カルロタ・ペレダの「Cerdita」*ゴヤ賞2023 ⑤2022年12月19日 19:17

          ラウラ・ガランのパーフォーマンスに絶句する?

   

    

 

カルロタ・ペレダのデビュー作Cerdita」は、前回触れたようにゴヤ賞2019短編映画賞受賞作Cerdita」(14)の延線上にあり、主役サラを同じラウラ・ガランが演じている。ペレダ監督が女優、モデル、メディア・パーソナリティとして活躍していたラウラ・ガランに接触したのは2017年、1986年生れの女優は既に30歳を超えていたから、10代の女の子に化けるには若干無理があったのではなかろうか。短編はメディナ・デル・カンポ映画祭2018でプレミアされ、国内は勿論フランスを含めた欧米の映画祭に出品され受賞歴を誇ることになった。短編よりさらに体重と年齢を増やした主役以外はキャストを総入れ替え、長編デビューを果たした。

  

        

             (女優ラウラ・ガラン、カルロタ・ペレダ監督、撮影リタ・ノリエガ)

 

 Cerdita」(英題「Piggy」)

製作:Morena Films(西)/ Backup Media(仏)/ Cerdita AIE /

     協賛:RTVE / Movister/ Comunidad de Madrid

監督・脚本:カルロタ・ペレダ

音楽:オリヴィエ・アルソン

撮影:リタ・ノリエガ

編集:ダビ・ペレグリア

キャスティング:パウラ・カマラ、アランサ・ベレス

プロダクション・マネージメント:サラ・E・ガルシア

プロダクション・デザイン:オスカル・センペレ

衣装デザイン:アランシャ・エスケロ

メイクアップ&ヘアー:パロマ・ロサノナチョ・ディアス

製作者:メリー・コロメル、(エグゼクティブ)ピラール・ベニト、(共同)ジャン=バティスト・ババン、デビッド・アトラン・ジャクソン、ほか

 

データ:製作国スペイン=フランス、スペイン語・英語、2022年、スリラー・ホラー、99分、撮影地エストレマドゥーラ州カセレスのビジャヌエバ・デ・ラ・ベラ、2021717日クランクイン、公開スペイン1014日、ほかカナダ、フランス、オランダ、フィンランド、米国(限定)、インターネット上映(アルゼンチン、米国)など、配給Filmax

  

映画祭・受賞歴:サンダンス映画祭2022でプレミア、シアトル・インデペンデントFF、ブエノスアイレス・インデペンデントFF、トランシルバニア、メルボルン、ブリュッセル、独ファンタジー・フィルムフェス、サンセバスチャン(サバルテギ-タバカレラ部門)、シッチェス、リオデジャネイロ、ベルゲン、テッサロニキ、台北・ゴールデンホース、ベルファスト、ほか多数。Grimmfest 2022 監督賞と女優賞、トゥルーズ・シネエスパーニャ2022女優賞受賞。フォルケ女優賞(受賞ならず)、フェロス賞2023(作品・監督・主演女優・助演女優・ポスターエドゥアルド・ガルシア・予告編マルタ・ロンガス)ノミネート、シネマ・ライターズ・サークル賞2023(新人監督・助演女優・新人女優・脚色)ノミネート。

   

        

     (左から、ピラール・カストロ、監督、ラウラ・ガラン、カルメン・マチ、

      サンセバスチャン映画祭2022フォトコール)

 

キャストラウラ・ガラン(サラ)、リチャード・ホームズ(見知らぬ男)、カルメン・マチ(サラの母親アスン)、イレネ・フェレイロ(クラウディア)、カミーユ・アギラル(ロチ)、クラウディア・サラス(マカ)、ホセ・パストール(ペドロ)、フリアン・バルカルセル(サラの父親トマス)、アメッツ・オチョア(サラの弟)、フェルナンド・デルガド=イエロ(フアンカルリートス)、ピラール・カストロ(エレナ)、チェマ・デル・バルコ(フアン・カルロス)、フレド・タティエン(ロチ神父)、マレナ・グティエレス(セニョーラ・マリア)、ほか

ゴチック体はゴヤ賞(監督・脚色・主演女優・助演女優・プロダクション・メイクアップ)にノミネートされている。作曲家オリヴィエ・アルソンはソロゴジェンの『ザ・ビースト』でノミネートされており、本作は残念でした。

 

ストーリー:エストレマドゥーラの真夏の暑さは地獄、サラのような体重オーバーの少女には絶え間ないイジメを意味します。彼女は外見のため自分を愛せず自分を否定して引きこもる。少女時代には仲良しだったクラウディアの仲間のロチやマカから嫌がらせを受けている。彼女たちのいじめは凄まじく尋常ではない。しかし見知らぬ男が村にやって来ていじめっ子を誘拐するのを目撃したとき、警察に届けるべきか、あるいは復讐を遂げるべきか、ジレンマに直面する。憎しみが憎しみを呼び、村は恐怖に包まれる。

