『彷徨える河』 チロ・ゲーラ*コロンビア映画2016年12月01日 14:53

          文明と野蛮はラテンアメリカ文化の古典的テーマ

 

★昨年、公開あるいは映画祭上映を期待してアップしたチロ・ゲーラEl abrazo de la serpiente『彷徨える河』の邦題で公開された。カンヌ映画祭のパラレル・セクションである「監督週間」に正式出品した折に、原タイトルで紹介しております。カンヌ以降、世界の映画祭を駆け巡り、2016年の88回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされるというフィーバーぶり、それで公開されることになったのならアカデミー賞ノミネーションも悪くない。本作は昨年11月、第7回京都ヒストリカ国際映画祭において『大河の抱擁』の邦題で上映されました。まだ公開中ですが、新データを補足して改めて再構成いたします。

作品・監督フィルモグラフィー紹介記事は、コチラ⇒2015524

88回アカデミー賞外国語映画賞ノミネートの記事は、コチラ⇒2016117

 

              

            (二人のカラマカテを配した英語版ポスター

 

『彷徨える河』(原題“El abrazo de la serpiente”)

製作:Buffalo Producciones / Caracol Televisión / Ciudad Lunar Producciones 他 

監督・脚本:チロ・ゲーラ(カタログ表記シーロ)

脚本(共同):ジャック・トゥールモンド・ビダル

撮影:ダビ・ガジェゴ

音楽:ナスクイ・リナレス

編集:エチエンヌ・ブサック、クリスティナ・ガジェゴ

製作者:クリスティナ・ガジェゴ

 

データ:コロンビア≂ベネズエラ≂アルゼンチン、スペイン語ほか、2015年、アドベンチャー・ミステリー、モノクロ、125分、言語はスペイン語・ドイツ語・英語・ポルトガル語のほかコロンビア、ペルー、ブラジルにおいて話されているクベオ語以下現地語マクナ語、ウイトト語など多数。撮影地はコロンビア南東部のバウペスVaupésの密林ほか多数、撮影期間約50日間。

映画賞・映画祭:カンヌ映画祭「監督週間」アートシネマ賞受賞、第88回アカデミー賞外国語映画賞ノミネート、以下オデッサ、ミュンヘン、リマ、マル・デル・プラタ、インドほか各映画祭で受賞、他にフェニックス賞、アリエル賞(イベロアメリカ部門)、イベロアメリカ・プラチナ賞など映画賞を受賞。2016年にはサンダンス(アルフレッド・P・スローン賞)、ロッテルダム(観客賞)などを受賞している。

 

             (第2回イベロアメリカ・フェニックス賞のトロフィーを手にしたゲーラ監督)

 

キャストニルビオ・トーレス(青年カラマカテ)、アントニオ・ボリバル・サルバドル(老年期のカラマカテ)、ヤン・バイヴート(テオ、テオドール・コッホ=グリュンベルク)、ブリオン・デイビス(エヴァン、リチャード・エヴァンズ・シュルテス)、ヤウエンク・ミゲ(マンドゥカ)、ミゲル・ディオニシオ、ニコラス・カンシノ(救世主・アニゼット)、ルイジ・スシアマンナ(ガスパー)、ほか

 

プロットアマゾン川流液に暮らすシャーマンのカラマカテと、聖なる薬草を求めて40年の時を隔てて訪れてきた二人の白人探検家との遭遇を通して、友好、誠実、信仰、世界観の食い違い、背信などが語られる叙事詩。白人の侵略者によって人間不信に陥ったカラマカテは、自分自身の文明からも離れて一人ジャングルの奥深くに隠棲していた。そんな折、死に瀕したドイツ人民族学者が連れて来られる。一度は治療を断るが、病を治せる幻覚を誘発する聖なる樹木「ヤクルナ」を求めて大河を遡上する決心をする。40年後アメリカ人植物学者がヤクルナを求めて再びカラマカテを訪れてくる。自然と調和して無の存在「チュジャチャキ」になろうとしていた彼の人生は一変する。過去と現在を交錯させ、悠久の大河アマゾンの恵みと畏怖、文明と野蛮、聖と俗、シンクレティズム、異文化ショック、重要なのがラテンアメリカ文化に特徴的な<移動>あるいは〈移行〉が語られることである。

          

                    (瀕死のテオに一時的な治療を施す青年カラマカテ

 

          先住民の視点で描かれた母なる大河アマゾンへの畏怖

 

A: 期待を裏切らない力作、少しばかり人生観というか多様な物差しの必要に迫られました。過去にもアマゾンを舞台にした映画は作られましたが、大体が欧米人の視点で描かれていた。例えばクラウス・キンスキーがアギーレを演じたヴェルナー・ヘルツォークの『アギーレ/神の怒り』(1972,西独)、10年後の『フィツカラルド』、カルロス・サウラの『エル・ドラド』(1988,西仏伊)、こちらはエリセの『エル・スール』で父親を演じたオメロ・アントヌッティがアギーレに扮した。

B: それぞれ力作ですが視点は当然白人側でした。主人公は本作に出てくる二人の探検家同様、アマゾンに魅せられた狂気の人物、この大河は人間を異次元に誘い込む媚薬のようです。

 

A: 主役は、時を隔ててアマゾンを訪れた二人の科学者にして探検家ではない。老年に達したカラマカテのようにも見えますが、生命を宿す母なる大河アマゾンという見方もできます。アマゾンなしでこの映画は成り立たない。

B: 二人の探検家の残した書物や資料が監督にインスピレーションを与えたとしても、それはキッカケでしかない。テオとして登場する最初に訪れたドイツ人テオドール・コッホ=グリュンベルクの視点は先住民に敬意をはらっているが、1940年代初めにアマゾンを訪れたエヴァン、アメリカ人植物学者のリチャード・エヴァンズ・シュルテスは、長生きして数々の功績を残した人物ですが、アマゾン探訪の動機は資本主義的であり、映画でもかなり辛辣に描かれている。

 

A: 本作がフィクションであることを押さえておくことが重要です。2011年から4年をかけて完成させた作品だそうですが、老年のカラマカテを演じたアントニオ・ボリバルの哲学が脚本に強い影響を与えていて、彼との出逢いが成功の決め手だった印象を受けました。ここで監督の名前の表記について触れておくと、カタログはシーロ・ゲーラで表記されていますが、今まで当ブログでは前例に従ってチロ・ゲーラで紹介してきました。

B: シロ・ゲラもあり、どれにするか迷いますね、配給元が今回監督に確認した結果ならシーロ・ゲーラに統一したほうがベターかもしれない。

A: Ciroはペルシャ帝国アケメネス朝の王キュロスから取られた名前、スペイン語ならスィロまたはシーロ、チロはイタリア語読みでしょうか。目下のところは当ブログでは前例に従っておきます。

 

B: そのほか聖なる樹「ヤクルナyakruna」は、実際には存在しない植物のようですね。

A: 映画では白っぽい花を咲かせていましたが、モノクロですし想像上の樹木ですから謎めかしていました。実際にはヤクルナに似た幻覚を誘発する樹木、例えばチャクルナからの連想かもしれない。とにかく本編を通じてヤクルナの美しさは忘れがたいシーンの一つでした。

B: モノクロ映画なのに、何故かカラーだったような印象があります。アマゾン流域の熱帯雨林の緑が目に焼きついて拭えないとか(笑)。

 

    

           (青年カラマカテと聖なる樹木ヤクルナの白い花)

 

A: チュジャチャキchullachaqui」という語は、一種の分身ドッペルゲンガーらしく、語源はケチュア語、感情や記憶をなくした空っぽの無の存在になることのようです。老年に達したカラマカテがアメリカ人植物学者にして探検家のエヴァンに会ったときの状態がチュジャチャキだった。

B: 記憶をなくしていたカラマカテが最後に到達した神々の住む山地を目前にして佇むシーン、これも圧巻でした。

A: カラマカテは最後の「大蛇の抱擁」の儀式をおこなって忽然と消えてしまう。そして一人残されたエヴァンは〈大蛇に抱かれて〉異次元に迷い込むが、目覚めると再び現世に戻ってくる。この大蛇はアマゾンに棲息するというオオアナコンダでしょうか。冒頭の大蛇の出産シーンにもドキリとさせられましたが、本作では大蛇が鍵になっている。題名は自由につけていいのですが、『彷徨える河』では若干違和感があります。

 

    

       (神々の住む山地を目前に呆然と佇む老いたるカラマカテとエヴァン

 

悠久の大河アマゾンに潜む光と闇、侵略者が破壊した先住民文化

 

B: 部分的に挿入されるカプチン派修道士が孤児たちを教育の名のもとに収容する施設での狂気、自称救世主のブラジル人が村を支配する信じがたい事例など、ヨーロッパ人が先住民文化を破壊していくさまを描いている。

