第71回カンヌ映画祭2018*ノミネーション発表 ①2018年05月04日 11:29

       コンペ部門のオープニング作品はアスガー・ファルハディの「Todos lo saben

  

 

★今年のカンヌ映画祭開催は、例年より早まって58日にオープンします(~19日)。コンペティション部門(21作ノミネート)にはスペイン語映画ですが、イランの監督アスガー・ファルハディのサイコ・スリラーTodos lo sabenEverybody Knows1作だけ、ただし噂通りオープニング作品に選ばれました。テーマとして家族のもめごとが大好きな監督は、今作でもクルス=バルデムのカップル以下、クルスと夫婦役を演じるリカルド・ダリンなど、出演者たちを大いに振り回すようです。カンヌでは例外を除いてタイトルは英語題ですが、当ブログではスペイン語題を採用し、英題も併記いたします。

 

      

             (Todos lo saben」の英題ポスター)

 

      

   (左から、バルデム、エドゥアルド・フェルナンデス、ダリン、クルス、映画から)

 

★「ある視点」部門(18作)には、アルゼンチン=スペイン合作のルイス・オルテガEl AngelThe Angel)と、仏=チリ=アルゼンチン合作のアレハンドロ・ファデルMuere, Monstruo, MuereDie, Monster, Die)の2作がノミネーションされました。両人ともアルゼンチンの80年代生まれの若手監督です。つまり軍事独裁制時代末期に産声を上げた新しい世代です。

 

★ルイス・オルテガは、1980年ブエノスアイレス生れ、パブロ・トラペロ映画(『檻の中』『カランチョ/ハゲ鷹と女医』)の脚本家としての実績がある。2002年「Caja negra」(「Blackbox」)で長編デビューしており、若手というより中堅か。新作は1971年から72年にかけて11人を殺害した美貌の青年カルロス・ロブレド・プッチの実人生が語られる。

 

           

★アレハンドロ・ファデルは、1981年メンドサのトゥヌヤン生れ、2012年の長編デビュー作Los salvadosは、カンヌ映画祭と併催の「批評家週間」で作品賞を受賞しています。国際映画祭にエントリーされ、「ラテンビート2012」でも『獣たち』の邦題で上映されましたが、観客を魅了するまでには至りませんでした。第2Muere, Monstruo, Muereはどうでしょうか。

 

      

         (Muere, Monstruo, Muere」のフランス語版

 

★以上3作がカンヌ映画祭本体のノミネーションです。他に同期間に併催される「監督週間」と「批評家週間」があり、前者は第50回を迎えることもあって、作品数20本、うちイベロアメリカ関係が6作含まれています。コンペティション部門が期待されていたコロンビアのチロ(シーロ)・ゲーラPájaros de veranoBirds of Passage)がオープニング上映となりました。共同監督クリスティナ・ガジェゴは、前作『彷徨える河』のプロデューサー、監督夫人で本作が監督デビュー作です。これはアップしたい作品の一つです。残る「批評家週間」には見当たりませんでした。

 

                     

      

   (主役に抜擢されたナタリア・レイェス)

   

★賞に絡みそうな話題作を選んでご紹介したい。


第50回「監督週間」にイベロアメリカから6作品*カンヌ映画祭2018 ②2018年05月04日 17:52

           スペインからカンヌの常連ハイメ・ロサーレスの新作がノミネート

★「監督週間」は毎回書いている通り、カンヌ映画祭と同期間に開催されますが(5月9日~5月19日)、別組織フランス監督協会が運営しています。当然審査員も別で、今年の審査委員長はベニチオ・デル・トロです。第50回と節目の年ということ、ディレクターのEdouard Waintrop(エドゥアール・ワイントロップ?)の任期が今回で終わるということなどから盛り上がっているようです。ノミネーションは20作、ブラジル(ポルトガル語)の1本を含めてイベロアメリカ関連は6作です。第1回は1969年、フランスの転換期であった1968年「5月革命」の翌年でした。カンヌ映画祭本体と若手の作家性のある監督に門戸を開くという位置づけで出発しましたが、最近ではホドロフスキーの『エンドレス・ポエトリー』、パブロ・ララインの『ネルーダ』、フェルナンド・レオン・デ・アラノアの『ロープ 戦場の生命線』など、ベテランの顔も交じって変化しています。

  

2008年の第40回(22作)には、現在活躍中の監督、スペインからはカタルーニャ語のアルベルト・セラEl cant dels ocells」(「El canto de los pájaros」)、チリからはまだ若手だったパブロ・ララインの『トニー・マネロ』、アルゼンチンからはリサンドロ・アロンソの「Liverpool」、パブロ・アゲロの「Salamandra」など、将来が有望視された若手監督がノミネートされています。今年の6作は若手、ベテランが入り混じってノミネートされました。

(ワールド・プレミアWP

 

 

Pajaros de verano(「Birds of Passage」)コロンビア=デンマーク=メキシコ、

 スペイン語、WP、 オープニング作品、59日上映

 監督:チロ(シーロ)・ゲーラクリスティナ・ガジェゴ

 

 

Carmen y Lolaスペイン、スペイン語、WP

 監督:アランチャ・エチェバリア、第1回作品

  

 

 

Petraスペイン=フランス、スペイン語、カタルーニャ語、WP510日上映

 監督:ハイメ・ロサーレス

 

 

Cómprame un revólverBuy Me a Gun)メキシコ、スペイン語、WP

 監督:フリオ・エルナンデス・コルドン

 

   

 

Los silenciosブラジル==コロンビア、ポルトガル語、スペイン語、WP511日上映

 監督:ベアトリス・セニエ 長編第2

 

  

 

El motoarrebatador(「The Snatch Thief」)アルゼンチン=ウルグアイ、スペイン語、WP

 監督:アグスティン・トスカノ 

     

   

★以上の6作です。