第10回フェロス賞2023結果発表*サラゴサ開催 ― 2023年02月01日 10:27
『ザ・ビースト』と「Cinco lobitos」が痛み分け、鮮明だった女性主導

★去る1月28日PM10:00~00:46(現地時間)、第10回フェロス賞2023の授賞式がサラゴサ・オーディトリアム多目的ホールで開催されました。結果は以下の通りですが、近年で受賞作品が最も均等にばらけた結果になりました。作品のグループごとにテーブルを囲み、レストラン並みにワインとオードブルが提供されましたが終了時間にはグラスもお皿も空っぽでした。AICE スペイン映画ジャーナリスト協会主催。
★ロドリゴ・ソロゴジェンの『ザ・ビースト』が映画部門の作品賞・助演男優賞(ルイス・サエラ)・オリジナルサウンドトラック賞(オリヴィエ・アーソン)の3賞、アラウダ・ルイス・デ・アスアの「Cinco lobitos」が主演女優賞(ライア・コスタ)・助演女優賞(スシ・サンチェス)・脚本賞(アラウダ・ルイス・デ・アスア)の3賞と痛み分け、監督賞には「Alcarras」のカルラ・シモン、主演男優賞にナチョ・サンチェス(『マンティコア』)という具合でした。
★個人的には映画のコメディ部門にアルゼンチンの二人の監督、マリアノ・コーン&ガストン・ドゥプラットの「Competencia oficial」が受賞したことです。2021年製作ですがスペイン公開が2022年2月だったので1年遅れでノミネートされた。製作はカタルーニャのベテラン製作者ジャウマ・ロウレス、出演はアントニオ・バンデラス、ペネロペ・クルス、オスカル・マルティネスの3人、『コンペティション』の邦題で今年3月17日公開がアナウンスされました。またフェロス感動賞(Premio Feroz Arrebato)フィクション部門で、デビュー作『スキン』以来6年ぶりに映画に戻ってきたエドゥアルド・カサノバの「La piedad」が受賞したことです。アンヘラ・モリーナ扮する母親と暮らす少年の物語だそうですが、いずれアップを予定しています。

(挨拶するAICE 会長マリア・ゲーラ)
★TVシリーズ部門の俳優賞も1作品に偏らないで、ドラマの「La ruta」とコメディの「No me gusta conducir」のほか『インティミダ』からも選ばれていました。フォルケ賞とは違う結果になったのもニュースかもしれません。やはり映画よりTVのほうが人気があるのか、出演者が多いこともあるのか、各ノミネート候補者たちは大勢で参加、大いに盛り上がっていました。
★会場を沸かせていたのがプレゼンターの3女優、コメディアンで女優、テレビ司会者のシルビア・アブリル、夫アンドリュー・ブエナフエンテとコンビを組んでゴヤ賞ガラの総合司会者を2年連続で務めたベテラン、初めてマドリードを離れてビルバオで開催された2019年ガラの総合司会者イングリッド・ガルシア=ヨンソン、監督賞候補が女4対男1だと黒一点のソロゴジェン監督をいじった女優のバルバラ・サンタ=クルス、また車椅子で登場した作家でテレビ評論家ロベルト・エンリケス(ボプ・ポップのほうが有名)などのモノローグでした。黒一点の監督賞ノミネートのリストからも分かるように女性が主導するイベントでした。

(栄誉賞受賞アルモドバルにインタビューするシルビア・アブリル)

(車椅子で登壇したボプ・ポップ)
*第10回フェロス賞2023受賞結果*(*印は作品紹介をしている受賞作)
◎作品賞(ドラマ)
「Alcarras」 カルラ・シモン監督
「As bestas」(邦題『ザ・ビ-スト』) ロドリゴ・ソロゴジェン *
「Cinco lobitos」 アラウダ・ルイス・デ・アスア
「Modelo 77」 アルベルト・ロドリゲス
「Un año, una noche」 イサキ・ラクエスタ


(ロドリゴ・ソロゴジェンほか製作者たち)
◎作品賞(コメディ)
「Competencia oficial」 監督マリアノ・コーン、ガストン・ドゥプラット *
「El Cuarto Pasajero」 同アレックス・デ・ラ・イグレシア
「Tenéis que venir a verla」 同ホナス・トゥルエバ
「Vacil」 同アベリナ・プラト
「Voy a pasármelo bien」 同ダビ・セラーノ

◎脚本賞DAMA
ロドリゴ・ソロゴジェン、イサベル・ペーニャ 「As bestas」
カルラ・シモン、アルナウ・ピラロ 「Alcarras」
アラウダ・ルイス・デ・アスア 「Cinco lobitos」 *
カルロタ・ペレダ 「Cerdita」監督カルロタ・ペレダ
フラン・アラウホ、イサ・カンポ、イサキ・ラクエスタ 「Un año, una noche」


◎監督賞
ピラール・パロメロ 「La Maternal」 ノミネート3カテゴリー
カルロタ・ペレダ 「Cerdita」
アラウダ・ルイス・デ・アスア 「Cinco lobitos」
カルラ・シモン 「Alcarras」 *
ロドリゴ・ソロゴジェン 「As bestas」


◎女優賞
アンナ・カスティーリョ 「Girasoles silvestres」 監督ハイメ・ロサーレス
ライア・コスタ 「Cinco lobitos」
ラウラ・ガラン 「Cerdita」
マリナ・フォイス 「As bestas」
カルラ・キレス 「La Maternal」


◎男優賞
カラ・エレハルデ 「Vasil」
ミゲル・エラン 「Modelo 77」
ドゥニ・メノーシェ 「As bestas」
ナウエル・ぺレス・ビスカヤール 「Un año, una noche」
ナチョ・サンチェス 「Mantícora」(『マンティコア』)監督カルロス・ベルムト *
ルイス・トサール 「En los márgenes」同フアン・ディエゴ・ボット


◎助演女優賞
アデルファ・カルボ 「En los márgenes」
アンヘラ・セルバンテス 「La Maternal」
カルメン・マチ 「Cerdita」
スシ・サンチェス 「Cinco lobitos」
エンマ・スアレス 「La consagración de la primavera」監督フェルナンド・フランコ


◎助演男優賞
ディエゴ・アニド 「As bestas」
ラモン・バレア 「Cinco lobitos」
ヘスス・カロサ 「Modelo 77」
オリオル・プラ 「Girasoles silvestres」
ルイス・サエラ 「As bestas」


◎オリジナルサウンドトラック賞
オリヴィエ・アーソン 「As bestas」
アランサス・カジェハ 「Cinco lobitos」
フェルナンド・ベラスケス 「Los renglones torcidos de Dios」監督オリオル・パウロ
フリオ・デ・ラ・ロサ 「Modelo 77」
ラウル・Refree 「Un año, una noche」

◎ポスター賞
ジョルディ・リンス、ルシア・ファライグFaraig 「As bestas」
エドゥアルド・ガルシア、ホルヘ・フエンブエナ 「Cerdita」
ゴンサロ・ルテ、キム・ビベス 「Girasoles silvestres」
ミカ・ムルフィーMurfhy 「La consagración de la primavera」
*カルロス・ベルムト 「Mantícora」

(ベルムト欠席で代理が受け取った)
◎予告編賞
ミゲル・アンヘル・トルドゥ 「As bestas」
マルタ・ロンガス 「Cerdita」 *
ミゲル・アンヘル・トルドゥ 「Mantícora」
アイトル・タピア 「Modelo 77」
「Los renglones torcidos de Dios」

◎TVシリーズ作品賞(ドラマ)
「¡García!」(HBO Max)
「Apagón」(Movister Plus)
「Intimidad」(Netfix)邦題『インティミダ』2022年6月10日配信開始
「La ruta」(Atresmedia Player)
「Rapa」(Movister Plus)


(大喜びの出演者と製作者一同、一番賑やかだった)
◎TVシリーズ作品賞(コメディ)
「Autodefensa」(Filmin)
「Fácil」(Movister Plus)
「Las de la última fila」(Netflix)邦題『最後列ガールズ』2022年9月23日配信開始
「No me gusta conducir」(TNT)