A: これは実際に起こった歴史的事実ですし、特別珍しい視点とは思いませんが、まさに文明と野蛮、何が文明で何が野蛮なのかという古典的テーマを、監督としては外すことができなかったのしょうね。

B: コロンビア人でも知らない「コロンビアの現実を知ってもらいたい」という監督の気持ちも理解できますが、やや詰め込みすぎの感無きにしも非ずかな。

 

      

            (救世主の妻の病気を治療する老カラマカテ)

 

A: シンクレティズムの代表者として登場するのが瀕死の状態のドイツ人テオを連れてカラマカテを訪れるスペイン語のできるマンドゥカです。カラマカテのように白人を拒絶して隠棲して生きるか、マンドゥカのように西洋文明を受け入れ融合して生きるか、どちらかの選択を迫られる。

B: マンドゥカはさしずめガイド役、彼の部族もゴム栽培が目的の侵略者に土地を奪われながらも、生き残りをかけて融合の道を選んだ。

A: 大航海時代以降のラテンアメリカ諸国の受難は、概ね金太郎の飴です。欧米人はあたかも新大陸には文明がなかったかのように錯覚していましたから。

B: 豊かな叡智、キリスト教ではないが独自の宗教、神話、文字を持たなくても文明を持たない民族は存在しないということです。これに類した錯覚は大なり小なり現在も続いている。

 

     

                 (マンドゥカとテオ)

 

A: 過去をフラッシュバックさせながら行きつ戻りつしながら大河を遡上していきますが、いわゆるロード・ムービーという印象を受けなかった。

B: カラマカテは前進するのではなく、失った過去の記憶を取り戻そうとしている。未来ではなく過去へ過去へと遡っていく。

A: 彼の望みは大蛇に抱かれてあの世に旅立つこと、ここにあるのは前進ではなく単なる<移動>または〈移行〉であるように見える。この世とあの世は輪になっているから移動するだけである。

 

B: 本作の撮影隊は、プロデューサーのクリスティナ・ガジェゴによると、8000キロも移動したそうですが、よく7週間で撮れましたね。

A: 日本の国土の全長は約3000キロと言われますから、飛行機で飛んだ距離を含めても信じがたい距離です(笑)。クリスティナさんは監督夫人、デビュー作以来二人三脚で映画にのめり込んでいます。

B: 二人の間には二人の男の子がおり、そのタフさには驚きます。

 

   

  (クリスティナ、監督、ドン・アントニオ、ブリオン・デイビス、アカデミー賞ガラにて)

 

A: コロンビアの国土はブラジルに次いで2番めに広い。しかし半分は熱帯雨林、人々はボゴタなど都市部に集中している。なかでも6段階にきっちり決められた階層社会、富裕層に属する6番目は2パーセントにすぎない。

B: 500万を超える国内難民も国境沿いを移動しており、前より良くなったとはいえ治安も悪く、国内での階層間、人種間の対立は解消されていない。

A: 先住民は50万人とも80万人とも資料によって開きがあるが、言語は現在でも65以上にのぼるというが、年々消滅していくでしょう。青年カラマカテを演じたニルビオ・トーレスも部族のクベオ語しかできなかったそうですが、出演をきっかけにスペイン語を学んだ。老カラマカテ役のドン・アントニオは英語ができ現地語の分からないスタッフとの通訳をした由、急速に変化していくのではないか。

 

B: 横道にそれますが、半世紀にわたる左翼ゲリラとの平和合意に達した功績で、現大統領サントス氏の「ノーベル平和賞受賞」のニュースが世界を駆け巡りました。しかし前途多難に変わりはない。

A: ゲリラ側に譲歩しすぎと考える国民は半分を超えています。これが国民投票の結果に現れている。反対の中心は元大統領のウリベ氏、彼は父親をゲリラに殺害されている。個人的恨みで異議を唱えているわけではないが国民の傷口は相当深い。

 

B: 催眠術にかかってしまった2時間でしたが、鑑賞をお薦めできる作品でした。音楽、撮影については、もう観ていただくのが一番です。

A: 前回アップした監督キャリア紹介、実在した二人の学者のアウトラインを若干補足して再録しておきます。ご参考にして下さい。

 

 

チロ・ゲーラCiro Guerraは、1981年セサル州リオ・デ・オロ生れ、監督・脚本家。コロンビア国立大学の映画テレビを専攻する。1998年、同窓生のクリスティナ・ガジェゴ1978年ボゴタ生れ)と制作会社「Ciudad Lunar Producciones」を設立する。長編デビュー作La sombra del caminante2004)は、トゥールーズ・ラテンアメリカ映画祭2005で観客賞を受賞。第2Los viajes del viento2009)はカンヌ映画祭「ある視点」に正式出品、ローマ市賞を受賞後、多くの国際映画祭で上映された。ボゴタ映画祭2009監督賞、カルタヘナ映画祭2010作品賞・監督賞及びサンセバスチャン映画祭2010スペイン語映画賞、サンタバルバラ映画祭「新しいビジョン」賞などを受賞した。

 

★本作が第3作目になり、いずれもアカデミー賞コロンビア代表作品に選出されている。上記の映画賞のうち第3イベロアメリカ・プラチナ賞では、作品賞・監督賞以下7部門を制している。現在ピーター・ライニーの著書をベースにしたThe Detainee(政治的抑留者の意)と、北コロンビアのグアヒラ砂漠を舞台にしたBirds of Passage2本が2018年の完成を目指して進行中である。

3イベロアメリカ・プラチナ賞の記事は、コチラ⇒2016731

なお2作目Los viajes del viento『風の旅』の邦題でセルバンテス文化センターにて上映が予定されている(123日)


テオドール・コッホグリュンベルクTheodor Koch-Grünberg18721924)は、ドイツのグリュンベルク生れ、20世紀の初め南米熱帯低地を踏査した民族学者。テオのモデルとなった。第1回目(190305)がアマゾン河流域北西部のベネズエラと国境を接するジャプラYapuraとネグロ川上流域の探検をおこない、地理、先住民の言語などを収集、報告書としてまとめた。第2回目は(191113)ブラジルとベネズエラの国境近くブランコ川、オリノコ川上流域、ベネズエラのロライマ山まで踏査し、先住民の言語、宗教、神話や伝説を詳細に調査し写真も持ち帰った。ドイツに帰国して「ロライマからオリノコへ」を1917年に上梓した。1924年、アメリカのハミルトン・ライス他と研究調査団を組みブラジルのブランコ川中流域を踏査中マラリアに罹り死去。 

      

リチャード・エヴァンズ・シュルテスRichard Evans Schultes19152001)は、マサチューセッツ州ボストン生れ、ハーバード大学卒の米国の生物学、民族植物学の創始者。エヴァンのモデルとなった。大学卒業後、戦時中の1941年にゴムノキ標本採集をアメリカ政府から要請され、初めてアマゾン河高地を踏査している。長い滞在で映画にも出てきたマクナ語、ウイトト語などの現地語を理解した。幻覚性植物の研究者としても知られ、著書『図説快楽植物大全』が2007年に東洋書林から刊行されている。

  

第3回イベロアメリカ・フェニックス賞ノミネーション発表2016年12月04日 17:36

      Nerudaネルーダ」と『エル・クラン』が同数の9個ノミネーション

 

   

               (2016年のポスター)

 

2014年晩秋、イベロアメリカの「オスカー賞」という触れ込みで始まった映画賞「Los Premios Fénix」も今年で3回めを迎えました。イベロアメリカですからスペイン、ポルトガルも入りますが、どちらかと言うとラテンアメリカ諸国にシフトしています。第2回めの作品賞はパブロ・ララインの『ザ・クラブ』、他に監督賞・脚本賞・男優賞(アルフレッド・カストロ)と大賞を独占、『彷徨える河』のチロ・ゲーラが監督賞をララインと分け合い、その他ダビ・ガジェゴ(撮影賞)・カルロス・ガルシア他(録音賞)・ナスクイ・リナレス(音楽賞)の4賞と、2作品でほぼ決まりでした。 

        

           (イベロアメリカ・フェニックス賞のトロフィー)

 

★スペインはアルベルト・ロドリゲスの『マーシュランド』が美術デザイン賞(ぺぺ・ドミンゲス)の1賞のみ、ハイロ・ブスタマンテの『火の山のマリア』の衣装賞(ソフィア・ランタン)、サンティアゴ・ミトレの『パウリーナ』が女優賞(ドロレス・フォンシ)、パトリシオ・グスマンの『真珠のボタン』がドキュメンタリー撮影賞(カテル・ジアン)、ポルトガル語映画では、エドゥアルド・コウチーニョ19332014)の遺作となったUltimas Conversas(ブラジル)がドキュメンタリー賞をとりました。製作途中の20142月に精神を病んでいた息子に刺殺されるという痛ましい事件の犠牲者となりました。というわけで最終的に作品を完成させたのはジョアン・モレイラ・サレス、授賞には長年の彼の功績を讃える意味もあったのではないでしょうか。

