ガボと映画、さよなら、ガルシア・マルケス2014年04月27日 08:25

★ガボはガブリエルの愛称だから世界にはごまんといるはずだが、ラテンアメリカでガボと言えばガルシア・マルケスとイコールです。三度の飯より権力が好きだったノーベル賞作家が旅立ちました。今年はオクタビオ・パスとフリオ・コルタサルの生誕100年の年、沢山の催し物を期待しておりますが、それにガボも加わることでしょう。

 


★未刊の中編小説En agosto nos vemos刊行の噂もあり(遺族の意向次第、未完なのかもしれない)、しばらく話題提供が続きますね。28年間欠かさず816日に母親の墓参をしている女性の話、そこからタイトルがとられた。「また八月にお会いしましょう」という意味。今年のハバナ映画祭(12月)ではガルシア・マルケス特集が組まれるらしく、どんな作品が上映されるのか、アルフレッド・ゲバラも既に鬼籍入り、今度は盟友も後を追ってしまい、今後ハバナ映画祭は何処へ向かうのでしょうか。

 

★作家の映画脚本家としてのキャリアは長い。IMDbによれば51作品ありますが、短編、テレビやドキュメンタリーも含めており、それらを除いても30作を超えます。さらに原作、原案、セグメントだけだったりするから作家が全てにコミットしているわけではないようです。日本のデータでは発売中のDVDのリストはあっても全体を見渡せるものは(あるのかもしれないが)検索できなかった。以下はIMDbをたたき台にして管理人が作成したものです。劇場未公開ながら邦題を入れたのは原作のタイトルを借用しています(例:『わが悲しき娼婦たちの思い出』など)。また公開された映画については簡単に引き出せますからデータのみに致します。

 

       主なフィルモグラフィー

2011 Memoria de mis putas tristes(原作『わが悲しき娼婦たちの思い出』)

   これについては既にアップ済み。コチラ⇒2014年0123

2011 Lecciones para un beso (共同脚本「キスのレッスン」)

   監督:フアン・パブロ・ブスタマンテ/コロンビア/撮影:カルタヘナ

2009 Del amor y otros demonios (原作『愛その他の悪霊について』)

   監督:イルダ・イダルゴ/コスタリカ・コロンビア

2007 Love in the Time of Cholera (原作『コレラの時代の愛』) 公開2008

   監督:マイク・ニューウェル/米国/言語:英語

2006 O Veneno da Madrugada (原作La mala hora『悪い時』)

   監督:ルイ・ゲーラ/ブラジル・アルゼンチン・ポルトガル/言語:ポルトガル語・西

撮影:ブエノスアイレス

2001 Los niños invisibles共同脚本『透明になった子供たち』
   セルバンテス文化センター上映

   監督・脚本:リサンドロ・ドゥケ・ナランホ/ベネズエラ・コロンビア/撮影:コロンビア

1999 El coronel no tiene quien le escriba (原作『大佐に手紙は来ない』)公開

   監督:アルトゥーロ・リプスタイン/ 製作:ホルヘ・サンチェス他 /メキシコ・仏・西 

1996 Oedipo alcalde (共同脚本『コロンビアのオイディプス』
   「キューバ映画祭
2009」上映

   監督:ホルヘ・アリ・トリアナ/コロンビア・西・メキシコ・キューバ

1994 Eyes of a Blue Dog (原案『青い犬の目』)

   監督:表記なし/米国/言語:英語

1992 Mkholod sikvdili modis autsileblad (原作 英題“Only Death Is Bound to come”)

   監督:Marina Tsurtsumia /グルジア・ロシア 言語:グルジア語・ロシア語

1989 Milagro en Roma (脚本『ローマの奇跡』) 公開1991

   「愛の不条理シリーズ」より 監督:リサンドロ・ドゥケ・ナランホ/コロンビア・西

1989 Cartas del parque (脚本 / 原案『公園からの手紙』) 公開1991

   「愛の不条理シリーズ」より 監督:トマス・グティエレス・アレア/キューバ・西

1988 Un señor muy viejo con unas alas enormes 
   (共同脚本『大きな翼を持った老人』)

   「愛の不条理シリーズ」より 監督:フェルナンド・ビリ/キューバ・伊・西、公開1990

1988 Fábula de la Bella Palomera (脚本『美女と鶏の寓話』)

   「愛の不条理シリーズ」より 監督:ルイ・ゲーラ/ブラジル・西

1987 Cronaca di una morte annunciata (原作『予告された殺人の記録』)公開1988

   監督:フランチェスコ・ロージ/伊・仏、言語:イタリア語

1986 Tiempo de morir (脚本『死の時』/ダイアローグ:カルロス・フエンテス)

       監督:ホルヘ・アリ・トリアナ/コロンビア・キューバ 

1984 『さらば箱舟』(原作『百年の孤独』/ 脚本:監督・岸田理生) 公開1984

   監督:寺山修司 /日本/言語:日本語

1983 Eréndira (原作/ 脚本 『エレンディラ』) 公開1984

   監督:ルイ・ゲーラ/仏・メキシコ・西独 モノクロ

1979 El año de la peste (共同脚本:フアン・アルトゥーロ・ブレナン「ペストの年」)

   監督:フェリペ・カサルス /メキシコ /ダイアローグ:ホセ・アグスティン
      1980年アリエル賞(監督賞)・脚本賞受賞、同年メキシコ・ジャーナリスト・シネマ賞
   (銀賞)を受賞。ガルシア・マルケスが関わった映画では唯一の受賞作。

