ニューディレクターズ部門11作発表*サンセバスチャン映画祭2023 ⑦2023年08月09日 11:03

           ニューディレクターズ部門11作品ノミネート発表

   

        

 

★去る727日、サンセバスチャン映画祭総指揮者ホセ・ルイス・レボルディノス、後援者クチャバンク・ギブスコア・ネットワーク代表のマルタ・マディナベイティア出席のもと、ニューディレクターズ部門11作品が発表になりました。このセクションは2作目までが対象で、作品賞はクチャバンク・ニューディレクターズ賞、副賞として50.000ユーロとスペイン国内での公開が約束されます。他に18歳から25歳までの学生150人が審査員であるユースTCMがあります。

  

★オープニング作品は中国のリャン・ミンLiang Mingの「Xiao yao you / Carefree Days」、既に報道されているように日本からは、村瀬大智『霧の淵』がクロージングに選ばれました。彼は1997年滋賀県信楽生れ、今年の最年少候補者となりました。スペイン語映画はスペインとコロンビアから、他にイラン、インド、カザフスタン、ロシア、シンガポール、カナダ、スウェーデン、各1作ずつです。全作ご紹介する余裕はなく、スペインとコロンビアのスペイン語映画2だけアップいたします。

    

1)La estrella azul / The Blue Star(スペイン=アルゼンチン)

 監督ハビエル・マシペ・コスタ(テルエル1987)は、監督、脚本家、フィルム編集者。長編2作目、サラゴサ出身のミュージシャンで詩人のマウリシオ・アスナルの人生にインスピレーションを受けて製作されたフィクション。詩人は2000年、わずか36歳という若さで生涯を閉じました。マシペの長編デビュー作は「Los inconvenientes de no ser Dios」(14)、サラゴサ映画祭の監督第1作賞を受賞した。ほか短編数編を発表しており、うち2014年のポルトガル語で撮った「Os meninos de rio」(14分)は、ゴヤ賞2016にノミネートされたほか、CinEuphoria 2016 短編賞、シモン賞2015、パベス賞2015、モンテレイFF審査員メンション、サラゴサFF、ウエルバFFゴールデン・コロン賞など作品賞を含む、監督賞、脚本賞を多数受賞した。2019年のコメディ「Gastos incluidos」(21分)もゴヤ賞2021ではノミネートに終わったが、シモン賞2020短編賞を受賞した。ドキュメンタリー「Vivir sin agua」(08)を撮っている。

    

     

     (長編デビュー作「Los inconvenientes de no ser Dios」のポスター)

    

    

 (短編「Gastos incluidos」でシモン賞のトロフィーを手にしたハビエル・マシぺ)

 

キャスト:ペペ・ロレンテ(マウリシオ・アスナル)、クティ・カラバハル(ドン・カルロス)、ブルーナ・クシ、マルク・ロドリゲス、マリエラ・カラバハル、ノエリア・ベレニセ・ディアス、パブロ・アルバレス(青年マウリシオ)、カテリナ・ソペラナ、マヌエル・チャコン(マネージャー)

 

ストーリー90年代、スペインのロックンロール・ミュージシャン、マウリシオは自分の天職を再発見するためにアルゼンチンへ旅立ちます。そこで彼は高齢のマエストロ、最も著名なフォークロアソングの作者であるにもかかわらず生活に困窮しているドン・カルロスと予期せぬ出会いをする。カルロスは旅人を歓迎し、実に贅沢で風変わりなデュオが誕生する。

    

         

  (クティ・カラバハル扮するドン・カルロスとペペ・ロレンテ扮するマウリシオ)

 

データ:製作国スペイン=アルゼンチン、2023年、スペイン語、ドラマ、127分、撮影20203月クランクインしたがパンデミックのため中断、コロナ以後に再開して20232月に終了した。主な撮影地はマドリード、アルゼンチンのサンティアゴ・デル・エステロ。スペイン配給はワンダビジョン、国際販売はフィルム・ファクトリー。モビスター+、アラゴンTVICAAINCAAからの資金提供を受け、アラゴン州政府と州議会、サラゴサ市議会、サンティアゴ・デル・エステロ政府ほかの支援を受けている。

     

      

           (バンド、ゴールデン・ジッパーズの4人)

 

製作:Mod Producciones / El Pez Amarillo / Cimarrón / La Charito Films / Prisma

製作者:シモン・デ・サンティアゴ、エルナン・ムサルッピ、アメリア・エルナンデス、他

音楽:ペテコ・カラバハル、アリシア・モロテ

撮影:アルバロ・メディナ、ルイ・ポサス

 

解説1981年サラゴサで、アスナル・マウリシオを中心に結成されたバンド、ゴールデン・ジッパーGolden Zippers は、スペインにおける国民的ロカビリーのパイオニア的な存在の一つ。1984年、サラゴサで開催された大イベントの直後解散、マウリシオはベーシストのミゲル・マタと Más Birras を結成、ドラマーのマノロ・レアル(愛称ロロ)は Los Dynamos へ、エレキギターのロビーは、カントリー・ミュージックに根ざした「Rodeo」 を結成している。

   

         

          (撮影中のクティ・カラバハルとペペ・ロレンテ)

 

★クティ・カラバハル(1947)は、アルゼンチンのフォルクローレの伝統をもつ音楽家一家カラバハル家の12人いる兄弟姉妹の末っ子。映画に登場するカルロス・カラバハル(19292006)は5番目にあたり、歌手、作曲家、チャカレラの父として知られ、20061月に開催されたチャカレラ国立フェスティバルでの公演を最後に、脳卒中で死去している。弟にあたるクティ・カラバハルが演じている。

  

★次回はコロンビアのフアン・セバスティアン・ケブラダの「El otro lado / The Other Side」のアップを予定しています。


ベロドロモにシリーズ2作がプレミア*サンセバスチャン映画祭2023 ⑥2023年07月24日 16:34

      アーティストC. Tanganaの創作プロセスを探求する4年間の旅

 

        

 

★賞には絡まないベロドロモ部門は、約3000人の観客が収容できる競輪場を会場にしています。例年人気のエンターテインメントが上映されます。今年は3部構成のシリーズ「Esta ambición desmedida / This Excessive Ambition」(135分)とTVミニシリーズのホラー「El otro lado / The Other Side」(6話)の2作がプレミアされるようです。前者の監督は、サントス・バカナ、クリスティナ・トレナス、ロヘリオ・ゴンサレスの3監督、後者はハビエル・ルイス・カルデラとアルベルト・デ・トロの2監督です。

 

 

1)Esta ambición desmedida / This Excessive Ambition(スペイン)

  ドキュメンタリー・ドラマ、スペイン語、135

監督:サントス・バカナ、クリスティナ・トレナス、ロヘリオ・ゴンサレス

サントス・バカナの本名はアルバロ・サントス(マドリード1991)、バレンシアの地中海に面したリゾート地ベニドルムのプレイモン・バカナから採られた。ミュージック・ビデオの監督、編集者、俳優、制作会社「Little Spain L.A. リトル・スペイン・ロサンゼルス」設立者の一人、ロヘリオ・ゴンサレス監督を通じて、2016年ラテングラミー賞の開催中だったラスベガスで初めてアーティストのC. TanganaC. タンガナ)に出会った。

    

    

                  

   (サントス・バカナ)

 

アーティストC. タンガナの本名はアントン・アルバレス・アルファロ(マドリード1990)、ラッパー兼ソングライター、愛称〈Puchoプーチョ〉で知られている。サントス・バカナはプーチョのミュージック・ビデオを制作している。2018年のミュージック・ビデオ「C. Tangana & Nino de Elche: Un Veneno」以来、34分のビデオを10本ほど撮っおり、うち代表作として「C. Tangana Alizzz: Para Repartir」(19)、「C. TanganaDemasiadas Mujeres」(20)などがある。

 

        

        (C. タンガナ)

 

        

                 (「C. TanganaDemasiadas Mujeres」から)

 

ロヘリオ・ゴンサレス(マドリード1991)は監督、編集者。バカナとラスベガス空港で出会い、数時間後にはC. タンガナの部屋を訪れたという二人は互いに兄弟と思っている。ロスでサントス・バカナを主役にした短編ドキュメンタリー「Santos」(219分)を監督している。またC. タンガナが監督したミュージック・ビデオ「C. Tangana feat. Nathy Peluso: Ateo」(21)のフィルム編集を手掛けている。

    

     

    (「Santos」のポスター)

   

    

     (サントス・バカナ、ロヘリオ・ゴンサレス、C. タンガナの3人組)

 

クリスティナ・トレナス(マドリード1987)は監督、脚本家、製作者、撮影監督。サントス・バカナの協力者の一人。製作者としてC. タンガナのミュージック・ビデオ全作を手掛けている。長編「From 7 to Eleven」(17)ほか、短編多数、2021年、マリア・ルビオとC. タンガナのミュージック・ビデオを監督している。フアン・ピンサスの「New York Shadow」の撮影監督として、ゴヤ賞2014にノミネートされ、撮影監督賞ノミネート最初の女性として話題になった。

 

解説:「El Madrileño」のレコードの成功を受け、C. タンガナはキャリアのなかで最も野心的なツアーを企画し、ライブのやり方に革命を起こすという挑戦に向き合っている。アーティストを4年以上も追いつづける旅、キューバでのアルバム制作以来、ショーの概念化、対立するビジネス、リハーサル、気づまりな会話、仲間内での賞賛、目まぐるしくスペインとラテンアメリカ全土を渡り歩くコンサートまで、彼の創作プロセスを探求する。3部構成で掘り下げる。

 

      

 

 

