オープニング作品はマテオ・ヒルの新作*マラガ映画祭2018 ⑥2018年04月02日 17:38

        マイアミ映画祭2018「監督賞」受賞作品「Las leyes de la termodinámica

 

★まだコンペティション部門の全体像は見えてきませんが、マテオ・ヒルのオープニング作品Las leyes de la termodinámica他、スペインからはダビ・トゥルエバCasi 40パウ・ドゥラFormentera Ladyエレナ・トラぺLas distancias、キューバからエルネスト・ダラナス・セラーノSergio y Serguéiヘラルド・チホーナLos buenos demonios、アルゼンチンからヴァレリア・ベルトゥチェッリのデビュー作La reina del miedoなどが発表されています。例年の3月開催から4月にシフトしたことで、本映画祭がワールドプレミアではなくなっています。マテオ・ヒルやダラナス・セラーノの作品は、マイアミ映画祭201839日~18日)にエントリーされており、そのほかヴァレリア・ベルトゥチェッリの作品も、サンダンス映画祭(118日~28日)がプレミア、監督自身が主演して演技賞(女優賞)を受賞しています。今後もこのケースが増えるかもしれません。

 

        

    (開幕上映作品、マテオ・ヒルのLas leyes de la termodinámica」ポスター

 

マテオ・ヒルの新作「Las leyes de la termodinámica」は、第35マイアミ映画祭の監督賞受賞作品、受賞したから選ばれたわけではなく開催前に決定しておりました(37日発表)。因みに作品賞はディエゴ・レルマンの『家族のように』でした(ラテンビート2017)。クランクインした201610月から話題になっており、それは前作のロマンティックSFProyecto Lázaro16、英題Realive)が観客に受け入れられたことと関係があると思います。2083年という未来の世界では、科学に重きを置く、宗教を蔑ろにする不信人者たちであふれ、人生はより不明確で曖昧になる。矛盾が許され、どこまで行っても不可能だが、やはり愛を求めている。モラル的な願いを込めて構成されたロマンティックSF

   

  

  (主役のトム・ヒューズ、ウーナ・チャップリンなど、Proyecto Lázaro」ポスター

 

  「Las leyes de la termodinámica英題「The Laws of Thermodynamics

製作:Zeta Cinema / Atresmedia Cine / On Cinema 2017 / Netflix /    Televisió de Catalunya / Atresmedia / ICAA / ICEC

監督・脚本:マテオ・ヒル

撮影:セルジ・ビラノバ

音楽:フェルナンド・ベラスケス

編集:ミゲル・ブルゴス

美術:フアン・ペドロ・デ・ガスパル

衣装デザイン:クララ・ビルバオ

製作者:フランシスコ・ラモス、(エグゼクティブ)ラファエル・ロペス・マンサナラ

 

データ:製作国スペイン、スペイン語、2018年、ロマンティック・コメディ、撮影地バルセロナ。配給元ソニー・ピクチャー、スペイン公開420日決定。

映画祭・受賞歴:マイアミ映画祭2018正式出品(Knight Competition Grand Jury)監督賞受賞、マラガ映画祭正式出品(オープニング作品)

 

キャスト:ビト・サンス(マネル)、ベルタ・バスケス(エレナ)、チノ・ダリン(パブロ)、ビッキー・ルエンゴ(エバ)、フアン・ベタンクール(ロレンソ)、アンドレア・ロス(アルバ)、イレネ・エスコラル(ラケル)、ジョセップ・マリア・ポウ(アマト教授)他

 

物語:ちょっとノイローゼ気味だが前途有望な物理学者マネルの物語。人気モデルで新米女優のエレナとの関係をどのように証明するか計画を立てる。彼のせいで散々な結果になっているのは、まぎれもなく物理学の原則、つまりニュートンやアインシュタインのような天才、あるいは量子力学の創始者たちの原理から導きだしているからだ。それは特に熱力学の三原則によっているからだ。

      

     

     (左から、フアン・ベタンクール、ベルタ・バスケス、ビト・サンス、映画から)

 

★自由意志は存在するのか否か、人々は自分自身で決定する能力、または自然の法則によって定められた能力を持っているのかどうか、私たちの関係が上手くいかない責任は自ら負うべきか、現実を変えようとするのは無意味なことか、と監督は問うているようです。主役のビト・サンス、ベルタ・バスケス、チノ・ダリン、ビッキー・ルエンゴの4人は当ブログでは脇役として登場させているだけですが、最近人気が出てきた若手のホープたちです。ビト・サンスはいずれアップしたいダビ・トゥルエバの新作「Casi 40」にも起用されている。チノ・ダリンはリカルド・ダリン・ジュニア、フェルナンド・トゥルエバの「La reina de España」に出演している。ベルタ・バスケスフェルナンド・ゴンサレス・モリナの「Palmeras en la nieve」でマリオ・カサスと禁断の恋をするヒロインを演じ、2015年の興行成績に寄与している(Netflix『ヤシの木に降る雪』)。ビッキー・ルエンゴは当ブログ初登場です。

 

         

     (監督を囲んだ4人のキャスト、201610月クランクインしたときの写真)

 

マテオ・ヒルMateo Gil1972年ラス・パルマス・デ・グラン・カナリア生れ、監督、脚本家、製作者、撮影監督。1993年、短編Antes del besoで監督デビュー、1996年、アレハンドロ・アメナバルの『テシス 次に私が殺される』や翌年の『オープン・ユア・アイズ』の脚本を共同執筆する。エドゥアルド・ノリエガを主役に起用した長編デビュー作(1999『パズル』)以来、奇妙で一風変わった、それでいて興味深い映画を撮り続けている。『パズル』ではアメナバルが音楽を手掛けている。初期にはアメナバル、ノリエガと組んだ作品が多い。

 

       

 主なフィルモグラフィー短編を除く)

1996Tesis」『テシス 次に私が殺される』脚本、監督アメナバル

1996Cómo se hizo Tesis監督

1997Abre los ojos」『オープン・ユア・アイズ』脚本、監督アメナバル

1999Nadie conoce a nadie」『パズル』監督、脚本、東京国際映画祭上映

2004Mar adentro」『海を飛ぶ夢』脚本、監督アメナバル、ゴヤ賞2005脚本賞

2005El todo」脚本、監督マルセロ・ピニェイロ、ゴヤ賞2006脚本賞

2006スパニッシュ・ホラー・プロジェクト エル・タロット』TV、監督・脚本、TV放映

2009Agora」『アレクサンドリア』脚本、監督アメナバル、ゴヤ賞2010脚本賞

2011Blackthorn」『ブッチ・キャシディ 最後のガンマン』監督

   トゥリア賞2012新人監督賞、TV放映

2016Proyecto Lázaro」「Realive」監督、脚本、ファンタスポルト映画祭2017作品・脚本賞

2018Las leyes de la termodinámica」監督、脚本、マイアミ映画祭監督賞

追記:『熱力学の法則』の邦題でNetflix 配信されました。

  