 

   

        (左側中段のコウチーニョ監督とインタビューを受けた学生)

 

★さて、2016年は間もなく結果が発表になりますので(127日)、ノミネーションは作品賞と監督賞にして、後は結果が出ましたらアップいたします。

 

作品賞(作品賞のみ7作品)

『エル・クラン』アルゼンチン他、監督パブロ・トラペロ(9個ノミネート)

『彼方から』ベネズエラ他、同ロレンソ・ビガス(4個ノミネート)

Nerudaネルーダ」チリ他、同パブロ・ラライン(9個ノミネート)

Aquariusアクエリアス」ブラジル他、クレベル・メンドンサ・フィリオ(4個ノミネート)

Boi Neon」ブラジル他、ガブリエル・マスカロ(8個ノミネート)

La muerte de Luis XIVルイ14世の死」スペイン他、アルベルト・セラ(4個ノミネート)

Te prometo anarquia」メキシコ他、同フリオ・エルナンデス・コルドン(1個ノミネート)

 

監督賞

パブロ・トラペロ『エル・クラン』

パブロ・ラライン「Nerudaネルーダ」

ガブリエル・マスカロ「Boi Neon

クレベル・メンドンサ・フィリオ「Aquariusアクエリアス」

アルベルト・セラ「La muerte de Luis XIVルイ14世の死」

 

★「Boi Neon」の8個、「Aquariusアクエリアス」の4個とブラジルの健闘が目につく2016年です。黒い不死鳥の卵は誰の手に渡るのでしょうか。開催地メキシコ・シティでは「フェニックス週間」(121日~10日)としてノミネーションされた作品、または過去の受賞作品の上映会のほか、「Boi Neon」(脚本・編集)や『エル・クラン』(編集)、『モンスター・ウィズ・オブ・サウザン・ヘッズ』(脚本)など、各担当者が出席しての討論会も企画されているようです。


哲学者ミゲル・デ・ウナムノの晩年を描いた”La isla del viento”2016年12月11日 16:12

           ミゲル・デ・ウナムノの謎を解く二つのエポック

 

        

 

★日本でミゲル・デ・ウナムノの認知度がどのくらいあるのか全く見当がつきませんが、スペイン人にとっては「98年世代」を指導した思想家、大学人、作家、詩人、戯曲家、スペイン思想界に大きな足跡を残した「知の巨人」として知られています。複雑すぎる人格のせいかドキュメンタリーはさておき、本作が初のフィクション映画ということです。見る価値はあっても、だからと言って彼の矛盾した人格が解明されたわけではないということです。

Generación del 18981898年の米西戦争の敗北によって、スペインの最後の植民地(キューバ、プエルトリコ、フィリピン)を失ったとき、祖国の後進性を痛感し、近代化の遅れを苦悩しながらも未来を模索した知識人たちをさす名称。その代表的な思想家、作家、詩人は、本作の主人公ミゲル・デ・ウナムノ(1864)を中心にして、詩人アントニオ・マチャード(1875)、作家アソリン(1873)やピオ・バローハ(1872)、バリェ=インクラン(1866)など1860年代から70年代前半に生れており、スペイン内戦前夜の激動の時代、それにつづく戦火の生き証人でもあります。

 

     

 

    La isla del viento(「風の島」)

製作:Mgc Marketing / Mediagrama / Motoneta Cine / 16M. Films

監督・脚本:マヌエル・メンチョン

撮影:アルベルト・D・センテノ

編集:アレハンドロ・ラサロ

音楽:サンティアゴ・ペドロンシニ

プロデューサー:パトリック・ベンコモ、ビクトル・クルス、イグナシオ・モンへ、

ラファエル・アルバレス他

データ:スペイン=アルゼンチン、スペイン語・フランス語、2015年、105分、ビオピック、撮影地カナリア諸島フエルテベントゥラ、ワーキングタイトル「フエルテベントゥラのウナムノ」、マル・デ・プラタ映画祭2015114日)、マラガ映画祭2016423日)、スペイン公開19161118

 

キャスト:ホセ・ルイス・ゴメス(ミゲル・デ・ウナムノ)、ビクトル・クラビホ(ドン・ビクトル主任司祭)、イサベル・プリンス(ドーニャ・コンチャ)、アナ・セレンタノ(デルフィナ・モリーナ)、シロ・ミロ(ホセ・カスタニェイラ)、エネコイス・ノダ(ラモン・カスタニェイラ)、ルス・アルマス(成人カーラ)、スアミラ・ヒル(少女カーラ)、ラウラ・ネグリン(カーラの母)、ハビエル・セムプルン(ミリャン・アストレイ)、ファビアン・アルバレス(共和制の議員ロドリゴ・ソリアノ)他

解説1864年スペイン北部ビスカヤ県の県都ビルバオ生れ、1936年内戦勃発の1936年の大晦日に孤独と失意のうちに亡くなったミゲル・デ・ウナムノの晩年を描いた伝記映画。彼の人生の二つのエポックとなった192419361012日に焦点を合わせている。一つ目は独裁者ミゲル・プリモ・デ・リベラを批判したため政治犯としてカナリア諸島フエルテベントゥラに追放された19243月からフランスの新聞社の協力でパリに脱出するまでの4カ月間、二つ目が19367月にフランコの反乱軍による内戦が始まると反乱軍集会で演説したことで、8月に共和国政府からサラマンカ大学終身総長を罷免される。クライマックスは、1012**にサラマンカ大学講堂での反乱軍集会における軍人ミリャン・アストレイとの対決である。後世に残る名言を残したこの集会でウナムノは反乱軍兵士たちに反戦を説いて自宅軟禁になった。架空の登場人物羊飼いの娘カーラ、自作の『殉教者聖マヌエル・ブエノ』の主人公、彼の分身たるドン・ビクトル主任司祭、実在の豪商ラモン・カスタニェイラ、アルゼンチンの作家デルフィナ・モリーナとの宿命的な愛、フランコの友人にして軍人のミリャン・アストレイとの対決など、虚実を織り交ぜて彼の世界観を変えた二つの時代を軸に、知の巨人の複雑な深層に迫る。

**1012日はコロンブスがアメリカに到達した日、以前「アメリカ発見」と言われた日です。当時は「民族の日Dia de la Raza」といわれ、現在ではスペインのナショナルデーとして祝日になっています。 

     

        (友人同士だったフランコ将軍と軍人ミリャン・アストレイ)

 

★本作に関係の深いミゲル・デ・ウナムノMiguel de Unamuno y Jugoの簡単すぎるアウトライン。1864年ビスカヤ県の県都ビルバオ生れ。マドリード大学(現マドリード・コンプルテンセ大額)文学部で文学、哲学・言語学を学んだ。卒業後故郷に戻りラテン語の代用教員、個人教授、著作に専念、1891年サラマンカ大学のギリシャ語教授試験に合格後はサラマンカに居を移した。1900年には若干35歳にしてサラマンカ大学総長に任命された(以後政権によって罷免と再任を繰り返している)。映画に描かれた1924年の追放からフランス亡命を経て帰国するまでの6年間以外終生サラマンカで暮らした。バスク語、仏・独・伊・英語、ギリシャ語、ラテン語、デンマーク語他、カタルーニャ語などを含む17言語を解したと言われているが、母語はスペイン語である。ウナムノの主な著作をあげるのは難しいがざっくり選んでおきます(法政大学出版局より著作集全5巻が刊行されています)。

 

1905年『ドン・キホーテとサンチョの生涯』(哲学)

1913年『生の悲劇的感情』(哲学)

1914年『霧』(小説)

1921年“La tía Tura”(小説、「トゥーラ叔母さん」)

1930年『殉教者聖マヌエル・ブエノ』(小説)

 

★スペイン内戦終結後を描いた映画として一番日本で観られた映画と言えば、ビクトル・エリセの『ミツバチのささやき』(73)にとどめをさすと思います。末期とはいえフランコ時代に撮られた反戦映画の意味も大きい。この中に姉妹の父親の書斎にミゲル・デ・ウナムノの写真と2羽の折り紙の小鳥が登場します。父親がサラマンカ大学でウナムノの教え子であったことを暗示しているわけです。ウナムノは折り紙の名手でLa isla del viento”の中でも羊飼いの少女に小鳥を折ってやるシーンが出てきます。また小説の映画化としては、上記のLa tía Turaが、1963年ミゲル・ピカソによって映画化され、1966『ひとりぼっちの愛情』の邦題で公開された。1984年秋開催の本格的なスペイン映画紹介となった「スペイン映画の史的展望195177」でもエントリーされています。

