第66回サンセバスチャン映画祭2018*結果発表 ㉕ ― 2018年10月03日 14:37
まさかの金貝賞、イサキ・ラクエスタの「Entre dos aguas」が受賞!
★受賞結果発表が9月29日(現地時間21:00~)、メイン会場のクルサールでありましたが、イサキ・ラクエスタの「Entre dos aguas」金貝賞には大分驚かされました。スペイン映画の受賞は2014年の『マジカル・ガール』以来4年ぶりです。スペイン映画が選ばれるならロドリゴ・ソロゴジェンの「El reino」と予想、もし当たれば男優賞はアントニオ・デ・ラ・トーレでしたが、両方ともかすりもしませんでした(笑)。ラクエスタは2011年(第59回)に「Los pasos dobles」で受賞していますから2度目、6人目の2回受賞者になりました。スペイン人ではマヌエル・グティエレス・アラゴン(『庭の悪魔』『天国の半分』)とイマノル・ウリベ(『時間切れの愛』『ブワナ』)の二人、他の三人はフォード・コッポラ、アルトゥーロ・リプスタイン、バフマン・ゴバディです。
(感謝の受賞スピーチをする監督と、左から監督夫人で脚本家のイサ・カンポ、
イスラを演じたイスラエル・ゴメス、製作者アレックス・ラフエンテ、授賞式)
★作品賞のみならず疑問を投げかける記事が目に付きますし、ガラをざっと見ただけですが盛り上がりに欠ける印象でした。未鑑賞の段階であれこれコメントはできませんが、紹介されているストーリーを読むかぎり、テーマも新鮮味に欠け個人的には腑に落ちない結果発表でした。審査委員長アレクサンダー・ペインに対する雑音も聞こえてきました。
★今年から金貝賞(作品賞)・銀貝賞(監督・男優・女優)のトロフィーのデザインが変わりました。ガラの進行は、女優のマリベル・ベルドゥがスペイン語で、タバカレラ理事会総ディレクター、エドゥルネ・オルマサバルがバスク語で総合司会をしました。
(マリベル・ベルドゥとエドゥルネ・オルマサバル)
*セクション・オフィシアル*
◎作品賞(金貝賞)
「Entre dos aguas」(スペイン)イサキ・ラクエスタ
プレゼンターは、セクション・オフィシアル審査委員長アレクサンダー・ペイン
*「Entre dos aguas」の紹介記事は、コチラ⇒2018年07月25日
(スピーチする監督と涙で挨拶できなかった主役イスラエル・ゴメス)
◎審査員特別賞
「Alpha, The Right To Kill」(フィリピン)監督ブリジャンテ・メンドサ
プレゼンターは、作品賞と同じアレクサンダー・ペイン
メンドサ監督はスマホを覗きながらスピーチしており、ガラ風景も様変わりしました。
◎監督賞(銀貝賞)
ベンハミン・ナイシュタット「Rojo」(アルゼンチン、ブラジル、仏、オランダ、独)
プレゼンターは、審査員のコンスタンティン・ポペスク
「Rojo」は他に男優賞・撮影賞と3賞をゲットしました。
*紹介記事は、コチラ⇒2018年07月16日
◎女優賞(銀貝賞)
Pia Tjelta「Blind Spot」(ノルウェー)監督は女優歴の長いツヴァ・ノヴォトニーのデビュー作
プレゼンターは、審査員のアグネス・ヨハンセン
スピーチは英語、準備してきた紙を読み上げていましたが、ツヴァ・ノヴォトニー監督に感謝を述べる段階で涙、会場にいた監督も涙、涙なみだの受賞スピーチでした。
(やはり涙の受賞となりました)
◎男優賞(銀貝賞)
ダリオ・グランディネッティ「Rojo」監督ベンハミン・ナイシュタット
プレゼンターは、審査員のナウエル・ペレス・ビスカヤート、彼はアルゼンチン出身です。
(見知らぬ人からの脅迫に苦しむ弁護士役を演じたダリオ・グランディネッティ)
◎撮影賞
ペドロ・ソテロ「Rojo」同上
プレゼンターは、審査員のBet Rourich
『アクエリアス』を撮ったブラジルの撮影監督です。
◎脚本賞(2作品)
ポール・ラヴァティ「Yuli」(西・キューバ・英・独)監督イシアル・ボリャイン
プレゼンターは、審査員のロッシ・デ・パルマ、今日は華やかな赤いドレスでした。
ポール・ラヴァティはスペイン語で一番長いスピーチをしました。
*「Yuli」の紹介記事は、コチラ⇒2018年07月25日
(現地入りしたボリャイン監督、主役のカルロス・アコスタなど)
ルイ・ガレル&ジャン=クロード・カリエール「L'homme fidele」(フランス)ルイ・ガレル監督。ジャン=クロード・カリエールは帰国してしまったのか登壇しませんでした。ルイ・ガレルは監督・脚本・主演と3役をこなした。
*セクション・オフィシアル審査員紹介は、コチラ⇒2018年09月18日
*その他の受賞結果*
◎ニューディレクターズ部門
『僕はイエス様が嫌い』(日本)奥山大史
奥山監督は日本語でスピーチ、ガラ唯一の同時通訳が付きでした。金貝賞より驚いたのが奥山大史の『僕はイエス様が嫌い』、現在22歳とかで史上最年少受賞者になりました。来年日本公開が決定しているなど、既に日本メディアでも報道されています。
*『僕はイエス様が嫌い』の紹介記事は、コチラ⇒2018年07月21日
(トロフィーを手にして受賞スピーチをする奥山監督)
*「Viaje al cuarto de una madre」(西仏)監督セリア・リコ・クラベリーノ
スペシャル・メンションを受賞、本作はユース賞も受賞しました。
◎ホライズンズ・ラティノ部門
「Familia sumergida」(アルゼンチン、ブラジル、独、ノルウェー)
監督マリア・アルチェ
