第60回アリエル賞2018*結果発表 ― 2018年06月15日 18:34
「私たち(の国)は病んでいます。どうか早く健康になりますように」とアマ・エスカランテ

★第60回を迎えたアリエル賞2018(メキシコ映画アカデミーAMACC)の標語は「No somxs tres, somos todxs」(我々は3人ではない、みんな一緒です)、これは去る3月19日に行方不明になったメディオス・オーディオビジュアルス大学の3人の学生の追悼というか連帯を込めたスローガンです。マフィアと警察と政治家が三位一体のようなメキシコでは、一般人が日常的に暴力や生命の危険に晒されている現状がうかがい知れます。3人だけでなく過去に起きた全ての誘拐拉致被害者を追悼しているようです。2018年の監督賞を受賞したアマ・エスカランテは「私たち(の国)は病んでいます。どうか早く健康になりますように」とスピーチしました。
(結果発表、メキシコ6月5日)

(「No somxs tres, somos todxs」のスローガンが掲げられた授賞式会場)
★授賞式のハイライト最高賞の作品賞は、エルネスト・コントレラス(1969、ベラクルス)の「Sueños en otro idioma」が受賞、他オリジナル脚本賞、オリジナル音楽賞、撮影賞などトータル6冠に輝きました。彼はアリエル賞を主催するAMACC会長に2017年11月就任したばかりです(任期は2年、2019年10月まで)。

(AMACC会長エルネスト・コントレラス、授賞式にて)
★監督賞以下、編集賞、助演女優賞、特殊効果賞など5冠がアマ・エスカランテの「La región salvaje」、『触手』の邦題で、短期間(2018年3月)ながら公開された作品。本邦では『サングレ』『よそ者』『エリ』と、カンヌやベネチアで評価されたこともあって比較的認知度のある監督でしょうか。当ブログ紹介作品は、イベロアメリカ映画賞を受賞したセバスティアン・レリオの『ナチュラルウーマン』、アナ・バレリアが新人女優賞を受賞したミシェル・フランコの『母という名の女』、ドキュメンタリー賞を受賞したエベラルド・ゴンサレスの「La libertad del diablo」の4作品です。
*『よそ者』の紹介記事は、コチラ⇒2013年10月10日
*『エリ』の紹介記事は、コチラ⇒2013年10月08日
*「La región salvaje」(『触手』)の紹介記事は、コチラ⇒2016年08月04日
*『ナチュラルウーマン』の紹介記事は、コチラ⇒2018年03月16日
*『母という名の女』の紹介記事は、コチラ⇒2017年05月08日
*主な受賞結果*
◎作品賞
「Sueños en otro idioma」 エルネスト・コントレラス

◎監督賞
アマ・エスカランテ (「La región salvaje」『触手』)

◎男優賞
エリヒオ・メレンデス(「Sueños en otro idioma」)

◎女優賞
カリナ・ヒディGidi (「Los adioses」)

◎長編ドキュメンタリー賞
「La libertad del diablo」 (監督エベラルド・ゴンサレス)

◎新人男優賞
フアン・ラモン・ロペス (「Vuelven」)

◎新人女優賞
アナ・バレリア・べセリル (「Las hijas de Abril」 邦題『母という名の女』)

◎イベロアメリカ映画賞
『ナチュラルウーマン』 (監督セバスティアン・レリオ)

(製作者フアン・デ・ディオス・ララインと主演のダニエラ・ベガ)
◎撮影賞
トナティウ・マルティネス (「Sueños en otro idioma」)

◎オペラ・プリマ(初監督作品)賞
「El vigilante」 (監督ディエゴ・ロス)

◎編集賞
フェルナンダ・デ・ラ・ペサ、Jacob Secher Schulsingaer (「La región salvaje」)

フェルナンダ・デ・ラ・ペサ
◎特殊効果賞
ホセ・マヌエル・マルティネス (「La región salvaje」)

◎視覚効果賞
Peter Hjorth (「La región salvaje」)
◎オリジナル脚本賞
カルロス・コントレラス (「Sueños en otro idioma」)

◎美術デザイン賞
アントニオ・モニョイエロ (「El elegido」)
カルロス・ハケス (「La habitación」)
◎メイクアップ賞
アダム・ソリェル (「Vuelven」)

◎衣装賞
マリエステラ・フェルナンデス、ガブリエラ・ディアケ (「La habitación」)

マリエステラ・フェルナンデス
◎助演男優賞
アンドレス・アルメイダ (「Tiempo compartido」)

◎助演女優賞
ベルナルダ・トゥルエバ (「La región salvaje」)

◎短編アニメーション賞
「Cerulia」 (監督ソフィア・カリージョ)

◎短編映画賞
「Oasis」 (監督アレハンドロ・スノ)

◎短編ドキュメンタリー賞
「La muñeca tetona」 (監督ディエゴ・エンリケ・オソルノ、アレハンドロ・アルドレテ)

◎録音賞
エンリケ・グレイネル、パブロ・タメス、ライムンド・バジェステロス
(「Sueños en otro idioma」)

◎オリジナル音楽賞
アンドレス・サンチェス・マエル (「Sueños en otro idioma」)

◎脇役男優賞(coactuación)
ミゲル・ロダルテ (「Sueños en otro idioma」)

◎脇役女優賞(coactuación)
ベロニカ・トゥサンToussaint (「Oso Polar」)

◎「金のアリエル」(栄誉賞)
Queta Lavat (メキシコの女優)

Toni Khun (スウェーデン出身メキシコの撮影監督)

★フォトは入手できたものです。
セザール名誉賞のトロフィーを手に感涙のペネロペ・クルス ― 2018年03月08日 14:11
ギレルモ・デル・トロ、盆と正月が一緒にやってきた!
★テレビもネットも米国アカデミー賞一色、フランスのアカデミー賞といわれるセザール賞の授賞式が3月2日夜、一足先に開催されていましたが片隅に追いやれてしまいました。ギレルモ・デル・トロ監督の『シェイプ・オブ・ウォーター』が作品賞を受賞。監督は日本大好き人間、何度も来日してファン・サービスを忘れない。今回も宣伝を兼ねて来日していました。作品・監督・美術・作曲の4冠受賞が興行成績を押し上げるといいですね。これでメキシコ出身の「おじさん三羽ガラス」と言われる、アルフォンソ・キュアロン(『ゼロ・グラビティ』)、アレハンドロ・ゴンサロ・イニャリトゥ(『バードマン』『レヴェナント』)に続いて、一人取り残されていたデル・トロ監督も仲間入りできました。

(両手に花のギレルモ・デル・トロ、作品賞と監督賞のオスカー像)
★授賞式に出席していたガエル・ガルシア・ベルナルと抱き合って喜びを分かち合っていました。G.G.ベルナルは、長編アニメーション・歌曲賞の2冠を達成した『リメンバー・ミー』の死者の国に住むヘクターのボイスを担当、死者の日に迷い込んできたミゲル少年と一緒に旅をする。音楽は言うまでもないが、メキシコ人の死生観が分かるようです。此の世の人が死者を忘れてしまうと消えてしまうのです。彼の世でも永遠には生き続けられないようです。

