G.G.ベルナル「ジャガー・ルクルト賞」*サンセバスチャン映画祭2016 ⑭2016年09月16日 11:09

      新設されたラテン・シネマ「ジャガー・ルクルト賞」にG.G.ガエル

 

★正式名は「Premio JaegerLeCoultre al Cine Latino」、2007年からベネチア映画祭で始まった「Premio JaegerLeCoultre Glory to the Filmmaker」と同じジャガー・ルクルト社が与える賞。第64回ベネチア映画祭特別招待作品の北野武の『監督・ばんざい!』(2007)が第1回の受賞者。題名からベネチアでは「監督・ばんざい賞」と呼ばれているので、それを採用してもいいでしょうか。ベネチアと似ていますが、こちらは「10年以上のキャリアがあり、かつ将来的にも活躍が期待できるラテンアメリカのシネアスト」に贈られます。ジャガー・ルクルト社は1933年創業のスイスの高級時計マニュファクチュール、サンセバスチャン映画祭のパトロンの一つです。

 

  

 

★第1回の受賞者となったガエル・ガルシア・ベルナルは、パールズ部門上映のパブロ・ラライン「Nerudaネルーダ」に出演、脚本の共同執筆者でもあることが評価された。1978年メキシコのグアダラハラ生れ、子役で出発、俳優のほか監督、脚本家、製作者(制作会社カナナ)。詳しいキャリアは割愛しますが、日本登場はカンヌに旋風を巻き起こしたアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの『アモーレス・ペロス』00)、カトリック教会の横槍でメキシコでは上映中止となった『アマロ神父の罪』02)、チェ・ゲバラの青年時代を演じた『モーターサイクル・ダイアリーズ』04、ウォルター・サレス)、妖艶な女装が話題を呼んだ『バッド・エデュケーション』04、アルモドバル)、イニャリトゥのハリウッド進出を決定づけた『バベル』06)、力みすぎて空回りしてしまった監督デビュー作『太陽のかけら』07)など、殆どが公開されています。舞台にも立ち、ハリウッド映画からもオファーを受け、今やメキシコを代表するシネアスト。

 

    

 (鮮烈デビューした頃のG.G.ベルナル、『アモーレス・ペロス』)

 

 

         (ネルーダを追跡する刑事オスカルのG.G.ベルナル、「ネルーダ」)

 

★最近の出演作Me estás matando, Susana(ロベルト・スネイデル)では、ボヘミアンのマッチョなメキシコ男性に扮した。メキシコでの長編劇映画の撮影は、なんと2008年のカルロス・キュアロンの『ルドandクルシ』以来とか。スネイデル監督は、「私だけでなく他の監督も語っていることだが、ガエルの上手さには驚いている。単に求められたことを満たすだけでは満足せず、役柄を可能な限り深く掘り下げている」と感心している。堪能な英語のほかフランス語、ポルトガル語もまあまあできるから海外からのオファーが多くなっている。当ブログ紹介の『ザ・タイガー救世主伝説』(“Ardor”パブロ・ヘンドリック)はアルゼンチン映画、ミシオネス州の熱帯雨林が撮影地だった。 

    

           (『ザ・タイガー救世主伝説』のシャーマン役)

 

★米国のTVコメディ・シリーズMozart in the Jungle出演でゴールデン・グローブ賞主演男優賞を受賞したばかり、このほど第3弾の12月公開がアナウンスされました。他にトロント映画祭2015FIPRESCIを受賞したホナス・キュアロンのDesierto15)も落とせない。父親は『天国の口、最後の楽園』01)の監督アルフォンソ・キャアロン、これで親子二代の映画に出演したことになる。監督としては6本の短編があり、最新作Madly15分)がトライベッカ映画祭に正式出品された。 

   

     (共演者のベロニカ・エチェギと、“Me estás matando, Susana”から)

 

★サンセバスチャン映画祭へは、サバルテギ部門上映の『アモーレス・ペロス』、翌2001年には『ブエノスアイレスの夜』が同じサバルテギのコンペティションに選ばれ、フィト・パエスが新人監督賞を受賞した。今回が3度めのサンセバスチャン入りになります。来西はなかったもののパールズ部門にパブロ・ララインのNO12)、『モーターサイクル・ダイアリーズ』、メイド・イン・スペイン部門に『バッド・エデュケーション』、『バベル』、ホライズンズ・ラティノ部門にドキュメンタリー『ダヤニ・クリスタルの謎』(13、マーク・シルバー)などが上映されている。本映画祭は今日がオープニングですが、授賞式は917日にジャガー・ルクルト社のLaurent Vinay氏からベルナルに手渡される予定。

 

パブロ・ラライン「ネルーダ」の記事は、コチラ⇒2016516

AG・イニャリトゥ『アモーレス・ペロス』の記事は、コチラ⇒201536

パブロ・ヘンドリック『ザ・タイガー救世主伝説』の記事は、コチラ⇒20151218

ロベルト・スネイデル“Me estás matando, Susana の記事は、コチラ⇒2016322

ホナス・キュアロン“Desierto の記事は、コチラ⇒2015925