アルモドバルの新作 ”Silencio” がクランクアップ ― 2015年08月18日 12:13
「アルモドバルが撮影してるってホント !? 」
★春5月にクランクイン、順調に撮影が終了したようです。撮影最終日の8月5日、マドリードのフェルナンドⅥストリートは、監督以下100名ほどからなるスタッフと野次馬で大騒ぎだったようです。俳優は主役のエンマ・スアレスとダリオ・グランディネッティの二人だけ。前もって現地には「映画撮影のため駐車禁止」の張り紙、ご近所の人はちょっと迷惑だが、知らずに通りかかった買い物客は「アルモドバルが撮影してるってホント?」「あの女優はエンマ・スアレスじゃないの」とびっくり。
(真夏にセーター姿のスアレスやグランディネッティと打ち合せする監督)
★昨今では街頭での撮影は、交通渋滞などで簡単に許可が下りないし、警備員の派遣など人手もお金も掛かるから敬遠されている。時代背景が現代なら走っている車種や通行人の服装など問題起きないが、本作のように1980年代から現代までと30年間に及ぶから、ブティックの経営者に「できたらショーウィンドーの洋服を80年代のに換えて頂けませんか」と頭を下げねばならない。役者も暑い盛りに毛糸のセーター姿ではラクではありません。
★本作が長編第20作目になる。未公開は多分デビュー作『ペピ・ルシ・ボン~』(ラテン・ビート2004上映)と『グロリアの憂鬱』(1984、DVD発売2004)だけだと思います。後者はカルメン・マウラが主役ということもあって10年後にDVD化されたが、予想外のタイトルで原題“Qué he hecho yo para merecer esto ?”と結びつかず発売に気づかなかった。民主化移行期後のスペインを切り取った、アルモドバルにとっても転機となる作品でした。80年代をテーマにすることが多く、新作もそこから始まる。「メロドラマではなく、ユーモアの入る隙もないシリアス・ドラマ」と監督。傾向としては外国語映画にも拘わらずアカデミー脚本賞を受賞した『トーク・トゥ・ハー』(2002)に近い印象を受けるのですが、期待していていいでしょうか。これにはダリオ・グランディネッティも出演してますね。音楽もアルベルト・イグレシアスと同じです。
★来年3月18日の公開を目指して撮影は順調に進んだようです。何しろ「カンヌ映画祭2016」(5月11日~22日)の正式出品が完成前から決まっており、上映日は5月18日、遅らすわけにはいきません(笑)。もう何年も前からカンヌに合わせて製作しており、サンセバスチャン映画祭との関わりでは『オール・アバウト・マイ・マザー』と『ボルベール』が国際映画批評家連盟賞を受賞しただけです。映画新情報として本作を記事にした3月には、まだIMDbにもロッシ・デ・パルマしか載っていませんでしたが、現在では下の写真にあるような顔ぶれが出演者です。
キャスト:エンマ・スアレス、アドリアナ・ウガルテ、ロッシ・デ・パルマ、インマ・クエスタ、ナタリエ・ポソ、ミシェル・ジェンナー、プリシラ・デルガド、スシ・サンチェス、ピラール・カストロ、ダニエル・グラオ、ホアキン・ノタリオ、ダリオ・グランディネッティ、他
★主役のフリエタをエンマ・スアレスとアドリアナ・ウガルテが演じます。ウガルテは海外連続ドラマ『情熱のシーラ』(NHK総合)のヒロイン役、日本のお茶の間に映画より先に登場しています。アルモドバルの「新ミューズ」というわけです。黒髪のシーラから金髪のフリエタに変身、髪型だけでなく、問題は演技、どんな化け方をするか楽しみです。
*エンマ・スアレスとアドリアナ・ウガルテの紹介は、コチラ⇒2015年4月5日
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