スペインの映画賞2017の行方を占う ― 2017年01月01日 17:23
期待値を下げればハッピーになれるかもしれない
★当ブログも4回目の新年を穏やかに迎えることができました。映画の世界も世の中の危機と無縁ではありませんが、映画の未来を信じて発信していきたいと思っています。多くを望まず期待値を若干修正すればそれなりにハッピーになれるかもしれない。秋開催のサンセバスティアン映画祭も節目の65回目を迎えます。サプライズを期待したいところです。
★スペインでは新春早々フォルケ賞(1月14日)、フェロス賞(1月23日)、そしてゴヤ賞(2月4日)と大きなイベントが開催されます。それぞれ主宰する組織は異なりますが、前年公開された映画の総決算だから、ノミネーションは当然似てきてしまいます。いわば釣師は違っていても同じ釣堀から釣るわけだから当然なのかも知れません。なかで一番盛大なのが殿りのゴヤ賞ですが、無い袖は振れないというわけで、今年は「地味路線」がはっきりしています。
★大体三つの映画賞に共通している最優秀作品賞は、長短はあれ既にご紹介済みの作品です。なかでフォルケ賞にだけノミネートされたサルバドル・カルボのデビュー作“1898, Los últimos de Filipinas”は当ブログ初登場、ご紹介したいと思っています。タイトルから歴史物であることは一目瞭然、1898年という年は米西戦争によってかつて栄華を誇ったスペイン帝国が完全に瓦解した失意の年です。ゴヤ賞9個(新人監督・新人男優・撮影・プロダクション・美術・録音・衣装デザイン・メイク&ヘアー・特殊効果)は、技術部門に集中しているとはいえ気になります。本作が長編デビューの監督ですが、ルイス・トサール、ハビエル・グティエレス、エドゥアルド・フェルナンデス、カラ・エレハルデなどの演技派ベテランに、リカルド・ゴメス、ミゲル・エラン、アルバロ・セルバンテスなどの若手人気俳優を揃えて、12月2日封切り以来アクション・アドベンチャーとして若者から年配の男性観客のあいだで評判になっています。
(“1898, Los últimos de Filipinas”のポスター)
★他に受賞に絡みそうな作品として、マリナ・セレセスキーの“La puerta abierta”もなかなか面白そうです。カルメン・マチ(主演)にテレレ・パベス(助演)がノミネーションとくれば、受賞しなくても鑑賞したい映画リスト入りです。
★ゴヤ賞にはノミネートされませんでしたが、フォルケ賞ラテンアメリカ映画部門のセバスティアン・コルデロの“Sin muertos no hay carnaval”(エクアドル、メキシコ、独)なども、ラテンビートを視野に入れてご紹介したい。授賞式までに間に合うよう順を追ってアップできたらと思っています。
(“Sin muertos no hay carnaval”のポスター)
サルバドル・カルボ ”1898, Los ultimos de Filipinas” *ゴヤ賞2017 ⑤ ― 2017年01月05日 14:40
歴史に基づく勝利無き英雄たちのアクション・アドベンチャー
★スペインで戦争歴史映画といえば、イコール「スペイン内戦」、今もって懸案事項の一つであり続けています。しかし本作は内戦物ではなく、その時代背景はタイトル通り19世紀末の1898年、舞台はフィリピンのルソン島にあるシティオ・デ・バレル、そこの小さな教会に337日間立てこもって戦ったスペイン駐屯軍のレジスタンスが語られる。1898年は、スペイン人にとっては植民地キューバに続いてフィリピンも失い、かつて栄華を誇ったスペイン帝国が完全に瓦解した不名誉な年である。
(左から、カラ・エレハルデ、エドゥアルド・フェルナンデス、アルバロ・セルバンテス、
ルイス・トサール、ハビエル・グティエレス、カルロス・イポリト、リカルド・ゴメス)
★サルバドル・カルボの長編デビュー作“1898, Los últimos de Filipinas”のご紹介。ゴヤ賞ノミネーション9個(新人監督・新人男優・撮影・プロダクション・美術・録音・衣装デザイン・メイク&ヘアー・特殊効果)、フォルケ賞作品賞ノミネーション(Enrique Cerezo P.C.)と熱い視線が注がれている。デビュー作とはいえ、カルボ監督は既にTVドラで活躍中、それがキャスト、スタッフの豪華さに繋がっている。撮影は2016年の5月から6月にかけて、赤道ギニア共和国やカナリア諸島のグラン・カナリアで9週間にわたって行なわれた。1945年、アントニオ・ロマンが“Los últimos de Filipinas”のタイトルで映画化している。そこでは当時の政権に不都合だったエピソードは語られることはなかったが、本作では隠された真実も姿を表わすようです。
“1898, Los últimos de Filipinas”2016
制作:13TV / CIPI Cinematografica S.A. / Enrique Cerezo Producciones Cinematograficas S.A. / ICAA / TVE
監督:サルバドル・カルボ
脚本:アレハンドロ・エルナンデス
音楽:ロケ・バニョス・ロペス
撮影:アレックス・カタラン・フェルナンデス
美術:カルロス・ボデロン
録音:エドゥアルド・エスキデ、フアン・フェロ、ニコラス・デ・ポウルピケ
編集:ハイメ・コリス
衣装デザイン:パオラ・トーレス
メイクアップ&ヘアー:アリシア・ロペス、ペドロ・ロドリゲス、ほか
特殊効果:パウ・コスタ、カルロス・ロサノ
プロダクション:カルロス・ベルナセス
製作者:エンリケ・セレソ、ペドロ・コスタ
基本データ:製作国スペイン、スペイン語、2016年、105分、戦争歴史物、製作費約600万ユーロ、撮影地・期間、赤道ギニア共和国、グラン・カナリア、9週間、フォルケ賞2017作品賞ノミネーション、ゴヤ賞9部門ノミネーション、映倫PG12、IMDb評価6.7点、スペイン公開2016年12月2日
キャスト:ルイス・トサール(サトゥミノ・マルティン・セレソ中尉)、ハビエル・グティエレス(ヒメノ軍曹)、エドゥアルド・フェルナンデス(エンリケ・デ・ラス・モレナス艦長)、アルバロ・セルバンテス(兵士カルロス)、カラ・エレハルデ(カルメロ司祭)、カルロス・イポリト(ロヘリオ・ビヒル・デ・キニョネス医師)、リカルド・ゴメス(兵士ホセ)、ミゲル・エラン(兵士カルバハル)、パトリック・クリアド(兵士フアン)、ペドロ・カサブランク(クリストバル・アギラール中佐)、フランク・スパノ(タガログ人の密使)、アレクサンドラ・マサングカイ(先住民テレサ)、エミリオ・パラシオス(モイセス)、シロ・ミロ(騎馬兵)ほか多数
*ゴチック体はゴヤ賞にノミネートされたスタッフとキャスト
(指揮官エドゥアルド・フェルナンデス)
物語:1898年の夏、ルソン島の海岸沿いの小村バレル、スペインの兵士たちが独立のため蜂起した先住民の一団に苦戦している。立てこもった教会を包囲された指揮官エンリケ・デ・ラス・モレナスとマルティン・セレソ中尉は、50名にも満たないわずかな陣容で戦わざるをえなかった。指揮官の死後、ヒメノ軍曹とともに駐屯軍を指揮したセレソ中尉は、熱病やマラリアにも苦しめられながら勝利も栄光もない戦いを強いられた。度重なる警告にも拘わらず何の対策も打ち出せなかった政府は、米国の援助を受けた反乱軍を前にしてなす術もなく、領土の割譲を余儀なくされる。1898年6月30日から翌年6月2日、337日間に及ぶ兵士たちの抵抗はパリ条約の締結により終りを告げた。
