◎ Ciutat morta スペイン シャビエル・アルティガス&シャポ・オルテガ(貫禄・撮影)
120分
脚本(マリアナ・ウイドブロ、ヘスス・ロドリゲス)
*マラガ映画祭2014 最優秀ドキュメンタリー賞(銀賞)受賞
◎ The Food Guide To Lave(Amor en su punto) 西≂アイルランド≂仏 2013
ドミニク・アラリ(Harari)&テレサ・デ・ペレグリ(監督・脚本) 91分、 言語(英語)
脚本(Eugene O’Brien)、撮影(アンドレウ・レベス)
出演(リチャード・コイル、 レオノール・ワトリング他)
*愛と美食が交錯するロマンティック・コメディ、タイトルはミシュランの星の数を参考に食べ歩きするためのガイド・ブックから付けられた。
*ベルリン映画祭2014/ダブリン映画祭2014/マラガ映画祭2014 出品
◎ Sobre la Marxa スペイン ジョルディ・モラト(監督・脚本・撮影)、77分
撮影(ライア・リバス)
*マラガ映画祭2014 ドキュメンタリー部門出品
◎ Open Windows 西≂米国 ナチョ・ビガロンド(監督・脚本)スリラー、100分
撮影(Jon
D. Dominguez)、出演(イライジャ・ウッド、サーシャ・グレイ、ニル・マスケル他)
言語(西語・英語)
*『タイム・クライムス』(ラテンビート2008上映、DVD発売)の監督作品とあって、早々と公開が決定しています(邦題『ブラック・ハッカー』11月22日)。
◎ Stella cadente スペイン リュイス・ミニャロ(監督・脚本、デビュー作)105分
脚本(セルジ・ベルベル)、撮影(ジミー・Gimferrer)、言語(カタルーニャ語・西語)
出演(アレックス・ブレンデミュール、ロレンソ・バルドッチ、ローラ・ドゥエニャス、バルバラ・レーニー、フランセスク・ガリード他)
*ロッテルダム映画祭2014正式出品/カルロヴィ・ヴァリ映画祭2014出品
◎ Yo decido. El tren de la libertad スペイン TALDE-LANA / OBRA COLECTIVA /
ANTHOLOGY FILM 42分
脚本・撮影(OBRA COLECTIVA)
*妊娠中絶法改革反対の群像劇。
*マラガ映画祭の関連記事は、4月4日・7日・11日・13日にアップしています。
サンセバスチャン映画祭2014*ノミネーション① ホライズンズ・ラティノ部門 ― 2014年09月09日 14:16
★目前に迫ってきた第62回サンセバスチャン国際映画祭(9月19日~27日)、5月20日に今年の映画祭ポスターがメディアに紹介されて以来、飛び飛びに発表されていたラインナップもどうやら出揃いました。オフィシャル・セレクション21本のうちコンペ外3本を除いた18作品で競います。うちスペイン語映画は6本と多く、スペインは合作を含めて4本、アルゼンチン、チリ各1本ずつです。現在開催中のトロント映画祭(9月4日~14日)と作品が重なります。オープニングはアメリカのアントワン・フークワの“The Equalizer”(コンペ外)、クロージングはフランスのエリック・トレダノ&オリヴィエ・ナカシュの“Samba”と、共にトロントの「ガラ・プレゼンテーション」上映作品です。スペイン語映画は仮に公開されたとしても来年後半以降になりますね。
★ラテンアメリカ映画は、別に「ホライズンズ・ラティノHorizontes Latinos」部門があって、そちらに流れる傾向があります。秋に開催される「ラテンビート映画祭」では、このセクションと「メイド・イン・スペイン」から選ばれることが多いので、「ホライズンズ・ラティノ」から。
*ホライズンズ・ラティノHorizontes Latinos*
★ポルトガル語圏のブラジルを含めたラテンアメリカ諸国の映画、他の映画祭(例えばカンヌ、ベルリンなど)上映作品並びに受賞歴があってもスペイン未公開作品に限る。審査委員にスペイン人はタッチしない(今年は女性3人が選ばれている)。受賞作品には35,000ユーロの賞金がつく。以上のような枠があります。
