『エル・クラン』が公開・パブロ・トラペロ ― 2016年09月20日 12:03
実話に着想を得て製作された誘拐犯プッチオ家のビオピック
★ベネチア映画祭2015紹介の折り、「ザ・クラン」の仮題でご紹介していたパブロ・トラペロの“El clan”(2015)が、『エル・クラン』の邦題で今秋劇場公開になりました。カンヌ映画祭の常連でもあり、国際的には高い評価を得ています。ラテンビートでも『檻の中』『カランチョ』『ホワイト・エレファント』と3作上映されていますが、日本公開は7人の監督が参加したオムニバス『セブン・デイズ・イン・ハバナ』だけ、単独での公開は初めて、ベネチアでの監督賞(銀獅子賞)が幸いしたのかもしれません。公式サイトも立ち上がり、かなり詳しい内容が紹介されています。人名の表記は当ブログと若干異なります。
(銀獅子賞のトロフィーを掲げるトラペロ監督、ベネチア映画祭2015)
★鑑賞後に改めてアップしたいと思いますが、ベネチアでのインタビューでは、「フィクションの部分をできるだけ避けた」と監督が語っていましたが、父と家族の会話、特に長男アレハンドロとの確執などはビデオが残っているわけではありませんし、製作段階で誘拐犯の誰とも接触できなかったわけですから、やはり実話を素材にしたフィクション、政治的寓話と考えています。1980年代前半のアルゼンチンの状態をみれば、プッチオ家の誘拐ビジネスが可能だったことは不思議ではありません。民政移管など絵に書いた餅だったことは、その後のアルゼンチンの歴史が証明しています。
(手錠姿で現れたアルキメデス・プッチオ、1985年8月23日)
★アルゼンチンと言わず、ラテンアメリカ諸国は死刑廃止国ですから、逮捕後の裁判の推移、判決内容が重要なのです。裁いた人はどちら側にいた人か、子供たちがどうして父親の呪縛から逃れられなかったのか、妻の立ち位置、誘拐ビジネスに協力した親戚たち、彼らの「その後」が、民主主義の成熟度をはかる物差しとなる。予告編を見る限りでは、誘拐の仕方、身代金受領後の殺害シーンなどは、むしろ平凡の印象を受けています。
(実在の7人と父親役ギジェルモ・フランセージャ以下の出演者)
*「ザ・クラン」の作品紹介と監督フィルモグラフィーは、コチラ⇒2015年08月07日
*公式サイトは、http://el-clan.jp/
*公開情報:新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMA(恵比寿)、2016年9月17日(土)、順次全国展開
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