ダビ・トゥルエバの「Casi 40」正式出品*マラガ映画祭2018 ⑦2018年04月04日 17:12

       『「ぼくの戦争」を探して』のダビ・トゥルエバの新作Casi 40

 

★開幕10日を切りましたが未だコンペティション部門の全作品発表に至っておりません。現在上映が決定されているダビ・トゥルエバの新作Casi 40のご紹介。本映画祭がワールドプレミアということで詳しい情報は入手できていませんが、トゥルエバのデビュー作La buena vida1996)出演のルシア・ヒメネス1978、セゴビアフェルナンド・ラマリョ1980、マドリードが主役ということです。二人とも監督同様本作で映画デビューしており、ちょっと話題になりそうです。La buena vida」はゴヤ賞1997新人監督賞・脚本賞にノミネートされた他、ラマリョも新人男優賞にノミネートされた。カルロヴィー・ヴァリー映画祭特別審査員賞、トゥリア賞(第1監督賞)を受賞した作品

 

 Casi 40 2018

製作:Buenavida Producciones / Perdidos G.C.

監督・脚本:ダビ・トゥルエバ

データ:製作国スペイン、スペイン語、2018年、マラガ映画祭2018コンペティション部門出品

キャスト:ルシア・ヒメネス、フェルナンド・ラマジョ、カロリナ・アフリカ、ビト・サンス

 

プロット:青春時代に友人だった二人の男と女の慎ましい物語が語られる。彼女は歌手として成功したが、もうステージからは降りている。彼は化粧品のセールスマンとしてなんとか暮らしているが、若いころの音楽への夢を再び活動させたいと思っている。演奏旅行をするために二人は再び集まることにする。

 

      

         (ルシア・ヒメネス、フェルナンド・ラマリョ、映画から)

 

    

          (左から、撮影中のルシア・ヒメネス、監督、フェルナンド・ラマリョ)

 

★詳しい情報が入手でき次第、追加する予定です。カロリナ・アフリカは脚本家でもあるが、フェルナンド・トゥルエバの「La reina de España」や『「ぼくの戦争」を探して』に出演している。ビト・サンスは前回アップしたマテオ・ヒルのオープニング作品「Las leyes de la termodinámica」の主役を演じている。

 

ダビ・トゥルエバDavid Trueba1969年マドリード生れ、監督、脚本家、俳優、小説家、ジャーナリスト(日刊紙「エル・パイス」や「エル・ムンド」紙)。マドリード・コンプルテンセ大学ジャーナリズム情報科学科卒業、フェルナンド・トゥルエバ監督は実兄。2013年のVivir es fácil con los ojos cerrados邦題『「ぼくの戦争」を探して』では、念願のゴヤ賞2014の作品・監督・脚本・主演男優・助演女優・オリジナル作曲賞の6冠を受賞した。以下で主なフィルモグラフィーを紹介しています。

Vivir es fácil con los ojos cerrados」内容紹介は、コチラ2014130

監督フィルモグラフィー紹介は、コチラ20141121

 

       

 ダビ・トゥルエバの主なフィルモグラフィー(短編・俳優は割愛)

1991 「Felicidades, AlbertiTV映画脚本

1992Amo tu cama rica」(脚本、監督はエミリオ・マルティネス=ラサロ)

1993El peor programa de la semanaTVシリーズ5)監督デビュー

1996 La buena vida監督・脚本、長編映画デビュー作)

2003 Soldados de Salamina」(オスカー賞2004スペイン代表作品、コペンハーゲン映画祭脚本賞、

  トゥリア賞受賞、ゴヤ賞ノミネーション)

2006Bienvenido a casa」(監督・脚本、マラガ映画祭監督賞受賞)

2006La silla de Fernando」(ドキュメンタリー)

2007Rafael Azcona, oficio de guionistaTVドキュメンタリー)、

2011Madrid, 1987」(主役のホセ・サクリスタンフォルケ賞男優賞受賞)

2013Vivir es fácil con los ojos cerrados『「ぼくの戦争」を探して』(2016年発売DVDタイトル)

2016Salir de casa

2018Casi 40」マラガ映画祭2018正式出品

 

脚本のみ参加作品は、フェルナンド・トゥルエバの『あなたに逢いたくて』(95)や『美しき虜』(98)、エミリオ・マルティネス=ラサロの『わが生涯最悪の年』(94)や、カルロス=ハビエル・バルデム兄弟が出演したアレックス・デ・ラ・イグレシアの『ペルディータ』(97メキシコとの合作、英語・西語)では、監督やホルヘ・ゲリカエチェバリアなどと共同執筆している。その他、初期には「オチョ・アペジード」で空前のヒット作を生み出したエミリオ・マルティネス=ラサロ監督とのコラボレーションが多く、なかで「Amo tu cama rica」にはハビエル・バルデムも出演、主役を演じたアリアドナ・ヒルと結婚したが後離婚、現在はそれぞれ別のパートナー、アリアドナは『アラトリステ』で共演したヴィゴ・モーテンセンと2009年に再婚している。彼女が主演した Soldados de Salamina」は、ハビエル・セルカスの同名小説の映画化、小説は『サラミスの兵士たち』の邦題で翻訳されている。上記したようにオスカー賞スペイン代表作品に選ばれたが落選した。

 

La silla de Fernando」は、監督、俳優として長きにわたって活躍、彼抜きでスペイン映画史は語れないという巨人フェルナンド・フェルナン=ゴメスの人生を語ったドキュメンタリー、本作は批評家から絶賛された。続くTVドキュメンタリー「Rafael Azcona, oficio de guionista」は、脚本の恩師であり、ダビ・トゥルエバのシナリオ作家としての才能を開花させたと言われる名脚本家ラファエル・アスコナの業績を辿った作品20082月に鬼籍入りしたが、現在でも「アスコナ亡き後の脚本は面白くなくなった」と惜しむアスコナ・ファンは多い


セクション・オフィシアル20作が発表*マラガ映画祭2018 ⑧2018年04月08日 11:53

           やっと映画祭の全体像が見えてきましたが・・・

 

    

44日に各セクションの審査員が発表になり、続いてセクション・オフィシアルの20作品(コンペティション外1作を含む)も姿を現しました。製作国スペインとその他イベロアメリカ諸国が半分ずつになりました。セクション・オフィシアルの審査員は、マリアノ・バロッソ(監督・スペイン映画アカデミー副会長)、マルタ・サンス(作家)、シルヴィ・インベール(メイクアップ・アーティスト、昨年リカルド・フランコ賞を受賞)、アウラ・ガリード(女優)、マナネ・ロドリゲス(監督)以上5名です。閉幕までにどれだけアップできるか分かりませんが、以下に作品名、監督、製作国を列挙しておきます。(ゴチック体は紹介作品、VOSEは字幕付き)

 

A voz do silencio (La voz del silencio) VOSE  監督 André Ristum アンドレ・リストゥム 

  1.   ブラジル、アルゼンチン

     

  1.    

