バスク語映画 "Handia"*サンセバスチャン映画祭2017 ⑥ ― 2017年09月06日 15:16
オフィシャル・セレクション第3弾『フラワーズ』の監督が再びやってくる
★世界の映画祭を駆け巡った『フラワーズ』(“Loreak” 14)の監督ジョン・ガラーニョと、その脚本を手掛けたアイトル・アレギが、19世紀ギプスコアに実在したスペイン一背の高い男ミケル・ホアキン・エレイセギ・アルテアガ(1818~61)にインスパイアーされて “Handia” を撮りました。本名よりもGigante de Altzo「アルツォの巨人」という綽名で知られている人物です。前作でジョン・ガラーニョと共同監督したホセ・マリ・ゴエナガは、脚本&エグゼクティブ・プロデューサーとして参画しています。バスク自治州のサンセバスチャンで開催される映画祭ですが、オフィシャル・セレクションに初めてノミネートされたバスク語映画が『フラワーズ』だった。
(ワーキング・タイトルのポスター)
“Handia”(ワーキング・タイトル“Aundiya”、英題 ”Giant”) 2017
製作:Irusoin / Kowaiski Films / Moriarti Produkzioak / 他
監督:アイトル・アレギ、ジョン・ガラーニョ
脚本:アイトル・アレギ、ジョン・ガラーニョ、ホセ・マリ・ゴエナガ、アンド二・デ・カルロス
音楽:パスカル・ゲーニュ
撮影:ハビエル・アギーレ
編集:ラウル・ロペス、Laurent Dufreche
キャスティング:ロイナス・ハウレギ
プロダクション・デザイン:ミケル・セラーノ
メイクアップ&ヘアー:オルガ・クルス、Ainhoa Eskisabel、アンヘラ・モレノ、他
衣装デザイン:サイオア・ララ
プロダクション・マネージメント:アンデル・システィアガ
製作者:ハビエル・ベルソサ、イニャキ・ゴメス、イニィゴ・オベソ、(エグゼクティブ)ホセ・マリ・ゴエナガ、フェルナンド・ラロンド、コルド・スアスア
データ:スペイン、バスク語(スペイン語を含む)、2017年、歴史ドラマ、製作資金約200万ユーロ、サンセバスチャン映画祭2017正式出品、スペイン公開10月20日予定
キャスト:エネコ・サガルドイ(ミゲル・ホアキン・エレイセギ)、ホセバ・ウサビアガ(兄マルティン・エレイセギ)、ラモン・アギーレ(父アントニオ・エレイセギ)、イニィゴ・アランブラ(興行主アルサドゥン)、アイア・クルセ(マリア)、イニィゴ・アスピタルテ(フェルナンド)、ほか
プロット:マルティンは、第一次カルリスタ戦争からギプスコアの集落で暮らす家族のもとに戻ってきた。そこで彼が目にしたものは、出征前には普通だった弟ホアキンの身長が見上げるばかりになっていたことだった。やがて人々がお金を払ってでも、地球上で最も背の高い男を見たがっていることに気づいた二人の兄弟は、野心とお金と名声を求めて、スペインのみならずヨーロッパじゅうを駆けめぐる旅に出立する。家族の運命は永遠に変わってしまうだろう。19世紀に実在した「アルツォの巨人」ことミケル・ホアキン・エレイセギの人生にインスパイアーされて製作された。
スペイン海軍の将軍に扮した巨人ミゲル・ホアキン・エレイセギ
★実際のミゲル・ホアキン・エレイセギ・アルテアガ(バスク語ではMikel Jokin Eleizegi Arteaga)は、1818年12月23日、ギプスコア県のアルツォ村で9人兄弟姉妹の4番目の男の子として生まれた。母親は彼が10歳のころに亡くなっている。20歳で先端巨人症を発症して死ぬまで身長が伸びつづけたということです。記録によると身長が227センチ、両手を広げると242センチ、靴のサイズは36センチだったという(身長には異説がある)。当時のヨーロッパでは最も背が高く「スペインの巨人」として、イサベル2世時代のスペイン、ルイ・フィリップ王時代のフランス、ビクトリア女王時代のイギリスなどを興行して回った。たいていトルコ風の服装、あるいはスペイン海軍の将軍の衣装を身に着けて舞台に立った。1961年11月20日、肺結核のため43歳で死亡、遺体は生れ故郷アルツォAltzoに埋葬されたが、コレクターの手で盗まれてしまっている。映画は史実に基づいているようですが、やはりフィクションでしょうか。
