スペイン内戦をバスクを舞台にコメディで*「La higuera de los bastardos」 ― 2017年12月03日 16:28
アナ・ムルガレンの「La higuera de los bastardos」―小説の映画化

★今年のサンセバスチャン映画祭で上映された(9月28日)ボルハ・コベアガの「Fe de etarra」は、カンヌで話題になった『オクジャ』と同じネットフリックスのオリジナル作品だったから、さっそく『となりのテロリスト』の邦題で配信されました。エタETA(バスク祖国と自由)の4人のコマンドが、ワールドカップ2010を時代背景にマドリードで繰り広げる悲喜劇。脚本にディエゴ・サン・ホセと、大当たり「オチョ・アペリード」シリーズ・コンビが、今度は人気のハビエル・カマラを主役に迎えて放つ辛口コメディ。いずれアップしたい。
★今回アップするアナ・ムルガレンの「La higuera de los bastardos」は、スペイン内戦後のビスカヤ県ゲチョGetxoが舞台、時代は大分前になるがスペイン人にとって、特にバスクの人にとっては、そんなに遠い昔のことではない。本作はラミロ・ピニーリャ(ビルバオ1923~ゲチョ2014)の小説 “La higuera”(2006)の映画化。ピニーリャはビスカヤについての歴史に残る作品を書き続けたシンボリックな作家、1960年に “Las ciegas hormigas” でナダル賞、2006年、バスクのような豊かだが複雑な世界についての叙事詩的な「バスク三部作」ほか、彼の全作品に対して文学国民賞が贈られている。ヘンリー・デイヴィッド・ソローの回想録『ウォールデン 森の生活』(1854刊)から採った自宅「ウォールデンの家」で執筆しながら人生のほとんどを過ごした。

(ディケンズの『デイヴィッド・コパフィールド』を手にしたピニーリャ)
★「健康だし未だ頭もはっきりしている。実際のところ私の精神年齢は20歳なんですよ。死は怖くはありませんが、ただ残念に思うだけです。まだそこへ行きたいとは考えていません、何もないのでしょうね。健康が続くかぎり生きていかねばなりません」とインタビューに応えるラミロ・ピニーリャ。若いころは生活のために船員、ガス会社勤務など多くの職業を転々、小説家デビューは1960年と比較的遅かった。以降半世紀以上バスクの物語を書き続けた。インタビューの約1ヵ月後、10月23日老衰のため死去、享年91歳でした。

(「ウォールデンの家」でインタビューに応じるラミロ・ピニーリャ、2014年9月14日)
「La higuera de los bastardos」(The Bastards Fig Tree)2017
製作:The Fig Tree AIE / Blogmedia 協賛Ana Murugarren PC
監督・脚本・編集:アナ・ムルガレン
原作:ラミロ・ピニーリャ “La higuera”
撮影:Josu Inchaustegui(ヨス・インチャウステギ?)
録音:セルヒオ・ロペス=エラニャ
音楽:アドリアン・ガルシア・デ・ロス・オホス、アイツォル・サラチャガ
製作者:ホアキン・トリンカダ(Joaquin Trincada)
データ:製作国スペイン、スペイン語、2017、コメディ・スリラー、103分、2016年夏ビスカヤ県ゲチョで撮影。11月開催のオランダのフリシンゲン市「Film By The Sea」2017に正式出品、スペイン公開11月24日
キャスト:カラ・エレハルデ(ロヘリオ)、エルモ(カルロス・アレセス)、ペパ・アニオルテ(村長の妻シプリアナ)、ジョルディ・サンチェス(村長ベニート)、ミケル・ロサダ(ペドロ・アルベルト)、アンドレス・エレーラ(ルイス)、ラモン・バレア(ドン・エウロヒオ)、イレニア・バグリエット(Ylenia Bagliettoロレト)、マルコス・バルガニョン・サンタマリア(ガビノ)、キケ・ガゴ(ガビノ父シモン・ガルシア)、エンリケタ・ベガ(ガビノ母)、アレン・ロペス(ガビノ兄アントニオ)、アスセナ・トリンカド(ガビノ姉妹)、イツィアル・アイスプル(隣人)他
プロット・解説:市民戦争が終わった。ファランヘ党のロヘリオは、毎晩のこと仲間と連れ立ってアカ狩りに出かけていた。なかにはアカと疑われる人物も含まれていた。ある日のこと、一人のマエストロとその長男を殺害した。下の息子が憎しみを込めた目でロヘリオを睨んでいた。その視線が彼の人生をひっくり返してしまう。少年は父と兄を埋葬し、その墳墓にはイチジクの小さな苗を植えることだろう。やがて大人になれば復讐するにちがいない。ロヘリオは己れを救済するために似非隠者になり、毎朝毎晩イチジクがすくすくと成長するように世話しようと決心する。新しい村長の妻シプリアナは、ロヘリオ似非隠者の名声を利用して、この地を聖地の一大センターに変えようと画策する。そんな折りも折り、家族を捨ててきた告げ口屋の強欲なエルモが現れる。イチジクの木の下に宝物を隠しているにちがいないと確信して、ロヘリオから離れようとしなくなる。10歳の少年ガビノの視点とロヘリオを交錯させながら物語は進んでいく。

(マルコス・バルガニョン・サンタマリアが扮するガビノの視線)

(父親のキケ・ガゴと兄のアレン・ロペス)

寓意を含んだ贖罪の物語、紋切型の市民戦争を避ける
★アナ・ムルガレンの長編第2作。作品数こそ少ないがキャリは長い。2006年刊行の原作を読んだとき、二つの映画のシーンが思い浮かんだという。「一つはブニュエルの『砂漠のシモン』の中で柱に昇ったままのシモン、もう一つがフェリーニの『アマルコルド』の中で大木に登ったままの狂気の伯父さんのシーンでした。その黒さのなかに思いつかないようなアスコナ流のユーモアのセンスに出会って驚いた」と。「本作で製作を手掛けたトリンカドと私は作家と知り合いになった。ピニーリャ自身が映画化するならと薦めてくれたのが本作でした。多分、この小説は突飛でシニカルなユーモアが共存しているからだと思います。コメディとドラマがミックスされている非常にスペイン的な何かがあるのです」とも。
★ステレオタイプ的な市民戦争ではなく、コメディで撮りたかったという監督。コメディを得意とするカラ・エレハルデ、カルロス・アレセス、ペパ・アニオルテを主軸に、常連のミケル・ロサダ、アスセナ・トリンカド、バスク映画に欠かせないラモン・バレアを起用した。資料に忠実すぎて動きが取れなくならないように、演技にはあまり制約をつけなかったようです。

(ファランヘ党員のロヘリオ、カラ・エレハルデ)

★「スペインは対立を克服できなかったヨーロッパで唯一の国、それを現在まで引きずっている。そのため今もってイチジクの木の下で眠っている人は浮かばれない」と語るエレハルデ。「カラ・エレハルデのような優れた俳優に演じてもらえた。ロヘリオの人間性に共感してもらえると思います。このファランヘ党員は隠者になったことを悔やんでいない。はじめは恐怖から始まったことだが、次第にイチジクの木を育てることに寛ぎを感じ始めてくる」と監督。当然「粗野なメタファー満載だ」との声もあり、評価は分かれると予想しますが、コメディで描く内戦の悲痛は、深く心に残るのではないか。