(第43回セザール賞ポスターと作品賞他6冠の『BPMビート・パー・ミニット』から)
トロフィーはアルモドバルとフランス女優マリオン・コティヤールの手から
★前置きが長くなりましたが本題、第43回セザール賞のガラが3月2日の夜開催されました。ロバン・カンピオの『BPMビート・パー・ミニット』が作品賞以下6冠を受賞、劇場公開は3月24日から3館上映です。セザール賞は当ブログでは対象外ですが、今回はペネロペ・クルスが名誉賞を受賞しましたのでアップいたします。スペインのシネアストとしては、ペドロ・アルモドバル(1999年)に続いて二人目です。授賞式には夫君ハビエル・バルデム、母親、弟、そして育ての親の一人アルモドバル監督も駆けつけてくれました。下の写真は監督がマリオン・コティヤールと一緒にプレゼンターとしてステージに登壇したときのもの。ペネロペ・クルスは登壇したときから既に涙があふれていました。ヴェルサーチのプリンセス・カットのドレスをエレガントに着こなし、インディゴブルーのドレス右胸には「性的暴力反対」の白いリボンをつけている。監督も背広の左襟に付けている。

(感涙のペネロペ・クルス、アルモドバル、マリオン・コティヤール)
★受賞スピーチは、「今宵は心から感謝を申し上げたい。ここパリで、フランス映画アカデミーのセザール名誉賞を頂けるなど、大それた夢は持っておりませんでした。自分にその価値があるかどうかについては問わないことにして、今はただ心から嬉しく、何人かの重要な人々を思い起こしています」と、学校で8年間学んだというフランス語で謝辞を述べました(クルスは母語・英語・伊語・仏語が堪能)。続いてフランスが常に自分に寛大で、幸せにしてくれること、文化に対して情熱を注ぐ特別な国であること、フランスの影響をうけた作品やアーチストたちは、歴史的にも私たちの人生においても、類いまれな位置を占めていること、文化や自由への想いはフランスの人々の刺激を受けたものだ、と語ったようです。
★「セザール名誉賞」の知らせを受けて以来、「もう驚いているだけ」と語っていたクルス、赤絨毯でも「こんな名誉ある賞をどうして戴けるのか理解できないの。ただただびっくり仰天です。どうしてこんな大きな賞を私が貰えるの?」とインタビューに応えていたクルスの気持ちが伝わってくるようなスピーチでした。アルモドバルに対しても「あなたの映画は女性に敬意をはらってくれ、そういう映画に出演できたことを感謝しています」と。会場にいた母親には「私が女優になりたいと言ったとき、なんて馬鹿げたことをと反対しなかった」と語りかけた。さらに今は亡き父親の思い出、弟妹と二人の子供たち、最後に「私の夫であり素晴らしい仕事仲間、いつも傍にいて広い心で私を支えてくれる」ハビエルにグラシアスでした。未成年でデビューした娘を守るためにステージ・パパ役だった父親がこの場にいなかったことは残念だったでしょう。

(隠れて見えないがリボンを付けたフランス映画アカデミー会長アラン・テルジアン、
ハビエル・バルデム、ペネロペ・クルス、アルモドバル監督)
★アルモドバルも初めて起用した『ライブ・フレッシュ』(97)での娼婦役について語った。「脚本ではもう少し年長の娼婦に設定していた。1970年代の古着を纏った田舎出の妊婦役にしては、彼女の中にはどこか魅力的な何かがあって無理があった」と。夜間バスの中で出産した男の子が主役の映画、クルスは冒頭部分で消えてしまう小さな役でした。スペインの国境を越えて活躍したが、幸いにヨーロッパを忘れずにいた。このヨーロッパ文化が彼女の原点だ、とも語った。アルモドバルの「ミューズ」になるには長い年月があったというわけです。マリオン・コティヤールも「あなたの素晴らしさと優しさで、今やみんなのイコンとなり、男性も女性も虜にしている」と、その魅力を讃えた。クルスにとっては忘れられない一夜となったでしょう。
*最近のペネロペ・クルスの紹介記事は、コチラ⇒2018年2月3日
イベロアメリカ映画の将来を模索する*第4回フェニックス賞2017 ― 2017年12月13日 16:51
影の薄いかつての宗主国スペインとポルトガル

★授賞式の1日だけでなく「フェニックス週間Semana Fénix」(12月2日~9日)と銘打って、各種のシンポジウムが開催されました。せっかく各国のシネアストが一堂に会したのだから唯のお祭り騒ぎに終わらせたくないという思いがあるようです。「シネマ23」というメキシコ主導の映画賞とはいえ、ラテンアメリカ諸国の映画によりスポットを当てたい。どちらかというとかつての宗主国イベリア半島のスペインとポルトガルは裏方の印象が強い。それは結果を見れば歴然です。第1回の作品賞受賞国はメキシコのケマダ=ディエスの『金の鳥籠』、第2回と3回はチリのパブロ・ララインの『ザ・クラブ』と『ネルーダ』、第4回の『ナチュラルウーマン』とチリが3連続受賞しています。監督賞は順次、メキシコのアマ・エスカランテ、チリのパブロ・ララインとコロンビアのチロ・ゲーラ、ブラジルのクレベール・メンドンサ・フィリオ、チリのセバスティアン・レリオと、スペイン、ポルトガルの影は薄い。ここいら辺が同じイベロアメリカを対象にしたプラチナ賞との大きな違いです。
ノミネーションされた監督&脚本家のディスカッション
★シンポジウムの一つは監督と脚本家のグループ、出席者は、パブロ・ラライン、アマ・エスカランテ、ダビ・プリド(スペインの脚本家、『物静かな男の復讐』)、ガストン・ドゥプラットとマリアノ・コーン(アルゼンチン、『笑う故郷』共同監督)、カルラ・シモン(スペインの監督、『夏、1993』)の6人。「イベロアメリカ映画というジャンルが実際に存在するのかどうか?」「イベロアメリカで製作された映画が共有しているスタイル、テーマがあるのかどうか?」などについて、かなりざっくばらんに語り合ったということです。メキシコ市のトナラTonalá 映画館で開催された。

(左から、ガストン・ドゥプラット、アマ・エスカランテ、マリアノ・コーン、他)
★今回は監督としてではなく『ナチュラルウーマン』のプロデューサーの一人としてメキシコにやってきたパブロ・ラライン、今のチリで一番国際的な知名度のあるシネアストの一人だと思います。どうやら監督賞ノミネーションのセバスティアン・レリオ(受賞した!)が来墨できなかったようで、弟フアン・デ・ディオスと設立した制作会社「ファブラ」の代表者として兄弟でチームをアシストしていた。「誰しも居心地のいい箱の中にいたほうがいいとは思っていません。私たちの映画は常に他の映画とは別に分類されます。それは映画の存在を知ってもらえるよう、定義してもらえるような箱が必要なんです」とラライン。まだ各国単独で立ち向かうには力不足ということでしょうか。

