新年のご挨拶*今年で5歳になります ― 2018年01月01日 18:37
光陰矢の如し、’El tiempo pasa como una flecha’
★早くも5回目の新年を迎えるとは我ながら驚きです。自分のアタマの体操、もっとスペイン語映画が公開されることを願って始めたブログでしたが、思った以上に時間が取られるものでした。しかし「小人閑居して悪を為すEl ocio es la madre de todos los vicios」とも言いますので、飽きるまでしばらくは続けたいと思います。
★映画界は年初から2月にかけて映画賞の季節、スペインもフォルケ賞(1月13日)、フェロス賞(1月22日)、ガウディ賞(1月28日)、ゴヤ賞(2月3日)が予定されています。うちガウディ賞は未紹介ですが、カタルーニャ語に特化しておりスペイン全体を網羅しておりません。カタルーニャ映画アカデミーが選考母体、カテゴリーはカタルーニャ語とカタルーニャ語以外の言語(主にスペイン語と英語)に大別されています。今年はアグスティ・ビリャロンガの新作「Incerta glòria」がノミネーション最多の16個と独走中、受賞の可能性が高そうです。公開された『ブラック・ブレッド』(10)とテーマが似通っています。
★一応、ガウディ賞の作品賞と監督賞をアップしますと、こんな具合です。(ゴチック体は当ブログ紹介作品)

(第10回ガウディ賞2018のポスター、背景は「Incerta glòria」から)
◎作品賞(カタルーニャ語)
Brava 監督ロセル・アギラル
Estiu 1993 (Verano 1993)『夏、1993』 監督カルラ・シモン ノミネーション14個
Incerta glòria (Incierta gloria) 監督アグスティ・ビリャロンガ 同最多16個
La película de nuestra vida 監督エンリケ・バロ
◎作品賞(カタルーニャ語以外)
Júlia ist 言語スペイン語 監督エレナ・マルティン
La llamada 『ホーリー・キャンプ!』言語スペイン語
監督ハビエル・カルボ&ハビエル・アンブロッシ
Tierra firme 言語英語・西語 監督カルロス・マルケス=マルセ ノミネーション11個 The Bookshop (La librería) 言語英語 監督イサベル・コイシェ 同12個
◎監督賞
アグスティ・ビリャロンガ Agustí Villaronga (Incerta glòria)
カルラ・シモン Carla Simón (Estiu 1993)
カルロス・マルケス=マルセ Carlos Marques-Marcet (Tierra firme)
イサベル・コイシェ Isabel Coixet (The Bookshop )
★授賞式の総合司会者は、『夏、1993』と「Tierra firme」に出演しているダビ・ベルダゲルです。次回は英語映画ですが、いずれの賞にもノミネートされながら未紹介のイサベル・コイシェの映画から始めたいと思っています。(*1月7日アップしました)

(イサベル・コイシェの「La libreria」のポスター)
イサベル・コイシェの「The Bookshop」*ゴヤ賞2018 ② ― 2018年01月07日 12:12
ノミネーション12個でも作品賞は難しいか

★イサベル・コイシェ(1960、バルセロナ)の「La librería」(原題「The Bookshop」)のノミネーション数は、作品賞を含む12個、残念ながら言語は英語、従ってキャストの顔ぶれも大方が英国、米国人です。長編、短編、ドキュメンタリー、オムニバス映画などを含めると30作を超えるから、資金不足で4~5年おきにしか撮れない監督が多いなかで飛びぬけている。自国での製作に拘らず、スペインを脱出して海外に軸足を置く、主に英語で撮る、などが理由として挙げられる。これらは多分に中央のマドリード派ではなくバルセロナ派に属していることが影響している。コイシェの映画はスペインというよりカタルーニャ映画といえる。また初期段階からアルモドバル兄弟の制作会社「エル・デセオ」の資金援助を得られたことも幸運だった。大の寿司好き、寿司に欠かせない山葵に因んで、2000年に自ら「ミス・ワサビ・フィルムズMiss Wasabi Films」という制作会社を設立している。

★1988年の長編デビュー作「Demaciado viejo para morir joven」(カタルーニャ語)が、ゴヤ賞1990新人監督賞ノミネート、初めて英語で撮った「Thing I Never Told You」(「Cosas que nunca te dije」)がゴヤ賞1997オリジナル脚本賞にノミネートされるなど、受賞には至らなかったがゴヤ賞とは縁が深い。後者は2004年から始まったヒスパニック・ビート映画祭(現ラテンビート)で『あなたに言えなかったこと』という邦題で上映されたが、監督名はイサベル・コヘットで、コイシェになるまで時間が必要でした。

(アンドリュー・マッカーシーとリリー・テイラー、『あなたに言えなかったこと』)
★日本でブレイクしたのは、同じ英語で撮ったスペイン=カナダ合作「My Life Without Me」(「Mi vida sin mí」)、邦題は『死ぬまでにしたい10のこと』でこれは公開された。ナンシー・キンケイドの短編の映画化、カナダ人のサラ・ポーリーを主役に起用、本作で初めてゴヤ賞2003脚色賞を受賞した。続いて2006年『あなたになら言える秘密のこと』(原題「The Secret Life of Wards」)で、オリジナル言語が英語ながら作品賞受賞に漕ぎつけた。コイシェ自身も監督賞・オリジナル脚本賞、他に「エル・デセオ」のエステル・ガルシアがプロダクション賞を取った。以降の活躍は日本語版ウイキペディアに詳しいから割愛しますが、当ブログでは、サイコ・スリラー「Another Me」(13、「Mi otro yo」)、「Learning to Drive」(14、『しあわせへのまわり道』)、「Nobody Wants the Night」(15、「Nadie quiere la noche」)の紹介をしています。

(サラ・ポーリーとティム・ロビンス、『あなたになら言える秘密のこと』から)

(ソフィー・ターナーと監督「Another Me」から)
*「Another Me」の紹介記事は、コチラ⇒2014年07月27日
*「Learning to Drive」の紹介記事は、コチラ⇒2015年08月29日 他
*「Nobody Wants the Night」の紹介記事は、コチラ⇒2015年03月01日 他
★最新作「La librería」は、第62回 Seminci(バジャドリード映画祭2017、10月21日開幕)のオープニング作品、イギリス作家ペネロピ・フィッツジェラルドの ”The Bookshop” の映画化です。時代は1959年、イギリスのサフォーク州ハーバーグの小都市が舞台です。ペネロピ・フィッツジェラルド(2016~2000)は、英国ではノーベル文学賞より話題になるというブッカー賞1979を『テムズ側の人々』(原作“Offshore”)で受賞している作家です。

(在りし日のペネロピ・フィッツジェラルド)
★主役のフローレンス・グリーンに『マッチポイント』や『レオニー』のエミリー・モーティマー、バイオレット・ガマールに『エレジー』『しあわせへのまわり道』のパトリシア・クラークソン、エドモンド・ブルンディッシュに『ラブ・アクチュアリー』(03)や主役を演じた『パレードへようこそ』(14)のビル・ナイと、ベテランの演技派を起用している。モーティマーは松井久子の『レオニー』(10)撮影で来日しています。また彼女はクラークソンとはスコセッシとディカプリオがタッグを組んだスリラー『シャッターアイランド』(10)で共演しています。

