第37回ゴヤ賞の夕べ―結果発表*ゴヤ賞2023 ⑫ ― 2023年02月17日 10:57
「アディオス、マエストロ!」で開幕、ソロゴジェンの『ザ・ビースト』で終幕

★去る2月11日、第37回ゴヤ賞2023授賞式がセビーリャの FIBES で開催されましたが、例年とは異なってゴヤ栄誉賞受賞者カルロス・サウラ急逝のニュースが駆け巡り、「アディオス、マエストロ」の幕開けとなりました。しかし一つの作品にゴヤ胸像が集中したのは例年通り、ロドリゴ・ソロゴジェンの『ザ・ビースト』独占の夕べとなりました。監督は登壇した受賞者たちの感謝の言葉に何度も涙することになりました。総合司会者なしでプレゼンターは、アントニオ・デ・ラ・トーレとクララ・ラゴでした。

★『ザ・ビースト』が作品・監督・主演男優・オリジナル脚本・助演男優・撮影・編集・録音・オリジナル作曲賞の9部門を制覇、アルベルト・ロドリゲスの「Modelo 77」が特殊効果・美術・メイクアップ・衣装デザイン・プロダクションの5部門、続くアラウダ・ルイス・デ・アスアの「Cinco lobitos」の新人監督・主演女優・助演女優の3部門、この3作で17部門を攫う結果となり、なんと11部門ノミネートのカルラ・シモンの「Alcarràs」は無冠に終わるという番狂わせになりました。
★長くても2時間半以内と予告されていましたが、サウラへのオマージュに30分ほど要し、終了したのは翌日の1時近くでした。サウラと困難な時代を共に歩んできたフェルナンド・メンデス≂レイテ新会長も目を赤くしてマエストロの死を悼みました。2週間間前に開催されたフェロス賞の流れを汲んでか、黒一色で埋め尽くされた感のある会場でした。また政治色の強い授賞式でサンチェス首相以下、イセタ文化教育相、ディアス労働相など閣僚数人が招待客に並んでおりました。
★作品賞のプレゼンターは、フェルナンド・トゥルエバの『ベルエポック』30周年を記念して、4人姉妹を演じた、ミリアム・ディアス≂アロカ、アリアドナ・ヒル、マリベル・ベルドゥ、ペネロペ・クルスの4女優が勢揃いするという豪華版でした。

(左から、アリアドナ・ヒル、ペネロペ・クルス、
ミリアム・ディアス≂アロカ、マリベル・ベルドゥ)
*第37回ゴヤ賞2022結果発表全28カテゴリー*
◎作品賞
「Alcarras」カルラ・シモン(11個)
「Cinco lobitos」アラウダ・ルイス・デ・アスア(11個)
「La maternal」ピラール・パロメロ(3個)
「Modelo 77」アルベルト・ロドリゲス(16個)
「As bestas」ロドリゴ・ソロゴジェン監督、邦題『ザ・ビースト』(東京国際映画祭)
製作:Arcadia Motion Picture / Caballo Films / Cronos Entertinment / Le Pacto 協賛RTVE 他多数、製作者:サンドラ・タピア、イグナシ・エスタペ、イボン・コルメンサナ、他多数



◎監督賞
カルラ・シモン「Alcarras」
ピラール・パロメロ「La maternal」
カルロス・ベルムト「Manticora」『マンティコア』(東京国際映画祭)
アルベルト・ロドリゲス「Modelo 77」
ロドリゴ・ソロゴジェン「As bestas」
*プレゼンターは、目下パリ在住のイランのミトラ・ファラハニ監督とフアン・アントニオ・バヨナ監督、イランの監督は故国の政治弾圧のために闘っている人々の生命と自由、特に差別に苦しむ女性たちの救援を訴えました。スペインの監督が訴えに呼応すると、会場から拍手が沸き起こりました。ファラハニはドキュメンタリー「See You Friday, Robinson」がベルリン映画祭2022でエンカウンターズ部門の-特別審査員賞を受賞している。