(左から、パブロ、フアン・デ・ディオスのラライン兄弟)
★今回は最新作「La región salvaje」(英題「The Untamed」)の作品・監督・脚本賞のノミネーションを受けたアマ・エスカランテ、国際的なデビューでは一番の古株になります。本作は初めて参加したベネチア映画祭2016の監督賞受賞作品、製作国はメキシコ、デンマーク、仏、独以下9ヵ国に及ぶという。「私は自分のアイディアを誰にも売らなくてよかった。誤りや適切な判断を含めて、私たちは自由をもっている」とエスカランテ。本作のテーマは「メキシコに存在する偽善、ホモ嫌い、マチスモについてのSF仕立ての映画です。各国のプロデューサーが意見を述べ、最終的には私が映画の売上高も考慮して決めた」と語っている。共同執筆者ヒブラン・ポルテラと物語の信憑性や要素を損なわずに維持することができた。ポルテラは『金の鳥籠』やアロンソ・ルイスパラシオスのデビュー作『グエロス』(東京国際映画祭2014)の脚本も各監督と共同で手掛けているライター。
*IMDbによると「La región salvaje」の公開が2018年2月27日とアナウンスされていますが、邦題は未定のようで公式サイトも検索できませんでした。公開確実なら初めてとなります。デビュー作『サングレ』以下は映画祭上映です。

(本作のプレゼンをするアマ・エスカランテ監督)
★製作資金も大きなテーマの一つだった。ガストン・ドゥプラットとマリアノ・コーンは1993年に出会い、11年前から今日までコンビを組んでドキュメンタリーを含めて長編6作を撮っている。批評家の絶賛にもかかわらずデビュー作以来今日まで彼らの作品にどこからも資金提供を得られなかったという。『ル・コルビュジエの家』(09)の成功後もそれは変わらず、ノミネート作品『笑う故郷』完成に5年間要したと語っている。「年率35%のインフレでは誰も映画に投資する気になれない。着手する前に疲労困憊してしまう」とコーン監督。アルゼンチンで映画を作ろうとするなら、まず会計業務や経済学を学んでからというわけです。
★初期の映画は社会イベントにカメラを持ち込んで製作した。その後『ル・コルビュジエの家』を12万ドルの資金で4週間で撮った。「観客が新鮮な視点やテーマのもつ力強さに興味をもってくれた」とドゥプラット監督、「ある地域的な物語かもしれないが、普遍的なパンチ力があった」とコーン監督。これは最新作『笑う故郷』にもいえることでしょう。個人的には『ル・コルビュジエの家』の不気味さのほうに惹かれますが。
一番の難題は映画産業の拡大と流通のギャップ
★アマ・エスカランテがデビュー作『サングレ』(東京国際映画祭2005)を撮ったころのメキシコでは、メキシコ全体で20作ばかりしか製作されなかった。厳しさは相変わらずだが2017年には170作にも上るということです。1国だけで製作することは難しく、この10年間でいっても5~6ヵ国を超えるのは珍しくない。充分とは言えないが資金援助を利用することもできるようになっている。「警告しておきたいのは、販売ディーラーなしで映画を作るべきではない」とラライン。とは言っても、それが見つけられないのではないでしょうか。
★一番の問題は、映画産業の拡大はあっても、その作品がラテンアメリカ諸国間に流通しないということがある。他の国の映画を観ようとしても配給会社が手を出さない。危険を冒してまで賭けをしようとはしない。映画は映画館で観る時代ではなく、何か他のプラットフォームを考える時期に来ている。それは一つには「多分webウェブサイト」と、昨年の作品賞『ネルーダ』の監督。ラテンアメリカ諸国も変化の秋を迎えている。スペインから参加したダビ・プリドとカルラ・シモンは聞き役だったのでしょうか。
★もう一つのシンポジウムは俳優のグループ、男優賞・女優賞各5名のうち、レオナルド・スバラグリア(アルゼンチン、『キリング・ファミリー 殺し合う一家』)、エドゥアルド・フェルナンデス(スペイン、『スモーク・アンド・ミラーズ』)、エドゥアルド・マルティネス(キューバ、「Santa y Andrés」)、パウリナ・ガルシア(チリ、「La novia del desierto」)、アントニア・セヘレス(チリ、「Los perros」)、リリアナ・ビアモンテ(コスタリカ、「Medea」)、各3名が参加した(国名と出演映画タイトル)。
★作家性のある映画は消えていく傾向にあること、どうやって観客と出会えることができるのか、映画祭に出品される映画はともかく、そうでない作品はどうやって国境を越えて観客に届けることができるのか、コスタリカのようにプロジェクトがそもそも少ない小国で映画を作る厳しさ、ハリウッドで噴き出しているセクハラ問題には触れなかったようだが、男性のロジックが常にまかり通ってしまうラテンアメリカでは、全世代の女性たちに興味をもってもらえる役柄があるのではないかなど、ハリウッドのステレオタイプ的な映画を前にして、やるべき事柄は山積していることが異口同音に述べられた。

(左から、P. ガルシア、E. フェルナンデス、司会者K. Gidi、E. マルティネス、L. スバラグリア、
A. セヘレス、L. ビアモンテ)
*当ブログで6作とも紹介記事をアップしております。
第4回イベロアメリカ・フェニックス賞2017*結果発表 ― 2017年12月09日 14:24
最優秀作品賞はセバスティアン・レリオの「Una mujer fantástica」

★昨年はパブロ・ララインの『ネルーダ 大いなる愛の逃亡者』が作品賞以下多数のフェニックスのタマゴを独占しましたが、今年もセバスティアン・レリオの「Una mujer fantástica」が作品賞を受賞、他にセバスティアン・レリオが監督賞、主演のダニエラ・ベガが女優賞と連続でチリ映画が大賞を制しました(12月6日発表)。本作は『ナチュラルウーマン』の邦題で2018年2月公開が決定しています。政治的にも経済的にも各国問題を抱えていますから、単なるフィエスタに終わらせず、この映画賞を機にイベロアメリカ諸国が一堂に会して映画の未来を議論する場にしようと模索しているようでした。受賞作品並びに受賞者は以下の通り、作品賞のみノミネート作品を列挙しました。
*第3回イベロアメリカ・フェニックス賞の記事は、コチラ⇒2016年12月15日

(女性に性転換したマリナ・ビダルを演じたダニエラ・ベガ、映画から)
*映画部門*
◎作品賞(このカテゴリーのみ7作品ノミネーション)
Viejo calavera ボリビア=カタール、2016、監督キロ・ルッソ
*本作の内容・監督紹介記事は、コチラ⇒2016年9月5日
La región salvaje メキシコ=独=仏=デンマーク、2016、監督アマ・エスカランテ
*本作の内容・監督紹介記事は、コチラ⇒2016年9月17日
Verano 1993 『夏、1993』スペイン、2017、監督カルラ・シモン
*本作の主な内容・監督紹介記事は、コチラ⇒2017年2月22日
◎Una mujer fantástica チリ=スペイン=米国、2017、監督セバスティアン・レリオ
*本作の主な内容・監督紹介記事は、コチラ⇒2017年1月26日