(撮影中のビル・ナイ、監督、パトリシア・クラークソン)
「The Bookshop」(スペイン題「La librería」)
製作:Diagonal TV / A Contracorriente Films / Zephyr Films / One Two Films / Green Films
監督・脚本:イサベル・コイシェ
原作:ペネロピ・フィッツジェラルドの同名小説
撮影:ジャン・クロード=ラリュー
編集:ベルナ・アラゴネス
プロダクション・デザイン:リョレンス・ミケル
美術:Marc Pouマルク・ポウ
音楽:アルフォンソ・デ・ビラリョンガ
衣装デザイン:メルセ・パロマ
製作者:ジョルディ・べレンゲル(西ライン・プロデューサー)、アレックス・ボイド(英ライン・プロデューサー)、ジャウマ・バナコローチャ、ジョアン・バ、アドルフォ・ブランコ、クリス・カーリング、他多数
メイクアップ&ヘアー:ラウラ・ガルシア(メイク)、ラウラ・バカス(メイク&ヘアー)他多数
データ:製作国スペイン=イギリス=ドイツ、英語、2017年、112分、撮影2016年8~9月、撮影地北アイルランド、バルセロナ他、製作資金約340万ユーロ。バジャドリード映画祭2017オープニング作品、ベルリン映画祭2018(コンペティション外)スペシャル上映。ゴヤ賞ノミネーション12個、ガウディ賞カタルーニャ語以外部門12個、フォルケ賞1個、フェロス賞3個、ノミネーション。スペイン公開2017年11月10日
キャスト:エミリー・モーティマー(フローレンス・グリーン)、ビル・ナイ(エドモンド・ブルンディッシュ)、パトリシア・クラークソン(バイオレット・ガマール)、ジェームズ・ランス(ミロ・ノース)、オナー・ニーフシー(クリスティン)、フランシス・バーバー(ジェシー)、マイケル・フィッツジェラルド(ミスター・レイヴン)、ハンター・トレマイネ(ミスターKeble)、ハーヴェイ・ベネット(ウォーリー)、他
(以上ゴチック体はゴヤ賞にノミネートされた人)
プロット:1959年、フローレンス・グリーンはロンドンを離れ、サフォーク州の海岸沿いの眠り込んだような小さな町ハーバーグに移ってくる。彼女は先の大戦で夫を亡くしていたが、自由な精神と進取の気象に富んだ女性だった。そこで今まで胸の中に閉じ込めていた大きな夢を実現しようと決心する。それはかつてなかったような書店を開くこと、それは亡夫の思い出にも繋がっていた。長年使われていなかった古い家を借り受け、地元の冷淡や無関心という抵抗を受け、今まで気づくことのなかった社会的不公平を体験するが、彼女は自身の自立に向かって奮闘する。間もなくナボコフのスキャンダラスな『ロリータ』、レイ・ブラッドベリの近未来小説『華氏451度』などを店頭に並べ、この保守的で表面上は穏やかだが何世紀も変化のなかった活気の乏しい社会に波風が立ち始める。フローレンスのアクティブな行動が、やがて彼女を同じ開明的な精神の持ち主であるミスター・ブルンディッシュと出会わせるだろう。反面、店舗に不満をもつ土地の有力者ガマール夫人の非常に曖昧な理由による抵抗も受けることにだろう。権力の恣意性についての、本と言葉と孤独についての物語。 (文責管理人)

(フローレンス役のエミリー・モーティマー、映画から)
★前作「Nobody Wants the Night」のジュリエット・ビノシュが演じたヒロインは動の人だったが、フローレンスはどちらかというと静の人、監督と重なる部分が多いかもしれない。「出る杭は打たれる」の諺通り、ヒップスターは批判と侮辱を受けやすい。現在カタルーニャ自治州は独立問題で二派に分裂しているから、立ち位置がどちらでも相手側から批判される。本作は政治的な映画ではなく個人的色彩が濃いが、こういう厳しい現実を考えると、個人的にはカタルーニャ問題を連想してしまいます。前回のゴヤ賞2016は無冠に終わりましたが、今回は賞に絡みそうな予感がします。長年タッグを組んでいる撮影監督のジャン・クロード・ラリュー、音楽のアルフォンソ・デ・ビラリョンガは作曲と歌曲の両方にノミネーションを受けている。

(ジュリエット・ビノシュ、「Nobody Wants the Night」のポスター)
★『ロリータ』(1955)は1962年キューブリック、1997年エイドリアン・ラインと2回、『華氏451度』(1953)もトリュフォーが1966年に映画化している。テーマは共に権力の恣意性でしょうか。
映画アカデミー会長イボンヌ・ブレイク緊急入院*ゴヤ賞2018 ③ ― 2018年01月09日 09:43
1月3日、脳卒中の発作でマドリードのラモン・カハル病院に入院
★確かな筋からの情報によると、ゴヤ賞2018の授賞式を目前にして、スペイン映画アカデミー会長イボンヌ・ブレイクが緊急入院したということです。目下経過はは安定しているが、予後の判断は難しい、と副会長マリアノ・バロッソは語っている。ブレイク会長はクリスマス休暇のあと仕事に復帰していたが、1月3日の午後、事務所で気分が悪くなり、即座にマドリードのラモン・カハル病院に搬送された。経過は安定しているとはいえ、ブレイクの担当医師団による予後の判断が難しいということで、翌日の4日正午、映画アカデミーは公式声明を出したようです。

(イボンヌ・ブレイク会長、2016年エルサレムにて)
★前芸術映画科学アカデミー会長アントニオ・レシノスの任期半ばの2016年7月14日の辞任を受け、9月15日に行われた選挙で選ばれ就任した。1940年マンチェスター生れのイギリス系スペイン人、国際的な衣装デザイナーとして活躍、しかしスペインでのキャリアは長い。ゴヤ賞も4回受賞している。ゴンサロ・スアレス「Remando al viento」(1988)、ホセ・ルイス・ガルシ「Canción de cuna」(94)、ビセンテ・アランダ『カルメン』(03)、メアリー・マクガキアン「The Bridge of San Luis Rey」(西題「El puente de San Luis」スペイン、フランス、イギリス合作)の4作である。1971年のフランクリン・J・シャフナー『ニコライとアレクサンドラ』でオスカー賞も受賞している。1983年にハイメ・チャバリの代表作「Bearn o la sala de las muñecas」を手掛けている。2012年には国民映画賞を受賞、これは女優以外では初めての受賞者。

(オスカー像とブレイク、『ニコライとアレクサンドラ』で受賞)

(「El puente de San Luis」でゴヤ賞2005衣装デザイン賞を受賞)
*イボンヌ・ブレイク関連記事は、コチラ⇒2016年10月29日/同年12月20日
★国際的な活躍として、上記以外ではフランソワ・トリュフォーの『華氏451』(66)、ジョン・スタージェスの遺作となった『鷲は舞いおりた』(76)、ポール・バーホーベン『グレート・ウォリアーズ/欲望の剣』(85、ビデオ)、ピーター・ボグダノヴィッチ、他にリチャード・レスターの『三銃士』(73)『四銃士』(74)あるいはオードリー・ヘップバーンとショーン・コネリーが共演した『ロビンとマリアン』(76)、ハビエル・バルデムがゴヤを演じたミロス・フォアマンの『宮廷画家ゴヤは見た』(06)などが上げられる。