(左から、ルイス・トサール、カルロス・イポリト、後方が籠城したバレルの教会)
*トレビア*
★サルバドル・カルボSalvador Calvo:1970年マドリード生れのテレビ&映画監督。2000年TVドラ・シリーズ“Policias, en el corazón de la calle”の助監督として出発、2002年には同ドラマ4挿話を監督する。代表作は“Las aventuras del capitán Alatriste”(2013、4挿話)や“Hermanos”(2014、4挿話)、ほか多数手掛けておりテレビ監督としてはベテラン。46歳で長編映画デビューを果たした。
★監督談によると、最初のプランは村の教会に閉じ込められたスペイン駐屯軍のウエスタン風の「潜水艦ドラマ」を構想していた。しかし最後の植民地喪失がスペイン帝国の決定的な崩壊であることを明確にして、そのメタファーを強める意味で敢えて「1898年」という崩壊の年号をタイトルに入れ、新しい時代の出発を強調したかった。実際は米国に敗北して領土割譲という屈辱的なパリ条約を締結するわけですから、本質的にはペシミスティックではあるが、この独創的なスペインの未来に期待しているのかもしれない。
★製作会社「Enrique Cerezo Producciones Cinematograficas S.A.」の設立者エンリケ・セレソは、フォルケ賞を主催するEGEDA会長、それで作品賞にノミネーションされたのでしょうか。と言うのも12月2日公開だから、本当は来年回しのはずです(対象は2015年12月1日~2016年11月30日)。多分受賞はないと予想しますが、原則論者からは不満が出るかもしれない。
(サルバドル・カルボ監督とプロデューサーのエンリケ・セレソ)
★アントニオ・ロマンの「1945年版」では監督以下、アルマンド・カルボ(中尉役)、ホセ・ニエト(指揮官役)、ギジェルモ・マリン(医師役)ほか、日本でもクラシック映画で知名度の高いフェルナンド・レイ、フアン・カルボ(アルマンドの実父)、トニー・ルブランなどが出演、当然ながら殆どが鬼籍入りしています。兵士の逃亡などは、フランコ政権の不都合によりカットされていたようです。
★俳優陣のうち、ルイス・トサール(『プリズン211』『暴走車 ランナウエイ・カー』)、エドゥアルド・フェルナンデス(『スモーク・アンド・ミラーズ』『エル・ニーニョ』)、ハビエル・グティエレス(『マーシュランド』『The Olive Tree』)、カラ・エレハルデ(『ネイムレス』『ザ・ウォーター・ウォー』)のベテラン勢は日本語ウィキペディアで紹介記事が読める。当ブログにも度々登場願っているので割愛。
(左から、カラ・エレハルデ、エドゥアルド・フェルナンデス、ルイス・トサール)
★若手で今回「新人男優賞」ノミネートのリカルド・ゴメスは、1994年マドリード生れの俳優、テレビ、舞台でも活躍の22歳。現在マドリードのコンプルテンセ大学比較文学科に在籍中、勉学と俳優業の二足の草鞋を履いている。2001年から始まったTVドラ・シリーズ“Cuéntame cómo pasó”に7歳でデビュー、スペインで放映時間が近づくと通りから人影が消えてしまうと言われた人気ドラマ。「フランコ小父さんって何をした人なのか僕たちに話してよ」と、軍事独裁時代を知らない若者にドラマでスペイン現代史を教えるという内容。もちろん秘密のベールに覆われていた時代だから、大人でさえも知らないことだらけ、それで一家揃ってお茶の間に陣取った。マドリードに暮らすアルカンタラ一家の8歳になる末っ子カルロスの人生が語られ、時間とともに成長するカルリート・ゴメスをスペイン人はずっと見てきており、現在も続行中です。
(リカルド・ゴメスの今と昔)
★映画デビューは、アントニオ・ナバロのアニメ“Los Reyes Mago”(03)のボイス、ホセ・ルイス・ガルシのコメディ“Tiovivo c. 1950”(04)、同作はオスカー賞スペイン代表作品の候補にもなったが、アメナバルの『海を飛ぶ夢』に敗れた。というわけで本作出演が成人してからの本格的な映画デビューと言っていいでしょう。
(プレス会見でインタビューに応えるリカルド・ゴメスと共演者アルバロ・セルバンテス)
★脚本を執筆したアレハンドロ・エルナンデスは、キューバ出身の脚本家、2000年にスペインに移住しているシネアスト流出組の一人。今回ノミネートはありませんでしたが、以前紹介したマヌエル・マルティン・クエンカの“Malas temporadas”(『不遇』)を監督と共同執筆しています。ノミネーションを受けた撮影監督のアレックス・カタランは『マーシュランド』でゴヤ賞を受賞したばかり、『スモーク・アンド・ミラーズ』も手掛けているが、今回はどうでしょうか。スペイン各紙の映画評は概ね好意的で、何かの賞には絡むのではないかと思います。
*追記:邦題『1898:スペイン領フィリピン最後の日』で Netflix 配信されました。
ラウル・アレバロのデビュー作”Tarde para la ira”*ゴヤ賞2017 ⑥ ― 2017年01月09日 10:13
ラウル・アレバロは監督もできます!
★昨年の2月にラウル・アレバロ監督デビューの第一報をお届けしてから早くも1年近くの歳月が流れました。ベネチア映画祭2016「オリゾンティ」部門に正式出品された折にも追加記事をアップするなどして注目しておりましたが、ゴヤ賞作品賞・新人監督賞を含む11個ノミネートには驚きました。作品賞はともかく、新人監督賞のトップを走っているのは間違いありません。1馬身差で追っているのが前回ご紹介したサルバドル・カルボの“1898, Los últimos de Filipinas”と予想しています。今どき俳優の監督掛持ちなど珍しくもありませんが、改めて飛び飛びだった記事をまとめて再構成することにしました。
*以下、ゴチック体はゴヤ賞ノミネートを受けたもの、◎印はフェロス賞にノミネートされたもの
“Tarde para la ira”(“The Fury of a Patient Man”)2016
製作:Agosto la Pelicula / La Canica Films / TVE ◎
監督・脚本:ラウル・アレバロ ◎
脚本(共):ダビ・プリド ◎
撮影:アルナウ・バルス・コロメル
編集:アンヘル・エルナンデス・ソイド
音楽:ルシオ・ゴドイ
衣装デザイン:アルベルト・バルカルセル・ロドリゲス、クリスティナ・ロドリゲス
美術:セラフィン・ゴンサレス
メイクアップ&ヘアー:マルタ・アルセ、エステル・ギリェム、ピルカ・ギリェム
特殊効果:イケル・デ・ラ・カジェ・ラタナ、ラオル・ロマニリョス
録音:タマラ・アレバロ、ミゲル・バルボサ、ほか
製作者:ベアトリス・ボデガス、セルヒオ・ディアス
基本データ:製作国スペイン、スペイン語、2016年、スリラー・ドラマ、92分、製作費約120万ユーロ、スペイン国営放送RTVEの援助、撮影開始2015年7月より6週間、撮影地はマドリードほかセゴビアなど。スペイン公開2016年9月9日、IMDb7.5点