2)El otro lado / The Other Side (スペイン)TVミニシリーズ(6話、各30分)、コメディ・ホラー、Movister

監督ハビエル・ルイス・カルデラ(バルセロナ近郊ビラデカンス1976)、アルベルト・デ・トロ(バルセロナ1972

企画ベルト・ロメロ(バルセロナ近郊カルドナ1974

脚本(共同):ラファエル・バルセロ、エンリク・パルド、ベルト・ロメロ

音楽:ハビエル・ロデロ

撮影:セルジ・ビラノバ・クラウディン

編集:オリオル・ペレス・アルカラス

  

     

                         (中央がベルト・ロメロ)

   

キャスト:ベルト・ロメロ(ナチョ・ニエト)、アンドレウ・ブエナフエンテ(エストラーダ博士)、エバ・ウガルテ、マリア・ボット、ナチョ・ビガロンド、マリア・パスクアル、アルベルト・ガルシア、ウーゴ・モレニーリャ、他

ストーリー:ジャーナリストのナチョ・ニエトは超常現象のスペシャリストである。公私ともに最悪の状態に陥っている。自殺が未遂に終わった後、ナチョは20年以上前に亡くなった、謎の神話的伝道者であり、彼の助言者でもあったエストラーダ博士の幽霊をともなって息を吹き返す。

   

      

 

MovisterTVシリーズの新企画である本作は、俳優、コメディアン、脚本家として活躍しているベルト・ロメロが企画し、ハビエル・ルイス・カルデラとアルベルト・デ・トロが共同で監督します。ロメロはハビエル・ルイス・カルデラのコメディ「Tres bodas de más」に出演してゴヤ賞2014新人男優賞にノミネート、同監督のSPY TIMEスパイ・タイム』にも出演しています。人気TVシリーズ、コメディ「Mira lo que has hecho」(20182025分、全18話)の成功以来、久しぶりに主役で戻ってきて、今回初めてホラーのジャンルに挑戦します。シリーズでロメロのパートナー役を演じ数々の受賞歴のあるエバ・ウガルテが共演しています。

『SPY TIME スパイ・タイム』の作品紹介、監督キャリア&フィルモグラフィーの紹介をしています。コチラ⇒2016年02月02日

      

        

 (エバ・ウガルテとベルト・ロメロを配した「Mira lo que has hecho」のポスター)

 

他にエストラーダ博士役に、ゴヤ賞ガラの総合司会を夫人のシルビア・アブリルと2年連続(20192020)で成功させた、コメディアンのアンドレウ・ブエナフエンテが扮します。両人はホセ・ルイス・クエルダの遺作となってしまったSFコメディ「Tiempo después」(18)の共演や、お茶の間の人気トークショー「Nadie sabe nada」(202223)で二人揃って舌戦を繰り広げています。

         

         

                  (「Nadie sabe nada」のブエナフエンテとロメロ)

 

新作は映画データバンクIMDbでは「エピソード8」となっていますが、本祭のメイン紹介記事や各紙誌によって「6話」を採用しています。ベロドロモ部門で何話上映されるかもアップされていません。


アウト・オブ・コンペティション2作*サンセバスチャン映画祭2023 ④2023年07月19日 17:19

   ロス・ハビスのTVシリーズと特別上映のトゥルエバ&マリスカルの新作

 

         

          (ロス・ハビスのTVシリーズ「La mesías」から)

 

★コンペ外の2作、ロス・ハビスことハビエル・アンブロッシ(マドリード1984)とハビエル・カルボ(ムルシア1991)のスリラー「La mesías」は7話からなるTVシリーズ、アウト・オブ・コンペティションだが2人がセクション・オフィシアルに参加するのは初めてである。舞台演出家でもあるロス・ハビスは『パキータ・サラス』(16)、「Veneno」(20)、「Caldo」(21)などのTVシリーズを成功させている。長編映画デビュー作「La llamada / Hoiy Camp」(17)は、『ホーリー・キャンプ!』の邦題でラテンビートFFで上映されている。出演者は『ブラック・ブレッド』の好演が記憶に残るロジェール・カザマジョール、アンブロッシ監督の実妹でもある『ブランカニエベス』や『ホーリー・キャンプ!』のマカレナ・ガルシア、『海を飛ぶ夢』のロラ・ドゥエニャス、カメレオン女優のカルメン・マチ、ほかアナ・ルハス、アルベルト・プラ、アマイアなど豪華キャストがクレジットされている。

『ホーリー・キャンプ!』の作品&監督紹介は、コチラ20171007

   

      

    (ハビエル・アンブロッシ&ハビエル・カルボ)




 

フェルナンド・トゥルエバ(マドリード1955)とハビエル・マリスカル(バレンシア1950)のアニメーション「They Shot the Piano Player」(Dispararon al pianista)もセクション・オフィシアルのコンペ外である特別上映作品です。コンビは音楽アニメーションChico Rita」(10)でタッグを組み、ラテンビート2011で『チコとリタ』として上映された。オスカー賞にノミネートされ、ゴヤ賞2011では長編アニメーション賞を受賞している。マリスカルはバルセロナ・オリンピックのマスコットでも知られているアーティスト。トゥルエバは新作について「この映画は、70年代に軍事クーデタで不当に命を奪われた天才の人生を、15年間にわたって調査したもである」と語っている。

   

      

      (久々にタッグを組んだ「They Shot the Piano Player」から)

    

      

        (フェルナンド・トルゥエバとハビエル・マリスカル)

 

★新作「They Shot the Piano Player」英語、2023

製作:Fernando Trueba Producciones Cinematograficas / Les Films dIci / Lola Films / Gao Shan Pictures

配給:ソニー・ピクチャーズ・クラシックス、フランスはSophie Dulac Distribution

製作者:クリスティナ・ウエテ、セルジュ・ラルー、ウンベルト・サンタナ

ナレーション:ジェフ・ゴールドブラム

製作国:スペイン、フランス、オランダ、ペルー、ポルトガル

 

解説:ブラジルのミュージシャン、ボサノバの音楽運動を推進した天才ピアニスト、テノリオ・ジュニオール(リオデジャネイロ1941~ブエノスアイレス1976、享年34歳)の謎の失踪の背後にある真実を追求しようと旅に出るニューヨークの音楽ジャーナリストの物語。ラテンアメリカ諸国が軍事政権に飲み込まれる直前の6070年代を背景に、歴史の転換点にあるラテアメリカの創造的自由がはじける束の間の時間をとらえている。1976年、トキーニョとヴィニシウス・デ・モラエスと一緒にブラジルからアルゼンチンに演奏に出掛けたきり姿を消したフランシスコ・テノリオ・ジュニオールの失踪事件にインスパイアされている。

   

      

  (フランシスコ・テノリオ・ジュニオール)

 

出演者:ナレーターは俳優でミュージシャンのジェフ・ゴールドブラム(ピッツバーグ1952)、他ブラジルのミュージシャン、カエターノ・ヴェローゾ、ジルベルト・ジル、ジョアン・ジルベルト、アントニオ・カルロス・ジョビン、パウロ・モウラ、トキーニョ、ヴィニシウス・デ・モラエス、ジョアン・ドナート(2023717日没)、ビル・エヴァンス(米国、1980年没)、ベボ・バルデス(キューバ、2013年没)、など。

 

        

             (左ジェフ・ゴールドブラム)

 

            


   


スペイン映画14作ノミネート発表*サンセバスチャン映画祭2023 ③2023年07月17日 16:04

          コンペティション部門にイサベル・コイシェの新作がノミネート

    

         

           (スペイン映画14作が一挙に発表になった)

 

714日マドリード発、スペイン映画アカデミーはスペイン製作の映画を中心に、セクション・オフィシアル(3作)、アウト・オブ・コンペティション(1作)、特別上映(1作)、ニューディレクターズ(1作)、ベロドロモ(2作)、オリソンテス・ラティノス(2作)、サバルテギ-タバカレラ(4作)の各部門合計14作を発表いたしました。今回はセクション・オフィシアルにノミネートされ金貝賞を競う、イサベル・コイシェ、ハイオネ・カンボルダ、イサベル・エルゲラの3女性監督の新作をアップします。特別上映枠にフェルナンド・トゥルエバハビエル・マリスカルのコンビがアニメーション映画「They Shot The Piano Player」(Dispararon al pianista)で久々に登場します。いずれご紹介したい。

   

 

        71SSIFF セクション・オフィシアル② ◎

   

8)O Corno / The Rye Horn (スペイン=ポルトガル=ベルギー)長編2作目

  ガリシア語、ポルトガル語、103

 *イクスミラ・ベリアク 2020

監督ハイオネ・カンボルダJaione Camborda(サンセバスティアン1983)は監督、脚本家、アートディレクター。映画はプラハとミュンヘンの映画学校で学んだ。長編デビュー作「Arima」は、セビーリャ・ヨーロッパFF2019「新しい波」セクションの監督賞受賞、ほかヒホン映画祭の受賞を経て、SSIFF 2020メイド・イン・スペインで上映されている。2作目でコンペティション部門に選出されるのは幸運です。本作はガリシア語で金貝賞を目指す最初の作品です。イクスミラ・ベリアクのプロジェクトに参加して完成させた。怖ろしい事件に巻き込まれ、島から逃亡せざるをえなかった女性マリアの人生が描かれる。ガリシアのポンテベドラのアロウサで撮影された。撮影監督は『サマ』など国際的に活躍するルイ・ポカスが手掛けている。

 

キャスト:ジャネット・ノバス(マリア)、シオバンSiobhan・フェルナンデス、カルラ・リバス、ダニエラ・エルナン・マルチャン、マリア・ラド、フリア・ゴメス、ホセ・ナバロ、ヌリア・レステガス、ディエゴ・アニド

  

ストーリー1971年アロウサ島、マリアはエビやカニなどの海産物を採って生計を立てている。また他の女性のお産を手助けするなど、島では献身的な女性として知られた存在でした。しかし予期せぬ出来事により島を脱出しなければならなくなり、生き残りを賭けた危険な旅をすることになる。マリアは自由を求めて、ガリシアとポルトガル間の密航ルートに沿って国境を越えようと決心する。ガリシア語で撮られた映画のノミネート1作目となります。