  2. Ana de día 監督 Andrea Jaurrieta アンドレア・ハウリエタ スペイン 

     

  1.    

  2. Benzinho VOSE 監督 Gustavo Pizzi グスタボ・ピッツィ ブラジル、ウルグアイ

  3. *2018年04月30日

     

  1.    

  2. Casi 40 監督 David Trueba ダビ・トゥルエバ スペイン

    2018年04月04

     

  1.   

  2. El mundo es suyo 監督 Alfonso Sanchez アルフォンソ・サンチェス スペイン

     

  1.  

  2. Formentera Lady VOSE 監督 Pau Durá パウ・ドゥラ スペイン

  3. *2018年04月17日

     

  1.    

  2. Invisible 監督 Pablo Giorgelli アルゼンチン、ウルグアイ、ブラジル、独、仏

     

  1.   

  2. Las leyes de la termodinámica VOSE 監督 Mateo Gil マテオ・ヒル スペイン

    2018年04月02

     

  1.   

  2. Les distáncies (Las distansias) VOSE 監督 Elena Trape エレナ・トラぺ スペイン

  3. *2018年04月27日

     

  1.  

  2. Los Adioses 監督 Natalia Beristain ナタリア・ベリスタイン メキシコ

     

  1.  

  2. Los buenos demonios 監督 Gerardo Chijona ヘラルド・チホーナ

     

  1.  

  2. Memorias de un hombre en pijama (アニメーション)監督 Carlos Fernández de Vigo

    カルロス・フェルナンデス・デ・ビゴ スペイン

  3. *2018年4月15日

     

  1.   

  2. Mi querida cofradía 監督 Marta Díaz de Lope マルタ・ディアス・デ・ロペ スペイン

     

  1.   

  2. No dormirás 監督Gustavo Hernández グスタボ・エルナンデス アルゼンチン、西、ウルグアイ

  3. *2018年04月19日

     

  1.  

  2. Ojos de madera 監督 Roberto Súarez & Germán Tejeira

  3. ロベルト・スアレス&ヘルマン・テヘイラ  ウルグアイ、ベネズエラ、アルゼンチン

     

  1.  

  2. Sergio & Serguéi VOSE 監督Ernesto Daranas Serrano エルネスト・ダラナス・セラノ キューバ

    *2018年04月12日 

  3. 2018年公開が予定されています。

  4.     


  1. Sin Fin 監督 César Esteban Alenda & José Esteban Alenda

  2. セサル=ホセ・エステバン・アレンダ スペイン

  3. *2018年4月21日

     

  1.  

  2. The Queen of Fear (La reina del miedo) 監督 Valeria Bertuccelli & Fabiana Tiscornia 

    ヴァレリア・ベルトゥチェッリ&ファビアナ・ティスコルニア アルゼンチン、デンマーク

  3. *2018年04月10日

     

  1.  

  2. Violeta al fin 監督 Hilda Hidalgo イルダ・イダルゴ コスタリカ、メキシコ

  3.  

  1.  

      

    コンペティション外

  2. El mejor verano de mi vida 監督 Daniel de la Orden ダニエル・デ・ラ・オルデン スペイン

     

  1.  

    ★以上20作です。開幕は413日、オープニング作品はマテオ・ヒルの「Las leyes de la termodinámica」、結果発表は422日です。次回はヴァレリア・ベルトゥチェッリ&ファビアナ・ティスコルニアのデビュー作「La reina del miedo」を予定しています。


ヴァレリア・ベルトゥッチッリのデビュー作*マラガ映画祭2018 ⑨2018年04月10日 19:54

           女優ヴァレリア・ベルトゥッチッリが監督デビューしました!

 

    

★サンダンス映画祭2018でワールド・プレミアしたLa reina del miedoは、女優のヴァレリア・ベルトゥッチッリのデビュー作、共同監督のファビアナ・ティスコルニアはルクレシア・マルテルの「サルタ三部作」や最新作『サマ』、ルシア・プエンソの『フィッシュチャイルド』、パブロ・トラペロの『エル・クラン』などで長らく助監督を務めており、共にデビュー作です。主役も演じたヴァレリア・ベルトゥッチッリがサンダンスで演技賞を受賞したこともあって、既にアルゼンチンでは公開され、マラガでは414日上映予定です。

 

    

  (左から、共同監督ティスコルニアとベルトゥッチッリ、製作者マルセロ・ティネリィ)

 

La reina del miedoThe Queen of Fear2018

製作:Patagonik Film Group / Rei Cine / INCAA(以上アルゼンチン)/

     Snowglobe Films(デンマーク)

監督:ヴァレリア・ベルトゥッチッリ&ファビアナ・ティスコルニア

脚本:ヴァレリア・ベルトゥッチッリ

音楽:Vicentico

編集:ロサリオ・スアレス

撮影:マティアス・メサ

美術:マリエラ・リポダス

衣装デザイン:アンドレア・マッティオ

メイクアップ:マリサ・アメンタ、ネストル・ブルゴス

製作者:フアン・ロベセ(エグゼクティブ)、マルセロ・ティネリィ、フアン・ベラ、他多数

 

データ:製作国アルゼンチン=デンマーク、スペイン語、2018年、ドラマ、107分、撮影地ブエノスアイレス、配給ブエナ・ビスタ・インターナショナル、13歳以上、サンダンス映画祭2018「ワールド・シネマドラマ」正式出品、ヴァレリア・ベルトゥチェッリ演技賞(Mejor Actriz Dramatica)受賞、アルゼンチン公開322日、マラガ映画祭414日上映

 

キャスト:ヴァレリア・ベルトゥッチッリ(ロベルティナ、愛称ティナ)、ディエゴ・ベラスケス(ティナの親友リサンドロ)、ダリオ・グランディネッティ(ティナの別れた夫)、ガブリエルプマゴイティ、メルセデス・スカポラ、サリー・ロペス、Stine Primdahl、他

 

プロット:ロベルティナはアルゼンチンでは評価の高い舞台女優の一人である。キャリアを磨くための独り舞台が1ヵ月後に迫っている。しかしここ数日間プロとしての責任感に拘るあまり不安に取りつかれ集中できない。リハーサルどころか準備もままならないでいる。リハーサルを避け、アシスタントたちとの意見にも耳を貸さず、誰かが自分を追けまわしていると確信するようになる。次第にティナは、馬鹿げた病的恐怖と家庭内のごたごたを一緒くたにした世界に没入していく。折しもデンマークにいる親友リサンドロが重い病に伏していると聞くと、彼を看病するために馳せつけようとすべてをなげうつ。初日が近づくにつれティナは、すべての時間を、彼女自らをも避けていたことに気づく。

 