*「El motoarrebatador」(アルゼンチン、ウルグアイ、仏)
監督アグスティン・トスカノ
スペシャル・メンションを受賞。なら国際映画祭2018「ゴールデンSHIKA賞」受賞作品、『ザ・スナッチ・シィーフ』の邦題で上映された。
*「El motoarrebatador」の作品紹介は、コチラ⇒2018年09月07日
◎サバルテギ-タバカレラ部門
「Song For The Jungle」(フランス)監督ジャン・ガブリエル・ペリオト
*「Los que desean」(スイス、スペイン)短編ドキュメンタリー、
監督エレナ・ロペス・リエラ
スペシャル・メンションを受賞
◎観客賞(ドノスティア-サンセバスチャン市)
「Un día más con vida」(西、ポーランド、ベルギー、独)アニメーション(ペルラス部門出品)監督ラウル・デ・ラ・フエンテ&ダミアン・ネノウ
★ラテンビート2018 に『アナザー・デイ・オブ・ライフ』(原題)で上映決定
(ラウル・デ・ラ・フエンテと製作者のアマイア・レミレス)
◎観客賞(ヨーロッパ映画)
「Girl」(ベルギー、オランダ)(ペルラス部門出品)監督Lukos Dhont
◎ユース賞(ニューディレクターズ部門出品)
「Viaje al cuarto de una madre」(スペイン、フランス)
監督セリア・リコ・クラベリノ
(母娘を演じた、ロラ・ドゥエニャスとアナ・カスティジャーノ)
◎国際映画批評家連盟賞 FIPRESCI(セクション・オフィシアル出品)
「Hight Life」(独仏英ポーランド他)監督クレール・ドニ
*「Hight Life」の作品紹介は、コチラ⇒2018年07月16日
◎TVE「他の視点」賞(ニューディレクターズ部門出品)
「The Third Wife」(ベトナム) 監督Ash Mayfair
◎IRIZARバスク映画賞
「Oreina」(スペイン)監督コルド・アルマンドス
◎スペイン協力賞(ホライズンズ・ラティノ部門出品)
「Los silencios」(ブラジル、仏、コロンビア)ベアトリス・セニエ
★大体以上が主な受賞結果、以下バスク映画賞など結構ありますが割愛。
上映作品14作が出揃いました*ラテンビート2018 ② ― 2018年10月06日 10:26
アニメーション+ドキュメンタリー『アナザー・デイ・オブ・ライフ』
★前回アナウンスされていた6作品だけアップしましたが、追加の8作が発表されました。一瞥しての感想は、例年に比べて元気なブラジル映画(合作を含めて5作)と公開が難しいドキュメンタリー(短編を含めて4作)の多さです。いつものラテンビートとは違った貌が見られるかもしれません。取りあえず上映邦題・原題・製作国・言語・監督などを列挙しておきます(紹介作品はゴチック体、順不同)。
1)『カルメン&ロラ』「Carmen y Lola」スペイン、スペイン語、アランチャ・エチェバリア
*作品紹介は、コチラ⇒2018年05月13日
6)『サビ』「Ferrugem」ブラジル、ポルトガル語、アリ・ムルチバ
*以下は追加作品*
7)『アワ・マン・イン・トーキョー ~ザ・バラッド・オブ・シン・ミヤタ』
「OUR MAN IN TOKYO (THE BALLAD OB SHIN MIYATA)」(短編ドキュメンタリー、18分)米国、
アキラ・ボック、『I Hate New York』と同時上映
8)『夏の鳥』「Pájaros de verano」コロンビア・メキシコ・仏・デンマーク、スペイン語、
クリスティナ・ガジェゴ&チロ・ゲーラ
*作品紹介は、コチラ⇒2018年05月18日
9)『ローマ法王フランシスコ』「Pope Francis: A Man of His Word」(ドキュメンタリー)
スイス・バチカン市国・伊・独・仏、伊語・西語・独語・英語、ヴィム・ヴェンダース
10)『アナザー・デイ・オブ・ライフ』「ANOTHER DAY OF LIFE」
ポーランド・西・独・ベ ルギー・ハンガリー、英語・ポルトガル語・ポーランド語・西語
ラウル・デ・ラ・フエンテ&ダミアン・ネノウ
*追記:作品紹介は、コチラ⇒2018年10月08日
11)『エルネスト』日本・キューバ、日本語、阪本順治
12)『ベンジーニョ』「Benzinho」ブラジル・ウルグアイ・独、ポルトガル語、
グスタボ・ピッツィ
*作品紹介は、コチラ⇒2018年04月30日
13)『ハード・ペイント』「Tinta burta」ブラジル、ポルトガル語、
フィリペ・マッツェンバシェル&マルシオ・ヘオロン
14)『激情の時』「No Intenso Agora」(ドキュメンタリー)ブラジル、ポルトガル語、
ジョアン・モレイラ・サレス
★第66回サンセバスチャン映画祭2018「ペルラス」部門に出品され、このほど「観客賞」(ドノスティア市)を受賞した『アナザー・デイ・オブ・ライフ』の作品紹介の予定。SSIFFではスペイン語題の「Un día más con vida」で上映されました。ほかにビオピック作品に特化したイタリアのBiografilmビオグラフィルム・フェスティバルでも観客賞を受賞しています(原作はリシャルト・カプシチンスキの同名の著作)。3D-CG使用したアニメと実写をミックスさせた映像が楽しめそうです。
アニメーション『アナザー・デイ・オブ・ライフ』*ラテンビート2018 ③ ― 2018年10月08日 16:42
カンヌ映画祭からサンセバスチャン映画祭へ、アニメファンを魅了した!