Arima」の作品紹介は、コチラ20200912

    

     

 

9)El sueño de la sultana / Sultanas Dream(スペイン=ドイツ)SFアニ、85

監督:イサベル・エルゲラ(サンセバスティアン1961)は、視覚アーティスト、製作者、アニメーションの監督。本作は長編アニメーションのデビュー作、1905年、ベンガル出身のイスラム教徒でフェミニストの作家、社会改革者であったロケヤ・ホセインRokeya Hossain18801932)のSF小説、英語で出版された。当時女性が英語を学ぶことは不適切とされていたが、夫の理解を得て学んだ。女性が統治しているユートピア「レディランド」をベースにしている。短編アニメーション「La gallina ciega」がゴヤ賞2007短編アニメーション部門にノミネートされている。他「Kutxa beltza」(16)、「Amore d'inverno」(15)、「Bajo la almohada」(12)、「Ámár」(10)などを撮っている。

 

ストーリー:〈スルタン王妃の夢〉は、1905年インドのベンガル地方で書かれたSF小説にインスパイアされて製作された。女性たちがすべてを統治管理しているフェミニストの理想郷レディランドが舞台。男性は隔離されている。ユートピアでは「男性は強くて頭がいい、女性は弱くて愚か」という固定観念が壊れるというジェンダー逆転が生まれている。

 

      

 

10)Un amor(スペイン)スペイン語、ドラマ、140

監督:イサベル・コイシェ(バルセロナ1960)、セクション・オフィシアル初参加となる本作は、サラ・メサのベストセラー小説 Un amor 2020年刊)の映画化、ライア・コスタが主役ナタリアに扮する。脇を固めるホヴィク・ケウチケリアン、ウーゴ・シルバ、ルイス・ベルメホなど演技派を揃えている。本祭との関りでいうと、1988年ニューディレクターズ部門に「Demaciado viejo para morir joven」がノミネートされている。またドキュメンタリー「El techo amarillo」がセクション・オフィシアルで特別上映され、RTVE「ある視点」賞、ドゥニア・アジャソ賞スペシャル・メンションを受賞している。翌年のゴヤ賞ドキュメンタリー賞にノミネートされた。

 

キャスト:ライア・コスタ(ナット/ナタリア)、ホヴィク・ケウチケリアン(アンドレアス)、ウーゴ・シルバ、ルイス・ベルメホ、イングリッド・ガルシア≂ヨンソン、フランチェスコ・カリル

 

ストーリー:都会での息苦しい生活を逃れ、30代のナットはスペインの奥地に典型的な小さな村ラ・エスカパに避難所を見つけます。素朴な廃屋でナットは再び人生を立て直そうと決意します。家主は歓迎のしるしとして、飼いならしていない犬を連れてくる。やがて家主との対立や村民の不信感に直面して、隣人アンドレアスの不穏な性的提案を受け入れて、自分自身を驚かせることになる。この奇妙で矛盾をはらんだ出会いから、貪欲で強迫的な情熱が芽生えてくる。ナットは今まで彼女が自分だと思っていた女性は、本当の自分なのだろうか、実存への疑念と性的役割の破壊力を探求する。

本作については、別途作品紹介を予定しています。

 

    

     

   

   (左から、ハイオネ・カンボルダ、イサベル・エルゲラ、イサベル・コイシェ)


フェリックス・ビスカレトの新作「Una vida no tan simple」2023年07月11日 17:47

    人間の複雑さについての繊細で知的、辛辣で的確なシリアスコメディ

 

       

               (パパ業は思うほどラクな仕事ではありません)

   

★前回の「Upon Entry / La llegada」と同じ、第26回マラガ映画祭2023でノミネートされたフェリックス・ビスカレトの辛口コメディUna vida no tan simple」がスペインで公開されました。各紙誌の評価は軒並みポジティブです。既に若者とは言えない、かといってシニアとも言えない宙ぶらりんの40代男性の悲哀が語られる。マラガでざっと紹介しましたが、日本の40代でも似たような傾向がみられることや贔屓の監督とキャスト陣ということで改めて紹介します。現代のように不確実性のなかで生きていくには、なりたかった自分になれないのは致し方ないのか、軽率に父親になってしまったことが悪かったのか、何処で間違ってしまったのか。こどもを持ってしまった中産階級カップルの繊細な可笑しさを失わない寓話。

Una vida no tan simple」の作品紹介は、コチラ20230314

 監督キャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ20171111

   

     

  (左から、ミキ・エスパルベ、オラヤ・カルデラ、フェリックス・ビスカレト監督、

    アレックス・ガルシア、アナ・ポルボロサ、マラガ映画祭2023フォトコール)

  

 

Una vida no tan simple」(仮題「人生はそれほど容易でない」)

製作:Lamia Producciones / A Contracorriente Films / Euskal Irrati Telebista

   (EiTB/ Movistar+ 協賛 Gobierno de Navarra

監督・脚本:フェリックス・ビスカレト

音楽:ミケル・サラス

撮影:オルカル・ドゥラン

編集:ビクトリア・ランメルス

美術:エイデル・ルイス

キャスティング:フロレンシア・イネス・ゴンサレス、チャベ・アチャ

衣装デザイン:イラチェ・サンス

製作者:アドルフォ・ブランコ、イケル・ガヌサ、(エグゼクティブ)マヌエル・モンソン、パス・レコロンス、エレナ・タベルナ

 

データ:製作国スペイン、2022年、スペイン語、ドラマ、107分、撮影地ビルバオ、期間2021年末、公開スペイン20230623

映画祭・受賞歴:第26回マラガ映画祭2023セクション・オフィシアル正式出品

 

キャスト:ミキ・エスパルベ(イサイアス)、アレックス・ガルシア(同僚ニコ)、アナ・ポルボロサ(ソニア)、オラヤ・カルデラ(妻アイノア)、フリアン・ビジャグラン、ラモン・バレア、シャビ・バルカルセル

  

ストーリー40歳のイサイアスは受賞歴のある有望な建築家でした。現在、彼は建築スタジオと子供たちが遊ぶ公園の間を行ったり来たりの日々を過ごしていますが、何処にいても自分がいるべき場所にいないと感じています。皆は別の場所にいて誰も自分のことなど覚えていないと感じています。彼の妻アイノアとの関係では月日の経過を感じ良好とはいえません。幼い子供たちが如何に大人を疲れさせるかを痛感しているイサイアスはいつもへとへとになっている。他の子供の賢明な母親であるソニアとの友情を深めますが、彼女は子供を一人前に育てて大人にするのは、それほど簡単ではないことを彼に教えます。誰もが喧嘩をせず友好的になろうとして、慎重かつ賢明な会話が交わされる、中産階級40代カップルの危機を掘り下げる。

   

         

      (一人ずつ我が子を抱えたイサイアスとアイノア、フレームから)

 

 

     生きることは簡単な仕事ではない、確実なノウハウもありません

 

★かつてモラトリアム世代と言えば、2030代だったものが、現在では40代と期間がどんどん長くなり、世間全体が幼児化してきているように感じます。このままだと子供を大人に教育する世代がいなくなってしまうのではないかと気になりますw。ディテールは未見なので想像の域をでませんが、失意の建築家イサイアスに生命を吹き込むミキ・エスパルベを見ていると、周囲の40代の誰彼の顔を浮かべてしまいます。居場所がないのではなく「ここは自分のいるべき場所ではない」という、居場所のない人からみれば贅沢な悩みなのです。イサイアスにはどうもエネルギーが足りない。

 

★対話劇のようですが、気まずい沈黙が訪れるとき、物語は動き出す。成功と失敗、屈辱、諦めの渦のなかで、建築家は周囲の期待に応えなければならないが、果たしてうまくいくでしょうか。結末がポジティブとネガティブに割れていますが、建築家を演じたミキ・エスパルベの評価はオール・ポジティブです。当ブログにも何回か登場させていますが、以下に日本語字幕入りで見られる作品を中心にラインナップしておきます。また大学教師の妻アイノアに扮したオラヤ・カルデラの演技をほめる記事が散見されました。イサイアスの同僚アレックス・ガルシア扮するニコとどうも微妙な関係らしいが、この手のドラマではよくある話です。離婚率の高さは万国共通、壁は日に日に低くなってきました。アナ・ポルボロサ扮する賢いソニアの造形も、クラスに一人か二人、見かけるタイプです。

 

       

                        (イサイアスとニコ)

 

         

    (ソニアとイサイアス)

 

ミキ・エスパルベ1983年カタルーニャのマンレサ生れ、俳優、脚本家、監督(短編2本)、ポンペウ・ファブラ大学、バルセロナのNancy Tuñóns School で演技を学ぶ。スペイン語とカタルーニャ語の映画に出演している。2016年マルク・クレウエトの「El rei borni」でガウディ賞2017主演男優賞、CEC新人賞にノミネート、2018年舞台をベルリンに移して撮った、エレナ・トラぺの「Les distàncies」で同じく助演男優賞にノミネートされている。フェルナンド・ボネリの短編「[Still] love you」でメディナ映画祭2017男優賞を受賞している。Netflixで配信されている作品も結構あり、字幕入りで鑑賞できる数少ない俳優の一人です。

 主なフィルモグラフィー 

2015Perdiendo el norte」(「Off Course」『夢と希望のベルリン生活』Netflix)助演

   監督ナチョ・G・ベリーリャ

2015Requisitos para ser una persona normal」コメディ、同レティシア・ドレラ、助演

2016El rei borni」監督マルク・クレウエト、主演

2017No sé decir adiós」(『さよならが言えなくて』)監督リノ・エスカレラ、助演

2018Les distàncies」監督エレナ・トラぺ、助演

2019Perdiendo el este」(「Off Course to China」)監督パコ・カバジェロ、主演

2020Malnazidos」(ホラー『マルナシドス~ゾンビの谷』Netflixコロナ禍で2022公開)