★タイトルぴったりの心的恐怖が語られるようです。ティナは離婚した夫と対立している。この夫にアルモドバル映画でお馴染みになったダリオ・グランディネッティが扮する。今はデンマークで暮らしている親友リサンドロの健康状態もかなり悪い。批評家からはディエゴ・ベラスケスの演技が好感されているようだ。彼はルシア・プエンソの『フィッシュチャイルド―ある湖の伝説』でエル・バスコを演じた俳優、『人生スイッチ』の第2話、未公開だが軍事独裁時代の恐怖を描いたLa larga noche de Francisco Sanctis16、アンドレア・テスタ&フランシスコ・マルケス)では主人公のフランシスコを演じている。面白いのはどちらかというとコメディを得意とするコミカルな役が多い早口のベルトゥッチッリがティナのような役柄を演ずるところでしょうか。

 

     

              (ティナとリサンドロ、映画から)

 

ヴァレリア・ベルトゥッチッリ1969年サン・ニコラス、ブエノスアイレス州生れ、女優、監督。14歳のとき家族と首都に転居、短期間オーストラリアやコルドバ(アルゼンチン)で暮らす。女優としての第一歩はParakulturalというアンダーグラウンド劇場出演、続いてサン・マルティン将軍劇場、セルバンテス・ナショナル劇場に出演する。映画デビューは以下のフィルモグラフィーを参照、テレビ出演多数。アルゼンチンの主要な映画賞、シルバー・コンドル賞、クラリン賞、スール賞などを受賞しているほか、物言う女優としても有名。「世の中はあらゆる不平等がまかり通っているが、私たちは前に進まねばならない。不平等に反対する姿を息子たちに見せておきたい」とも。初監督は「想像した通りで、最初の1週間は特にきつかったが、やり方を飲み込むと何とかなった。クルーのお蔭です」と、プロデューサーの一人マルセロ・ティネリィの支えを挙げた。

 

    

       (舞台女優ロベルティナに扮したヴァレリア・ベルトゥッチッリ)

 

★デビュー作1000 Boomerangos95、マリアノ・ガルペリン)で共演したシンガー・ソングライターのガブリエル・フリオ・フェルナンデス・カペリョVicentico1994年結婚、息子が2人いる。未だに相思相愛の仲と長続きしている。勿論、本作の音楽は彼が手掛けている。長続きの秘訣は分からないが「時間があっという間に経って、24年間過ぎたとは思えないけれど、これからも続くと思うよ」と「ラ・ナシオン」紙に語っている。共演の多いリカルド・ダリンの一家とは家族ぐるみの付き合いだそうです。

 

      

          (左から、Vicentico、ヴァレリアとリカルド・ダリン)

  

     *キャリア&主なフィルモグラフィー

1995 1000 Boomerangos監督マリアノ・ガルペリン(共演Vicentico)コメディ

1999 Silvia Prieto  監督マルティン・Rejtman(共演Vicentico)コメディ

1999 Alma mía 監督ダニエル・バロネ、銀のコンドル新人女優賞、コメディ

2004 Luna de Avellaneda  監督フアン・ホセ・カンパネラ

  (共演リカルド・ダリン、エドゥアルド・ブランコ、メルセデス・モラン)

2006 Mientras tanto  監督ディエゴ・レルマン、銀のコンドル主演女優賞クラリン女優賞

2007 XXY  監督ルシア・プエンソ(共演リカルド・ダリン)クラリン助演女優賞

2008 Lluvia  監督パウラ・エルナンデス(共演エルネスト・アルテリオ)

   ウエルバ・イベロアメリカ映画祭女優賞

2008 Un novio para mi mujer  監督フアン・タラトゥラ、スール賞女優賞

2012 La suerte en sus manos  監督ダニエル・ブルマン、コメディ

2013 Pensé que iba a haber fiesta  監督ビクトリア・ガラルディ(共演エレナ・アナヤ)コメディ

2013 Vino Para robar  監督アリエル・Winograd(共演ダニエル・エンディエール、

   パブロ・ラゴ

2016 Me casé con un boludo  監督フアン・タラトゥラ(共演Vicentico

2018 La reina del miedo 監督ほか省略

ノミネーションは省略。

 

    

     (Vicentico の新アルバム「Ultimo acto」をデュエットする二人、2015年)

 

  

★共同監督ファビアナ・ティスコルニアは、本作がデビュー作であるが、長らくルクレシア・マルテルの助監督として活躍、業界ではよく知られた存在である。上記以外で話題になった作品を列挙すると、フアン・ホセ・カンパネラのEl hijo de la novia」(01)、アドルフォ・アリスタラインのLugares comunes02)、エドゥアルド・MignognaEl viento05)、マルセロ・ピニェイロの『木曜日の未亡人たち』09)、カルロス・ソリンのEl gato desaparece11)やDías de pesca12)、パブロ・トラペロの『ホワイト・エレファント』12)など、アルゼンチンを代表する監督たちとタッグをくんでいる。因みにルクレシア・マルテルの「サルタ三部作」というのは、監督の生地サルタ州を舞台にした『沼地という名の町』01)、『ラ・ニーニャ・サンタ』04)、『頭のない女』08)の3作です。他にナタリア・メタのMuerte en Buenos Aires14、ラテンビート上映邦題『ブエノスアイレスの殺人』)をプロデュースしている。

 

    

        (マルテルの『サマ』撮影中のファビアナ・ティスコルニア)

 

『サマ』の紹介記事は、コチラ201710131020

『フィッシュチャイルド―ある湖の伝説』の紹介記事は、コチラ20131011

『エル・クラン』の紹介記事は、コチラ20161113

『ブエノスアイレスの殺人』の紹介記事は、コチラ20141101

La larga noche de Francisco Sanctis」の紹介記事は、コチラ20160511


キューバからエルネスト・ダラナスの新作*マラガ映画祭2018 ⑩2018年04月12日 15:40

      『ビヘイビア』のエルネスト・ダラナスがマラガに戻ってきました!