 

★ミゲル・デ・ウナムノを演じたホセ・ルイス・ゴメスは、1940年ウエルバ生れ、TVドラでデビュー、アルモドバルの『抱擁のかけら』(09)では、若い秘書(ペネロペ・クルス)を金で買った会社社長という情けない役で出演している。しかしオールドファンにはカミロ・ホセ・セラのデビュー作『パスクアル・ドゥアルテの家族』(1942)をリカルド・フランコが映画化した“Pascual Duarte”でしょうか。彼はパスクアルを演じて「カンヌ映画祭1976」の男優賞を受賞しました。 

  

                (サラマンカ大学講堂でスピーチするウナムノ、映画から)

 

    

      (フエルテベントゥラでヒトコブラクダに乗るウナムノ、映画から)

 

     

(ヒトコブラクダに乗っているウナムノ、実写)

 

フエルテベントゥラにドン・ビクトル・サン・マルティンとして登場する主任司祭の人格は、1930年に執筆した小説『殉教者聖マヌエル・ブエノ』の主人公からとられている。ウナムノの「alter ego」分身と思われ、フエルテベントゥラの自然と人々との連帯感のシンボリックな存在のようです。ドン・ビクトルに扮しビクトル・クラビホ1973年カディス生れ、ベルリン映画祭に正式出品されたF・ハビエル・グティエレスのスリラー“Tres días”(08)、ホルヘ・コイラのコメディ『朝食、昼食、そして夕食』(10)、最近ではコルド・セラの「Guernikaゲルニカ」(16)、これはマラガ映画祭2016で作品紹介をしています。

 

   

        (ドン・ビクトリに扮したビクトル・クラビホ、映画から)

 

★同じく前半に登場するデルフィナ・モリーナは実在のアルゼンチンの作家ですが、予告編にあるタンゴを踊るようなシーンはフィクションでしょう。彼女とはフエルテベントゥラと亡命先のパリで2度会っているだけだそうです。モリーナを演じたアナ・セレンタノは、1969年ブエノスアイレス州ラプラタ生れのアルゼンチン女優。エクトル・オリベラの『ミッドナイト・ミッシング』(86)に学生の一人として映画デビュー、マルセロ・ピニェイロのミステリー『木曜日の未亡人』(09DVD)、エクトル・オリベラの“El mural”(10)で銀のコンドル賞助演女優賞を受賞している。 

   

        (デルフィナとウナムノの宿命的な愛をテーマにした著作)

 

★ウナムノと陸軍将官ホセ・ミリャン・アストレイのサラマンカ大学講堂での対決は、音声も残っており、多くの書物に引用されています。1879年ラ・コルーニャ生れ(1954年マドリード没)、スペイン外人部隊の設立者。フランコ将軍の友人で19361012日のウナムノとの対決では、「君たちが勝てても、説得できないだろう」というウナムノに、「死よバンザイ、知性などくたばってしまえ!」、「カタルーニャとバスクは、スペイン国家の二つの癌!」とやり返してウナムノを挑発した人物の一人。彼を演じたハビエル・セムプルンは本作で映画デビューした。

 

  

                 (サラマンカ大学講堂から追い出されるウナムノ、実写)

 

  

 (ウナムノの後方にアストレイがいる同じシーン、映画から)

 

マヌエル・メンチョンManuel Menchonは、監督、脚本家、プロデューサー。本作が長編映画デビュー作、他にドキュメンタリーMalta Radio09)がある。これは20067月、地中海でスペインの漁師によって保護された移民たちの漂流をテーマにしたドキュメンタリー。オビエドやオスロなど海外の映画祭で上映され、エストレマドゥーラ・ドキュメンタリー映画祭で受賞した。マドリード市やカスティーリャ・ラ・マンチャのコミュニティの公共宣伝の仕事、マドリード銀行、レンフェRENFE、イベリア航空とのコラボもしている。

 

 

    (Malta Radioのポスターをバックにしたマヌエル・メンチョン監督)

 

  

         (マヌエル・メンチョン監督と主役のホセ・ルイス・ゴメス)


第3回イベロアメリカ・フェニックス賞*結果発表2016年12月15日 15:58

             こんな作品が受賞しましたが・・・

 

 

★去る127日の夜(現地時間2030)、メキシコシティの「Ciudad Esperanza Iris劇場」で授賞式が開催されました。ガラはアルゼンチンのフィト・パエス、メキシコの「Zoé」のボーカリストで作曲家のレオン・ラレギ、今回栄誉賞受賞のアレハンドロ・ホドロフスキーの4アダノフスキーのような豪華なミュージシャンが出演、かなり賑やかだったようです。カテゴリーは13個(その他として栄誉賞、プロダクションと批評家に与えられるフェニックス賞が追加されている)。Nerudaネルーダ」が最多4賞、メキシコのドキュメンタリー「Tempestad」が3賞を制して閉幕いたしました。ノミネーション発表記事で「ブラジルの健闘が目につく2016年」と書きましたが、予想通りの結果になりました(ブラジルからの出席も多かったようです)。結果は以下の通り:

 

    

              (音楽を担当したフィト・パエス)

 

作品賞(作品賞のみ7作品)

Nerudaネルーダ」チリ、アルゼンチン、スペイン、フランス合作、パブロ・ラライン監督

 製作:Fabula / AZ Films / Funny Balloons / setembre Cine9個ノミネーション、4

『エル・クラン』アルゼンチン他、監督パブロ・トラペロ(9個ノミネーション、2

『彼方から』ベネズエラ他、同ロレンソ・ビガス(4個ノミネーション)

Aquariusアクエリアス」ブラジル他、クレベル・メンドンサ・フィリオ

   (4個ノミネーション、2

Boi Neon」ブラジル他、ガブリエル・マスカロ(8個ノミネーション、2

La muerte de Luis XIVルイ14世の死」スペイン他、アルベルト・セラ(4個ノミネーション)

Te prometo anarquia」メキシコ他、同フリオ・エルナンデス・コルドン(1個ノミネーション)

 

   

   (製作者フアン・デ・ディオス・ラライン監督弟、GG・ベルナル、ルイス・ニェッコ

 

監督賞

クレベル・メンドンサ・フィリオAquariusアクエリアス」

パブロ・トラペロ『エル・クラン』

パブロ・ラライン「Nerudaネルーダ」

ガブリエル・マスカロ「Boi Neon

アルベルト・セラ「La muerte de Luis XIVルイ14世の死」

 

   

脚本賞

ガブリエル・マスカロBoi Neon」(ポルトガル語)

 

   

 

男優賞

ギジェルモ・フランセージャ『エル・クラン』

 

 

       (『エル・クラン』から)

 

女優賞

◎ソニア・ブラガAquariusアクエリアス」

 

   

            (トロフィーを手にしたソニア・ブラガ)

 

撮影賞

ディエゴ・ガルシアBoi Neon

 

録音賞

レアンドロ・デ・ロレド&ビセンテ・デリア『エル・クラン』

 

衣装賞

ムリエル・パラNerudaネルーダ」

 

編集賞

Hervé SchneidNerudaネルーダ」

 

美術賞

◎エステファニア・ララインNerudaネルーダ」

 

長編ドキュメンタリー賞

Tempestad(メキシコ)Pimienta Films / Cactus Films / Terminal 

  監タティアナ・ウエソ 

オリジナル音楽賞

レオ・エイブルムハコボ・リエベルマンTempestad

 

ドキュメンタリー撮影賞

エルネスト・パルドTempestad

 

   

 

栄誉賞 アレハンドロ・ホドロフスキー

 

   

  (父親の代理でトロフィーを受け取ったミュージシャンのアダン・ホドロフスキー)

 

プロダクション・フェニックス賞 パトリシア・リヘン監督のLos 33のプロダクション

 

批評家フェニックス賞 スペインのミゲル・マリアス

 

★どの映画賞にも言えることですが、結果に対する不満不平はつきものです。特に「イベロアメリカ」と称しながら、新大陸メキシコ開催ということで旧大陸スペインとポルトガルの影が薄い印象は否めません。今年はゼロだったこともあり、この映画の集いに各地から馳せつけた700人近い出席者の中には、この結果では「誰をも満足させられない」という愚痴がつぶやかれたようです。もともとメキシコのモレリア映画祭2013に集ったシネアストたちのお喋りから始まった映画賞。ラテンアメリカ諸国、スペイン、ポルトガルの合計23カ国を網羅して「Cinema 23」を起ち上げた。ディレクターは設立者の一人リカルド・ヒラルド。全地域から集められた映画に携わるプロフェッショナル約550人が選考に当たった。

 

   

        (今年のノミネーション作品を紹介するリカルド・ヒラルド)

 

フェニックス賞受賞は配給元にインパクトを与えられるか?

