グスタボ・エルナンデスの「No dormirás」*マラガ映画祭2018 ⑬2018年04月19日 21:08

          ウルグアイの監督グスタボ・エルナンデスのサイコ・スリラー

 

  

★映画祭も後半に入りラテンアメリカからもベテラン、新人シネアストの来マラガで賑わっている。グスタボ・エルナンデスの長編第3No dormirás(「You Shall Not Sleep」)は415日に上映され、主役の一人ベレン・ルエダがプレス会見でテーマについて語りました。監督本人は来マラガしていないようでした。本作は製作国のアルゼンチン、ウルグアイほかブラジルで既に公開されているという珍しいケースです。観客のツイートでは「ホラーでもないし、スリラーでもない」というのが散見していますが、ベレン・ルエダのコメントからそれが最重要テーマでないことが分かりました。

 

 No dormirás(「You Shall Not Sleep」)2018

製作:Pampa Films / FilmSharks International(アルゼンチン)/ Tandem Films(西)/

    Mother Superior(ウルグアイ)、INCAA / ICAA他多数、

監督:グスタボ・エルナンデス

脚本:Juma Fodde

撮影:ギジェルモ・ニエト

音楽:アルフォンソ・ゴンサレス・アギラル

編集:パブロ・スマラーガ

美術:マルセラ・バッサノ

製作者:マルタ・エステバン、クリスティナ・スマラーガ、Guido Rud(以上エグゼクティブ)、アグスティン・ボッシ、パブロ・ボッシ、イグナシオ・ククコヴィッチ、他

 

データ:製作国アルゼンチン=ウルグアイ=スペイン、スペイン語、2018年、ホラー、サイコ・スリラー、106分、撮影地ブエノスアイレス、カナリア諸島ラス・パルマス。マラガ映画祭2018正式出品415日上映、アルゼンチン及びウルグアイ111日同時公開、ブラジル218日、16歳以上。

 

キャスト:エバ・デ・ドミニシ(ビアンカ)、ベレン・ルエダ(アルマ・ベームAlma Bühm)、ナタリア・デ・モリーナ(セシリア)、ヘルマン・パラシオス(作家)、フアン・マヌエル・ギレラ(フォンソ)、エウヘニア・トバル(サラ)、スサナ・オルノス(ドラ)、マリアノ・Smolarczuk(新聞記者)、他

 

プロット1984年、今では廃屋になっている精神科病院、そこで前衛的な演劇グループが20年前に患者のグループによって創作された作品の舞台化の準備のために不眠症を体験している。数日間眠らないことで知覚の限界に達すると、活力や隠されていた過去に向き合うことになった。有望な女優と目されるビアンカは、主役抜擢を願って参加していた。それは仕事や他の仲間たちへの強い思い入れだけでなく、ビアンカや仲間たちを駆り立てていた未知の力が、彼らを悲劇的な結末へと引き寄せていく。

 

★ストーリーは、前衛的な演劇グループの極端な製作過程と立派だが打ち捨てられた屋敷という要素を組み合わせて進行していくが、恐怖や精神的インパクトはそれほど多くないようだ。力点は登場人物の心理状態に置かれているから、恐怖目的のホラー・ファンには物足らないのかもしれない。ベレン・ルエダがプレス会見で「ホラーが基本的なテーマではない。しかし人物のシチュエーションが観客をそこへ誘い込む。恐怖するための恐怖を求める映画ではなく、現実と私たちの頭の中で起こることの相関関係が描かれている」と語ったように、求めているものに隔たりがあるようです。 

   

       (上映後のプレス会見、中央がベレン・ルエダ、415日)

 

ベレン・ルエダは脚本家アルマ・ベームを演じる。傷つきやすさや感受性を高めるために、出演者に数日間睡眠をとらない不眠症体験をさせる、神秘的で残酷な性格の役柄。スペインから参加したナタリア・デ・モリーナは、ビアンカの仲間の一人セシリア役になる。今回コンペティション部門で金のビスナガ作品賞を競うダビ・トゥルエバ『「ぼくの戦争」を探して』でゴヤ賞2014助演女優賞を受賞したほか、マラガ映画祭2015ではフアン・ミゲル・カスティージョTecho y comidaのシングル・マザー役で女優賞、翌年のゴヤ賞では主演女優賞まで受賞してしまった強運の持ち主、スペイン若手ホープの一人。

 

  

                       (ベレン・ルエダ、マラガ映画祭にて)

 

   

       (エバ・デ・ドミニシとナタリア・デ・モリーナ、映画から)

 

★主役のビアンカ役は、アルゼンチンのエバ・デ・ドミニシ(ドミニチか)、1995年ブエノスアイレス生れ。本作では娘は親の支配下にあるべきという、父親からのトラウマと暴力から逃れ、生き残るために舞台女優として自立したい女性を演じた。モデル出身だが2006年からTVシリーズで活躍、エルナン・ベロンSangre en la boca16)でレオナルド・スバラグリアとタッグを組み女性ボクサーを演じた。本作出演後もオファーが目白押し、来年公開の「Bad Water」でアメリカ映画にも進出することになった。

 

             

 (エバ・デ・ドミニシ、映画から)

 

  グスタボ・エルナンデスのキャリア&フィルモグラフィー

グスタボ・エルナンデス、ウルグアイの監督、脚本家、製作者。長編デビュー作La casa muda10)は、カンヌ映画祭と併催される「監督週間」に正式出品された後、国際映画祭でも上映された。翌年ハリウッドでクリス・ケンティス&ローラ・ラウ監督によって「Silent House」としてリメイクされ、日本でも『サイレント・ハウス』の邦題で公開されたホラー・スリラー、エルナンデス監督は脚本を共同執筆した。第2作目はDios local14)は、シッチェス映画祭、ファンタスティックフェスト、リオデジャネイロ映画祭、プチョン市の韓国ファンタジー映画祭などで上映された。第3作目が「No dormirás」です。

 

   

    (「No dormirás」公開時、インタビューを受けるグスタボ・エルナンデス)

 

        

             (デビュー作「La casa muda」のポスター)


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