 

     

エルネスト・ダラナスの『ビヘイビア』のオリジナル・タイトルはConducta14)、邦題は埼玉県で開催される「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2015」上映時に付けられたもので、グランプリ観客賞を受賞しました。本作は第17回マラガ映画祭2014のラテンアメリカ部門のグランプリでした。当時はスペインとラテンアメリカ諸国に大別されており、作品賞・監督賞、主役のアリーナ・ロドリゲスが女優賞受賞など大賞を独占した映画でした。今回ノミネートされた第4作目Sergio & Serguéiは、トロント映画祭2017でワールド・プレミアされ、既に釜山映画祭2017正式出品、ロン・パールマンも来ハバナしたハバナ映画祭2017、マイアミ映画祭2018正式出品(Knight Competition Grand Jury部門)、トゥールーズ映画祭2018などで上映されています。

 

Sergio & Serguéi

製作:Mediapro / RTV Comercial (キューバ) / ICAIC / Wing and a Prayer Pictures

監督:エルネスト・ダラナス・セラノ

脚本:エルネスト・ダラナス・セラノ、マルタ・ダラナス・セラノ

撮影:アレハンドロ・メネンデス

音楽:ミカ・ルナ

編集;ホルヘ・ミゲル・ケベド

美術:マイケル・マルティネス、ライア・コレト

衣装デザイン:アンナ・グエル、Yanelys Pérez

メイクアップ:ナタリア・アルベルト、Meilyn Ng de la Nuez

視覚効果:フェラン・ピケル、ホルヘ・セスペデス

録音:ホルヘ・マリン

製作者:(エグゼクティブ)ハビエル・メンデス、ロン・パールマン、ガブリエル・ベリスタイン、ダニロ・レオン、アドリアナ・モヤ、(プロデューサー)オマル・オラサバル・ロドリゲス、ラモン・サマダ

  

データ:製作国スペイン=キューバ=米、スペイン語・英語・ロシア語、2017年、ドラマ、89分、配給BTEAM Pictures、キューバ公開20181

映画祭・受賞歴:トロント映画祭201798日)、釜山映画祭20171013日)正式出品、ハバナ映画祭2017ACAVキューバ視聴覚組合賞、エルネスト・ダラナスがステンドグラス賞)、マイアミ映画祭2018Knight Competition Grand Jury部門」(3月)正式出品、トゥールーズ映画祭2018(観客賞)、マラガ映画祭(415日)

 

キャスト:トマス・カオ(セルヒオ・コリエリ)、エクトル・ノアス(セルゲイ)、ロン・パールマン(ピーター)、ジュリエト・クルス(リア)、マリオ・ゲーラ(ラミロ)、アナ・グロリア・ブドゥエン(カリダード)、カミラ・アルテチェ(パウラ)、アルマンド・ミゲル・ゴメス(ウリセス)、イダルミス・ガルシア(ソニア)、ローランド・ライヤーハノフ(イゴール)、アイリン・デ・ラ・カリダード・ロドリゲス(セルヒオの娘マリアナ)、ルイス・マヌエル・アルバレス(トマス)、A.J.バックリー(ホール刑事)他

       

        

      (主要登場人物、ロン・パールマン、トマス・カオ、エクトル・ノアス)

  

プロット1991年キューバ、旧ソビエト連邦が崩壊すると、キューバは経済危機に突入した。セルヒオはアマチュア無線家のマルクス主義の教師だが、さてこれから先、自分の人生を転換し、家族を養うには何を為すべきかが皆目分からない。一方、故障したソ連邦最後の宇宙飛行士セルゲイは、有人宇宙ステーション「ミール」のなかで、半ば忘れられた存在になっていた。セルヒオとセルゲイは無線装備のお蔭で出会い連絡し合ううちに、やがて二人の間に友情が生れる。二人はそれぞれの国家で起こるであろう劇的変化に互いに助け合うことになる。国境を越えた友情の物語。

 

         

            (1991年、キューバ、映画から)

 

★物語からはロン・パールマン演じるピーターがどう絡んでくるのかさっぱり分からないし、国境を越えた友情物語では平凡すぎて、ドラマとしてのひねりが感じられない。しかしパールマンの映画祭開催中の来マラガがアナウンスされているからファンは待ち遠しいでしょう。テレビ版『美女と野獣』でゴールデン・グローブ賞を受賞しているが、なんといっても忘れられないのがギレルモ・デル・トロの『ヘルボーイ』です。デル・トロ監督も来訪が予定されているようです。他にフアン・アントニオ・バヨナとか、観光客が増えてくる時期だけにマラガもいよいよお祭りムードになってきたようです。

 

   

(打合せ中の撮影監督アレハンドロ・メネンデス、中央エルネスト・ダラナス監督、パールマン)

 

★キャスト陣もキューバ、スペイン、アメリカ、ロシアと国際色豊かです。ソ連崩壊後、援助を打ち切られたキューバの90年代前半は、まるで石器時代に戻ったかのようなナイナイ尽くしだった。現在は当時より少しは暮らし向きがよくなっていると思いたい。昨年のマラガ映画祭では、フェルナンド・ぺレスの「Ultimos días en La Habana1作だけでしたが、今年は本作以外にヘラルド・チホーナの新作もノミネートされています。いずれアップしたい。   

 

   

(前列左から、パウラ、ウリセス、マリアナ、後列左から、リア、ラミロ、カリダード)

 

   

(親子を演じたトマス・カオとアイリン・デ・ラ・カリダード・ロドリゲス、映画から)

 

監督キャリア&フィルモグラフィー

エルネスト・ダラナス・セラノErnesto Daranas Serrano は、1961年ハバナ生れ、監督、脚本家。監督デビューは短編ドキュメンタリーLos últimos gaiteros de La Habana0426分)、スペイン国王ジャーナリズム国際賞を受賞、長編第2Los dioses rotos08、ラテンビート邦題『壊れた神々』)は、ハバナ映画祭2008観客賞、2008年度最優秀映画に選ばれ、オスカー賞キューバ代表作品になった。第3作が上述したConducta『ビヘイビア』14)です。マラガ映画祭上映後、世界各地の映画祭、例えばトロント、ボゴタ(作品賞)、釜山、ハイファ、ハバナ(作品賞)、ウエルバ(ラビダ賞)、パームスペリングス、ポートランド(観客賞)などを巡った。本作もオスカー賞キューバ代表作品に選ばれている。「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2015」上映後に主役のアリーナ・ロドリゲスが癌に倒れてしまった(享年63歳)。

 

         

              (エルネスト・ダラナス・セラノ)

   

        

                (『ビヘイビア』のポスター

*追記『セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー!の邦題で2018年12月01日公開になります。

パコ・ロカのコミックのアニメーション*マラガ映画祭2018 ⑪2018年04月15日 15:44

       ビデオゲーム作家カルロス・フェルフェルが映画に戻ってきた!