(ポスターを背に、ロヘリオ役のカラ・エレハルデ)
*監督キャリア・フィルモグラフィ*
★アナ・ムルガレンAna Murugarren:1961年ナバラのマルシーリャ生れ、監督、編集者、脚本家。バスク大学の情報科学部卒。1980~90年代に始まったバスクのヌーベルバーグのメンバーとしてビルバオで編集者としてキャリアを出発させる。メンバーには本作で製作を手掛けたホアキン・トリンカド、ルイス・マリアス、『悪人に平穏なし』のエンリケ・ウルビス、『ブランカニエベス』のパブロ・ベルヘル、日本ではお馴染みになったアレックス・デ・ラ・イグレシアなどがいる。
2005年「Esta no es la vida privada de Javier Krahe」ドキュメンタリー、監督・編集
(ヨアキン・トリンカドとの共同監)
2011年「El precio de la libertad」監督・編集(TVミニシリーズ2話)
2012年「La dama guerrera」監督・編集(TV映画)
2014年「Tres mentiras」監督・編集、長編映画デビュー作
2017年 本作割愛
*他にエンリケ・ウルビス、パブロ・ベルヘル、ヨアキン・トリンカドの編集を手掛けている。

(アナ・ムルガレンとホアキン・トリンカド、2016年7月)
★受賞歴:「Tres mentiras」がフィリピンのワールド・フィルム・フェス2015で「グランド・フェスティバル賞」を受賞、他に主役のノラ・ナバスが女優賞を受賞した。他にサラゴサ映画祭2015作品賞、サモラ県のトゥデラ映画祭2014第1回監督賞他を受賞している。エンリケ・ウルビスの「Todo por la pasta」でシネマ・ライターズ・サークル賞1991の最優秀編集賞を受賞している。

(本作撮影中のアナ・ムルガレン監督)
第4回イベロアメリカ・フェニックス賞2017*結果発表 ― 2017年12月09日 14:24
最優秀作品賞はセバスティアン・レリオの「Una mujer fantástica」

★昨年はパブロ・ララインの『ネルーダ 大いなる愛の逃亡者』が作品賞以下多数のフェニックスのタマゴを独占しましたが、今年もセバスティアン・レリオの「Una mujer fantástica」が作品賞を受賞、他にセバスティアン・レリオが監督賞、主演のダニエラ・ベガが女優賞と連続でチリ映画が大賞を制しました(12月6日発表)。本作は『ナチュラルウーマン』の邦題で2018年2月公開が決定しています。政治的にも経済的にも各国問題を抱えていますから、単なるフィエスタに終わらせず、この映画賞を機にイベロアメリカ諸国が一堂に会して映画の未来を議論する場にしようと模索しているようでした。受賞作品並びに受賞者は以下の通り、作品賞のみノミネート作品を列挙しました。
*第3回イベロアメリカ・フェニックス賞の記事は、コチラ⇒2016年12月15日

(女性に性転換したマリナ・ビダルを演じたダニエラ・ベガ、映画から)
*映画部門*
◎作品賞(このカテゴリーのみ7作品ノミネーション)
Viejo calavera ボリビア=カタール、2016、監督キロ・ルッソ
*本作の内容・監督紹介記事は、コチラ⇒2016年9月5日
La región salvaje メキシコ=独=仏=デンマーク、2016、監督アマ・エスカランテ
*本作の内容・監督紹介記事は、コチラ⇒2016年9月17日
Verano 1993 『夏、1993』スペイン、2017、監督カルラ・シモン
*本作の主な内容・監督紹介記事は、コチラ⇒2017年2月22日
◎Una mujer fantástica チリ=スペイン=米国、2017、監督セバスティアン・レリオ
*本作の主な内容・監督紹介記事は、コチラ⇒2017年1月26日

(左橋がプレゼンターのディエゴ・ルナ、トロフィーを手にしているのがプロデューサーの
フアン・デ・ディオス・ラライン、右端がヒロインのダニエラ・ベガ)
El ciudadano ilustre 『笑う故郷』アルゼンチン=西、2016、
監督ガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーン
*本作の主な内容・監督紹介記事は、コチラ⇒2016年10月13日
O Ornitologo ブラジル=ポルトガル=フランス、2016、監督ジョアン・ペドロ・ロドリゲス
A fábrica de nada ポルトガル、2017、監督ペドロ・ピニュ
*本作の内容・監督紹介記事は、コチラ⇒2017年11月15日
◎監督賞
セバスティアン・レリオ 「Una mujer fantastica」
◎男優賞
オスカル・マルティネス 『笑う故郷』
◎女優賞
ダニエラ・ベガ 「Una mujer fantastica」
*家族の理解もあって自らも10代のころから徐々に性転換していったというダニエラ・ベガ、これからが役者としての正念場を迎えねばならない。

(フェニックスのタマゴを手に喜びのダニエラ)
◎脚本賞
カルラ・シモン 『夏、1993』


◎オリジナル音楽賞
キンカス・モレイラ「La libertad del diablo」 メキシコ、2017、監督エベラルド・ゴンサレス
◎編集賞
クラウディア・オリヴェイラ、エドガー・フェルドマン、ルイサ・Homem 「A fábrica de nada」

◎美術デザイン賞
エウヘニオ・カバリェロ 『怪物はささやく』 監督フアン・アントニオ・バヨナ(米、西)

◎衣装賞
Ro Nascimento 「Joaquim」 監督マルセロ・ゴメス(ブラジル、ポルトガル、スペイン)
◎録音賞
Marc Orts(マーク・オーツ)、オリオル・タラゴ、ピーター・グロソップ 『怪物はささやく』
◎長編ドキュメンタリー賞
La libertad del diablo 監督エベラルド・ゴンサレス
*本作の内容・監督紹介記事は、コチラ⇒2017年2月22日

◎ドキュメンタリー撮影賞
マリア・セッコ 「La libertad del diablo」

(ディエゴ・ケマダ=ディエス『金の鳥籠』でも注目されたウルグアイのマリア・セッコ)
★他にTVシリーズ部門としてドラマ・コメディ・俳優アンサンブルの3カテゴリーがあり、ネットフリックスのオリジナル作品『ナルコス』(クリス・ブランカト、カルロ・ベルナルド、他、コロンビア=米)がドラマ部門と俳優アンサンブルで2賞、「Club de Cuervos」(ガス・アラスラキ、ミケ・ラム、メキシコ)がコメディ部門を受賞、ネットフリックスの存在の大きさを見せつけた夕べとなった。メキシコは合計4賞したこともあって、お茶の間も盛り上がったようでした。

(タマゴを手にした『ナルコス』アンドレス・バイス監督、右側パウリナ・ガルシア)

(喜びに沸いた「Club de Cuervos」のスタッフとキャスト一同)
★その他、特別賞として、キャリア賞(ノルマ・アレアンドロ)、批評家賞(アイザック・レオン・フリアス)、Exhibidoresという 展示者賞にフアン・アントニオ・バヨナ(欠席)の『怪物はささやく』が受賞した。

