アナ・カッツの「Sueño Florianópolis」*サンセバスチャン映画祭2018 ㉑ ― 2018年09月21日 12:39
「ホライズンズ・ラティノ」第4弾―カルロヴィ・ヴァリのFIPRESCI受賞作品
★「ホライズンズ・ラティノ」部門12作品のうち3作が女性監督、うちアルゼンチンのアナ・カッツの新作コメディ「Sueño Florianópolis」は、カルロヴィ・ヴァリ映画祭2018に正式出品され、既に国際映画批評家連盟賞 FIPRESCI ほか審査員特別賞、主演のメルセデス・モランが女優賞を受賞している。アナ・カッツは過去にもサンセバスチャン、カンヌ、サンダンスなどの映画祭にエントリーされている監督、紹介がアルゼンチンに偏ってしまうので迷っていましたが、やはり今年の目玉の一つであるのでアップすることにしました。
(喜びのアナ・カッツとメルセデス・モラン、カルロヴィ・ヴァリFF2018)
「Sueño Florianópolis」(「Florianópolis Dream」)2018
製作:Bellota Films(仏、ドミニク・Barneaud)/
El Campo Cine(アルゼンチン、ニコラス・Avruj)/ Laura Cine(同、アナ・カッツ)/
Groch Films(ブラジル、カミラ・Groch)/ Prodigo Films(同、ベト・ガウス)
監督・脚本・製作:アナ・カッツ
脚本:(共)ダニエル・カッツ(アナ・カッツ「Los Marziano」)
撮影:グスタボ・ビアッツィBiazzi(サンティアゴ・ミトレ『パウリナ』
『エストゥディアンテス』)
編集:アンドレス・タンボルニノ(アナ・カッツ「Mi amiga del parque」)
美術:ゴンサロ・デルガド(『ウィスキー』)
音楽:エリコ・テオバルド(ブラジル)、マクシミリアノ・シルベイラ
(「Mi amiga del parque」)
製作者:ニコラス・Avruj(エグゼクティブ、アルゼンチン『家族のように』)、ディエゴ・レルマン(アルゼンチン)、カミラ・Groch(ブラジル)、ベト・ガウス(同)、フランセスコ・シビタ(同)、ドミニク・Barneaud(仏)ほか
データ:製作国アルゼンチン=ブラジル=フランス、スペイン語・ポルトガル語、2018年、コメディ・ドラマ、106分
映画祭・受賞歴:カルロヴィ・ヴァリ映画祭2018(7月4日)、国際映画批評家連盟賞・審査員特別賞・女優賞受賞。トロント映画祭(9月6日)、サンセバスチャン映画祭(9月24日)、シカゴ映画祭(10月12日)、他
キャスト:グスタボ・ガルソン(夫ペドロ)、メルセデス・モラン(妻ルクレシア)、ホアキン・ガルソン(息子フリアン)、マヌエラ・マルティネス(娘フロレンシア、フロール)、マルコ・ヒッカ(ブラジル人マルコ)、アンドレア・ベルトラン(マルコの元恋人ラリッサ)、カイオ・ホロヴィッツ(マルコの息子セザル)、他
物語:1992年夏、ルクレシアとペドロの夫婦は、二人のティーンエイジャーの子供フリアンとフロレンシアを連れて休暇を過ごすため、蒸し暑いブエノスアイレスを逃れてブラジルのリゾート地フロリアノポリスにやって来た。夫婦は少し前から別居をしていたがバカンスの計画は中止しなかった。ブラジル人のマルコの別荘を借り、マルコの元ガールフレンドのラリッサともどもバカンスを満喫することに。浜辺では波乗り、カラオケ、水中散歩、言葉の壁を越えて幾つか恋も生まれ、子供たちは子供たちで、大いにブラジルの休暇を楽しんでいたが、陽気なサンバのリズムにも次第に飽きがきて・・・思わぬ事態に遭遇することに。
(左から、メルセデス・モラン、監督、ニコラス・Avruj、カルロヴィ・ヴァリFF2018)
★1990年代のアルゼンチンでは、夏のバカンスはブラジルのリゾート地に行くのが中流階級のステータスだったらしい。国家破産を何度も繰り返し、国際的な援助のお蔭で救われても「喉元過ぎれば熱さを忘れる」が得意な国民は、プライドばかり高く実績に見合わない贅沢好き。現在も通貨ペソの下落でIMFに泣きついている。アルゼンチンはラテンアメリカでは、ブラジルと並んで映画先進国、大いに楽しませてもらっているが、政治経済的には問題国、隣国からは嫌われている。本作のコメディもそんな意地悪な視点から見ると面白いかもしれない。
(ブラジルのリゾート地フロリアノポリスにやって来た家族)
★アナ・カッツ Ana Katz は、1975年ブエノスアイレス生れ、監督、製作者、女優。
2002年「El juego de la silla」
(デビュー作、SSIFFシネ・エン・コンストルクシオン参加、メイド・イン・スぺインの
スペシャル・メンション受賞、2003年サバルテギ・ニューディレクターズに正式出品)
2007年「Una novia errante」
(シネ・エン・コンストルクシオンIndustria賞受賞、カンヌFF「ある視点」出品)
2011年「Los Marziano」(SSIFFコンペティション部門正式出品)
2014年「Mi amiga del parque」
(シネ・エン・コンストルクシオン出品、サンダンスFF2016、審査員賞・脚本賞受賞)
2018年「Sueño Florianópolis」省略
★女優としては、自作の「El juego de la silla」「Una novia errante」「Mi amiga del parque」のほか、フアン・パブロ・レベージャ&パブロ・ストールの『ウィスキー』(04)、パコ・レオンの『KIKI~愛のトライ&エラー~』(ラテンビート2016)などに出演している。私生活ではウルグアイ出身の俳優、監督ダニエル・エンドレルと2007年に結婚、『ウィスキー』では二人ともチョイ役だが共演している。
(ベレン・クエスタ、パコ・レオン、アナ・カッツ、『KIKI~愛のトライ&エラー~』)
(ダニエル・エンドレルとアナ・カッツ)
★脚本を共同執筆したダニエル・カッツは弟、他に「Los Marziano」も手掛けているほか、「Una novia errante」のアシスタント監督、「Mi amiga del parque」に出演している。
★本映画祭では3回上映(9月24日~26日)され、Q&Aには監督、メルセデス・モラン、マヌエラ・マルティネス、製作者のカミラ・Groch、美術を手掛けたゴンサロ・デルガドが登壇予定。デルガドはモンテビデオ出身のアート・ディレクター、監督、脚本家、俳優。美術では『ウィスキー』を手掛けている他、2016年、コメディ「Las toninas van al Este」を女優のベロニカ・ぺロッタと共同で監督、脚本も共同執筆、共に出演、ぺロッタは主役でした。子供を演じた二人は夫ペドロ役のグスタボ・ガルソンの実の子供だそうです。
*追記:ラテンビート2018に邦題『夢のフロリアノポリス』で上映が決定しました。
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