◎TVシリーズ脚本賞DAMA
イサベル・ペーニャ、アルベルト・マリニ、フラン・アラウホ、ラファエル・コボス、イサ・カンポ 「Apagón」
ベルタ・プリエト、ベレン・バーニーズ、ミゲル・アンヘル・ブランカ 「Autodefensa」
アンナ・R・コスタ、クリスティアナ・ポンス 「Fácil」
ベロニカ・フェルナンデス、ラウラ・サルミエント、ホセ・ルイス・マルティン 「Intimidad」
ボルハ・ソレル、ロベルト・マルティン・マイステギ、シルビア・エレロス・デ・テハダ、クララ・ボタス 「La ruta」

◎TVシリーズ女優賞
クラウディア・サラス 「La ruta」


(ベストドレッサーにも選ばれたクラウディア・サラス)
◎TVシリーズ男優賞
フアン・ディエゴ・ボット 「No me gusta conducir」


◎TVシリーズ助演女優賞
パトリシア・ロペス・アルナイス 「Intimidad」邦題『インティミダ』


◎TVシリーズ助演男優賞
ダビ・ロレンテ 「No me gusta conducir」

◎フェロス感動賞(フィクション)
「La piedad」 監督エドゥアルド・カサノバ


◎フェロス感動賞(ノンフィクション)
「La vida y unjardin secreto」 監督イレネ・M・ボレゴ


(左がイレネ・M・ボレゴ監督)

◎フェロス栄誉賞
ペドロ・アルモドバル 監督、脚本家、製作者


(母親の思い出で涙ぐむ受賞者)
★ガラの視聴率が最も高かったのはフェロス栄誉賞受賞のペドロ・アルモドバル登場のようでした。水色のスーツに赤のセーターで登壇、壇上には「アルモドバルのミューズたち」が勢揃い、フリエタ・セラノ、パルマ・デ・ロッシ、最新作『パラレル・マザーズ』出演のアイタナ・サンチェス=ヒホンとミレナ・スミット、ビビアナ・フェルナンデス、レオノール・ワトリングなどからのキス攻めにあいました。「私の映画のほとんどが、私の母親が与えてくれたインスピレーションのお蔭です」と亡き母親に感謝を捧げるスピーチをした。

(アルモドバルのミューズたちに囲まれて)
フェロス賞2023ガラに参集したシネアストたち*今年の流行は喪服? ― 2023年02月03日 16:04
目立っていたアルモドバル&ボブ・ポップ

★今年のフェロス賞の夕べは好奇心旺盛な地元ファンの熱気とは裏腹に気温が低く、あいにくの強い北風でした。5時間待ちも厭わなかったファンこそ、今夜のヒーローでした。もし冬のサラゴサを訪れたいという観光客がいたら、それは正にクレイジーでしょう。今回はガラにドレスアップして参集したセレブたちの寒夜の品定め。今年はモノトーン調が主流、例年黒と白は一定数人気がありますが、今年は「喪服」にしては透け透けもありましたが、モノトーンが幅を利かせていました。女性誌が選ぶベストドレッサーも軒並みモノトーンでした。というわけで栄誉賞のアルモドバルののターコイズブルーのスーツとボブ・ポップの紫紅色のブレザーが目立ちました。以下はノミネート候補者、各カテゴリーのプレゼンター中心に纏めたフォト集です。

(ボブ・ポップから「低賃金で不安定な文化ジャーナリストの職業擁護」を求められた、
労働大臣ヨランダ・ディアスと文化教育大臣ミケル・イセタ)
*レッドカーペットでのフォトコールに応じるセレブたち*
★フェロス栄誉賞受賞者のペドロ・アルモドバル、壇上では「私を無知にして無心論者にした」サレジオ会の神学校での地獄のような体験を語ったアルモドバル、変な少年だった頃の逃げ場は「映画館でした」と。健康状態がイマイチらしく何回か座を外していた。

(プロデューサーの弟アグスティン・アルモドバルとのツーショット)

(ボブ・ポップ、黒のスラックスと靴先が金色のスニーカーがマッチしているとか)
★ 3人の総合司会者

(シルビア・アブリル)

(バルバラ・サンタ=クルス)

(バレリーナ風のイングリッド・ガルシア=ヨンソン)
★「アルモドバルのミューズたち」

(アイタナ・サンチェス=ヒホン)

(パルマ・デ・ロッシ)

(ビビアナ・フェルナンデス)

(レオノール・ワトリング、余計な宝石なしが好評でした。
TVシリーズ「No me gusta conducir」助演女優賞候補)

(ミレナ・スミット)
★主演女優賞ノミネート候補者たち

(受賞者ライア・コスタ、「Cinco lobitos」)

(フランスから馳せつけたマリナ・フォイス、『ザ・ビースト』)

(アンナ・カスティーリョ、「Girasoles silvestres」)

(二人分の布が必要なラウラ・ガラン、「Cerdita」)

(履きなれないサンダルのカルラ・キレス、「La maternal」)
★助演女優賞ノミネート候補者たち

(1月22日、癌に倒れたアグスティ・ビリャロンガ監督に思いを馳せるスシ・サンチェス、
初のコメディにして遺作となった「Loli Tormenta」の主役を演じた。「Cinco lobitos」)

(アデルファ・カルボ、「En los márgenes」)

(アンヘラ・セルバンテス、「La maternal」)

(エンマ・スアレス、「La consagración de la primavera」)

(カルメン・マチ、「Cerdita」)
★TVシリーズ部門主演女優賞ノミネート候補者(モニカ・ロペスは欠席?)

(ネレア・バロス、「La novia gitana」)

(イツィアル・イトゥーニョ、『インティミダ』)

(靴がユニークなナタリエ・ポサ、「La unidad」)

(高いヒールが話題になった受賞者クラウディア・サラス、「La ruta」)
★TVシリーズ部門助演女優賞ノミネート候補者

(受賞者パトリシア・ロペス・アルナイス、
ベストと乗馬靴が話題になったディオール、『インティミダ』)

(マリアン・アルバレス、「La unidad」)

(エリザベス・カサノバス、「La ruta」)
★ベストドレッサー、あるいはユニーク・ルックスの女優たち

(帽子は自分のデザイン、監督&女優レティシア・ドレラ)

(ベストドレッサーに選ばれたエレナ・リベラ)

(歩くのが大変そうなクララ・ガジェ)

(パウラ・オルティス、手袋は珍しかった)

(赤と黒の透け透けドレスのミナ・エル・ハマニ)

(細い肩紐のツートンカラー、エバ・イサンタ)

(歌手のラ・テレモト・デ・アルコルコン
黄色の靴下と紫紅色の暖かそうなオーバー)