(左橋がプレゼンターのディエゴ・ルナ、トロフィーを手にしているのがプロデューサーの
フアン・デ・ディオス・ラライン、右端がヒロインのダニエラ・ベガ)
El ciudadano ilustre 『笑う故郷』アルゼンチン=西、2016、
監督ガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーン
*本作の主な内容・監督紹介記事は、コチラ⇒2016年10月13日
O Ornitologo ブラジル=ポルトガル=フランス、2016、監督ジョアン・ペドロ・ロドリゲス
A fábrica de nada ポルトガル、2017、監督ペドロ・ピニュ
*本作の内容・監督紹介記事は、コチラ⇒2017年11月15日
◎監督賞
セバスティアン・レリオ 「Una mujer fantastica」
◎男優賞
オスカル・マルティネス 『笑う故郷』
◎女優賞
ダニエラ・ベガ 「Una mujer fantastica」
*家族の理解もあって自らも10代のころから徐々に性転換していったというダニエラ・ベガ、これからが役者としての正念場を迎えねばならない。

(フェニックスのタマゴを手に喜びのダニエラ)
◎脚本賞
カルラ・シモン 『夏、1993』


◎オリジナル音楽賞
キンカス・モレイラ「La libertad del diablo」 メキシコ、2017、監督エベラルド・ゴンサレス
◎編集賞
クラウディア・オリヴェイラ、エドガー・フェルドマン、ルイサ・Homem 「A fábrica de nada」

◎美術デザイン賞
エウヘニオ・カバリェロ 『怪物はささやく』 監督フアン・アントニオ・バヨナ(米、西)

◎衣装賞
Ro Nascimento 「Joaquim」 監督マルセロ・ゴメス(ブラジル、ポルトガル、スペイン)
◎録音賞
Marc Orts(マーク・オーツ)、オリオル・タラゴ、ピーター・グロソップ 『怪物はささやく』
◎長編ドキュメンタリー賞
La libertad del diablo 監督エベラルド・ゴンサレス
*本作の内容・監督紹介記事は、コチラ⇒2017年2月22日

◎ドキュメンタリー撮影賞
マリア・セッコ 「La libertad del diablo」

(ディエゴ・ケマダ=ディエス『金の鳥籠』でも注目されたウルグアイのマリア・セッコ)
★他にTVシリーズ部門としてドラマ・コメディ・俳優アンサンブルの3カテゴリーがあり、ネットフリックスのオリジナル作品『ナルコス』(クリス・ブランカト、カルロ・ベルナルド、他、コロンビア=米)がドラマ部門と俳優アンサンブルで2賞、「Club de Cuervos」(ガス・アラスラキ、ミケ・ラム、メキシコ)がコメディ部門を受賞、ネットフリックスの存在の大きさを見せつけた夕べとなった。メキシコは合計4賞したこともあって、お茶の間も盛り上がったようでした。

(タマゴを手にした『ナルコス』アンドレス・バイス監督、右側パウリナ・ガルシア)

(喜びに沸いた「Club de Cuervos」のスタッフとキャスト一同)
★その他、特別賞として、キャリア賞(ノルマ・アレアンドロ)、批評家賞(アイザック・レオン・フリアス)、Exhibidoresという 展示者賞にフアン・アントニオ・バヨナ(欠席)の『怪物はささやく』が受賞した。

(アルゼンチンの『オフィシャル・ストーリー』の主演女優ノルマ・アレアンドロ)
★エミリアノ・トレスのデビュー作「El invierno」は、サンセバスチャン映画祭2016の審査員特別賞受賞作品。時間切れで作品紹介はできませんでしたが、サンセバスチャンでもラミロ・シビタは撮影賞を受賞しています。
★ポルトガル映画ジョアン・ペドロ・ロドリゲスの「O Ornitologo」と、ブラジル映画マルセロ・ゴメスの「Joaquim」は当ブログ未紹介作品です。前者はロッテルダム映画祭2016の監督賞受賞を皮切りに国際映画祭の受賞歴多数、サンセバスチャン映画祭2016「サバルテギ」部門でも上映されました。後者はベルリン映画祭2017正式出品です(主要言語がポルトガル語)。
★イベロアメリカ・フェニックス映画賞は参加国が23ヵ国と多いせいか公開時期が各国異なるので、どうしても2016年と2017年が混在が避けられません。大分以前の作品もノミネーションされている印象を受けます。 (クラウディア・オリヴェイラ)
第14回セビーリャ映画祭開幕*ヨーロッパ映画賞ノミネーション発表 ― 2017年11月07日 15:11
「金のヒラルダ」賞を競うコンペティション部門16作品は・・・

(実行委員会のアントニオ・ムニョス、ホセ・ルイス・シエンフエゴス、イサベル・オヘダ)
★今年で14回目を迎えたセビーリャ映画祭SEFF2017が11月3日開幕しました(11日まで)。オープニング作品は、カルロス・マルケス=マルセの “Tierra firme” (スペイン、西語・英語・カタルーニャ語)でした。監督は ”10,000km” でマラガ映画祭2014の「金のビスナガ賞」を受賞している。今作の主役を演じたナタリア・テナ、ダビ・ベルダゲルに加えてウーナ・チャップリン、ジェラルディン・チャップリンもカメオ出演している。ダビ・ベルダゲルは「ラテンビート2017」でドタキャンしたカルラ・シモンの『夏、1993』で少女フリーダの義父を演じた俳優。

(“Tierra firme”から)
★チャップリン母子もレッド・カーペットに現れ、映画祭を盛り上げていたようです。他にベルト・ロメロ、マリオ・カサス、ホセ・コロナド、イレーネ・エスコラル、カロリナ・バング、監督では、カルロス・マルケス=マルセは当然のことだが、フランスからマチュー・アマルリックとティエリー・ド・ペレッティ、その他マヌエル・モソス、セルジ・ボソン・・・
★他には、ラテンビートでも上映されたベネチア映画祭の『サマZama』(ルクレシア・マルテル)、これは厳密にはアルゼンチン映画ですが、スペインも製作国、スペイン語映画ということで選ばれたのでしょうか。マヌエル・ムニョス・リバスの “El mar nos mira de lejos”、エバ・ビリャの “Penélope” が選ばれています。
(『サマ』から)

(“Penélope” から)
★話題になっているのが特別招待作品の “Oro” です。監督は『アラトリステ』のアグスティン・ディアス・ヤネス、アルトゥーロ・ペレス・レベルテの未発表の短編の映画化です。ラウル・アレバロ、バルバラ・レニー、オスカル・ハエナダ、ホセ・コロナド、フアン・ディエゴ、ルイス・カジェホ、フアン・ホセ・バジェスタ、アントニオ・デチェント、アンナ・カスティーリョなど、演技派の有名どころが集合しました。ロペ・デ・アギーレのようにエル・ドラドを探し求めてアメリカ大陸に渡ったコンキスタドールたちの物語、公開されるかな。