(アルゼンチンの『オフィシャル・ストーリー』の主演女優ノルマ・アレアンドロ)
★エミリアノ・トレスのデビュー作「El invierno」は、サンセバスチャン映画祭2016の審査員特別賞受賞作品。時間切れで作品紹介はできませんでしたが、サンセバスチャンでもラミロ・シビタは撮影賞を受賞しています。
★ポルトガル映画ジョアン・ペドロ・ロドリゲスの「O Ornitologo」と、ブラジル映画マルセロ・ゴメスの「Joaquim」は当ブログ未紹介作品です。前者はロッテルダム映画祭2016の監督賞受賞を皮切りに国際映画祭の受賞歴多数、サンセバスチャン映画祭2016「サバルテギ」部門でも上映されました。後者はベルリン映画祭2017正式出品です(主要言語がポルトガル語)。
★イベロアメリカ・フェニックス映画賞は参加国が23ヵ国と多いせいか公開時期が各国異なるので、どうしても2016年と2017年が混在が避けられません。大分以前の作品もノミネーションされている印象を受けます。 (クラウディア・オリヴェイラ)
イベロアメリカ映画の将来を模索する*第4回フェニックス賞2017 ― 2017年12月13日 16:51
影の薄いかつての宗主国スペインとポルトガル

★授賞式の1日だけでなく「フェニックス週間Semana Fénix」(12月2日~9日)と銘打って、各種のシンポジウムが開催されました。せっかく各国のシネアストが一堂に会したのだから唯のお祭り騒ぎに終わらせたくないという思いがあるようです。「シネマ23」というメキシコ主導の映画賞とはいえ、ラテンアメリカ諸国の映画によりスポットを当てたい。どちらかというとかつての宗主国イベリア半島のスペインとポルトガルは裏方の印象が強い。それは結果を見れば歴然です。第1回の作品賞受賞国はメキシコのケマダ=ディエスの『金の鳥籠』、第2回と3回はチリのパブロ・ララインの『ザ・クラブ』と『ネルーダ』、第4回の『ナチュラルウーマン』とチリが3連続受賞しています。監督賞は順次、メキシコのアマ・エスカランテ、チリのパブロ・ララインとコロンビアのチロ・ゲーラ、ブラジルのクレベール・メンドンサ・フィリオ、チリのセバスティアン・レリオと、スペイン、ポルトガルの影は薄い。ここいら辺が同じイベロアメリカを対象にしたプラチナ賞との大きな違いです。
ノミネーションされた監督&脚本家のディスカッション
★シンポジウムの一つは監督と脚本家のグループ、出席者は、パブロ・ラライン、アマ・エスカランテ、ダビ・プリド(スペインの脚本家、『物静かな男の復讐』)、ガストン・ドゥプラットとマリアノ・コーン(アルゼンチン、『笑う故郷』共同監督)、カルラ・シモン(スペインの監督、『夏、1993』)の6人。「イベロアメリカ映画というジャンルが実際に存在するのかどうか?」「イベロアメリカで製作された映画が共有しているスタイル、テーマがあるのかどうか?」などについて、かなりざっくばらんに語り合ったということです。メキシコ市のトナラTonalá 映画館で開催された。

(左から、ガストン・ドゥプラット、アマ・エスカランテ、マリアノ・コーン、他)
★今回は監督としてではなく『ナチュラルウーマン』のプロデューサーの一人としてメキシコにやってきたパブロ・ラライン、今のチリで一番国際的な知名度のあるシネアストの一人だと思います。どうやら監督賞ノミネーションのセバスティアン・レリオ(受賞した!)が来墨できなかったようで、弟フアン・デ・ディオスと設立した制作会社「ファブラ」の代表者として兄弟でチームをアシストしていた。「誰しも居心地のいい箱の中にいたほうがいいとは思っていません。私たちの映画は常に他の映画とは別に分類されます。それは映画の存在を知ってもらえるよう、定義してもらえるような箱が必要なんです」とラライン。まだ各国単独で立ち向かうには力不足ということでしょうか。

(左から、パブロ、フアン・デ・ディオスのラライン兄弟)
★今回は最新作「La región salvaje」(英題「The Untamed」)の作品・監督・脚本賞のノミネーションを受けたアマ・エスカランテ、国際的なデビューでは一番の古株になります。本作は初めて参加したベネチア映画祭2016の監督賞受賞作品、製作国はメキシコ、デンマーク、仏、独以下9ヵ国に及ぶという。「私は自分のアイディアを誰にも売らなくてよかった。誤りや適切な判断を含めて、私たちは自由をもっている」とエスカランテ。本作のテーマは「メキシコに存在する偽善、ホモ嫌い、マチスモについてのSF仕立ての映画です。各国のプロデューサーが意見を述べ、最終的には私が映画の売上高も考慮して決めた」と語っている。共同執筆者ヒブラン・ポルテラと物語の信憑性や要素を損なわずに維持することができた。ポルテラは『金の鳥籠』やアロンソ・ルイスパラシオスのデビュー作『グエロス』(東京国際映画祭2014)の脚本も各監督と共同で手掛けているライター。
*IMDbによると「La región salvaje」の公開が2018年2月27日とアナウンスされていますが、邦題は未定のようで公式サイトも検索できませんでした。公開確実なら初めてとなります。デビュー作『サングレ』以下は映画祭上映です。

(本作のプレゼンをするアマ・エスカランテ監督)
★製作資金も大きなテーマの一つだった。ガストン・ドゥプラットとマリアノ・コーンは1993年に出会い、11年前から今日までコンビを組んでドキュメンタリーを含めて長編6作を撮っている。批評家の絶賛にもかかわらずデビュー作以来今日まで彼らの作品にどこからも資金提供を得られなかったという。『ル・コルビュジエの家』(09)の成功後もそれは変わらず、ノミネート作品『笑う故郷』完成に5年間要したと語っている。「年率35%のインフレでは誰も映画に投資する気になれない。着手する前に疲労困憊してしまう」とコーン監督。アルゼンチンで映画を作ろうとするなら、まず会計業務や経済学を学んでからというわけです。
★初期の映画は社会イベントにカメラを持ち込んで製作した。その後『ル・コルビュジエの家』を12万ドルの資金で4週間で撮った。「観客が新鮮な視点やテーマのもつ力強さに興味をもってくれた」とドゥプラット監督、「ある地域的な物語かもしれないが、普遍的なパンチ力があった」とコーン監督。これは最新作『笑う故郷』にもいえることでしょう。個人的には『ル・コルビュジエの家』の不気味さのほうに惹かれますが。
一番の難題は映画産業の拡大と流通のギャップ
★アマ・エスカランテがデビュー作『サングレ』(東京国際映画祭2005)を撮ったころのメキシコでは、メキシコ全体で20作ばかりしか製作されなかった。厳しさは相変わらずだが2017年には170作にも上るということです。1国だけで製作することは難しく、この10年間でいっても5~6ヵ国を超えるのは珍しくない。充分とは言えないが資金援助を利用することもできるようになっている。「警告しておきたいのは、販売ディーラーなしで映画を作るべきではない」とラライン。とは言っても、それが見つけられないのではないでしょうか。
★一番の問題は、映画産業の拡大はあっても、その作品がラテンアメリカ諸国間に流通しないということがある。他の国の映画を観ようとしても配給会社が手を出さない。危険を冒してまで賭けをしようとはしない。映画は映画館で観る時代ではなく、何か他のプラットフォームを考える時期に来ている。それは一つには「多分webウェブサイト」と、昨年の作品賞『ネルーダ』の監督。ラテンアメリカ諸国も変化の秋を迎えている。スペインから参加したダビ・プリドとカルラ・シモンは聞き役だったのでしょうか。
★もう一つのシンポジウムは俳優のグループ、男優賞・女優賞各5名のうち、レオナルド・スバラグリア(アルゼンチン、『キリング・ファミリー 殺し合う一家』)、エドゥアルド・フェルナンデス(スペイン、『スモーク・アンド・ミラーズ』)、エドゥアルド・マルティネス(キューバ、「Santa y Andrés」)、パウリナ・ガルシア(チリ、「La novia del desierto」)、アントニア・セヘレス(チリ、「Los perros」)、リリアナ・ビアモンテ(コスタリカ、「Medea」)、各3名が参加した(国名と出演映画タイトル)。
★作家性のある映画は消えていく傾向にあること、どうやって観客と出会えることができるのか、映画祭に出品される映画はともかく、そうでない作品はどうやって国境を越えて観客に届けることができるのか、コスタリカのようにプロジェクトがそもそも少ない小国で映画を作る厳しさ、ハリウッドで噴き出しているセクハラ問題には触れなかったようだが、男性のロジックが常にまかり通ってしまうラテンアメリカでは、全世代の女性たちに興味をもってもらえる役柄があるのではないかなど、ハリウッドのステレオタイプ的な映画を前にして、やるべき事柄は山積していることが異口同音に述べられた。

