特別上映作品にパトリシオ・グスマンの新作*カンヌ映画祭2019 ⑩ ― 2019年05月15日 15:43
もう1作はパトリシオ・グスマンの「La Cordillera de los sueños」
★特別上映作品のもう1作は、チリのパトリシオ・グスマンの「La Cordillera de los sueños」というドキュメンタリーです。チリ最北部を撮った『光のノスタルジア』(10)と最南端を撮った『真珠のボタン』(15)は2部作となっています。後者がベルリン映画祭2015の銀熊脚本賞を受賞したことで本邦でも公開されたのでした。ドキュメンタリー映画の巨匠フレデリック・ワイズマン(1930)との対談(2015年1月)で、「もし第三部を撮るとしたらアンデス山脈になるが、目下具体的な案はないし、その可能性もない」とかつて語っていた監督、幸いなことに可能性があったようです。
「La Cordillera de los sueños」(「The Cordillera of Dreams」)2019
製作:ARTE / Atacama Productions
監督・脚本:パトリシオ・グスマン
撮影:サムエル・ラフ Lahu
データ・映画祭:製作国フランス=チリ、スペイン語、2019年、ドキュメンタリー、85分、撮影地アンデス山脈。配給Pyramid Distribution(仏)。カンヌ映画祭2019コンペティション部門特別上映作品、ドキュメンタリー賞(ルイユ・ドール賞)を受賞。
解説:カンヌ映画祭総ディレクターであるティエリー・フレモーのコメントによると「パトリシオ・グスマンは、軍事独裁政権が民主的に選ばれた政府を転覆させた40年前にチリを離れた。しかし片時も忘れたことがない地図上の母国、その文化について考え続けている。『光のノスタルジア』で北部を『真珠のボタン』で南部を描いたのち、彼が<チリの過去と現在の歴史をつらぬく広大で明白な脊柱>と称するところに近づいて行く。「La Cordillera de los sueños」は、映像詩であり、歴史的質疑であり、映像エッセイであるとともに個人的な心の探求である」
★チリのピノチェト軍事独裁政権を倦むことなく糾弾し続けるグスマン監督は、第1部、第2部に続いて本作で三部作を完成させたことになる。広大なチリの脊柱アンデス山脈を舞台に、精神的探求者が語るビジュアルなエッセイのようです。数カ月前に完成させたばかりの新作がカンヌ映画祭のセレクションで特別上映されることについて「カンヌは私の仕事のために常に連携してくれている。チリの隠された歴史シリーズの第3部が、このような重要な映画祭で上映されるのは光栄なことです」と語っている。
★「わたしの国ではあらゆる場所に山脈がありますが、チリの国民にとっては殆ど見知らぬ領域同然なのです。『光のノスタルジア』で北を、『真珠のボタン』で南端を描き、今度は山脈の美しさを探求し、その神秘を明らかにするために、この広大な脊柱をフィルムにおさめる用意ができたと思いました」とグスマン。
★チリの製作者で配給を手掛けるアレクサンドラ・ガルビスは「この映画は大きな挑戦でした。しかし監督は、撮影がアクセスの難しかった高山にもかかわらず、肉体的な限界というものを感じさせなかった」と語っている。今年のクラシック部門にルイス・ブニュエルが特集され、フランス映画『黄金時代』(30)とメキシコ時代の『忘れられた人々』(50)が4K修整、『ナサリン』(58)が3K修整で上映されるようです。今年もセレブが顔を揃えて華々しく開幕したニュースが入ってきました。高がカンヌ、されどカンヌですか。
(撮影中のグスマン監督と撮影監督のサムエル・ラフ)
*『光のノスタルジア』の作品紹介、監督フィルモグラフィーは、コチラ⇒2015年11月11日
*『真珠のボタン』の作品紹介記事は、コチラ⇒2015年11月16日
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