映画祭・受賞歴:ベネチア映画歳2016「オリゾンティ」正式出品、ルス・ディアス女優賞受賞。トロント映画祭、ロンドン映画祭、テッサロニキ映画祭、ストックホルム映画祭などに正式出品
映画賞:フォルケ賞2017作品賞・男優賞(アントニオ・デ・ラ・トーレ)、ガウディ賞2017撮影賞、フェロス賞2017作品賞以下7部門、いずれもノミネーション。
キャスト:アントニオ・デ・ラ・トーレ(ホセ)◎、ルイス・カジェホ(クーロ)◎、ルス・ディアス(アナ、フアンホの義妹)◎、ラウル・ヒメネス(フアンホ)、アリシア・ルビオ(カルメン)、マノロ・ソロ(トリアナ)◎、フォント・ガルシア(フリオ)、ピラール・ゴメス(ピリ)、ベルタ・エルナンデス(ホセのガールフレンド)、ルナ・マルティン(サラ)その他多数
解説:ホセとクーロの物語、無口だが用心深いホセはフアンホがオーナーのバルで終日ウエイターとして働いている。不眠症に苦しんでおり、フアンホの義姉妹アナを想っている。そんな折、フアンホの兄弟クーロが8年ぶりに出所してくる。2007年8月マドリード、クーロは仲間と宝石店を襲い販売員を昏睡状態にしたうえ仲間の一人が女店員を殺害してしまうという事件を起こしていた。暗い過去の亡霊にとり憑かれているが、アナと小さな息子と一緒に人生をやり直そうと考えていた。しかしアナの愛は既にクーロになく、見知らぬ男ホセと出逢うことで歯車が狂ってくる。やがて販売員がホセの父親だったこと、女店員がホセのガールフレンドだったことが明らかになってくる。人間の心の闇に潜む暴力、復讐、父と子の関係が語られることになるだろう。
(アントニオ・デ・ラ・トーレとルイス・カジェホ)
*監督キャリア紹介*
★ラウル・アレバロRaúl Arévalo、1979年マドリード生れ、俳優、監督、脚本家。クリスティナ・ロタの演劇学校で演技を学んだ。「妹と一緒に父親のカメラで短編を撮っていた。17歳で俳優デビューしたのも映画監督になりたかったから」というから根っからの監督志望だった。俳優としてキャリアを磨きながら、今回やっと長年の夢を叶え、監督としても通用することを証明した。
★日本デビューはダニエル・サンチェス・アレバロの第1作『漆黒のような深い青』(06、ラテンビート2007上映)、同作にはサンチェス・アレバロ監督と「義」兄弟の契を結んでいるアントニオ・デ・ラ・トーレも共演している。彼はデビュー作の主人公ホセ役として出演している。サンチェス・アレバロは合計4作撮っているが、二人とも全4作に出演しています。ゴヤ賞絡みではサンチェス・アレバロの第2作『デブたち』(09)で助演男優賞を受賞している。ホセ・ルイス・クエルダ(“Los girasoles ciegos”)、公開作品ではアレックス・デ・ラ・イグレシア(『気狂いピエロの決闘』)、イシアル・ボリャイン(『ザ・ウォーター・ウォー』)、アルモドバル(『アイム・ソー・エクサイテッド!』)、アルベルト・ロドリゲスの『マーシュランド』、今年ゴヤ賞脚本賞にノミネートされたダニエル・カルパルソロの『バンクラッシュ』(“Cien años de perdón”)などに起用されている。舞台にも立ち、TVドラ出演も多く、NHKで放映された『情熱のシーラ』で日本のお茶の間にも登場した。
*トレビア*
★アレバロ監督は「脚本執筆に7年、資金集めに4年の歳月をかけたのに、撮影に6週間しかかけられなかったのはクレージー」と嘆いている。それでも長年の夢をやっと叶えることができた。マドリードとセゴビアのマルティン・ムニョス・デ・ラス・ポサダスというアレバロが育った町で2015年夏にクランクインした。町の人々がエキストラとして協力しており、主人公の一人クーロ役のルイス・カジェホもセゴビア出身。ホセ役のアントニオ・デ・ラ・トーレとはダニエル・サンチェス監督の全作で共演している。さらにカルメン役のアリシア・ルビオは恋人ということです。監督と俳優が互いに知りすぎているのは、時にはマイナスにはたらくことも懸念されたが杞憂に過ぎなかった。
★ベネチア映画祭2016「オリゾンティ」部門の女優賞受賞者ルス・ディアス談、「自分の名前が呼ばれたときには思わず涙が出てしまいました」と語っていたルス・ディアス、1975年カンタブリアのレイノサ市生れ、女優、監督。舞台女優として出発、1993年『フォルトゥナータとハシンタ』が初舞台、映画、テレビで活躍。チュス・グティエレスの『デリリオ―歓喜のサルサ―』(ラテンビート2014)に出演、他にジャウマ・バラゲロ、ハビエル・レボージョなどの監督とコラボしている。2013年 “Porsiemprejamón” で短編デビュー、脚本も手がけている。ただし、「何よりもまず、私は女優」ときっぱり。
(ルス・ディアスとアントニオ・デ・ラ・トーレ、映画から)
★二人の主役、アントニオ・デ・ラ・トーレは1968年生れ、ルイス・カジェホは1970年生れと監督より一回り年上であり、それぞれ映画デビューも早い。ゴヤ賞では主役二人がダブルで主演男優、助演にマノロ・ソロ、新人にラウル・ヒメネス、主演女優にルス・ディアスと5人もノミネートされた。特にマノロ・ソロの演技を評価する批評家が多く、昨年のダビ・イルンダインの“B, la pelicula”に続いて2回めのノミネーションであるが、長い芸歴に比して少ない印象を受ける。脇役に徹しているせいか日本での知名度は低いが、『パンズ・ラビリンス』『プリズン211』『ビューティフル』『カニバル』、最近の『マーシュランド』ではフリーの新聞記者を演じていた。また、デ・ラ・トーレはフェロス賞2017の総合司会を務めることになっている。
(中央がマノロ・ソロ、映画から)
追加 : 邦題『物静かな男の復讐』で ネットフリックス配信されました。
マリナ・セレセスキー”La puerta abierta” *ゴヤ賞2017 ⑦ ― 2017年01月12日 11:37
カルメン・マチ、激戦区の主演女優賞に初めて挑戦
★女優マリナ・セレセスキーの長編映画初監督作品“La puerta abierta”のご紹介、母娘二代にわたる売春婦家族の物語と聞けば何やら悲惨なイメージをかき立てられますが、これはコメディ仕立てのドラマ。今は現役を引退した母親にテレレ・パベス、母親の稼業を引き継いだ現役娼婦にカルメン・マチ、同じピソに暮らす性転換娼婦にアシエル・エチェアンディア、この3人を軸にドラマは展開します。現在スペインには約30万人の娼婦がいるということですが、多いのか少ないのか皆目分かりません。ワールドプレミアが2016年のアムステルダム・スパニッシュ映画祭と他のノミネーション作品に比して早くスペイン公開も9月2日ですから、投票者の記憶も薄れて若干分が悪いかもしれない。新人監督賞・主演女優賞・助演女優賞と3カテゴリーにノミネートされました。
*以下ゴチック体はゴヤ賞ノミネートを受けたもの、◎印はフェロス賞にもノミネートされたもの
(左から、テレレ・パベス、監督、カルメン・マチ、アシエル・エチェアンディア)
“La puerta abierta”(“The Open Door”)2016
製作:Ad hoc studios / Babilonia Films S.L. / Meridional Producciones
監督・脚本:マリナ・セレセスキー ◎
音楽:マリアノ・マリン
撮影:ロベルト・フェルナンデス
美術:ハビエル・クレスポ、他