 

    

★カンヌ映画祭2018のコンペティション部門と「ある視点」のノミネーションが発表になりました。まだ全部ではないようですがよく見る顔と初めての顔とが入り混じっています。この時期は、例年ならマラガは終了していたのですが、今年はオープニングしたばかりです。オープニング作品マテオ・ヒルの新作「Las leyes de la termodinamica」の批評も出ました。これから紹介するカルロス・フェルナンデス・デ・ビゴ(カルロス・フェルフェル)のアニメーションMemorias de un hombre en pijamaも既に上映されました。実際はアニメ部分80%、実写部分20%、ということでキャスト紹介はヴォイスになっておりません。

 

    

        (カルロス・フェルナンデス・デ・ビゴ、マラガ映画祭にて)

 

 Memorias de un hombre en pijama」 2018

製作:Dream Team Concept / Ezaro Films / Hampa Studio / Movistar/ TVE 他多数

監督:カルロス・フェルナンデス・デ・ビゴ

脚本:パコ・ロカ、アンヘル・デ・ラ・クルス、ディアナ・ロペス・バレラ

撮影:マルコス・ガルシア・カベサ

音楽:Love of Lesbian

編集:エレナ・ルイス

視覚効果:マルコス・ガルシア・カベサ、モイセス・レハノ・アルホナ

アニメーション監督:ロレナ・アレス

製作者:マリア・アロチェ(エグゼクティブ)、アンヘル・デ・ラ・クルス、マヌエル・クリストバル、ジョルディ・メンディエタ、アレックス・セルバンテス

 

データ:製作国スペイン、スペイン語、2018年、アニメーション+ 実写、74分、コメディ・コミック、マラガ映画祭2018正式出品(上映414日)

 

キャスト:ラウル・アレバロ(パコ)、マリア・カストロ(ヒルゲロ)、マヌエル・マンキーニャ(メッセンジャー)、サンティ・バルメス(エスコルピオ)、フリアン・サルダリアガ(タウロ)、ジョルディ・ブルネト、タチョ・ゴンサレス、エレナ・S・サンチェス

 

プロット40代の独身男性パコの物語。子供のときからの夢を手に入れ充実した人生を送っている。つまりパジャマを着たまま家でずっと仕事をして、まさに幸福感を満喫していた。ところがまったく予期せぬことが出来してしまった。ヒルゲロに出会い恋してしまったのだ。カップルが直面せざるを得ない日々の困難が語られる。パコは相変わらずパジャマを手放そうとはせず、家の中に留まることの正当性を主張する。二人の友人たちの忠告や彼らの人生を織り交ぜながら、物語はコミカルな色合いのなかで進んでいくことになる。

 

     

             (パコ役、アニメと実写のラウル・アレバロ) 

 

★本作はパコ・ロカ(フランシスコ・ホセ・マルティネス・ロカ、1969年バレンシア生れのコミック作家)原作のコミックの映画化です。20年以上のキャリアをもつ、スペインを代表する漫画家。パコ・ロカは2007年のArrugasが国際的にも大成功をおさめ、日本でも『皺』の邦題で翻訳刊行(ShoPro Book20117月刊)された。20122月に来日、セルバンテス文化センターで講演会が持たれました。映画化の邦題は『しわ』となり、イグナシオ・フェレーラス監督も翌年6月の劇場公開時に来日していたはずです。今回映画化されたMemorias de un hombre en pijama」のコミック版は2011年刊、既に映画化が決定していたから完成の道のりは長かった。

 

        

              (パコ・ロカと原作コミック)

 

★脚本の共同執筆者アンヘル・デ・ラ・クルスは『しわ』でもタッグを組んでいる。ウェンセスラオ・フェルナンデス・フローレスの同名小説「El bosque animado」をアニメ化(2001)した監督、脚本家、アニメの脚本を多数手掛けている実力者です。この小説は1987ホセ・ルイス・クエルダがアルフレッド・ランダを主役にして既に映画化しており、『にぎやかな森』の邦題で第2回スペイン映画祭上映後公開されています。ディアナ・ロペス・バレラはクレジットされておりませんが、同じように参加していたようです。製作者マヌエル・クリストバルも『しわ』El bosque animado参加組の一人です。

 

      

               (日本版『しわ』のDVDポスター)

   

 監督キャリア&フィルモグラフィー

カルロス・フェルナンデス・デ・ビゴ(カルロス・フェルナンデス・フェルナンデス)は、ビデオゲーム作家、監督、脚本家、製作者。ニックネーム、カルロス・フェルフェル(IMDb)、カルロス・F・ビダルなど、幾つもの名前がある。ビゴ大学卒。ガリシアのビゴ出身から本作ではカルロス・フェルナンデス・デ・ビゴでクレジットされている。アニメーション2D/3Dのキャリアは20数年になり、2012年ビデオゲームFireplacing(ニンテンドーWii)や2014Zombeer(ソニー・プレイステーション3)などがある。監督は主演者ラウル・アレバロともどもマラガ入りしており、上映後のプレス会見も済んだようです。

 

      

             (上映後のプレス会見、中央が監督、右端がラウル・アレバロ)

 

2013年短編アニメーション3DMortiを撮る。長編アニメはMemorias de un hombre en pijamaが初となる。これからの予定としてSFアクションTesla 3327SFホラーSkizoがアナウンスされています。毎年6月にフランスで開催される「アヌシー国際アニメーション映画祭2018」に出品されます。それに先立ってカンヌ映画祭のフィルム・マーケットのなかの「Goes to Cannes」で519日に一部分の上映が決定したようで、宣伝効果が期待されます。この映画祭では宮崎駿の『紅の豚』や、ついこのあいだ鬼籍入りした高畑勲の『平成狸合戦ぽんぽこ』、昨年は湯浅正明の『夜明け告げるルーのうた』がグランプリを受賞している世界最大のアニメーション映画祭です。 

     

                       (短編アニメーションMorti」のポスター

  

第21回マラガ映画祭2018*最新フォト ①2018年04月15日 17:49

         

413日、マラガ市のセルバンテス劇場で開幕されました。入手できた写真をお届けします。

 

  

         (赤絨毯が敷きつめられたセルバンテス劇場前)

 

  

(オープニング上映となったマテオ・ヒルの「Las leyes de la termodinámica」面々)

 

   

(マラガ-スール賞のトロフィーを手にしたギレルモ・デル・トロ、左はキューバ映画

Sergio & Serguéi」出演のロン・パールマン、ゴヤ賞2018栄誉賞受賞者のマリサ・パレデス)

 

   

(海沿いのアントニオ・マチャード遊歩道に建てられた記念碑前のギレルモ・デル・トロ、

 大賞マラガ-スール賞受賞者が建てて貰える)

 

  

(アルゼンチンから到着した「La reina del miedo」の監督ヴァレリア・ベルトゥチェッリ)

  

俳優パウ・ドゥラの監督デビュー作*マラガ映画祭2018 ⑫2018年04月17日 13:18

      ホセ・サクリスタンが自由を求めて生きる老いたヒッピーを演じる

   

   

パウ・ドゥラは、アルゼンチンの「La reina del miedo」を初監督したヴァレリア・ベルトゥチェッリ同様、俳優としてのキャリアが長い。デビュー作Formentera Ladyは、名優ホセ・サクリスタンを主人公にして70年代からヒッピーとしてフォルメンテラ島で暮らしている老人サムエルの物語。タイトルのFormentera は、地中海のバレアレス諸島の一つフォルメンテラ島のことで、渡航ルートは、1999年世界遺産に登録されたイビサ島からだけという不便な島です。イビサ島から大型フェリーが出ていて日帰りで楽しめるが、観光地としては美しいビーチがある以外何もないようです。

 

  「Formentera Lady2018

製作:Fosca Films / Good Machine Films / Sunrise Picture / La Periferica Produccions