(ソロゴジェン、ミトラ・ファラハニ、J. A. バヨナ)
◎新人監督賞
カルロタ・ペレダ「Cerdita」
エレナ・ロペス・リエラ「El agua」邦題『ザ・ウォーター』(東京国際映画祭)
フアン・ディエゴ・ボット「En los márgenes」
ミケル・グレア「Suro」
アラウダ・ルイス・デ・アスア「Cinco lobitos」
*プレゼンターは、『リベルタード』(21)で同賞を受賞したクララ・ロケでした。

◎主演女優賞
マリナ・フォイス「As bestas」
アンナ・カスティーリョ「Girasoles silvestres」監督ハイメ・ロサーレス
バルバラ・レニー「Los renglones torcidos de Dios」監督オリオル・パウロ
ヴィッキー・ルエンゴ「Suro」
ライア・コスタ「Cinco lobitos」
*ブランカ・ポルティーニョとノラ・ナバスという大先輩からトロフィーを受け取り、実に光栄なことでした。フェロス賞に続いての受賞。フランスから来西したマリナ・フォイス、二人の子供の母親を演じたアンナ・カスティーリョ、微妙にすれ違う若い妻を演じたヴィッキー・ルエンゴは残念でした。バルバラ・レニーは出産したばかりで欠席しました。

◎主演男優賞
ルイス・トサール「En los márgenes」
ナチョ・サンチェス「Manticora」
ハビエル・グティエレス「Modelo 77」
ミゲル・エラン「Modelo 77」
ドゥニ・メノーシュ「As bestas」
*フランスから来西した甲斐がありました。「スペインに引っ越そうかと思います。たくさんの愛を頂きました」とスピーチ。その後はスマホと老眼鏡を取り出して入力したスペイン語原稿を読み上げました。撮影中はスペインの家族同様に和気あいあいと過ごすことができたとスピーチ、「男性たちの頑迷さを前にした女性たちの力強さと愛に敬意を表する」とリップサービスも忘れず会場を盛り上げた。彼が手にするとトロフィーが小さく見えました。おそらく外国人俳優が受賞した第1号でしょうか。フェロス賞はナチョ・サンチェスと評価が分かれました。プレゼンターはアシエル・エチェアンディアとレオナルド・スバラグリア。

◎オリジナル脚本賞
アルナウ・ピラロ&カルラ・シモン「Alcarras」
アラウダ・ルイス・デ・アスア「Cinco lobitos」
カルロス・ベルムト「Manticora」
アルベルト・ロドリゲス&ラファエル・コボス「Modelo 77」
イサベル・ペーニャ&ロドリゴ・ソロゴジェン「As bestas」
*プレゼンターは、ダニエル・サンチェス・アレバロでした。二人で登壇しましたがスピーチはイサベル・ペーニャだけでした。フェロス賞はアラウダ・ルイス・デ・アスア。


◎脚色賞
カルロタ・ペレダ「Cerdita」
パウル・ウルキホ・アリホ「Irati」監督は脚色に同じ、バスク語
ギレム・クルア&オリオル・パウロ「Los renglones torcidos de Dios」
ダビ・ムニョス&フェリックス・ビスカレット「No mires a los ojos」
監督フェリックス・ビスカレット
フラン・アラウホ、イサ・カンポ、イサキ・ラクエスタ「Un año, una noche」イサキ・ラクエスタ
*3人登壇し、イサ・カンポ、フラン・アラウホ、イサキ・ラクエスタの順にスピーチしました。本作の受賞は脚色賞だけでした。

(イサキ・ラクエスタ、イサ・カンポ、フラン・アラウホ)
◎助演女優賞
マリー・コロン「As bestas」
カルメン・マチ「Cerdita」
ペネロペ・クルス「En los márgenes」
アンヘラ・セルバンテス「La maternal」
スシ・サンチェス「Cinco lobitos」
*スペイン映画アカデミー副会長のスシ・サンチェスに軍配が揚がりました。すでに2個のゴヤ賞保持者、予期していなかったのか大分興奮して直ぐにはスピーチができないほどでした。女性監督の作品で受賞できたことが嬉しかったそうです。このカテゴリーは誰が取ってもおかしくない激戦区でしたが、フランスから来西したマリー・コロンは残念でした。プレゼンターは、ペトラ・マルティネスとベレン・クエスタ、二人はそれぞれ主演女優賞を受賞しています。

