マラガ―スール賞のカルメン・マチ*マラガ映画祭2025 ⑧2025年04月06日 15:27

                カメレオン女優カルメン・マチの強かな生き方

  

      

             (マラガ―スール賞を受賞したカルメン・マチ、2025315日)

 

★後回しになっていた今年の特別賞マラガ―スール賞の受賞者カルメン・マチのキャリア&フィルモグラフィー紹介です。196317日マドリード生れ、マリア・デル・カルメン・マチ・アロヨ、両親ともスペイン人だが、父方の家系はイタリアのジェノバのアーティスト一家である。1980年、17歳でヘタフェのタオルミナ劇団に入り、初舞台はロルカの「血の婚礼」だった。1994年ホセ・ルイス・ゴメスが主宰する演劇学校ラ・アバディアに入団、バリェ=インクランの「貪欲、欲望と死の祭壇画」、「ベニスの商人」などの舞台に立つ。演劇関係では最高賞Max賞に、2011年「Falstaff」(シェイクスピアの『ウィンザーの陽気な女房たち』の登場人物)で助演女優賞、2009年「Platonov」(チェーホフの『プラトーノフ』)助演女優賞、2008年「La tortuga de Darwin」(フアン・マヨルガ作、ダーウィンによってガラパゴス諸島からイギリスに連れてこられた海亀ハリエット役)で主演女優賞を受賞している。ほかソフォクレスの悲劇『アンティゴネ』(201517)やチェーホフの『桜の園』(2019)に出演している。

 

★映画デビューは遅く、主役に起用されたのはハビエル・レボーリョの「La mujer sin piano」で、カセレス・スペイン映画祭2009女優賞を受賞した。続くエミリオ・アラゴンのデビュー作「Pájaros de papel」はラテンビート映画祭2010で上映された後、『ペーパーバード 幸せは翼にのって』の邦題で公開され、監督と来日した。役柄からイメージするのとは違った華奢な体型とその物静かな雰囲気に驚かされた。同年ナチョ・G・ベリリャの「Que se mueran los feos」では、ハビエル・カマラと共演、彼の小姑役を演じた。

   

     

                       (「Pájaros de papel」のフレームから)

 

★そして観客動員数1000万人、スペイン映画興行成績ナンバーワンとなったエミリオ・マルティネス=ラサロの「Ocho apellidos vascos」出演である。翌年のゴヤ賞ではコメディ作品の受賞はないという大方の予想を覆して、カラ・エレハルデの助演男優賞、ダニ・ロビラの新人賞、マチの助演女優賞の3冠をゲットした。以来引っ張りだことなり、続編「Ocho apellidos catalanes」はネットフリックスで配信された。

 

     

                  (ゴヤ賞2015助演女優賞のトロフィーを手にしたマチ)

   

   

                            (共演者のカラ・エレハルデと)

 

★主演作が多くなり、なかでアルゼンチンのマリナ・セレセスキーのシリアスドラマ「La puerta abierta」の娼婦役に起用され、ゴヤ賞2017で初めて主演女優賞にノミネートされた。その他フォルケ賞、フェロス賞もノミネートに終わったもののスペイン俳優組合賞を受賞した。テレレ・パベス、アシエル・エチェアンディアなどが共演した。アレックス・デ・ラ・イグレシアの「El bar」、「アイーダ」の共演者エドゥアルド・カサノバのデビュー作「Pieles」など、Netflix配信、ミニ映画祭、公開などで日本でも認知度が高くなりファンが増えてきた。作品紹介記事は、当ブログでアップした一覧を添付しているので参考にしてください。ネットフリックスやプライムビデオで配信されたなかで既に配信が終了している作品もあります。

     

      

       (『クローズド・バル』のフレームから、左端にカルメン・マチ)

   

    

           (高評価の「La puerta abierta」のポスター)

 

★私生活は公にしないのでミステリアスな部分も多いが、20年来のパートナー、ミュージシャンのビセンテとは「結婚にも子供をもつことにも怖れがある」そうです。

 

   

     

         (20年来のパートナー、ビセンテと仲睦まじく買い物)

 

受賞歴2013年メモリアル・マルガリーダ・シルグ賞、2017年マドリード金のメダル受賞、2024年芸術功労賞金のメダルを各受賞している。

 