監督・脚本:パウ・ドゥラ

撮影:ミゲル・リョレンス

音楽:ジョアン・アラベドラ

編集:ルカス・ノリャ

衣装デザイン:クリスティナ・マルティン

メイクアップ&ヘアー:ビセン・ベティ、フィナ・エスペルト

製作者:ラミロ・アセロ、ダビ・シウラナ、ナチョ・テヘドル、(アシスタント)クルス・ロドリゲス

 

データ:製作国スペイン、スペイン語、2018年、コメディ・ドラマ、85分、撮影地フォルメンテラ島、バレンシア、バルセロナなど。マラガ映画祭2018正式出品VOSE上映416日、スペイン公開629

 

キャスト:ホセ・サクリスタン(サムエル)、サンドロ・バリャステロス(サムエル孫マルク)、ノラ・ナバス(サムエル娘アンナ)、ジョルディ・サンチェス(トニ)、フェラン・ラニェ(ジョアン)、ペパ・フアン(グレタ)、ミレイア・ロス(マリサ)、フリ・ミラ(パコ)、トニ・ミソ(サンティ)、ヌリア・メンシア、パウ・ドゥラ、他

 

物語1970年代にヒッピーだったサムエルは、フォルメンテラにやってきて以来、そこへ住み着いてしまった。浜辺の家には電気がなく、賭博場でバンジョーを弾いて暮らしを立てている。ある日のこと、娘のアンナと孫のマルクが訪ねてくる。娘はしばらく前から失業していたが、フランスで仕事が見つかり引き受けることにしたが、一人が条件だという。老いたヒッピーは最初拒絶するが、娘は助けてくれるよう懇願する。意志の弱い風変わりなヒッピーもほだされ、孫を預かろうと決心する。しかし、それは彼をどこか陰のある過去へ連れ戻す。黄昏への旅になるだろうが、それは期待にふくらむ未知への遭遇であるかもしれない。

 

     

           (サムエルとアンナ、後ろ姿がマルク、映画から)

 

★タイトルの「Formentera Lady」は、1971年に発売されたキング・クリムゾンのアルバムからとられたようです。サムエル役のホセ・サクリスタン1937、チンチョン)は、マラガ映画祭2014レトロスペクティブ賞受賞者、今年の「金の映画」に選ばれたペドロ・オレアUn hombre llamado Flor de Otoñoの主人公を演じている。カルロス・ベルムトの『マジカル・ガール』(14)公開で、日本でも遅ればせながら知名度を挙げました。娘役ノラ・ナバスは、ビリャロンガの『ブラック・ブレッド』の母親役、ガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーンの『笑う故郷』(「名誉市民」)では、ノーベル賞作家の秘書を演じていた。二人ともゴヤ賞主演男優賞、女優賞の受賞者です。孫役のサンドロ・バリャステロスは、TVシリーズ出演の経験はあるが、長編映画は本作が初めてである。 

ホセ・サクリスタン紹介記事は、コチラ⇒2016年04月22日

 

      

                     (サムエル役ホセ・サクリスタン、映画から)

 

     

 (マルク役サンドロ・バリャステロス、映画から)

 

パウ・ドゥラは、1972年バレンシアのアルコイ生れ、俳優、監督、脚本家、製作者。短編デビュー作「Praeludium」(09)、「El hombre」(11)、「L'audífon」(13)、「El cerdo」(15)のほか、TV映画「Tocant el mar」(12)を撮る。俳優デビューは1994TVシリーズ、映画はアグスティ・ビラのコメディ「Un hombre en el parque」(99)、セスク・ゲイ「Krámpack」(00、『ニコとダニ』)、マヌエル・ウエルガ『サルバドールの朝』(06)、昨年のマラガに正式出品されたリノ・エスカレラ「No sé decir adiós」など多数。TVシリーズ出演が多い。最近では舞台演出も手掛けている。

 

     

416日の上映後のプレス会見では「無条件の自由を求めて生きている男の物語ですが、現実的にはありえません。しかし、この島には今でも70年代から住みついているヒッピーがいます」と監督、サムエルがバンジョーを演奏する賭場がいくつかあるようです。自分の信念を曲げないで生きている人物を描くのに遅すぎるということはない。高齢ながらどこかに少年の心をもつホセ・サクリスタンは「映画に登場するのは男たちだが、非常に女らしい物語です。だから少年は家庭とか家族とかを結ぶ懸け橋の象徴でもある」とサクリスタン。「偉大な俳優と一緒の映画に出られて感激」とサンドロ。観客を魅了できたでしょうか。

 

     

       (サンドロ、監督、サクリスタン、上映後のプレス会見、416日)


第21回マラガ映画祭2018*最新フォト ②2018年04月18日 16:18

        「自惚れでアーティストと思っています」とパコ・デルガド

 

         

415日、特別賞の一つリカルド・フランコ-マラガ映画祭アカデミー賞の授賞式がありました。この賞は主に技術面で活躍しているシネアストに贈られる賞。今年の受賞者は衣装デザイナーのパコ・デルガド、昨年の受賞者メイクアップアーティストのシルヴィ・インベールもお祝いに馳せつけました。他にもマリサ・パルデスナタリア・ベルベケソニア・イスラホルヘ・カルボ、その他マリベル・ベルドゥはお祝いのメッセージをビデオで送ってきました。

  

  

    (ジャスミンの花束を象ったトロフィーを手にしたパコ・デルガド)

 

★パコ・デルガドの受賞スピーチは「私のしていることは職人仕事と言われていますが、自惚れでアーティストと思っています。・・・この賞がカメラの背後で仕事をしている人々に与えられるというのは素晴らしいことです」と。登壇した女優さんたちからも、それぞれ感謝のスピーチを受けたようです。

パコ・デルガドの紹介記事は、コチラ20180328

 

      

           (シルヴィ・インベールやパレデスの姿も・・・)

 

      「ハリウッドは五つ星ホテル、スペイン映画は我が家」とJ. A. バヨナ

 

415日夜、レトロスペクティブ-マラガ・オイ賞の授賞式もありました。J. A. バヨナ「ハリウッドで映画を制作することが一つの夢だった。ハリウッドは五つ星ホテルにいるような感じでしたが、スペインでの映画は我が家のように感じます」と挨拶、「映画を作ることを夢見ているすべての人々に、この賞を捧げたい」とスピーチした。バヨナはマラガ映画祭には縁がないと思っていましたが、1999年の短編デビュー作「Mis vacaciones」は、始まったばかりのマラガ映画祭で上映されたらしく、本賞受賞で再びマラガに戻ってきたことになるようです。

 

   

         (ベレン・ルエダとフアン・アントニオ・バヨナ)

 