 

★イベロアメリカ諸国のアーチストの才能発掘、23カ国全地域の庶民がイベロアメリカ諸国製作の映画を観られる環境を作ること、という大きな2本の柱を掲げて始まった映画賞だが、当初から雑音入りだった。例えば13個のカテゴリー、撮影賞がフィクションとドキュメンタリーの両方にありながら特殊効果アニメーション短編が除外され、才能発掘を目指しながら新人枠の監督、俳優、助演者などのカテゴリーを設けなかったことなどが挙げられる。

 

★一口にイベロアメリカといっても公開時期がまちまちだから(未公開も多い)、ノミネートされていても観ていないケースが出てくる。というわけで、「本当にちゃんと観ていて選んだのですか?」という不満がくすぶることになる。これは映画賞全般に言えることでフェニックスに限りません。しかし「シネマ23」の権力が幅を利かすようでは困るということが背景にあるのかもしれません。会場ではアメリカ次期大統領ドナルド・トランプが、ラテンアメリカ諸国に対してどのような政策を打ち出してくるか、その危険性を警戒する声も聞かれたという。映画産業も政治と無縁では成り立たないですから、当然でしょう。

 

★賞には全く絡みませんでしたが、スペインからはセスク・ゲイの「トルーマン」(リカルド・ダリンの男優賞)、ホセ・ルイス・ゲリンの『ミューズ・アカデミー』(編集・脚本)、アルベルト・セラの「ルイ14世の死」(作品・監督・美術・衣装)がノミネートされたことが話題になったようです。3監督とも世界的な評価の高さに比してスペインでは傍流に属しているからでしょうか。フェニックス賞が配給元にインパクトを与えられるかどうかが今後の課題です。

 

★昨年の作品賞を受賞したチロ・ゲーラの『彷徨える河』はアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされ、それなりの成果を出しました。今年のガラで特に脚光を浴びたのがGG・ガエルと「ネルーダ」関係者だったようですが、果たして期待通りに行くでしょうか。アメリカ映画アカデミーも今までノミネートしたことのない国から選ぶ傾向にあるようで、チリは既に第85回アカデミー賞2012にララインのNoがノミネートされています。


第4回フェロス賞2017のノミネーション発表2016年12月18日 17:35

        総合司会者にアントニオ・デ・ラ・トーレ、授賞式は123

 

              

                (第4回フェロス賞ポスター)

 

★フェルナンド・トゥルエバの“La Reina de Espanña”のゼロ個が、アルベルト・ロドリゲスの『スモーク・アンド・ミラーズ』(ラテンビート2016上映)の10個以上に話題になっています。ゼロ個ということはヒロインのペネロペ・クルスもノミネートされなかったということで、何があったかを探ると、かなり複雑な現実が見えてきそうです(これは別の話なのでここでは触れません)。ゴヤ賞2017のノミネーションも発表になり、付き合わせると90パーセントは重なるようです。こちらにはさすがにPPも主演女優賞に名前が載っておりました。総合司会者にアントニオ・デ・ラ・トーレ、アルゼンチン出身の女優マレナ・アルテリオAICE会長パドロ・バリン3人が進行役です。マレナ・アルテリオはエクトル・アルテリオの娘、“Una palabra tuya”(08)で共演したルイス・ベルメホ(『マジカル・ガール』『KIKI』)と結婚、国籍はスペイン。

 

            

            (総合司会者アントニオ・デ・ラ・トーレ)

 

正式名は「Premios Feroz AICE(スペイン映画記者協会)が米国のゴールデン・グローブ賞と同じ位置づけで201311月に設立した映画賞。当初カテゴリーは栄誉賞と特別賞を除く11部門でしたが、増加する傾向にあります。ノミネーション発表は11月下旬から12月初旬、授賞式は翌年1月下旬、映画記者協会のメンバー約170人が選定する。前年度の各映画祭での受賞作、劇場公開された作品(全国展開でなくても大都市公開なら対象とし、オンライン配信も含まれる)、さらに国際映画祭受賞作品ながら配給元が見つからないケースも対象になる。

 

 ★基本カテゴリーは、作品賞(ドラマ)/作品賞(コメディ)/監督賞脚本賞主演男優賞主演女優賞助演男優賞助演女優賞オリジナル音楽賞レーラー賞(ゴヤ賞にはない)/映画ポスター賞(ゴヤ賞にはない)の11部門、今年から助演男優賞助演女優賞ドキュメンタリー賞が入り、更にTVドラシリーズの作品賞(ドラマ&コメディ)/男優賞女優賞助演男優賞助演女優賞6賞も追加されることになりました。規模が拡大する傾向にあり、内容が似通った映画賞ばかり増えても映画産業の発展や集客率にはつながらないと危惧します。

 

★今回2017年のの栄誉賞は、チチョ・イバニェス・セラドールChicho Narciso Ibáñez Serradorがアナウンスされました。駆け足で紹介すると、映画界とテレビ界の結合、発展に寄与した人物、1935年モンテビデオ生れの81歳、舞台監督、俳優、脚本家、監督、製作者、国籍はウルグアイとスペイン。舞台監督、俳優だったナルシソ・イバニェスの一人息子。1960年“Obras maestras del terror”の脚本で映画界デビュー、同年“Todo el año es Navidad”に俳優出演、監督作品としてはホラー映画La residencia69)と¿Quién puede matar a un niño?76)が代表作。TVドラシリーズでは、Historias para no dormirHistoria de la frivolidadUn, dos, tres….responda otra vezなど1960年代後半から80年代にかけてヒット作を多数お茶の間に送り届けています。2001年舞台監督に復帰、“Aprobado en castidad”を演出、2002年“El aguila y la niebla”でロペ・デ・ベガ賞を受賞、2004年新バージョンUn , dos, tres…a leer esta vez”、2005年、アレックス・デ・ラ・イグレシア、ジャウマ・バラゲロ、マテオ・ヒル、エンリケ・ウルビスのような若手監督を起用して“Películas para no dormir”をテレシンコで企画・監修して成功させた。このTVシリーズは日本でも「スパニッシュ・ホラー・プロジェクト」としてテレビ放映され、ホラー好きに歓迎されました。2010年、文化・教育・スポーツ省が授与する最高賞「国民賞(テレビジョン部門)」を受賞しています。

 

             

             (ナルシソ・イバニェス・セラドール)

 

★今回TVドラ部門のカテゴリーが追加されたのと無関係ではないでしょう。栄誉賞と特別賞は、主にAICEの執行部が中心になって決めるようです。因みに過去の受賞者は、カルロス・サウラ、昨年はロサ・マリア・サルダでした。

 

主なフェロス賞ノミネーション

作品賞(ドラマ部門)

El hombre de las mil caras『スモーク・アンド・ミラーズ』 監督アルベルト・ロドリゲス(10個)
Julieta『ジュリエッタ』 監督ペドロ・アルモドバル(9個)
Que Dios nos perdone 監督ロドリゴ・ソロゴイェン(7個)
Tarde para la ira 監督ラウル・アレバロ(8個)
Un monstruo viene a verme 監督フアン・アントニオ・バヨナ(7個)

作品賞(コメディ部門)

Kiki, el amor se hace 『KIKI~愛のトライエラー 監督パコ・レオン
María (y los demás)」監督ネリー・レゲラ

La noche que mi madre mató a mi padre 監督イネス・パリス
La puerta abierta 監督マリナ・セレセスキー
El rey tuerto 監督マルク・クレウエトCrehuet

監督賞

ペドロ・アルモドバル『ジュリエッタ』
ラウル・アレバロ 「
Tarde para la ira
フアン・アントニオ・バヨナUn monstruo viene a verme
アルベルト・ロドリゲス 『スモーク・アンド・ミラーズ』
ロドリゴ・ソロゴイェン「
Que Dios nos perdone

主演女優賞

アナ・カスティージョ「El olivoThe Olive Tree

バルバラ・レニー María (y los demás)
カルメン・マチLa puerta abierta
エンマ・スアレス『ジュリエッタ』

アドリアナ・ウガルテ『ジュリエッタ』

主演男優賞

ロベルト・アラモ「Que Dios nos perdone

エドゥアルド・フェルナンデス 『スモーク・アンド・ミラーズ』

アライン・エルナンデス El rey tuerto
ルイス・マクドゥーガル Un monstruo viene a verme
アレックス・モネール La propera pell
アントニオ・デ・ラ・トーレ「Tarde para la ira