   監督ハビエル・ルイス・カルデラ、主演

2021El inocente」(『イノセント』TVシリーズ 6話出演、Netflix)助演

2021Tres」(「Out of Sync」)監督フアンホ・ヒメネス・ペーニャ、

   ガウディ賞助演男優賞ノミネート

2022Un hombre de acción」(『オンブレ・デ・アクシオン 伝説のアナーキスト』

   Netflix)ハビエル・ルイス・カルデラ、助演

2022Smiley」(ラブコメ『スマイリー』TVシリーズ8話)企画ギレム・クルア、主演

2023Una vida no tan simple」割愛

 

     

       (ガウディ賞主演男優賞ノミネートの「El rei borni」から)

 

フェリックス・ビスカレト(パンプローナ1975)は、2007年「Bajo las estrellas」で長編デビューした監督、脚本家、製作者。キャリアは以前の紹介に譲るとして、本作以降の仕事として、目下話題のTVシリーズ「Galgos」(23、全8話)のうち4話を監督します。ベテランのオスカル・マルティネス、パトリシア・ロペス・アルナイス、アドリアナ・オソレス、若手マリア・ペドラサ、マルセル・ボラスなど新旧入り混じっての豪華キャストです。

 

    

    (Galgos」撮影中の監督、アドリアナ・オソレス、マルセル・ボラス

   

   

   (右、パトリシア・ロペス・アルナイス)

     

    

                         (マリア・ペドロサ)

 

ストリーミング配信を期待する「Upon Entry」2023年07月01日 15:06

            カラカス出身の若い二人の監督、ロハスとバスケス

   

    

 

★サンセバスチャン映画祭2023のセクション・オフィシアル発表は、多分7月上旬あたりになると予想しています。というわけで前回のエレナ・トラぺの「Els encantats」に続いて、公開は無理としてミニ映画祭、ストリーミング配信などで観たい映画を幾つかアップする予定です。

 

3月に開催されたマラガ映画祭2023コンペティション部門にノミネートされたアレハンドロ・ロハスフアン・セバスティアン・バスケスの「Upon Entry / La llegada」が、予告通りスペインで公開されました(816日)。マラガFF では、主演のアルベルト・アンマン男優賞(銀のビスナガ)を受賞した作品です。両監督ともベネズエラのカラカス出身ですがバルセロナに在住、本国では映画製作ができない、いわゆる才能流出組です。二人ともHBOHome Box Office有料ケーブルテレビ放送局、本部ニューヨーク)の仕事をしており、ロハスはNetflix にも携わっています。バスケスが撮影監督をしたカルレス・トラスの「El practicante」(20)は、Netflixで『パラメディック~闇の救急救命士』として配信されている。本作はIMDbによると、松竹が配給元にアップされているので、公開もありかと期待して改めて紹介したい。

マラガ映画祭2023での監督キャリア&作品紹介は、コチラ20230314

      

       

   (左から、フアン・セバスティアン・バスケス、アレハンドロ・ロハス両監督、

       製作者カルレス・トラス、タリン・ブラック・ナイツFF 2022

    

  

 (フアン・セバスティアン・バスケス、アレハンドロ・ロハス、マラガFF フォトコール)

 

 「Upon Entry / La llegada」(仮題「通関 / 到着」)

製作:Zabriskie Films / Basque Films / Sygnatia  協賛ICEC / TV3

監督:アレハンドロ・ロハス、フアン・セバスティアン・バスケス

脚本:アレハンドロ・ロハス、フアン・セバスティアン・バスケス

撮影:フアン・セバスティアン・バスケス

編集:エマヌエーレ・ティツィアーニ

キャスティング:ジェラルド・オムス

美術:セルソ・デ・グラシア

メイクアップ&ヘアー:ロラ・カニャス(ヘアー)、スシ・ロドリゲス(メイク&ヘアー)

プロダクション・マネージメント:セルヒオ・アドリア、カルラ・ビセンテ

視覚効果:Hover Pinilla

製作者:カルレス・トラス(Zabriskie Films)、カルロス・フアレス、ショセ・サパタ、セルヒオ・アドリア、アルバ・ソトラ

 

データ:製作国スペイン、2022年、スペイン語・カタルーニャ語・英語、心理的スリラー、74分、公開スペイン2023616

映画祭・受賞歴:第26回タリン・ブラック・ナイツ映画祭2022(エストニア)FIPRESCI賞受賞、コルカタFF 2022ゴールデンベンガル・ロイヤルタイガー賞(インド)、サウス・バイ・サウスウエスト映画祭2023、マラガFF 2023 銀のビスナガ男優賞(アルベルト・アンマン)、BAFICI 映画祭2023(ブエノスアイレス)コンペティション部門正式出品、DA バルセロナFF、他多数

 

キャスト:アルベルト・アンマン(ディエゴ)、ブルーナ・クシ(エレナ)、ベン・テンプル(バレット税関職員)、ラウラ・ゴメス(バスケス税関職員)、ヌリス・ブルー(入国審査官)、デビッド・コムリー(警察官)、ルイス・フェルナンデス・デ・エリベ(ルイス)、コリン・モーガン(警察官)、ジェラルド・オムス(旅客)、他

 

ストーリー:ベネズエラ出身の都市計画家ディエゴ、バルセロナ出身のコンテンポラリーダンサーのエレナ、二人は新しい生活を始めるため公式に承認された移民許可証を持って米国に到着する。彼らの目的は、プロとしてのキャリアを高め、「チャンスの国」であるマイアミで家族を築くことでした。しかし、ニューヨーク空港の入国審査エリアに入ると、彼らは二次検査室に連れていかれ、カップルが何か隠蔽しているものがあるのではないか、と税関職員による心理的に不快な尋問を受けることになる。移民プロセスの複雑さ、外国人嫌い、少数の登場人物だけで緊張感あふれるドラマが展開する。アメリカン・ドリームと国家が自国の領土の安全を取り締まる権利が描かれる。

        

         

        (厳しい尋問を受けるディエゴとエレナ、フレームから)

  

 

     最高の演技と絶賛されたアルベルト・アンマンとブルーナ・クシ

   

★監督キャリア&フィルモグラフィー紹介は、既にアップしているマラガ映画祭の紹介記事に譲るとして、二人の主役を演じ、今までで恐らく最高のパフォーマンスと絶賛されている、アルベルト・アンマンとブルーナ・クシのキャリアを紹介したい。上述のようにアンマンはマラガ映画祭で最優秀男優賞を受賞している。ブルーナ・クシは、カルラ・シモンのデビュー作『悲しみに、こんにちは』で少女の義理の叔母役の好演でゴヤ賞2018新人女優賞を受賞している。

    

      

    (銀のビスナガ男優賞受賞のアルベルト・アンマン、マラガ映画祭2023ガラ)

   

アルベルト・アンマンは、1978年アルゼンチンのコルドバ生れ、俳優、ミュージシャン。父親はジャーナリスト出身の政治家で作家のルイス・アルベルト・アンマンで後に大統領候補にも選ばれている。アルゼンチン軍事独裁政権(197683)を逃れて、一家は彼が生後1ヵ月のときスペインに亡命した。アルゼンチンがフォークランド戦争でイギリスに敗北した1982年に帰国するが、彼は数年後再びスペインに戻って、同じ理由でスペインに亡命してマドリードでアトリエを開き演技指導に当たっていたフアン・カルロス・コラッツァ演技学校で学んでいる。アルゼンチンではコルドバのジョリー・リボワ・シアター学校でも学んでいる。

 

2009年、ダニエル・モンソンの「Celda 211」の囚人に間違われた看守役で電撃デビュー、翌年のゴヤ賞新人賞を受賞した。本作は「スペイン映画祭2009」では『第211号監房』として上映されたが、公開時には何故かオリジナル題とかけ離れた『プリズン211』となり、ファンを呆れさせた。翌2010年、16世紀の劇作家ロペ・デ・ベガのビオピック「Lope」に主演、2011年、キケ・マイジョのSF映画「EVA」(『EVA〈エヴァ〉』)、2012年、ダニエル・カルパルソロの『インベーダー・ミッション』や『ワイルド・ルーザー』(13)、ホルヘ・ドラドのSFミステリー『記憶探偵と鍵のかかった少女』(13)に脇役で出演する。

    

       

         (ルイス・トサールと共演した『プリズン211』から)

 

2013年アルゼンチンに戻り、エルナン・ゴルドフリードのスリラー『ある殺人に関するテーゼ』でリカルド・ダリンと共演するなどした。メキシコのルイス・マンドキの「Presencias」(22)、オリヴィエ・マルシャルのアクション・スリラー『オーバードーズ 破滅の入り口』(22、プライム・ビデオ)など。アルゼンチンのマルティン・デ・サルボの「El silencio del cazador」でマラガ映画祭2020銀のビスナガ男優賞パブロ・エチャリと受賞しているほか、サンティアゴ映画祭SANFIC男優賞を受賞した。

 

NetflixTVシリーズ『ナルコス』(151720話)では、カリ・カルテルのボス、パチョ・エレーラを演じる。2019年『ナルコス』でスペイン俳優組合賞を受賞する。ほか『アパッチ』(151712話)、『マーズ 火星移住計画』(161812話)、『ナルコス:メキシコ編13』(18219話)とテレビ出演も多い。2022年ショセ・モライス企画の『ザ・ロンゲスト・ナイト』(6話)もNetflixで配信された。

    

     

     (パチョ・エレーラに扮したアンマン、TVシリーズ『ナルコス』から)

 