(左端特別出演のフアン・ディエゴ、右端ホセ・コロナド、“Oro” から)
ヨーロッパ映画賞のノミネーションが発表になる映画祭
★セビーリャ映画祭はマラガと違ってヨーロッパ映画祭でもあり、例年フランス、イタリア、ポルトガル、ドイツ、イギリス、北欧各国から満遍なく選ばれます。11月上旬開催と時期的には遅いので、どこかの映画祭で既にエントリーされた作品が多いのは致し方ないのかもしれません。例えば東京国際映画祭のグザヴィエ・ボーヴォワ『ガーディアンズ』(仏・スイス)、『ショコラ』(88)で監督デビューしたクレール・ドゥニ『レッド・ザ・サンシャイン・イン』(仏)、カンヌ映画祭の”Barbara”(仏、マチュー・アマルリック)、同映画祭特別招待作品 ”A Violent Life”(仏、ティエリー・ド・ペレッティ)など。今年はフランスが多い印象ですが、上記の参加国以外にも、チェコ、デンマーク、アイスランドなどから選ばれています。英語・西語の字幕入りで国際映画祭の基準を満たしています。

(ジュリエット・ビノシュ、『レッド・ザ・サンシャイン・イン』から)
★セビーリャ映画祭は、第30回になるヨーロッパ映画賞のノミネーションが発表になる映画祭でもあり、今年は11月4日に発表になりました。下馬評ではパルムドール受賞のリューベン・オストルンド「The Square」、ライバルはイルディゴ・エンエディ「On Body And Soul」のようですが、蓋を開けてみないことには分かりません。一応、作品賞ノミネート5作品を英題で列挙しておきます。結果発表は12月9日、例年通りベルリンの予定です。
1)120 Battements Par Minute (仏)監督:ロバン・カンピヨ
2)Loveless (露、ベルギー、独、仏)アンドレイ・ズビャギンツェフ
3)On Body And Soul (ハンガリー)監督:イルディゴ・エンエディ
4)『希望のかなた』(フィンランド、独)監督:アキ・カウリスマキ
5)The Square (スウェーデン、独、仏、デンマーク)監督:リューベン・オストルンド

(リューベン・オストルンドの「The Square」から
★9月に既に発表になっていた「ディスカバリー賞」に、カルラ・シモンの『夏、1993』がノミネーションされています。もしかすると・・・と期待しています。

ドノスティア賞の授賞式*サンセバスチャン映画祭2017 ⑭ ― 2017年09月30日 13:31
そろそろ閉幕します、3人のドノスティア賞ガラも終了しました
★ドノスティア賞は1986年に始まった栄誉賞、第1回はグレゴリー・ペックとハリウッド・スターでした。受賞者の出身国は別として米国で活躍している俳優が大半を占めています。スペイン自体がフェルナンド・フェルナン・ゴメス(99)、パコ・ラバル(01)、アントニオ・バンデラス(08)、最後が2013年のカルメン・マウラの4人だけだから多いとは言えない。フランスでは受賞順にカトリーヌ・ドヌーヴ、ジャンヌ・モロー、イザベル・ユペールの女優陣、アニエス・ヴァルダを含めて4人と同数です。年を追うごとに米国頼みがどの映画祭でもはっきりしてきましたが、見てもらえなければ話にならないということです。ガラには敬意を払って、映画祭総ディレクターのホセ・ルイス・レボルディノスが出迎えました。

(トロフィーを手にしたアニエス・ヴァルダ、9月24日のガラから)

(現地入りしたアニエス・ヴァルダ、9月22日)
★アルゼンチンからの初受賞がリカルド・ダリンだったのは納得でしょうか。「ホライズンズ・ラティノ」というスペイン語・ポルトガル語に特化したセクションがありながら、ラテンアメリカからは初めての受賞者でした。授賞式前のプレス会見で「リカルド・ダリンとは何者?」という質問には、「いつも真実を語っている嘘つき」と応えていました(笑)。トロフィーは『サミット』で共演したエレナ・アナヤと一緒に登壇したドロレス・フォンシの手から受け取りました。今年のラテンビートで『サミット』が上映されるので、そちらでトレビアをアップいたします。

(リカルド・ダリン、9月26日のガラから)

(現地入りしたリカルド・ダリン、9月25日)
★イタリアからはモニカ・ベルッチ、内面から滲みだしてくるような美しさ、年々若返りしているのではないか。「私も間もなく53歳になります。仕事を続けているのは美しさだけとは思わない」とベルッチ。素晴らしい体形を維持するのは口で言うほど楽ではない。美しさとインテリジェンスを調和させながら25年以上も闘ってきたんですよね。「映画はそのほかの芸術を理解する機会を与えてくれた。女優としてでなく、それ以上に人間として大きくしてくれた」と。授賞式は3000人が収容できるベロドロモで、1998年のドノスティア賞受賞者にして今年の審査委員長ジョン・マルコヴィッチの手から渡された。たったの5分間でしたが3000人の観客が彼女の美に酔いしれました。

(英語とスペイン語で短いスピーチをしたモニカ・ベルッチ、9月27日のガラから)

(現地入りしてファンの歓迎に応えるモニカ・ベルッチ)
★ドノスティア賞以外の栄誉賞の一つ「ジャガー・ルクルト賞*」にパス・ベガが選ばれました。昨年から始まり、第1回の受賞者はガエル・ガルシア・ベルナルでした。パス・ベガはアントニオ・バンデラスが受賞した「映画国民賞」のガラにも姿を見せていました。フリオ・メデムの『ルシアとSEX』(01)でカンヌ映画祭新人賞、ゴヤ賞新人女優賞などを受賞した。『トーク・トゥ・ハー』(02)他、アルモドバル映画、ビセンテ・アランダの『カルメン』(03)でカルメンを演じた。2008年からロスアンゼルスを本拠地にして主にハリウッド映画やTVで活躍している。

(トロフィーにキスをするパス・ベガ)
*正式名は「Premio Jaeger-LeCoultre al Cine Latino」、2007年からベネチア映画祭で始まった「Premio Jaeger-LeCoultre Glory to the Filmmaker」と同じ、1933年創業のスイスの高級時計マニュファクチュール、ジャガー・ルクルト社が与える賞。「10年以上のキャリアがあり、かつ将来的にも活躍が期待できるシネアスト」に贈られます。ジャガー・ルクルト社は、サンセバスチャン映画祭のパトロンの一つです。
アントニオ・バンデラス映画国民賞*サンセバスチャン映画祭2017 ⑬ ― 2017年09月28日 14:49
映画国民賞授賞式に南アから馳せつけたアントニオ・バンデラス
★映画国民賞*の授賞式は、例年サンセバスチャン映画祭と決まっています。今年の受賞者アントニオ・バンデラス(マラガ、1960)は、2日目の9月23日に授賞式がありました。昨年のアンヘラ・モリーナは3日目、受賞者の希望に合わせるようですが大体映画祭前半です。ある映画の撮影のため南アフリカ共和国から慌ただしく帰国したということで、記者団を前にしての談話は控えめで幾分疲れ切った声だった由。1月に心筋梗塞で倒れスイスでステント手術を受けた。公けに顔を出したマラガ映画祭では、大分やつれた印象でしたが順調に回復しているようです。授賞式会場はタバカレラ・センター(タバコ専売公社)だったが、ここでの授賞式は初めてらしく、受賞者が正装でなく黒のスーツだったのも初めてだった(写真下)。