(スペイン海軍の将軍の衣装を着たミゲル・ホアキン)
◎キャスト
★兄弟を演じるエネコ・サガルドイ(1994)もホセバ・ウサビアガも初めての登場、二人ともバスク語TVシリーズ “Goenkale” に出演している。2000年から始まったコメディ長寿ドラマのようで、エネコ・サガルドイは本作で2012年にデビュー、翌年までに57話に出演している。身長が高いことは高いが227センチのミゲル・ホアキンをどうやって演じたのか興味が湧きます。二人ともバスク語の他、スペイン語、英語の映画に出演している。
(ミゲル・ホアキン・エレイセギ役のエネコ・サガルドイ、映画から)
(左端が兄マルティン役のホセバ・ウサビアガ、映画から)
★第一次カルリスタ戦争は1933年に勃発、1939年に一応終息しました。兄マルティンが復員してから物語は始まるから、時代背景は1940年代となります。イニィゴ・アランブラ扮するアルサドゥンは、実在したホセ・アントニオ・アルサドゥンというナバラ在住の男で、ホアキンを見世物にして金儲けしようと父親に掛け合った。なかなか目端の利いた男だったようです。父親役のラモン・アギーレ(1949生れ)は、フェルナンド・フランコがゴヤ賞2014新人監督賞を受賞した “La herida”(13)、公開されたアルモドバルの『ジュリエッタ』、イニャキ・ドロンソロの『クリミナル・プラン~』、ミヒャエル・ハネケの『愛、アムール』(2012パルム・ドール)などに出演しているベテラン。フェルナンド・フランコの新作 “Morir” が、今年の特別プロジェクションにエントリーされているので、時間的余裕があればアップしたい。
(映画の宣伝をするアルサドゥン役のアランブラ、ネパールのプーンヒル標高3310mにて)
◎スタッフ
★製作者は、ラテンビート、東京国際映画祭で上映された『フラワーズ』や ”80 egunean”(”For 80 Days”)に参画したスタッフで構成されており、唯一人エグゼクティブ・プロデューサーのコルド・スアスアが初参加、過去にはフェルナンド・フランコの “La herida”、マルティネス=ラサロのヒット作 “Ocho apellidos vascos”(14)、アメナバルの “Regresión”(15、未公開)などを手掛けている。プロダクション・マネージメントのアンデル・システィアガも初参加、過去にはアレックス・デ・ラ・イグレシア映画『13 みんなのしあわせ』『マカロニ・ウエスタン800発の銃弾』他を手掛けている。音楽はフランス出身、1990年からサンセバスチャンに在住しているパスカル・ゲーニュと同じです。監督キャリア&スタッフ紹介は『フラワーズ』にワープしてください。
(『フラワーズ』のポスター)
★前作の脚本を担当、本作で監督にまわったアイトル・アレギAitor Arregi は、ジョン・ガラーニョとの共同でドキュメンタリー ”Sahara Marathon”(04、55分)を撮っている。他にイニィゴ・ベラサテギとアドベンチャー・アニメーション ”Glup, una aventura sin desperdicio”(04、70分)、“Cristobal Molón”(06、70分)を共同で監督している。また本作では脚本と製作を担ったホセ・マリ・ゴエナガとドキュメンタリー “Lucio”(07、93分)を撮り、グアダラハラ映画祭のドキュメンタリー部門で作品賞を受賞している。
(ジョン・ガラーニョとアイトル・アレギ)
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