ブルーナ・クシ1987年バルセロナ生れ、映画・TV・舞台女優。父親は俳優のエンリク・クシ、バルセロナの演劇学校で学ぶ、その後バルセロナの演劇研究所でアルフレッド・カセス、ロベルト・ロメイの指導を受ける。2010年アルテ・ドラマティコの資格を受ける。アントニオ・ファバと一緒にコメディア・デル・アルテを設立するためイタリアを訪れる。カタルーニャTVシリーズ「Pulseras rojas」(11138話)に出演、主なテレビ出演は、主演「Instinto」(198話)、助演「The Alienist」(205話)、主演「Los herederos de la tierra」(225話)はNetflixで『大地を受け継ぎし者』の邦題で配信されている。アンナ・R・コスタのコメディ「Facil」(225話)にナタリア・デ・モリーナやアンナ・カスティーリョと共演している。

     

    

        (バックは尋問する2人の税関職員、Upon Entryから)

 

2013年、アグスティ・ビリャロンガと出会い、スペイン内戦をテーマにした「Incerta glôra」(Incerta gloria)で映画のキャリアをスタートさせ、ガウディ賞、サンジョルディ賞にノミネートされた。その後、上述したようにカルラ・シモンの『悲しみに、こんにちは』ゴヤ賞2018新人女優賞のほか、ガウディ賞助演女優賞を受賞、フォルケ賞やサンジョルディ賞にもノミネートされた。2019年、フアン・ゴンサレス&ナンド・マルティネスのファンタジー「La reina de los lagartos」に出演、ラファ・デ・ロス・アルコスの短編「Todo el mundo se parece de lejos」(15分)でAguilar de Campoo 短編映画祭2019女優賞、カンス・フェスティバル2020女優賞を受賞した。2004年からガリシア州ポンテペドラの小さな村カンスで開催されるユニークな短編映画祭です。

    

      

            (ゴヤ賞2018新人女優賞の晴れ舞台から)

 

2020年はバイリンガルということも幸いしてテレビや短編も含めて活躍の年になった。リュイス・ダネスのホラー「La vampira de Barcelona」(カタルーニャ語)に出演、ガウディ賞助演女優賞にノミネートされた。他にダビ&アレックス・パストール兄弟の「Hogar」でハビエル・グティエレスと夫婦役を演じている。本作は『その住人たちは』の邦題でNetflix配信された。2021年、ボルハ・デ・ラ・ベガの「Mía y Moi」(スペイン語)に主演、弟モイ役を演じたリカルド・ゴメスは一時期パートナーだった。

    

      

     (ディオールの刺繍入りドレスが好評だったガウディ賞2021ガラにて)

 

Upon Entry / La llegada」と同じマラガ映画祭2023のコンペティション部門にノミネートされた、フアン・ゴンサレス&ナンド・マルティネスのコメディSFEl fantástico caso del Golem」、マリオ・エルナンデスのロマンティックコメディ「Tregua (s)」に主演するなど、2023年のマラガには出演作が3作もノミネートされるという女優にとって異例の年でした。各映画とも簡単ですが既に作品紹介をしています。今後の活躍が確約されている女優として見守りたい。

 

ブルーナ・クシ関連記事

『悲しみに、こんにちは』の作品紹介は、コチラ20170222

La vampira de Barcelona」の作品紹介は、コチラ20210324

Tregua (s)」の作品紹介は、コチラ20230312

El fantástico caso del Golem」の作品紹介は、コチラ20230306

La reina de los lagartos」の作品紹介は、コチラ20230306

『その住人たちは』の作品紹介は、コチラ20200331


新世代監督エレナ・トラぺの3作目「Els encantats」公開2023年06月21日 16:11

          ゴヤ賞主演女優賞を受賞したライア・コスタが主演

 

      

 

エレナ・トラぺ3作目「Els encantats / Los encantados」は、ゴヤ賞2023主演女優賞を受賞したライア・コスタをヒロインにしたドラマ。コスタはアラウダ・ルイス・デ・アスアのデビュー作「Cinco lobitos」での演技が評価されての受賞でした。監督自身も新人監督賞を受賞するなど昨年の話題作でした。

 

★今回ご紹介するトラペの3作目「Els encantats / Los encantados」(仮題「魔法にかけられて」)は、今年のマラガ映画祭コンペティション部門に正式出品されました。監督は銀のビスナガ脚本賞を共同執筆者のミゲル・イバニェス・モンロイと受賞しています。マラガには監督以下、トラペ映画を手掛けるエグゼクティブプロデューサーのマルタ・ラミレス、キャスト陣ではダニエル・ペレス・プラダアイナラ・エレハルデなどが現地入りしました。昨今では珍しくもない自分探しがテーマのようにみえますが、脚本賞を受賞しただけに中々一筋縄ではいかない捻りがあるようです。ライア・コスタによる素晴らしいパフォーマンスとも相まって、ときには痛みを伴うが表層的ではないというポジティブな批評が多い。

    

    

(エレナ・トラぺ、マラガ映画祭2023フォトコール)

   

    

(左から、ダニエル・ペレス・プラダ、3人目がエレナ・トラぺ、マルタ・ラミレスなど)

 

      

            (ミゲル・イバニェスとエレナ・トラぺ、マラガFF2023授賞式)

 

★長編2作目「Les distàncies / Las destancias」は、マラガ映画祭2018でプレミアされ、金のビスナガ作品賞、トラペ自身も監督賞を受賞した。その後、釜山、カリ、ナント、トゥールーズなどの映画祭巡りをして、翌年のガウディ作品賞、サンジョルディ撮影賞を受賞するなどした。両作とも人生の岐路に立つ30代後半を登場人物に据えているが、こちらは2008年のリーマンショックで他国への出稼ぎを余儀なくされたミレニアル世代(198196年生れ)の幻滅を描いており、新作のように母親になること、離婚などには踏み込んでいない。監督キャリア&フィルモグラフィー紹介は以下にアップしています。

 

Els encantats」の作品紹介は、コチラ20230306

Les distàncies / Las destancias」の作品&フィルモグラフィー紹介は、

  コチラ20180427

   

          

         (第2作「Les distàncies」のスペイン語版ポスター)

 

 

 「Els encantats / Los encantados」(「The Enchanted」)

製作:Coming Soon Films / A Contracorriente Films / RTVE / TVC / ICAA  他

監督:エレナ・トラぺ

脚本:エレナ・トラぺ、ミゲル・イバニェス・モンロイ

音楽:アンナ・アンドリュー

撮影:パウ・カステジョン・ウベダ

美術:イレネ・モントカダ

編集:ソフィア・エスクデ

プロダクションディレクター:エリサ・シルベント

キャスティング:アンナ・ゴンサレス・パスクアル

メイクアップ&ヘアー:ラウラ・ガルシア

衣装デザイン:マルタ・ムリージョ

音響:ナチョ・オルトゥサル、ラウラ・ディエス

製作者:マルタ・ラミレス(エグゼクティブ)、アドルフォ・ブランコ、フェルナンド・リエラ、マヌエル・モンソン、リュイス・ルスカレダ、他

 

データ:製作国スペイン、2023年、カタルーニャ語、ドラマ、108分、撮影地カタルーニャ州ピレネー山脈沿いのアンティスト(Vall Fosca)、配給A Contracorriente Films  公開スペイン202362

映画祭・受賞歴:第26回マラガ映画祭2023コンペティション部門にノミネート、脚本賞受賞。

 

キャスト:ライア・コスタ(イレネ)、ダニエル・ペレス・プラダ(友人エリック)、ペップ・クルス(祖父アグスティ)、アイナ・クロテット(隣人イングリット)、アイナラ・エレハルデ(隣人ジーナ)、デリア・ブルファウ(マルタ)、カルロス・ディ・ロス(ギジェルモ)、他

 

ストーリー:離婚手続き中のイレネは、4歳になる娘が父親と数週間過ごすことになり、初めて一人で自分自身に向き合うことになる。この新しい現実に適応できず、実家のあるカタルーニャのピレネー山脈近くの小さな村に出掛けようと思い立つ。長いあいだ失ったと感じていた安定と落着きを取り戻そうと考えたのだ。しかし、記憶のなかでは親しい場所であったのに、次第に自分の人生と同じようにイレネを圧倒するようになり、逃避からは何も得られないことを理解する。岩の割れ目には何かの生き物が住んでおり、夜になると出てくる。あまり近づきすぎると、あなたは彼らを愛するようになり、永遠にここに止まることになるという、カタルーニャの伝説が語られる。場所は魔法のように人を癒すことはできない。

   

      

         (岩の割れ目を覗くイレネ、フレームから)

 

★マラガ映画祭の紹介記事と重なりますが、公開されたことで情報が入手しやすくなったので、加筆して再構成しました。フランコ体制が終わった1976年生れの監督はミレニアル世代には属しておりませんが、スペインを壊滅的にした経済危機をもろに受けています。若者の失業率は6070%を超え、EUのお荷物といわれたスペイン、日本でも若者の非正規雇用が大量に発生、霞が関も大企業も無視続けた結果、経済の二極化が進んだ。「失われた30年」として、原因やその責任を問われぬまま延々と30年も続いている。30年で終止符をうつのか、40年に突入するのか。このミレニアル世代特有の「もう、うんざり」感が表面的には語られないが、奥深くに見え隠れするのではないか。監督は「時間が記憶を美化しただけのような牧歌的な田舎のノスタルジックな映画を打破したい」とコメントしている。

 

     

          (撮影中の監督とイレネ役のライア・コスタ)

 

★イレネを怖ろしい苦痛感から逃れさせるために、監督は彼女をピレネー山脈の近くにある村に逃避させます。両親が所有する家があるからです。しかし風光明媚な田舎も単なる場所でしかなく、イレネは最終的には新たな厳しい現実に直面する。場所は魔法のように人を癒すことはできない。初めて離れて暮らす娘の様子を電話で尋ねる、そう、イレネは母親なのだ。村の若い女性ジーナとその友人たちとのコントラスト、監督は世代間の違いを繊細に描いていく。内省的な映画ではあるが、イレネを体現するライア・コスタの自然な演技は注目に値するだろう。因みにジーナを演じたアイナラ・エレハルデ(バルセロナ2001)は、苗字からも分かるようにカラ・エレハルデの娘で本作でデビューした。目下売り出し中、将来が期待される新人です。