1979 María de mi corazón (脚本/原案「わが心のマリア」)

   監督・脚本:ハイメ・ウンベルト・エルモシーリョ /メキシコ

1979 a viuda de Montiel (原作『モンティエルの未亡人』)

   監督・脚本:ミゲル・リッテン/共同脚本:ホセ・アグスティン/メキシコ・コロンビア・ベネズエラ・キューバ / ジュラルディン・チャップリン主演

1975 Presagio 共同脚本「前兆」

   監督・脚本:ルイス・アルコリサ /メキシコ

1969 Patsy, mi amor (原案「愛しのパッツィー」)

   監督・脚本・ダイアローグ:マヌエル・ミチェレ/メキシコ/オフェリア・メディーナ主演

1968 4 contra el crimen (共同脚本:アルフレド・ルアノバ「犯罪に立ち向かう四人)

   監督:セルヒオ・ベハル /原案:フェルナンド・ガリアナ /メキシコ

1967 Juego peligroso (セグメント "HO"、他ルイス・アルコリサ、
   フェルナンド・ガリアナ)

   監督:ルイス・アルコリサ、アルトゥーロ・リプスティン /メキシコ/ 
   シルビア・ピナル主演

1966 Tiempo de morir (脚本『死の時』/ダイアローグ:カルロス・フエンテス)

   監督:アルトゥーロ・リプスティン/メキシコ/モノクロ

1965 Amor amor amor (脚色/ セグメント "Lola de mi vida")

   監督:ベニト・アラスラキ、ミゲル・バルバチャノ=ポンセ他 /メキシコ

1965 En este pueblo no hay ladrones (原案『この村に泥棒はいない』)

   監督・脚本:アルベルト・イサーク/脚本:エミリオ・ガルシア・リエラ他 /メキシコ
   /モノクロ

1965 Lola de mi vida (脚色 / 脚本『愛しのローラ』)

   監督:ミゲル・バルバチャノ=ポンセ /メキシコ

1964 El gallo de oro (共同脚本『黄金の雄鶏』 原案:フアン・ルルフォ)

   監督・脚本:ロベルト・ガバルドン / 共同脚本:カルロス・フエンテス

1954 La langosta azul (共同監督、脚本、短編)

   短編は除外しましたが、本作は唯一の監督作品ということでリストに入れました。

 

    El gallo de oro1964)は、後にアルトゥーロ・リプスタインがEl imperio de la fortunaのタイトルで同じフアン・ルルフォの短編を原案にして撮っています。スタッフ、キャスト陣も別で、「メキシコ映画祭1997」上映の邦題は『黄金の鶏』、未公開です。

 

   

(写真:イグナシオ・ロペス・タルソとルチャ・ビリャ)

    1965年の『この村に泥棒はいない』では、作家はリストで分かるように原案だけで脚色にはタッチしていません。1965年の第1回長編実験映画コンクール(メキシコ)で2等に選ばれた。本作には監督以下、ルイス・ブニュエルが司祭役、フアン・ルルフォとアベル・ケサダがドミノ遊びに興じていたり、画家のホセ・ルイス・クエバスがビリヤードをやっていたり、作家本人も映画館のモギリ役で出演しています。友情出演というか映画作りに参加することが魅力的な時代でした。

 

    1966年と1986年の “Tiempo de morir” は、監督やキャストは異なりますが、脚本・ダイアローグは同じです。前者はリプスティンのデビュー作で、まだ20代の駆け出し監督でした(1943生れ)。メキシコ・シネマ・ジャーナリスト賞を受賞した。後者はホルヘ・アリ・トリアナがリメイクした。写真はダイアローグを担当したカルロス・フエンテスとガボ。

 


    寺山修司の最後の長編映画『さらば箱舟』は、2年前の1982年に完成していたが、ガルシア・マルケス側からのクレームで延期されていた。山崎勉、原田芳雄、小川真由美他。

 