助演女優賞

ルス・ディアス Tarde para la ira
マルタ・エトゥラ 『スモーク・アンド・ミラーズ』

ロッシ・デ・パルマ『ジュリエッタ』
テレレ・パベス 
La puerta abierta
カンデラ・ペーニャ 『KIKI~愛のトライ&エラー
助演男優賞

カルロス・サントス 『スモーク・アンド・ミラーズ
ルイス・カジェホ Tarde para la ira

ホセ・コロナド 『スモーク・アンド・ミラーズ
ハビエル・ペレイラ「Que Dios nos perdone
マノロ・ソロ Tarde para la ira
脚本賞
アルベルト・ロドリゲス、ラファエル・コボス 『スモーク・アンド・ミラーズ』 

ペドロ・アルモドバル 『ジュリエッタ 
パトリック・ネス Un monstruo viene a verme
イサベル・ペニャ、ロドリゴ・ソロゴジェン Que Dios nos perdone
ダビ・プリド、ラウル・アレバロ Tarde para la ira
オリジナル音楽賞

シルビア・ペレス・クルス  Cerca de tu casa
フリオ・デ・ラ・ロサ 『スモーク・アンド・ミラーズ』

アルベルト・イグレシアス 『ジュリエッタ』

フェルナンド・ベラスケス Un monstruo viene a verme
オリビエル・アルソン「Que Dios nos perdone

予告編賞

El hombre de las mil caras『スモーク・アンド・ミラーズ
 
Julieta」 『ジュリエッタ

 Kiki, el amor se hace」 『KIKI~愛のトライ&エラー
Un monstruo viene a verme
Que Dios nos perdone

ポスター賞

El hombre de las mil caras」 『スモーク・アンド・ミラーズ
Julieta」 『ジュリエッタ

Kiki, el amor se hace KIKI~愛のトライ&エラー
Monstruo viene a verme

Tarde para la ira

予告編賞とポスター賞は未決定らしく、なかで1作が脱落するようです。当ブログでは、TVドラマ・シリーズ部門は省略します。

3回フェロス賞ノミネーションは、コチラ20151218

3回フェロス賞受賞結果は、コチラ2016121

ゴヤ賞を初めて統率する映画アカデミー会長イボンヌ・ブレイク2016年12月20日 14:11

       困難な会長職を引き受けたわけ――私たちはカオスの中にいる

 

★去る1214日、ゴヤ賞2017のノミネーション発表がありました。次回の授賞式を統率するのが新会長イボンヌ・ブレイク、マンチェスター生れのイギリス系スペイン人、母語は英語なので話が込み入ってくると了解を得ながらも英語混じりになる。なり手のなかった会長職をどうして引き受けたかというと、理事会役員の仲間から説得されたからだという。特に女優のアンパロ・クリメント、女性プロデューサーの草分け的存在のソル・カルニセロ、アルモドバル兄弟の「エル・デセオ」の中心的な製作者エステル・ガルシア・ロドリゲスなど、女性シネアストからの懇望に負けたからだという。

 

  

     (イボンヌ・ブレイク、映画アカデミー本部にある事務所にて、1129日)

 

★問題山積の中でも、新会長の肩に重くのしかかるのが活動資金調達の困難さ、「とにかく資金不足、掻き集めてくれる外郭団体があるにはあるが、問題は司令塔が存在しないこと」だと。「2017年はもう間に合わないが、2018年には授賞式を催すための他のグループを立ち上げたい。より多くの後援者を見つけないと今後は開催できなくなる事態になる」、パトロン探しが重要と新会長。2017年は質素なガラになるようです。より現代的な舞台装置、ミュージカル風でなく、多分本来の授賞に重きをおき、興行的にはしない方針のようです。1015日の就任以来、殆ど休みなく朝に夕に本部に詰めているという。

 

ブレイク新会長の女性ブレーン紹介

アンパロ・クリメントは、バレンシア生れの女優、最近はTVドラ出演が多いのでご紹介するチャンスがありませんが、かつてはグティエレス・アラゴンの『庭の悪魔』(82)やホセ・ルイス・ガルシア・サンチェスの「Tranvia a la Malvarrosa」(96)に出演しているベテラン女優。

ソル・カルニセロは、1963年スペインテレビTVEのプログラム制作で第一歩を踏み出した。スペイン人から最も愛されたと言われる監督ガルシア・ベルランガの「ナシオナル三部作」といわれる辛口コメディ、ピラール・ミローの1910年代の実話に基づいた『クエンカ事件』(79)、治安警備隊の拷問シーンが残酷すぎると上映阻止の動きがあり、ミロー監督も一時的に収監されるという前代未聞の事態に発展した。民主化移行期とはいえフランコ時代が続いていたことを内外に知らせる結果になった。1年半後に公開されると空前のヒット作となった。

エステル・ガルシア・ロドリゲスは「エル・デセオ」のプロデューサー、2015年、数々の映画賞をさらったダミアン・ジフロンの『人生スイッチ』で、20回フォルケ賞をアグスティン・アルモドバルと一緒に受賞しています。

イボンヌ・ブレイクのキャリア紹介記事は、コチラ⇒20161029

 

ヨーロッパ映画賞は全滅でした!

 

★スペイン語映画は全滅でした。ドイツ=オーストリア合作のマーレン・アデの「Toni Erdmann」が独占、ちょっと口をあんぐりの結果でした。「最多ノミネーション5個(作品、監督、脚本、女優サンドラ・フラー、男優ペーター・シモニシェック)、どれか一つくらい受賞するのではないでしょうか」と予想はしていましたが、なんと全部受賞してしまいました。過去にこのような例があるのかどうか調べる気にもなりませんが、他の映画もちゃんと観てくれた結果なのでしょうか。『ジュリエッタ』グループもアルモドバル監督以下揃って現地入りしていましたが、無冠に終り残念でした。

ヨーロッパ映画賞ノミネーションの紹介記事は、コチラ⇒2016118

 

   

                    (監督賞トロフィーを手に喜びのマーレン・アデ)

 

    

(監督を挟んでサンドラ・フラーとペーター・シモニシェック)

 

       アカデミー賞外国語映画賞プレ・セレクション9作品も全滅でした!

 

2015ダミアン・ジフロンの『人生スイッチ』(アルゼンチン他)、2016年チロ・ゲーラの『彷徨える河』(コロンビア他)と2年続きでノミネートされたオスカー賞、2017年はプレ・セレクション9作品にも残れませんでした。有力視されていた(?)アルモドバルの『ジュリエッタ』、パブロ・ララインの「Nerudaネルーダ」も手が届きませんでした。ヨーロッパ映画賞を独占したドイツのマーレン・アデ「Toni Erdmann」は、予想通り残っていますね。来年まで勢いが続くかどうか、ハリウッドはドイツ嫌いが多い印象を受けています。


ゴヤ賞2017ノミネーション発表 ④2016年12月28日 11:01

                  作品賞ノミネーションはフェロス賞と全く同じ!

 

  

 

米国のゴールデン・グローブ賞と同じ位置づけで2013年から始まったフェロス賞とカブるのは当たり前の話とも言えますが、作品賞は全く同じでした。ゴヤ賞は、前もって決定している栄誉賞を除くと28カテゴリーと多く、例えば監督賞・男優・女優に「新人」枠があり、今後のスペイン映画の行方を占うのに役立ちますし、音楽賞も作曲賞と歌曲賞の2カテゴリーに分かれているなど、やはり大枠だけでもアップしておきます。字幕入り上映も『スモーク・アンド・ミラーズ』、『ジュリエッタ』、『The Olive Tree』、『KIKI~愛のトライ&エラー』、『名誉市民』、『囚われた少女たち』(DVD題名、映画祭題名『選ばれし少女たち』)ほか映画祭を含めると78作あります。当ブログ未紹介ながら気になる作品も散見いたしますので、つまみ食いしながらご紹介したいと思います。2017年の栄誉賞は既にご紹介しております通り女優で歌手のアナ・ベレン、ガラ総合司会者3年連続のダニ・ロビラです。

 

  

(作品賞ノミネーションを読み上げるハビエル・カマラとナタリア・デ・モリーナ、1214日)

 

           ゴヤ賞2017ノミネーション

(原題・英題・邦題・監督の順、初出には監督名を入れ、★印はフェロス賞ノミネーションとカブるもの、印は紹介作品、合作は国名、多数ノミネーションには個数を入れました)

 

作品賞

El homre de las mil caras”“Smoke&Mirrors”『スモーク・アンド・ミラーズ』(11個)

監督アルベルト・ロドリゲス ★

Julieta 『ジュリエッタ』(7個)監督ペドロ・アルモドバル ★

Que Dios nos perdone”“May God Save Us”(6個)監督ロドリゴ・ソロゴイェン ★

Tarde para la ira”“The Fury of a Patient Man”(11個)監督ラウル・アレバロ ★

Un monstruo viene a verme”“A Monster Calls”(最多12個、西・米・英・カナダ)