★ポーランドの作家リシャルト・カプシチンスキによるノンフィクション「Another Day of Life」の映画化。原作はポーランド語だが映画は1976年に刊行された英訳本によっている。時代背景は、冷戦時代の米ソ代理戦争の典型と言われるアンゴラ内戦、首都ルアンダに赴いて3ヵ月間取材したときの記録。内戦は1975年3月勃発、2002年までつづいた紛争だが、本作は内戦初期に限られている。脆弱だったアンゴラ解放人民運動MPLAの分析、1976年までのアンゴラの簡単な外史で構成されている。当時アンゴラは、ソ連・キューバ主導のMPLA 、米国・南ア・ザイール・中国主導のアンゴラ民族解放戦線FNLA、アンゴラ全面独立民族同盟ウニタUNITAの三つ巴の闘争が続いていた。しかしアンゴラは1975年3月、宗主国ポルトガルとの休戦協定に調印した。現実はソ連主導のMPLAと米国主導のFNLAの対立により混迷を深めていたが、形式的には一応独立を果たした。
(サンセバスチャン映画祭用のポスター)
★原作者のリシャルト・カプシチンスキ(1932~2007)は、当時ポーランド領だったミンスク出身のジャーナリスト、報道記者、作家。現在のミンスク市はベラルーシ共和国の都市。家族は1945年ポーランドに移住、ワルシャワ大学で歴史学を学んだ。「ジャーナリズムの巨人」または「20世紀の最も偉大な報道記者」とも称されるが、当然毀誉褒貶は避けられないようです。ノーベル文学賞の候補に数回選ばれており、翻訳書も多数あるが、「Another Day of Life」は未訳のようです。関連翻訳書としては、40年に亘ってアフリカ諸国を取材して綴ったルポルタージュ「Heban」(2001)が、『黒檀』の邦題で刊行されている(著作目録・年譜付き)。
(リシャルト・カプシチンスキ)
『アナザー・デイ・オブ・ライフ』(原題「Another Day of Life」)アニメーション+実写
製作:Kanaki Films(西)/ Platige Image(ポーランド)/ Puppetworks Animation(ハンガリー)/
Walking The Dog(ベルギー)/ Umedia(ベルギー)/ Animationsfabrik(独)、他
監督:ラウル・デ・ラ・フエンテ&ダミアン・ネノウ
脚本:ラウル・デ・ラ・フエンテ、アマイア・レミレス、ニール・ジョンソン、他
原作:リシャルト・カプシチンスキ著「Another Day of Life」
撮影:ゴルカ・ゴメス・アンドリュー、ラウル・デ・ラ・フエンテ
編集:ラウル・デ・ラ・フエンテ
音楽:ミケル・サラス
製作者:アマイア・レミレス(西)、Jaroslaw Sawko(ポーランド)、Ole Wendorff Ostergaad、他
データ:製作国スペイン・ポーランド・ハンガリー・ベルギー・ドイツ、言語ポーランド語・英語・ポルトガル語・スペイン語、2018年、アニメーション+実写、86分、3D-CG、ビオピック、内戦。撮影地アンゴラ・キューバ・ポルトガル。公開ポーランド2018年11月2日、ポルトガル11月8日、フランス2019年1月23日
映画祭・受賞歴:カンヌ映画祭2018コンペティション外出品ワールドプレミア、アヌシー・アニメーション映画祭、ビオグラフィルム・フェスティバル(伊)観客賞受賞、ポーランド映画祭「他の視点」出品、サンセバスチャン映画祭「ペルラス」部門、観客賞受賞、副賞として50.000ユーロが授与された。
出演:ミロスワフ・ハニシェフスキ(リシャルト・カプシチンスキ)、Vergil J. Smith(ケイロツQueiroz/ルイス・アルベルト/ネルソン)、Tomasz Zietek(ファルスコ少佐Farrusco)、オルガ・Boladz(カルロタ)ほか(以上実写部分)。ケリー・シェール(リシャルト・カプシチンスキ)、ダニエル・フリン(ケイロツ)、Youssef Kerkour(ファルスコ)、リリー・フリン(カルロタ)ほか(以上アニメーション部分のボイス)
ストーリー:ポーランドの報道記者カプシチンスキは、冷戦時代の1975年、危険なミッションを受けてアフリカの戦場アンゴラへ出発する。カリスマ的な女性ゲリラのカルロタと知り合うが、混沌とした内部への旅は理想主義者のジャーナリストを永遠に作家に変えてしまう。映画はカプシチンスキの体験に基づいており、私たちは40年前の恐怖に向き合うことになるだろう。主人公はジャーナリスト自身というより革命家カルロタのようで、彼女を女性が公正に評価され、新しい社会の中核的な存在であることの象徴として描いている。アニメ部分80パーセント、残りが実写部分だが、二つの境界はぼやけていく。 (文責:管理人)
*監督キャリア&フィルモグラフィー*
★ラウル・デ・ラ・フエンテ Raul de la Fuente、監督、脚本家、編集者、製作者。ナバラ大学オーディオビジュアル・コミュニケーション科卒業。1996年よりTV番組やドキュメンタリーを手掛ける。2006年長編ドキュメンタリー「Nomadak Tx」(パブロ・イラブル他との共同監督、89分)がサンセバスチャン映画祭SSIFF2006に出品される。2013年短編ドキュメンタリー「Minerita」(28分、ボリビアとの合作)が同じくSSIFFのシネミラ部門の短編映画Kimuakに出品、翌年のゴヤ賞短編ドキュメンタリー賞を受賞する。ボリビアのポトシ鉱山で働く女性労働者たちに寄り添い、自らも坑内に入って撮影、暴力、セクハラ、希望を語らせて胸を打つ。ポーランドのクラクフ映画祭2014ゴールデン・ドラゴン賞のスペシャル・メンション、サンディエゴ・ラテン映画祭コラソン賞を受賞している。
(中央の二人が製作者アマイア・レミレスと監督、ゴヤ賞2014授賞式にて)
*2014年ドキュメンタリー「I am Haiti」(60分、ハイチとの合作、仏語)はSSIFF「シネミラ」部門のイリサルIrizar賞を受賞、2017年短編ドキュメンタリー「La fiebre del oro」(25分「Gold Fever」モザンビークとの合作)もSSIFFのKimuakに出品、以上でドキュメンタリー三部作になっている。3作とも脚本家で制作会社Kanaki Filmsの代表者アマイア・レミレスが手掛けている(2009年にデ・ラ・フエンテと設立、本部はサンセバスチャン)。二人は公私ともにパートナーであり、レミレスの視点が注目される。