編集:ラウル・デ・トーレス
衣装デザイン:マラ・コリャソ、マウロ・ガストン、パトリシア・ロペス、クルス・プエンテ他
視覚効果:オスカル・ゴメス
キャスティング:ロサ・エステベス
製作者:セルヒオ・バルトロメ、R・フェルナンデス、アルバロ・ラビン、ホセ・A・サンチェス
基本データ:スペイン製作、スペイン語、2016年、82分、コメディ・ドラマ、製作費約766,000ユーロ、IMDb7.9点、filmaffinity(スペイン)6.7点、スペイン公開2016年9月2日
映画祭・受賞歴:アムステルダム・スパニッシュ映画祭2016正式出品、トランスシルバニア映画祭TIFF 2016(観客賞)、アリカンテ映画祭正式出品、トゥールーズ・スパニッシュ映画祭(観客賞)、アルカラ・デ・エナーレス短編映画祭正式出品、第32回グアダラハラ映画祭2017(3月開催)出品予定。フォルケ賞2017女優賞(カルメン・マチ)、フェロス賞(コメディ部門)作品賞・女優賞(C・マチ)、ゴヤ賞新人監督賞・主演女優賞・助演女優賞、いずれもノミネーション。
キャスト:カルメン・マチ(ロサ)◎、テレレ・パベス(ロサの母アントニア)、アシエル・エチェアンディア(ルピータ)、ルシア・バラス(リュウバ、マーシャの娘)、パコ・トゥス(パコ)、ソニア・アルマルチャ(フアナ)、ヨイマ・バルデス(テレサ)、エミリオ・パラシオス(ユーリ、リュウバの兄)、モニカ・コワルスカ(ロシア人娼婦マーシャ)、クリスティアン・サンチェス(カルロス)、スサナ・エルナイス(スサナ)、アナ・パスクアル(チャロ)、他多数
物語:ロサは母親から受け継いだ娼婦稼業を任されている。サラ・モンティエルの熱烈なファンであった母親アントニアは、最近では自分のことを彼女と錯覚して混乱のなかにいる。このマドリード界隈のピソに暮らしている人々は、性転換した娼婦ルピータのように概ね幸せからは見放された規格品外の住人である。実際のところロサは幸せとは無縁であった。そんな折、同じ階のロシア人娼婦がドラッグの過剰摂取で死んでしまい、幼い娘リュウバを世話する羽目に陥ってしまう。リュウバには既におとなになっている兄の存在もわかってくる。リュウバは3人が失ってしまった無垢と希望を運んできてくれるのだろうか。
(左から、一家団欒の母親アントニア、ロサ、リュウバ、ルピータ、映画から)
★ロサは仕事に出かけるとき、初期の認知症になった母親のために常に玄関のドアにカギを掛けない、それがタイトルになった。母親に死なれたリュウバはやすやすと部屋に侵入でき、帰宅したロサが女の子を発見する。そこからドラマが展開していく。ロサは路上で客引きをする立ちん坊の娼婦だから現実は厳しい。役作りに「実際の娼婦3人に会ったが、それぞれ状況は異なっていても普通の人、ただし社会から排除されていた」とカルメン。エル・パイス紙でも「カルメン・マチ以外にこの役を演じられる女優はいない」と絶賛されており、批評家と観客の乖離が少ない印象です。1963年マドリード生れ、エミリオ・アラゴンの『ペーパー・バード 幸せは翼にのって』(10)が「ラテンビート2010」で上映された折、監督と来日している(翌年公開)。
(路上で客引きをするロサ、映画から)
★TVシリーズ「Aidaアイーダ」 他で、数々の受賞歴のあるカルメンだが、ゴヤ賞主演女優賞ノミネーションは初めてである。アルモドバル作品でお馴染みの女優だが、殆ど脇役だからゴヤ賞には縁が薄かった(数年前ゴヤ賞授賞式の総合司会をしたことがある)。スペイン中がフィイバーした“Ocho apellidos vascos”(14)でやっと助演女優賞受賞をゲットした。今年の主演女優賞は、『ジュリエッタ』のエンマ・スアレス、“La reina de España”のペネロペ・クルス、“María(y los demás)”のバルバラ・レニーと激戦区ではあるが、可能性は高いと予想しています。受賞したらもう少し詳しいキャリア紹介の予定。
★母親役のテレレ・パベスもアレックス・デ・ラ・イグレシア作品でお馴染み、『スガラムルディの魔女』(13)で、ゴヤ賞2014助演女優賞を受賞しています。ラテンビートで上映されたときキャリア紹介をアップています(2014年10月18日)。最初のキャスティングではアントニア役は、TVドラでカルメンと共演しているアンパロ・バロが予定されていた。しかし間もなく体調を崩し、結局癌に倒れて帰らぬ人となった(2015年1月29日、享年77歳)。映画では仲の悪い親子、娘を不幸にしてしまう母親になるわけですが、「誰がなりたくて無慈悲な母親になりたいなどと思いますか」とカルメン、母と娘の関係は難しい。プロットにあるサラ・モンティエル(1928年生れ)は、往時ではグラマーで歌える美人女優として有名、作中ではラファエル・ヒルのミュージカル“Samba”(65)のなかでサラが歌った「ファンタジー」を、テレレ・パベスが歌うということです。
(母アントニア役のテレレ・パベス、映画から)
★ゴヤ賞には絡んでおりませんが、もう一人の重要人物ルピータ役のアシエル・エチェアンディアは、1975年ビルバオ生れの41歳、俳優、歌手、TV、演劇でも活躍しています。ビスカヤの学校でエグスキ・スビアとフアン・カルロス・ガライサバルから演技の指導を受けている。他の教師とは水と油の関係だったようで、「する必要のないことを沢山学んだ」と語っている。20歳のときバスクを離れマドリードに移り、セックス・ショップで働きながら演技の勉強を続けた。TV“Un paso adelante”(02)のホモセクシュアルな青年役が評価される。歌える俳優としてミュージカル“Cabaret”(スペイン版、03)にも出演、俳優組合の新人男優賞を受賞している。
★映画デビューは、ナチョ・ペレス・デ・ラ・パス&ヘスス・ルイス監督の“La mirada violeta”(04)、フェルナンド・コロモ、エミリオ・マルティネス・ラサロなどに起用されている。最近、フアンフェル・アンドレス&エステバン・ロエルの『トガリネズミの巣穴』(14、ラテンビート2014)で登場している。他フリオ・メデムの“Ma ma”(14)、パウラ・オルティスの「La novia」(15)では花嫁役インマ・クエスタの花婿を演じて、ゴヤ賞2016主演男優賞にノミネートされた。演劇、TVドラでの受賞歴多数。
(ルピータ役のアシエル・エチェアンディア、映画から)
★マリナ・セレセスキー Marina Seresesky は、1969年ブエノスアイレス生れの女優、監督、脚本家、製作者。短編“El cortejo”(10)で監督デビュー、オルデンブルク映画祭ジャーマン・インデペンデンス賞ノミネーション、バージニア州のラッパハノック・インデペンデント映画祭審査員賞受賞、短編第2作“La boda”(12)がティラナ映画祭(スペシャル・メンション)、ニューヨーク・シティ短編映画祭(作品賞・観客賞)、ポルトガルのアロウカ映画祭(作品賞)など国際映画祭で多数受賞した。ゴヤ賞2013でも短編映画賞部門にノミネートされている。長編デビュー作は上記の通り。
(観客賞を手にした監督、トランスシルバニア映画祭授賞式、2016年6月5日)
アルモドバルの『ジュリエッタ』*ゴヤ賞2017 ⑧ ― 2017年01月14日 15:51
ゴヤ賞は7個ノミネーションだが、いくつゲットできるか?