(オードリー・ヘップバーンの衣装を整えるブレイク、『ロビンとマリアン』から)
★その後、悪い知らせは伝わってこないが、授賞式には元気な姿を見せてほしい。
スペイン映画科学アカデミー会長イボンヌ・ブレイク辞任 ― 2018年01月11日 11:52
悪い知らせが届きました・・・・
★「会長辞任」の報など目にしたくなかったのだが、「もしかしたら」が事実になってしまいました(公式発表1月10日水曜日)。イボンヌ・ブレイク会長は、1月3日に緊急搬送されたマドリードのラモン・カハル病院のICUで治療中、ゴヤ賞ガラを目前に待ったなしの決断だったのでしょう。2016年7月14日、前会長アントニオ・レシノスの突然の辞任の後を引き継いで会長代理を引き受け、9月15日の会長選挙で正式に選ばれて第15代スペイン映画科学アカデミーの会長に就任した。第1副会長マリアノ・バロッソ、第2副会長ノラ・ナバスとともに奮闘してきたが、労多くして功少なしの役職、なり手の少ないことを考えると今後のアカデミーは前途多難でしょうか。

★第32回ゴヤ賞ガラは2月3日、マドリード・マリオット・オーディトリアム・ホテルで予定通り開催されます。

(授賞式会場となるホテルのオーディトリアム)
混戦模様のドキュメンタリー部門*ゴヤ賞2018 ③ ― 2018年01月13日 21:08
作品賞よりお茶の間を沸かすドキュメンタリー部門

★本来なら作品賞部門の行方が気になるはずだが、今回はこれと言って特別応援する映画がない。面白そうなのが長編ドキュメンタリー部門である。カルロス・サウラの人生を7人の子供たちに語らせた「Saura(s)」は以前に紹介済みだが、今お茶の間の話題をさらっているのが、俳優グスタボ・サルメロンが実母フリータの生き方を、14年に亘って撮り続けた初監督作品「Muchos hijos, un mono y un castillo」(「Lot of Kids, a Monkey and a Castle」)ではないでしょうか。昨年12月15日の公開以来、フリータと家族はテレビのショータイム番組に引っ張り凧、このエキセントリックな一族(写真下)が、相変わらず高い失業率にあえぐお茶の間を元気づけている。批評家の評価もおしなべて高く「Saura(s)」を超えるのは間違いなさそう。何が魅力なのでしょう?

(全員集合、前列は孫たち、中央が両親、背後に控える監督以下子供たちの家族)
「Muchos hijos, un mono y un castillo」(「Lot of Kids, a Monkey and a Castle」)2017年
製作:Sueños Despiertos / Caramel Films(配給)
監督・撮影・プロデューサー:グスタボ・サルメロン
脚本(共):グスタボ・サルメロン、ラウル・デ・トーレス、ベアトリス・モンタニェス
編集:ラウル・デ・トーレス
音楽:ナチョ・マストレッタ
美術:マヌエル・エスラバ・フェハルド
録音:アブラハム・フェルナンデス、ペラヨ・グティエレス、アナ・ベレン・マルティン
データ:スペイン、スペイン語、2017年、ドキュメンタリー、90分、カルロヴィ・ヴァリ映画祭2017(7月6日)でワールドプレミア、ベスト・ドキュメンタリー賞受賞、トロント映画祭(9月)出品、カムデン映画祭(米ニュージャージー州)ハレルHarrell賞受賞、サンセバスチャン映画祭サバルテギ部門出品、ハンプトン映画祭ゴールデン・スターフィッシュ賞受賞、他チューリッヒ、ロンドン、ストックホルム、マル・デル・プラタ、各映画祭出品。マドリード限定プレミア12月12日、一般公開12月15日。間もなく開催される2018年ゴヤ賞(ドキュメンタリー部門)、フォルケ賞(同部門)、フェロス賞(コメディ部門)などにノミネートされている。

(トロフィーを手に、家族全員が呼ばれたカルロヴィ・ヴァリ映画祭の授賞式)
出演者:グスタボ・サルメロン(監督)、フリア・サルメロン(母親フリータ)、アントニオ・ガルシア(父親)、他ガルシア・サルメロン一家
プロット:フリータは三つの夢を叶えることができた。それはたくさんの子供に恵まれること、モンキーを飼うこと、城に住むことの三つだった。しかし世界を震撼させた2008年の経済危機に見舞われ、目下一家は苦境に立たされている。この堂々たる城を維持していくだけのお金がないのだ・・・グスタボ・サルメロンが俳優の仕事をしながら14年間に亘って、突飛で優しさあふれた思索家でもある母親を主人公に、エキセントリックな一族を撮り続けた、ちょっと物悲しいコメディ。
「私の母はスペインのジーナ・ローランズ、太めのメリル・ストリープ」と監督
★「なんて素晴らしい母親なんだろう! 記録しておかなくちゃ」というわけで2003年3月に撮影が開始された。監督によると、「14年間格闘してきた。1日として撮影しなかった日はなかった。大プリニウスの教え『1本の線を引かない日は1日もない』をモットーとしていたからだ」と。これは古代ローマの博物学者大プリニウスが、古代ギリシャの画家アペレスの不断の努力を讃えた言葉である。「出演者、つまり私の家族と私、私と私の家族の甘酸っぱい、匙加減をしない、ありのままの姿を明らかにすることだった」とも。「へこんだり、うんざりしたり、途方にくれたりしたが、とにかく14年間謙虚に作業をした」と語っています。本格的にドキュメンタリーにまとめようとしたのは後のことだったようです。

(スペイン家庭の定番朝食、ビスケットをオーレにひたしながら食べるフリータを撮る監督)
★中流家庭のガルシア・サルメロン家は、常に混沌としていたが子供たちには創造力と自由が許される環境に包まれていた。6人兄姉の末っ子グスタボが学齢に達しても、誰も学校に行かせようとは考えなかった。子供たちの長所を見つけて過度に励ましてくれるコツを心得ていた。「私たち兄弟はサルと一緒に育った。80年代にサルを家で飼うことなど全く無責任なことでした。母は80歳でも少女のようでした」と。子供たちのなかには将来、工業デザイナーになった兄、幼稚園の園長になった姉がいる。一家は城を買い入れ、やがて鎧や絵画、動物たちが溢れだしてきた。フリア・サルメロンはいわゆるディオゲネス症候群(ため込み症候群)の持ち主だった。自由奔放すぎる女性のようです。

★2004年の9月、「ねえ私、祖母の脊椎骨を持ってるのよ」と母フリータはのたまう。―「何だって、いい加減なこと言って」と監督。「ほんとよ、私の祖母の」―「ちょっと待ってくれ、ぼくの曾祖母のかい?」―頭が真っ白になった監督「どこにあるんだい?」―「どこかにあるはずよ」。つまり場所が分からなくなっていた。俄然見たくなった監督、本当にあるなら見つけて埋葬してやりたかった。すぐさま脊椎骨探しが始まった。この曾祖母は1936年スペイン内戦のさなかに姪とともに殺害されたということだった。本格的にドキュメンタリーにしようと決心した瞬間だったようです。だから最初のタイトルは「En busca de la vértebra perdida」(仮訳「失われた脊椎骨を探して」)だった。監督にとってこの脊椎骨探しはスペイン探しでもあったからである。