監督フアン・アントニオ・バヨナ ★

 

   

         (この3作に絞られるか、右側か左側のどちらかを予想)

 

監督賞

アルベルト・ロドリゲス『スモーク・アンド・ミラーズ』★

ペドロ・アルモドバル『ジュリエッタ』★

ロドリゴ・ソロゴイェン“Que Dios nos perdone”★

フアン・アントニオ・バヨナ“Un monstruo viene a verme”★

 

新人監督賞

ラウル・アレバロ“Tarde para la ira

サルバドル・カルボ“1898, Los últimos de Filipinas”(9個)

マルク・クレウエト“El rey tuerto

ネリー・レゲラ“María (y los demás)

 

オリジナル脚本賞

ホルヘ・ゲリカエチェバリア“Cien años de perdón”『バンクラッシュ』

監督ダニエル・カルパルソロ

ポール・ラヴァティ“El olivo”『The Olive Tree』監督イシアル・ボリャイン 

イサベル・ペーニャ、ロドリゴ・ソロゴイェン“Que Dios nos perdone”★

ダビ・プリド、ラウル・アレバロ“Tarde para la ira”★

 

脚色賞

アルベルト・ロドリゲス、ラファエル・コボス『スモーク・アンド・ミラーズ』★

ペドロ・アルモドバル『ジュリエッタ』★

フェルナンド・ペレス、パコ・レオン“Kiki, el amor se hace”『KIKI~愛のトライ&エラー』

パトリック・ネス“Un monstruo viene a verme”★

 

オリジナル作曲賞

フリオ・デ・ラ・ロサ『スモーク・アンド・ミラーズ』★

パスカル・ゲイニュ『The Olive Tree

アルベルト・イグレシアス『ジュリエッタ』★

フェルナンド・ベラスケス“Un monstruo viene a verme”★

 

オリジナル歌曲賞

ルイス・イバルス‘Descubriendo India’(“Bollywood Made in Spain”)

  監督ラモン・マルガレト

シルビア・ペレス・クルス‘Ai, ai, ai’(“Cerca de tu casa”)

  監督エドゥアルド・コルテス ★

セルティア・モンテス‘Muerte’(“Frágil equilibrio”、ドキュメンタリー)

監督ギジェルモ・ガルシア・ロペス

アレハンドロ・アコスタ、パコ・レオン他‘KikiMr. Ki feat Nita

  (『KIKI~愛のトライ&エラー』)

 

主演男優賞

エドゥアルド・フェルナンデス『スモーク・アンド・ミラーズ』★

ロベルト・アラモ“Que Dios nos perdone”★

アントニオ・デ・ラ・トーレ“Tarde para la ira”★

ルイス・カジェホ“Tarde para la ira”(フェロス賞は助演★)

 

主演女優賞

エンマ・スアレス『ジュリエッタ』★

カルメン・マチ“La puerta abierta”(“The Open Door”)監督:マリナ・セレセスキー ★

ペネロペ・クルス“La reina de España”監督:フェルナンド・トゥルエバ 

バルバラ・レニー“María (y los demás)”★

 

助演男優賞

カラ・エレハルデ“100 metros”監督:マルセル・バレラ 

ハビエル・グティエレス『The Olive Tree

ハビエル・ペレイラ“Que Dios nos perdone”★

マノロ・ソロ“Tarde para la ira”★

 

助演女優賞

カンデラ・ペーニャ『KIKI~愛のトライ&エラー』★

エンマ・スアレス“La próxima piel”監督:イサキ・ラクエスタ、イサ・カンポ 

テレレ・パベス“La puerta abierta”★

シガニー・ウィーバー“Un monstruo viene a verme

 

新人男優賞

リカルド・ゴメス“1898, Los últimos de Filipinas

ロドリゴ・デ・ラ・セルナ『バンクラッシュ』

カルロス・サントス『スモーク・アンド・ミラーズ』(フェロス賞は助演★)

ラウル・ヒメネス“Tarde para la ira

 

新人女優賞

シルビア・ペレス・クルス“Cerca de tu casa

アナ・カスティージョ『The Olive Tree』(フェロス賞は主演★)

ベレン・クエスタ『KIKI~愛のトライ&エラー』

ルス・ディアス“Tarde para la ira”(フェロス賞は助演★)

 

 

プロダクション賞

カルロス・ベルナセス“1898, Los últimos de Filipinas

マヌエラ・オコン『スモーク・アンド・ミラーズ』

ピラール・ロブラ“La reina de España

サンドラ・エルミダ・ムニィス“Un monstruo viene a verme

 

撮影監督賞

アレックス・カタラン“1898, Los últimos de Filipinas

ホセ・ルイス・アルカイネ“La reina de España

アルナウ・バルス・コロメル“Tarde para la ira

オスカル・ファウラ“Un monstruo viene a verme

 

編集賞

ホセ・M・G・モヤノ『スモーク・アンド・ミラーズ』

アルベルト・デル・カンポ、フェルナンド・フランコ“Que Dios nos perdone

アンヘル・エルナンデス・ソイド“Tarde para la ira

ベルナ・ビラプラナ、ジャウマ・マルティ“Un monstruo viene a verme

 

美術監督賞

カルロス・ボデロン“1898, Los últimos de Filipinas

ぺぺ・ドミンゲス・デル・オルモ『スモーク・アンド・ミラーズ』

フアン・ペドロ・デ・ガスパル“La reina de España

エウヘニオ・カバジュロ“Un monstruo viene a verme

 

衣装デザイン賞

パオラ・トレス“1898, Los últimos de Filipinas

ロラ・ウエテ“La reina de España

クリスティナ・ロドリゲス“No culpes al karma de lo que te pasa por gilipollas

監督マリア・リポル

アルベルト・バルカルセル、クリスティナ・ロドリゲス“Tarde para la ira

 

メイクアップ&ヘアー賞

アリシア・ロペス、ミル・カブレル、ペドロ・ロドリゲス“1898, Los últimos de Filipinas

ヨランダ・ピナ『スモーク・アンド・ミラーズ』

アナ・ロペス=プイグセルベル、ダビ・マルティ、セルヒオ・ペレス・ベルベル『ジュリエッタ』

ダビ・マルティ、マレセ・ランガン“Un monstruo viene a verme

 

録音賞

エドゥアルド・エスキデ、フアン・フェロ他“1898, Los últimos de Filipinas

セサル・モリナ、ダニエル・デ・サヤス他『スモーク・アンド・ミラーズ』

ナチョ・ロジョ=ビリャノバ、セルヒオ・テスタン“Ozzy”(アニメーション、西・カナダ)

オリオル・タラゴ、ペーター・グロスポ“Un monstruo viene a verme

 

特殊効果賞

カルロス・ロサノ、パウ・コスタ“1898, Los últimos de Filipinas

ダビ・エラス、ラウル・ロマニリョス“Gernika. The Movie”『ゲルニカ』監督コルド・セラ

エドゥアルド・ディアス、レジェス・アバデス『ジュリエッタ』

フェリックス・ベルヘス、パウ・コスタ“Un monstruo viene a verme

 

アニメーション賞

Ozzy 監督アルベルト・ロドリゲス、ナチョ・ラ・カサ

Psiconautas, los niños olvidados”監督ペドロ・リベロ、アルベルト・バスケス

Teresa eta Galtzagorri”(“Teresa y Tim”)

監督アグルツァネ・インチャウラガAgurtzane Intxaurraga

 

ドキュメンタリー賞

2016, Nacido en Siria”監督エルナン・シン

El Bosco, El jardín de los sueños”(西仏)監督ホセ・ルイス・ロペス=リナレス

Frágil equilibrio 監督ギジェルモ・ガルシア・ロペス

Omega”ヘルバシオ・イグレシアス、ホセ・サンチェス=モンテス

 

イベロアメリカ映画賞

Anna”(コロンビア仏)監督ジャック・トゥールモンド

Desde alla”“From Afar”『彼方から』(ベネズエラ・メキシコ)監督ロレンソ・ビガス

El ciudadano ilustre”『名誉市民』(アルゼンチン西)

監督(共同)ガストン・ドゥプラット、マリアノ・コーン 

Las elegidas”『囚われた少女たち』(メキシコ)ダビ・パブロス 

 

★以下、ヨーロッパ映画賞・短編映画賞・短編ドキュメンタリー賞・短編アニメーション賞は割愛します。受賞結果のみアップする予定。短編映画賞のなかにはフアンホ・ヒメネス・ペーニャの『タイムコード』(カンヌ2016の短編パルムドール受賞作品)のようにご紹介記事も混じっております。イベロアメリカ映画賞には、スペイン公開が遅かったせいか2014年の『彼方から』と2015年の『囚われた少女たち』がノミネートされており、時間が逆戻りした印象でした。