★間もなくセビーリャのマエストランサ劇場で開催される(1月14日)フォルケ賞には、長編映画部門の作品賞とエンマ・スアレスの女優賞がノミネートされており、結果が分かるのは日本時間では15日になります。続くフェロス賞には作品賞、監督賞を含めて9個、数だけで判断できないのが映画賞です。4月公開と早いこと、アルモドバル・アレルギーなどを勘案すると勝率は低いと予想します。最近のアルモドバル作品は必ず劇場公開されますが、プロット重視の観客には物足りないかもしれない。もともと監督もプロットで勝負するつもりはありませんから、それはそれで良いのです。楽しみ方はいくつもあって、それぞれ観客が視点を定めて愉しめばいいことです。赤を基調としながらもヒロインの心理状態で巧みに変化する色使いが素晴らしかったとか、アルモドバルが初めて起用したジャン=クロード・ラリューの荒々しいガリシアの海が良かったとか、『私の秘密の花』(95)以来、アルモドバルの専属みたいなアルベルト・イグレシアスの音楽を堪能したとか、いろいろ楽しみ方は考えられます。
(初期タイトル”Silencio”のポスター、エンマ・スアレス、アドリアナ・ウガルテ)
★アルモドバルはスペインの監督としては国際的に一番知名度があると思いますが、ゴヤ賞ノミネーションの選考の仕方に異議を唱えてからというもの、スペイン映画アカデミーとの長い軋轢が続いていた。ノミネーションを受けてもガラには欠席続き、なんとか解消したのが『私が、生きる肌』でした。今でも完全に修復されたとは思えませんが、そんなこんなでゴヤ賞には恵まれていない。『神経衰弱ぎりぎりの女たち』(1989、作品賞・脚本賞)、『オール・アバウト・マイ・マザー』(00、作品賞・監督賞)、最後の『ボルベール〈帰郷〉』(07、作品賞・監督賞)以来、監督としては賞から遠ざかっている。
(左から、マリア・バランコ、アントニオ・バンデラス、カルメン・マウラ、
フリエタ・セラーノ、『神経衰弱ぎりぎりの女たち』から)
★アルモドバル・ファンには二つの流れがあって、『グローリアの憂鬱』(84)、『神経衰弱ぎりぎりの女たち』あたりまでが好きな人、『オール・アバウト・マイ・マザー』でオスカー監督になってからを好む人、大勢は後者です。前者のファンには最近の彼の映画は見ないというファンもおり、『抱擁のかけら』(09)など批評に値しない駄作と切り捨てた批評家もおります。「プロなのにあまりにも感情的すぎる」と考える管理人は前者に属しているが必ず見るという両刀使いです。両刀使いにお薦めの鑑賞法は、理詰めにストーリーを追うことを止めて、他の監督には真似できない色彩感覚、過去の監督作品へのオマージュ、背景が雄弁に物語るデティール、監督が仕掛けた遊びごころを楽しむことです。手法は新しくても本質は良質なメロドラマ、ブラック・コメディ作家、スペインで最も愛された映画監督ガルシア・ベルランガの優等生がアルモドバルなのです。
(本作を最後にミューズを卒業したペネロペ・クルス、『抱擁のかけら』から)
★「最初から二人の女優を起用しようと決めていた」と監督、その一人、現在のジュリエッタを演じたエンマ・スアレスが主演女優賞にノミネートされただけで、若い頃のジュリエッタを力演したアドリアナ・ウガルテはノーマークでした。助演というわけにもいかず新人でもないしで不運でした。主演男優賞のように4人枠に二人を押し込むことは無理だったようです(5人枠のフェロス賞には二人ともノミネーションされています)。ライバルはカルメン・マチ、ペネロペ・クルス、バルバラ・レニーです。エンマ・スアレスは、イサキ・ラクエスタ&イサ・カンポの“La próxima piel”で助演女優賞にもノミネーションされており、確率的にはこちらのほうが高いかもしれない。ライバルはテレレ・パベス、カンデラ・ペーニャ、シガニー・ウィーバーです。
(監督、二人のジュリエッタ、エンマ・スアレスとアドリアナ・ウガルテ)
★ノミネーション14回目になるアルベルト・イグレシアス(1955、サンセバスチャン)が初めて映画音楽を手掛けたのは、フリオ・メデムの『バカス』(92)、いきなりゴヤ賞にノミネートされた。同監督の『赤いリス』(93)で1個めをゲット、『ティエラ~大地』、『アナとオットー』、『ルシアとSEX』とメデム作品で4個受賞、アルモドバル作品の1個めは、『オール・アバウト・マイ・マザー』(99)、続いて『トーク・トゥ・ハー』、『ボルベール〈帰郷〉』、『抱擁のかけら』、『私が、生きる肌』(11)、2監督で9個、更にイシアル・ボリャインの『ザ・ウォーター・ウォー』(10)を加えると合計10個というゴヤ胸像のコレクター。今年で31回目を迎えるゴヤ賞だが、うち14回ノミネートされている。スペイン映画に限らずアカデミー賞にノミネートされた『ナイロビの蜂』、『君のためなら千回でも』、『裏切りのサーカス』など、海外の監督からも熱い視線が寄せられている。授賞式では恥ずかしそうに登壇、短いスピーチと謙虚さで好感度抜群ではないでしょうか。
(『私が、生きる肌』で10個めのゴヤ胸像を手にしたイグレシアス、2012年授賞式)
★未だタイトル“Silencio”と出演者パルマ・デ・ロッシだけがアナウンスされたときから記事をアップしていたので、実際にスクリーンを前にしたときには新鮮味が失せていた。パンフの宣伝文句にあるような「数奇な運命に翻弄された母と娘の崇高な愛の物語」という印象ではなく、それは失踪したジュリエッタの娘アンティアの人格の描き方に説得力がなかったせいかと思います。むしろスペインによくある古いタイプの「負の父親像」やアルモドバルが拘る「死」が、ここでもテーマの一つになっていた。どの作品にも監督本人が投影されているわけだから、根本的に変化したというふうには感じられないのは当然かも知れない。また偶然が重なりすぎると、メロドラマでも嘘っぽくなるのではないかと感じた。ストーリー、スタッフ、キャスト紹介は以下にアップしています。
*エマ・スアレスとアドリアナ・ウガルテのキャリア紹介記事は、コチラ⇒2015年4月5日
*アルモドバル、主な作品紹介の記事は、コチラ⇒2016年2月19日・2016年5月8日
*『ジュリエッタ』のトレビア記事については、コチラ⇒2016年9月3日
作品賞はラウル・アレバロの手に*フォルケ賞2017結果発表 ― 2017年01月15日 22:35
トロフィーを手にしたのはエンマ・スアレスとロベルト・アラモ
★1月14日、フォルケ賞の授賞式が初めてセビージャで開催され、 結果は以下のとおりです。ラウル・アレバロの“Tarde para la ira”が受賞したとなると、ゴヤ賞もちょっと分からなくなってきました。2016年スペインで観客動員数第1位はフアン・アントニオ・バヨナの“Un monstruo viene a verme”(450万人、売上高2600万ユーロ)だった。受賞作は第4位のダニエル・カルパルソルの『バンクラッシュ』(650万ユーロ)、第6位のパコ・レオンの『KIKI~愛のトライ&エラー』(610万ユーロ)にも満たない。いずれも100万人以上の観客を集めたという。勿論、動員数や売上高の多寡で決まるわけではありませんが、少し驚きました。次のフェロス賞(1月23日)、最後のゴヤ賞(2月4日)まで続くかどうかは神のみぞ知るです。
★12日にはゴヤ賞の候補者が一堂に会して行う顔合わせカクテル・パーティがあり、いつもなら同じマドリード市内ということで問題なかったのですが、今回はセビージャということで両方にノミネートされている人は忙しかったでしょう。
長編映画賞(フィクション、アニメーション)
“El homre de las mil caras”“Smoke&Mirrors”『スモーク・アンド・ミラーズ』
監督アルベルト・ロドリゲス
“Julieta” 『ジュリエッタ』監督ペドロ・アルモドバル