(絵画や動物に囲まれた、かなり太めのスペインのメリル・ストリープ)
★撮影開始10年目を迎えた2012年3月、母親がどんな状況でもカメラを回しつけたが、どこか具合が悪いのか元気がなく、「ねえグスタボ、私たちを撮ることで俳優の仕事ができないのじゃないの」とフリータ、いつもは強がりの父親も、「私たちはもう役立たずの二人の年寄りなんだよ」。カメラを取りに急いで書斎に入り、これは心理学者に相談しに行かねばと決心する。2008年のリーマンショックが一家を追い詰めつつあったようで、結局2014年、銀行の負債が返済できなくなり城を手放した。いいことばかりじゃなかった。城は失ったが代わりに映画が完成して大成功をおさめたのだから。

(フリータ最愛の夫「忍耐の天才」アントニオ・ガルシア)
「自由についてのレッスン」とエルビラ・リンド
★トータルで撮影に14年間、最後の2年間はカメラを回しながら同時に編集作業をした。脚本はとても難しく、二人のプロフェッショナル、ベアトリス・モンタニェスとラウル・デ・トーレスの協力を仰いだ。400時間を88分に編集してくれたのもラウル・デ・トーレスだった。別の人の視点が必要だったし、とても勉強になったと語っている。本作は個人史ではあるが「

(脚本家ベアトリス・モンタニェスと監督)
★各紙の批評家がこぞって「この並外れて素晴らしい女性に観客は夢中になるだろう」とエールを送っています。『メガネのマノリート』の作者エルビラ・リンドの批評を要約すると、「どうして映画館がいっぱいになるのか? それは素晴らしい本物の女性に会えるからだ。このドキュメンタリーは自由についてのレッスンであり、傷つけあわずに共に生きることを知っている一家に会える純粋なコメディだからです」と述べています。マドリード限定のプレミア上映には、アルモドバルを筆頭に、サンティアゴ・セグラ、フェルナンド・コロモ、フアンマ・バホ・ウジョアの監督たち、カルロス・アレセス、エレナ・アナヤ、ナタリエ・ポサなど大勢の俳優たちが応援に馳せつけた。間もなく発表になるフォルケ賞が受賞ならゴヤ賞が射程にはいってくる。

(鎧と脊椎骨を両側にセットした椅子に座る両親と監督、マドリードの映画館カジャオにて)
★グスタボ・サルメロンは、1970年マドリード生れの47歳、俳優、監督、脚本家、製作者。俳優としてのキャリアは、1993年フリオ・メデムの『赤いリス』でデビュー、2001年短編「Desaliñada」で監督デビュー、翌年のゴヤ賞2002短編映画賞を受賞している。詳しい紹介は受賞したら特集いたします。

(俳優グスタボ・サルメロン)
第23回ホセ・マリア・フォルケ賞2018*結果発表 ― 2018年01月15日 21:03
作品賞は「El autor」と「La libreria」が分け合いました!

(作品賞受賞作、「El autor」と「La libreria」)
★1月13日、ホセ・マリア・フォルケの生誕地サラゴサで初めて開催された第23回フォルケ賞の結果発表がありました。北スペインの大都市とは言え、マドリードに比べると決して便利とは言えないにもかかわらず大勢が参加しました。ホセ・マリア・フォルケの愛娘ベロニカ・フォルケは勿論のこと、栄誉賞にあたるEGEDA(オーディオビジュアル著作権管理協会)の金のメダルを受賞者カルロス・サウラに敬意を表してか、候補者以外の出席も多かったようです。総合司会者はエレナ・サンチェスとボリス・イサギーレでした。
(受賞者は以下の通り、ゴチック体は当ブログ紹介作品、★印はゴヤ賞にもノミネーション)


(総合司会者のエレナ・サンチェスとボリス・イサギーレ)
◎長編映画賞(フィクションとアニメーション)
「Abracadabra」 ARCADIA MOTION PICTURES他 (監督パブロ・ベルヘル)
◎「El autor」★ ALEBRIJE CINE Y VIDEO S.A. 他 (監督マヌエル・マルティン・クエンカ)
◎「La libreria」★ A CONTRACORRIENTE FILMS他 (監督イサベル・コイシェ)
「Verano 1993」『夏、1993』★ AVALON PRODUCTORA CINEMATOGRAFICA S.L. 他
(監督カルラ・シモン)
「Handia」★ AUNDIYA FILM A.I.E. 他 (監督アイトル・アレギ&ジョン・ガラーニョ)

(「El autor」の製作者と出演者のアデルファ・カルボ、アドリアナ・パス、
ハビエル・グティエレス)

(「La libreria」のスペイン・サイドの製作者に付き添ったイサベル・コイシェ)

(代理で受け取ったイサベル・コイシェ、中央はカジェタナ・ギジェン=クエルボ)
★プレゼンターは、フリオ・メデム監督と女優カジェタナ・ギジェン=クエルボでした。作品賞が引き分けとなるのは今までなかったことだそうです。作品賞は監督でなく製作者に与える賞、登壇するのは製作者です。というわけで「El autor」のマヌエル・マルティン・クエンカ監督はマイアミで撮影中のため欠席でした。フォルケ賞には監督賞がありません。
*受賞作「El autor」の紹介記事は、コチラ⇒2017年8月31日
*受賞作「La libreria」の紹介記事は、コチラ⇒2018年1月7日
◎長編ドキュメンタリー賞
「Alberto Garcia-Alix: La lineade la sombra」 監督ニコラス・コンバロ
「Dancing Beethoven」 監督アランチャ・アギーレ ★
◎「Muchos hijos, un mono y un castillo」 監督グスタボ・サルメロン ★
「Sauras (s)」 監督フェリックス・ビスカレト ★
「Sara Baras: Todas las voces」 監督ラファ・モレス&ペペ・アンドレウ

(グスタボ・サルメロン、母フリア・サルメロン、右端は監督の兄か?)
★両親も出席したフォルケ賞ガラ、グスタボ・サルメロンがトロフィーを手にしました。これでゴヤ賞に一歩近づいたことになります。
*受賞作「Muchos hijos, un mono y un castillo」の紹介記事は、コチラ⇒2018年1月13日
◎短編映画賞
「Los desheredados」ドキュメンタリー (監督ラウラ・フェレス 製作Inicia Films)★
◎「Madre」 (監督ロドリゴ・ソロゴジェン 製作Caballo Films)★
「Tabib」 (監督カルロ・ドゥルシD'Ursi 製作Potenza Produciones)

(主演のマルタ・ニエトとロドリゴ・ソロゴジェン監督)
◎主演男優賞
アンドレス・ヘルトルディス ★ 「Morir」 監督フェルナンド・フランコ
ダビ・ベルダゲル ★助演 「Verano 1993」
◎ハビエル・グティエレス ★ 「El autor」
フアン・ディエゴ 「No sé decir adiós」 監督リノ・エスカレラ