(左から、P. ガルシア、E. フェルナンデス、司会者K. Gidi、E. マルティネス、L. スバラグリア、
A. セヘレス、L. ビアモンテ)
*当ブログで6作とも紹介記事をアップしております。
アレックス・デ・ラ・イグレシアの新作*悲喜劇「Perfectos desconocidos」 ― 2017年12月17日 16:22
パオロ・ジェノベーゼの『おとなの事情』リメイク版
★イタリア映画『おとなの事情』(2016、日本公開2017年3月)は、イタリアのアカデミー賞ドナテッロ賞の作品・脚本賞受賞作品、興行成績約20億円をたたき出した話題作(邦題はmierdaというほどではありませんが、テーマとはズレているかも)。各国からリメイク版の要請があった中でアレックス・デ・ラ・イグレシアが権利を獲得、今回アナウンス通り12月1日にスペインで公開されました。スペイン版は同じ意味の「Perfectos desconocidos」(仮題「まったくの見知らぬ人」)です。多分こちらも日本公開が期待されますが、どんな邦題になるのでしょうか。今年『クローズド・バル』がスペインと同時に公開され、その折に本作についても簡単な紹介をいたしました。1年に長編2作というのは監督にとっても初めてのことではないか。
*「Perfectos desconocidos」の紹介記事は、コチラ⇒2017年2月26日

★大体プロットはオリジナル版と同じようですから、詳細は公開時にアップするとして、キャスト陣を含む簡単なデータだけご紹介しておきます。批評家の評価は概ねポジティブで、公開最初の土曜日にはチケット売り場に行列ができたということですから、観客の評判もまずまずなのかもしれません。12月13日ノミネーションの発表があった「ゴヤ賞2018」(授賞式2月3日)には『クローズド・バル』が録音部門に絡んでいるだけのようです。プレス会見では「観に来てください。そうすればその資金でまた次回作が撮れるから」とデ・ラ・イグレシア監督は相変わらず意欲的でした。

(行列をする観客たち、12月2日、マドリードで)
「Perfectos desconocidos」
製作:Telecinco Cinema / Nadie es perfecto / Pokeepie Films / Mediaset Espana /
Movistar+ 協賛:スペイン教育・文化・スポーツ省
監督・脚本:アレックス・デ・ラ・イグレシア
脚本:ホルヘ・ゲリカエチェバリア (リメイク:パオロ・ジェノベーゼ、他)
撮影:アンヘル・アモロス
音楽:ビクトル・レイェス
編集:ドミンゴ・ゴンサレス
製作者:エグゼクティブ・プロデューサー(カロリナ・バング、キコ・マルティネス、パロマ・モリナ)、プロデューサー(アルバロ・アウグスティン、Ghislain Barrois)
データ:スペイン、スペイン語、2017年、96分、ブラックコメディ、2017年11月28日マドリードでプレミア、一般公開12月1日
主要キャスト:
エドゥアルド・フェルナンデス(アルフォンソ、整形外科医)
ベレン・ルエダ(アルフォンソ妻エバ、臨床心理医)
エルネスト・アルテリオ(アントニオ、弁護士)
フアナ・アコスタ(アントニオ妻アナ、主婦?)
エドゥアルド・ノリエガ(エドゥアルド、タクシードライバー)
ダフネ・フェルナンデス(ブランカ、獣医)
ペポン・ニエト(ペペ、ギムナジウムの中学教師)
プロット:夏の月食の晩、お互い相手の人生を分かりあっていると思っている4つのカップルが、夕食を共にすることにした。ホストはアルフォンソとエバ、客人はアントニオ&アナ夫婦、新婚ホヤホヤのエドゥアルド&ブランカ、「新恋人ルシア」の都合がつかなく一人でやってきたペペの5人。宴もたけなわ、各自のスマートフォンをオープンにして遊ぶゲームをブランカが提案する。掛かってきたメールやメッセージは即座に声に出して読み上げねばならないというもの。一瞬しり込みする面々、しかし一人二人とスマホがテーブルに並んでいく。秘密など何もないはずの夫婦や友人間に次々に明らかになっていく知られたくない不都合な事柄、秘密が暴かれ丸裸になると人間どうなるか、プライバシーの喪失はアイデンティティの喪失につながるという怖ろしいオハナシ。ワンシチュエーション・コメディ。

(左から、ベレン・ルエダ、エドゥアルド・ノリエガ、フアナ・アコスタ、エルネスト・
アルテリオ、エドゥアルド・フェルナンデス、ダフネ・フェルナンデス、ペポン・ニエト)
プライバシーの喪失はアイデンティティの喪失を意味する
★オリジナル版『おとなの事情』とプロットはあまり変わっていない印象です。便利このうえないスマホもひとたび使い方を誤ると暴虐な武器になり、スマホが独裁者となって人間を支配するという本末転倒が起きる。痛くもない腹をさぐられ、信頼関係は崩れてしまう。プライバシーの喪失はアイデンティティの喪失を意味するがテーマでしょうか。
★デ・ラ・イグレシア(1965、ビルバオ)は2014年6月、女優カロリナ・バング(1985、テネリフェ)と20歳の年齢差を超えて結婚、約1年前の2016年に女の子フリアの父親となった。来年にはもう一人の女の子が生まれるそうです。カロリナ・バングはまだ4ヵ月とかでウエストを絞ったドレスにハイヒール姿で新作のプレゼンテーションに出席した。今作には出演はなくエグゼクティブ・プロデューサーを務めている。元ファッションモデルだけあって身長の高さは半端じゃない。ツーショットは常に頭半分ほど違う。女優復帰が待たれる。

