『しあわせへのまわり道』本日公開*イサベル・コイシェ ― 2015年08月29日 17:29
コイシェとパトリシア・クラークソンがタッグを組んで「しあわせ探し」
★英語映画ですが、以前当ブログでご紹介したコイシェの新作と言いたいところですが、元新作です(笑)。コイシェは出身こそスペインですが、映画をアメリカで学んだせいか、アメリカやイギリスで仕事をしていることが多い。デビュー作“Demasiado viejo peara morir joven”(89)はスペイン語で撮りましたが、第2作“Cosas que nunca te dije”(1995、米≂西『あなたに言えなかったこと』ラテンビート2004上映)以来、ドキュメンタリー以外英語映画が殆どです。今春、本拠地をニューヨークはブルックリンに移して精力的に作品を発表しており、イザベル・コヘットと表記されていた頃がウソのようです。

★トロント映画祭2014「スペシャル・プレゼンテーション」部門上映がワールド・プレミア、コイシェ映画というより、クラークソン映画かもしれない。グレン・クローズが長年映画化に執念を燃やし、ロドリゴ・ガルシアが監督した『アルバート・ノッブス』(11)の関係に似ているかもしれない。ダルワーン役のベン・キングズレーは、ペネロペ・クスルと共演した『エレジー』(08)に出演して、コイシェ映画は経験済み。東京を舞台にした『ナイト・トーキョー・デイ』(09)で堪らず中途退席した方も、こちらは楽しめるのではないかな。個人的にはベルリン映画祭2015でオープニング上映された(初体験)ジュリエット・ビノシュ主演の“Nobody Wants the Night”の公開を待っていますが。
“Learning to drive” 米国 英語 2014
監督:イサベル・コイシェ
脚本・原作:サラ・ケルノチャン
撮影:マネル・ルイス
製作者:ダナ・フリードマン
キャスト:パトリシア・クラークソン(ウェンディ)、ベン・キングズレー(教官ダルワーン)、グレース・ガマー(娘ターシャ)、ジェイク・ウェバー(夫テッド)、サリター・チョウドリー(ジャスリーン)他
プロット:ウェンディはマンハッタンで活躍するベテラン書評家で、最近結婚生活が破綻してしまった。夫の浮気にも気づかなかった本の虫、いや仕事の虫。常に夫の車に頼っていたが、これからは自分で運転しなければならない。教習所の教官ダルワーンはシーク教徒で彼自身の結婚も暗雲が漂っていた。やがて二人の人生が交差し、予期しないかたちで転機が訪れる。人生も車も上手に運転するのは難しいという大人のラブロマンス。 (文責:管理人)

トレビア:「ニューヨーカー」誌に掲載されたサラ・ケルノチャンのエッセイの映画化。ケルノチャンはロバート・ゼメキスが監督した『ホワット・ライズ・ビニース』(2000)の原作者、ハリソン・フォードとミシェル・ファイファーが主演したサスペンス・スリラーでした。9・11以後、ニューヨークを舞台に映画を撮るのが夢だったという監督の夢が叶った。「大人のラブロマンス」には違いないが、9・11後アメリカに吹き荒れた人種的差別問題、21世紀の結婚のかたちなどが背景にある。映画では教習所教官ダーワンをシーク教徒のインド系アメリカ人に設定していますが、エッセイはフィリピン人のようです。ウェンディの娘を演じたグレース・ガマーはテレビでの仕事が多い。「女の40歳は90歳」と言われるハリウッドで、今なおバリバリの現役女優メリル・ストリープがお母さんです。

★最近の「エル・パイス」のインタビューで「どんな映画があなたを笑わせてくれる?」と訊かれて、「『ホームパーティ』のピーター・セラーズ、それにへとへとになるまで笑わせてくれたのが『ズーランダー』よ」と即答、後者は大勢の有名人がカメオ出演して話題になったコメディでした。ジュリエット・ビノシュ、ベン・キングズレー、ティム・ロビンスなど国際級の俳優を誘惑して映画を撮ってしまう監督は、スペインではコイシェぐらいでしょうか。
*最近のコイシェのフィルモグラフィー*(ドキュメンタリー、短編を除く)
2015“Nobody Wants
the Night”(西題“Nadie quiere
la noche”)
コチラ⇒2015年3月1日(ベルリン映画祭2015)
2014『しあわせへのまわり道』コチラ⇒2014年8月13日(トロント映画祭2014)
2013“Another Me”(西題“Mi otro yo”)コチラ⇒2014年7月27日
2013“Yesterday
Never Ends”
2009『ナイト・トーキョー・デイ』
2008『エレジー』
★IMDbにタイトルだけアップされているのが、新作“The Bookshop”です。“Nobody Wants the Night”の記事で触れたことですが、これは英国のペネロピ・フィッツジェラルドの“The Bookshop”(1978、“La libreria”)の映画化。現在これ以外にも2本執筆中で、その一つがダーウィンの玄孫を主人公にした脚本を英国出身の監督・脚本家マシュー・チャップマンと共同で執筆している。
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