◎助演男優賞
ディエゴ・アニド「As bestas」
ラモン・バレア「Cinco lobitos」
フェルナンド・テヘロ「Modelo 77」
ヘスス・カロサ「Modelo 77」
ルイス・サエラ「As bestas」
*プレゼンターは、アイタナ・サンチェス≂ヒホン、例年ですと受賞者発表は助演男優賞から始まりますが、今年はカルロス・サウラ急逝でゴヤ栄誉賞で開始されました。予想通りの受賞ですが、フェロス賞に続いての受賞でした。


◎新人女優賞
アナ・オティン「Alcarras」
ルナ・ラミエス「El agua」
バレリア・ソローリャ「La consagración de la primavera」監督フェルナンド・フランコ
ゾーイ・スタイン「Manticora」
ラウラ・ガラン「Cerdita」
*文句なしの受賞ですが貫禄勝ちかもしれません。一度見たら忘れられない強烈な女優です。プレゼンターは、ロス・ハビスことハビエル・カルボ&ハビエル・アンブロッシとアブリル・サモラでした。


◎新人男優賞
アルベルト・ボッシュ「Alcarras」
ジョルディ・プジョル・ドルセト「Alcarras」
ミケル・ブスタマンテ「Cinco lobitos」
クリスティアン・チェカ「En los márgenes」
テルモ・イルレタ「La consagración de la primavera」
*車椅子で登壇した34歳の新人は、2歳のとき脳炎が原因で脳性まひになった由、「私たちは存在しています、そしてセックスもします」と語り、障害者の可視化を印象づけました。「本当に嬉しい」と「ありがとう」を繰り返し、女優のエレナ・イルレタの甥だそうで彼女にトロフィーを捧げると語った。プレゼンターはキム・グティエレス。

◎アニメーション賞
「Black is Beltza II: Ainhoa」 監督フェルミン・ムグルザ
「Inspector Sun y la maldición de la viuda negra」 監督フリオ・ソト・グルピデ
「Los demonios de barro」 監督ヌノ・ベアト
「Tadeo Jones 3, La tabla esmeralda」 監督エンリケ・ガト
「Unicorn Wars」 監督アルベルト・バスケス
*下馬評通りの受賞でした。プレゼンターはマカレナ・ゴメス。

◎ドキュメンタリー賞
「A las mujeres de España. María Lejárraga」 監督Laura Hojman
「El sostre groc (El techo amarillo)」 監督イサベル・コイシェ
「Oswald. El falsificador」 監督キケ・マイリョ
「Sintiéndolo mucho」 監督フェルナンド・レオン・デ・アラノア
「Labordeta, un hombre sin más」 監督パウラ・ラボルデタ&ガイスカ・ウレスティ
*ラボルデタ監督は天国のパパに受賞を報告しました。

◎ヨーロッパ映画賞
「Berfast」(イギリス)監督ケネス・ブラナー、邦題『ベルファスト』
「Fue la mano de Dios」(イタリア)監督パオロ・ソレンティーノ、
邦題『Hand of God-神の手が触れた日-』
「Las ilusiones perdidas」(フランス)監督グザヴィエ・ジャノリ、邦題『幻滅』
「Un pequeño mundo」(ベルギー)監督ローラ・ワンデル、邦題『プレイグラウンド』
(なら国際映画祭2022)
「La peor persona del mundo」(ノルウェー)監督ヨアキム・トリアー、
邦題『わたしは最悪。』
*ノミネートされても誰も来西せずしらけるから、一時はカテゴリーから外す案もありましたが、最近は出席することが多くなりました。監督、製作者の来西はなく、スペインの配給会社のエンリケ・コスタが登壇、代理で受け取りました。プレゼンターはベレン・ルエダ。