“Que Dios nos perdone”“May God Save Us”監督ロドリゴ・ソロゴイェン
◎“Tarde para la ira”“The Fury of a Patient Man”監督ラウル・アレバロ
製作者ベアトリス・ボデガス
“Un monstruo viene a verme”“A Monster Calls”(西・米・英・カナダ)
監督フアン・アントニオ・バヨナ
“1898, Los últimos de Filipinas”監督サルバドル・カルボ
(ホセ・コロナドの手からトロフィーを受け取り、祝福の霰を受けるアレバロ監督)
男優賞
エドゥアルド・フェルナンデス『スモーク・アンド・ミラーズ』監督アルベルト・ロドリゲス
◎ロベルト・アラモ“Que Dios nos perdone” 監督ロドリゴ・ソロゴイェン
アントニオ・デ・ラ・トーレ“Tarde para la ira” 監督ラウル・アレバロ
アレックス・モネール“La propera pell”(“La próxima piel”)
監督(共同)イサキ・ラクエスタ、イサ・カンポ
オスカル・マルティネス“El ciudadano ilustre”(アルゼンチン、スペイン)
監督(共同)ガストン・ドゥプラット、マリアノ・コーン
*ロベルト・アラモは、マドリードの舞台の仕事で欠席した。代理でトロフィーを受け取ったのは、ロドリゴ・ソロゴイェン監督、アラモの「感謝の辞」はビデオで上映された。
(上記の写真)
女優賞
アドリアナ・ウガルテ『ジュリエッタ』監督ペドロ・アルモドバル
◎エンマ・スアレス『ジュリエッタ』監督ペドロ・アルモドバル
カルメン・マチ“La puerta abierta”(“The Open Door”)監督マリナ・セレセスキー
バルバラ・レニー“María (y los demás)”監督ネリー・ネゲラ
アナ・カスティージョ『The Olive Tree』監督イシアル・ボリャイン
インマ・クエスタ“La novia” 監督パウラ・オルティス
(「映画の夢に向かって全力を尽くす」と感謝したエンマ・スアレス)
長編ドキュメンタリー賞
◎“2016, Nacido en Siria”監督エルナン・シン
“El Bosco, El jardín de los sueños”(スペイン、フランス)監督ホセ・ルイス・ロペス=リナレス
“Omega”監督(共同)ヘルバシオ・イグレシアス、ホセ・サンチェス=モンテス
“Jota de Saura”監督カルロス・サウラ
“La historia de Jan”監督ベルナルド・モル・オットー
“Miguel Picazo, Un cineasta extramuros”監督エンリケ・エスナオラ
短編映画賞
“Timecode”『タイムコード』(15分)監督フアンホ・ヒメネス
◎“Graffitti” (30分)監督リュイス・キレスLluís Quílez (スペイン、ウクライナ)
“Bla Bla Bla”監督アレクシス・モランテ
長編ラテンアメリカ映画賞
“Neruda”(チリ、メキシコ)監督パブロ・ラライン
◎“El ciudadano ilustre”『名誉市民』(アルゼンチン、スペイン)
監督(共同)ガストン・ドゥプラット、マリアノ・コーン
“Aquí no ha pasado nada”(“Much Ado About Nothing”)(チリ)
監督アレハンドロ・フェルナンデス・アルメンドラス
“El acompañante”(キューバ)監督パベル・ジロー
“Sin muertos no hay carnaval”(エクアドル、メキシコ、ドイツ)
監督セバスティアン・コルデロ
★ドキュメンタリー賞、ラテンアメリカ映画賞は予想通りの結果でしたが、短編映画賞はカンヌ映画祭パルムドールの『タイムコード』と思っていたので外れました。2作ともオスカー賞2017短編部門のプレセレクション・リスト10作に残っています。どちらもアルカラ・デ・エナレス短編映画祭2016の受賞作品。
★栄誉賞にあたるゴールデン賞を受賞したアントニオ・P・ペレスは、前日の金曜日に母親を亡くして「悲しみと喜びとは交互に相次ぐ」を実感しているようでした。人生においてはこういう偶然はときどき起こりますね。
授賞式はお金をかけず短くスピード上げて軽快に*ゴヤ賞2017 ⑨ ― 2017年01月18日 15:23
本番に先立って開催されるプレ授賞式に全員集合!
★1月12日、本番前のゴヤ賞候補者の顔合わせミニ・カクテル・パーティが行われました。14日のセビージャでのフォルケ賞ガラを目前にして全員集合とはいきませんでしたが、大方は出席したようです。初ノミネーションの「新人」たちにとっては、製作者や監督たちに自分を売り込むチャンス、授賞式以上に重要です。ここでもフォルケ賞作品賞を受賞した“Tarde para la ira”の一行が、メディアのフラッシュを浴びていたようです。集合写真はアップしても小さすぎて最前列しか分からないので割愛。
(“Tarde para la ira”のグループ、左から3番めがラウル・アレバロ監督)
★資金不足が大きな理由の一つですが、スペイン映画アカデミー会長イボンヌ・ブレイク、副会長マリアノ・バロッソが語るところによると、2017年は質素に、まず時間はスペードアップして2時間半と例年より大幅に短縮する。つまり24時前に終了させる(長い受賞スピーチは誰も望まない?)。歌手や交響管弦楽団の演奏はライブだが、ダンスはカットする方針、不満の人も出てきそうです。確かに前夜祭のカクテル・パーティの時間も短め、振る舞われたカクテルの量も少なめだったとか。3回目の総合司会者となるダニ・ロビラの進行も予測がつかない、何か起こってもおかしくないかもしれない。
(ダニ・ロビラ、二度目となる第30回ゴヤ賞2016の総合司会者)
★最近の報道では長引いた政治の混乱にもかかわらず、昨年のスペインのGDP経済成長率は2%以上と、EU域内では優等生なのだとか。日本の消費税に当たるIVAが21パーセントに値上げされたからというもの映画産業の先行きが危ぶまれておりましたが、スペイン映画健在が数字になって示されました。映画館に足を運んだ観客が約1億人を突破、それも上位にスペイン映画が18作も含まれていた。
★その貢献度ナンバーワンがフアン・アントニオ・バヨナの“Un monstrous viene a verme”、450万人が足を運び興行成績は2600万ユーロでした(『君の名は。』には到底及びませんが。スペイン公開はこれからです)。ゴヤ賞ノミネーションも最多の12個、しかし「作品賞」受賞は微妙、それとこれとは別です。もし受賞したら論争が起こるだろうという。監督以下のスタッフ陣はスペインだが、キャストは海外勢、オリジナル言語は英語と、果たしてスペイン映画といえるかどうかというわけです。サンセバスチャン映画祭2016年では、オープニングにこそ選ばれたがコンペティション外でした。ここいらがスペイン人の平均的心情なのかもしれない。因みに第2位は米国の3Dアニメーション『ペット』の2130万ユーロ、日本でも『君の名は。』が公開される前はダントツで首位を走っていた。もう「アニメ=お子さま」の時代は終わりました。
(“Un monstrous viene a verme”のポスターをバックにしたバヨナ監督)
★100万人以上の観客を集めた作品は、殆どのプロダクションがテレビ局との共同、テレビでがんがん宣伝してもらえる。クチコミも大きいが、テレビ・マジックが大きく物を言う時代になっている。上位6位のうち、ゴヤ賞にノミネートされたのは、バヨナを含めて4位の『バンクラッシュ』(ダニエル・カルパルソル)と6位の『KIKI~愛のトライ&エラー』(パコ・レオン)の3作でした。サンセバスチャンで評価された『スモーク・アンド・ミラーズ』、“Que Dios nos perdone”、オスカー賞スペイン代表作品 『ジュリエッタ』などにはお金を使わないようです。因みに『ジュリエッタ』は、イギリスのアカデミー賞といわれるBAFTAの外国語映画賞部門5作に選ばれています。未公開なので未だ見ておりませんが、女性監督マレン・アーデの“Toni Erdmann”(ドイツ=オーストラリア)と予想します。