   

      

            (最近のアイナラ・エレハルデ)

 

★トラペ監督は、公開時にエル・パイスのインタビューに以下のように応えています。カタルーニャ語で行われたようですが、スペイン語に翻訳されたのをつまみ食いしてピックアップします。「へえー、そうなの?」、またはスペイン民主主義移行期の少女たちの興味深い片鱗を窺うこともできる。

 

Q: 最近のスペイン映画はなぜ田舎かや山へ脱出するのが多いのでしょうか。

A: 私の場合、山は主人公に起こる多くのことを触媒します。主人公は痛みに直面するからです。映画に登場するものはすべて本物で名前を変更せず、ストーリーをここに統合しようとしました。しかし、私はこの村の環境を、都会の人がもっている理想的な美的体験から見ていることを認めます。

 

Q: 2作目「Les distàncies」のあと、TVシリーズ『エリート』を手掛けていますが、混乱することはありませんか。

A: まったくありません。TVプロジェクトで多くのことを学びました。新作を撮影する方法を見つけたのも「Rapa」や『エリート』を手掛けたおかげです。

管理人:ハビエル・カマラ主演の犯罪スリラー「Rapa」(12話、2223)では、20223話を監督している。他にも「HIT」(30話、20216話、最新作「Yo, adicto」(23)では6話を手掛けている。

 

Q: あなたが最も多く観た映画は何でしょうか。

A: 『クレイマー、クレイマー』です。

管理人:少し意外でしたが、日本でもヒットしました。1979年製作、ロバート・ベントン監督、主演はダスティン・ホフマン、メリル・ストリープ。

 

Q: 子供時代を思い出させる映画があるでしょうか。

A: 姉と私が好きだったのは、一つは『何かいいことないか子猫チャン』、もう一つは『掠奪された七人の花嫁』です。

管理人:前者は1965年製作、クライヴ・ドナー監督、ピーター・オトゥール、ピーター・セラーズ主演のコメディ、ウディ・アレンが脚本と脇役でも出演しています。後者は1954年製作、スタンリー・ドーネン監督のミュージカル映画、海外のクラシック映画が80年代に公開されたのでしょうか、当時スペインは吹き替えが一般的でした。

 

Q: あなたの映画に出てほしい女優は誰でしょうか。

A: オリヴィア・コールマン

管理人:日本でも人気の高いオスカー女優、『女王陛下のお気に入り』でアカデミー主演女優賞、『ファーザー』、TVシリーズのエリザベス2世役でお馴染みです。

 

Q: ペドロ・アルモドバル、ビクトル・エリセ、ピラール・ミロ、いずれか選択してください。

A: ペドロ・アルモドバル

 

Q: J. A. バヨナ、アルベルト・セラ、イサベル・コイシェ、いずれか選択してください。

A: イサベル・コイシェ

管理人:これは聞くまでもありません。2004年、トラペはバルセロナ大学付属上級映画学校ESCAC監督科出身でコイシェの薫陶を受けています。J. A. バヨナもESCAC出身。コイシェについてのドキュメンタリー「Palabras, mapas, secretos, otras cosas」(1558分)は、ロス、ポートランド、ニューヨーク、ベルリン、バルセロナを巡ります。コイシェの映画に出演したティム・ロビン、菊地凛子などが登場します。

    

      

            (イサベル・コイシェ、フレームから) 

 

Q: 最近あなたを魅了した映画はなんでしょうか。

A: ジェイミー・ダックのデビュー作「Palm Trees and Power Lines」をFilminで観ました。地味ですが繊細で壊滅的な映画だと思いました。俳優が素晴らしくて魅了されました。

管理人: Filminというのは独立系映画のストリーミングに特化した映画配給会社、バルセロナに本社があり、スペインでは多くの人が加入している。バジャドリード映画祭2022で「Nunca llueve en California」として上映された。

 

Q: 誰もが賞賛する映画監督はどなたでしょう。

A: アレクサンダー・ペイン

管理人:アレクサンダー・ペイン(1961)はアメリカの監督、脚本家。代表作『サイドウェイ』(04)、『ファミリー・ツリー』(11)など。

 

Q: 映画化したい本がありますか。

A: ニック・ドルナソのグラフィックノベル Sabrina です。

管理人:ニック・ドルナソは漫画家、イラストレーター。Sabrina 2018)はグラフィックノベルとして初めてブッカー賞の候補になった。本邦でも2019年『サブリナ』として翻訳本が刊行されている。

 

Q: 今、ナイトテーブルにある本は何でしょう。

A: マギー・オファーレル El retrat de matrimoni です。

管理人:マギー・オファーレル(北アイルランド1954)の原作 The Marriage Portrait2022刊)は、15歳で政略結婚させられ、16歳で生涯を閉じたルクレツィア・ディ・コジモ・デ・メディチについて語ります。『ルクレツィアの肖像』として翻訳書がまもなく出版されます。(629日刊)

 

Q: いま読みかけている本は何でしょうか?

A: オーシャン・ヴオン On Earth Were Briefly Gorgeous です。

管理人:オーシャン・ヴオン(ベトナムのホーチミン1988)はアメリカの作家、詩人。この長編小説は『地上で僕らはつかの間きらめく』(2019年刊)という邦題で翻訳書が出ています。

 

Q: 尊敬するミュージシャンは?

A フランコ・バッティアート

管理人:イタリアのシンガーソングライター(19452021)。

 

★まだインタビューは続きますが、映画と離れていくのでお開きといたします。


映画国民賞2023の受賞者はカルラ・シモン2023年06月12日 15:58

   『悲しみに、こんにちは』の監督、カルラ・シモンが映画国民賞を受賞

 

      

 

★去る61日、2023年度の映画国民賞の発表がありました。2017年のデビュー作『悲しみに、こんにちは』(「Verano 1993」カタルーニャ語)と、昨年の金熊賞受賞作「Alcarràs」(カタルーニャ語)のたった2作しか長編は撮っていないカルラ・シモン(バルセロナ1986)が受賞することになりました。いやはや驚きました。映画国民賞史上2番目の36歳という若さでの受賞、最年少は1995年度のカルメロ・ゴメス、前年のイマノル・ウリベの『時間切れの愛』の凄みのある演技が認められました。3番目が2013年のフアン・アントニオ・バヨナ監督の38歳、前年の『インポッシブル』の爆発的な興行成績や国際的な活躍が評価され、文句なしの受賞でした。傾向として受賞対象は前年度の活躍に焦点が当てられることが多い。因みに2022年ペネロペ・クルス、2021年ホセ・サクリスタン、2020年イサベル・コイシェ、2019年アントニオ・バンデラス、2018年ホセ・ルイス・ガルシ・・の順。

   

     

       (デビュー作『悲しみに、こんにちは』オリジナルポスター

 

★本賞は毎年文化スポーツ省が授与するため、フェルナンド・トゥルエバのように国からのご褒美はいっさい受け取りたくないと辞退する人が出て、恥をかきたくない政府は、それ以来発表前に一応打診してから発表することにしている(結果的にはトゥルエバも説得されてもらっている)。過去には2人のこともありましたが、原則11人、副賞は30.000ユーロと決して高額ではありませんが、ゴヤ賞より格上です。審査員は、今回は委員長ICAA総ディレクターのベアトリス・ナバス・バルデス、副委員長ICAAプロモーション、国際関係局次長カミロ・バスケス、委員にスペイン映画アカデミー会長フェルナンド・メンデス・レイテ、CIMA女性映画製作者・視聴覚メディア協会パトリシア・ロダ、ミリアム・ロレンソ、グレゴリオ・ベリンチョン、コルド・スアスア、などの映画監督、映画コラムニストが大勢で審査する。

 

★審査員は「世界で最もレベルの高い映画祭の一つベルリン映画祭金熊受賞により、スペイン映画を国際舞台に位置づけた」と評価した。文化省は「この賞は、物語と登場人物の構成における自然さと正確さが、社会問題を視点にしたリアリズムとフィクションを知的かつ厳密に調和させたことで、私たちの映画史のある道標となった。さらに私たちの社会と文化を特徴づけ豊かにする言語の多様性を調和の取れたかたちで組み入れている」という声明をだした。

 

★受賞の報を受けて「驚いた」というシモン監督、というのも「Alcarràs」の金熊賞受賞、オスカー賞スペイン代表作品など受賞歴を誇っていたにもかかわらずゴヤ賞は無冠だったからです。ゴヤ賞には作品・監督を含む11部門にノミネートされていた。各国ともアカデミー賞はアカデミー会員の投票で決定する。審査員はなく完全に民主的なはずです。会員はロドリゴ・ソロゴジェンの『ザ・ビースト』に投票した経緯があった。このゴヤ賞の件が国民賞に影響したどうか、やはり気になるところです。本賞の審査員が「どんな議論をしたか知る立場にないので、ゴヤのことが関係したかどうか分からない。いずれにせよ、私はそれが民主的なもと考えているし、それが映画を変えるものではない」とシモンはコメントしている。ゴヤ賞無冠の埋め合わせでないと信じたい。

     

   

(「Alcarràs」金熊賞のトロフィを手にした監督、ベルリン映画祭2022216日)

 

シモンが6歳のとき両親はエイズで亡くなり、新しい家族である叔父夫婦に引き取られる。デビュー作『悲しみに、こんにちは』(ゴヤ賞2018監督賞受賞)は、彼らとの生活に適応せざるをえなかった「1993年の夏」を描いた作品である。第2Alcarràs」も自伝的な要素が含まれた作品、ベネチア映画祭2022に出品された短編「Carta a mi madre para mi hijo」(25分、スペイン語)もマネルという小さい息子のいる母親への映画的なラブレターである。