(エンリケ・コスタがスピーチした)
◎イベロアメリカ映画賞
「1976」(チリ)監督マヌエラ・マルテッリ、邦題『1976』(東京国際映画祭)
「La jauría」(コロンビア)監督アンドレス・ラミレス・プリド、邦題『ラ・ハウリア』
(東京国際映画祭)
「Noche de fuego」(メキシコ)監督タチアナ・ウエソ、
「Utama」(ボリビア)アレハンドロ・ロアイサ・グリシ、邦題『UTAMA~私たちの家~』
(Skipシティ国際Dシネマ映画祭)
「Argentina, 1985」(アルゼンチン)監督サンティアゴ・ミトレ、
邦題『アルゼンチン 1985』
*長いあいだ独裁政権下で苦しんだこともあって下馬評通りになりました。3月12日開催のアカデミー賞の根回しで忙しいのか、監督と主演のリカルド・ダリンは姿を見せませんでした。副検事役のピーター・ランサニが受け取りスピーチしました。

(中央がピーター・ランサニ、製作者)
◎撮影賞
ダニエラ・カヒアス「Alcarras」
ジョン・D.・ドミンゲス「Cinco lobitos」
アルナウ・バルス「Competencia oficial」 監督ガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーン
アレックス・カタラン「Modelo 77」
アレックス・デ・パブロ「As bestas」
*アレックス・デ・パブロ欠席で、ソロゴジェンが代理で受け取りました。
◎編集賞
アナ・プラッフ「Alcarras」
アンドレス・ジル「Cinco lobitos」
ホセ・M.G.・モヤノ「Modelo 77」
セルジ・ディエス&フェルナンド・フランコ「Un año, una noche」
アルベルト・デル・カンポ「As bestas」
*プレゼンターはハビエル・レイ。


◎録音賞
エバ・バリニョ、トマス・ジオルジ、アレハンドロ・カスティーリョ「Alcarras」
アシエル・ゴンサレス、エバ・デ・ラ・フエンテス、ロベルト・フェルナンデス「Cinco lobitos」
ダニエル・デ・サヤス、ミゲル・ウエルテ、ペラヨ・グティエレス他「Modelo 77」
アマンダ・ビリャビエハ、エバ・バリニョ、アレハンドロ・カスティーリョ他「Un año, una noche」
アイトル・べレンゲル、ファビオラ・オルドヨ、ヤスミナ・プラデラス「As bestas」
*プレゼンターは、イングリッド・ガルシア・ヨンソン。

(左から、ヤスミナ・プラデラス、アイトル・ベレンゲル、ファビオラ・オルドヨ)
◎特殊効果賞
マリアノ・ガルシア・マルティ&ジョルディ・コスタ「13 exorcismos」
オスカル・アバデス&アナ・ルビオ「As bestas」
ジョン・セラーノ&ダビ・エラス「Irati」
リュイス・リベラ&ラウラ・ペドロ「Malnazidos」 監督アルベルト・デ・トロ&
ハビエル・ルイス・カルデラ
エステル・バリェステロス&アナ・ルビオ「Modelo 77」

◎美術賞
モニカ・ベルヌイ「Alcarras」
ホセ・ティラド「As bestas」
メラニー・アントン「La piedad」 監督エドゥアルド・カサノバ
シルビア・Steinbrecht「Los renglones torcidos de Dios」
ペペ・ドミンゲス・デル・オルモ「Modelo 77」


◎オリジナル作曲賞
アランサス・カジェハ、マイテ・アロイタハウレギ ”ムルセゴMursego”「Irati」
イヴァン・パロマレス「Las ninas de Cristal」監督ホタ・リナレス、邦題『少女は、踊る』Netflix
フェルナンド・ヴェラスケス「Los renglones torcidos de Dios」
フリオ・デ・ラ・ロサ「Modelo 77」
オリヴィエ・アーソン「As bestas」
*フェロス賞に続いての受賞でした。

