ドキュメンタリー『激情の時』*ラテンビート2018 ④ ― 2018年10月12日 10:49
アーカイブ映像で綴った激動の1960年代―パリ、中国、プラハ、リオ
★邦題『激情の時』は、山形国際ドキュメンタリー映画祭2017で上映されたときに付けられたもの、審査員特別賞を受賞した。ジョアン・モレイラ・サレス監督はドキュメンタリー映像作家として国際的に認知されている(現在のところフィクションは撮っていない)。『激情の時』は2007年の「Santiago」以来、5年の歳月を掛けて10年ぶりに完成させたもの。1966年文化大革命初期の中国、1968年ソビエト連邦のプラハ侵攻、パリ1968年五月革命(フランスの五月危機)、軍事独裁時代(1964~85)のリオデジャネイロなどのアーカイブ映像で綴ったドキュメンタリー。

『激情の時』(原題「No Intenso Agora」、英題「In the Intense Now」)
製作:Videofilmes Producoes Artististicas Ltda.
監督・脚本:ジョアン・モレイラ・サレス
編集:エドゥアルド・エスコレル、Lais Lifschitz
音楽:ホドリゴ・レアンRodrigo Leao
データ:製作国ブラジル、言語ポルトガル語、2017年、127分、ドキュメンタリー、現代史、モノクロ&カラー、公開ブラジル2017年11月、他2018年に米国、ポーランド、コロンビアなどで公開
映画祭・受賞歴:シネマ・ドゥ・リール2017オリジナル音楽賞(ホドリゴ・レアン)、サンティアゴ映画祭SANFICスペシャル・メンション、山形国際ドキュメンタリー映画祭2017審査員特別賞、サンパウロ美術評論家協会2018APCA賞、以上受賞。ベルリン映画祭2017、ブエノスアイレス国際インディペンデント映画祭BAFICI、パリ・ブラジル映画祭、エルサレム、サンセバスチャン(サバルテギ-タバカレラ部門)、サンティアゴ、リマ、シカゴ、ウィーン、アムステルダム・ドキュメンタリー、各映画祭に出品。シネマ・ブラジル大賞2018(ドキュメンタリー、編集)、イベロアメリカ・フェニックス賞2017(作品・音楽)にノミネートされた。

(来日した監督と司会の荒井幸博、山形国際ドキュメンタリー映画祭2017)
解説:ブラジル軍事独裁時代のリオデジャネイロ、文化大革命初期の中国、フランス五月危機のパリ、ソビエト連邦のチェコスロバキアのプラハ侵攻、激動の1966年から1968年を切りとったアーカイブ映像と、中国を訪れた監督の母親が撮ったアマチュアのフッテージで構成されている。1968年という年は世界的規模で一般大衆、特に若者が社会に不服従を申し立てをした年だった。旧態依然の父権性、白人男性優位、階級区分、兵役拒否など、特にフランスの五月危機は60年代後半の若者の怒りに点火して、その後の社会意識に変化をもたらした。監督独自の視点で纏められている。手持ちの16ミリ、スーパー 8mm フィルムなどで撮られている。まだ iPhone や SNS がなかった時代の記録。 (文責:管理人)

(文化大革命初期の中国、1966年)

(当時の中国を訪問した監督の母親のグループのフッテージ)

(ソビエト連邦のチェコスロバキアのプラハ侵攻、1968年)

(フランスの名門大学ソルボンヌの学生、パリ五月革命、1968年)

(石畳を粉砕した投石で警察の催涙弾や放水に対抗したフランスの学生たち)

(軍事独裁時代のリオデジャネイロ、1968年3月)
*監督キャリア&フィルモグラフィー*
★ジョアン・モレイラ・サレスJoan Moreira Salles、1962年リオデジャネイロ生れ、監督、製作者、脚本家、編集者。ブラジルのセレブの出身。リオデジャネイロ・カトリック大学で経済学を専攻、ニュージャージー州のプリンストン大学卒。『セントラル・ステ-ション』(98)、『ビハインド・ザ・サン』(01)、『モーターサイクル・ダイアリーズ』(04)のウォルター・サレス監督は実兄、ブランカ・ビアナ・サレスは夫人。

(モレイラ・サレス監督とブランカ・ビアナ・サレス夫人)
1987年「China, o Imperio do Centro」(104分、デビュー作)
1990年「Blues」(アフリカンアメリカ人の音楽)
1999年「Noíicias de una Guerra Particular」
(スペイン合作、57分、カティア・ルンドとの共同監督)
マラガ映画祭2001スペシャル・メンション
2003年「Nelson Freire」(102分、ピアニスト、ネルソン・フレイレのビオピック)
ACIE賞ブラジル04、シネマ・ブラジル大賞04、サンパウロ美術評論家協会賞04受賞
2004年「Entreatos」(117分)
2002年大統領選挙の候補者ルーラ・ダ・シルヴァに同行して撮った政治キャンペーン
ACIE賞ブラジル05、ハバナ映画祭05サンゴ賞2席、サンパウロ美術評論家協会賞05受賞
2007年「Santiago」(80分、モノクロ)
サレス家で30年間に亘って働いた執事サンティアゴについてのドキュメンタリー
シネマ・ドゥ・リール賞2007、リマ・ラテンアメリカ映画祭07第1席、
マイアミ映画祭08審査員大賞受賞
2017年「No Intenso Agora」省略


(マルタ・アルゲリッチと連弾するネルソン・フレイレ、
訪日回数も多く2017年、2018年連続で「すみだトリフォニーホール」でリサイタルを開催)

(ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァをあしらった「Entreatos」)

(執事サンティアゴをあしらった「Santiago」)
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