(ラウル・デ・ラ・フエンテとアマイア・レミレス)
*最新作『アナザー・デイ・オブ・ライフ』は上記の通りカンヌ映画祭でワールド・プレミアした。製作の発端は10年ほど前に読んだ原作に二人が同時に感銘を受けたこと、本格始動は「7年前のアンゴラ取材旅行」とインタビューに応えている。最初の構想はアニメーションと実写のミックスではなかったが、シュールなシーンはアニメのほうが適切だったこと、また将来の可能性に賭けたかったことの2つを上げている。「カプシチンスキがポーランド人だったので、制作会社 Platige Imageにコンタクトを取り、最終的にダミアン・ネノウとのコラボが決定した」とレミレス。距離的に遠く離れていたので専らスカイプで連絡を取り合った。カプシチンスキの時代のテレックスとは様変わりしている。カプシチンスキについては「ジャーナリストというより、活動家だった」と監督。カンヌよりも緊張すると話していたサンセバスチャンで、見事「観客賞」を受賞した。
(デ・ラ・フエンテ、ダミアン・ネノウ、アマイア・レミレス、カンヌ映画祭フォトコール)
(観客賞受賞のデ・ラ・フエンテとレミレス、ネノウ監督は帰国、SSIFF2018ガラ)
★ダミアン・ネノウDamian Nenow、1983年ポーランドのクヤヴィ=ポモージェ県都ビドゴシュチ生れ、監督、脚本、編集、視覚効果、アニメーター。ポーランド第2の都市ウッチのウッチ映画学校卒、2005年 Platige Image Film Studioに入り、3Dによるアニメーションの制作、監督、編集を手掛ける。短編アニメーション「The Aim」でデビュー、ウッチの国際アニメーション映画祭で若い才能に贈られるオナラブル・メンションを受賞、2006年「The Great Escape」が多くの国際映画祭に出品される。2010年「Paths of Hate」(10分)がコルドバ国際アニメーション映画祭2011で審査員賞、アヌシー国際アニメーション映画祭2011スペシャル栄誉賞、サンディエゴ・インディペンデント映画祭審査員チョイス、札幌国際短編映画祭で『パス・オブ・ヘイト』の邦題で上映され、最優秀ノンダイアログ賞を受賞している。第84回アカデミー賞2011のプレセレクション10作にも選ばれている。
(アニメーション『パス・オブ・ヘイト』から)
★2011年「City of Ruins」(5分、ポーランド題「Miasto ruin」)は、ワルシャワ映画祭出品、2015年ホラー・アニメ「Fly for Your Life」(5分、米国)はインターネットで配信された。
(カンヌではしゃぐ、ダミアン・ネノウとラウル・デ・ラ・フエンテ)
(ラウル・デ・ラ・フエンテ、ダミアン・ネノウ、アマイア・レミレス、
ポーランド製作者Jaroslaw Sawko、サンセバスチャン映画祭2018)
ドキュメンタリー『激情の時』*ラテンビート2018 ④ ― 2018年10月12日 10:49
アーカイブ映像で綴った激動の1960年代―パリ、中国、プラハ、リオ
★邦題『激情の時』は、山形国際ドキュメンタリー映画祭2017で上映されたときに付けられたもの、審査員特別賞を受賞した。ジョアン・モレイラ・サレス監督はドキュメンタリー映像作家として国際的に認知されている(現在のところフィクションは撮っていない)。『激情の時』は2007年の「Santiago」以来、5年の歳月を掛けて10年ぶりに完成させたもの。1966年文化大革命初期の中国、1968年ソビエト連邦のプラハ侵攻、パリ1968年五月革命(フランスの五月危機)、軍事独裁時代(1964~85)のリオデジャネイロなどのアーカイブ映像で綴ったドキュメンタリー。
『激情の時』(原題「No Intenso Agora」、英題「In the Intense Now」)
製作:Videofilmes Producoes Artististicas Ltda.
監督・脚本:ジョアン・モレイラ・サレス
編集:エドゥアルド・エスコレル、Lais Lifschitz
音楽:ホドリゴ・レアンRodrigo Leao
データ:製作国ブラジル、言語ポルトガル語、2017年、127分、ドキュメンタリー、現代史、モノクロ&カラー、公開ブラジル2017年11月、他2018年に米国、ポーランド、コロンビアなどで公開
映画祭・受賞歴:シネマ・ドゥ・リール2017オリジナル音楽賞(ホドリゴ・レアン)、サンティアゴ映画祭SANFICスペシャル・メンション、山形国際ドキュメンタリー映画祭2017審査員特別賞、サンパウロ美術評論家協会2018APCA賞、以上受賞。ベルリン映画祭2017、ブエノスアイレス国際インディペンデント映画祭BAFICI、パリ・ブラジル映画祭、エルサレム、サンセバスチャン(サバルテギ-タバカレラ部門)、サンティアゴ、リマ、シカゴ、ウィーン、アムステルダム・ドキュメンタリー、各映画祭に出品。シネマ・ブラジル大賞2018(ドキュメンタリー、編集)、イベロアメリカ・フェニックス賞2017(作品・音楽)にノミネートされた。
(来日した監督と司会の荒井幸博、山形国際ドキュメンタリー映画祭2017)
解説:ブラジル軍事独裁時代のリオデジャネイロ、文化大革命初期の中国、フランス五月危機のパリ、ソビエト連邦のチェコスロバキアのプラハ侵攻、激動の1966年から1968年を切りとったアーカイブ映像と、中国を訪れた監督の母親が撮ったアマチュアのフッテージで構成されている。1968年という年は世界的規模で一般大衆、特に若者が社会に不服従を申し立てをした年だった。旧態依然の父権性、白人男性優位、階級区分、兵役拒否など、特にフランスの五月危機は60年代後半の若者の怒りに点火して、その後の社会意識に変化をもたらした。監督独自の視点で纏められている。手持ちの16ミリ、スーパー 8mm フィルムなどで撮られている。まだ iPhone や SNS がなかった時代の記録。 (文責:管理人)
(文化大革命初期の中国、1966年)
(当時の中国を訪問した監督の母親のグループのフッテージ)
(ソビエト連邦のチェコスロバキアのプラハ侵攻、1968年)
(フランスの名門大学ソルボンヌの学生、パリ五月革命、1968年)