ジュリエット・ビノシュに国際ゴヤ賞*ゴヤ賞2023 ⑪ ― 2023年02月05日 18:12
「3冠」&オスカー女優のジュリエット・ビノシュに国際ゴヤ賞

(ドノスティア栄誉賞のトロフィーを手に、サンセバスチャン映画祭2022)
★去る2月1日、スペイン映画アカデミーから第2回目となる国際ゴヤ賞受賞者は、フランス女優のジュリエット・ビノシュ(パリ1964、59歳)と公式に発表されました。昨年新設された国際ゴヤ賞は、芸術としての映画に国際的に貢献した人物に贈られる重要なスペイン映画賞の一つ、「ビノシュの並外れたキャリアは、ヨーロッパのみならず国際的に賞賛され認められている。リスクのある作家への挑戦は数多くの忘れられないパフォーマンスを生んだ。40年にわたってヨーロッパ映画が目指す指標として不動の地位を築いてきた」ことが評価されました。あと1週間後に迫った2月11日、セビーリャのFIBESで開催される第37回ゴヤ賞ガラでトロフィーを受け取ることになります。
★キャリア&フィルモグラフィーについては第70回サンセバスチャン映画祭2022でドノスティア栄誉賞を受賞した折りにアップしております。タッグを組んだ監督はフランスに止まらず、ジャン=リュック・ゴダール、レオス・カラックス、ルイ・マル、デヴィッド・クローネンバーグ、アッバス・キアロスタミ、クシシュトフ・キェシロフスキ、ミヒャエル・ハネケ、オリヴィエ・アサイヤスなど枚挙に暇がない。しかし彼女の転機は1996年に訪れる。アンソニー・ミンゲラの『イングリッシュ・ペイシェント』でアングロサクソン映画にデビュー、ベルリン映画祭銀熊女優賞、アカデミー助演女優賞、BAFTA助演女優賞ほかを受賞して、ヨーロッパの「3冠」トリプルクラウンの一つを獲得した。
★ヨーロッパの「最優秀女優トリプルクラウン」というのは、カンヌ、ベネチア、ベルリン三大映画祭の受賞者を指し、3冠を達成した最初のヨーロッパ女優になりました。クシシュトフ・キェシロフスキの『トリコロール/青の愛』(94)でベネチア映画祭女優賞(ヴォルピ杯)、イランのアッバス・キアロスタミの『トスカーナの贋作』(10)でカンヌ映画祭女優賞である。
★女優のプロジェクトに参加する決め手は「新しい世界を私に覗かせる未知への旅」と語っています。また「監督の耳を傾ける能力、そして何よりも見る能力」が、「イエス」と言うように自分を駆り立てるとも語っている。イサベル・コイシェ監督が「ぶっ飛んだ女優」と評する所以である。
★片足でインディペンデント映画に、もう片足で『GODZILLA ゴジラ』や『ゴースト・イン・ザ・シェル』などの商業映画にも取り組んでいる。最新作はTVシリーズ「The New Look」(米10話)で、目下ココ・シャネルに命を吹き込んでいます。ベン・メンデルソン扮するクリスチャン・ディオールとわたり合うようです。
★第1回目の受賞者はオーストラリア出身の女優ケイト・ブランシェット、プレゼンターはアルモドバル監督とペネロペ・クルスでしたが、さて今回はどなたでしょうか。彼女が主演した「Nadie quiere la noche」(英題「Nobody Wants the Night」)のコイシェ監督あたりを個人的に予想します。本作でゴヤ賞2016の主演女優賞にノミネートされ、初めてゴヤ賞ガラに出席したフランス女優となりました。今回は国際ゴヤ賞受賞者の最初のフランス人となります。
*キャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ⇒2022年09月17日
アマイア・レミレス監督デビュー「Maldita」*ゴヤ賞2023 ⑫ ― 2023年02月12日 16:25
異色の短編ドキュメンタリー「Maldita. A Love Song to Sarajevo」

(ボジョ・ブレチョを配したゴヤ賞のポスター)
★既に国際映画祭での受賞歴があるラウル・デ・ラ・フエンテ & アマイア・レミレスの「Maldita. A Love Song to Sarajevo」(仮訳「のけ者、サラエボへの愛の歌」)は、人生と自由と寛容への美しい讃歌である。主人公はボスニアのミュージシャンのボジョ・ブレチョと、カタルーニャのピアニストで作曲家のクララ・ペーヤである。二人の感受性豊かな音楽は、廃墟と滅亡のなかから何か純粋な気高さを生み出している。ボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボは、日本人にとっては距離的にも精神的にも遠い国ですが、モノクロの映像とボジョの情熱を込めた歌声にある懐かしさを覚えます。受賞を予想してアップします。


(サンタ・マリア・デル・マル教会で演奏するボジョ・ブレチョとクララ・ペーヤ)
「Maldita. A Love Song to Sarajevo」ドキュメンタリー
製作:Medicusmundi Mediterránia / Kanaki Films 協賛カタルーニャ政府、バルセロナ市
監督:ラウル・デ・ラ・フエンテ、アマイア・レミレス
脚本:アマイア・レミレス
撮影:ラウル・デ・ラ・フエンテ・カジェ
音楽:クララ・ペーヤ
編集:ラウル・デ・ラ・フエンテ・カジェ
録音:インマ・カラスコ
製作者:イバン・サイノス、(エグゼクティブ)アマイア・レミレス
データ:製作国スペイン、2022年、ドキュメンタリー、27分、モノクロ、撮影バルセロナのサンタ・マリア・デル・マル(14世紀建立のカタルーニャ・ゴシック様式教会)やサラエボ。2021年12月バルセロナ―ジロナのイベントで先行上映された。ほかにマドリードやバルセロナでの上映イベントがある。配給Selected Films Distribution
映画祭・受賞歴:クラクフ映画祭2022銀のドラゴン受賞、メディナ・デル・カンポ映画週間2022ゴールデン・ロエル受賞、メルリンカ映画祭審査員賞受賞、ほかコソボのドキュメンタリーフェス、スペインのシウダレアル、ヒホン、ランサローテ各短編映画祭出品、ゴヤ賞短編ドキュメンタリー部門ノミネート
出演者:ボジョ・ブレチョ、クララ・ペーヤ、そのほか演奏者多数
ストーリー:ボジョ・ブレチョの神は愛である。彼の祖国は地球である。性別は男性でもあるが女性でもある人間である。バルカン出身の最も革新的なアーティストであるボジョは、困難な時期に自分自身を見つける方法を知っていた二つの都市、サラエボとバルセロナのあいだの人生と、障害の克服と、愛の物語を歌いあげる。決してさようならを言わないために。想像の世界と現実の世界、寛容と残忍、破壊と怖れ、愛と許し、男性と女性、サラエボとバルセロナ、ボジョとクララ、など二面性で構成されている。

(ゴールデン・ロエルを手にしたアマイア・レミレス、メディナFF2022授賞式)
★本作のオリジナルなアイディアは、プロデューサーのイバン・サイノスである。現在はNGO制作会社Medicusmundi Mediterránia のディレクターであるが、もともとは光学機器製造会社の検眼士であった。サラエボではバルカン戦争で眼鏡を失くした人々が多く、サイノスは終戦後の1995年からサラエボに眼鏡を届けていた。そこでボジョ・ブレチョの音楽に出会った。二人は長年、一緒にドキュメンタリーを作りたいと思っていたがなかなか実現しなかった。そこで『アナザー・デイ・オブ・ライフ』の製作者アマイア・レミレスとコンタクトをとった。レミレスはサイノスを通じてブレチョに会い、こうして二つの制作会社の共同製作が実現した。レミレスの「クララ・ペーヤがバルセロナを象徴する」というアイディアが生まれた。

(ラウル、イバン、ボジョ、アマイア)
★ボジョ・ブレチョ Božo Vrećoは、1983年ボスニアのフォチャ生れ、セブダリンカ(sevdalinka *)の歌手、考古学教授、LGBTQの権利を求めている。5歳の時父親が亡くなり、2人の姉妹と育つ。芸術家の母親から絵を描いたり音楽を学ぶよう勧められ、インターネットで独学する。風変わりな少年としていじめに苦しんだ。生計を立てるためセルビアのベオグラードに行き考古学の修士号を取る。しかし本当にやりたかったのはセブダリンカの音楽だった。録音で伝統的な歌唱法を学んだ。
★サラエボのカフェで歌っているところをバンドHalkaに見いだされCDを発売、2013年よりプロとして世界で活躍している。アカペラで歌うことが多い。ロングドレスや長めのチュニックに身を包んだブレチョは女性の側にいる。エレガントでデリケートな動き、よく響く声、黒くて濃い髭のコントラストに戸惑う。ブレチョは戦争のさなかに生まれ育ったが、彼は自らの独特な個性のせいで内面の葛藤から自由になる必要があった。議論の的となるアーティストは、より自由になるために豊かな表現力、寛容さでその違いを力強く示そうとする歌手である。
*セブダリンカというのは、ボスニア・ヘルツェゴビナ発祥の民族音楽、ゆっくりしたテンポ、強烈で感情豊かなメロディーが特徴的である。オリエント、ヨーロッパ、セファルディム(ディアスポラのユダヤ人のうち南欧諸国やトルコなどに定住した人)の要素を組み合わせている。


(トルコの旋踊教団の祈りのようにスピンしながら熱唱するボジョ・ブレチョ)
★クララ・ペーヤ Clara Peya、1986年カタルーニャのパラフルジェル生れ、ピアニスト、作曲家。両親は医師、母親の懇望で姉アリアドナと一緒にピアノを学ぶ。姉は16歳で断念するが、クララはカタルーニャ高等音楽学校のクラシックピアノ科に入学、2007年卒業、その後バルセロナ音楽養成所でモダンジャズを学んだ。23歳でアルバムのレコーディングを開始、独自のスタイルを確立しており、既に十数枚のアルバムを発表している。
★また姉アリアドナと制作会社 Les Impuxiblesを主宰、ミュージカル、演劇、ダンスシアター、マイクロオペラの制作を手掛けている。2019年にその社会への影響が認められてカタルーニャ文化国民賞の最年少受賞者となりました。他に2018年、アルバム「Estómac」は、音楽誌「エンダーロック・マガジン」の年間最優秀アルバム賞エンダーロックを受賞。フェミニスト活動家として男女平等を求めている。レズビアンとしてレズ嫌いを批判するドキュメンタリーに参加している。2021年の新譜「Periferia」では、男性歌手エンリオをフィーチャしている。