(新作「Perfectos desconocidos」のプレゼンに現れた夫妻、11月29日マドリードにて)
★脚本は、前作『クローズド・バル』を手掛けたホルヘ・ゲリカエチェバリア、リメイク版がオリジナルを超えることは簡単ではないが、果たして今作は超えられるか、脚本家の料理の腕の見せどころです。現実には『おとなの事情』のように次々と事件が起こるとは思えないが、携帯のなかにデーモンが隠れていることは確かでしょう。掛けてくる相手は、まさかゲームをしているとは思わないから時と場合を選ばない。登場人物も観客も張り詰めた緊迫感でドキドキハラハラする。人の秘密は覗きたいものだが、かなり危険なゲーム、実際こんな悲喜劇にはならないはずだが、大昔から秘密をもつことは罪ではないし、曖昧にしておいたほうがベターなケースもあるでしょう。
★ホームパーティのホスト役エドゥアルド・フェルナンデスは、コメディは何本か出演しているがデ・ラ・イグレシア作品は意外や初めて、ホステス役のベレン・ルエダ、イネス・パリスの第4作「La noche que mi madre mató a mi padre」の辛口コメディに初挑戦、かなり話題をよんだ。コメディが気に入ったのか今度はデ・ラ・イグレシア作品に初挑戦した。パリス作品でも両人は夫婦役を演じていた。弁護士夫婦を演じたエルネスト・アルテリオとフアナ・アコスタは実際でも夫婦、ペポン・ニエトはデ・ラ・イグレシアの常連の一人、幾つになっても老けないエドゥアルド・ノリエガ、当ブログ初登場のダフネ・フェルナンデス、テレビの紹介番組に出まくって宣伝に努めている旬の女優。芸達者揃いで危なげないが、問題はチームワークでしょうか。

★ゴヤ賞2018には絡んでいないようですが、コメディはだいたい大賞候補には縁遠いようです。来年にはオリジナル版同様、大笑いさせてもらえるでしょうか。
*「La noche que mi madre mató a mi padre」の紹介記事は、コチラ⇒2016年4月25日
第32回ゴヤ賞2018ノミネーション・リスト発表 ① ― 2017年12月21日 18:38
総合司会者はホアキン・レイェスとエルネスト・セビーリャ
★去る12月13日、第32回ゴヤ賞2018のノミネーション全リストが発表になりました。総合司会者は3年連続のダニ・ロビラから喜劇俳優ホアキン・レイェス(アルバセテ、1976)と同郷のエルネスト・セビーリャ(1978)の二人に引き継がれました。

(総合司会者ホアキン・レイェスとエルネスト・セビーリャ)
★ゴヤ栄誉賞は10月半ばにアナウンスされていたように女優マリサ・パレデス(マドリード、1946)です。ゴヤ賞にはノミネーションこそありますが、意外や受賞はゼロでした。アルモドバル・ガールズの一人として、『バチ当たり修道院の最期』(83)以下、フランス映画、ポルトガル映画など合計75作に出演、劇場公開作品も多数。授賞式までにキャリア紹介を予定しています。下の写真は2017年10月14日、フランスのリヨンで開催された「リュミエール・フェスティバル」のオープニングに出席したときのもの。

(マリサ・パレデス)
★例年通りノミネーションは、オスカー賞スペイン代表作品のカルラ・シモンの『夏、1993』など5~6作に集中しています。作品賞5作品のうちオリジナル言語が、スペイン語2、英語、バスク語、カタルーニャ語各1作とバラエティに富んでいます。スペインは多言語国なのだと今更ながら感じたことでした。最多の13カテゴリーがバスク語の「Handia」、12カテゴリーが英語の「La librería」、スペイン語の「El autor」が9個、「Verónica」が7個、カタルーニャ語の『夏、1993』が8個です。ノミネーション数の多寡にはあまり関係ないのが映画賞、今回はドングリの背比べか。初ノミネーションのパコ・プラサのホラー映画「Verónica」は意外でした、作品・監督・脚本賞ですから。共同監督を務めたジャウメ・バラゲロの成功作 [REC] シリーズでさえノミネーションはなかった。プラサ監督は2014年7月、セルバンテス文化センターで開催された「ホラー映画上映会」の折に来日、単独で撮った [REC 3] が上映されました。

(ノミネーションのプレゼンター、ダビ・ベルダゲルとバルバラ・レニー)
★カテゴリーは合計28部門です。中でラテンビートに関係の深い「イベロアメリカ映画賞」部門には、オスカー賞2018外国語映画賞プレセレクション9作に選ばれた、チリのセバスチャン・レリオの『ナチュラルウーマン』、アルゼンチンの『サマ』(ルクレシア・マルテル)、メキシコの「Tempestad」(タティアナ・ウエソ)、コロンビアの「Amazona」(Clare Weiskopt & Nicolas van Hemelryck)の4作がノミネーションされました。コロンビア以外はそれぞれオスカー賞代表作品でした。チリは受賞歴なしですがパブロ・ララインの『No』(2012)に続いて2度目です。本作は第4回イベロアメリカ・フェニックス賞の最優秀作品賞ほかの受賞作品ですから先頭を走っている印象です。
★以下主なカテゴリーをアップしておきます。(ゴチック体は当ブログ紹介作品)
◎作品賞
「El autor」9個
「Verano 1993」(『夏、1993』)8個
「Handia」13個
「La librería」12個
「Verónica」『エクリプス』7個

(13個の「Handia」)
◎監督賞
マヌエル・マルティン・クエンカ 「El autor」
アイトル・アレギ&ジョン・ガラーニョ 「Handia」
イサベル・コイシェ 「La librería」
パコ・プラサ 「Verónica」
◎新人監督賞
セルヒオ・G・サンチェス 「El secreto de Marrowbone」
カルラ・シモン「Verano 1993」『夏、1993』
ハビエル・カルボ&ハビエル・アンブロッシ 「La llamada」『ホーリー・キャンプ!』5個
リノ・エスカランテ 「No sé decir adiós」3個

(8個の『夏、1993』)
◎オリジナル脚本賞
パブロ・ベルヘル 「Abracadabra」8個
カルラ・シモン 「Verano 1993」
アイトル・アレギ&ジョン・ガラーニョ 「Handia」
フェルナンド・ナバロ&パコ・プラサ 「Verónica」
◎脚色賞
ハビエル・セルカス&アレハンドロ・エルナンデス 「El autor」
コラル・クルス、ジョアン・サレス他 「Incierta gloria」
イサベル・コイシェ 「La librería」
ハビエル・カルボ&ハビエル・アンブロッシ 「La llamada」『ホーリー・キャンプ!』
◎オリジナル作曲賞
パスカル・ゲーニュ 「Handia」
アルベルト・イグレシアス 「La cordillera」『サミット』(監督サンティアゴ・ミトレ)
アルフォンソ・デ・ビラリョンガ 「La librería」
Chucky Namanera(エウヘニオ・ミラ)「Verónica」
◎オリジナル歌曲賞
「Algunas veces」 ホセ・ルイス・ペラレス「El autor」
「Feeling lonely on the Sunday aftermoon」 アルフォンソ・デ・ビラリョンガ「La librería」
「La llamada」 Leiva レイバ「La llamada」『ホーリー・キャンプ!』
「Rap zona hostil」 ロケ・バニョス「Zona hostil」
◎主演男優賞
アントニオ・デ・ラ・トーレ 「Abracadabra」
ハビエル・グティエレス 「El autor」
ハビエル・バルデム 「Loving Pablo」 監督フェルナンド・レオン・デ・アラノア
アンドレス・ヘルトルディス 「Morir」 監督フェルナンド・フランコ

