「批評家週間」にグアテマラ映画*カンヌ映画祭2019 ⑦ ― 2019年05月07日 16:47
セサル・ディアスのデビュー作「Nuestras madres」

(フランスの売出し中の俳優フェリックス・マリトーを配したポスター)
★第58回「批評家週間」2019のコンペティション部門のノミネーションは7作、うちスペイン語映画はセサル・ディアスのデビュー作「Nuestras madres」(グアテマラ=ベルギー=仏)とソフィア・キロス・ウベダの「Ceniza negra」(コスタリカ=アルゼンチン=チリ=仏)の2作が選ばれました。他に特別上映としてコロンビアのフランコ・ロジィの「Litigante」がオープニング作品に選ばれています。「批評家週間」はカンヌ本体より先に結果が発表になります(15日~23日)。審査委員長はコロンビアの監督チロ(シーロ)・ゲーラ、『夏の鳥』や『彷徨える河』が記憶に新しい。「批評家週間」ポスターのフェリックス・マリトーは1992年ヌヴェール生れの26歳、『BPMビート・パー・ミニット』、新作「Sauvage/Wild」で初めて主役を演じた目下売り出し中。先ずセサル・ディアスのデビュー作からご紹介します。
「Nuestras madres」(「Our Mothers」)
製作&製作者:Need Productions(Geraline Spimont)/ Perspective Films(Delphine Schmit)
監督・脚本:セサル・ディアス
撮影:Virginie Surdej
編集:Damien Maestraggi
音楽:Rémi Boubal
録音:Vicent Nouaille、Gilles Bernardeau、Emmanuel de Boissieu
衣装デザイン:ソフィア・ランタン
プロダクション・デザイン:ピラール・ペレド
データ・映画祭:製作国グアテマラ=ベルギー=フランス、スペイン語、2019年、ドラマ、82分、配給:Pyramide International。第58回「批評家週間」2019正式出品、ワールドプレミア。
キャスト:アルマンド・エスピティア(エルネスト)、エンマ・ディブ(クリスティナ)、Aurelia Caal、ビクトル・モレイラ、フリオ・セラノ・エチェベリア、他
ストーリー:2013年、グアテマラは内戦を引き起こした陸軍将校たちの裁判に釘付けになっている。犠牲者たちの証言が次々に行方不明者を特定していく。ある日、法医学財団の若い人類学者エルネストは、老婦人の話を通して、内戦中に行方不明になったゲリラ兵の父親を見つけられたと考えている。彼は母親の願いに逆らって、真実を求めて心身ともにのめりこんでいく。

(犠牲者の証言をもとに行方不明者を特定していくエルネスト)
★当ブログのグアテマラ映画紹介は、ハイロ・ブスタマンテの『火の山のマリア』(15)1作しかないという寂しさです。ベルリン映画祭で銀熊賞「アルフレッド・バウアー賞」を受賞した作品、この映画も20世紀後半のグアテマラを殺戮と恐怖に陥れた内戦(1960~96)を時代背景にした力作でした。36年に及んだ内戦の死者・行方不明者20万人のほぼ全員が先住民マヤの人々、先住民族ジェノサイドと言われる所以です。1996年「恒久的和平協定」が調印された後も殺害やリンチは後を絶たず、ジェノサイドをめぐる真相の多くは「殺害」されたまま残されているということでしょうか。中米グアテマラは総人口1760万人の約40%を先住民族が占め、彼らは公用語のスペイン語を話さない人々も多数存在する。ということで本作の使用言語はスペイン語だけではないと想定しております。
★主人公エルネストの父親は軍事独裁政権と闘ったゲリラ兵、内戦中に行方不明になったという設定のようです。エルネストに証言した老婦人役を誰が演じているのか目下詳細が不明ですが、『火の山のマリア』でマリアの母親になった、プロの女優マリア・テロンに似ているようですが。
*『火の山のマリア』の作品紹介は、コチラ⇒2015年08月28日/10月25日

(老婦人役は、もしかしてマリア・テロンか?)
★セサル・ディアスCésar Díaz、1978年グアテマラ・シティ生れ、監督、脚本家、映画編集者。ベルギーとグアテマラの国籍を持つ。メキシコとベルギーで学んだあと、パリのLa FEMISの脚本コースに参加する。10年以上編集とドキュメンタリーに取り組む。2010年、短編ドキュメンタリー「Semillas de Cenizas」が好評で20数ヵ所の映画祭で上映される。2015年、長編ドキュメンタリー「Territory Liberado」がメキシコのIMCINE(Instituto Mexicano de Cinematografía)賞を受賞、今回初長編映画が「批評家週間」にノミネートされた。


(短編ドキュメンタリー「Semillas de Cenizas」から)

(長編ドキュメンタリー「Territory Liberado」から)
★エルネスト役のアルマンド・エスピティアはメキシコの俳優。カンヌ映画祭2013コンペティション部門に出品されたアマ・エスカランテの『エリ』(13)で17歳のエリ役でデビューした。エスカランテ監督は本作で監督賞を受賞して周囲を驚かせた。翌年マックス・スニノのコメディ「Los Bañistas」(14)に出演、メキシコのTVシリーズにも出演している。
*『エリ』の作品紹介は、コチラ⇒2013年10月08日
*「Los Bañistas」の作品紹介は、コチラ⇒2014年08月21日
★クリスティナ役のエンマ・ディブはメキシコの女優、メキシコ映画マリアナ・H・メンチャカの「Preludio a una siesta」(18)、アイザック・チェレムの「Leona」(18)などに脇役で出演している。

(アルマンド・エスピティアとエンマ・ディブ、映画から)

(エルネストと先住民族マヤの女性たち)
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