(クララ・ペーヤ、カタルーニャ文化国民賞授賞式)
★監督紹介:ラウル・デ・ラ・フエンテ(パンプローナ1974)とアマイア・レミレス(パンプローナ1982)は、20年来から二人三脚で問題作に挑戦している監督、脚本家、製作者、共にナバラ大学オーディオビジュアル・コミュニケーション科卒。アンゴラ内戦をアニメーションと実写で描いた「Un día más con vida」(18)が『アナザー・デイ・オブ・ライフ』としてラテンビートFF 2018で上映され、観客から賞賛を受けた。翌年のゴヤ賞アニメーション部門で受賞している。ゴヤ賞ノミネートは今回で5回目、2回目の「Minerita」がゴヤ賞2014の短編ドキュメンタリー賞受賞、ドキュメンタリー作家としての地位を確立している。レミレスは制作会社Kanaki のメインプロデューサーだが、今回監督デビューした。2021年に子供が誕生した。
*両監督のキャリア&フィルモグラフィーの紹介記事は、コチラ⇒2018年10月08日

(『アナザー・デイ・オブ・ライフ』のポスター)

(ゴヤ賞2019アニメーション賞のガラにて)

(最近のラウルとアマイア)
追加情報:ゴヤ賞2023短編ドキュメンタリー部門で予想どおり受賞しました。
第37回ゴヤ賞の夕べ―結果発表*ゴヤ賞2023 ⑫ ― 2023年02月17日 10:57
「アディオス、マエストロ!」で開幕、ソロゴジェンの『ザ・ビースト』で終幕

★去る2月11日、第37回ゴヤ賞2023授賞式がセビーリャの FIBES で開催されましたが、例年とは異なってゴヤ栄誉賞受賞者カルロス・サウラ急逝のニュースが駆け巡り、「アディオス、マエストロ」の幕開けとなりました。しかし一つの作品にゴヤ胸像が集中したのは例年通り、ロドリゴ・ソロゴジェンの『ザ・ビースト』独占の夕べとなりました。監督は登壇した受賞者たちの感謝の言葉に何度も涙することになりました。総合司会者なしでプレゼンターは、アントニオ・デ・ラ・トーレとクララ・ラゴでした。

★『ザ・ビースト』が作品・監督・主演男優・オリジナル脚本・助演男優・撮影・編集・録音・オリジナル作曲賞の9部門を制覇、アルベルト・ロドリゲスの「Modelo 77」が特殊効果・美術・メイクアップ・衣装デザイン・プロダクションの5部門、続くアラウダ・ルイス・デ・アスアの「Cinco lobitos」の新人監督・主演女優・助演女優の3部門、この3作で17部門を攫う結果となり、なんと11部門ノミネートのカルラ・シモンの「Alcarràs」は無冠に終わるという番狂わせになりました。
★長くても2時間半以内と予告されていましたが、サウラへのオマージュに30分ほど要し、終了したのは翌日の1時近くでした。サウラと困難な時代を共に歩んできたフェルナンド・メンデス≂レイテ新会長も目を赤くしてマエストロの死を悼みました。2週間間前に開催されたフェロス賞の流れを汲んでか、黒一色で埋め尽くされた感のある会場でした。また政治色の強い授賞式でサンチェス首相以下、イセタ文化教育相、ディアス労働相など閣僚数人が招待客に並んでおりました。
★作品賞のプレゼンターは、フェルナンド・トゥルエバの『ベルエポック』30周年を記念して、4人姉妹を演じた、ミリアム・ディアス≂アロカ、アリアドナ・ヒル、マリベル・ベルドゥ、ペネロペ・クルスの4女優が勢揃いするという豪華版でした。

(左から、アリアドナ・ヒル、ペネロペ・クルス、
ミリアム・ディアス≂アロカ、マリベル・ベルドゥ)
*第37回ゴヤ賞2022結果発表全28カテゴリー*
◎作品賞
「Alcarras」カルラ・シモン(11個)
「Cinco lobitos」アラウダ・ルイス・デ・アスア(11個)
「La maternal」ピラール・パロメロ(3個)
「Modelo 77」アルベルト・ロドリゲス(16個)
「As bestas」ロドリゴ・ソロゴジェン監督、邦題『ザ・ビースト』(東京国際映画祭)
製作:Arcadia Motion Picture / Caballo Films / Cronos Entertinment / Le Pacto 協賛RTVE 他多数、製作者:サンドラ・タピア、イグナシ・エスタペ、イボン・コルメンサナ、他多数



◎監督賞
カルラ・シモン「Alcarras」
ピラール・パロメロ「La maternal」
カルロス・ベルムト「Manticora」『マンティコア』(東京国際映画祭)
アルベルト・ロドリゲス「Modelo 77」
ロドリゴ・ソロゴジェン「As bestas」
*プレゼンターは、目下パリ在住のイランのミトラ・ファラハニ監督とフアン・アントニオ・バヨナ監督、イランの監督は故国の政治弾圧のために闘っている人々の生命と自由、特に差別に苦しむ女性たちの救援を訴えました。スペインの監督が訴えに呼応すると、会場から拍手が沸き起こりました。ファラハニはドキュメンタリー「See You Friday, Robinson」がベルリン映画祭2022でエンカウンターズ部門の-特別審査員賞を受賞している。


(ソロゴジェン、ミトラ・ファラハニ、J. A. バヨナ)
◎新人監督賞
カルロタ・ペレダ「Cerdita」
エレナ・ロペス・リエラ「El agua」邦題『ザ・ウォーター』(東京国際映画祭)
フアン・ディエゴ・ボット「En los márgenes」
ミケル・グレア「Suro」
アラウダ・ルイス・デ・アスア「Cinco lobitos」
*プレゼンターは、『リベルタード』(21)で同賞を受賞したクララ・ロケでした。

◎主演女優賞
マリナ・フォイス「As bestas」
アンナ・カスティーリョ「Girasoles silvestres」監督ハイメ・ロサーレス
バルバラ・レニー「Los renglones torcidos de Dios」監督オリオル・パウロ
ヴィッキー・ルエンゴ「Suro」
ライア・コスタ「Cinco lobitos」
*ブランカ・ポルティーニョとノラ・ナバスという大先輩からトロフィーを受け取り、実に光栄なことでした。フェロス賞に続いての受賞。フランスから来西したマリナ・フォイス、二人の子供の母親を演じたアンナ・カスティーリョ、微妙にすれ違う若い妻を演じたヴィッキー・ルエンゴは残念でした。バルバラ・レニーは出産したばかりで欠席しました。

◎主演男優賞
ルイス・トサール「En los márgenes」
ナチョ・サンチェス「Manticora」
ハビエル・グティエレス「Modelo 77」
ミゲル・エラン「Modelo 77」
ドゥニ・メノーシュ「As bestas」
*フランスから来西した甲斐がありました。「スペインに引っ越そうかと思います。たくさんの愛を頂きました」とスピーチ。その後はスマホと老眼鏡を取り出して入力したスペイン語原稿を読み上げました。撮影中はスペインの家族同様に和気あいあいと過ごすことができたとスピーチ、「男性たちの頑迷さを前にした女性たちの力強さと愛に敬意を表する」とリップサービスも忘れず会場を盛り上げた。彼が手にするとトロフィーが小さく見えました。おそらく外国人俳優が受賞した第1号でしょうか。フェロス賞はナチョ・サンチェスと評価が分かれました。プレゼンターはアシエル・エチェアンディアとレオナルド・スバラグリア。

◎オリジナル脚本賞
アルナウ・ピラロ&カルラ・シモン「Alcarras」
アラウダ・ルイス・デ・アスア「Cinco lobitos」
カルロス・ベルムト「Manticora」
アルベルト・ロドリゲス&ラファエル・コボス「Modelo 77」
イサベル・ペーニャ&ロドリゴ・ソロゴジェン「As bestas」
*プレゼンターは、ダニエル・サンチェス・アレバロでした。二人で登壇しましたがスピーチはイサベル・ペーニャだけでした。フェロス賞はアラウダ・ルイス・デ・アスア。