★ハビエル・グティエレスは、2015年にアルベルト・ロドリゲスの『マーシュランド』で受賞しています。更にフェロス賞、ゴヤ賞とオール制覇でした。しかし個人的には今年は割れる予想をしています。
◎主演女優賞
アデルファ・カルボ ★助演 「El autor」 監督マヌエル・マルティン・クエンカ
アンナ・カスティーリョ ★助演 「La llamada」『ホーリー・キャンプ!』
監督ハビエル・カルボ&ハビエル・アンブロッシ
マリアン・アルバレス 「Morir」
マリベル・ベルドゥ ★ 「Abracadabra」
ブルナ・クシ ★新人 「Verano 1993」『夏、1993』
◎ナタリエ・ポサ ★ 「No sé decir adiós」

★マリベル・ベルドゥかナタリエ・ポサを予想しておりました。ここ最近の女優賞は候補者が5~6人と多く、予想がしにくいカテゴリーです。ベルドゥは2013年にパブロ・ベルヘルの『ブランカニエベス』で既に受賞しています。
*「No sé decir adiós」とナタリエ・ポサの紹介記事は、コチラ⇒2017年6月25日
◎長編ラテンアメリカ映画賞
「La cordillera」『サミット』(アルゼンチン) 監督サンティアゴ・ミトレ
「Las hijas de Abril」(メキシコ) 監督ミシェル・フランコ
「Mi Mundial」(アルゼンチン=ブラジル=ウルグアイ) 監督カルロス・モレリィ
「Ultimos días en La Habana」(キューバ) 監督フェルナンド・ぺレス
◎「Una mujer fantástica」『ナチュラルウーマン』(チリ) 監督セバスティアン・レリオ ★

(ララ・P・カミーニャとアレックス・ラフエンテ)
★大方の予想通りの受賞でした。こちらも予想通りチリからの出席はなく、スペイン配給会社BTeam Pictures が代理でトロフィーを受け取りました。
*受賞作『ナチュラルウーマン』の紹介記事は、コチラ⇒2017年1月26日
◎Cine y Educacion en Valores
「Deep」(アニメーション) 監督フリオ・ソト・グルピデ
「Handia」
◎「Lo que de verdad importa」 監督パコ・アランゴ

(パコ・アランゴ監督とポスター)
★「タメになるうえ、家族揃って安心して見られる映画」だそうです。
◎EGEDA金のメダル(栄誉賞)
★カルロス・サウラは、EGEDA エンリケ・セレソ会長から金のメダルを受け取りました。

★今宵のベストドレッサー

(左から、エレナ・リベラ、マリベル・ベルドゥ、ダフネ・フェルナンデス)
ゴヤ賞栄誉賞にマリサ・パレデス*ゴヤ賞2018 ④ ― 2018年01月18日 20:36
「栄誉賞」が初めてのゴヤ賞受賞にびっくり!
★栄誉賞受賞の理由は「数多の長年のキャリアと信望・・・・スペインのみならずリスクのともなう海外の映画出演でも競い合い、その無条件の力強さを維持している」からだそうです。受賞の知らせは既にアップしていますが、改めて長い芸歴を纏めてみました。まず驚いたのは、これまでゴヤ賞には全く縁がなかったということでした。1987年にゴヤ賞が始まったころに、女優としてのピークが過ぎていたわけでもないのに逃しており、その長いキャリアとその存在感は皆が認めていたのにです。パレデス本人も「私と同じように幸運に恵まれない人々がたくさんいる」と語ったようです。

★マリサ・パレデスMarisa Paredes、1946年4月3日マドリード生れの71歳、映画・舞台・TV女優。スペイン、ほかフランス、イタリアでも活躍。ゴヤ賞には縁がなかったが、シネアストの最高賞と言われる映画国民賞(第1回1980年受賞者カルロス・サウラ)を1996年受賞、2007年芸術文化分野で功績を残した人物にスペイン文化省が与える金のメダル(Medalla de Oro al Merito en las Bellas Artes)受賞、サンセバスチャン映画祭につぐ老舗映画祭、第62回バジャドリード映画祭2017の麦の穂栄誉賞を受賞したばかりである。ゴヤ賞以外の女優賞は多数あるが、なかで『私の秘密の花』でカルロヴィ・ヴァリー映画祭1996、「El dios de madera」でマラガ映画祭2010、各女優賞、シチリア島のタオルミーナ映画祭2003でタオルミーナ芸術賞を受賞している。2000年から2003年までスペイン科学映画アカデミー会長を務めた。少女時代から女優を目指し、音楽学校、マドリードの演劇芸術学校で演技を学んだ。

(麦の穂栄誉賞を手に、バジャドリード映画祭2017授賞式にて)
★1960年当時14歳だったパレデスは子役として、ホセ・マリア・フォルケの「091 Policía al habla」で映画デビューしているが、クレジットされていない。翌年コンチータ・モンテス劇団のホセ・ロペス・ルビオの戯曲「Esta noche tampoco」で初舞台を踏む。以来現在まで二足の草鞋を履いている。60~70年代は、概ねその他大勢の脇役、コメディが多かった。フランコ体制当時は、厳しい検閲逃れのコメディが多く製作された。1965年フェルナンド・フェルナン=ゴメス監督・主演の「El mundo sigue」でお手伝い役を演じたほか、ハイメ・デ・アルミニャンのコメディ「Carola de día, Carola de noche」(69)、アントニオ・イサシ=イサスメンディの「El perro」(76)に出演している。

(左、主演のリナ・カナレハス、右マリサ・パレデス、「El mundo sigue」から)
★フランコ体制が崩壊(1975)、民主主義移行期を経た1980年、フェルナンド・トゥルエバの「Ópera prima」やエミリオ・マルティネス=ラサロの「Sus años dorados」に出演、1983年アルモドバルの第3作目『バチ当たり修道院の最期』(原題「Entre tinieblas」仮題「闇の中で」)に尼僧役で出演、カルメン・マウラのように通称「アルモドバルの女性たち」の仲間入りをした。監督もバスの乗客として出演している。1986年アグスティ・ビリャロンガの「Tras el cristal」、1987年ホセ・サクリスタン監督・主演の「Cara de acelga」で初めてゴヤ賞助演女優賞にノミネートされた。

(尼僧に扮したパレデス、『バチ当たり修道院の最期』から)
★1990年代にはアルモドバルの成功作に出演している。例えば『ハイヒール』(91)、『私の秘密の花』(96、ゴヤ賞主演女優賞ノミネート)、『オール・アバウト・マイ・マザー』(99)であるが、ゴヤ賞は素通りされた。『ハイヒール』の年は、ビセンテ・アランダの『アマンテス/ 愛人』のビクトリア・アブリルとマリベル・ベルドゥの二人、バジョ・ウジョアの「Alas de mariposa」(仮題「蝶の羽」)のシルビア・ムントの3人がノミネートされ(1998年まで3名)、受賞者は後者だった。次はアグスティン・ディアス・ヤネスの『死んでしまったら私のことなんか誰も話さない』のビクトリア・アブリルの前に敗れたが、アブリルの受賞は個人的に納得でした。オスカー賞まで取った『オール・アバウト・マイ・マザー』では、該当する助演女優賞に相手役のカンデラ・ペーニャがノミネートされた。作品の重要性からいってパレデスがノミネートされて然るべきだったと思います。結果はベニト・サンブラノの『ローサのぬくもり』のマリア・ガリアナが受賞した。

(娘役ビクトリア・アブリル、アルモドバル、母親役パレデス、『ハイヒール』から)

(壊れた夫婦を演じたパレデスとイマノル・アリアス、『私の秘密の花』から)