(メンデス・デ・ビゴ文化教育スポーツ相から国民賞を受け取るバンデラス)
★「国の考えについては気にしていない。自分の分からない意見が次から次へと連発されるのが気にかかっているが、唯言えることは、私はこの国で生れ育ち、民主主義移行期に子供から大人になった。この時代は物事が自由に言えるようになった時代でした。国策アートの時代は終わり、スペイン人の投票が承認された」とバンデラス。中学生のころには軍事独裁政も内部では変革が起きていたから、ポジティブな視点を持てるようになった時代だったかもしれない。カタルーニャ自治州独立の是非を問う住民投票に水を向けられると、マラガっ子のバンデラスは「理性を欠いたことのように思える。勿論投票は民主主義の基本だが、それが唯一でないことを忘れるべきではない。法律を尊重すべきです」とかわし、スペイン政府の投票阻止については、「サッカーでいえばレッドカードのようなもの。誰が得点するの、審判員あるいは蹴り上げた選手?」と応じました。中央が言うように違憲なのかどうか分かりませんが、投票日10月1日が個人的には心配です。
消費税21%が半分以下の10%に引き下げられたけど・・・
★先日、メンデス・デ・ビゴ文化教育スポーツ相がチケット代のIVA消費税21%を半分以下の10%に引き下げることを発表しました(施行2018年)。「映画産業にとっては歓迎すべきことですが、特に経済危機が長引いて苦境に立たされていた製作側では大いに助けになります」とコメント。映画鑑賞の方法に変化が起きており、必ずしも映画を映画館で見る時代は終わっている。「私の娘はiPhone で映画を見ている。作る側も変わらざるを得ない。スペインでは映画館が消えてしまった町だってあるから映画館で見たくても見られない。映画祭では見ず知らずの観客同士が暗い場内で映画を見るが、これも残念ながら消えていきつつある」と悲観的でした。将来的にはネットフリックスのことも視野に入れて考えねばならないでしょう。

(国民賞を証明する公文書を記者団に披露するアントニオ・バンデラス)
★ガラは、文化相メンデス・デ・ビゴのバスク語での称賛スピーチで始まった。続いてパス・ベガを従えて登壇したカルロス・サウラが文化相のバスク語に呼応して「バスクではこの映画祭をZinemaldiaと呼んでいるが、今日はZinebuendiaと呼ぶことにします」と挨拶した。Zine-mal-diaのmal(悪い)をbuen(良い)に入れ替えたわけです。「消費税減税の朗報、信じられませんよ、大臣。文化大臣は文化のことを、映画芸術のことに気を配る時です」とサウラ、「2018年から減税しますよ。誰だって税金なんか払いたくありません。しかし老後の年金や根本的な公共サービスの財源を確保する必要があるんです」と文化相。どちらもステレオタイプ的な口合戦でした。
★会場はお祝いに駆けつけた人でごった返しだったようです。サウラ以下、ペドロ・オレア、マヌエル・グティエレス・アラゴン、マベル・ロサノ、イマノル・ウリベ、リノ・エスカランテの監督たち、ICAAの元ディレクターたち、ヨーロッパ映画アカデミー副会長アントニオ・サウラ、フェルナンド・ボバイラなど製作者たち、マラガ映画祭やバジャドリード映画祭のディレクター、女性シネアストでは、昨年の受賞者アンヘラ・モリーナ、マリサ・パルデス、ナタリエ・ポサ、今回ジャガー・ルクルト賞を受賞したパス・ベガ、etc.。
*映画国民賞Premio Nacional de Cinematografiaというのは1980年に始まった賞、まだゴヤ賞(1987年から)がなかった時期で、シネアストに与えられる賞としては唯一のものでした。国民賞は他に文学賞、美術賞、科学賞など各分野ごとに分かれています。選考母体は文化教育スポーツ省と映画部門ではICAA(Instituto de la Cinematografia y de las ArtesAudiovisuales)です。副賞として3万ユーロが授与される。特に多額ではありませんが、栄誉賞としてはゴヤ賞より上かもしれません。
◎バンデラス関連記事
*メラニー・グリフィスとの離婚騒動の記事は、コチラ⇒2014年6月21日
*ゴヤ賞2015「栄誉賞」受賞の記事は、コチラ⇒2014年11月5日
*マラガ映画祭2017「名誉金のビスナガ」受賞記事は、コチラ⇒2017年4月1日
*映画国民賞2017受賞の記事は、コチラ⇒2017年8月25日
"El autor" トロント映画祭でFIPRESCI賞*サンセバスチャン映画祭2017 ⑩ ― 2017年09月18日 16:42
マヌエル・マルティン・クエンカ、三度目の挑戦で国際批評家連盟賞受賞
★去る9月17日トロント映画祭tiff 2017は、マーティン・マクドナーの “Three Billboards Outside Ebbing, Missouri”(米=英)を観客賞(最高賞)に選んで閉幕しました。開催期間がベネチア映画祭と重なる部分もあり、作品もかなりダブっています。とにかくtiffは合計300本ぐらいあるからチェックするのも面倒くさくなります。本作もベネチア映画祭のコンペティション部門に出品されていました。隣国だから授賞式まで残っていたのか、あるいは直前に呼び戻されたのか、「本当に観客に受け入れられるかどうか全く分からなかった」と、監督は受賞の驚きを隠さなかったようです。

(主演のフランシス・マクドーマンド、“Three Billboards Outside Ebbing, Missouri”から)
★サンセバスチャン映画祭のコンペティションにも出品されているマヌエル・マルティン・クエンカの新作 “El autor”(The Motive)がスペシャル・プレゼンテーション部門の国際批評家連盟FIPRESCI賞を受賞しました。過去には彼の2作品 “La mitad de Oscar” と “Canibal” が出品されておりますが、今回三度目の挑戦で大賞を手にしました。他にはベネチア映画祭の金獅子賞をとったギレルモ・デル・トロの “The Shape of Water”、同じくベネチア映画祭正式出品のジョージ・クルーニーの “Suburbicon” や、ダーレン・アロノフスキーの “Mother!” を押しのけて、彼らからすれば知名度的には低いマルティン・クエンカが受賞するなんて予想もしませんでした。幸先良いニュースですが、果たしてサンセバスチャンでは賞に絡めるでしょうか。