◎脚色賞
カルロタ・ペレダ「Cerdita」
パウル・ウルキホ・アリホ「Irati」監督は脚色に同じ、バスク語
ギレム・クルア&オリオル・パウロ「Los renglones torcidos de Dios」
ダビ・ムニョス&フェリックス・ビスカレット「No mires a los ojos」
監督フェリックス・ビスカレット
フラン・アラウホ、イサ・カンポ、イサキ・ラクエスタ「Un año, una noche」イサキ・ラクエスタ
*3人登壇し、イサ・カンポ、フラン・アラウホ、イサキ・ラクエスタの順にスピーチしました。本作の受賞は脚色賞だけでした。

(イサキ・ラクエスタ、イサ・カンポ、フラン・アラウホ)
◎助演女優賞
マリー・コロン「As bestas」
カルメン・マチ「Cerdita」
ペネロペ・クルス「En los márgenes」
アンヘラ・セルバンテス「La maternal」
スシ・サンチェス「Cinco lobitos」
*スペイン映画アカデミー副会長のスシ・サンチェスに軍配が揚がりました。すでに2個のゴヤ賞保持者、予期していなかったのか大分興奮して直ぐにはスピーチができないほどでした。女性監督の作品で受賞できたことが嬉しかったそうです。このカテゴリーは誰が取ってもおかしくない激戦区でしたが、フランスから来西したマリー・コロンは残念でした。プレゼンターは、ペトラ・マルティネスとベレン・クエスタ、二人はそれぞれ主演女優賞を受賞しています。

◎助演男優賞
ディエゴ・アニド「As bestas」
ラモン・バレア「Cinco lobitos」
フェルナンド・テヘロ「Modelo 77」
ヘスス・カロサ「Modelo 77」
ルイス・サエラ「As bestas」
*プレゼンターは、アイタナ・サンチェス≂ヒホン、例年ですと受賞者発表は助演男優賞から始まりますが、今年はカルロス・サウラ急逝でゴヤ栄誉賞で開始されました。予想通りの受賞ですが、フェロス賞に続いての受賞でした。


◎新人女優賞
アナ・オティン「Alcarras」
ルナ・ラミエス「El agua」
バレリア・ソローリャ「La consagración de la primavera」監督フェルナンド・フランコ
ゾーイ・スタイン「Manticora」
ラウラ・ガラン「Cerdita」
*文句なしの受賞ですが貫禄勝ちかもしれません。一度見たら忘れられない強烈な女優です。プレゼンターは、ロス・ハビスことハビエル・カルボ&ハビエル・アンブロッシとアブリル・サモラでした。


◎新人男優賞
アルベルト・ボッシュ「Alcarras」
ジョルディ・プジョル・ドルセト「Alcarras」
ミケル・ブスタマンテ「Cinco lobitos」
クリスティアン・チェカ「En los márgenes」
テルモ・イルレタ「La consagración de la primavera」
*車椅子で登壇した34歳の新人は、2歳のとき脳炎が原因で脳性まひになった由、「私たちは存在しています、そしてセックスもします」と語り、障害者の可視化を印象づけました。「本当に嬉しい」と「ありがとう」を繰り返し、女優のエレナ・イルレタの甥だそうで彼女にトロフィーを捧げると語った。プレゼンターはキム・グティエレス。

◎アニメーション賞
「Black is Beltza II: Ainhoa」 監督フェルミン・ムグルザ
「Inspector Sun y la maldición de la viuda negra」 監督フリオ・ソト・グルピデ
「Los demonios de barro」 監督ヌノ・ベアト
「Tadeo Jones 3, La tabla esmeralda」 監督エンリケ・ガト
「Unicorn Wars」 監督アルベルト・バスケス
*下馬評通りの受賞でした。プレゼンターはマカレナ・ゴメス。

◎ドキュメンタリー賞
「A las mujeres de España. María Lejárraga」 監督Laura Hojman
「El sostre groc (El techo amarillo)」 監督イサベル・コイシェ
「Oswald. El falsificador」 監督キケ・マイリョ
「Sintiéndolo mucho」 監督フェルナンド・レオン・デ・アラノア
「Labordeta, un hombre sin más」 監督パウラ・ラボルデタ&ガイスカ・ウレスティ
*ラボルデタ監督は天国のパパに受賞を報告しました。

◎ヨーロッパ映画賞
「Berfast」(イギリス)監督ケネス・ブラナー、邦題『ベルファスト』
「Fue la mano de Dios」(イタリア)監督パオロ・ソレンティーノ、
邦題『Hand of God-神の手が触れた日-』
「Las ilusiones perdidas」(フランス)監督グザヴィエ・ジャノリ、邦題『幻滅』
「Un pequeño mundo」(ベルギー)監督ローラ・ワンデル、邦題『プレイグラウンド』
(なら国際映画祭2022)
「La peor persona del mundo」(ノルウェー)監督ヨアキム・トリアー、
邦題『わたしは最悪。』
*ノミネートされても誰も来西せずしらけるから、一時はカテゴリーから外す案もありましたが、最近は出席することが多くなりました。監督、製作者の来西はなく、スペインの配給会社のエンリケ・コスタが登壇、代理で受け取りました。プレゼンターはベレン・ルエダ。

(エンリケ・コスタがスピーチした)
◎イベロアメリカ映画賞
「1976」(チリ)監督マヌエラ・マルテッリ、邦題『1976』(東京国際映画祭)
「La jauría」(コロンビア)監督アンドレス・ラミレス・プリド、邦題『ラ・ハウリア』
(東京国際映画祭)
「Noche de fuego」(メキシコ)監督タチアナ・ウエソ、
「Utama」(ボリビア)アレハンドロ・ロアイサ・グリシ、邦題『UTAMA~私たちの家~』
(Skipシティ国際Dシネマ映画祭)
「Argentina, 1985」(アルゼンチン)監督サンティアゴ・ミトレ、
邦題『アルゼンチン 1985』
*長いあいだ独裁政権下で苦しんだこともあって下馬評通りになりました。3月12日開催のアカデミー賞の根回しで忙しいのか、監督と主演のリカルド・ダリンは姿を見せませんでした。副検事役のピーター・ランサニが受け取りスピーチしました。

(中央がピーター・ランサニ、製作者)
◎撮影賞
ダニエラ・カヒアス「Alcarras」
ジョン・D.・ドミンゲス「Cinco lobitos」
アルナウ・バルス「Competencia oficial」 監督ガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーン
アレックス・カタラン「Modelo 77」
アレックス・デ・パブロ「As bestas」
*アレックス・デ・パブロ欠席で、ソロゴジェンが代理で受け取りました。
◎編集賞
アナ・プラッフ「Alcarras」
アンドレス・ジル「Cinco lobitos」
ホセ・M.G.・モヤノ「Modelo 77」
セルジ・ディエス&フェルナンド・フランコ「Un año, una noche」
アルベルト・デル・カンポ「As bestas」
*プレゼンターはハビエル・レイ。


◎録音賞
エバ・バリニョ、トマス・ジオルジ、アレハンドロ・カスティーリョ「Alcarras」
アシエル・ゴンサレス、エバ・デ・ラ・フエンテス、ロベルト・フェルナンデス「Cinco lobitos」
ダニエル・デ・サヤス、ミゲル・ウエルテ、ペラヨ・グティエレス他「Modelo 77」
アマンダ・ビリャビエハ、エバ・バリニョ、アレハンドロ・カスティーリョ他「Un año, una noche」
アイトル・べレンゲル、ファビオラ・オルドヨ、ヤスミナ・プラデラス「As bestas」
*プレゼンターは、イングリッド・ガルシア・ヨンソン。

(左から、ヤスミナ・プラデラス、アイトル・ベレンゲル、ファビオラ・オルドヨ)
◎特殊効果賞
マリアノ・ガルシア・マルティ&ジョルディ・コスタ「13 exorcismos」
オスカル・アバデス&アナ・ルビオ「As bestas」
ジョン・セラーノ&ダビ・エラス「Irati」
リュイス・リベラ&ラウラ・ペドロ「Malnazidos」 監督アルベルト・デ・トロ&
ハビエル・ルイス・カルデラ
エステル・バリェステロス&アナ・ルビオ「Modelo 77」