★お祝いに駆けつけたのは長編第1作『永遠のこどもたち』のヒロイン、ベレン・ルエダ、バヨナの「母子三部作」すべての製作に携わったプロデューサーのベレン・アティエンササンドラ・エルミダ、『インポッシブル』のモデルになったバルセロナの医師マリア・ベロン、プレゼンターは女優で監督のレティシア・ドレラでした。バヨナは「望めば独立して映画を作れること」をみんなに証明してくれた。「我々には才能があり余っている」のだからと、スペイン映画の限界に対する全ての先入観を打ち砕いてくれたのがバヨナだったとレティシア・ドレラはスピーチした。一方、ベレン・ルエダはバヨナの作品に対する思いの強さ、「印象的なやり方で作品への愛情を伝播させ、それをチーム全体に広げてしまう」と語った。

フアン・アントニオ・バヨナの紹介記事は、コチラ20180324

  

   

(バヨナの右から、レティシア・ドレラ、ベレン・ルエダ、二人の製作者とマリア・ベロン)

グスタボ・エルナンデスの「No dormirás」*マラガ映画祭2018 ⑬2018年04月19日 21:08

          ウルグアイの監督グスタボ・エルナンデスのサイコ・スリラー

 

  

★映画祭も後半に入りラテンアメリカからもベテラン、新人シネアストの来マラガで賑わっている。グスタボ・エルナンデスの長編第3No dormirás(「You Shall Not Sleep」)は415日に上映され、主役の一人ベレン・ルエダがプレス会見でテーマについて語りました。監督本人は来マラガしていないようでした。本作は製作国のアルゼンチン、ウルグアイほかブラジルで既に公開されているという珍しいケースです。観客のツイートでは「ホラーでもないし、スリラーでもない」というのが散見していますが、ベレン・ルエダのコメントからそれが最重要テーマでないことが分かりました。

 

 No dormirás(「You Shall Not Sleep」)2018

製作:Pampa Films / FilmSharks International(アルゼンチン)/ Tandem Films(西)/

    Mother Superior(ウルグアイ)、INCAA / ICAA他多数、

監督:グスタボ・エルナンデス

脚本:Juma Fodde

撮影:ギジェルモ・ニエト

音楽:アルフォンソ・ゴンサレス・アギラル

編集:パブロ・スマラーガ

美術:マルセラ・バッサノ

製作者:マルタ・エステバン、クリスティナ・スマラーガ、Guido Rud(以上エグゼクティブ)、アグスティン・ボッシ、パブロ・ボッシ、イグナシオ・ククコヴィッチ、他

 

データ:製作国アルゼンチン=ウルグアイ=スペイン、スペイン語、2018年、ホラー、サイコ・スリラー、106分、撮影地ブエノスアイレス、カナリア諸島ラス・パルマス。マラガ映画祭2018正式出品415日上映、アルゼンチン及びウルグアイ111日同時公開、ブラジル218日、16歳以上。

 

キャスト:エバ・デ・ドミニシ(ビアンカ)、ベレン・ルエダ(アルマ・ベームAlma Bühm)、ナタリア・デ・モリーナ(セシリア)、ヘルマン・パラシオス(作家)、フアン・マヌエル・ギレラ(フォンソ)、エウヘニア・トバル(サラ)、スサナ・オルノス(ドラ)、マリアノ・Smolarczuk(新聞記者)、他

 

プロット1984年、今では廃屋になっている精神科病院、そこで前衛的な演劇グループが20年前に患者のグループによって創作された作品の舞台化の準備のために不眠症を体験している。数日間眠らないことで知覚の限界に達すると、活力や隠されていた過去に向き合うことになった。有望な女優と目されるビアンカは、主役抜擢を願って参加していた。それは仕事や他の仲間たちへの強い思い入れだけでなく、ビアンカや仲間たちを駆り立てていた未知の力が、彼らを悲劇的な結末へと引き寄せていく。

 

★ストーリーは、前衛的な演劇グループの極端な製作過程と立派だが打ち捨てられた屋敷という要素を組み合わせて進行していくが、恐怖や精神的インパクトはそれほど多くないようだ。力点は登場人物の心理状態に置かれているから、恐怖目的のホラー・ファンには物足らないのかもしれない。ベレン・ルエダがプレス会見で「ホラーが基本的なテーマではない。しかし人物のシチュエーションが観客をそこへ誘い込む。恐怖するための恐怖を求める映画ではなく、現実と私たちの頭の中で起こることの相関関係が描かれている」と語ったように、求めているものに隔たりがあるようです。 

   

       (上映後のプレス会見、中央がベレン・ルエダ、415日)

 

ベレン・ルエダは脚本家アルマ・ベームを演じる。傷つきやすさや感受性を高めるために、出演者に数日間睡眠をとらない不眠症体験をさせる、神秘的で残酷な性格の役柄。スペインから参加したナタリア・デ・モリーナは、ビアンカの仲間の一人セシリア役になる。今回コンペティション部門で金のビスナガ作品賞を競うダビ・トゥルエバ『「ぼくの戦争」を探して』でゴヤ賞2014助演女優賞を受賞したほか、マラガ映画祭2015ではフアン・ミゲル・カスティージョTecho y comidaのシングル・マザー役で女優賞、翌年のゴヤ賞では主演女優賞まで受賞してしまった強運の持ち主、スペイン若手ホープの一人。

 

  

                       (ベレン・ルエダ、マラガ映画祭にて)

 

   

       (エバ・デ・ドミニシとナタリア・デ・モリーナ、映画から)

 

★主役のビアンカ役は、アルゼンチンのエバ・デ・ドミニシ(ドミニチか)、1995年ブエノスアイレス生れ。本作では娘は親の支配下にあるべきという、父親からのトラウマと暴力から逃れ、生き残るために舞台女優として自立したい女性を演じた。モデル出身だが2006年からTVシリーズで活躍、エルナン・ベロンSangre en la boca16)でレオナルド・スバラグリアとタッグを組み女性ボクサーを演じた。本作出演後もオファーが目白押し、来年公開の「Bad Water」でアメリカ映画にも進出することになった。

 

             

 (エバ・デ・ドミニシ、映画から)

 

  グスタボ・エルナンデスのキャリア&フィルモグラフィー

グスタボ・エルナンデス、ウルグアイの監督、脚本家、製作者。長編デビュー作La casa muda10)は、カンヌ映画祭と併催される「監督週間」に正式出品された後、国際映画祭でも上映された。翌年ハリウッドでクリス・ケンティス&ローラ・ラウ監督によって「Silent House」としてリメイクされ、日本でも『サイレント・ハウス』の邦題で公開されたホラー・スリラー、エルナンデス監督は脚本を共同執筆した。第2作目はDios local14)は、シッチェス映画祭、ファンタスティックフェスト、リオデジャネイロ映画祭、プチョン市の韓国ファンタジー映画祭などで上映された。第3作目が「No dormirás」です。

 

   

    (「No dormirás」公開時、インタビューを受けるグスタボ・エルナンデス)

 

        

             (デビュー作「La casa muda」のポスター)