(付き人役のカンデラ・ペーニャとパレデス、『オール・アバウト・マイ・マザー』)
★パレデス本人が言うように「運に恵まれなかった」感が否めない。この90年代は海外での出演も多く、例えば、イスラエルのアモス・ギタイの『ゴーレム さまよえる魂』(92、「ディアスポラ三部作」の最終章)、スイスのダニエル・シュミットの自伝的映画『季節のはざまで』(92、仏・スイス・独、独語)、フィリップ・リオレの『パリ空港の人々』(93、仏・西、仏語)、特にメキシコのアルトゥーロ・リプスタインの『真紅の愛』(96、メキシコ・仏・西、西語)では、パレデス本人は賞に絡みませんでしたが、アリエル賞以下ハバナ映画祭でも多数受賞した話題作でした。またガルシア・マルケスの同名小説の映画化『大佐に手紙は来ない』(99)では、老大佐の妻を演じた。イタリア映画では、ロベルト・ベニーニ監督・主演の『ライフ・イズ・ビューティフル』(97)出演も忘れがたい1作、ユダヤ系イタリア人グイドの妻ドーラの母親に扮した。チリの亡命監督ラウル・ルイスの『三つの人生とたった一つの死』(96、仏・ポルトガル)など海外での活躍も見落とせない。

(白髪にして老妻を演じたマリサ・パレデス、『大佐に手紙は来ない』から)
★2001年、ギレルモ・デル・トロがアルモドバルに招かれスペイン内戦をテーマに撮った戦争ホラー・サスペンス『デビルス・バックボーン』に出演、エドゥアルド・ノリエガやフェデリコ・ルッピが共演した。批評家からは高い評価を得られたものも興行的には成功しなかった。その後は、マノエル・デ・オリヴェイラの『マジックミラー』(05)、ベダ・ドカンポ・フェイホーの「Amores locos」(09)でエドゥアルド・フェルナンデスと共演、アルモドバルの『私が、生きる肌』(11)ではスペインに戻ってきたアントニオ・バンデラスと共演、ポルトガルのバレリア・サルミエントの『皇帝と公爵』(12)ではジョン・マルコヴィッチと共演した。イタリア語ができることもあって、クリスティナ・コメンチーニのコメディ『ラテン・ラバー』(15、伊・仏)に出演している。最新作はハイメ・ロサーレスの『ペトラは静かに対峙する』(18)、主役のペトラにバルバラ・レニー他、アレックス・ブレンデミュール、ベテラン演技派ペトラ・マルティネスとの共演である。

(右脚を失い義足の役柄に挑んだパレデス、『デビルス・バックボーン』から)
★私生活では「El perro」の監督イサシ=イサスメンディと結婚、1975年に生まれた娘マリア・イサシも女優。現在はホセ・マリア・プラド<チェマ>(1952年、ルゴ生れ)が1983年からのパートナー、現在に至っている。スペイン・フィルモテカ(フィルム・ライブラリー)のディレクターを長年務めており、国内の映画祭のみならず、世界の映画祭、カンヌ、ベネチア、ロカルノ、サンダンス、グアダラハラ、ロッテルダムなどに出向いている。イベロアメリカ・フェニックス賞のディレクター、またフォト・アーティストでもある。


ゴヤ賞候補者が一堂に会して昼食会*ゴヤ賞2018 ⑤ ― 2018年01月22日 12:13
映画アカデミー会長空席で開催された昼食会

(昼食会に参集した候補者たち、中央が栄誉賞受賞のマリサ・パレデス)
★授賞式(2月3日)に先立って催される候補者を招待しての昼食会が1月15日、5年ぶりにプエルタ・デル・ソルの王立郵便局(18世紀に建てられ時計台で有名なマドリード自治政府庁の本部)でありました。イボンヌ・ブレイク映画アカデミー会長が年初に脳卒中で倒れ辞任が確実になっています。治療のため入院が続いており、ゴヤ賞ガラ終了後の選挙で理事会は一新することになります。副会長ノラ・ナバスの「一日でも早い回復を祈る」という挨拶に大きな拍手が沸いたようです。また多様性に富んだ映画が多く製作された「素晴らしい収穫」の1年であったことを強調した。立場の異なる人々の対話の促進、異論のない品質の高い映画の製作、まだ「映画が作れるんだという夢を私たちがもつことができた」とも語ったようです。アカデミーの新会員が300名あったことも朗報の一つです。政治だけでなく組織の若返りは必須でしょう。

(主要ノミネーション作品)
★この昼食会には主要カテゴリーにノミネートされていても、海外を本拠地にしている人(バルデム=クルス夫妻、ローラ・ドゥニャスなど)や次作の撮影でスペインを離れている人は欠席するケースが多い。上記写真の前列には(小さすぎて正確に判別できないのですが)、マリサ・パレデスを真ん中にしてイサベル・コイシェ(監)、カルラ・シモン(新監)、マリベル・ベルドゥ(主女)、ナタリエ・ポサ(同)、ハビエル・グティエレス(主男)、アンドレス・ヘルトルディス(同)、ホセ・モタ(助男)、ベレン・クエスタ(助女)、15回ノミネーション10回受賞の作曲家アルベルト・イグレシアスなどの姿がありました。ニューヨークのブルックリンを本拠地にしているイサベル・コイシェ監督もフォルケ賞以下、フェロス賞、ガウディ賞にノミネーションされているので滞在しているのかもしれない。

(左から、マリベル・ベルドゥ、ホセ・モタ、ベレン・クエスタ、当日の衣装)
★今回サンティアゴ・ミトレの『サミット』の音楽でゴヤ賞に戻ってきたゴヤ胸像のコレクター、アルベルト・イグレシアスは、「新しい人々が増えたことはとても良いことで、映画作りに新しいアイデアや形式をもたらす彼らを見つけて援助すべきだと思う」と、世代交代が顕著になったことを実感しているようです。パコ・プラサの『エクリプス』(原題「Verónica」)主演で新人女優賞にノミネートされたサンドラ・エスカセナの16歳が最年少候補者、監督では『夏、1993年』のカルラ・シモン、『スキン~あなたに触らせて』のエドゥアルド・カサノバ、『ホーリー・キャンプ!』のハビエル・カルボとハビエル・アンブロッシなどの今後が楽しみです。「二人のハビ」は仕事でガラに出席できないらしい。

(サンドラ・エスカセナ、『エクリプス』から)
★主演男優賞にノミネーションのアンドレス・ヘルトルディスの受賞は難しいでしょうか。「Abracadabra」のアントニオ・デ・ラ・トーレ、「Autor」のハビエル・グティエレス、「Loving Pablo」のハビエル・バルデムという大物揃い、映画もフェルナンド・フランコの「Morir」と小粒である。バルデムと主演女優賞ノミネートのペネロペ・クルスの両人は欠席がアナウンスされています。こちらの二人も受賞はないと予想しています。

(時計回りに、ハビエル・グティエレス、アンドレス・ヘルトルディス、
ハビエル・バルデム、アントニオ・デ・ラ・トーレ、4人の候補者)
★新人監督賞受賞の先頭を切っているカルラ・シモン、「女性シネアストたちにご褒美を出してやる気を駆り立てるのは間違いなく賛成」であるが、政治的関心が薄れているのが気になるとコメントしている。ベテラン勢のナタリエ・ポサやイサベル・コイシェたちも「さまざまの権利を存分に主張し続けねばならない」とはっきり、「新しいページをめくる必要があります」とナタリエ・ポサ。