(石畳を粉砕した投石で警察の催涙弾や放水に対抗したフランスの学生たち)
(軍事独裁時代のリオデジャネイロ、1968年3月)
*監督キャリア&フィルモグラフィー*
★ジョアン・モレイラ・サレスJoan Moreira Salles、1962年リオデジャネイロ生れ、監督、製作者、脚本家、編集者。ブラジルのセレブの出身。リオデジャネイロ・カトリック大学で経済学を専攻、ニュージャージー州のプリンストン大学卒。『セントラル・ステ-ション』(98)、『ビハインド・ザ・サン』(01)、『モーターサイクル・ダイアリーズ』(04)のウォルター・サレス監督は実兄、ブランカ・ビアナ・サレスは夫人。
(モレイラ・サレス監督とブランカ・ビアナ・サレス夫人)
1987年「China, o Imperio do Centro」(104分、デビュー作)
1990年「Blues」(アフリカンアメリカ人の音楽)
1999年「Noíicias de una Guerra Particular」
(スペイン合作、57分、カティア・ルンドとの共同監督)
マラガ映画祭2001スペシャル・メンション
2003年「Nelson Freire」(102分、ピアニスト、ネルソン・フレイレのビオピック)
ACIE賞ブラジル04、シネマ・ブラジル大賞04、サンパウロ美術評論家協会賞04受賞
2004年「Entreatos」(117分)
2002年大統領選挙の候補者ルーラ・ダ・シルヴァに同行して撮った政治キャンペーン
ACIE賞ブラジル05、ハバナ映画祭05サンゴ賞2席、サンパウロ美術評論家協会賞05受賞
2007年「Santiago」(80分、モノクロ)
サレス家で30年間に亘って働いた執事サンティアゴについてのドキュメンタリー
シネマ・ドゥ・リール賞2007、リマ・ラテンアメリカ映画祭07第1席、
マイアミ映画祭08審査員大賞受賞
2017年「No Intenso Agora」省略
(マルタ・アルゲリッチと連弾するネルソン・フレイレ、
訪日回数も多く2017年、2018年連続で「すみだトリフォニーホール」でリサイタルを開催)
(ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァをあしらった「Entreatos」)
(執事サンティアゴをあしらった「Santiago」)
12月公開『セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー!』のご案内 ― 2018年10月14日 18:41
『ビヘイビア』の監督エルネスト・ダラナスの新作「Sergio & Sergei」
★マラガ映画祭2018で作品紹介をしたエルネスト・ダラナス・セラノの新作「Sergio & Sergei」が、『セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー!』という長たらしい邦題で12月1日公開が決定したようです。キューバ=スペイン=米国の合作映画、スペイン語、英語、ロシア語が入り乱れ、ナイナイ尽くしの両国が繰り広げる辛口コメディ。前作の『ビヘイビア』(「Conducta」)はマラガ映画祭2014のラテンアメリカ部門の作品・監督・観客賞などを受賞しましたが、新作はブラジルのグスタボ・ピッツィの『ベンジーニョ』(「Benzinho」)が作品賞「金のビスナガ」を受賞、無冠に終わりました。『ベンジーニョ』はラテンビート2018で上映が決定しています(タイム・テーブルは目下未定)。
★キャストは大部分がキューバ人(『ビヘイビア』のキャストが起用されており、セルゲイ役エクトル・ノアス、ウリセス役アルマンド・ミゲル・ゴメス他)、ロシア生まれだがスペインで仕事をしているローランド・ライヤーハノフ、ダブリン生れだが子供のとき家族とカナダに移住、もっぱらアメリカのTVシリーズに出演しているA.J. バックリー、最も異色なのがアメリカのロン・パールマンでしょうね。公式サイトと当ブログの俳優名・役名のカタカナ表記が異なりますが、当たらずとも遠からず、所詮外国語表記には限界がありますから悪しからず。それにしても「セルジオ」というのは何語読みでしょうか。
ハビエル・バルデム、新作はスピルバーグ製作のTVミニシリーズ ― 2018年10月17日 14:05
「Todos lo saben」の次はTVミニシリーズ「Cortés」
★去る9月14日、カンヌ映画祭2018のオープニング作品だったアスガー・ファルハディの「Todos lo saben」(「Everybody Knows」)が、やっとスペインで公開された。オープニングに選ばれたスペイン映画は、過去にはアルモドバルの『バッド・エデュケーション』(04)があります。オスカー賞2冠に輝くイランの監督(『別離』『セールスマン』)、日本でも知名度のあるスペインのエリート俳優+アルゼンチン俳優、おまけに子供誘拐のミステリーとくれば公開は決まりです。日本公開は来年6月になりますが、邦題は『エブリバディ・ノウズ』になるようです。当ブログでは2016年の製作発表段階から記事にしていましたが、カンヌまでなかなかプロットが見えてこなかった。苦悩する母国イランを離れて、独自の視点で映画を撮り続けている監督を無視することはできません。出来はどうあれ百聞は一見に如かずです。
追記:邦題『誰もがそれを知っている』で2019年6月1日公開決定。
*「Todos lo saben」の作品・キャスト・スタッフ紹介は、コチラ⇒2018年05月08日
(幸せに酔う結婚式のシーンを入れた、スペイン公開のポスター)
(カンヌ映画祭の英語ポスター)
★スペイン公開日にエルパイスの編集室を訪れたハビエル・バルデムが撮影余話を語ってくれた。本作のアイデアは、ファルハディ監督が4歳だったお嬢さん連れでスペインを家族旅行したとき、行方不明になっている子供の「尋ね人」の張り紙を見たとき浮かんだという。「私は嫉妬心が強く妬みぶかい。しかし少なくともそのことを自覚している」とバルデムは笑いながら告白。監督が映画を撮りたいと最初にコンタクトをとってきたのは(自分でなく)ペネロペ・クルスだった。自分にオファーがあったのは1か月半後、「とても気分がよかったし、私の自惚れも満たされた」とジョークを飛ばした。