(9個の「El autor」からアントニオ・デ・ラ・トーレとハビエル・グティエレス)
◎主演女優賞
マリベル・ベルドゥ 「Abracadabra」
エミリー・モーティマー 「La librería」
ペネロペ・クルス 「Loving Pablo」
ナタリエ・ポサ 「No sé decir adiós」

(12個の「La libreria」からエミリー・モーティマー)
◎助演男優賞
ホセ・モタ 「Abracadabra」
アントニオ・デ・ラ・トーレ 「El autor」
ダビ・ベルダゲル 「Verano 1993」
ビル・ナイ 「La librería」
◎助演女優賞
アデルファ・カルボ 「El autor」
アンナ・カスティーリョ 「La llamada」『ホーリー・キャンプ!』
ベレン・クエスタ 「La llamada」『ホーリー・キャンプ!』
ロラ・ドゥエニャス 「No sé decir adiós」
◎新人男優賞
ポル・モネン 「Amar」『禁じられた二人』 監督エステバン・クレスポ
エネコ・サガルドイ 「Handia」
エロイ・コスタ 「Pieles」『スキン あなたに触らせて』 監督エドゥアルド・カサノバ 3個
サンティアゴ・アルベル 「Selfie」 監督ビクトル・ガルシア・レオン
◎新人女優賞
アドリアナ・パス 「El autor」
ブルナ・クシ 「Verano 1993」
イツィアル・カストロ 「Pieles」『スキン あなたに触らせて』
サンドラ・エスカセナ 「Verónica」
(7個の「Verónica」)
◎プロダクション賞
ミレイア・グラエル・ビバンコス 「Verano 1993」
アンデル・システィアガ 「Handia」
アレックス・ボイド&ジョルディ・べレンゲル 「La librería」
ルイス・フェルナンデス・ラゴ 「Oro」 監督アグスティン・ディアス・ヤネス 6個
◎撮影賞
サンティアゴ・ラカRacaj 「Verano 1993」
ハビエル・アギーレ・エラウソ 「Handia」
ジャン・クロード・ラリュー 「La librería」
パコ・フェメニア 「Oro」
◎編集賞
ダビ・Gallart 「Abracadabra」
アナ・Pfaff プファフ& Didac Palou 「Verano 1993」
Laurent Dufreche &ラウル・ロペス 「Handia」
ベルナ・アラゴネス 「La librería」
◎美術賞(アートディレクター)
アライン・バイネー 「Abracadabra」
ミケル・セラーノ 「Handia」
リョレンス・ミケル 「La librería」
ハビエル・フェルナンデス 「Oro」
◎衣装デザイン賞
パコ・デルガド 「Abracadabra」
サイオア・ララ 「Handia」
メルセ・パロマ 「La librería」
タティアナ・エルナンデス 「Oro」
◎メイクアップ&ヘアー賞
シルビエ・インベルト&パコ・ロドリゲス 「Abracadabra」
アイノア・エスキサベル、オルガ・クルス、ゴルカ・アギーレ 「Handia」
エリ・アダネス、セルヒオ・ぺレス・ベルナル、ペドロ・デ・ディエゴ 「Oro」
ロラ・ゴメス、ヘスス・ジル、オスカル・デル・モンテ 「Pieles」『あなたに触らせて』
◎録音賞
ダニエル・デ・サヤス、ペラヨ・グティエレス、アルベルト・オベヘロ 「El autor」
セルヒオ・ブルマン、ダビ・ロドリゲス、ニコラス・デ・ポウルピケ 「El bar」
『クローズド・バル 街角の狙撃手と8人の標的』
イニャーキ・ディエス&サンティ・サルバドル 「Handia」
アイトル・ベレンゲル、ガブリエル・グティエレス、ニコラス・ド・ピールピケ 「Verónica」
◎特殊効果賞
ジョン・セラーノ 「Handia」
レイェス・アバデス&イシドロ・ヒメネス 「Oro」
ラウル・ロマニリョス&ダビ・エラス 「Verónica」
レイェス・アバデス&クーロ・ムニョス 「Zona hostil」
◎ドキュメンタリー賞
「Cantábrico」ジョアキン・グティエレス・アチャ
「Dancing Beethoven」アランチャ・アギーレ
「Muchos hijos, un mono y castillo」グスタボ・サルメロン
「Saura(s)」フェリックス・ビスカレット
◎イベロアメリカ映画賞
「Amazona」(ドキュメンタリー)コロンビア、監督Clare Weiskopt & Nicolas van Hemelryck)
「Tempestad」(ドキュメンタリー)メキシコ、同タティアナ・ウエソ
「Una mujer fantástica」(『ナチュラルウーマン』)チリ、同セバスティアン・レリオ
「Zama」(『サマ』)アルゼンチン、同ルクレシア・マルテル

(セバスティアン・レリオ)
★その他、アニメーション(長編&短編)、短編(フィクション&ドキュメンタリー)、一時ガラに誰も来西しないからとヘソを曲げ中断していたヨーロッパ映画賞の5カテゴリーがあり、合計28部門です。
★ドキュメンタリー賞にカルロス・サウラの7人の子供が父親を語る「Saura(s)」がノミネートされました。以前ご紹介したこともあって目に留まりました。「イベロアメリカ映画賞」部門にドキュメンタリーが2本も選ばれるのはあまり記憶にありません。確かに最近面白いのがドキュメンタリー、そんなことを反映しているのでしょうか。
★作品賞候補のうち未紹介作品は別途アップしたいと考えています。イサベル・コイシェの「La librería」は、第62回 Seminci(バジャドリード映画祭2017)のオープニング作品、イギリス作家ペネロピ・フィッツジェラルドの ”The Bookshop” の映画化です。言語も英語、俳優も英国人ということで躊躇していましたが、コイシェ映画はほとんどが英語映画なのでした。ペネロピ・フィッツジェラルド(2016~2000)は、英国ではノーベル文学賞より話題になるというブッカー賞を『テムズ側の人々』(Offshore)で1979年に受賞している作家です。

(イサベル・コイシェ)
*授賞式は2018年2月3日です。
*追加「La libreria」2018年1月7日、記事をアップしました。
第23回フォルケ賞2018*ノミネーション・リスト ― 2017年12月24日 15:38
フォルケの生れ故郷サラゴサで初めて開催される

★今年初めてマドリード以外のセビーリャで開催されたフォルケ賞授賞式、2018年もマドリードを離れて1月13日、ホセ・マリア・フォルケ(1923)の生れ故郷サラゴサで開催されます。サラゴサにはスペインの守護聖母「ピラールの聖母」が祀られているピラール聖母教会があり、サラゴサ観光の目玉でもある。さらにスペイン映画の第1作は、ヒメーノ親子が1896年に撮影した『サラゴサのピラール聖母教会でのミサ後の退出風景』だった。アラゴン州は古くはフローリアン・レイ、アントニオ・サウ、ルイス・ブニュエル、今年の栄誉賞を受賞するカルロス・サウラなどのシネアストを輩出している。