(アントニオ・デ・ラ・トーレとハビエル・グティエレス、“El autor” から)
★サンセバスチャン映画祭2017のドノスティア賞受賞者のアニエス・ヴァルダと、写真家でアーティストのJRのドキュメンタリー映画 “Visages Villages”(Faces Places)がドキュメンタリー観客賞を受賞しました。アニエス・ヴァルダは89歳、JRは34歳、祖母と孫ほど年の違う二人連れが、町の人々と触れあいながらフランスの田舎をめぐります。これは今年観たい映画5本に入れたいです。

(アニエス・ヴァルダとJR)

(ベロドロモ部門のポスター)
★サンセバスチャン映画祭では3000人が収容できる大型スクリーンで上映されるベロドロモ部門(コンクール外)で上映されるのが、ハビエル・バルデムとペネロペ・クルスが出演することで話題になっている、フェルナンド・レオン・デ・アラノアの “Loving Pablo” です。tiffではスペシャル・プレゼンテーション部門に出品されていましたが、残念でした。ベネチア映画祭はコンペティション外の出品でした。

(パブロ・エスコバルを演じたハビエル・バルデム)
★このベロドロモでは、スペイン語映画はボルハ・コベアガのキツいブラック・ユーモア満載のコメディ “Fe de etarras”、ハビエル・カマラ、フリアン・ロペス、ラモン・バレア、ゴルカ・オチョアなどが出演します。10月12日Netfix放映が決定しています。コベアガはスペイン映画史上最高の興行成績を誇る「8アペジードス・バスコス」の脚本を共同で手掛けています。もう1作がアントニオ・クアドリの “Operación concha”(西=メキシコ)、ジョルディ・モリャ、カラ・エレハルデ、ウナックス・ウガルデ、ラモン・アギーレ、バルバラ・モリ他、お馴染みの役者が出演して笑わせます。どうやら今年のベロドロモ上映3作品は、字幕入りで観られそうです。


(アントニオ・クアドリの “Operación concha” から)
★ベロドロモVelódromoは、英語のvelodromeと同じくスペイン語でも「競輪場」を指します。作品は3~5作品と少なく娯楽アクションものが多い。かつてアレックス・デ・ラ・イグレシアの『スガラムルディの魔女』や、ダニ・デ・ラ・トーレの『暴走車 ランナウェイ・カー』がここで上映された。
アントニオ・バンデラス「国民映画賞2017」受賞*その他いろいろ ― 2017年08月25日 14:06
バンデラスがサンセバスチャン映画祭にやってくる
★「国民映画賞」の授賞式は、サンセバスチャン映画祭で行われるのが恒例、アントニオ・バンデラスが久しぶりにサンセバスチャンにやってきます。昨年はアンヘラ・モリーナで盛り上がりましたが、なかには2015年のフェルナンド・トゥルエバのように「今更もらっても・・・」と受賞をごねる監督もいたりして、受賞者の選考は難しい。今回も「もう上げちゃうの、どうして?」と疑問を呈するシネアストもいるようでした。今年の1月26日に心筋梗塞で倒れ、その後ジュネーブの有名な心臓外科病院で3本のステント手術を受けており、健康不安というトラブルを抱えるようになっています。

(心臓手術後のアントニオ・バンデラス、2017年4月)
★2015年には最年少の受賞者としてゴヤ栄誉賞をもらったばかり、2008年にはサンセバスチャン映画祭の栄誉賞ドノスティア賞、2004年金のメダル、シッチェス映画祭2014栄誉賞、マラガ映画祭2017では名誉金のビスナガ賞、イベロアメリカ・プラチナ賞2015の栄誉賞などなど、海外も含めて50代にして数々の栄誉賞に輝いています。まだ受賞歴のないゴヤ賞主演男優賞あるいは助演男優賞が待たれるところです。
*ゴヤ賞2015栄誉賞の記事は、コチラ⇒2014年11月5日
*マラガ映画祭2017名誉金のビスナガ賞の記事は、コチラ⇒2017年4月1日
アカデミー賞2018外国語映画賞のスペイン代表は・・・
★先日、アカデミー賞2018外国語映画賞のスペイン代表候補3作がスペイン映画アカデミー会長イボンヌ・ブレイクの口から発表になりました。今年の話題作、カルラ・シモンのデビュー作 “Verano 1993”(ラテンビート2017の邦題『夏、1993』)、パブロ・ベルヘルの第3作コメディ “Abracadabra” (仮題「アブラカダブラ」)、サルバドル・カルボの戦争歴史物 “1898, Los ultimos de Filipinas” 以上3作に絞られました。カルラ・シモンの “Verano 1993” は、オデッサ映画祭2017のインターナショナル部門の作品賞を受賞したばかり、ヨーロッパ映画賞2017の候補に選ばれています。

(カルラ・シモンの “Verano 1993”)

(パブロ・ベルヘルの “Abracadabra”)

(サルバドル・カルボの “1898, Los ultimos de Filipinas”)
* “Verano 1993” の紹介記事は、コチラ⇒2017年2月22日
* “Abracadabra” の紹介記事は、コチラ⇒2017年7月5日
* “1898, Los ultimos de Filipinas” の紹介記事は、コチラ⇒2017年1月5日
ヨーロッパ映画賞2017にスペインから3作が残りました
★ヨーロッパ映画賞エントリー51作が発表になりました。うちスペインからは次の3作が選ばれています。スペイン映画界に多大な貢献をしているフアン・アントニオ・バヨナの『怪物はささやく』(劇場公開になっています)、ラウル・アレバロの『物静かな男の復讐』(Netflix放映)、カルラ・シモンの『夏、1993』(ラテンビート2017上映予定)の3作です。51作のなかから、11月4日開催のセビーリャ・ヨーロッパ映画祭でノミネーションが正式に確定します。1国1作品が恒例ですから選ばれるとしてもどれか1作です。授賞式は例年通り12月9日にベルリンで行われます。

(フアン・アントニオ・バヨナ『怪物はささやく』)

(ラウル・アレバロの『物静かな男の復讐』)
アリエル賞2017*メキシコ・アカデミー賞の結果発表 ― 2017年07月15日 16:30
メキシコ未公開映画が最優秀作品賞以下10冠の不思議
★デビュー作(◎印)が目立った今年のアリエル賞が、7月11日に発表になりました。カテゴリーはまた増えて28個、うち10冠(ノミネート20個)を制した「La 4a compañía」が、未だにメキシコでは公開されていないのに受賞しました。グアダラハラ映画祭2016(3月6日)で上映こそされましたが、アカデミー会員の多くはスクリーンでは観てないはずです。今後の公開を期待したのかもしれませんが、配給会社はまだ決まっていないようです。受賞カテゴリーは、作品・男優(アドリアン・ラドロン)・クアドロ男優(エルナン・メンドサ)・編集・視覚効果・特殊効果・美術デザイン・録音・衣装・メイクアップの10個です。「Tempestad」がドキュメンタリーということからある程度は予想されていましたが、未公開作品が作品賞を取るという結果になりました。