(パイス紙の編集室で冗談をとばすハビエル・バルデム、2018年9月14日)
★バルデムは、監督が準備期間中にスペインに居を移しスペイン語をマスター、完璧なスペイン映画を撮ることに力を注いでいたことを指摘した。監督がクランクイン時に既に「マドリード近郊の、ラ・マンチャの乾いた風土や生粋の村民の、逞しく、親切な、愛すべき気質を理解していた」と、その抜きんでた才能と努力を褒めていた。妹の結婚式に出席するため家族を伴って、ブエノスアイレスから故郷ラ・マンチャに里帰りした女性が払う過去の請求書。踊り好きお祭り好きの村民が披露宴で幸福感に酔いしれているとき誘拐事件が起きる。犯人が隣人であることがはっきりしてくる。一見仲睦まじく見えた共同体の重さは未来永劫に続くのか。時には嘘も方便、共生には必要なんですが。
★クルス、バルデムほかの主な共演者は、リカルド・ダリン、エドゥアルド・フェルナンデス、ラモン・バレア、バルバラ・レニー、インマ・クエスタ、エルビラ・ミンゲスとエリート演技派が集合している。それぞれがエゴをむき出すこともなく撮影はスムーズだった。それは「各人とも台本を読み込んでいて、人物のつながりをよく理解していたからだ」とバルデムは語っていた。
(カンヌ映画祭オープニングに勢揃いしたスタッフとキャスト)
(共演中でも仕事を家庭に持ち込まないという賢いカップル)
★監督をする可能性についての質問には、「その気はない。多くの俳優が挑戦してることは知ってるが、取り巻く状況を考えると、自分にはきつすぎる。優柔不断な人間だから耐えられないだろう。さしあたっては監督業は考えていない」、特別撮りたいテーマがあるなら別だが、別にないようです。
★新しい作品は、スピルバーグ製作のTVミニシリーズ「Cortés」(4エピソード)でスペインの征服者エルナン・コルテス役。二つの文明の衝突、二人の戦略家、メシカ族アステカ帝国の第9代君主モンテスマとコルテスの遭遇を描く歴史ドラマだそうです。まだ詳細は不明です。スピルバーグの大ファンで『E.T.』はスクリーンで24回観た由(!)、「監督は理知的で謙虚、印象深い映画を撮る可能性を秘めている」と絶賛している。
グラシア・ケレヘタ、常軌を逸したコメディに方向転換? ― 2018年10月23日 13:52
女三人よれば姦しい、笑いと殺し、マリベル・ベルドゥが大奮闘!
★先日、ハビエル・フェセルのコメディ「Campeones」(アカデミー賞スペイン代表作品)が映画館を涙と笑いでいっぱいにしている記事をご紹介しましたが、今回は笑いと殺しで会場を沸かせているグラシア・ケレヘタの常軌を逸したコメディ「Ola de crímenes」のご紹介(255館で上映)。スペインのは失業率は、幾分改善されたとはいえ相変わらずEU域内では高い。そんなこととは無関係なのか、日常に笑いが少ないからせめて映画館でもと考えるのか、よくよくコメディが好きな国民です。
*「Campeones」の内容紹介は、コチラ⇒2018年06月12日
★「Campeones」の記録を塗り替えるとは思いませんが、来年のゴヤ賞候補が視野に入ってきました。主演女優の三人は、ケレヘタお気に入りのマリベル・ベルドゥ、最近エルネスト・アルテリオと離婚して自由の身になったフアナ・アコスタ、ホセ・ルイシ・ガルシの常連だったパウラ・エチェバリア。迎え撃つ男性陣はドラマもコメディも何でも来いのベテランアントニオ・レシネス、ルイス・トサール、ハビエル・カマラ、ラウル・アレバロ、これでは勝ち目がないと、TVシリーズで活躍のラウル・ペーニャ、親の七光りを武器に人気急上昇中のミゲル・ベルナルドー、目下売り出し中のアシエル・リカルテなどの若手を招集、若い女性ファンを取り込もうという魂胆です。バスクの州都ビルバオを舞台に繰り広げられる殺人劇とは?
(悪女三人組、左からパウラ・エチェバリア、マリベル・ベルドゥ、フアナ・アコスタ)
「Ola de crímenes」2018年
製作:Bowfinger International Pistures / Crimen Zinema / Historias del Tio Luis / Mediaset Espana / Mogambo / Movistar+ / Telecinco Cinema
監督:グラシア・ケレヘタ
脚本:ルイス・マリアス
音楽:フェデリコ・フシド
撮影:アンヘル・アモロス、ダビ・オメデス
編集:レイレ・アロンソ
美術:ギジェルモ・ジャグノ
衣装デザイン:パトリシア・モネー Monné
メイクアップ&ヘアー:ミル・カブレル、トノ・ガルソン、ノエ・モンテス
プロダクション・マネジメント:アシィエル・ぺレス
キャスティング:ロサ・エステベス
製作者:アルバロ・アウグスティン、Ghislain Barrois、ルイス・マリアス、(以下エグゼクティブ)エドゥアルド・カルネロス、マリア・ルイサ・グティエレス、リカルド・ガルシア・アロッホ、パロマ・モリナ、他
データ:製作国スペイン、スペイン語、2018年、ブラックコメディ、スリラー、撮影地ビルバオ、公開スペイン10月05日、ポルトガル2019年01月03日
キャスト:マリベル・ベルドゥ(主婦レイレ)、ルイス・トサール*(レイレの元夫コスメ)、パウラ・エチェバリア(コスメの新妻バネサ)、フアナ・アコスタ(弁護士スサナ、バネサの友人)、アントニオ・レシネス(刑事アンドニ)、ラウル・ペーニャ(アンドニの部下フアンチュ)、アシエル・リカルテ(レイレの息子アシエル)、ミゲル・ベルナルドー(アシエルの親友フレン)、ハビエル・カマラ*(司祭)、ラウル・アレバロ*(タクシードライバー)、ノラ・ナバス*(イケルネ)、モンセ・プラ(エベリン)、テレサ・ロサノ(祖母パキ)、その他大勢(*印は特別出演)
物語:レイレはビルバオ郊外の庭付き一戸建ての家で何不自由なく息子と快適に暮らしていた。ところが年頃になった息子アシエルが、元夫のコスメを鋏で刺し殺すという予想だにしないことで天と地がひっくり返ってしまった。息子を助けたい一心で、犯人は外部から闖入したという偽装工作に着手する。コスメの新しい妻バネサの汚職事件の隠蔽、その友人弁護士スサナの介入、息子の親友がレイレにぞっこんになるなど、バスク州警察の捜査は混乱して、あろうことかレイレに殺害容疑がかかってきて・・・
友人の悪事を知ったら、あなたならどうします?