(長編映画賞候補の5作品)
★フォルケ賞はゴヤ賞に比較して地味だが、ゴヤ賞を占う前哨戦的な意味合いがあった。しかしフェロス賞(第1回2014年1月)ができてからは、カテゴリーの数が7部門と少ないぶん、少し様子が変わってきています。ゴヤ賞が監督に光を当てる映画賞なら、フォルケ賞は製作者にスポットを当てる映画賞、したがって監督賞はありません。そもそも選考母体が異なりますから当然です。ゴヤ賞はスペイン映画科学アカデミー、フォルケ賞はEGEDAオーディオビジュアル著作権管理協会*です。EGEDAの初代会長ホセ・マリア・フォルケの功績を讃えて創設されたのが本賞でした。もっとも作品賞は、ホラー「Verónica」(『エクリプス』)がコメディ「Abracadabra」に入れ替わっただけですから、ゴヤ賞に影響するかもしてません。
*EGEDAについては、コチラ⇒2016年12月30日
◎長編映画賞(フィクションとアニメーション)
「Abracadabra」 ARCADIA MOTION PICTURES他 (監督パブロ・ベルヘル)
「El autor」★ ALEBRIJE CINE Y VIDEO S.A. 他 (監督マヌエル・マルティン・クエンカ)
「La libreria」★ A CONTRACORRIENTE FILMS他 (監督イサベル・コイシェ)
「Verano 1993」『夏、1993』★ AVALON PRODUCTORA CINEMATOGRAFICA S.L. 他
(監督カルラ・シモン)
「Handia」★ AUNDIYA FILM A.I.E. 他 (監督アイトル・アレギ&ジョン・ガラーニョ)

(カルラ・シモンと主演女優賞ノミネートのブルナ・クシ)
◎長編ドキュメンタリー賞
「Alberto Garcia-Alix: La lineade la sombra」 監督ニコラス・コンバロ
「Dancing Beethoven」 監督アランチャ・アギーレ ★
「Muchos hijos, un mono y un castillo」 監督グスタボ・サルメロン ★
「Sauras (s)」 監督フェリックス・ビスカレト ★
「Sara Baras: Todas las voces」 監督ラファ・モレス&ペペ・アンドレウ
◎短編映画賞
「Los desheredados」ドキュメンタリー (監督ラウラ・フェレス 製作Inicia Films)★
「Madre」 (監督ロドリゴ・ソロゴジェン 製作Caballo Films)★
「Tabib」 (監督カルロ・ドゥルシD'Ursi 製作Potenza Produciones)
◎主演男優賞
アンドレス・ヘルトルディス ★ 「Morir」 監督フェルナンド・フランコ
ダビ・ベルダゲル ★助演 「Verano 1993」
ハビエル・グティエレス ★ 「El autor」
フアン・ディエゴ 「No sé decir adiós」 監督リノ・エスカレラ
◎主演女優賞
アデルファ・カルボ ★助演 「El autor」 監督マヌエル・マルティン・クエンカ
アンナ・カスティーリョ ★助演 「La llamada」『ホーリー・キャンプ!』
監督ハビエル・カルボ&ハビエル・アンブロッシ
マリアン・アルバレス 「Morir」
マリベル・ベルドゥ ★ 「Abracadabra」
ブルナ・クシ ★新人 「Verano 1993」『夏、1993』
ナタリエ・ポサ ★ 「No sé decir adiós」

◎長編ラテンアメリカ映画賞
「La cordillera」『サミット』(アルゼンチン) 監督サンティアゴ・ミトレ
「Las hijas de Abril」(メキシコ) 監督ミシェル・フランコ
「Mi Mundial」(アルゼンチン=ブラジル=ウルグアイ) 監督カルロス・モレリィ
「Ultimos días en La Habana」(キューバ) 監督フェルナンド・ぺレス
「Una mujer fantástica」『ナチュラルウーマン』(チリ) 監督セバスティアン・レリオ ★
◎Cine y Educacion en Valores
「Deep」(アニメーション) 監督フリオ・ソト・グルピデ
「Handia」
「Lo que de verdad importa」 監督パコ・アランゴ
◎EGEDA金のメダル(栄誉賞)
カルロス・サウラ

(カルロス・サウラと娘アンナ・サウラ・ラモン)
*ゴチック体は当ブログ紹介作品、★印はゴヤ賞にもノミネートされています。
第5回フェロス賞2018*ノミネーション・リスト ― 2017年12月25日 16:32
スペイン版ゴールデングローブ賞を旗印にしたフェロス賞

★映画館閉鎖が増えるなかで、やたら多くなったのが映画賞、ゴヤ賞の前哨戦という触れ込みで始まったフェロス賞のノミネーション発表が去る12月5日にありました。選考母体はAICE*, メンバーはジャーナリストや映画批評家など報道関係者約200名以上が参加しています。映画とTVシリーズの2部門に分かれ、映画は88作、TVシリーズは40作から選ばれました。当ブログでは後者は割愛しておりますが、ゴヤ賞やフォルケ賞にカテゴリーのない、お茶の間でタダで鑑賞できるTVシリーズのほうが、スペイン人の関心は高いかもしれません。ノミネーション発表のプレゼンターは、パウラ・エチェバリアとフリアン・ロペス、二人は授賞式の総合司会も務めるようです。授賞式は2018年1月22日、マドリードのComplejo Magariñosで開催されます。
*AICE Asociacion de Informadores Cinematograficos de Espana スペイン映画ジャーナリスト協会、現会長はペドロ・バリン。

(パウラ・エチェバリアとフリアン・ロペス)
*ノミネーション・リスト*(初出に監督名、ゴチック体は紹介作品)
◎作品賞(ドラマ部門)
「El autor」 (監督マヌエル・マルティン・クエンカ)8個ノミネーション
「Handia」 (同アイトル・アレギ&ジョン・ガラーニョ)4個
「No sé decir adiós」 (同リノ・エスカランテ)5個
「Verano 1993」『夏、1993』 (同カルラ・シモン)7個
「Verónica」 『エクリプス』(同パコ・プラサ)6個
◎作品賞(コメディ部門)
「Abracadabra」 (監督パブロ・ベルヘル)
「La llamada」『ホーリー・キャンプ!』(同ハビエル・カルボ&ハビエル・アンブロッシ)6個
「Fe de Etarras」『となりのテロリスト』 (同ボルハ・コベアガ)3個
「Muchos hijos, un mono y un castillo」ドキュメンタリー (同グスタボ・サルメロン)
「Selfie」 (同ビクトル・ガルシア・レオン)
「Tierra firme」 (同カルロス・マルケス=マルセ)
◎監督賞
アイトル・アレギ&ジョン・ガラーニョ 「Handia」
イサベル・コイシェ 「La librería」3個
マヌエル・マルティン・クエンカ 「El autor」
カルラ・シモン 「Verano 1993」
パコ・プラサ 「Verónica」
◎主演男優賞
サンティアゴ・アルベル 「Selfie」
ハビエル・カマラ 「Fe de Etarras」
アンドレス・ヘルトルディス 「Morir」(監督フェルナンド・フランコ)
ハビエル・グティエレス 「El autor」
アントニオ・デ・ラ・トーレ 「Abracadabra」

◎主演女優賞
マリアン・アルバレス 「Morir」
ライア・アルティガス 「Verano 1993」
サンドラ・エスカセナ 「Verónica」
ヌリア・プリムス 「Incierta groria」(監督コラル・クルス&ジョアン・サレス)
ナタリエ・ポサ 「No sé decir adiós」
マリベル・ベルドゥ 「Abracadabra」