    

         

        (短編「Carta a mi madre para mi hijo」のポスター)

 

★ベネチアFF当時2ヵ月になった我が子マネルを妊娠中にスーパー8ミリで撮影された。監督自身も出演しているが、監督の非常に個人的な回想や映像、アンヘラ・モリーナ、セシリア・ゴメスが出演する架空のシーンで構成されたフィクションです。モリーナがマネルの祖母になるのだが、「私の母は自分が祖母になっていたことを知ることはないし、マネルもその祖母を決して知ることはない」とシモン。ベネチアには父親の腕に抱かれたマネルも一緒だった。彼女の尊敬するアンヘラ・モリーナが出演を受けてくれたことでスタートした。彼女がイメージする母親像に雰囲気が似ているということらしい。

    

  

             (短編出演のアンヘラ・モリーナ)

     

★彼女の映画の中心軸は家族に絞られる。「両親について知ってることは殆どありません。叔父や祖父母を介しての話、写真、ビデオの断片、自宅の引き出しに保管している両親の私物から記憶のパズルを嵌めていく。エイズで亡くなったということで、事実を隠したり、それぞれが主観的な非常に異なったバージョンで情報を私に伝えた。それが私にフラストレーションを起こさせました。人生を通じて私が取りくんできたことは、いくつかの断片を搔き集めて何かを発明しなければならなかったのです」と語っている。

 

★次作「Romería」のテーマも家族が中心、「家族の思い出と、それにアクセスできなくなったときに何が起こるかについて少し語ります。これで私の家族三部作を完結させたい。新作の舞台は田舎ではないでしょう」ということです。また独立系の映画製作者について「新しい世代には共通点があって、非常に少ない資金で作り始めたということです。それが私たちに、何かを探したり、試したりする感覚を与えました。俳優の演技については、以前のスペイン映画を少し打破したものになっています」と。

 

★新世代の女性監督の輩出には目覚ましいものがあり、列挙するなら、『ザ・ウォーター』のエレナ・ロペス・リエラ、『リベルタード』のクララ・ロケ、『スクールガールズ』のピラール・パロメロ、『カルメン&ローラ』のアランチャ・エチェバリア、『家族との3日間』のマル・コル、「La novia」のパウラ・オルティス、「La hija de un ladrón」のベレン・フネスなど枚挙に暇がない。なかでもカルラ・シモンは「・・・非常に短期間に質の高い映画を世界中の観客に届けることに成功した新世代の代表でもある。間違いなく、彼女はスペイン映画が今経験している偉大な瞬間の基準となる一人です。同時に新型コロナウイルスのパンデミック後の困難な時期に映画館の開館を促進してくれた」と声明で審査員は強調した。つまりロングランで映画産業にも寄与したことが理由の一つだった。

   

    

  (新世代シネアルト、エチェバリア、シモン、ロケ、フネス、パロメロ)

 

★映画国民賞の授与式は、サンセバスチャン映画祭2023916日~27日)の会期中に、文化スポーツ大臣によって手渡されるのが恒例になっています。

『悲しみに、こんにちは』の作品紹介は、コチラ⇒2017年02月22日

Alcarràs」の作品紹介は、コチラ⇒2022年01月27日

 マラガ映画祭2023才能賞受賞の記事は、コチラ⇒2023年03月19日

エレナ・マルティンの2作目が「監督週間」にノミネート*カンヌ映画祭20232023年05月22日 13:50

         スペインのエレナ・マルティンの第2作「Creatura」が監督週間に

     

       

 

★今年第55回を迎える「監督週間」にスペインのエレナ・マルティンの「Creatura」がノミネートされました。「監督週間」と「批評家週間」はカンヌ映画祭とは選考母体も異なりますが、本体と同期間にカンヌで開催されることからカンヌFFと称しています。今回は本体より1日遅れの517日から26日まで、従って結果発表も先になります。長編部門は60分以上、短編部門は60分未満という区別があり、SACD賞、ヨーロッパ・シネマズ賞、観客賞などがあります。

    

       

             (最近のエレナ・マルティン)

 

Creatura

製作:Avalon PC / Elástica Films / Filmin / S/B Films / Vilauto Films / ICEC / ICAA / Lastro Media / TV3

監督:エレナ・マルティン

脚本:エレナ・マルティン、クララ・ロケ

音楽:クララ・アギラル

撮影:アラナ・メヒア・ゴンサレス

編集:アリアドナ・リバス

キャスティング:イレネ・ロケ

プロダクション・デザイン&美術:シルビア・ステインブレヒト

音響:レオ・ドルガン、ライア・カサノバス、オリオル・ドナト

衣装デザイン:ベラ・モレス

メイクアップ&ヘアー:ダナエ・ガテル(メイク)、アレクサンドラ・サルバ(ヘアー)

製作者:(Vilauto Films)アリアドナ・ドット、マルタ・クルアーニャス、トノ・フォルゲラ、(Elástica Films)マリア・サモラ、(Avalon PC)シュテファン・シュミッツ、(S/B Films)パウ・スリス、ジェイク・チーサムCheetham、他多数

 

データ:製作国スペイン、2023年、カタルーニャ語、ドラマ、112分、撮影地バルセロナのサンビセンツ・デ・モンタルト、公開スペイン2023918日予定、国際販売LuxBox

映画祭・受賞歴:カンヌ映画祭併催の「監督週間」にノミネート(520日上映)

 

キャスト:ミラ・ボラス(ミラ5歳)、クラウディア・ダルマウ(ミラ15歳)、エレナ・マルティン(ミラ35歳)、アレックス・ブランデミュール(父ジェラルド)、マルク・カルタニャ(ジェラルド)、クリスティーナ・コロム(大人のアイナ)、カルラ・リナレス(ディアナ)、オリオル・プラ(ミラの恋人マルセル)、ベルナ・ロケ(アンドレ)、クララ・セグラ(ディアナ)、テレサ・バリクロサ、ダビ・ベルト

 

ストーリー:少女のミラはビーチで夏を過ごします。彼女の大好きな父親は彼女に優しく世界を見せます。母親は控えめです。少女から急成長するミラのエネルギーは、彼女の周囲、彼女の体、海との繋がりを変えてしまいます。大人たちは自意識の高いミラの変化に戸惑いを感じます。ミラと父親のあいだで何かが壊れます。30代になったミラは、深刻な危機に向き合っています。ミラは自分の欲望と喪失が心の奥底にあることに気づき始めます。過去の関係を再訪する自己探求の旅をしていますが、再び海に戻ることができるでしょうか。 

    

        

               (思春期のミラ)

 

監督紹介エレナ・マルティン・ヒメノは、1992年バルセロナ生れ、監督、脚本家、映画・舞台女優。ポンペウ・ファブラ大学(1990年設立)で映画を学ぶ。長編デビュー作は主役も自身で演じた2017年の「Júlia ist」、マラガ映画祭2017ZonaZine 部門の作品・監督・モビスター+賞を受賞、他トゥリア第1作監督賞も受賞、バレンシア映画祭、翌年のガウディ賞(カタルーニャ語以外部門)の作品賞にノミネートされている他、ワルシャワFF、レイキャビクFFに出品された。本作については簡単ですが作品紹介をしています。

Júlia ist」の作品紹介は、コチラ20170710

    

      

 (エレナ・マルティン、「Júlia ist」から)

     

 

   

★エレナ・マルティンは、女優としてスタートしました。2015年のライア・アラバルト他4人の共同監督作品「Les amigues de lÁgata」(Las amigas de Ágataのアガタ役で好演し、名前が知られるようになった。2019イレネ・モライの短編「Suc de síndria」(20分、英題「Watermelon Juice)に主演し、マラガFF、メディナFF、イベロアメリカンFFなどで主演女優賞を受賞している。モライ監督はゴヤ賞2020の短編映画賞以下、ガウディ賞、メディナFF、バレンシアFF、イベロアメリカン短編映画賞など多数受賞しています。

      

  

              

TVシリーズでは、2019年、レティシア・ドレラが創案者のコメディ「Vida perfecta」(14話、1920)に参加、2話を監督している。5話からなるTVミニシリーズ「En casa」(1話、20)、ミュージック・ビデオ「Rigoberta Bandeni:Perra」を監督している。他にロス・ハビス(ハビエル・アンブロシハビエル・カルボ)のシリーズ「Veneno」(全8話)のスタッフライターとして6話にコミット、脚本2話を執筆している。


アルモドバルの英語映画第2弾「Strange Way of Life」*カンヌ映画祭20232023年05月04日 15:53

       ルシア・ベルリンの短編『掃除婦のための手引き書』の映画化を断念

   

   (ペドロ・パスカルとイーサン・ホーク主演「Strange Way of Life」ポスター)

 

ペドロ・アルモドバル英語映画2作目となるStrange Way of Lifeは、ネオウエスタン、ファッションブランドのサンローランが製作に参加するなど話題に事欠かない。長編新作はケイト・ブランシェット主演が予定されていたルシア・ベルリンの短編『掃除婦のための手引き書』の映画化のはずでしたが、どうやら本作を断念したようです。2022年に新設されたゴヤ賞国際ゴヤの第1回受賞者に選ばれたブランシェットのプレゼンターはアルモドバルでしたから、当時は少なくともまだ良好な関係だったのでしょうか。死後十年を経て「再発見」された作家の小説の映画化が立ち消えになったのは、個人的には非常に残念です。さて本題のStrange Way of Life」は、主役二人を除いてスペインの若いガラン俳優たち、製作も『ペイン・アンド・グローリー』や『パラレル・マザーズ』の常連が手掛けており、どんなウエスタンに仕上がっているのでしょうか。

  

 