★ざっとこんなお話ですから、コラムニストの性格もあって各紙の評価は真っ二つです。方向転換かと評されるグラシア・ケレヘタ監督、「私にはこんな脚本思いつかない」と苦笑い。脚本を執筆したルイス・マリアスについては、「Fuego」を監督した折にご紹介しています。13歳でデビュー、既に35年に及ぶ芸歴のあるマリベル・ベルドゥ(マドリード1970)は、「15 años y un diía」やコメディ「Felices 140」などで、監督と常に二人三脚で映画を作ってきている。ケレヘタと言えばベルドゥ、ベルドゥと言えばケレヘタと言われるほどの仲、「撮影中は生傷が絶えなくて、今でも首が左に回らないの」と、ベルドゥは大口開けて笑う。
(ロエベのケープとパンタロン、シャネルのネックレス、ジョルジオ・アルマーニのブレスレット、ニナ・リッチの帽子、プロモーションのためエルパイス紙のインタビューに応じるベルドゥ)
(レイレの金持ちの元夫役ルイス・トサール、残した荷物を取りに戻って昇天してしまう)
(レイレと尊属殺人犯の息子アシエル役のアシエル・リカルテ)
(レイレの聴聞司祭役で特別出演のハビエル・カマラ)
(女性たちに翻弄されるバスク州警察の刑事役アントニオ・レシネスとラウル・ペーニャ)
(レイレに恋する息子の親友フレン役のミゲル・ベルナルドーと)
(コスメの現妻バネサ役のパウラ・エチェバリアと友人弁護士スサナ役のフアナ・アコスタ)
(タクシードライバー役のラウル・アレバロと)
★女性が主役の映画が曲がり角に来ており、本作はある意味で歴史的な瞬間と語るフアナ・アコスタとパウラ・エチェバリア。品格があるとは思えないセリフも飛び出すらしくハチャメチャなストーリーだが、女性たちは混沌とした男世界で大いに苦しんでいることも事実。最後のオチが観客を納得させられるかどうか。「自由に撮らせてくれた。仕事の本質は変わらないけれど、形式は変わった」とケレヘタ監督。また「自分がTVシリーズを手掛けるなんて考えてもいなかったが挑戦しているのは、自分でも驚きだ」とも。
★キャストのなかで当ブログ初登場の一人、親の七光り組と上述したミゲル・ベルナルドーBernardeau(1996、カタカナ表記?)、親友の母親レイレが好きになってしまう役。初めての大役だが、Netflixで配信中のTVシリーズ『エリート』(「Elite」8話)に既に登場している。長身のイケメン、ドラマでは建設会社社長を父に持つ自信過剰の気障なエリート高校の生徒を演じているが、二十歳過ぎて高校生役はいかにも老けすぎている。母親アナ・ドゥアートは、長寿TVシリーズ「Cuéntame cómo pasó」でイマノル・アリアスと夫婦役を演じた女優、父親ミゲル・アンヘル・ベルナルドーは、本ドラマの製作者。業界の厳しさを知る両親は息子の俳優志望に躊躇していたようだが、現在はバックアップを惜しまない。ドラマもコメディもこなせそうだが未知数です。
(TVドラマ『エリート』出演のミゲル・ベルナルドー)
★プロデューサーの顔ぶれは上述したように豪華版です。アルバロ・アウグスティン、Ghislain Barroisは、『インポッシブル』『KIKI~愛のトライ&エラー』『怪物はささやく』「Perfectos desconocidos」、マリア・ルイサ・グティエレスは、「トレンテ」シリーズ(3、4、5)、『黒い雪』「No dormiras」、リカルド・ガルシア・アロッホは『マーシュランド』と、ブラックコメディ、スリラーを数多く手掛けている製作者たちが参画しています。ケレヘタ監督、脚本家ルイス・マリアスについては以下の関連記事で。
(スペイン公開フォトコール、ケレヘタ監督、ベルドゥ他の出演者)
関連記事・管理人覚え
*「Fuego」監督ルイス・マリアス紹介記事は、コチラ⇒2014年12月11日
*「15 años y un día」の紹介記事は、コチラ⇒2014年01月26日
*「Felices 140」の紹介記事は、コチラ⇒2015年01月07日
* フアナ・アコスタ離婚劇については、コチラ⇒2018年07月11日
* ベルドゥ主演の『アブラカダブラ』(ラテンビート2018上映)は、コチラ⇒2017年07月05日
第63回バジャドリード映画祭2018*マット・ディロンにスパイク栄誉賞 ― 2018年10月27日 15:04
ミゲル・アンヘル・ビバスの「Tu hijo」で開幕
(映画祭総ディレクターのハビエル・アングロ、市長オスカル・プエンテ、
トロフィーを手にしているのが文化担当議員のアナ・レドンド)
★去る10月20日(~27日)、通称SEMINCI(Semana Internacional de Cine de Valladolid、1956年設立、バジャドリード市が後援)で親しまれているバジャドリード映画祭2018がミゲル・アンヘル・ビバスの「Tu hijo」で開幕しました。17歳の息子を殺された父親の復讐劇、その父親にホセ・コロナドが扮します。最優秀作品賞は「Espiga de Oro金の穂」、日本ではゴールデン・スパイク賞と紹介されている。今回スパイク栄誉賞が米国の俳優・監督マット・ディロンに贈られることになって現地はファンで盛り上がっているようです。今年で63回とスペインではサンセバスチャン映画祭に次ぐ老舗の映画祭、過去にはスタンリー・キューブリックの『時計じかけのオレンジ』(71)、ビリー・ワイルダーの『フロント・ぺージ』(74)、ミロス・フォアマンの『カッコーの巣の上で』(75)、リドリー・スコットの『テルマ&ルイーズ』(91)など、伝説に残るような作品が受賞しています。
*SEMINCIの紹介記事は、コチラ⇒2016年11月15日
(本映画祭はレッドではなくグリーンカーペット、マット・ディロン、10月20日)
(ホセ・コロナドからスパイク栄誉賞を受け取るマット・ディロン、10月21日)