★今年はアルゼンチンが合作も含めて最多の7本、同ブラジル3本、同メキシコ、チリ、コロンビアが各2本ずつ、ウルグアイ1本、合計14作品です。ブラジル、メキシコ以外は資金的に単独製作が難しいので欧米との合作が多いのが目立ちます。
★審査委員長にブラジルのプロデューサー、サラ・シルベイラ、コロンビアの女優フアナ・アコスタ、メキシコの批評家・脚本家のヌリア・ビダルと女性3人が審査員です。
*委員長サラ・シルベイラは、1981年よりサンパウロ在住のブラジルで最も活躍しているプロデューサーの一人。2004年のサンセバスチャン映画祭の奨学金を貰って製作した“Cinema, Aspirinas e Urubus”が、翌年のカンヌ映画祭「ある視点」に出品、教育国民賞を受賞し、さらにオスカー賞2007のブラジル代表作品にも選ばれた。マルセロ・ゴメスの“Era una vez eu, Veronica”がサンセバスチャン2012の同セクションで審査員特別メンション賞を受賞するなど本映画祭との縁は深い。
*フアナ・アコスタは1976年カリの生れだがスペインのTVドラマの出演も多く、ダビ・トゥルエバの“Bienvenido a casa”、オリヴィエ・アサイヤスのサスペンス伝記『カルロス』などに出演している。
*ヌリア・ビダルは、1949年メキシコ生れ、シッチェス・ファンタジック映画祭(1994~97)、サンセバスチャン映画祭(1998~2006)の運営委員のメンバーだった。
★上映作品(ゴチック体は既に記事にした作品・青字はスペイン語ではないので割愛)
◎Gente de bien 仏≂コロンビア、フランコ・ロジィ
カンヌ映画祭2014「批評家週間」上映(⇒コチラ5月8日)
◎Jauja アルゼンチン≂米国≂メキシコ≂蘭≂仏≂デンマーク≂独 リサンドロ・アロンソ
カンヌ映画祭2014「ある視点」上映、国際批評家連盟賞受賞(⇒コチラ5月6日、5月27日)
カルロヴィ・ヴァリ映画祭正式出品
トロント映画祭2014「Wavelengths」部門上映。
◎Ciencias naturales(Natural Sciences) アルゼンチン≂仏、マティアス・ルッチェシ
ベルリン映画祭2014ベスト・フューチャー・フィルム賞受賞
ブエノスアイレス・インディペンデント・シネマ国際映画祭FEISAL賞受賞、他
◎Dos disparos(Two Shots Fired) アルゼンチン≂チリ=蘭=独 マルティン・Rejtman
ロカルノ映画祭正式出品
トロント映画祭2014「コンテンポラリー・ワールド・シネマ」部門出品
◎Gueros メキシコ、アロンソ・ルイス・パラシオス
ベルリン映画祭2014ベスト・ファースト・フューチャー賞受賞
トライベッカ映画祭2014ダミアン・ガルシアが最優秀撮影賞受賞 他
ラテンビート2014上映予定(10月)
◎Matar a un hombre(To Kill a Man) チリ≂仏、アレハンドロ・F・アルメンドラス
フライブルク映画祭2014ドン・キホーテ賞・特別審査員賞受賞
マイアミ映画祭2014マイアミ・フューチャー・シネマ批評家賞受賞
ロッテルダム映画祭2014 KNF賞受賞 他 ラテンビート2014上映予定(10月)
◎La princesa de Francia アルゼンチン、マティアス・ピニェイロ
ロカルノ映画祭2014正式出品
トロント映画祭2014「Wavelengths」部門上映
◎La Salada アルゼンチン≂西、フアン・マルティン・Hsu (初監督)
サンセバスチャン映画祭2013「En construccion」部門受賞作品
トロント映画祭2014「Discovery」部門上映
(左側が監督、サンセバスチャン2013「En
construccion」授賞式)
◎Casa grande ブラジル、フェリペ・バルボサ
◎Praia do fururo /
Future Beach ブラジル=独、Karim Ainouz
◎Ventos de agosto /
August Winds ブラジル、ガブリエル・マスカロ
★全作品を紹介するのは時間的に無理なので何作か個別にアップしていきます。トロント映画祭と重なる作品は、他のサイトでも検索しやすいので割愛するか。