(ルイス・トサールと新人賞候補のロドリゴ・デ・ラ・セルナ、『バンクラッシュ』)
★『ジュリエッタ』で主演、“La próxima piel”で助演と、久しくゴヤ賞から遠ざかっていたエンマ・スアレスが今宵のヒロインでもあった。受賞すれば今は亡きピラール・ミロの『愛は奪った』(“El perro del hortelano”95)で主演女優賞を受賞して以来になる。共演者のカルメロ・ゴメスも既に俳優引退宣言をして、時代の流れを感じずにはいられない。ノミネーションは2回ありますが、今回ほど近い位置についていなかった。「ミロ監督のことはいつも頭のなかにあります。意見の相違はあっても、女優が自分の天職だと気づかせてくれる。自由は与えられるものではなく勝ち取るものです」とスアレス。ミロ監督は毀誉褒貶のある監督でしたが、個人的には女性シネアストの道を開拓してくれたと評価しています。
(エンマ・スアレス、『ジュリエッタ』から)
★バルバラ・レニーは『マジカル・ガール』で受賞したばかり、ペネロペ・クルスは今回ないと予想(私生活の本拠地がアメリカということもあって夕べには欠席)、カルメン・マチに貰ってほしいところですが、エンマ・スアレスが先頭を走っているような気がします。スペインでは俳優の仕事で食べていけるのは、わずか8パーセントという数字を信じれば、なかなか厳しい話です。候補者の中にはウエイトレスやボーイなどを兼業している人もおり、バルバラ・レニーだってついこないだまではそうでした。
(バルバラ・レニー、“María (y los demás)”から)
アレックス・デ・ラ・イグレシアの新作”El bar”*ベルリン映画祭2017 ― 2017年01月22日 17:17
オフィシャル・セクションのコンペ外ですが・・・
★『グラン・ノーチェ!最高の大晦日』以来、アレックス・デ・ラ・イグレシアの話題が途絶えていると思っていたら、三大映画祭の先陣を切って開催されるベルリン映画祭2017に“El bar”が招待作品として上映されるようです。オフィシャル・セクションですがコンペティション外です。このセクションには他に、ダニー・ボイルの『トレインスポッティング』の続編“T2 Trainspotting”やジェームズ・マンゴールドの“Logan”(「ローガン」)なども招待作品になっております。前者は第1作と同じユアン・マクレガーを含むメンバー4人、後者はヒュー・ジャックマンが主人公です。ベルリン映画祭の開催は2月9日から19日まで。
★第14作目となる“El bar”はどんな映画かと言えば、コメディタッチのスリラー合唱劇のようです。マドリード中心街のバルにどこか曰くありげな人々が思い思いに朝食を摂りにやってくる。なかの一人が急いで出入り口から通りに出た途端、頭に銃弾を一発お見舞いされる。誰も彼を助けることができない、皆んなバルに捕らえられてしまっていたからだ。脚本は監督とホルヘ・ゲリカエチェバリア、製作者は今回出演しなかった監督夫人でもある女優のカロリーヌ・バンクとキコ・マルティネス、出演者はマリオ・カサス、ブランカ・スアレス、セクン・デ・ラ・ロサ、ハイメ・オルドーニェス、カルメン・マチ、テレレ・パベスなど、もう日本でもお馴染みになっているデ・ラ・イグレシア映画の常連さんが名を連ねております。スペイン公開3月24日が決定しています。今秋開催の「ラテンビート」を期待しましょう。
(マリオ・カサスとブランカ・スアレス)
★下記の写真は、オリオル・パウロの新作サスペンス“Contratiempo”封切り日に応援に駆けつけたアレックス・デ・ラ・イグレシア。オリオル・パウロ監督は、『ロスト・ボディ』(12)の監督、本作には“El bar”の主人公マリオ・カサスも出演している他、アナ・ワヘネル(『ビューティフル』)、ホセ・コロナド(『悪人に平穏なし』)、バルバラ・レニー(『マジカル・ガール』)などが共演している。こちらは公開されるかもしれない。
(“Contratiempo”のポスターを背にしたデ・ラ・イグレシア監督、1月6日)
(マリオ・カサスとアナ・ワヘネル、“Contratiempo”のポスター)
セバスティアン・レリオの新作”Una mujer fantástica”*ベルリン映画祭2017 ― 2017年01月26日 21:43
『グロリアの青春』から新作“Una mujer fantástica”へ
★躍進目覚ましいチリ映画、スペイン語映画ではセバスティアン・レリオの長編5作目“Una mujer fantástica”が唯一オフィシャル・セクションに選ばれました。2013年の『グロリアの青春』ではヒロインのパウリナ・ガルシアが生きのいい熟女を好演、銀熊女優賞を受賞して脚光を浴びたのでした。そんなことが幸いしたのか「ラテンビート2013」でプレミア上映されたあと公開もされました。「女性は謎だらけ、でも僕は彼女たちを愛している」と語るレリオ監督、「グロリア」のあと、次回作が待たれておりましたが、やっとベルリンに登場しました。
*『グロリアの青春』の作品・監督紹介は、コチラ⇒2013年9月12日
(監督とパウリナ・ガルシア、サンセバスチャン映画祭2013にて)
★本作はトランスジェンダーのマリーナ・ビダルが主人公、舞台は現代のサンティアゴ、自身もトランスジェンダーの新人ダニエラ・ベガが演じる。世間の白い目に晒されながらウエイトレスとナイトクラブのシンガーとして掛け持ちで働いている。20歳も年上のパートナーのオルランドが彼女の腕の中で突然死したことで人生の悲喜劇が転がりだす。脇を固めるのがルイス・ニェッコ(オルランドの兄弟、パブロ・ラライン「ネルーダ」主演)、アリネ・クッペンハイム(オルランドの元妻役、アンドレス・ウッド『マチュカ』)、アンパロ・ノゲラ(刑事役、「ネルーダ」)、フランシスコ・レイェス(オルランド役、TVドラ”Vuelve Temprano”)などのベテラン勢です。
チリ=独=米=西合作、製作はFabula / Komplizen Film、100分、撮影地サンティアゴ。Fabulaはラライン兄弟が設立した制作会社、Komplizen Filmはドイツの製作会社。
(ヒロインのダニエラ・ベガ、映画から)
★セバスティアン・レリオ、1974年アルゼンチンのメンドサ市生れ、2歳のときチリ人の母親とチリに移住した。チリの監督、脚本家、製作者、編集者。上記のスタッフとキャスト陣からも分かるように、チリの若手シネアストのグループ「クール世代」に属します。「グロリア」に劣らず数々の受賞歴を誇る長編デビュー作『聖家族』(「La sagrada familia」05)がラテンビートで上映された。クリスマスイブに集まった3人のティーンエイジャーの物語「Navidad」(09)、ロカルノ映画祭2011の審査員賞の一つである「Environment is Quality of Life」を受賞した「El año del tigre」、そして『グロリアの青春』(13)と続く。
★アンドレス・ウッドの出世作『マチュカ』(04)やラテンビート2009で好評だった群像劇『サンティアゴの光』(「La buena vida」08)で忘れられない演技を見せたアリネ・クッペンハイムが出演しているのも楽しみの一つです。何かの受賞に絡めば映画祭上映も期待できます。
第4回フェロス賞2017*結果発表 ― 2017年01月29日 10:04
フォルケ賞に続いてラウル・アレバロが大賞3個をゲット!
