俳優パウ・ドゥラの監督デビュー作*マラガ映画祭2018 ⑫ ― 2018年04月17日 13:18
ホセ・サクリスタンが自由を求めて生きる老いたヒッピーを演じる
★パウ・ドゥラは、アルゼンチンの「La reina del miedo」を初監督したヴァレリア・ベルトゥチェッリ同様、俳優としてのキャリアが長い。デビュー作「Formentera Lady」は、名優ホセ・サクリスタンを主人公にして70年代からヒッピーとしてフォルメンテラ島で暮らしている老人サムエルの物語。タイトルのFormentera は、地中海のバレアレス諸島の一つフォルメンテラ島のことで、渡航ルートは、1999年世界遺産に登録されたイビサ島からだけという不便な島です。イビサ島から大型フェリーが出ていて日帰りで楽しめるが、観光地としては美しいビーチがある以外何もないようです。
「Formentera Lady」2018
製作:Fosca Films / Good Machine Films / Sunrise Picture / La Periferica Produccions 他
監督・脚本:パウ・ドゥラ
撮影:ミゲル・リョレンス
音楽:ジョアン・アラベドラ
編集:ルカス・ノリャ
衣装デザイン:クリスティナ・マルティン
メイクアップ&ヘアー:ビセン・ベティ、フィナ・エスペルト
製作者:ラミロ・アセロ、ダビ・シウラナ、ナチョ・テヘドル、(アシスタント)クルス・ロドリゲス
データ:製作国スペイン、スペイン語、2018年、コメディ・ドラマ、85分、撮影地フォルメンテラ島、バレンシア、バルセロナなど。マラガ映画祭2018正式出品VOSE上映4月16日、スペイン公開6月29日
キャスト:ホセ・サクリスタン(サムエル)、サンドロ・バリャステロス(サムエル孫マルク)、ノラ・ナバス(サムエル娘アンナ)、ジョルディ・サンチェス(トニ)、フェラン・ラニェ(ジョアン)、ペパ・フアン(グレタ)、ミレイア・ロス(マリサ)、フリ・ミラ(パコ)、トニ・ミソ(サンティ)、ヌリア・メンシア、パウ・ドゥラ、他
物語:1970年代にヒッピーだったサムエルは、フォルメンテラにやってきて以来、そこへ住み着いてしまった。浜辺の家には電気がなく、賭博場でバンジョーを弾いて暮らしを立てている。ある日のこと、娘のアンナと孫のマルクが訪ねてくる。娘はしばらく前から失業していたが、フランスで仕事が見つかり引き受けることにしたが、一人が条件だという。老いたヒッピーは最初拒絶するが、娘は助けてくれるよう懇願する。意志の弱い風変わりなヒッピーもほだされ、孫を預かろうと決心する。しかし、それは彼をどこか陰のある過去へ連れ戻す。黄昏への旅になるだろうが、それは期待にふくらむ未知への遭遇であるかもしれない。
(サムエルとアンナ、後ろ姿がマルク、映画から)
★タイトルの「Formentera Lady」は、1971年に発売されたキング・クリムゾンのアルバムからとられたようです。サムエル役のホセ・サクリスタン(1937、チンチョン)は、マラガ映画祭2014のレトロスペクティブ賞受賞者、今年の「金の映画」に選ばれたペドロ・オレアの「Un hombre llamado Flor de Otoño」の主人公を演じている。カルロス・ベルムトの『マジカル・ガール』(14)公開で、日本でも遅ればせながら知名度を挙げました。娘役ノラ・ナバスは、ビリャロンガの『ブラック・ブレッド』の母親役、ガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーンの『笑う故郷』(「名誉市民」)では、ノーベル賞作家の秘書を演じていた。二人ともゴヤ賞主演男優賞、女優賞の受賞者です。孫役のサンドロ・バリャステロスは、TVシリーズ出演の経験はあるが、長編映画は本作が初めてである。
*ホセ・サクリスタン紹介記事は、コチラ⇒2016年04月22日
(サムエル役ホセ・サクリスタン、映画から)
(マルク役サンドロ・バリャステロス、映画から)
★パウ・ドゥラは、1972年バレンシアのアルコイ生れ、俳優、監督、脚本家、製作者。短編デビュー作「Praeludium」(09)、「El hombre」(11)、「L'audífon」(13)、「El cerdo」(15)のほか、TV映画「Tocant el mar」(12)を撮る。俳優デビューは1994年TVシリーズ、映画はアグスティ・ビラのコメディ「Un hombre en el parque」(99)、セスク・ゲイ「Krámpack」(00、『ニコとダニ』)、マヌエル・ウエルガ『サルバドールの朝』(06)、昨年のマラガに正式出品されたリノ・エスカレラ「No sé decir adiós」など多数。TVシリーズ出演が多い。最近では舞台演出も手掛けている。
★4月16日の上映後のプレス会見では「無条件の自由を求めて生きている男の物語ですが、現実的にはありえません。しかし、この島には今でも70年代から住みついているヒッピーがいます」と監督、サムエルがバンジョーを演奏する賭場がいくつかあるようです。自分の信念を曲げないで生きている人物を描くのに遅すぎるということはない。高齢ながらどこかに少年の心をもつホセ・サクリスタンは「映画に登場するのは男たちだが、非常に女らしい物語です。だから少年は家庭とか家族とかを結ぶ懸け橋の象徴でもある」とサクリスタン。「偉大な俳優と一緒の映画に出られて感激」とサンドロ。観客を魅了できたでしょうか。
(サンドロ、監督、サクリスタン、上映後のプレス会見、4月16日)
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