◎オリジナル歌曲賞
エドゥアルド・クルス&マリア・ロサレン「En los márgenes」
アランサス・カジェハ、マイテ・アロイタハウレギ、パウル・ウルキホ・アリホ「Irati」
パロマ・ペニャルビア・ルイス&ヴァネサ・ベニテス・サモラ「La vida chipén」
ホセバ・ベリスタイン「Unicorn Wars」
ホアキン・サビナ、レイバ「Sintiéndolo mucho」
*フェルナンド・レオン・デ・アラノア監督のドキュメンタリーが受賞、ホアキン・サビナは欠席でした。


(レイバが受け取りました)
◎衣装デザイン賞(6作品)
パオラ・トーレス「As bestas」
ネレア・トリホス「Irati」
スエビア・サンペラヨ「La piedad」
アルベルト・バルカルセル「Los renglones torcidos de Dios」
クリスティナ・ロドリゲス「Malnazidos」
フェルナンド・ガルシア「Modelo 77」


◎メイクアップ&ヘアー賞
イレネ・ペドロサ&ヘスス・ジル「As bestas」
パロマ・ロサノ「Cerdita」
サライ・ロドリゲス、ラケル・ゴンサレス、オスカル・デル・モンテ「La piedad」
モンセ・サンフェィウ、カロリナ・アチュカロ、パブロ・ペロナ「Los renglones torcidos de Dios」
ヨランダ・ピニャ&フェリックス・テレロ「Modelo 77」


◎プロダクション賞
エリサ・シルベント「Alcarras」
カルメン・サンチェス・デ・ラ・ベガ「As bestas」
サラ・ガルシア「Cerdita」
マリア・ホセ・ディエスポル「Cinco lobitos」
マヌエラ・オコン・アブルト「Modelo 77」

◎短編映画賞
「Chaval」(29分) 監督ハイメ・オリアス
「Cuerdas」(30分) 監督エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン
「La entrega」(25分) 監督ペドロ・ディアス
「Sorda」(18分) 監督エバ・リベルタード&ヌリア・ムニョス・オルティン
「Arquitectura emocional 1959」(30分) 監督エリアス・レオン・シミニアニ
*4人が登壇、プレゼンターは『少女は、踊る』主演のマリア・ペドラサ。


(左から2人目がエリアス・レオン・シミニアニ監督)
◎短編ドキュメンタリー賞
「Dancing with Rosa」(27分) 監督ロベルト・ムニョス・ルぺレス
「La gabia」(19分) 監督アダン・アリアガ
「Memoria」(15分) 監督ネレア・バロス
「Trazos del alma」(14分) 監督ラファエル・G.・アロヨ
「Maldita. A Love Song to Sarajevo」(27分) アマイア・レミレス&ラウル・デ・ラ・フエンテ *
*予想通りの受賞、プロデューサーのイバン・サイノスと両監督が登壇して、サイノス、レミレス、デ・ラ・フエンテの順でそれぞれスピーチした。プレゼンターは、なんと老優フェルナンド・エステソがポル・モネンに支えられて杖で登場した。「カルロスもアグスティも、次回作の脚本を書いてるだろうが、私のことも忘れないでくれよ、もう直ぐそちらに行くから。安らかに」とスピーチ、サウラと1週間前に鬼籍入りビリャロンガを追悼しました。


(フェルナンド・エステソ、ポル・モネン)
◎短編アニメーション賞
「Amanece la noche más larga」(9分) 監督ロレナ・アレス&カルロス・フェルナンデス・デ・ビゴ
「Amarrados」(10分) 監督カルメン・コルドバ
「La prima cosa」(19分) 監督オマル・A.・ラザック&シーラ・ウクライナツShira Ukrainitz
「La primavera siempre vuelve」(10分) 監督アリシア・ヌニェス・プエルト
「Loop」(8分) 監督パブロ・ポリェドリPolledri