◎美術賞
モニカ・ベルヌイ「Alcarras」
ホセ・ティラド「As bestas」
メラニー・アントン「La piedad」 監督エドゥアルド・カサノバ
シルビア・Steinbrecht「Los renglones torcidos de Dios」
ペペ・ドミンゲス・デル・オルモ「Modelo 77」


◎オリジナル作曲賞
アランサス・カジェハ、マイテ・アロイタハウレギ ”ムルセゴMursego”「Irati」
イヴァン・パロマレス「Las ninas de Cristal」監督ホタ・リナレス、邦題『少女は、踊る』Netflix
フェルナンド・ヴェラスケス「Los renglones torcidos de Dios」
フリオ・デ・ラ・ロサ「Modelo 77」
オリヴィエ・アーソン「As bestas」
*フェロス賞に続いての受賞でした。

◎オリジナル歌曲賞
エドゥアルド・クルス&マリア・ロサレン「En los márgenes」
アランサス・カジェハ、マイテ・アロイタハウレギ、パウル・ウルキホ・アリホ「Irati」
パロマ・ペニャルビア・ルイス&ヴァネサ・ベニテス・サモラ「La vida chipén」
ホセバ・ベリスタイン「Unicorn Wars」
ホアキン・サビナ、レイバ「Sintiéndolo mucho」
*フェルナンド・レオン・デ・アラノア監督のドキュメンタリーが受賞、ホアキン・サビナは欠席でした。


(レイバが受け取りました)
◎衣装デザイン賞(6作品)
パオラ・トーレス「As bestas」
ネレア・トリホス「Irati」
スエビア・サンペラヨ「La piedad」
アルベルト・バルカルセル「Los renglones torcidos de Dios」
クリスティナ・ロドリゲス「Malnazidos」
フェルナンド・ガルシア「Modelo 77」


◎メイクアップ&ヘアー賞
イレネ・ペドロサ&ヘスス・ジル「As bestas」
パロマ・ロサノ「Cerdita」
サライ・ロドリゲス、ラケル・ゴンサレス、オスカル・デル・モンテ「La piedad」
モンセ・サンフェィウ、カロリナ・アチュカロ、パブロ・ペロナ「Los renglones torcidos de Dios」
ヨランダ・ピニャ&フェリックス・テレロ「Modelo 77」


◎プロダクション賞
エリサ・シルベント「Alcarras」
カルメン・サンチェス・デ・ラ・ベガ「As bestas」
サラ・ガルシア「Cerdita」
マリア・ホセ・ディエスポル「Cinco lobitos」
マヌエラ・オコン・アブルト「Modelo 77」

◎短編映画賞
「Chaval」(29分) 監督ハイメ・オリアス
「Cuerdas」(30分) 監督エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン
「La entrega」(25分) 監督ペドロ・ディアス
「Sorda」(18分) 監督エバ・リベルタード&ヌリア・ムニョス・オルティン
「Arquitectura emocional 1959」(30分) 監督エリアス・レオン・シミニアニ
*4人が登壇、プレゼンターは『少女は、踊る』主演のマリア・ペドラサ。


(左から2人目がエリアス・レオン・シミニアニ監督)
◎短編ドキュメンタリー賞
「Dancing with Rosa」(27分) 監督ロベルト・ムニョス・ルぺレス
「La gabia」(19分) 監督アダン・アリアガ
「Memoria」(15分) 監督ネレア・バロス
「Trazos del alma」(14分) 監督ラファエル・G.・アロヨ
「Maldita. A Love Song to Sarajevo」(27分) アマイア・レミレス&ラウル・デ・ラ・フエンテ *
*予想通りの受賞、プロデューサーのイバン・サイノスと両監督が登壇して、サイノス、レミレス、デ・ラ・フエンテの順でそれぞれスピーチした。プレゼンターは、なんと老優フェルナンド・エステソがポル・モネンに支えられて杖で登場した。「カルロスもアグスティも、次回作の脚本を書いてるだろうが、私のことも忘れないでくれよ、もう直ぐそちらに行くから。安らかに」とスピーチ、サウラと1週間前に鬼籍入りビリャロンガを追悼しました。


(フェルナンド・エステソ、ポル・モネン)
◎短編アニメーション賞
「Amanece la noche más larga」(9分) 監督ロレナ・アレス&カルロス・フェルナンデス・デ・ビゴ
「Amarrados」(10分) 監督カルメン・コルドバ
「La prima cosa」(19分) 監督オマル・A.・ラザック&シーラ・ウクライナツShira Ukrainitz
「La primavera siempre vuelve」(10分) 監督アリシア・ヌニェス・プエルト
「Loop」(8分) 監督パブロ・ポリェドリPolledri

◎ゴヤ栄誉賞
★カルロス・サウラ(ウエスカ1934)かねてよりマドリードの自宅で療養中でしたが、ガラ前日の2月10日に呼吸不全となり逝去、91歳の誕生日を迎えたばかりでした。スタンディングオベーションが鳴りやまず、登壇した家族はスピーチが始められませんでした。夫人で女優のエウラリア・ラモンがメッセージを読んだ。プロデューサーの息子アントニオ・サウラも登壇、女優の娘アンナ・サウラは天国のパパに感謝のスピーチをした。プレゼンターは彼の唯一のゴヤ賞受賞作『歌姫カルメーラ』(90)で主役を演じたカルメン・マウラ、本作撮影当時の思い出話、「とても優しかった」とマエストロの人柄を語った。会場の面々も涙の感謝、天国の本人に届いたでしょうか。



(左から、カルメン・マウラ、アントニオ、夫人、アンナ)
★『歌姫カルメーラ』ほか、代表作『カラスの飼育』やデビュー作『狩』、フラメンコ物が次々にスクリーンに映し出され、会場は激動の時代を走り続けたマエストロに思いを馳せていた。簡単ですが、キャリア&フィルモグラフィーを紹介しています。
*カルロス・サウラのキャリア&フィルモグラフィーは、コチラ⇒2023年01月07日

(在りし日のカルロス・サウラ)
◎国際ゴヤ賞(第2回)
★ジュリエット・ビノシュ(パリ1984)スタンディングオベーションを受けて登場した輝くようなスターは、予想した通り「Nadie quiere la noche」(15)の監督イサベル・コイシェよりトロフィーを受け取りました。ゴヤ胸像に軽くキスすると、片言のスペイン語でグラシアスを連発、スペイン映画を賞賛しました。その後はフランス語で、少女時代に観たサウラの『カラスの飼育』に触れ、「幼年時代に影響を受けた」と語った。最後に劇中で姉妹たちが踊りながら歌った “Por que te vas ” を鼻歌まじり歌い、このお茶目っぷりに満場の拍手喝采をうけた。これがジュリエットの魅力です。あちらのサウラもさぞかし呵々大笑したことでしょう。

(コイシェ監督からトロフィーを受け取った受賞者)

★来西は3回、ゴヤ賞ガラ参加は今回が2回目、最初の「Nadie quiere la noche」で主演女優賞にノミネートされた折には、初めて生のジュリエットに接した若い女優たちは、その気取りの少しもない大スターに興奮した。サンセバスチャン映画祭2022ドノスティア栄誉賞を受賞した折に来西、スペインでは最も人気の高いフランス女優です。
*キャリア&フィルモグラフィーは、コチラ⇒2023年02月05日/2022年09月17日