           主なフィルモグラフィー

1999Lisa」短編、カルロス・プジェ

2002Hable con ella」『トーク・トゥ・ハー』ペドロ・アルモドバル、看護婦役

2003Descongélate」『チル・アウト』ドゥニア・アヤソ&フェリックス・サブロソ

  「Torremolinos 73」『トレモリーノス73パブロ・ベルヘル、美容院の客

2004Escuela de seducción」ハビエル・バラゲル、ウエートレス役

2005Vida y color」『色彩の中の人生』サンティアゴ・タベルネロ

2006Lo que sé de Lola」ハビエル・レボーリョ

2009Las abrazos roto」『抱擁のかけら』ペドロ・アルモドバル

La mujer sin piano」ハビエル・レボーリョ、主役、カセレス・スペインFF女優賞受賞

2010Pájaros de papel」『ペーパーバード 幸せは翼にのって』エミリオ・アラゴン、

   ラテンビート2010女優賞受賞

  「Que se mueran los feos」ナチョ・G・ベリリャ、主役ナティ

2011La piel que habito」『私が、生きる肌』ペドロ・アルモドバル、結婚式招待客

2013Los amantes pasajeros」『アイム・ソー・エキサイテッド!』ペドロ・アルモドバル

2014Ocho apellidos vascos」エミリオ・マルティネス=ラサロ、メルチェ役、

   ゴヤ賞2015助演女優賞受賞

2015Perdiendo el norte」『夢と希望のベルリン生活』ナチョ・G・ベリリャ、

   ベニ・マリン役

Mi gran noche」『グラン・ノーチェ!最高の大晦日』アレックス・デ・ラ・イグレシア

2015Ocho apellidos catalanes」『オチョ・アペリードス・カタラネス』

   エミリオ・マルティネス=ラサロ、メルチェ/ カルメ役

2016Las furias」ミゲル・デル・アルコ、カサンドラ役

La puerta abierta」マリナ・セレセスキー、娼婦ロサ、スペイン俳優組合賞受賞

2017El bar」『クローズド・バル 街角の狙撃手と8人の標的』

   アレックス・デ・ラ・イグレシア

Pieles」『スキン~あなたに触らせて』エドゥアルド・カサノバ

2018Thi Mai, rumbo a Vietnam」『ティ・マイ 希望のベトナム』パトリシア・フェレイラ、

   主役カルメン・ガラテ

La tribu」『ダンシング・トライブ』フェルナンド・コロモ、ビルヒニア母親役

 モンテカルロ・コメディ映画祭2018主演女優賞受賞

2019Perdiendo el este」パコ・カバジェロ、ベニ・マリン役

Lo nunca visto」マリナ・セレセスキー、主役テレサ

2020Nieva en Benidorm」ネオノワール、イサベル・コイシェ、警官マルタ役

  「Un efecto óptico」フアン・カベスタニー

2021El cover」ミュージカル、セクン・デ・ラ・ロサ、マリエ・フランセ役

2022Amor de madre」『僕とママの”じゃない”ハネムーン』パコ・カバジェロ、母親役

Rainbow」ミュージカル、パコ・レオン

La voluntaria」政治ドラマ、ネリー・レゲラ

Cerdita」『PIGGYピギー』コメディ・ホラー、カルロタ・ペレダ、母親役

2024Tratamos demasiado bien a las mujeres」シリアスコメディ、クララ・ビルバオ、主演

  「Verano en diciembre」カロリナ・アフリカ、主演母親役

2025Aída y vuelta」パコ・レオン、アイーダ・ガルシア・ガルシア役

 

TVシリーズ、進行中の出演を含めると80作を超える。従って初期の端役、短編、TVシリーズは割愛しています。今回リストアップしての印象は、映画でのノミネート数に比して受賞が少ないということでした。TVシリーズ7 vidas9906204話)では2000年から参加して98話出演、本作のアイーダ・ガルシア・ガルシア役の人気に乗じてスピンオフした「Aída」(0514238話)では101話に出演している。両シリーズともシチュエーションコメディ、後者の受賞歴はフォトグラマス・デ・プラタ(200420052007)、オンダス賞2008、スペイン俳優組合賞2005と多いが、疲れはてて自ら降板を願い出ている。そしてリターン・コールで再登場したのがTVでなくスクリーン、今年公開予定の「Aída y vuelta」である。授与式に駆けつけてくれたパコ・レオンが監督している。彼はルイスマ・ガルシア・ガルシア役で全238話に出演しており、新作でも勿論出演しないわけにいかない。みんな少しずつ老けましたが元気です。

   

            

        (TV出演メンバーで撮る映画「Aída y vuelta」の出演者たち)

 

★ロス・ハビスことハビエル・アンブロッシ&ハビエル・カルボが製作、監督したミュージカル「La mesías」(23、全7話)とディエゴ・サン・ホセ創案、エレナ・トラぺ監督の「Celeste」(24、全6話)、前者はメシアの到来を妄想するファナティックな老母モンセラット・バロ役(67話に出演)、後者はラテン音楽のスーパースターのセレステの脱税を証明するというミッションを受けた税務捜査官役、TV部門のフォルケ賞2024女優賞とフェロス賞にノミネートされ、フォトグラマス・デ・プラタを受賞している。

     

            

          (マルサの女を演じたTVシリーズ「Celeste」から)

 

        

         (有能な税務捜査官を好演した「Celeste」のポスター)

 

          カルメン・マチ関連記事一覧

Ocho apellidos vascos」キャリア&フィルモグラフィー紹介は、コチラ20150128

『ペーパーバード 幸せは翼にのって』の紹介記事は、コチラ20140517

Las furias」の紹介記事は、コチラ20160226

La puerta abierta」の紹介記事は、コチラ20170112

『クローズド・バル~』の紹介記事は、コチラ2017012202260404

『スキン~あなたに触らせて~』の紹介記事は、20170820

Nieva en Benidorm」の紹介記事は、コチラ20210211

El cover」の紹介記事は、コチラ20210518

PIGGY ピギー』の紹介記事は、コチラ20221219

* TVシリーズLa mesias」の紹介記事は、コチラ⇒2023年07月19日

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