◎ゴヤ栄誉賞
★カルロス・サウラ(ウエスカ1934)かねてよりマドリードの自宅で療養中でしたが、ガラ前日の2月10日に呼吸不全となり逝去、91歳の誕生日を迎えたばかりでした。スタンディングオベーションが鳴りやまず、登壇した家族はスピーチが始められませんでした。夫人で女優のエウラリア・ラモンがメッセージを読んだ。プロデューサーの息子アントニオ・サウラも登壇、女優の娘アンナ・サウラは天国のパパに感謝のスピーチをした。プレゼンターは彼の唯一のゴヤ賞受賞作『歌姫カルメーラ』(90)で主役を演じたカルメン・マウラ、本作撮影当時の思い出話、「とても優しかった」とマエストロの人柄を語った。会場の面々も涙の感謝、天国の本人に届いたでしょうか。



(左から、カルメン・マウラ、アントニオ、夫人、アンナ)
★『歌姫カルメーラ』ほか、代表作『カラスの飼育』やデビュー作『狩』、フラメンコ物が次々にスクリーンに映し出され、会場は激動の時代を走り続けたマエストロに思いを馳せていた。簡単ですが、キャリア&フィルモグラフィーを紹介しています。
*カルロス・サウラのキャリア&フィルモグラフィーは、コチラ⇒2023年01月07日

(在りし日のカルロス・サウラ)
◎国際ゴヤ賞(第2回)
★ジュリエット・ビノシュ(パリ1984)スタンディングオベーションを受けて登場した輝くようなスターは、予想した通り「Nadie quiere la noche」(15)の監督イサベル・コイシェよりトロフィーを受け取りました。ゴヤ胸像に軽くキスすると、片言のスペイン語でグラシアスを連発、スペイン映画を賞賛しました。その後はフランス語で、少女時代に観たサウラの『カラスの飼育』に触れ、「幼年時代に影響を受けた」と語った。最後に劇中で姉妹たちが踊りながら歌った “Por que te vas ” を鼻歌まじり歌い、このお茶目っぷりに満場の拍手喝采をうけた。これがジュリエットの魅力です。あちらのサウラもさぞかし呵々大笑したことでしょう。

(コイシェ監督からトロフィーを受け取った受賞者)

★来西は3回、ゴヤ賞ガラ参加は今回が2回目、最初の「Nadie quiere la noche」で主演女優賞にノミネートされた折には、初めて生のジュリエットに接した若い女優たちは、その気取りの少しもない大スターに興奮した。サンセバスチャン映画祭2022ドノスティア栄誉賞を受賞した折に来西、スペインでは最も人気の高いフランス女優です。
*キャリア&フィルモグラフィーは、コチラ⇒2023年02月05日/2022年09月17日

(レッドカーペットのスター)
★駆け足紹介ですが、以上の結果となりました。ベルリン金熊賞受賞、オスカー賞スペイン代表作品にも選ばれたうえ、ノミネーション11部門のカルラ・シモンの「Alcarràs」が無冠に終わったことを「これは何かの手違い?」と訝しむ声もあったようです。不公平は世の常、ベルリンはベルリン、セビーリャはセビーリャで別ということ、良質な映画だがエモーションに欠けていたのではないか。
★現在投票権のあるアカデミー会員は約2000人くらいに増加しており予想が難しくなっている。シモンの映画は昨年前半、ソロゴジェンのは後半と、忘れっぽいスペイン人にシモンは分が悪かった。大方の予想は、フェロス賞のように作品賞は『ザ・ビースト』、監督賞はカルラ・シモンと予想していたようです。ソロゴジェンは「アルカラスは大作です、受賞はそんなに重要ではない」と言ったとか。しかし重要に決まっています。管理人がもっと訝るのは、カンヌ映画祭のコンペティションに選ばれた、アルベルト・セラの『パシフィクション』が、スペイン語映画でなかったからかノミネートすらされなかったことでした。先駆者「故郷に入れられず」でしょうか。
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