    『予告された殺人の記録』の原作は、マルケスの中編では最高傑作でしょうね。しかし映画のほうはコロンビアの地元では頗る評判が悪い。それには一理あって、映画では大胆に語り手を変えている。語り手と母親の関係がなくなり30年間の空白ができているのが問題です。従って内の視点がなし崩しになり、原作とはイメージが異なってしまった。これはあくまでヴィスコンティのもとで長らく助監督をしていたイタリア人監督のイタリア映画と考えることです。1972年のカンヌ国際映画祭でグランプリに輝いた『黒い砂漠』の脚本を共同執筆したのが、本作と同じトニーノ・グエッラでした。グエッラと言えばシネフィルには神様みたいな脚本家、デ・シーカ、アントニオーニ、タルコフスキー、テオ・アンゲロプロスなど世界の名だたる巨匠とタッグを組んで名作を送り出した巨人である。撮影監督もパスカリーノ・デ・サンティス(ロベール・ブレッソンの遺作『ラルジャン』1983)と申し分なし。うがった見方をするならば、語り手を変えることで原作者との接触を避けたかったのではないか。実際、原作者のロケ地訪問(モンポス、カルタヘナ)を断っている。ロージの専属俳優ともいえる名優ジャン・マリア・ボロンテ、ルパート・エヴェレット、オルネラ・ムーティ、イレーネ・パパスとキャスト陣も豪華です。


 ★   
1996年の『コロンビアのオイディプス』は、「キューバ映画祭2009」で上映された作品(キ  ューバ映画と言えるかどうか)。ホルヘ・アリ・トリアナは、前述したリメイク版『死の時』も監督している。プロデューサーはホルヘ・サンチェス(『愛しのトム・ミックス』、『大佐に手紙は来ない』、『バスを待ちながら』)、撮影監督はロドリーゴ・プリエト、当時は新人でしたが、以後『アモーレス・ぺロス』、『フリーダ』、『バベル』、『抱擁のかけら』、『ラスト、コーション』では第64回ベネチア映画祭で撮影監督に与えられる金のオゼッラ賞を受賞している。本作でもその後の活躍を予感させるスマートでドラマティックなプラグマティズムなカメラ・ワークが話題になりました。ロケ地はコロンビア。
    

キャスト:ホルヘ・ペルゴリア(オイディプス)、アンヘラ・モリーナ(イオカステ)、パコ・ラバル(テイレシアース)、ハイロ・カマルゴ(クレオーン)、ホルヘ・マルティネス・デ・オジョス(司祭)

マルケスは、ソポクレスの悲劇『オイディプス・ティラーノス()』(BC 5世紀)をベーシックにして、そこから横道にさまよい出ていきます。知らずに犯してしまう禁忌タブーの近親相姦があること、神託で決められた運命は変えられないがテーマ。

オイディプスの名前は、「腫れた足」から来ている。籐の杖をついて歩く、それは神託によって捨てられ山中に鎖で繋がれていたからである。最後のシーンに繋がっていく。

(写真下はホルヘ・ペルゴリアとアンヘラ・モリーナ)

 


ホルヘ・アリ・トリアナ監督、19424月4日、コロンビアのトリマ生れ。監督・製作・俳優・脚本家。代表作:リメイク版Tiempo de morir 「死の時」(1986)。Bolivar soy yo! 「ボリバルは私だ」(2002、脚本・製作)、Esto huele mal 「変な臭いがする」(2007、製作)、舞台監督:「純真なエレンディラ」、「予告された殺人の記録」、「山羊の祝宴」など。

 

    『大佐に手紙は来ない』は、サンダンス映画祭2000ラテンアメリカ・シネマ賞受賞、カンヌ映画祭1999正式出品、ゴヤ賞2000 脚色賞ノミネート(パス・アリシア・ガルシアディエゴ、リプスタインの妻)。製作費約300万ドル。東京国際映画祭1999で上映(2004年公開は未確認)。大佐にメキシコの大物俳優フェルナンド・ルハン、その妻役ローラにスペインの大女優マリサ・パレデス、喧嘩で殺された一人息子の恋人フリアに人気急上昇中のサルマ・ハエック、ダニエル・ヒメネス=カチョなどが出演して話題になった。

  (写真下は、靴下の穴かがりをするロラと大佐)

    

    


    『透明になった子供たち』は、セルバンテス文化センター「土曜映画上映会」(20099月)で上映された。ボゴタ映画祭2001ベスト・コロンビア・フィルム賞、カルタヘナ映画祭2002作品賞他を受賞している。ジャンルはコメディ、多分未公開。

 


ストーリーは、大好きなマルタ・セシリアに透明になって近づきたいラファエル少年と仲間の友人2人のちょっとこわい冒険談。黒魔術を使って透明になろうと奔走する
3人は、恐怖を乗りこえ、道徳にも反して、ニワトリの臓物、ネコの心臓を手に入れようとする。本当に透明になれるのでしょうか。活気にあふれた1950年代のコロンビアの小村の風物(ドミノに興じる男たち、マルケスの小説によく登場する理髪店)、世界ミス・コンテストを導入されたばかりのテレビで見る庶民など、半世紀ほどタイムスリップして楽しむことができる。透明になってしまう語り手のラストシーンがお茶目です。(写真:左がラファエル)