「監督週間」のもう1作はアルゼンチン映画*カンヌ映画祭2019 ⑥ ― 2019年05月05日 21:00
アレホ・モギジャンスキイの第6作目「Por el dinero」
★今年の「監督週間」は24作中16作がデビュー作というなかで、アルゼンチンのアレホ・モギジャンスキイ「Por el dinero」は第6作目と異例、少し変わった作風の監督という印象です。2009年の長編第2作「Castro」がブエノスアイレス国際インディペンデント映画祭BAFICIで作品賞を受賞、続いてロカルノ、バンコク、ワルシャワ、ロンドン、ウィーン、テッサロニキほか各国際映画祭巡りをしました。BAFICI は4月下旬開催の映画祭で、マラガ映画祭と重なることから定期的に作品紹介はしておりませんが、カンヌのような大きな映画祭へ繋がるのでアルゼンチンの若手監督には重要な映画祭です。
(キューバのカストロとは無関係な「Castro」のポスター)
★モギジャンスキイが編集を担当したマリアノ・ジナス監督の「La flor」(18)を製作したEl Pampero Cine が手掛けました。今作はBAFICI 2018の作品賞受賞作品、若い監督をサポートしている制作会社、ロカルノ、ニューヨーク、ウィーン各映画祭で上映された話題作です。モギジャンスキイは編集者として若手監督とのコラボを多く手掛けています。編集者というのは大体が監督との共同作業がもっぱらで目立たない存在ですが、これなくしては完成しない。マリアノ・ジナスは反対にモギジャンスキイの第4作「El escarabajo de oro」(14)の脚本を共同執筆するなどしている。エドガー・アラン・ポーの『黄金虫』やロバート・ルイス・スティーヴンソンの『宝島』をベースにして作られたたコメディ・アドベンチャー映画です。
(監督・脚本・編集の「El escarabajo de oro」のポスター)
★前作5作まではすべてBAFICIに出品されましたが、「Por el dinero」はいきなり「監督週間」でワールドプレミアされます。詳細を入手できていませんが、どうやら2016年10月に舞台で上演された同タイトルの映画化のようです。その際は女優でダンサーのルチアナ・アクーニャと共同で演出、主演しましたが、映画のほうはモギジャンスキイが一人で監督しました。
(演劇「Por el dinero」のポスター)
(演劇「Por el dinero」の舞台から4人の出演者)
「Por el dinero」(「For the Money」)
製作:El Pampero Cine
監督・脚本:アレホ・モギジャンスキイ
脚本:ルチアナ・アクーニャ(共同執筆)
音楽:ガブリエルChwojnik
撮影:セバスチャン・アルペセジャArpesella
衣装デザイン:マリアナ・ティランテTirantte
データ・映画祭:製作国アルゼンチン、スペイン語、2019年、社会風刺コメディ。カンヌ映画祭併催の「監督週間」正式出品。
キャスト:ルチアナ・アクーニャ(ダンサー)、ガブリエルChwojnik(ミュージシャン)、マチュー・ペルポイント(フランス人ダンサー)、アレホ・モギジャンスキイ(シネアスト)
ストーリー:現代社会に生きるアーティストたち4人の現状にフォーカスした政治的風刺コメディ。一人はミュージシャン、二人は舞踊家、もう一人はシネアスト。私たち「どうやって生きていく?」「映画製作の資金は?」「生活費はどうやって稼ぐ?」「愛かお金かどっちがいい?」「すべきことは何?」エトセトラ。もしかしたら困難なテーマについて何かヒントが見つかるかもしれません。(文責:管理人)
★舞台と同じメンバーが出演していることからプロットに変更はなさそうですが、映像が入手できないので、これ以上は深入りできません。下の写真はたまたま見つかったもので、グーグルで目にするのは大体舞台で上映されたときの写真です。
(どういうシチュエーションか分からないが見つかったフォト)
(ルチアナ・アクーニャ、後ろ向きはモギジャンスキイか)
★アレホ・モギジャンスキイAlejo Moguillansky 1978年ブエノスアイレスうまれ、監督、脚本家、編集者、俳優、製作者。2004年映画編集者として出発、監督デビュー作はBAFICI出品の「La prisionera」(05)、以下の長編6作のほか、長編ドキュメンタリーや短編ドキュメンタリーを撮っている。第5作となる「La vendedora de fosforos」(2017「The Little Match Girl」)が話題になった。
(アレホ・モギジャンスキイ、2018年)
2005「La prisionera」監督・脚本・編集
2009「Castro」同上 BAFICI 2009 作品賞受賞作、
インディリスボン映画祭2010国際映画批評家連盟FIPRESCI賞受賞作
2013「El loro y el cisne」同上、BAFICI 2013 スペシャル・メンション
2014「El escarabajo de oro」監督・脚本・編集
2017「La vendedora de fosforos」監督・脚本・編集
2019「Por el dinero」同上、省略
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