第17回マラガ映画祭2014*受賞結果②2014年04月07日 19:12

★マラガ映画祭には、コンペ以外に特別賞として本映画祭に貢献したシネアストに贈られる賞が設けられている。マラガ賞、リカルド・フランコ賞、エロイ・デ・ラ・イグレシア賞、レトロスペクティブ賞、今年カルロス・サウラが手にした「金の映画」などがあります。

 

マラガ賞 マリベル・ベルドゥ

一番の大賞、海沿いの遊歩道に記念碑が建てられた。写真でお分かりのようにかなり大きい(等身大)。9日間はちょっと長く雨の日もあったが、トロフィー授与式に訪れた324日はよく晴れて多くのファンが詰めかけた。プロらしくファン・サービスも怠りなく素晴らしい笑顔です。人気に溺れず偉ぶらず、常に庶民的な面をなくさないのも人気の秘密です。「まだ若いけれど、演技は既にベテランの域に達している。プロとしてのキャリアも申し分ない」と映画祭ディレクターのフアン・アントニオ・ビガル。

 


1970年生れだから確かに受賞者としては若いが、既に28年のキャリアがある。13歳でテレビ初出演、映画デビューは1986年のモンチョ・アルメンダリスの27 horasでした。出演映画は70作を超える。ゴヤ賞ノミネート8回、グラシア・ケレヘタのSiete masas de billar francés2007)と、パブロ・ベルヘルの『ブランカニエベス』で受賞している。その他Ondas 2回、銀のフィルム賞3回、フォルケ賞2013、デル・トロの『パンズ・ラビリンス』(2006)では、メキシコのアカデミー賞と言われるアリエル女優賞を貰っています。他にビセンテ・アランダ『アマンテス 愛人』(1990)、フェルナンド・トゥルエバ『ベル・エポック』(1992)、ビガス・ルナ『ゴールデン・ボールズ』(1993)、アルフォンソ・キュアロン『天国の口、終りの楽園』(2001)など劇場公開作品も多い。「ラテンビート2010」上映のコッポラ『テトロ』と国際的な活躍も、英語、フランス語ができるのも強みです。

 

「スペイン映画祭1998」で上映されたリカルド・フランコの La buena estrella1997、『エストレーリャ~星のまわりで』仮題)のベルドゥはゴヤ賞に最も近いと思われたがノミネートに終わった。個人的にはSiete masas de billar francés よりLa buena estrella のほうが良かったと今でも思っています。授賞式前のインタビューでは、199848歳の若さで亡くなった監督について「いま特にリカルドのことを思い出しています」と語っていました。友人としても親しかったようです。「マラガは光も海も独特よね」と語るベルドゥの新作は、今度もガルシア・ケレヘタ作品。タイトルもFelices 140 と決まっています。14000万ユーロの宝くじが当たった女性の物語とか。マラガとは縁が深く、昨年の「金のジャスミン賞」は、ゴヤ賞2014で述べたようにケレヘタの 15 años y un día でした。銀賞として脚本賞、 オリジナル・サウンドトラック賞、批評家特別賞も受賞して二人には相性の良い映画祭といえます。新作はまだ匂いだけで何とも言えませんが期待したいところです。(写真:授賞式での華やかなベルドゥ)

 


リカルド・フランコ賞  受賞者ジル・パロンド

★まずリカルド・フランコのご紹介から。1949年マドリード生れの監督、脚本家、俳優、製作者。上記したように既に鬼籍入りしています(1998)。哲学者フリアン・マリアスの甥、作家ハビエル・マリアスは従兄弟、伯父ヘスス・フランコ監督の助監督として出発した。代表作は「カンヌ映画祭1976」のコンペに出品された『パスクアル・ドゥアルテ』、後にノーベル賞作家となるカミロ・ホセ・セラの『パスクアル・ドゥアルテの家族』の映画化。ホセ・ルイス・ゴメスに主演男優賞をもたらした。製作者がグラシア・ケレヘタの父エリアス・ケレヘタでした。日本では「第1回スペイン映画祭1984」で上映された。

  

フランコはテレビの仕事も多く、俳優としてハイメ・チャバリ、フェルナン・ゴメス、グティエレス・アラゴンの映画に出演している。『パスクアル・ドゥアルテ』以外は、「スペイン映画祭1998」で長編10作目となる『エストレーリャ~星のまわりで』が紹介されただけです。『エストレーリャ~星のまわりで』は、ゴヤ賞1998の最優秀作品賞、監督賞、脚本賞、アントニオ・レシネスが主演男優賞、エバ・ガンセドがオリジナル作曲賞を受賞した作品。公開されなかったことが残念だった映画です。

 


