オリベル・ラシェの「Sirat」が審査員賞*カンヌ映画祭20252025年05月29日 18:50

     パルムドールは予想通りジャファール・パナヒの「Un Simple Accident

 

      

         (ジャファール・パナヒ、カンヌFF 授賞式、524日)

 

★今年のカンヌは「パナヒのためのカンヌ」と言われて、受賞は発表を待つまでもなく受賞は確実視されていたらしい。なんせ審査委員長はジュリエット・ビノシュですからね。これでジャファール・パナヒは三大映画祭の最高賞(金獅子、金熊)を獲得、グランドスラムを達成した。 反イランの監督作品が受賞したことでイラン外務省がたまりかねて抗議したとか、授賞式当日に自称「無政府主義者」のテロリストによる変電所放火で大規模停電が起きたりとか、映画祭も政治絡みで物騒になってきました。何はともあれ政治的心理ドラマUn Simple Accident」は受賞に値する作品であることに間違いなさそう、昨年よりよほどましか。

 

グランプリは、誰が計測してるのかスタンディングオベーションが19分だったというヨアキム・トリアーの「Sentimental Value」(ノルウェー、仏、デンマーク、独)、審査員賞は、オリベル・ラシェの「Sirat」(西、仏)とマーシャ・シリンスキーの「Sound of Falling」(独)の2作品、監督賞クレベール・メンドンサ・フィリオの「O Secreto Agente / The Secret Agent」(ブラジル、仏、独、オランダ)でした。男優賞(ワグネル・モウラ)の他、FIPRESCIも受賞して最多受賞作となりました。かつてのカンヌ11賞の原則は反故になっています。彼は2019年『バクラウ 地図から消された村』で審査員賞を受賞しています。

 

 

            オリベル・ラシェの「Sirat」が審査員賞

   

          

 

★星取表が星2つ(イマイチ)と4つ(イイね)に分かれ、賞に絡むのは難しいかなと予想していました。「リベラシオン」紙は星4つだったが、映画批評誌「カイエ・デュ・シネマ」と強力なメディアである「フィガロ」紙は星2つだった。しかし家族についての、喪失についてのロードトリップは多くの人の心に刺さったようで概ね好意的な評価でした。スタンディングオベーション同様当てになりません。

   

             

             (審査員賞受賞のラシェ監督、524日)

 

           

       (監督、セルジ・ロペス、ブルノ・ヌニェス、フォトコール)

       

         

                (映画祭参加者一同)

 

カルラ・シモンの「Romería」は無冠に終わりました。どちらかというと物語が分かりやすい分、好意的な評が多かったが、少しインパクトに欠けていたのではないでしょうか。「ガーディアン」紙、「スクリーン・インターナショナル」、「リベラシオン」、「ザ・ニューヨーカー」誌、「フィガロ」などは3星、「カイエ・デュ・シネマ」は2星でした。「ハリウッド・リポーター」誌はシモン監督にインタビューを試みているが、評価は公表しなかった。

   

  

    (監督、製作者マリア・サモラ、新人リュシア・ガルシアとミッチ・ロブレス、

     レッドカーペット)

   

          

    トリスタン・ウジョアと監督)

   

★シモン監督は妊娠8カ月目とかで大義そう、帰国したら「家でゆっくりしたい」と語っていた。ベルリン映画祭2022で『太陽と桃の歌』が金熊賞を受賞した折は、第1子をお腹に抱えていた。今年のカンヌはレッドカーペットでのスケスケの露出度の高いドレス、ボリュームのありすぎる長いトレーンが禁止されましが、間際だったこともあり控えのドレスがなかったり、着るものぐらい自由にさせてという勇敢な女性たちで、守られたとは言いがたい。リュシア・ガルシアのドレスもかなりスケスケですね。

 

★幼いころにエイズで両親を亡くしたシモンは、「両親の物語を再構築しようとすると、いつも痛みが走ります。家族の記憶の重要性、自分のアイデンティティをどのように形成するかについての映画です。他人を通じて自分のアイデンティティを作ることはできなくとも、創造を通じて発明することができる。映画はそのために存在し、存在しないイメージを創りだすことができる」とカンヌのインタビューで語った。長年苦しんできた家族のフラストレーションから解放されたのでしょうか。

   

                    

               (フォトコール、5月21日)

   

  

                    (カルラ・シモン、プレス会見にて)

  

Sirat」の作品紹介は、コチラ20250501同年0503

Romería」の作品紹介は、コチラ20250508

  

★次回は「ある視点」部門の作品賞受賞者、チリのディエゴ・セスペデス、審査員賞受賞者、コロンビアのシモン・メサ・ソトを予定しています。

 

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