(レッドカーペットのスター)
★駆け足紹介ですが、以上の結果となりました。ベルリン金熊賞受賞、オスカー賞スペイン代表作品にも選ばれたうえ、ノミネーション11部門のカルラ・シモンの「Alcarràs」が無冠に終わったことを「これは何かの手違い?」と訝しむ声もあったようです。不公平は世の常、ベルリンはベルリン、セビーリャはセビーリャで別ということ、良質な映画だがエモーションに欠けていたのではないか。
★現在投票権のあるアカデミー会員は約2000人くらいに増加しており予想が難しくなっている。シモンの映画は昨年前半、ソロゴジェンのは後半と、忘れっぽいスペイン人にシモンは分が悪かった。大方の予想は、フェロス賞のように作品賞は『ザ・ビースト』、監督賞はカルラ・シモンと予想していたようです。ソロゴジェンは「アルカラスは大作です、受賞はそんなに重要ではない」と言ったとか。しかし重要に決まっています。管理人がもっと訝るのは、カンヌ映画祭のコンペティションに選ばれた、アルベルト・セラの『パシフィクション』が、スペイン語映画でなかったからかノミネートすらされなかったことでした。先駆者「故郷に入れられず」でしょうか。
政権批判はゴヤ賞ガラの伝統、ベストドレッサーは誰?*ゴヤ賞2023 ⑬ ― 2023年02月20日 17:16
イラク侵攻「ノー・モア・ウォー」から20年
★第37回ゴヤ賞は政治色の強いガラの印象でしたが、もともとゴヤ賞授賞式は現政権への抗議という伝統があります。一番記憶に残るのは、ブッシュ大統領のイラク侵攻に対して当時の政権党であったPP国民党アスナール首相が支援を表明した2003年でした。映画アカデミー会長は女優のマリサ・パレデスでしたが、アカデミー理事会は2派に分裂して激論のすえ、「ノー・モア・ウォー」のリボンを胸に付けるかどうかは自由裁量になった。個人的には見ていて、「少しやりすぎかな」と思いましたが、やはりしこりとなって大衆の映画館離れに拍車をかける一因になった。その後も文化軽視のシブチン政党PPが映画チケット代の消費税21%増額に対する抗議(その後撤回された)、2013年の助演女優賞受賞のカンデラ・ペーニャの公立病院の機能不全に対する批判、2018年の#Me too 運動などが記憶に残っています。

(映画アカデミー会長フェルナンド・メンデス≂レイテ)
★今回はカルロス・サウラ栄誉賞のスピーチを代読した夫人のエウラリア・ラモンが、公衆衛生に携わる医療関係者の医師や看護師への感謝を繰り返したことでした。これは医療者のコロナ感染対応への単なる社交辞令ではなく、本意を読み解くならば、政府が財政逼迫のためプライマリ・ケアを担っている医療関係者の財政を大幅削減をしたことへの抗議だったということです。マドリードで大規模なデモ行進が予定されていたようです。招待席にいたサンチェス首相以下5~6人の閣僚への抗議と分かると、サウラらしいと思いました。意味不明の邦題になった『カラスの飼育』は、少女アナの目を通して、スペインの家父長制社会やフランコ独裁政権を巧みに批判した映画でした。

(スピーチするエウラリア・ラモンと家族)
★2週間前にサラゴサで開催された第10回フェロス賞の栄誉賞受賞者ペドロ・アルモドバルも公衆衛生施設の充実と医療関係者への緊急支援を訴えていました。「私たち(映画関係者)も、自分の意見が言える権利をもつ市民です」と、我々は映画製作だけしているわけにはいかないということです。さて、日本はどうでしょうか。
★生誕100周年を迎えた20世紀の女優で大歌手のローラ・フローレスを讃えて、娘ロリータ・フローレスが登壇して母親の持ち歌を絶唱した。ローラはカルロス・サウラのドキュメンタリー「Sevillanas」(92)にも出演している。またシンガーソングライターのベリー・バサルテが、過去1年間に鬼籍入りしたシネアストたちを歌で見送った。ほかにイスラエル・エルナンデスとパブロ・ロペスがデュエットしました。


(ロリータ・フローレス、母親ローラへのオマージュ)

(点鬼簿のシーンで歌うベリー・バサルテ)
★ベストドレッサー、最近ゴヤ賞ガラにご無沙汰だった方、ノミネートだけで涙をのんだ方など、レッドカーペットに登場したときのセレブたちのファッションです。一番難しい色と言われる黒装束?が、老若にかかわらずやはり流行のようでした。

(栄誉賞プレゼンターのカルメン・マウラ)

(ガラの総合プレゼンターのクララ・ラゴとアントニオ・デ・ラ・トーレ)

(クララ・ラゴ、ディオールの2022~23秋冬コレクション、薄絹のドレス、
宝石はブルガリ、最もエレガントなベストドレッサーの一人に選ばれた)

(助演女優賞ノミネート、毎回ベストドレッサーに選ばれるペネロペ・クルス、シャネル)

(ドキュメンタリー賞ノミネート、国際ゴヤ賞プレゼンターのイサベル・コイシェ)

(作品賞プレゼンターのマリベル・ベルドゥ、アルベルタ・フェレッティのデザイン)

(作品賞プレゼンターのアリアドナ・ヒル、コルタナのデザイン)

(無冠に終わったカルラ・シモン監督)

(監督賞ノミネートのピラール・パロメロ)

(監督賞ノミネートのカルロス・ベルムト、主演男優賞のナチョ・サンチェス、
新人女優賞ノミネートのゾーイ・スタインのドレスはジバンシー)

(新人監督賞ノミネートのカルロタ・ペレダ、黒ずくめのファッションが好評)

(新人監督賞ノミネートのエレナ・ロペス・リエラと主役のルナ・パミエス)

(新人監督賞ノミネートのフアン・ディエゴ・ボット、ペネロペ・クルス、
オリジナル歌曲賞にノミネートされていた弟エドゥアルド・クルス)

(主演女優賞ノミネートのフランス女優マリナ・フォイス)

(主演女優賞ノミネートのアンナ・カスティーリョ、グッチのモノトーン)

(主演女優賞ノミネートのヴィッキー・ルエンゴ)

(助演女優賞ノミネートのカルメン・マチ、ヴィッキー・マルティン・ベロカル)

(助演女優賞ノミネートのアンヘラ・セルバンテス)

(助演男優賞プレゼンターのアイタナ・サンチェス≂ヒホン、
カロリナ・エレーラのデザイン、宝石はカルティエ、靴はロディ)

(新人女優賞ノミネートのバレリア・ソローリャ、ディオール)

(ブランカ・ポルテーリョ、黒一色の中で目立ったカロリナ・エレーラのデザイン)

(プレゼンターのベレン・ルエダ、金色のスパンコールのスカート、
羽飾りのケープに、さすがの観客も仰天していた。バレンスエラ・アテリル)

(マリア・ペドロサ、アレクサンドル・ボーティエのオートクチュール、
宝石はブルガリ)

(衣装デザイン賞プレゼンター、タキシードに身を包んだミレナ・スミット)

(ベテラン女優カエタナ・ギジェン・クエルボ、ルベン・エルナンデスのデザイン)

(マリア・レオン、フアン・ビダルのデザイン、真冬に寒くないか?)

(アマイア・サラマンカ、レバノン出身のズハイル・ムラドのオートクチュール、
2022~23の秋冬コレクション、ここはハリウッドですか?)

(監督で女優のレティシア・ドレラ、ビクトリア・クルマデビリャ)

(助演女優賞のプレゼンターのベレン・クエスタ、ペドロ・デル・イエロのデザイン)
第26回マラガ映画祭2023が始動*マラガ映画祭2023 ① ― 2023年02月24日 11:19
長編20作、特別賞、審査員などデータが出揃いました

(マラガ出身のグラフィックデザイナー、アダン・ミランダ・ソリアのメインポスター)
★ゴヤ賞が終わるとマラガ映画祭がやってくる。今年は3月10日から19日まで、今年も昨年に続いてコロナ・パンデミック前の春開催となりました。マラガ映画祭はイベリア半島2ヵ国とラテンアメリカ諸国に特化した映画祭、スペイン語(カタルーニャ語、バスク語、ガリシア語を含む)とポルトガル語の映画、新人登竜門として新しい才能発掘の役目があります。デビュー作から2、3作目が対象です。何回かに分けて特別賞、長編コンペティション部門(セクション・オフィシアル)、審査員などをアップしていきます。まずは大賞マラガ―スール賞を含む特別賞から始めます。各賞ともキャリア&フィルモグラフィーを紹介済みですが、改めて最新情報を加筆してアップする予定です。