 

★監督紹介:カルロタ・ペレダ1975112日マドリード生れ、監督、脚本家。映画はマドリード共同体映画視聴覚学校ECAMで学ぶ。法律を専攻していたので家族は映画に進むことに反対でした。ECAM入学も秘密でしたので学費に困り、並行してテレビ界で仕事をした。TVシリーズ「Periodistas」の脚本家としてスタートを切る。「Lex」(082話)、「Acacias 38」(1515話)、「El secreto de Puente Viej」(181910話)他を監督する。映画は以下の通りだが、共同監督作品は除外した。

    

       

      (短編映画賞のトロフィーを手にしたカルロタ・ペレダ、ゴヤ賞2019

 

2016Las rubias」(17分)が国内外の140の映画祭で上映、マドリード「短編週間」審査員賞・テレマドリード賞、メディナFFヤング審査員賞、メディナ・デル・カンポ「映画週間」ヤング審査員賞、ソリア市短編コンクール賞などを受賞した。

2018Cerditas」(14分)は、ゴヤ賞2019短編部門作品賞、ホセ・マリア・フォルケ賞短編賞、ソリア市短編コンクール・ヤング審査員賞、ドノスキノFF脚本賞、サラゴサFF作品賞、短編ファンタスティックLa vieja Encina FF観客賞、タピアレスFF審査員賞、アイダホ・ホラーFF外国部門作品賞、マドリード「短編週間」作品賞ほか、パレンシアFF観客賞、タラベラ・デ・ラ・レイナ短編FFパベス賞(作品・監督・脚本)、サントゥルシネ審査員賞、シン・シティ・ホラーFF審査員賞、各受賞。

2020There will be Monster」(5分)、アルカラ・デ・エナレス短編FF脚本賞、サン・クガ・ファンタスティック審査員賞受賞。

2022Cerdita/Piggy」割愛

2023La ermita」次回作

    

     

              (短編「Las rubias」のポスター)

 

★新人監督賞ノミネートとはいえ、TVシリーズを含めるとキャリアは長い。短編「Cerditas」の構想は、監督によると、「いじめについてのブラックユーモアとホラーをミックスした映画を作りたいと思っていた。カセレスで夏を過ごしていたのですが、暑さは尋常でなくシエスタの時間には誰も外出しません。そこで娘がシエスタをしている一番暑い時間帯にプールに出かけていた。するといつも同じ女の子を見かけました。まさかプールに入るつもり?」そこで少女は何をするつもりかというアイデアが浮かんだ。急いで坂道を上って家に着くと汗びっしょり、もう夕方には書き始めていました。監督自身も10代の頃には肥満に苦しんでいた。夏休みになると殊更辛かった。その経験を織り込んだ〈アメリカン・ゴシック〉を構想した。

 

★主役の女優探しに2年間費やした。ラウラ・ガランがキャラクターを完全に理解していたことに喜びと安堵を覚えました。「ガランのお蔭で、憎しみがさらに憎しみを生むだけであることが明らかな短編映画に纏めることができた」と監督。「スペインの映画業界はサウラやアルモドバル、ボリャインやコイシェ、ネット配信のTVシリーズのお蔭で注目を集めています。しかし忘れて欲しくないのはパコ・プラサやバラゲロのホラー映画です」とインタビューに応えている。

 

★キャスト紹介:ラウラ・ガラン1986年グアダラハラ生れ、女優、モデル、メディア・パーソナリティ。20176月、舞台演出家パトリック・ベンコモ・ウェーバーと結婚、2児の母、一人は前妻の子供。弟ハビエル・ガランも俳優。2006TVシリーズ「Brigada policial」でデビュー、映画デビューはカルロス・アウレコエチェアの短編「Yo, Ulrike, grito」(15)、「Cerdita」(18)、『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』(18)、「There will be Monster」、ダビ・ガラン・ガリンドの「Origenes secretos」(20『ヒーローの起源~アメコミ連続殺人事件』Netflix配信)、サラ・バンバ&イバン・マルティン・ルエダスの短編「Familias」(20)、次回作出演はTVシリーズ、アリツ・モレノの「Zorras」(23、8話)が進行中。見知らぬ男役のリチャード・ホームズは、ダニエル・カルパルソロの『ライジング・スカイハイ』(20)に出演している。

   

     

         (リチャード・ホームズ扮する見知らぬ殺人鬼とサラ)

 

    

(撮影中の監督とラウラ・ガラン)

   


                 (カルメン・マチ扮するサラの母親アスンとサラ)

   

   

    (フリアン・バルカルセル扮する肉屋を営む父親トマスとサラ、後方は監督)


コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://aribaba39.asablo.jp/blog/2022/12/19/9549108/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。