眼病のせいで既に失明の怖れがあり映画を撮るのは難しい状態でした。フェルナンド・バウルスと共同監督したLagrimas negras1998)が遺作、90年代の初めから患っていた心臓病が悪化し、完成を見ることなく、49歳の誕生日を目前に心筋梗塞で亡くなりました。そういうわけで「享年49歳」と書かれることもあります。

 

★受賞者ジル・パロンド1921年アストゥリアス生れ、美術監督。王立サン・フェルナンド美術アカデミーで絵画と建築を学ぶ。映画好きと舞台装置に興味を抱いてこの世界に入る。1939年、エドゥアルド・ガルシア・マロトやフローリアン・レイの映画に参加、1951年、アントニオ・デル・アモの Días tras dia で美術監督を引き受けた。75年の長いキャリアの中でも、フランクリン・J・シャフナーの『パットン大戦車軍団』(1970)と同『ニコラスとアレクサンドラ』(1971)でオスカー像2個、ホセ・ルイス・ガルシのCanción de cuna1994)、You’re the One (una historia de entonces)2000)、Tiovivo c. 19502004)、 Ninette2005)でゴヤ賞4回は、他に類を見ないのではないでしょうか。

 


彼によると約210以上の映画を手掛けているとか。公開作品には、デヴィッド・リーンの『アラビアのロレンス』や『ドクトル・ジバゴ』、ジョン・ミリアス『風とライオン』、リチャード・レスター『ロビンとマリアン』、フランクリン・J・シャフナー『ブラジルから来た少年』、スペイン映画ではフアン・アントニオ・バルデム、ハイメ・チャバリ、ピラール・ミロ、マリオ・カムス他、数えきれない。

 

この75年間、映画や舞台の美術監督以外の仕事は考えられなかったそうで、どんなにデジタル技術の進歩があっても想像力を超えることはできないという。「舞台もテレビも映画の仕事も優劣つけがたく、どれも好きだ。しかし舞台はちょっと特殊なことがあって、強いて言えばぶたいかな」と、受賞前のインタビューに答えていました。

 

最新作は、カルロス・サウラの 33 dias2015年公開予定)、スペイン=カナダ=アルゼンチン、言語はスペイン語・フランス語、キャスト陣はグウィネス・パルトロー、アントニオ・バンデラス、イマノル・アリアスとかなり豪華。パルトローはスペインで過ごしたことがあり、かなり流暢なスペイン語を話す。製作費は概算600万ユーロがアナウンスされています。

 

エロイ・デ・ラ・イグレシア賞  受賞者パブロ・ベルヘル

★エロイ・デ・ラ・イグレシアについては、「バスク映画祭2003」で上映されたエンリケ・ウルビスの『貸し金庫507』をUPした折に簡単に触れました。1944年バスクのギプスコア生れ、2006年癌で死去。映画祭上映の『ブルガリアの愛人』(2003)が遺作。フランコ時代から問題作を撮りつづけていた監督だが、当時は批評家の無理解もあって正当に評価されていないと思う。この監督についてはいずれ作品紹介も兼ねてUPしたい。マラガで彼を顕彰する賞を設けてたことは一ファンとして嬉しい。

日本では『カンニバルマン 精肉男の殺人記録』の邦題でDVDが発売されているだけだと思う。すごいタイトルですが、オリジナルはLa semana del asesino1972)です。

 

★受賞者パブロ・ベルヘルについては、『ブランカニエベス』で何回も触れたし、公式サイトもあるから割愛します。

 

レトロスペクティブ賞  受賞者ホセ・サクリスタン

★本映画祭の貢献賞または栄誉賞の意味合いが強い賞。ホセ・サクリスタンは2012年のサンセバスチャン映画祭で男優賞(銀貝賞)を受賞して以来、ゴヤ賞2013、フォルケ賞2013、と受賞が続いている。その都度ご紹介してきているのでこちらも割愛です。

 


「金の映画」  受賞者カルロス・サウラ

★カルロス・サウラは上記したように新作発表、老いてますます盛んの印象です。今回の受賞は La prima Angélica1973)が「金の映画」に選ばれたからです。1984年開催された「スペイン映画の史的展望<19511977>」で、『従姉アンヘリカ』のタイトルで上映された作品。フランコ末期とはいえまだ検閲制度のあったときの作品、1974年カンヌ映画祭で審査員賞を受賞しています。『狩り』(1965)や『カラスの飼育』(1975)が好きな人は、フラメンコ物や最近の作品を評価しないけれど、「自分は常につくりたい映画を撮っているだけだ」とサウラ。日本ではフラメンコ物は相変わらず人気ですが、スペインでは『フラメンコ・フラメンコ』(2010)の館内はガラガラ、お客さんの入らない映画の代表格でした。

   


1932年、アラゴンのウエスカ生れ、2006年、女優エウラリア・ラモン(1959生れ)と再婚して周囲を驚かせた。彼の『ドン・ジョバンニ』『ゴヤ』『タクシー』に出演している。