第17回マラガ映画祭2014*パコ・レオン&落ち穂拾い2014年04月13日 17:12

         パコ・レオンの第2作目 Carmina y amén が脚本賞を受賞

      

★マラガ映画祭2012年でデビュー作 Carmina o revienta  が審査員特別賞と観客賞を受賞したパコ・レオン、カルミナ第2弾 Carmina y amén で再びマラガにやって来ました。前作と同じ母カルミナ・バリオス、妹マリア・レオンの親子三人が中心になって作ったコメディ。待っていたカルミナ・ファンも多かったことでしょう。

 

パコ・レオンが最優秀脚本賞銀賞)、ヨランダ・ラモス最優秀助演女優賞銀賞)を受賞しました。デビュー作での予告タイトルはCarmina でしたが変更したようです。また前作で女優賞を受賞したカルミナ・バリオスは今回は無冠でした。親子三人については、20138月にUPしたゴヤ賞2013予想と結果で紹介済みです。付け加えるとすると、レオン監督はホアキン・オリストレルの『地中海式 人生のレシピ』(20092013年公開、DVD発売)に不動産業者トニ役で出演、俳優としてテレビ、映画で活躍している。

 

*ストーリー、夫の突然の死に遭遇したカルミナは、死亡通知を2日間遅らせることを娘マリアに納得させる。そうすれば夫の未払い給料が倍額で受け取ることができるからだ。秘かに遺体と一緒に2日間を過ごすことになったカルミナとマリア母子は・・・セビリャの庶民的な慎ましいバリオの日常を描くコメディ。(写真下:夫の棺の前で悲嘆にくれるカルミナとマリア)

 


前作と本作の大きな違いは製作費、第1作がたったの5万ユーロ(4万というのもあり)だったのに、今回はテレシンコ・シネマTelecinco Cinema から65万ユーロの資金を得て製作されたこと。二つ目は第1作が親子3人と殆どが隣り近所のアマチュアだけだったが、今回は家族に加えてプロも出演していること。プロ&アマ半々、助演女優賞受賞のヨランダ・ラモスほか、マノロ・ソロ(『第211号監房』)、ホセ・ルイス・ガルシア・ペレス、前作にも出演していたパキ・モントーヤ、カルミナの夫役でデビューしたパコ・カサウスもプロの仲間入りですね。今回のプロットは、私的な逸話が脚本のベースになってはいるが、第1作よりフィクション性が高い。死とコメディをめぐるドラマの中に遊びを入れている。(写真下:Carmina y amén 撮影中のパコ・レオン)

   


前作 Carmina o revienta は、DVD発売や型破りのインターネット配信(有料)で映画館が空っぽになったといわれた。今回は430日封切りだが、同時にオンラインで配信したいと。これは通常の仕来たりを壊すもので批判もあることです。彼に言わせると公開後4か月経たないとDVDが発売できないのは理不尽である(以前は6カ月後だったが数年前改正された)、それでも海賊版の横行であまりに長すぎる。消費税税増税でますます映画館から観客の足が遠のいている現実からもおかしい。さらに均一料金も納得できない。莫大な資金をかけた『ホビット』のような大作と自作のような映画とが同じなのはヘンというわけ。アメリカ製<モンスター>に太刀打ちするには工夫が必要、一理ありますよね。「自分は映画を当てて金儲けしようと考えている監督じゃない。新作もチケットは5ユーロで販売したいが、裁判所はノーと言っているが、闘いは止めない」と監督。

トールキンの『ホビットの冒険』を映画化したピーター・ジャクソンの三部作。

 

映画以上に怒りは盛り上がっているが、新人監督の作品は配給元が見つからず公開のチャンスが少ない。いわゆる<映画祭映画>で終わってしまうから、彼の意見に賛同する人は多いのではありませんか。

 

◎その他いろいろ落ち穂拾い

★『マデイヌサ』や『悲しみのミルク』のクラウディア・リョサの第3No llores, vuela(原題Aloft)の撮影監督ニコラス・ボルデュク Nicolas Bolduc最優秀撮影賞銀賞)を受賞しました。監督こそペルーですが、米西仏合作、言語は英語ですから当ブログの範疇外かな。ただしベルリン映画祭にも出品され、キャスト陣も有名どころが起用されている。前2作のテーマは母と娘だったが、本作は母と小さいときに生き別れになった息子の話。またチャーリー・チャップリンの孫、ジュラルディン・チャップリンの娘、つまりユージン・オニールの曾孫ウーナ・チャップリンOona Castilla Chaplin1986、マドリード生れ)が出演している。話題性があり、映画祭上映に止まらず公開も期待できそう。

 

ウーナ・チャップリンは本映画祭でデビューしたPau Teixidor 監督の Purgatorio の主役マルタにも抜擢されてマラガ入りしていました。彼女は日本に既に登場しています。『007慰めの報酬』(2008)にホテルの受付役で出演、テレドラ・シリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』**のタリサ・マイギアに扮しました。母親似のほっそりした体形、170センチと長身です。父親は当時ジュラルディンのパートナーだったチリの撮影監督パトリシオ・カスティリャ、両親が正式に結婚したのは2006年です。

**このテレドラについては、最優秀女優賞受賞のナタリア・テナ(10.000 KM)でご紹介しています(4月11日)。

 

★デビュー作が元気だった今回のマラガ映画祭でしたが、Purgatorioは、評価が分かれたようで受賞には絡みませんでした。スリーラー仕立てのホラー映画、息子を失うという重いトラウマを抱えた若い母親マルタは、新しい隣人の男の子を世話している。「製作者も男性、脚本家も男性、監督も男性・・・息子を亡くしたばかりの女性について語ったものですが、そういう苦しみを共有するのは難しかった」とウーナ。

脚本はテレドラのシリーズを手掛けているルイス・モレノと、『インポッシブル』や『永遠のこどもたち』の脚本を書いたセルヒオ・G・サンチェスです。スペイン映画のホラー好きがナニするかもしれない。(写真下:Purgatorio のウーナ・チャップリン)

 


★受賞に近いと見られていたホルヘ・トレグロサの第2作、コメディ La vida inesperada も無冠に終わりました。撮影がニューヨークだったり、エルビラ・リンド(『めがねのマノリート』の原作者)が脚本を手掛けたということで話題になっていたのですが。ハビエル・カマラとラウル・アレバロの息の合った上手すぎる演技が、マラガではちょっと食傷気味だったかもしれない。面白さと受賞は必ずしも一致しないから字幕入りで・・・と期待。

  

   (左からラウル、ハビエル、トレグロサ監督)