(ノミネートはなかった二人の子役、カルラ・シモンの『夏、1993年』から)
★男優女優にノミネートされた24人のうち13人と番外1人の14人が、世界初の女性ファッション誌『ハーパーズ バザー』(ニューヨーク1867年刊)にヌードをご披露した。日本版には多分掲載されていないと思う。ノミネートされた作品ごとに、好感度ナンバーワンは、『ホーリー・キャンプ!』のベレン・クエスタとアンナ・カスティーリョ、以下『禁じられた二人』のポル・ムネン、「No sé decir adiós」のローラ・ドゥニャスとナタリエ・ポサ、「Abracadabra」のマリベル・ベルドゥとホセ・モタ、「El autor」のハビエル・グティエレス、アデルファ・カルボ、アドリアナ・パスの3人、『夏、1993』のブルナ・クシとダビ・ベルダゲル、『スキン~あなたに触らせて』のエロイ・コスタ、もう一人は女優賞のノミネートはなかったが短編映画のロドリゴ・ソロゴジェンの「Madre」の主演マルタ・ニエト、合計14人です。過激なものから味気ないものまで、マサカという人もいます。これが受賞にプラスかマイナスかは神のみぞ知るです。写真はすべて見ることができますが割愛。
★ゴヤ賞イベロアメリカ映画部門ノミネーションのセバスチャン・レリオの『ナチュラルウーマン』の公開日がアナウンスされました。来る2月24日(土)、シネスイッチ銀座、新宿シネマカリテ、恵比寿ガーデンシネマの3館です。1月23日のセルバンテス文化センターでの試写会は既に満席です。
第5回フェロス賞2018*結果発表 ― 2018年01月23日 18:14
カルラ・シモンの『夏、1993』に軍配が上がりました

★1月22日の夕べ、マドリードのComplejo Magarinosでフェロス賞の授賞式が開催されました。総合司会者はコメディアン俳優のフリアン・ロペス、今年は女性たちのガラとして記憶されるだろうということです。というのはトロフィーはすべて女性によって手渡されたのでした。そういうわけで女性の出席者が目立った授賞式でした。だからカルラ・シモンが受賞したわけではないでしょう。

(コメディアン俳優のフリアン・ロペス)
★先行したフォルケ賞では無冠だった『夏、1993』が作品賞(ドラマ部門)、カルラ・シモンの監督賞、脚本賞、更にダビ・ベルダゲルが助演男優賞 と、4賞を獲得しました。ハビエル・カルボ&ハビエル・アンブロッシの『ホーリー・キャンプ!』がコメディ部門の作品賞、ガラ不参加が報道されていたはずなのに二人で仲良く赤絨毯に現れたようです。主演男優・女優賞はフォルケ賞と同じ顔触れになりました。ハビエル・グティエレスはTVシリーズの「Vergüenza」でも主演男優賞を受賞、ゴヤに雪崩れ込みそうです。アイトル・アレギ&ジョン・ガラーニョの「Handia」は、オリジナル音楽賞(パスカル・ゲーニュ)とポスター賞(イニャキ・ビリュエンダス)の2冠、大賞には及びませんでした。

(喜びのスピーチをする監督賞受賞のカルラ・シモン)
★ガラ会場に唯一人リラックスして現れたのが、フェロス栄誉賞のベロニカ・フォルケ(1955年12月1日、マドリード、62歳)でした。幾つになっても年を取らないと思っていましたが、やはり年相応の顔になりましたでしょうか。父親はホセ・マリア・フォルケ、それで毎回フォルケ賞には姿を見せます。ゴヤ賞主演女優賞を2個、助演を2個、残るは栄誉賞だけでしょう。2005年マラガ映画祭のマラガ賞、2014年にはバジャドリード映画祭の麦の穂栄誉賞を受賞しています。

受賞結果は以下の通り:ノミネーション・リスト(初出に監督名、ゴチック体は紹介作品)
◎作品賞(ドラマ部門)
「El autor」 (監督マヌエル・マルティン・クエンカ)
「Handia」 (同アイトル・アレギ&ジョン・ガラーニョ)
「No sé decir adiós」 (同リノ・エスカランテ)
◎「Verano 1993」『夏、1993』 (同カルラ・シモン)
「Verónica」 『エクリプス』(同パコ・プラサ)

(『夏、1993』のスタッフと出演者、中央はトロフィー2個を手にしたライア・アルティガス、
左側はシモン監督、右側は助演男優賞のトロフィーを手にしたダビ・ベルダゲル)
◎作品賞(コメディ部門)
「Abracadabra」 (監督パブロ・ベルヘル)
◎「La llamada」『ホーリー・キャンプ!』(同ハビエル・カルボ&ハビエル・アンブロッシ)
「Fe de Etarras」『となりのテロリスト』 (同ボルハ・コベアガ)
「Muchos hijos, un mono y un castillo」ドキュメンタリー (同グスタボ・サルメロン)
「Selfie」 (同ビクトル・ガルシア・レオン)
「Tierra firme」 (同カルロス・マルケス=マルセ)

(二人のハビことハビエル・カルボとハビエル・アンブロッシ)

(両監督ほかのスタッフと出演者たち)
◎監督賞
アイトル・アレギ&ジョン・ガラーニョ 「Handia」
イサベル・コイシェ 「La librería」
マヌエル・マルティン・クエンカ 「El autor」
◎カルラ・シモン 「Verano 1993」
パコ・プラサ 「Verónica」
◎主演男優賞
サンティアゴ・アルベル 「Selfie」
ハビエル・カマラ 「Fe de Etarras」
アンドレス・ヘルトルディス 「Morir」(監督フェルナンド・フランコ)
◎ハビエル・グティエレス 「El autor」
アントニオ・デ・ラ・トーレ 「Abracadabra」

◎主演女優賞
マリアン・アルバレス 「Morir」
ライア・アルティガス 「Verano 1993」
サンドラ・エスカセナ 「Verónica」
ヌリア・プリムス 「Incierta groria」(監督コラル・クルス&ジョアン・サレス)
◎ナタリエ・ポサ 「No sé decir adiós」
マリベル・ベルドゥ 「Abracadabra」

◎助演男優賞
フアン・ディエゴ 「No sé decir adiós」
ビル・ナイ 「La librería」
ハイメ・オルドーニェス「El bar」『クローズド・バル』(アレックス・デ・ラ・イグレシア)
オリオル・プラ 「Incierta groria」
◎ダビ・ベルダゲル 「Verano 1993」
アントニオ・デ・ラ・トーレ 「El autor」
◎助演女優賞
◎アデルファ・カルボ 「El autor」
アンナ・カスティーリョ 「La llamada」『ホーリー・キャンプ!』
ベレン・クエスタ 「La llamada」
ロラ・ドゥエニャス 「No sé decir adiós」
グラシア・オラヨ 「La llamada」
◎脚本賞
アレハンドロ・エルナンデス&マヌエル・マルティン・クエンカ 「El autor」
ディエゴ・サン・ホセ 「Fe de Etarras」
パブロ・レモン&リノ・エスカランテ 「No sé decir adiós」
◎カルラ・シモン 「Verano 1993」
フェルナンド・ナバロ&パコ・プラサ 「Verónica」