 「Strange Way of Life / Extraña forma de vida2023

製作:El Deseo / Saint Laurent /

監督・脚本:ペドロ・アルモドバル

撮影:ホセ・ルイス・アルカイネ

音楽:アルベルト・イグレシアス

編集:テレサ・フォント

プロダクション・デザイン:アンチョン・ゴメス

美術:マリア・クララ・ノタリ

セット・デコレーション:ビセンテ・ディアス

衣装デザイン:アンソニー・ヴァカレロ

メイクアップ&ヘアー:アナ・ロサノ(メイク)、ノエ・モンテス(ヘアー)

製作者:アグスティン・アルモドバル、エステル・ガルシア、アンソニー・ヴァカレロ

 

データ:製作国スペイン、2023年、英語、短編30分、ウエスタン、撮影:アルメリア県タベルナス、配給ソニーピクチャーズ・クラシックス、公開スペイン5月26日

映画祭・受賞歴:第76回カンヌ映画祭コンペティション外(特別上映)正式出品。

  

キャスト:ペドロ・パスカル(シルバ)、イーサン・ホーク(ジェイク保安官)、マヌ・リオス、ジェイソン・フェルナンデス(青年ジェイク)、ジョゼ・コンデッサ(青年シルバ)、ペドロ・カサブランク、ダニエル・リベド(保安官代理)、サラ・サラモ、エレニス・ローハン(クララ)、ジョージ・ステイン、ヴァシレイオス・パパテオカリス、他

 

ストーリー:ビタークリークから彼を遠ざける砂漠を馬に乗って横断する男シルバの物語、彼はジェイク保安官を訪ねてやって来た。25年前、保安官と牧場労働者のシルバの二人は、金で雇われたガンマンとして一緒に働いていた。シルバは青年時代の友との再会を口実にやってきた。実際、彼らは再会を喜びあうのだが、翌朝、ジェイク保安官は彼の旅の動機が昔の友情の思い出ではないとシルバに告げる。男性二人のラブストーリー。

    

                 

              (シルバとジェイク保安官)

 

        アマリア・ロドリゲスの有名なファドが暗示するもの

 

★かつてセルジオ・レオーネクリント・イーストウッドとタッグを組んだマカロニ・ウエスタン「ドル箱三部作」(『荒野の用心棒』64、『夕陽のガンマン』65、『続・夕陽のガンマン』66)の撮影用に建てられた町でクランクインした。スペイン南部アンダルシア地方のアルメリア県タベルナスのウエスタン村テキサス・ハリウッド、北にはシエラネバダ山脈がそびえ、南は地中海を臨む風光明媚なガタ岬、ヨーロッパ唯一の砂漠といわれるタベルナス砂漠がある。2002年にはイーストウッドをカメオ出演させたアレックス・デ・ラ・イグレシアの『800発の銃弾』(02)もここで撮影されている。かつてのアルメリア地方は格安マカロニ・ウエスタンの聖地であった。ウエスタンではないが、ガタ岬で撮影されたのがダビ・マルティン・デ・ロス・サントスの『マリアの旅』(20)である。

 

        

               

             (撮影中のアルモドバル、2022年)

 

★本作のタイトルは、ポルトガルのファドの女王アマリア・ロドリゲス(リスボン192099)の有名なクラシック・ファド「Estranha forma de vida」(奇妙な生き方)から採られており、「あなた自身の欲望に背を向けて生きるものほど奇妙な存在はない」ことを示唆している。サンローランのアンソニー・ヴァカレロが製作だけでなく衣装デザインを兼ねている。撮影監督ホセ・ルイス・アルカイネは、『ペイン・アンド・グローリー』、『ボルベール〈帰郷〉』、『私が、生きる肌』などで監督お気に入り、ゴヤ胸像のコレクターと言われる音楽監督アルベルト・イグレシアスは、『私の秘密の花』(95)以来『パラレル・マザーズ』まで12作に参加している常連です。  

  

フィルム編集のテレサ・フォントとセット・デコレーションのビセンテ・ディアスは、共に『ペイン・アンド・グローリー』、『ヒューマン・ボイス』、『パラレル・マザーズ』を手掛けている。プロダクション・デザインのアンチョン・ゴメスは、バスク出身のベテランのアートディレクター、1997年の『ライブ・フレッシュ』から『パラレル・マザーズ』まで10作ほど手掛けている。ブエノスアイレス出身のアートディレクターマリア・クララ・ノタリは、2009年の『抱擁のかけら』からで『ペイン・アンド・グローリー』、『ヒューマン・ボイス』、本作が4作目だが、公開されたものではアルゼンチン映画でダミアン・シフロンのヒット作『人生スイッチ』や、アスガー・ファルハディの『誰もがそれを知っている』などがある。

 

★キャスト陣では、シルバ役のペドロ・パスカル(サンティアゴ1975)はチリ出身、TVシリーズ『ナルコス』(201923 Netflix)のDEA麻薬取締局の捜査官ハビエル・ペーニャ役で認知度は高い。実在する捜査官だがお化粧直しが多くて本人イコールとは言えない。1973年、もう一つの「9.11」と称されるピノチェト将軍率いるチリ・クーデタによりアジェンデ政権は崩壊した。アジェンデ支持派だった両親はペドロを連れてデンマークに亡命、後アメリカに渡りカリフォルニア、テキサスで育った。国籍はチリと米国、母語はスペイン語、ほかは英語である。オレンジ・カウンティ芸術学校、ニューヨーク大学ティッシュ芸術学校で学び、ニューヨーク在住。出演作はテレビ、短編を含めると60作以上、代表作は『ナルコス』以外では、『ワンダーウーマン』(11)、『ワンダーウーマン1984』(20)、『トリプル・フロンティア』(19)、TVシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』(14)、『ザ・マンダロリアン』(201923)、ホラーSFアドベンチャー「The Last of Us」(23)では主役を演じている。

   

         

          (シルバ役のペドロ・パスカル、フレームから)

 

イーサン・ホーク(オースティン1970)は、俳優、作家、脚本家、監督。1985年『エクスプロラーズ』でデビューしたが、学業に戻ってカーネギー・メロン大学で演技を学び、その後ニューヨーク大学でも学んだが、いずれも演技と両立せず中退している。ピーター・ウィアーの『いまを生きる』(89)で復帰、リチャード・リンクレイターの連作『恋人までの距離』(95)、『ビフォア・サンセット』(04)、『ビフォア・ミッドナイト』(13)に出演、2作目と3作目では脚本を監督と共演のジュリー・デルピーの3人で執筆、アカデミー脚色賞にノミネートされている。俳優としてはアカデミー賞は受賞していないが、『トレーニングデイ』(01)で助演男優賞に初ノミネート、2014年の『6才のボクが、大人になるまで』でもノミネートされた。アメナバルのサイコ・スリラー『リグレッション』(15)の刑事役、黒澤明の『七人の侍』をもとにした『荒野の七人』(60)のリメイク版『マグニフィセント・セブン』(16)では南北戦争で心に傷を負ったガンマン役で出演している。

 

★カトリーヌ・ドヌーヴが主演した是枝監督の『真実』(19)では、ジュリエット・ビノシュと夫婦役を演じ、ガルシア・マルケスの息ロドリゴ・ガルシアの『レイモンド&レイ』(22)では、ユアン・マクレガーと異母兄弟になった。マリベル・ベルドゥが共演している。202312月にNetflix 配信が決定しているサイコスリラー「Leave the World Behind」(リーブ・ザ・ワールド・ビハインド)に主演している。オスカー像を持っていなくても、サンセバスチャン映画祭2016ドノスティア栄誉賞を受賞しており、スペインでは知名度のあるハリウッドスターです

『リグレッション』の紹介記事は、コチラ20150103

ドノスティア栄誉賞&『マグニフィセント・セブン』紹介は、コチラ20160912

 

         

           (ジェイク保安官役のイーサン・ホーク)

 

TVシリーズでお馴染みになっている若いガラン俳優が束になって出演する。大体90年代生れで子役出身が多い。マヌ・リオス(シウダレアル1998)は、俳優、歌手、モデル、9歳でデビュー、ピアノとギターが弾ける。『エリート』のパトリック役で知られているが、ミュージカルの舞台にも立っている。セクシュアリティーについては公にしていない。サンローラン、プラダ、ディオール、バレンシアガなどのモデルとして数多くの雑誌をカバーしている。米国ビバリーヒルズに本拠をおくタレント・エージェンシーWMEと正式に契約した。次回作はアイトル・ガビロンドのTVミニシリーズの犯罪ミステリー「El silencio」(8話)に出演している優良株、Netflixで配信されるようです。

 

            

             

               (左端がマヌ・リオス)

 

★ジェイク保安官の青年時代を演じるジェイソン・フェルナンデスは、SFスリラー『エデンへようこそ』(2216話)出演のほか、19世紀初頭のアンダルシアを舞台にしたエンリケ・ウルビスの「Libertad」(21)に女盗賊ラ・ジャネラの息子役で出演しており、今年公開予定のダビ・ガラン・ガリンドのコメディ「Matusalén」(仮訳「メトセラ 長寿の人」)にも主演する。共演者にアントニオ・レシーネス、ホルヘ・サンス、カルロス・アレセス、ロベルト・アラモとなんとも豪華版過ぎる。ダニエル・リベトはリュイス・ダネスの「La vampira de Barcelona」(20)他、ホラー映画に出ている。ジョゼ・コンデッサ(リスボン1997)はポルトガルの俳優、数多くのTVシリーズに出演、セルジオ・グラシアノの「O Som Que Desce na Terra」(21、仮訳「大地に降りそそぐ音」)でポルトガル映画アカデミーのソフィア男優賞ノミネート、同 NicoCinEuphoriaほかを受賞している。4人とも今後の活躍が期待される。

Libertad」の作品紹介は、コチラ20210406

   

      

       

                    (ダニエル・リベトとペドロ・パスカル)