ゴヤ賞ガラ直前のあれやこれや*ゴヤ賞2018 ⑧2018年02月03日 21:05

            ペネロペ・クルスに「セザール賞栄誉賞」とは!

 

★ゴヤ賞ガラに出席するため戻っていたマドリードの自宅の電話で知らされたという。前もってバルデム=クルス夫妻の不参加が伝えられていたのですが変更したようです。今回で10回目のノミネーション、受賞の可能性はゼロではないが下馬評の点数は低い。今年3度目の風邪をひいていたということですが、「セザール賞栄誉賞」のビッグ・ニュースで吹き飛んだことでしょう。23日のガラには予定通り出席ということです。フェルナンド・レオン・デ・アラノアLoving Pablo(西・ブルガリア)で夫婦揃って主演男優・女優にノミネートされています。久しぶりのスペイン人監督と母語で、コロンビアの麻薬王ペドロ・エスコバルのビオピックを撮るという触れ込みでしたが、出来上がってみれば英語なのでした。どうしてなのか理由は想像できますが、スペイン人の賛同は得られない。

 

        

     (ベネチア映画祭2017に出席したときのペネロペ・クルス、96日)

 

★フランスの「セザール賞」については説明不要と思いますが、この「栄誉または名誉賞」は「ゴヤ賞栄誉賞」と異なってインターナショナルな人選です。一応フランス映画に寄与したシネアストが対象でしたが現在はなし崩しになっています。初期こそフランス人が目立ちましたが、最近では外国勢、特にハリウッドで活躍するシネアストに与えられる傾向があります。フランス人の現役俳優では男優賞・女優賞にノミネートされるから栄誉賞は後回しにしているのかもしれない。受賞者によっては「なんだ、もう引退しろということか」とすねる人もいるらしい。

 

★女優に限るとダニエル・ダリュー、アヌーク・エーメ、ジャンヌ・モロー(2回)などは晩年になってから受賞しています。銀幕で活躍中のカトリーヌ・ドヌーヴ、イザベル・アジャーニ、イザベル・ユペール、ジュリエット・ビノシュは、まだ手にしていません。それに対して海外勢は、シャーロット・ランプリング、メリル・ストリープ、若いところではケイト・ウィンスレット、2014年の受賞者にいたっては30歳にもなっていないスカーレット・ヨハンソン(1984)だった。

 

43歳の受賞者ペネロペ・クルス1974、マドリード近郊アルコベンダス)は、スペイン人の受賞者としてはペドロ・アルモドバル1999年受賞)に次いで2人目です。ハリウッドでの成功と活躍が長かったせいか、妬み深い同胞からは「PPってスペイン人だったのね?」と嫌味を言われたりしたが、正真正銘のスペイン人なのでした(笑)。「とても驚いていますが、やはり嬉しいです。少し心配なのは受賞スピーチを書かなければならないこと。楽しんでもらえるよう準備したい。予想もしないことでしたが、自身にとっても家族にとっても、大いに夢がかなったということです。・・・15歳のときにこの世界に入り多くの経験を積み重ねながら、どうやって生きてきたか。これからも学びながら夢を追い続けます」と、エル・パイス紙のインタビューに答えていました。43歳とは言え、既に30年近いキャリアの持ち主なのでした。長編映画デビューは今は亡きビガス・ルナの『ハモンハモン』(92)でした。

 

★小さい子供が2人いるから25歳とか30歳のときのように仕事はできない。撮影、撮影の連続でセット暮らしが多い。家族と過ごせるように配慮してもらいながらバランスをとって仕事をしている。ブレーキをかけて、からだの声を聞きながらです。イランのアスガー・ファルハーディ監督の新作Todos lo saben(「Everybody Knows」西語・英語、2018年スペイン公開の予定)では撮影に4ヵ月かかりましたが、家族とは離れずにすみました。いつも仲間とは一緒で、自身もコマーシャルに出演しているランコムの化粧品も手放さないとか。自分にとって母親としての役割はとても重要だときっぱり。

 

(リカルド・ダリン、監督、ペネロペ・クルス、ハビエル・バルデム、「Todos lo saben」)

 

★ゴヤ賞の候補に選ばれたことはとても幸運だったこと、つまりどれが選ばれるかは宝くじみたいなものだから。勿論受賞したら嬉しいが、一緒に仕事をした仲間の努力が反映されたと思って、今回は泣きました。しかしスペインでは「Loving Pablo」は未公開、DVDも届かず、投票のためのネット配信もできてない。アカデミー会員の方々には是非観てほしいと思っています。主演女優賞の予測を訊かれて「みんな望んでいるわよ。でも今回は無理かなと思っている。全員貰っていい仕事をしたわけで、具体的に名前を挙げるのは差し控えたい」と。インタビュー者は「ナタリエ・ポサはどう?」と訊いていたが、いくらエル・パイス紙のベテラン批評家でも失礼な質問だよ。

 

     

   (パブロ役のハビエル・バルデム、愛人役のペネロペ・クルス、「Loving Pablo」)

 

★社会現象になっているセクハラ糾弾運動「Time's Up」については、賛同して寄付したと答えていた。現在のところ世界で1700万ドルが集まったという。ちょっと行きすぎかなと思われる告発も気になるが、今まで沈黙していたことが異常だったわけです。

 

★次回作も決まっていて、資金は準備できており、今年の夏にはクランクインするようです。新しい映画は、トッド・ソロンズLove Child(米、英語)、ブロードウェイのスターに憧れる自分勝手な男ナチョは父親を殺すことを画策している。彼を溺愛している母親と関係がある。ナチョにエドガー・ラミレス、クルスは母親を演ずる。ソロンズの過去の作品同様タブー視されるテーマを扱っているようだ。IMDbではコメディ・ドラマとあり、目下捉えどころがない。

 

 

★ノミネートされた作品の興行成績のトップは、新人監督賞候補者セルヒオ・G・サンチェスの「El secreto de Marrowbone」、2位パコ・プラサ『エクリプス』、3位ハビエル・カルボ&ハビエル・アンブロッシ『ホーリー・キャンプ!』、イサベル・コイシェ「La libreria」、カルラ・シモン『夏、1993』、マヌエル・マルティン=クエンカ「El autor」、最多ノミネーションの「Handia」と続きます・・・。

 

       

     (「El secreto de Marrowbone」撮影中のセルヒオ・G・サンチェス監督)

 

★授賞式は現地時間32200スタートですが、RTVEでは1900から、出席者の赤絨毯登場は2025から見られます。日本との時差は8時間、こちらは寝ている時間帯です。

   

    

   (巨大ゴヤ胸像を挟んで司会者のホアキン・レイェスとエルネスト・セビーリャ)