ベルリン映画祭2017*結果発表2017年02月22日 21:35

         セバスティアン・レリオの新作、銀熊脚本賞を受賞

 

★この映画祭はやたらカテゴリーが多くて(コンペ、パノラマ、フォーラム、ゼネレーション、他)、イベロアメリカ映画だけに絞っているのに漏れが避けられない。コンペティション部門は、セバスティアン・レリオUna mujer fantástica(チリ独米西)だけだったから、さすがに漏れは避けられた。下馬評が高得点だったので何かの賞に絡んで欲しいと思っていた。思いが通じたか監督とゴンサロ・マサが共同執筆した「銀熊脚本賞」とエキュメニカル審査員賞スペシャルメンション、テディー賞を受賞した。

 

  

    (左から、主役のダニエラ・ベガ、監督、共同執筆者ゴンサロ・マサ)

 

 

        (テディ賞のトロフィーを手にしたダニエラ・ベガ)

 

★前作『グロリアの青春』13)ではグロリアに扮したパウリナ・ガルシアが女優賞を受賞、監督にとってベルリン映画祭は相性がいい。ラテンビート上映後公開される幸運に恵まれました。本作もラテンビートあるいは2016年から「レインボー・リール東京~東京国際レズビアン&ゲイ映画祭」と名称が変わった映画祭などを期待していいでしょう。ダニエラ・ベガが扮するマリナ・ビダルはトランスジェンダーの女性、テーマとしては抵抗ないですね。現在27歳になるベガ自身も偏見の根強いチリにもかかわらず、両親や祖父母の理解のもと10代の半ばに女性として生きることを決心した。

 

     

      (プレス会見に臨んだセバスティアン・レリオ、ベルリン映画祭より)

 

    カルラ・シモンのデビュー作、第1回作品賞オペラ・プリマ賞を受賞

 

★スペインからはジェネレーション部門出品のカルラ・シモンVerano 1993(原題「Estiu 1993」、「Summer 1993」)が、第1回監督作品賞、国際審査員賞を受賞した。母親の死にあって親戚の家に養女に出される6歳の少女フリーダの物語。友達やバルセロナともさよならして、新しい家族となった養父母と一緒に最初の夏を過ごす。少女は悲しみを抱えたまま新しい世界に溶け込むことを学んでいく。両親をエイズで亡くした監督の子供時代がもとになっている。フリーダをライア・アルティガス、養母をブルナ・クシ、養父をダビ・ベルダゲルが演じる。各紙誌ともこぞってポジティブ評価で、今年のスペイン映画の目玉になりそうです。田園の美しい映像、情感豊かで細やかな描写は予告編を見るだけで伝わってきます。子役とアニマルが出る映画には勝てないと言われるが、どうやらハンカチが必需品のようだ。

 

 

   

 (フリーダのライア・アルティガス

                             

 ★カルラ・シモンは、1986年バルセロナ生れの監督、脚本家。2009年バルセロナ自治大学オーディオビジュアル・コミュニケーション科を卒業、その後カリフォルニア大学で脚本と監督演出を学び、試験的な短編「Women」と「Lovers」を制作する。2011年、ロンドン・フィルム学校に入り、ドキュメンタリーやドラマを撮っている。アルベルト・ロドリゲス監督の強い後押しのお蔭で製作できたと語っている。いずれ詳細をご紹介したい作品です。

 

           

   (カルラ・シモン、ベルリン映画祭にて)

 

     エベラルド・ゴンサレスのドキュメンタリー、アムネスティ映画賞を受賞

 

★ベルリナーレ・スペシャル部門のアムネスティ国際映画賞受賞作品は、メキシコのエベラルド・ゴンサレスのドキュメンタリーLa libertad del diablo(「Devil's Freedom」)。ベルリンの観客を身動きできなくさせたと報道された暴力と悪事が主人公のドキュメンタリー。現在のメキシコで起きている地獄の暴力が描かれており、同情は皆無、犠牲者、殺し屋、警察官、軍人などの証言で綴られている。

 

 

★昨年のモレリア映画祭の受賞作品、ベルリンがワールド・プレミア。「残虐な行為はいとも簡単に行われる」とゴンサレス監督。

 

     

 (エベラルド・ゴンサレス監督、ベルリン映画祭にて)

 

★今年の金熊賞はハンガリーのIldiko Enyediイルディコ・エニェディOn Body and Soulが受賞した。他に国際批評家連盟賞FIPRESCIもゲット、寡作ですがカンヌやベネチアでも受賞しているベテラン、1955年ハンガリーのブダペスト生れの監督、脚本家。監督賞に甘んじたフィンランドのアキ・カウリスマキを推す審査員もいたのではないでしょうか。グランプリ審査員賞はセネガル、アルフレッド・バウアー賞はポーランド、男優賞はドイツ、女優賞は韓国など、受賞者がばらけて閉幕しました。

 

   

         (大賞を射止め満面に笑みのイルディコ・エニェディ監督)