◎オリジナル音楽賞
ホセ・ルイス・ペラレス 「El autor」
カルロス・リエラ&ジョアン・バレント 「El bar」『クローズド・バル』
◎パスカル・ゲーニュ 「Handia」
アルフォンソ・デ・ビラリョンガ 「La librería」
エウヘニオ・ミラ 「Verónica」

◎特別フェロス賞
「La vida y nada más」アントニオ・メンデス

◎予告編賞
フェルナンド・バリャリノ「El autor」
ラファ・マルティネス「El bar」『クローズド・バル』
◎アルベルト・グティエレス「La llamada」
ラファ・マルティネス「Pieles」『あなたに触らせて』 (監督エドゥアルド・カサノバ)
ミゲル・A・トゥルドゥTrudu「Verano 1993」『夏、1993』
ラファ・マルティネス「Verónica」

*予告編を専門に手がけているラファ・マルティネスは、2017年にパコ・レオンの『KIKI~愛のトライ&エラー』で受賞しているせいか、今回は3作とも逃しました。
◎ポスター賞
セルフィオ・ゴンサレス・クンKuhn「El bar」『クローズド・バル』
◎イニャキ・ビリュエンダス「Handia」
Cartel teaser「La llamada」『ホーリー・キャンプ!』
セルフィオ・ゴンサレス・クンKuhn「Pieles」『あなたに触らせて』
オルガ・オルティス「Verano 1993」『夏、1993』

◎ドキュメンタリー賞
◎「La Chana」が受賞しました(製作:Noon Film S.L. 製作国:スペイン・アイスランド・米国、監督Lucija Stojevic、2016年、83分)。アントニア・サンティアゴ・アマドールLa Chanaの伝記映画。1946年バルセロナ生れのロマのフラメンコダンサー、1961年15歳でデビューした。フェロス賞はゴヤ賞の前哨戦の意味合いがありますが、そちらにはノミネーションされておりません。


*作品賞(コメディ部門)とダブル・ノミネーションだったグスタボ・サルメロンの「Muchos hijos, un mono y un castillo」は残念でした。
★ノミネーション・リストをアップしなかったTVシリーズの受賞は以下の通りです。
*シリーズ・ドラマ部門
◎「La zona」Temporada 1
*シリーズ・コメディ部門
◎「Vergüenza」Temporada 1

*主演男優賞
◎ハビエル・グティエレス 「Vergüenza」Temporada 1
*主演女優賞
◎マレーナ・アルテリオ 「Vergüenza」Temporada 1

(喜びを分かち合うハビエル・グティエレスとマレーナ・アルテリオ)
*助演男優賞
◎ミゲル・レリャン 「Vergüenza」Temporada 1
*助演女優賞
◎エンマ・スアレス 「La zona」Temporada 1

★赤絨毯を踏んだシネアストが着用した衣装の品定めでは、ベスト・ドレッサーはパウリナ・エチェバリアでした。薄いピンク色で羽根飾りがついた左右非対称のドレス、ホルヘ・アクーニャのデザイン。ベスト・ドレッサーに選ばれた、左からマカレナ・ガルシア、パウラ・エチェバリア、マリベル・ベルドゥ、アナ・ポルボロサ、ベレン・ルエダ、ウルスラ・コルベロの6人。各デザイナーはスペイン人のようです。

★最も話題を提供したのが写真の5人でした。フェロス賞の立ち位置は、米国アカデミー賞の前哨戦といわれるゴールデングローブ賞、今年は3人の例外を除いて全員黒ずくめでした。そこで負けじとばかり黒のスーツにしたのか、それでは味気ないと考えたのか、マラガのアーティストのエルネスト・アルティリョにペインティングしてもらった。賛同したのか皮肉ったのか、どちらでしょうか。

★左からバルバラ・サンタクルス、Brays Efe、ホルヘ・Suquet、ジェマ・ガラン、アルバ・フローレス。Brays Efeは2017年TVシリーズ(コメディ部門)で、赤毛で太っちょの冴えない男を演じて主演男優賞を受賞した俳優。こんな強面とは知りませんでした。
ゴヤ賞俳優候補者たちの座談会*ゴヤ賞2018 ⑥ ― 2018年01月28日 16:28
フェミニズムとマチスモについて語る
★この企画を膳立てしたのはモビスター+(テレフォニカ傘下の携帯電話事業会社、1995年設立。スペインでは2200万人が加入している)で、まず1月24日(水)にゴヤ賞並びにフェロス賞にノミネートされた女優陣、26日(金)に男優陣の座談会が開催された。ハリウッドの大物プロデューサー、ハーベイ・ワインスタインのセクハラ騒動を機に映画界のみならず政界にまで、世界中に火の粉は飛び散っています。セクハラが面白可笑しく語られる時代ではなくなったということでしょう。一歩前進ですがゴヤ賞にノミネートされたシネアストたちの座談会でのテーマも、女優、男優とも期せずしてフェミニズムについてだったようです。
★先に開催された女優座談会の出席者は、写真左からサンドラ・エスカセナ(ゴヤ賞新人女優賞『エクリプス』)、マリアン・アルバレス(フェロス賞主演女優賞「Morir」)、イツィアル・カストロ(ゴヤ新女『スキン あなたに触らせて』)、アンナ・カスティーリョ(ゴヤ助女『ホーリー・キャンプ!』)、ダフネ・フェルナンデス(ノミネートなし「Perfectos desconocidos」)の5名、司会者はマリア・ゲーラ。

(S・エスカセナ、M・アルバレス、I・カストロ、A・カスティーリョ、D・フェルナンデス)
★いろいろ盛りだくさんなことが話し合われたが、なかでも出席者たちのテーマはフェミニズムに集中した。例えば「フェミニズムの対極にあるのがマチスモ、女性の平等の権利が欲しいか、本当に同等に扱われているか。もし欲しくないなら、あなたは男性優位の考えをする人、それ以外の選択肢はありません」とイツィアル・カストロ。
★女優陣に続いて第2弾として開かれたのが男性陣座談会、出席者は写真左から、サンティアゴ・アルベル(ゴヤ賞新人男優賞「Selfi」)、ダビ・ベルダゲル(ゴヤ助男夏、1993』)、ポル・モネン(ゴヤ新男『禁じられた二人』)、フアン・ディエゴ(ゴヤ助男「No sé decir adiós」)、アンドレス・ヘルトルディス(ゴヤ主男「Morir」)の5名、司会者はカルロス・モラニョン。

(S・アルベル、D ・ベルダゲル、P・モネン、J・ディエゴ、A・ヘルトルディス)
★女性座談会の流れを受けたのか、こちらもテーマの中心は映画は勿論ですがフェミニズムだったようです。まずベテランのフアン・ディエゴが、男性たちは社会に横溢しているマチスモに向き合うことを認識すべきであり、それが極めて重要な問題なのだと認めたようです。スペインのマチスモは改善されるのでしょうか、今後に期待したいところです。
★次回は恒例となっている、ゴヤ賞ガラ前に行われる監督候補者たちの座談会をアップいたします。今年32回は5作品4言語と異例の年になりました。スペイン語2作、カタルーニャ語、英語、バスク語、各1作ずつです。
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