第62回サンセバスチャン映画祭2014の大枠 ― 2014年05月20日 10:31
★第62回サンセバスチャン映画祭2014年の大枠が発表になりました。例年カンヌ映画祭との連携もありこの時期に発表になります。気が早いですが今年は、9月19日(金)から27日(土)になりました。昨年はブログ公園デビューで時間を取られ、受賞作品をUPしただけでしたが、今年はニュースが届き次第ご紹介したいと思っております。
★今年のポスターは簡素というか素っ気ないというか、写真でお分かりのようにグレー地に黒文字で上からスペイン語、バスク語、英語の順に「第62回サンセバスチャン映画祭」とあるだけのシンプルなもの。ポスターを紹介したチェマ・ガルシア・アミアノによれば、「映画祭の主役は無条件に上映作品だから、そちらを目立たせてポスターに余計なものは必要ない」ということのようです。ごもっともですがエントリー作品が良ければ問題なしですよ。去年はちょっぴり寂しかった記憶がありますから。2012年のポスターと比較すると、このシンプルさはちょっとしたセンセーションです。
★本映画祭のディレターであるホセ・ルイス・レボルディノスは、「私はとても気に入っている、控えめできっぱりしている。オフィシャル以外の部門は、対照的にそれぞれ素敵で心を捉えるポスターになっている。2014年はスペイン映画とバスク映画にとって素晴らしい年になるだろう」と。主催者側は楽観主義者が多そうです。何作か候補は決まっているのか、「新人監督部門やホライズンズ・ラティノ部門に良い作品を揃えられるし、コンペも既に2作品が確定している」ということです。そのうちアナウンスされるでしょう。
★2013年は、三大映画祭(カンヌ、ベネチア、ベルリン)の次を自負するなら、もう少し何とかなったのではという思いがありました。2012年が60周年という節目の年だったせいか頑張りすぎて、その反動があったような印象でした。経済効果もイマイチだったのではないか。米国に近いモントリオールやトロントの映画祭に時期が近いせいか、そちらに出品する傾向があるようです。次の作品を撮るには、やはり米国に売れるかどうかが重要なんだなぁ。
★三大映画祭といってもカンヌが飛びぬけているだけで、一番の老舗ベネチアも不便だからふんぞり返っていると後発のローマ映画祭に抜かれるかも。蚊取り線香が必要だし(笑)、ホテル代もカフェテリアもぼったくり値段になって、スペインの記者は行きたがらない。ベルリンは街中で足の便はよいが、2月と寒いしなぁ。サンセバスチャン映画祭の魅力は、映画以上にバルのタパス「ピンチョス」が、スペイン一美味しいということだね。料理に関する限り、ベネチアのようなぼったくりはないそうです。
審査員特別賞フェルナンド・フランコ*サンセバスチャン2013 ― 2013年11月27日 13:45
審査員特別賞に新星フェルナンド・フランコ
★マリアナ・ロンドンの“Pelo malo”金貝賞受賞にも驚きましたが、フェルナンド・フランコの“La herida”(“Wounded”)審査員特別賞にはもっと驚きました。ノミネートの段階では、マヌエル・マルティン・クエンカの“Caníbal”やダビド・トゥルエバの“Vivir es fácil con los ojos
cerrados”に気をとられてノーチェックでした。「ゴリアテに立ち向かうダビデ」のようだと評されていたほど。マヌエル・マルティン・クエンカやダビド・トゥルエバが巨人とは思いませんが、第1作がサンセバスチャンのコンペに名を連ねるのは珍しいことでした。「ほんとにクラクラ目眩がしました」と喜びを語ったフランコ監督、「5年前に台本を渡されていました」と語った主役マリアン・アルバレス、若いシネアストたちに希望と勇気を与えてくれました。
★受賞後慌ててキャリアを調べたらパブロ・ベルヘルの『ブランカニエベス』のフィルム編集をしており、短編、ドキュメンタリー、TVを含めると40本近い編集を手掛けているベテラン。マルティン・ロセテの“Voice Over”(2011)が、今年の第8回札幌国際短編映画祭に『ボイス・オーバー』の邦題でエントリーされ、フィルム編賞をしたフランコが最優秀編集賞を受賞していたのでした。『ボイス・オーバー』は世界各国の短編映画祭を一巡して受賞を独り占めにした話題作、いずれこの監督も長編で注目されるようになるでしょう。