★メインポスターの制作者アダン・ミランダ・ソリアは、ご当地マラガ出身のグラフィックデザイナー兼イラストレーター、数年間さまざまな企業で経験を積んだ後、2006年よりフリーランサーとしてのキャリアをスタートさせる。本祭の後援者の一つ、「スール」紙、マラガ・フェスティバル、グラフィカス・ウラニア、マラガ市、ウニカハ財団などのクライアントと協同する。10年に及ぶマラガ・フェスティバルとの関りから、この度メインポスターを担当することになった。
★制作者によると「マラガ・フェスティバルは無限の感動に満ちており、すべてはホールの中、あるいはスターたちが登場する前に通りで生み出されている期待の中に感じることができる。そしてそれらの感動を反映させるのが視線です。私のポスターでは、生命の火花を散らす大きな目を中心に置き、肌が逆立つような、またはマラガの海の波の揺れを連想させるような波状曲線で、その感動をダイレクトに示そうとしました。昼夜を問わず町の暖かさと活気に調和するような色を採用しました」ということです。
*マラガ映画祭2023特別賞*
⑬マラガ―スール賞(スール紙とのコラボ、昨年度マリアノ・バロッソ)
ブランカ・ポルテーリョ(映画・舞台・TV女優、マドリード1963)イシアル・ボリャインの「Maixabel」(21)でゴヤ賞2022主演女優賞を受賞した。演劇賞の最高賞といわれるMax賞を5回受賞している。
*キャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ⇒2021年08月05日

⑬レトロスペクティブ賞―マラガ・オイ
(マラガ・オイ紙とのコラボ、同女優メルセデス・モラン)
アルベルト・ロドリゲス(監督、脚本家、セビーリャ1971)代表作はスリラー『マーシュランド』(14)、『UNIT 7ユニット7』(12)、『スモーク・アンド・ミラーズ1000の顔を持つスパイ』でゴヤ賞2017脚色賞を受賞、最新作「Modelo 77」では、ゴヤ賞2023の美術賞を含む技術部門で5勝している。
*キャリア&フィルモグラフィーは、コチラ⇒2015年01月24日/2016年09月24日

⑬マラガ才能賞―マラガ・オピニオン
(マラガ・オピニオン紙とのコラボ、同監督ロス・ハビス)
カルラ・シモン(監督、脚本家、バルセロナ1986)デビュー作『悲しみに、こんにちは』(17)、第2作目「Alcarràs」(22)。ゴヤ賞2023では第2作目カタルーニャ語で撮られた「Alcarràs」が無冠に終わりましたが、次回作が待たれる映像作家です。以下でキャリアを紹介しています。
*キャリア&フィルモグラフィーは、コチラ⇒2022年01月27日

(マラガ映画祭2022のフォトコールから)
⑬リカルド・フランコ賞(映画アカデミーとのコラボ、同製作者ソル・カルニセロ)
ユイ・ベリンゴラ(Yuyi Beringola スクリプト)当ブログ初登場です。
*キャリア&フィルモグラフィーは、コチラ⇒2023年02月27日

⑬ビスナガ・シウダ・デル・パライソ賞(同俳優ミゲル・レリャン)
ラファエル(ラファエル・マルトス、ハエン県リナレス生れ、ミュージシャン、俳優)
*キャリア&フィルモグラフィーは、コチラ⇒2023年03月01日

⑬金の映画
「Historias de la radio」監督・脚本:ホセ・ルイス・サエンス・デ・エレディア
サエンス・デ・エレディア(マドリード1911~92)の1955年製作のコメディ、20世紀半ばのラジオの重要性へのオマージュ、3話で構成されている。フランシスコ・ラバル、ホセ・イスベルト、アルベルト・ロメア、アンヘル・デ・アンドレス、出演者も鬼籍入りしています。1955年シネマ・ライターズ・サークル賞受賞作品。

(フランシスコ・ラバル)
★昨年の受賞者が故カルロス・サウラだったビスナガ栄誉賞は、まだ発表がありません。紹記事は順次アップいたします。
リカルド・フランコ賞はユイ・ベリンゴラ*マラガ映画祭2023 ② ― 2023年02月27日 16:47
カメラの後ろで支える縁の下の力持ちに光が当たりました

★2月15日、第26回マラガ映画祭2023のリカルド・フランコ賞がスクリプト一筋のユイ・ベリンゴラに授与されることが発表になりました。本賞はスペイン映画アカデミーとのコラボレーションで第15回目になります。彼女は100作を超える映画&TVシリーズを手がけており、中でもペドロ・アルモドバルとは3作目になる『バチ当たり修道院の最期』(83)を皮切りに、特に1999年の『オール・アバウト・マイ・マザー』から最新作の『パラレル・マザーズ』までは全作を担当、アルモドバル専属のスクリプターの感があります。

(2009年『抱擁のかけら』撮影中の左からユイ・ベリンゴラ、製作者エステル・ガルシア、
アルモドバル監督、主役を演じたリュイス・オマール)
★ユイ・ベリンゴラは映画関係者の家族のもとで育ちました。初めて撮影所を訪れたのは7歳のとき、少女の目に飛び込んできたのは正真正銘の魔法だった。視線を逸らすとカメラの背後で静かに観察している男性を見つけた。彼はたくさんの紙と鉛筆を持っていた、それが台本というもだと後に分かった。その時以来、少女は自分がその世界の一部を占めたいと考えるようになった。
★ベリンゴラはスクリプト以外の仕事を一切していない。これには基本的に2つの理由があるからです。一つに彼女が優秀なスクリプトの一人であること、二つ目は彼女がこの仕事に魅せられていることです。ということで1978年のホセ・アントニオ・バレロ監督のサイコパスによる犯罪物「La sombra de un recuerdo」でデビュー以来、彼女の履歴書には100作以上の映画やTVシリーズのタイトルが連ねることになりました。
★アルモドバル以下、手がけた作品のうち比較的認知度のある監督別リストをアップしますが、『エリート シーズン1』や「Patria」など約20作あるTVシリーズは割愛。今は亡きピラール・ミロ、マヌエル・グティエレス・アラゴン(彼は今回審査委員長を務める)、ハイメ・チャバリ、故リカルド・フランコ、故カルロス・サウラ、ペドロ・オレア、海外勢ではテリー・ギリアムの『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』(18)、ギレルモ・デル・トロの『デビルス・バックボーン』(01)、スティーブン・フリアーズの『殺し屋たちの挽歌』(84)、アスガー・ファルハディの『誰もがそれを知っている』(18)など国際的なプロダクションの常連です。現在アルメリアで、アダム・アンダースのミュージカル「Road to Bethlehem」(仮題「ベツレヘムへの道」)の撮影中です。
*ペドロ・アルモドバル:1983『バチ当たり修道院の最期』、1984『グロリアの憂鬱』、1989『アタメ』、1999『オール・アバウト・マイ・マザー』、2002『トーク・トゥ・ハー』、2004『バッド・エデュケーション』、2006『ボルベール〈帰郷〉』、2009『抱擁のかけら』、2011『私が、生きる肌』、2013『アイム・ソー・エキサイテッド!』、2016『ジュリエッタ』、2019『ペイン・アンド・グローリー』、2020短編「La voz humana」、2021『パラレル・マザーズ』の14作
*ピラール・ミロ:1980「Gary Cooper, que estas en los cielos」、1991「Beltenebros」、1993「El pájaro de la felicidad」、1996遺作『愛の虜』など代表作4作、ペドロ・オレア:1986スリラー「Bandera negra」、1992歴史ドラマ「El maestro de esgrima」、1996同名小説の映画化「Más allá del jardín」の3作
★以下は話題作、公開または映画祭上映で見ることのできた作品。
1981『マラビーリャス』マヌエル・グティエレス・アラゴン
1984『自転車は夏』ハイメ・チャバリ
1985「La vaquilla」ルイス・ガルシア・ベルランガ
1989「Esquilache」ホセフィナ・モリーナ
1995『死んでしまったら私のことなんか誰も話さない』アグスティン・ディアス・ヤネス
1996『タクシー』カルロス・サウラ
1996『セレスティーナ』ヘラルド・ベラ
1997『心の秘密』モンチョ・アルメンダリス
1998『マラリア』故アントニオ・ホセ・ベタンコル
1998『ミラクル・ぺティント』ハビエル・フェセル
2001『10億分の1の男』フアン・カルロス・フレスナディリョ
2004『海を飛ぶ夢』アレハンドロ・アメナバル
2005『あなたになら言える秘密のこと』イサベル・コイシェ
2010『ペーパーバード 幸せは翼に乗って』エミリオ・アラゴン
2011『スリーピング・ボイス~沈黙の叫び』ベニト・サンブラノ
2015『ロープ 戦場の生命線』フェルナンド・レオン・デ・アラノア
2021「Pan de limón con semillas de amapola」ベニト・サンブラノ
★今回のリカルド・フランコ賞のほか、2019年に第6回クレサラKresala 賞を受賞している。
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