★フォルケ賞に続いて日本時間24日に結果が発表になっておりましたが、管理人PCの不具合でかなり遅れてしまいました。ラウル・アレバロの「Tarde para la ira」が作品賞・監督賞・脚本賞と大賞3個を手にしたのは、少ないカテゴリーのなかで快挙と言ってもいいでしょう。選考母体がジャーナリストとフォルケ賞とは性格の異なるグループが審査員でしたが、結局似たような結果になりました。こうなるとアカデミー会員約2000人の投票で決まるゴヤ賞ラリーも面白くなってきました。
(自らも主演男優賞にノミネートされていた総合司会者のアントニオ・デ・ラ・トーレ)
*主なフェロス賞ノミネーションと結果*
作品賞(ドラマ部門)
「El hombre de las mil caras」『スモーク・アンド・ミラーズ』 監督アルベルト・ロドリゲス
(ノミネーション10個)
「Julieta」『ジュリエッタ』 監督ペドロ・アルモドバル(同9個)
「Que Dios nos perdone」 監督ロドリゴ・ソロゴイェン(同7個)
◎「Tarde para la ira」 監督ラウル・アレバロ(同8個)
「Un monstruo viene a verme」 監督フアン・アントニオ・バヨナ(同7個)
(3賞を手にして次回作が厳しくなったラウル・アレバロ)
作品賞(コメディ部門)
◎「Kiki, el amor se hace」 『KIKI~愛のトライ&エラー』 監督パコ・レオン
「María (y los demás)」監督ネリー・レゲラ
「La noche que mi madre mató a mi padre」 監督イネス・パリス
「La puerta abierta」 監督マリナ・セレセスキー
「El rey tuerto」 監督マルク・クレウエトCrehuet
(右手を挙げているのがパコ・レオン監督、他スタッフとキャスト一同)
監督賞
ペドロ・アルモドバル『ジュリエッタ』
◎ラウル・アレバロ 「Tarde para la ira」
フアン・アントニオ・バヨナ「Un monstruo viene a verme」
アルベルト・ロドリゲス 『スモーク・アンド・ミラーズ』
ロドリゴ・ソロゴイェン「Que Dios nos perdone」
主演女優賞
アナ・カスティージョ「El olivo」『The Olive Tree』
◎バルバラ・レニー 「María (y los demás)」
カルメン・マチ「La puerta abierta」
エンマ・スアレス『ジュリエッタ』
アドリアナ・ウガルテ『ジュリエッタ』
主演男優賞
◎ロベルト・アラモ「Que Dios nos perdone」
エドゥアルド・フェルナンデス 『スモーク・アンド・ミラーズ』
アライン・エルナンデス 「El rey tuerto」
ルイス・マクドゥーガル 「Un monstruo viene a verme」
アレックス・モネール 「La propera pell」
アントニオ・デ・ラ・トーレ「Tarde para la ira」
助演女優賞
◎ルス・ディアス 「Tarde para la ira」
マルタ・エトゥラ 『スモーク・アンド・ミラーズ』
ロッシ・デ・パルマ『ジュリエッタ』
テレレ・パベス 「La puerta abierta」
カンデラ・ペーニャ 『KIKI~愛のトライ&エラー』
助演男優賞
カルロス・サントス 『スモーク・アンド・ミラーズ』
ルイス・カジェホ 「Tarde para la ira」
ホセ・コロナド 『スモーク・アンド・ミラーズ』
ハビエル・ペレイラ「Que Dios nos perdone」
◎マノロ・ソロ 「Tarde para la ira」
脚本賞
アルベルト・ロドリゲス、ラファエル・コボス 『スモーク・アンド・ミラーズ』
ペドロ・アルモドバル 『ジュリエッタ』
パトリック・ネス 「Un monstruo viene a verme」
イサベル・ペニャ、ロドリゴ・ソロゴジェン 「Que Dios nos perdone」
◎ダビ・プリド、ラウル・アレバロ 「Tarde para la ira」
オリジナル音楽賞
シルビア・ペレス・クルス 「Cerca de tu casa」
フリオ・デ・ラ・ロサ 『スモーク・アンド・ミラーズ』
アルベルト・イグレシアス 『ジュリエッタ』
フェルナンド・ベラスケス 「Un monstruo viene a verme」
オリビエル・アルソン「Que Dios nos perdone」
◎予告編賞
「El hombre de las mil caras」『スモーク・アンド・ミラーズ』
「Julieta」 『ジュリエッタ』
◎ 「Kiki, el amor se hace」 『KIKI~愛のトライ&エラー』
「Un monstruo viene a verme」
「Que Dios nos perdone」
ポスター賞
◎「El hombre de las mil caras」 『スモーク・アンド・ミラーズ』
「Julieta」 『ジュリエッタ』
「Kiki, el amor se hace」 『KIKI~愛のトライ&エラー』
「Monstruo viene a verme」
「Tarde para la ira」
ドキュメンタリー賞 ”Dead Slow Ahead” 監督:マウロ・エルセ
特別フェロス賞 ”La muerte de Luis XIV” 監督:アルベルト・セラ
★栄誉賞受賞のナルシソ・イバニェス・セラドールは車椅子で登場、プレゼンターのアレックス・デ・ラ・イグレシアが「私がもっとも影響を受けた監督の一人」とお祝いの言葉を述べました。今宵のガラで一番盛大な拍手を受けたのがこのときだったようです。また観客や批評家の興味を大いに掻き立てた ”La muerte de Luis XIV”で特別フェロス賞を受賞したアルベルト・セラは「(スペイン以外の)ほかの国々では、私の映画は本日ここにお集まりの方々よりも多い観客に見てもらえました」と若さにまかせて強力パンチをお見舞いした。そうですね、本作はカンヌ映画祭2016でワールド・プレミアした話題作でしたが、ノミネーションされませんでした。
(ナルシソ・イバニェス・セラドールとアレックス・デ・ラ・イグレシア)
★TVシリーズの6カテゴリーは当ブログでは割愛しましたが、コメディ部門では、ハビエル・アンブロシィの ”Paquita Salas” が受賞しました。太っちょで赤毛のぶおとこパキータ・サラスを演じたBrays Efeが主演男優賞、ベレン・クエスタが助演女優賞と、こちらも3個受賞しました。下の写真はトロフィーを手に喜びの3人と共演者のハビエル・カルボ。
(左から、アンブロシィ監督、ベレン・クエスタ、Brays Efe、ハビエル・カルボ)
(パキータに扮したBrays Efeとベレン・クエスタ)
★結局、最多ノミネーション10個の『スモーク・アンド・ミラーズ』 はポスター賞1個に止まり、半ば予想されていたことですが、ノミネーション9個の『ジュリエッタ』は無冠に終わりました。残るは2月4日開催のゴヤ賞だけになりました。
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