★国際映画祭ですが、やはり自国の映画に話題が集中、セクション・オフィシアルのオープニング作品「Tu hijo」のミゲル・アンヘル・ビバス監督以下、主演のホセ・コロナド、その息子になる若手ポル・モネンなどキャスト陣が脚光を浴びているようでした。ホセ・コロナドは昨年4月に心臓のステント手術を受けたばかりですが、仕事をセーブする気配もなく、マドリード暗黒街のドンに扮したTVシリーズ「Gigantes」(8話)出演など、強面が幸いして引っ張りだこ状態です。
(左から、シンボルマークを囲んでポル・モネン、ビバス監督、ホセ・コロナド)
(共演のアナ・ワヘネル、エステル・エクスポシトも加わり、グリーンカーペットに勢揃い)
★映画国民賞にプロデューサーのエステル・ガルシアが受賞したこともあって、初めて女性プロヂューサー27人が一堂に会しました(写真下、前列左がエステル・ガルシア)。日本と比較して多いのか少ないのか分かりませんが壮観です。女性シネアストの機会均等、作品を裏から支えるだけでなく、製作者の可視化も必要ということもあるようです。
(開会式が行われるカルデロン劇場に会した女性プロデューサーたち、10月20日)
★10月26日、今年は以前ジャーナリストであったレティシア王妃が現地を表敬訪問され、サイレント喜劇『ロイドの要人無用』(1923)を鑑賞された(フレッド・ニューメイヤー&サム・テイラー監督の無声映画「Safety Last !」)。主演は三大喜劇俳優の一人ハロルド・ロイド。日本でも無声映画のファンが増え、ロイド喜劇シリーズはDVDで鑑賞できる。
(映画祭関係者に囲まれて記念撮影に臨んだレティシア王妃、10月26日)
(『ロイドの要心無用』のスペイン題「El hombre mosca」のポスター)
★間もなく受賞結果が発表になりますが、いずれアップいたします。以下の写真は主な出席者。
(開会式で挨拶するカルロス・サウラ)
(ファンの求めに応じてスマホにおさまるバルバラ・レニー、グリーンカーペットで)
ダニエル・サンチェス・アレバロの新作「Diecisiete」はNetflixオリジナル作品 ― 2018年10月29日 16:17
6年間の沈黙を破って映画に戻ってきた!
★9月半ばカンタブリアでクランクインしたダニエル・サンチェス・アレバロの新作「Diecisiete」は、スペイン映画としては「Netflixオリジナル作品」4作目になるそうです。1作目は既に配信されているロヘル・グアルの『7年間』(16)、2作目がボルハ・コベアガの『となりのテロリスト』(17)、3作目がイサベル・コイシェの「Elisa y Marcela」で2019年にリリースされる由。コイシェ監督の新作は、1901年スペインで初めて同性婚をしたレスビアン・カップル、エリサ・サンチェスとマルセラ・ガルシアの実話を素材にしている。
*「Elisa y Marcela」の紹介記事は、コチラ⇒2018年02月08日
★「Diecisiete」はまだクランクインしたばかりですが、ストーリーはほぼ固まっているようです。17歳になるエクトル(ビエル・モントロ)が少年センターに入所して2年が経つ。非社交的で他人と関係が結べないエクトルは、動物を利用しての社会復帰のセラピーを受けることになる。そこで彼と同じように内気で不愛想な羊という意味のオベハという牝犬と出会い、変わらぬ繋がりをもてるようになる。しかし数ヵ月後オベハは姿を消す、それは飼い主が見つかったからだ。エクトルはこの現実を受け入れることができない。あと2ヵ月で入所期間が終わるというときオベハを探しにセンターを抜け出す。連絡を受けたエクトルの法廷後見人である兄イスマイル(ナチョ・サンチェス)は、祖母の古い老人施設に潜んでいたエクトルを見つけ出す。しかしオベハと一緒でなければセンターに戻ることを承知しないエクトル、連れ帰らなければならないイスマイル、兄弟は困難に直面する。後2日経つとエクトルは18歳になってしまう、もう少年ではいられない・・・。
(サンチェス・アレバロ監督、ビエル・モントロ、ナチョ・サンチェス、カンタブリアで)
(ビエル・モントロに演技指導をする監督)
★ダニエル・サンチェス・アレバロ映画には欠かせない、アントニオ・デ・ラ・トーレ、キム・グティエレス、ラウル・アレバロなどの常連の姿はない。兄役ナチョ・サンチェスは、今年のマックス・シアター賞受賞者だが長編映画出演は初めて。ネットフリックス配信のTVシリーズ『海のカテドラル』(7話)に罪人役で出演しているようだ。弟役ビエル・モントロはマルティン・オダラの『黒い雪』(アルゼンチン=スペイン合作、17、Netflix配信)でスバラグリアの若い頃を演じている。なんだかNetflixの宣伝をしているような気分になってきた。
(ナチョ・サンチェス、第21回マックス・シアター賞の授賞式にて)
★ダニエル・サンチェス・アレバロ(マドリード、1970)は、2006年『漆黒のような深い青』でデビュー、翌年のゴヤ賞新人監督賞を受賞した。本作は「ラテンビート2007」で上映され、監督も来日した。2009年、主役のデ・ラ・トーレを30キロほど太らせて撮った『デブたち』、2011年、コミージャスを舞台に大人になりきれない3人の従兄弟たちの一夏を描いたコメディ『マルティナの住む街』と話題作が立て続けに上映された。しかし2013年「La gran familia española」を最後に沈黙してしまった。何をしていたのかというと小説を執筆していた。「La isla de Alice」(2015年刊)というタイトルの小説は第64回プラネタ賞の最終選考まで残ったスリラー物、間もなくアメリカでも翻訳書が刊行される。いずれ映画化も視野に入っているようです。小説も悪くないけど、やっぱり映画を撮らなくちゃ。
(8万部を売ったという「La isla de Alice」を手にしたサンチェス・アレバロ)
★「前進するには一歩後退が必要、原点に戻って撮りたい」と監督。製作はホセ・アントニオ・フェレスのAtipica Films、Netflixオリジナル作品、2019年配信。
追記:邦題『SEVENTEEN セブンティーン』で2019年10月18日配信開始
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