リカルド・フランコ賞はユイ・ベリンゴラ*マラガ映画祭2023 ②2023年02月27日 16:47

            カメラの後ろで支える縁の下の力持ちに光が当たりました

   


     

215日、第26回マラガ映画祭2023リカルド・フランコ賞がスクリプト一筋のユイ・ベリンゴラに授与されることが発表になりました。本賞はスペイン映画アカデミーとのコラボレーションで第15回目になります。彼女は100作を超える映画&TVシリーズを手がけており、中でもペドロ・アルモドバルとは3作目になる『バチ当たり修道院の最期』(83)を皮切りに、特に1999年の『オール・アバウト・マイ・マザー』から最新作の『パラレル・マザーズ』までは全作を担当、アルモドバル専属のスクリプターの感があります。

    

   

2009年『抱擁のかけら』撮影中の左からユイ・ベリンゴラ、製作者エステル・ガルシア、

アルモドバル監督、主役を演じたリュイス・オマール)

  

★ユイ・ベリンゴラは映画関係者の家族のもとで育ちました。初めて撮影所を訪れたのは7歳のとき、少女の目に飛び込んできたのは正真正銘の魔法だった。視線を逸らすとカメラの背後で静かに観察している男性を見つけた。彼はたくさんの紙と鉛筆を持っていた、それが台本というもだと後に分かった。その時以来、少女は自分がその世界の一部を占めたいと考えるようになった。

   

★ベリンゴラスクリプト以外の仕事を一切していない。これには基本的に2つの理由があるからです。一つに彼女が優秀なスクリプトの一人であること、二つ目は彼女がこの仕事に魅せられていることです。ということで1978年のホセ・アントニオ・バレロ監督のサイコパスによる犯罪物「La sombra de un recuerdo」でデビュー以来、彼女の履歴書には100以上の映画やTVシリーズのタイトルが連ねることになりました

  

★アルモドバル以下、手がけた作品のうち比較的認知度のある監督別リストをアップしますが、『エリート シーズン1』や「Patria」など約20作あるTVシリーズは割愛。今は亡きピラール・ミロ、マヌエル・グティエレス・アラゴン(彼は今回審査委員長を務める)、ハイメ・チャバリ、故リカルド・フランコ、故カルロス・サウラ、ペドロ・オレア、海外勢ではテリー・ギリアムの『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』(18、ギレルモ・デル・トロの『デビルス・バックボーン』(01)、スティーブン・フリアーズの『殺し屋たちの挽歌』(84)、アスガー・ファルハディの『誰もがそれを知っている』(18など国際的なプロダクションの常連です。現在アルメリアでアダムアンダースのミュージカルRoad to Bethlehem」(仮題「ベツレヘムへの道」)の撮影中です。

  

ペドロ・アルモドバル1983『バチ当たり修道院の最期』、1984『グロリアの憂鬱』、1989『アタメ』、1999『オール・アバウト・マイ・マザー』、2002『トーク・トゥ・ハー』、2004『バッド・エデュケーション』、2006『ボルベール〈帰郷〉』、2009『抱擁のかけら』、2011『私が、生きる肌』、2013『アイム・ソー・エキサイテッド!』、2016『ジュリエッタ』、2019『ペイン・アンド・グローリー』、2020短編「La voz humana」、2021『パラレル・マザーズ』の14

ピラール・ミロ1980Gary Cooper, que estas en los cielos」、1991Beltenebros」、1993El pájaro de la felicidad」、1996遺作『愛の虜』など代表作4作、ペドロ・オレア1986スリラー「Bandera negra」、1992歴史ドラマ「El maestro de esgrima」、1996同名小説の映画化「Más allá del jardín」の3

 

★以下は話題作、公開または映画祭上映で見ることのできた作品。

1981『マラビーリャス』マヌエル・グティエレス・アラゴン

1984『自転車は夏』ハイメ・チャバリ

1985La vaquilla」ルイス・ガルシア・ベルランガ

1989Esquilache」ホセフィナ・モリーナ

1995『死んでしまったら私のことなんか誰も話さない』アグスティン・ディアス・ヤネス

1996『タクシー』カルロス・サウラ

1996『セレスティーナ』ヘラルド・ベラ

1997『心の秘密』モンチョ・アルメンダリス

1998『マラリア』故アントニオ・ホセ・ベタンコル

1998『ミラクル・ぺティント』ハビエル・フェセル

200110億分の1の男』フアン・カルロス・フレスナディリョ

2004『海を飛ぶ夢』アレハンドロ・アメナバル

2005『あなたになら言える秘密のこと』イサベル・コイシェ

2010『ペーパーバード 幸せは翼に乗って』エミリオ・アラゴン

2011『スリーピング・ボイス~沈黙の叫び』ベニト・サンブラノ

2015『ロープ 戦場の生命線』フェルナンド・レオン・デ・アラノア

2021Pan de limón con semillas de amapola」ベニト・サンブラノ

 

★今回のリカルド・フランコ賞のほか、2019年に第6回クレサラKresala 賞を受賞している。