★フェルナンド・フランコ Fernando Franco:1976年セビーリャ生れ。ただし本作のロケ地は映画祭の開催されていたサンセバスチャンということもあって、セビリャっ子には自分は知られていないとインタビューに答えていました。5本の短編を撮っておりますがビルバオとか北スペインが多く、短編デビュー作“Mensajes de voz”(2007)と第2作“Tu(a)mor”(2009)がアンダルシアの映画祭マラガで受賞しています。フィルム編集者として、上記の『ブランカニエベス』のほか、最近の話題作にモンチョ・アルメンダリスの“No tengas miedo”(2011)、ダビド・ピニリョスの“Bon appetit”(2010)など。既に例年2月に行われるスペイン最大の映画の祭典ゴヤ賞ノミネートが話題になっており、新人監督賞ノミネートは確実と思いますが、作品賞はどうでしょうか。
★脚本共同執筆者にエンリク・ルファスの名前がありました。彼はハイメ・ロサーレスの『ソリチュード:孤独のかけら』でロサーレスの共同執筆者でした。フランコ監督の映画仲間はいわゆるバルセロナ派に多く、この二人の他イサキ・ラクエスタ監督、脚本家ルイソ・ベルデホなどの名前を挙げています。スペイン映画界ではどちらかというと傍流、癖のある凝り性の人たちです。
★本作はヒロインのアナ役マリアン・アルバレス Marian Alvarez(1978年マドリード生れ)が、女優賞(銀貝賞)を貰うという快挙も加わり、スペイン作品ということもあってベネズエラの“Pelo malo”金貝賞よりニュースになりました。マリアン・アルバレスと言えば、ロセル・アギラールの“Lo mejor de mi”(2007“The Best of me”)の主役を演じた女優、ロカルノ映画祭で銀ヒョウ女優賞を受賞した。トゥリア Turia 映画祭2008で新人女優賞受賞など話題になりました。TVドラマのシリーズで2000年デビュー、2005年ごろから映画の脇役で出演、“Lo mejor de mi”の主役で「銀ヒョウ賞」を獲得したのでした。
*そして6年ぶりの映画界復帰でサンセバスチャンの人気を攫いました。まだ秘密のベールに包まれているマリアンだが、女優賞(または新人女優賞)ノミネート(または受賞)の可能性は100%でしょう。映画はともかく彼女の演技には、日刊紙「エル・パイス」のメイン映画批評家、辛口でうるさ型、みんなの嫌われ者カルロス・ボジェロが太鼓判押しているのですから。
★それで“La
herida”はどんな映画なんでしょうか。タイトルがタイトルですから、見て楽しめる映画でないのは100%保証です。主人公アナは20代後半、救急車のドライバー、他人を救助するという有益な仕事に満足感を感じている。しかし≪境界性パーソナリティ障害≫*という病気をもっている。アナは自分を苦しめているのが病気なのかどうかも知らない。少しずつアナの心は壊れていく。映画はアナの苦しみと絶望をゾッとするような冷静さで語っていく。ちょっと見るのは覚悟がいりそうです。確かにアナのような人生を送るヒロインを演じるのは女優とはいえ容易いことではない。輝く光と暗い闇を演じ分けたマリアン・アルバレスこそ、今年もっとも力強く生きいきした演技をした女優、と批評家連が口を揃えて絶賛しています。あのボジェロ氏さえ「納得の演技」と言ってるんだから見ないわけにもいかないか。
★来年になりますが、いずれ鑑賞したらアップ致します。作品紹介はそちらで。
*思春期ごろに特に女性に発症するという病気、1970年代頃から患者が増えているという。原因も治療法も研究なかばで確立されていないらしい。対人関係が上手くコントロールできず、不安定な自己、衝動的な自己破壊(リストカットなどの自傷行為)、拒食・過食、アルコール依存症など様々、他人からは理解してもらえない行為、自殺で解決する例もあるなど深刻な病気です。
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