 

      

        (アルフレッド・カストロとルイス・シルバ、『彼方から』)

 

★受賞してもらいたい作品はあっても星取表には興味が沸かないので割愛、年明けに未紹介の作品をアップする予定なので、そのなかで随時触れたいと思います。ドキュメンタリー賞の監督のなかにはプロデューサーとして数々の問題作に関わったベテランの名前も散見します。反対に編集賞のなかには“Que Dios nos perdone”のフェルナンド・フランコのように、“La herida”(13)でゴヤ賞新人監督賞を受賞した監督も混じっております。技術スタッフは掛持ちで仕事をしているせいか複数でノミネートされ、毎年顔ぶれが同じように感じるのは管理人んだけでしょうか。

 

★フェロス賞ノミネーション0個のフェルナンド・トゥルエバの“La reina de España”が7個と違いをみせました。フランコ体制終焉から40年、それでもフランコ支持者は意気軒昂、上映館を取り巻く彼らのボイコット運動に恐れをなして客足に影響があるとかないとか。75年経っても戦後は終わらないのと同じです。

 

        

           (トゥルエバ監督とヒロインのペネロペ・クルス)


第22回フォルケ賞2017*ノミネーション発表2016年12月30日 22:57

       授賞式はセビーリャで114日開催――マドリード以外は初めて

 

 

★授賞式がマドリードを離れて開催されるのは初めて、地域振興の意味合いがあるのかもしれません。これは今年67日、EGEDA会長エンリケ・セレソ、アンダルシア評議会文化大臣ロサ・アギラル、セビーリャ市助役アントニオ・ムニョス同席のもと発表されておりました。フォルケ賞はゴヤ賞の前哨戦といわれ、正式名は「ホセ・マリア・フォルケ賞Premios Cinematográfico José María Forqué」です。EGEDAの初代会長だったフォルケの栄誉を讃えて創設された賞。縁の下の力持ち的な製作者の功績を讃えるために設けられた賞、というわけで監督賞はありません。

 

  

  (左から、アントニオ・ムニョス、ロサ・アギラル、エンリケ・セレソ、201667日)

 

★最初は作品賞のみで始まり、第9回から「長編ドキュメンタリー」、「アニメーション」部門が加わり、第15回から男優賞・女優賞、2015年から「ラテンアメリカ映画」、2016年から「短編映画」と「Cine y Educacion en Valores」という賞が加わり、カテゴリーは増加する傾向にあります。栄誉賞にあたる金賞加わりました(該当者なし、あるいは団体のケースもあります)作品賞には3万ユーロ、長編ドキュメンタリーとアニメーション賞には6000ユーロ、男優・女優賞の賞金3000ユーロはAISGE財団**が拠出し、120名以上の映画関係のジャーナリストが選考しています。第22回は2015121日~20161130日の1年間にスペインで公開された作品が対象。

 

Entidad de Gestión de Derechos de los Productores Audiovisuales の頭文字。いわゆる視聴覚製作に携わる人々の権利を守るための交渉団体です。1990年創設だが活動は1993年から。現会長はエンリケ・セレソ、副会長はアグスティン・アルモドバル。

**Artistas Intérpretes, Sociedad de Gestión の頭文字。声優を含む俳優、舞踊家、映画監督などの権利を守る非営利団体、2002年設立、現会長は女優ピラール・バルデム

 

   フォルケ賞ノミネーション

 

長編映画賞(フィクション、アニメーション)

El homre de las mil caras”“Smoke&Mirrors”『スモーク・アンド・ミラーズ』

監督アルベルト・ロドリゲス ★ 

Julieta 『ジュリエッタ』監督ペドロ・アルモドバル ★ 

Que Dios nos perdone”“May God Save Us”監督ロドリゴ・ソロゴイェン ★

Tarde para la ira”“The Fury of a Patient Man”監督ラウル・アレバロ ★ 

Un monstruo viene a verme”“A Monster Calls”(西・米・英・カナダ)

監督フアン・アントニオ・バヨナ ★

1898, Los últimos de Filipinas”監督サルバドル・カルボ

 

男優賞

エドゥアルド・フェルナンデス『スモーク・アンド・ミラーズ』監督アルベルト・ロドリゲス ★

ロベルト・アラモ“Que Dios nos perdone 監督ロドリゴ・ソロゴイェン ★

アントニオ・デ・ラ・トーレ“Tarde para la ira 監督ラウル・アレバロ ★

アレックス・モネール“La propera pell”(“La próxima piel”) 

監督(共同)イサキ・ラクエスタ、イサ・カンポ 

オスカル・マルティネスEl ciudadano ilustre”(アルゼンチン、スペイン)

 監督(共同)ガストン・ドゥプラット、マリアノ・コーン 

 

女優賞

アドリアナ・ウガルテ『ジュリエッタ』監督ペドロ・アルモドバル ★

エンマ・スアレス『ジュリエッタ』同上

カルメン・マチ“La puerta abierta”(“The Open Door”)監督マリナ・セレセスキー 

バルバラ・レニー“María (y los demás)”監督ネリー・ネゲラ ★

アナ・カスティージョ『The Olive Tree』監督イシアル・ボリャイン ★

インマ・クエスタ“La novia 監督パウラ・オルティス 

 

長編ドキュメンタリー賞

2016, Nacido en Siria”監督エルナン・シン

El Bosco, El jardín de los sueños”(スペイン、フランス)

  監督ホセ・ルイス・ロペス=リナレス

Omega”監督(共同)ヘルバシオ・イグレシアス、ホセ・サンチェス=モンテス

Jota de Saura”監督カルロス・サウラ 

La historia de Jan”監督ベルナルド・モル・オットー

Miguel Picazo, Un cineasta extramuros”監督エンリケ・エスナオラ

 

短編映画賞

Timecode”『タイムコード』監督フアンホ・ヒメネス 

Graffitti”監督リュイス・キレスLluís Quílez

Bla Bla Bla”監督アレクシス・モランテ

 

長編ラテンアメリカ映画賞

Neruda”(チリ、メキシコ)監督パブロ・ラライン ★

El ciudadano ilustre”『名誉市民』(アルゼンチン、スペイン) 

監督(共同)ガストン・ドゥプラット、マリアノ・コーン ★

Aquí no ha pasado nada”(“Much Ado About Nothing”)(チリ)

監督アレハンドロ・フェルナンデス・アルメンドラス ★

El acompañante”(キューバ)監督パベル・ジロー

Sin muertos no hay carnaval”(エクアドル、メキシコ、独)監督セバスティアン・コルデロ

 

Cine y Educacion en Valores

El olivo”監督イシアル・ボリャイン ★

100 metros”監督マルセル・バレナ ★

Un monstruo viene a verme 監督フアン・アントニオ・バヨナ ★

 (★は紹介記事をアップしているもの)

 

栄誉賞

アントニオ・P・ペレスAntonio P. Pérez は、独立系のプロデューサー、彼が手掛けた代表作品を列挙すると、ベニト・サンブラノの『ローサのぬくもり』(99)と『スリーピング・ボイス~沈黙の叫び』(11)、マテオ・ヒルの『パズル』(99)、最近ではイマノル・ウリベの“Lejos del mar”(15)など。

 

     

               (アントニオ・P・ペレス)

 

作品賞は、約110作の候補から選考され最終的に以上の6作に絞られた。サルバドル・カルボの“1989, Los últimos de Filipinas”が加わっただけで、ゴヤ賞とフェロス賞に同じ、女優賞にフェロス賞2016受賞のインマ・クエスタが選ばれているのは、スペイン公開が1211日だったせいです。公開が境目にあるとノミネーションが分かれるケースが出てくるのは仕方がありません。短編映画賞はゴヤ賞と同じです。いずれもカンヌ映画祭を始めとして国際短編映画祭での受賞歴多数。

 

ドキュメンタリー部門(候補は86作)には、サウラのようなベテランからベルナルド・モル・オットーのような新人、『スモーク・アンド・ミラーズ』の製作者ヘルバシオ・イグレシアス、『マーシュランド』の製作者ホセ・サンチェス=モンテスなど多彩な顔ぶれを揃えたようです。ラテンアメリカ映画部門にキューバとエクアドルがノミネートされたのも久方ぶりのことです。“Sin muertos no hay carnavalコルデロの長編6作目、いずれご紹介したい作品です。

 

★授賞式は年明け早々の2017114日、セビーリャのマエストランサ劇場にて。俳優のイングリッド・ガルシア・ヨンソン、アルバロ・セルバンテス、ハビエル・グティエレスなどが進行を担当する予定。