◎助演男優賞
フアン・ディエゴ 「No sé decir adiós」
ビル・ナイ 「La librería」
ハイメ・オルドーニェス「El bar」『クローズド・バル』(アレックス・デ・ラ・イグレシア)
オリオル・プラ 「Incierta groria」
アントニオ・デ・ラ・トーレ 「El autor」
ダビ・ベルダゲル 「Verano 1993」

◎助演女優賞
アデルファ・カルボ 「El autor」
アンナ・カスティーリョ 「La llamada」『ホーリー・キャンプ!』
ベレン・クエスタ 「La llamada」
ロラ・ドゥエニャス 「No sé decir adiós」
グラシア・オラヨ 「La llamada」

◎脚本賞
アレハンドロ・エルナンデス&マヌエル・マルティン・クエンカ 「El autor」
ディエゴ・サン・ホセ 「Fe de Etarras」
パブロ・レモン&リノ・エスカランテ 「No sé decir adiós」
カルラ・シモン 「Verano 1993」
フェルナンド・ナバロ&パコ・プラサ 「Verónica」
◎オリジナル音楽賞
ホセ・ルイス・ペラレス 「El autor」
カルロス・リエラ&ジョアン・バレント 「El bar」『クローズド・バル』
パスカル・ゲーニュ 「Handia」
アルフォンソ・デ・ビラリョンガ 「La librería」
エウヘニオ・ミラ 「Verónica」
◎予告編賞
「El autor」フェルナンド・バリャリノ
「El bar」『クローズド・バル』ラファ・マルティネス
「La llamada」アルベルト・グティエレス
「Pieles」『あなたに触らせて』ラファ・マルティネス (監督エドゥアルド・カサノバ)
「Verano 1993」『夏、1993』ミゲル・A・トゥルドゥTrudu
「Verónica」ラファ・マルティネス
*3作にノミネーとされたラファ・マルティネスは、2017年にパコ・レオンの『KIKI~愛のトライ&エラー』で受賞しています。短編映画のほか、主にメイキングや予告編を専門に多数手がけています。
◎ポスター賞
「El bar」『クローズド・バル』 セルフィオ・ゴンサレス・クンKuhn
「Handia」 イニャキ・ビリュエンダス
「La llamada」『ホーリー・キャンプ!』 Cartel teaser
「Pieles」『あなたに触らせて』 セルフィオ・ゴンサレス・クンKuhn
「Verano 1993」『夏、1993』 オルガ・オルティス
◎ドキュメンタリー賞
「Muchos hijos, un mono y un castillo」(監督グスタボ・サルメロン)
*作品賞(コメディ部門)とダブル・ノミネーションです。
★ゴヤ賞・フォルケ賞・フェロス賞の3賞にノミネーションされた未紹介作品、イサベル・コイシェの「La libreria」は、日本公開も視野に入れてアップ予定。
2017年のスペイン映画は過去5年間の最低を記録 ― 2017年12月31日 17:12
映画業界は、最低でも落ち込んでいません!
★2017年の「スペイン映画は、過去5年間の最低を記録」と嬉しくない数字が発表になりました(12月16日)。年の瀬が迫るとこういう総括的な記事が増えてくる。2017年は「Ocho apellidos vascos」(2014年、5600万ユーロ)や昨年のフアン・アントニオ・バヨナの『怪物はささやく』(国内374万ドル、海外4357万ドル、トータル4730万ドル)のようなビッグネームのヒット作がなかったから、ある程度予想されたことでした。それでも200万ユーロ以上を売り上げた映画が13作もあったというから、観客の好みの分散化が起きているのかもしれません。12月17日調べで9560万ユーロ、まだ大晦日までに2週間あるから1億ユーロに近づけるかもしれない。

(アレックス・デ・ラ・イグレシアの「Perfectos desconocidos」から)
★1年でも暑い夏が終わり、映画館に足を運ぶようになる書き入れ時の9月から10月にかけてが振るわなかった。カタルーニャ独立問題を抱えたスペイン第二の都市バルセロナが名指しで戦犯になっている。というのは新人二人のハビ(カルボ&アンブロッシ)のミュージカル『ホーリー・キャンプ!』の公開と独立「Yes 対No」選挙が重なり、市民は映画どころではなかったからだそうです。しかし11月10日にイサベル・コイシェの「La libreria」、12月1日にアレックス・デ・ラ・イグレシアの新作「Perfectos desconocidos」が公開されて好転の兆しが見えてきた。ゴヤ賞ドキュメンタリー賞にノミネートされているグスタボ・サルメロンの「Muchos hijos, un mono y un castillo」も気を吐いているようです。サルメロン監督の母親が主人公、サルメロン一家はかなりユニークな家族のようで、これは授賞式までにアップしたい。多分受賞する確率が高い。

(ハビエル・カルボとハビエル・アンブロッシ、サンセバスチャン映画祭2017)

(「Muchos hijos, un mono y un castillo」の母親フリア・サルメロン)
★ゴヤ賞のアニメーション映画はアップしませんでしたが、有力候補というか受賞確実と言われているのが、エンリケ・ガトとダビ・アロンソの「Tadeo Jones 2: El secreto del rey Midas」、今年の出世頭第1位の1790万€とほぼ5分の1を売り上げている。第2位がゴヤ賞ノミネーション0個のアレックス・デ・ラ・イグレシアの「Perfectos desconocidos」1110万€、第3位が同じく0個のカルロス・テロンTherónのコメディ「Es por tu bien」960万€、第4位セルヒオ・G・サンチェスのデビュー作「El secreto de Marrowbone」720万€・・・と続き、彼は新人監督賞にノミネートされています。大体上位10本まではゴヤ賞と縁が薄く、ましてや作品賞受賞は稀れ、昨年の『怪物はささやく』はバヨナが監督賞こそ受賞しましたが、作品賞はラウル・アレバロのデビュー作『物静かな男の復讐』でした。

(アニメーション「Tadeo Jones 2: El secreto del rey Midas」から)

(ホセ・コロナド、ハビエル・カマラ、ロベルト・アラモ、「Es por tu bien」から)
★海外というかハリウッド映画を含む全公開作品のトップは、ディズニー不朽の名作をビル・コンドンが実写化した『美女と野獣』の2200万ユーロでした。エマ・ワトソンは頑張りましたが、130分は付添いの大人には長すぎました。ゴヤ賞にノミネーションされた作品のうち、Apache Filmsが製作を手掛けた、パコ・プラサの「Verónica」(売上353万€)、ビクトル・ガルシア・レオンのコメディ「Selfie」(製作資金1万€!)、『ホーリー・キャンプ!』(売上270万€)、アグスティン・ディアス・ヤネスの「Oro」(製作資金800万€)など、まだ正確な数字が出ていないものを含めて成果が表れている。大当たりしなくても小額当選金が積み重なれば、宝くじのように悪くないということらしい。

(新人男優賞ノミネート自撮りするサンティアゴ・アルベル、「Selfie」から)
★来年2018年の目玉は、『プリズン211』や『エル・ニーニョ』の監督ダニエル・モンソンが「Yucatán」を発表する。他に『ゴースト・スクール』や『SPY TIME-スパイ・タイム』でお馴染みのハビエル・ルイス・カルデラの「Superlópez」も目玉のようです。「映画は映画館で」という映画鑑賞の形態も変化しつつあり、みんなが同一作品を見る時代ではなくなった。
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