(「La 4a compañía」のポスター)
★アリエル賞はメキシコの社会情勢を反映して、政治的メッセージの強い映画が選ばれる傾向にあると思います。2016年ダビ・パブロスの『選ばれし少女たち』、2015年アロンソ・ルイスパラシオスの『グエロス』、2014年ディエゴ・ケマダ=ディエスの『金の鳥籠』と、切りこむ角度は違ってもメキシコやラテンアメリカの闇を抉るという意味では同じでした。今年の受賞作も実話をベースにした刑務所が舞台になっている。制度的革命党PRIのホセ・ロペス・ポルティーリョが大統領だった時代(1976~82)、メキシコ・ペソの大暴落で世界を混乱させた頃の物語です。実現までに10年以上もかかったプロジェクト全員が、待ちに待った受賞者のアナウンスに酔いしれた夕べとなりました。
*「La 4a compañía」ほかノミネーション発表の記事は、コチラ⇒2017年6月9日
最優秀作品賞(メキシコ)
『夜を彩るショーガール』◎(Bellas de noche)ドキュメンタリー
監督マリア・ホセ・クエバス
『彼方から』◎(ベネズエラ合作)監督ロレンソ・ビガス
『ノー・エスケープ自由への国境』(フランス合作)監督ホナス・キュアロン
「Tempestad」ドキュメンタリー 監督タティアナ・ウエソ
「Me estás matando, Susana」監督ロベルト・スネイデル
◎「La 4a compañía」◎(スペイン合作)
監督アミル・ガルバン・セルベラ&ミッチ・バネッサ・アレオラ
「El sueño del Mara'akame」◎ 監督フェデリコ・Cecchetti

(ミッチ・バネッサ・アレオラとアミル・ガルバン・セルベラ)
監督賞&長編ドキュメンタリー賞
タティアナ・ウエソ「Tempestad」ドキュメンタリー
*女性で監督賞を受賞した第1号となり、当夜のもう一人の華だった。アリエル賞は1947年、16のカテゴリーで始まったメキシコ・アカデミー賞、その長い歴史にもかかわらず、ウエソ監督が初とは驚きを通りこして沈黙あるのみです。女性への暴力が処罰されないメキシコの現在が語られる。パウラ・マルコビッチ監督の自伝的デビュー作「El premio」(メキシコ、仏、独、ポーランド)が、2013年に作品賞を受賞したことがあります。しかし彼女はメキシコで活動しているアルゼンチン出身の脚本家でした。

(監督賞のトロフィーを手にしたタティアナ・ウエソ)
オペラ・プリマ第1回作品賞&と音楽賞
「El sueño del Mara'akame」監督:フェデリコ・Cecchetti

(出演者と一緒に)
男優賞(二人)
アドリアン・ラドロン「La 4a compañía」
ホセ・カルロス・ルイス「Almacenados」監督:ジャック・サグア・カバビエZagha Kababie確認
*若手とベテランが賞を分け合いました。

(左から、ホセ・カルロス・ルイスとアドリアン・ラドロン)
女優賞
ベロニカ・ランガー(ランヘル)「La calidas」監督:マロエイリノ・イスラス・エルナンデス

(貫禄の受賞者ベロニカ・ランガー)
助演男優賞
オセHoze・メレンデス「Almacenados」

助演女優賞
アドリアナ・パス「La calidas」

新人男優賞
パコ・デ・ラ・フエンテ「El alien y yo」監督:ヘスス・マガニャ・バスケス
新人女優賞
マリア・エボリ「Tenemos la carne」監督:エミリアノ・ロチャ・ミンター

クアドロ男優賞
エルナン・メンドサ「La 4a compañía」

クアドロ女優賞
マルタ・クラウディア・モレノ 「Distancias cortas」

オリジナル脚本賞
ホアキン・デル・パソ&ルシー・Pawlak「Maquinaria Panamericana」監督ホアキン・デル・パソ
脚色賞
ダビ・デソラ「Almacenados」
撮影賞
エルネスト・パルド「Tempestad」
編集賞
ミッチ・バネッサ・アレオラ、フランシスコ・リベラ、カミロ・アバディア「La 4a compañía」

(欠席したカミロ・アバディアのトロフィーも手にアレオラ、フランシスコ・リベラ)
視覚効果賞
リカルド・ロブレス「La 4a compañía」
特殊効果賞
ルイス・エドゥアルド・アンブリス「La 4a compañía」
美術デザイン賞
ジェイ・エロエスティ、カルロス・コッシオ「La 4a compañía」

音楽賞
エミリアノ・モッタ「El sueño del Mara'akame」
衣装賞
ベルタ・ロメロ、ホセ・グアダルーペ・ロペス「La 4a compañía」

メイクアップ賞
カルラ・ティノコ、アルフレッド・ガルシア「La 4a compañía」

録音賞(2作)
ハビエル・ウンピエレス、イサベル・ムニョス他「La 4a compañía」
フェデリコ・ゴンサレス・ホルダン、カルロス・コルテス他「Tempestad」
短編賞(フィクション)
「El ocaso de Juan」監督:オマル・デネド・フアレス

短編賞(ドキュメンタリー)
「Aurelia y Pedro」監督:オマル・ロブレス、ホセ・ペルマル

短編アニメーション(長編は該当作なし)
「Los aeronautas」監督:レオン・ロドリゴ・フェルナンデス

イベロアメリカ映画賞
◎『セカンド マザー』(ブラジル)監督アナ・ミュイラート
◎『笑う故郷』(アルゼンチン、スペイン)監督ガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーン
「Anna」(フランス、コロンビア)監督ジャック・トゥールモンド・ビダル
「Sin muertos no hay carraval」(エクアドル、メキシコ、独) 監督セバスティアン・コルデロ
『物静かな男の復讐』(スペイン)監督ラウル・アレバロ
(ブラジルとアルゼンチンが分け合いました)
ゴールデン・アリエル賞(二人)
イセラ・ベガ(女優、脚本家、製作者、シンガー・ソング・ライター)
*1939年生まれ。アリエル賞では、女優賞を1984年にアルトゥーロ・リプスタインの「La viuda negra」で受賞しているが、本作は1977年製作、メキシコ公開が1983年でした。他に2000年「La ley del Herodes」でも受賞、他に助演女優賞も受賞している。サム・ペキンパーの米国メキシコ合作映画『ガルシアの首』に出演、これは1975年公開されている。

ルセロ・イサック(美術監督)

★「La 4a compañía」が10個、「Tempestad」が4個、「Almacenados」が3個、「El sueño del Mara'akame」
と「La calidas」が2個ずつ、他は1カテゴリーという結果になりました。既に公開、映画祭上映、ネットフリックスなどで見ることのできる作品もありますが、この他どのくらい日本で見られるでしょうか。マリア・エボリが新人賞を取ったホラー・ファンタジー「Tenemos la carne」(エミリアノ・ロチャ・ミンター)あたりは期待できそうです。
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